以下、図面を参照して本発明に係るバイオセンサ、バイオセンサカートリッジ、測定装置及び測定方法について説明する。但し、本発明のバイオセンサ、バイオセンサカートリッジ、測定装置及び測定方法は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態及び実施例で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
上述したように、本発明者らは、バイオセンサの電極系の保護と電極系への試料の供給問題とを同時に解決すべく鋭意検討した結果、測定前に電極系を基材で密閉して、測定時に密閉した基材を剥離することにより、バイオセンサの電極系が湿気、酸化により受ける試料測定物質の特性劣化を防止できることを見出した。なお、以下ではバイオセンサの一例として、グルコースセンサについて説明するが、本発明の実施形態に係るバイオセンサ、バイオセンサカートリッジ、測定装置及び測定方法は、これに限定されるものではなく、血糖の他、様々な試料及び被検出物に対して適用可能である。
[バイオセンサ]
図1は、本発明の一実施形態に係る測定前のバイオセンサ100を示す平面図である。バイオセンサ100は、第1の基材1上に電極系10と配線部20とを含む複数の検出部101を備え、電極系10をそれぞれ密閉するようにカバーフィルム90を配置する。検出部101は、第1の基材1の長手方向に所定の間隔で配置される。カバーフィルム90は、所定の間隔で配置された複数の検出部101の電極系10のそれぞれを第1の基材1とヒートシール等により直接又は接着剤を介して接着して密閉する。バイオセンサ100のそれぞれの電極系10を第1の基材1とカバーフィルム90とで接着して密閉することによって、電極系10に十分な防湿保障を得ることができるとともに電極系10に形成された酵素・電子受容体の酸化を防止できる。
ここで、検出部101が配置される所定の間隔とは、後述するバイオセンサカートリッジにおいて、測定位置の検出部が測定後の検出部に付着・凝固した血液による汚染を受けない間隔である。従って、バイオセンサを収容するバイオセンサカートリッジの形状に応じて任意に設定可能である。
検出部101は、電極系10と配線部20とを有する。電極系10は、作用極11と、対極13と、参照極15とを含む。作用極11、対極13及び参照極15には、配線21、配線23及び配線25がそれぞれ接続され、配線部20を構成する。図1において、直線矢印はバイオセンサカートリッジに収容された時のバイオセンサ100の送り方向を示す。バイオセンサ100は、測定時には、電極系10に試料を採取する。このとき、電極系10からの電気信号を測定装置に伝達するため、電極系10に電気的に接続された配線21、配線23及び配線25と、図示しないが、配線21、配線23及び配線25にそれぞれ対応する接続電極とをそれぞれ接触させる。接続電極は、後述するバイオセンサカートリッジまたは測定装置の何れかに配設され、結果として測定装置に電気信号を伝達可能であればよい。
本発明に係るバイオセンサの別の実施形態について説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る測定前のバイオセンサ200を示す模式図である。図2(a)は測定前のバイオセンサ200の検出部201がカバーフィルム90で覆われた平面図を示し、図2(b)は図2(a)の線A−A’の断面図を示す。図3は、本発明の一実施形態に係る測定前のバイオセンサ200を示す模式図である。図3(a)は、測定前のバイオセンサ200の電極系10がカバーフィルム90で覆われた平面図を示し、図3(b)は図3(a)の線A−A’の断面図を示す。バイオセンサ200は、第1の基材1上に複数の検出部201を備え、複数の検出部201のそれぞれを密閉するようにカバーフィルム90を配置する。検出部201は、第1の基材1の長手方向に所定の間隔で配置される。カバーフィルム90は、所定の間隔で配置された検出部201又は電極系10を密閉する。
ここで、検出部201が配置される所定の間隔とは、後述するバイオセンサカートリッジにおいて、測定位置の検出部が測定後の検出部に付着・凝固した血液による汚染を受けず、且つ、測定位置の検出部を用いた測定時に、測定前の検出部が血液による汚染を受けない間隔である。従って、バイオセンサを収容するバイオセンサカートリッジの形状に応じて任意に設定可能である。
