JP5894042B2 - キャリブレーション方法、キャリブレーション装置、印字方法および印字装置 - Google Patents
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Description
また、この発明は、印字方法および印字装置に係り、特に、キャリブレーションされた印字条件で印字を行う方法および装置に関する。
一般に、インクジェット方式のキャリブレーションは、例えばインクC、インクM、インクYおよびインクKの4色のインクが用いられる場合には、4色のインクC、M、YおよびKをそれぞれ単独で被印字物に印字し、その時の被印字物の発色値を予め求められた標準発色値と比較することにより、インクC、M、YおよびKのそれぞれについて印字量のキャリブレーションが行われている。
例えば、被印字物の一部分に強度と柔軟性を付加するために、図5に示すように平織りにより繊維密度を高めて強度を確保した部分と、図6に示すように繻子織りにより繊維密度を低めて柔軟性を確保した部分とを混在させた被印字物を印字する場合、この被印字物は部分的に異なる繊維密度で構成されるため、供給されたインクには被印字物の繊維密度に応じた毛管力が働く。このため、インクが供給された被印字物の位置に応じてインクの浸透速度に違いが生じ、印字ムラが引き起こされてしまうといった問題があった。
ここで、毛管力とは、インクに働く力であり、濡れ性が大きくまたは繊維間距離が小さくなると毛管力は大きくなり、濡れ性が小さくまたは繊維間距離が大きくなると毛管力は小さくなるものである。
例えば、紙の上にシリカ、アルミナ等の比較的光屈折率の小さな微細粒子層をインク受容層として設けた被印字物にインクを印字した場合には、インクが浸透するインク受容層の光散乱能が小さく且つ比較的透明であり、インクの浸透深さによる発色の違いは起きにくい。しかし、上記の織物のように、光散乱能を有する繊維の内部にインクが浸透する場合には、織物の表面から見た発色の強さは色材の浸透深さに強く依存する。一般的に、同じ量のインクを印字した場合、インクが織物の表面近くに存在する場合と、インクが織物の内部深くまで浸透した場合では、前者の方が同じ色材量でも濃く発色することが知られている。
しかしながら、被印字物に供給された凝集剤の量に応じてインクの浸透する深さ位置が変動するため、上記のように、例えば4色のインクC、M、YおよびKをそれぞれ印字量が一定となるようにキャリブレーションしても被印字物の発色に変動が生じてしまうといった問題があった。すなわち、被印字物に供給された凝集剤の量が多いと、インクは凝集反応により被印字物の表面近くで固定されるため被印字物の発色は濃くなるのに対し、凝集剤の量がこれより減少すると凝集反応は緩やかになり、インクは即座に固定されずに被印字物内を深くまで浸透して固定されて被印字物の発色は薄くなる。このため、キャリブレーションによりインクの印字量を一定としても、被印字物におけるインクの浸透位置が変動した場合には所望の発色を得ることが困難であった。
さらに、凝集剤等により被印字物におけるインクの浸透を制御する場合に、インクの浸透位置は、凝集剤の量だけに依存するものではなく、インクの浸透に関する複数の浸透特性、例えば所定のインクを印字する前後に印字された他のインクの印字量などによっても変化する。例えば、図7(A)に示すように、被印字物Pに凝集剤が供給された後にインクMを印字すると、インクMは被印字物P内を一定距離まで浸透して凝集剤と凝集反応することにより固定される。ここで、インクMを印字する前にインクCを印字した場合には、インクCは凝集剤と凝集反応することにより被印字物P内に固定されるが、インクCとの凝集反応により未反応の凝集剤の量が減少するため、図7(B)に示すように、インクCに続いて印字されたインクMが凝集剤と充分に凝集反応できずに、インクCの浸透位置よりも深く浸透してから固定されることがある。一方、先に印字されたインクCの印字量が多いためにインクCが凝集剤と充分に凝集反応できない場合には、図7(C)に示すように、被印字物PにインクCが固定されない状態でインクMが印字され、インクMはインクCを被印字物P内に押し込むように移動して固定される。
