JP5892835B2 - ポリマーセメント用再乳化性合成樹脂粉末組成物、およびそれを用いてなるポリマーセメントモルタル - Google Patents
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また、近年、ブロッキング防止剤を配合した再乳化性合成樹脂粉末に関して、冬場の低温下でセメントと練り混ぜ、モルタルやコンクリートを施工する際に、硬化速度が極めて遅くなってしまい、その影響で、低温で施工されたモルタルやコンクリート塗装物の表面に、微細な粒子であるブロッキング防止剤が表面移行(マイグレーション)により浮き上がり、モルタルやコンクリートの表面を白化させてしまうという問題点が生じていた。
なお、本発明において、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを、(メタ)アクリロイルとはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。
まず、再乳化性合成樹脂粉末(A)の説明の前提として、PVA系樹脂[I]により合成樹脂が分散安定化された合成樹脂エマルジョンについて説明する。
かかる平均ケン化度が低すぎると安定的に重合が進行しにくく、重合が完結したとしてもエマルジョンの保存安定性が低下してしまう傾向がみられ、高すぎると再分散し難くなる傾向がみられる。
かかる平均重合度が低すぎると、乳化重合時の保護コロイド能力が不充分となり重合が安定的に進行しにくい傾向がみられ、高すぎると、重合時に増粘して反応系が不安定になり分散安定性が低下する傾向がある。
かかるPVA系樹脂[I]の使用量が少なすぎると、乳化重合の際の保護コロイド量が不足となって、重合安定性が不良となる傾向があり、使用量が多すぎると、合成樹脂エマルジョンの粘度が高まり安定性が低下する傾向がある。
これらの中でも、皮膜物性や強度増強に悪影響を与えず重合が容易な点で、過硫酸アンモニウムや過硫酸カリウムが好ましい。
かかるガラス転移温度が低すぎると接着強度が低下する傾向となり、高すぎるとジブチルフタレート等の可塑剤を多く入れて合成樹脂エマルジョンの造膜温度を低下させることになり、この結果、特に湿潤時の接着強度等が低下する傾向がある。
すなわち、対象となるエマルジョン等を、室温乾燥して皮膜を作製し、その皮膜を、沸騰水中およびアセトン中でそれぞれ8時間抽出を行い、グラフト化していない樹脂等を除去する。この場合の、抽出前の皮膜絶乾重量をw1(g)、抽出後の皮膜絶乾重量をw2(g)とし、下記の式(1)より求める。
上記、(B1)および(B2)は、該当する平均粒子径の無機微粒子をそれぞれ少なくとも1種含むものであればよく、一方または両方が2種以上の無機微粒子を含むものであってもよい。
かかる平均粒子径が大きすぎると、モルタルの流動性、緻密性、曲げ強度、圧縮強度が低下しやすくなる。
なお、かかる平均粒子径が小さすぎるとブロッキング防止性能や粉塵飛散による現場作業性が著しく低下する傾向がある。
また、無機微粒子(B1)としては、粒子径0.0001μm以下の粒子が20%以下であることが好ましく、粒子径10μm以上の粒子が5%以下であることが好ましい。
これらの中でも、タルク、クレー、無水珪酸、カオリン、硫酸バリウム、ドロマイトが好ましく、特に好ましくはタルク、クレー、無水珪酸、ドロマイトである。
上記無機微粒子(B1)の含有量が多すぎるとモルタルの流動性が低下したり、接着強度や曲げ強度、あるいは圧縮強度が低下する傾向があり、少なすぎると耐ブロッキング性能が低下し、製品貯蔵時にブロッキングを発生したり、噴霧乾燥時に製造設備への付着が発生したりする傾向がある。
かかる平均粒子径が小さすぎると、マイグレーション防止性能が低下し、モルタル表面の白化防止性能が得られにくい。
なお、かかる平均粒子径が大きすぎると見掛け密度の低い再乳化性粉末になったり、流動性に劣るモルタルが得られたりする傾向にある。
無機微粒子(B2)としては、粒子径0.1μm以下の粒子が10%以下であることが好ましく、粒子径500μm以上の粒子が10%以下であることが好ましい。
無機微粒子(B2)の含有量が多すぎるとモルタルの流動性が低下したり、接着強度や曲げ強度、あるいや圧縮強度が低下する傾向があり、少なすぎると低温養生時の白化防止性や耐ブロッキング防止性が低下する傾向がある。
無機微粒子(B2)に対する無機微粒子(B1)の配合割合が多すぎると冬場のモルタル表面の白化防止性能が低下する傾向があり、少なすぎると流動性が劣るモルタルが形成される傾向がある。
