JP5884304B2 - 繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物に関する。
炭素繊維やガラス繊維にマトリックス樹脂を用いた複合材料の成形方法として、近年RTM(Resin Transfer Molding)成形法やVaRTM(Vacuum assist Resin Transfer Molding)成形法が注目されている。この場合マトリックスとして最も多く適用されている樹脂のひとつにエポキシ樹脂がある。エポキシ樹脂は、その硬化剤として、例えば、脂肪族、芳香族アミン、ポリアミン類などを含むアミン系硬化剤、酸無水物類を含む酸無水物系硬化剤、フェノール系水酸基を有するフェノール系硬化剤などが挙げられる。
複合材料の用途としては、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤が多く適用されているが、近年、RTM、VaRTM成形法を用いる際に用いられるエポキシ樹脂の硬化剤には、炭素繊維やガラス繊維との接着性が良好であることなどの観点から、アミン系硬化剤が主に用いられている。
エポキシ樹脂とアミン系硬化剤とを含むエポキシ樹脂組成物に関連するものとして、例えば、特許文献1〜5に記載のエポキシ樹脂組成物が挙げられる。特許文献1には、異なる複数の種類のエポキシ樹脂と、アミン系硬化剤と、S−B−M,B−M,およびM−B−M(Mはポリメタクリル酸メチル、Bはエポキシ樹脂およびMに非相溶で、そのガラス転移温度Tgが20℃以下であり、Sはエポキシ樹脂、BおよびMに非相溶で、そのガラス転移温度TgはBのガラス転移温度Tgより高い。)からなる群から選ばれるブロック共重合体とを含み、ブロック共重合体の微細な相分離構造を形成することで、繊維複合材料として好適に用いることができるエポキシ樹脂組成物が記載されている。
また、特許文献2には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(A)と、架橋ゴム粒子(B)およびアミン硬化剤であるジアミノジフェニルスルフォン(C)を含み、低い粘度を長時間保持することができるエポキシ樹脂組成物が記載され、高い耐熱性を有する繊維強化複合材料が得られ、このエポキシ樹脂組成物はRTMによる成形に好適に用いることできる。
また、特許文献3、4には、多官能型エポキシ樹脂(A)と、芳香族ジアミン硬化剤を含み、高い強度を有することができるエポキシ樹脂組成物が記載され、高い耐熱性を有する繊維強化複合材料が得られる。
また、特許文献5には、特定構造のエポキシ樹脂(A)と、アミン硬化剤である液状アミン化合物(B)とを含み、RTMによる成形に適用可能なエポキシ樹脂組成物が記載されている。
特開2010−229212号公報 特開2008−169291号公報 特開2010−163504号公報 特開2010−150311号公報 特開2003−165824号公報
しかしながら、エポキシ樹脂の硬化剤としてアミン系硬化剤を用いた場合、人体に対してかぶれなどを生じ易いなど人体への影響があり、使用しにくい、という問題がある。
そのため、エポキシ樹脂の硬化剤として、人体への影響が少なく、物性に優れた樹脂組成物が見出されていないのが現状である。
本発明は、前記問題に鑑み、人体への影響が少なく、物性に優れた繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明は、次に示す(1)〜(4)である。
(1) シクロヘキセンオキシド基を有する脂環式エポキシ樹脂(A)と、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(B)と、脂肪族グリシジルエーテル類(C)と、酸無水物硬化剤(D)と、硬化促進剤(E)とを含み、
前記シクロヘキセンオキシド基を有する脂環式エポキシ樹脂(A)の含有量が、前記シクロヘキセンオキシド基を有する脂環式エポキシ樹脂(A)と前記ビスフェノールF型エポキシ樹脂(B)と前記脂肪族グリシジルエーテル類(C)との質量の和に対して5質量%以上20質量%以下であり、
前記脂肪族グリシジルエーテル類(C)の含有量が、2質量%以上15質量%以下であると共に、
前記酸無水物硬化剤(D)の含有量は、前記シクロヘキセンオキシド基を有する脂環式エポキシ樹脂(A)と前記ビスフェノールF型エポキシ樹脂(B)と前記脂肪族グリシジルエーテル類(C)とに含まれるエポキシ基に対する前記酸無水物硬化剤(D)に含まれる酸無水物の理論配合比率が0.9当量以上1.3当量以下であることを特徴とする繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
(2) 前記硬化促進剤(E)が、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ウンデルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1')]−エチル−s−トリアジン、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン−トリフェニルボレート、トリス(p−メトキシフェニル)ホスフィンの何れか1つ以上を含むことを特徴とする上記(1)に記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
