JP5870031B2 - 自動化放射合成 - Google Patents

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Description

本発明は、インビボイメージング、特に中枢神経系(CNS)のγ−アミノ酪酸(GABA)受容体のインビボイメージングに関する。本発明は、放射性フッ素化GABA受容体アンタゴニスト化合物の自動化合成に適した方法を提供する。
γ−アミノ酪酸(GABA)は、ヒトの脳における最も重要な抑制性神経伝達物質である。GABA受容体は膜貫通受容体であり、2つの主なタイプ、即ちGABAA受容体及びGABAB受容体に分けられる。GABAA受容体は、これまで薬理学的開発の主要な対象となってきた。多くのGABAA受容体サブタイプが発見され、これらのサブタイプに対して選択的な新規化学構造が開発されている。GABAA受容体が正常に活性化されれば、塩化物イオンがその細孔を選択的に通過する。この塩化物イオンチャンネルゲーティングは、膜電位を静止レベル付近に安定化することにより、ニューロンに対して一般に抑制的である。
GABAA受容体神経伝達の欠陥は、GABAA受容体の減少或いは例えばGABAA受容体遺伝子の遺伝的突然変異、外傷性脳損傷又は薬学的傷害に原因するGABAA受容体の機能欠陥によって引き起こされることがあり、てんかん、不安障害、パーキンソン病及び慢性疼痛をはじめとする若干の神経学的及び精神医学的障害に関係している。したがって、GABAA受容体に対して選択的な放射性リガンドの開発は、生きているヒト患者、特にGABAA受容体神経伝達の欠陥に関連する障害に罹患している患者における脳イメージング検査に関して価値がある。
(フルマゼピルとしても知られる)フルマゼニル(コード名Ro 15−1788、商品名Anexate、Lanexat、Mazicon、Romazicon)はイミダゾ[1,5−a][1,4]ベンゾジアゼピンであって、これはCNSにおけるGABAA受容体の中和性アロステリックモジュレーターである(Johnston 1996 Pharmacol Ther;69(3):173−198)。これまで、フルマゼニルの最も普通の用途は、ベンゾジアゼピンの過量に対する解毒剤としてのものであった。これは、フルマゼニルがGABAA受容体のベンゾジアゼピン結合部位における競合阻害によってベンゾジアゼピンの効果を逆転させるからである。その上、フルマゼニルはアゴニスト活性をほとんど又は全く有しないので、その放射性標識バージョンが陽電子放出断層撮影(PET)ラジオトレーサーとして開発されてきた。
18F]FMZは、ニトロ前駆体の直接放射性フッ素化によって18Fが導入されている点を除き、フルマゼニルと同じ化学式を有している。
18F]FMZは、高い親和性(Ki=約0.5nM)及び選択性をもってGABAA受容体に結合する。Ryzhikov et al(2005 Nuc Med Biol;32:109−116)は、ニトロ前駆体化合物からの[18F]FMZの製法を記載している。しかし、本発明者らによれば、この合成法は2.7〜7.7%という最適と言えない合成終了時(EOS)収率を有することがわかった(本明細書中に比較例として記載されている)。これらのEOS収率は、Odano et al(Neuroimage 2009 45(3)891−902)によって報告されたものと同等である。
本発明は、高い親和性をもってGABAA受容体に結合する放射性フッ素化薬剤を得るための方法であって、先行技術の方法に比べて改善された収率で該薬剤を得るための方法を探求するものである。
国際公開第2005/097713号パンフレット
本発明は、GABAA受容体のインビボイメージングのために有用な放射性フッ素化化合物を得るための方法を提供する。本発明の方法は、先行技術の方法に比べて高い収率を与える。本発明のさらに別の態様は、本発明の自動化合成方法を実施するのに適したカセットである。本発明の方法で有用な新規前駆体化合物もまた、本発明の方法によって得られる特定の新規放射性フッ素化化合物と共に提供される。
一態様では、本発明は、次の式Iの化合物を得るための方法であって、
(式中、
1及びR2の一方は18Fであって、他方は水素であり、
3はC3-5複素環であるか、或いはR3はC(=O)−O−R4(式中、R4は水素又は直鎖若しくは枝分れC1-4アルキルである。)である。)
(i)次の式Iaの前駆体化合物を用意する段階、及び
(式中、
11及びR12の一方は脱離基であって、他方は水素であり、
11が前記脱離基である場合、それはトリ−C1-3アルキルアンモニウム及び−I+−Ar(式中、Arは1以上のR*基で置換されたフェニルであり、R*は水素、ニトロ、シアノ、ハロゲン、C1-10ヒドロキシアルキル、C2-10カルボキシアルキル、C1-10アルキル、C2-10アルコキシアルキル、C1-10ヒドロキシアルキル、C1-10アミノアルキル、C1-10ハロアルキル、C6-14アリール、C3-12ヘテロアリール、C3-20アルキルアリール、C2-10アルケニル及びC2-10アルキニルから選択される。)から選択され、
12が前記脱離基である場合、それはニトロ、トリ−C1-3アルキルアンモニウム及び−I+−Ar(式中、ArはR11に関して上記に定義した通りである。)から選択され、
13は式IのR3に関して定義した通りである。)
(ii)前記前駆体化合物を適当な[18F]フッ化物イオン源と反応させる段階
を含んでなる方法を提供する。
前駆体化合物」は、検出可能なラベルの好都合な化学形態との化学反応が部位特異的に起こり、最小数の段階(理想的にはただ1つの段階)で反応を実施でき、かつ格別の精製の必要なしに(理想的にはいかなる追加の精製も必要なしに)所望のインビボイメージング剤が得られるように設計された、放射性標識化合物の非放射性誘導体からなる。かかる前駆体化合物は合成品であり、良好な化学純度で簡便に得ることができる。前駆体化合物は、任意には前駆体化合物のある種の官能基に関して保護基を含むことができる。
脱離基」は、上記に定義した前駆体化合物の置換基であって、前駆体化合物が適当な[18F]フッ化物イオン源と反応した場合に18Fで置き換えられ、それにより18Fを部位特異的に組み込んで式Iの所望放射性フッ素化化合物の生成を可能にするものである。
保護基」という用語は、望ましくない化学反応を阻止又は抑制するが、分子の残部を変質させない十分に温和な条件下で問題の官能基から脱離させ得るのに十分な反応性を有するように設計された基を意味する。脱保護後には所望の生成物が得られる。保護基は当業者にとって公知であり、アミン基に関してはBoc(ここでBocはtert−ブチルオキシカルボニルである。)、Fmoc(ここでFmocはフルオレニルメトキシカルボニルである。)、トリフルオロアセチル、アリルオキシカルボニル、Dde[即ち、1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)エチル]及びNpys(即ち、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル)から適宜に選択され、カルボキシル基に関してはメチルエステル、tert−ブチルエステル及びベンジルエステルから適宜に選択される。ヒドロキシル基に関しては、好適な保護基は、メチル、エチル又はtert−ブチル、アルコキシメチル又はアルコキシエチル、ベンジル、アセチル、ベンゾイル、トリチル(Trt)、又はテトラブチルジメチルシリルのようなトリアルキルシリルである。さらに他の保護基の使用は、‘Protective Groups in Organic Synthesis’,Theorodora W.Greene and Peter G.M.Wuts(Third Edition,John Wiley & Sons,1999)に記載されている。
