JP5885109B2 - 培養方法及び培養装置 - Google Patents

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Description

本発明は、培養方法及び培養装置に関し、特に、医療への応用に適した細胞及び/又は細胞組織体の製造に関する。
従来、基材表面に接着させて培養した細胞を回収する方法としては、例えば、タンパク質分解酵素やキレート剤を使用する方法、磁力を使用する方法、温度応答性高分子を使用する方法、光応答性高分子を使用する方法があった。
しかしながら、タンパク質分解酵素やキレート剤を使用する方法においては、細胞が傷害を受けることがあった。また、磁力を使用する方法においては細胞を予め磁性化する必要があった。温度応答性高分子や光応答性高分子を使用する方法においては培養期間を通じて温度や光を制御する必要があった。
そこで、特許文献1において、チオレートを介してスペーサ物質が結合した電極表面に細胞を接着させて培養し、次いで、当該細胞が接着している当該電極表面に、当該スペーサ物質が還元脱離する電位を印加して、当該細胞を当該電極表面から脱離させる方法が提案された。
また、非特許文献1においては、中心に細胞接着性ドメイン(RGD)、両端にシステイン残基を有するオリゴペプチドを介して金表面に細胞を接着させ、次いで、還元脱離によって当該細胞を当該金表面から脱離させる方法が提案された。
特開2008−295382号公報
Seto etal. Biomaterials, 2209-2215, 2010
しかしながら、特許文献1において使用されたスペーサ物質(例えば、アルカンチオールに細胞接着性ペプチドを結合させてなる細胞接着性スペーサ物質)が結合した細胞又は細胞組織体は、生体に移植する場合の安全性が明らかでなかった。
また、非特許文献1において使用されたオリゴペプチドは、金表面で自己組織化するものではなかったため、当該金表面において当該オリゴペプチドは密な層を形成していなかった。このため、培養培地中のタンパク質等の物質が金表面に非特異的に吸着し、5分間の電位の印加によっても、当該金表面に接着した細胞の10%前後は脱離せずに残存することがあった。
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、医療への応用に適した細胞及び/又は細胞組織体を効率よく製造する培養方法及び培養装置を提供することをその目的の一つとする。
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る培養方法は、電極層に接着した細胞を培養する方法であって、一方の末端を構成しチオレートを介して前記電極層に結合する末端アミノ酸と、他方の末端を構成し細胞接着性のアミノ酸配列からなる細胞接着性配列と、前記細胞接着性配列の前記一方の末端側に結合し複数の酸性アミノ酸と複数の塩基性アミノ酸とが1つずつ交互に結合してなる交互配列と、を有するオリゴペプチドで被覆された前記電極層に前記細胞を接着させて培養する第一工程と、前記細胞が接着している前記電極層に、前記オリゴペプチドが還元脱離する電位を印加して、前記細胞を前記電極層から脱離させる第二工程と、を含むことを特徴とする。本発明によれば、医療への応用に適した細胞及び/又は細胞組織体を効率よく製造する培養方法を提供することができる。
また、前記培養方法において、前記電極層は、培養液中に浮いた状態で保持される多孔質膜の表面に形成されていることとしてもよい。また、前記第一工程において、前記電極層に前記細胞を接着させて培養することで前記電極層に接着した細胞組織体シートを形成し、前記第二工程において、前記細胞組織体シートが接着している前記電極層に、前記オリゴペプチドが還元脱離する前記電位を印加して、前記細胞組織体シートを前記電極層から脱離させることとしてもよい。この場合、前記培養方法は、前記電極層から脱離させた複数の前記細胞組織体シートを積層して、前記細胞組織体シートの積層体を形成する第三工程をさらに含むこととしてもよい。
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る培養装置は、細胞を接着させて培養するための電極層を有する培養装置であって、前記電極層は、一方の末端を構成しチオレートを介して前記電極層に結合する末端アミノ酸と、他方の末端を構成し細胞接着性のアミノ酸配列からなる細胞接着性配列と、前記細胞接着性配列の前記一方の末端側に結合し複数の酸性アミノ酸と複数の塩基性アミノ酸とが1つずつ交互に結合してなる交互配列と、を有するオリゴペプチドで被覆されていることを特徴とする。本発明によれば、医療への応用に適した細胞及び/又は細胞組織体を効率よく製造する培養装置を提供することができる。
また、前記培養装置において、前記電極層は、培養液中に浮いた状態で保持される多孔質膜の表面に形成されていることとしてもよい。
本発明によれば、医療への応用に適した細胞及び/又は細胞組織体を効率よく製造する培養方法及び培養装置を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る培養方法の一例に含まれる主な工程を示す説明図である。 本発明の一実施形態において使用するオリゴペプチドで被覆された電極層の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態において使用するオリゴペプチドの一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態において使用する電極層の一例を示す説明図である。 図4Aに示す電極層に細胞が接着した様子を示す説明図である。 図4Bに示す電極層に電位を印加して細胞を脱離させる様子を示す説明図である。 本発明の一実施形態において細胞組織体シートを形成するために電極層で細胞を培養する様子を示す説明図である。 図5Aに示す細胞を培養することで細胞組織体シートを形成する様子を示す説明図である。 図5Bに示す電極層に電位を印加して細胞組織体シートを脱離させる様子を示す説明図である。 本発明の一実施形態において使用する多孔質膜に形成された電極層の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態において多孔質膜に形成された電極層に接着した細胞組織体シートを培養する様子を示す説明図である。 図7Aに示す細胞組織体シートを培養して、より厚い細胞組織体シートを形成する様子を示す説明図である。 図7Bに示す多孔質膜上の電極層に電位を印加して細胞組織体シートを脱離させる様子を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係る培養方法の他の例に含まれる主な工程を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係る実施例において電極層に対するオリゴペプチドの化学吸着を評価した結果の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係る実施例において電位の印加による電極層からのオリゴペプチドの脱離を評価した結果の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係る実施例においてオリゴペプチドで被覆された電極層に対するタンパク質の吸着を評価した結果の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係る実施例においてオリゴペプチドで被覆された電極層に電位を印加して得られたサイクリックボルタモグラムの一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係る実施例において電位の印加により電極層から脱離した細胞の数を評価した結果の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係る実施例において使用した多孔質膜を含む培養容器の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係る実施例において使用した多孔質膜の電子顕微鏡写真の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係る実施例において培養ディッシュの底面に形成された電極層上で細胞を7日間培養することで形成された細胞組織体シートの断面写真の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係る実施例において多孔質膜の表面に形成された電極層上で細胞を7日間培養することで形成された細胞組織体シートの断面写真の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係る実施例において多孔質膜の表面に形成された電極層上で細胞を21日間培養することで形成された細胞組織体シートの断面写真の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係る実施例において複数の細胞組織体シートを積層して形成された細胞組織積層体の断面写真の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係る実施例において電極層から脱離して回収された細胞の増殖を評価した結果の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係る実施例において電極層から脱離して回収された細胞組織体シートの生存状態を評価した結果の一例を示す説明図である。
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は、本実施形態で示す例に限られるものではない。
図1は、本実施形態に係る培養方法(以下、「本方法」という。)の一例に含まれる主な工程を示す説明図である。図2は、本実施形態で使用するオリゴペプチドで被覆された電極層の一例を示す説明図である。図3は、本実施形態で使用するオリゴペプチドの一例を示す説明図である。図4A〜図4Cは、本実施形態において細胞を培養し回収する過程の一例についての説明図である。
本方法は、電極層30に接着した細胞50を培養する方法であって、一方の末端を構成しチオレートを介して当該電極層30に結合する末端アミノ酸11と、他方の末端を構成し細胞接着性のアミノ酸配列からなる細胞接着性配列14と、当該細胞接着性配列14の当該一方の末端側に結合し複数の酸性アミノ酸13aと複数の塩基性アミノ酸13bとが1つずつ交互に結合してなる交互配列13と、を有するオリゴペプチド(以下、「接着性オリゴペプチド10」という。)で被覆された当該電極層30に当該細胞50を接着させて培養する第一工程(以下、「培養工程S1」という。)と、当該細胞50が接着している当該電極層30に、当該接着性オリゴペプチド10が還元脱離する電位を印加して、当該細胞50を当該電極層30から脱離させる第二工程(以下、「脱離工程S2」という。)と、を含む。