このように、凝集剤が供給された被印字物におけるインクMの浸透位置は、凝集剤の供給量および他のインクCの印字量など、インクの浸透に関する複数の浸透特性に応じて複雑に変化する。このため、被印字物に印字するインクの印字量が一定となるようにキャリブレーションしても、浸透特性が変動することによりインクの浸透位置が変化し、印字による被印字物の発色を一定に保つことが困難であった。
特に、前述の織物のように被印字物のインク保持部が光散乱能を持つ場合に、この現象は顕著である。
また、この発明は、このようなキャリブレーション方法でキャリブレーションされたインクを印字する印字方法および印字装置を提供することを目的とする。
また、処理剤は、インクの粘度を上昇させるための凝集剤から構成され、複数の浸透因子のうち少なくとも凝集剤の供給量を変化させることにより、注目インクの浸透の度合いを変化させることが好ましい。
さらに、複数の浸透因子のうち少なくとも注目インクが供給される前または後に被印字物に供給されるインクの印字量を変化させることにより、注目インクの浸透の度合いを変化させることが好ましい。
また、被印字物は、光散乱能を有するインク受容部を含み、インク受容部に浸透したインクの浸透深さに応じて発色が変化することが好ましい。
また、被印字物の表側および裏側からの反射率をそれぞれ計測することにより、注目インクの検査発色値を計測することができる。また、被印字物を白バックまたは黒バックで光学測定することにより、注目インクの検査発色値を計測してもよい。ここで白バック、黒バックとは、被印字物の反射率を測定する際に、被印字物を置く保持台の色のことで、白い台の場合を白バックという。白バックと黒バックでの測定値の違いから被印字物の光散乱特性、光吸収特性を同時に求めることが出来る。特に浸透に重要な被印字物の厚みに関する情報が得られる。
この発明に係る印字装置は、上記のキャリブレーション装置を含み、キャリブレーション装置により補正された複数の浸透因子のもとで被印字物に注目インクを供給するものである。
実施の形態1
図1に、この発明の実施の形態1に係るキャリブレーション方法によりキャリブレーションが行われる印字装置の構成を示す。この印字装置は、被印字物Pにインクを印字する印字装置本体1と、被印字物Pが所定の発色となるように印字装置本体1における印字条件を補正することにより印字装置全体のキャリブレーションを行うキャリブレーション部2とを有する。
印字装置本体1は、供給量演算部3、制御部4および印字駆動部5が順次接続されると共に、印字駆動部5に凝集剤供給装置6とインク供給装置7がそれぞれ接続されている。凝集剤供給装置6とインク供給装置7は、一方向に移動される被印字物Pに対向して配置されており、被印字物Pの移動方向に対して凝集剤供給装置6とインク供給装置7の下流側には、乾燥装置8、発色処理装置9および洗浄装置10の後処理装置が順次配置されている。後処理装置は、被印字物P、および使用するインク中の染料の種類などにより最適なものが選ばれる。また、供給量演算部3には、オペレータからの指示を入力するための図示しないキーボードおよびマウスなどの入力手段が接続されると共に印字特性データベース(DB)11が接続されている。
また、供給量演算部3に接続された印字特性DB11には、印字装置本体1の印字に関する印字条件を示す設計値が保存されている。この設計値は、被印字物Pを所定の発色に印字するために予め設定されたもので、例えば、インク種、インクの供給量および凝集剤の供給量など、被印字物Pを印字する際に用いられる複数の印字特性が被印字物Pの発色を示す標準発色値に対応して保存されている。
なお、標準発色値とは、印字装置本体1が設計値通りに動作して被印字物Pに印字した時の発色値を示すものであり、印字装置本体1の動作変動に伴う発色の変化をとらえる際の基準として予め決定された既知のものである。例えば、標準発色値は、設計値として想定された標準被印字物、標準凝集剤を使用して、印字装置本体1を設計値通りに正しく動作させた発色結果から求めることができる。