単独で又は別の基の一部として使用される「アルキル」という用語は、本明細書中では、任意の直鎖、枝分れ又は環状の飽和若しくは不飽和Cn2n+1基として定義される。
単独で又は別の基の一部として使用される「アリール」という用語は、本明細書中では、単環式又は多環式芳香族炭化水素或いは単環式又は多環式ヘテロ芳香族炭化水素から導かれる任意のC6-14分子断片又は基として定義される。
ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択される基を意味する。
ニトロ」という用語は−NO2基をいう。
シアノ」という用語は−CN基をいう。
カルボキシアルキル」という用語は、上記に定義したアルキル基が1以上の−COOHで置換されたものをいう。
アルコキシアルキル」という用語はアルキルエーテル基をいい、ここでアルキルという用語は上記に定義した通りである。
ヒドロキシアルキル」という用語は、上記に定義したアルキル基において、1以上の水素原子が−OH基で置き換えられたものをいう。
アミノアルキル」という用語は、上記に定義したアルキル基において、1以上の水素原子が−NH2基で置き換えられたものをいう。
ハロアルキル」という用語は、上記に定義したアルキル基において、1以上の水素原子が本明細書中に提供したハロゲンで置き換えられたものをいう。
ヘテロアリール」という用語は、上記に定義したアリール基において、1以上の炭素原子がO、N及びSから選択されたヘテロ原子で置き換えられたものをいう。
アルキルアリール」という用語は、上記に定義したアルキル基において、1以上の水素原子が上記に定義したアリール基で置き換えられたものをいう。
複素環」という用語は、脂肪族又は芳香族環式基において、環が窒素、酸素及び硫黄から選択された1以上のヘテロ原子を含むものをいう。
アルケニル」という用語は、1以上の二重結合を有する直鎖又は枝分れ炭化水素基を意味する。
アルキニル」という用語は、1以上の三重結合を有する直鎖又は枝分れ炭化水素基を意味する。
118Fである本発明の方法の好ましい実施形態では、R11はトリメチルアンモニウム又は−I+−Arである。
本発明の方法の最も好ましい実施形態では、R218Fである。R218Fである場合、R12はニトロ、トリメチルアンモニウム又は−I+−Arであることが好ましい。R218Fである場合、R12はニトロであることが最も好ましい。
式IのR3及び式IaのR13は同一てあり、好ましくはC(=O)−O−R4である。式中、R4は直鎖又は枝分れC1-4アルキルであり、好ましくはメチル、エチル、イソプロピル又はtert−ブチルであり、特に好ましくはエチルである。
Yang et al(2009 Synthesis;6:1036−1040)によって開示された反応スキームを改変することで、R11が脱離基である式Iaの前駆体化合物を得ることができる。スキーム1は、いかにして前駆体化合物が得られるかを示している。
スキーム1では、R11がトリアルキルアンモニウムである場合にR21はNO2であり、R11がヨードニウム塩である場合にR21は臭素である。R13は式Iaに関して定義した通りである。後の段階で所望の脱離基を導入するために必要な化学反応を実行するように準備された適当なアミノ安息香酸化合物をトリホスゲンと反応させることで、ベンゾキサジン−2,4−ジオン中間体を得る。DMSO中におけるとサルコシンとの反応はベンゾジアゼピンを生じる。この時点において、R11がトリアルキルアンモニウムである場合、化合物cのR21は段階(i)でトリアルキルアンモニウムに転化され、次いで段階(ii)を実施することで化合物が得られる。R11がヨードニウム塩である場合、R21は段階(ii)を実施した後の段階(iii)でヨードニウム塩に転化される。
12が脱離基である場合には、スキーム2を用いて前駆体化合物を得ることができる。
22は上記スキーム1でR21に関して定義した通りである。化合物は、標準的な化学変換により、商業的に入手可能な2,6−ジニトロ安息香酸出発原料から得られる。化合物をスキーム1の化合物に関して記載したように処理することでベンゾジアゼピン中間体が得られ、次いでこれが所望の脱離基を導入する前(即ち(ii)、次いで(iii)により)又は導入した後(即ち(i)、次いで(ii)により)に所望のイミダゾベンゾジアゼピンに変換される。段階(i)〜(iii)はスキーム1に関して上記に記載した通りである。
18F]フッ化物イオンは、通例、[18O]水ターゲットの放射線照射の生成物である水溶液として得られる。広く行われているやり方では、[18F]フッ化物イオンが求核性放射標識反応での使用に適するように、[18F]フッ化物イオンを反応性求核試薬に転化するための様々な段階が実施される。これらの段階は、[18F]フッ化物イオンから水を除去すること及び適当な対イオンを供給することを含んでいる(Handbook of Radiopharmaceuticals 2003 Welch & Redvanly eds.ch.6 195−227)。次いで、無水溶媒を用いて求核性放射性フッ素化反応が実施される(Aigbirhio et al 1995 J Fluor Chem;70:279−87)。フッ化物イオンの反応性を高めると共に、水の存在に起因するヒドロキシル化副生物の生成を回避するため、通例は反応に先立って[18F]フッ化物イオンから水が除去され、放射性フッ素化反応は無水反応溶媒を用いて実施される(Aigbirhio et al 1995 J Fluor Chem;70:279−87)。[18F]フッ化物イオンからの水の除去は、[18F]フッ化物イオンを「裸」にするといわれる。これは、求核フッ化物に関する先行技術では、フッ化物イオンの反応性を高めると共に水の存在に起因するヒドロキシル化副生成物の生成を回避するために必要な段階と見なされている(Moughamir et al 1998 Tett Letts;39:7305−6)。
放射性フッ素化反応に関して[18F]フッ化物イオンの反応性を向上させるために使用される追加の段階は、水の除去に先立ってカチオン性対イオンを添加することである。対イオンは、無水反応溶媒中において、フッ化物イオンの溶解性を維持するのに十分な溶解度を有するべきである。使用されてきた対イオンには、ルビジウムやセシウムのような大きいが軟らかい金属イオン、Kryptofix(商標)のようなクリプタンドと錯体化されたカリウム、又はテトラアルキルアンモニウム塩がある。本発明の方法で使用するのに好ましい適当な[18F]フッ化物イオン源は、[18F]フッ化カリウム及び[18F]フッ化セシウムから選択される。[18F]フッ化カリウムが最も好ましく、Kryptofix(商標)のようなクリプタンドと錯体化された場合に特に好ましい。これは、無水溶媒中におけるそれの溶解性が良く、フッ化物イオンの反応性を高めるからである。
