JP5875131B1 - 細胞活性化装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】正常細胞を破壊させることなく効果的に癌細胞を破壊させることが可能な細胞活性化装置を提供する。
【解決手段】癌細胞を含む患部包含組織に対して波長3.3μm〜6.8μmの有効赤外線を、少なくとも0.1mW以上の放射束で、光源部を用いて照射し、前記光源部からの発熱量によって前記患部包含組織の被照射面の温度が正常体温から0.5℃以上に上昇しないような前記有効赤外線の放射束を設定することで、前記患部包含組織の温度を41℃未満の状態とすることを特徴とする細胞活性化装置を提供する。又、前記患部包含組織を冷却する冷却部を設けることで、前記患部包含組織の温度を41℃未満の状態とする。

Description

本発明は、細胞活性化装置(癌治療装置)に関する。特に、癌細胞および周辺細胞に対して働きかけ、細胞が本来備える遺伝子修復機構を活性化し、癌細胞の増殖を抑制し、癌細胞を消滅させる細胞活性化装置に関する。
現状の癌治療では、発見が遅れると完治できず、たとえ早期に発見しても癌の発生部位によっては摘出手術ができない場合もあり、化学療法、放射線療法や温熱療法等もあるが、これらの治療法では副作用を伴う等、多くの問題が山積している。また、たとえ早期に発見でき、癌の発生部位が摘出可能な部位であっても、癌摘出という外科的治療は人体に損傷を与える侵襲的治療方法である。
このような現状を踏まえ、癌治療研究および癌治療用の機器開発は活発に行われているが、まだ決定的な癌治療方法は見出されていないのが現状である。
非侵襲的癌治療方法として温熱療法に関する技術が知られている(例えば、特許文献1〜6)。これらの文献では、癌細胞が高温に弱いとの定説に基づいて、主に熱線として作用する赤外線を患部や全身に照射する技術であり、患部深部の体温を41℃〜42℃程度に上昇することが必要であるとされている。上記の理由から、頭部以外の全身をカプセル状の容器に患者を入れ、赤外線照射手段による輻射熱と密閉容器内の空気による伝導熱とによって、患者の頭部以外のほぼ全身を加温し、患部の深部体温を短時間で41.0℃〜42.5℃に到達させる。ここで、細胞温度が41.0℃以上に上昇すると、細胞のDNA活動が停止することが知られている。そのため、上述した文献の療法では、患部の温度を41.0℃以上に上昇させ、癌細胞も正常細胞も併せて患部の細胞をすべて破壊してしまうという課題がある。
上記の特許文献1〜3はいずれも赤外線加熱により患部を温めて血行を良好にするか、患部を深部まで強力に過熱して癌を治療する技術であり、血液の循環を良くする程度の加熱では癌治療の目的を達成できないという課題がある。特に、特許文献1の技術では、全身または患部の深部体温を41℃〜42℃程度に上昇させるために、血液を45℃〜46℃に加温する必要がある。この場合、通常、血液の凝固を防止するために患者にヘパリン等を投与する必要がある。治療時間は1時間程度が限度であり、治療後数日間は立ち上がれないほどの肉体的負担や低温火傷などの障害を生じる危険性がある。また、使用する赤外線の中心波長5μm近傍には水の吸収波長が存在するので、この近傍で照射した赤外線が吸収されて、癌細胞に有効に働かない危険性がある。
また、特許文献1〜3の技術は、体温の上昇を目的にして、赤外線の輻射熱を人体に加える手段を提供するものであり、この場合、患部体温を41℃〜42℃に上昇させると、皮膚温度が65℃以上に上昇することから、長時間照射により低温やけどが生じる。そのため、治療時間は、やはり1時間程度が限度とされていた。
特許文献4、5の技術では、その目的が加温ではなく、微細穴による分光法を用いて保温効果を生じさせる手段を提供するものであり、微細穴による分光法で、且つ配光も同時に制御しようとするものである。特許文献4、5の技術は、その目的は癌治療と異なるが、上述した特許文献1〜3を実現する基本技術となるものである。一方、正常細胞については、生理的範囲である43℃以下に保つ必要があるため、正常細胞を保護しつつ、患部体温を43℃以上に維持することは相当難しいという技術的課題が残されている。
発明者は、温熱療法以外の原理に基づく研究を行い、癌細胞を含む患部に対して、熱線として作用する7.5μmより大きな波長の赤外線をカットし、7.5μm以下の波長の赤外線を照射することにより、細胞が本来備えている遺伝子修復機構を活性化して癌治療を支援する方法を開発した(特許文献7、8、非特許文献1、2)。しかし、効果を裏付ける作用機序が不明確であり、顕著な効果を得るための最適な条件も不明確であった。