培養工程S1においては、まず、接着性オリゴペプチド10で被覆された電極層30を準備する。接着性オリゴペプチド10は、上述のように末端アミノ酸11、交互配列13及び細胞接着性配列14を含むアミノ酸配列からなるオリゴペプチドであれば特に限られない。
接着性オリゴペプチド10を構成するアミノ酸の数は、特に限られないが、当該接着性オリゴペプチド10は、例えば、8〜100個のアミノ酸からなるペプチドとすることができ、10〜30個のアミノ酸からなるペプチドとすることが好ましい。図2及び図3に示す例において、接着性オリゴペプチド10は、17個のアミノ酸から構成されるペプチドである。
また、接着性オリゴペプチド10は、電極層30に自己組織化単分子膜(Self Assembled Monolayer:SAM)を形成するオリゴペプチドであることが好ましい。すなわち、接着性オリゴペプチド10は、例えば、4つ以上のアミノ酸からなる交互配列13を有することが好ましい。この場合、隣接する接着性オリゴペプチド10の分子間に効果的な静電的相互作用が生じることにより、電極層30に当該接着性オリゴペプチド10の自己組織化単分子膜を確実に形成することができる。図2及び図4A〜図4Cに示す例において、電極層30には、接着性オリゴペプチド10を含み当該電極層30を被覆する自己組織化単分子膜からなるオリゴペプチド層100が形成されている。
末端アミノ酸11は、チオレートを介して電極層30に結合するアミノ酸であれば特に限られない。すなわち、末端アミノ酸11は、電極層30との間でチオレートを介した結合を形成し得る官能基を有する任意のアミノ酸である。
チオレートを形成し得る官能基は、例えば、チオール基(−SH)、ジスルフィド(−S−S−)及びスルフィド(−S−)からなる群より選択される1種以上とすることができる。図2及び図3に示す例において、末端アミノ酸11は、接着性オリゴペプチド10のN末端を構成するシステイン(C)である。
接着性オリゴペプチド10が末端アミノ酸11を有することにより、当該接着性オリゴペプチド10による電極層30の被覆及び後述する当該接着性オリゴペプチド10の還元脱離を効果的に行うことができる。
細胞接着性配列14は、細胞接着性のアミノ酸配列であれば特に限られない。すなわち、細胞接着性配列14は、例えば、使用する細胞50の表面に存在する分子(例えば、インテグリン等のタンパク質や、糖鎖)に特異的に結合する特定のアミノ酸配列(以下、「特定アミノ酸配列」という。)を含むことができる。図2及び図3に示す例において、細胞接着性配列14は、接着性オリゴペプチド10のC末端を構成し、アルギニン(R)とグリシン(G)とアスパラギン酸(D)とが結合してなる、いわゆるRGD配列を特定アミノ酸配列として含んでいる。
細胞接着性配列14は、特定アミノ酸配列からなるアミノ酸配列とすることができ、また、当該特定アミノ酸配列のN末端側及び/又はC末端側に他のアミノ酸がさらに結合してなるアミノ酸配列とすることもできる。
細胞接着性配列14に含まれる、特定アミノ酸以外のアミノ酸は、例えば、中性アミノ酸とすることができる。中性アミノ酸は、例えば、アラニン(A)、アスパラギン(N)、システイン(C)、グルタミン(Q),グリシン(G)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、プロリン(P)、セリン(S)、トレオニン(T)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)及びバリン(V)からなる群より選択される1種以上とすることができる。
図2及び図3に示す例において、細胞接着性配列14は、RGD配列と、当該RGD配列のN末端側に結合したグリシン(G)と、当該RGD配列のC末端側に順次結合したセリン(S)及びプロリン(P)と、を含んでいる。
細胞接着性配列14を構成するアミノ酸の数は、特に限られないが、当該細胞接着性配列14は、例えば、3〜50個のアミノ酸からなるアミノ酸配列とすることができ、5〜25個のアミノ酸からなるアミノ酸配列とすることが好ましい。図2及び図3に示す例において、細胞接着性配列14は、6個のアミノ酸からなるアミノ酸配列である。
接着性オリゴペプチド10が細胞接着性配列14を有することにより、細胞50の当該接着性オリゴペプチド10を介した電極層30への接着を確実に達成することができる。
交互配列13は、酸性アミノ酸13aと塩基性アミノ酸13bとが1つずつ交互に結合することにより形成された、全体として複数の当該酸性アミノ酸13aと複数の当該塩基性アミノ酸13bとからなるアミノ酸配列であれば特に限られない。
酸性アミノ酸13aは、例えば、アスパラギン酸(D)及びグルタミン酸(E)からなる群より選択される1種又は2種とすることができる。塩基性アミノ酸13bは、例えば、リシン(K)、アルギニン(R)及びヒスチジン(H)からなる群より選択される1種以上とすることができる。交互配列13は、これら酸性アミノ酸13aと塩基性アミノ酸13bとを任意の組み合わせで含むことができる。
図2及び図3に示す例において、交互配列13は、細胞接着性配列14のN末端側に結合した、4つのリシン(K)と3つのグルタミン酸(E)とが1つずつ交互に結合してなるアミノ酸配列である。
交互配列13を構成する酸性アミノ酸13aの数と塩基性アミノ酸13bの数とは、一方が他方より1つだけ多いこととしてもよく、同一であってもよい。酸性アミノ酸13aの数及び塩基性アミノ酸13bの数の一方が他方より1つだけ多い場合であっても、例えば、交互配列13が酸性アミノ酸13a及び塩基性アミノ酸13bを少なくとも2つずつ有することにより、細胞接着性配列14と結合している交互配列13の先端部分(合計4つ以上のアミノ酸からなる部分)は電気的に十分中和される。
交互配列13を構成するアミノ酸の数は、特に限られないが、当該交互配列13は、例えば、4〜50個のアミノ酸からなるアミノ酸配列とすることができ、5〜25個のアミノ酸からなるアミノ酸配列とすることが好ましい。図2及び図3に示す例において、交互配列13は、3個の酸性アミノ酸13aと4個の塩基性アミノ酸13bとを含む7個のアミノ酸からなるアミノ酸配列である。
接着性オリゴペプチド10が交互配列13を有することにより、例えば、当該接着性オリゴペプチド10又は電極層30に対するタンパク質等の細胞接着を促進する物質の非特異的な吸着を効果的に回避又は低減することができる。
接着性オリゴペプチド10は、上述の末端アミノ酸11、交互配列13及び細胞接着性配列14が順次結合してなるアミノ酸配列からなるペプチドとすることができる。また、接着性オリゴペプチド10は、例えば、末端アミノ酸11と交互配列13との間に配置される中間配列12をさらに含むこともできる。中間配列12は、一方の末端側で末端アミノ酸11と結合し、他方の末端側で交互配列13と結合するアミノ酸配列であれば特に限られない。
中間配列12は、分子サイズが比較的小さいアミノ酸から構成されることが好ましい。また、中間配列12は、上述したような中性アミノ酸から構成されることが好ましい。すなわち、中間配列12は、例えば、アラニン及びグリシンからなる群より選択される1種又は2種からなるアミノ酸配列とすることができる。
中間配列12を構成するアミノ酸の数は、特に限られないが、当該中間配列12は、例えば、0〜50個のアミノ酸からなるアミノ酸配列とすることができ、2〜10個のアミノ酸からなるアミノ酸配列とすることが好ましい。図2及び図3に示す例において、中間配列12は、3つのグリシンが結合してなるアミノ酸配列である。
接着性オリゴペプチド10が中間配列12を有することにより、細胞接着性配列14及び/又は交互配列13と電極層30との相互作用を効果的に回避又は低減することができる。
電極層30は、その表面に接着性オリゴペプチド10がチオレートを介して還元脱離可能に結合でき、且つ当該接着性オリゴペプチド10の還元脱離において作用極として機能する導電性層であれば特に限られない。
すなわち、電極層30は、例えば、貴金属(例えば、金、白金、銀、銅)、半導体(例えば、シリコン、セレン化亜鉛、炭化ケイ素)及び金属酸化物(例えば、酸化インジウムスズ、酸化亜鉛、酸化スズ)からなる群より選択される1種以上の導電性材料からなる層とすることができる。図2及び図4A〜図4Cに示す例において、電極層30は、貴金属(例えば、金)で形成された薄膜である。
接着性オリゴペプチド10による電極層30の被覆は、例えば、図3に示すように、当該電極層30との間でチオレートを介した結合を形成し得る官能基を含む末端アミノ酸11を有する遊離の接着性オリゴペプチド10を使用して行うことができる。
すなわち、この遊離の接着性オリゴペプチド10と電極層30とを溶液中で接触させる(例えば、遊離の接着性オリゴペプチド10を含有する溶液中に電極層30を浸漬して所定時間保持する)ことにより、図2に示すように、当該接着性オリゴペプチド10が当該電極層30との間で自発的にチオレートを形成して当該電極層30に結合する。
電極層30に形成されるオリゴペプチド層100は、図2に示すように、上述の接着性オリゴペプチド10に加えて、細胞接着性のアミノ酸配列を有しない以外は当該接着性オリゴペプチド10と同様のアミノ酸配列から構成される他のオリゴペプチド(以下、「非接着性オリゴペプチド20」という)を含むことができる。
非接着性オリゴペプチド20は、図2に示すように、一方の末端を構成しチオレートを介して当該電極層30に結合する末端アミノ酸21と、他方の末端を構成し複数の酸性アミノ酸23aと複数の塩基性アミノ酸23bとが1つずつ交互に結合してなる交互配列23と、を有するペプチドである。
非接着性オリゴペプチド20は、接着性オリゴペプチド10の交互配列13と同一のアミノ酸配列からなる交互配列23を有することが好ましい。また、非接着性オリゴペプチド20は、さらに、接着性オリゴペプチド10の末端アミノ酸11と同一のアミノ酸配列からなる末端アミノ酸21を有することとしてもよい。図2に示す例において、非接着性オリゴペプチド20の末端アミノ酸21及び交互配列23のアミノ酸配列は、それぞれ接着性オリゴペプチド10の末端アミノ酸11及び交互配列13のアミノ酸配列と同一である。
また、非接着性オリゴペプチド20の交互配列23は、当該非接着性オリゴペプチド20の末端部分を構成する。このため、交互配列23は、その自由端(すなわち、非接着性オリゴペプチド20の自由端)を構成するアミノ酸の電荷を打ち消すよう、酸性アミノ酸23a及び塩基性アミノ酸23bの一方が他方より1つだけ多いアミノ酸配列からなることが好ましい。図2に示す例において、非接着性オリゴペプチド20の交互配列23は、その自由端(C末端)を構成するリシン(K)の負電荷を打ち消すよう、リシン(K)の数がグルタミン酸(E)の数より1つだけ多いアミノ酸配列から構成されている。そして、接着性オリゴペプチド10の交互配列13は、こうして設計された非接着性オリゴペプチド20の交互配列23と同一のアミノ酸配列から構成されている。この結果、隣接する接着性オリゴペプチド10の分子と非接着性オリゴペプチド20の分子との間、及び隣接する接着性オリゴペプチド10の分子間においても効果的な静電的相互作用が生じ、電極層30に自己組織化単分子膜からなるオリゴペプチド層100が形成されている。