図2(a)に示したバイオセンサ200は、測定前の状態であり、検出部201がカバーフィルム90で密閉するように覆われた状態である。カバーフィルム90は、第1の基材1上の各検出部201を内包するように枠状の接着層91を所定の間隔で配置し、接着層91を介して検出部201を密閉するように覆う。バイオセンサ200は、測定時には図2(a)の破線によって折り返して測定に使用される。図2(a)は折り返す前の状態の平面図を示している。図2(a)及び(b)では、接着層91を介してバイオセンサ200の検出部201を密閉するように覆って形成したが、図3(a)及び(b)に示したように、接着層91を介して検出部201の電極系10のみを密閉するように覆って形成してもよい。この図3(a)は、折り返したバイオセンサ200の平面図を示す。図3(a)に示したバイオセンサ200では、少なくとも酵素反応部が配置される電極系をカバーフィルム90で密閉しておく。バイオセンサ200の検出部201または電極系10をカバーフィルム90で密閉するように覆うことによって、十分な防湿保障を得ることができるとともに電極系10に形成された酵素・電子受容体の酸化を防止できる。なお、接着層91は必須ではなく、カバーフィルム90と第1の基材1とをヒートシール等により直接接着させてもよい。以下、バイオセンサ200からカバーフィルム90を剥離した場合のバイオセンサ200について説明する。
検出部201は、電極系10と配線部20とを有する。電極系10は、作用極11と、対極13と、参照極15とを含む。作用極11、対極13及び参照極15には、配線21、配線23及び配線25がそれぞれ接続され、配線部20を構成する。電極系10に接続する配線部20の一端とは反対側に、電極系10からの電気信号を測定装置に伝達するための配線部の一部130が配置される。バイオセンサは、配線部20が屈曲して、電極系10と配線部の一部130とが、第1の基材1の短手方向の両側にそれぞれ平行に配置される。
図2(a)及び図3(a)において、直線矢印はバイオセンサカートリッジに収容された時のバイオセンサの送り方向を示す。バイオセンサは、測定時には、バイオセンサの長手方向に平行な図2(a)中の破線に沿って山折された状態、すなわち、図3(a)に示す折り返した状態で、電極系10に試料を採取する。このとき、電極系10からの電気信号を測定装置に伝達するための配線部の一部130は、第1の基材1を介して電極系10の背面に配置される。バイオセンサを用いた測定において、第1の基材1を介して電極系10の背面に配置された配線部の一部130に接続電極を接触させることにより、電極系10からの電気信号を測定装置に伝達する。試料採取する面と接続電極に接触する面を異ならせることで、試料により接続電極が汚染することを防止することができる。
図4は、本発明の一実施形態に係る配線部の一部130と接続電極520との接続を示す模式図である。図4(a)はバイオセンサ200の配線部の一部130が配置された面から見た図であり、図4(b)は折り返されたバイオセンサ200を側面から見た図である。また、図4(c)は接続電極520の別の形態の例を示す図である。
図4(a)及び図4(b)に示したように、バイオセンサ200は、第1の基材1を介して電極系10の背面に配置された配線21、配線23及び配線25と、接続電極521、接続電極523及び接続電極525とを、それぞれ接触させることにより、測定装置に電極系10からの電気信号を測定装置に伝達することができる。接続電極521、接続電極523及び接続電極525は、後述するバイオセンサカートリッジまたは測定装置の何れかに配設され、結果として測定装置に電気信号を伝達可能であればよい。接続電極521、接続電極523及び接続電極525は、弾性体を用いて保持することにより、配線21、配線23及び配線25とスムーズに接触させることができる。
また、接続電極520は、図4(c)に示したように、支柱に接続電極521、接続電極523及び接続電極525を平行に配置することにより構成してもよい。このような構成の接続電極520を用いると、弾性体を用いずに配線21、配線23及び配線25とスムーズに接触させることができる。なお、配線21、配線23及び配線25は必ずしも平行に配置されていることに限るものではない。それぞれ他の配線と交差しないように第1の基材1の長手方向に沿って配置されていればよい。
本実施形態においては、測定時の配線部の一部130の配置を電極系10の背面として説明したが、測定時の配線部の一部130の配置は、これに限定されるものではない。電極系10が配置された第1の基材1の面を第1の面とし、測定時の配線部の一部130が配置される第1の基材1の面を第2の面とした時に、図5に示すように、第1の面と第2の面とがなす角θは、0°以上180°未満であればよい。すなわち、測定時に、電極系10と配線部の一部130とが、空間的に異なる面に配置されるようにすれば良い。
