[実施形態1]
図1は、実施形態1の消去装置の構成を示す概念図である。図2は、実施形態1における表示媒体を示す断面図である。図3は、実施形態1における消去装置と表示媒体との嵌合を説明する図である。図4は、実施形態1における信号生成部と表示媒体との接続を説明する図である。以下、図1乃至図4に基づき説明する。
本実施形態1の消去装置7aは、光書き込み型の表示媒体11に用いられ、表示媒体11に記録された画像パターンを消去するものである。表示媒体11は、第1表示機能層12と第2表示機能層13とを有する。第1表示機能層12は、光導電層18と二層からなるコレステリック液晶層16,17とを含む積層体12’が、一対の電極141,142間に挟持された構成である。第2表示機能層13は、光導電層21と一層からなるコレステリック液晶層20とを含む積層体13’が、一対の電極143,144間に挟持された構成である。そして、消去装置7aは信号生成部8aを備えている。信号生成部8aは、表示媒体11に記録された画像パターンを消去するための消去電圧V0を、一対の電極141,142間及び一対の電極143,144間にそれぞれ印加する。
ここで、消去電圧V0は、次の二つの条件を同時に満たすように設定されている。第1表示機能層12において、一対の電極141,142間に消去電圧V0が印加されたときにコレステリック液晶層16,17に印加される電圧をそれぞれV1,V2とし、コレステリック液晶層16,17がホメオトロピック配向に変化するしきい値電圧をそれぞれVth1,Vth2とする。このとき、電圧V1,V2がコレステリック液晶層16,17の各抵抗及び光導電層18の抵抗のみによって決まる状態にあって、すなわち、消去電圧V0が印加されてから十分な時間が経過した状態にあって、V1≧Vth1かつV2≧Vth2が成り立つ(条件1)。第2表示機能層13において、一対の電極143,144間に消去電圧V0が印加されたときにコレステリック液晶層20に印加される電圧をV1’とし、コレステリック液晶層20がホメオトロピック配向に変化するしきい値電圧をVth1’とする。このとき、電圧V1’がコレステリック液晶層20の抵抗及び光導電層21の抵抗のみによって決まる状態にあって、すなわち、消去電圧V0が印加されてから十分な時間が経過した状態にあって、V1’≧Vth1’が成り立つ(条件2)。
本実施形態1によれば、積層体12’に消去電圧V0を印加した場合に、コレステリック液晶層16,17に印加される電圧V1,V2がコレステリック液晶層16,17の抵抗及び光導電層18の抵抗のみによって決まることを明確にし、その電圧V1,V2がしきい値電圧Vth1,Vth2を確実に越えるように、消去電圧V0を設定する。なおかつ、積層体13’に消去電圧V0を印加する場合に、コレステリック液晶層20に印加される電圧V1’がコレステリック液晶層20の抵抗及び光導電層21の抵抗のみによって決まることを明確にし、その電圧V1’がしきい値電圧Vth1’を確実に越えるように、消去電圧V0を設定する。これにより、その消去電圧V0を必要最低限の値とすることができるので、低消費電力化を達成できる。したがって、光書き込み型の表示媒体11の携帯性を損ねることのない、消去の操作に必要な消費電力が抑制された消去装置7aを提供できる。
例えば、コレステリック液晶層16,17,20の各抵抗が等しく、光導電層18,21の各抵抗が等しく、2Vth1≧Vth1’かつ2Vth2≧Vth1’、とみなせる場合は、次のように消去電圧V
0を設定してもよい。この場合は、第1表示機能層12において、n=2、コレステリック液晶層16,17の各抵抗をR
LC、光導電層18の抵抗をR
PC、しきい値電圧Vth1,Vth2のうちの最大値をV
thmaxとしたとき、次の式(1)が成り立つように、消去電圧V
0を設定する。
・・・(1)
このとき、第2表示機能層13において、n=1、コレステリック液晶層20の抵抗をR
LC、光導電層21の抵抗をR
PC、しきい値電圧Vth1’をV
thmaxとしても、上記式(1)が成り立つ。なお、消去電圧V
0は、式(1)の右辺と等しいとき、最も低い電圧となる。
また、消去電圧V0を印加する時間も含めて、消去電圧V0を次のように設定してもよい。
ここで、消去電圧V0は、次の二つの条件を同時に満たすように設定されている。第1表示機能層12において、電圧V1,V2が、一対の電極141,142間に消去電圧V0を印加した直後にコレステリック液晶層16,17の各静電容量及び光導電層18の静電容量のみによって決まり、その後コレステリック液晶層16,17の各抵抗及び光導電層18の抵抗のみによって決まる値に近づく状態にあって、消去電圧V0を印加してからコレステリック液晶層16,17がホメオトロピック配向に変化するまでのすべての時間においてV1≧Vth1かつV2≧Vth2が成り立つ(条件3)。第2表示機能層13において、電圧V1’が、一対の電極143,144間に消去電圧V0を印加した直後にコレステリック液晶層20の静電容量及び光導電層21の静電容量のみによって決まり、その後コレステリック液晶層20の抵抗及び光導電層21の抵抗のみによって決まる値に近づく状態にあって、消去電圧V0を印加してからコレステリック液晶層20がホメオトロピック配向に変化するまでのすべての時間においてV1’≧Vth1’が成り立つ(条件4)。このとき、条件3、4に加えて、前述の条件1、2も満たすように、消去電圧V0を設定してもよい。
つまり、積層体12’に消去電圧V0を印加した場合に、コレステリック液晶層16,17に印加される電圧V1,V2が、消去電圧V0の印加直後にコレステリック液晶層16,17の静電容量及び光導電層18の静電容量のみによって決まり、その後、コレステリック液晶層16,17の抵抗及び光導電層18の抵抗のみによって決まる値に近づくことを明確にしている。そして、消去電圧V0を印加してからコレステリック液晶層16,17がホメオトロピック配向に変化するまでのすべての時間において、その電圧V1,V2がしきい値電圧Vth1,Vth2を確実に越えるように、消去電圧V0を設定する。なおかつ、積層体13’に消去電圧V0を印加した場合に、消去電圧V0の印加直後にコレステリック液晶層20の静電容量及び光導電層21の静電容量のみによって決まり、その後、コレステリック液晶層20の抵抗及び光導電層21の抵抗のみによって決まる値に近づくことを明確にしている。そして、消去電圧V0を印加してからコレステリック液晶層20がホメオトロピック配向に変化するまでのすべての時間において、その電圧V1’がしきい値電圧Vth1’を確実に越えるように、消去電圧V0を設定する。これにより、その消去電圧V0をより正確に必要最低限の値とすることができるので、低消費電力化を更に達成できる。したがって、光書き込み型の表示媒体11の携帯性を損ねることのない、消去の操作に必要な消費電力が更に抑制された消去装置7aを提供できる。
例えば、コレステリック液晶層16,17,20の各抵抗及び各静電容量がそれぞれ等しく、光導電層18,21の各抵抗及び各静電容量がそれぞれ等しく、2Vth1≧Vth1’かつ2Vth2≧Vth1’、とみなせる場合は、次のように消去電圧V
0を設定してもよい。この場合は、第1表示機能層12において、n=2、コレステリック液晶層16,17の各抵抗をR
LC、光導電層18の抵抗をR
PC、コレステリック液晶層16,17の各静電容量をC
LC、光導電層18の静電容量をC
PC、しきい値電圧Vth1,Vth2のうちの最大値をV
thmaxとし、ホメオトロピック配向に変化するのに必要な時間をt
H、第1表示機能層12の充放電時定数をτとしたとき、次の式(2)が成り立つように、消去電圧V
0を設定する。
・・・(2)
このとき、第2表示機能層13において、n=1、コレステリック液晶層20の抵抗をR
LC、光導電層21の抵抗をR
PC、コレステリック液晶層20の静電容量をC
LC、光導電層21の静電容量をC
PC、しきい値電圧Vth1’をV
thmaxとし、ホメオトロピック配向に変化するのに必要な時間をt
H、第2表示機能層13の充放電時定数をτとしても、上記式(2)が成り立つ。なお、消去電圧V
0は、式(2)の右辺と等しいとき、最も低い電圧となる。
上記式(1)及び式(2)で示した消去電圧V0の設定に必要なコレステリック液晶層16,17,20の各抵抗RLC及び各静電容量CLC、並びに光導電層18,21の各抵抗RPC及び各静電容量CPCは、例えばLCRメータのようなインピーダンス測定器を用いて、測定周波数100Hz以下で測定された値である。