非接着性オリゴペプチド20を含むオリゴペプチド層100の形成は、例えば、上述の接着性オリゴペプチド10の場合と同様に、電極層30との間でチオレートを介した結合を形成し得る官能基を含む末端アミノ酸21を有する遊離の当該非接着性オリゴペプチド20(例えば、図3に示す接着性オリゴペプチド10から細胞接着性配列14を除去したアミノ酸配列からなるオリゴペプチド)を使用して行うことができる。
すなわち、例えば、遊離の接着性オリゴペプチド10及び遊離の非接着性オリゴペプチド20を含有する溶液中に電極層30を浸漬することにより、図2に示すように、当該接着性オリゴペプチド10及び非接着性オリゴペプチド20を、チオレートを介して当該電極層30に結合させて、オリゴペプチド層100を形成することができる。
また、このような遊離の非接着性オリゴペプチド20を使用して、接着性オリゴペプチド10で被覆された電極層30を作製することもできる。すなわち、例えば、まず、上述のようにして電極層30を非接着性オリゴペプチド20で被覆する。次いで、電極層30に結合した非接着性オリゴペプチド20と、細胞接着性配列14を含む遊離のペプチドと、の化学反応により、当該非接着性オリゴペプチド20の交互配列23の先端に当該細胞接着性配列14を結合させる。この結果、細胞接着性配列14を有する接着性オリゴペプチド10により被覆された電極層30が得られる。こうして、電極層30には、接着性オリゴペプチド10を含むオリゴペプチド層100が形成される。
なお、図2に示す例では、接着性オリゴペプチド10と非接着性オリゴペプチド20とからなるオリゴペプチド層100が形成されているが、これに限られず、例えば、接着性オリゴペプチド10からなるオリゴペプチド層100を形成することもできる。
オリゴペプチド層100が接着性オリゴペプチド10に加えて非接着性オリゴペプチド20を含む場合には、当該接着性オリゴペプチド10と当該非接着性オリゴペプチド20との比率を変えることにより当該オリゴペプチド層100に対する細胞50の接着性を調整することができる。
接着性オリゴペプチド10と非接着性オリゴペプチド20との比率(接着性オリゴペプチド10の含有量:非接着性オリゴペプチド20の含有量)は、実現すべき細胞50の接着の程度や当該細胞50の脱離効率に応じて適宜決定することができ、例えば、モル比率で0.1:100〜100:0とすることができる。
本実施形態に係る培養装置(以下、「本装置」という。)は、このように接着性オリゴペプチド10で被覆された、細胞50を接着させて培養するための電極層30を有する培養装置である。本方法は、本装置を使用して好ましく実施することができる。
本装置は、図4A〜図4Cに示すように、接着性オリゴペプチド10で被覆された電極層30を含み、当該電極層30に接着した細胞50を培養液60中に保持する培養部40を有している。培養部40は、細胞50が接着した電極層30及び培養液を収容できる器具であれば特に限られず、例えば、培養ディッシュ等の培養容器である。図4A〜図4Cに示す例において、培養部40は、培養ディッシュである。
電極層30は、図2及び図4A〜図4Cに示すように、基材41の表面に形成することができる。すなわち、電極層30は、例えば、基材41の表面に形成された導電性の薄膜とすることができる。
基材41は、その表面に電極層30を形成できる材料からなる部材であれば特に限られない。すなわち、基材41は、例えば、そのままで電極材料として使用するには必ずしも好ましくない金属材料や、ガラス、合成樹脂(ポリスチレンやポリプロピレン等)等の非金属材料からなる部材とすることができる。
電極層30上の細胞50を光学顕微鏡により観察する上では、基材41は、透明性のある材料から構成されることが好ましい。図4A〜図4Cに示す例において、基材41は、透明な樹脂で成形された培養ディッシュの底部である。
基材41の形状は、その表面に電極層30を形成できれば特に限られない。すなわち、基材41は、例えば、平板状、膜状、メッシュ状、棒状の成形体とすることができる。また、電極層30が形成される基材41の表面は、例えば、平坦な表面、凹凸が形成された表面(例えば、多孔質体の表面)、湾曲した表面とすることができる。図4A〜図4Cに示す例において、基材41は、平板状の部材であり、その平坦な表面に電極層30が形成されている。
また、培養部40は、図4A〜図4Cに示すように、電極層30に電位を印加するために、当該電極層30と電気的に接続された電気接続部30aを有することができる。電気接続部30aの配置は、電極層30に電位を印加可能となるように当該電気接続部30aが当該電極層30と電気的に接続されれば特に限られない。すなわち、電気接続部30aは、例えば、培養液60に浸漬されない培養部40の一部に形成され、当該培養液60に浸漬される電極層30と電気的に接続するよう形成される。
図4A〜図4Cに示す例において、電気接続部30aは、培養部40を構成する培養ディッシュの底面に形成されて培養液60に浸漬される電極層30から、当該培養液60に浸漬されない当該培養ディッシュの側壁まで延びるように形成されている。
電気接続部30aを構成する材料は、導電性の材料であれば特に限られず、例えば、上述の電極層30を構成し得る材料と同一の材料とすることができる。図4A〜図4Cに示す例において、電気接続部30aは、電極層30と同一の貴金属(例えば、金)で形成された薄膜である。
本方法の培養工程S1においては、好ましくは上述の本装置を使用して、接着性オリゴペプチド10で被覆された電極層30に細胞50を接着させて培養する。
細胞50は、接着性オリゴペプチド10を介して電極層30に接着できる細胞であれば特に限られない。すなわち、ヒト又はヒト以外の動物(サル、ブタ、イヌ、ラット、マウス等)の任意の臓器や組織(肝臓、心臓、膵臓、腎臓、脳、神経、皮膚、血液等)由来の細胞を使用することができる。
具体的に、例えば、臓器や組織の酵素処理や血液の分離処理によって採取された初代細胞や、樹立された株化細胞を使用することができる。また、分化した細胞のみならず、胚性幹細胞(embryonic stem cell)、多能性幹細胞(pluripotent stem cell)等の未分化細胞を使用することもできる。さらに、これらの細胞に遺伝子操作等の人為的処理を施した細胞を使用することもできる。例えば、iPS(induced pluripotent stem cell)細胞や、iPS細胞を分化させることにより作製された細胞を使用することもできる。
本方法及び本装置により培養された細胞50及び/又は当該細胞50から形成された細胞組織体を回収して医療分野の技術(再生医療技術や人工臓器等)に利用する場合には、ヒト又はヒト以外の哺乳動物由来の細胞を好ましく使用することができ、ヒト由来の細胞を特に好ましく使用することができる。
細胞50としては、その生存や増殖に足場を必要とする接着性細胞、又はその生存や増殖に足場を必要としない非接着性細胞のいずれを使用することもでき、接着性細胞を好ましく使用することができる。また、後述するように、培養工程S1において、細胞50が二次元的又は三次元的に集合した細胞組織体を培養する場合には、互いに結合を形成して当該細胞50の集合体を形成することができる細胞を好ましく使用することができる。細胞50としては、1種類の細胞を単独で使用することもできるが、2種類以上の細胞が任意の数比率で混在する細胞群を使用することもできる。
電極層30上での細胞50の培養は、培養液60中において当該細胞50を当該電極層30に接着させて所定温度(例えば、37℃)で所定時間(例えば、数時間〜数週間又は数カ月)保持することにより行うことができる。すなわち、例えば、まず、図4Aに示すような電極層30を含む培養部40を準備し、次いで、当該培養部40に、細胞50を分散した培養液60を入れて、37℃で数時間静置することにより、図4Bに示すように、当該培養液60中においてオリゴペプチド層100を介して当該細胞50を当該電極層30に接着させることができる。
培養液60としては、細胞50の生存状態や機能等を維持することができるよう、必要な塩類や栄養成分等を適切な濃度で含む水溶液であれば特に限られない。すなわち、例えば、DMEM(Dulbecco's Modified Eagle's Medium)等の基礎培地に抗生物質等を添加した培養液や、リン酸緩衝液(Phosphate Buffered Saline:PBS)等の水溶液を使用することができる。
電極層30に接着した細胞50は、典型的には、培養時間の経過に伴って、その形状が球形から比較的扁平な形状に変化する。培養期間中、細胞50は、培養液60中の栄養や酸素を消費してタンパク質の分泌等の代謝活動を行う。細胞50が増殖能力を有する場合、当該細胞50は、電極層30に沿って二次元的に、又は互いに重なり合って三次元的に増殖する。
続く脱離工程S2においては、細胞50が接着している電極層30に、接着性オリゴペプチド10が還元脱離する電位を印加して、当該細胞50を当該電極層30から脱離させる。すなわち、細胞50が接着性オリゴペプチド10を介して接着している電極層30に電位を印加して、当該接着性オリゴペプチド10の還元脱離を起こさせる。
電極層30に印加する電位は、接着性オリゴペプチド10が還元脱離し、且つ細胞50に悪影響を与えない範囲であれば特に限られず、例えば、当該接着性オリゴペプチド10の還元脱離ピーク電位又は当該還元脱離ピーク電位より負の電位とすることができる。
還元脱離ピーク電位は、使用する接着性オリゴペプチド10に固有の値として決定することができる。すなわち、例えば、接着性オリゴペプチド10が結合している電極層30に、所定の上限電位から所定の下限電位まで、電位を徐々に変化させながら印加した場合に、当該電極層30に還元電流が流れる電位を、当該接着性オリゴペプチド10の還元脱離ピーク電位として決定することができる。
具体的に、例えば、サイクリックボルタンメトリー(Cyclic Voltammetry:CV)を使用して、所定の初期電位から所定の反転電位まで、所定の掃引速度(電位の変化速度)で電極層30に電位を掃引印加し、さらに当該反転電位から折り返して再び当該初期電位まで当該所定の掃引速度で電位を掃引印加するとともに、この1サイクルの間、当該電極層30に流れる電流を測定する。そして、この測定結果として得られる、印加電位と検出電流値との関係を示すサイクリックボルタモグラムにおいて、還元電流を示す負電流のピークが現れた印加電位を還元脱離ピーク電位として決定する。
