JP5876897B2 - 発光ダイオード、発光ダイオードランプ及び照明装置 - Google Patents

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Description

本発明は、発光ダイオード、発光ダイオードランプ及び照明装置に関するものであり、特に高出力の赤色及び赤外発光ダイオード及びそれを用いた発光ダイオードランプ及び照明装置に関する。
赤色及び赤外発光ダイオード(英略称:LED)は、通信、各種センサー用光源、夜間照明など幅広く利用されている。
例えば、ピーク波長が660〜720nmの光は人が認識できる赤色光源であり、屋外ディスプレイや、出力が高い波長帯である為に目視でセンサーの存在を認識した方が望ましい安全関係のセンサーや、バーコードリーダーの光源および医療用オキシメーターの光源など幅広い用途に使用されている。
また、ピーク波長が760〜850nmの光は発光出力が高い波長帯である為、各種センサーの光源、監視カメラ、ビデオカメラ等の赤外線照明に最適な波長帯である。特に、この波長帯のAlGaAs活性層は高速応答が可能であるため、光通信や高速フォトカプラに適している。一方、発光波長の特徴を利用して静脈認証システムや医療分野などの光源にも利用され始めている。
また、近年、人工光源による植物育成が研究なされている。特に、単色性に優れており、省エネルギー、長寿命、小型化が可能な発光ダイオードによる照明を用いた栽培方法が注目されている。光合成の促進に対して波長660〜670nm付近の光は、反応効率が高く望ましい光源であることが知られているが、さらに最近の研究結果から、植物育成の形状制御に適した発光波長の1つとして、ピーク波長730nmの赤外光の効果が確認されている。
上記用途に於いて、各機器の性能向上のため、LEDの高出力が望まれている。
例えば、従来の赤外発光ダイオードに於いては、GaAs基板に液相エピタキシャル法を用いたAlGaAsの多層膜からなるLEDが実用化され、いろいろな高出力化の検討がされている。例えば、発光波長に対して透明なAlGaAsエピタキシャル層を厚く液相法で成長し、基板として用いた不透明なGaAs基板除去する構造(所謂、透明基板型)が、現状で最も高出力・高効率の赤外発光ダイオードである(特許文献1〜5)。
特開平7−30150号公報 特開2001−274454号公報 特開平6−268250号公報 特開平6−13650号公報 特開平8−293622号公報
赤外照明の光源として更なる、性能向上、省エネ、コスト面から、発光効率の高いLEDの開発が望まれている。更に、屋内だけでなく、屋外・半屋外など使用環境が広がり、耐湿性は、重要な信頼性項目の1つである。近年注目されている植物育成用LED照明の実用化の為には、使用電力の低減、耐湿性の向上、高出力化がより強く望まれている。植物育成の場合、散水、水耕栽培など、高湿環境下で使用される為、耐湿性は特に重要な特性の1つである。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、高出力・高効率であって耐湿性に優れる赤色及び赤外発光ダイオードを提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、従来、AlGaAs系の活性層を用いる赤外発光ダイオードにおいては、この活性層を含む化合物半導体層を透明基板に貼り付ける(接合する)タイプはなかったが、AlGaAs系の多重量子井戸構造として透明基板に貼り付ける(接合する)タイプとすることにより、従来の赤外発光ダイオードに比べて高出力を示すことを見出した。さらに、本発明者は、AlGaAs系の多重量子井戸構造に用いる赤色及び赤外発光ダイオードにおいて、この多重量子井戸構造を挟むクラッド層に、バンドギャップが大きくかつ結晶性の良い4元のAlGaInP系を用いることにより、クラッド層にAlGaAs系を用いる場合に比べて高出力を示すことを見出した。更に、Alの濃度も低下させることが可能となり、腐食が起こりにくくなり耐湿性も向上する。
本発明者は、この知見についてさらに研究を進めた結果、以下の構成に示す本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の手段を提供する。
(1)組成式(AlX1Ga1−X1)As(0.13≦X1≦0.20)からなる井戸層と、組成式(AlX2Ga1−X2)As(0<X2≦1)からなるバリア層とを交互に積層し、両端にバリア層を有する量子井戸構造の活性層と、該活性層の下面と上面に設けられた第1のガイド層と第2のガイド層と、該活性層及び該ガイド層を挟む第1のクラッド層と第2のクラッド層とを有する発光部と、前記発光部の下方に設けられた電流拡散層と、前記電流拡散層に接合された機能性基板とを備え、前記第1及び第2のガイド層が組成式(AlX5Ga1−X5)As(0.2≦X5≦1)からなるものとし、前記第1及び第2のクラッド層が組成式(AlX3Ga1−X3Y1In1−Y1P(0≦X3≦1,0<Y1≦1)からなるものとし、X1<X2<X5の関係を満たし、発光ピーク波長を720〜760nmに設定されてなることを特徴とする発光ダイオード。
(2)組成式(AlX1Ga1−X1)As(0.13≦X1≦0.20)からなる井戸層と、組成式(AlX4Ga1−X4Y2In1−Y2P(0≦X4≦1,0<Y2≦1)からなるバリア層とを交互に積層した量子井戸構造の活性層と、該活性層の下面と上面に設けられた第1のガイド層と第2のガイド層と、該活性層及び該ガイド層を挟む第1のクラッド層と第2のクラッド層とを有する発光部と、前記発光部の下方に設けられた電流拡散層と、前記電流拡散層に接合された機能性基板とを備え、前記第1及び第2のガイド層を組成式(AlX6Ga1−X6Y3In1−Y3P(0≦X6≦1,0<Y3≦1)からなるものとし、前記第1及び第2のクラッド層を組成式(AlX3Ga1−X3Y1In1−Y1P(0≦X3≦1,0<Y1≦1)からなるものとし、X4<X6<X3の関係を満たし、発光ピーク波長を720〜760nmに設定されてなることを特徴とする発光ダイオード。
(3)前記機能性基板は発光波長に対して透明であることを特徴とする前項(1)又は(2)のいずれかに記載の発光ダイオード。
(4)前記機能性基板はGaP、サファイア又はSiCからなることを特徴とする前項(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の発光ダイオード。
(5)組成式(AlX1Ga1−X1)As(0.13≦X1≦0.20)からなる井戸層と、組成式(AlX2Ga1−X2)As(0<X2≦1)からなるバリア層とを交互に積層し、両端にバリア層を有する量子井戸構造の活性層と、該活性層の下面と上面に設けられた第1のガイド層と第2のガイド層と、該活性層及び該ガイド層を挟む第1のクラッド層と第2のクラッド層とを有する発光部と、前記発光部の下方に設けられた電流拡散層と、前記発光部に対向して配置して発光波長に対して90%以上の反射率を有する反射層を含み、前記電流拡散層に接合された機能性基板とを備え、前記第1及び第2のガイド層が組成式(AlX5Ga1−X5)As(0.2≦X5≦1)からなるものとし、前記第1及び第2のクラッド層が組成式(AlX3Ga1−X3Y1In1−Y1P(0≦X3≦1,0<Y1≦1)からなるものとし、X1<X2<X5の関係を満たし、発光ピーク波長を720〜760nmに設定されてなることを特徴とする発光ダイオード。
(6)組成式(AlX1Ga1−X1)As(0.13≦X1≦0.20)からなる井戸層と、組成式(AlX4Ga1−X4Y2In1−Y2P(0≦X4≦1,0<Y2≦1)からなるバリア層とを交互に積層した量子井戸構造の活性層と、該活性層の下面と上面に設けられた第1のガイド層と第2のガイド層と、該活性層及び該ガイド層を挟む第1のクラッド層と第2のクラッド層とを有する発光部と、前記発光部の下方に設けられた電流拡散層と、前記発光部に対向して配置して発光波長に対して90%以上の反射率を有する反射層を含み、前記電流拡散層に接合された機能性基板とを備え、前記第1及び第2のガイド層を組成式(AlX6Ga1−X6Y3In1−Y3P(0≦X6≦1,0<Y3≦1)からなるものとし、前記第1及び第2のクラッド層を組成式(AlX3Ga1−X3Y1In1−Y1P(0≦X3≦1,0<Y1≦1)からなるものとし、X4<X6<X3の関係を満たし、発光ピーク波長を720〜760nmに設定されてなることを特徴とする発光ダイオード。
(7)前記機能性基板が、シリコンまたはゲルマニウムからなる層を含むことを特徴とする前項(5)又は(6)のいずれかに記載の発光ダイオード。
(8)前記機能性基板は金属基板を含むことを特徴とする前項(5)又は(6)のいずれかに記載の発光ダイオード。
(9)前記金属基板は複数の金属層からなることを特徴とする前項(8)に記載の発光ダイオード。
(10)前記電流拡散層はGaPからなることを特徴とする前項(1)乃至(9)のいずれか一項に記載の発光ダイオード。
(11)前記電流拡散層の厚さは0.5〜20μmの範囲であることを特徴とする前項(1)乃至(10)のいずれか一項に記載の発光ダイオード。
(12)前記機能性基板の側面は、前記発光部に近い側においては主たる光取り出し面に対して略垂直である垂直面を有し、前記発光部に遠い側においては前記主たる光取り出し面に対して内側に傾斜した傾斜面を有することを特徴とする前項(1)乃至(11)のいずれか一項に記載の発光ダイオード。
(13)前記傾斜面は粗い面を含むことを特徴とする前項(1)乃至(12)のいずれか一項に記載の発光ダイオード。
(14)第1の電極及び第2の電極が発光ダイオードの前記主たる光取り出し面側に設けられていることを特徴とする前項(1)乃至(13)のいずれか一項に記載の発光ダイオード。
(15)前記第1の電極及び前記第2の電極がオーミック電極であることを特徴とする前項(14)に記載の発光ダイオード。
(16)前記機能性基板の、前記主たる光取り出し面側の反対側の面に、第3の電極をさらに備えることを特徴とする前項(14)又は(15)のいずれかに記載の発光ダイオード。
(17)前項(1)乃至(16)のいずれか一項に記載の発光ダイオードを備えることを特徴とする発光ダイオードランプ。
(18)前項(16)に記載の発光ダイオードを備え、前記第1の電極又は第2の電極と、前記第3の電極とが略同電位に接続されていることを特徴とする発光ダイオードランプ。
(19)前項(1)乃至(16)のいずれか一項に記載の発光ダイオードを複数個搭載した照明装置。
なお、本発明において、「機能性基板」とは、成長基板に化合物半導体層を成長させた後にその成長基板を除去し、電流拡散層を介して化合物半導体層に接合して化合物半導体層を支持する基板をいうが、電流拡散層に所定の層を形成した後に、その所定の層の上に所定の基板を接合する構成の場合は、その所定の層を含めて「機能性基板」という。