特開昭61−259680号公報 特開平11−33074号公報 特開昭63−84567号公報 特開平10−89588号公報 特開2004−271518号公報 特開昭62−38181号公報 特開2011−078541号公報 国際公開第2012/144504号
Nature Preceding : hdl : 10101/ npre. 2008、1980、1:Posted17 Jun 2008 Central European Journal of Biology、5(2)、178-189
従来の療法のように、患部の温度を41℃以上に上昇させて癌細胞を破壊させる方法では、正常細胞も併せてすべて破壊してしまうものである。そこで、本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、正常細胞を破壊させることなく効果的に癌細胞を破壊させることが可能な細胞活性化装置を提供することを目的とする。
本発明は、上述の加温治療法とは全く異なる原理によるものである。即ち、本発明に係る細胞活性化装置は、癌細胞を含む患部包含組織に対して、波長3.3μm〜6.8μmの有効赤外線を、少なくとも0.1mW以上の放射束で、光源部を用いて照射し、前記光源部からの発熱量によって前記患部包含組織の被照射面の温度が正常体温から0.5℃以上に上昇しないような前記有効赤外線の放射束を設定することで、前記患部包含組織の温度を41℃未満の状態とすることを特徴とする。
又、本発明に係る細胞活性化装置は、癌細胞を含む患部包含組織に対して、波長3.3μm〜6.8μmの有効赤外線を、少なくとも0.1mW以上の放射束で、光源部を用いて照射し、前記患部包含組織を冷却する冷却部を設けることで、前記患部包含組織の温度を41℃未満の状態とすることを特徴とする。
又、本細胞活性化装置が、前記光源部からの赤外線のうち、前記有効赤外線のみを通過させて、前記患部包含組織に照射させる波長選択部を備える場合、前記冷却部は、前記波長選択部と前記患部包含組織との間の空隙に設けられ、前記光源部からの熱を前記空隙の空気中に放熱する自然空冷、又は強制冷却用ファンにより前記光源部からの熱を含む前記空隙の空気を強制的に流す強制空冷である。
本発明は、ヒトのタンパク質を構成するアミノ酸分子の格子振動波に共鳴する有効赤外線を外部から照射することにより、癌細胞のアポトーシス回路を立ち上げて自然に癌細胞を自滅させる。さらに、生き残った癌細胞が、自らの遺伝子修復回路を立ち上げることにより正常細胞にもどって細胞分化を引き起こす。本発明では、細胞を加温することがないため、温熱療法で引き起こされる有害事象が無く、患者に安全安心の細胞活性化装置を提供することが出来る。
本発明は、細胞や生体を加温することなく、従来の温熱療法で示した治療による障害は見られない新規な細胞活性化装置を提供することが可能となる。また、癌細胞の周囲の正常細胞についても正常細胞を活性化させることができるので、癌の予防のみならず他の疾病の予防にも役立つ効能が期待出来る。
本発明の実施形態に係る細胞活性化装置の基本原理図である。 赤外線の波長領域での水等の吸収特性図である。 本発明の実施形態に係る細胞活性化装置の構成要素の概略図である。 熱板を用いた本発明の実施形態に係る細胞活性化装置の構成図である。 配光制御部に反射鏡を用いた本発明の実施形態に係る細胞活性化装置の構成図(図5(a))と、その変形例の構成図(図5(b))である。 本発明の実施形態に係る細胞活性化装置の分光特性較正用の微細孔付フィルターの模式図(図6(a))と、その変形例の模式図(図6(b))である。 本発明の実施形態に係る波長選択部のポリスチレン製の分光材料の分光透過特性図である。 本発明の実施形態における被射体部に照射される有効放射と黒体放射の相対分光放射束と、赤外線の波長領域との関係を示すグラフである。 本発明の実施形態に係るLED光源の配列による有効放射の一例を示した図である。 本発明の実施形態に係るLED光源の配列の一例を示した図(図10(a))と、その変形例を示した図(図10(b))である。 本発明の実施形態に係る複数個のLED光源の配列における有効波長領域の分光発光特性例を示した図(図11(a))と、その変形例を示した図(図11(b))である。 本発明の実施形態に係る赤外線LED光源のチップ状の構成図(図12(a))と、赤外線LED光源の砲弾型の構成図(図12(b))である。 試験例1における赤外線照射の有無での正常ヒト前立腺上皮細胞(PrEC)、ヒト前立腺癌細胞(DU145、PC−3、LNCaP)の細胞増殖結果を示す図である。 試験例2における赤外線照射の有無でのヒト前立腺癌細胞(DU145、PC−3、LNCaP)の細胞増殖結果を示す図である。 試験例3における赤外線照射の有無での正常ヒト前立腺上皮細胞(PrEC)、ヒト前立腺癌細胞(DU145、PC−3、LNCaP)のβシートに対するαへリックスの比の変化を示す図である。