電極層30に印加する電位は、電位窓の範囲内とすることができる。すなわち、接着性オリゴペプチド10の還元脱離ピーク電位より負であって、且つ電位窓の範囲内の電位を使用することができる。なお、電位窓の範囲外であっても、細胞50に悪影響を与えない範囲内の電位であれば還元脱離に使用することができる。
還元脱離ピーク電位は使用する接着性オリゴペプチド10によって異なるが、脱離工程S2における印加電位としては、例えば、−0.1V〜−2.0V(vs Ag/AgCl)の範囲内の電位を使用することができ、−0.5V〜−1.5V(vs Ag/AgCl)の範囲内の電位を好ましく使用することができる。また、還元脱離ピーク電位より負の電位を電極表面に印加する場合には、例えば、当該還元脱離ピーク電位より0.05V〜0.5Vだけ負の電位を好ましく使用することができる。
また、接着性オリゴペプチド10に加えて、上述した非接着性オリゴペプチド20を使用する場合には、当該接着性オリゴペプチド10及び当該非接着性オリゴペプチド20の両方が還元脱離する電位を電極層30に印加する。すなわち、例えば、接着性オリゴペプチド10の還元脱離ピーク電位及び非接着性オリゴペプチド20の還元脱離ピーク電位のいずれよりも負の電位を使用することができる。
なお、例えば、非接着性オリゴペプチド20のアミノ酸配列が、細胞接着性配列14を有しない以外は接着性オリゴペプチド10と同一である場合等、これら接着性オリゴペプチド10のアミノ酸配列と非接着性オリゴペプチド20のアミノ酸配列とが同一又は類似である場合には、当該接着性オリゴペプチド10還元脱離ピーク電位と当該非接着性オリゴペプチド20の還元脱離ピーク電位とに大差がない(すなわち、細胞接着性配列14の有無による還元脱離ピーク電位のシフトの程度が小さい)ため、適切な電位を容易に決定することができる。
したがって、接着性オリゴペプチド10及び非接着性オリゴペプチド20の2種類を併用する場合においても、上述のように、印加電位としては、例えば、−0.1V〜−2.0V(vs Ag/AgCl)の範囲内の電位を使用することができ、−0.5V〜−1.5V(vs Ag/AgCl)の範囲内の電位を好ましく使用することができる。また、還元脱離ピーク電位より負の電位を電極表面に印加する場合には、例えば、当該還元脱離ピーク電位より0.05V〜0.5Vだけ負の電位を好ましく使用することができる。
接着性オリゴペプチド10を還元脱離させるための電極層30への電位の印加は、例えば、上述の還元脱離ピーク電位を決定する場合と同様に、還元脱離ピーク電位を含む所定の電位範囲内において所定の掃引速度で電位を変化させる走査型の印加によって行うことができる。
また、電極層30への電位の印加は、例えば、還元脱離ピーク電位又は当該還元電位ピーク電位より負の一定電位を印加し続ける連続型の印加によって行うこともできる。すなわち、印加する電位を一定の電位に固定し、当該一定の印加電位を所定時間にわたって維持する。
この場合、特に、還元脱離ピーク電位より負の一定電位を所定時間にわたって連続的に印加することが好ましい。こうすれば、電極層30の全体に還元脱離ピーク電位又は当該還元脱離ピーク電位より負の電位を確実に印加することができる。
このような電位の印加を本装置により行う場合、本装置は、培養部40に加えて、電極層30を作用極として含む電極系を有することができる。すなわち、図4Cに示す例において、本装置は、電極層30からなる作用極と、参照極31と、対極32と、を含む3電極系を有している。
参照極31は、参照極として機能するものであれば特に限られず、例えば、銀/塩化銀電極(Ag/AgCl)とすることができる。対極32は、対極として機能するものであれば特に限られず、例えば、白金電極とすることができる。なお、本装置は、電極層30からなる作用極と、参照極31又は対極32と、を含む2電極系を有することとしてもよい。
また、本装置は、図4Cに示すように、接着性オリゴペプチド10が還元脱離する電位を電極層30に印加する電位印加部33をさらに有することとしてもよい。電位印加部33としては、例えば、サイクリックボルタンメトリーを使用することができる。
この場合、脱離工程S2においては、まず、培養液60中に浸漬され細胞50が接着した電極層30と電位印加部33とを電気的に接続する。図4Cに示す例においては、電極層30と電気的に接続され、培養液60外まで延び出た電気接続部30aと電位印加部33とを電気的に接続する。
また、図4Cに示す例においては、電位印加部33と電気的に接続された参照極31及び対極32を培養液60中に浸漬する。なお、2電極系を使用する場合には、参照極31又は対極32の一方のみ(例えば、参照極31のみ)を培養液60中に浸漬することとしてもよい。
そして、電位印加部33によって電極層30に電位を印加する。電位印加部33は、例えば、還元脱離ピーク電位を含む所定の電位範囲内において、所定の掃引速度で電位を変化させながら電極層30に掃引電位を印加することができる。また、電位印加部33は、例えば、還元脱離ピーク電位又は当該還元脱離ピーク電位より負の任意の一定電位を連続的に電極層30に印加することもできる。
脱離工程S2においては、上述のような電位の印加によって、接着性オリゴペプチド10を電極層30から脱離させ、さらに、当該接着性オリゴペプチド10を介して当該電極層30に接着していた細胞50も脱離させる。
すなわち、図4Bに示すように、細胞50が互いに結合しない分散状態で電極層30に接着していた場合には、接着性オリゴペプチド10の還元脱離によって、図4Cに示すように、当該細胞50は分散状態で当該電極層30から脱離する。したがって、この場合、培養液60中に分散状態で浮遊する個々の細胞50を回収することができる。
走査型の電位の印加を行う場合には、初期電位と反転電位との間の掃引サイクルを繰り返し実行することにより、電極層30からの細胞50の脱離を効率よく行うことができる。また、連続型の電位の印加を行う場合には、走査型の電位印加場合に比べて、より効率よく細胞50を電極層30から脱離させることができる。特に、還元脱離ピーク電位より負の一定電位を連続的に印加することにより、電極層30からの細胞50の脱離を効率よく且つ確実に行うことができる。また、矩形波等、高い周波数で電位の印加を行うこともできる。
また、本方法においては、複数の細胞50が互いに結合し、二次元的又は三次元的に集合して形成された細胞組織体を製造することもできる。図5A〜図5Cは、本実施形態において細胞組織体を培養し回収する過程の一例についての説明図である。図5A〜図5Cに示す例においては、シート状の細胞組織体(以下、「細胞組織体シート51」という。)を製造する。
すなわち、培養工程S1において、接着性オリゴペプチド10で被覆された電極層30(図2参照)に細胞50を接着させて培養することで(図5A)、当該電極層30に接着した細胞組織体シート51を形成する(図5B)。次いで、脱離工程S2において、細胞組織体シート51が接着している電極層30に、接着性オリゴペプチド10が還元脱離する電位を印加して、当該細胞組織体シート51を当該電極層30から脱離させる(図5C)。
具体的に、まず、培養工程S1においては、図5Aに示すように、培養液60中に分散された個々の細胞50を、オリゴペプチド層100を介して電極層30に接着させ、培養する。培養時間の経過に伴い、細胞50は増殖し、電極層30に沿って広がる。この結果、増殖した細胞50は、互いに結合して、図5Bに示すように、オリゴペプチド層100を介して電極層30に結合した細胞組織体シート51を形成する。なお、増殖しない細胞50を使用する場合であっても、例えば、比較的高い密度で当該細胞50を電極層30上に播種して培養することにより、当該細胞が互いに結合した細胞組織体シート51を形成することができる。
そして、脱離工程S2においては、図5Cに示すように、オリゴペプチド層100を構成する接着性オリゴペプチド10及び非接着性オリゴペプチド20を還元脱離させる電位を電極層30に印加することで、当該接着性オリゴペプチド10及び非接着性オリゴペプチド20とともに、細胞組織体シート51を当該電極層30から脱離させる。
ここで、複数の細胞50が二次元的又は三次元的に結合して構成される細胞組織体シート51が電極層30に接着している場合には、当該細胞組織体シート51に含まれる多くの細胞50が当該電極層30に接着している。このため、細胞組織体シート51を電極層30から効率よく脱離させるには、接着している多くの細胞50の大部分を同時に脱離させる必要がある。
この点、本方法においては、例えば、上述のとおり、接着性オリゴペプチド10の還元脱離ピーク電位より負の一定電位を電極層30に連続的に印加することにより、細胞組織体シート51を当該電極層30から効率よく脱離させることができる。脱離した細胞組織体シート51は、培養液60中に浮遊するため、容易に回収することができる。
なお、本方法により製造される細胞組織体は、複数の細胞50の集合体であれば上述の細胞組織体シート51に限られない。すなわち、例えば、上述の細胞組織体シート51の場合と同様にして、細胞50が電極層30上で三次元的に盛り上がりながら集合して形成されるドーム状又は球状の組織体(いわゆるスフェロイド)を培養し回収することもできる。
ここで、例えば、自己組織化しないオリゴペプチドで電極層30を被覆する場合には、培養液60に含まれるタンパク質や、細胞50が分泌するタンパク質が、当該オリゴペプチドの隙間から当該電極層30に吸着し、その結果、当該細胞50が当該タンパク質を介して当該電極層30に強固に接着することがある。この場合、オリゴペプチドが還元脱離する電位を電極層30に印加しても、当該電極層30から細胞50を短時間で効率よく脱離させることは困難である。
これに対し、上述の接着性オリゴペプチド10で被覆された電極層30においては、当該接着性オリゴペプチド10が交互配列13を有することにより、当該接着性オリゴペプチド10を含む自己組織化単分子膜(例えば、図2に示すオリゴペプチド層100)が形成される。この結果、接着性オリゴペプチド10及び電極層30に対するタンパク質の非特異的吸着、そして当該電極層30に対する細胞50の非特異的接着を効果的に回避又は低減することができる。
このため、接着性オリゴペプチド10を介して電極層30に接着した細胞50は、当該接着性オリゴペプチド10が還元脱離する電位を当該電極層30に印加することにより、短時間で効率よく脱離させることができる。
また、本方法及び本装置により培養され回収された細胞50及び細胞組織体には、電極層30から脱離した接着性オリゴペプチド10が細胞接着性配列14を介して結合することとなる。このため、例えば、接着性オリゴペプチド10が結合した細胞50及び/又は細胞組織体を生体(ヒト又はヒト以外の動物)に移植する場合の安全性が問題となり得る。このような安全性の問題は、例えば、アルカンチオールや他の高分子材料が結合した細胞や細胞組織体を移植する場合でも生じる。