本実施形態においては、配線部の一部130の領域の配線21、配線23及び配線25は、バイオセンサ100の送り方向に沿って配設される。このため、バイオセンサ100は、接続電極との配線部の一部130の領域の配線21、配線23及び配線25の長さを十分に取ることにより、各配線と接続電極との位置合わせにおいて、バイオセンサ200の送り方向に対する制御が容易になり、測定時の精度を高く維持することができる。また、配線21、配線23及び配線25を第1の基材1の長手方向(バイオセンサの送り方向)に沿って配置することで、接続電極521、接続電極523及び接続電極525をそれぞれ干渉しない位置に配置することが容易になる。
本実施形態に係る第1の基材1は電極系10を支持する基材であり、少なくとも電極系10が配置される面は絶縁性を有する。第1の基材1には電気絶縁性を有し、弾性を有する部材を用いることが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリカーボネート(PC)等のフィルムを好適に用いることができる。特に、PETは、材料特性や加工性に優れ、製造コストも抑えることができ、測定頻度の高い糖尿病患者が用いるグルコースセンサには好適である。
第1の基材1の形状、大きさ、厚さは、本発明のバイオセンサを接続して使用する装置の接続電極の形状等により、適宜設定することができる。本実施形態に係る第1の基材1は、0.2mm以上15.0mm以下の幅の帯状の形状が好ましい。より好ましくは、2.5mm以上10.0mm以下の幅である。この範囲の幅を有する第1の基材1を用いることにより、測定に十分な血液を採取可能で、且つ、小型で軽量の測定装置に装着可能なバイオセンサカートリッジを実現することができる。また、第1の基材1の厚さは、0.004mm以上2.5mm以下が好ましく、0.006mm以上0.075mm以下がより好ましい。第1の基材1は、この範囲の厚さを有することによりロール加工し易すくなり、小型の測定装置に装着可能なバイオセンサカートリッジを実現することができる。
図6は、本発明の一実施形態に係る電極系10付近を拡大したバイオセンサの模式図である。上述したように、電極系10は作用極11、対極13及び参照極15を含む。なお、図示しないが、測定前に電極系10は、カバーフィルム90によって、密閉されるように覆われる。作用極11は還元体の電子受容体に電圧を印加するための一方の電極で、作用極11上に位置する酵素反応部17を備える。酵素反応部17は酵素及び電子受容体を含む。酵素反応部17は、酵素と電子受容体とを混合したものであってもよく、酵素と電子受容体とを別々に積層したものであってもよい。本実施形態では、酵素反応部17を作用極11の上部表面に直接配置した態様を用いて説明しているが、酵素反応部17は空間を介して作用極11に対向するように配置されてもよい。対極13は電子受容体から作用極11に放出された電子によって流れた電流を計測するための一方の電極である。また、参照極15は、作用極11の電位を決定する際の基準となる電極である。
電極系10には、導電性、耐腐食性、平滑性及び濡れ性に優れた材料を用いる。電極系10には、例えば、カーボン、銀(Ag)、塩化銀(AgCl)、金(Au)、パラジウム(Pd)を用いることができ、特にカーボンは酸化や腐食に対する耐性に優れ、製造コストも抑えることができ、測定頻度の高い糖尿病患者が用いるグルコースセンサには好適である。電極系10は、カーボン顔料と有機バインダーの混合物により形成することができる。本発明の実施形態に係る電極系10に用いるカーボン顔料としては、例えば、黒鉛、アモルファスカーボン、ダイヤモンドライクカーボン、カーボンファイバー、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノファイバー等を用いることができる。有機バインダーとしてはアクリル樹脂、エステル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂等を用いることができる。
電極系10の形状、大きさ、厚さは、材料や被検出物に応じて適宜設定することができる。本実施形態に係る電極系10は、0.05mm以上2.0mm以下の幅の矩形の形状が好ましい。より好ましくは、0.1mm以上0.5mm以下の幅である。この範囲の幅を有する第1の基材1を用いることにより、バイオセンサの製造における各電極の面積精度と、測定における各電極と試料との十分な接触空間を提供することができる。また、電極系10の厚さは、0.0005mm以上2.0mm以下が好ましく、0.001mm以上0.1mm以下がより好ましい。電極系10は、この範囲の厚さを有することにより、バイオセンサに要求される隠蔽性と抵抗値を提供することができる。
