エタロンフィルターの小型化を促進しつつ、波長分解能の向上を実現するためには、第1光学膜と第2光学膜との間のギャップを、例えば、ナノメートルオーダーで高精度に制御する技術が必要となる。したがって、第1基板と第2基板とを、シロキサン結合を含む接合膜を介して接合する際に、各基板を傾斜させずに、各基板間の平行度を確保することが重要である。
但し、接合膜を用いて各基板を接合するためには、例えば、各基板上に形成されている接合膜を、紫外線照射や酸素プラズマ処理等によって活性化し、各基板の位置合わせ(アライメント)を行い、そして、各基板に荷重をかけるといった処理が必要となり、これらの工程中において、基板に若干の傾きが生じる場合があり得る。
基板に傾きを生じさせる原因としては、例えば、各基板に部分的に接合膜を形成する際のアライメントずれ(接合膜アライメントずれ)や、各基板同士を接合する工程にける基板アライメントずれが挙げられる。また、接合膜のエッジ部には傾斜や丸み等が形成され易く、このことも、基板の傾きの原因となり得る。
本発明の少なくとも一つの態様によれば、例えば、基板の貼り合わせによって構成される光フィルターにおいて、基板の傾きを抑制して、各基板に設けられる光学膜間の平行度を確保することができる。
(1)本発明の光フィルターの一態様は、支持部を有する第1基板と、前記支持部によって支持される第2基板と、前記第1基板に設けられた第1光学膜と、前記第2基板に設けられた、前記第1光学膜と対向する第2光学膜と、を含み、前記支持部の、前記第2基板を支持する支持面の全領域上に設けられた第1接合膜と、前記第2基板の被支持面のうちの少なくとも、前記支持面の全領域に対向する領域上に設けられた第2接合膜との接合によって、前記第1基板と前記第2基板とが固着されている。
本態様では、第2基板は、第1基板が有する支持部に支持される。支持部は、第1基板自体を加工することによって形成されたものでもよい。
また、支持部における支持面の全領域(全面)上には、第1接合膜が設けられている。つまり、支持部の支持面の全領域(全面)は、第1接合膜で覆われており、支持部22の支持面上における第1接合膜の表面(第2基板側の面)は、段差のないフラットな面、すなわち平坦面となっている。また、第2基板の被支持面のうちの少なくとも、支持面の全領域に対向する領域(対向面)上には第2接合膜が設けられている。
ここで、第2基板の被支持面は、例えば、設計上、支持部による支持が予定される面であって、実際に支持部によって支持されている面を含むフラットな面ということができる。被支持面は、例えば、実際に支持部によって支持されている領域の他、その近傍に設けられている、位置ずれマージン領域を含むことができる。
その被支持面のうちの少なくとも、支持面の全領域に対向する領域上には第2接合膜が設けられている。つまり、第2基板の被支持面のうちの、第2基板の厚み方向からみた平面視で、支持部の支持面の全領域(全面)に重なる領域は、第2接合膜で覆われており、第2接合膜の表面(第1基板側の面)は、段差のないフラットな面、すなわち平坦面となっている。
つまり本態様では、支持面の全面に設けられている第1接合膜のフラットな面と、その第1接合膜のフラットな面に対向する、第2接合膜のフラットな面とが接触した状態で、第1接合膜と第2接合膜とが接合されて、第1基板と第2基板との固着、すなわち、第1基板と第2基板との貼り合わせが実現されていることになる。本態様では、支持面の全面を利用して第2基板を支持すると共に、各接合膜のフラットな面同士の接触によって、第2基板を支持面上において安定的に支持しているため、第2基板が、第1基板に対して傾くことが抑制される。
第1基板に設けられる第1光学膜と、第2基板に設けられる第2光学膜との間のギャップは、例えば、ナノメートルオーダーで高精度に設定する必要がある。このような高精度のギャップ制御を実現するためには、各光学膜の互いに対向する面(対向面)同士の平行度を高精度に確保することが重要である。本態様によれば、例えば、水平に保持された各基板を、そのままの平行度を維持して貼り合わせることができ、よって、第1光学膜と第2光学膜との間の微小ギャップを、高精度に実現することができる。
(2)本発明の光フィルターの他の態様では、前記第1基板に設けられた前記支持部は、前記第1基板に設けられた凹部の底面を基準とした場合、前記第1基板の厚み方向に所定距離だけ突出する突起部によって構成され、前記突起部は、前記第1基板の厚み方向からみた平面視において、前記第1光学膜の周囲に設けられており、前記支持部を構成する前記突起部の、前記第1光学膜側の第1エッジ部および第1側面、ならびに、前記第1光学膜とは反対側の第2エッジ部および第2側面は、前記第1接合膜によって覆われている。
支持部における支持面の全領域(全面)上に設けられた第1接合膜は、上述のとおり、フラットな面をもつが、微視的にみれば、支持部のエッジ(角)付近において、第1接合膜に傾斜や丸みが形成され易い。この状態で、支持部上に第2基板が載置されて、第1接合膜に荷重がかかった場合を想定する。この場合、支持部のエッジ(角)付近において第1接合膜の傾斜等が生じていることから、第2基板が、支持部の外側(第1光学膜とは反対の側)あるいは内側(第1光学膜の側)に引き込まれて、第2基板に微小な傾きが生じる場合がある。
そこで、本態様では、支持面の全領域(全面)上だけではなく、支持部のエッジ部(角部)ならびに側面も、第1接合膜で覆う構造を採用する。つまり、支持部は、第1基板に設けられた凹部の底面を基準として、第1基板の厚み方向に所定距離、突出した突起部(凸部)によって構成されている。突起部は、第1光学膜の側に、第1エッジ部と第1側面とを有し、また、第1光学膜とは反対の側に、第2エッジ部と第2側面とを有する。そして、突起部の、第1エッジ部と第1側面、ならびに第2エッジ部と第2側面は、共に第1接合膜によって覆われている。
この構造によれば、第1接合膜は、その膜厚の分だけ、支持部の外側(第1光学膜とは反対の側)あるいは内側(第1光学膜の側)に張り出すことになる。エッジ部で第1接合膜の傾斜や丸みが生じたとしても、その傾斜や丸みは、その張り出した部分において生じ、したがって、支持面上の第1接合膜の表面における平坦性には影響がない。よって、支持面の全領域(全面)上における、第1接合膜の表面の平坦性が維持される。つまり、支持部のエッジ部付近においても、各接合膜のフラットな面同士の接触による接合が実現される。よって、第2基板が傾斜する可能性を、さらに低減することができる。
(3)本発明の光フィルターの他の態様では、前記第2接合膜は、前記第2基板の、前記第1基板側の表面の全領域上に設けられている。
本態様では、第2基板の、第1基板側の表面の全領域(全面)上に第2接合膜が設けられている。第2接合膜が第2基板の全面に形成されていることから、位置ずれに強い構造となる。例えば、第1基板と第2基板を接合する際に、いずれか一方の基板の位置が、いずれか他方の基板に対してずれたとしても、第1接合膜上には、必ず第2接合膜が存在することになり、その位置ずれが問題とならない。また、第2基板の製造工程において、第2接合膜をパターニングする必要がないため、製造時の負荷を軽減できるという利点もある。
(4)本発明の光フィルターの他の態様では、前記第1接合膜は、前記第1基板における、前記第2基板側の表面の全領域上に設けられている。
本態様では、第1接合膜は、第1基板の、第2基板側の表面の全面に形成されている。このようにすれば、支持体を構成する突起部の支持面(上面)上、ならびに、突起部における第1エッジ部上、第2エッジ部上、第1側面上、第2側面上に、第1接合膜を形成することができる。また、第1接合膜のパターニングが不要であるため、第1基板を製造する工程における負荷を軽減することができる。
(5)本発明の光フィルターの他の態様では、前記第1接合膜は、前記第1基板の厚み方向からみた平面視において、前記第1光学膜と重なりを有さない領域において設けられ、前記第2接合膜は、前記第2基板の厚み方向からみた平面視において、前記第2光学膜と重なりを有さない領域において設けられている。
第1光学膜の下に第1接合膜が存在する場合、第1接合膜の膜厚のばらつき等の影響を受けて、第1光学膜がわずかに傾く場合も想定され得る。また、第1光学膜下の第1接合膜は、ミラーの反射特性に影響を与える場合がある。第2光学膜の下に第2接合膜が存在する場合も同様である。そこで、本態様では、第1光学膜の下には第1接合膜を設けず、また、第2光学膜の下には第2接合膜を設けないこととした。すなわち、各基板の厚み方向からみた平面視において、各接合膜は、各光学膜と重なりを有さない領域において設けられる。よって、各接合膜が、各光学膜の平坦度や、ミラーの反射特性に影響を与えることがなくなる。
(6)本発明の光フィルターの他の態様では、前記第1接合膜は、前記第1光学膜上に設けられており、かつ、前記第2接合膜は、前記第2光学膜上に設けられている。