本発明の発光ダイオードは、組成式(AlX1Ga1−X1)As(0≦X1≦1)からなる井戸層と、組成式(AlX2Ga1−X2)As(0<X2≦1)からなるバリア層とを交互に積層した量子井戸構造の活性層活性層と、活性層を挟む第1のクラッド層と第2のクラッド層とを有する発光部と、発光部上に形成された電流拡散層と、電流拡散層に接合された機能性基板とを備え、第1及び第2のクラッド層が組成式(AlX3Ga1−X3Y1In1−Y1P(0≦X3≦1,0<Y1≦1)からなる構成とすることにより、従来の赤外発光ダイオードに比べて高出力を示す。特に、機能性基板を発光波長に対して透明のものとする構成により、発光部からの発光を吸収することなく高出力・高効率を示す。また、活性層が組成式(AlX1Ga1−X1)As(0≦X1≦1)からなる井戸層と、組成式(AlX2Ga1−X2)As(0<X2≦1)からなるバリア層とを交互に積層した多重井戸構造を有する構成なので、単色性に優れている。また、クラッド層が組成式(AlX3Ga1−X3Y1In1−Y1P(0≦X3≦1,0<Y1≦1)からなる構成であり、欠陥を作りやすいAsを含まないので、結晶性が高く、高出力に寄与する構成となっている。また、クラッド層が組成式(AlX3Ga1−X3Y1In1−Y1P(0≦X3≦1,0<Y1≦1)からなる構成なので、3元系でなる従来の赤外発光ダイオードに比べてと比べてAl濃度が低く、耐湿性が向上している。また、活性層が組成式(AlX1Ga1−X1)As(0≦X1≦1)からなる井戸層とバリア層との積層構造を有する構成なので、MOCVD法を利用して量産するのに適している。
本発明の発光ダイオードは、組成式(AlX1Ga1−X1)As(0≦X1≦1)からなる井戸層と、(AlX4Ga1−X4Y2In1−Y2P(0≦X4≦1,0<Y2≦1)からなるバリア層とを交互に積層した量子井戸構造の活性層と、活性層を挟む第1のクラッド層と第2のクラッド層とを有する発光部と、発光部上に形成された電流拡散層と、電流拡散層に接合された機能性基板とを備え、第1及び第2のクラッド層を組成式(AlX3Ga1−X3Y1In1−Y1P(0≦X3≦1,0<Y1≦1)からなるもの構成を採用したことにより、上記の効果の他、バリア層が組成式(AlX4Ga1−X4Y2In1−Y2P(0≦X4≦1,0<Y2≦1)からなる構成であり、欠陥を作りやすいAsを含まないので、結晶性が高く、高出力に寄与する。
本発明の発光ダイオードは、機能性基板をGaP、サファイア、SiC、シリコン、又はゲルマニウム等からなる構成とすることにより、腐食しにくい材質である為、耐湿性が向上する。
また、本発明の発光ダイオードは、機能性基板と電流拡散層とをいずれもGaPからなる構成とすることにより、その接合が容易となりかつ接合強度が大きくなる。
本発明の発光ダイオードランプは、赤色光及び赤外光の発光波長を有することができ、単色性に優れると共に、高出力・高効率であって耐湿性に優れた上記発光ダイオードを備えているため、例えば、730nmの発光波長を採用した場合には植物育成用の光源に適している。
本発明の一実施形態である発光ダイオードを用いた発光ダイオードランプの平面図である。 本発明の一実施形態である発光ダイオードを用いた発光ダイオードランプの、図1中に示すA−A’線に沿った断面模式図である。 本発明の一実施形態である発光ダイオードの平面図である。 本発明の一実施形態である発光ダイオードの、図3中に示すB−B’線に沿った断面模式図である。 本発明の一実施形態である発光ダイオードを構成する発光層を説明するための図である。 本発明の一実施形態である発光ダイオードに用いるエピウェーハの断面模式図である。 本発明の一実施形態である発光ダイオードに用いる接合ウェーハの断面模式図である。 (a)本発明の他の実施形態である発光ダイオードの平面図であり、(b)(a)中に示すC−C’線に沿った断面模式図である。 本発明の他の実施形態である発光ダイオードの断面模式図である。
以下、本発明を適用した一実施形態である発光ダイオードについて、これを用いた発光ダイオードランプとともに図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
<発光ダイオードランプ>
図1及び図2は、本発明を適用した一実施形態である発光ダイオードを用いた発光ダイオードランプを説明するための図であり、図1は平面図、図2は図1中に示すA−A’線に沿った断面図である。
図1及び図2に示すように、本実施形態の発光ダイオード1を用いた発光ダイオードランプ41は、マウント基板42の表面に1以上の発光ダイオード1が実装されている。より具体的には、マウント基板42の表面には、n電極端子43とp電極端子44とが設けられている。また、発光ダイオード1の第1の電極であるn型オーミック電極4とマウント基板42のn電極端子43とが金線45を用いて接続されている(ワイヤボンディング)。一方、発光ダイオード1の第2の電極であるp型オーミック電極5とマウント基板42のp電極端子44とが金線46を用いて接続されている。さらに、図2に示すように、発光ダイオード1のn型及びp型オーミック電極4,5が設けられた面と反対側の面には、第3の電極6が設けられており、この第3の電極6によって発光ダイオード1がn電極端子43上に接続されてマウント基板42に固定されている。ここで、n型オーミック電極4と第3の電極6とは、n極電極端子43によって等電位又は略等電位となるように電気的に接続されている。第3の電極により、過大な逆電圧に対して、活性層には過電流が流れず、第3の電極とp型電極間に電流が流れ、活性層の破損を防止できる。第3の電極と基板界面側に、反射構造を付加し、高出力することもできる。また、第3の電極の表面側に、共晶金属、半田などを付加することにより、共晶ダイボンド等、より簡便な組み立て技術を利用可能とする。そして、マウント基板42の発光ダイオード1が実装された表面は、シリコン樹脂やエポキシ樹脂等の一般的な封止樹脂47によって封止されている。
<発光ダイオード(第1の実施形態)>
図3及び図4は、本発明を適用した第1の実施形態に係る発光ダイオードを説明するための図であり、図3は平面図、図4は図3中に示すB−B’線に沿った断面図である。また、図5は積層構造の断面図である。
第1の実施形態に係る発光ダイオードは、組成式(AlX1Ga1−X1)As(0≦X1≦1)からなる井戸層17と、組成式(AlX2Ga1−X2)As(0<X2≦1)からなるバリア層18とを交互に積層した量子井戸構造の活性層11と、活性層11を挟む第1のクラッド層9と第2のクラッド層13とを有する発光部7と、発光部7上に形成された電流拡散層8と、電流拡散層8に接合された機能性基板3とを備え、第1及び第2のクラッド層を組成式(AlX3Ga1−X3Y1In1−Y1P;0≦X3≦1,0<Y1≦1)からなることを特徴とするものである。
なお、本実施形態における主たる光取り出し面とは、化合物半導体層2において、機能性基板3を貼り付けた面の反対側の面である。
化合物半導体層(エピタキシャル成長層ともいう)2は、図4に示すように、pn接合型の発光部7と電流拡散層8とが順次積層された構造を有している。この化合物半導体層2の構造には、公知の機能層を適時加えることができる。例えば、オーミック(Ohmic)電極の接触抵抗を下げるためのコンタクト層、素子駆動電流を発光部の全般に平面的に拡散させるための電流拡散層、逆に素子駆動電流の通流する領域を制限するための電流阻止層や電流狭窄層など公知の層構造を設けることができる。なお、化合物半導体層2は、GaAs基板上にエピタキシャル成長させて形成されたものであることが好ましい。
発光部7は、図4に示すように、電流拡散層8上に、少なくともp型の下部クラッド層(第1のクラッド層)9、下部ガイド層10、発光層(活性層)11、上部ガイド層12、n型の上部クラッド層(第2のクラッド層)13が順次積層されて構成されている。すなわち、発光部7は、放射再結合をもたらすキャリア(担体;carrier)及び発光を発光層11に「閉じ込める」ために、発光層11の下側及び上側に対峙して配置した下部クラッド層9、下部ガイド(guide)層10、及び上部ガイド層12、上部クラッド層13を含む、所謂、ダブルヘテロ(英略称:DH)構造とすることが高強度の発光を得る上で好ましい。
活性層11は、図5に示すように、発光ダイオード(LED)の発光波長を制御するため、量子井戸構造を構成する。すなわち、活性層11は、バリア層(障壁層ともいう)18を両端に有する、井戸層17とバリア層18との多層構造(積層構造)である。
活性層11の層厚は、0.02〜2μmの範囲であることが好ましい。また、活性層11の伝導型は特に限定されるものではなく、アンドープ、p型及びn型のいずれも選択することができる。発光効率を高めるには、結晶性が良好なアンドープ又は3×1017cm−3未満のキャリア濃度とすることが望ましい。
井戸層17は、(AlX1Ga1−X1)As(0≦X1≦0.36)の組成を有していることが好ましい。上記X1は、最適な発光波長になるように調整することができる。
表1に、井戸層17の層厚が17nmのとき、Al組成X1と発光ピーク波長との関係を示す。Al組成X1が低くなるほど、発光ピーク波長が長くなっていることがわかる。
また、その変化の傾向から、表に掲載されていない発光ピーク波長に対応する、Al組成を推定することができる。
Figure 0005876897
井戸層17の層厚は、3〜30nmの範囲が好適である。より好ましくは、5〜20nmの範囲である。
表2に、井戸層17のAl組成X1=0.18のとき、井戸層17の層厚と例えば、720nm〜760nmの発光ピーク波長との関係を示す。層厚が薄くなると量子効果により、波長が短くなる。厚い場合には、発光ピーク波長は、組成により一定である。また、その変化の傾向から、表に掲載されていない発光ピーク波長に対応する、層厚を推定することができる。
Figure 0005876897
以上の発光ピーク波長と、井戸層17のAl組成X1及び層厚との関係に基づいて、例えば、720nm〜760nmの範囲内の所望の発光ピーク波長が得られるように、井戸層17のAl組成X1と層厚を決めることができる。
バリア層18は、(AlX2Ga1−X2)As(0<X2≦1)の組成を有している。上記X2は、発光効率を高めるため、井戸層17よりもバンドギャップが大きくなる組成とすることが好ましく、結晶性の観点からAl濃度は、低い方が望ましいため、0.1〜0.3の範囲がより好ましい。最適なX2の組成は井戸層の組成との関係で決まる。
バリア層18の層厚は、井戸層17の層厚と等しいか又は厚いことが好ましい。これにより、井戸層17の発光効率を高くすることができる。
井戸層17とバリア層18との多層構造において、井戸層17とバリア層18とを交互に積層する対の数は特に限定されるものではないが、2対以上40対以下であることが好ましい。すなわち、発光層11には、井戸層17が2〜40層含まれていることが好ましい。ここで、発光層11の発光効率が好適な範囲としては、井戸層17が5層以上であることが好ましい。一方、井戸層17及びバリア層18は、キャリア濃度が低いため、多くの対にすると順方向電圧(V)が、増大してしまう。このため、40対以下であることが好ましく、20対以下であることがより好ましい。
下部ガイド層10及び上部ガイド層12は、図4に示すように、発光層11の下面及び上面にそれぞれ設けられている。具体的には、発光層11の下面に下部ガイド層10が設けられ、発光層11の上面に上部ガイド層12が設けられている。
下部ガイド層10および上部ガイド層12は、(AlGa1−X)As(0≦X≦1)の組成を有している。上記Xは、バリア層15よりもバンドギャップが等しいか又は大きくなる組成とすることが好ましく、0.2〜0.4の範囲がより好ましい。結晶性の観点から最適なXの組成は井戸層の組成との関係で決まる。