なお、注目インクの印字の前後に印字される他のインクの代わりに、色材を含まない浸透液を利用することも出来る。この場合、他のインクの発色に邪魔されることなく注目インクの浸透特性を容易に計測することが可能となる。注目インクの印字は、発色の反射率を計測するために、ある面積を持つ領域に対して均一な印字を行うことも可能であるが、細線、ドット等を印字してその広がりを計測することも可能である。
一方、印字モードにおいては、供給量演算部3は、オペレータから入力された印字画像の色に最も近い発色を示す設計値を印字特性DB11から抽出する。
供給量演算部3は、キャリブレーションモードにおいてキャリブレーション部2の補正量演算部で演算された補正結果に基づき、印字特性DB11から抽出した設計値に補正を加えて制御部4に出力する。
凝集剤供給装置6は、印字駆動部5から入力された駆動信号に応じて、インクの粘度を上昇させるための凝集剤Aを被印字物Pに供給する。
ここで、インクY、M、CおよびKには、凝集剤供給装置6から供給される凝集剤Aと凝集反応するための被凝集剤が含まれており、両者の凝集反応によりインクの粘度が上昇する。また、インクY、M、CおよびKに含まれる染料は、被印字物Pの素材に応じたものが用いられ、例えば、被印字物Pがポリエステル繊維から構成される場合には分散染料を、被印字物Pが動物性繊維(羊毛または絹など)およびナイロンから構成される場合には酸性染料を、被印字物Pが木綿などの植物繊維から構成される場合には反応性染料をそれぞれ用いることができる。インク供給装置7から被印字物Pに供給されたインクY、M、CおよびKは、凝集剤Aと凝集反応することにより所定の粘度に上昇され、被印字物P内に固定される。
計測装置12aおよび12bは、被印字物Pの移動方向に対して洗浄装置10の下流側に配置され、例えば被印字物Pの光学反射率などを計測するための光学センサなどから構成されている。計測装置12aは被印字物Pの表側に配置されると共に計測装置12bは被印字物Pの裏側に配置されており、被印字物Pの表側および裏側からそれぞれ光学反射率を測定することで被印字物Pに浸透したインクの浸透深さに関する情報を得ることができる。また、印字された細線およびドット等の微細な印字パターンが、浸透・発色工程で広がる変化を計測するために、拡大レンズ付きカメラを設けることも可能である。
補正量演算部13から補正量を入力した供給量演算部3が設計値を補正すると共にその補正された設計値を印字特性DB11に新たに保存することにより、印字装置本体1において補正された設計値に基づいた印字が行われる。
まず、ステップS1で、キャリブレーションモードに設定される。キャリブレーションモードの設定は、オペレータによる指示あるいは自動的に設定することができ、例えば、印字装置の立ち上げ時、あるいは、定期的に設定することもできる。キャリブレーションモードに設定されると、供給量演算部3は、キャリブレーションを実施する注目インクを印字するための設計値を印字特性DB11から抽出する。そして、供給量演算部3は、ステップS2で、印字特性DB11から抽出した設計値において少なくとも一つの浸透因子の設計値を変化させた複数の水準の検査印字値を決定する。この検査印字値は、所定の印字量で注目インクを供給すると共にインクの浸透に影響を及ぼす浸透因子を対応する設計値から変化させることで、所定の印字量で供給された注目インクの浸透の度合いを浸透因子の変化に応じて変動させることができる。この浸透因子の水準の違いにより生ずる注目インクの浸透度合いの変化から、注目インクの浸透特性を推測することになる。
また、キャリブレーション部2の計測装置12aおよび12bにより注目インクの発色について光学特性が計測されるため、複数の浸透特性のうち注目インクを印字する前または後で印字される他のインクを変化させる場合には、注目インクに対して、分光的に光吸収の重なりが少ないインクを他のインクとして選択するのが好ましい。色材を含まない浸透液を使用することがさらに望ましい。