本態様では、第1接合膜を、第1光学膜を覆うように設け、また、第2接合膜を、第2光学膜を覆うように設ける。各光学膜上の各接合膜は、各光学膜を保護する保護膜(バリア膜)としての機能を有する。例えば、各接合膜同士の接合の際に、オゾンや紫外線の照射等による活性化処理が行われる場合がある。このとき、各接合膜が各光学膜上に存在すれば、各接合膜が、オゾンや紫外線の照射から各光学膜を保護する。よって、各光学膜の特性の劣化が抑制される。
(7)本発明の光フィルターの製造方法の一態様は、支持部を有する第1基板と、前記支持部に支持される第2基板と、前記第1基板に設けられた第1光学膜と、前記第2基板に設けられた、前記第1光学膜と対向する第2光学膜と、前記支持部の、前記第2基板を支持する支持面の全領域上に設けられた第1接合膜と、前記第2基板の被支持面のうちの少なくとも、前記支持面の全領域に対向する領域上に設けられた第2接合膜と、を含み、前記支持部において前記第1接合膜と前記第2接合膜との接合によって、前記第1基板と前記第2基板とが固着されている光フィルターの製造方法であって、基板に凹部と、前記凹部の底面を基準として、前記第1基板の厚み方向に所定距離だけ突出する突起部によって構成される前記支持部と、前記第1光学膜と、を形成して、第1基板を形成する工程と、基板に前記被支持面を有し、前記第2光学膜を形成して、前記第2基板を形成する工程と、前記第2接合膜の、前記第1方向におけるパターンアライメントずれ量と、前記第1基板に対する前記第2基板の、前記第1方向の基板アライメントずれ量と、を含めた、第1方向における前記第2基板についての最大のアライメントずれ量をαとし、前記第1方向における前記第1基板についての最大のアライメントずれ量も前記αであるとしたとき、前記第2基板の前記被支持面の、正の前記第1方向側に、2α以上の第1位置ずれマージンを設定し、かつ、前記正の第1方向とは逆の負の第1方向側にも2α以上の第2位置ずれマージンを設定し、前記被支持面における、前記支持面の全領域に対向する領域上、ならびに、前記第1位置ずれマージンおよび前記第2位置ずれマージンによって定まる位置ずれマージン領域上に、前記第2接合膜を形成する工程と、前記第1基板に設けられた前記支持部の前記支持面の全領域上に、前記第1接合膜を形成する工程と、前記第1接合膜を活性化する工程と、前記第2接合膜を活性化する工程と、前記第1基板と前記第2基板とを、前記第1光学膜と前記第2光学膜とが対向し、かつ、前記支持面と前記被支持面とが対向する状態で保持し、前記第1基板と前記第2基板の少なくとも一方に荷重をかけて、活性化された前記第1接合膜と、活性化された前記第2接合膜とを接合し、これによって前記第1基板と前記第2基板とを固着する工程と、を含む。
上記(1)の態様において説明したように、支持部における支持面の全面を利用して第2基板を支持すると共に、各接合膜のフラットな面同士の接触によって、第2基板を、支持面上に安定的に支持するのが好ましい。しかし、実際の光フィルターの製造においては、例えば、接合膜を形成するときの第1方向におけるパターンアライメントずれや、基板間のアライメントずれが生じる可能性がある。このようなアライメントずれが生じたとしても、上記(1)の態様で示したような、安定的な基板支持構造を確保するためには、光フィルターの製造時において、位置ずれマージンを設定した上で、各基板を貼り合わせるのが有効である。
そこで、本態様では、支持面および被支持面に平行な方向を第1方向としたとき、第2基板の被支持面において、正の第1方向に、2α以上の第1位置ずれマージンを設定し、負の第2方向に、2α以上の第2位置ずれマージンを設定した上で、被支持面における、支持面の全領域に対向する領域上、ならびに、第1位置ずれマージンおよび第2位置ずれマージンによって定まる位置ずれマージン領域上に、第2接合膜を形成する。
ここで、αは、第2基板についての最大のアライメントずれ量である。例えば、第2基板に第2接合膜を部分成膜する場合における、予測される第1方向における最大のパターンアライメントずれ量をα1とし、基板貼り合わせの工程において予測される、第1基板に対する第2基板の、第1方向の最大の基板アライメントずれ量をα2としたとき、α1とα2の合計をαとすることができる。すなわち、α1とα2が共に同一の方向(正の第1方向または負の第1方向)に生じたときに、第2基板についての、第1方向のアライメントずれ量は最大となる。よって、その最大のアライメントずれ量、すなわち、α1とα2の合計をαとすることができる。
位置ずれマージンの設定に関しては、第1基板についての最大のアライメントずれ量も考慮する必要がある。ここで、例えば、第1基板の支持部の支持面の全領域(全面)上に第1接合膜が形成されていることを前提としたとき、第1基板に関しては、パターンアライメントずれを考慮する必要はないことになるが、ここでは、設計の便宜上、第1基板についての最大のアライメントずれ量も、第2基板の場合と同様に、αであると考える。
そして、第1基板についての最大のアライメントずれと、第2基板についての最大のアライメントずれとが、互いに逆向きに生じたときに、各基板に形成される各接合膜間の位置ずれは最大となり、そのとき、各接合膜間における最大の位置ずれの量は2αとなる。この接合膜間における最大の位置ずれは、正の第1方向および負の第1方向のいずれにも生じる可能性がある。
この点を考慮して、本態様では、第2基板の被支持面において、正の第1方向に、2α以上の第1位置ずれマージンを設定し、かつ、負の第2方向にも、2α以上の第2位置ずれマージンを設定する。これによって、第1接合膜と第2接合膜との間に最大の位置ずれが生じた場合でも、第1接合膜上には必ず第2接合膜が存在することを担保することができる。
第1接合膜は、第1基板における支持部の支持面上に形成されことから、各接合膜の接合が完了した後の状態では、第1基板の支持部の支持面上には第1接合膜が存在し、その第1接合膜の上には、必ず第2接合膜が存在することになる。すなわち、先に(1)の態様で説明した、「第2基板の被支持面のうちの少なくとも、支持面の全領域に対向する領域上に第2接合膜が設けられていて、第1接合膜および第2接合膜の各フラットな面同士の接触によって、各基板が貼り合わせられる」という構造が実現されていることになる。このように、本態様によれば、最大のアライメントずれが生じた場合でも、第2基板を傾かせることなく、支持部上にて安定的に支持することが可能となる。
(8)本発明の光フィルターの製造方法の他の態様では、前記第2基板は、薄肉部を備える可動部と、前記可動部を支持する、前記薄肉部よりも厚肉の可動部支持部と、を有する可動基板であり、前記可動部支持部における、前記第1基板側の表面が前記被支持面であり、前記第1基板と前記第2基板とを固着する工程において、前記第1基板における前記支持部の、前記第1光学膜側の端部の位置から、前記第2基板における前記可動部の開始位置までの、前記第1方向における最短距離を2α以上に設定した上で、前記第1基板と第2基板の固着を行う。
本態様では、第2基板は可動基板であり、この可動基板は、薄肉部(ダイヤフラム部)を備える可動部と、この可動部を支持する、薄肉部よりも厚肉の可動部支持部と、を有する。そして、第1基板における支持部の、第1光学膜側の端部の位置から、第2基板における可動部の開始位置までの、第1方向における最短距離が2α以上に設定される。
仮に、最大のアライメントずれが生じて、支持部の、第1光学膜側の端部の位置が、第2基板の可動部の開始位置よりも内側、すなわち第1光学膜側になってしまうと、薄肉部(ダイヤフラム)の一部は撓むことができない。結果的に、第2基板の厚み方向からみた平面視において、可動部の有効面積が、設計値よりも縮小されることになり、各光学膜間のギャップ制御を、所望の精度で行うことが困難となる。
そこで、本態様では、第1基板における支持部の、第1光学膜側の端部の位置から、第2基板における可動部の開始位置までの、第1方向における最短距離を2α以上に設定する。このようにしておけば、最大のアライメントずれが生じたときでも、支持部の、第1光学膜側の端部の位置は、可動部の開始位置よりも、第1光学膜側に位置することがない。つまり、各基板間の位置ずれ量が2αの場合であっても、可動部の有効面積に変化はなく、よって、各光学膜間のギャップの制御性には影響が生じない。
(9)本発明の光フィルターの製造方法の他の態様では、前記第1接合膜を形成する工程において形成される前記第1接合膜は、シロキサン結合を有するSi骨格と、前記Si骨格に結合される脱離基と、を含み、前記第2接合膜を形成する工程において形成される前記第2接合膜は、シロキサン結合を有するSi骨格と、前記Si骨格に結合される脱離基と、を含み、前記第1接合膜を活性化する工程は、オゾンまたは紫外線を照射する第1照射工程によって、前記第1接合膜の前記Si骨格から前記脱離基を脱離させて未結合手を形成する工程を含み、前記第2接合膜を活性化する工程は、オゾンまたは紫外線を照射する第2照射工程によって、前記第2接合膜の前記Si骨格から前記脱離基を脱離させて未結合手を形成する工程を含み、前記第1基板と前記第2基板とを固着する工程は、前記第1接合膜の前記未結合手と前記第2接合膜の前記未結合手とを結合させることにより、前記第1接合膜と前記第2接合膜とを接合する工程を含む。