好ましい実施形態では、本発明の方法はさらに、
(iii)過剰の[18F]フッ化物イオンを除去する段階、及び/又は
(iv)存在する場合には保護基を除去する段階、及び/又は
(v)有機溶媒を除去する段階、及び/又は
(vi)得られた化合物を生体適合性キャリヤーと共に製剤化して、哺乳動物への投与に適した放射性医薬組成物を得る段階
を含み得る。
生体適合性キャリヤー」は、放射性医薬組成物が生理学的に認容され得るようにして(即ち、毒性又は過度の不快感なしに哺乳動物体に投与できるようにして)放射性フッ素化化合物を懸濁又は溶解するための流体(特に液体)である。生体適合性キャリヤーは、好適には、無菌のパイロジェンフリー注射用水、(有利には注射用の最終生成物が等張性又は非低張性になるように平衡させ得る)食塩水のような水溶液、或いは1種以上の張度調整物質(例えば、血漿陽イオンと生体適合性対イオンとの塩)、糖(例えば、グルコース又はスクロース)、糖アルコール(例えば、ソルビトール又はマンニトール)、グリコール(例えば、グリセロール)又は他の非イオン性ポリオール物質(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなど)の水溶液のような注射可能なキャリヤー液体である。生体適合性キャリヤーはまた、エタノールのような生体適合性有機溶媒を含んでいてもよい。かかる有機溶媒は、親油性の高い化合物又は配合物を可溶化するために有用である。好ましくは、生体適合性キャリヤーはパイロジェンフリー注射用水、等張食塩水又はエタノール水溶液である。静脈内注射用生体適合性キャリヤーのpHは、好適には4.0〜10.5の範囲内にある。
現在、特にPETトレーサーとして使用するための18F標識化合物の合成は、例えばTracerlab(商標)及びFastlab(商標)(いずれもGE Healthcare社製)のような自動化放射合成装置によって最も簡便に実施されている。しかし、先行技術の方法は自動化に適していない。本明細書中の比較例1では、ニトロマゼニルの放射性フッ素化がFastlab上での[18F]FMZの自動化合成にとって理想的なアプローチでないことが実証されている。これは、低い収率、及び[18F]フッ化物イオンの効果的な組込みを達成するために必要な温度のためである。現存するFastlab反応器は、130℃以下の温度で使用できるシクロオレフィンコポリマー(COC)で作製されている。ニトロ前駆体から[18F]FMZを製造するために使用される先行技術の方法は、およそ160℃の温度を必要とする。これらの温度では、COC反応器は収納性を失う。
下記の実験例で実証されるように、ニトロマゼニル上の脱離基をニトロからトリメチルアンモニウムに変更すれば、7%のEOS収率を維持しながら反応温度を130℃に低下させることができた。ニトロ脱離基をアミドカルボニルに対するメタ位からアミドカルボニルに対するオルト位に移動すれば、やはり反応温度を低下させながらEOS収率を2.7〜7.7%から18〜23%に向上させることができた。
特に好ましい実施形態では、本発明の方法は自動化される。放射化学は、「カセット」を装置に取り付けることにより、自動化合成装置上で実施される。通常、かかるカセットは流体通路、反応器、及び試薬バイアル並びに放射合成後の清掃段階で使用される任意の固相抽出カートリッジを受け入れるためのポートを含んでいる。
本発明のさらに別の態様では、本発明の自動化方法を実施するためのカセットであって、
(i)上記に好適なもの及び好ましいものとして定義した前駆体化合物を含む容器、及び
(ii)上記に好適なもの及び好ましいものとして定義した適当な[18F]フッ化物イオン源を用いて容器を溶出するための手段
を含んでなるカセットが提供される。
かかるカセットはまた、過剰の18Fを除去するためのイオン交換カートリッジも含み得る。自動化合成のために必要な試薬、溶媒及び他の消耗品もまた、濃度、容量、送出時間などに関する最終ユーザーの要求条件を満たすように自動化合成装置を運転させるソフトウェアを保持したコンパクトディスクのようなデータ媒体と共に含めることができる。
別の態様では、本発明は、本発明の方法で定義された式Iの化合物であって、R1が水素であり、R2が[18F]であり、R4がエチル、イソプロピル又はtert−ブチル、最も好ましくはエチルである式Iの化合物を提供する。
さらに別の態様では、本発明は、上記に定義された式Iaの前駆体化合物であって、R11及びR12の一方がトリメチルアンモニウム又は−I+−Arであり、他方が水素である式Iaの前駆体化合物を提供する。好ましくは、R11及びR12の一方がトリメチルアンモニウムであり、他方が水素である。最も好ましくは、R12がニトロ、トリメチルアンモニウム又は−I+−Arであり、最も特に好ましくは、R12がニトロである。R13は、好ましくはC(=O)−O−R4(式中、R4はエチル、イソプロピル又はtert−ブチルであり、好ましくはエチルである。)である。
実施例の簡単な説明
比較例1は、ニトロ前駆体化合物からの[18F]フルマゼニルの製法を記載している。
実施例2は、トリメチルアンモニウム前駆体化合物からの[18F]フルマゼニルの製法を記載している。
実施例3は、[18F]フルマゼニルに対するヨードニウム塩前駆体化合物の製法を記載している。
実施例4は、ニトロ前駆体化合物からのo−[18F]フルマゼニルの製法を記載している。
実施例5は、ニトロ前駆体化合物からのo−[18F]フルマゼニルtert−ブチルエステルの製法を記載している。
実施例6は、ニトロ前駆体化合物からのo−[18F]フルマゼニルイソプロピルエステルの製法を記載している。
実施例7は、o−[18F]フルマゼニルのインビボ体内分布を評価するための方法を記載している。
実施例中で使用される略語のリスト
aq 水性
CIP 2−クロロ−2,3−ジメチルイミダゾリジウムヘキサフルオロホスフェ ート
DCM ジクロロメタン
DIPEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
EOS 合成終了時
Et エチル
g グラム
h 時間
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
LCMS 液体クロマトグラフィー質量分析法
MeCN アセトニトリル
min 分
mL ミリリットル
mM ミリモル濃度
mmol ミリモル
mol モル
QMA 第四級メチルアンモニウム
Rf 保持因子
rt 室温
SPE 固相抽出
TBA テトラブチルアンモニウム
TEA トリエチルアミン
THF テトラヒドロフラン
TLC 薄層クロマトグラフィー
UV 紫外