消去電圧V0は、交流電圧の振幅として設定してもよいが、直流電圧とすることが望ましい。直流電圧とした場合は、静電容量成分に流れる電流によって配線で消費される電力が、低減するからである。また、消去装置7aは、表示媒体11に機械的に装着するための嵌合部10aと、表示媒体11に電気的に接続するための端子部9aと、を更に備えてもよい。この場合は、表示媒体11に対する消去装置7aの着脱が容易になるので、利便性を向上できる。また、本実施形態1の表示媒体11は、本実施形態1の消去装置7aを備えているので、低消費電力化を達成できる。
実施形態1ではn=1及びn=2の場合を例に挙げたが、nの値に制限はない。例えば、mを1からnまでのいずれかの整数とし、一対の電極間に消去電圧が印加されたときにm層目のコレステリック液晶層に印加される電圧をVmとし、m層目のコレステリック液晶層がホメオトロピック配向に変化するしきい値電圧をVthmとしたとき、Vmがn層からなるコレステリック液晶層の各抵抗及び光導電層の抵抗のみによって決まる状態にあって、m=1〜nのすべてにおいてVm≧Vthmが成り立つように、消去電圧が設定された、としてもよい。同様に、Vmが、一対の電極間に消去電圧を印加した直後にn層からなるコレステリック液晶層の各静電容量及び光導電層の静電容量のみによって決まり、その後n層からなるコレステリック液晶層の各抵抗及び光導電層の抵抗のみによって決まる値に近づく状態にあって、消去電圧を印加してからm層目のコレステリック液晶層がホメオトロピック配向に変化するまでのすべての時間においてかつm=1〜nのすべてにおいてVm≧Vthmが成り立つように、消去電圧が設定された、としてもよい。
次に、実施形態1の消去方法について説明する。
実施形態1の消去方法は、実施形態1の消去装置7aの動作を方法の発明として捉えたものである。すなわち、実施形態1の消去方法は、第1表示機能層12及び第2表示機能層13を有する光書き込み型の表示媒体11に対して、表示媒体11に記録された画像パターンを消去する方法である。まず、消去電圧V0を、次の二つの条件を同時に満たすように設定する。第1表示機能層12において、一対の電極141,142間に消去電圧V0が印加されたときにコレステリック液晶層16,17に印加される電圧をそれぞれV1,V2とし、コレステリック液晶層16,17がホメオトロピック配向に変化するしきい値電圧をそれぞれVth1,Vth2とする。このとき、電圧V1,V2がコレステリック液晶層16,17の各抵抗及び光導電層18の抵抗のみによって決まる状態にあって、すなわち、消去電圧V0が印加されてから十分な時間が経過した状態にあって、V1≧Vth1かつV2≧Vth2が成り立つ(条件1)。第2表示機能層13において、一対の電極143,144間に消去電圧V0が印加されたときにコレステリック液晶層20に印加される電圧をV1’とし、コレステリック液晶層20がホメオトロピック配向に変化するしきい値電圧をVth1’とする。このとき、電圧V1’がコレステリック液晶層20の抵抗及び光導電層21の抵抗のみによって決まる状態にあって、すなわち、消去電圧V0が印加されてから十分な時間が経過した状態にあって、V1’≧Vth1’が成り立つ(条件2)。続いて、消去電圧V0を一対の電極141,142間及び一対の電極143,144間に印加することにより、画像パターンを消去する。なお、上記式(1)を満たすように消去電圧V0を設定してもよい。
また、消去電圧V0を印加する時間も含めて、消去電圧V0を次のように設定してもよい。ここで、消去電圧V0は、次の二つの条件を同時に満たすように設定する。第1表示機能層12において、電圧V1,V2が、一対の電極141,142間に消去電圧V0を印加した直後にコレステリック液晶層16,17の各静電容量及び光導電層18の静電容量のみによって決まり、その後コレステリック液晶層16,17の各抵抗及び光導電層18の抵抗のみによって決まる値に近づく状態にあって、消去電圧V0を印加してからコレステリック液晶層16,17がホメオトロピック配向に変化するまでのすべての時間においてV1≧Vth1かつV2≧Vth2が成り立つ(条件3)。第2表示機能層13において、電圧V1’が、一対の電極143,144間に消去電圧V0を印加した直後にコレステリック液晶層20の静電容量及び光導電層21の静電容量のみによって決まり、その後コレステリック液晶層20の抵抗及び光導電層21の抵抗のみによって決まる値に近づく状態にあって、消去電圧V0を印加してからコレステリック液晶層20がホメオトロピック配向に変化するまでのすべての時間においてV1’≧Vth1’が成り立つ(条件4)。このとき、条件3、4に加えて、前述の条件1、2も満たすように、消去電圧V0を設定してもよい。なお、上記式(2)を満たすように消去電圧V0を設定してもよい。
本実施形態1の消去方法によれば、本実施形態1の消去装置7aと同様の作用及び効果を奏する。
次に、実施形態1の消去信号設定方法について説明する。
実施形態1の消去信号設定方法は、実施形態1の消去装置7aで用いられる消去電圧V0の設定方法である。まず、第1表示機能層12において、一対の電極141,142間に消去電圧V0が印加されたときにコレステリック液晶層16,17に印加される電圧をそれぞれV1,V2とし、コレステリック液晶層16,17がホメオトロピック配向に変化するしきい値電圧をそれぞれVth1,Vth2とする。第2表示機能層13において、一対の電極143,144間に消去電圧V0が印加されたときにコレステリック液晶層20に印加される電圧をV1’とし、コレステリック液晶層20がホメオトロピック配向に変化するしきい値電圧をVth1’とする。続いて、消去電圧V0を、次の二つの条件を同時に満たすように設定する。電圧V1,V2がコレステリック液晶層16,17の各抵抗及び光導電層18の抵抗のみによって決まる状態にあって、すなわち、消去電圧V0が印加されてから十分な時間が経過した状態にあって、V1≧Vth1かつV2≧Vth2が成り立つ(条件1)。電圧V1’がコレステリック液晶層20の抵抗及び光導電層21の抵抗のみによって決まる状態にあって、すなわち、消去電圧V0が印加されてから十分な時間が経過した状態にあって、V1’≧Vth1’が成り立つ(条件2)。なお、上記式(1)を満たすように消去電圧V0を設定してもよい。
また、消去電圧V0を印加する時間も含めて、消去電圧V0を次のように設定してもよい。ここで、消去電圧V0は、次の二つの条件を同時に満たすように設定する。第1表示機能層12において、電圧V1,V2が、一対の電極141,142間に消去電圧V0を印加した直後にコレステリック液晶層16,17の各静電容量及び光導電層18の静電容量のみによって決まり、その後コレステリック液晶層16,17の各抵抗及び光導電層18の抵抗のみによって決まる値に近づく状態にあって、消去電圧V0を印加してからコレステリック液晶層16,17がホメオトロピック配向に変化するまでのすべての時間においてV1≧Vth1かつV2≧Vth2が成り立つ(条件3)。第2表示機能層13において、電圧V1’が、一対の電極143,144間に消去電圧V0を印加した直後にコレステリック液晶層20の静電容量及び光導電層21の静電容量のみによって決まり、その後コレステリック液晶層20の抵抗及び光導電層21の抵抗のみによって決まる値に近づく状態にあって、消去電圧V0を印加してからコレステリック液晶層20がホメオトロピック配向に変化するまでのすべての時間においてV1’≧Vth1’が成り立つ(条件4)。このとき、条件3、4に加えて、前述の条件1、2も満たすように、消去電圧V0を設定してもよい。なお、上記式(2)を満たすように消去電圧V0を設定してもよい。
本実施形態1の消去信号設定方法によれば、本実施形態1の消去装置7aと同様の作用及び効果を奏する。
以下、図面を参照して、実施形態1について更に詳細に説明する。なお、前述の消去電圧V0については、消去信号の振幅V0と言い換える。また、静電容量は、単に「容量」という。
実施形態1の消去装置7aは、図1で示したように信号生成部8aと、端子部9aと、嵌合部10aとを備えている。また、図2に示したように、表示媒体11は、第1表示機能層12と第2表示機能層13とから構成される。第1表示機能層12は、電極141が成膜されたPET等の透明基板151上に、緑色の光を反射するコレステリック液晶層「以下「G層」という。)16と、青色の光を反射するコレステリック液晶層(以下「B層」という。)17と、光導電層18と、遮光層19とが積層されてなる。また、第2表示機能層13は、電極143が成膜されたPET等の透明基板152上に、赤色の光を反射するコレステリック液晶層(以下「R層」という。)20と、光導電層21と、遮光層22とが積層されてなる。第1表示機能層12の下部の透明基板152と第2表示機能層13の上部の透明基板152とは、共通化されている。第1表示機能層12には緑色と青色の光を反射するG層16及びB層17が含まれ、第2表示機能層13には赤色の光を反射するR層20が含まれているので、各々のコレステリック液晶層の配向を制御することで、表示媒体11はカラー表示が可能となる。なお、電極141〜144は、透明導電膜から成る。遮光層19,22は、特定の波長の光を遮り、他の光を透過させる機能を有する。