本態様では、シロキサン結合を有する接合膜を使用する。例えば、ポリオルガノシロキサンのようなシロキサン結合を含む重合物等を、第1接合膜および第2接合膜として使用することができる。ポリオルガノシロキサン等で構成された接合膜は、それ自体が優れた機械的特性を有している。また、この接合膜は、多くの材料に対して特に優れた接着性を示すものである。したがって、ポリオルガノシロキサン等で構成された第1接合膜および第2接合膜は、特に強い被着力を示し、その結果として、第1基板と第2基板とを強固に接合することができる。
また、ポリオルガノシロキサン等の接合膜は、通常、撥水性(非接着性)を示すが、活性化エネルギーを付与されることにより、容易に有機基を脱離させることができ、親水性に変化し、接着性を発現するが、この非接着性と接着性との制御を、容易かつ確実に行えるという利点もある。
(10)本発明の光フィルターの製造方法の他の態様では、前記第1接合膜を形成する工程では、前記支持部を構成する前記突起部の、前記第1光学膜側の第1エッジ部ならびに第1側面、ならびに、前記第1光学膜とは反対側の第2エッジ部ならびに第2側面を覆うように、前記第1接合膜を形成する。
本態様では、支持面の全領域(全面)上だけではなく、支持部(突起部)のエッジ部(角部)上ならびに側面上にも、第1接合膜を形成する。第1接合膜は、その膜厚の分だけ、支持部の外側(第1光学膜とは反対の側)あるいは内側(第1光学膜の側)に張り出すことになる。よって、エッジ部で第1接合膜の傾斜や丸みが生じたとしても、その傾斜や丸みは、その張り出した部分において生じ、したがって、支持面上の第1接合膜の表面における平坦性には影響がない。つまり、支持部のエッジ部付近においても、各接合膜のフラットな面同士の接触による接合が実現され、よって、第2基板が傾斜する可能性を、さらに低減することができる。
(11)本発明の光フィルターの製造方法の他の態様では、前記第2接合膜を形成する工程では、前記第2基板の、前記第1基板側の表面の全領域上に前記第2接合膜を形成する。
本態様では、第2基板の、第1基板側の表面の全領域(全面)上に第2接合膜を形成する。第2接合膜が第2基板の全面に形成されていることから、位置ずれに強い構造が実現される。この構造によれば、例えば、第1基板と第2基板を接合する際に、いずれか一方の基板の位置が、いずれか他方の基板に対してずれたとしても、第1接合膜上には、必ず第2接合膜が存在することになり、その位置ずれが問題とならない。また、第2基板の製造工程において、第2接合膜をパターニングする必要がないため、工程数を抑制でき、製造時の負荷を軽減することができる。
(12)本発明の光フィルターの製造方法の他の態様では、前記第1接合膜を形成する工程において、前記第1基板における、前記第2基板側の表面の全領域上に前記第1接合膜を形成する。
本態様では、第1接合膜を、第1基板の、第2基板側の表面の全面に形成する。このようにすれば、支持体を構成する突起部の支持面(上面)上、ならびに、突起部における第1エッジ部上、第2エッジ部上、第1側面上、第2側面上に、第1接合膜を形成することができる。また、第1接合膜のパターニングが不要であるため、第1基板を製造する工程における負荷を軽減することができる。
(13)本発明の光フィルターの製造方法の他の態様では、前記第1接合膜を形成する工程では、前記第1基板の厚み方向からみた平面視において、前記第1光学膜と重なりを有さない領域において前記第1接合膜を形成し、前記第2接合膜を形成する工程では、前記第2基板の厚み方向からみた平面視において、前記第2光学膜と重なりを有さない領域において前記第2接合膜を形成する。
本態様では、第1光学膜の下には第1接合膜を設けず、また、第2光学膜の下には第2接合膜を形成しない。すなわち、第1基板の厚み方向からみた平面視において、各接合膜は、各光学膜と重なりを有さない領域において形成する。本態様によれば、接合膜が、第1光学膜および第2光学膜の平坦性に影響を及ぼすことがなく、また、ミラーの反射特性に影響を与えることもない。
(14)本発明の光フィルターの製造方法の他の態様では、前記第1接合膜を形成する工程では、前記第1光学膜を覆うように前記第1接合膜を形成し、かつ、前記第2接合膜を形成する工程では、前記第2光学膜を覆うように前記第2接合膜を形成する。
本態様では、第1接合膜を、第1光学膜を覆うように形成し、また、第2接合膜を、第2光学膜を覆うように形成する。これにより、各光学膜上の各接合膜を、各光学膜を保護する保護膜(バリア膜)として機能させることができる。例えば、第1接合膜と第2接合膜との接合の際に、オゾンや紫外線の照射等による活性化処理が行われる場合に、各接合膜が、オゾンや紫外線の照射から各光学膜を保護する。よって、各光学膜の特性の劣化が抑制される。
(15)本発明の光機器は、上記いずれかの光フィルターの製造方法により製造された光フィルターを含む。
上述のとおり、本発明の各態様にかかる光フィルターでは、光学膜間のギャップが極めて微小であるような場合でも、基板の傾きを抑制することができ、各基板に設けられる光学膜間の平行度ならびにギャップを高精度に制御可能であることから、小型かつ高性能の光フィルターを得ることができる。この光フィルターを搭載する光機器も、同様の効果を享受することができる。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
(第1実施形態)
本実施形態では、第1基板と第2基板とを貼り合わせた構造をもつエタロンフィルターにおける、第2基板の安定的な支持について説明する。なお、以下の説明においては、図14に示される従来例の構成を適宜、参照し、本実施形態の例と対比する。なお、図14に示される従来例は、特許文献1の図2に記載されている従来例である。
図1(A)〜図1(G)は、第1基板と第2基板とを貼り合わせた構造をもつエタロンフィルターにおける、第2基板の安定的な支持について説明するための図である。なお、以下の説明では、エタロンフィルターを、単にエタロンという場合がある。図1(A)には、本実施形態にかかる、光学膜間のギャップを可変に制御可能な可変ギャップエタロンフィルターの断面構造が示されている。但し、この例は一例であり、ギャップが固着されたエタロンフィルターであってもよい。なお、以下の説明では、可変ギャップエタロンフィルターを、単に可変ギャップエタロンという場合がある。
図1(A)に示されるように、エタロンフィルター300は、互いに平行に保持された第1基板20および第2基板30と、第1基板20上に設けられた第1光学膜40と、第2基板30上に設けられた第2光学膜50と、を有する。第1基板20及び第2基板30は、例えば、所望の波長帯域の光に対する透過性を有するガラス基板である。
また、第1光学膜40と第2光学膜50とは対向し、かつ、所定のギャップG1を有するように形成されている。第1光学膜40と第2光学膜50は、所望波長帯域の光に対する反射特性と透過特性とを兼ね備えており、各々は、エタロンフィルター300におけるミラーを構成する。
図1(A)に示される可変ギャップエタロンフィルターは、支持部22を有する第1基板20と、支持部22によって支持される第2基板30とを貼り合わせた構造を有する。第1基板20と第2基板30との固着には、第1接合膜105と第2接合膜107が使用されている。第1接合膜105および第2接合膜107としては、例えば、シロキサン結合を有するSi骨格およびSi骨格に結合される脱離基とを含む膜を使用することができる。シロキサン結合を利用することによって、第1基板20と第2基板30を強固に貼り合わせることができる。
図1(A)の例では、第1接合膜105は、第1基板20における、第2基板30側の表面(すなわち一主面)の全領域(全面)上に設けられている。また、第2接合膜107は、第2基板30の第1基板20側の表面(すなわち一主面)上に、部分的に成膜されている。
第1基板20は、支持部22と、第1基板20の一主面の中央に設けられた第1光学膜(第1反射膜)40と、第1光学膜40の周囲に設けられている第1電極60と、第1電極60上に設けられている保護膜61と、を有する。支持部22は、第1基板20自体を加工することによって形成されたものでもよい。また、第1基板20は、凹部23を有する。
また、第2基板30は、第2基板30の一主面の中央に設けられた第2光学膜(第2反射膜)50と、第2光学膜50の周囲に設けられている第2電極70と、を有する。第1電極60と第2電極70は、可動基板である第2基板30に撓みを生じさせて、第1光学膜40と第2光学膜50との間のギャップを可変に制御するためのアクチュエーターを構成する。
本実施形態では、第2基板30は、薄肉部(ダイヤフラム部)34を備える可動部35と、可動部35を支持する、薄肉部34よりも厚肉の可動部の支持部36と、を有する。支持部22によって、第2基板30における可動部の支持部36が支持される。支持部22の上面が支持面となる。