以下に、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
本発明は、上述の加温治療法と全く異なる原理に基づくもので、ヒトのタンパク質を構成するアミノ酸分子の固有分子の格子振動波に共鳴し、アミノ酸分子の固有分子の格子振動数と同等の振動数を有する赤外線を外部から癌細胞を含む細胞に照射する。これよって、癌細胞のアポトーシス回路を立ち上げて自然に癌細胞を自滅させ、且つ、細胞が本来持つ遺伝子修復回路を活性化し、正常細胞へと戻す細胞活性化作用を引き起こすことが可能となる。本発明は、細胞を過剰に加温することがないため、温熱療法による障害は見られない。
発明者は、癌治療の研究を長年続ける中で、従来の温熱療法より一層効果があり、且つ、治療に伴う障害を引き起こすことのない癌治療方法を研究してきた。この研究を進める過程で得た新たな発見は、細胞内のアミノ酸分子に外部から、当該アミノ酸分子の赤外線の吸収波長領域に対応する赤外線を照射することによって、細胞を活性化させ癌細胞を死滅ないし増殖抑制を生じさせることであり、発明者は、この発見に基づいて、本発明に係る細胞活性化装置を発明した。
本発明に係る細胞活性化装置(癌治療装置)は、癌細胞を含む患部包含組織に対して波長3.3μm〜6.8μmの赤外線(有効赤外線とする)を、少なくとも0.1mW以上の放射束で、前記患部包含組織の温度が41℃未満の状態で、照射する。この有効赤外線は、アミノ酸分子の赤外線吸収波長領域に対応している。又、有効赤外線の放射束を低く設定することで、患部包含組織の細胞が41℃以上になる高温加熱にならない原理とし、細胞を活性化させる。本発明では、照射する赤外線の放射束を、アミノ酸分子を含む細胞に障害を与えることがない範囲で使用することを特徴としている。
本発明に係る細胞活性化装置の基本原理は、癌細胞を含む患部包含組織又は/及び前記患部包含組織の周辺組織に、有効赤外線を外部から0.1mWの放射束で照射する。これにより、細胞(患部包含組織、周辺組織)内におけるアミノ酸分子を構成する固有分子の格子振動波に共鳴する波長の振動波(有効赤外線)を与え、固有分子の格子振動波を増幅させることで、前記アミノ酸分子を活性化させる。本発明に係る細胞活性化装置は、図1に示すように、光源部Iと、配光制御部IIと、波長選択部IIIと、被射体部(患部)IVと、を備えている。光源部Iから照射された光を、配光制御部II、波長選択部IIIを介して、有効赤外線とし、これを被射体部(患部)IVに照射する。
表1は、タンパク質及びそれを構成するアミノ酸分子の固有分子(固有結合)における赤外線吸収波数と赤外線吸収時のピークの形態(シャープかブロードか)の一覧を示す。表1は、標準物質等のスペクトルのデータベースの提供報告書(平成25年3月31日 一般社団法人日本海事検定協会)から抽出したデータをまとめた。表1に示すように、アミノ酸分子の固有振動の赤外線吸収波数領域は1052cm−1〜3400cm−1であり、この赤外線吸収波数を赤外線吸収波長λに換算すると、アミノ酸分子が吸収する赤外線の波長は、3.0μm<λ<9.5μmの波長に相当する。ここで、図2に示すように、5.5μm〜7.6μm、及び14μm以上の赤外線の波長には、水(HO)による赤外線吸収帯が含まれていることから、本発明では、有効赤外線の波長領域を、3.3μm<λ<6.8μmと設定し、更に限定すれば、3.0μm<λ<5.5μmと設定する。当該有効赤外線では、個々の分子構造に由来する、水素結合、アミド結合、カルボン酸によって、個々の吸収波長は異なるが、全ての吸収波長を総合すると、総合した吸収波長が、有効赤外線の波長領域のほぼ全域にわたって存在していることが分かる。