まず、消去装置7aの端子部9aと嵌合部10aについて説明する。図3は、表示媒体11の電極取り出し部24に消去装置7aが取り付けられたときの様子を表している。表示媒体11の端部には、画像パターンを書き込むための信号を印加する電極取り出し部241〜244が、第1表示機能層12及び第2表示機能層13に対応して設けられる。第1表示機能層12及び第2表示機能層13にはそれぞれ一対の電極があるので、端子部9aも四つの端子部271〜274を有する。これに対応して、電極取り出し部241〜244は計四つある。また、電極取り出し部244付近には突起25が設けられる。消去装置7aに備えられた嵌合部10aは、図3で示すように、凹部26を有する形状を有する。表示媒体11の突起25と嵌合部10aの凹部26とがかみ合うことで、消去装置7aの位置が決められ、消去装置7aの端子部271〜274と、表示媒体11の電極取り出し部241〜244とが確実に接触する。信号生成部7aからの消去信号が端子部271〜274を通して表示媒体11に印加され、表示媒体11の画像パターンが消去される。なお、嵌合部10aの形状は、消去信号印加時に消去装置7aの端子部271〜274と表示媒体11の電極取り出し部241〜244との確実なコンタクトが実現できるものであれば良いので、特に限定されるものではない。
次に、信号生成部8aについて説明する。信号生成部8aは消去信号を生成する。例えば、信号生成部8aは、矩形波電圧や直流電圧を出力する一般的な電源であり、その出力電圧及び出力時間を任意の値に設定できる機能を有する。消去信号は、G層16、B層17及びR層20の全領域をホメオトロピック配向に変化させるしきい値電圧以上の電圧が、G層16、B層17及びR層20に印加されるような電圧値である。図4は、信号生成部8aと第1表示機能層12及び第2表示機能層13との接続を表した図である。信号生成部8aからの消去信号(振幅V0)が、端子部271〜274を経由して第1表示機能層12及び第2表示機能層13に並列に印加される。
以下、コレステリック液晶層の消去動作について詳細に説明する。図5はコレステリック液晶層の配向変化の挙動を表したグラフである。グラフの横軸はコレステリック液晶層に印加される電圧を、縦軸は印加電圧を急激にゼロにしたときの反射率を表す。また、点線はコレステリック液晶層の初期状態がプレーナ配向であるとき、実線はフォーカルコニック配向であるときの、それぞれの配向変化の挙動である。
初期状態がプレーナ配向である場合、印加電圧をゼロから大きくしていくと、コレステリック液晶層の一部がフォーカルコニック配向に変化する。フォーカルコニック配向は入射光を透過させるので、反射率は減少する。図5のAの電圧が印加されると、コレステリック液晶層の全てが完全にフォーカルコニック配向に変化し、反射率は最小となる。さらに、印加電圧を大きくしていくと、コレステリック液晶層の一部がホメオトロピック配向に変化する。このホメオトロピック配向は、入射光を透過させる状態で反射率が小さくなるものの、電圧印加時にのみ現れる配向である。つまり、ホメオトロピック配向は、印加されている電圧が急激に除去された場合、螺旋構造が復元されプレーナ配向に緩和する。その結果、反射率は大きくなる。図5のB1以上の電圧が印加されると、コレステリック液晶層の全てが完全にホメオトロピック配向に変化する。したがって、電圧除去後、コレステリック液晶層の全てがプレーナ配向に緩和し、反射率は電圧印加前と同じ大きさになる。
一方、初期状態がフォーカルコニック配向である場合、印加電圧をゼロから大きくしていっても、コレステリック液晶層はフォーカルコニック配向のままであるので、反射率は低い状態が維持される。さらに印加電圧をAの電圧から大きくしていくと、コレステリック液晶層の一部がホメオトロピック配向に変化し、反射率は大きくなる。図5のB2以上の電圧が印加されると、コレステリック液晶層の全てがホメオトロピック配向に変化し、初期状態がプレーナ配向であるときと同様に、コレステリック液晶層の全てがプレーナ配向に緩和する。したがって、グラフに示したように、反射率は大きくなる。
ホメオトロピック配向は、電圧印加前の配向に関らず、コレステリック液晶に特有の螺旋構造が解かれた状態になるため、リセット操作として利用される。また、ホメオトロピック配向は、電圧印加後に必ずしもプレーナ配向になるとは限らず、印加電圧がゆっくりと除去された場合は、フォーカルコニック配向に変化する。
図6[1]は、表示媒体に記録された画像パターンの一例であり、コレステリック液晶層が反射状態、すなわち、プレーナ配向である背景(白)に、透過状態、すなわち、フォーカルコニック配向である矢印(黒)が表示された様子を表す。画像パターンを消去する方法として、コレステリック液晶層の全領域をフォーカルコニック配向に変化させて透過状態の画面とする方法と、コレステリック液晶層の全領域をホメオトロピック配向に変化させるリセット操作を行う方法とが考えられる。
透過状態の画面とするためには、図5のAの電圧をコレステリック液晶層に印加すればよい。しかし、印加電圧がわずかに変化した場合、残像が発生する可能性がある。図6[2]は、図6[1]の画像パターンにおける残像の発生を説明する図である。背景部分aは、プレーナ配向であるため、図5のAの電圧が印加されることで、透過状態のフォーカルコニック配向に変化し、矢印部分bと同じ配向になる。しかし、背景部分aは、Aの電圧からわずかに小さい電圧が印加されると、完全なフォーカルコニック配向に変化することができず、反射率が矢印部分bに比べてやや高くなる。その結果、図6[2]で示したように、消去画面における背景部分aと矢印部分bとにわずかなコントラスト差が発生してしまう。
リセット操作を行うには、コレステリック液晶層がホメオトロピック配向に変化する電圧を印加すればよい。図6[3]は、図6[1]の画像パターンでの消去動作を説明する図である。図5のB1の電圧が印加された場合、初期状態がプレーナ配向である部分、すなわち、背景部分cは完全にホメオトロピック配向に変化し、リセット操作が行われる。しかし、初期状態がフォーカルコニック配向である部分、すなわち、矢印部分dは、一部のコレステリック液晶層がホメオトロピック配向に変化せず、リセット操作が行われない。したがって、図6[3]の≪1≫に示すように、消去画面において背景部分cと矢印部分dとにわずかなコントラスト差が発生してしまう。しかし、図5のB2の電圧が印加された場合、背景部分c及び矢印部分dともに完全なホメオトロピック配向に変化し、リセット操作が行われ、図6[3]の≪2≫に示すように消去画面に残像は発生しない。このB2の電圧、がホメオトロピック配向に変化するしきい値電圧となる。
以下、本実施形態1の信号生成部8aが生成する消去信号について説明する。本実施形態の消去信号は振幅V0の交流信号である。図7は、コレステリック液晶層であるG層16、B層17、R層20の配向変化の挙動を示したものである。また、図8は、コレステリック液晶層(G層16、B層17、R層20)に印加される電圧を表す。信号生成部8aから交流信号が印加されると、一対の電極141,142間及び一対の電極143,144間にV0の電位差が発生し、G層16、B層17、R層20にその電位差による分圧が印加される。G層16、B層17、R層20に印加される電圧をそれぞれVLCG、VLCB、VLCRとする。G層16、B層17、R層20のしきい値電圧をそれぞれVthG、VthB、VthRとすると、信号生成部8aで生成される消去信号の振幅V0はVLCG≧VthG、VLCB≧VthB、VLCR≧VthRを全て満たすように設定される。
コレステリック液晶層(G層16、B層17、R層20)及び光導電層18,21は、容量成分と抵抗成分とを持つものとみなされる。ある電圧が第1表示機能層12及び第2表示機能層13に印加された直後は、G層16、B層17、R層20及び光導電層18,21の容量比に基づいて、それぞれの層に電圧(容量分圧)が印加される。その後、G層16、B層17、R層20及び光導電層18,21の抵抗成分に電流が流れ始め、およそ第1表示機能層12及び第2表示機能層13の充放電時定数の期間で、G層16、B層17、R層20及び光導電層18,21に印加される電圧が抵抗比に基づいた電圧(抵抗分圧)に変化する。