図1(A)に示される例では、支持部22は、第1基板20に設けられた凹部23の底面を基準として、距離L2だけ、第1基板20の厚み方向に突出する突起部によって構成されている。なお、第1基板20の中央には、凹部23の底面を基準として距離L1だけ突出した凸部21が設けられており、この凸部21上に、第1光学膜40が形成されている。なお、距離L1は、距離L2よりも小さく設定されている。
図1(A)の例では、第1基板20における、支持部(突起部)22の上面、エッジ部ならびに側面は、すべて第1接合膜105によって覆われている。支持部22の上面を支持面とするとき、支持部22の支持面の全領域(全面)上には、第1接合膜105が設けられていることになる。支持部22の支持面上における第1接合膜105の表面(第2基板30側の面)は、段差のないフラットな面、すなわち平坦面となっている。
また、第2基板30における可動部の支持部36の、第1基板20側の表面(つまり裏面)が被支持面となる。被支持面は、例えば、実際に支持部22によって支持されている領域の他、その近傍に設けられている、位置ずれマージン領域(後述)も含むことができる。被支持面は、支持部22の支持面と同様のフラットな面を有する。第2基板30の被支持面は、例えば、「設計上、支持部22による支持が予定される面であって、実際に支持部22によって支持されている面を含むフラットな面」ということができる。
図1(A)に示される例では、第2基板30における被支持面のうちの少なくとも、支持面の全領域(全面)に対向する領域(対向面)上には第2接合膜107が設けられている。これによって、第2基板30を、第1基板20上に安定的に支持することができ、第2基板30の傾きを抑制することができる。この点について、図1(B)〜図1(D)を参照して説明する。
図1(B)に示すように、支持部22の上面の全領域(全面)を支持面Q1とする。また、第2基板30における可動部の支持部36の裏面を被支持面Q2とする。図1(C)に示すように、被支持面Q2のうちの、支持面Q1の全領域(全面)に対向する領域をQ2aとする。すなわち、支持面Q1の全領域(全面)に対向する対向領域(対向面)をQ2aとする。そして、図1(D)に示されるように、支持面Q1の全領域(全面)上には、第1接合膜105が設けられており、また、被支持面Q2のうちの、少なくとも対向領域(対向面)Q2a上には、第2接合膜107が設けられている。
図1(D)に示される例では、支持面Q1の全面に設けられている第1接合膜105のフラットな面と、その第1接合膜105のフラットな面に対向する、第2接合膜107のフラットな面とが接触した状態で、第1接合膜105と第2接合膜107とが接合されている。これによって、第1基板20と第2基板30との固着、すなわち、第1基板20と第2基板30との貼り合わせが実現されていることになる。図1(D)に示されるこの支持構造では、支持面Q1の全面を利用して、第2基板30(具体的には可動部の支持部36)を支持すると共に、各接合膜105,107のフラットな面同士の接触によって、第2基板30を支持面上において安定的に支持しているため、第2基板30が、第1基板20に対して傾くことが抑制される。
第1基板20の主面上に設けられる第1光学膜40と、第2基板30の主面上に設けられる第2光学膜50との間のギャップG1は、例えば、100nm程度に設定されており、したがって、極めて高精度なギャップ制御が必要である。このような高精度のギャップ制御を実現するためには、各光学膜40,50の互いに対向する面(対向面)同士の平行度を高精度に確保することが重要である。図1(A)ならびに図1(D)に示される例によれば、水平に保持された各基板20,30を、そのままの平行度を維持して貼り合わせることができ、よって、第1光学膜40と第2光学膜50との間の微小ギャップG1を、高精度に実現することができる。
ここで、比較例として、図14の例を参照する。図14は、特許文献1の図2に示される従来のエタロンフィルターの構造を示す図である。図14の上側に示される図は、特許文献1の図2に示される従来のエタロンフィルターの構造をそのまま示しており、図14の左下ならびに右下に示される図は、図1における本実施形態の支持構造との比較を行うために、新たに追加された図である。
図14に示される従来例では、上側の基板2と下側の基板3とが、接合膜43a,43bを介して接合されている。また、上側の基板2には、引き出し電極281が設けられている。
図14の左下に示されるように、図14の従来例の場合、支持面Q1の全領域(全面)に対向する被支持面Q2が存在しない。第1接合膜43b1および第2接合膜43b2の各々は、各基板3,2上において、部分的に成膜されている。上側基板2を支持する支持構造に比べて、図1(A)ならびに図1(D)に示される本実施形態の支持構造の方が、上側の基板を、より安定的に支持できるのは明らかである。また、図14の従来例の場合、接合膜43b1,43b2のトータルの膜厚d1と、引き出し電極281の膜厚d2とに差があると、そのことが、上側の基板2の傾きの原因となる。図14の左下に示される例では、d1<d2となっている。図1(A)ならびに図1(D)に示される本実施形態の支持構造では、支持面Q1の全面を利用して、第2基板30(可動部の支持部36)を支持すると共に、各接合膜105,107のフラットな面同士の接触によって、第2基板30を支持面上において安定的に支持していることから、第2基板30の傾きが生じにくい。
図1に戻って、本実施形態についての説明を続ける。図1(D)の例を用いて説明したように、支持部22における支持面Q1の全面を利用して第2基板30を支持すると共に、各接合膜105,107のフラットな面同士の接触によって、第2基板30を、支持面Q1上に安定的に支持するのが好ましい。
しかし、実際の光フィルター300の製造においては、例えば、接合膜105,107を形成するときの第1方向におけるパターンアライメントずれや、基板20,30間のアライメントずれが生じる可能性がある。このようなアライメントずれが生じたとしても、図1(D)に示したような、安定的な基板支持構造を確保するためには、光フィルター300の製造時において、位置ずれマージンを設定した上で、各基板20,30を貼り合わせるのが有効である。
なお、図1(A)の左下に示されるように、光フィルター300のデバイスの横断面の長手方向をX軸方向とする。支持面Q1内にX軸があるとしたとき、同じ支持面Q1における、支持面Q1と直交する軸をY軸とし、X軸およびY軸の双方に垂直な軸、つまり、支持面Q1に垂直な軸をZ軸とする。上述の「第1方向」は、ここではX軸方向である。この第1方向は、支持面Q1および被支持面Q2に平行な方向ということができる。上述の位置ずれマージン(位置ずれ余裕)は、第1方向、すなわちX軸方向に設定することができる。なお、第2方向、すなわちY軸方向にも、位置ずれマージンを設定することができる。
以下、図1(E)〜図1(G)を参照して、光フィルター300の製造時における、位置ずれマージンの設定について説明する。図1(E)は、図1(A)に示される光フィルター300における、支持部22付近の構造を示している。図1(E)に示される例では、第2基板30(具体的には可動部の支持部36)上における正の第1方向(+X軸方向)に、2α以上の第1位置ずれマージンM1が設定されており、また、負の第2方向(−X軸方向)には、2α以上の第2位置ずれマージンM2が設定されている。そして、第2基板30の被支持面Q2における、支持面Q1の全領域に対向する領域Q2a上、ならびに、第1位置ずれマージンM1ならびに第2位置ずれマージンM2によって定まる位置ずれマージン領域域上に、第2接合膜107を形成する。
ここで、αは、第2基板30についての最大のアライメントずれ量である。例えば、第2基板30に第2接合膜107を部分成膜する場合における、予測される第1方向における最大のパターンアライメントずれ量をα1とし、基板貼り合わせの工程において予測される、第1基板20に対する第2基板30の、第1方向(X軸方向)の最大の基板アライメントずれ量をα2としたとき、α1とα2の合計をαとすることができる。すなわち、α1とα2が共に同一の方向(正の第1方向または負の第1方向)に生じたときに、第2基板30についての、第1方向のアライメントずれ量は最大となる。よって、その最大のアライメントずれ量、すなわち、α1とα2の合計をαとすることができる。
位置ずれマージンの設定に関しては、第1基板20についての最大のアライメントずれ量も考慮する必要がある。ここで、例えば、第1基板20の支持部22の支持面Q1の全領域(全面)上に第1接合膜105が形成されていることを前提としたとき、第1基板20に関しては、パターンアライメントずれを考慮する必要はないことになるが、ここでは、設計の便宜上、第1基板20についての最大のアライメントずれ量も、第2基板30の場合と同様に、αであると考える。
そして、第1基板20についての最大のアライメントずれと、第2基板30についての最大のアライメントずれとが、互いに逆向きに生じたときに、各基板に形成される各接合膜105,107間の位置ずれは最大となり、その接合膜105,107間における最大の位置ずれの量は2αとなる。この接合膜105,107間における最大の位置ずれ2αは、正の第1方向および負の第1方向のいずれにも生じる可能性がある。
