JP5889499B2 - 車載用前照灯 - Google Patents

Description

この発明は、ＬＥＤを光源として、当ＬＥＤの発する光を車両の前方に投影する投影レンズを備えた車載用前照灯に関するものである。

地球温暖化を助長する二酸化炭素の排出量を削減する風潮と、発光効率の高い明るいＬＥＤが実現化される昨今の情勢の中において、車載用灯具の光源にも、従来のタングステンフィラメントによる電球に代替して、低電力のＬＥＤ（発光ダイオード、半導体光源）が普及し始めている。当ＬＥＤは、長寿命、かつ、一定の電流を供給する簡単な制御によって安定した明るさを発することができるため、車載用灯具の光源として好適であり、近年の高出力（高光度）化も加勢して、車載用前照灯の光源としても普及し始めている。

ところで、車載用前照灯、とりわけすれ違い灯には、一般の照明用とは異なる、対向車の運転者を眩惑しない、換言すれば、対向車の運転者の目に光を照射しない（対向車の運転者の目の位置を暗部にする）車載特有の配光が必要である。
この車載用前照灯において、ＬＥＤと投影レンズとの間に配光部材を設けてすれ違い灯用の配光を形成すると共に、ＬＥＤの発する光を有効に使用した従来例を下記する。

特許文献１に係る車両用前照灯は、当特許文献１の図４、図９に示されるように、光軸上の第１の反射面によってすれ違い灯用の配光を形成しながら、光軸の上部に設けた第２の反射面によってＬＥＤが上方に発する光を前方に導いて、有効に使用している。
この構成においては、ＬＥＤから下方に発する光は、第１の反射面で反射されるものの、その反射光は第２の反射面へ向かい、両反射面の間で繰り返し反射され減衰するため、ＬＥＤの発する光の有効活用に関しては改善の余地がある。

また、当特許文献１の図１１に示される構成では、ＬＥＤが前方に発した光を光学部材の凸レンズの機能を備えた入射面に入射し、ＬＥＤが上方に発した光を当入射面の内面である凹面状の反射面で反射して前方に導いている。
この構成においては、ＬＥＤから下方に発する光が漏洩するため、ＬＥＤの発する光の有効活用に関しては改善の余地がある。

特許文献２に係る車両用光学ユニットは、前照灯に関するものではないが、ＬＥＤから周囲に発する光を、逃すことなく出光面へ導く入光部と反射面を備えている。ただし、当構成のままでは、特異な配光を要求される前照灯用の配光を形成できない。

特開２０１０−４９８８６号公報 特開２０１２−１１９２７７号公報

上記特許文献１，２は以上のように構成されているので、すれ違い灯用の配光を形成しながら、ＬＥＤの発する光を有効に使用することができないという課題があった。

この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、すれ違い灯用の配光を形成しながら、ＬＥＤの発する光を有効に使用する車載用前照灯を提供することを目的とする。

この発明に係る車載用前照灯は、発光面を車両の前方に向けたＬＥＤと、ＬＥＤの発する光を前方に投影する投影レンズと、ＬＥＤと投影レンズとの間に設置され、すれ違い灯用の配光を形成する配光部材とを備え、ＬＥＤの発光面は、投影レンズの光軸より上側で光軸との間に間隙を設けて配置され、配光部材は、ＬＥＤに対向して配置され、ＬＥＤが前方に発した光を入射する第１入射面と、光軸上に配置され、投影レンズ側の端辺が投影レンズのＬＥＤ側の焦点位置に重なる第１反射面と、光軸より上側に配置され、ＬＥＤが上方に発した光を入射する第２入射面および当入射光を前方に反射する第２反射面と、光軸より上側に配置され、ＬＥＤが下方に発した光を入射する第３入射面および当入射光を前方に反射する第３反射面とを有するものである。

この発明によれば、すれ違い灯用の配光を形成する配光部材が、光軸より上側に配置されてＬＥＤが上方に発した光を入射する第２入射面および当入射光を前方に反射する第２反射面と、光軸より上側に配置されてＬＥＤが下方に発した光を入射する第３入射面および当入射光を前方に反射する第３反射面とを有することにより、すれ違い灯用の配光を形成しながら、ＬＥＤが広範囲に発する光を有効に使用する車載用前照灯を提供することができる。

