JP5866680B2 - 部分放電位置標定方法及び部分放電位置標定装置 - Google Patents
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Description
また、本発明が解決しようとする第2の課題は、第1の課題に加えて、部分放電源の位置が巻線内部の場合の部分放電位置標定の精度を向上させることにある。
第2判定処理は、前記AE信号の直達波の到達後の低周波成分と高周波成分を識別し、前記低周波成分の到達時間に対する前記高周波成分の到達時間遅れ(以下、高周波成分の到達時間遅れ又は単に到達時間遅れと略称する。)Δtを計測し、前記到達時間遅れΔtが設定値Δts以上か否かに基づいて、前記放電源が前記静止巻線機器の巻線内部か巻線外周面部に位置するかを判定する。
第3判定処理は、前記AE信号をウェーブレット変換して得られる変換波形データに基づいて、前記到達時間遅れΔtを求め、前記到達時間遅れΔtが設定値Δts以上か否かに基づいて、前記放電源が前記静止巻線機器の巻線内部か巻線外周面部に位置するかを判定する。
また、前記放電源が前記静止巻線機器の巻線内部に位置する場合は、上述したように、AE信号の高周波成分の到達時間遅れΔtを計測し、予めデータテーブルなどに設定された巻線内部の低周波成分の設定音速VLSを乗算することにより、放電源から巻線外周表面までの伝搬距離Lcを推定する。また、トリガ信号を起点としてAEセンサに到達する直達波の低周波成分の第1波の到達時間Tは、放電源からAEセンサまでの伝搬距離L(=Lc+Lo)に相関する。そこで、到達時間Tをデータテーブルなどに設定された低周波成分の設定音速VLSを乗算することにより、放電源からAEセンサまでの伝搬距離Lを推定する。そして、先に求めた放電源から巻線外周表面までの伝搬距離Lcを引いて、絶縁材中の伝搬距離Loを求める。
(ステップS1)
高周波変流器12からトリガ信号が入力されるとステップS2以降の処理が行われる。
(ステップS2、S3)
各AEセンサ11(A〜C)からAE信号を取得する。AE信号が取得されない場合、又は信号強度が不十分な場合は、十分な強度のAE信号が取得されるまで、各AEセンサ11(A〜C)の取り付け位置を変更する。
設定された閾値を超える強度のAE信号が取得されたら、パソコン15内のメモリに、例えば、図4の上部に示すようなAE信号の波形を記録する。なお、この波形データはディジタル変換された波形データである。
(ステップS5)
ここで、静止巻線機器である油入変圧器1の部分放電は、巻線内部で起こる部分放電と、巻線の外周表面部で起こる場合に大きく分けることができる。そこで、ステップS5では、取得したAE信号の波形データに基づいて、部分放電の放電源38がタップ巻線35よりも内部か、タップ巻線35よりも外部かを判断する。この判定は、AE信号の直達波の第1波の立ち上り時間αを計測して行う(第1判定処理)。すなわち、本発明の原理は、巻線内部で部分放電が発生した場合は、AE信号の高周波成分が遅れて伝搬されることに基づいている。したがって、直達波の第1波の立ち上り時間αを計測すると、第1波に高周波成分が含まれていれば、立ち上り時間αは短くなる。一方、第1波に高周波成分が含まれていなければ、立ち上り時間αは長くなる。そこで、立ち上り時間の設定値α*(例えば、6μsec)を設定しておき、α≧α*であれば低周波成分が多いことから、放電源38が巻線内部に位置することになる。一方、α<α*であれば放電源38はタップ巻線35の外周表面部に位置すると推定できる。
(ステップS11)
ここで、放電源38の位置が、巻線部の軸方向の巻線部中心部か、巻線上下部かを判別する。この判別は、AE信号の強度及び周波数成分の違いに基づいて行う。AE信号の強度は、複数の巻線を経由する多重複合絶縁を伝搬すると減衰が大であるから、AE信号の強度の低下がみられるときは、多重複合絶縁経由と判別する。一方、軸方向の油中を伝搬の場合は減衰が小である。また、巻線部を伝搬しないで巻線の上部又は下部を伝搬する場合は、少数の複合絶縁を伝搬することになり、この場合は減衰が小である。したがって、多重複合絶縁を伝搬した場合は、AE信号の周波数特性を観察すると、線間ギャップによるピーク周波数成分がAE信号の周波数特性に表れるから、多重複合絶縁経由であると判別でき、放電源38が巻線の中心部に位置すると判別する。これに対して、少数の複合絶縁を伝搬した場合は、ブロードな周波数特性が表れるから、少数複合絶縁経由であると判別でき、放電源38の位置が巻線の上部又は下部に位置すると判別する。ステップS11の判定で、放電源38の位置が巻線部中心であると判別された場合はステップS12に移行し、巻線上下部と判別された場合はステップS15に移行する。