本実施形態に係る酵素反応部17は、酵素と電子受容体とを含む。グルコース濃度を測定する場合には酵素としてグルコースオキシダーゼ(GOD)、グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)を用いることができる。電子受容体はフェリシアン化カリウム、フェロセン誘導体、キノン誘導体、オスミューム誘導体等を用いることができる。酵素と電子受容体は、適宜溶媒で希釈して用いる。本実施形態に係る溶媒としては、例えば、水、アルコール、水−アルコール混合溶媒がある。また、直鎖、環状の炭化水素貧溶媒に均一分散させてもよい。酵素と電子受容体とをそれぞれ1試験体当り0.3ユニット以上10ユニット以下と0.5μg以上200μg以下とすることが好ましい。グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼは、純度の高いものが好ましく、上述の範囲の活性を有するものであれば、特に由来となる生物種は限定されず、例えば、グルコースオキシダーゼとしては、東洋紡社製GLO−201を用いることができる。酵素反応部17の酵素及び電子受容体は、酵素量(力価/ユニット)に準じた反応量が得られるが、酵素反応部17の性能を担保する最適重量部の小過剰でよい。
また、酵素反応部17は、作用電極11より小さい面積で形成することが好ましい。例えば、酵素反応部17は、0.1mm以上1.0mm以下の範囲で幅を狭くする。酵素反応部17の厚さは、1μm以上100μm以下の範囲が好ましい。酵素反応部17はその面積に比例した検出電流が得られるため、酵素反応部17の面積は可能な範囲で広く設定することが好ましい。
本実施形態に係る配線部20には、導電性に優れた材料を用いる。配線部20には、例えば、カーボン、銀(Ag)、塩化銀(AgCl)、金(Au)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、ステンレス鋼(SUS)を用いることができ、特に銅、アルミニウム及びステンレス鋼は、金属配線の信頼性の観点から好適である。
配線部20の形状、大きさ、厚さは、材料や被検出物に応じて適宜設定することができる。本実施形態に係る配線部20は、0.05mm以上2.0mm以下の幅の矩形の形状が好ましい。より好ましくは、0.1mm以上0.5mm以下の幅である。この範囲の幅を有する配線部20を用いることにより、バイオセンサの製造における各配線の面積精度を提供することができる。また、電極系10の厚さは、0.002mm以上2.0mm以下が好ましく、0.005mm以上1.0mmがより好ましい。配線部20は、この範囲の厚さを有することにより、バイオセンサに要求される加工性と信頼性を提供することができる。
次にカバーフィルム90を第1の基材1に接着するための接着層91について説明する。カバーフィルム90の接着層91は、非相溶の高密度ポリエチレンとポリプロピレンからなり、これらの樹脂のうちの成分比率の高い方が海、成分比率の低い方が島を形成する海島構造をとる。
本発明の実施形態において、接着層91は、樹脂のMFR(メルトマスフローレイト)をコントロールすることにより海島構造を制御して、所望の凝集剥離強度を達成することができ、カバーフィルムと接着することによって、防湿保障及び酸化防止に優れたバイオセンサが得られる。
カバーフィルム90は、接着層91を介して複数の検出部101をそれぞれが密閉するように覆う。本発明の実施形態において使用されるカバーフィルム90の樹脂名は、業界において慣用されるものを用いる。また、本発明の実施形態において、密度は「JIS K 7112」に準拠して測定した。
(1)接着層91を構成する高密度ポリエチレン
本実施形態において、ポリエチレンには、エチレン・ホモポリマ、及びエチレンと他のα−オレフィン(例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等)とのブロック又はランダム共重合体が包含される。