このようにして、浸透因子の変化に応じて被印字物Pにおける注目インクの浸透の度合いを変化させることができる。
ここで、被印字物Pの印字面から裏面方向への浸透を表裏からの反射率計測で推測する例を示したが、細線を印字した際の浸透に伴う面方向への色材の広がり(細線のにじみ)を計測し、注目インクの浸透特性を推測することも可能である。この場合は、被印字物Pの一定の領域に均一なインクYの印字を行い、次いで注目インクであるインクMを細線状に印字する。印字された被印字物Pを発色処理後、細線の広がりを計測することになる。この場合の計測装置は、拡大機能を有するカメラを使用することが可能である。
このようにして、検査印字による注目インクの発色を計測した検査発色値は、計測装置12aおよび12bから補正量演算部13に出力される。補正量演算部13は、複数の浸透因子をそれぞれ対応する設計値とし且つ所定の印字量で注目インクを被印字物Pに供給したときの注目インクの発色を示す既知の標準発色値と、計測装置12aおよび12bにより計測された検査発色値とに基づいて、ステップS6で、設計値からの浸透特性の変動を求める。
具体的には、補正量演算部13は、図3に示すように、入力された検査発色値に基づいて、注目インクの浸透位置がそれぞれ変化された被印字物Pについて発色強度を求める。発色強度は、例えば、計測装置12aおよび12bにより計測された光学反射率から単位インク量当たりの光学濃度を算出することで求めることができる。また、発色強度は、K/S=(1−Rc)2/2Rcで表されるKU_MUの式に基づいて、K/Sで表すこともできる。なお、Kは色材による吸収強度、Sは被印字物からの光散乱強度、Rcは光学反射率をそれぞれ示している。あるいは、細線の広がりをカメラで計測し点広がり関数として浸透特性を求めることも出来る。
この発色強度には、浸透特性の変化に応じた被印字物Pにおける注目インクの浸透の度合いの変化が表れており、補正量演算部13は、発色強度に基づいて、検査印字における発色強度と複数の浸透特性の関係を求め、これにより設計値からの浸透特性の変動を求めることができる。
ここで、qiは注目インクの印字量、qpは注目インクの印字前に印字される他のインクの印字総量、qaは注目インクの印字後に印字されるインクの総量である。
また、f0(qi0,qp0,qa0)は、標準発色値であり、αは検査発色値の標準発色値からの変動量、dqiは注目インクの印字量の設計値からの変動量、dqp、dqaは注目インクの前および後で印字される他インクの印字総量の設計値からの変動量である。さらに、∂f/∂qiはdqiの比例定数(注目インクの印字量が設計値から変動することによる発色強度への影響度)、∂f/∂qp、∂f/∂qaはdqp、dqaの比例定数である。なお、これら比例定数は、浸透特性の一面を表すものであり、凝集剤の供給量、強度等、プロセスの条件に依存する。ここで、浸透因子は、注目インクの前および後で印字される他のインクの印字量のみを例として示している。
浸透因子を変えた複数水準の印字を行った、その発色結果から、(1)式のαに相当する標準発色値からの検査発色値のズレ量と、(1)式における∂f/∂qp、∂f/∂qa等、浸透因子の発色への寄与の程度を示す浸透特性を求めることが出来る。浸透特性の変動は、凝集剤の供給量、強度等のプロセス変動に起因する。
式(1)でqi,qp,qaと発色の関係、浸透特性の影響を表したが、実際にはqi,qp,qaの値に対応するColor値等を予め計測し、数値のテーブルとして変動特性DB14に保存しておくことが可能である。必要に応じて、テーブルから設計値を求めることが可能である。実際の検査印字による検査発色値と、テーブルから入手した標準発色値との違いが検査印字値の設計値からの変動として求めることが可能である。