さて、上述を踏まえて、本発明に係る細胞活性化装置の構成要素を具体的に説明すると、図3に示すように、波長選択部IIIは、フィルターV、微細穴VI、その他のいずれかで構成される。配光制御部IIは、赤外線放射率が高い反射鏡VIIで構成される。光源部Iは、熱放射VIII、LED(Light Emitting Diode)IX、レーザーX、THz放射源XIのいずれかで構成される。例えば、図4に示すように、本発明に係る細胞活性化装置は、光源部となる熱板と、熱板の熱放射による赤外線から、有効赤外線のみを透過させるフィルターと、を備え、通過した有効赤外線を被射体部に照射させる。又、被射体部を冷却する冷却部が設けられる。熱板は、出力制御部により制御され、冷却部は、例えば、下端部に強制冷却用ファンを備え、ファンで下方に空気を送り出すことで、冷却部の上端部から下端部まで、空気を流して、環境及び被射体部IVの温度上昇を防止する。尚、光源部Iに熱放射VIIIに対応する熱板(発熱体)を用いたが、この他に、シリコニットや、LEDIX、レーザーX、THz放射源XI等を用いてもよい。また、光源部Iの発熱体の形状は、平板状、棒状、電球形状等、被射体部IVの部位に適した形状を採用出来る。
ここで、配光制御部IIは、光源部Iからの赤外線の放射を適切に被射体部IVに照射するためのものであり、一般には、平面型、放物面型、楕円型、或いはこれらを組み合わせた形状の反射鏡が用いられる。又、一例として、図5(a)に示すように、光源部Iに、小型形状で黒体放射するシリコニットを用い、配光制御部IIに、放物面鏡を用いて、放物面鏡の焦点にシリコニットを配置し、このシリコニットから放射される有効赤外線を、放物面鏡により、平行光線とし、高効率的に被射体部に照射しても良い。ここで、例えば、シリコニットのような、小型形状で配光制御しやすい形状の光源部Iを使用することが好ましいが、光源部Iの形状によって、有効赤外線が平行に照射される場合もあり、その場合は、配光制御部IIの反射鏡を必要としない。
光源部Iから照射される赤外線には、癌細胞のアポトーシスに必要な有効赤外線以外の赤外線も含まれている場合、一般的に、有効赤外線のみを透過させるフィルターVを用いる。フィルターVは、一枚で構成されても良いし、一枚のフィルターでは十分な分光透過特性を得ることが出来ない場合に複数枚で構成されても良い。又、フィルターVは、一枚のフィルターで有効赤外線が得にくい特性の場合に、癌細胞のアポトーシスと無関係で、不要な波長領域の赤外線をカットするカットフィルターを更に設けて、有効赤外線の特性を補正しても良い。ここで、一般には、フィルターVは、光学フィルターを主体とするが、一枚の光学フィルターで所要の分光特性が得られない場合には、微細穴径の異なる複数の微細穴を一組としたものやメッシュ状の穴をもつ微細穴VIのフィルターを設けても良い。又は、光学フィルターV、微細穴VI、その他、これらの組み合わせによって所要の分光特性を得ても良い。但し、波長選択IIIに複数のフィルター手段を設けることにより放射束の低下をもたらす手段は好ましくない。
又、本発明に係る細胞活性化装置は、図5(b)に示すように、出力制御部により制御される光源部から放射された赤外線を放物面鏡によって配光制御し、フィルターを介して有効赤外線のみを透過させる。ここで、被射体部の温度について、フィルターと被射体部との間に、空隙を設け、当該空隙に、強制冷却用ファンを有する冷却部を設けて、この空隙を自然空冷する、あるいは強制空冷することによって、被射体部の温度の上昇を抑える。また、被射体部に照射される赤外線の放射束、及び被射体部の温度は、光源部、配光制御部、及び波長選択部の相互関係によって決まるので、これらの関係を予め実験によって明らかにしておく。
ここで、適正な波長特性を有する赤外線の放射が容易に得られない場合には、図6(a)に示すように、板状あるいはフィルム状の分光材料(ポリスチレン板、板状セラミック等)に、直接透過させようとする波長の約1/2の径(例えば、1.8μm)の穴を複数個設け、この組を板状に均一に配置することによって、必要波長に合わせる新規な微細穴径付フィルターとすることが可能である。又、フィルターに設けられる複数の穴の径は、同一である必要は無く、例えば、図6(b)に示すように、穴の径(1.5μm、2.0μm、2.5μm、3.0μm)の異なる複数個の穴を設け、当該複数個の穴を一組として、この組を板状に均一に配置しても構わない。
したがって、特定の分光特性を有するフィルターに微細穴を設けた微細穴径付フィルターにより、有効赤外線の波長領域内の分光透過特性を最適化し、当該フィルターを通した赤外線を被射体部IVに照射することが可能となり、細胞活性化に必要な有効赤外線を効果的に照射できる。