接着層91を構成する高密度ポリエチレンは、密度が0.945g/cm3以上0.965g/cm3以下であり、より好ましくは0.950g/cm3以上0.955g/cm3以下であり、そしてMFR(190℃)が1g/10分以上7g/10分以下であり、より好ましくは1g/10分以上4g/10分以下である比較的溶融粘度の高い樹脂を使用する。その結果、カバーフィルム90の剥離時の毛羽立ちが防止でき、剥離後の試料測定時の血液による導通不良を防止することができる。ここで、接着層91を構成する高密度ポリエチレンの密度が0.945g/cm3未満であると、糸引きが生じ易くなり、測定可能な血液を電極系10に導入しにくくなる。また0.965g/cm3を超えると、製膜時に未溶融物が生じる可能性があり、測定時にカバーフィルム90の剥離がスムーズにできなくなる恐れがある。そして、MFR(190℃)が1g/10分未満であると、流れ性が低下するために製造が困難になり、その上、高MFRのポリプロピレンとの相溶性不良を起こして目に見えるムラが生じるため好ましくない。また7g/10分を超えると、ポリプロピレンのMFRとの差がなくなるため、相互分散度が高くなり、目的の易開封性が得られないため好ましくない。ここで、MFR(190℃)は「JIS K6922」に準拠して測定した。本実施形態で使用する好適な高密度ポリエチレンは、例えばプライムポリマー(株)製のハイゼックス3300F、日本ポリエチレン(株)製のノバテックHJ360及びHJ362N等が挙げられる。
(2)接着層91を構成するポリプロピレン
本実施形態において、ポリプロピレンには、プロピレン・ホモポリマ、及びプロピレンと他のα−オレフィンとのブロック又はランダム共重合体が包含される。接着層91を構成するポリプロピレンとしては、密度が0.9g/cm3以上0.91g/cm3以下であり、そしてMFR(230℃)が5g/10分以上30g/10分以下である樹脂を使用する。適度なシール強度を得るためには、エチレン・プロピレンランダム共重合体が特に好ましい。ブロック共重合体は、凝集破壊強度が高くなりすぎて良好な易開封性が得られない場合がある。接着層を構成するポリプロピレンのMFR(230℃)が5g/10分未満であると、低MFRの高密度ポリエチレンと流動性が近くなることから、微分散状態になるため、適度な易開封性が得られない。また、MFR(230℃)が30g/10分を超えると、高流動性であるため、インフレーション製膜法によって製膜することができない。ここで、MFR(230℃)は「JIS K6921」に準拠して測定した。本実施形態で使用するのに好適なポリプロピレンとしては、例えばプライムポリプロ(株)製のエチレン・プロピレンランダム共重合体(J235T)、日本ポリプロ(株)製のノバテックFL03H等が挙げられる。
(3)ブレンド比率
接着層91の高密度ポリエチレンとポリプロピレンのブレンド比率は、10〜50重量部の高密度ポリエチレンと、50〜90重量部のポリプロピレンとからなることが好ましいが、要求される接着強度に応じて、ブレンド比率を変更することができる。ポリプロピレンの比率が上記の範囲より高いと接着強度が高くなりすぎて良好な易開封性が得られず、また比率が低いと十分な接着強度が得られず、湿気、酸化を防止できる密封性が満足できない。
接着層91に関しては層厚が20μm以下、好ましくは10μm以下であるものが良い。20μmを超えると剥離層(凝集剥離層)が汚くなり、剥離面の美麗性に劣るものになる。
次にバイオセンサの電極系を密閉するカバーフィルム90について説明する。カバーフィルム90は、接着層91と相俟って易開封性に寄与するだけでなく、バイオセンサ100の蓋材としての機能を果たすための強度、及び製膜安定性も要求される。このような要求を満たす樹脂として、マルチサイト触媒を用いて重合した密度0.93g/cm3以上0.94g/cm3以下のエチレン・ブテン共重合体からなるか又は密度0.945g/cm3以上0.965g/cm3以下の高密度ポリエチレンが用いられる。また、曲げ弾性率が、「JIS K 7171」による数値が300MPa以上であるものが特に好ましい。カバーフィルム90は、必要に応じて1層又は2層以上積層することができる。
本実施形態で使用する好適なマルチサイト触媒を用いて重合した密度0.93g/cm3以上0.94g/cm3以下のエチレン・ブテン共重合体又は密度0.945g/cm3以上0.965g/cm3以下の高密度ポリエチレンは、例えばプライムポリマー(株)製のエチレン・ブテン共重合体(ネオゼックス3510F)、プライムポリマー(株)製の高密度ポリエチレン(ハイゼックス3300F)、日本ポリエチレン(株)製の高密度ポリエチレン(ノバテックHJ360)、日本ポリエチレン(株)製の高密度ポリエチレン(ノバテックHJ362N)等が挙げられる。
また、カバーフィルム90に関しては層厚が20μm〜100μmのものが易カット性の点から好ましい。
次にカバーフィルム90に要求される物性を設定する際の要因について説明する。
(1)凝集破壊強度
カバーフィルム90の易開封性又は凝集破壊強度のコントロールは、接着層91に用いる高密度ポリエチレンとポリプロピレンの配合比を変更することで行う。