(ステップS12)
ここでは、AE信号に周知のウェーブレット変換を施す。ウェーブレット変換して得られる変換波形データは、図4〜図8の下部に示したものになる。すなわち、ウェーブレット変換で得られる変換波形データは、経過時間軸と、周波数分布と、AE信号強度の情報を備えた波形データである。図4〜図8の下部の波形データにおいて、横軸は経過時間、縦軸は周波数成分、AE信号強度は濃淡で表される。例えば、図5〜図8において長円41で囲った部分は、高周波成分(例えば、100kHz以上)がAEセンサに到達していない時間帯であることが分かる。この点は、それらの図の上部に示したAE信号の波形図と対応している。
ステップS12でウェーブレット変換して得られる変換波形データに基づいて、AE信号の高周波成分の到達時間遅れΔtを求める。なお、到達時間遅れΔtを求めれば、上述したようにステップS5の判定に適用できる。つまり、到達時間遅れΔtが設定値Δts以上か否かに基づいて、放電源38が巻線内部か巻線外周面部に位置するかを判定することができる。
ここでは、ステップS13で求めた高周波成分の到達時間遅れΔtに基づいて放電源38の位置標定をする。まず、トリガ信号が入力されてからAE信号の直達波が各AEセンサ11A〜11Cに到達するまでの到達時間Tを計測する。次に、巻線内の設定音速と、絶縁材である油中の設定音速とに基づいて、各AEセンサ11A〜11Cから放電源38までの距離を演算して放電源の位置を標定する。
L=Lc+Lo=T×VLS (1)
ところで、巻線内部の伝搬距離Lcは、到達時間遅れΔtに相関する。そこで、伝搬距離Lcは低周波の設定音速VLSにより、次式(2)で求めることができる。
Lc=Δt×VLS (2)
式(1)と(2)から、油中の伝搬距離Loは、次式(3)で求まる。
Lo=L−Lc=T×Vc−Δt×VLS (3)
(ステップS15)
ステップS11の判断で、放電源38の位置が巻線部の上又は下部に位置すると判断された場合は、ステップS15において、AE信号の強度及び到達時間Tを確認する。
(ステップS16)
ステップS15の判断を支援するために、放電源38が巻線部の上又は下部に位置する場合は、ステップS3に戻り、巻線部の上又は下部から十分な強度のAE信号が得られるように、AEセンサ11A〜11Cの位置を変更し、ステップS2〜S11の処理を繰り返す。
(ステップS17)
ここにおいて、AE信号の強度及び到達時間遅れΔtを求めて、巻線単位すなわち3次巻線32、2次巻線33、1次巻線34、タップ巻線35のどの部位で部分放電が発生したかを判別する。
(ステップS18)
巻線単位でどの巻線の上下部で部分放電が発生したかを判別した結果に基づいて、上記の式(1)〜(3)に基づいて、同様の処理により巻線上下部の位置標定を行って放電源38の位置を標定して、終了する。
ステップS5の判別で、タップ巻線35の巻線外周表面部に放電源38が位置すると判別した場合は、ステップ20に進んで、ステップS21〜S23の処理を行って油中放電源位置標定を行う。
(ステップS21)
ここで、AE信号にウェーブレット変換を施してウェーブレット変換波形信号を生成する。
(ステップS22)
そして、ウェーブレット変換波形信号に基づいて、トリガ信号が入力されてから放電音が各AEセンサ11A〜11Cに達する到達時間Tを計測する。
(ステップS23)
到達時間Tは、発生源38から油中のみを伝搬して各AEセンサ11A〜11Cの到達した時間であるから、油中の設定音速Vo(=VLS)に基づいて、次式(4)により各AEセンサ11A〜11Cから放電源38までの伝搬距離Lo(LoA〜LoC)をそれぞれ求める。
Lo=T×Vo (4)
そして、求めた伝搬距離Lo(LoA〜LoC)に基づいて、図10で説明した手順で、タップ巻線35の巻線外周表面部の放電源38の位置を標定して終了する。