この点を考慮して、図1(A)ならびに図1(E)に示される例では、第2基板30の被支持面Q2において、正の第1方向に、2α以上の第1位置ずれマージンM1を設定し、かつ、負の第2方向にも、2α以上の第2位置ずれマージンM2を設定する。これによって、第1接合膜105と第2接合膜107との間に最大の位置ずれが生じた場合でも、第1接合膜上には必ず第2接合膜が存在することを担保することができる。第1接合膜105は、第1基板20における支持部22の支持面上に形成されことから、各接合膜105,107の接合が完了した後の状態では、第1基板20の支持部22の支持面Q1上には第1接合膜105が存在し、その第1接合膜105の上には、必ず第2接合膜107が存在することになる。
図1(F)は、各接合膜105,107間において、正の第1方向(+X軸方向)に最大の位置ずれ2αが生じたときの、支持部22付近の断面図を示している。位置ずれが生じた後も、図1(D)に示した好ましい支持構造が実現されているのは明らかである。すなわち、図1(D)で示した、「第2基板30の被支持面Q2のうちの少なくとも、支持面Q1の全領域に対向する領域Q2a上に第2接合膜107が設けられていて、第1接合膜105および第2接合膜107の各フラットな面同士の接触によって、各基板20,30が貼り合わせられる」という構造が実現されていることになる。
ここで、図14の右下に示される図を参照する。図14の従来構造では、アライメントずれが生じると、図14の右下に示すように、被支持面Q2は、支持面Q1の全面に対向した状態ではなくなる。図1(E)の構造では、このような現象が生じない。ここで、図1に戻って説明を続ける。
このように、図1(E)に示されるような位置ずれマージンを考慮した光フィルター300の設計方法の採用によって、最大のアライメントずれが生じた場合でも、図1(F)に示すように、第2基板30を傾かせることなく、支持部22上にて安定的に支持することが可能となる。
図1(G)は、支持部22’が第2基板30側に設けられている場合の、支持部22’付近の支持構造を示している。図1(G)の例は、図1(E)の例の構造の、上下を逆にしたのと等価な構造を有する。図1(G)の例では、図1(E)の例と区別するために、便宜上、各構成要素の参照符号には、ダッシュを付している。図1(G)の例においても、図1(E)の例と同様の効果が得られるのは明らかである。
図2は、可変ギャップエタロンフィルターにおける、第2基板の可動部位置の好ましい設定例を説明するための図である。
図2において、第1基板20における支持部22の、第1光学膜40側の端部(あるいは側面)の位置を位置Aとし、可動部35(あるいは薄肉部34)の開始位置を位置Bとし、支持部22の、第1光学膜40とは反対側の端部(あるいは側面)の位置を位置Cとし、部分成膜された第2接合膜107の、第1光学膜40とは反対側の端部を位置Dとする。ここで、位置Bは、部分成膜された第2接合膜107の、第1光学膜40側の端部位置でもある。
図2に示される例では、第1基板20における支持部22の、第1光学膜40側の端部の位置Aから、第2基板30における可動部35の開始位置Bまでの、第1方向における最短距離を、2α以上に設定している。上述のとおり、αは、各基板についての、第1方向の最大のアライメントずれ量である。
可動部35における撓み(例えば図11(C)参照)は、薄肉部(ダイヤフラム部)34の開始位置、すなわち、可動部の開始位置Bから生じる。仮に、最大のアライメントずれが生じて、支持部22の、第1光学膜40側の端部の位置Aが、第2基板30の可動部35の開始位置Bよりも内側、すなわち第1光学膜40側になってしまうと、薄肉部(ダイヤフラム部)34の一部は撓むことができない。結果的に、第2基板30の厚み方向からみた平面視において、可動部35の有効面積が、設計値よりも縮小されることになり、各光学膜間のギャップ制御を、所望の精度で行うことが困難となる。
これに対して、図2に示される例では、位置Aから位置Bまでの、第1方向における最短距離が2α以上に設定されている。よって、最大のアライメントずれが生じたときでも、位置Aは、位置Bよりも、第1光学膜40側に位置することがない。つまり、各基板間の位置ずれ量が2αの場合であっても、可動部35の、平面視における有効面積に変化はなく、よって、各光学膜40,50間のギャップの制御性には影響が生じない。
図3は、第2基板の厚み方向からみた平面視における支持構造を示す図である。図3の上側には、可変ギャップエタロンの断面図が示され、図3の下側には、断面図に対応した、平第2基板の厚み方向からみた平面視における支持構造、すなわち、XY平面における支持構造が示されている。
図3の下側の図において、支持部22は太い破線で示されている。太い破線で囲まれている領域(網模様が付されている領域)が、支持部22の上面、すなわち、支持面Q1である。図3に示される例では、第1方向(X軸方向)に、第1位置ずれマージンM1ならびに第2位置ずれマージンM2が設定されており、また、XY平面内で、第1方向(X軸方向)に直交する第2方向(Y軸方向)においても、第3位置ずれマージンM3ならびに第4位置ずれマージンM4が設定されている。
そして、第2基板30の被支持面における、支持面Q1の全領域(網模様が付されている領域)に対向する領域上、第1位置ずれマージンM1ならびに第2位置ずれマージンM2によって定まる位置ずれマージン領域上、第3位置ずれマージンM3ならびに第4位置ずれマージンM4によって定まる位置ずれマージン領域上に、第2接合膜107が形成されている。すなわち、図3の下側の図において、太い斜線が施された領域、すなわち二点鎖線で囲まれた領域において、第2接合膜107が形成される。
図3に示される例では、第1方向(X軸方向)の位置ずれだけでなく、第2方向(Y軸方向)の位置ずれについても考慮された設計が採用されている。よって、アライメント位置ずれに強い支持構造が実現されている。
次に、第1接合膜105についての、好ましいパターン例について説明する。図4(A)〜図4(C)は、エッジ部における傾斜や丸みを考慮して、第1接合膜を支持部のエッジ部や側面にも設ける例を示す図である。図4(A)は、エタロンの断面図を示し、図4(B)は、第1接合膜の好ましいパターン例を示している。また、図4(C)は、図4(B)のパターンを採用しない場合に、支持部のエッジ部(角部)において、第1接合膜の傾斜や丸みが生じる様子を示している。
まず、図4(C)を参照する。支持部22における支持面Q1の全領域(全面)上に設けられた第1接合膜105は、上述のとおり、フラットな面をもつが、微視的にみれば、支持部22のエッジ(角)付近においては、第1接合膜105に傾斜や丸みが生じる場合がある。図4(C)では、傾斜や丸みが生じた第1接合膜105を破線で示している。
この状態で、支持部22上に第2基板30が載置されて、第1接合膜105に荷重がかかった場合を想定する。この場合、支持部22のエッジ部付近において第1接合膜105の傾斜や丸みが生じていることから、第2基板30が、支持部22の外側(第1光学膜40とは反対の側)あるいは内側(第1光学膜40の側)に引き込まれて、第2基板30に微小な傾きが生じる場合がないとは言えない。つまり、図4(C)の比較例の場合、フラットな面の幅はW1に設計されているにもかかわらず、実際の幅はW2に短縮されたとみるもとができる。
そこで、図4(A)および図4(B)に示される例では、支持面Q1の全領域(全面)上だけではなく、支持部22のエッジ部(角部)ならびに側面も、第1接合膜105で覆う構造を採用する。
つまり、支持部22は、第1基板20に設けられた凹部23の底面を基準として、第1基板20の厚み方向に所定距離L2だけ突出した突起部(凸部)によって構成されている。この突起部(支持部22)は、第1光学膜40の側に、第1エッジ部と第1側面とを有し、また、第1光学膜40とは反対の側に、第2エッジ部と第2側面とを有する。そして、突起部(支持部22)の、第1エッジ部と第1側面、ならびに第2エッジ部と第2側面は、共に第1接合膜によって覆われている。
図4(B)の例では、第1接合膜105の、支持面Q1上に位置する部分には参照符号105aが付されている。また、第1接合膜105の、支持部22の第1側面を覆う部分には参照符号105bが付されている。また、第1接合膜105の、支持部22の第2側面を覆う部分には参照符号105cが付されている。また、第1接合膜105の膜厚はW3である。
この構造によれば、第1接合膜105は、その膜厚W3の分だけ、支持部22の外側(第1光学膜40とは反対の側)あるいは内側(第1光学膜40の側)に張り出すことになる。したがって、支持部22のエッジ部付近で、第1接合膜105に傾斜や丸みが生じたとしても、その傾斜や丸みは、その張り出した部分(膜厚W3に相当する部分)において生じる。つまり、第1接合膜105の側面に設けられている部分105b,105cにおいて傾斜や丸みが生じるのであり、よって、第1接合膜105の、支持面Q1上に位置する部分105aにおいては、フラットな面が維持される。つまり、支持面Q1上の第1接合膜105の表面における平坦性には、エッジ部における傾斜や丸みの影響が及ばない。