(2)ガスバリア性
バイオセンサ100を湿気、酸化から抑止するために、酸素及び/又は水蒸気バリア性を有するカバーフィルム90を積層してもよい。本発明の実施形態に係るカバーフィルム90は、単独で又は場合により適当な基材をさらに積層することにより、酸素透過度に関して、JIS K 7126に準拠した手法で得られる数値として2.0cc/m2・日・atm以下という優れた酸素バリア性を示すことができ、さらに水蒸気透過度に関しては、JIS K 7129に準拠した手法で得られる数値として3.0g/m2・日以下という優れた水蒸気バリア性を示すことができる。
カバーフィルム90は、第1の基材1上の電極系10をヒートシールによって密閉するように直接接着してもよい。開封性を考慮してシール接着幅を適宜設定すればよい。また、カバーフィルム90は、第1の基材1上の各検出部101を内包するように枠状の接着層91を所定の間隔で配置して、カバーフィルム90と接着層91とが接するように重ねられた状態で接着してもよい。この場合、剥離時には、接着層91の凝集剥離が起こる。
本実施形態に係るバイオセンサ100は、測定前にバイオセンサ100の電極系10を第1の基材1とカバーフィルム90とをヒートシールで密閉することによって、電極系10に十分な防湿保障が得ることができるとともに電極系10に形成された酵素・電子受容体の酸化を防止できる。
一方、他の実施形態に係るバイオセンサ200は、測定前にバイオセンサ100の検出部101又は電極系10を接着層90を介してカバーフィルム90と接着させて密閉することによって、電極系10に十分な防湿保障を得ることができるとともに電極系10に形成された酵素・電子受容体の酸化を防止できる。バイオセンサ200は、測定時にカバーフィルム90を第1の基材1から剥離して、電極系10からの電気信号を測定装置に伝達するための配線部の一部130を、電極系と空間的に異なる面に位置させることにより、付着・凝固した血液による導通不良を防止することができ、正確な血糖値の測定を行うことができる。このとき、電極系が配置された面と、電極系からの電気信号を測定装置に伝達するための配線部の一部が配置された面とのなす角を0°以上180°未満にすることにより、付着・凝固した血液による導通不良を防止することができる。また、本実施形態に係るバイオセンサは、電極系からの電気信号を測定装置に伝達するための配線部の一部を、測定時に電極系と空間的に異なる面に位置させるため、測定前には、電極系と配線部とは第1の基材の同一の面に配置してもよく、バイオセンサの製造が簡便となり、従って、センサの作り込みの精度を高く維持することができる。
上述したバイオセンサ200は、電極系10と配線部の一部130とを第1の基材1の同一平面上に形成し、バイオセンサの長手方向と平行にバイオセンサを折り曲げることにより、電極系10と配線部の一部130とが異なる面に配置するようにして測定するバイオセンサの例を説明した。以下においては、第1の基材1の表裏にそれぞれ電極系と配線部とを配置し、貫通孔を介して接続するバイオセンサ300の例について説明する。
図7は、本発明の一実施形態に係る測定前のバイオセンサ300を示す模式図である。図7(a)は測定前のバイオセンサ300の平面図を示し、図7(b)は図7(a)の線A−A’の断面図を示す。図7(a)において、直線矢印はバイオセンサカートリッジに収容された時のバイオセンサ300の送り方向を示す。バイオセンサ300は、第1の基材1上に複数の検出部301を備え、複数の検出部301を密閉するように覆ってカバーフィルム90が配置される。検出部301は、第1の基材1の長手方向に所定の間隔で配置される。カバーフィルム90は、所定の間隔で配置された検出部301を密閉するように覆う。なお、図7では、検出部301がカバーフィルム90で密閉される例を示したが、電極系のみをカバーフィルム90で密閉してもよい。また、接着層91を用いずに、カバーフィルム90と第2の基材3とをヒートシール等により直接接着させてもよい。
検出部301は、電極系と配線部とを有し、貫通孔を介して電極系と配線部とを接続する。電極系は、作用極51と対極53とを含み、作用極51を取り囲むように対極53が配置される。配線部は、配線61と配線63とを含む。作用極51は、貫通孔71を介して配線61に接続する。また、対極53は、貫通孔73を介して配線63に接続する。したがって、本実施形態に係るバイオセンサ300においては、電極系と配線部とは、互いに第1の基材1の反対側に配置される。また、バイオセンサ100、200で説明したように、バイオセンサ300は、測定時に配線と配線とに、接続電極と接続電極とをそれぞれ接続することにより、電極系からの電気信号を測定装置に伝達することができる。