また、式(1)をテーブルとして持つのではなく、数学的な機械学習を行うことで発色強度と浸透特性の関係を定式化し、これに基づいて浸透特性の変動を求めてもよい。この場合、式を浸透因子の多項式で表し、その係数の最適値を機械学習で求めることになる。
式(1)における評価値Colorは、注目色の発色強度について説明したが、浸透深さあるいは、細線の広がり関数を採用してもよい。
式(1)におけるColoriが、設計値の発色となるように各インクの印字量を補正する。すなわち、下記式(2)を満足する補正量を求めることになる。
このようにして算出された補正値は、補正量演算部13から供給量演算部3に出力され、供給量演算部3は、入力された補正値に基づいて、ステップS8で、印字モードで使用される設計値の補正を行う。そして、供給量演算部3が、補正計算に使用した演算式を印字特性DB11に新たに保存することにより、印字装置がキャリブレーションされる。
このようにして、印字特性DB11から抽出された補正された設計値は、供給量演算部3から制御部4に出力され、補正された印字量により、凝集剤供給装置6から凝集剤Aが供給されると共にインク供給装置7からインクY、M、CおよびKが供給される。
また、上記の実施の形態では、凝集剤供給装置6は、被印字物Pの移動方向に対してインク供給装置7の上流側に配置されたが、凝集剤供給装置6から供給された凝集剤Aによりインク供給装置7から供給されるインクY、M、CおよびKの浸透を制御することができればよく、これに限られるものではない。例えば、凝集剤供給装置は、インク供給装置7を挟むように配置することができる。また、被印字物Pの移動方向に対してインク供給装置7の下流側のみに凝集剤供給装置を配置することもできる。
ただし、注目インクの浸透度合いの変動は、凝集剤の供給量および注目インクが供給される前または後に被印字物Pに供給される他のインクの印字量による影響が大きいため、検査印字では凝集剤の供給量および他のインクの印字量を変化させることが好ましい。
また、上記の実施の形態では、式(1)および(2)において、1次の変動のみを考慮したが、例えば下記式(3)に示すように2次以上の高次の変動を考慮することもできる。
(∂2f/∂qi・∂qi)・dqi・dqj ・・・(3)
インクY、M、CおよびKとしては、アニオン性に荷電されたものが使用できる。例えば、アニオン性の界面活性剤で荷電された顔料分散物を含むと共にアニオン性の極性を有する荷電調節剤で調節されたインクを使用することができる。あるいはアニオン性染料水溶液を使用することができる。
なお、インクの粘度調整、粒子分散の安定のため、酢酸ビニル系、アクリル系、ポリエステル系あるいはウレタン系等の水性ポリマー分散液、PVAあるいはアルギン酸、リグニンスルフォン酸等の水性ポリマーをインクに添加することもできる。また、インクジェットヘッドの乾燥を防ぐ目的で、エチレングリコール、グリセリン等の水可溶性高沸点溶剤を添加することもできる。
このようにしてインクを調整し、染料、荷電調節剤、あるいは水性ポリマーなどを被凝集剤として機能させることができる。
また、凝集剤Aは、凝集に寄与する官能基の種類を選択、または凝集剤の働くpHをコントロールすることで凝集能を調整することもできる。例えば、カチオンポリマーの重合度を上げることで水中での移動速度を下げ、これによりカチオン基の密度が同じであっても凝集速度を遅くすることができる。
アニオン性界面活性剤およびアニオン性水性ポリマーとしては、水中で解離した時に陰イオンとなる基を含むものが使用され、例えば、カルボン酸、スルホン酸、あるいはリン酸構造を持つものが使用される。具体的には、カルボン酸系の荷電調節剤として脂肪酸塩やコール酸塩が、スルホン酸系の荷電調節剤として直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、モノアルキル硫酸塩、またはアルキルポリオキシエチレン硫酸塩が、リン酸構造を持つ荷電調節剤としてモノアルキルリン酸塩などが利用できる。一方、凝集剤Aに用いられる酸としては、マロン酸、クエン酸、酢酸等の有機酸、希塩酸などの無機酸が利用できる。