比較例1:ニトロマゼニルからの[ 18 F]フルマゼニル([ 18 F]FMZ)の製法
比較例1(i):4−メチル−7−ニトロ−3,4−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−2,5−ジオン(1)の合成
フラスコを撹拌しながらゆっくりと140℃に加熱することで、商業的に入手可能な5−ニトロイサト酸無水物(40g、0.192mol)をDMSO(50mL)に溶解した。溶液にサルコシン(17.1g、0.192mol)を少しずつゆっくりと添加した。添加後、140℃で溶液は泡立ち始めた(CO2の生成)。混合物を2.5時間撹拌し続けた。混合物を放冷し、ビーカー内の氷冷水中にゆっくりと注ぎ込んだ。溶液をガラス棒で撹拌したところ、黄色の固体が析出した。固体を濾過によって分離し、水で数回洗浄し、次いで40℃の真空オーブン内で一晩乾燥した。単離された黄色の固体は、収率78%の所望生成物であることが確認された。
1H NMR(D6−DMSO):δ 3.14(3H,s,NC 3)、3.97(2H,s,NC 2CO)、7.30(1H,d,J=9Hz,HNCCCH)、8.33(1H,dd,J=9 and 3Hz,CHCCNO2CH)、8.33(1H,d,J=3Hz,OC−CC)、11.05(1H,s,N)。
比較例1(ii):ニトロマゼニル(2)の製造
中間体(1g、4.3mmol)をTHF(10mL)及びDMF(2mL)に溶解した溶液に、窒素下0℃でカリウムtert−ブトキシド(0.6g、5mmol)を添加した。30分後、反応物を0℃に冷却し、ジエチルクロロホスフェート(0.7mL、5mmol)の滴下で処理し、30分間撹拌した。他方、エチルイソシアノアセテート(0.6mL、5mmol)をTHF(10mL)に溶解した撹拌溶液に、窒素下0℃でカリウムtert−ブトキシド(0.6g、5mmol)を添加し、15分間撹拌した。次いで、これを中間体の混合物に0℃でゆっくりと添加した。これを0℃で0.5時間撹拌し、次いで室温でさらに2時間撹拌した。TLC(酢酸エチル)は、UV及びKMnO4により、出発原料(Rf 0.4)及び新しいスポット(Rf 0.2)を示した。
反応物を酢酸で奪活し、一晩撹拌し続けた。反応混合物を氷水中に注ぎ込んだ。これを酢酸エチルで抽出し、有機層を水及びブラインで洗浄し、乾燥し、濃縮して濃暗色の濃厚油状物を得た。これを、下記の条件を用いたクロマトグラフィーによって数回処理した。
1)DCM/酢酸エチルを用いたCompanion(2回)
2)ベトロール/酢酸エチルを用いたCompanion(2回)
50mgの純物質を無色の固体(収率4%)として得た。
1H NMR(CDCl3):δ 1.39(3H,t,J=7Hz,C 3)、3.28(3H,s,ArCONC 3)、4.37(2H,q,J=7Hz,OC 2)、4.40(1H,br s,C 2)、5.26(1H,br s,C 2)、7.60(1H,d,J=8.9Hz,ArCCHCNO2)、7.94(1H,s,NCN)、8.45(1H,dd,J=8.9 and 2.8Hz,ArCHCCNO2)、8.95(1H,d,J=2.5Hz,ArCCNO2)。
比較例1(iii):[ 18 F]フルマゼニル([ 18 F]FMZ)を得るためのニトロマゼニル(2)の放射性フッ素化
TRACERlab自動化合成モジュール(GE Healthcare社)上で18F標識を行った。プレコンディショニング済みのQMAカートリッジ上に[18F]フッ化物イオンを捕捉し、次いでテトラ−n−ブチルアンモニウム重炭酸塩をMeCN/水に溶解した溶液(MeCN 1400μL、水100μL、TBA・HCO3 27mg)を用いてバイアル1から反応器に移した。窒素+真空フローを使用しながら、溶液を100℃で10分間、次いで120℃で20分間乾燥し、次いで50℃に冷却した。
乾燥した[18F]フッ化物イオンに、DMF(1mL)中のニトロマゼニル(18.8mg)をバイアル3から添加した。反応混合物を160℃で30分間加熱し、次いで50℃に冷却した。反応混合物をバイアル5からの10mMリン酸(2.5mL)で希釈し、粗生成物管に移した。
次いで、粗生成物を分取HPLCループに手動で移した。分取HPLCは17.5分の保持時間を有するピークを与えたが、これを水(12mL)の入ったTRACERlabの丸底フラスコ内にカットした。分取HPLCシステムは液体フローシンチレーションカウンターを備えていた。
丸底フラスコ内の混合物を、(1mLのエタノール、次いで2mLの水でプレコンディショニングを施した)tC18 plus lite SPEカートリッジ上に捕捉した。SPEカートリッジを水(3mL)で洗浄し、EtOH(0.3mL)及び水(4.5mL)を用いて粗生成物をP6バイアル中に溶出した。
実施例2:トリメチルアンモニウム前駆体化合物からの[ 18 F]フルマゼニル([ 18 F]FMZ)の製法
実施例2(i):4−メチル−7−アミノ−3,4−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−2,5−ジオン(3)の合成
THF/エタノールの1:1溶液120mL中に中間体(3.48g、15mmol、製法は比較例1に記載)を懸濁した。懸濁液を窒素で処理し、次いで真空で処理した後、エタノール中に懸濁したPd/C 10%(0.7g)を添加した。次いで、反応器をParrハイドロジェネーターに取り付け、水素圧(20psi)下で撹拌しながら約3時間放置した。真空を用いて過剰の水素ガスを除去し、次いで溶液中に窒素をパージした。セライトを用いて触媒を濾別し、濾液を極小量のエタノールまで蒸発させた。白色の沈殿が生じたが、これを濾過によって分離し、真空下で乾燥することで、918mgの所望物質を30%の収率で得た。
1H NMR(DMSO):δ 3.07(3H,s,NC 3)、3.74(2H,s,NC 2CO)、5.19(2H,s,NH2)、6.69(1H,dd,J=8.6 and 2.5Hz,ArCCNH2)、6.77(1H,d,J=8.6Hz,ArCCNHCO)、6.90(1H,d,J=2.5Hz,COCCCNH2)、9.97(1H,s,NH)。
実施例2(ii):4−メチル−7−ジメチルアミノ−3,4−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−2,5−ジオン(4)の合成
中間体(3.0g、13mmol)及び37%ホルムアルデヒド水溶液(21mL、0.26mol)をアセトニトリルに溶解した0℃の溶液に、NaBH3CN(4.8g、77mmol)を少しずつ添加した。反応混合物を0℃で2時間撹拌し、次いで室温で1時間撹拌した。次いで、酢酸(1.4mL)を添加し、反応混合物をさらに2時間撹拌した。反応混合物をエチルエーテル中に注ぎ込み、2N KOHで洗浄し、塩基層を酢酸エチルで数回抽出した。有機相を集め、乾燥し、真空中で溶媒を除去することで、非晶質の帯黄色固体を得た。
注記:酢酸を添加すると、ガスの発生が認められ、反応は強く発熱性であった。