この点、接着性オリゴペプチド10は、アルカンチオール等の生体に存在しない分子と比較して生体適合性が高い。すなわち、接着性オリゴペプチド10の分解により生成される物質はアミノ酸のみである。したがって、本方法及び本装置により製造された細胞50及び細胞組織体は、生体に移植する場合の安全性が高い等、生体適合性が高く、医療への応用に適したものとなる。
また、細胞50及び細胞組織体は、タンパク質分解酵素やキレート剤を使用することなく非侵襲的に回収される。したがって、回収された細胞50及び細胞組織体は、その代謝活性や所望の機能が損われておらず、生体への移植その他の用途に適した、所望の特性を維持したものとすることができる。
このように、本方法及び本装置によれば、再生医療や人工臓器等の医療への応用に適した細胞50及び細胞組織体を効率よく製造することができる。なお、本方法及び本装置により製造された細胞50及び細胞組織体は、医療に限らず他の任意の用途に供することもできる。すなわち、この細胞50及び細胞組織体は、例えば、動物実験代替法における薬物代謝モデル等、様々な研究ツールとして使用することもできる。
また、図6及び図7A〜図7Cに示すように、電極層30は、培養液60中に浮いた状態で保持される多孔質膜70の表面に形成されていることとしてもよい。すなわち、図6に示す例において、多孔質膜70は、その一方の表面(以下、「上面71」という。)から他方の表面(以下、「下面72」という。)まで連通する多数の孔73が形成された多孔構造を有する膜である。そして、この多孔質膜70の上面71に形成された電極層30には、当該多孔質膜70の孔73に対応する開口が形成されている。
多孔質膜70は、その上面71に電極層30を形成することができるものであれば特に限られない。すなわち、多孔質膜70としては、例えば、図6に示すように、平坦な上面71を有し、当該上面71から下面72まで貫通する孔73が形成されたものを好ましく使用することができる。
多孔質膜70を構成する材料は、細胞50の培養に適したものであれば特に限られず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリウレタン等の樹脂や、金属薄膜を使用することができる。多孔質膜70に形成される孔73のサイズは、細胞50が通過できない範囲であれば特に限られず、当該孔73の直径は、例えば、0.1〜3μmとすることができる。多孔質膜70の開口率は特に限られず、例えば、1〜25%とすることができる。
多孔質膜70は、図7A〜図7Cに示すように、培養液60中に浮いた状態で保持される。すなわち、多孔質膜70は、その上面71側(電極層30側)のみならず、反対の下面72側でも培養液60と接している。
具体的に、図7A〜図7Cに示す例において、本装置の培養部40は、電極層30が形成された多孔質膜70を底部として有する第一の培養容器42と、当該多孔質膜70が培養液60中に浮いた状態で保持されるように当該第一の培養容器42を支持する第二の培養容器43と、を有している。この結果、多孔質膜70の孔73内には下面72側からも培養液60が供給される。
そして、本方法の培養工程S1においては、まず、図7Aに示すように、培養液60中に浮いた状態で保持された多孔質膜70の電極層30に細胞50を接着させて培養することで当該電極層30に接着した細胞組織体シート51を形成する。
ここで、細胞組織体シート51は、多数の細胞50が密に集合した細胞組織体である。このため、例えば、図5A〜図5Cに示すように細胞組織体シート51の一方の表面(電極層30と反対側の表面)側からしか栄養や酸素が供給されない場合には、当該細胞組織体シート51の厚みが大きくなると内部の細胞が壊死してしまう。したがって、この場合、細胞組織体シート51の厚みを増加させるには限界がある。すなわち、一定以上の厚みの細胞組織体シート51を形成することはできない。
この点、図7A〜図7Cに示す例においては、電極層30が、培養液60中に浮いた状態で保持された多孔質膜70に形成されている。したがって、図7Aにおいて破線の矢印で示すように、電極層30に接着した細胞組織体シート51に対して、多孔質膜70の下面72側からも、多数の孔73を通じて、培養液60中の栄養や酸素を効率よく供給することができる。この結果、図7Bに示すように、細胞組織体シート51を構成する細胞50を三次元的に増殖させて、図5A〜図5Cに示す場合に比べて、より厚みの大きな(細胞50の層数がより多い)細胞組織体シート51を形成することができる。
続く脱離工程S2においては、図7Cに示すように、細胞組織体シート51が接着している電極層30に、接着性オリゴペプチド10が還元脱離する電位を印加して、当該細胞組織体シート51を当該電極層30から脱離させる。
すなわち、図7Cに示す例においては、電極層30と電位印加部33とを電気的に接続するとともに、当該電位印加部33と電気的に接続された参照極31を培養液60中に浸漬することにより、当該電極層30に電位を印加する。なお、図7Cに示す例において、第一の培養容器42は、図4A〜図4Cに示す例と同様に、培養液60外に電気接続部30aを有しているため、電極層30に電位を印加する際には、当該電気接続部30aと電位印加部33とを電気的に接続する。
ここで、接着性オリゴペプチド10を還元脱離させるためには、当該接着性オリゴペプチド10が結合した電極層30と、参照極31(及び対極32)と、の間に存在する細胞組織体シート51による電気的抵抗が小さいほど好ましい。
しかしながら、例えば、図5A〜図5Cに示すような場合には、細胞組織体シート51が大きな電気的抵抗となってしまうため、当該細胞組織体シート51の外縁部分が接着している電極層30の一部にしか適切な電位が印加されず、当該一部のみでしか接着性オリゴペプチド10は脱離しない。このため、細胞組織体シート51は、その外縁部分から徐々に脱離せざるを得ない。
これに対し、図7A〜図7Cに示すように電極層30が培養液60中に浮いた状態で保持されている多孔質膜70に形成されている場合には、図5A〜図5Cに示す場合に比べて、細胞組織体シート51による電気的抵抗が効果的に低減される。このため、図7Cにおいて破線の矢印で示すように、多孔質膜70の下面72側からも多数の孔73を通じて、細胞組織体シート51が接着している電極層30の全体に適切な電位を印加することができ、当該全体で接着性オリゴペプチド10を脱離させることができる。したがって、図5A〜図5Cに示す場合に比べて、細胞組織体シート51の脱離をさらに短時間で効率よく達成することができる。
このように、電極層30を形成する基材として多孔質膜70を使用することによって、従来は困難であった厚みの大きな細胞組織体シート51を、従来にない短時間で脱離させることができる。
また、細胞組織体シート51を回収する際には、培養液60を、多孔質膜70の下面72側から上面71側へ孔73を介して流通させることによって、当該多孔質膜70の上面71に接着していた細胞組織体シート51を効率よく回収することもできる。
細胞組織体シート51の厚みが大きくなることにより、当該細胞組織体シート51の物理的強度が増す。したがって、この厚い細胞組織体シート51は、例えば、再生医療等の目的で細胞組織体シート51を生体に移植するために持ち運ぶ際に破れにくくなる等、その取扱いやすさが顕著に向上する。
なお、多孔質膜70上に形成された電極層30は、細胞組織体シート51を製造する場合に限らず、他の細胞組織体や、分散された個々の細胞50を製造する場合においても、栄養や酸素の効率的な供給や適切な電位の効率的な印加等、同様の効果をもたらす。
また、細胞組織体シート51を製造する場合、本方法は、図8に示すように、電極層30から脱離させた複数の細胞組織体シート51を積層して、当該細胞組織体シート51の積層体(以下、「細胞組織積層体」という。)を形成する第三工程(以下、「積層工程S3」という。)をさらに含むことができる。
すなわち、この場合、培養工程S1においては、接着性オリゴペプチド10で被覆された電極層30に複数の細胞組織体シート51を接着させて培養する。次いで、脱離工程S2において、接着性オリゴペプチド10を還元脱離させることで複数の細胞組織体シート51を電極層30から脱離させて回収する。そして、積層工程S3において、回収された複数の細胞組織体シート51を積層して、シート状の細胞組織積層体を形成する。なお、複数の細胞組織体シート51の形成は、例えば、互いに離隔して形成された複数の電極層30を使用することにより行うことができる。
積層工程S3においては、複数の細胞組織体シート51を積層した状態で所定時間培養することもできる。この場合、培養時間の経過に伴って、複数の細胞組織体シート51を構成する細胞50が互いに接着し、当該複数の細胞組織体シート51が一体化して、より厚みの大きな細胞組織積層体を形成することができる。
細胞組織積層体の厚みは、当該細胞組織積層体の形成に使用された複数の細胞組織体シート51の個々の厚みや、積層する当該細胞組織体シート51の数によって調整することができる。なお、個々の細胞組織体シート51の厚みは、例えば、上述した多孔質膜70を使用することにより調整することができる。
このように、積層工程S3を含む本方法によれば、所望の厚みを有する細胞組織積層体を確実に且つ効率よく製造することができる。製造された細胞組織積層体は、上述した個々の細胞組織体シート51と同様、再生医療等の目的で生体に移植する移植片や、その他の様々な用途に好ましく利用することができる。
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
[オリゴペプチドの自発的結合と還元脱離のモニタリング]
図2及び図3に示す接着性オリゴペプチド10及び非接着性オリゴペプチド20を設計し、作製した。すなわち、接着性オリゴペプチド10は、N末端からC末端に向けて、システイン(C)と、3つのグリシン(G)が結合してなる中間配列12と、4つのリシン(K)と3つのグルタミン酸(E)とが1つずつ交互に結合してなる交互配列13と、グリシン(G)、アルギニン(R)、グリシン(G)、アスパラギン酸(D)、セリン(S)及びプロリン(P)が順次結合してなる細胞接着性配列14と、が順次結合してなる、配列番号1に示すアミノ酸配列からなるオリゴペプチドであった。
また、非接着性オリゴペプチド20は、N末端からC末端に向けて、システイン(C)と、3つのグリシン(G)が結合してなる中間配列22と、4つのリシン(K)と3つのグルタミン酸(E)とが1つずつ交互に結合してなる交互配列23と、が順次結合してなる、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるオリゴペプチドであった。すなわち、非接着性オリゴペプチド20のアミノ酸配列は、細胞接着性配列14を有しない以外は上述の接着性オリゴペプチド10のアミノ酸配列と同一であった。これら接着性オリゴペプチド10及び非接着性オリゴペプチド20は、シグマアルドリッチ社によるカスタムペプチド合成サービスを利用して作製した。