よって、支持面Q1の全領域(全面)上における、第1接合膜105の表面の平坦性が維持される。つまり、支持部のエッジ部付近においても、各接合膜のフラットな面同士の接触による接合が実現される。よって、図4(A)および図4(B)に示される例によれば、第2基板30が傾斜する可能性を、さらに低減することができる。
次に、第1接合膜105および第2接合膜107の成膜に関するバリエーションについて説明する。第1接合膜105および第2接合膜107の各々は、共に、各基板の全面上に形成することができる。また、第1接合膜105を部分成膜し、第2接合膜107を全面成膜することもできる。その逆に、第1接合膜105を全面成膜し、第2接合膜107を部分成膜することもできる。また、第1接合膜105および第2接合膜107の各々を、各基板20,30上において、部分成膜することもできる。
図5(A)〜図5(C)は、第1接合膜および第2接合膜の成膜に関するバリエーションを示す図である。
図5(A)の例では、第1接合膜105および第2接合膜107の各々は、共に、各基板20,30の全面上に形成されている。
すなわち、図5(A)に示される例では、第1接合膜105は、第1基板20における、第2基板30側の表面の全領域(全面)上に設けられている。このようにすれば、支持部22を構成する突起部の支持面(上面)Q1上、ならびに、突起部における第1エッジ部上、第2エッジ部上、第1側面上、第2側面上に、第1接合膜105を形成することができる。また、第1接合膜105のパターニングが不要であるため、第1基板20を製造する工程における負荷を軽減することもできる。
また、図5(A)に示される例では、第2接合膜107は、第2基板30の、第1基板20側の表面の全領域(全面)上に設けられている。第2接合膜107が第2基板30の全面に形成されていることから、XY平面上のどの方向にも位置ずれマージンが設けられていることになり、位置ずれに強い構造が実現される。例えば、第1基板と第2基板を接合する際に、いずれか一方の基板の位置が、いずれか他方の基板に対してずれたとしても、第1接合膜105上には、必ず第2接合膜107が存在することになり、位置ずれが問題とならない。また、第2基板30の製造工程において、第2接合膜107をパターニングする必要がないため、第2基板30を製造する工程における負荷を軽減することもできる。
図5(B)の例では、第1光学膜40の下側には第1接合膜105が設けられない。また、第2光学膜50の下側には第2接合膜107が設けられない。すなわち、第1接合膜105は、第1基板20の厚み方向からみた平面視において、第1光学膜40と重なりを有さない領域において設けられており、また、第2接合膜107は、第2基板30の厚み方向からみた平面視において、第2光学膜50と重なりを有さない領域において設けられている。
第1光学膜40の下に第1接合膜105が存在する場合、第1接合膜105の膜厚のばらつき等の影響を受けて、第1光学膜40がわずかに傾く場合も想定され得る。また、第1光学膜40の下の第1接合膜105は、ミラーの反射特性に影響を与える場合がある。第2光学膜50の下に第2接合膜107が存在する場合も同様である。そこで、図5(B)の例では、第1光学膜40の下には第1接合膜105を設けず、また、第2光学膜50の下には第2接合膜107を設けないこととした。すなわち、各基板20,30の厚み方向からみた平面視において、各接合膜105,107は、各光学膜40,50と重なりを有さない領域において設けられる。よって、各接合膜105,107が、各光学膜40,50の平坦度や、ミラーの反射特性に影響を与えることがない。
また、図5(C)に示される例では、第1接合膜105は、第1光学膜40上に設けられており、また、第2接合膜107は、第2光学膜50上に設けられている。すなわち、図5(C)に示される例では、第1接合膜105は、第1光学膜40を覆うように設けられており、また、第2接合膜107は、第2光学膜50を覆うように設けられている。
各光学膜40,50を覆う各接合膜105,107は、各光学膜40,50を保護する保護膜(バリア膜)としての機能を有する。例えば、各接合膜105,107同士の接合の際に、オゾンや紫外線の照射等による活性化処理が行われる場合がある。このとき、各接合膜105,107が各光学膜40,50上に存在すれば、各接合膜105,107が、オゾンや紫外線の照射から、各光学膜40,50を保護する。よって、各光学膜40,50の特性の劣化が抑制される。
なお、本実施形態では、対向する第1光学膜40と第2光学膜50との間の寸法が、対向する第1電極60と第2電極70との寸法より小さい構造の光フィルター300について説明したが、第1光学膜と第2光学膜との間の寸法が、第1電極と第2電極との寸法より大きい構造の光フィルターであっても、本実施形態と同様の効果を奏する。
(第2実施形態)
本実施形態では、光フィルター300としての可変ギャップエタロンフィルターの製造方法について説明する。図6(A)および図6(B)は、完成した可変ギャップエタロンフィルターの斜視図ならびに横断面図である。図6(A)および図6(B)に示される可変ギャップエタロンフィルターの構造は、図5(A)に示される可変ギャップエタロンフィルターの構造と同じである。
すなわち、図6(A)および図6(B)に示される可変ギャップエタロンでは、第2接合膜107は、第2基板30の、第1基板20側の表面の全領域(全面)上に設けられている。また、第1接合膜105は、第1基板20の、第2基板30側の表面の全領域(全面)上に設けられている。なお、図6(A)および図6(B)において、前掲の図面と共通する部分には同じ参照符号を付してある。以下、図7〜図11を用いて、図6(A)および図6(B)に示される可変ギャップエタロンフィルターの製造方法の一例について説明する。
図7(A)〜図7(H)は、接合前における第2基板の製造工程の一例を示す図である。まず、図7(A)に示される工程において、例えば、合成石英ガラス基板の両面を鏡面研磨して、例えば200μmの厚みのガラス基板31を作製する。図7(B)の工程では、ガラス基板31の両面上に、厚み50nmのクロム(Cr)膜を成膜し、Cr膜の上に厚み500nmの金(Au)膜を成膜する。図7(C)に示される工程では、ガラス基板31の両面にレジスト(不図示)を塗布し、レジストをパターニングしてレジストマスクを形成する。そして、レジストマスクを用いて、Au/Cr膜をパターニングする。すなわち、Au膜をヨウ素とヨウ化カリウムの混合液でエッチングし、次に、Cr膜を硝酸セリウムアンモニウム水溶液でエッチングする。
図7(D)に示す工程では、ガラス基板31をフッ酸水溶液に浸し、薄肉部(ダイヤフラム部)34および電極取り出し溝(不図示)の形成領域において、ガラス基板31を、約150μmエッチングする。これにより、薄肉部(ダイヤフラム部)34および電極取り出し溝(不図示)の形成領域における、エッチング後のガラス基板31の厚みは約50μmとなる。図7(E)に示される工程では、ガラス基板31の両面に付いているレジスト(不図示)ならびにAu/Cr膜をそれぞれ除去する。
図7(F)に示す工程では、ガラス基板31の、第1基板20と接合される側の面の全領域(全面)に、第2接合膜107としてのプラズマ重合膜(例えば、ポリオルガノシロキサンを主成分とする膜)を、プラズマCVD法により成膜する。第2接合膜107の厚みは、例えば、100nmである。なお、図1(A)や図5(C)に示されるデバイス構造が採用される場合には、この後、接合膜107をパターニングして、接合領域においてのみ第2接合膜107が残るようにすればよい。
図7(G)の工程では、接合膜107上に、第2電極70用の材料膜であるITO(インジウム錫酸化物)膜を0.1μmの厚さで、スパッタ法を用いて成膜する。その上にレジスト(不図示)を塗布し、レジストをパターニングした後、硝酸と塩酸の混合液で、ITO膜をエッチングする。この結果、第2電極70が形成される。そして、レジスト(不図示)を除去する。なお、電極用の材料膜として、ITO膜以外の膜を使用することもできる。例えば、金等の金属膜を用いてもよい。但し、ITO膜は、透明であることから、放電の有無の確認が行い易いという利点がある。
図7(H)の工程では、接合膜107上にレジスト(不図示)を塗布し、フォトリソグラフィーによって、そのレジストの、ミラー部(ミラー形成領域)に対応する領域のみを除去する。続いて、ミラー材料(誘電体多層膜や金属膜等)を、スパッタ法または蒸着法により成膜する。例えば、基板側から順に、SiO2膜(厚み50nm)、TiO2膜(厚み50nm)、Ag(厚み50nm)を順次、スパッタ法により積層形成する。そして、レジスト(不図示)を除去することにより、ミラー材料がリフトオフされる。この結果、ミラー部のみにミラー材料が残る。このようにして、第2光学膜(第2反射膜)50が形成される。