(3) 28℃以上32℃以下で2.5時間以上3.5時間以下保持した後の樹脂粘度が300mPa・s以下であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のエポキシ樹脂組成物。
(4) 110℃以上130℃以下、4時間以上10時間以下で二次硬化した後、JIS K 7162規定の1B形で厚さ3mmのダンベル形の試験片を用いて測定した樹脂引張強度が90MPa以上であり、樹脂の破断伸度が5%以上であることを特徴とする上記(1)から(3)の何れか1つに記載のエポキシ樹脂組成物。
本発明によれば、人体への影響が少なく、物性に優れた繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を提供することができる、という効果を奏することができる。
以下、この発明について詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
本実施形態に係る繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物(以下、「本実施形態の組成物」という。)は、脂環式エポキシ樹脂(A)と、2官能以上の液状エポキシ樹脂(B)と、2官能以上の反応性希釈剤(C)と、酸無水物硬化剤(D)と、硬化促進剤(E)とを含み、前記脂環式エポキシ樹脂(A)の含有量が、前記脂環式エポキシ樹脂(A)と前記2官能以上の液状エポキシ樹脂(B)と前記2官能以上の反応性希釈剤(C)との質量の和に対して5質量%以上20質量%以下であり、前記2官能以上の反応性希釈剤(C)の含有量が、0質量%以上20質量%以下であると共に、前記酸無水物硬化剤(D)の含有量は、前記脂環式エポキシ樹脂(A)と前記2官能以上の液状エポキシ樹脂(B)と前記2官能以上の反応性希釈剤(C)とに含まれるエポキシ基に対する前記酸無水物硬化剤(D)に含まれる酸無水物の理論配合比率が0.9当量以上1.3当量以下である。
<脂環式エポキシ樹脂(A)>
脂環式エポキシ樹脂(A)は、1個以上の脂環基と1個以上のオキシラン基とを有する化合物である。さらに好ましくは、脂環式エポキシは1分子当たり約1個の脂環基と2個以上のオキシラン環を有する化合物である。脂環式エポキシ樹脂としては、エポキシシクロヘキサン骨格を有するエポキシ樹脂、環状脂肪族炭化水素に直接又は炭化水素基を介してエポキシ基が付加したエポキシ樹脂等が好適であり、脂環式エポキシ樹脂としてより好ましくは、エポキシシクロヘキサン基を有する樹脂、脂環式エポキシ基を複数有する脂環式多官能エポキシ樹脂(以下、単に「脂環式多官能エポキシ樹脂」とも言う。)が好適である。
本実施形態の組成物に含有される好適な脂環式エポキシ樹脂としては、シクロヘキセンオキシド基、トリシクロデセンオキシド基、シクロペンテンオキシド基等を有する化合物が代表的であり、具体的には、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ビニルシクロヘキセンモノエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカーボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチレン)アジペート、ビス(2−メチル−4,5−エポキシシクロヘキシルメチレン)アシペート、(3’,4’−エポキシシクロヘキサン)メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等が挙げられる。
なかでも特に好ましい脂環式エポキシ樹脂としては、(3’,4’−エポキシシクロヘキサン)メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートを挙げることができる。
脂環式エポキシ樹脂(A)は、上記脂環式エポキシ樹脂のうち2種以上を含んだ混合物としてもよい。また、脂環式エポキシ樹脂(A)は、周知の化合物であり、一部は容易に市場から入手することができる。
脂環式エポキシ樹脂(A)は、脂環式エポキシ樹脂(A)と2官能以上の液状エポキシ樹脂(B)と2官能以上の反応性希釈剤(C)との質量の和(以下、単に全エポキシ樹脂という場合がある。)に対して5質量%以上20質量%以下であるのが好ましい。脂環式エポキシ樹脂(A)の含有量が少なすぎると、樹脂の引張強度、剛性が低下し、繊維複合材料などを形成する材料として適さなくなると共に、樹脂配合物の低粘度性維持が困難となりRTM成形法に適さなくなる。また、脂環式エポキシ樹脂(A)の含有量が多すぎると、樹脂の引張強度、破断伸度が低下し、やはり繊維複合材料などを形成する材料として適さなくなる。そのため、脂環式エポキシ樹脂(A)の含有量を、上記範囲内とすることで、得られる樹脂組成物は、複合材料を形成するマトリックス樹脂として強度、剛性、伸びのバランスの取れたものとなり、更に例えば30℃程度の作業温度において例えば200mPa・s以下の低粘度性を維持することができ、RTM成形法を好適に用いることができる。なお、本発明における室温とは、20℃以上30℃以下であり、好適には25℃付近の温度である。
<2官能以上の液状エポキシ樹脂(B)>