また、光源部Iからの熱が配光制御部II、波長選択部IIIに伝導あるいは輻射によって伝わり、被射体部IVの温度上昇を招く危険性がある場合には、波長選択部IIIと被射体部IVとの間に空隙を設け、熱を雰囲気中に放熱して、被射体部IVの発熱を防止するか(自然冷却)、ファン等の冷却部を用いて熱を含む空気を強制的に放出することにより、被射体部IVの発熱を防止しても良い(強制冷却)。
尚、光源部Iからの発熱量によって、被射体部IVの被照射面の温度が、正常体温から0.5℃以上に上昇しない場合には、冷却部は不要である。例えば、有効赤外線の放射束を低く設定することで、被射体部の温度を41℃未満の状態に維持することが出来る。このように、被射体部IVの被射斜面の温度を医学的に正常体温±0.5℃(正常体温はヒトにより異なる)に保ち、低温火傷を起すような41℃以上に上昇させないことで、正常細胞を活性化し、且つ、癌細胞を死滅させることが可能になる。
図3に示す本発明では、光源部Iに熱板を用い、波長選択部IIIにポリスチレン製フィルターを用い、配光制御部IIの反射鏡は、除外した。図7には、ポリスチレン製の分光材料の分光透過特性を示す。図7に示すように、透過光の波長の3.0μmから5.5μmの範囲のうち、3.6μm辺りの波長に、赤外線の吸収が見られるが、その他の波長領域では、赤外線を全て透過させている。更に、この分光特性は、不要とされる6.8μm以上の波長の赤外線を不透過とし、遮断する構成になっており、波長選択部IIIに当該フィルターを用いることは有効な手段になることが分かる。また、赤外線が透過可能な長波長側の限界を6.8μmとしたが、図2に示すように、5.5μm以上の波長領域に、水による吸収帯があるため、この分光特性の有効波長λは3.0μm<λ<5.5μmであると考える。図8は、被射体部に照射される有効放射と黒体放射の相対分光放射束と、赤外線の波長領域との関係を示すグラフである。図8に示すように、黒体放射及び有効放射では、2.8μm以下の波長領域の赤外線の相対分光放射束が相対的に小さいことから、前記フィルターが、2.8μm以下の波長領域の赤外線を透過させても、当該波長領域の赤外線の放射の影響は殆ど受けることが無い。又、有効赤外線の放射に対応する有効放射の相対分光放射束は、黒体放射の相対分光放射束よりも極めて低いことから、被射体部の温度上昇に殆ど寄与しないことが理解される。
ここで、後述するように、ポリスチレン製フィルターを波長選択部IIIとして用いた実験例により、正常細胞及び癌細胞を同一条件下で培養実験し、有効赤外線の有無の実験結果を総合すると、6.8μm以下、好ましくは6.5μm以下の波長領域の有効赤外線の照射によって、癌細胞の増殖を抑制する働きがあるとともに、正常細胞を活性化させると言う細胞育成作用があることが分かった。また、熱源の強度を変えて、有効赤外線の照射強度を変化させ、ヒト前立腺癌細胞に照射し、培養実験した実験結果は、いずれも癌細胞の増殖は抑制されていることが分かった。また、後述する実験結果から、波長が6.5μm以下の赤外線の放射束(照射強度及び照射量)を増加させると、癌細胞の増殖は減少傾向を示し、短期間に増殖が抑制されることを確認できた。
図9に示すように、光源部Iとして中心波長の異なる複数個の赤外線発光用のLEDを用い、これらのLEDの配列を適正化することによって、有効赤外線の波長領域に効果的な波長特性をもつ光源を作成することが可能である。4個のLED(A)(B)(C)(D)の赤外線の放射波長は、例えば、6μm、5μm、4μm、3μmである。4個のLEDを1グループとして、このグループを複数構成することで、光源部I全体として、有効赤外線を照射させることが出来る。図10(a)に示すように、LED1は、平板の表面にLEDチップ2を実装している。LEDチップ2は、金属配線3によって電極4に電気的に接続されている。又、LEDチップ2の周囲には、反射板5が設けられ、赤外線の照射に指向性を持たせている。又、図10(b)に示すように、中心波長の異なる複数個のLEDの配列を1グループとし、複数のグループを高密度に集積することによって、放射束を高め、必要とする波長、強度の有効赤外線の放射を得ることが可能となる。ここで、1グループは、4個のLED11、12、13、14で構成され、複数のグループを、蛍光灯形状或いは電球形状に対応した外管バルブ15で包含している。外管バルブ15の両端部から、各種LEDに電力を供給するためのピン16が突出している。