なお、第2光学膜50の厚みは、例えば、0.1μmである。また、第1基板20に形成される第1光学膜40は、第2光学膜50と同じ材料で構成し、また、その膜厚も、同じに設定する。また、ミラー材料(光学膜の材料)としては、Ag、Al、SiO2、TiO2、Ta2O5等の材料を使用することができる。なお、第2光学膜50の形成後に、電極取り出し口(不図示)に残るガラスの薄膜を、機械的または化学的に除去する工程を設けることができる。
次に、接合前における第1基板20の製造工程の一例について説明する。図8(A)〜図8(F)は、接合前における第1基板の製造工程の一例を示す図である。
まず、図8(A)に示される工程において、合成石英ガラス基板の両面を鏡面研磨し、500μmの厚みのガラス基板17を作製する。次に、ガラス基板17の両面にレジスト(不図示)を塗布し、レジストをパターニングする。パターニングされたレジストをマスクとして、フッ酸水溶液で、ガラス基板17を選択的にエッチングする。これによって、凹部19が形成される。凹部の深さは、約0.5μmである。その後、レジストマスクを除去する。
図8(B)の工程では、ガラス基板17の両面にレジスト(不図示)を塗布し、上面に形成されているレジストをパターニングする。そのパターニングされたレジストをマスクとして、ガラス基板17を、フッ酸水溶液で例えば1μmエッチングする。これによって、ミラー形成用の凹部23と、電極取り出し部用の凹部23’とが形成される。その後、レジストマスクを除去する。
図8(C)の工程では、ガラス基板17の、第2基板30と接合される側の面の全領域(全面)に、第1接合膜105としてのプラズマ重合膜(例えば、ポリオルガノシロキサンを主成分とする膜)を、プラズマCVD法により成膜する。第1接合膜105の厚みは、例えば100nmである。
図8(D)の工程では、ITO膜を0.1μmの厚さでスパッタ法を用いて成膜した後、硝酸と塩酸の混合液によるエッチングを実行して、ITO膜を所定形状に加工する。これによって、第1電極60が形成され、また、引き出し電極62bが形成される。図8(E)の工程では、第1電極60を保護する保護膜61を形成する。保護膜61は、例えば、TEOS膜をプラズマCVD法により、厚み0.1μmで成膜し、そのTEOS膜をパターニングすることによって形成される。TEOS膜のパターニングは、例えば、レジストを使用したリフトオフ法によって行うことができる。
図8(F)の工程では、パターニングされたレジスト(不図示)上に、ミラー材料(誘電体多層膜や金属膜等)を、スパッタ法または蒸着法により成膜する。例えば、基板側から順に、SiO2膜(厚み50nm)、TiO2膜(厚み50nm)、Ag(厚み50nm)を順次、スパッタ法により積層形成する。そして、レジスト(不図示)を除去することにより、ミラー材料がリフトオフされる。この結果、ミラー部のみにミラー材料が残る。このようにして、第1光学膜(第1反射膜)40が形成される。第1光学膜40の厚みは、例えば、0.1μmである。ミラー材料(光学膜の材料)としては、Ag、Al、SiO2、TiO2、Ta2O5等の材料を使用することができる。なお、この後、サンドブラスト法または切削法により、電極取り出し用の貫通穴(不図示)を造りこむ工程を設けることができる。このようにして、接合前の第1基板20が形成される。
次に、第1基板20と第2基板30との接合工程について説明する。図9(A)〜図9(C)は、第1基板と第2基板との接合工程の一例を示す図である。図9(A)の工程では、第2基板30上に形成されている第2接合膜107としてのプラズマ重合膜(ここでは、ポリオルガノシロキサンを主成分とする膜)に活性化エネルギーを与えるために、O2プラズマ処理またはUV処理を実行する。O2プラズマ処理の場合、O2流量が30cc/分、圧力が27Pa、RFパワーが200Wの条件で30秒間処理する。またUV処理の場合、UV光源としてエキシマUV(波長172nm)を用い、例えば、3分間処理する。
図9(B)の工程では、第1基板20上に形成されている第1接合膜105としてのプラズマ重合膜(ポリオルガノシロキサンを主成分とする膜)に活性化エネルギーを与えるために、O2プラズマ処理またはUV処理を実行する。処理条件は、上記条件と同じである。
図9(C)の工程では、活性化エネルギーを与えた後の第1基板20および第2基板30を対向させて配置し、各基板のアライメント(位置合わせ)を行い、各基板20,30を重ね合わせて、荷重をかける。図9(C)では、荷重は、黒塗りの矢印で示されている。このとき、活性化エネルギー付与後の第1接合膜105ならびに第2接合膜107の活性手(未結合手)同士が結合され、これによって、第1接合膜105と第2接合膜107が強固に接合される。このようにして、第1基板20と第2基板30との接合(貼り合わせ、または固着)が完了する。なお、この後に、各チップを分割する工程を設けることができる。
先に説明したように、本実施形態では、支持面Q1の全領域(全面)上に設けられている第1接合膜105のフラットな面と、第2接合膜107のフラットな面とが接触した状態で、第1接合膜105と第2接合膜107とが接合される。つまり、支持部22の支持面Q1の全面を利用して第2基板30を支持すると共に、各接合膜105,107のフラットな面同士の接触によって、第2基板30を支持面Q1上において安定的に支持し、この状態で、各接合膜105,107が接合される。よって、第2基板30が、第1基板20に対して傾くことが抑制される。本実施形態によれば、例えば、水平に保持された各基板20,30を、平行度を維持して貼り合わせることができる。よって、第1光学膜40と第2光学膜50との間の微小ギャップ、例えばナノメートルオーダーのギャップを、高精度に実現することができる。
図10は、シロキサン結合について説明するための図である。図10の下側の図に示されるように、第1接合膜105および第2接合膜107は、シロキサン(Si−O−SiO)結合302を含むSi骨格305と、このSi骨格305に結合する脱離基(CH3基)307とを有することができる。また、上述したオゾンや紫外線(UV)の照射による活性化処理によって、Si骨格305から脱離基307を脱離させて、未結合手304を形成することができる。そして、第1接合膜105の未結合手304と、第2接合膜107の未結合手304とを結合させることによって、第1接合膜105と第2接合膜107とを接合することができる。
ポリオルガノシロキサン等で構成された接合膜105,107は、それ自体が優れた機械的特性(剛性等)を有している。また、この接合膜105,107は、多くの材料に対して特に優れた接着性を示すものである。したがって、ポリオルガノシロキサン等で構成された第1接合膜105および第2接合膜107は、特に強い被着力を示し、その結果として、第1基板20と第2基板30とを強固に接合することができる。
また、ポリオルガノシロキサン等の接合膜105,107は、通常、撥水性(非接着性)を示すが、活性化エネルギーを付与されることにより、容易に有機基を脱離させることができ、親水性に変化し、接着性を発現するが、この非接着性と接着性との制御を、容易かつ確実に行えるという利点もある。
次に、光フィルター300の具体的な構造例について説明する。図11(A)〜図11(C)は、可変ギャップエタロンフィルターの具体的な構造の一例と、その動作を説明するための図である。図11(A)は、駆動電圧を印加しない状態(における可変ギャップエタロンフィルターの断面構造を示す図である。図11(A)に示されるように、第1光学膜40と第2光学膜50との間の初期ギャップはG1に設定されている。初期ギャップG1は、上述のとおり、例えば100nm程度に設定される。また、図11(B)は、第1基板20上に形成される第1光学膜40および第1電極60のレイアウト例を示す図である。図11(C)は、駆動電圧を印加した状態における可変ギャップエタロンフィルターの断面構造を示す図である。図11(C)に示されるように、第1光学膜40と第2光学膜50との間の初期ギャップはG3に変化する。
図11(A)において、第1基板20と例えば一体で、第2基板30を可動に支持する支持部22が形成されている。支持部22は、第2基板30に設けてもよく、あるいは第1基板20および第2基板30とは別体で形成してもよい。
第1基板20および第2基板30の各々は、例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスなどの各種ガラスや、水晶などにより形成することができる。そして、これらの2つの基板20,30は、例えばプラズマ重合膜を用いた表面活性化接合などにより接合されることで、一体化されている。第1基板20および第2基板30の各々は、一辺が例えば10mmの正方形に形成される。また、図11(B)に示される、円形の第1電極60の直径は、例えば5mm程度である。
また、第1基板20は、例えば、厚みが500μmのガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。また、可動基板としての第2基板30は、薄肉部(ダイヤフラム部)34と、厚肉部32および可動部の支持部36を有する。薄肉部(ダイヤフラム部)34が設けられることによって、より小さい駆動電圧によって、第2基板30に所望の撓み(変形)を生じさせることができる。よって、省電力化が実現される。