図2で示したように、第1表示機能層12はG層16及びB層17のコレステリック液晶層と光導電層18とを有する。G層16、B層17及び光導電層18の各容量はほぼ同等で、G層16及びB層17の各抵抗もほぼ同等である。光導電層18は、画像パターン書き込み時における光の照射部と非照射部とで、抵抗が1000倍程度異なる。通常、照射部の光導電層18の抵抗は、コレステリック液晶層の抵抗の1/100程度となるように設定される。そのため、書き込み光がない場合は、光導電層18の抵抗はコレステリック液晶層の抵抗の10倍程度となる。したがって、G層16及びB層17の容量分圧は消去信号の振幅の1/3程度の電圧になり、同じく抵抗分圧は消去信号の振幅の1/12程度の電圧になるので、抵抗分圧が容量分圧よりも小さくなる。
表示機能層に含まれるコレステリック液晶層の数をn、コレステリック液晶層の抵抗及び容量をR
LC及びC
LC、光導電層の抵抗及び容量をR
PC及びC
PCとすると、コレステリック液晶層に印加される容量分圧と抵抗分圧との大小関係から、書き込み光が無い場合、一般に以下の式が成り立つ。
・・・(3)
コレステリック液晶層に印加される電圧は容量分圧から抵抗分圧に変化するので、少なくとも抵抗分圧がしきい値電圧よりも大きければ、コレステリック液晶層に必要な電圧が印加され得る。G層16及びB層17の抵抗をR
LC、光導電層18の抵抗をR
PCとすると、G層16及びB層17に印加される電圧V
LCG、V
LCBは次の式で表される。
・・・(4)
式(4)で示された電圧をV
thG以上かつV
thB以上とすると、第1表示機能層12のコレステリック液晶層(G層16、B層17)の全領域がホメオトロピック配向に変化する。図7で示したように、V
thGはV
thBより大きく、また、V
LCGはV
LCBと等しいので、V
LCG≧V
thGであればV
LCB≧V
thBとなる。したがって、第1表示機能層12に印加する消去信号の振幅は、次の式の電圧V
1以上に設定する。
・・・(5)
また、図2に示したように、第2表示機能層13はR層20のコレステリック液晶層と光導電層21とを有する。第1表示機能層12と同様、光導電層21の抵抗はコレステリック液晶層の抵抗の10倍程度であるので、抵抗分圧は消去信号の振幅の1/11程度の電圧となる。また、光導電層21の容量はコレステリック液晶層の容量とほぼ同等なので、容量分圧は消去信号の振幅の1/2程度となる。したがって、抵抗分圧が容量分圧よりも小さくなるので、少なくとも抵抗分圧がしきい値電圧よりも大きければ、コレステリック液晶層に必要な電圧が印加される。R層20の抵抗をR
LC、光導電層21の抵抗をR
PCとすると、R層20に印加される電圧V
LCRは次の式で表される。
・・・(6)
式(6)で示された電圧をV
thR以上にすると、コレステリック液晶層(R層20)の全領域がホメオトロピック配向に変化するので、第2表示機能層13に印加する消去信号の振幅は、次の式の電圧V
2以上に設定される。
・・・(7)
第1表示機能層12に印加する消去信号の振幅V
1と第2表示機能層13に印加する消去信号の振幅V
2とを比較すると、V
1のほうが大きい。信号生成部8aで生成される消去信号は第1表示機能層12と第2表示機能層13とに同時に印加されるので、消去信号の振幅の設定値はV
1となる。すなわち、信号生成部8aからの消去信号の振幅V
0は、次の式に従い設定される。
・・・(8)
信号生成部8aは、式(8)を満たす消去信号を生成し、コレステリック液晶層がプレーナ配向又はフォーカルコニック配向からホメオトロピック配向に変化するのに必要な期間(およそ20ms)以上の印加時間で、その消去信号を表示媒体11に印加する。
本実施形態1では、第1表示機能層12と第2表示機能層13とに同じ消去信号が印加される構成であるが、第1表示機能層12と第2表示機能層13とにそれぞれ異なる消去信号が印加される構成でも構わない。この場合、信号生成部は二種類の消去信号を生成し、第1表示機能層12に印加する消去信号の振幅は式(8)に従ってV0以上の電圧に設定され、第2表示機能層13に印加する消去信号の振幅は式(7)に従ってV2以上の電圧に設定される。
以上のように、本実施形態1において、信号生成部8aが消去信号を生成しこれを表示媒体11に印加することにより、第1表示機能層12のG層16及びB層17並びに第2表示機能層13のR層20に各しきい値電圧以上の電圧が印加される。これにより、各層にリセット操作が行われるので、画像パターンの残像を抑制して、確実に消去することのできる消去装置7aが実現する。また、本実施形態1によれば、第1表示機能層12内のG層16及びR層17の抵抗RLC、光導電層の抵抗RPC、及び、G層16のしきい値電圧VthGで表される式(8)に基づいて、リセット操作に必要な最低の消去信号の振幅の設定が可能であるので、消費電力が抑制された消去装置7aとなる。また、本実施形態によれば、露光装置等の外光を必要としないため、場所を問わず消去操作可能な消去装置7aとなる。
表示媒体をカラー表示可能とするには、本実施形態1のようにB層及びG層を含む表示機能層とR層を含む表示機能層との二つの表示機能層からなる構成、又は、B層、G層及びR層の三層を含む一つの表示機能層からなる構成、又は、B層、G層及びR層を一つずつ含む三つの表示機能層からなる構成が必要である。
二つの表示機能層からなる構成では、B層とG層を一種類の電圧で独立に制御しなければならないことから、B層とG層のしきい値電圧は異なる。通常、B層又はG層のしきい値電圧を大きくすることで、二層のしきい値電圧を異ならせる。つまり、二つのコレステリック液晶層を含む表示機能層中に、しきい値電圧が最も大きいコレステリック液晶層が含まれることになる。一方、一つの表示機能層からなる構成においても同様に、三つのコレステリック液晶層のしきい値電圧を異ならせることで、各層が一種類の電圧で独立に制御される。したがって、二つの表示機能層からなる構成の表示媒体と、一つの表示機能層からなる構成の表示媒体とに対して、それぞれ印加する消去信号の振幅V
0は次の式に従い設定される。
・・・(1)
nは表示機能層のうちコレステリック液晶層の数が最大である表示機能層に含まれるコレステリック液晶層の数、Vthmaxは各コレステリック液晶層のしきい値電圧の最大値を表す。なお、式(1)は、n=1のとき、三つの表示機能層からなる構成の表示媒体においても適用することができる。
上記式(1)に従って信号生成部によって消去信号の振幅V0が設定されるので、カラー表示が可能な表示媒体において、表示媒体を構成する表示機能層の数が異なる場合でも、画像の消去が可能となる。また、表示機能層内のコレステリック液晶層及び光導電層の各抵抗値、及び、コレステリック液晶層のしきい値電圧で表される式(1)に基づいて、リセット操作に必要な最低の消去信号の振幅の設定が可能であるので、消費電力が抑制された消去装置となる。
ここまでは、消去信号が交流信号の場合について説明をしたが、直流信号の場合も、表示機能層の電極間に与える電位差は交流信号の振幅と同様に設定される。直流信号の場合、交流信号に比べて消去装置の消費電力を抑えることができる。
次に、本実施形態1の他の例として、消去信号の振幅を設定する他の方法について説明する。ここでは、コレステリック液晶層に印加される容量分圧とその変化時間に基づいて、消去信号の振幅を設定する。
前述したように、ある電圧が表示機能層に印加された直後は、コレステリック液晶層と光導電層との容量比で決まる容量分圧が、コレステリック液晶層に印加される。その後、コレステリック液晶層に印加される電圧は、コレステリック液晶層と光導電層との抵抗比で決まる抵抗分圧に変化する。通常、コレステリック液晶層に印加される容量分圧は抵抗分圧より大きい。
電圧印加開始から時刻t経過後のコレステリック液晶層に印加される電圧V
LCは、光導電層の容量及び抵抗をそれぞれC
PC及びR
PC、コレステリック液晶層の容量及び抵抗をそれぞれC
LC及びR
LC、充放電時定数をτとすると、次の式で表される。
・・・(9)
第1表示機能層12のG層16及びB層17に印加される各電圧V
LCG、V
LCBは、G層16の容量及び抵抗とB層17の容量及び抵抗とがほぼ等しく、G層16とB層17とを合わせたコレステリック液晶層の容量が1/2C
LCであるので、次の式で表される。
・・・(10)
図9は、コレステリック液晶層(G層16)に印加される電圧V
LCGの時間変化を表した一例である。電圧印加開始をt=0、コレステリック液晶層がホメオトロピック配向に変化するのに必要な期間をt
Hとする。図9で示すように、t=t
Hに電圧V
LCGがV
thG以上であれば、電圧印加開始から時刻t