図11(a)に示すように、有効赤外線の波長領域の範囲内に、中心波長の異なる3個のLEDを光源部Iとして用いれば、各LEDの中心波長に半値幅が存在することから、各LEDの赤外線が相互に重なり合って、全体として有効赤外線の波長領域を満たす。又、LEDの個数に限定は無く、例えば、図11(b)に示すように、7個のLEDを光源部Iとして用いても良い。また、LEDは、図12(a)に示すように、アルミニウム基板1上に、3種類のLEDチップ2を載せ、ワイヤ3を介して金属配線4に電気的に接続している。LEDチップ2に蛍光体5を設けて、LEDチップ2の光を拡散させて、照明光源の演色性を向上させている。又、アルミニウム基板1にバンク6を設けている。又、LEDは、図12(b)に示すように、砲弾型でも良く、LEDチップ2の外装5を砲弾形状とし、当該形状の表面にレンズ機能7を持たせている。LEDチップ2は、金属配線用のフレーム8に電気的に接続される。このLEDの光源からは、有効波長領域を包含する有効赤外線が、被射体部IVの温度を高めることなく、照射される。
つぎに、配光制御について述べる。被射体部IVの部位が面状の場合には、光源部IのLEDを板状に配列し、配光制御をすることなく、直接、被射体部IVに有効赤外線を照射することが有効である。しかし、被射体部IVの部位が平面状ではなく、特殊形状の場合、あるいは小面積の部分の場合、光源部Iからの有効赤外線を配光制御部II(例えば、反射鏡VII)でできるだけ有効赤外線の光束を絞って、被照射体IVの部位に照射すると効果的である。この配光制御部IIの反射鏡VIIは、例えば、放物面鏡、楕円鏡等を用いれば良い。
また、波長選択部IIIについて述べる。中心波長及びその半値幅が明らかな複数種類のLEDを用いて、有効赤外線の有効放射を作る場合、中心波長の異なるLEDを複数個並べて、一組の有効放射素子とし、この有効放射素子を複数平面状に用いて、平板状の光源部Iとすることで、有効赤外線を放射する光源部Iを構成することが出来る。この場合には、波長選択部IIIは不要となる。したがって、このような構成によって、本発明に係る細胞活性化装置を作ることも可能である。この細胞活性化装置では、被射体部IVの温度を、温熱療法のように上げることなく、正常細胞を活性化し、且つ、癌細胞を死滅させることが可能となる。また、レーザーXやTHz光源XIのように、小型で中心波長の異なる光源部Iが用意できる場合には、当該光源部Iの配列によって、赤外線の照射波長に選択性をもたせ、有効赤外線の分光特性を最適化した光源部Iを構成することが可能となる。この場合でも、波長選択部IIIのフィルターVや微細穴VIは不要となる。また、光源部Iの配列に用いる基板の形状は、平板状であっても、丸状であっても構わない。また、光源部Iの点灯方式は、連続点灯でもパルス点灯でも構わない。
つぎに配光制御部IIの反射鏡VIIについて述べる。配光制御部IIの反射鏡VIIを用いることで、光源部Iが比較的小型であっても、反射鏡VIIによる配光制御機能が有効に働き、有効赤外線の照射を有効に活用出来たり、被射体部IVの照射面を限定して有効赤外線を照射することが出来たりする。尚、レーザーXやTHz光源XIのように、小型で中心波長の異なる光源部Iを用いる場合には、LEDと同様の手法によって、所要の分光特性及び所要の配光特性を得ることが可能になる。また、LED照明のように、赤外線の発光を全く持たない照明装置の照明下で長時間作業をする場合には、有効赤外線の照射量が不足する現象が生じる可能性がある。このような場合には、有効赤外線を照射する照明器具あるいはLED光源内に有効赤外線を照射する光源部Iを内蔵する。また、有効赤外線を用いて専門的立場から癌治療に用いる場合には、有効赤外線の放射束を高める。
後述する試験例1から試験例3において、熱放射や熱放射以外のLED、レーザー、THz光源等の光源部Iを用い、被射体部IVに有効赤外線を放射した場合、被射体部IVの温度を高めることなく、有効赤外線の放射束を強める程、正常細胞は増加し、癌細胞に短期間で増殖抑制作用が働くことが明らかとなった。有効赤外線を放射しなかった場合には、癌細胞の抑制は起らないことが明らかとなった。上述の結果から、波長が6.8μm以下の有効赤外線の照射は、少なくともヒト前立腺癌治療の有効な手段になり得ることを示唆している。ここで、以下に、有効赤外線の照射によって、何故上述のような現象が生じるのかについて文献、資料を基に考察する。
