JP5860592B2 - 診断の方法を行うためのニトロ化タンパク質又はペプチド配列の使用 - Google Patents

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Description

本発明は、診断の方法を行うためのニトロ化タンパク質又はペプチド配列の使用に関する。
本発明は、より具体的には、ニトロ化ストレスを伴うか又はそれによる関連病的状態の重篤度及び進行度の状態の診断を行うためのニトロ化タンパク質又はペプチド配列の使用に関する。
酸化ストレスは、酸化的な活性酸素種(ROS)及び活性窒素種(RNS)による細胞構成成分の攻撃の一種である。これらの種は、定義によると、フリーラジカルである。関連性により、過酸化水素(H2O2)はROSとみなされる。なぜなら、鉄(イオン形態)の存在下で、これは2つのヒドロキシラジカル(OH・)に変換されるからである(Haber-Weiss反応)。
ROS及びRNSの生成は、好気的条件で生存し、それ自体で酸化ストレスの状況を構成しない全ての生物にとって通常のことである。なぜなら、細胞は、酵素(スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼなど)及び小分子(ビタミンE,ビタミンC、グルタチオンなど)を含む、ROSに対する複合解毒機構を、自由に使用できるように有するからである。生理条件下で、スーパーオキシドアニオン(O2 -)がNADPHオキシダーゼ(NOX)により、そして一酸化窒素(NO・)がNOシンターゼのファミリーにより実質的に生成される。
酸化ストレスは、防御機構がROS及びRNSにより一旦壊滅させられると、病気の状態になる。これは、例えば以下のような原因による場合がある:
- フリーラジカル又は酸素含有反応性種の細胞への導入(呼吸系、消化管又は粘膜を介する体内への化学汚染物質の侵入)
- 低酸素症又は虚血-再潅流型のプロセスにより誘導されるROS及びRNSの過剰生成、これはいくつかの移植片拒絶又はある種の酸化促進化学物質の存在の原因である。
- 例えば低酸素症、低血糖又はミトコンドリア呼吸鎖のある種の複合体に作用する生体異物の後のミトコンドリア呼吸鎖の機能不全。
- キサンチンオキシダーゼの活性化
- 例えば炎症性反応の惹起の後のNOS IIの発現又は活性の増加。
- 防御機構の欠陥、例えば防御機構の酵素の1つの変異若しくは生体異物による不活性化、又は抗酸化ビタミン(ビタミンC及びE)の1つの欠乏。
- 細胞又は器官への高度に反応性の分子の導入、例えばナノ粒子(非常に小さく、かつ高度に開発された特異的表面を有する)。これらのナノ粒子が多数ある場合、マクロファージはもはやそれらに対処できず、それらの酸化剤を生物内に放出して、悪化させる炎症性反応を引き起こし得る。
酸化ストレスの機能的な結果は、その強度に依存して大きく変動する。最近の研究は、スーパーオキシドイオンの一酸化窒素に対する比(O2 -/NO)が決め手となることを示す。実際に、この比が≦1である場合、O2 -はNOと優先的に反応し、転写後改変を誘導する窒素含有ラジカル種(RNS)、ニトロソニウム(NO+)及びペルオキシナイトライト(ONOO-)の出現を可能にする。これらのRNSはそれぞれ、タンパク質のニトロソ化(R-Cys-SH→R-Cys-SNO)及びニトロ化(R-Tyr→R-Tyr-NO2)を誘導する。ROS種により誘導される改変とは対照的に、RNS種により誘導されるものは可逆的である。
O2 -/NOの比が>1である場合、O2・-イオン、次いでOH・-「フリー」ラジカルは、タンパク質、脂質及び核酸の不可逆的な酸化を誘導し、これは、多数の血漿マーカーにより測定できる。
これらの改変は、さらに、酸化ストレスに対する細胞防御の機構の1つであるNOの生成を反映する。よって、これは、NO+及び細胞膜を通って拡散可能であるONOO-を「吸収」する細胞の能力が一旦生じると、これらはそれぞれ血漿タンパク質を含む細胞外タンパク質をニトロソ化及びニトロ化できる。
酸化及びニトロ化のストレスは、炎症及び突然変異誘発における因子である。これらは、癌の主な原因の1つともみなされ、神経変性疾患(パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、ALS)並びに1型及び2型糖尿病、心血管疾患、脳血管発作、リウマチ性関節炎又は白内障のようないくつかのより一般的な病的状態において役割を担うと考えられている。
現在のところ、循環マーカーのアッセイによりニトロ化ストレスを特異的かつ定量的に決定するための方法はない。
Khanら(Khanら Biochem J, 1998, 330, 795〜801)は、全てのタンパク質のニトロ化されたチロシンを認識する抗体を用いて、チロシン残基に基づいてニトロ化タンパク質をアッセイする方法(ELISAアッセイ)を開示している。
Khanらにより記載される方法は、ニトロ化タンパク質の定性的アッセイを提供するが、循環タンパク質のニトロ化度の正確かつ信頼できる指標を与えないことが明確に記載されている。実際に、Khanらは、特定のタンパク質ではなく全てのニトロ化タンパク質を認識できる抗体の使用を開示している。
タンパク質に関連するNOの量を検出する方法は、従来技術において記載されている。
特に、出願WO/1998/029452は、タンパク質のニトロシル化及びニトロ化に関連する病的状態を治療するための治療薬として用いるための、ニトロ化チロシン、特にNO輸送タンパク質のニトロ化チロシンを認識する抗体について記載している。
さらに、米国出願第2005/244905号は、チロシンに基づいてフィブリノゲンのニトロ化度を検出することにより患者における冠状動脈疾患の危険性を診断する方法を記載している。この方法は、抗体の対を用いてニトロ化フィブリノゲンの検出を可能にする:全てのニトロ化チロシンを検出する捕捉抗体と、窒素を含むか又は含まないかによらずフィブリノゲンを特異的に検出する抗体。
チロシンに基づいてニトロ化タンパク質を検出する方法の他の例も、従来技術において記載されている。
例えば、国際出願WO 03/076946は、芳香族ニトロ化アミノ酸を含有する特定のエピトープを検出できる免疫学的「パートナー」の使用について記載している。より具体的には、WO 03/076946は、チロシンがニトロ化されているII型コラーゲンのエピトープを認識する特異抗体の使用について記載している。この文献に記載される抗体は、タンパク質、より具体的には2.2型コラーゲンの酸化の程度を、ニトロ化ストレスに関連する病的状態の範囲内で評価する診断目的のために用いられる。しかし、WO 03/076946は、ニトロ化ストレスに関連する病的状態の進行又は進行度の状態を検出できることについて全く記載していない。
これらの文献は、ニトロ化タンパク質を認識する抗体を開示しているが、ニトロ化された残基、特にアルブミンのチロシン残基Y138及びY411、又は循環タンパク質中の規定された位置のいずれのその他の残基に対して指向された特異抗体の作製に関して言及していない。
アルブミンのニトロ化については、従来技術に記載されている。特に、Jiaoら(Analytical Biochem, 2001, 293, 43〜52)は、アルブミンのニトロ化残基を開示している。Jiaoらは、ペルオキシナイトライトによるアルブミンのインビトロニトロ化の後のアルブミンのY138及びY411残基のニトロ化、及び質量分析によるニトロ化部位の同定について記載している。
Malan, P. G.ら(1970) Biochemistry 9(16), 3205〜3214及びSokolovskyら(1966) Biochemistry 5(11), 3582〜3589は、ニトロ化剤としてテトラニトロメタンを用いるタンパク質のインビトロニトロ化の方法について記載している。
本発明のある態様は、ニトロ化ストレスによるか若しくはそれに関連するか又はそれを引き起こす病的状態の重篤度及び進行度の状態を診断する方法を提供することである。
本発明の別の態様は、生理学的タンパク質のニトロ化度のインビトロ定量アッセイの方法を提供することである。
本発明の別の態様は、ニトロ化ストレスの影響の下で、生理学的タンパク質のニトロ化チロシンの位置を決定することを可能にすることである。
本発明は、特定のニトロ化タンパク質又は生理学的ペプチド配列のチロシン残基のニトロ化度の、生物学的試料中、特にインビトロでの定量アッセイの、ニトロ化ストレスに関連する慢性又は急性の病的状態の重篤度及び進行度の状態をインビトロで診断する方法を行うための使用に関する。
本発明は、タンパク質の生理学的ニトロ化度の値と、ニトロ化ストレスに関連する病的状態の重篤度及び進行度の状態との間に相関関係があることを予期せぬことに見出したことに基づく。
本発明において、「ニトロ化度の定量アッセイ」とは、特定のニトロ化タンパク質の量を正確に決定することからなる行為を意味する。特定のニトロ化タンパク質のニトロ化度は、特定のニトロ化タンパク質の量の、ニトロ化されている特定のタンパク質及びニトロ化されていない特定のタンパク質の合計量に対する比を確立することにより定量される。この値は、よって、0と1の間である。
本発明において、「特定のタンパク質又は生理学的ペプチド配列」とは、一般的に人による外からの介在なしに生物内で合成される任意のタンパク質、ペプチド、タンパク質若しくはペプチドのフラグメント又は少なくとも2アミノ酸の任意の既知の配列のことをいう。用語「特定のタンパク質又は生理学的ペプチド配列」は、「特定の生理学的タンパク質」又は「特定の生理学的ペプチド配列」に相当することも理解される。本発明のある実施形態によると、問題の特定のタンパク質は、血液、脳脊髄液又は尿中で生じる循環タンパク質である。その他のタンパク質は、本発明から除外されない。
タンパク質は、以下、抗原性特性を有する、すなわち免疫系の反応を可能にでき、よって抗体を生じることができる任意のアミノ酸配列も意味する。これらの抗体は、よって、それらの合成を可能にした上記のタンパク質を認識できる。
「ニトロ化」とは、本発明において、タンパク質又はペプチド配列に共有結合した-NO2基の存在を規定する。また、ニトロ化タンパク質は、1つ以上のチロシンがそのフェノール基の3位に-NO2基を有するタンパク質を規定する。これらの-NO2基は、特定のタンパク質のある特定のチロシン残基と反応できるペルオキシナイトライトの生成の後に、インビボでタンパク質に結合する。
慢性病的状態とは、以下、一般的に予後が悪く、関連病的状態の形で合併症(これが次いで急性又は慢性となり得る)がしばしば伴う長期の任意の障害を意味する。急性病的状態は、比較的短期間の後に治癒又は死亡の結果となる種々の重篤度の症状により現れる任意の障害を意味する。
「病的状態の重篤度及び進行度の状態」とは、本発明において、該病的状態の特定の状態を説明することを特徴とする規定された段階として規定され、該状態は、該病的状態の特徴である症状がないことから、最も進行した状態、すなわち記載される全ての症状がこれまでのところ蓄積していることまでの範囲であり得る。病的状態の重篤度及び進行度の状態の特徴づけは、該病的状態の臨床的及び生理病理学的知識に基づく。
本発明において、相関関係が、ニトロ化度とニトロ化ストレスの間で規定される。ニトロ化ストレスは、健康であると示された個体で生成されるペルオキシナイトライト(ONOO-)の量に対するペルオキシナイトライトの過剰生成を規定する。このことは、生物内でのペルオキシナイトライトの量が多いほど、ペルオキシナイトライトに由来するニトロ化種がより多くタンパク質をニトロ化できることを意味する。また、ニトロ化ストレスが高いほど、より多くのタンパク質がニトロ化され得る。
本発明の有利な実施形態によると、定量アッセイは、上記の特定のニトロ化タンパク質又は生理学的ペプチド配列の生理学的にニトロ化されたチロシンを認識する少なくとも1つの特異抗体により行われる。
「ニトロ化チロシン」とは、本発明において、チロシンの芳香環への-NO2基の付加の後の改変されたチロシン残基を意味する。このようにチロシン残基上に存在するNO2は、好ましくは3位にある。用語「チロシン」及び「チロシン残基」は、本発明において、問題のアミノ酸のことをいうために均等に用いられる。
本発明において、「ニトロ化チロシンを認識する特異抗体」との表現は、ニトロ化チロシン残基を含む特異的又は特定の免疫原性アミノ酸配列を認識する抗体のことをいう。認識は、特異的であるといわれ、これは、ニトロ化されていないチロシン残基を含む免疫原性アミノ酸配列が該特異抗体により認識されず、ニトロ化されているものであるとしてもチロシン又はチロシン残基を含む、該特異的又は特定の免疫原性アミノ酸配列とは異なる免疫原性アミノ酸配列が、該特異抗体により認識されないことを意味する。
本発明の別の有利な実施形態によると、特定のニトロ化生理学的タンパク質又はペプチド配列は、好ましくは、特に血漿中の循環タンパク質であり、特に以下のタンパク質:アルブミン、プレアルブミン、ビタミンD結合タンパク質(VDBP)、トランスフェリン、セルロプラスミン、レチノール結合タンパク質(RBP)、インスリン、ヘモグロビン、βアクチン、赤血球陰イオン輸送体のバンド3タンパク質、赤血球スペクトリンのβ鎖、フィブロネクチン前駆体、フィブリノゲンのβ鎖及び赤血球膜タンパク質バンド4.1から選択される。
「循環タンパク質」とは、本発明において、血液、血漿及び可能であればリンパ、脳脊髄液、唾液又は尿において天然に生じるタンパク質として規定される。
本明細書に記載される上記のタンパク質:アルブミン、プレアルブミン、ビタミンD結合タンパク質(VDBP)、トランスフェリン、セルロプラスミン、レチノール結合タンパク質(RBP)、インスリン、ヘモグロビン、βアクチン、陰イオン輸送体バンド3タンパク質、赤血球スペクトリンのβ鎖、フィブロネクチン前駆体、フィブリノゲンのβ鎖及び赤血球膜タンパク質バンド4.1は、ヒト又は動物の血液中に存在する循環タンパク質であり、当業者に知られる標準的な技術により精製又はインビトロで生成できる。