この発明の実施の形態１に係る車載用前照灯の構成例を示す断面図である。 実施の形態１に係る車載用前照灯のうちのＬＥＤおよび配光部材の構成を示す側面図である。 実施の形態１に係る車載用前照灯から車両前方に照射されたすれ違い灯用照射光の様子を示す図である。 実施の形態１に係る車載用前照灯において投影レンズの焦点位置の配置例を説明する図である。 この発明の実施の形態２に係る車載用前照灯に用いる配光部材を第１入射面側から見た斜視図である。 この発明の実施の形態３に係る車載用前照灯の構成例を示す断面図である。 実施の形態３に係る車載用前照灯のうちのＬＥＤおよび配光部材の構成を示す側面図である。 実施の形態３に係る車載用前照灯の発光面の位置を説明する図である。 実施の形態３に係る車載用前照灯から車両前方に照射されたすれ違い灯用照射光の様子を示す図である。 この発明の実施の形態４に係る車載用前照灯に用いる配光部材の構成例を示す側面図である。 実施の形態４に係る車載用前照灯に用いる配光部材の別の構成例を示す側面図である。 この発明の実施の形態５に係る車載用前照灯に用いる配光部材を出射面側から見た斜視図である。 実施の形態５に係る車載用前照灯から車両前方に照射されたすれ違い灯用照射光の様子を示す図である。 実施の形態５に係る車載用前照灯に用いる配光部材の例を示す斜視図である。 この発明の実施の形態６に係る車載用前照灯の構成例を示す断面図である。 実施の形態６に係る車載用前照灯に用いる投影レンズの例を示す三面図である。 実施の形態６に係る車載用前照灯に用いる投影レンズの別の例を示す三面図である。

以下、この発明をより詳細に説明するために、この発明を実施するための形態について、添付の図面に従って説明する。
実施の形態１．
図１に示すように、本実施の形態１に係る車載用前照灯は、すれ違い灯用プロジェクタ式前照灯の一例であり、ＬＥＤ１と、ＬＥＤ１の発する光を車両前方に投影する投影レンズ２と、ＬＥＤ１と投影レンズ２との間に設置されすれ違い灯用の配光を形成する配光部材３と、ＬＥＤ１が発する熱を放熱するヒートシンクおよびＬＥＤ１と投影レンズ２と配光部材３を固定する固定部材を兼用する放熱兼固定部材４と、これらを収容するケース５と、前面レンズ６とを備える。なお、図１の構成例では、ＬＥＤ１の発する熱を放熱するための放熱フィン４ａを放熱兼固定部材４に設けている。この放熱フィン４ａをケース５の外へ露出させて、放熱性の向上を図ってもよい。

図２に、ＬＥＤ１と配光部材３の側面図を示す。
配光部材３は、透明な樹脂またはガラス等によって形成され、ＬＥＤ１の発光面１ａから前方に発した光を入射する第１入射面３ａと、ＬＥＤ１の発光面１ａから上方に発した光を入射する第２入射面３ｂと、ＬＥＤ１の発光面１ａから下方に発した光を入射する第３入射面３ｃとが、光軸より上側に配置される。また、光軸上に配置されて投影レンズ２側の端辺が投影レンズ２のＬＥＤ１側の焦点位置Ｆに重なる第１反射面３ｄと、第２入射面３ｂからの入射光を前方に反射する第２反射面３ｅと、第３入射面３ｃからの入射光を前方に反射する第３反射面３ｆとを形成している。
配光部材３に入射した光および内面で反射した光は、出射面３ｇから出射し、投影レンズ２で上下左右が反転されて車両の前方へ投影される。

図３は、車載用前照灯から車両前方に照射されたすれ違い灯用照射光の様子を示しており、照射光が明るい部分を濃く、暗い部分を薄く表現している。
すれ違い灯用の配光には、対向車の運転者を照らさないために、照射光の上側に暗部を設けることが必須であり、上側を暗く、下側（路面側）を明るくする必要がある。照射光の上側暗部と下側明部の境界線がカットオフラインである。

実施の形態１では、ＬＥＤ１から下方に発して投影レンズ２を経由してカットオフラインより上方に向かう光を、配光部材３の第１反射面３ｄによって反射することで、逆にカットオフラインより下方に導く（例えば、図２の光Ｌ１）。これにより、投影レンズ２から車両前方へ照射された光の上側を暗くすると同時に、下側を明るくして、すれ違い灯用の配光を形成する。また、この第１反射面３ｄの投影レンズ２の焦点位置Ｆに重なる端辺の形状が、投影レンズ２により車両の前方へ投影されて、カットオフラインの形状を形成する。