2官能以上の液状エポキシ樹脂(B)は、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂である。エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、カテコール型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂等の2官能型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、又はトリフェニルグリシジルエーテルメタン型エポキシ等の3官能型エポキシ樹脂等の4官能型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールビフェニレンノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂、ブロム化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、トリグリシジルイソシアヌレート、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンなどの多価アルコールのグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。これらのエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。本実施形態では、なかでも特に好ましい2官能以上の液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を挙げることができる。
2官能以上の液状エポキシ樹脂(B)は、全エポキシ樹脂中、5質量部以上80質量部以下の比率で配合される。2官能以上の液状エポキシ樹脂(B)の含有量が、全エポキシ樹脂に対して少なすぎると、脂環式エポキシ樹脂骨格による引張強度が上がるが高い引張破断伸びを得ることができない。また、2官能以上の液状エポキシ樹脂(B)が、全エポキシ樹脂に対して多すぎると、架橋密度と骨格による特性バランスが崩れ強度および伸度の何れも低下傾向となる。そのため、2官能以上の液状エポキシ樹脂(B)を全エポキシ樹脂に対して上記範囲内の比率で配合とすることで、得られる樹脂組成物の伸度を例えば5%以上とすることができる。
<2官能以上の反応性希釈剤(C)>
2官能以上の反応性希釈剤(C)としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコール、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等の脂肪族グリシジルエーテル類、フェニルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル等のモノエポキシ類、3級カルボン酸グリシジルエステル、1,2,8,9−ジエポキシリモネン等が挙げられる。
2官能以上の反応性希釈剤(C)は、全組成物中の含有量として、0質量%以上20質量部以下であり、より好ましくは2質量%以上15質量部以下、さらに好ましくは5質量%以上10質量部以下である。2官能以上の反応性希釈剤(C)は、30℃程度の作業温度において適正な粘度を得るために用いられる。2官能以上の反応性希釈剤(C)を含有することで低粘度になるが、2官能以上の反応性希釈剤(C)の含有量が多すぎると、組成物から得られる硬化物の強度が低下する。そのため、反応性希釈剤(C)を上記範囲内で含むことで、例えば30℃程度の作業温度において低粘度性を維持し、RTM成形法を好適に用いることができる。
また、反応性希釈剤(C)に用いられる樹脂成分は、1,2,8,9−ジエポキシリモネンのように脂環式エポキシ樹脂(A)としても用いることができるものもあるため、反応性希釈剤(C)は脂環式エポキシ樹脂(A)として用いることも可能である。
<酸無水物硬化剤(D)>
本発明に用いる酸無水物硬化剤(D)としては、一般的なエポキシ樹脂の硬化剤として公知の硬化剤が用いられ、酸無水物系化合物が用いられる。酸無水物系化合物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、無水ヘット酸、無水メチルハイミック酸などが挙げられる。
本実施形態の組成物をRTM成形法に適用する上では、特に室温で粘度500mPa・s以下の液状酸無水物が特に好ましく、上記の中ではテトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸が好適に用いることができる。
<硬化促進剤(E)>
本実施形態の組成物に含有される硬化促進剤(E)は、本実施形態の組成物を硬化させるための縮合触媒である。本実施形態の組成物に用いられる硬化促進剤(E)は特に限定されず、従来公知の硬化促進剤を用いることができる。硬化促進剤(E)としては、第3級アミン、イミダゾール類、有機ホスフィン、ルイス酸触媒等を挙げることができる。