無機微粒子(B)の配合量が多すぎるとモルタルの流動性が低下したり、接着強度や曲げ強度、あるいや圧縮強度が低下する傾向があり、少なすぎると耐ブロッキング防止性が低下する傾向がある。
(1)合成樹脂エマルジョンに無機微粒子(B)を予め混合してから噴霧乾燥する方法、
(2)合成樹脂エマルジョンの噴霧乾燥時に、無機微粒子(B)を合成樹脂エマルジョンと別のノズルから噴霧して粉体化する方法、
(3)再乳化性合成樹脂粉末(A)にナウターミキサー等を用いて無機微粒子(B)を混合する方法、
等が挙げられるが、これらの中でも、(2)と(3)を組み合わせて、まず無機微粒子(B1)の全量(または一部)を方法(2)で添加し、次いで、方法(3)で無機微粒子(B2)(および無機微粒子(B1)の残り)を混合する方法が、無機微粒子(B2)の添加効果を充分に得られる点で好ましい。
〔再乳化性合成樹脂粉末(A−1)の製造〕
機攪拌機と還流冷却器とを備えた2Lサイズのステンレス製反応缶に、脱イオン水600部、保護コロイドとして、PVA(4%濃度溶液の20℃での粘度;5mPas、平均重合度500、平均ケン化度88モル%)63.7部、ラウリル硫酸ナトリウム(花王(社製、商品名「エマール10パウダー」)0.6部、エチレンオキシド/プロピレンオキシド−共重合物(クラリアント・ジャパン社製、商品名「Genapol PF 20」1.8部)、消泡剤(サンノプコ(株)社製、商品名「ノプコ8034」)0.4部、酢酸ナトリウム1.4部の混合物を仕込み、反応缶内部温度を70℃に加熱する(重合液)。更に酢酸ビニル318部、バーサチック酸ビニルエステル(ヘキシオンスペシャリティケミカルズ(株)社製、商品名「VeoVa10」)318部およびn−ブチルアクリレート71部よりなるモノマー混合物および2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)塩酸塩(和光純薬(株)社製、商品名「V−50」)1.2部を27.0部の脱イオン水に溶解した開始剤溶液を準備する。
モノマー混合液72部を70℃の内部温度に加熱した重合液に添加する。内部温度が再び70℃に達した後、開始剤溶液5.6部を添加し、そして初期重合を15分間実施する。モノマー混合物及びこれに平行して開始剤溶液19.8部を70℃にて3時間にわたって計量供給する。計量供給の後で残量の開始剤溶液を添加する。混合物は80℃に加熱し、その温度で1時間反応させる。80℃で1時間反応を経過した後、50℃に冷却し、t−ブチルハイドロパーオキサイド(日油(株)社製、商品名「パーブチルH69」)1部を脱イオン水6部に溶解した溶液および亜硫酸水素ナトリウム0.7部を15部の脱イオン水に溶解した溶液を15分間にわたって計量供給する。
その後に混合物を冷却し、脱イオン水158.0部にPVA(4%濃度溶液の20℃での粘度;5mPas、平均重合度500、平均ケン化度88.0モル%)38部を溶解した水溶液を加え、固形分濃度50%のエマルジョンを得る。
加水して不揮発分を40%に調整したエマルジョン100重量部を下記表1に示す種類の無機微粒子(B1)10重量部の存在下において、ノズル式の噴霧乾燥機により熱源を熱風として140℃の温風下にて噴霧乾燥させて再乳化性合成樹脂粉末(A−1)を得た。
機攪拌機と還流冷却器とを備えたセパブルフラスコに、脱イオン水135重量部と、保護コロイドとして、側鎖に1,2−ジオール結合を有するPVA(平均重合度300、平均ケン化度98.5モル%以上、側鎖の1,2−ジオール結合の含有量8モル%/日本合成化学工業(株)社製)10重量部を仕込み、反応缶を80℃に加熱して側鎖に1,2−ジオール結合を有するPVAを溶解させた。
次にこの反応缶の温度を70℃に保ち、ここにモノマー成分としてブチルアクリレート5.5重量部、メチルメタクリレートを4.5重量部を添加して、重合開始剤として過過硫酸アンモニウムを用いて、初期重合反応を1時間行った。次いで、残りのモノマー成分としてブチルアクリレート49.5重量部、メチルメタクリレート40.5重量部を反応缶に4時間にわたって計量添加し、重合開始剤として過硫酸アンモニウムを更に加えながら、滴下重合反応を進行させた。滴下重合終了後に1時間熟成させ、その後、平均重合度500の部分ケン化PVA(日本合成化学工業(株)社製、商品名「ゴーセノールGL05」)の20重量%水溶液をここに添加して十分攪拌した。これにより固形分約40%のエマルジョンを得た。不揮発分を40%に調整したエマルジョン100重量部を無機微粒子(B1−1)10重量部の存在下において、ノズル式の噴霧乾燥機により熱源を熱風として140℃の温風下にて噴霧乾燥させて再乳化性合成樹脂粉末(A−2)を得た。