本発明において記載されるプレアルブミンは、一般的にトランスサイレチンともよばれる。
本発明において、βアクチンはアクチンβともよばれる。
ヘモグロビンは、4つのサブユニット:ヘモグロビンαの2つのサブユニット及びヘモグロビンβの2つのサブユニットを含むことを特徴とするタンパク質である。
赤血球陰イオン輸送体のバンド3タンパク質は、CD233抗原に相当することにも注意されたい。
ニトロ化されていない形態での本発明に関与するタンパク質は、以下の配列で表される:アルブミンは配列番号1の配列で表され、トランスサイレチンは配列番号2の配列で表され、VDBPは配列番号3の配列、トランスフェリンは配列番号4の配列、セルロプラスミンは配列番号5の配列、RBPは配列番号6の配列、インスリンは配列番号7の配列、ヘモグロビンαは配列番号8の配列、ヘモグロビンβは配列番号9の配列、βアクチンは配列番号10の配列、赤血球陰イオン輸送体のバンド3タンパク質は配列番号11の配列、赤血球スペクトリンのβ鎖は配列番号12の配列、フィブロネクチン前駆体は配列番号13の配列、フィブリノゲンのβ鎖は配列番号14の配列、赤血球膜タンパク質バンド4.1は配列番号15の配列により表される。
本発明において、配列番号1〜配列番号15の配列で表される非ニトロ化形態の上記のタンパク質は、上記の配列の変異形若しくはアイソフォーム、又は該タンパク質と少なくとも90%、より具体的には100%の配列同一性を有する任意のタンパク質によっても表される。
本発明の別の好ましい実施形態によると、ニトロ化ストレスに関連する慢性又は急性の病的状態は、以下の群に属する:炎症性疾患及び自己免疫疾患、感染性疾患、神経変性疾患、低酸素症及び虚血性疾患、1型及び2型糖尿病、代謝障害、甲状腺機能亢進症及び甲状腺機能低下症、心血管及び呼吸器疾患、並びに癌。
ある好ましい実施形態において、本発明におけるニトロ化ストレスに関連する慢性又は急性の病的状態は、以下のものに相当する:
- なかでもパーキンソン病、アルツハイマー病、筋委縮性側策硬化症、多発性硬化症、脳室周囲白質軟化症又はクロイツフェルト-ヤコブ病を含む神経変性疾患、
- なかでも冠動脈疾患、心筋梗塞、脳血管発作、ショック又は妊娠高血圧腎症及び子癇を含む虚血性疾患、
- 慢性閉塞性心筋症、喘息、肺気腫、ニコチン中毒、線維性肺症、睡眠時無呼吸症候群、出産前若しくは新生児低酸素症、及び周産期無酸素に関連する脳症のような低酸素に関連する疾患、
- 1型及び2型糖尿病、並びにインスリン抵抗性、新生児低血糖症、管理に乏しいか又は治療されなかった糖尿病において生じる低血糖症、より一般的には、限定されないが、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性ニューロパチー、糖尿病性動脈症及び糖尿病性心疾患のような糖尿病の全ての合併症、
- なかでもアテローム性動脈硬化症、心不全及び代償不全、又は動脈性高血圧及び肺動脈高血圧を含む心血管疾患、
- 骨髄、腎臓、心臓、心臓と肺、及び肝臓の移植のような移植患者での合併症、
- リウマチ性多発性関節炎、骨関節炎、強直性脊椎炎、強皮症、散在性エリテマトーデス又はその他のいずれの形態の狼瘡、シェーグレン症候群、グッドパスチャー症候群、側頭動脈炎、サルコイドーシス、多発性硬化症、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、天疱瘡、多発性筋炎、線維筋痛症などのような、感染が起源であるか又はそうでない炎症性疾患及び自己免疫疾患。
本発明の別の好ましい実施形態において、ニトロ化ストレスに関連する慢性又は急性の病的状態は、上記の病的状態に相当するが、出産前又は新生児低酸素症、門脈周囲無酸素に関連する脳症及び新生児低血糖症を除く。
言い換えると、本発明のさらにより好ましい実施形態は、以下のものに相当する本発明におけるニトロ化ストレスに関連する慢性又は急性の病的状態について記載する:
- なかでもパーキンソン病、アルツハイマー病、筋委縮性側策硬化症、多発性硬化症、脳室周囲白質軟化症又はクロイツフェルト-ヤコブ病を含む神経変性疾患、
- なかでも冠動脈疾患、心筋梗塞、脳血管発作、ショック又は妊娠高血圧腎症及び子癇を含む虚血性疾患、
- 慢性閉塞性心筋症、喘息、肺気腫、ニコチン中毒、線維化性肺疾患、睡眠時無呼吸症候群、のような低酸素に関連する疾患、
- 1型及び2型糖尿病、並びに2型糖尿病に先行するインスリン抵抗性、管理に乏しいか又は治療されなかった糖尿病において生じる低血糖症、より一般的には、限定されないが、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性ニューロパチー、糖尿病性動脈症及び糖尿病性心疾患のような糖尿病の全ての合併症、
- なかでもアテローム性動脈硬化症、心不全及び代償不全、又は動脈性高血圧及び肺動脈高血圧を含む心血管疾患、
- 骨髄、腎臓、心臓、心臓及び肺及び肝臓の移植のような移植患者での合併症、
- リウマチ性多発性関節炎、骨関節炎、強直性脊椎炎、強皮症、散在性エリテマトーデス又はその他のいずれの形態の狼瘡、シェーグレン症候群、グッドパスチャー症候群、側頭動脈炎、サルコイドーシス、多発性硬化症、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、天疱瘡、多発性筋炎、線維筋痛症などのような、感染が起源であるか又はそうでない炎症性疾患及び自己免疫疾患。
本発明の別の有利な実施形態によると、本発明に関与する上記の特定のニトロ化タンパク質又は生理学的ペプチド配列は、ニトロ化アルブミンである。
本発明の別の有利な実施形態によると、上記の特にインビトロでの定量アッセイは、アルブミンのニトロ化Y138チロシン残基を特異的に認識する特異抗体、特にモノクローナル抗体により行われる。
「Y138チロシン残基」とは、本発明において、ヒトアルブミンの138位のチロシンを意味する。本発明は、その他の非ヒト哺乳動物のアルブミンにおける同等の位置のチロシンにも関する。
本発明において、ヒトアルブミンのY138残基(このアルブミンは、配列番号1の配列によりそのニトロ化されていない形で表される)は、配列番号16の配列のペプチド中にニトロ化された形で含まれる。
本発明の別の有利な実施形態によると、上記の特にインビトロでの定量アッセイは、アルブミンのニトロ化Y411チロシン残基を特異的に認識する特異抗体、特にモノクローナル抗体により行われる。
「Y411チロシン残基」とは、本発明において、ヒトアルブミンの411位のチロシンを意味する。本発明は、その他の非ヒト哺乳動物のアルブミンにおける同等の位置のチロシンにも関する。
本発明において、ヒトアルブミンのY411残基(このアルブミンは、配列番号1の配列によりそのニトロ化されていない形で表される)は、配列番号17の配列のペプチド中にニトロ化された形で含まれる。
本発明は、Y138チロシン残基でニトロ化アルブミンを特異的に認識する抗体、特にモノクローナル抗体にも関する。
好ましい実施形態によると、本発明は、ブダペスト条約に従ってCNCM (Collection Nationale de Culture de Microorganismes, Institut Pasteur, 25, rue du Docteur Roux, 75724 Paris CEDEX 15, France)に20009年1月8日に、受託番号CNCM I-4111で寄託されたハイブリドーマにより分泌される上記のようなモノクローナル抗体について記載する。
上記のモノクローナル抗体は、以下の実験部分に記載される手順に従って配列番号16のペプチドによりマウスを免疫化することにより得られる。上記の抗体は、以下、13H10-3G12-3A6抗体又は13H10抗体(クローン)ともよばれる。このモノクローナル抗体は、IgG2bのアイソタイプである。
本発明は、Y411チロシン残基でニトロ化アルブミンを特異的に認識する抗体、特にモノクローナル抗体にも関する。
好ましい実施形態によると、本発明は、ブダペスト条約に従ってCNCM (Collection Nationale de Culture de Microorganismes, Institut Pasteur, 25, rue du Docteur Roux, 75724 Paris CEDEX 15, France)に20009年1月8日に、受託番号CNCM I-4110で寄託されたハイブリドーマにより分泌される上記のようなモノクローナル抗体について記載する。
上記のモノクローナル抗体は、以下の実験部分に記載される手順に従って配列番号17のペプチドによりマウスを免疫化することにより得られる。上記の抗体は、以下、2F3-2E2抗体又は2F3抗体(クローン)ともよばれる。このモノクローナル抗体は、IgG1のアイソタイプである。
本発明の抗体は、ポリクローナル及びモノクローナル抗体の両方である。
本発明の2つの抗体は、より具体的にはモノクローナル抗体である。本発明において用語「抗体」は、抗体に由来する全てのフラグメント、特に特定のニトロ化タンパク質についての同じ抗原特異性を実質的に有する上記のモノクローナル抗体のフラグメントを含む。これらのフラグメントは、抗体フラグメント(すなわちFab、F(ab')2、CDRなど)、多機能性抗体、単鎖抗体(scFv)などを含む。本発明の抗体は、動物の免疫化及び脾臓細胞の回収により細胞融合によりハイブリドーマを生成することを含む通常の方法により生成できる。本発明の抗体は、有利には、モノクローナル抗体の混合物の形態で用いることができる。
モノクローナル抗体の生成方法は、当業者に知られている。これらの方法は、通常、非ヒト動物の抗原での免疫化、その後、動物からの胸腺細胞の回収、これを不死化細胞、通常は骨髄腫細胞と融合させることを含む。得られるハイブリドーマは、モノクローナル抗体を生成する。
本発明の有利な抗体は、非ヒト動物を、アルブミンの実質的に純粋なニトロ化Y138及びY411チロシンを含む配列の特定のペプチドにより免疫化することにより調製される。これらのペプチドは、以下の配列を有する:
- EETFLKK(Y138-NO2)LYEIARR:Y138チロシンを含み、配列番号16の配列で表される、
- LVR(Y411-NO2)TKKV:Y411チロシンを含み、配列番号17の配列で表される。
上記のペプチドは新規である。
本発明は、ブダペスト条約に従ってCNCM (Collection Nationale de Culture de Microorganismes, Institut Pasteur, 25, rue du Docteur Roux, 75724 Paris CEDEX 15, France)に20009年1月8日に、受託番号CNCM I-4111で寄託されたハイブリドーマを提供することも目的とする。
さらに、本発明は、ブダペスト条約に従ってCNCM (Collection Nationale de Culture de Microorganismes, Institut Pasteur, 25, rue du Docteur Roux, 75724 Paris CEDEX 15, France)に20009年1月8日に、受託番号CNCM I-4110で寄託されたハイブリドーマについて記載する。
これらの2つのハイブリドーマは新規である。これらの2つのハイブリドーマを得る方法は、以下の実施例に記載する。
本発明は、個体からの生物学的試料においてニトロ化ストレスに関連する慢性又は急性の病的状態の重篤度及び進行度の状態をインビトロで診断する方法を提供することも目的とし、該方法は:
- 個体からの生物学的試料における、第1の特定のニトロ化タンパク質又は生理学的ペプチド配列のニトロ化度の定量的アッセイと、
- 前記第1の特定のニトロ化タンパク質又は生理学的ペプチド配列の濃度を、同じ個体からの生物学的試料から得られるニトロ化されている前記第1の特定のタンパク質又は生理学的ペプチド配列とニトロ化されていない前記第1の特定のタンパク質又は生理学的ペプチド配列との合計濃度と比較することによる、前記第1の特定のタンパク質又は生理学的ペプチド配列のニトロ化度の定量と、
- 前記第1の特定のタンパク質又は生理学的ペプチド配列のニトロ化度の、前記慢性又は急性の病的状態に罹患していない個体からの生物学的試料から得られる第2の特定のタンパク質又は生理学的ペプチド配列のニトロ化度との比較であって、
・前記第2の特定のタンパク質又は生理学的ペプチド配列は、前記第1の特定のタンパク質又は生理学的ペプチド配列の変異形若しくはアイソフォームであるか、又は前記第1の特定のタンパク質又は生理学的ペプチド配列と少なくとも90%、特に100%のアミノ酸配列同一性を有し、
・前記第1の特定のタンパク質又は生理学的ペプチド配列は、前記第2の特定のタンパク質又は生理学的ペプチド配列中の同等の位置にある少なくとも1つのチロシン残基にてニトロ化されている
比較と、
- 先行する段階で行われる比較からの、前記慢性又は急性の病的状態の重篤度及び進行度に相当し得る個体のニトロ化ストレスの程度の推論と
を含む。
この方法は、生理学的にニトロ化される残基と同等のチロシン残基上でのニトロ化を可能にするタンパク質のインビトロニトロ化の方法を本発明者らが見出したことに基づく。
特定のニトロ化タンパク質のニトロ化度は、特定のニトロ化タンパク質の量の、ニトロ化されている特定のタンパク質とニトロ化されていない特定のタンパク質との合計量に対する比を確立することにより定量される。この値は、よって、理想的には0〜1の間である。
「第1の生理学的タンパク質」とは、問題の個体、すなわち検査される個体からの生物学的試料から採取される、調査される生理学的タンパク質に相当する任意の生理学的タンパク質を意味する。