細胞に対する有効赤外線の照射によって、細胞を構成するアミノ酸分子は、有効赤外線と共鳴振動を起し、分子中の核は励起され、基底状態から励起状態に移行する。この励起状態における電子は、アミノ酸を構成している分子に作用し、分子構造状態を変化させる。アミノ酸分子はC−H、O−H、CH、C−C等の分子が相互に結合した状態にある。これらの分子には、分子固有の吸収帯があることが知られている。言い換えれば、この吸収帯の振動数に対応した振動数(波長)の赤外線を外部から与えた時に、アミノ酸分子は共鳴を起し、アミノ酸分子と他の分子との反応性を変化させることが原因と考えられる。
細胞の死滅は、正常および腫瘍性上皮の再生に重要な役割を果たしており、死滅現象の低下は、肺、乳房、前立腺等の転移と局所浸潤の進行に関連付けられている。有効赤外線により、腫瘍にアポトーシス回路が誘導される作用機序は、以下のように考えられている。
即ち、有効赤外線の受光による正常細胞および癌細胞の両方に特定のDNA修復経路の活性化とアポトーシスの現象は、主に、アミノ酸分子の共鳴に起因し、Thermoeffectに起因しないと考えられる。一般的に0.36℃の温度の上昇は、熱力学にArrheniusの式に従って、光子エネルギーのThermoeffectによって分子の動きを活性化するが、温度上昇による分子の振動が、癌増殖の抑制に直接に関与していると考えるのに少し無理がある。一方、試験例1から試験例3の実験結果では、有効赤外線が癌細胞の増殖抑制現象を起こすことを示していることから、有効赤外線に癌増殖抑制効果をもたらす科学的な理由があると考える。一方、これまでになされた分光解析により、波長6.8μm以下の赤外線を分子が受けると、分子の−OH基のHがLiやNaに変換されることが知られている(非特許文献1)。この変換が、癌細胞にとって致命的であると推察される。
その理由は、下記の通りである。癌細胞では、その活動に必要な大量のATPを作るために、嫌気性解糖系が主として働いている。すなわち、解糖系で糖からピルビン酸を作り、そこから乳酸脱水素酵素の働きにより、乳酸を作る。この時に、癌細胞では2ADPを使い、一回転で2ATPを作る。通常の細胞では、ピルビン酸からアセチルCoAを経てTCAサイクルを回し、一回転で36ATPをつくる。この違いこそ癌細胞が大量にグルコースを消費する理由と考えられている。癌細胞において波長6.8μm以下の赤外線の照射により、その嫌気性解糖系のピルビン酸や乳酸脱水素酵素のOH基にLiやNaの置換が起こり、必要なATPが十分に出来ないことが推察される。この結果、癌細胞では生存に必要なエネルギー不足が生じ、細胞が死に向かい、死滅回路が立ち上がるものと推察される。
それでは、正常細胞も大きな影響をうけるのではないかと推察されるが、ATP作製能力が2:36=1:18であることが、大きく影響し、癌細胞にとって赤外線による影響が致命的になると推察される。有効赤外線により、遺伝子修復回路が立ち上がる理由は明確でないが、分子レベルの振動波として赤外線が働き、サイレントあるいは活動が低下している癌抑制や遺伝子修復遺伝子などを立ち上げていることは、今回の一連の実験で明らかである。この機構については、有効赤外線の照射による固有分子の格子振動波が、特定の分子の活性化に関連する物理・化学的な現象に基づくものと考える。
本発明は、細胞培養時の培地温度の上昇の原因が細胞培養時の代謝エネルギーにあること、この代謝エネルギーの内の6.8μm以下の特定の波長領域にある赤外線が正常細胞及び癌細胞に効果的に働くことの知見に基づいて完成されたものである。
(試験例1)
ポリスチレンフィルタを用いて、波長が6.8μm以下(3.3μm<λ<6.8μm)の有効赤外線を、ヒト正常前立腺上皮(PrEC)(以下正常細胞と略称)と、3種類のヒト前立腺癌細胞(DU145、PC−3、LNCaP)(以下癌細胞と略称)に放射し12日間37.0℃、5%のCO下で培養した。その結果、図13に示すように、正常細胞では、有効赤外線の放射による増殖抑制はなく、細胞数は約150%増加していた。一方、癌細胞では、有効赤外線の照射により増殖抑制が起きていることを確認した。又、顕微鏡で癌細胞を観察した結果、癌細胞の一部が死滅していることが分かった。この実験では、有効赤外線を放射した培地温度は、有効赤外線を照射しないものに比べて0.4℃上昇していたことから、最初に2台のインキュベータを用意し、一方のインキュベータの温度を37.0℃に設定し、他方のインキュベータの温度を37.4℃に設定した上で、癌細胞のみを培養し、その増殖割合を比較検討した。図13に示すように、他方のインキュベータでの癌細胞の培養結果では、一方のインキュベータでの癌細胞の培養結果と同様に、癌細胞の増殖が認められ、増殖抑制効果は認められなかった。ここで、細胞培養時の代謝熱を測定して、この値から概算した放射束は0.144mWであった。そのため、今回の放射束での細胞培養実験の結果、細胞培養に要する時間はかかるものの、正常細胞は増加するが癌細胞の増殖速度は遅くなることが分かった。概算した放射束で、正常細胞の増加、癌細胞の増殖抑制が確認出来ていることから、この放射束は、外部から有効赤外線を照射する最低限の放射束と考えた。