圧力オートクレーブ中に脱イオン水135重量部と、ケン化度88モル%及びヘップラによる粘度4mPasを有するPVAの水溶液92重量部と酢酸ビニル227部とを仕込む。ギ酸によりpHを約4.0に調整し、次いで1%固形分濃度の硫酸アンモニウム鉄0.5部を添加する。オートクレーブを55℃に加熱し、圧力8バールにまでエチレン充填する。重合反応は3%のt−ブチルハイドロパーオキサイド溶液と5%のアスコルビン酸溶液を添加することによって開始させる。反応温度は120℃にコントロールする。温度を高めることでエチレン圧を増大させるが、85℃で38バール、120℃で55バールである。100℃に達したときの添加率は35%である。反応開始から30分後から60分後の間に、酢酸ビニル57重量部とケン化度88モル%及びヘップラによる粘度4mPasを有するPVAの水溶液35重量部を計量供給する。反応終了後、オートクレーブを冷却し、未反応のエチレンを排出する。その後、固形分濃度を55重量%に調整する。この55重量%濃度のエマルジョン100部に平均重合度500の部分ケン化ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)社製、商品名「ゴーセノールGL05」)20重量%水溶液を26重量部を添加し、不揮発分48%のエマルジョンを得る。不揮発分を40%に調整し、そのエマルジョン100重量部を無機微粒子(B1−1)10重量部の存在下において、ノズル式の噴霧乾燥機により熱源を熱風として140℃の温風下にて噴霧乾燥させて再乳化性合成樹脂粉末(A−3)を得た。
平均粒子径が10μm以下の無機微粒子(B1)として以下のものを用意した。
・(B1−1)タルクドロマイド(Palten taler Minerals GmbH & Co KG社製:商品名「SE-Super」:平均粒子径5〜8μm)
・(B1−2)ジクロロジメチルシランとシリカの反応物(エボニック デグサ ジャパン(株)社製:商品名「Sipernat D17:平均粒子径5.5〜5.6μm)
また、平均粒子径が10μm以上の無機微粒子(B2)として以下のものを用意した。
・(B2−1)非晶質シリカ(エボニック デグサ ジャパン(株)社製:商品名「Sipernat 50」:平均粒子径59〜62μm)
・(B2−2)非晶質シリカ(エボニック デグサ ジャパン(株)社製:商品名「Sipernat 22」:平均粒子径100μm)
・(B2−3)シリカとオルガノシラン複合(旭化成 ワッカーシリコーン(株)社製:商品名「BS−Powder A」:平均粒子径115μm)
・(B2−4)合成非晶質シリカ(株式会社トクヤマ社製:商品名「トクシールPR」:平均粒子径168〜170μm)
上記で得られた再乳化性合成樹脂粉末をナウターミキサーに導入し、ブロッキング防止剤(B2)およびブロッキング防止剤(B1)の残量を分割しながら添加し、全量添加後15分間攪拌して所望の再乳化性合成樹脂粉末を得た。
ガラス板に、内径45mm,高さ100mmのステンレス製の円筒容器Aを置き、再乳化性合成樹脂粉末組成物50gを入れ、次いで全重量500gになるように調節した外径45mm,高さ80mmのステンレス製の底付き円筒容器Bを容器A内にのせる。これを温度40℃,湿度60%に調整した恒温恒湿器内に水平になるように置き16時間静置する。次いで乾燥器より取り出し、室温で2時間放冷してから容器A,Bを静かにぬき取り再乳化性合成樹脂粉末組成物の固まり状態を調べた。評価基準は以下の通りであり、結果は下記の表1に示す。
(評価基準)
A…筒を抜き取るときに再乳化性合成樹脂粉末組成物が筒の中に残らず全くブロッキングしていないもの。あるいは、筒を抜き取るときに再乳化性合成樹脂粉末組成物が筒の中に残らないが、再乳化性合成樹脂粉末組成物の中に手で容易に崩れる凝集物がある。
B…筒を抜き取るときに再乳化性合成樹脂粉末組成物が筒の中に残っているが、再乳化性合成樹脂粉末組成物を筒の中から出すときに崩れて粉末状になる。
C…筒を抜き取るときに再乳化性合成樹脂粉末組成物が筒の中に残り、筒の中から出した再乳化性合成樹脂粉末組成物は円柱の形状を有しているが、再乳化性合成樹脂粉末組成物の上部をつかみ、持ち上げようとすると崩れる。