バイオセンサ300において、検出部301は、対極53を用いて参照極として機能させる検出部の例を示す。検出部301は、例えばパルスや三角波電圧を用いて、作用極51と対極53に電圧を印加して、対極としての電流測定を行い、また、所定時間ずらして、対極53を参照極として電圧印加を印加して電流測定を行う、時間分解式の測定方法を適用することができる。このような測定方法は、後述する測定装置に配設される制御部により電圧を印加する電極を切り替え、受信した電気信号を演算部により測定値に変換することで可能となる。貫通孔を用いて表裏導通させる以外には、検出部301を作用極51、対極53により構成し、各極に接続する2本の配線を設けてもよい。また、対極53は作用極51の周囲を囲むように配置すればよい。このような2極法は、参照極を必要とする3極法に比して電極系の構成が簡易なものとなる。
なお、本実施形態に係るバイオセンサ300において、第1の基材1、電極系、配線部のその他の構成及びカバーフィルム90はバイオセンサ100、200と同様であるため、詳細な説明は省略する。
本実施形態に係るバイオセンサ300は、検出部301を接着層91を介してカバーフィルム90で密閉するように覆うことによって、検出部301を湿気、酸化による影響なくし、十分な防湿保障を得ることができるとともに電極系10に形成された酵素・電子受容体の酸化を防止できる。また、バイオセンサ300は、測定時に第1の基材1からカバーフィルム90を剥離して、電極系からの電気信号を測定装置に伝達するための配線部を、第1の基材1を介して互いに反対側の面に形成するため、折り返した状態にすることなく、付着・凝固した血液による導通不良を防止することができ、正確な血糖値の測定を行うことができる。
(バイオセンサの製造方法)
上述の実施形態において説明したバイオセンサ100、200及び300の製造方法について説明する。第1の基材1の上部表面に配線部を配設する。配線部の形成には、印刷法、蒸着法、エッチング、メッキ、切削、レーザ加工(レーザトラッキング)等を用いることができる。配線部の材料に応じて適宜選択することができる。
その後、配線部の上面及び側面に電極系を形成する。電極系の形成には、印刷法、蒸着法、エッチング、メッキ、切削、レーザ加工(レーザトラッキング)等を用いることができる。配線部の材料に応じて適宜選択することができる。
このように形成した電極の1つの作用極の上面に、酵素及び電子受容体を含む溶液をディスペンサで塗布した後、40℃で乾燥させ、溶媒成分を除去する。このようにして、酵素反応部を形成する。次に、電極系を密閉するようにカバーフィルム90を第1の基材1とヒートシールし、または、第1の基材1上に枠状に接着層91を電極系が内包されるように所定の間隔を有して貼付し、検出部101、201、301にカバーフィルム90を密閉するように接着することによって、バイオセンサ100、200及び300それぞれを製造することができる。
次に、本発明の別の実施形態について図を参照して説明する。なお、上述したバイオセンサ100、200、300と同一構成には同一の符号を付し、同一の説明については、説明を省略する。図8は、本発明の一実施形態に係るバイオセンサ400を示す模式図である。図8(a)は測定前のバイオセンサ300の検出部がカバーフィルムで覆われた平面図を示し、図8(b)は図8(a)の破線部の断面図を示す。図8において、直線矢印はバイオセンサカートリッジに収容された時のバイオセンサ400の送り方向を示す。バイオセンサ400は、第1の基材1に複数の検出部401を備え、各検出部401の電極系10の中心に空間を有する第3の基材5、第3の基材5上に切込み部を有する第2の基材3、第2の基材3上の切込み部を内包するように枠状に配置された接着層91、第2の基材3の切込み部を密閉するように接着層91に接着されたカバーフィルム90を備える。検出部401は、第1の基材1の長手方向に所定の間隔で配置される。また、接着層91を用いずに、カバーフィルム90と第2の基材3とをヒートシール等により直接接着させてもよい。
検出部401は、電極系10と配線部20とを有し、貫通孔30を介して電極系10と配線部20とを電気的に接続する。電極系10は、作用極11、対極13及び参照極15を含む。配線部20は、配線21、配線23及び配線25を含む。作用極11は、貫通孔31を介して配線21に接続する。対極13は、貫通孔33を介して配線23に接続する。また、参照極15は、貫通孔35を介して配線25に接続する。したがって、本実施形態に係るバイオセンサ400においては、電極系10と配線部20とは、互いに第1の基材1の反対側に配置される。また、バイオセンサ300は、測定時に配線21、配線23及び配線25を接続電極にそれぞれ接続することにより、電極系10からの電気信号を測定装置に伝達することができる。