HまでV
thG以上の電圧がコレステリック液晶層に印加されるので、コレステリック液晶層は確実にホメオトロピック配向に変化する。したがって、式(9)より、第1表示機能層12に印加する消去信号の振幅は、次の式の電圧V
1以上に設定する。
・・・(11)
一方、電圧印加開始から時刻t経過後の、第2表示機能層13のR層20に印加される電圧V
LCRは次の式で表される。
・・・(12)
時刻t
Hに式(11)で表される電圧V
LCRがV
thR以上であればいいので、第2表示機能層13に印加する消去信号の振幅は、次の式の電圧V
2以上に設定される。
・・・(13)
第1表示機能層12に印加する消去信号の振幅V
1と第2表示機能層13に印加する消去信号の振幅V
2とを比較すると、V
1のほうが大きい。信号生成部8aで生成される消去信号は第1表示機能層12と第2表示機能層13とに同時に印加されるので、消去信号の振幅の設定値はV
1となる。すなわち、信号生成部8aからの消去信号の振幅V
0は次の式に従い設定される。
・・・(14)
信号生成部8aは、式(14)を満たす消去信号を生成し、これをコレステリック液晶層がプレーナ配向に変化するのに必要な期間、及び、フォーカルコニック配向からホメオトロピック配向に変化するのに必要な期間、(どちらの期間もおよそ20ms)以上の印加時間で表示媒体11に印加する。
以上のように、本実施形態1の他の例では、信号生成部が消去信号を生成し、表示媒体に消去信号を印加するので、第1表示機能層のG層及びB層並びに第2表示機能層のR層にしきい値電圧以上の電圧が印加され、各層にリセット操作が行われ画像パターンの残像を抑制して、確実に消去することのできる消去装置が実現する。また、本実施形態1の他の例では、容量分圧とその時間変化とに基づいて消去信号が設定される場合において、表示機能層内の液晶層及び光導電層の各容量値、G層のしきい値電圧、及び、表示機能層の充放電時定数で表される式(13)に基づいて、リセット操作に必要な最低の消去信号の振幅の設定が可能であるので、消費電力が抑制された消去装置となる。また、本実施形態の他の例では、露光装置等の外光を必要としないため、場所を問わず消去操作可能な消去装置となる。
本実施形態1において、二つの表示機能層からなる構成の表示媒体と、一つの表示機能層からなる構成の表示媒体とに、印加する消去信号の振幅V
0は、次の式に従い設定される。
・・・(2)
ここで、nは表示機能層のうちコレステリック液晶層の数が最大である表示機能層に含まれるコレステリック液晶層の数、Vthmaxは各コレステリック液晶層の最大のしきい値電圧を表す。上式は三つの表示機能層からなる構成の表示媒体においても適用することができる。
上式に従って信号生成部によって消去信号の振幅V0が設定されるので、カラー表示が可能な表示媒体において、表示媒体を構成する表示機能層の数が異なる場合でも、消去が可能となる。また、表示機能層内のコレステリック液晶層及び光導電層の各容量値、コレステリック液晶層のしきい値電圧の最大値、及び、表示機能層の充放電時定数で表される式(2)に基づいて、リセット操作に必要な最低の消去信号の振幅の設定が可能であるので、消費電力が抑制された消去装置となる。
[実施形態2]
図10は、実施形態2における消去装置の構成を示す概念図である。図11は、実施形態2における消去装置と表示媒体とが接続されたときの等価回路を示す図である。図12は、実施形態2における表示機能層に印加される電圧と制御部から出力される信号電圧との時系列変化を説明する図である。図13[1]は、実施形態2における表示機能層の等価回路を示す図である。図13[2]は、実施形態2における表示機能層が放電部に接続されたときの等価回路を示す図である。以下、図10乃至図13を参照して、実施形態2について詳細に説明する。なお、本実施形態2の表示媒体については、実施形態1の表示媒体と同じであるので、図2及び図8を用いることにする。
本実施形態2の消去装置7bは、消去電圧V0を印加した後に第1表示機能層12及び第2表示機能層13に残留している電圧を除去する放電部30bを、更に備えたことを特徴とする。消去装置7bは、図10で示したように、信号生成部8bと、端子部9bと、嵌合部10bと、放電部30bと、制御部31bとを備えている。本実施形態2の端子部9b及び嵌合部10bの機能、消去装置7bと表示媒体11との接続方法、並びに、表示媒体11の構成は実施形態1と同様である。信号生成部8bが生成する直流の消去信号の電圧は、実施形態1で説明したように設定され、消去信号の印加により、第1表示機能層12及び第2表示機能層13の全てのコレステリック液晶層に、しきい値電圧以上の電圧が印加される。
図11に、消去装置7bと表示媒体11とが接続された状態の等価回路を示す。信号生成部8bは、乾電池等の電源32b、昇圧回路33b、平滑コンデンサCS等からなる。また、信号生成部8bと放電部(すなわちディスチャージ回路)30bとの間にはスイッチSW1が設置され、放電部30b内にスイッチSW2が設置されている。放電部30bは、スイッチSW2と抵抗器34との直列回路を有する。抵抗器34は、放電時の電流を制限してスイッチSW2を保護したり、放電時に電力を消費したりする役目を果たす。スイッチSW1,SW2は、例えばスイッチング素子や電磁リレーなどからなり、制御部31bからの信号によりONとOFFとに切り替わり、ONのときは導通状態となり、OFFのときはオープン状態となる。この信号は、VHとVLの二つの電位からなり、電位がVHのときはスイッチをONにし、電位がVLのときはスイッチをOFFにする。制御部31bは、例えばマイクロコンピュータ、又はタイマICなどからなる。スイッチSW1は、例えば制御部31bに付設されている。第1表示機能層12及び第2表示機能層13は、消去装置7bに対して、実施形態1と同様に並列に接続される。
図12は、第1表示機能層12及び第2表示機能層13に印加される電圧(図12(a))、制御部31bからスイッチSW1に印加される信号(図12(b))、及び、制御部31bからスイッチSW2に印加される信号(図12(c))について、それらの時系列変化を示したものである。以下、図12を用いて本実施形態2の消去装置の駆動について説明する。
信号生成部7b内の昇圧回路33bにより、前述したリセット操作に必要な直流の消去信号が生成される。始めに、時間t0に制御部31bからスイッチSW1に入力される信号の電位がVHとなり、信号生成部7bから消去信号が第1表示機能層12及び第2表示機能層13に印加される。コレステリック液晶層がホメオトロピック配向に変化する期間(20ms程度)後、時間t1にスイッチSW1に入力される信号の電位がVLとなり、消去信号の印加が終了する。また、時間t1にスイッチSW2に入力される信号の電位がVHとなって放電部30bが導通し、第1表示機能層12内及び第2表示機能層13内のコレステリック液晶層(G層16、B層17及びR層20)及び光導電層18,21の残留電圧の除去が開始される。最後に、時間t2にスイッチSW2に入力される信号の電位がVLとなり、放電部30bがオープンになる。
以下、表示機能層に発生する残留電圧について説明する。図13[1]は第1表示機能層12及び第2表示機能層13の等価回路を示す。コレステリック液晶層4は、第1表示機能層12ではG層16とB層17に対応し、第2表示機能層13ではR層20に対応する。コレステリック液晶層4は容量と抵抗との並列接続で表され、同様に光導電層5も容量と抵抗との並列接続で表され、コレステリック液晶層4と光導電層5とが直列に接続されている。ここで、遮光層19,22は、コレステリック液晶層4及び光導電層5に比べ膜厚が小さいので、等価回路上では無視できる。この等価回路の場合、表示機能層の充放電時定数τは次の式で表される。
・・・(15)
CLC、CPCはそれぞれコレステリック液晶層4及び光導電層5の各容量を表し、RLC、RPCはそれぞれコレステリック液晶層4及び光導電層5の各抵抗を表す。コレステリック液晶層4の比抵抗は1.0×1012Ω・cm程度であり、非露光時すなわち消去動作時の光導電層5の比抵抗は1.0×1013Ω・cm程度である。そのため、コレステリック液晶層4と光導電層5との容量がほぼ等しいとすると、充放電時定数は数100msとなる。消去信号印加後に図13[1]のAA点とBB点とが導通すると、数100msで残留電圧が放電される。しかし、消去信号印加後にAA点とBB点がオープン状態になると、各層内で独立して残留電圧が放電される。すなわち、比抵抗が相対的に小さいコレステリック液晶層4は、RLC・CLCで表される充放電時定数すなわち数100msで、残留電圧が放電される。一方、比抵抗が相対的に大きい光導電層5は、RPC・CPCで表される充放電時定数すなわち数sで、残留電圧が放電される。放電の時間が長くなると、イオン性不純物の光導電層5内での偏りが大きくなり、光導電層5の特性の劣化が大きくなる。また、残留電圧が長く存在すると、表示媒体11の電極に触れたときに不都合を生ずる可能性がある。