実施の形態1では、キャリブレーションモードにおいて、注目インクの浸透の度合いを変化させる浸透因子として、注目インクが供給される前または後に被印字物Pに供給される他のインクの印字量を選択した場合には、この他のインクを被印字物Pに直接印字して検査印字が実施されていたが、他のインクに換えて色材を含まない透明な浸透液を他のインクと同様に供給量を変化させて供給することにより検査印字を実施し、注目インクの浸透の度合いを変化させることができる。
例えば、図4に示すように、図1に示した実施の形態1の印字装置本体1において凝集剤供給装置6とインク供給装置7との間に浸透液B1を供給する浸透液供給装置21を配置すると共に、被印字物Pの移動方向に対してインク供給装置7の下流側に浸透液B2を供給する浸透液供給装置22を配置することができる。浸透液供給装置21は、注目インクが供給される前に被印字物Pに供給される他のインクの代わりに、浸透液B1を注目インクが供給される前に供給量を変えて被印字物Pに供給する。一方、浸透液供給装置22は、注目インクが供給された後に被印字物Pに供給されるインクの代わりに、浸透液B2を注目インクが供給された後に供給量を変えて被印字物Pに供給する。
このように、注目インクの浸透に影響を及ぼす他のインクに換えて透明な浸透液により検査印字を実施することにより、計測装置12aおよび12bにおける注目インクの発色強度の検出を阻害することがなく、注目インクの浸透の度合いを詳細に求めることができる。
また、浸透液の印字は検査印字に使用するだけでなく、印字モードにおける補正量計算にも使用することが出来る。補正量を計算する式(2)のdqp・dqaの中に浸透液の印字量を加えることで、連立方程式の解の自由度を増やすことが出来る。
上記の実施の形態1および2では、補正量演算部13は、検査印字により被印字物Pに印字された注目インクの発色を示す検査発色値が、予め求められた標準発色値に近づくような補正値を算出したが、検査印字の発色を示す検査発色値が所望の発色に近づくような補正値を浸透特性の変動に基づいて算出することもできる。
例えば、補正量演算部13は、実施の形態1と同様に、検査印字による発色強度の変動に基づいて上記式(1)を求め、この式(1)から発色強度に対する複数の浸透特性の変動量と比例定数をそれぞれ算出する。そして、設計値で印字した際の発色が所望の発色に近づくように、設計値からの複数の浸透特性の変動をそれぞれ求めることにより補正量が算出される。算出された補正値は、補正量演算部13から供給量演算部3に出力され、供給量演算部3が補正値に基づいて設計値の補正を行う。そして、供給量演算部3が、補正された設計値を印字特性DB11に新たに保存することにより、印字装置がキャリブレーションされる。
本実施の形態によれば、インクの供給量およびインクの浸透特性に基づいて補正値を算出するため、所望の発色により近い発色を示すように被印字物Pを印字することができる。
Claims (13)
- インクの浸透を制御するための処理剤を被印字物に供給して印字を行う印字装置をキャリブレーションするための方法であって、
被印字物に供給された注目インクの浸透に影響を及ぼす複数の浸透因子のうち少なくとも1つを対応する設計値から変化させることにより、前記注目インクの浸透の度合いを変化させる検査印字を行い、
被印字物の表側および裏側からの反射率をそれぞれ計測することにより、前記検査印字による前記注目インクの発色を示す検査発色値を計測し、
前記複数の浸透因子をそれぞれ対応する設計値として前記注目インクを前記被印字物に供給したときの前記注目インクの発色を示す既知の標準発色値と計測された検査発色値とに基づいて、前記注目インクの浸透特性の変動を求め、
求められた前記浸透性の変動に基づいて、前記複数の浸透因子の補正を行うキャリブレーション方法。 - インクの浸透を制御するための処理剤を被印字物に供給して印字を行う印字装置をキャリブレーションするための方法であって、