表3に、井戸層17の層厚17nmのときの発光ピーク波長の発光出力を最大にするバリア層18とガイド層のAl組成X1を示す。バリア層及びガイド層は井戸層よりもバンドギャップが大きくなる組成とするのが好ましいが、結晶性を高めて発光出力を向上するために井戸層の組成との関係で最適な組成が定まる。
Figure 0005876897
下部ガイド層10及び上部ガイド層12は、夫々、下部クラッド層9及び上部クラッド層13と発光層11との欠陥の伝搬を低減するために設けられている。すなわち下部ガイド層10、上部ガイド層12及び発光層11のV族構成元素は砒素(As)であるのに対し、本発明では下部クラッド層9及び上部クラッド層13のV族構成元素はリン(P)とするため、界面において欠陥が生じやすい。発光層11への欠陥の伝播は発光ダイオードの性能低下の原因となる。このため下部ガイド層10および上部ガイド層12の層厚は10nm以上が好ましく、20nm〜100nmがより好ましい。
下部ガイド層10及び上部ガイド層12の伝導型は特に限定されるものではなく、アンドープ、p型及びn型のいずれも選択することができる。発光効率を高めるには、結晶性が良好なアンドープ又は3×1017cm−3未満のキャリア濃度とすることが望ましい。
下部クラッド層9及び上部クラッド層13は、図4に示すように、下部ガイド層10の下面及び上部ガイド層12上面にそれぞれ設けられている。
下部クラッド層9及び上部クラッド層13の材質としては、(AlX3Ga1−X3Y1In1−Y1P(0≦X3≦1,0<Y1≦1)の半導体材料を用い、バリア層15よりもバンドギャップの大きい材質が好ましく、下部ガイド層10及び上部ガイド層12よりもバンドギャップが大きい材質がより好ましい。上記材質としては、(AlX3Ga1−X3Y1In1−Y1P;0≦X3≦1,0<Y1≦1)のX3が、0.3〜0.7である組成を有することが好ましい。又、Y1は0.4〜0.6とすることが好ましい。
下部クラッド層9と上部クラッド層13とは、極性が異なるように構成されている。また、下部クラッド層9及び上部クラッド層13のキャリア濃度及び厚さは、公知の好適な範囲を用いることができ、発光層11の発光効率が高まるように条件を最適化することが好ましい。また、下部クラッド層9及び上部クラッド層13の組成を制御することによって、化合物半導体層2の反りを低減させることができる。
具体的に、下部クラッド層9としては、例えば、Mgをドープしたp型の(AlX3Ga1−X3Y1In1−Y1P(0.3≦X3≦0.7,0.4≦Y1≦0.6)からなる半導体材料を用いることが望ましい。また、キャリア濃度は2×1017〜2×1018cm−3の範囲が好ましく、層厚は0.1〜1μmの範囲が好ましい。
一方、上部クラッド層13としては、例えば、Siをドープしたn型の(AlX3Ga1−X3Y1In1−Y1P(0.3≦X3≦0.7,0.4≦Y1≦0.6)からなる半導体材料を用いることが望ましい。また、キャリア濃度は1×1017〜1×1018cm−3の範囲が好ましく、層厚は0.1〜1μmの範囲が好ましい。なお、下部クラッド層9及び上部クラッド層13の極性は、化合物半導体層2の素子構造を考慮して選択することができる。
また、発光部7の構成層の上方には、オーミック(Ohmic)電極の接触抵抗を下げるためのコンタクト層、素子駆動電流を発光部の全般に平面的に拡散させるための電流拡散層、逆に素子駆動電流の通流する領域を制限するための電流阻止層や電流狭窄層など公知の層構造を設けることができる。
電流拡散層8は、図4に示すように、発光部7の下方に設けられている。この電流拡散層8は、GaAs基板上に化合物半導体層2をエピタキシャル成長させる際に、活性層11によって生じた歪を緩和させるために設けられたものである。
また、電流拡散層8は、発光部7(活性層11)からの発光波長に対して透明である材料、すなわちGaPを適用することができる。電流拡散層8にGaPを適用する場合、機能性基板3をGaP基板とすることにより、接合を容易にし、高い接合強度を得ることができる。
また、電流拡散層8の厚さは0.5〜20μmの範囲であることが好ましい。0.5μm以下であると電流拡散が不十分であり、20μm以上であるとその厚さまで結晶成長させる為のコストが増大するからである。
機能性基板3は、化合物半導体層2の主たる光取り出し面と反対側の面に接合されている。すなわち、機能性基板3は、図4に示すように、化合物半導体層2を構成する電流拡散層8側に接合されている。この機能性基板3は、発光部7を機械的に支持するのに充分な強度を有し、且つ、発光部7から出射される発光を透過でき、活性層11からの発光波長に対して光学的に透明な材料から構成する。また、耐湿性に優れた化学的に安定な材質が、望ましい。例えば、腐食しやすいAl等を含有しない材質である。
機能性基板3は、耐湿性に優れる基板であり、更に熱伝導の良いGaP又はSiC、また、機械強度が強いサファイアからなるのが好ましい。
また、機能性基板3は、発光部7を機械的に充分な強度で支持するために、例えば約50μm以上の厚みとすることが好ましい。また、化合物半導体層2へ接合した後に機能性基板3への機械的な加工を施し易くするため、約300μmの厚さを超えないものとすることが好ましい。すなわち、機能性基板3は、約50μm以上約300μm以下の厚さを有する透明度、コスト面からn型GaP基板から構成するのが最適である。
また、図4に示すように、機能性基板3の側面は、化合物半導体層2に近い側において主たる光取り出し面に対して略垂直である垂直面3aとされており、化合物半導体層2に遠い側において主たる光取り出し面に対して内側に傾斜した傾斜面3bとされている。これにより、発光層10から機能性基板3側に放出された光を効率よく外部に取り出すことができる。また、発光層10から機能性基板3側に放出された光のうち、一部は垂直面3aで反射され傾斜面3bで取り出すことができる。一方、傾斜面3bで反射された光は垂直面3aで取り出すことができる。このように、垂直面3aと傾斜面3bとの相乗効果により、光の取り出し効率を高めることができる。
また、本実施形態では、図4に示すように、傾斜面3bと発光面に平行な面とのなす角度αを、55度〜80度の範囲内とすることが好ましい。このような範囲とすることで、機能性基板3の底部で反射された光を効率よく外部に取り出すことができる。
また、垂直面3aの幅(厚さ方向)を、30μm〜100μmの範囲内とすることが好ましい。垂直面3aの幅を上記範囲内にすることで、機能性基板3の底部で反射された光を垂直面3aにおいて効率よく発光面に戻すことができ、さらには、主たる光取り出し面から放出させることが可能となる。このため、発光ダイオード1の発光効率を高めることができる。
また、機能性基板3の傾斜面3bは、粗面化されることが好ましい。傾斜面3bが粗面化されることにより、この傾斜面3bでの光取り出し効率を上げる効果が得られる。すなわち、傾斜面3bを粗面化することにより、傾斜面3bでの全反射を抑制して、光取り出し効率を上げることができる。
化合物半導体層2と機能性基板3との接合界面は、高抵抗層となる場合がある。すなわち、化合物半導体層2と機能性基板3との間には、図示略の高抵抗層が設けられている場合がある。この高抵抗層は、機能性基板3よりも高い抵抗値を示し、高抵抗層が設けられている場合には化合物半導体層2の電流拡散層8側から機能性基板3側への逆方向の電流を低減する機能を有している。また、機能性基板3側から電流拡散層8側へと不用意に印加される逆方向の電圧に対して耐電圧性を発揮する接合構造を構成しているが、その降伏電圧は、pn接合型の発光部7の逆方向電圧より低値となる様に構成することが好ましい。
n型オーミック電極4およびp型オーミック電極5は、発光ダイオード1の主たる光取り出し面に設けられた低抵抗のオーミック接触電極である。ここで、n型オーミック電極4は、上部クラッド層11の上方に設けられており、例えば、AuGe、Ni合金/Auからなる合金を用いることができる。一方、p型オーミック電極5は、図4に示すように、露出させた電流拡散層8の表面にAuBe/Au、またはAuZn/Auからなる合金を用いることができる。
ここで、本実施形態の発光ダイオード1では、第2の電極としてp型オーミック電極5を、電流拡散層8上に形成することが好ましい。このような構成とすることにより、作動電圧を下げる効果が得られる。また、p型オーミック電極5をp型GaPからなる電流拡散層8上に形成することにより、良好なオーミックコンタクトが得られるため、作動電圧を下げることができる。
なお、本実施形態では、第1の電極の極性をn型とし、第2の電極の極性をp型とするのが好ましい。このような構成とすることにより、発光ダイオード1の高輝度化を達成することができる。一方、第1の電極をp型とすると、電流拡散が悪くなり、輝度の低下を招く。これに対して、第1の電極をn型とすることにより、電流拡散が良くなり、発光ダイオード1の高輝度化を達成することができる。
本実施形態の発光ダイオード1では、図3に示すように、n型オーミック電極4とp型オーミック電極5とが対角の位置となるように配置することが好ましい。また、p型オーミック電極5の周囲を、化合物半導体層2で囲んだ構成とすることが最も好ましい。このような構成とすることにより、作動電圧を下げる効果が得られる。また、p型オーミック電極5の四方をn型オーミック電極4で囲むことにより、電流が四方に流れやすくなり、その結果作動電圧が低下する。
また、本実施形態の発光ダイオード1では、図3に示すように、n型オーミック電極4を、ハニカム、格子形状など網目とすることが好ましい。このような構成とすることにより、信頼性を向上させる効果が得られる。また、格子状とすることにより、発光層10に均一に電流を注入することができ、その結果、信頼性を向上させる効果が得られる。なお、本実施形態の発光ダイオード1では、n型オーミック電極4を、パッド形状の電極(パッド電極)と幅10μm以下の線状の電極(線状電極)とで構成することが好ましい。このような構成とすることにより、高輝度化をはかることができる。さらに、線状電極の幅を狭くすることにより、光取り出し面の開口面積を上げることができ、高輝度化を達成することができる。
<発光ダイオードの製造方法>
次に、本実施形態の発光ダイオード1の製造方法について説明する。図6は、本実施形態の発光ダイオード1に用いるエピウェーハの断面図である。また、図7は、本実施形態の発光ダイオード1に用いる接合ウェーハの断面図である。
(化合物半導体層の形成工程)
先ず、図6に示すように、化合物半導体層2を作製する。化合物半導体層2は、GaAs基板14上に、GaAsからなる緩衝層15、選択エッチングに利用するために設けられたエッチングストップ層(図示略)、Siをドープしたn型のAlGaAsからなるコンタクト層16、n型の上部クラッド層13、上部ガイド層12、発光層11、下部ガイド層10、p型の下部クラッド層9、Mgドープしたp型GaPからなる電流拡散層8を順次積層して作製する。