得られた固体を酢酸エチルでトリチュレートし、濾過によって単離し、ジエチルエーテルで洗浄することで、淡黄色の綿毛状固体を得た。プロトンNMRにより、この物質は中間体(2.97g、98%)であることが確認された。
1H NMR(DMSO):δ 3.09(3H,s,NC 3)、3.77(2H,s,NC 2CO)、6.92−6.98(3H,m,ArCCN(CH32,ArCCNHCO,COCCCN(CH32)、10.09(1H,s,NH)。
実施例2(iii):トリメチル(4−メチル−2,5−ジオキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−7−イル)アンモニウム(5)の合成
中間体(2.97g、13mmol)をDCM(75mL)に溶解し、窒素流下においてメチルトリフレート(1.67mL、15mmol)を室温で滴下した。1分以内に、溶液から固体がクラッシュし始めた。10分後、TLC分析(酢酸エチル)はSMが消失したことを示した。したがって、反応は停止した。ジエチルエーテル(20mL)を添加し、濾過により固体を白色の粘着性物質として単離した。反応は中間体を定量的収率で与えた。
1H NMR(DMSO):δ 3.15(3H,s,CONC 3)、3.61(9H,s,N+(C 33)、3.91(2H,s,NC 2CO)、7.28(1H,d,J=9.19Hz,ArCCNHCO)、8.10(1H,dd,J=3.06 and 9.19Hz,ArCCN+(CH33)、8.25(1H,d,J=3.06Hz,COCCCN+(CH33)、10.73(1H,s,NH)。
実施例2(iv):トリメチルアンモニウム前駆体化合物(6)の合成
中間体(2g、5mmol)をTHF(15mL)及びDMF(10mL)に溶解した溶液に、窒素下室温で水素化ナトリウム(鉱油中60%分散液240mg、6mmol)を添加した。40分後、反応物を0℃に冷却し、ジエチルクロロホスフェート(1.08mL、7.5mmol)の滴下で処理し、30分間撹拌した。他方、エチルイソシアノアセテート(0.656mL、6mmol)をDMF(6mL)に溶解した撹拌溶液に、窒素下0℃で水素化ナトリウム(鉱油中60%分散液280mg、7mmol)を添加し、15分間撹拌した。次いで、これを中間体の混合物に0℃でゆっくりと添加した。これを0℃で0.5時間撹拌し、次いで室温で30分間撹拌した。この時間後における粗生成物のLCMS分析は所望質量の存在を示した。反応物を酢酸で奪活し、後処理した。
反応混合物を氷水中に注ぎ込んだ。これを酢酸エチルで抽出し、次いでDCMで抽出した。有機層及び水のLCMS分析は、所望物質が水層中に存在することを示唆した。したがって、(回転蒸発を用いて)これを乾固させ、次いで半分取HPLCによって粗生成物を分析した。所望生成物が25%の収率で単離された。
HPLC条件:30分間にわたる5〜95%メタノール/水勾配、Luna 10μ C18(2)250x50mmカラム。
1H NMR(D2O):δ 1.37(3H,t,J=7.1Hz,COOCH2 3)、3.22(3H,s,NC 3)、3.73(9H,s,N(C 33)、4.41(2H,m,COOC 2 CH3)、4.(1H,brd,J=15.3Hz,NC 2 )、5.13(1H,brd,J=15.3Hz,NC 2 )、7.93(1H,d,J=9.2Hz,ArCCNHCO)、8.25(1H,dd,J=9.2 and 3.1Hz,ArCCN+(CH33)、8.27(1H,s,ArNCN)、8.40(1H,d,J=3.1Hz,COCCCN+(CH33)。
実施例2(v):[ 18 F]フルマゼニル([ 18 F]FMZ)を得るためのトリメチルアンモニウム前駆体化合物(6)の放射性フッ素化
18F]フッ化物イオンをホイートンバイアルに移し、これにTBA・HCO3(400μL)を添加した。溶液をN2流(約0.5L/分)下において110℃で30分間乾燥し、次いで室温に冷却した。
乾燥した[18F]フッ化物イオンに、DMSO(1mL)中のトリメチルアンモニウム前駆体化合物(31mg)を添加した。反応混合物を130℃で25分間加熱し、次いで室温に冷却した。反応混合物をホイートンバイアルからP6バイアルに移した。ホイートンバイアルを水(1mL)ですすいでP6バイアルに移し、さらに3mLの酢酸アンモニウム(50mM)を添加した。反応混合物を精製用の分取HPLC(Hichrom ACE C5 10x100mmカラム、溶媒A=50mM酢酸アンモニウム,溶媒B=MeCN、4ml/分、UV 254nm)上に装填した。
分析HPLC(Phenomenex Luna C18(2)50x2mmカラム、溶媒A=50mM酢酸アンモニウム,溶媒B=MeCN、0.4mL/分、UV 254nm)により、[18F]フルマゼニルが95%の放射化学純度で得られたことが確認された。この方法を用いた[18F]フルマゼニル合成終了時収率は6%であった。
実施例3:[ 18 F]フルマゼニル([ 18 F]FMZ)用のヨードニウム塩前駆体化合物の製法
商業的に入手可能な5−ブロモイサト酸無水物()をサルコシンと共にDMSO中において150℃で加熱した。これは中間体を75%の収率で与えた。反応スキーム中に示した条件を用いる環化により、中間体が30%の収率で得られた。中間体及びヘキサメチル二スズ/Pd(PPh34をマイクロ波中において130℃で15分間加熱することで、スタンナン中間体10を35%の収率で得た。ヨードニウム転化は中間体10及び(ジアセトキシヨード)ベンゼンを1:5の比で使用することで達成され、RTで24時間後に反応は完了した。所望のヨードニウム塩前駆体化合物11は21%の収率で得られた。
実施例4:o−ニトロマゼニルからのo−[ 18 F]フルマゼニルの製法
実施例4(i):2−フルオロ−6−ニトロ安息香酸エチルエステル(12)の製造
窒素流下0℃で2−フルオロ−6−ニトロ安息香酸(1.5g、8mmol)をDCM(30mL)中に懸濁した。塩化オキサリル(1.5g、1.06mL、12mmol)をゆっくりと添加し、反応物を一晩撹拌し続けた。塩化アシルの生成はTLC(酢酸エチル)によって追跡できた。溶媒を真空中で除去し、残留物をDCM(20mL)に再溶解した。エタノール(0.4g、0.5mL、8mmol)をTEA(0.8g、1.1mL、8mmol)と共に0℃で添加し、反応物を室温で3時間撹拌し続けた。この時間後、少量の混合物を1H及び19F NMRによって分析することで、12の定量的生成が示された。
反応混合物をDCM(20mL)で希釈し、水(2×50mL)で洗浄した。有機層を分離し、MgSO4上で乾燥し、濾過した。溶媒を除去乾固して褐色の油状物を得たが、これはやがて12の白色結晶(1.5g、88%)を与えた。
1H NMR(300MHz,CDCl3):δH 1.39(3H,t,J=7.1Hz,COOCH2 3)、4.47(2H,q,J=7.1Hz,COOC 2CH3)、7.47(1H,td,J=8.3 and 1.2Hz,NO2CCHCCHCF)、7.59(1H,td,J=8.3 and 5.2Hz,NO2CCHCHCCF)、7.98(1H,dt,J=8.3 and 0.9Hz,NO2CCCHCHCF);19FNMR(282MHz,CDCl3):δF −112.4。