QCM(quartz crystal microbalance)装置(QCA922、SEIKO EG&G製)を用いて、接着性オリゴペプチド10を直径5mmの金薄膜(電極層30に相当)が形成された水晶振動子表面(QA−A9M−AU、SEIKO EG&G製)に化学吸着させた。そして、この化学吸着の過程で生じる質量の変化を共振周波数変化として測定した。
すなわち、まず、水晶振動子が固定されたチャンバー(QA−CL4、SEIKO EG&G製)に純水を500μL入れ、共振周波数を安定化させた。次いで、1mMの接着性オリゴペプチド10を含むオリゴペプチド水溶液2μLをチャンバー内に静かに注入した。その後、水晶振動子の共振周波数変化を連続的にモニタリングした。
図9に測定の結果を示す。図9において、横軸はオリゴペプチド水溶液をチャンバー内に注入してからの時間(秒)を示し、縦軸は測定された共振周波数変化(Hz)を示す。図9に示すように、接着性オリゴペプチド10の金表面への自発的結合は、150秒程度で飽和に達し、約120Hzの周波数変化が観察された。
使用したQCM装置は1Hzあたり0.38ngの感度を有することから、金の表面積19.6mmを考慮すれば、単位面積(1mm)あたり約233ngの接着性オリゴペプチド10分子が化学吸着したことが示された。
次に、上述のようにして接着性オリゴペプチド10を自発的に結合させた水晶振動子を純水で洗浄した後、当該接着性オリゴペプチド10で修飾された水晶振動子を作用極とし、白金板を対極とし、銀/塩化銀(内部溶液:飽和NaCl)電極を参照極として、0.5MのKOH水溶液中で3電極系を構成した。
そして、この3電極系を備えた電気化学測定装置(QCM922、SEIKO EG&G製)により、開始電圧が−0.3V、最小掃引電圧が−1.0V、掃引速度が20mV/秒の条件にて、作用極に電位を印加するとともに、当該作用極から得られる共振周波数をモニタリングした。
図10に測定の結果を示す。図10において、横軸は電位の印加を開始してからの時間(秒)を示し、右縦軸は印加された電圧(V vs. Ag/Cl)を示し、左縦軸は共振周波数変化(Hz)を示す。
図10に示すように、−0.3Vから−1.0Vまでの負の方向の電位走査において、−0.6Vの電位印加から共振周波数の上昇、すなわち接着性オリゴペプチド10の脱離が観察された。一方、−1.0Vから−0.3Vまでの正方向の電位走査では共振周波数の大きな変化は観察されなかった。すなわち、−0.6V付近の電位印加によって接着性オリゴペプチド10が金表面から脱離し、これに伴う周波数変化は約110Hzであることが示された。
このQCM装置は1Hzあたり0.38ngの感度を有することから、金の表面積19.6mmを考慮すれば、単位面積(1mm)あたり約213ngの接着性オリゴペプチド10分子が脱離したことが示された。そして、図9および図10の比較から、吸着した接着性オリゴペプチド10分子のうち、90%以上の分子が電位印加によって脱離することが示された。
[オリゴペプチド修飾表面に対するタンパク質の非特異的吸着量の測定]
QCM装置(AFFINIX QN、Initium社製)を用いて、接着性オリゴペプチド10を直径1.2mmの金薄膜が形成された水晶振動子表面(Initium社製)に化学吸着させた。そして、この水晶振動子表面へのタンパク質の吸着量を測定した。タンパク質としては、フィブロネクチン(SIGMA製)及び血清アルブミン(SIGMA製)を用いた。
まず、水晶振動子の金表面(電極層30に相当)に1mMの接着性オリゴペプチド10を含むオリゴペプチド水溶液を滴下し、化学吸着させた。1時間後、この水晶振動子表面を純水で洗浄し、乾燥させた。乾燥した水晶振動子をQCM装置に取り付け、測定を開始した。共振周波数が±3Hz/分程度になるまで待ち、安定化させた(5〜15分間)。この安定した共振周波数をタンパク質吸着前の共振周波数とした。
次に、水晶振動子を一旦取り外し、その金表面に、PBSに0.1mMのフィブロネクチンを溶解して調製したフィブロネクチン水溶液、又はPBSに0.1mMの血清アルブミン溶液を溶解して調製した血清アルブミンン水溶液を滴下した。30分後、水晶振動子の金表面をPBSで洗浄し、乾燥させた。水晶振動子を再びQCM装置に取り付け、安定化させ、その時の共振周波数を読み取った。この安定した共振周波数をタンパク質吸着後の共振周波数とした。
これらタンパク質吸着前の共振周波数とタンパク質吸着後の共振周波数との差からタンパク質吸着前後の共振周波数変化を求めた。そして、使用したQCM装置は1Hzあたり0.03ngの感度を有することから、この値を用いてタンパク質の吸着量を算出した。
図11にタンパク質吸着量の算出結果を示す。図11において、横軸は用いたタンパク質の種類(フィブロネクチン又は血清アルブミン)を示し、縦軸は水晶振動子の金表面に対する当該タンパク質の吸着量(ng)を示す。また、図11において、白抜きの棒グラフは、接着性オリゴペプチド10を結合させていない水晶振動子を用いた場合の結果を示し、黒塗りの棒グラフは、接着性オリゴペプチド10を結合させた水晶振動子を用いた場合の結果を示す。
図11に示すように、水晶振動子の金表面に接着性オリゴペプチド10を結合させた場合には、当該接着性オリゴペプチド10を結合しない場合に比べて、フィブロネクチンの吸着は13%に抑制され、また血清アルブミンの吸着は11%に抑制された。すなわち、接着性オリゴペプチド10はタンパク質の吸着を顕著に抑制することが示された。
[還元脱離ピーク電位の測定]
電極層30を形成する基材として、平坦な耐熱性ガラス基板(直径3インチ、厚さ500μm、Corning製)を使用した。25%アンモニア水と30%過酸化水素水と純水とを1:1:4の体積比で混合した水溶液を沸騰させ、この沸騰した水溶液に上記ガラス基板を浸漬した。その後、ガラス基板を沸騰した純水で濯ぎ、自然乾燥させた。
次に、スパッタデポジション装置(CFS−4ES、芝浦メカトロニクス株式会社製)を使用して、出力100W、アルゴン雰囲気0.3Paの条件にて、ガラス基板の表面にクロムを2分間スパッタリングし、厚さ約4nmのクロム薄膜を形成した。さらに、同条件にてガラス基板のクロム薄膜の上に金を2分間スパッタリングし、厚さ約40nmの金薄膜(電極層30に相当)を形成した。金薄膜が形成されたガラス基板をダイシングソー(A−WD−10A、株式会社東京精密製)にて10mm×10mmの矩形平板に切断し、純水で洗浄して自然乾燥させた。
上述のようにして作製した電極基板を、非接着性オリゴペプチド20を1.0μMで含有するオリゴペプチド水溶液中に一晩浸漬させた。その後、電極基板を純水で洗浄した。このようにして、非接着性オリゴペプチド20を結合させた金薄膜表面を有する電極基板を得た。
非接着性オリゴペプチド20が結合した電極基板を作用極とし、白金板を対極とし、銀/塩化銀(内部溶液:飽和KCl)電極を参照極として、0.5MのKOH水溶液中で3電極系を構成した。そして、この3電極系を備えた電気化学測定装置(AUTOLAB;Metrohm Autolab、The Netherlands製)により、開始電圧が−0.3V、最小掃引電圧が−1.0V、掃引速度が20mV/秒の条件にて、作用極に電位を印加するとともに、当該作用極に流れる電流値をモニタリングした。
図12に、1サイクルの掃引で得られたサイクリックボルタモグラムを示す。図12において、横軸は印加した電位(V vs. Ag/AgCl)を示し、縦軸は測定された電流値(μA)を示す。
図12に示すように、−0.3Vから−1.0Vまでの掃引(走査)電位範囲のうち、−0.6V付近に比較的ブロードな電流のピークが現れた。これは、作用極の表面に−0.6Vの負電位を印加したことにより、当該表面に結合していた非接着性オリゴペプチド20が還元されるとともに当該表面から脱離し、これに伴い、還元電流がピークとして検出された結果と考えられる。こうして、非接着性オリゴペプチド20の還元脱離ピーク電位は−0.6Vと決定された。なお、接着性オリゴペプチド10のアミノ酸配列と非接着性オリゴペプチド20のアミノ酸配列とは、前者が細胞接着性配列14を有すること以外は同一であるため、当該接着性オリゴペプチド10もまた、当該非接着性オリゴペプチド20と同程度の電位を印加することにより還元脱離することが予測された。
以上の結果より、金薄膜からなる電極層30に結合した接着性オリゴペプチド10及び非接着性オリゴペプチド20を当該電極層30から還元脱離させるためには、当該電極層30に−0.6Vより負に大きい電位(例えば、−1.0V)を印加することが有効と考えられた。
[細胞脱離試験用電極の準備]
上述した還元脱離ピークの測定と同様に、金薄膜が形成されたガラス基板からなる電極基板を、接着性オリゴペプチド10を5μMで含有し、且つ非接着性オリゴペプチド20を45μMで含有するオリゴペプチド水溶液中に一晩浸漬させた。その後、電極基板を純水で洗浄した。このようにして、接着性オリゴペプチド10と非接着性オリゴペプチド20とを1:9のモル比で結合させた金薄膜表面を有する電極基板(以下、「10%接着性電極」という。)を得た。また、同様に、接着性オリゴペプチド10のみを50μMで含有するオリゴペプチド水溶液を使用して、接着性オリゴペプチド10のみを結合させた金薄膜表面を有する電極基板(以下、「100%接着性電極」という。)を得た。
また、比較の対照として、Dithiobis(succinimidyl undecanoate)と、グリシン−アルギニン−グリシン−アスパラギン酸−セリン配列からなる細胞接着性のRGDペプチド(ペプチド研究所製)と、の結合反応により生成された接着性アルカンチオールを準備し、上述の場合と同様に、当該接着性アルカンチオールを結合させた金薄膜表面を有する電極基板(以下、「アルカンチオール電極」という。)を得た。また、接着性オリゴペプチド10、非接着性オリゴペプチド20及び接着性アルカンチオールのいずれも結合させていない金薄膜表面を有する電極基板(以下、「金電極」という。)も準備した。こうして、10%接着性電極、100%接着性電極、アルカンチオール電極及び金電極という4種類の電極基板を準備した。
[細胞の準備]
細胞としては、3T3線維芽細胞(理化学研究所より購入)を使用した。培養液としては、DMEM(Cambrex製)に牛胎児血清(Fetal Bovine Serum:FBS)を10%添加した培養液を使用した。
この培養液を12mL入れた直径100mmのポリスチレン製ディッシュ(BD Falcon、日本ベクトンディッキンソン株式会社製)内で細胞を3日間、前培養することにより、増殖させた。増殖後の細胞をトリプシン処理によって回収した。
[細胞の接着及び培養]