GaAs基板14は、公知の製法で作製された市販品の単結晶基板を使用できる。GaAs基板14のエピタキシャル成長させる表面は、平滑であることが望ましい。GaAs基板14の表面の面方位は、エピ成長しやすく、量産されている(100)面および(100)から、±20°以内にオフした基板が、品質の安定性の面からのぞましい。さらに、GaAs基板14の面方位の範囲が、(100)方向から(0−1−1)方向に15°オフ±5°であることがより好ましい。
GaAs基板14の転位密度は、化合物半導体層2の結晶性を良くするために低い方が望ましい。具体的には、例えば、10,000個cm−2以下、望ましくは、1,000個cm−2以下であることが好適である。
GaAs基板14は、n型であってもp型であっても良い。GaAs基板14のキャリア濃度は、所望の電気伝導度と素子構造から、適宜選択することができる。例えば、GaAs基板14がシリコンドープのn型である場合には、キャリア濃度が1×1017〜5×1018cm−3の範囲であることが好ましい。これに対して、GaAs基板14が亜鉛をドープしたp型の場合には、キャリア濃度2×1018〜5×1019cm−3の範囲であることが好ましい。
GaAs基板14の厚さは、基板のサイズに応じて適切な範囲がある。GaAs基板14の厚さが適切な範囲よりも薄いと、化合物半導体層2の製造プロセス中に割れてしまうおそれがある。一方、GaAs基板14の厚さが適切な範囲よりも厚いと材料コストが増加することになる。このため、GaAs基板14の基板サイズが大きい場合、例えば、直径75mmの場合には、ハンドリング時の割れを防止するために250〜500μmの厚さが望ましい。同様に、直径50mmの場合は、200〜400μmの厚さが望ましく、直径100mmの場合は、350〜600μmの厚さが望ましい。
このように、GaAs基板14の基板サイズに応じて基板の厚さを厚くすることにより、発光層7に起因する化合物半導体層2の反りを低減することができる。これにより、エピタキシャル成長中の温度分布が均一となることため、発光層10の面内の波長分布を小さくすることができる。なお、GaAs基板14の形状は、特に円形に限定されず、矩形等であっても問題ない。
緩衝層(buffer)15は、GaAs基板14と発光部7の構成層との欠陥の伝搬を低減するために設けられている。このため、基板の品質やエピタキシャル成長条件を選択すれば、緩衝層15は、必ずしも必要ではない。また、緩衝層15の材質は、エピタキシャル成長させる基板と同じ材質とすることが好ましい。したがって、本実施形態では、緩衝層15には、GaAs基板14と同じくGaAsを用いることが好ましい。また、緩衝層15には、欠陥の伝搬を低減するためにGaAs基板14と異なる材質からなる多層膜を用いることもできる。緩衝層15の厚さは、0.1μm以上とすることが好ましく、0.2μm以上とすることがより好ましい。
コンタクト層16は、電極との接触抵抗を低下させるために設けられている。コンタクト層16の材質は、発光層12よりバンドギャップの大きい材質であることが好ましく、AlGa1−XAs、(AlGa1−XIn1−YP(0≦X≦1,0<Y≦1)が好適である。また、コンタクト層16のキャリア濃度の下限値は、電極との接触抵抗を低下させるために5×1017cm−3以上であることが好ましく、1×1018cm−3以上がより好ましい。キャリア濃度の上限値は、結晶性の低下が起こりやすくなる2×1019cm−3以下が望ましい。コンタクト層16の厚さは、0.5μm以上が好ましく、1μm以上が最適である。コンタクト層16の厚さの上限値は特に限定されてはいないが、エピタキシャル成長に係るコストを適正範囲にするため、5μm以下とすることが望ましい。
本実施形態では、分子線エピタキシャル法(MBE)や減圧有機金属化学気相堆積法(MOCVD法)等の公知の成長方法を適用することができる。なかでも、量産性に優れるMOCVD法を適用することが、最も望ましい。具体的には、化合物半導体層2のエピタキシャル成長に使用するGaAs基板14は、成長前に洗浄工程や熱処理等の前処理を実施して、表面の汚染や自然酸化膜を除去することが望ましい。上記化合物半導体層2を構成する各層は、直径50〜150mmのGaAs基板14をMOCVD装置内にセットし、同時にエピタキシャル成長させて積層することができる。また、MOCVD装置としては、自公転型、高速回転型等の市販の大型装置を適用することができる。
上記化合物半導体層2の各層をエピタキシャル成長する際、III族構成元素の原料としては、例えば、トリメチルアルミニウム((CHAl)、トリメチルガリウム((CHGa)及びトリメチルインジウム((CHIn)を用いることができる。また、Mgのドーピング原料としては、例えば、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(bis−(CMg)等を用いることができる。また、Siのドーピング原料としては、例えば、ジシラン(Si)等を用いることができる。また、V族構成元素の原料としては、ホスフィン(PH)、アルシン(AsH)等を用いることができる。また、各層の成長温度としては、電流拡散層8としてp型GaPを用いる場合は、720〜770℃を適用することができ、その他の各層では600〜700℃を適用することができる。さらに、各層のキャリア濃度及び層厚、温度条件は、適宜選択することができる。
このようにして製造した化合物半導体層2は、発光層7を有するにもかかわらず結晶欠陥が少ない良好な表面状態が得られる。また、化合物半導体層2は、素子構造に対応して研磨などの表面加工を施しても良い。
(機能性基板の接合工程)
次に、化合物半導体層2と機能性基板3とを接合する。化合物半導体層2と機能性基板3との接合は、先ず、化合物半導体層2を構成する電流拡散層8の表面を研磨して、鏡面加工する。次に、この電流拡散層8の鏡面研磨した表面に貼付する機能性基板3を用意する。なお、この機能性基板3の表面は、電流拡散層8に接合させる以前に鏡面に研磨する。次に、一般の半導体材料貼付装置に、化合物半導体層2と機能性基板3とを搬入し、真空中で鏡面研磨した双方の表面に電子を衝突させて中性(ニュートラル)化したArビームを照射する。その後、真空を維持した貼付装置内で双方の表面を重ね合わせて荷重をかけることで、室温で接合することができる(図7参照)。接合に関しては、接合条件の安定性から、接合面が同じ材質がより望ましい。
接合(貼り付け)はこのような真空下での常温接合が最適であるが、共晶金属、接着剤を用いて接合することもできる。
(第1及び第2の電極の形成工程)
次に、第1の電極であるn型オーミック電極4及び第2の電極であるp型オーミック電極5を形成する。n型オーミック電極4及びp型オーミック電極5の形成は、先ず、機能性基板3と接合した化合物半導体層2から、GaAs基板14及び緩衝層15をアンモニア系エッチャントによって選択的に除去する。次に、露出したコンタクト層16の表面にn型オーミック電極4を形成する。具体的には、例えば、AuGe、Ni合金/Pt/Auを任意の厚さとなるように真空蒸着法により積層した後、一般的なフォトリソグラフィー手段を利用してパターニングを行ってn型オーミック電極4の形状を形成する。
次に、コンタクト層16、上部クラッド層13、上部ガイド層12、発光層11、下部ガイド層10、p型の下部クラッド層9を選択的に除去して電流拡散層8を露出させ、この露出した電流拡散層8の表面にp型オーミック電極5を形成する。具体的には、例えば、AuBe/Auを任意の厚さとなるように真空蒸着法により積層した後、一般的なフォトリソグラフィー手段を利用してパターニングを行ってp型オーミック電極5の形状を形成する。その後、例えば400〜500℃、5〜20分間の条件で熱処理を行って合金化することにより、低抵抗のn型オーミック電極4及びp型オーミック電極5を形成することができる。
(機能性基板の加工工程)
次に、機能性基板3の形状を加工する。機能性基板3の加工は、先ず、第3の電極6を形成していない表面にV字状の溝入れを行う。この際、V字状の溝の第3の電極6側の内側面が発光面に平行な面とのなす角度αを有する傾斜面3bとなる。次に、化合物半導体層2側から所定の間隔でダイシングを行ってチップ化する。なお、チップ化の際のダイシングによって機能性基板3の垂直面3aが形成される。
傾斜面3bの形成方法は、特に限定されるものではなく、ウェットエッチング、ドライエッチング、スクライブ法、レーザー加工などの従来からの方法を組み合わせて用いることができるが、形状の制御性及び生産性の高いダイシング法を適用することが最も好ましい。ダイシング法を適用することにより、製造歩留まりを向上することができる。
また、垂直面3aの形成方法は、特に限定されるものではないが、レーザー加工、スクライブ・ブレーク法又はダイシング法で形成するのが好ましい。レーザー加工、スクライブ・ブレーク法を採用することにより、製造コストを低下させることができる。すなわち、チップ分離の際に切りしろを設ける必要なく、数多くの発光ダイオードが製造できるため製造コストを下げることができる。一方、ダイシング法では、切断の安定性に優れている。
最後に、破砕層及び汚れを必要に応じて硫酸・過酸化水素混合液等でエッチング除去する。このようにして発光ダイオード1を製造する。
<発光ダイオードランプの製造方法>
次に、上記発光ダイオード1を用いた発光ダイオードランプ41の製造方法、すなわち、発光ダイオード1の実装方法について説明する。
図1及び図2に示すように、マウント基板42の表面に所定の数量の発光ダイオード1を実装する。発光ダイオード1の実装は、先ず、マウント基板42と発光ダイオード1との位置合せを行い、マウント基板42の表面の所定の位置に発光ダイオード1を配置する。次に、Agペーストでダイボンドし、発光ダイオード1がマウント基板42の表面に固定される。次に、発光ダイオード1のn型オーミック電極4とマウント基板42のn電極端子43とを金線45を用いて接続する(ワイヤボンディング)。次に、発光ダイオード1のp型オーミック電極5とマウント基板42のp電極端子44とを金線46を用いて接続する。最後に、マウント基板42の発光ダイオード1が実装された表面を、一般的なエポキシ樹脂47によって封止する。このようにして、発光ダイオード1を用いた発光ダイオードランプ41を製造する。
また、発光ダイオードランプ41の発光スペクトルは、活性層11の組成を調整することにより、例えば、ピーク発光波長を720〜760nmの範囲とすることができる。また、電流拡散層8によって井戸層17及びバリア層18の発光層11内のばらつきが抑制されているため、発光スペクトルの半値幅が、10〜40nmの範囲となる。
以上説明したように、本実施形態の発光ダイオード1によれば、組成式(AlX1Ga1−X1)As(0≦X≦0.36)からなる井戸層17を有する発光部7を含む化合物半導体層2を備えている。
また、本実施形態の発光ダイオード1には、発光部7上に電流拡散層8が設けられている。この電流拡散層8は、発光波長に対して透明であるため、発光部7からの発光を吸収することなく高出力・高効率の発光ダイオード1とすることができる。機能性基板は、材質的に安定で、腐食の心配がなく耐湿性に優れる。
したがって、本実施形態の発光ダイオード1によれば、例えば、720nm〜760nmの範囲の発光波長を有し、単色性に優れると共に、高出力・高効率であって耐湿性の発光ダイオード1を提供することができる。また、本実施形態の発光ダイオード1によれば、従来の液相エピタキシャル法で作製した透明基板型AlGaAs系の発光ダイオードと比較して、約1.5倍以上の発光効率を有する高出力発光ダイオード1を提供することができる。また、高温高湿信頼性も向上した。