ステップS24は、適宜選択する付加的な処理であり、ステップS23の放電源38の位置標定が妥当か否かを、スメルの法則を利用して判断する処理である。すなわち、図12に示すように、油中の伝搬距離Loが求まると、AEセンサ11の位置との関係から、タップ巻線の外周表面の放電源の位置が決まり、これにより放電音の伝搬経路Rが決まる。この伝搬経路RとAEセンサ11が取り付けられたタンク壁2の内面とがなす立体角である音波の入射角θiが決まる。この入射角θiがタンク壁2の材質(鉄)により決まる透過率Tにより、全反射する場合は、放電音がAEセンサ11に入射しない。したがって、AEセンサ11の位置を入射角θiが予め設定された範囲θi*内に収まる位置に変更して、再度、放電源の位置標定を実施する。つまり、図12において、伝搬経路R1の場合は透過角θtで透過率Tにより放電音の一部がタンク壁2を透過してAEセンサ11に入射する。しかし、伝搬経路R2の場合は放電音がタンク壁2の内面で全反射し、タンク壁2を透過しないから、AEセンサ11には放電音が入射しない。
2 タンク壁
3 中性点接地線
11(11A〜11C) AEセンサ
12 高周波変流器
13 アンプ
15 パソコン
Claims (6)
- 静止巻線機器の外壁に少なくとも1個の音響センサを装着するとともに、前記静止巻線機器の部分放電を検出する部分放電検出器を装着し、前記部分放電検出器の検出信号をトリガとして前記各音響センサから出力される音響信号を演算処理装置に入力し、前記音響信号を記録するとともに、前記音響信号に基づいて演算処理により前記静止巻線機器の部分放電源の位置を標定する部分放電位置標定方法において、
前記静止巻線機器の部分放電源の位置を標定する前記演算処理は、
前記音響信号の直達波の立ち上り時間αを計測し、前記立ち上り時間αが設定値α*以上か否かを比較して前記放電源が前記静止巻線機器の巻線内部か巻線外周面部に位置するかを判定する第1判定処理と、
前記音響信号の直達波の到達後の低周波成分と高周波成分を識別し、前記低周波成分の到達時間に対する前記高周波成分の到達時間遅れΔtを計測し、前記到達時間遅れΔtが設定値Δts以上か否かに基づいて、前記放電源が前記静止巻線機器の巻線内部か巻線外周面部に位置するかを判定する第2判定処理と、
前記音響信号をウェーブレット変換して得られる変換波形データに基づいて、前記音響信号の低周波成分の到達時間に対する高周波成分の到達時間遅れΔtを求め、前記到達時間遅れΔtが設定値Δts以上か否かに基づいて、前記放電源が前記静止巻線機器の巻線内部か巻線外周面部に位置するかを判定する第3判定処理の少なくとも1つの判定処理を備えてなることを特徴とする部分放電位置標定方法。 - 前記第1乃至第3判定処理の少なくとも1つを実行して得られる前記放電源の位置が巻線内部か巻線外周面部かの判定結果に基づいて、前記静止巻線機器の外壁に少なくとも3個の前記音響センサを装着し、前記部分放電検出器の検出信号が入力されてから前記各音響センサから出力される前記各音響信号の直達波が前記各音響センサに到達するまでのそれぞれの到達時間Tと、前記巻線内の設定音速と、前記巻線と前記外壁との間に設けられた絶縁材の設定音速とに基づいて、前記各音響センサから前記放電源までの距離を演算して前記放電源の位置を標定する位置標定処理を備えることを特徴とする請求項1に記載の部分放電位置標定方法。
- 前記第1判定処理は、前記立ち上り時間αが前記設定値α*以上のとき前記放電源が前記静止巻線機器の巻線内部に位置し、前記立ち上り時間αが設定値α*未満のとき前記放電源が前記静止巻線機器の巻線の外周面部に位置するものと判定し、
前記第2又は第3判定処理は、前記到達時間遅れΔtが設定値Δts以下のとき前記放電源が前記静止巻線機器の巻線の外周面部に位置し、前記到達時間遅れΔtが前記設定値Δtsを越えたとき前記放電源が前記静止巻線機器の巻線内部に位置するものと判定し、
前記位置標定処理は、前記放電源が前記静止巻線機器の巻線外周面部に位置する場合は、前記各到達時間Tと、前記巻線と前記静止巻線機器の外壁との間に設けられた絶縁材の設定音速に基づいて前記各音響センサから前記放電源までの距離を演算して前記放電源の位置を標定し、