上述のように前培養した細胞を、培養液中に2.5×10個/mLの密度で懸濁し、細胞分散液を調製した。そして、この細胞分散液を、上述のようにして準備した4種類の電極基板のいずれかが収容された直径35mmのディッシュに2mL入れた。すなわち、細胞は、5×10個/ディッシュの密度で播種した。そして、温度37℃、水蒸気飽和させた二酸化炭素5%/95%空気の雰囲気下にて、細胞を電極表面で24時間培養した。
[電位印加による細胞の脱離]
上述のようにして培養した細胞が接着した電極基板を作用極とし、白金板を対極とし、銀/塩化銀(内部溶液:飽和KCl)電極を参照極として、3電極系を構成した。
直径35mmのポリスチレン製ディッシュ(BD Falcon、日本ベクトンディッキンソン株式会社製)の底面に、作用極の電極基板を水平に固定し、リン酸緩衝液中に浸漬した。さらに、このディッシュ内のリン酸緩衝液には、作用極に加え、対極、参照極も浸漬した。
電位印加部としては、ポテンショスタット(北斗電工株式会社製)を使用した。そして、ポテンショスタットにより、作用極に、非接着性オリゴペプチド20の還元脱離ピーク電位(−0.6V)より0.4Vだけ負である−1.0Vの一定電位を連続的に印加した。
次いで、電位の印加を開始した直後、及び電位の印加を開始してから1分、2分、3分が経過した各時点で、作用極の電極表面に接着している細胞の数を位相差顕微鏡下でカウントした。そして、電位の印加開始直後に電極表面に接着している細胞の数を100%とした場合における、各電位印加時間で当該電極表面に接着している細胞の数の割合(%)を評価した。
図13には、評価の結果を示す。図13において、横軸は電位の印加を開始してから経過した時間(分)、縦軸は、各電位印加時間で電極表面に接着している細胞数の割合(%)を示す。黒丸印は100%接着性電極を使用した場合の結果(「オリゴペプチド(100%接着性)/金」)、白四角印は10%接着性電極を使用した場合の結果(「オリゴペプチド(10%接着性)/金」)、白丸印はアルカンチオール電極を使用した場合の結果(「アルカンチオール/金」)、白三角印は金電極を使用した場合の結果(「金」)、をそれぞれ示している。
図13に示すように、金薄膜からなる電極表面に細胞を直接接着させた場合(金電極を使用した場合)は、電位の印加によってほとんど細胞は脱離しなかった。一方、接着性オリゴペプチド10又は接着性アルカンチオールを介して細胞を接着させた場合(10%接着性電極、100%接着性電極又はアルカンチオール電極を使用した場合)は、電位印加によって細胞が脱離することが示された。
ただし、アルカンチオール電極を使用した場合には、電位印加開始から2分経過した時点では約45%の細胞が脱離せずに残存していた。これに対し、接着性オリゴペプチド10を使用した場合には、接着性アルカンチオールを使用した場合と比較して、より早く細胞が脱離した。すなわち、電位印加開始から2分経過後には、10%接着性電極及び100%接着性電極の表面に接着していた細胞のほとんどが脱離し、リン酸緩衝液中に浮遊した。そして、3分後に残存している細胞数はほぼ0%であった。特に、100%接着性電極を使用した場合には、極めて迅速な細胞の脱離が達成された。
このように、接着性オリゴペプチド10を介して細胞を電極表面に接着させることにより、電位の印加によって従来よりも効率よく且つ確実に細胞を表面から脱離できることが確認された。
[細胞組織体シート脱離試験用電極の準備]
上述の実施例1と同様に、金薄膜が形成されたガラス基板からなる電極基板を、接着性オリゴペプチド10を1.0μMで含有するオリゴペプチド水溶液中に一晩浸漬させることによって、当該接着性オリゴペプチド10を結合させた金薄膜表面(電極層30に相当)を有する電極基板を作製した。
[細胞の接着及び培養]
3T3線維芽細胞(理化学研究所より購入)を、培養液中に5.0×10個/mLの密度で懸濁し、細胞分散液を調製した。そして、この細胞分散液を、電極基板が収容された直径35mmのディッシュに2mL入れた。細胞の播種密度以外は上述の実施例1と同様の条件下で細胞を1週間培養した。
この結果、培養開始から48時間が経過した時点で、細胞は電極表面に接着するとともに、互いに二次元的に結合を形成してシート状の細胞組織体を形成した。すなわち、電極表面に接着した細胞組織体シートが形成された。
[電位印加による細胞組織体シートの脱離]
上述の実施例1と同様に、接着性オリゴペプチド10及び非接着性オリゴペプチド20が結合した電極基板からなる作用極を含む3電極系を作製した。そして、ポテンショスタットにより、リン酸緩衝液中において、作用極に−1.0Vの一定電位を連続的に印加した。この結果、電位の印加を開始してから5分が経過した時点で、細胞組織体シートの全体が電極表面から脱離し、リン酸緩衝液中に浮遊した。
すなわち、細胞組織体シートが接着した作用極に一定の電位を連続的に印加することにより、シート状の形態を維持したまま当該細胞組織体シートを当該作用極の電極表面から脱離させることができた。
さらに、電極表面から剥離した細胞組織体シートに含まれる細胞の生存状態を確認するために、回収した当該細胞組織体シートを、10μg/mLの濃度のFluorescein Diacetate(FDA、和光純薬工業株式会社製)と40μg/mLの濃度のEthidium Bromide(EB、和光純薬工業株式会社製)と、を含むリン酸緩衝液中に5分間浸漬した。
こうして、細胞組織体シートに含まれる生存している細胞をFDAにより、死滅している細胞をEBにより、それぞれ選択的に蛍光染色した。その結果、回収された細胞組織体シートに含まれる細胞のほとんどが生存していることが確認された。
このように、本方法によれば、電極表面で培養した細胞組織体シートを非侵襲的に、効率よく且つ確実に脱離させて回収できた。すなわち、本方法は、細胞組織体シートの製造方法として極めて有用であることが確認できた。
[多孔質膜に形成された電極層を有する培養装置の作製]
多孔質膜70に形成された電極層30を使用して細胞組織体シートを製造した。すなわち、図14に示すように、多孔質膜70からなる底部を有する第一の培養容器42と、当該多孔質膜70が培養液中に浮遊した状態で保持されるよう当該第一の培養容器42を保持する第二の培養容器43とを使用して、図7A〜図7Cに示すような培養系を構築した。なお、図14に示す例において、第二の培養容器43は、多孔質膜70が培養液中に浮遊した状態で保持されるよう第一の培養容器42を支持しつつ当該第二の培養容器43内に収容される、シリコン製のリング43aを有していた。
第一の培養容器42としては、セルインサートメンブレン(Cell Culture Insert #353493、BD FalconTM製)を使用した。この第一の培養容器42は、その底部として、厚さが約20〜25μmであり、直径が約0.4μmの貫通孔73が多数形成され、開口率が約12.6%である、ポリエチレンテレフタレート製の多孔質膜70を有していた。図15には、使用した多孔質膜70の電子顕微鏡写真を示す。図15に示すように、この多孔質膜70には、その一方の表面から他方の表面まで貫通する多数の孔73が形成されていた。
多孔質膜70の表面(図6に示す上面71に相当する表面)への電極層30の形成は次のようにして行った。スパッタデポジション装置(CFS−4ES、芝浦メカトロニクス株式会社製)を使用して、出力100W、アルゴン雰囲気0.3Paの条件にて、インサートメンブレンの多孔質膜70の表面にクロムを2分間スパッタリングし、厚さ約4nmのクロム薄膜を形成した。さらに、同条件にてガラス基板のクロム薄膜の上に金を2分間スパッタリングし、厚さ約40nmの金薄膜(電極層30)を形成した。また、多孔質膜70の表面に作製した電極層30へ、接着性オリゴペプチド10を1.0μMで含有するオリゴペプチド水溶液中に一晩浸漬させた。その後、電極基板を純水で洗浄した。このようにして、接着性オリゴペプチド10を結合させた電極層30を有する多孔質膜70からなる電極基板を得た。
[細胞の接着及び培養]
前培養した3T3線維芽細胞を、培養液中に5.0×10個/mLの密度で懸濁し、細胞分散液を調製した。培養液としては、DMEM(Cambrex製)に牛胎児血清(Fetal Bovine Serum:FBS)を10%添加した培養液を使用した。そして、この細胞分散液を、上述のようにして準備したインサートメンブレンの多孔質膜70上に2mL入れた。すなわち、細胞は、1×106個/インサートメンブレンの密度で播種した。また、第一の培養容器42を保持する第二の培養容器43には培養液を2.5mL入れた。温度37℃、水蒸気飽和させた二酸化炭素5%/95%空気の雰囲気下にて、細胞を電極表面で2週間培養することで、細胞組織体シートを作製した。
[電位印加による細胞組織体シートの脱離]
上述のようにして培養した細胞組織体シートが接着した電極層30を有する多孔質膜70を作用極とし、白金板を対極とし、銀/塩化銀(内部溶液:飽和NaCl)電極を参照極として、3電極系を構成した。培養容器43に、作用極を有する培養容器42を固定し、当該培養容器42内をリン酸緩衝液5mLで満たした。さらに、この培養容器42内のリン酸緩衝液には、対極、参照極も浸漬した。電位印加部としては、ポテンショスタット(北斗電工株式会社製)を使用した。そして、ポテンショスタットにより、作用極に、−1.0Vの一定電位を5分間印加した。さらに、この電圧の印加とともに、培養容器42をシリコン製のリング43a側(すなわち下方)に押し込むことで、多孔質膜70の下面72側から上面71側へ孔73を介してリン酸緩衝液を送液することで、当該多孔質膜70から細胞組織体シートを浮き上がらせて回収した。
上述のようにして電極表面から脱離し回収された細胞組織体シート51の断面をヘマトキシリン・エオジン(HE)染色し、当該断面を位相差顕微鏡観察した。図16A〜図16Cには、その観察結果を示す。図16Aは、培養ディッシュの底面に形成された電極表面で7日間培養され回収された細胞組織体シート51の観察結果を示す。図16Bは、多孔質膜70の表面に形成された電極表面で7日間培養され回収された細胞組織体シート51の観察結果を示す。図16Cは、多孔質膜70の表面に形成された電極表面で21日間培養され回収された細胞組織体シート51の観察結果を示す。
図16A及び図16Bに示すように、多孔質膜70の表面に形成された電極表面で細胞を培養することにより(図16B)、非多孔質の表面に形成された電極表面を使用する場合(図16A)に比べて、厚さが顕著に大きい細胞組織体シート51を製造することができた。さらに、図16Cに示すように、多孔質膜70の表面に形成された電極表面における細胞の培養を継続することにより、さらに厚さの大きい細胞組織体シート51を製造することができた。
[細胞組織積層体の作製]