第3級アミンとしては、具体的には、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリアミルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリラウリルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、ジメチルブチルアミン、ジメチルアミルアミン、ジメチルヘキシルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルラウリルアミン、トリアリルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルフォリン、4,4′−(オキシジ−2,1−エタンジイル)ビス−モルフォリン、N,N−ジメチルベンジルアミン、ピリジン、ピコリン、ジメチルアミノメチルフェノール、トリスジメチルアミノメチルフェノール、トリエタノールアミン、N,N′−ジメチルピペラジン、テトラメチルブタンジアミン、ビス(2,2−モルフォリノエチル)エーテル、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N′,N″−トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン、N,N′,N″−トリス(ジメチルアミノエチル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン、N,N′,N″−トリス(2−ヒドロキシエチル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1')]−エチル−s−トリアジン、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−1、1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(DBU)などが挙げられる。
イミダゾール類としては、具体的には、例えば、1−ベンジル−2−イミダゾール、2−エチル−4−イミダゾール、2−ウンデルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル4−メチルイミダゾールなどが挙げられる。
有機ホスフィンとしては、具体的には、例えば、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン−トリフェニルボレート、トリス(p−メトキシフェニル)ホスフィン、テトラフェニルホスフォニウム・テトラフェニルボレートなどが挙げられる。
ルイス酸触媒としては、具体的には、例えば、三フッ化ホウ素アミン錯体、三塩化ホウ素アミン錯体、三フッ化ホウ素エチルアミン錯体などのルイス酸触媒などが挙げられる。
硬化促進剤(E)は、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の組成物に含有される硬化促進剤(E)の含有量は、エポキシ樹脂成分100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下であり、好ましくは0.5質量部以上5質量部以下である。硬化促進剤(E)の含有量がエポキシ樹脂成分に対して多すぎると、2官能以上の液状エポキシ樹脂(B)と酸無水物硬化剤(D)との反応比率が上がり、硬化速度が上昇するため、大型成形物を成形する際に局所的な温度上昇を招く危険が高まり、好ましくない。そのため、硬化促進剤(E)の含有量が上記範囲内であると、得られる本発明の組成物の速硬化性がより向上すると共に、得られる本発明の組成物が硬化後のガラス転移温度が高くなり、本実施形態の組成物の硬化後の耐久性もより良好となる。
このように、本実施形態の組成物は、脂環式エポキシ樹脂(A)と、2官能以上の液状エポキシ樹脂(B)と、2官能以上の反応性希釈剤(C)と、酸無水物硬化剤(D)と、硬化促進剤(E)とを含み、脂環式エポキシ樹脂(A)の含有量が、脂環式エポキシ樹脂(A)と2官能以上の液状エポキシ樹脂(B)と2官能以上の反応性希釈剤(C)との質量の和に対して5質量%以上20質量%以下であり、2官能以上の反応性希釈剤(C)の含有量が、0質量%以上20質量%以下であると共に、酸無水物硬化剤(D)の含有量は、全エポキシ樹脂に対する酸無水物硬化剤(D)に含まれる酸無水物の理論配合比率を0.9当量以上1.3当量以下とするエポキシ樹脂組成物である。本実施形態の組成物は、硬化剤としてアミン硬化剤を用いず、酸無水物硬化剤(D)を用いることで、人体に対する影響を少なくすることができる。また、脂環式エポキシ樹脂(A)が有する高い剛性に加え、脂環式エポキシ樹脂と多官能型エポキシ樹脂とを添加することで伸度を改善することができ、高い引張強度および高い伸度を兼ね備えることができる。
また、本実施形態の組成物は、28℃以上32℃以下で2.5時間以上3.5時間以下保持した後の樹脂粘度が300mPa・s以下となる。樹脂粘度の下限値は、特に限定されないが、一般的には10mPa・s以上であればよい。硬化速度が遅いほどポットライフが短くなるため、組成物の粘度が上昇する。大型成型物など成型する際、ポットライフが短いと成型する前に硬化してしまうため、低粘度を維持していることが必要である。そこで、本実施形態の組成物のように、室温付近の温度下で液状の成分のみを使用することにより、例えば30℃程度の作業温度において低粘度性を有することができ、RTM成形に適した樹脂粘度及びポットライフを有することができる。