実施例4(ii):中間体13の製造
12(3g、0.014mol)及びエチル4−メチル−5−イミダゾールカルボキシレート(1.96g、0.013mol)を30mLのDMSOに溶解した。炭酸セシウム(4.8g、0.014mol)を添加し、混合物を室温で3日間撹拌した。
粗生成物を、3分間にわたる5〜95%アセトニトリル/水勾配を用いたLCMSによって分析した。これは、正イオンとして348.03の質量を有する新しい化学種を示した。
TLC(酢酸エチル)は、0.4のrfを有する新しいスポットを示した。
反応混合物を氷水中に注ぎ込み、酢酸エチル(×1)で抽出し、次いでDCM(×3)で抽出した。有機層を合わせて濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(詳細は次頁に示す)用のシリカカラム上に液体装填した。生成物13を72%の収率(3.5g)で単離した。
1H NMR(CDCl3):δ 1.19(6H,t,J=7.05Hz,COOOCH2 3)、1.42(3H,t,J=7.05Hz,COOCH2 3)、2.37(3H,s,NCC 3)、4.21(2H,q,J=7.05Hz,COOC 2CH3)、4.41(2H,q,J=7.05Hz,COOC 2CH3)、7.49(1H,s,NCN)、7.62(1H,dd,J=7.97Hz,CCCHCHCNO2)、7.77(1H,t,J=7.97&8.27Hz,CCHCCHCNO2)、8.37(1H,dd,J=8.27Hz,CCHCHCCNO2)。
実施例4(iii):o−ニトロマゼニル(14)の製造
臭化物(4.25g、0.010mol)を50mLのメタノールに溶解した撹拌溶液に、DIPEA(2.84g、3.8mL、0.022mol)及びメチルアミン(2Mメタノール溶液6.5mL、0.013mol)をメタノール(50mL)に溶解した溶液をゆっくりと添加した。反応物を一晩還流した。酢酸エチルを用いたTLC分析は、出発原料13から2つの主要新スポット(rf 0.5及び0.3)への定量的転化を示した。3分間にわたる5〜95%アセトニトリル/水勾配を用いたLCMSによって粗生成物を分析した。これは、正イオンとして331.03の質量を有する新しい化学種及び2つの他の主ピークを示した。溶媒を除去乾固し、粗生成物をDCM/酢酸エチル/1%メタノールを用いるフラッシュクロマトグラフィー用のカラム上に液体装填した。2つの主画分を合わせてLCMSに付したところ、2種の他の生成物との混合物中に所望の物質が示された。
各画分を、DCM/酢酸エチルを用いる第2の精製に付した。次いで、エタノールを用いて生成物14を両画分から再結晶した。所望の物質が15%の収率で純粋に単離された。
1H NMR(CDCl3)δ 1.43(3H,s,C 3)、3.20(3H,s,NC 3)、4.32−4.50(2H,m,OC 2)、4.54(1H,d,J=16Hz,NC)、5.30(1H,d,J=16Hz,NC’)、7.66(1H,dd,J=8Hz and 1Hz,NCC)、7.70(1H,dd,J=8 and 8Hz,CHCCH)、7.94(1H,dd,J=8 and 1Hz,CCNO2)、7.97(1H,s,NCN)。
実施例4(iv):o−[ 18 F]フルマゼニルを得るためのo−ニトロマゼニルの放射性フッ素化
FASTlab自動化合成モジュール(GE Healthcare社)上で放射性フッ素化を行った。
次のようにして構成部品からカセットを組み立てた。20.5mgのK222、140μlのK2CO3(水中2.9mg)及び1.06mlのMeCNを含む11mmolバイアル、1.3mlの前駆体溶液(1.3mlの乾燥DMFに溶解した6.5mgの前駆体14)を含む第2の11mmolバイアル、リン酸(2.6mL、10mM)を含む13mmバイアル、食塩水(0.9%、2.4mL)を含む13mmバイアル、並びにエタノール(4mL)を含む13mmバイアルをカセット中に挿入した。予熱したQMAカートリッジを取り付け、tC18+カートリッジを取り付けた。
所要の動作シーケンスファイルを制御PCからFASTlabの内部メモリ中にアップロードした。カセットをFASTlab合成装置上に装着した。FASTlab上のフッ化物イオン入口へのラインに連結された注射針を用いて[18F]フッ化物イオンバイアルを穿刺した。0.9%食塩水(7mL)を予め充填した清浄な空の生成物収集バイアルを連結した。次いで、合成シーケンスを開始し、FASTlabハードウェア試験段階を完了した。フッ化物イオンをQMAカートリッジ上に捕捉し、反応器内で乾燥した。前駆体14の溶液を添加し、130℃で30分間加熱した。反応混合物をリン酸(10mM、2.2mL)で希釈した。粗生成物をHPLCループに移した後、HPLC運転を開始した(分取HPLC条件の詳細については下記参照)。
分取HPLC上に生成物を注入した後、手動で約1分間にわたってカット(保持時間約13.7分)を実施し、約13mlの水を含むバイアル中に回収した。分析用のホットセルから生成物の試料をサブ分配してポストした。
合成終了時から2時間後において、放射化学純度は>99%であった。
測定された総コールドリガンドは、体積10mL当たり3μgであった。これは、非放射性参照化合物を較正標準としながら分析HPLCのUVピーク面積を用いて計算される。
この自動化合成方法によれば、約1μgの非放射性不純物総量を有する放射性標識物質が製造された。この自動化プロセスはまた、一定範囲の出発放射能レベルにわたって一貫した収率を与えた。4回の連続した合成例から得られた結果を下記に示す。
実施例5:o−ニトロマゼニルtert−ブチルエステル(17)からのo−[ 18 F]フルマゼニルtert−ブチルエステルの製法
実施例5(i):ニトロイサト酸(15)の製造
エタノール(5mL)中の2,6−ジニトロ安息香酸(0.5g、2.36mmol)を80℃に加熱した。次いで、硫化アンモニウム(水中40〜48%)(0.36mL、2.36mmol)を添加し(黄色の溶液が鮮橙色の懸濁液になった)、混合物を0.5時間加熱還流した。TLC(DMF 80%、MeOH 20%)は、出発原料の下方にかすかなスポットを示した。硫化アンモニウム(3.6mL、20.4mmol)を添加したところ、混合物は一層濃い橙色になった。次いで、この混合物を1時間加熱還流した後、TLCは反応が完了したことを示した。溶媒を減圧下で除去し、次いで残留物をメタノールで洗浄した。メタノール溶液をデカントして分離し、蒸発乾固することで、2−ニトロ−6−アミノ安息香酸を橙色の固体として得た。次いでこれを、フラッシュクロマトグラフィー(60CVにわたりDMF 90%/MeOH 10%→20%MeOH)を用いて精製することで、所望の物質(0.2g、46%)を得た。
1H NMR(D6−DMSO)δ 3.16(2H,s,N 2)、6.80(1H,dd,J=8 and 1Hz,H2NCC)、6.93(1H,dd,J=8 and 1Hz,CCNO2)、7.22(1H,dd,J=8 and 8Hz,CHCCH)。