「第2の生理学的タンパク質」は、上記の第1の特定のタンパク質と少なくとも90%、より具体的には100%の配列同一性を有するタンパク質を規定し、該第2のタンパク質は、第1の特定のタンパク質を得た個体とは異なる個体からの、同じ性質又は異なる性質の生物学的試料から得られる。特に、第2の特定のニトロ化タンパク質を得る個体は、ニトロ化ストレスに関連する上記の病的状態に罹患していない個体に相当する。
特定のタンパク質の「変異形」又は「アイソフォーム」は、そのアミノ酸配列が上記の特定のタンパク質のものと近く、問題のタンパク質と少なくとも90%、より具体的には100%の配列同一性を有し、該問題のタンパク質と一般的には同じ生物学的機能を有する、1つの同じ野生型又は変異遺伝子によりコードされる任意のタンパク質、ペプチド又はポリペプチドを規定する。よって、遺伝子変異に由来し、機能の増加又は損失を示す変異形は除外されない。これらの変異形又はアイソフォームは、例えば、1つの同じ遺伝子の選択的スプライシング、又はその配列が異なったいくつかのホモログ遺伝子の発現の結果であり得る。
第1の生理学的タンパク質及び第2の生理学的タンパク質は、1つ以上のチロシン残基のニトロ化又は非ニトロ化について以外は同じタンパク質であり得る。
第1及び第2のタンパク質の間のチロシンの「同等の位置」とは、本発明において、2つのタンパク質を標準的な配列アラインメント手順(Needleman-Wunschアルゴリズム、Smith-Watermanアルゴリズムなど)に従って整列させたときに、これらの2つの残基が同じ位置になるような、第2の特定のタンパク質中のチロシンの位置に相当する第1の特定のタンパク質のアミノ酸配列中の位置を意味する。より具体的には、これは、2つのタンパク質が等しいサイズでないとしても、アラインメントの後に、2つの残基が周囲の配列に対して同一の位置に見出されることを意味する。
本発明に記載される方法は、よって、個体からの生物学的試料からの、本発明の第1の特定の生理学的タンパク質の生理学的又は病理的なニトロ化度のアッセイからなる。本発明における有利な生物学的試料は、血液又は血液派生物(血漿、血清、血球、血小板)であり得る。尿、脳脊髄液、組織、腫瘍、細胞、血液塗抹標本などのような生物学的試料も本発明に含まれ得る。よって、アッセイは、ニトロ化生理学的タンパク質のニトロ化を評価することからなる。上記の特定のタンパク質の生理学的ニトロ化度の最終的な値が、よって、確立される。
上記で決定したニトロ化度を、本発明の病的状態の1つに罹患していないとみなされる個体からの生物学的試料から得られる第2の特定のタンパク質のニトロ化度と比較する。
現在のところ、生理学的タンパク質の通常のニトロ化度は、定量的に知られていない。これらは、一般的に低い(<5%)と考えられる。
次いで、第1及び第2の特定の生理学的タンパク質のニトロ化度を比較する。第1のニトロ化タンパク質のニトロ化度が健康な個体のものより低くかつ匹敵する場合に、その生物学的試料から該第1の特定の生理学的タンパク質を単離した個体は、問題のニトロ化ストレスに関連する慢性又は急性の病的状態に罹患していないとみなされる。その生物学的試料から該第1の特定の生理学的タンパク質を単離した個体は、ほとんど進行していない段階又は寛解したニトロ化ストレスに関連する慢性又は急性の病的状態に罹患している場合もある。
第1のニトロ化タンパク質のニトロ化度がゼロより大きい場合、個体は問題のニトロ化ストレスに関連する慢性又は急性の病的状態に罹患しており、かつ該慢性又は急性の病的状態は、進行段階又は急性段階にあり得る。
本発明の有利な実施形態において、第1の特定のタンパク質のニトロ化度は、第3の特定のニトロ化生理学的タンパク質のニトロ化度と比較できる。「第3の生理学的タンパク質」は、第1の特定のタンパク質と少なくとも90%、より具体的には100%の配列同一性を有するタンパク質を規定し、該第3のタンパク質は、第1の特定のタンパク質を得た個体とは異なる個体からの同じ性質又は異なる性質の生物学的試料から得られる。特に、第3の特定のニトロ化タンパク質を得る個体は、ニトロ化ストレスに関連する上記の病的状態に罹患しており、この病的状態に関連する全ての症状を示す個体に相当する。
よって、第1の生理学的タンパク質のニトロ化度を、第2及び/又は第3の特定の生理学的タンパク質のニトロ化度と比較することにより、第1の生理学的タンパク質を得た患者におけるニトロ化ストレスに関連する慢性又は急性の病的状態の重篤度及び進行度の状態と相関し得る、ニトロ化ストレスの程度を決定できる。
本発明は、以下の段階によって特徴付けられるインビトロ診断の方法にも関する:
- 個体からの生物学的試料における、第1の特定のニトロ化タンパク質又は生理学的ペプチド配列のニトロ化度の定量的アッセイと、
- 前記第1の特定のニトロ化タンパク質又は生理学的ペプチド配列の濃度を、同じ個体からの生物学的試料から得られるニトロ化されている前記第1の特定のタンパク質又は生理学的ペプチド配列とニトロ化されていない前記第1の特定のタンパク質又は生理学的ペプチド配列との合計濃度と比較することによる、前記第1の特定のタンパク質又は生理学的ペプチド配列のニトロ化度の定量と、
- 前記第1の特定のニトロ化タンパク質又は生理学的ペプチド配列のチロシン残基のニトロ化度の、n個の特定のタンパク質又は生理学的ペプチド配列の組のニトロ化度との比較であって、該n個の特定のタンパク質又はペプチド配列の各々のニトロ化度の値が既知であり、かつ前記慢性又は急性の病的状態の重篤度及び進行度の特定の状態とそれぞれ関連しており、
・前記n個の特定のタンパク質又は生理学的ペプチド配列は、前記第1の特定のタンパク質又は生理学的ペプチド配列の変異形若しくはアイソフォームであるか、又は前記第1の特定のタンパク質又は生理学的ペプチド配列と少なくとも90%、特に100%のアミノ酸配列同一性を有し、
・前記n個の特定のタンパク質又は生理学的ペプチド配列は、前記第1の特定のタンパク質又は生理学的ペプチド配列中のチロシン残基と同等の位置にある少なくとも1つのチロシン残基にてニトロ化されている
比較と、
- 前記段階で行われる比較からの、前記慢性又は急性の病的状態の重篤度及び進行度の状態に相当し得る個体のニトロ化ストレスの程度の推論。
本発明のn個の特定の生理学的タンパク質は、これらが、第1の特定のタンパク質と少なくとも90%、より具体的には100%の同一性の配列相同性を有するか、又はこれらが同じ遺伝子に由来すると規定される。本発明において、nは2〜10、有利には2〜5の範囲である。
上記のn個のタンパク質は、n個の異なる生物学的試料から得られる。n個の特定のタンパク質のそれぞれのニトロ化度は既知の値であり、ニトロ化ストレスに関連する上記の病的状態の特定の状態と関連する。
本発明の方法は、よって、個体からの生物学的試料からの本発明の第1の特定の生理学的タンパク質の生理学的ニトロ化度のアッセイからなる。
上記で決定したニトロ化度を、n個の特定のタンパク質の組のニトロ化度と比較し、該n個の特定のタンパク質のそれぞれは、異なる生物学的試料から、すなわちn個の生物学的試料から得られる。n個の試料は、n名の異なる個体から、又は個体において発展するニトロ化ストレスに関連する病的状態の経過のnの段階において試料が採集される同じ個体から得ることができる。
n個の生物学的試料は、よく特徴決定され定量されたニトロ化ストレスに関連する病的状態の発展の異なる段階に対応する。
本発明のある有利な実施形態において、n個の特定のタンパク質は、以下のように規定される:特定のタンパク質は、ニトロ化ストレスに関連する病的状態に罹患していない個体からの生物学的試料から得られるタンパク質に相当し、n−1個のその他の特定のタンパク質は、ニトロ化ストレスに関連する上記の病的状態の重篤度及び進行度のn−1個の特定の異なる状態を規定するn−1個の生物学的試料に相当する。
次いで、第1及び第2の特定の生理学的タンパク質のニトロ化度を比較する。
第1のニトロ化タンパク質のニトロ化度がn個の特定の生理学的タンパク質の1つのニトロ化度に相当する場合、個体は問題の慢性又は急性の病的状態に関連するニトロ化ストレスに、n個の特定のニトロ化生理学的タンパク質を得た個体のものと同程度に罹患している。
より具体的には、本発明は、インビトロ定量アッセイが少なくとも1つの抗体により行われ、それぞれの抗体が、特定のニトロ化タンパク質又は生理学的ペプチド配列のニトロ化チロシン残基を特異的に認識するインビトロ診断の方法に関する。
有利には、本発明は、特定のニトロ化生理学的タンパク質が、好ましくは、特に血漿中の循環タンパク質であり、特に:アルブミン、プレアルブミン、ビタミンD結合タンパク質(VDBP)、トランスフェリン、セルロプラスミン、レチノール結合タンパク質(RBP)、インスリン、ヘモグロビン、βアクチン、赤血球陰イオン輸送体のバンド3タンパク質、赤血球スペクトリンのβ鎖、フィブロネクチン前駆体、フィブリノゲンのβ鎖及び赤血球膜タンパク質バンド4.1から選択される上記の診断の方法について記載する。
さらに、本発明は、ニトロ化ストレスに関連する慢性又は急性の病的状態が、以下の群:炎症性疾患、感染性疾患、神経変性疾患、低酸素症及び虚血性疾患、糖尿病、代謝障害、心血管及び呼吸器疾患、並びに癌に属する診断の方法について記載する。
有利な実施形態によると、本発明は、生物学的試料においてニトロ化ストレスに関連する慢性又は急性の病的状態の重篤度及び進行度の状態をインビトロで診断する方法であって、
- 生理学的アルブミンのニトロ化チロシン残基を特異的に認識する少なくとも1つの抗体を、個体からの生物学的試料から得られるニトロ化生理学的アルブミンと接触させることにより得られる免疫複合体を検出して、該ニトロ化生理学的アルブミンのニトロ化度の決定を可能にし、
- 生理学的アルブミンのチロシン残基の前記ニトロ化度を、ニトロ化度の値が既知であり、それぞれが前記慢性又は急性の病的状態の重篤度及び進行度の特定の状態と関連しているn個の生理学的アルブミンの組のチロシン残基のニトロ化度と比較し、
- 前記段階で行われる比較から、前記慢性又は急性の病的状態の重篤度及び進行度の状態に対応し得る個体のニトロ化ストレスの程度を推論すること
を含む方法について記載する。
上記の「免疫複合体」(又は抗原-抗体複合体)は、エピトープ(抗原)と、このエピトープに対してかつ該抗原に対してのみ指向された抗体との組み合わせに起因する。本発明に関与する抗原は、上記の特定のニトロ化タンパク質に相当する。
免疫複合体は、特定のタンパク質を直接又は間接的に特異的に認識するモノクローナル又はポリクローナル抗体により検出される。直接的な検出において、検出を可能にする上記の抗体は、通常、標識と結合する。標識は、放射性標識、ビオチン、酵素、蛍光剤、磁性粒子などから選択され得る。
間接的な検出において、特定のタンパク質を認識する抗体は、それ自体が、標識の1つに結合した検出抗体により認識される。
用いられる抗体は、可溶化形態で用いることができるか、又は支持体、より具体的にはビーズ、プレート、カラムなどに固定化され得る。
本発明に記載される方法は、個体からの生物学的試料からの第1の特定の生理学的タンパク質の生理学的ニトロ化度のアッセイからなる。
上記で決定したニトロ化度を、n個の特定のタンパク質の組のニトロ化度と比較し、該n個の特定のタンパク質のそれぞれは、異なる生物学的試料から、すなわちn個の生物学的試料から得られる。n個の試料は、n名の異なる個体から、又は個体において発展するニトロ化ストレスに関連する病的状態の経過のnの段階において試料が採集される同じ個体から得ることができる。
n個の生物学的試料は、よく特徴決定され定量されたニトロ化ストレスに関連する病的状態の発展の異なる段階に対応する。
本発明のある有利な実施形態において、n個の特定のタンパク質は、以下のように規定される:特定のタンパク質は、ニトロ化ストレスに関連する病的状態に罹患していない個体からの生物学的試料から得られるタンパク質に相当し、n−1個のその他の特定のタンパク質は、ニトロ化ストレスに関連する上記の病的状態の重篤度及び進行度のn−1個の特定の異なる状態を規定するn−1個の生物学的試料に相当する。
第1のニトロ化タンパク質のニトロ化度がn個の特定の生理学的タンパク質の1つのニトロ化度に相当する場合、個体は、問題のニトロ化ストレスに関連する慢性又は急性の病的状態に、n個の特定のニトロ化生理学的タンパク質を得た個体のものと同じ段階にて罹患している。
より具体的には、本発明は、上記の抗体がY138チロシン残基でのアルブミンのニトロ化を認識するインビトロ診断方法に関する。
同様に、本発明は、上記の抗体がY411チロシン残基でのアルブミンのニトロ化を認識するインビトロ診断方法に関する。
本発明のある態様は、より具体的には、生物学的試料中で、ニトロ化ストレスに関連する慢性又は急性の病的状態の重篤度及び進行度の状態をインビトロで診断する方法であって、
- 少なくとも1つの特異抗体を個体からの生物学的試料から得られるニトロ化生理学的アルブミンと接触させることにより得られる免疫複合体をアルブミンに指向された抗体により検出して、該ニトロ化生理学的アルブミンのニトロ化度の決定を可能にし、
- ニトロ化生理学的アルブミンのチロシン残基の前記ニトロ化度を、ニトロ化生理学的アルブミンのチロシン残基のニトロ化度の値が既知であり、それぞれが前記慢性又は急性の病的状態の重篤度及び進行度の状態と関連しているn個のニトロ化生理学的アルブミンの組のチロシン残基のニトロ化度と比較し、
- 前記段階で行われる比較から、前記慢性又は急性の病的状態の重篤度及び進行度の状態に相当し得る個体のニトロ化ストレスの程度を推論すること
を含む方法に関する。
よって、本発明に記載される方法は、本発明のニトロ化アルブミンを認識する特異抗体を用いる、個体からの生物学的試料からの本発明の生理学的アルブミンの生理学的ニトロ化度のアッセイからなる。
本発明の抗体は、ニトロ化された及びニトロ化されていないタンパク質の集団のうちのニトロ化されたアルブミンの特異的固定化を可能にする。形成される免疫複合体は、次いで検出され、複合体の量は生物学的試料中のアルブミンのニトロ化度を示す。