更に、本実施形態の組成物は、110℃以上130℃以下で4時間以上10時間以下二次硬化した後の樹脂強度が90MPa以上であり、樹脂の破断伸度が5%以上となる。樹脂の破断強度および伸度の上限値は特に制限されないが、一般的には破断強度150MPa以下、破断伸度100%以下である。本実施形態の組成物を所定条件で二次硬化した後の樹脂強度及び樹脂の破断伸度を上記範囲内とすることで、高い強度および伸度を備えることができる。
従って、本実施形態の組成物によれば、人体への影響が少なく、かつ高い強度および伸度を有し物性に優れた硬化物が得られ、硬化させる際の作業性を良好に確保することができる。
本実施形態の組成物は、上記の脂環式エポキシ樹脂(A)、2官能以上の液状エポキシ樹脂(B)、2官能以上の反応性希釈剤(C)、酸無水物硬化剤(D)および硬化促進剤(E)の他に、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、添加剤を含むことができる。添加剤としては、例えば、可塑剤、充填剤、反応性希釈剤、硬化触媒、チクソトロピー性付与剤、シランカップリング剤、顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、乾性油、接着性付与剤、分散剤、脱水剤、紫外線吸収剤、溶剤などが挙げられる。これらの中の2種類以上を含有してもよい。
本実施形態の組成物の製造方法は特に限定されず、例えば従来公知の方法で製造することができる。例えば脂環式エポキシ樹脂(A)、2官能以上の液状エポキシ樹脂(B)、2官能以上の反応性希釈剤(C)、酸無水物硬化剤(D)、硬化促進剤(E)および必要に応じて可塑剤等のその他の成分を、室温で均質に混合することで得ることができる。
本実施形態の組成物は、上述の通り、高い強度および伸度を兼ね備えると共に、室温下で液状の成分のみを用いており、例えば20℃〜30℃程度の作業温度において低粘度性を有するため、RTM成形に適した樹脂粘度及びポットライフを有する。このため、本実施形態の組成物は風車の回転翼など大型成型物の形成用の樹脂として好適に用いることができる。
本実施形態の組成物を用いて大型成型物を成型する際、モールド内への樹脂組成物の注入に際してモールド内に負圧を与えるVaRTM成形(Vacuum assisted Resin Transfer Molding)や、モールド内への本実施形態の組成物の注入に際してモールド内に負圧を与えないRTM成形を好適に用いて大型成型物を成型することができる。本実施形態の組成物を用いて大型成型物を製造する成型方法は、VaRTM成形やRTM成形に特に限定されるものではなく、従来公知の方法で製造することもできる。
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
<エポキシ樹脂組成物の作製>
表1に示す各成分を同表に示す添加量(質量部)で配合し、これらを均一に混合して、表1に示される各組成物を作製した。各々の実施例、比較例における各成分の添加量(質量部)を表1に示す。
<試験方法>
上記のようにして得られたエポキシ樹脂組成物の硬化物を用いて、樹脂粘度、引張強度、引張破断伸び、ガラス転移温度を各々測定した。樹脂粘度は、得られた各エポキシ樹脂組成物の各成分を混合した直後の30℃における樹脂粘度と、得られた各エポキシ樹脂組成物を30℃で180分硬化させた後の30℃における樹脂粘度を測定した。また、引張強度、引張破断伸び、ガラス転移温度Tgは、得られた各エポキシ樹脂組成物を下記硬化条件で硬化させた硬化物を用いて測定した。
硬化条件:第1次硬化条件(65℃、14時間)+第2次硬化条件(120℃、4時間)
[樹脂粘度]
樹脂粘度は、得られた樹脂組成物をE型粘度計(商品番号:TVE−33LT、東機産業株式会社製)を用いて30℃での回転数2.5rpmにおける粘度を測定した。30℃における樹脂粘度が300mPa・s以下であれば作業性が良好であると判断した。
[引張強度、引張破断伸び]
引張強度、引張破断伸びは、得られた各樹脂組成物を65℃で1時間放置した後、120℃で4時間養生し、JIS K 7162規定の1B形(厚さ3mmのダンベル形)の試験片を作製した。得られた試験片を、JIS K7161に準拠して引張試験機(INSTRON5585H、インストロン社製)を用いて引張速度2mm/分で引張試験を行い、引張強度および引張破断伸びを測定した。引張強度および引張破断伸びの試験結果を表1に示す。なお、引張強度が90MPa以上であれば強度が良好であると判断し、引張破断伸びが5%以上であれば伸度が良好であると判断した。
[ガラス転移温度]
ガラス転移温度は、得られた樹脂組成物をティー・エイ・インスツルメント社製DSC2920型示差走査型熱量計を用いて、昇温速度10℃/分でガラス転移温度を測定した。ガラス転移温度が100℃以上であれば耐熱性が良好であると判断した。
Figure 0005884304
表1に示す各実施例および比較例の各成分の詳細は以下のとおりである。
・脂環式エポキシ樹脂(A):商品名:「CEL−2021P」、ダイセル化学株式会社製
・2官能以上の液状エポキシ樹脂(B):ビスフェノールF型エポキシ樹脂(商品名:「YDF−170」、新日鐵化学社製