2−ニトロ−6−アミノ安息香酸(2.8g、15.4mmol)をジオキサン(20mL)に溶解した。トリホスゲン(1.52g、5.1mmol)を添加した。次いで、混合物を1時間加熱還流した。次いで、混合物を放冷した。次いで、沈殿を濾過によって集めることで、イサト酸無水物を定量的収率で得た。
1H NMR(D6−DMSO)δ 7.33(1H,dd,J=8 and 1Hz,ArC)、7.59(1H,dd,J=8 and 1Hz,ArC)、7.89(1H,dd,J=8Hz,ArH)、12.2(1H,br s,N)。
実施例5(ii):4−メチル−6−ニトロ−3,4−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−2,5−ジオン(16)の製造
ニトロイサト酸無水物(15)(3.5g、16.8mmol)及びサルコシン(1.50g、16.8mmol)をDMSO(8mL)に溶解した。次いで、混合物を150℃に予熱された加熱マントル内に配置した。次いで、混合物をこの温度で約30分間加熱した後、反応混合物を水(50mL)中に注ぎ込んだ。得られた褐色の沈殿を濾過によって集め、酢酸エチルでトリチュレートすることで、淡褐色の粉末(0.9g、11%)を得た。
1H NMR(300MHz,DMSO−d6):δH 3.08(3H,s,NC 3)、4.16(2H,br s,C 2)、7.39(1H,dd,J=8.0 and 2.0Hz,HNCC)、7.66(1H,dd,J=8.0 and 8.0Hz,CHCCH)、7.72(1H,dd,J=8.0 and 2.0Hz,CCNO2)and 10.80(1H,br s,N);13CNMR(300MHz,DMSO−d6):δC 34.9(N3)、51.8(N2)、119.9(CHHCNH)、121.0(−CO)、125.1(CHHCNO2)、138.3(NH)、151.0(−NO2)、163.2(=O)and 169.7(=O)。
実施例5(iii):o−ニトロマゼニルtert−ブチルエステル(17)の製造
THF(56mL)中の中間体16(0.7g、2.98mmol)に、0℃でカリウムtert−ブトキシド(0.37g、3.27mmol)を添加した。次に、混合物を0℃で20分間撹拌し(その間に鮮黄色の沈殿が認められた)、次いで−35℃に冷却した。ジエチルクロロホスフェート(0.67g、3.88mmol、0.56mL)をゆっくりと添加した。反応物を0℃で30分間撹拌し、その間に混合物はわずかに黄色味を増した。反応フラスコを−35℃に冷却し、tert−ブチルイソシアノアセテートの溶液(0.46g、3.26mmol、0.48mL)を添加し、次いでカリウムtert−ブトキシド(0.37g、3.27mmol)を添加した。次いで、懸濁液を室温で一晩撹拌し続けた。反応物をNaHCO3水溶液(50mL)で奪活し、EtOAc(3×50mL)で抽出した。有機層を合わせ、MgSO4上で乾燥し、濃縮して褐色の油状物を得た。粗物質を、酢酸エチル(A):メタノール(B)(0〜1%B、100g、40mL/分)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製した。17を淡黄色の固体(9mg、1%)として得た。
1H NMR(300MHz,CDCl3):δH 1.64(9H,s,C(C 33)、3.19(3H,s,NC 3)、4.52(1H,d,J=15.0Hz,CONCH3CHa b)、5.45(1H,d,J=15Hz,CONCH3 ab)、7.64(1H,dd,J=9.0 and 3.0Hz,NCCCH)、7.73(1H,dd,J=9.0 and 9.0Hz,NCCHC)、7.93(1H,dd,J=9.0 and 3.0Hz,O2NCCCHCH)and 7.94(1H,s,NCN)。
実施例5(iv):o−[ 18 F]フルマゼニルtert−ブチルエステルを得るためのo−ニトロマゼニルtert−ブチルエステル(17)の放射性フッ素化
TRACERlab自動化合成モジュール(GE Healthcare社)上で放射性フッ素化を行った。プレコンディショニング済みのQMAカートリッジ上に[18F]フッ化物イオンを捕捉し、次いでKryptofix 2.2.2(11mg)をMeCN(2000μL)及びK2CO3(80μLの水中、1.7mg)に溶解した溶液を用いてバイアル1から反応器に移した。窒素+真空フローを使用しながら、溶液を100℃で10分間、次いで120℃で20分間乾燥し、次いで50℃に冷却した。
乾燥した[18F]フッ化物イオンに、DMF(1mL)中のo−ニトロマゼニルtert−ブチルエステル(17、5mg)をバイアル3から添加した。反応混合物を130℃で30分間加熱し、次いで50℃に冷却した。反応混合物をバイアル5からの10mMリン酸(2.5mL)で希釈し、粗生成物管に移した。
次いで、粗生成物を分取HPLCループに手動で移した。分取HPLCは17.5分の保持時間を有するピークを与えたが、これを水(12mL)の入ったTRACERlabの丸底フラスコ内にカットした。分取HPLCシステムは液体フローシンチレーションカウンターを備えていた。
丸底フラスコ内の混合物を、(1mLのエタノール、次いで2mLの水でプレコンディショニングを施した)C18 lite SPE上に捕捉した。SPEを水(3mL)で洗浄し、EtOH(0.5mL)及びリン酸緩衝食塩水(4.5mL)を用いて粗生成物をP6バイアル中に溶出した。リン酸緩衝食塩水を用いて生成物をさらに希釈することで、10mLの最終体積を得た。
合成終了時から2時間後において、放射化学純度は>99%であった。
測定された総コールドリガンドは、(非放射性参照化合物を較正標準としながら分析HPLCのUVピーク面積を用いて計算して)体積10mL当たり6μgであった。
実施例6:o−[ 18 F]フルマゼニルイソプロピルエステルを得るためのo−ニトロマゼニルイソプロピルエステル(18)の放射性フッ素化
実施例6(i):o−ニトロマゼニルイソプロピルエステル(18)の製造
マイクロ波容器内において、14(製法は実施例4(iii)に記載、20mg、0.06mmol)を2mLのイソプロパノールに溶解し、50μlのチタン(IV)イソプロポキシドを添加した。マイクロ波条件は、温度:85℃、時間:60分であった。LCMSにより、出発原料から所望生成物への定量的転化が確認された。これはまた、酢酸エチルを用いるTLCによっても確認された。過剰のイソプロパノールを除去乾固し、粗混合物を溶離剤としてペトロール及び酢酸エチルを用いるフラッシュクロマトグラフィー用のカラム上に液体装填した。DCM/メタノールを用いて該物質を再び精製した。18(15mg)が純粋に得られた(73%)。
1H NMR(CDCl3)δ 1.43(3H,d,J=6.1Hz,C 3)、1.45(3H,d,J=6.1Hz,C 3)、3.20(3H,s,NC 3)、4.53(1H,d,J=16Hz,C)、5.28(1H,d,J=16Hz,C’)、5.33(1H,m,COOCH(CH32)、7.66(1H,dd,J=0.92,8.27Hz,CCHCHCNO2)、7.75(1H,t,J=8.3Hz,CHCCHCNO2)、7.94(1H,dd,J=0.92,8.27Hz,CHCHCCNO2)、7.97(1H,s,NCN)。