D…筒を抜き取るときに再乳化性合成樹脂粉末組成物が筒の中に残り、筒の中から出した固化した再乳化性合成樹脂粉末組成物は手で砕くことができない。又は筒を抜き取るときに再乳化性合成樹脂粉末組成物が筒の中に残り、筒の中から出した固化した再乳化性合成樹脂粉末組成物は手で砕けて粉末状になるものと手で砕くことができないものがある。
上記再乳化性合成樹脂粉末組成物50g、普通ポルトランドセメント500g、豊浦硅砂1500g、および、練り混ぜ水340gを混合し、ホバートミキサーで3分間攪拌することによりセメントモルタルを作製した。
上記セメントモルタルを、5℃雰囲気下で練り混ぜ、JIS A 1172で規定された、曲げ・圧縮試験用型枠で成型し、5℃雰囲気下で1ヶ月間養生後にモルタル表面の状態を観察した。
評価基準は以下の通りであり、結果は表1に示す。
(評価基準)
A…モルタル表面には白化部が全く観察されない。
B…モルタル表面に僅かに白化部が観察される。
C…明らかな白化部がモルタル表面に観察される。
D…モルタル全面に白化部が観察される。
上記セメントモルタルについて、JIS R 5201に準じてセメントモルタル流動性試験を行った。
このセメントモルタルの流動性は、フローテーブルの上に設置した底辺直径100mmのフローコーンに、上記セメントモルタルを詰め込み、フローコーンを抜き取った後、12mmの落下衝撃を15回与えてモルタルセメントの広がり直径を測定した。評価基準は以下の通りであり、結果は表1に示す。
(評価)
A…170mm以上
B…150mm以上170mm未満
C…100mm以上150mm未満
D…100mm未満
上記セメントモルタルについて、JIS A 1172に準じてセメントモルタル曲げ強度を測定した。また、セメントモルタルの曲げ強度の評価基準はJIS A 6203の規格に従った。
このセメントモルタルの曲げ強度試験は、JIS A 1172に規定された雰囲気下で上記セメントモルタルを調整し、断面40mm、長さ160mmの型枠に詰め込み、JIS A 6203で規定された養生時間を経た後に曲げ強度を測定した。
評価基準は以下の通りであり、結果は表1に示す。
(評価)
A…10Nmm2以上
B…8Nmm2以上10Nmm2未満
C…5Nmm2以上8Nmm2未満
D…5Nmm2未満
上記セメントモルタルについて、JIS A 1172に準じてセメントモルタル圧縮強度を測定した。また、セメントモルタルの圧縮強度の評価基準はJIS A 6203の規格に従った。
このセメントモルタルの圧縮強度試験は、JIS A 1172に規定された雰囲気下で上記セメントモルタルを調整し、断面40mm、長さ160mmの型枠に詰め込み、JIS A 6203で規定された養生時間を経た後に曲げ強度を測定した。
評価基準は以下の通りであり、結果は表1に示す。
(評価)
A…30Nmm2以上
B…24Nmm2以上30Nmm2未満
C…15Nmm2以上24Nmm2未満
D…15Nmm2未満
Claims (5)
- 再乳化性合成樹脂粉末(A)およびブロッキング防止性能を有する無機微粒子(B)を含有してなる再乳化性合成樹脂粉末組成物であり、無機微粒子(B)として、平均粒径が10μm以下の無機微粒子(B1)と平均粒径が10μmより大きい無機微粒子(B2)とを用いてなり、無機微粒子(B1)と(B2)の配合割合(重量比)が、(B1):(B2)=100:10〜100:39であり、無機微粒子(B2)の平均粒径が59〜170μmであることを特徴とするポリマーセメント用再乳化性合成樹脂粉末組成物。
- 再乳化性合成樹脂粉末(A)が、ポリビニルアルコール系樹脂[I]により合成樹脂が分散安定化された合成樹脂エマルジョンを乾燥してなる再乳化性合成樹脂粉末であることを特徴とする請求項1記載のポリマーセメント用再乳化性合成樹脂粉末組成物。
- 無機微粒子(B1)の平均粒径が0.1〜10μmであることを特徴とする請求項1または2記載のポリマーセメント用再乳化性合成樹脂粉末組成物。
- 無機微粒子(B2)が、非晶性合成シリカであることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のポリマーセメント用再乳化性合成樹脂粉末組成物。
- 請求項1〜4いずれか記載のポリマーセメント用再乳化性合成樹脂粉末組成物を用いてなるポリマーセメントモルタル。
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