また、本実施形態の発光ダイオードランプ41によれば、約730nmの発光波長を有し、単色性に優れると共に、高出力・高効率であって耐湿性の上記発光ダイオード1を備えている。このため、植物育成用の照明に適した発光ダイオードランプ41を提供することができる。
<発光ダイオード(第2の実施形態)>
本発明を適用した第2の実施形態に係る発光ダイオードは、組成式(AlX1Ga1−X1)As(0≦X1≦1)からなる井戸層と、組成式(AlX4Ga1−X4Y2In1−Y2P(0≦X4≦1,0<Y2≦1)からなるバリア層とを交互に積層した量子井戸構造の活性層と、活性層を挟む第1のクラッド層と第2のクラッド層とを有する発光部と、発光部上に形成された電流拡散層と、発光部に対向して配置して発光波長に対して90%以上の反射率を有する反射層を含み、電流拡散層に接合された機能性基板とを備え、第1及び第2のクラッド層を組成式(AlX3Ga1−X3Y1In1−Y1P(0≦X3≦1,0<Y1≦1)からなることを特徴とする。
第1の実施形態に係る発光ダイオードにおけるAlGaAsバリア層18を、組成式(AlX4Ga1−X4Y2In1−Y2P(0≦X4≦1,0<Y2≦1)からなるバリア層とした点が第1の実施形態に係る発光ダイオードと異なる。
上記X3は、発光効率を高めるため、井戸層17よりもバンドギャップが大きくなる組成とすることが好ましく、結晶性の観点からAl濃度は、低い方が望ましいため、X3は0.3〜0.7、Y2は0.4〜0.6の範囲がより好ましい。最適なX3、Y2の組成は井戸層の組成との関係で決まる。
<発光ダイオード(第3の実施形態)>
図8(a)及び(b)は、本発明を適用した第3の実施形態に係る発光ダイオードを説明するための図であり、図8(a)は平面図、図8(b)は図8(a)中に示すC−C’線に沿った断面図である。
第3の実施形態に係る発光ダイオードは、組成式(AlX1Ga1−X1)As(0≦X1≦1)からなる井戸層と、組成式(AlX2Ga1−X2)As(0<X2≦1)からなるバリア層とを交互に積層した量子井戸構造の活性層11と、活性層を挟む第1のクラッド層9と第2のクラッド層13とを有する発光部と、発光部上に形成された電流拡散層8と、発光部に対向して配置して発光波長に対して90%以上の反射率を有する反射層23を含み、電流拡散層8に接合された機能性基板31とを備え、第1及び第2のクラッド層9、13が組成式(AlX3Ga1−X3Y1In1−Y1P(0≦X3≦1,0<Y1≦1)からなることを特徴とする。
第3の実施形態に係る発光ダイオードでは、発光波長に対して90%以上の反射率を有し、発光部に対向して配置する反射層23を備えた機能性基板30を有するので、主たる光取り出し面から効率的に光を取り出すことができる。
図8に示した例では、機能性基板31は、電流拡散層8の下側の面8bに、第2の電極21を備え、さらにその第2の電極8を覆うように透明導電膜22と反射層23とが積層されてなる反射構造体と、シリコン又はゲルマニウムからなる層(基板)30を備えている。
第3の実施形態に係る発光ダイオードにおいては、機能性基板31はシリコンまたはゲルマニウムからなる層を含むのが好ましい。腐食しにくい材質である為、耐湿性が向上するからである。
反射層23は例えば、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、金(Au)又はこれらの合金などにより構成される。これらの材料は光反射率が高く、反射層23からの光反射率を90%以上とすることができる。
機能性基板31は、この反射層23に、AuIn、AuGe、AuSn等の共晶金属で、シリコン、ゲルマニウム等の安価な基板(層)に接合する組み合わせを用いることができる。特にAuInは、接合温度が低く、熱膨張係数が発光部と差があるが、最も安価なシリコン基板(シリコン層)を接合するには最適な組み合わせである。
機能性基板31はさらに、電流拡散層、反射層金属および共晶金属が相互拡散しないよう、例えば、チタン(Ti)、タングステン(W)、白金(Pt)などの高融点金属からなる層を挿入された構成とすることも品質の安定性から望ましい。
<発光ダイオード(第4の実施形態)>
図9は、本発明を適用した第4の実施形態に係る発光ダイオードを説明するための図である。
本発明を適用した第4の実施形態に係る発光ダイオードは、組成式(AlX1Ga1−X1)As(0≦X1≦1)からなる井戸層と、組成式(AlX2Ga1−X2)As(0<X2≦1)からなるバリア層とを交互に積層した量子井戸構造の活性層11と、該活性層を挟む第1のクラッド層9と第2のクラッド層13とを有する発光部と、発光部上に形成された電流拡散層8と、発光部に対向して配置して発光波長に対して90%以上の反射率を有する反射層53と金属基板50とを含み、電流拡散層8に接合された機能性基板51とを備え、第1及び第2のクラッド層9、13を組成式(AlX3Ga1−X3Y1In1−Y1P(0≦X3≦1,0<Y1≦1)からなることを特徴とする
第4の実施形態に係る発光ダイオードでは、機能性基板が金属基板を含む点が第3の実施形態に係る発光ダイオードに対して特徴的な構成である。
金属基板は放熱性が高く、発光ダイオードを高輝度で発光するのに寄与すると共に、発光ダイオードの寿命を長寿命とすることができる。
放熱性の観点からは、金属基板は熱伝導率が130W/m・K以上の金属からなるのが特に好ましい。熱伝導率が130W/m・K以上の金属としては、例えば、モリブデン(138W/m・K)やタングステン(174W/m・K)がある。
図9に示すように、化合物半導体層2は、活性層11と、ガイド層(図示せず)を介してその活性層11を挟む第1のクラッド層(下部クラッド)9及び第2のクラッド層(上部クラッド)13と、第1のクラッド層(下部クラッド)9の下側に電流拡散層8と、第2のクラッド層(上部クラッド)13の上側に第1の電極55と平面視してほぼ同じサイズのコンタクト層56とを有する。
機能性基板51は、電流拡散層8の下側の面8bに、第2の電極57を備え、さらにその第2の電極57を覆うように透明導電膜52と反射層53とが積層されてなる反射構造体と、金属基板50とからなり、反射構造体を構成する反射層53の化合物半導体層2と反対側の面53bに、金属基板50の接合面50aが接合されている。
反射層53は例えば、銅、銀、金、アルミニウムなどの金属又はこれらの合金などにより構成される。これらの材料は光反射率が高く、反射構造体からの光反射率を90%以上とすることができる。反射層53を形成することにより、活性層11からの光を反射層53で正面方向fへ反射させて、正面方向fでの光取り出し効率を向上させることができる。これにより、発光ダイオードをより高輝度化できる。
反射層53は、透明導電膜52側からAg、Ni/Tiバリヤ層、Au系の共晶金属(接続用金属)からなる積層構造が好ましい。
上記接続用金属は、電気抵抗が低く、低温で溶融する金属である。上記接続用金属を用いることにより、化合物半導体層2に熱ストレスを与えることなく、金属基板を接続することができる。
接続用金属としては、化学的に安定で、融点の低いAu系の共晶金属などを用いられる。上記Au系の共晶金属としては、例えば、AuSn、AuGe、AuSiなどの合金の共晶組成(Au系の共晶金属)を挙げることができる。
また、接続用金属には、チタン、クロム、タングステンなどの金属を添加することが好ましい。これにより、チタン、クロム、タングステンなどの金属がバリヤ金属として機能して、金属基板に含まれる不純物などが反射層53側に拡散して、反応することを抑制できる。
透明導電膜52は、ITO膜、IZO膜などにより構成されている。なお、反射構造体は、反射層53だけで構成してもよい。
また、透明導電膜52の代わりに、または、透明導電膜52とともに、透明な材料の屈折率差を利用したいわゆるコールドミラー、例えば、酸化チタン膜、酸化ケイ素膜の多層膜や白色のアルミナ、AlNを用いて、反射層53に組み合わせてもよい。
金属基板50は複数の金属層からなるものを用いることができる。
金属基板は2種類の金属層が交互に積層されてなるのが好ましい。
特に、この2種類の金属層の層数は合わせて奇数とするのが好ましい。
この場合、金属基板の反りや割れの観点から、第2の金属層50Bとして化合物半導体層2より熱膨張係数が小さい材料を用いるときは、第1の金属層50A、50Aを化合物半導体層3より熱膨張係数が大きい材料からなるものを用いるのが好ましい。金属基板全体としての熱膨張係数が化合物半導体層の熱膨張係数に近いものとなるため、化合物半導体層と金属基板とを接合する際の金属基板の反りや割れを抑制することができ、発光ダイオードの製造歩留まりを向上させることができるからである。同様に、第2の金属層50Bとして化合物半導体層2より熱膨張係数が大きい材料を用いるときは、第1の金属層50A、50Aを化合物半導体層2より熱膨張係数が小さい材料からなるものを用いるのが好ましい。金属基板全体としての熱膨張係数が化合物半導体層の熱膨張係数に近いものとなるため、化合物半導体層と金属基板とを接合する際の金属基板の反りや割れを抑制でき、発光ダイオードの製造歩留まりを向上できるからである。
以上の観点からは、2種類の金属層はいずれが第1の金属層でも第2の金属層でも構わない。
2種類の金属層としては、例えば、銀(熱膨張係数=18.9ppm/K)、銅(熱膨張係数=16.5ppm/K)、金(熱膨張係数=14.2ppm/K)、アルミニウム(熱膨張係数=23.1ppm/K)、ニッケル(熱膨張係数=13.4ppm/K)およびこれらの合金のいずれかからなる金属層と、モリブデン(熱膨張係数=5.1ppm/K)、タングステン(熱膨張係数=4.3ppm/K)、クロム(熱膨張係数=4.9ppm/K)およびこれらの合金のいずれかからなる金属層との組み合わせを用いることができる。
好適な例としては、Cu/Mo/Cuの3層からなる金属基板があげられる。上記の観点ではMo/Cu/Moの3層からなる金属基板でも同様な効果が得られるが、Cu/Mo/Cuの3層からなる金属基板は、機械的強度が高いMoを加工しやすいCuで挟んだ構成なので、Mo/Cu/Moの3層からなる金属基板よりも切断等の加工が容易であるという利点がある。
金属基板全体としての熱膨張係数は例えば、Cu(30μm)/Mo(25μm)/Cu(30μm)の3層からなる金属基板では6.1ppm/Kであり、Mo(25μm)/Cu(70μm)/Mo(25μm)の3層からなる金属基板では5.7ppm/Kとなる。
また、放熱の観点からは、金属基板を構成する金属層は熱伝導率が高い材料からなるのが好ましい。これにより、金属基板の放熱性を高くして、発光ダイオードを高輝度で発光させることができるとともに、発光ダイオードの寿命を長寿命とすることができるからである。
例えば、銀(熱伝導率=420W/m・K)、銅(熱伝導率=398W/m・K)、金(熱伝導率=320W/m・K)、アルミニウム(熱伝導率=236W/m・K)、モリブデン(熱伝導率=138W/m・K)、タングステン(熱伝導率=174W/m・K)およびこれらの合金などを用いることが好ましい。