回収した細胞組織体シート上に、新たに回収した2つ目の細胞組織体シートを重ね、温度37℃、水蒸気飽和させた二酸化炭素5%/95%空気の雰囲気下にて5分間インキュベートした。さらに、新たな3つ目の細胞組織体シートをその上から重ね、同様にインキュベートすることで、細胞組織積層体を製造した。
図17には、上述のようにして作製された細胞組織積層体52の断面をHE染色し、当該断面を位相差顕微鏡観察した結果を示す。図17に示すように、3枚の細胞組織体シートが積層され一体化することにより、150〜250μmの厚さを有する細胞組織積層体52が得られた。この細胞組織積層体52は、例えば、ピンセットでつまんで持ち上げても破れない程度に十分な強度を有していた。
[回収された細胞の接着能及び増殖能の評価]
上述の実施例3で使用したインサートメンブレンの多孔質膜70の表面に、接着性オリゴペプチド10を結合させた電極層30を形成し、当該電極層30上で3T3線維芽細胞を前培養した。培養液としては、DMEM(Cambrex製)に牛胎児血清(Fetal Bovine Serum:FBS)を10%添加した培養液を使用した。
培養した細胞が接着した電極層30を有する多孔質膜70を作用極とし、白金板を対極とし、銀/塩化銀(内部溶液:飽和NaCl)電極を参照極として、3電極系を構成した。上述の実施例3と同様、培養容器43に、作用極を有する培養容器42を固定し、当該培養容器42内を培養液5mLで満たした。さらに、この培養容器42内の培養液には、対極、参照極も浸漬した。電位印加部としては、ポテンショスタット(北斗電工株式会社製)を使用した。そして、ポテンショスタットにより、作用極に、−1.0Vの一定電位を5分間印加した。その結果、細胞は電極層30から脱離し、回収された。
こうして回収された細胞を、2.85×10個/mLの密度で培養液に懸濁し、細胞分散液を調製した。そして、この細胞分散液を、直径35mmのポリスチレン製ディッシュ(BD Falcon、日本ベクトンディッキンソン株式会社製)の底面に2mL入れた。すなわち、細胞は5.7×10個/ディッシュの密度で播種した。そして、温度37℃、水蒸気飽和させた二酸化炭素5%/95%空気の雰囲気下にて、細胞を3日間培養し、その間、位相差顕微鏡下で細胞の数を1日おきに計測した。
一方、対照実験として、3T3線維芽細胞をポリスチレン製ディッシュ上で前培養し、その後、当該細胞をトリプシン処理によって回収した。そして、回収された細胞を、上述の場合と同一の条件で、ポリスチレン製ディッシュの底面に懸濁し、位相差顕微鏡下で細胞の数を1日おきに計測した。
図18には、細胞の数を計測した結果を示す。図18において、横軸は培養日数(日)を示し、縦軸は、各培養日において、ポリスチレン製ディッシュの底面1mmあたりに接着していた細胞の数(細胞密度(cells/mm))を示す。また、図18において、黒塗り丸印は電気化学的に(接着性オリゴペプチド10の還元脱離により)脱離させた細胞を培養した場合の結果を示し、白抜き丸印はトリプシン処理により脱離した細胞を培養した場合の結果を示す。
図18に示すように、接着性オリゴペプチド10の還元脱離により回収された細胞は、ポリスチレン製ディッシュの底面に接着して増殖した。そして、この細胞の増殖速度(倍加時間:15±1.6時間)は、対照実験においてトリプシン処理により回収された細胞のそれ(倍加時間:16±1.5時間)と同等であった。すなわち、接着性オリゴペプチド10の還元脱離のための電位印加が細胞の活性に与える影響はほとんどないことが確認された。
[多孔質膜に形成された電極層を有する培養装置の作製]
上述の実施例3と同様に、図14に示すように、接着性オリゴペプチド10を結合させた電極層30を有する多孔質膜70からなる底部を有する第一の培養容器42(インサートメンブレン)と、当該多孔質膜70が培養液中に浮遊した状態で保持されるよう当該第一の培養容器42を保持する第二の培養容器43とを使用して、図7A〜図7Cに示すような培養系を構築した。
[細胞の接着及び培養]
細胞としては、再生医療において有用であるヒト間葉系幹細胞(Mesenchymal Stem Cell:MSC)を使用した。このMSCを、培養液中に5.0×10個/mLの密度で懸濁し、細胞分散液を調製した。培養液としては、DMEM(Cambrex製)に牛胎児血清(Fetal Bovine Serum:FBS)を10%、抗生物質‐抗真菌剤を1%、L‐グルタミン1%を添加した培養液を使用した。
そして、この細胞分散液を、上述のようにして準備したインサートメンブレンの多孔質膜70上に2mL入れた。すなわち、MSCは、1×10個/インサートメンブレンの密度で播種した。また、第一の培養容器42を保持する第二の培養容器43には培養液を2.5mL入れた。温度37℃、水蒸気飽和させた二酸化炭素5%/95%空気の雰囲気下にて、細胞を電極表面で4日間培養することで、MSCが集合して形成された細胞組織体シートを作製した。
[コラーゲンゲルの調製]
細胞組織体シートの支持体として、当該細胞組織体シート上にコラーゲンゲルの層を形成した。コラーゲンゲルは、コラーゲン溶液(Cellmatrix Type I−A、新田ゼラチン製)を使用した形成した。コラーゲン溶液と、10倍に濃縮された培養液と、緩衝液とを8:1:1の体積比率で混合した。そして、得られた混合溶液を細胞組織体シート上に滴下し、温度37℃、水蒸気飽和させた二酸化炭素5%/95%空気の雰囲気下にて、30分間インキュベートすることで、当該細胞組織体シート上にコラーゲンゲル層を形成した。
[電位印加による細胞組織体シートの脱離]
上述のようにして培養した細胞が接着した電極層30を有する多孔質膜70を作用極とし、白金板を対極とし、銀/塩化銀(内部溶液:飽和NaCl)電極を参照極として、3電極系を構成した。培養容器43に、作用極を有する培養容器42を固定し、当該培養容器42内をリン酸緩衝液5mLで満たした。さらに、この培養容器42内のリン酸緩衝液に、対極、参照極も浸漬した。電位印加部としては、ポテンショスタット(北斗電工株式会社製)を使用した。そして、ポテンショスタットにより、作用極に、−1.0Vの一定電位を5分間印加するとともに、培養容器42をシリコン製のリング43a側に押し込むことで、多孔質膜70の下面72側から上面71側へ孔73を介してリン酸緩衝液を送液することで、当該多孔質膜70から細胞組織体シートを浮き上がらせて回収した。
[回収された細胞組織体シートの生存状態の評価]
上述のようにして電位印加により電極層30から脱離させ回収した細胞組織体シートを、上述の実施例2と同様に、Fluorescein Diacetate(FDA)で染色し、蛍光顕微鏡にて撮影した。
図19には、染色された細胞組織体シートを蛍光顕微鏡で撮影して得られた写真を示す。図19において、白色又はグレーで示される部分がFDAで染色された細胞組織体シートを示し、黒色の部分はバックグラウンドを示す。
図19に示すように、回収された細胞組織体シートの全体がFDAにより蛍光染色された。すなわち、再生医療において有用であるMSCから形成した細胞組織体シートは、電位印加により効率よく回収され、且つ回収後の当該細胞組織体シートを構成するMSCは生存していることが確認された。
10 接着性オリゴペプチド、11 末端アミノ酸、12 中間配列、13 交互配列、13a 酸性アミノ酸、13b 塩基性アミノ酸、14 細胞接着性配列、20 非接着性オリゴペプチド、21 末端アミノ酸、22 中間配列、23 交互配列、23a 酸性アミノ酸、23b 塩基性アミノ酸、24 細胞接着性配列、30 電極層、30a 電気接続部、31 参照極、32 対極、33 電位印加部、40 培養部、41 基材、42 第一の培養容器、43 第二の培養容器、43a リング、50 細胞、51 細胞組織体シート、52 細胞組織積層体、60 培養液、70 多孔質膜、71 上面、72 下面、73 孔、100 オリゴペプチド層。

Claims (6)

  1. 電極層に接着した細胞を培養する方法であって、
    一方の末端を構成しチオレートを介して前記電極層に結合する末端アミノ酸と、
    他方の末端を構成し細胞接着性のアミノ酸配列からなる細胞接着性配列と、
    前記細胞接着性配列の前記一方の末端側に結合し複数の酸性アミノ酸と複数の塩基性アミノ酸とが1つずつ交互に結合してなる交互配列と、
    を有するオリゴペプチドで被覆された前記電極層に前記細胞を接着させて培養する第一工程と、
    前記細胞が接着している前記電極層に、前記オリゴペプチドが還元脱離する電位を印加して、前記細胞を前記電極層から脱離させる第二工程と、
    を含み、
    前記酸性アミノ酸は、アスパラギン酸(D)及びグルタミン酸(E)からなる群より選択される1種以上であり、
    前記塩基性アミノ酸は、リシン(K)、アルギニン(R)及びヒスチジン(H)からなる群より選択される1種以上であり、
    前記オリゴペプチドは、8〜100個のアミノ酸から構成される
    ことを特徴とする培養方法。
  2. 前記電極層は、培養液中に浮いた状態で保持される多孔質膜の表面に形成されている
    ことを特徴とする請求項1に記載の培養方法。
  3. 前記第一工程において、前記電極層に前記細胞を接着させて培養することで前記電極層に接着した細胞組織体シートを形成し、
    前記第二工程において、前記細胞組織体シートが接着している前記電極層に、前記オリゴペプチドが還元脱離する前記電位を印加して、前記細胞組織体シートを前記電極層から脱離させる
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の培養方法。
  4. 前記電極層から脱離させた複数の前記細胞組織体シートを積層して、前記細胞組織体シートの積層体を形成する第三工程をさらに含む
    ことを特徴とする請求項3に記載の培養方法。
  5. 細胞を接着させて培養するための電極層を有する培養装置であって、
    前記電極層は、
    一方の末端を構成しチオレートを介して前記電極層に結合する末端アミノ酸と、
    他方の末端を構成し細胞接着性のアミノ酸配列からなる細胞接着性配列と、
    前記細胞接着性配列の前記一方の末端側に結合し複数の酸性アミノ酸と複数の塩基性アミノ酸とが1つずつ交互に結合してなる交互配列と、
    を有するオリゴペプチドで被覆されており、
    前記酸性アミノ酸は、アスパラギン酸(D)及びグルタミン酸(E)からなる群より選択される1種以上であり、
    前記塩基性アミノ酸は、リシン(K)、アルギニン(R)及びヒスチジン(H)からなる群より選択される1種以上であり、
    前記オリゴペプチドは、8〜100個のアミノ酸から構成される
    ことを特徴とする培養装置。
  6. 前記電極層は、培養液中に浮いた状態で保持される多孔質膜の表面に形成されている
    ことを特徴とする請求項5に記載の培養装置。
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