上記で決定したニトロ化度を、n個のアルブミンの組のニトロ化度と比較し、該n個のアルブミンのそれぞれは、異なる生物学的試料から得られる。n個の試料は、n名の異なる個体から、又は患者において発展するニトロ化ストレスに関連する病的状態の経過のnの段階において試料が採集される同じ個体から得ることができる。
n個の生物学的試料は、病的状態の臨床基準に従ってよく特徴決定され、これらのn個の試料から得られるアルブミンのニトロ化度が定量されている、ニトロ化ストレスに関連する病的状態の発展の異なる段階に対応する。
本発明のある有利な実施形態において、n個の特定のアルブミンは、以下のように規定される:特定のアルブミンは、ニトロ化ストレスに関連する病的状態に罹患していない個体からの生物学的試料から得られるタンパク質に相当し、n−1個のその他の特定のアルブミンは、ニトロ化ストレスに関連する上記の病的状態の重篤度及び進行度のn−1個の特定の異なる状態を規定するn−1個の生物学的試料に相当する。
本発明は、個体のニトロ化ストレスの程度が、炎症性疾患、感染性疾患、神経変性疾患、虚血性疾患、糖尿病、代謝障害、心血管及び呼吸器疾患、並びに癌から選択される病的状態の重篤度及び進行度の状態に相当し得るインビトロ診断の方法にも関する。
本発明のインビトロ診断の有利な方法は、特に、ELISA (直接又は競合的)、免疫組織化学及び免疫細胞化学、免疫沈降、比濁分析、濁度測定、ウェスタンブロット又はいずれのその他の免疫化学的若しくは放射免疫学的アッセイ(RIA)のような通常の技術による免疫複合体の検出を用いる。
ELISA、RIA、免疫組織化学及び免疫細胞化学、免疫沈降、比濁分析、濁度測定、ウェスタンブロット又はその他のいずれの免疫化学的方法は、当業者に知られる標準的な技術である。
より具体的には、本発明は、個体からの生物学的試料において、第1のタンパク質、特にアルブミン又は特定のニトロ化生理学的ペプチド配列のニトロ化度の定量アッセイが、上記で規定される少なくとも1つの抗体により行われ、該抗体が捕捉抗体として支持体に固定されているか、又は特異的検出抗体として働く、上記で規定される個体からの生物学的試料においてニトロ化ストレスに関連する慢性又は急性の病的状態の重篤度及び進行度の状態の好ましくはインビトロでの診断方法について記載する。
言い換えると、上記の診断の方法は、好ましくは:
- ニトロ化又は非ニトロ化アルブミンの特異抗体が固定化されており、かつニトロ化又は非ニトロ化アルブミンの捕捉抗体として働き、固定化されたニトロ化タンパク質が、上記で規定されるモノクローナル抗体により明示される(revealed);任意に、本発明の2つのモノクローナル抗体を同時に用いることができる、又は
- ニトロ化アルブミンに特異的な上記で規定されるモノクローナル抗体が固定化されており、かつニトロ化アルブミンについての捕捉抗体として働き、固定化されたニトロ化タンパク質が、ニトロ化又は非ニトロ化アルブミンを認識する抗体により明示され、任意に、本発明の2つのモノクローナル抗体を同時に用いることができる、又は
- ニトロ化アルブミンに特異的な規定されるようなモノクローナル抗体が固定化されており、かつニトロ化アルブミンについての捕捉抗体として働き、固定化されたニトロ化タンパク質が、ニトロ化アルブミンに特異的な上記で規定されるモノクローナル抗体により明示される、
ELISAにより行われる。
最後のカテゴリーにおいて、可能な対は:
- 捕捉抗体:2F3、検出抗体:13H10、又は
- 捕捉抗体:13H10、検出抗体:2F3
である。
さらに、別の好ましい実施形態において、本発明は:
- 患者から得られたニトロ化アルブミンを含有し得る試料を、放射活性ヨウ素(125I)であるトレーサーで標識されたニトロ化アルブミンの既知の規定量とインキュベートして混合物を得て、
- 前記混合物を、上記で規定されるニトロ化アルブミンの特異抗体の少なくとも1つと接触させて免疫複合体を形成させ、
- 次の段階で得られる、前記標識されたニトロ化アルブミンとニトロ化アルブミンの特異抗体の少なくとも1つとの免疫複合体を、該ニトロ化アルブミンの標識の検出に特異的な系により検出及び定量し、該検出は好ましくはガンマカウンター又は放射活性同位体の崩壊を検出するための任意のカウンターにより行われ、
- 先行の定量から、試料に初めから存在していたニトロ化アルブミンの量を推論する、
放射免疫学的アッセイ(RIA)に相当する上記の診断の方法について記載する。
RIAにおいて、アッセイされる抗原(ニトロ化アルブミン)は、抗体への結合について標識抗原(標識されたニトロ化アルブミン)と競合する。全ての利用可能な抗体部位が結合される。アッセイされる抗原の濃度とともに指数関数的に減少する結合されたフラクションを測定する。この手順は、均質液相又は不均質固相で行うことができる。後者の場合、遊離のフラクション及び結合しているフラクションを分離するのがより容易である。
RIAによるアッセイの原理は、ヨウ素125で標識されたニトロ化アルブミンと、標準物質又は測定される試料に含まれるニトロ化アルブミンとの間の、固相(被覆チューブ、マイクロタイタープレートなど)に任意に固定された、与えられた制限された数の特異的抗ニトロ化アルブミン抗体部位(13h10及び/又は2F3抗体)についての競合に基づく。
インキュベーション時間の最後に、過剰のトレーサーは洗浄段階において容易に除去される。抗体と結合した標識されたニトロ化アルブミンの量は、試験に存在する未標識ニトロ化アルブミンの量に反比例する。
本発明の方法は、少なくとも1つのチロシン残基でニトロ化された特定のニトロ化タンパク質又はペプチド配列の、タンパク質又はニトロ化生理学的ペプチド配列の生理学的ニトロ化度の特にインビトロでの定量アッセイの方法を実行するための使用であって、該特定のニトロ化タンパク質又はペプチド配列が、上記の特定のニトロ化タンパク質又は生理学的ペプチド配列と少なくとも90%、特に100%のアミノ酸配列同一性を有し、該特定のニトロ化タンパク質又はペプチド配列が、上記の特定のニトロ化タンパク質又は生理学的ペプチド配列のチロシン残基のものと同等の位置の少なくとも1つのチロシン残基でニトロ化されており、該特定のタンパク質又は生理学的ペプチド配列のニトロ化が、慢性又は急性の病的状態に関連するニトロ化ストレスと相関する使用に関する。
本発明は、より具体的には、特定のニトロ化タンパク質又はペプチド配列が、該特定のタンパク質又はペプチド配列のニトロ化チロシン残基を特異的に認識できる少なくとも1つのモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を生じることを可能にし、該抗体が、特定のニトロ化タンパク質又は生理学的ペプチド配列中の同等の位置の上記のニトロ化チロシン残基も特異的に認識できる、特定のニトロ化タンパク質又はペプチド配列の使用に関する。
本発明は、チロシン残基上での特定のニトロ化タンパク質又はペプチド配列のインビトロ調製の方法であって、該ニトロ化チロシン残基がニトロ化ストレスに関連する慢性又は急性の病的状態における特定のニトロ化タンパク質又は生理学的ペプチド配列の生理学的にニトロ化されたチロシン残基に相当し、該特定のニトロ化タンパク質又はペプチド配列が、上記の特定のニトロ化生理学的タンパク質と少なくとも90%、特に100%のアミノ酸配列同一性を有し:
- 7.5〜8.5のpHの水性バッファーにおける、特定のタンパク質又はペプチド配列中のニトロ化可能なチロシンとのモル比が20:1を超えないテトラニトロメタンによる、特定のタンパク質又はペプチド配列のインビトロニトロ化と、
- 前記特定のニトロ化タンパク質のニトロ化チロシンの、特に質量分析によるインビトロ同定と、
- 任意に、前記特定のタンパク質又はペプチド配列で同定されたニトロ化チロシンの、特定のニトロ化タンパク質又は生理学的ペプチド配列のチロシン残基との比較と
を含む方法にも関する。
タンパク質をニトロ化するための多くの試薬があり、特に、ペルオキシナイトライト、テトラニトロメタン、3-モルホリノ-シドニミン(sydonimine)、α-オキシハイポナイトライトナトリウム、スペルミン-NONOアート及びその他のNONOアート、塩化ニトリル(NO2Cl)、ニトロプルシド及びニトログリセリンがある。これらのニトロ化試薬だけではない。上記のニトロ化試薬のリストは網羅的でない。
本発明は、生理学的にニトロ化可能なチロシン残基上でのタンパク質の特異的インビトロニトロ化の方法を提供する利点を有する。
従来技術に記載されたこととは対照的に、本発明の方法は、ニトロ化の生理学的条件に近い模擬条件とみなすことができる低濃度の条件下でテトラニトロメタンを用いる。ペルオキシナイトライトに対して、弱アルカリ性のpHの水性媒体中でのテトラニトロメタンによるインビトロニトロ化の利点は、これらの条件下で用いると、テトラニトロメタンの酸化性がペルオキシナイトライトよりもはるかに低く、よって処理されるタンパク質の酸化された誘導体及びアミノ酸酸化生成物、特にシステイン、メチオニン、トリプトファン及びチロシンの形成を回避することである。この方法は、ジスルフィドブリッジ及びジチロシンの形成も最小限にする。
よって、本発明の方法は、テトラニトロメタンの量がニトロ化されるタンパク質に含まれるニトロ化可能なチロシンの量に依存する、タンパク質のニトロ化段階について記載する。本発明の方法において用いるテトラニトロメタンの濃度を調節するために、よって、問題のタンパク質のニトロ化可能な又はニトロ化されたチロシンの数を推定又は決定することが必要である。
タンパク質のニトロ化可能な又はニトロ化されたチロシンの数を決定する手段の1つは、タンパク質に存在するチロシン残基の数に関して漸増するモル比のテトラニトロメタンでタンパク質をインビトロにてニトロ化することである。ニトロ化の最後に、タンパク質をアガロース結合抗ニトロチロシンで精製する。ニトロ化された残基は、次いで、質量分析により決定される。この方法は、ニトロ化可能なチロシンの数に関する情報を提供する。
以下の図面は本発明を説明する。
血漿試料から得られるニトロ化タンパク質を分離するためのゲルを示す。血漿試料を、アガロース結合抗ニトロチロシン抗体を用いる免疫沈降に付す。免疫沈降されたニトロ化タンパク質を、電気泳動(SDS-PAGE)により分離し、コロイド状クーマシーブルーを用いる染色により明示する。レーンは、異なる患者からの血漿からのニトロ化タンパク質の免疫沈降物に相当する。 分子量マーカーは、ゲルの左手部分に示す。 図2A、2B、2C、2D、2E、2F、2G及び2Hは、分離ゲルから採取したニトロ化タンパク質の質量スペクトルを示す。ペプチドの質量スペクトルは、MALDI-TOF法により得られる。 図2Aは、アルブミンから得られるペプチドに相当する質量スペクトルに相当する。 図2Bは、βアクチンから得られるペプチドに相当する質量スペクトルに相当する。 図2Cは、ビタミンD結合タンパク質から得られるペプチドに相当する質量スペクトルに相当する。 図2Dは、赤血球陰イオン輸送体タンパク質のバンド3を同定するためのペプチドに相当する質量スペクトルに相当する。 図2Eは、赤血球スペクトリンのβ鎖から得られるペプチドに相当する質量スペクトルに相当する。 図2Fは、フィブリノゲンのβ鎖から得られるペプチドに相当する質量スペクトルに相当する。 図2Gは、赤血球膜タンパク質バンド4.1から得られるペプチドに相当する質量スペクトルに相当する。 図2Hは、フィブロネクチン前駆体から得られるペプチドに相当する質量スペクトルに相当する。 O2・-/NO・モル比の変化の細胞での結果の模式図である。 NO・/O2・-モル比の関数としての、形成されるROS及びRNSにより引き起こされる転写後反応及び改変を示す。 ニトロ化アルブミンのELISAアッセイの検量線を示す。このアッセイは、抗ニトロチロシンポリクローナル捕捉抗体と抗ヒトアルブミン検出抗体とを用いる。 0〜5日齢の新生児からの192個の血漿における、3重で行ったニトロ化アルブミンのアッセイについて得られた値の間の相関関係を示す。 13H10抗体を捕捉抗体として用い、ペルオキシダーゼ(HRP)と結合した抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体を検出抗体として用いるELISAにおけるニトロ化アルブミンの検出のための用量応答曲線を示す。横座標(log(x))はアルブミンの濃度を示し、縦座標は450 nmでの光学密度(OD)を示す。 13H10抗体を捕捉抗体として用い、ペルオキシダーゼ(HRP)と結合した抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体を検出抗体として及びヒト血清を用いるELISAにおけるニトロ化アルブミンの濃度の関数としての450 nmで測定された光学密度(OD)を示す。横座標(log(x))はニトロ化アルブミンの濃度を示し、縦座標は450 nmでの光学密度(OD)を示す。 加えた血清の量も図に示す。 13H10抗体を捕捉抗体として用い、ペルオキシダーゼ(HRP)と結合した抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体を検出抗体として用いる、還元ヒト血清の存在下でのELISAにおけるニトロ化アルブミンの濃度の関数としての450 nmで測定された光学密度(OD)を示す。横座標(log(x))はニトロ化アルブミンの濃度を示し、縦座標は450 nmでの光学密度(OD)を示す。 加えた血清の量も図に示す。 13H10抗体を捕捉抗体として用い、ペルオキシダーゼ(HRP)と結合した抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体を検出抗体として用いる、還元ヒト血清の存在下でのELISAにおけるニトロ化アルブミンの濃度の関数としての450 nmで測定された光学密度(OD)を示す。横座標(log(x))はニトロ化アルブミンの濃度を示し、縦座標は450 nmでの光学密度(OD)を示す。 