第1基板20における、第2基板30と対向する対向面のうちの中央の第1対向面に、例えば円形の第1光学膜40が形成されている。同様に、第2基板30は、厚みが例えば200μmのガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。第2基板30の、第1基板20と対向する対向面の中央位置には、第1光学膜40と対向する例えば円形の第2光学膜50が形成されている。
なお、第1光学膜40および第2光学膜50は、例えば直径が約3mmの円形状に形成されている。この第1光学膜40および第2光学膜50としては、例えば、透過率の半値幅も狭く分解能が良好な、AgC等の金属膜を使用することができ、また、誘電体多層膜を使用することもできる。第1光学膜40および第2光学膜50は、例えば、スパッタリングなどの手法により形成することができる。各光学膜の膜厚寸法は、例えば0.03μmに形成されている。本実施形態では、第1光学膜40および第2光学膜50として、例えば、可視光全域を分光できる特性をもつ光学膜を用いることができる。
第1光学膜40および第2光学膜50は、図11(A)に示す電圧非印加状態においては、第1ギャップG1を介して対向配置されている。なお、ここでは第1光学膜40を固定鏡とし、第2光学膜50を可動鏡とするが、逆でもよく、また、双方を可動鏡とすることもできる。
第1基板20の厚み方向からみた平面視において、第1光学膜40の周囲には、第1電極60が形成されている。なお、以下の説明において、平面視とは各基板の基板厚み方向から基板平面を見た場合をいう。同様に、第2基板30上には、第1電極60と対向して第2電極70が設けられている。第1電極60と第2電極70は、第2ギャップG2を介して、対向配置されている。なお、第1電極60および第2電極70の表面は、絶縁膜にて被覆することができる。
図11(B)に示されるように、第1電極60は、平面視で、第1光学膜40にオーバーラップしない。よって、第1光学膜40の光学特性の設計が容易である。このことは、第2電極70ならびに第2光学膜50についても同様である。
また、例えば、第2電極70を共通電位(例えば接地電位)とし、第1電極60に電圧を印加することによって、図11(C)に示すように、各電極間に矢印で示す静電力(ここでは静電引力)F1を生じさせることができる。すなわち、第1電極60および第2電極70は、静電アクチュエーター80を構成する。静電引力F1によって、第1光学膜40と第2光学膜50との間のギャップを、初期ギャップG1よりも小さいギャップG3となるように可変に制御することができる。各光学膜間のギャップの大きさによって透過光の波長が決まる。よって、ギャップを変化させることで透過波長を選択することが可能となる。なお、図11(A)において太線で示されるように、第1電極60には第1配線61が接続されており、また、第2電極70には第2配線71が接続されている。
(第3実施形態)
図12(A)および図12(B)は、可変ギャップエタロンフィルターを用いた光フィルターの構造の一例を示す図である。図4(A)に示すように、光フィルター300としての可変ギャップエタロンフィルターは、互いに対向して配置される第1基板(例えば固定基板)20と、第2基板(例えば可動基板)30と、第1基板20の主面(表面)に設けられる第1光学膜40と、第2基板30の主面(表面)に設けられる第2光学膜50と、各基板によって挟持された、各基板間のギャップ(距離)を調整するためのアクチュエーター(例えば静電アクチュエーターや圧電素子等)80a,80bと、を有する。
なお、第1基板20および第2基板30の少なくとも一方が可動基板であればよく、双方を可動基板とすることも可能である。アクチュエーター80aおよびアクチュエーター80bは各々、駆動部(駆動回路)301aおよび駆動部(駆動回路)301bの各々によって駆動される。また、各駆動部(駆動回路)301a,301bの動作は、制御部(制御回路)303によって制御される。
所定角度θで外部から入射する光Linは、ほとんど散乱されることなく第1光学膜40を通過する。第1基板20に設けられた第1光学膜40と第2基板30に設けられた第2光学膜50との間で、光の反射が繰り返され、これによって、光の干渉が生じ、特定の条件を満たす波長の光のみが強められ、その強められた波長の光の一部は、第2基板30上の第2光学膜50を通過して、受光部(受光素子)400に到達する。干渉によってどの波長の光が強め合うかは、第1基板20と第2基板30との間のギャップG1に依存する。よって、ギャップG1を可変に制御することによって、通過する光の波長帯域を変化させることができる。
この可変ギャップエタロンフィルターを使用すると、図12(B)に示すような分光測定器を構成することができる。なお、分光測定器の例としては、例えば、測色器、分光分析器、分光スペクトラムアナライザー等があげられる。図12(B)に示される分光測定器において、例えば、サンプル200の測色を行う場合には光源100が用いられ、また、サンプル200の分光分析を行う場合には、光源100’が用いられる。
分光測定器は、光源100(あるいは100’)と、複数の波長可変バンドパスフィルター(可変BPF(1)〜可変BPF(4))を備える光フィルター(分光部)300と、フォトダイオード等の受光素子PD(1)〜PD(4)を含む受光部400と、受光部400から得られる受光信号(光量データ)に基づいて、所与の信号処理を実行して分光光度分布等を求める信号処理部600と、可変BPF(1)〜可変BPF(4)の各々を駆動する駆動部301と、可変BPF(1)〜可変BPF(4)の各々の分光帯域を可変に制御する制御部303と、を有する。信号処理部600は、信号処理回路501を有し、必要に応じて、補正演算部500を設けることも可能である。分光光度分布の測定によって、例えば、サンプル200の測色や、サンプル200の成分分析等を行うことができる。また、光源100(100’)としては、例えば、白熱電球、蛍光灯、放電管、LED等の固体発光素子を用いた光源(固体発光素子光源)等を使用することができる。
なお、光フィルター300および受光部400によって、光フィルターモジュール350が構成される。光フィルターモジュール350は、分光測定器に適用できる他、例えば、光通信装置の受信部(受光光学系と受光素子を含む)としても使用可能である。この例については、図5を用いて後述する。本実施形態における光フィルターモジュール350は、光学膜の特性劣化が抑制されて信頼性が高く、また、透過光の波長範囲を広くとることができ、小型軽量で、かつ使い勝手がよいという利点がある。
(第4実施形態)
図13は、光機器の一例である波長多重通信システムの送信機の概略構成を示すブロック図である。波長多重(WDM: Wavelength Division Multiplexing)通信では、波長の異なる信号は干渉し合わないという特性を利用して、波長が異なる複数の光信号を一本の光ファイバー内で多重的に使用すれば、光ファイバー回線を増設せずにデータの伝送量を向上させることができるようになる。
図13において、波長多重送信機800は、光源100からの光が入射される光フィルター300を有し、光フィルター300(上記いずれかのミラー構造が採用されたエタロンフィルターを具備する)からは、複数の波長λ0,λ1,λ2,…の光が透過される。波長毎に送信器311,312,313が設けられる。送信器311,312,313からの複数チャンネル分の光パルス信号は、波長多重装置321にて1つに合わせられて一本の光ファイバー伝送路331に送出される。
本発明は光符号分割多重(OCDM: Optical Code Division Multiplexing)送信機にも同様に適用できる。OCDMは、符号化された光パルス信号のパターンマッチングによってチャンネルを識別するが、光パルス信号を構成する光パルスは、異なる波長の光成分を含んでいるからである。このように、本発明を光機器に適用することによって、光学膜の特性劣化が抑制された、信頼性の高い光機器(例えば、各種センサーや光通信応用機器)が実現される。
以上説明したように、本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、例えば、基板の貼り合わせによって構成される光フィルターにおいて、基板の傾きを抑制して、各基板に設けられる光学膜間の平行度を確保することができる。本発明は、例えば、エタロンフィルターのような干渉型の光フィルターに適用して好適である。但し、この例に限定されるものではなく、本発明は、ミラー構造として、光の反射特性ならびに光の透過特性を併せ持つ光学膜を用いる構造体(素子や機器)全般に適用可能である。
以上、幾つかの実施形態について本発明を説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。