また、第２入射面３ｂの上部に第２反射面３ｅを設け、第３入射面３ｃの下部に第３反射面３ｆを設けることにより、上下方向に漏れる光を前方に導く（例えば、図２の光Ｌ２，Ｌ３）。これにより、ＬＥＤ１が発する光を有効利用できる。
その際、第３入射面３ｃの下部に第３反射面３ｆを設けるために、ＬＥＤ１の発光面を光軸から上方に移動している（図２の矢印Ａ）。そのため、車両前方に照射されたすれ違い灯用照射光は、図３に星印で示す最も明るいところが、光軸より下方にある。

ところで、当すれ違い灯用の照射光を、車両の直前から遠方まで同様な配光を形成するために、投影レンズ２の焦点位置Ｆに当配光部材３の投影レンズ２側の端辺が重なるように配置しているが、厳密に重なっている必要はなく、「近傍」であればよい。
ここで、図４を参照しながら、投影レンズ２の焦点位置Ｆの配置例を説明する。投影レンズ２のＬＥＤ１側の面から焦点位置Ｆまでの距離をＤ１、投影レンズ２の焦点位置Ｆから配光部材３の投影レンズ２側の端辺までの距離をＤ２とする。

上記の投影レンズ２の焦点位置Ｆと配光部材３の投影レンズ２側の端辺との位置関係を示す「近傍」とは、投影レンズ２の焦点位置Ｆに対して、配光部材３の投影レンズ２側の端辺を、投影レンズ２側あるいはＬＥＤ１側に、距離Ｄ１の１／１０以内（即ち、Ｄ２≦Ｄ１／１０）に配置することである。
また、好ましくは、投影レンズ２の焦点位置Ｆに対して、配光部材３の投影レンズ２側の端辺を、投影レンズ２側あるいはＬＥＤ１側に、距離Ｄ１の１／２０以内（即ち、Ｄ２≦Ｄ１／２０）に配置することである。
さらに、好ましくは、投影レンズ２の焦点位置Ｆに対して、配光部材３の投影レンズ２側の端辺を、投影レンズ２側あるいはＬＥＤ１側に、距離Ｄ１の１／５０以内（即ち、Ｄ２≦Ｄ１／５０）に配置することである。
ただし、図４では投影レンズ２の焦点位置Ｆに対して、配光部材３の投影レンズ２側の端辺をＬＥＤ１側に配置する場合の距離Ｄ２のみ示し、配光部材３の投影レンズ２側の端辺を投影レンズ２側に配置する場合の距離は図示していない。

投影レンズ２の焦点位置Ｆに対する配光部材３の投影レンズ２側の端辺の距離は、照射光の配光の要望に応じて決定すればよい。ちなみに、すれ違い灯用のカットオフラインを形成する配光部材３の投影レンズ２側の端辺を、投影レンズ２の焦点位置Ｆに近づけて設置した場合、車両前方の遠方で照射光のカットオフラインが鮮明になる一方、車両に近いところでは照射光のカットオフラインがぼやける。配光部材３の投影レンズ２側の端辺を投影レンズ２の焦点位置ＦからＬＥＤ１側に離して設置した場合、車両前方の近いところで照射光のカットオフラインが鮮明になる一方、車両前方の遠方で照射光のカットオフラインがぼやける。

以上より、実施の形態１によれば、プロジェクタ式の車載用前照灯は、ＬＥＤ１の発光面が、投影レンズ２の光軸より上側で光軸との間に間隙（図２の矢印Ａ）を設けて配置され、配光部材３が、ＬＥＤ１に対向して配置されＬＥＤ１が前方に発した光を入射する第１入射面３ａと、光軸上に配置され投影レンズ２側の端辺が投影レンズ２のＬＥＤ１側の焦点位置Ｆに重なりすれ違い灯用の配光を形成する第１反射面３ｄと、光軸より上側に配置されＬＥＤ１が上方に発した光を入射する第２入射面３ｂおよび当第２入射面３ｂより入射した光を前方に反射する第２反射面３ｅ、光軸より上側に配置されＬＥＤ１が下方に発した光を入射する第３入射面３ｃおよび当第３入射面３ｃより入射した光を前方に反射する第３反射面３ｆとを有するように構成した。このため、すれ違い灯用の配光を形成しながら、ＬＥＤが広範囲に発する光を有効に使用する車載用前照灯を提供することができる。よって、小形でも充分な明るさを照射できる車載用前照灯を実現できる。さらには、低電力のＬＥＤを使用することができるので、消費電力が少ないことで放熱部材が小形になり、小形の車載用前照灯を実現できる。