加えた血清の量も図に示す。 13H10抗体を捕捉抗体として用い、ペルオキシダーゼ(HRP)と結合した抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体を検出抗体として用いる、還元ヒトアルブミンの存在下でのELISAにおけるニトロ化アルブミンの濃度の関数としての450 nmで測定された光学密度(OD)を示す。横座標(log(x))はニトロ化アルブミンの濃度を示し、縦座標は450 nmでの光学密度(OD)を示す。 加えた還元ヒトアルブミンの濃度も図に示す。 抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体を捕捉抗体として用い、ペルオキシダーゼ(HRP)と結合した13H10抗体を検出抗体として用いるELISAにおけるニトロ化アルブミンの濃度の関数としての吸光度を示す。横座標(log(x))はニトロ化アルブミンの濃度を示し、縦座標は450 nmでの光学密度(OD)を示す。 検出のために加えたポリクローナル抗体の量も図に示す。 ヒト血清の試料中のニトロ化アルブミンの検出のための13H10抗体の希釈係数の関数としての吸光度を示す。横座標(x)は抗体の希釈係数を示し、縦座標は450 nmでの光学密度(OD)を示す。 図14 A及びBは、生存の最初の時間(図14A)及びD1 (図14B)での動脈乳酸血症と血漿ニトロ化アルブミン濃度との相関関係を示す。 図15 A〜Cは、新生児の神経学的状態(正常(NE 0)又は軽度のNE (NE 1) 対 中程度(NE 2)から重度のNE (NE 3))に相当する、生存の最初の時間(図15A)、D1 (図15B)及びD4 (図15C)でのニトロ化アルブミンの濃度(中央値、第25百分位数〜第75百分位数及び第10百分位数〜第90百分位数で示す)を示す。 新生児の神経学的状態(正常(NE 0)又は軽度のNE (NE 1) 対 中程度(NE 2)から重度のNE (NE 3))に相当する、D1でのニトロ化アルブミンの濃度(中央値、第25百分位数〜第75百分位数及び第10百分位数〜第90百分位数で示す)を示す。アスタリスクは有意値p = 0.01を表す。
実施例:実験部
実施例1:インビトロでのアルブミンのニトロ化。
材料:
ヒトアルブミン(>98%, Fluka)
テトラニトロメタン(Aldrich)
Tris (Sigma)
ジメチルスルホキシド (>99.5%, Fluka)
方法:
アルブミンを、Tris (50 mM, pH 8.0)の溶液に0.1 mMの濃度で溶解する。
テトラニトロメタンを、ジメチルスルホキシドに800 mMの濃度で溶解し、-20℃にて貯蔵する。
ジメチルスルホキシドに溶解したテトラニトロメタンを、2 mMの最終濃度を得るように、撹拌しながらアルブミンの溶液に加える。
この溶液を20℃にて12時間、穏やかに撹拌しながら暗所でインキュベートする。
ニトロ化の後に、溶液を-80℃にて凍結させ、残存テトラニトロメタンを除去し、確実にニトロ化アルブミンを最適に保存するために凍結乾燥する。
上記のニトロ化の方法は、Malan, P.G.ら(1970) Biochemistry 9(16), 3205〜3214及びSokolovskyら(1966) Biochemistry 5(11), 3582〜3589から改変した。
実施例2:インビトロでのインスリンのニトロ化。
材料:
ウシインスリン(I 1882, Sigma, ≧25 USP単位/mg)
テトラニトロメタン(Aldrich)
Tris (Sigma)
ジメチルスルホキシド(>99.5%, Fluka)
方法:
インスリンを、Tris (50 mM, pH 8.0)の溶液に1 mMの濃度まで溶解する。
テトラニトロメタンを、無水エタノールに800 mMの濃度まで溶解し、-20℃にて貯蔵する。
ジメチルスルホキシドに溶解したテトラニトロメタンを、20 mMの最終濃度を得るように、撹拌しながらインスリンの溶液に加える。
この溶液を20℃にて12時間、穏やかに撹拌しながら暗所でインキュベートする(Morrisら Biochemistry, 1970, 9(20) 3930〜3937及びCarpenterら Biochemistry, 1980, 19(25) 5926〜5931から改変)。
ニトロ化の後に、溶液を-80℃にて凍結させ、残存テトラニトロメタンを除去し、確実にニトロ化インスリンを最適に保存するために凍結乾燥する。
実施例3:インビトロでのヘモグロビンのニトロ化
材料:
ウシヘモグロビン(H2500 Sigma)
テトラニトロメタン(Aldrich)
Tris (Sigma)
ジメチルスルホキシド(>99.5%, Fluka)
方法:
ヘモグロビンを、CO2で飽和させたリン酸バッファー75 mM/カーボネート25 mM、pH 7.5に0.1 mMの濃度まで溶解する。
テトラニトロメタンを、無水エタノールに800 mMの濃度まで溶解し、-20℃にて貯蔵する。
ジメチルスルホキシドに溶解したテトラニトロメタンを、4mMの最終濃度を得るように、撹拌しながらヘモグロビンの溶液に加える。
この溶液を20℃にて12時間、穏やかに撹拌しながら暗所でインキュベートする。
ニトロ化の後に、溶液を-80℃にて凍結させ、残存テトラニトロメタンを除去し、確実にニトロ化ヘモグロビンを最適に保存するために凍結乾燥する。
このニトロ化の方法は、Pietraforte, D.ら(2003) Amino Acids 25(3〜4), 341〜350、Pietraforte, D.ら(2001) Biochemistry 40(50), 15300〜15309及びMinetti, M.ら(2000) Biochemistry 39(22), 6689〜6697から改変した。
実施例4:ニトロ化血漿タンパク質の検出
図1及び2はこの実施例を説明する。
材料:
ヒト血漿
3-ニトロチロシンカラムで親和性精製したポリクローナル抗ニトロチロシン
CarboLinkゲル及びAminoLinkゲル(Pierce)
血漿試料
血液試料を、健康な個体の評価又は無酸素症に罹患した個体の診断的評価のための関連する倫理委員会により承認された研究の範囲内で、EDTAチューブに回収した。
試料を氷上に保存し、4℃にて1時間遠心分離した。得られた血漿を、分析の前に-20℃にて貯蔵した。全ての試料を採取後6カ月以内に分析した。
ニトロ化タンパク質の免疫沈降
ニトロ化KLHでの免疫化により得られたウサギ抗ニトロチロシンポリクローナル抗体を、アミノ基によりアガロースと結合した3-ニトロチロシンのカラム(AminoLink)上で親和性により精製する。
精製した抗体を、次いで、アガロースに、その酸化された炭水化物残基(カルボニル)を介して、アガロース(CarboLink)上にグラフトされたヒドラジン基と共有結合させる。このようにして形成されたヒドラゾン結合を、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH3)を用いる還元により安定化する。
血漿試料を、抗ニトロチロシン-アガロースビーズと穏やかに撹拌しながら4℃にて14時間インキュベートし、次いで、PBS/Triton X-100 0.1%で6回洗浄する。
ビーズを等容量のLaemmliバッファー2×に採集し、60℃にて5分間加熱し、1.0 mmの厚さの10% SDSポリアクリルアミドゲルに載せる。
分子量マーカーを、検出されるタンパク質の質量を推測できるように載せる。
泳動の最後に、ゲルを固定し、コロイド状クーマシーブルーを用いて染色する(図1を参照)。
ゲル上に存在するタンパク質の同定
コロイド状クーマシーブルーでの染色により視覚化されたバンドを切り出し、-80℃にて凍結させる。
これらを、次いで、トリプシンで消化し、質量分析(MALDI-QTOF)により分析する。同定されるタンパク質のペプチドの同定を可能にする質量スペクトルを、図2A、2B、2C、2D、2E、2F、2G及び2Hに示す。
血漿試料中で、本発明者らは、アルブミン、ビタミンD結合タンパク質(VDBP)、βアクチン、赤血球陰イオン輸送体のバンド3タンパク質、赤血球スペクトリンのβ鎖、フィブロネクチン前駆体+フィブリノゲンのβ鎖、及び赤血球膜タンパク質のバンド4.1を見出した。
解釈
これらの結果により、これらの対象者の血漿中のこれらのニトロ化タンパク質が、着色されたバンドの形態で視覚化されて同定される。バンドの強度が、対象者に依存して変動することが観察でき、このことは、対象者ごとにタンパク質のニトロ化度が変動可能であることを示す。
ゲル上で観察できるタンパク質のうち、以下のものを質量分析により同定できた:アルブミン、ビタミンD結合タンパク質(VDBP)、βアクチン、赤血球陰イオン輸送体のバンド3タンパク質、赤血球スペクトリンのβ鎖、フィブロネクチン前駆体+フィブリノゲンのβ鎖、及び赤血球膜タンパク質のバンド4.1。
実施例5:心不全の患者におけるアルブミンのニトロ化の評価。
導入:
心不全(HF)が酸化ストレスの増加を伴い、このストレスの増加が疾患の段階と相関することが示されている[Sorescu, D.及びK.K. Griendling, Reactive oxygen species, mitochondria, and NAD(P)H oxidases in the development and progression of heart failure. Congest Heart Fail, 2002. 8(3): p. 132〜40; White, M.ら, Increased systemic inflammation and oxidative stress in patients with worsening congestive heart failure: improvement after short-term inotropic support. Clin Sci (Lond), 2006. 110(4): p. 483〜9; Mallat, Z.ら, Elevated levels of 8-iso-prostaglandin F2alpha in pericardial fluid of patients with heart failure: a potential role for in vivo oxidant stress in ventricular dilatation and progression to heart failure. Circulation, 1998. 97(16): p. 1536〜9; Dhalla, A.K., M.F. Hill, and P.K. Singal, Role of oxidative stress in transition of hypertrophy to heart failure. J Am Coll Cardiol, 1996. 28(2): p. 506〜14; Ferrari, R.ら, Oxidative stress during myocardial ischaemia and heart failure. Eur Heart J, 1998. 19 Suppl B: p. B2〜11]。HFに起因する組織の低潅流及び相対的低酸素が酸化ストレスを誘導することは明確なようである。しかし、酸化ストレスの増加がHFの進行の原因であり得るか又は少なくともそれに貢献するという考え方が広まっている。この酸化ストレスは、他の慢性疾患と同様に、炎症性で全身性の起源であり得る[Cotter, G.ら, Acute heart failure: a novel approach to its pathogenesis and treatment. Eur J Heart Fail, 2002. 4(3): p. 227〜34; Mann, D.L., Inflammatory mediators and the failing heart: past, present, and the foreseeable future. Circ Res, 2002. 91(11): p. 988〜98; Yndestad, A.ら, Systemic inflammation in heart failure--the whys and wherefores. Heart Fail Rev, 2006. 11(1): p. 83〜92; Tousoulis, D.ら, Statins in heart failure. Beyond the lipid lowering effect. Int J Cardiol, 2007. 115(2): p. 144〜50]。
NO+により誘導されるニトロソ化及びONOO-により引き起こされるニトロ化は、よって、酸化の前に生じる事象である。これらの変化は、我々がMAPキナーゼ及びPKB/Aktについて示したことと同様に、酵素及び構造タンパク質、よって代謝及び栄養の効果のレベルにて機能的な変更を導く[Frein, D.ら, Redox regulation: a new challenge for pharmacology. Biochem Pharmacol, 2005. 70(6): p. 811〜23; Ullrich, V.及びR. Kissner, Redox signaling: bioinorganic chemistry at its best. J Inorg Biochem, 2006. 100(12): p. 2079〜86; Pinzar, E.ら, Angiotensin II induces tyrosine nitration and activation of ERK1/2 in vascular smooth muscle cells. FEBS Lett, 2005. 579(22): p. 5100〜4; Lokuta, A.J.ら, Increased nitration of sarcoplasmic reticulum Ca2+-ATPase in human heart failure. Circulation, 2005. 111(8): p. 988〜95] (図4)。