前記放電源が前記静止巻線機器の巻線内部に位置する場合は、前記各到達時間遅れΔtと、巻線内部中の設定音速VLSとから、前記放電源から巻線外周表面までの各伝搬距離Lcを推定し、前記各到達時間Tと設定音速VLSから前記放電源から前記各音響センサまでのそれぞれの伝搬距離Lを推定し、前記各伝搬距離Lから前記各伝搬距離Lcを差し引いて絶縁材中の各伝搬距離Loを分離して求め、前記各伝搬距離LoとLcに基づいて、前記放電源の位置を標定することを特徴とする請求項2に記載の部分放電位置標定方法。 - 前記位置標定処理は、前記放電源が前記静止巻線機器の巻線外周面部に位置する場合、さらにスネルの法則を適用して前記放電源の位置の合理性を確認することを特徴とする請求項3に記載の部分放電位置標定方法。
- 静止巻線機器の外壁に装着される少なくとも3個の音響センサと、前記静止巻線機器の中性点の接地線にクランプされる部分放電を検出する高周波変流器と、前記各音響センサから出力される音響信号と前記高周波変流器の出力信号がトリガ信号として入力される演算処理装置とを備え、前記演算処理装置は前記トリガ信号に基づいて前記音響信号を記憶部に記録するとともに、前記トリガ信号と前記音響信号に基づいて前記静止巻線機器の部分放電源の位置を標定する演算処理部を有してなる部分放電位置標定装置において、
前記演算処理装置は、前記音響信号の直達波の立ち上り時間αを計測し、前記立ち上り時間αが設定値α*以上か否かを比較して前記放電源が前記静止巻線機器の巻線内部か巻線外周面部に位置するかを判定する第1処理部と、
前記音響信号の直達波の到達後の低周波成分と高周波成分を識別し、前記低周波成分の到達時間に対する前記高周波成分の到達時間遅れΔtを計測し、前記到達時間遅れΔtが設定値Δts以上か否かに基づいて、前記放電源が前記静止巻線機器の巻線内部か巻線外周面部に位置するかを判定する第2処理部と、
前記音響信号をウェーブレット変換して得られる変換波形データに基づいて、前記音響信号の低周波成分の到達時間に対する高周波成分の到達時間遅れΔtを求め、前記到達時間遅れΔtが設定値Δts以上か否かに基づいて、前記放電源が前記静止巻線機器の巻線内部か巻線外周面部に位置するかを判定する第3処理部の少なくとも1つの処理部を備え、
前記第1乃至第3処理部の少なくとも1つを実行して得られる前記放電源の位置が巻線内部か巻線外周面部かの判定結果に基づいて、前記トリガ信号が入力されてから前記音響信号の直達波が前記各音響センサに到達するまでの到達時間Tと、前記巻線内の設定音速と、前記巻線と前記外壁との間に設けられた絶縁材の設定音速とに基づいて、前記各音響センサから前記放電源までの距離を演算して前記放電源の位置を標定する位置標定処理部を備えることを特徴とする部分放電位置標定装置。 - 前記第1判定処理は、前記立ち上り時間αが前記設定値α*以上のとき前記放電源が前記静止巻線機器の巻線内部に位置し、前記立ち上り時間αが設定値α*未満のとき前記放電源が前記静止巻線機器の巻線の外周面部に位置するものと判定し、
前記第2又は第3判定処理は、前記到達時間遅れΔtが設定値Δts以下のとき前記放電源が前記静止巻線機器の巻線の外周面部に位置し、前記到達時間遅れΔtが前記設定値Δtsを越えたとき前記放電源が前記静止巻線機器の巻線内部に位置するものと判定し、
前記位置標定処理部は、前記放電源が前記静止巻線機器の巻線外周面部に位置する場合は、前記到達時間Tと、前記巻線と前記静止巻線機器の外壁との間に設けられた絶縁材の設定音速に基づいて前記各音響センサから前記放電源までの距離を演算して前記放電源の位置を標定し、
前記放電源が前記静止巻線機器の巻線内部に位置する場合は、前記到達時間遅れΔtと、巻線内部中の設定音速VLSとから、前記放電源から巻線外周表面までの伝搬距離Lcを推定し、前記到達時間Tと設定音速VLSから前記放電源から前記音響センサまでの伝搬距離Lを推定し、前記伝搬距離Lから前記伝搬距離Lcを差し引いて絶縁材中の伝搬距離Loを分離して求め、前記伝搬距離LoとLcに基づいて、前記放電源の位置を標定することを特徴とする請求項5に記載の部分放電位置標定装置。
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