実施の形態２．
図５は、実施の形態２に係る車載用前照灯に用いる配光部材３−１の構成を示す斜視図である。車載用前照灯のその他の構成については、図１〜図３と同様である。
実施の形態２では、配光部材３−１の第２入射面３ｂおよび第３入射面３ｃそれぞれのＬＥＤ側の先端部を、不図示のＬＥＤ１の発光面１ａを囲む形状の入射面３ｈにする。これにより、ＬＥＤ１から上下方向に発する光だけでなく、左右方向に発する光も配光部材３−１に入射させることができる。従って、上下左右の広範囲に発するＬＥＤ１の光の漏洩を減らすことができ、ＬＥＤ１の発する光を効率よく使用することで、小形でも十分な明るさを発する車載用前照灯を実現できる。

なお、ＬＥＤ１の上下方向の第２入射面３ｂと第３入射面３ｃに左右方向の入射面を加えて入射面３ｈにするだけでなく、配光部材３−１の内面を、上下方向の第２反射面３ｅと第３反射面３ｆに左右方向の反射面を加えた反射面３ｉにして、左右方向に発する光も前方に反射させるようにしても構わない。

実施の形態３．
図６は、実施の形態３に係る車載用前照灯の構成を示す断面図、図７はＬＥＤ１と配光部材３−２の側面図である。図６および図７において、図１および図２と同一または相当の部分については同一の符号を付し説明を省略する。
実施の形態３では、配光部材３−２の第１入射面３ａの上部を下部より投影レンズ２に近づけること、つまり、前方へ（光軸から離れた部位が前方になるように）傾斜させる（図７の矢印Ｂ）。これにより、図８で説明するように、第１入射面３ａの入射光が屈折して、光軸の近傍にＬＥＤ１の虚像１−１（見かけ上の発光面）が形成される。また、光軸上には配光部材３−２の第１反射面３ｄが配置されているので、ＬＥＤ１の虚像１−１の光が反射して鏡像１−２が形成される。よって、ＬＥＤ１の上方への移動（図７の矢印Ａ）が相殺されて、光軸付近にＬＥＤを配置したことと同等になる。
なお、図８では配光部材３−２の第１入射面３ａを前方へ傾斜させることによる効果を説明するため配光部材３−２の形状を単純化している。

図９は、車載用前照灯から車両前方に照射されたすれ違い灯用照射光の様子を示しており、照射光が明るい部分を濃く、暗い部分を薄く表現している。実施の形態３では配光部材３−２の形状によって光軸付近にＬＥＤ１の虚像１−１と鏡像１−２を形成したので、車両前方に照射されたカットオフライン直下に、星印で示す最も明るいところがある。
図９の配光のように、カットオフラインの直下、即ち、遠方に届くところを明るく照射することで、車両の前方の視界が良好になり、前照灯として好ましい配光となる。

なお、ＬＥＤ１の発光面と光軸の離間が広いときは、配光部材３−２の第１入射面３ａの傾斜を大きくするか、配光部材３−２の光軸方向の厚さを厚くして（光の通過距離を長くして）、ＬＥＤ１が発する光を光軸側に屈折させて、見かけ上のＬＥＤ１の発光面下端辺を光軸に近づければよい。

また、配光部材３−２の出射面３ｇは、配光形状を調整するために、図７のような前方に傾斜する形状に限らず、図２に示したような垂直形状であってもよいし、さらには、面の中ほどを膨らませた凸レンズ状、あるいは面の中ほどをへこませた凹レンズ状（例えば、後述の図１４（ｂ）に示す出射面３ｇの形状）に形成しても構わない。