スイッチSW2がONとなって放電部30bが導通すると、第1表示機能層12及び第2表示機能層13の等価回路は図13[2]のようになる。抵抗成分の合成抵抗はRLC・RPC/(RLC+RPC)となり、RPCはRLCに比べて大きいので、この等価回路の抵抗成分はRLCと近似できる。放電部30bと接続しない場合は、コレステリック液晶層4と光導電層5とが独立に放電するので、コレステリック液晶層4はRLCの抵抗で決まる充放電時定数で残留電圧が放電され、光導電層5はRPCの抵抗で決まる充放電時定数で残留電圧が放電される。しかし、本実施形態2の場合、RLCはRPCの1/10程であるので、光導電層5の残留電圧は放電部30bが接続されない場合に比べて1/10の充放電時定数で放電される。よって、光導電層5の残留電圧が早く除去される。
本実施形態2によれば、表示機能層の残留電圧が除去されるので、表示機能層の劣化防止と、残留電圧による感電防止が可能な、信頼性と安全性が向上した消去装置が実現できる。
[実施形態3]
図14は、実施形態3における消去装置の構成を示す概念図である。図15は、実施形態3における表示媒体を構成するコレステリック液晶の配向変化の挙動を説明する図である。図16は、実施形態3における消去装置と表示媒体とが接続されたときの等価回路を示す図である。図17は、実施形態3における表示機能層に印加される電圧と接続制御部から出力される信号電圧との時系列変化を説明する図である。以下、図14乃至図17を参照して、実施形態3について詳細に説明する。なお、本実施形態3の表示媒体については、実施形態1の表示媒体とほぼ同じであるので、図2及び図8を用いることにする。
本実施形態3の表示媒体11は、第1表示機能層12と第2表示機能層13とを有する。本実施形態3の消去装置7cは、信号生成部7cから出力された消去電圧が第1表示機能層12に印加された後に、第1表示機能層12に残留している電圧を第2表示機能層13に印加する接続制御部31cを、更に備えたことを特徴とする。消去装置7cは、図14で示したように、信号生成部8cと、端子部9cと、嵌合部10cと、放電部30cと、接続制御部31cとを備えている。端子部9c及び嵌合部10cの機能、及び消去装置7cと表示媒体11との接続方法は、実施形態1と同様である。
本実施形態3の表示媒体11の層構成は実施形態1の層構成と同様であるが、第2表示機能層13のR層20の配向変化の挙動が若干異なる。図15に、G層16、B層17及びR層20の配向変化の挙動を示す。R層20のしきい値電圧VthRは、G層16のしきい値電圧VthGの1/2程度である。信号生成部8cが生成する直流の消去信号の電圧は、実施形態1で説明したように設定される。消去信号の印加により、第1表示機能層12のG層16及びB層17に、しきい値電圧以上の電圧が印加される。
図16に本実施形態の消去装置と表示媒体が接続された状態の等価回路を示す。信号生成部8cは、乾電池等の電源32c、昇圧回路33c、平滑コンデンサCS等を有する。また、信号生成部8cと放電部(すなわちディスチャージ回路)30cとの間にはスイッチSW1が設置され、放電部30c内にスイッチSW2が設置されている。更に、信号生成部8cから第1表示機能層12に至る配線と第1表示機能層12から第2表示機能層13に至る配線との間には、スイッチSW3が設置されている。放電部30c及びスイッチSW1,SW2,SW3の機能及び動作方法は、実施形態2と同様である。第1表示機能層12及び第2表示機能層13は、消去装置7cに対して、スイッチSW3を介して並列に接続される。接続制御部31cは、例えば、マイクロコンピュータ、又はタイマICなどからなる。スイッチSW1,SW3は、例えば接続制御部31cに付設されている。
表示媒体を二つの表示機能層で構成すると、表示機能層が一つの場合に比べ、表示媒体全体に流れる電流は大きくなるので、消去装置の消費電力も大きくなる。そこで、信号生成部からの消去信号の印加を一つの表示機能層に限定すると、消費電力の増加を抑えることができる。また、前述したように、消去信号が直流信号の場合、表示機能層には残留電圧が発生するが、この残留電圧をもう一つの表示機能層に分配して、もう一つの表示機能層のコレステリック液晶層に電圧を印加することができる。
残留電圧の分配について説明する。図17は、第1表示機能層12に印加される電圧(図17(a))、第2表示機能層13に印加される電圧(図17(b))、接続制御部31cからスイッチSW1に印加される信号(図17(c))、接続制御部31cからスイッチSW2に印加される信号(図17(d))、接続制御部31cからスイッチSW3に印加される信号(図17(e))について、それらの時系列変化を示したものである。以下、図17を用いて本実施形態3の消去装置7cの駆動について説明する。
信号生成部8c内の昇圧回路33cにより、前述したリセット操作に必要な直流の消去信号が生成される。始めに、時間t0に接続制御部31cからスイッチSW1に入力される信号の電位がVHとなり、信号生成部8cから消去信号が第1表示機能層12に印加される。コレステリック液晶層がホメオトロピック配向に変化する期間(20ms程度)後、時間t1にスイッチSW1に入力される信号の電位がVLとなり、消去信号の印加が終了する。また、時間t1にスイッチSW3に入力される信号の電位がVHとなって、第1表示機能層12と第2表示機能層13とが並列に接続される。この時、第1表示機能層12の残留電圧が分配されることにより、第1表示機能層12に印加される電圧はV0からV0’に変化し、第2表示機能層13に印加される電圧は0からV0’に変化する。コレステリック液晶層がホメオトロピック配向に変化する期間後、時間t2にスイッチSW2に入力される信号の電位がVHとなって放電部30cが導通し、第1表示機能層12内及び第2表示機能層13内のコレステリック液晶層(G層16、B層17及びR層20)及び光導電層18,21から残留電圧の除去が開始される。最後に、時間t3にスイッチSW2,SW3に入力される信号の電位がVLとなり、放電部30cがオープンになり、第1表示機能層12と第2表示機能層13との接続が解除される。
スイッチSW3がONとなって、第1表示機能層12と第2表示機能層13とが接続されると、第1表示機能層12の残留電圧が第2表示機能層13に分配され、第2表示機能層13のコレステリック液晶層(R層20)に電圧が印加される。分配後の電圧は、残留電圧と第1表示機能層12の全容量と第2表示機能層13の全容量とによって決まる。残留電圧をV
R、第1表示機能層12の全容量をC
1、第2表示機能層13の全容量をC
2とすると、分配後の電圧V
Pは次の式で表される。
・・・(16)
第1表示機能層12と第2表示機能層13との全容量はほぼ等しいので、式(16)より、分配後の電圧V
Pは残留電圧V
Rの半分になる。スイッチSW1がOFFとなった直後にスイッチSW3がONとなるので、分配される第1表示機能層12の残留電圧V
Rは第1表示機能層12に印加される電圧V
1となる。すなわち、分配後の電圧V
Pは式(4)を用いて次の式のように表される。
・・・(17)
第2表示機能層13のコレステリック液晶層(R層20)に印加される電圧は、数100ms程度で容量分圧から抵抗分圧に変化する。したがって、コレステリック液晶層がホメオトロピック配向に変化する期間(20ms程度)は、容量分圧がコレステリック液晶層に印加されているとみなせる。コレステリック液晶層の容量と光導電層21の容量とはほぼ等しいので、V
Pの半分の電圧がコレステリック液晶層に印加される。よって、第2表示機能層13のR層20に印加される電圧V
LCRは、次の式のように表される。
・・・(18)
式(18)より、R層20に印加される電圧は、G層16のしきい値電圧の1/2より大きくなる。そのため、R層20のしきい値電圧がG層16のしきい値電圧の1/2程度であることから、R層20に印加される電圧はR層20のしきい値電圧よりも大きくなるので、分配された残留電圧でR層20の消去が可能となる。
スイッチSW3は、R層20がホメオトロピック配向に変化する期間後に、OFFとなる。これにより、第2表示機能層13への電圧の印加が終了する。その後、スイッチSW2がONとなり、放電部30cが導通して残留電圧が除去されるため、光導電層18,21の劣化の抑制と表示媒体11の電極に触れたときの感電防止ができる。