(試験例2)
試験例1において、有効赤外線の照射の効果が温度上昇によるものでないことが確認されたので、インキュベータの温度を35.0℃に設定した培地に、予め37℃で7日間培養した癌細胞を入れ、40.1℃の熱板からの有効赤外線の放射により、培地温度を37.7℃になるよう構成し、この環境下で5日間癌細胞を培養した場合と、単に、温度を37℃に設定したインキュベータ内の培地で癌細胞を培養(培地温度37.3℃)した場合の比較を行った。図14に示すように、熱板からの有効赤外線の照射の場合に、癌細胞数は統計学的に有意に平均77.4%減少した。このときの有効赤外線の放射束を計算で求めると、1.725mWとなった。放射束が1.725mWの時の癌細胞の増殖速度が、放射束が0.144mWの時よりも短期間となり、癌細胞の増殖速度が相対的に低下する結果を得た。この試験では、培養7日目と12日目に癌細胞からmRNAを回収し、DNAアレイとReal time−PCRにより、長期間の有効赤外線の暴露が癌検体と正常検体の遺伝子修復回路を立ち上げていることを確認できた。
(試験例3)
自由電子レーザーを用い、波長が4.8μmであり、放射束が8mWであり、周波数が5Hz/secの有効赤外線を5パルス、癌検体と正常検体に照射して、癌細胞のβシートに対するαへリックスの比を測定した。その結果、図15に示すように、有効赤外線の照射により癌細胞のβシートに対するαへリックスの比は増加していることが確認された。これは、有効赤外線の照射により癌細胞の蛋白質が崩壊している証拠である。このことは、波長が6.8μm以下の有効赤外線が、癌細胞の遺伝子修復回路を立ち上げ、癌細胞の増殖を抑制する事実を示している。この事実は、副作用のない新しい癌制御の物理的な手段を我々に与える可能性を秘めている。同時に、一連の実験の結果は、我々の日常生活の中で、有効赤外線が身体を健康に維持するための重要な役割を演じていることを示唆しているとも言える。
以上、本発明の細胞活性化装置における好ましい実施形態を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
本発明の細胞活性化装置は、細胞活性化を行う装置として広く用いることができる。例えば、患者は日常生活を送りながら癌の治療を受けることができるため、癌治療の支援に対して広く用いることができる。また、癌予防としても有効な手段と考える。その他、有効赤外線が存在しない環境下、仮に存在しても有効赤外線の放射量が少ない環境下での作業において、将来発生する新たな環境変化に対しての健康維持手段や健康機器や治療機器の開発にも大きく貢献できるものと考える。

Claims (3)

  1. 癌細胞を含む患部包含組織に対して、波長3.3μm〜6.8μmの有効赤外線を、少なくとも0.1mW以上の放射束で、光源部を用いて照射し、
    前記光源部からの発熱量によって前記患部包含組織の被照射面の温度が正常体温から0.5℃以上に上昇しないような前記有効赤外線の放射束を設定することで、前記患部包含組織の温度を41℃未満の状態とすることを特徴とする細胞活性化装置。
  2. 癌細胞を含む患部包含組織に対して、波長3.3μm〜6.8μmの有効赤外線を、少なくとも0.1mW以上の放射束で、光源部を用いて照射し、
    前記患部包含組織を冷却する冷却部を設けることで、前記患部包含組織の温度を41℃未満の状態とすることを特徴とする細胞活性化装置。
  3. 本細胞活性化装置が、前記光源部からの赤外線のうち、前記有効赤外線のみを通過させて、前記患部包含組織に照射させる波長選択部を備える場合、
    前記冷却部は、前記波長選択部と前記患部包含組織との間の空隙に設けられ、前記光源部からの熱を前記空隙の空気中に放熱する自然空冷、又は強制冷却用ファンにより前記光源部からの熱を含む前記空隙の空気を強制的に流す強制空冷である
    請求項に記載の細胞活性化装置。
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