ニトロ化ストレスについて利用可能なその他の2つのマーカーである血漿ニトロチロシン及び尿NHPAは、信頼性がなく[Ryberg, H.及びK. Caidahl, Chromatographic and mass spectrometric methods for quantitative determination of 3-nitrotyrosine in biological samples and their application to human samples. J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci, 2007; Pannala, A.S.ら, pH-dependent nitration of para-hydroxyphenylacetic acid in the stomach. Free Radic Biol Med, 2006. 41(6): p. 896〜901]、よって、ニトロ化アルブミンはこのストレスの新規で特異的なユニークマーカーを構成すると考えられ、このことに基づいて、生物が曝露される酸化ストレスに対処する生物の能力を反映するかもしれない。
この仮説を確認するために、ニトロ化の新しい可能性のある血漿マーカーであるニトロ化アルブミンを提案し、ELISAによるその決定法を開発した(図5及び6)。
この研究の範囲内での興味対象の集団は、この計画に参加する2つの領域であるAuvergne及びRhone-Alpesの一般的な集団の心不全の標本の患者の集団である。
このために、我々は、一方で、RESIC38コホートの外来患者(約450名の患者)、及び他方で外来病院(Grenoble, Lyons, Clermont-Ferrand)の外来患者に面会して、NYHA (New York Heart Association、http: / www.resic38.org/ doc/Documents/Classification-nyha.pdfでアクセス可能)により規定される心不全の異なる段階をカバーする。健康な対照は、GrenobleのCICから採用する。この研究を、多くの老齢患者及び同時罹病(co-morbidities)を有する患者を含むような標本集団に広げる必要性があるように思われたが、その結果は、よって、現在の医療処置にあてはめることができる。
現在までに、心不全において2つのみの予後生物学的マーカーが実証されている:BNP又はその前駆体であるproNT-BNP及びトロポニンT。その他の生物学的パラメータ、特に炎症のマーカーが最近調査され、心不全における炎症性症候群の存在を示すようである[Yndestad, A.ら, Systemic inflammation in heart failure--the whys and wherefores. Heart Fail Rev, 2006. 11(1): p. 83〜92]。いくつかの危険因子及び全身性慢性病的状態に関連する慢性炎症性症候群が存在するという仮説が、2007年のThe Lancetの解説の目的であった[Fabbri, L.M.及びK.F. Rabe, From COPD to chronic systemic inflammatory syndrome? Lancet, 2007. 370(9589): p. 797〜9]。心不全は、これらの病的状態のうちに含まれる。この仮説及び抗炎症特性を有する医薬品を用いて得られた結果に基づいて、著者らは、この慢性炎症成分の制御が、代謝症候群、COPD (慢性閉塞性肺疾患)及び心不全のような病的状態、及び罹患した患者における通常の同時罹病の改善に貢献できたことを示唆する。
この仮説を実証するために、まず、CRP (C反応性タンパク質)の増加にしばらくの間実質的に基づくその存在を証明する必要がある。直接若しくは間接的な炎症誘発性効果又は抗炎症性効果を有する既知のいくつかの因子と、それらの可溶性細胞受容体の発現の変動を考慮して、後者の大規模な詳細研究を行うのは困難なようであり、それらの相互作用の全体的な結果に関する結果をそこから導き出すのは不可能なようである。よって、別のアプローチは、炎症性状態の存在又は不在を正確に示すために、これらの全ての因子により活性化又は不活性化される経路の収束点のマーカーを調査することからなる。CRP (C反応性タンパク質)、オロソムコイド及びフィブリノゲンのようないくつかの血漿タンパク質の濃度の増加は、炎症性状態の存在を反映するが、これらの上昇したレベルは、炎症が持続する場合であっても、通常は一過性である。CRPだけが、超高感度アッセイ技術により検出可能なままであり得る。
リポ多糖のような非特異的な因子による炎症性応答の惹起は、細胞レベルでの酸化ストレスを引き起こす。この酸化ストレスは、酸素及び窒素の「フリーラジカル」の形成に相当し、これらが、それらの性質に依存して可逆性又は不可逆性の、巨大分子の機能的変更を誘導する。これらの変更が、それらが不可逆性である場合は特に、代謝の変更又は細胞死及びよって組織損傷さえも導き得る。上記のように、これらの変更の多くは同定され、それらの結果は現在ではしばしば知られている。よって、一方で、発生するフリーラジカルの性質を同定し、特に生物がその天然の防御によりそれらに対処できたかを決定することが重要である。
上記のように、ペルオキシナイトライトの生成は、分岐点にある。なぜなら、これはスーパーオキシドイオンの「捕捉」を可能にする最後の段階であり、可逆的な転写後改変(チロシンのニトロ化)を生じる最後のフリーラジカルであるからである。可逆的であるタンパク質のニトロ化のこの段階が、一時的な適合又は撹乱を実は導くが、アポトーシスを誘導する酸化及びニトロ化に対してクロマチンDNAを保護することもできる「緩衝剤」を構成すると考えることができる。
ペルオキシナイトライト及びその前駆体は非常に拡散しやすいので、後者の捕捉及び分解の機構が一旦飽和されると、細胞外マトリクスへ溢出し、よってこのマトリクスのタンパク質のニトロ化、及びそれによりなかでも血漿中のタンパク質のニトロ化が生じると考えることが論理的である。この状況は、「補償されない」ニトロ化ストレスに相当するだろう。
この仮説は、門脈周囲無酸素及び新生児低血糖の我々の最初の臨床研究により強化されており、これは、他者により、細胞タンパク質の、特に脳における著しいニトロ化を導くことがさらに示されている[Groenendaal, F.ら, Nitrotyrosine in brain tissue of neonates after perinatal asphyxia. Arch Dis Child Fetal Neonatal Ed, 2006. 91(6): p. F429〜33; Groenendaal, F.ら, Nitrotyrosine in Human Neonatal Spinal Cord after Perinatal Asphyxia. Neonatology, 2007. 93(1): p. 1〜6; Suh, S.W.ら, Hypoglycemic neuronal death and cognitive impairment are prevented by poly(ADP-ribose) polymerase inhibitors administered after hypoglycaemia. J Neurosci, 2003. 23(33): p. 10681〜90]。
よって、この「補償されない」細胞ニトロ化が、細胞によるスーパーオキシドイオン及びペルオキシナイトライトの吸収についての能力の飽和のマーカーを構成する血漿アルブミンのニトロ化の増加を伴うことは確実なようである。強いニトロ化とアポトーシスの惹起との関連は、いくらかの著者により記載されており[Ischiropoulos, H.及びJ.S. Beckman, Oxidative stress and nitration in neurodegeneration: cause, effect, or association? J Clin Invest, 2003. 111(2): p. 163〜9; Carreras, M.C.及びJ.J. Poderoso, Mitochondrial nitric oxide in the signaling of cell integrated responses. Am J Physiol Cell Physiol, 2007. 292(5): p. C1569〜80]、一方で酸化ストレスの増加を伴い、他方でアポトーシスの増加と連結する組織リモデリングを伴ういずれの病的状態にもおけるこのパラメータを調査することが正当なようである。
目的
主な目的:
死亡及びより高いNYHAクラスへの移行を含む組み合わせ基準により、心不全において、ELISAにより血漿ニトロ化アルブミンを決定することの予後の利点について評価する。
主な評価基準:
これは、2年での死亡及びより高いNYHAクラスへの移行を含む組み合わせ基準である。
このパラメータは、人口データ(年齢、性別)、過去及び現在の嗜癖(タバコ、アルコール)、身体計測データ(身長、体重、肥満度指数、ウエスト/ヒップ比、又は体組成さえ)、NYHA分類及び心不全の従来の臨床パラメータ(左室駆出分画、平均動脈圧、心拍数、心房細動、虚血性心筋症、VO2、並びにCO2及びO2の呼吸器系等価物のような心肺運動試験からの可能であれば参加の前6カ月以内のデータ、心不全の病因論及び型(収縮性又は拡張性)、いずれかの同時罹病(糖尿病、COPD、慢性炎症性疾患)、すでに存在しているか又は開始される治療(利尿剤、ACE阻害剤、アンジオテンシンアンタゴニスト、β-遮断薬、スタチン、アスピリン、植え込み型除細動器、運動リハビリテーション)、及びそれらの期間の関数、並びに監視される対象者でのHFの進行の関数として評価する。RESIC 38コホート(約450名の患者が含まれる)の表現型及びモニタリングが参照となる。
RESIC 38コホートからの患者の採用を、異なるNYHA段階の患者を含むために、病院訪問の日までに完了する。対照は、GrenobleのCICにより採用する。
評価は、一連の既知の予測マーカーに関して同等であり、これらは、HF (トロポニンT、NT-pro-BNP、ヘマトクリット、アディポネクチン)、酸化ストレス(8-イソプロスタグランジンF2α、GSH/GSSG、ビタミンE及びカルボニル化アルブミン)及び炎症(超高感度CRP、IL-6、IL-6の可溶性受容体及びIL-10)においてある程度実証されている[White, M.ら, Increased systemic inflammation and oxidative stress in patients with worsening congestive heart failure: improvement after short-term inotropic support. Clin Sci (Lond), 2006. 110(4): p. 483〜9; Polidori, M.C.,ら, Increased F2 isoprostane plasma levels in patients with congestive heart failure are correlated with antioxidant status and disease severity. J Card Fail, 2004. 10(4): p. 334〜8; Adamopoulos, S., J.T. Parissis及びD.T. Kremastinos, A glossary of circulating cytokines in chronic heart failure. Eur J Heart Fail, 2001. 3(5): p. 517〜26; Anand, I.S.ら, C-reactive protein in heart failure: prognostic value and the effect of valsartan. Circulation, 2005. 112(10): p. 1428〜34; de Denus, S., C. Pharand,及びD.R. Williamson, Brain natriuretic peptide in the management of heart failure: the versatile neurohormone. Chest, 2004. 125(2): p. 652〜68; Kistorp, C.ら, N-terminal pro-brain natriuretic peptide, C-reactive protein, and urinary albumin levels as predictors of mortality and cardiovascular events in older adults. Jama, 2005. 293(13): p. 1609〜16; Moskowitz, R.及びM. Kukin, Oxidative stress and congestive heart failure. Congest Heart Fail, 1999. 5(4): p. 153〜163; Mariani, E.ら, Oxidative stress in brain aging, neurodegenerative and vascular diseases: an overview. J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci, 2005. 827(1): p. 65〜75; Hall, C., Essential biochemistry and physiology of (NT-pro)BNP. Eur J Heart Fail, 2004. 6(3): p. 257〜60; Antman, E.M., Decision making with cardiac troponin tests. N Engl J Med, 2002. 346(26): p. 2079〜82; Kistorp, C.ら, Plasma adiponectin, body mass index, and mortality in patients with chronic heart failure. Circulation, 2005. 112(12): p. 1756〜62]。