それらの金属層の熱膨張係数が化合物半導体層の熱膨張係数と略等しい材料からなるのがさらに好ましい。特に、金属層の材料が、化合物半導体層の熱膨張係数の±1.5ppm/K以内である熱膨張係数を有する材料であるのが好ましい。これにより、金属基板と化合物半導体層との接合時の発光部への熱によるストレスを小さくすることができ、金属基板を化合物半導体層と接続させたときの熱による金属基板の割れを抑制することができ、発光ダイオードの製造歩留まりを向上させることができる。
金属基板全体としての熱伝導率は例えば、Cu(30μm)/Mo(25μm)/Cu(30μm)の3層からなる金属基板では250W/m・Kとなり、Mo(25μm)/Cu(70μm)/Mo(25μm)の3層からなる金属基板では220W/m・Kとなる。
<発光ダイオード(第5の実施形態)>
第5の実施形態に係る発光ダイオードは、組成式(AlX1Ga1−X1)As(0≦X1≦1)からなる井戸層と、組成式(AlX3Ga1−X3Y2In1−Y2P(0≦X3≦1,0<Y2≦1)からなるバリア層とを交互に積層した量子井戸構造の活性層と、該活性層を挟む第1のクラッド層と第2のクラッド層とを有する発光部と、発光部上に形成された電流拡散層と、発光部に対向して配置して発光波長に対して90%以上の反射率を有する反射層を含み、電流拡散層に接合された機能性基板とを備え、第1及び第2のクラッド層を組成式(AlX2Ga1−X2Y1In1−Y1P;0≦X2≦1,0<Y1≦1)からなることを特徴とする。
本実施形態においても、機能性基板として、第3の実施形態及び第4の実施形態で例示したものを用いることができる。
以下、本発明の効果を、実施例を用いて具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本実施例では、本発明に係る発光ダイオードを作製した例を具体的に説明する。発光ダイオードを作製した後、特性評価のために発光ダイオードチップを基板上に実装した発光ダイオードランプを作製した。
(実施例1)
実施例1の発光ダイオードは第1の実施形態の実施例である。
先ず、Siをドープしたn型のGaAs単結晶からなるGaAs基板上に、化合物半導体層を順次積層してエピタキシャルウェーハを作製した。GaAs基板は、(100)面から(0−1−1)方向に15°傾けた面を成長面とし、キャリア濃度を2×1018cm−3とした。また、GaAs基板の層厚は、約0.5μmとした。化合物半導体層とは、SiをドープしたGaAsからなるn型の緩衝層、Siをドープした(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pからなるn型のコンタクト層、Siをドープした(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pからなるn型の上部クラッド層、Al0.4Ga0.6Asからなる上部ガイド層、Al0.18Ga0.82As/Al0.3Ga0.7
sの20対からなる井戸層/バリア層、Al0.4Ga0.6Asからなる下部ガイド層、Mgをドープした(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pからなるp型の下部クラッド層、(Al0.5Ga0.50.5In0.5Pからなる薄膜の中間層、Mgドープしたp型GaPからなる電流拡散層である。
本実施例では、減圧有機金属化学気相堆積装置法(MOCVD装置)を用い、直径76mm、厚さ350μmのGaAs基板に化合物半導体層をエピタキシャル成長させて、エピタキシャルウェーハを形成した。エピタキシャル成長層を成長させる際、III族構成元素の原料としては、トリメチルアルミニウム((CHAl)、トリメチルガリウム((CHGa)及びトリメチルインジウム((CHIn)を使用した。また、Mgのドーピング原料としては、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(bis−(CMg)を使用した。また、Siのドーピング原料としては、ジシラン(Si)を使用した。また、V族構成元素の原料としては、ホスフィン(PH)、アルシン(AsH)を使用した。また、各層の成長温度としては、p型GaPからなる電流拡散層は、750℃で成長させた。その他の各層では700℃で成長させた。
GaAsからなる緩衝層は、キャリア濃度を約2×1018cm−3、層厚を約0.5μmとした。コンタクト層は、キャリア濃度を約2×1018cm−3、層厚を約3.5μmとした。上部クラッド層は、キャリア濃度を約1×1018cm−3、層厚を約0.5μmとした。上部ガイド層は、アンドープで層厚を約50nmとした。井戸層は、アンドープで層厚が約17nmのAl0.18Ga0.82Asとし、バリア層はアンドープで層厚が約19nmのAl0.3Ga0.7Asとした。また、井戸層とバリア層とを交互に20対積層した。下部ガイド層は、アンドープで層厚を約50nmとした。下部クラッド層は、キャリア濃度を約8×1017cm−3、層厚を約0.5μmとした。中間層は、キャリア濃度を約8×1017cm−3、層厚を約0.05μmとした。GaPからなる電流拡散層は、キャリア濃度を約3×1018cm−3、層厚を約9μmとした。
次に、電流拡散層を表面から約1μmの深さに至る領域まで研磨して、鏡面加工した。
この鏡面加工によって、電流拡散層の表面の粗さを0.18nmとした。一方、上記の電流拡散層の鏡面研磨した表面に貼付するn型GaPからなる機能性基板を用意した。この貼付用の機能性基板には、キャリア濃度が約2×1017cm−3となる様にSiを添加し、面方位を(111)とした単結晶を用いた。また、機能性基板の直径は76mmで、厚さは250μmであった。この機能性基板の表面は、電流拡散層に接合させる以前に鏡面に研磨し、二乗平均平方根値(rms)にして0.12nmに仕上げておいた。
次に、一般の半導体材料貼付装置に、上記の機能性基板及びエピタキシャルウェーハを搬入し、3×10−5Paとなるまで装置内を真空に排気した。
次に、機能性基板、及び電流拡散層の双方の表面に、電子を衝突させて中性(ニュートラル)化したArビームを3分間に亘り照射した。その後、真空に維持した貼付装置内で、機能性基板及び電流拡散層の表面を重ね合わせ、各々の表面での圧力が50g/cmとなる様に荷重を掛け、双方を室温で接合した。このようにして接合ウェーハを形成した。
次に、上記接合ウェーハから、GaAs基板およびGaAs緩衝層をアンモニア系エッチャントにより選択的に除去した。次に、コンタクト層の表面に第1の電極として、AuGe、Ni合金を厚さが0.5μm、Ptを0.2μm、Auを1μmとなるように真空蒸着法によって成膜した。その後、一般的なフォトリソグラフィー手段を利用してパターニングを施し、第1の電極としてn型オーミック電極を形成した。次に、GaAs基板を除去した面である光取り出し面の表面に粗面化処理を施した。
次に、第2の電極としてp型オーミック電極を形成する領域のエピ層を選択的に除去し、電流拡散層を露出させた。この露出した電流拡散層の表面に、AuBeを0.2μm、Auを1μmとなるように真空蒸着法でp形オーミック電極を形成した。その後、450℃で10分間熱処理を行って合金化し、低抵抗のp型およびn型オーミック電極を形成した。
次に、厚さ0.2μmのAuからなる230μmの第3の電極を機能性基板に形成した。
次に、ダイシングソーを用いて、機能性基板の裏面から、第3の電極を形成していない領域を傾斜面の角度αが70°となると共に垂直面の厚さが80μmとなるようにV字状の溝入れを行った。次に、化合物半導体層側からダイシングソーを用い350μm間隔で切断し、チップ化した。ダイシングによる破砕層および汚れを硫酸・過酸化水素混合液でエッチング除去して、実施例1の発光ダイオードを作製した。
上記の様にして作製した実施例1の発光ダイオードチップを、マウント基板上に実装した発光ダイオードランプを100個組み立てた。この発光ダイオードランプは、マウントは、ダイボンダーで支持(マウント)し、発光ダイオードのn型オーミック電極とマウント基板の表面に設けたn電極端子とを金線でワイヤボンディングし、p型オーミック電極とp電極端子とを金線でワイヤボンディングした後、一般的なエポキシ樹脂で封止して作製した。
この発光ダイオード(発光ダイオードランプ)の特性を評価した結果を表1に示す。
表4に示すように、n型及びp型オーミック電極間に電流を流したところ、ピーク波長730nmとする赤外光が出射された。順方向に20ミリアンペア(mA)の電流を通流した際の順方向電圧(V)は、化合物半導体層を構成する電流拡散層と機能性基板との接合界面での抵抗の低さ及び各オーミック電極の良好なオーミック特性を反映し、約2.0ボルトとなった。順方向電流を20mAとした際の発光出力は、14mWであった。
このランプ20個を、60℃、90RH%,20mAで高温高湿通電試験を実施した。
1000時間後の、出力残存率の平均は、98%であった。Vの変動はなく100%であった。
Figure 0005876897
(実施例2)
実施例2の発光ダイオードは第2の実施形態の実施例である。
化合物半導体層は以下の条件で形成し、その他の条件は実施例1と同様である。
Siをドープしたn型のGaAs単結晶からなるGaAs基板上は、(100)面から(0−1−1)方向に15°傾けた面を成長面とし、キャリア濃度を2×1018cm−3とした。化合物半導体層としては、SiをドープしたGaAsからなるn型の緩衝層、Siをドープした(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pからなるn型のコンタクト層、Siをドープした(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pからなるn型の上部クラッド層、(Al0.3 Ga0.70.5 In0.5 Pからなる上部ガイド層、Al0.18Ga0.82As/(Al0.1Ga0.90.5 In0.5Pの対からなる井戸層/バリア層、(Al0.3 Ga0.70.5 In0.5Pからなる下部ガイド層、Mgをドープした(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pからなるp型の下部クラッド層、(Al0.5Ga0.50.5In0.5Pからなる薄膜の中間層、Mgドープしたp型GaPからなる電流拡散層を用いた。
GaAsからなる緩衝層は、キャリア濃度を約2×1018cm−3、層厚を約0.5μmとした。コンタクト層は、キャリア濃度を約2×1018cm−3、層厚を約3.5μmとした。上部クラッド層は、キャリア濃度を約1×1018cm−3、層厚を約0.5μmとした。上部ガイド層は、アンドープで層厚を約50nmとした。井戸層は、アンドープで層厚が約17nmのAl0.18Ga0.82Asとし、バリア層はアンドープで層厚が約19nmの(Al0.1Ga0.90.5 In0.5Pとした。また、井戸層及びバリア層のペア数を20対とした。下部ガイド層は、アンドープで層厚を約50nmとした。下部クラッド層は、キャリア濃度を約8×1017cm−3、層厚を約0.5μmとした。中間層は、キャリア濃度を約8×1017cm−3、層厚を約0.05μmとした。GaPからなる電流拡散層は、キャリア濃度を約3×1018cm−3、層厚を約9μmとした。
この発光ダイオード(発光ダイオードランプ)の特性を評価した結果を表4に示す。