以上より、実施の形態３によれば、配光部材３−２の第１入射面３ａの上部を下部より投影レンズ２に近づけること、つまり、前方へ（光軸から離れた部位が前方になるように）傾斜するように構成したので、ＬＥＤ１が発する光を光軸側に屈折させて、見かけ上のＬＥＤの発光面の下端辺を光軸に近づけることができる。そのため、ＬＥＤ１の下方に第３入射面３ｃを設けるために、ＬＥＤ１の発光面と光軸との間に間隙を設けても、遠方まで明るい光を照射できる好ましい配光を損なうことがない。

実施の形態４．
図１０および図１１は、実施の形態４に係る車載用前照灯に用いる配光部材３−３，３−４の各側面図である。車載用前照灯のその他の構成については、図１〜図９と同様である。
図１０および図１１の例では、配光部材３−３，３−４それぞれの第１入射面３ａを、ＬＥＤ１側に凸の凸レンズ７の一部の面形状にしている。これにより、第１入射面３ａの凸レンズ面によって、ＬＥＤ１の発する光を集光することができ、好ましい配光の車載用前照灯を実現できる。
なお、第１入射面３ａを凸レンズ７の光軸より上側の形状にすることで、第１入射面３ａを前方へ傾斜させる（上部を下部より投影レンズ２に近づける）効果が得られる。

さらに、図１１の例では、配光部材３−４の第２反射面３ｅと第３反射面３ｆを、凹面にしている。なお、当形状は、反射面となる配光部材３−４の内面が凹面であって、当反射面を外側から観れば外形的には凸面である。
図１１のように反射面を凹面にすることによって、ＬＥＤ１の発する光を集光することができ、好ましい配光の車載用前照灯を実現できる。

実施の形態５．
図１２は、実施の形態５に係る車載用前照灯に用いる配光部材３−５を出射面３ｇ側から見た斜視図である。車載用前照灯のその他の構成については、図１〜図１１と同様である。
図１２の例では、配光部材３−５の第１反射面３ｄ（斜線領域）の投影レンズ２側の端辺のうち、車両の前方に向かって左側（歩道側）を水平にして水平部３ｊを成し、同右側（対向車線側）を下方に傾斜させて傾斜部３ｋを成す。

図１３は、車載用前照灯から車両前方に照射されたすれ違い灯用照射光の様子を示しており、照射光が明るい部分を濃く、暗い部分を薄く表現している。
図１２に示す配光部材３−５の水平部３ｊと傾斜部３ｋの端辺の形状によって形成される照射光の陰影が、投影レンズ２により上下左右反転して車両の前方へ投影されると、図１３に示すように、右側（対向車線側）のカットオフラインを水平にしながら、左側（歩道側）を高い位置まで照らすことのできるすれ違い灯用の配光を形成できる。
当然のことながら、右側通行用の前照灯においては、配光部材３−５の投影レンズ２側の端辺の形状を左右反転させ、車両の前方に向かって右側（歩道側）を水平部３ｊ、同左側（対向車線側）を傾斜部３ｋにする。

なお、配光部材３−５は、光軸側に第１反射面３ｄとなる平面を形成可能な形状であれば、図１２に示す以外の形状であっても構わない。配光部材３−５の変形例として、図１４（ａ）〜図１４（ｄ）を示す。
図１４（ａ）の配光部材３−６は、出射面３ｇを前方へ（光軸から離れた部位が前方になるように）傾斜させた形状である。このような配光部材３−６において、第１反射面３ｄの投影レンズ２側の端辺に水平部３ｊと傾斜部３ｋを形成すれば、図１３に示すようなカットオフラインとなる。

図１４（ｂ）の配光部材３−７は、出射面３ｇを曲面状にし、第１反射面３ｄの投影レンズ２側の端辺を円弧状にしたものである。投影レンズ２の収差によって、投影レンズ２を通過する光が平行光になる焦点に順ずる線（線状の焦点群）が、光軸に直交する直線にならず円弧状になるときに、同じ円弧状の端辺を形成した配光部材３−７を使用する。当円弧状の端辺の形状によって照射光に陰影が形成され、車両の中央から左右方向の広範囲のカットオフラインが鮮明なすれ違い灯用の上下の明暗部を形成することができる。