・2官能以上の反応性希釈剤(C)1:脂環式2官能エポキシ希釈剤(商品名:「リカレジン DME−100」、新日本理化社製)
・2官能以上の反応性希釈剤(C)2:多官能エポキシ希釈剤(商品名:「YH−300」、新日鐵化学社製)
・反応性希釈剤:単官能エポキシ希釈剤(商品名:「Epiclon 520」、DIC社製)
・酸無水物硬化剤(D):メチルテトラヒドロフタル酸無水物(MeTHPA)(商品名:「HN−2000」日立化成工業株式会社製)
・硬化促進剤(E):1−ベンジル−2−メチルイミダゾール(商品名:キュアゾール「1B2MZ」、四国化成工業社製)
表1に示す結果から明らかなように、比較例1〜7はいずれも引張強度が90MPa以下と低かった。比較例1は、脂環式エポキシ樹脂(A)を含まないため、樹脂組成物を硬化させても引張強度が十分な硬化物が得られなかったといえる。比較例2は、脂環式エポキシ樹脂(A)の含有量が多いため、樹脂組成物を硬化させても引張強度が十分な硬化物が得られなかったといえる。また、ガラス転移温度Tgが他の実施例及び比較例の樹脂組成物よりも低いことから耐熱性が低下したといえる。比較例3は、2官能以上の反応性希釈剤(C)を含まず単官能の反応性希釈剤を含んでいたため、樹脂組成物を硬化させても引張強度が十分な硬化物が得られなかったといえる。比較例4は、2官能以上の反応性希釈剤(C)の含有量が多すぎるため、樹脂組成物を硬化させても引張強度が十分な硬化物が得られなかったといえる。比較例5、6は、酸無水物硬化剤(D)の理論配合比率が所定の範囲外にあるため、樹脂組成物を硬化させても引張強度が十分な硬化物が得られなかったといえる。
これに対し、実施例1〜5は、いずれも引張強度が90MPa以上で高い強度を示した。また、実施例1〜5は、いずれも樹脂粘度は300mPa・s以下であり、引張破断伸びは5%以上であり、ガラス転移温度Tgは100℃以上であり、高い強度及び伸度を有すると共に、作業温度において低い粘度を有していた。
また、各組成物は、エポキシ樹脂の硬化剤として酸無水物硬化剤(D)を用いているため、従来より一般に用いられているアミン類を含むアミン系硬化剤に比べ人体に対する影響を小さくできる。
よって、実施例1〜5の組成物は比較例1〜6の組成物に比べて強度及び伸度が高く、作業温度において低い粘度を有すると共に、人体に対して影響を小さくすることができることから、大型成型物の形成用の樹脂組成物としての信頼性、安全性を高めることができる。従って、本実施形態の組成物から得られる硬化物は、高い強度を有するなど物性に優れ、かつ安全であることから、信頼性の高い大型成型物などの形成用の樹脂組成物を得ることができる。

Claims (4)

  1. シクロヘキセンオキシド基を有する脂環式エポキシ樹脂(A)と、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(B)と、脂肪族グリシジルエーテル類(C)と、酸無水物硬化剤(D)と、硬化促進剤(E)とを含み、
    前記シクロヘキセンオキシド基を有する脂環式エポキシ樹脂(A)の含有量が、前記シクロヘキセンオキシド基を有する脂環式エポキシ樹脂(A)と前記ビスフェノールF型エポキシ樹脂(B)と前記脂肪族グリシジルエーテル類(C)との質量の和に対して5質量%以上20質量%以下であり、
    前記脂肪族グリシジルエーテル類(C)の含有量が、2質量%以上15質量%以下であると共に、
    前記酸無水物硬化剤(D)の含有量は、前記シクロヘキセンオキシド基を有する脂環式エポキシ樹脂(A)と前記ビスフェノールF型エポキシ樹脂(B)と前記脂肪族グリシジルエーテル類(C)とに含まれるエポキシ基に対する前記酸無水物硬化剤(D)に含まれる酸無水物の理論配合比率が0.9当量以上1.3当量以下であることを特徴とする繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
  2. 前記硬化促進剤(E)が、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ウンデルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1')]−エチル−s−トリアジン、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン−トリフェニルボレート、トリス(p−メトキシフェニル)ホスフィンの何れか1つ以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
  3. 28℃以上32℃以下で2.5時間以上3.5時間以下保持した後の樹脂粘度が300mPa・s以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
  4. 110℃以上130℃以下、4時間以上10時間以下で二次硬化した後、JIS K 7162規定の1B形で厚さ3mmのダンベル形の試験片を用いて測定した樹脂引張強度が90MPa以上であり、樹脂の破断伸度が5%以上であることを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
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