表4に示すように、n型及びp型オーミック電極間に電流を流したところ、ピーク波長730nmとする赤外光が出射された。順方向に20ミリアンペア(mA)の電流を通流した際の順方向電圧(V)は、化合物半導体層を構成する電流拡散層と機能性基板との接合界面での抵抗の低さ及び各オーミック電極の良好なオーミック特性を反映し、約2.2ボルトとなった。順方向電流を20mAとした際の発光出力は、12mWであった。
このランプ20個を、60℃、90RH%,20mAで高温高湿通電試験を実施した。
1000時間後の、出力残存率の平均は、99%であった。Vの変動はなく100%であった。
(実施例3)
実施例3の発光ダイオードは第3の実施形態の実施例であり、電流拡散層に、反射層を含む機能性基板を接合した構成である。図8(a)及び(b)を参照して、実施例3の発光ダイオードの製造方法について説明する。尚、下部ガイド層及び上部ガイド層は図示を省略している。
化合物半導体層は実施例1の条件と同じ条件で形成した。
次に、電流拡散層8の表面に、AuBe/Au合金を厚さ0.2μmで20μmφのドットでなる電極21を、光取り出し面の端から50μmになるように等間隔で8個配置した。
次に、透明導電膜であるITO膜22を0.4μmの厚さでスパッタ法により形成した。更に、銀合金/Ti/Auでなる層23を0.2μm/0.1μm/1μmの厚さで形成し、反射層23とした。
一方、シリコン基板30の表面に、Ti/Au/Inでなる層32を0.1μm/0.5μm/0.3μmの厚さで形成した。シリコン基板30の裏面に、Ti/Auでなる層33を0.1μm/0.5μmの厚さで形成した。前記発光ダイオードウェーハ側のAuとシリコン基板側のIn表面とを重ね合わせ、320℃で加熱・500g/cmで加圧し、機能性基板を発光ダイオードウェーハに接合した。
GaAs基板を除去し、コンタクト層16の表面に、AuGe/Auでなる直径100μmで厚さ3μmのオーミック電極25を形成し、420℃で、5分間熱処理し、p、nオーミック電極を合金化処理した。
次に、コンタクト層16の表面を粗面化処理した。
チップに分離する為の切断予定部分の半導体層と反射層、共晶金属を除去し、シリコン基板をダイシングソーで、350μmピッチで正方形に切断した。
この発光ダイオード(発光ダイオードランプ)の特性を評価した結果を表4に示す。
表4に示すように、上面及び下面の電極間に電流を流したところ、ピーク波長730nmとする光が出射された。順方向に20ミリアンペア(mA)の電流を通流した際の順方向電圧(V)は、化合物半導体層を構成する電流拡散層と機能性基板との接合界面での抵抗の低さ及び各オーミック電極の良好なオーミック特性を反映し、約1.9ボルト(V)となった。順方向電流を20mAとした際の発光出力は、10mWであった。
このランプ20個を、60℃、90RH%,20mAで高温高湿通電試験を実施した。
1000時間後の、出力残存率の平均は、98%であった。Vの変動はなく100%であった。
(実施例4)
実施例4の発光ダイオードは第4の実施形態の実施例であり、電流拡散層に、反射層と金属基板とを含む機能性基板を接合した構成である。図9を参照して、実施例4の発光ダイオードを説明する。
まず、金属基板を作製した。2枚の略平板状で厚さ10μmのCu板と、1枚の略平板状の厚さ75μmのMo板とを用意し、2枚のCu板の間にMo板を挿入してこれらを重ねて配置し、加圧装置に前記基板を配置して、高温下でそれら金属板に対してそれらを挟む方向に荷重をかけた。これにより、Cu(10μm)/Mo(75μm)/Cu(10μm)の3層からなる金属基板を作製した。
化合物半導体層は、緩衝層とコンタクト層との間に、Siドープの(Al0.5Ga0.50.5In0.5Pからなり、層厚が0.5μmのエッチングストップ層を形成した点を除いて、実施例1の条件と同じ条件で形成した。
電流拡散層8の面8b上に、0.4μmの厚さのAuBe上に0.2μmの厚さのAuが積層されてなり、平面視したときに20μmφの円形状であり、60μmの間隔で第2の電極57を形成した。
次に、透明導電膜であるITO膜52を、第2の電極57を覆うように、0.8μmの厚さでスパッタ法により形成した。
次に、ITO膜52上に、蒸着法を用いて、銀(Ag)合金からなる膜を0.7μm成膜した後、ニッケル(Ni)/チタン(Ti)からなる膜を0.5μm、金(Au)からなる膜を1μm成膜して、反射膜53を形成した。
次に、化合物半導体層の電流拡散層8上にITO膜52及び反射膜53を形成した構造体と、金属基板とを対向して重ね合わせるように配置して減圧装置内に搬入し、400℃で加熱した状態で、500kg重の荷重でそれらを接合して接合構造体を形成した。
次に、接合構造体から、化合物半導体層の成長基板であるGaAs基板と緩衝層とをアンモニア系エッチャントにより選択的に除去し、さらに、エッチングストップ層を塩酸系エッチャントにより選択的に除去した。
次に、真空蒸着法を用いて、コンタクト層上に、AuGeを0.15μmの厚さで成膜した後、Niを0.05μmの厚さで成膜し、さらにAuを1μmの厚さで成膜して、第1の電極用導電膜を形成した。次に、フォトリソグラフィーを用いて、電極用導電膜を平面視円形状にパターニングして、直径100μmで厚さ3μmの第1の電極55を作製した。
次に、第1の電極をマスクとして、アンモニア系エッチャントにより、コンタクト層のうち、第1の電極の下以外の部分をエッチングで除去してコンタクト層56を形成した。
チップに分離する為の切断予定部分の化合物半導体層と反射層、共晶金属を除去し、金属基板をレーザーダイシングにより、350μmピッチで正方形に切断した。
この発光ダイオード(発光ダイオードランプ)の特性を評価した結果を表4に示す。
表4に示すように、n型及びp型オーミック電極間に電流を流したところ、ピーク波長730nmとする赤外光が出射された。順方向に20ミリアンペア(mA)の電流を通流した際の順方向電圧(V)は、化合物半導体層を構成する電流拡散層と機能性基板との接合界面での抵抗の低さ及び各オーミック電極の良好なオーミック特性を反映し、約1.9ボルトとなった。順方向電流を20mAとした際の発光出力は、10mWであった。
このランプ20個を、60℃、90RH%,20mAで高温高湿通電試験を実施した。
1000時間後の、出力残存率の平均は、99%であった。Vの変動はなく100%であった。
(実施例5)
実施例5の発光ダイオードは第5の実施形態の実施例である。
化合物半導体層は実施例2の条件と同じ条件で形成し、その他の条件は実施例3と同様である。
この発光ダイオード(発光ダイオードランプ)の特性を評価した結果を表4に示す。
表4に示すように、n型及びp型オーミック電極間に電流を流したところ、ピーク波長730nmとする赤外光が出射された。順方向に20ミリアンペア(mA)の電流を通流した際の順方向電圧(V)は、化合物半導体層を構成する電流拡散層と機能性基板との接合界面での抵抗の低さ及び各オーミック電極の良好なオーミック特性を反映し、約2.1ボルトとなった。順方向電流を20mAとした際の発光出力は、9.4mWであった。
このランプ20個を、60℃、90RH%,20mAで高温高湿通電試験を実施した。
1000時間後の、出力残存率の平均は、99%であった。Vの変動はなく100%であった。
(実施例6)
実施例6の発光ダイオードは第1の実施形態の実施例であり、発光ピーク波長を720nmにするべく井戸層のAl組成X1=0.20にしたこと、組成式(AlX2Ga1−X2)As(0≦X2≦1)のバリア層のAl組成X2=0.35にしたこと、すなわち、発光部をAl0.2Ga0.8As/Al0.35Ga0.65Asの対からなる井戸層/バリア層に変更した以外は、実施例1と同じ条件で作製した。
この発光ダイオード(発光ダイオードランプ)の特性を評価した結果は表4に示した通りであり、ピーク波長680nmとする赤色光が出射され、発光出力(P)、順方向電圧(V)、出力残存率の平均、順方向電圧の変動はそれぞれ、14mW、2V、100%、100%であった。
(実施例7)
実施例7の発光ダイオードは第2の実施形態の実施例であり、発光ピーク波長を720nmにするべく井戸層のAl組成X1=0.20にしたこと、組成式(AlX4Ga1−X4Y2In1−Y2P(0≦X4≦1,0<Y2≦1)のバリア層のAl組成X4=0.1、Y2=0.5にしたこと、すなわち、発光部をAl0.28Ga0.72As/(Al0.1Ga0.90.5 In0.5Pの対からなる井戸層/バリア層に変更した以外は、実施例1と同じ条件で作製した。
この発光ダイオード(発光ダイオードランプ)の特性を評価した結果は表4に示した通りであり、ピーク波長680nmとする赤色光が出射され、発光出力(P)、順方向電圧(V)、出力残存率の平均、順方向電圧の変動はそれぞれ、12mW、2.2V、99%、100%であった。
(実施例8)
実施例8の発光ダイオードは第3の実施形態の実施例であり、発光ピーク波長を720nmにするべく井戸層のAl組成X1=0.20にしたこと、組成式(AlX2Ga1−X2)As(0≦X2≦1)のバリア層のAl組成X2=0.35にしたこと、すなわち、発光部をAl0.20Ga0.80As/Al0.35Ga0.65Asの対からなる井戸層/バリア層に変更した以外は、実施例3と同じ条件で作製した。尚、バリア層のAl組成X2=0.30からX=0.35に変わったことは発光ピーク波長には影響していない。
この発光ダイオード(発光ダイオードランプ)の特性を評価した結果は表4に示した通りであり、ピーク波長720nmとする赤色光が出射され、発光出力(P)、順方向電圧(V)、出力残存率の平均、順方向電圧の変動はそれぞれ、10mW、1.9V、98%、100%であった。
(実施例9)
実施例9の発光ダイオードは第5の実施形態の実施例であり、発光ピーク波長を720nmにするべく井戸層のAl組成X1=0.20にしたこと、組成式(AlX4Ga1−X4Y2In1−Y2P(0≦X4≦1,0<Y2≦1)のバリア層のAl組成X4=0.1、Y2=0.5にしたこと、すなわち、発光部をAl0.20Ga0.80As/(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pの対からなる井戸層/バリア層に変更した以外は、実施例3と同じ条件で作製した。
この発光ダイオード(発光ダイオードランプ)の特性を評価した結果は表4に示した通りであり、ピーク波長720nmとする赤色光が出射され、発光出力(P)、順方向電圧(V)、出力残存率の平均、順方向電圧の変動はそれぞれ、9.5mW、2.1V、100%、100%であった。
(実施例10)
実施例10の発光ダイオードは第1の実施形態の実施例であり、発光ピーク波長を760nmにするべく井戸層のAl組成X1=0.13にしたこと、組成式(AlX2Ga1−X2)As(0≦X2≦1)のバリア層のAl組成X2=0.3にしたこと、すなわち、発光部をAl0.13Ga0.87As/Al0.3Ga0.7Asの対からなる井戸層/バリア層に変更した以外は、実施例1と同じ条件で作製した。
この発光ダイオード(発光ダイオードランプ)の特性を評価した結果は表4に示した通りであり、ピーク波長760nmとする赤外光が出射され、発光出力(P)、順方向電圧(V)、出力残存率の平均、順方向電圧の変動はそれぞれ、15mW、2.0V、98%、100%であった。
(実施例11)