以上説明したように、本実施形態3において、信号生成部8cから消去信号が印加されるとき、第1表示機能層12のみが信号生成部8cと接続されているので、実施形態2のように第1表示機能層12と第2表示機能層13とに同時に消去信号を印加する場合に比べ、消去信号印加時に消去装置7cを流れる電流を小さくすることができ、かつ、第1表示機能層12の残留電圧を第2表示機能層13に印加するので、低消費電力の消去装置7cが実現できる。
[その他]
本発明の構成について、次のように表現することもできる。
上記課題は以下の本発明の消去装置によって解決される。すなわち、本発明の第1の消去装置は、一対の電極と前記電極間に少なくともコレステリック液晶層と光導電層とを含む表示機能層からなる光書き込み型の表示媒体に装着するための嵌合部と、前記表示媒体の電極と接続する端子部と、前記表示媒体に記録された画像パターンを消去するため、前記表示媒体に入力される消去信号を生成する信号生成部とを備え、前記表示媒体を構成する前記表示機能層のうち、前記コレステリック液晶層の数が最大である前記表示機能層に含まれる前記コレステリック液晶層の数をn、前記コレステリック液晶層の抵抗をRLC、前記光導電層の抵抗をRPC、前記コレステリック液晶層の全領域がホメオトロピック配向に変化するしきい値電圧のうち、最大のしきい値電圧をVthmaxとすると、前記消去信号によって前記電極間に与えられる電位差V0が前記式(1)を満たすことを特徴とする。
また、コレステリック液晶層の容量をCLC、光導電層の容量をCPC、表示機能層の充放電時定数をτ、コレステリック液晶層がホメオトロピック配向に変化するのに必要な時間をtHとすると、前記消去信号によって前記電極間に与えられる電位差V0は前記式(2)を満たすことが望ましい。更に、前記消去信号は直流信号であることが望ましい。
本発明の第2の消去装置は、前記消去信号が前記直流信号であり、前記直流信号の入力終了後、前記表示機能層の残留電圧を除去する放電部を備えたことを特徴とする。
本発明の第3の消去装置は、複数の前記表示機能層からなる光書き込み型の表示媒体に装着するための嵌合部と、前記表示媒体の電極と接続する端子部とを備えた、前記表示媒体に記録された画像パターンの消去装置であって、前記表示媒体の一部の表示機能層と前記信号生成部とが前記消去信号印加後に電気的に分離し、前記一部の表示機能層の前記残留電圧を前記一部の表示機能層とは別の前記表示機能層に分配する機能を有する接続制御部を備えたことを特徴とする。
本発明の効果について、次のように表現することもできる。
本発明の第1の消去装置は、光書き込み型の表示媒体を構成する表示機能層内のコレステリック液晶層の全領域、すなわち、画像パターンのプレーナ配向の部分及びフォーカルコニック配向の部分がともにホメオトロピック配向に変化するしきい値電圧以上の電圧が印加されるので、リセット操作が行われて画像パターンの残像を抑制し、確実に消去できる消去装置となる。また、表示機能層内のコレステリック液晶層の抵抗値と容量値、光導電層の抵抗値と容量値、及び、コレステリック液晶層のしきい値電圧に基づいて消去信号の振幅が設定され、表示媒体の消去操作に必要な最低の電圧をコレステリック液晶層に印加することができるので、消費電力が抑えられた消去装置が実現できる。また、消去信号が直流信号の場合、交流信号の場合に比べて低消費電力化が実現できる。
本発明の第2の消去装置は、消去信号が直流信号の時に表示機能層、特に、光導電層に残留した電圧が消去装置に備えられた放電部によって直ちに放電されるので、光導電層内でのイオン性不純物の偏りがなくなり、光導電層の劣化が抑制され、表示機能層の信頼性が確保される消去装置となる。また、表示媒体の電極に触れたときの感電が防止されるので、安全性も向上する。
本発明の第3の消去装置は、接続制御部によって、信号生成部からは一部の表示機能層に消去信号を印加し、その一部の表示機能層と信号生成部とが消去信号印加後に電気的に分離され、更に、一部の表示機能層と別の表示機能層が電気的に接続される。したがって、表示媒体の全ての表示機能層に同時に消去信号が印加されることはなくなるので、表示機能層全体に流れる電流の増加を抑制できる。信号生成部からの消去信号が印加された一部の表示機能層の残留電圧が、信号生成部から直接消去信号が印加されていない表示機能層のコレステリック液晶層に印加され、リセット操作が行われるので、表示媒体が複数の表示機能層で構成されているときに、消費電力が抑えられた消去装置となる。
本発明の構成について、更に次のように表現することもできる。
<1>一対の電極と前記電極間に少なくともコレステリック液晶層と光導電層とを含む表示機能層からなる光書き込み型の表示媒体に装着するための嵌合部と、前記表示媒体の電極と接続する端子部と、前記表示媒体に記録された画像パターンを消去するための消去信号を生成する信号生成部とを備え、前記消去信号によって前記電極間に与えられる電位差が、前記式(1)を満たすことを特徴とする消去装置。
ただし、式(1)において、V0:電極間に与えられる電位差、n:コレステリック液晶層の数が最大である表示機能層に含まれるコレステリック液晶層の数、RLC:コレステリック液晶層の抵抗、RPC:光導電層の抵抗、Vthmax:コレステリック液晶層のホメオトロピック配向に変化するしきい値電圧のうち最大のしきい値電圧。
<2>一対の電極と前記電極間に少なくともコレステリック液晶層と光導電層とを含む表示機能層からなる光書き込み型の表示媒体に装着するための嵌合部と、前記表示媒体の電極と接続する端子部と、前記表示媒体に記録された画像パターンを消去するための消去信号を生成する信号生成部とを備え、前記消去信号によって前記電極間に与えられる電位差が、前記式(2)を満たすことを特徴とする消去装置。
ただし、式(2)において、V0:電極間に与えられる電位差、n:コレステリック液晶層の数が最大である表示機能層に含まれるコレステリック液晶層の数、RLC:コレステリック液晶層の抵抗、RPC:光導電層の抵抗、CLC:コレステリック液晶層の容量、CPC:光導電層の容量、Vthmax:コレステリック液晶層のホメオトロピック配向に変化するしきい値電圧のうち最大のしきい値電圧、tH:ホメオトロピック配向に変化するのに必要な期間、τ:表示機能層の充放電時定数。
<3>前記消去信号が直流信号であることを特徴とする前記<1>又は前記<2>に記載の消去装置。
<4>前記消去信号の入力終了後、前記表示機能層の残留電圧を除去する放電部を備えたことを特徴とする前記<3>に記載の消去装置。
<5>複数の前記表示機能層からなる光書き込み型の表示媒体に装着するための嵌合部と、前記表示媒体の電極と接続する端子部とを備えた、前記表示媒体に記録された画像パターンの消去装置であって、前記表示媒体の一部の表示機能層と前記信号生成部とが前記消去信号印加後に電気的に分離し、前記一部の表示機能層の前記残留電圧を前記一部の表示機能層とは別の前記表示機能層に分配する機能を有する接続制御部を備えたことを特徴とする前記<4>に記載の消去装置。
<6>消去時に外光を必要としないことを特徴とする前記<1>又は前記<2>に記載の消去装置。
以上、上記各実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細については、当業者が理解し得るさまざまな変更を加えることができる。また、本発明には、上記各実施形態の構成の一部又は全部を相互に適宜組み合わせたものも含まれる。
[付記1]nを自然数としたとき光導電層とn層からなるコレステリック液晶層とを含む積層体が一対の電極間に挟持された構成の表示機能層を有する光書き込み型の表示媒体に用いられ、当該表示媒体に記録された画像パターンを消去する消去装置において、
前記画像パターンを消去するための消去電圧を前記一対の電極間に印加する信号生成部を備え、
mを1からnまでのいずれかの整数とし、前記一対の電極間に前記消去電圧が印加されたときにm層目の前記コレステリック液晶層に印加される電圧をVmとし、m層目の前記コレステリック液晶層がホメオトロピック配向に変化するしきい値電圧をVthmとした場合に、
前記Vmが前記n層からなるコレステリック液晶層の各抵抗及び前記光導電層の抵抗のみによって決まる状態にあって、m=1〜nのすべてにおいてVm≧Vthmが成り立つように、前記消去電圧が設定されたものである、
ことを特徴とする消去装置。
[付記2]付記1記載の消去装置において、
前記消去電圧は、更に、
前記消去電圧をV
0、前記コレステリック液晶層の各抵抗をR
LC、前記光導電層の抵抗をR
PC、n個の前記しきい値電圧のうちの最大値をV
thmaxとしたとき、次の式(1)
・・・(1)