実施例6(ii):o−[ 18 F]フルマゼニルイソプロピルエステルを得るためのo−ニトロマゼニルイソプロピルエステル(18)の放射性フッ素化
TRACERlab自動化合成モジュール(GE Healthcare社)上で放射性フッ素化を行った。プレコンディショニング済みのQMAカートリッジ上に[18F]フッ化物イオンを捕捉し、次いでKryptofix 2.2.2(11mg)をMeCN(2000μL)及びK2CO3(80μLの水中、1.7mg)に溶解した溶液を用いてバイアル1から反応器に移した。窒素+真空フローを使用しながら、溶液を100℃で10分間、次いで120℃で20分間乾燥し、次いで50℃に冷却した。
乾燥した[18F]フッ化物イオンに、DMF(1mL)中のo−ニトロマゼニルtert−ブチルエステル(2.5mg)をバイアル3から添加した。反応混合物を130℃で30分間加熱し、次いで50℃に冷却した。反応混合物をバイアル5からの10mMリン酸(2.5mL)で希釈し、粗生成物管に移した。
次いで、粗生成物を分取HPLCループに手動で移した。分取HPLCは23分の保持時間を有するピークを与えたが、これを水(15mL)の入ったTRACERlabの丸底フラスコ内にカットした。分取HPLCシステムは液体フローシンチレーションカウンターを備えていた。
丸底フラスコ内の混合物を、(1mLのエタノール、次いで2mLの水でプレコンディショニングを施した)C18 lite SPE上に捕捉した。SPEを水(3mL)で洗浄し、EtOH(0.8mL)及びリン酸緩衝食塩水(7.2mL)を用いて粗生成物をP6バイアル中に溶出した。
合成終了時から3時間後において、放射化学純度は>99%であった。
測定された総コールドリガンドは、(非放射性参照化合物を較正標準としながら分析HPLCのUVピーク面積を用いて計算して)体積8mL当たり6μgであった。総非放射性不純物は約2μgであった。
実施例7:o−[ 18 F]フルマゼニルのインビボ体内分布
成体雄Sprague−Dawleyラット(体重202±37g、平均±SD)に、側尾静脈を通して1〜5MBqのo−[18F]フルマゼニルを注射した。いずれの動物も意識があったが、注射中は軽く拘束し、次いで短期代謝ケージ内に収容した。特定の時点、即ち注射後(pi)30秒、2分、10分、30分及び60分(各時点についてn=3)に、動物を頸部脱臼によって屠殺した。剖検後、脳及び末梢の組織又は体液を試料採取した。Wallacガンマカウンターを用いて脳試料中の放射能を測定した。アッセイ後、放射性崩壊に関する自動補正を含む双晶ガンマカウンターシステム(BASIL社)を用いて脳組織を残りの器官又は組織試料と共にアッセイした。下記表は、脳領域において得られたデータを示している。データは平均(±SD)として表され、すべてがn=3である。アステリスク(*)で示されたデータは%id/gである。
脳内への放射能の初期取込みは注射後30秒で1.4±0.8%idであり、注射後2分で1.8±0.5%idのピークに達した。注射後2分では放射能レベルの着実な減少が見られ、注射後30分での0.9±0.2%idは注射後60分までに0.3±0.1%idに低下した。
早い時点で最高の放射能レベルを有する領域は、前前頭皮質(注射後10分で1.39±0.06%id)であった。GABAリッチ領域とGABAプア領域との間における良好な領域差別化が注射後30分まで存在していた。

Claims (11)

  1. 次の式Iの化合物を得るための方法であって、
    (式中、
    1は水素であって、R218Fであり、
    3はC3-5複素環であるか、或いはR3はC(=O)−O−R4(式中、R4は水素又は直鎖若しくは枝分れC1-4アルキルである。)である。)
    (i)次の式Iaの前駆体化合物を用意する段階、及び
    (式中、
    11は水素であって、R12は、ニトロ、トリ−C1-3アルキルアンモニウム及び−I+−Ar(式中、Arは1以上のR*基で置換されたフェニルであり、R*は水素、ニトロ、シアノ、ハロゲン、C1-10ヒドロキシアルキル、C2-10カルボキシアルキル、C1-10アルキル、C2-10アルコキシアルキル、C1-10アミノアルキル、C1-10ハロアルキル、C6-14アリール、C3-12ヘテロアリール、C3-20アルキルアリール、C2-10アルケニル及びC2-10アルキニルから選択される。)から選択される脱離基であり、
    13は式IのR3に関して定義した通りである。)
    (ii)前記前駆体化合物を適当な[18F]フッ化物イオン源と反応させる段階
    を含んでなり、当該方法が自動化されていて自動化合成装置上で実施される、方法。
  2. 12がトリメチルアンモニウムである、請求項1記載の方法。
  3. 12が−I+−Arである、請求項1記載の方法。
  4. 12がニトロである、請求項1記載の方法。
  5. 3及びR13が独立にC(=O)−O−R4(式中、R4は直鎖又は枝分れC1-4アルキルである。)である、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の方法。
  6. 4がエチル、イソプロピル又はtert−ブチルである、請求項5記載の方法。
  7. 前記適当な[18F]フッ化物イオン源が[18F]フッ化カリウム及び[18F]フッ化セシウムから選択される、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の方法。
  8. 前記適当な[18F]フッ化物イオン源が[18F]フッ化カリウムであり、Kryptofix(商標)を用いてフッ化物イオンが活性化される、請求項7記載の方法。
  9. さらに、
    (iii)過剰の[18F]フッ化物イオンを除去する段階、及び/又は
    (iv)存在する場合には保護基を除去する段階、及び/又は
    (v)有機溶媒を除去する段
    を含む、請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の方法。
  10. 哺乳動物への投与に適した放射性医薬組成物を得るための方法であって、当該方法が、請求項1乃至請求項のいずれか1項の方法と、それに続いて、得られた化合物を生体適合性キャリヤーと共に製剤化する段階とを含んでいる、方法。
  11. 請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の方法を実施するためのカセットであって、
    (i)請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の方法で定義された前駆体化合物を含む容器、並びに
    (ii)請求項1、請求項7又は請求項8で定義された適当な[18F]フッ化物イオン源を用いて容器を溶出するための手段
    を含んでなるカセット。
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