目的2:
同時罹病の発生についての血漿ニトロ化アルブミンの予測価の評価。
評価基準:
参加時及び1年で決定された血漿ニトロ化アルブミンの濃度と、関連病的状態(代謝症候群、COPD、糖尿病、アテローム性動脈硬化症)の発生との間の相関関係。
目的3:
慢性炎症状態のマーカーとしての血漿ニトロ化アルブミンの値及び必要であれば感度の評価。
評価基準:
血漿ニトロ化アルブミンの濃度と、認識された炎症パラメータ:超高感度CRP、IL-6及びその可溶性受容体、IL-10との相関関係。
目的4:
「中間」酸化ストレスのマーカーとしての血漿ニトロ化アルブミンの値及び必要であれば感度の評価。
評価基準:
血漿ニトロ化アルブミンの濃度と、酸化ストレスの異なる段階に相当する酸化ストレスのパラメータとの相関関係:
- GSH/GSSG:チオールの酸化:「早期」段階
- 8-イソプロスタグランジンF2α及びカルボニル化アルブミン:脂質の過酸化及びタンパク質の酸化:「進行した」段階
- ビタミンE:抗酸化剤
行った研究の手順及び通常の管理との相違点
参加時及び1年にて血液試料を採集すること以外は、通常の患者の管理に関してさらなる手順はない。
対象者の特徴
採用
患者は、特別の心臓学的診察の間に採用される。患者は、次いで、研究に参加することを打診される。
RESIC 38コホートからの患者の採用を、NYHA分類の異なる段階の患者を含むために、病院訪問の日までに完了する。対照は、GrenobleのCICにより採用する。
以下の基準のそれぞれに合致する対象者が、本研究のために提案される:
- 18〜90歳の年齢
- 社会保障に加盟しているか又はそのような組織の恩恵を受けている人
- NYHAクラスII〜IVの心不全の患者
以下の基準の少なくとも1つに合致する対象者は、参加できない:
- 心不全に関連しない病的状態(例えば進行度神経筋疾患、転移性前立腺癌)で、余命6カ月に到達している。
- 妊娠又は分娩中の女性:母乳を与えている母親
- 司法又は行政の決定により自由が奪われている人、法的保護の対象の人
- 質問に回答できない人
測定する変数及び測定の方法
・ 年齢、性別
・ 過去及び現在の嗜癖(タバコ、アルコール)
・ 心臓病の病因論
・ NYHAクラス
・ 病歴、同時罹病
・ 現在の治療
・ 動脈圧、脈拍
・ 6分間の歩行距離
・ 肥満度指数
・ ウエスト、ヒップ及び骨盤計測
・ 心不全に関する入院
臨床関連パラメータ
以下の検査は、種々の訪問のために設定される日時に関して3カ月未満の日時でなければならない。
・ 心臓及び頸動脈のエコー-ドプラ
・ ECG
・ 肺活量測定(FEV1、VC)及び周囲空気での血液ガス
・ 体組成を測定するためのDexaスキャン
生物学的パラメータ
・ 「認識された」予後パラメータ:
- NT-pro-BNP:免疫化学
- トロポニンT:免疫化学
- ヘマトクリット:光学的
- アディポネクチン:ELISA
・ ニトロ化ストレス:
- ニトロ化血漿アルブミン:ELISA
- 血漿アルブミン:免疫化学
・ 炎症:
- 超高感度CRP:免疫化学
- IL-6及びIL-6sr: ELISA
- IL-10:ELISA
・ 酸化ストレス:
- 尿8-イソプロスタグランジンF2□:ELISA
- GSH/GSSG:酵素的
- カルボニル化アルブミン:ELISA (開発中)
- ビタミンE:HPLC
・ 栄養状態:
- 合計血漿タンパク質:比色
- 血漿アルブミン:免疫化学
- プレアルブミン(TTY):免疫化学
・ 血清採取:過剰の血清及び血漿を一定量に分け、-80℃にて貯蔵
・ 尿採取:50 mlの尿を一定量に分け、-80℃にて貯蔵
測定されたパラメータの統計分析
対象者の数の計算
対象者の数の計算は、2つの群の間の死亡率のノンパラメトリックな比較に基づく。これは、以下の式:
から得られる。
(出典:“Analyse statistique des donnees de survie" Catherine Hillら - Medecine-sciences Flammarion)
「悪化せずに生存」とは、事象(死亡、2年でのより高いNYHAクラスへの移行)がないことにより規定される。
2つの群の間で25%の主な評価基準における期待される改善(「悪化せずに生存」)を仮定して、含まれる対象者の数は群あたり48名、すなわち四分位数間の1.7のオッズ比を与える5%のアルファ危険率及び80%の検出力で、4つの四分位数について192名の対象者である。
データ分析のストラテジー
統計閾値及び適用条件:
試験のために、統計的に有意な差と見なすために採用する統計閾値(α)は、0.05以下のpである。
しかし、従属パラメータの複数の比較により導入される検出力の損失を打ち消すために、統計閾値をα'=α/kとするボンフェローニ補正を用いる。
パラメータの正規性を示すために、シャピロウィルク検定を用いる。
変数の等質性を示すために、リーベン検定を用いる。
パラメータ検定の適用についての条件が満たされない場合、ノンパラメトリック検定を行うことができる。
定量的パラメータ間の関連を示すために、ピアソンの相関検定を、パラメータの正規性を確認した後に用いる。
定性的パラメータ間の関連を示すために、カイ二乗検定を用いる。
定量的変数
正規性が仮定される定量的パラメータは、平均±標準偏差、95%信頼区間、並びに第5百分位数及び第95百分位数により記載する。
これらは、正規性が棄却される場合に、中央値、最小値、最大値及び第5百分位数及び第95百分位数により表される。
定性的変数
定性的パラメータは、サイズ及び百分率で表される。
カテゴリー変数は、それぞれの評価の際に、及びそれぞれの群:サイズ及び頻度において記述統計学により集計される。
分析される集団
全体的な統計分析を、集団全体に対して行う。
主な基準の分析
- 目的1:
死亡率及びより高いNYHAクラスへの移行を含む組み合わせ基準による、心不全における血漿ニトロ化アルブミンのELISAによる決定の予後の値を評価するため。
- パラメータ:
採用する打ち切り基準(censoring criterion)は、以下の組み合わせ基準である:死亡、2年でのより高いNYHAクラスへの移行。
評価基準は、各センター内の患者のフォローアップ訪問の間に評価する。死亡の確認は、全ての患者の出生、婚姻及び死亡の登録官に手紙を送ることにより研究の最後に得る。
生存時間は連続的な定量的パラメータであるが、これは、その非対称な分布を考慮してその中央値及び95%信頼区間、並びに四分位数により記載する。
- 検定:
1.1)パラメータ(血漿ニトロ化アルブミン)の利点を、適用条件を確認した後に、一変量Coxモデルを用いて検定する。
1.2)次に、このモデルを、人口的因子(年齢、性別、BMI)及び心不全の認識された予後因子、すなわちNYHA機能的クラス、足踏み検査におけるスコア、駆出分画のレベル(45%からの+又は−)、血漿NT-pro BNPのレベルについて調節する。
1.3)調節されたCoxモデルにおける有意な因子についてのそれぞれの四分位数の生存曲線を予測するためにKaplan-Meier法を用いる。
生存曲線を、全ての層(既知の予後因子)について調節したLog-Rank検定を用いて比較する。
結果
この研究の目的は、無酸素症の子供におけるペルオキシナイトライトの生成の増加の仮説を検定し、ニトロ化アルブミンの濃度とこれらの子供の臨床状態との間に相関関係があるかを調べることであった。
このために、ニトロ化アルブミンを、周産期無酸素に罹患した48名の成熟児の生存の最初の時間(FHOL)、第1日(D1)及び第4日(D4)において回収した114個の血漿試料中で決定した。ニトロ化アルブミンの決定は、神経学的(脳症)及び全身的(凝固障害、並びに腎臓、肝臓及び心臓の損傷)な新生児病的状態の発展の状態と相関していた。
17名の患者は、中程度から重度の脳症に発展した。患者の主な特徴を以下の表Iに示す。
血漿ニトロ化アルブミンの濃度と連続変数との相関関係
ニトロ化アルブミンFHOLは、D1にてクレアチニンとのみ相関する(r=0.38、p<0.05)。D1でのニトロ化アルブミンは、Apgarスコア(1、5及び10分でのApgarスコアについてそれぞれr= -0.34、-0.47及び-0.33、p<0.05)及びpH FHOL (r=-0.41、p=0.01)と反比例し、乳酸血症FHOLと正比例する(r=0.47、p<0.01、図14A及び14B)。ニトロ化アルブミンの濃度とアルブミンの濃度との間に著しい相関関係は見出されなかった。
臨床データに対応するニトロ化アルブミンの濃度を、表Iに示す。D1でのニトロ化アルブミンの濃度の中央値(第25百分位数〜第75百分位数)は、新生児脳症(NE)の重篤度とともに増加する:NEを発生していない子供で7.0 (5.3〜8.6) ng/ml、軽度NEの子供で8.3 (4.7〜10.4) ng/ml、軽度NEの場合に13.1 (8.4〜20.3) ng/ml及び重度NEの場合に16.7 (13.1〜24.8) ng/ml (χ2 = 7.23、p<0.05、図15A〜C)。
NEの4つのサブグループ間のニトロ化アルブミン濃度の差は、中程度のNEとNEでないものとの間(z-スコア:2.2)、及び重度のNEとNEでないものとの間(z-スコア:1.98)のD1でのニトロ化アルブミンの差にボンフェローニ補正を用いない場合にのみ、意味のあるレベルに到達する。D1での血漿ニトロ化アルブミンは、中程度の形態のNEの新生児において、軽度の形態のNE又はNEでない新生児よりも有意により高かった(中央値及び第25百分位数〜第75百分位数:それぞれ14.4及び8.4〜23.7 ng/ml 対 7.3及び4.4〜9.2 ng/ml、χ2 = 6.14、p = 0.01、図16)。
第1日目でのニトロ化アルブミンのレベルは、中程度又は重度の形態のNEに発展した患者において、正常な神経学的プロファイルの患者又は軽度のNEに発展した患者と比較して増加する(中央値:それぞれ14.4 ng/ml 対 7.3 ng/ml、p = 0.01)。
対照的に、D1でのニトロ化アルブミンの濃度は、全身の合併症とは関連しない。生存の最初の1時間及びD4でのニトロ化アルブミンの濃度は、新生児の神経学的データの点では違いがない。
結論:
結果は、重度の周産期無酸素の経過の間に著しいニトロ化ストレスが生じることを示す。
驚くべきことに、血漿ニトロ化アルブミンは、周産期無酸素を示す成熟児の神経発達の良好なマーカーであるとみられる。
実施例6:ハイブリドーマの取得、スクリーニング及び特徴決定
1-免疫化
5匹の雌のOF1 Charles Riverマウス(18〜20g)を、配列番号16及び配列番号17のペプチドの混合物の静脈内及び皮下注射により免疫にした。これらの2つのペプチドは、フロイントの完全アジュバントの存在下でアルブミンと結合していた。3匹のマウス(マウス1〜3)は、50μgのペプチド混合物を受け、2匹のマウス(マウス4及び5)は、10μgのペプチド混合物を受けた。
1回目の注射の3週間後に、マウスに、フロイントの不完全アジュバントの存在下での2つのペプチドの混合物を再注射した(1回目のブースター)。
2回目の注射の3週間後に、マウスに、フロイントの不完全アジュバントの存在下での2つのペプチドの混合物を再注射した(2回目のブースター)。
1回目の注射の1ヶ月後に、注射されたマウスから血清試料を採取し、この血清を、ニトロ化アルブミンに指向された抗体の存在について試験した。
マウス2及び5からの血清のみが、ニトロ化アルブミンを認識する抗体を有しており、よってこれらを維持した。
血清試験の10日後に、マウス2に20μgのペプチド混合物の腹腔内及び静脈内ブースターを与えた。ブースターの3日後に脾臓を回収した。
血清試験の1ヶ月後に、マウス5に10μgのペプチド混合物の腹腔内及び静脈内ブースターを与えた。ブースターの3日後に脾臓を回収した。
2- 細胞融合
マウス2及び5から採血し、それらの脾臓を滅菌条件下でDMEM (ダルベッコの改変イーグル培地)を用いて回収した。脾臓を粉砕し、ろ過器でろ過した。
これと並行して、マウスの腹腔内をDMEMで洗浄し、マクロファージを含むDMEMを回収した。マクロファージを、Malassezセル中で、DMEM HAT SVF 20% ATB培地(DMEM、4mMグルタミン、HAT (ヒポキサンチン100μM、アミノプテリン0.4μM、チミジン16μM)、20%補体除去(decomplemented)胎児ウシ血清、1%抗生物質(ペニシリン/ストレプトマイシン))中に104マクロファージ/mlの溶液を調製するために、計数した。
得られた脾細胞を、次いで、DMEMで3回洗浄した。
これと並行して、BalB/c Sp2/O Ag14マウスからの骨髄腫細胞(ATCC No. CRL 1581)もDMEMで3回洗浄した。
脾細胞及び骨髄腫細胞を、5/1の脾細胞/骨髄腫細胞の比で混合し、244 gにて7分間遠心分離した。
上清を除去し、1mlのPEG (ポリエチレングリコールの40%溶液、MW 1500、37℃に加熱)を加えた。
細胞を800 rpm (108 g)にて12分間遠心分離し、10 mlのDMEM HAT SVF 20%培地(DMEM、4mMグルタミン、HAT (ヒポキサンチン100μM、アミノプテリン0.4μM、チミジン16μM)、20%補体除去胎児ウシ血清)をゆっくりと加えた。
細胞を1200 rpm (244 g)にて7分間遠心分離し、上清を除去し、容量vのDMEM HAT SVF 20%培地をペレットに:
v(mlで)=脾細胞の数/ 107 (すなわち107細胞/ml)
のように加えた。
チューブを周囲温度に1時間放置した後に、細胞を再懸濁するために元に戻した。
96ウェルプレートにおいて、100μl/ウェルの104マクロファージ/mlの溶液を加え、ウェルあたり100μlの融合細胞を、以下の希釈で加えた:
希釈1/10: ウェルあたり105脾細胞で3プレート
希釈1/20: ウェルあたり5×104脾細胞で5プレート(2×50 ml)
希釈1/40: ウェルあたり2.5×104脾細胞で2プレート
プレートを、37℃、5% CO2のオーブンに10日間入れた。
3- ハイブリドーマの選択
融合生成物の培養の10日後に、2つの選択試験を行った:
- 試験1:細胞が集密に到達したウェルを分析した:
- マウス2の脾細胞から得られた融合体について、164個のウェルを分析し、
- マウス5の脾細胞から得られた融合体について、407個のウェルを分析した。
それぞれのウェルから100μlの上清を採取し、上清を、ELISAにより、必要な抗体の検出について試験した(抗ニトロ化アルブミンハイブリドーマからの上清のスクリーニングを参照)。
ELISAアッセイの後に、選択した細胞(ニトロ化アルブミンに指向された抗体を分泌する)を、24ウェルプレートのウェル中の0.4 mlの培地で継代した。
細胞が増殖し始めたときに(24〜48時間)、1mLのDMEM HAT SVF 15% HCF1% ATB培地(DMEM、4mMグルタミン、HAT (ヒポキサンチン100μM、アミノプテリン0.4μM、チミジン16μM)、15%補体除去胎児ウシ血清、1% HCF (ハイブリドーマクローニング因子マクロファージ様起源)、1%抗生物質(ペニシリン/ストレプトマイシン))を加えた。
- 試験2:細胞が集密に到達したウェルを分析した:
- マウス2の脾細胞から得られた融合体について、24ウェルプレートの1つのウェルを分析し、
- マウス5の脾細胞から得られた融合体について、24ウェルプレートの6個のウェルを分析した。
それぞれのウェルから100μlの上清を採取し、上清を、ELISAにより、必要な抗体の検出について試験した(抗ニトロ化アルブミンハイブリドーマからの上清のスクリーニングを参照)。
4- 抗ニトロ化アルブミンハイブリドーマからの上清のスクリーニング
用いた抗原(Ag):ニトロ化アルブミン、アルブミン、KLH-ペプチド配列番号16又はKLH-ペプチド配列番号17。
5- 抗体のアイソタイプ決定
抗体のアイソタイプは、キットSouthernBiotech SBA Clonotyping System/HRP (Cliniscience, Montrouge, France)を以下のようにして用いて決定した。
1. プレートのコーティング
マウス抗免疫グロブリン抗体を5μg/mlの濃度に希釈。ウェルあたり50μlを入れ、37℃にて1時間、又は周囲温度にて16時間インキュベート。
2. 洗浄
200μl/ウェルのPBS-Tween 20 0.05%%(v/v)で1回すすぐ。
3. ブロッキング
それぞれのウェルに150μlのPBS-ミルク2.5%(w/v)を加え、37℃にて1時間インキュベート。
4. 洗浄
PBS-Tween 20 0.05%(v/v)のバッファーで1回すすぐ。
5. 試験される抗体の試料の調製
ハイブリドーマ培養物上清を1/10にPBS-Tween20 0.05%(v/v)-BSA 0.5%(w/v)で希釈。ウェルあたり50μlを入れ、周囲温度にて2時間インキュベート。
6. 洗浄
バッファーPBS-Tween20 0.05%(v/v)で3回すすぐ。
7. 2次抗体
ウェルあたり50μlのペルオキシダーゼ(HRP)と結合した抗マウスIgA、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3又はIgM抗体(1/2000にPBS-Tween20 0.05%(v/v)-BSA 0.5%(w/v)で希釈)を入れ、周囲温度にて1時間インキュベート。
8. 洗浄
バッファーPBS-Tween20 0.05%(v/v)で3回すすぐ。
9. 基質との反応
ウェルあたり50μlのテトラメチルベンジジン(KPL, Inc.)を入れ、プレートを周囲温度にて10分間インキュベート。
10. 反応の停止
50μlのH2SO4をそれぞれのウェルに加え、450 nmでの吸光度をマイクロプレートリーダー(Dynex)で読み取る。
6- 結果
以下の表IIに示すように、ニトロ化ヒトアルブミン配列(配列番号16及び配列番号17)並びにAlb-NO2に対応するペプチドについての優れた親和性により、7つのハイブリドーマを蓄積した:2F3、11G6、12F5、12H3、13H8、13H10及び15F8。
コーティング特異性の試験も、ニトロ化KLHアルブミン、ニトロ化インスリン及びニトロ化ヘモグロビンに対して行った。全ての抗体は、アルブミン、ニトロ化KLH、ニトロ化インスリン及びニトロ化ヘモグロビンに対して陰性である。
クローン2F3及び13H10を貯蔵してクローニングし、96ウェルプレートで平均してウェルあたり10、5、3、1又は5個の細胞を含む限界希釈を行った。
クローニング生成物を、培地DMEM HT SVF 15% HCF1% ATB培地(2):10% DMSO (ジメチルスルホキシド)で作製したDMEM、4mMグルタミン、HAT (ヒポキサンチン100μM、チミジン16μM)、15%補体除去胎児ウシ血清、1% HEF (ハイブリドーマ増進補助剤)、1%抗生物質(ペニシリン/ストレプトマイシン)中で凍結させた。
実施例7:ニトロ化アルブミンをアッセイするためのELISAにおける捕捉抗体としてのmAb抗-alb-NO2-Tyr138 (クローン13H10)の使用の検証
ELISAのこの形態において、モノクローナル抗体抗-alb-NO2-Tyr138 (クローン13H10)を捕捉のために用い、ペルオキシダーゼと結合した抗アルブミンポリクローナル抗体を検出のために用いる。プレートを、ペルオキシダーゼの色素産生基質であり硫酸(反応の停止)の存在下で黄色になるTMB (3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン)を用いて明示する。反応は、450 nmでの検出により定量できる。
得られた結果は、抗-alb-NO2-Tyr138モノクローナル抗体を、サンドイッチELISAにおいて捕捉抗体として用いることができることを示す(図7)。
用量応答曲線は、1 ng/mlのニトロ化アルブミンの検出限界を示す。
実施例8:mAb抗-alb-NO2-Tyr138 (クローン13H10)を捕捉のために用いるニトロ化アルブミンのELISAに対する血清の影響(図8)
ELISAのこの形態において、抗-alb-NO2-Tyr138モノクローナル抗体を捕捉のために用い、ペルオキシダーゼと結合した抗アルブミンポリクローナル抗体を検出のために用いる。プレートはTMBを用いて明示する。
種々の希釈での天然ヒト血清の混合物(プール)を、ニトロ化アルブミンのある範囲に加える。曲線は、1:20に希釈した血清のみが、<10 ng/mlのニトロ化アルブミンの濃度についてニトロ化アルブミンの測定に著しく干渉することを示す。より大きい希釈について、血清は、著しい干渉を示さない。この血清混合物は、「内因性」ニトロ化アルブミンも天然に含むことに注目すべきである。
実施例9:mAb抗-alb-NO2-Tyr138 (クローン13H10)を捕捉のために用いるニトロ化アルブミンのELISAに対する還元血清の影響(図9及び10)
ELISAのこの形態において、抗-alb-NO2-Tyr138モノクローナル抗体を捕捉のために用い、ペルオキシダーゼと結合した抗アルブミンポリクローナル抗体を検出のために用いる。プレートはTMBを用いて明示する。
内因性ニトロ化アルブミンからの干渉を避けるために、血清を、亜ジチオン酸ナトリウム(0.1M、pH 9.0、1時間)を用いて還元した。この処置は、ニトロチロシン残基を、抗体により認識されないアミノチロシンに還元する。
実施例10:mAb抗-alb-NO2-Tyr138 (クローン13H10)を捕捉のために用いるニトロ化アルブミンのELISAに対する還元アルブミンの影響(図11)
ELISAのこの形態において、抗-alb-NO2-Tyr138モノクローナル抗体を捕捉のために用い、ペルオキシダーゼに結合した抗アルブミンポリクローナル抗体を検出のために用いる。プレートはTMBを用いて明示する。
次亜硫酸ナトリウム(0.1M、pH 9.0、1時間)を用いて還元したヒト血清アルブミンを、種々の濃度である範囲のニトロ化アルブミンに加える。
還元アルブミンのみが、ニトロ化アルブミンの濃度の≧150,000倍の濃度にて干渉することがわかる。
実施例11:血漿ニトロ化アルブミンの測定のためのELISAにおけるmAb抗-alb-NO2-Tyr138 (クローン13H10)の検出抗体としての使用の検証(図12)
ELISAのこの形態において、抗アルブミンポリクローナル抗体を捕捉のために用い、ペルオキシダーゼと結合した抗-alb-NO2-Tyr138モノクローナル抗体を検出のために用いる。プレートはTMBを用いて明示する。
得られた結果は、抗-alb-NO2-Tyr138モノクローナル抗体を、サンドイッチELISAにおいて検出抗体として用いることができることを示す。
実施例12:ヒト血清中のニトロ化アルブミンを測定するためのELISAにおけるmAb抗-alb-NO2-Tyr138 (クローン13H10)の使用の検証(図13)
ELISAのこの形態において、抗-alb-NO2-Tyr138モノクローナル抗体を捕捉のために用い、ペルオキシダーゼと結合した抗アルブミンポリクローナル抗体を検出のために用いる。プレートはTMBを用いて明示する。
ヒト血清の混合物を、PBS中の異なる希釈にてアッセイする。結果は、ニトロ化アルブミンを、血清の1:50希釈まで血清中でアッセイできることを示す。
実施例13:アルブミンの411位にニトロチロシンを含む配列LVRY-NO2TQKAPQに対する抗体
411位にニトロチロシンを含む配列LVR(Y-NO2)TQKAPQに指向された2F3モノクローナル抗体を用いて、上記と同様の結果を得た。
言い換えると、この抗体は、ニトロ化アルブミンに関して同じ特異性及び親和性を示し、捕捉又は検出抗体として機能する。
結論:
得られた結果は、それぞれTyr138及びTyr411を含むヒト血清アルブミンの既知のニトロ化配列に指向されたモノクローナル抗体が:
-天然ニトロ化ヒトアルブミン中のこれらの2つの配列を特異的に認識し、
-ニトロ化されていないヒトアルブミンを認識せず、
-インスリン、ヘモグロビン及びKLHのような他のニトロ化ペプチド又はタンパク質を認識せず、
-ELISAによるニトロ化ヒトアルブミンの決定に用いることができ、
-ヒト血清中のELISAによるニトロ化ヒト血清アルブミンの決定に用いることができ、
-ELISAにおいて捕捉又は検出のために用いることができる
ことを示す。

Claims (7)

  1. ルブミンのY138又はY411チロシン残基のニトロ化度を、診断すべき個体からの生物学的試料中で定量アッセイすることを含む、ニトロ化ストレスに関連する慢性又は急性の病的状態の重篤度及び進行度の状態の診断を補助するためのデータを取得する方法。
  2. (a) 診断すべき個体からの生物学的試料における、アルブミンのY138又はY411チロシン残基のニトロ化度の定量アッセイと、
    (b) (a)で定量したニトロ化度の値と、前記慢性又は急性の病的状態に罹患していない個体からの生物学的試料において定量されたアルブミンのY138若しくはY411チロシン残基又はそれらと同等のチロシン残基のニトロ化度の値との比較
    を含む、請求項1に記載の方法。
  3. (a) 診断すべき個体からの生物学的試料における、アルブミンのY138又はY411チロシン残基のニトロ化度の定量アッセイと、
    (b) (a)で定量したニトロ化度の値と、アルブミンのY138若しくはY411チロシン残基又はそれらと同等のチロシン残基のn個の既知のニトロ化度の値であって、前記慢性又は急性の病的状態の重篤度及び進行度の特定の状態とそれぞれ関連するn個の既知の値との比較
    を含む、請求項1に記載の方法。
  4. 前記定量アッセイが、各々がY 138又はY411ニトロ化チロシン残基を有するアルブミンを特異的に認識する少なくとも1つの抗体により行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記ニトロ化ストレスに関連する慢性又は急性の病的状態が、炎症性疾患、感染性疾患、神経変性疾患、低酸素症、虚血性疾患、糖尿病、代謝障害、心血管疾患、呼吸器疾患及び癌からなる群に属することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 記Y 138又はY411 ニトロ化チロシン残基を有するアルブミンを特異的に認識する抗体が、CNCM (Collection Nationale de Culture de Microorganismes, Institut Pasteur, Paris, France)に2009年1月8日にCNCM I-4111又はCNCM I-4110の受託番号で寄託されたハイブリドーマにより分泌されるモノクローナル抗体であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
  7. 前記少なくとも1つの抗体と前記Y 138 又はY 411 ニトロ化チロシン残基を有するアルブミンとの免疫複合体の検出が、免疫組織化学、免疫細胞化学、免疫沈降、ウェスタンブロッティング又は放射免疫学の技術により行われる請求項4、5又は6に記載の方法。
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