図１４（ｃ）の配光部材３−８は、図１４（ｂ）に示した配光部材３−７の出射面３ｇを図１４（ａ）と同様に、前方へ傾斜させた形状である。

図１４（ｄ）の配光部材３−９は、図１４（ｃ）に示した配光部材３−８の投影レンズ２側の端辺に水平部３ｊと傾斜部３ｋを形成した形状である。

なお、図１２および図１４（ａ）〜図１４（ｄ）では、上記実施の形態１の配光部材３に対して変形した形状を例示したが、配光部材の形状はこれに限定されるものではない。また、上記実施の形態２〜４等の配光部材についても同様の変形が可能である。

以上より、実施の形態５によれば、配光部材３−５の第１反射面３ｄは、投影レンズ２側の端辺のうちの歩道側が水平部３ｊ、対向車線側が下方に傾斜した傾斜部３ｋになっているので、対向車線側のカットオフラインを水平にして、対向車の運転者を照らすことなく、歩道側のカットオフラインを上にせり上げて、歩道の歩行者を照らすことができ、好ましい配光の車載用前照灯を実現できる。

実施の形態６．
実施の形態６では、車載用前照灯に用いる投影レンズの例をいくつか説明する。
図１５は、実施の形態６に係る車載用前照灯の構成を示す断面図である。図１５において、図６と同一または相当の部分については同一の符号を付し説明を省略する。
実施の形態６では、光軸方向に重ねて配置された照射側凸レンズ２ａとＬＥＤ側凸レンズ２ｂとで、一式の投影レンズ２−１を構成している。投影レンズを複数にして組み合わせることで、現実的な厚さの凸レンズ２ａ，２ｂを用いて焦点距離の短い投影レンズ２−１を構成できる。焦点距離の短い投影レンズを使用することによって、口径の小さな、奥行きの短い、好ましい形状の車載用前照灯を実現できる。

また、凸レンズ２ａ，２ｂそれぞれのレンズ形状と屈折量を操作することで、さらに好ましい車載用前照灯を実現できる。レンズ形状について図１５を、屈折量について図１７を参照して説明する。

図１５に示したように、投影レンズ２−１の光軸より下方には、配光部材３−２の第１反射面３ｄに遮られてＬＥＤ１の発する光が届かない部位Ｃ１，Ｃ２が存在する。凸レンズ２ａ，２ｂの当光が届かない部位Ｃ１，Ｃ２は無用であり、削除しても明るさおよび配光への影響がないので、当光が届かない部位Ｃ１，Ｃ２を削除しても構わない。
ここで、図１６に、凸レンズ２ａ，２ｂのうち、光が届かない部位Ｃ１，Ｃ２（即ち、光軸下側の一部）を削除して、光軸の下側を光軸の上側より小さくした形状を示す。当凸レンズ２ａ，２ｂを一式の投影レンズ２−１として使用することにより、車載用前照灯を上下方向に小形化できる。
もちろん、実施の形態１〜５に示した投影レンズ２も、光が届かない光軸下側の一部を削除して、光軸の下側を光軸の上側より小さくすることが可能である。

投影レンズは上下方向の屈折により、カットオフラインの上下の明暗を生成し、左右の屈折により、前照灯の照射光を左右に広げた配光を生成している。
その投影レンズとして、例えば図１７のように、上下方向と左右方向とで屈折量（レンズ面の曲率）が異なる楕円状の凸レンズ２ａ，２ｂを使用することにより、中央部の明るさを保ちながら、左右方向の広い範囲を明るくすることができる。

なお、図１７には、非球面レンズの一種である楕円状の凸レンズを示したが、レンズ面の上下方向の曲率と左右方向の曲率が異なることを説明するために、楕円形状の全様を示したもので、図１６のように不要な部分を削除することは問題なく、例えば外形が四角形等になっても構わない。
また、実施の形態１〜５に示した投影レンズ２としても、レンズ面の上下方向の曲率と左右方向の曲率が異なる凸レンズを使用可能である。

楕円状の凸レンズ２ａ，２ｂ、即ち、レンズ面の上下方向の曲率が左右方向の曲率より大きい凸レンズを使用することで、前方の明るさとカットオフラインの形状を保ちながら、左右方向の広範囲に光を照射することができる。よって、歩道の奥の歩行者、対向車線の路肩等を照らし出すことができる好ましい前照灯用配光を形成できる。

以上より、実施の形態６によれば、投影レンズ２−１を、光軸の方向に重ねて配置される複数の凸レンズ２ａ，２ｂによって構成したので、投影レンズの焦点距離が短くなり、口径の小さな、奥行きの短い、好ましい形状の車載用前照灯を実現できる。また、それぞれのレンズの形状と屈折量を操作することで、さらに好ましい車載用前照灯を実現できる。