が成り立つように設定された、
ことを特徴とする消去装置。
[付記3]付記2記載の消去装置において、
前記消去電圧は、更に、
前記Vmが、前記一対の電極間に前記消去電圧を印加した直後に前記n層からなるコレステリック液晶層の各静電容量及び前記光導電層の静電容量のみによって決まり、その後前記n層からなるコレステリック液晶層の各抵抗及び前記光導電層の抵抗のみによって決まる値に近づく状態にあって、
前記消去電圧を印加してからm層目の前記コレステリック液晶層が前記ホメオトロピック配向に変化するまでのすべての時間においてかつm=1〜nのすべてにおいてVm≧Vthmが成り立つように設定された、
ことを特徴とする消去装置。
[付記4]付記3記載の消去装置において、
前記消去電圧は、更に、
前記消去電圧をV
0、前記コレステリック液晶層の各抵抗をR
LC、前記光導電層の抵抗をR
PC、前記コレステリック液晶層の各静電容量をC
LC、前記光導電層の静電容量をC
PC、n個の前記しきい値電圧のうちの最大値をV
thmax、前記ホメオトロピック配向に変化するのに必要な時間をt
H、前記表示機能層の充放電時定数をτとしたとき、次の式(2)
・・・(2)
が成り立つように設定された、
ことを特徴とする消去装置。
[付記5]付記4記載の消去装置において、
前記nが2以上の整数である、
ことを特徴とする消去装置。
[付記6]付記5記載の消去装置において、
前記消去電圧V0が前記式(2)の右辺に等しい、
ことを特徴とする消去装置。
[付記7]付記6記載の消去装置において、
前記消去電圧が直流電圧である、
ことを特徴とする消去装置。
[付記8]付記7記載の消去装置において、
前記表示媒体は前記表示機能層を複数有するものであり、
前記信号生成部から出力された前記消去電圧が一部の前記表示機能層に印加された後に、当該一部の表示機能層に残留している電圧を他の前記表示機能層に印加する接続制御部を、
更に備えたことを特徴とする消去装置。
[付記9]付記8記載の消去装置において、
前記消去電圧を印加した後に前記表示機能層に残留している電圧を除去する放電部を、
更に備えたことを特徴とする消去装置。
[付記10]付記1記載の消去装置において、
前記表示媒体は前記表示機能層を複数有するものであり、
前記消去電圧は、更に、
前記消去電圧をV
0、前記コレステリック液晶層の各抵抗をR
LC、前記光導電層の抵抗をR
PC、前記nが最大の前記表示機能層について当該n個の前記しきい値電圧のうちの最大値をV
thmaxとしたとき、次の式(1)
・・・(1)
が成り立つように設定された、
ことを特徴とする消去装置。
[付記11]付記3記載の消去装置において、
前記表示媒体は前記表示機能層を複数有するものであり、
前記消去電圧は、更に、
前記消去電圧をV
0、前記コレステリック液晶層の各抵抗をR
LC、前記光導電層の抵抗をR
PC、前記コレステリック液晶層の各静電容量をC
LC、前記光導電層の静電容量をC
PC、前記nが最大の前記表示機能層について当該n個の前記しきい値電圧のうちの最大値をV
thmax、前記ホメオトロピック配向に変化するのに必要な時間をt
H、前記表示機能層の充放電時定数をτとしたとき、次の式(2)
・・・(2)
が成り立つように設定された、
ことを特徴とする消去装置。
[付記12]nを自然数としたとき光導電層とn層からなるコレステリック液晶層とを含む積層体が一対の電極間に挟持された構成の表示機能層を有する光書き込み型の表示媒体に対して、当該表示媒体に記録された画像パターンを消去する消去方法において、
mを1からnまでのいずれかの整数とし、前記一対の電極間に消去電圧が印加されたときにm層目の前記コレステリック液晶層に印加される電圧をVmとし、m層目の前記コレステリック液晶層がホメオトロピック配向に変化するしきい値電圧をVthmとしたとき、
前記Vmが前記n層からなるコレステリック液晶層の各抵抗及び前記光導電層の抵抗のみによって決まる状態にあって、m=1〜nのすべてにおいてVm≧Vthmが成り立つように、前記消去電圧を設定し、
設定された前記消去電圧を前記一対の電極間に印加することにより前記画像パターンを消去する、
ことを特徴とする消去方法。
[付記13]付記12記載の消去方法において、
前記消去電圧を設定する際に、更に、
前記消去電圧をV
0、前記コレステリック液晶層の各抵抗をR
LC、前記光導電層の抵抗をR
PC、n個の前記しきい値電圧のうちの最大値をV
thmaxとしたとき、次の式(1)
・・・(1)
が成り立つように、前記消去電圧を設定する、
ことを特徴とする消去方法。
[付記14]付記13記載の消去方法において、
前記消去電圧を設定する際に、更に、
前記Vmが、前記一対の電極間に消去電圧を印加した直後に前記n層からなるコレステリック液晶層の各静電容量及び前記光導電層の静電容量のみによって決まり、その後前記n層からなるコレステリック液晶層の各抵抗及び前記光導電層の抵抗のみによって決まる値に近づく状態にあって、
前記消去電圧を印加してからm層目の前記コレステリック液晶層が前記ホメオトロピック配向に変化するまでのすべての時間においてかつm=1〜nのすべてにおいてVm≧Vthmが成り立つように、前記消去電圧を設定する、
ことを特徴とする消去方法。
[付記15]付記14記載の消去方法において、
前記消去電圧を設定する際に、更に、
前記消去電圧をV
0、前記コレステリック液晶層の各抵抗をR
LC、前記光導電層の抵抗をR
PC、前記コレステリック液晶層の各静電容量をC
LC、前記光導電層の静電容量をC
PC、n個の前記しきい値電圧のうちの最大値をV
thmax、前記ホメオトロピック配向に変化するのに必要な時間をt
H、前記表示機能層の充放電時定数をτとしたとき、次の式(2)
・・・(2)
が成り立つように、前記消去電圧を設定する、
ことを特徴とする消去方法。
[付記16]nを自然数としたとき光導電層とn層からなるコレステリック液晶層とを含む積層体が一対の電極間に挟持された構成の表示機能層を有する光書き込み型の表示媒体に対して、当該表示媒体に記録された画像パターンを消去するために前記一対の電極間に印加する消去電圧を設定する方法において、
mを1からnまでのいずれかの整数とし、前記一対の電極間に前記消去電圧が印加されたときにm層目の前記コレステリック液晶層に印加される電圧をVmとし、m層目の前記コレステリック液晶層がホメオトロピック配向に変化するしきい値電圧をVthmとし、
続いて、前記Vmが前記n層からなるコレステリック液晶層の各抵抗及び前記光導電層の抵抗のみによって決まる状態において、m=1〜nのすべてにおいてVm≧Vthmが成り立つように、前記消去電圧を設定する、
ことを特徴とする消去信号設定方法。
[付記17]付記16記載の消去信号設定方法において、
前記消去電圧を設定する際に、更に、
前記消去電圧をV
0、前記コレステリック液晶層の各抵抗をR
LC、前記光導電層の抵抗をR
PC、n個の前記しきい値電圧のうちの最大値をV
thmaxとしたとき、次の式(1)
・・・(1)
が成り立つように、前記消去電圧を設定する、
ことを特徴とする消去信号設定方法。
[付記18]付記17記載の消去信号設定方法において、
前記消去電圧を設定する際に、更に、
前記Vmが、前記一対の電極間に前記消去電圧を印加した直後に前記n層からなるコレステリック液晶層の各静電容量及び前記光導電層の静電容量のみによって決まり、その後前記n層からなるコレステリック液晶層の各抵抗及び前記光導電層の抵抗のみによって決まる値に近づく状態にあって、
前記消去電圧を印加してからm層目の前記コレステリック液晶層が前記ホメオトロピック配向に変化するまでのすべての時間においてかつm=1〜nのすべてにおいてVm≧Vthmが成り立つように、前記消去電圧を設定する、
ことを特徴とする消去信号設定方法。
[付記19]付記18記載の消去信号設定方法において、
前記消去電圧を設定する際に、更に、
前記消去電圧をV
0、前記コレステリック液晶層の各抵抗をR
LC、前記光導電層の抵抗をR
PC、前記コレステリック液晶層の各静電容量をC
LC、前記光導電層の静電容量をC
PC、n個の前記しきい値電圧のうちの最大値をV
thmax、前記ホメオトロピック配向に変化するのに必要な時間をt
H、前記表示機能層の充放電時定数をτとしたとき、次の式(2)
・・・(2)
が成り立つように、前記消去信号を設定する、
ことを特徴とする消去信号設定方法。
[付記20]nを自然数としたとき光導電層とn層からなるコレステリック液晶層とを含む積層体が一対の電極間に挟持された構成の表示機能層を有する光書き込み型の表示媒体において、
付記1乃至11のいずれか一項記載の消去装置が付設された、
ことを特徴とする表示媒体。