被印字物に供給された注目インクの浸透に影響を及ぼす複数の浸透因子のうち少なくとも1つを対応する設計値から変化させることにより、前記注目インクの浸透の度合いを変化させる検査印字を行い、
前記検査印字による前記注目インクの発色を示す検査発色値を計測し、
前記複数の浸透因子をそれぞれ対応する設計値として前記注目インクを前記被印字物に供給したときの前記注目インクの発色を示す既知の標準発色値と計測された検査発色値とに基づいて、前記注目インクの浸透特性の変動を求め、
求められた前記浸透性の変動に基づいて、前記複数の浸透因子の補正を行うに際し、
前記複数の浸透因子は、前記注目インクが供給される前に被印字物に供給されるインクの印字量、前記注目インクが供給された後に被印字物に供給されるインクの印字量、注目インクの印字時刻とその前後に供給されるインクの印字時刻の時間差、処理剤の供給量、乾燥及び発色処理の温度を含むキャリブレーション方法。 - 前記処理剤は、インクの粘度を上昇させるための凝集剤から構成され、
前記複数の浸透因子のうち少なくとも前記凝集剤の供給量を変化させることにより、前記注目インクの浸透の度合いを変化させる請求項2に記載のキャリブレーション方法。 - 前記複数の浸透因子のうち少なくとも前記注目インクが供給される前または後に被印字物に供給されるインクの印字量を変化させることにより、前記注目インクの浸透の度合いを変化させる請求項2または3に記載のキャリブレーション方法。
- 前記注目インクが供給される前または後に供給されるインクに換えて、色材を含まない浸透液の供給量を変化させることにより、前記注目インクの浸透の度合いを変化させる請求項2または3に記載のキャリブレーション方法。
- 被印字物は、光散乱能を有するインク受容部を含み、前記インク受容部に浸透したインクの浸透深さに応じて発色が変化する請求項1〜5のいずれか一項に記載のキャリブレーション方法。
- 被印字物の表側および裏側からの反射率をそれぞれ計測することにより、前記注目インクの検査発色値が計測される請求項2に記載のキャリブレーション方法。
- 被印字物を白バックまたは黒バックで光学測定することにより、前記注目インクの検査発色値が計測される請求項1〜6のいずれか一項に記載のキャリブレーション方法。
- 前記複数の浸透因子の補正は、前記浸透特性の変動に基づいて、前記検査発色値が前記標準発色値に近づくように行われる請求項1〜8のいずれか一項に記載のキャリブレーション方法。
- 前記複数の浸透因子の補正は、前記浸透特性の変動に基づいて、前記検査発色値が所望の発色に近づくように行われる請求項1〜8のいずれか一項に記載のキャリブレーション方法。
- 請求項1〜10のいずれか一項に記載のキャリブレーション方法で前記複数の浸透因子を補正し、補正された複数の浸透因子のもとで被印字物に前記注目インクを供給する印字方法。
- インクの浸透を制御するための処理剤を被印字物に供給して印字を行う印字装置をキャリブレーションするための装置であって、
被印字物に供給された注目インクの浸透に影響を及ぼす複数の浸透因子のうち少なくとも1つを対応する設計値から変化させることにより、前記注目インクの浸透度合いを変化させる検査印字を行った被印字物について、被印字物の表側および裏側からの反射率をそれぞれ計測することにより、前記注目インクの発色を示す検査発色値を計測する計測部と、
前記複数の透過因子をそれぞれ対応する設計値として前記注目インクを前記被印字物に供給したときの前記注目インクの発色を示す既知の標準発色値と前記計測部により計測された検査発色値とに基づいて、浸透特性の変動を求め、求められた前記浸透特性の変動に基づいて、前記複数の浸透因子の補正量を演算して補正を行う補正量演算部とを備えたキャリブレーション装置。 - 請求項12に記載のキャリブレーション装置を含み、
前記キャリブレーション装置により補正された複数の浸透因子のもとで被印字物に前記注目インクを供給する印字装置。
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