また、実施の形態６によれば、投影レンズ２−１に、光軸の上側と下側の大きさが異なる凸レンズ２ａ，２ｂを用いることで、小形の車載用前照灯を実現できる。

また、実施の形態６によれば、投影レンズ２−１に、レンズ面の上下方向の曲率と左右方向の曲率が異なる凸レンズ２ａ，２ｂを用いることで、より好ましい配光の車載用前照灯を実現できる。

なお、実施の形態１〜６では、車載用前照灯の光源として可視光を発するＬＥＤ（発光ダイオード、半導体光源）を使用した例を示したが、レーザ光等の特定の光を発するＬＥＤと波長変換素子（蛍光体）とを組み合わせた光源でも構わない。

上記以外にも、本発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。

以上のように、この発明に係る車載用前照灯は、配光部材を用いて、ＬＥＤの発する光を効率よく車両前方へ照射するようにしたので、すれ違い灯用の前照灯などに用いるのに適している。

１ ＬＥＤ、１ａ 発光面、１−１ 虚像、１−２ 鏡像、２，２−１ 投影レンズ、２ａ，２ｂ，７ 凸レンズ、３，３−１〜３−９ 配光部材、３ａ 第１入射面、３ｂ 第２入射面、３ｃ 第３入射面、３ｄ 第１反射面、３ｅ 第２反射面、３ｆ 第３反射面、３ｇ 出射面、３ｈ 入射面、３ｉ 反射面、３ｊ 水平部、３ｋ 傾斜部、４ 放熱兼固定部材、４ａ 放熱フィン、５ ケース、６ 前面レンズ、Ｆ 投影レンズのＬＥＤ側の焦点位置。

Claims (9)

1. 発光面を車両の前方に向けたＬＥＤと、
   前記ＬＥＤの発する光を前方に投影する投影レンズと、
   前記ＬＥＤと前記投影レンズとの間に設置され、すれ違い灯用の配光を形成する配光部材とを備えたプロジェクタ式の車載用前照灯であって、
   前記ＬＥＤの発光面は、前記投影レンズの光軸より上側で光軸との間に間隙を設けて配置され、
   前記配光部材は、
   前記ＬＥＤに対向して配置され、前記ＬＥＤが前方に発した光を入射する第１入射面と、
   前記光軸上に配置され、前記投影レンズ側の端辺が前記投影レンズの前記ＬＥＤ側の焦点位置に重なる第１反射面と、
   前記光軸より上側に配置され、前記ＬＥＤが上方に発した光を入射する第２入射面および当入射光を前方に反射する第２反射面と
   前記光軸より上側に配置され、前記ＬＥＤが下方に発した光を入射する第３入射面および当入射光を前方に反射する第３反射面とを有することを特徴とする車載用前照灯。
2. 前記配光部材の、前記第２入射面および前記第３入射面それぞれの前記ＬＥＤ側の先端部は、前記ＬＥＤの発光面を囲む形状であることを特徴とする請求項１記載の車載用前照灯。
3. 前記配光部材の前記第１入射面は、上部が下部より前記投影レンズに近いことを特徴とする請求項１記載の車載用前照灯。
4. 前記配光部材の前記第１入射面は、前記ＬＥＤ側に凸の凸レンズ面の一部であって、上部が下部より前記投影レンズに近いことを特徴とする請求項１記載の車載用前照灯。
5. 前記配光部材の前記第２反射面および前記第３反射面それぞれは、平面あるいは凹面であることを特徴とする請求項１記載の車載用前照灯。
6. 前記配光部材の前記第１反射面は、前記投影レンズ側の端辺のうちの歩道側が水平で、対向車線側が下方に傾斜していることを特徴とする請求項１記載の車載用前照灯。
7. 前記投影レンズは、前記光軸の方向に重ねて配置される複数のレンズによって構成されていることを特徴とする請求項１記載の車載用前照灯。
8. 前記投影レンズは、前記光軸の上側と下側の大きさが異なることを特徴とする請求項１記載の車載用前照灯。
9. 前記投影レンズのレンズ面は、上下方向の曲率と左右方向の曲率が異なることを特徴とする請求項１記載の車載用前照灯。

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