実施例11の発光ダイオードは第2の実施形態の実施例であり、発光ピーク波長を760nmにするべく井戸層のAl組成X1=0.13にしたこと、組成式(AlX4Ga1−X4Y2In1−Y2P(0≦X4≦1,0<Y2≦1)のバリア層のAl組成X4=0.1、Y2=0.5にしたこと、すなわち、発光部をAl0.13Ga0.87As/(Al0.1Ga0.90.5In0.5Pの対からなる井戸層/バリア層に変更した以外は、実施例2と同じ条件で作製した。
この発光ダイオード(発光ダイオードランプ)の特性を評価した結果は表4に示した通りであり、ピーク波長760nmとする赤色光が出射され、発光出力(P)、順方向電圧(V)、出力残存率の平均、順方向電圧の変動はそれぞれ、12.7mW、2.2V、99%、100%であった。
(実施例12)
実施例12の発光ダイオードは第3の実施形態の実施例であり、発光ピーク波長を760nmにするべく井戸層のAl組成X1=0.13にしたこと、組成式(AlX2Ga1−X2)As(0≦X2≦1)のバリア層のAl組成X2=0.3にしたこと、すなわち、発光部をAl0.13Ga0.87As/Al0.3Ga0.7Asの対からなる井戸
層/バリア層に変更した以外は、実施例3と同じ条件で作製した。
この発光ダイオード(発光ダイオードランプ)の特性を評価した結果は表4に示した通りであり、ピーク波長760nmとする赤外光が出射され、発光出力(P)、順方向電圧(V)、出力残存率の平均、順方向電圧の変動はそれぞれ、11mW、1.9V、98%、100%であった。
(実施例13)
実施例13の発光ダイオードは第1の実施形態の実施例であり、発光ピーク波長を725nmにするべく井戸層のAl組成X1=0.19にしたこと、組成式(AlX2Ga1−X2)As(0≦X2≦1)のバリア層のAl組成X2=0.35にしたこと、すなわち、発光部をAl0.19Ga0.81As/Al0.35Ga0.65Asの対からな
る井戸層/バリア層に変更した以外は、実施例1と同じ条件で作製した。
この発光ダイオード(発光ダイオードランプ)の特性を評価した結果は表4に示した通りであり、ピーク波長725nmとする赤外光が出射され、発光出力(P)、順方向電圧(V)、出力残存率の平均、順方向電圧の変動はそれぞれ、14mW、2.0V、98%、100%であった。
(実施例14)
実施例14の発光ダイオードは第1の実施形態の実施例であり、発光ピーク波長を755nmにするべく井戸層のAl組成X1=0.15にしたこと、組成式(AlX2Ga1−X2)As(0≦X2≦1)のバリア層のAl組成X2=0.30にしたこと、すなわち、発光部をAl0.14Ga0.86As/Al0.3Ga0.7Asの対からなる井戸層/バリア層に変更した以外は、実施例1と同じ条件で作製した。
この発光ダイオード(発光ダイオードランプ)の特性を評価した結果は表4に示した通りであり、ピーク波長755nmとする赤外光が出射され、発光出力(P)、順方向電圧(V)、出力残存率の平均、順方向電圧の変動はそれぞれ、14.7mW、2.0V、98%、100%であった。
(比較例1)
比較例1の発光ダイオードは、従来技術である液相エピタキシャル法で形成した。GaAs基板にAl0.2Ga0.8As発光層とするダブルヘテロ構造の発光部を有する発光ダイオードに変更したものである。
比較例1の発光ダイオードの作製は、具体的には、n型の(100)面のGaAs単結晶基板に、Al0.7Ga0.3Asからなるn型の上部クラッド層を20μm、Al0.2Ga0.8Asからなるアンドープの発光層を2μm、Al0.7Ga0.3Asからなるp型の下部クラッド層を20μm、発光波長に対して透明なAl0.6Ga0.4Asからなるp型の厚膜層を120μmとなるように液相エピタキシャル方法によって作製した。このエピタキシャル成長後にGaAs基板を除去した。次に、n型AlGaAsの表面に直径100μmのn型オーミック電極を形成した。次に、p型AlGaAsの裏面に直径20μmのp型オーミック電極を80μm間隔に形成した。次に、ダイシングソーにより350μm間隔で切断した後、破砕層をエッチング除去して比較例1の発光ダイオードチップを作製した。
比較例1の発光ダイオードを実装した発光ダイオードランプの特性を評価した結果を表1に示す。
表1に示すように、n型及びp型オーミック電極間に電流を流したところ、ピーク波長を730nmとする赤外光が出射された。また、順方向に20ミリアンペア(mA)の電流を通流した際の順方向電圧(V)は、約1.9ボルト(V)となった。また、順方向電流を20mAとした際の発光出力は、5mWであった。また、比較例1のいずれのサンプルについても、本発明の実施例に比べて出力が低かった。
このランプ20個を、60℃、90RH%,20mAで高温高湿通電試験を実施した。
1000時間後の、出力残存率の平均は、83%であった。Vの変動はなく105%であった。
比較例のランプは、本発明の実施例に比べて出力が1/2以下と非常に低かった。また、高温高湿の信頼性も、実施例はほとんど変動がなかったが、比較例は、出力低下とV上昇が認められた。これは、発光ダイオードの高濃度Alの表面が酸化(腐食)し、光の透過を阻害し、抵抗が上昇したと考えられる。
本発明の発光ダイオードは赤外光を高効率発光し、植物育成用途の光源など、液相エピタキシャル法のAlGaAsのLEDで得られなかった高出力発光ダイオード製品として利用できる。また、従来のAlGaAs発光層LEDの高出力品として、代替する可能性がある。
1・・・発光ダイオード
2・・・化合物半導体層
3・・・機能性基板
3a・・・垂直面
3b・・・傾斜面
4・・・n型オーミック電極(第1の電極)
5・・・p型オーミック電極(第2の電極)
6・・・第3の電極
7・・・発光部
8・・・電流拡散層
9・・・下部クラッド層
10・・・下部ガイド層
11・・・発光(活性)層
12・・・上部ガイド層
13・・・上部クラッド層
14・・・GaAs基板
15・・・緩衝層
16・・・コンタクト層
17・・・井戸層
18・・・バリア層
20・・・発光ダイオード
21・・・電極
22・・・透明導電膜
23・・・反射層
25・・・ボンディング電極
30 シリコン基板
31 機能性基板
41・・・発光ダイオードランプ
42・・・マウント基板
43・・・n電極端子
44・・・p電極端子
45,46・・・金線
47・・・エポキシ樹脂
α・・・傾斜面と発光面に平行な面とのなす角度
50・・・金属基板
51・・・機能性基板
52・・・透明導電膜
53・・・反射層
55・・・第1の電極
56・・・コンタクト層
57・・・第2の電極

Claims (17)

  1. 組成式(AlX1Ga1−X1)As(0.13≦X1≦0.20)からなる井戸層と、組成式(AlX2Ga1−X2)As(0<X2≦1)からなるバリア層とを交互に積層し、両端にバリア層を有する量子井戸構造の活性層と、該活性層の下面と上面に設けられた第1のガイド層と第2のガイド層と、該活性層及び該ガイド層を挟む第1のクラッド層と第2のクラッド層とを有する発光部と、
    前記発光部の下方に設けられた電流拡散層と、
    前記電流拡散層に接合された機能性基板とを備え、
    前記第1及び第2のガイド層が組成式(AlX5Ga1−X5)As(0.2≦X5≦1)からなるものとし、
    前記第1及び第2のクラッド層が組成式(AlX3Ga1−X3Y1In1−Y1P(0≦X3≦1,0<Y1≦1)からなるものとし、
    X1<X2<X5の関係を満たし、発光ピーク波長を720〜760nmに設定されてなることを特徴とする発光ダイオード。
  2. 前記機能性基板は発光波長に対して透明であることを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオード。
  3. 前記機能性基板はGaP、サファイア又はSiCからなることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の発光ダイオード。
  4. 組成式(AlX1Ga1−X1)As(0.13≦X1≦0.20)からなる井戸層と、組成式(AlX2Ga1−X2)As(0<X2≦1)からなるバリア層とを交互に積層し、両端にバリア層を有する量子井戸構造の活性層と、該活性層の下面と上面に設けられた第1のガイド層と第2のガイド層と、該活性層及び該ガイド層を挟む第1のクラッド層と第2のクラッド層とを有する発光部と、
    前記発光部の下方に設けられた電流拡散層と、
    前記発光部に対向して配置して発光波長に対して90%以上の反射率を有する反射層を含み、前記電流拡散層に接合された機能性基板とを備え、
    前記第1及び第2のガイド層が組成式(AlX5Ga1−X5)As(0.2≦X5≦1)からなるものとし、
    前記第1及び第2のクラッド層が組成式(AlX3Ga1−X3Y1In1−Y1P(0≦X3≦1,0<Y1≦1)からなるものとし、
    X1<X2<X5の関係を満たし、発光ピーク波長を720〜760nmに設定されてなることを特徴とする発光ダイオード。
  5. 前記機能性基板が、シリコンまたはゲルマニウムからなる層を含むことを特徴とする請求項4に記載の発光ダイオード。
  6. 前記機能性基板は金属基板を含むことを特徴とする請求項4に記載の発光ダイオード。
  7. 前記金属基板は複数の金属層からなることを特徴とする請求項6に記載の発光ダイオード。
  8. 前記電流拡散層はGaPからなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の発光ダイオード。
  9. 前記電流拡散層の厚さは0.5〜20μmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の発光ダイオード。
  10. 前記機能性基板の側面は、前記発光部に近い側においては主たる光取り出し面に対して略垂直である垂直面を有し、前記発光部に遠い側においては前記主たる光取り出し面に対して内側に傾斜した傾斜面を有することを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の発光ダイオード。
  11. 前記傾斜面は粗い面を含むことを特徴とする請求項10に記載の発光ダイオード。
  12. 第1の電極及び第2の電極が発光ダイオードの前記主たる光取り出し面側に設けられていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の発光ダイオード。
  13. 前記第1の電極及び前記第2の電極がオーミック電極であることを特徴とする請求項12に記載の発光ダイオード。
  14. 前記機能性基板の、前記主たる光取り出し面側の反対側の面に、第3の電極をさらに備えることを特徴とする請求項12又は13のいずれかに記載の発光ダイオード。
  15. 請求項1乃至14のいずれか一項に記載の発光ダイオードを備えることを特徴とする発光ダイオードランプ。
  16. 請求項14に記載の発光ダイオードを備え、前記第1の電極又は第2の電極と、前記第3の電極とが略同電位に接続されていることを特徴とする発光ダイオードランプ。
  17. 請求項1乃至14のいずれか一項に記載の発光ダイオードを複数個搭載した照明装置。
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