バイオセンサ400において、検出部401は所定の空間40を配して、第2の基材3により覆われ、第2の基材3上には接着層91を介してカバーフィルム90が配置される。第2の基材3には、電極系10が配置された位置に第2の基材3を貫通する切込み部110を有し、第2の基材3の切込み部110上には枠状の接着層91を所定の間隔を有して配置し、さらに、接着層91上にカバーフィルム90を配置する。なお、第2の基材3上に配置されるカバーフィルム90を接着層を91介して接着したが、接着層を用いずに第2の基材3上に直接接着してもよい。この場合、第2の基材3とカバーフィルム90は、ヒートシールにより接着される。切込み部110は、厚み方向に第2の基材3を貫通する。切込み部110は、第1の基材1の電極系10が配置された位置に対向するように第2の基材3に配置され、検出部401の配置に応じて、第2の基材3の長手方向に所定の間隔で配置される。バイオセンサ400は、切込み部110を開口させて、電極系10に測定試料を導入することにより、試料に含まれる被検物を測定することができる。
第2の基材3上にはカバーフィルム90が配置される。カバーフィルム90は、第2の基材3の切込み部110を密閉するように第2の基材3と接着させてもよく、または所定の間隔を有して枠状に接着層91を貼付し、接着層91上にカバーフィルム90を接着してもよい。バイオセンサ400は、測定時にカバーフィルム90を剥離させて、電極系10に測定試料を導入することにより、試料に含まれる被検物を測定することができる。
図9は、バイオセンサ400を用いた測定方法を示す模式図である。図9(a)は測定前のバイオセンサ400の平面図を示し、図9(c)は図9(a)の破線部における断面図を示す。また、図9(b)は測定時のバイオセンサ400の平面図を示し、図9(d)は図9(b)の破線部における断面図を示す。
測定前のバイオセンサ400において、切込み部110は閉じた状態であり、且つ、第2の基材3上にカバーフィルム90を配置することによって、検出部401に対する湿気、酸化による影響を防止し、十分な防湿保障を得ることができるとともに電極系10に形成された酵素・電子受容体の酸化を防止できる。一方、図9(a)及び図9(c)に示したように、測定時には、後述するカバーフィルム剥離部が、カバーフィルム90を第2の基材3から剥離して、バイオセンサ400は、第1の基材1の電極系10が配置された面方向にバイオセンサ400を突出するように変形させる。例えば、第1の基材1の電極系10が配置された面とは反対側の面から、第2の基材3とともに第1の基材1の電極系10が配置された面に対して直交する方向に押されて湾曲する。このようにバイオセンサ400を押して湾曲させることにより、押される方向と略逆方向の張力により第2の基材3が引っ張られ、第2の基材3を貫通する切込み部110が開口する。これと同時に電極系10は僅かに押し出され、試料と十分に接触することができるようになる。このように、切込み部110を開口させることにより、電極系10に試料を導入することができる。このようなバイオセンサ400を押す動作は、後述するように、バイオセンサ400を収納するバイオセンサカートリッジに押出部530を配設することによって実現できる。
また、電極系10に試料を導入した後は、バイオセンサ400を押すのを止めることにより、切込み部110はもとの閉じた状態となる。このとき、第2の基材3により覆われる検出部401には所定の空間40が配置されているため、導入された試料は電極系10に接触しつつ、この空間40内に保持され、試料が外部に流出するのを防止することができる。
図8及び図9においては、本実施形態に係るバイオセンサ400の切込み部110を十字形状の切り込みとして説明したが、切込み部110の形状は、これに限定されるものではない。切込み部をより大きく開口して、試料と電極系10との接触効率を高めるために、例えば、図示しないが、第2の基材3の切込みの中心部に円形の切り欠きを設けた切込み部、切込みの中心部に矩形の切り欠きを設けた切込み部を設けることができる。第2の基材3に配置する切込みの中心部に小さな開口を予め設けることにより、測定時には切込み部がより大きく引っ張られ、より大きく開口させることができる。
本実施形態に係る第3の基材5は電極系10の近傍に空間40を配置する基材であり、少なくとも電極系10が配置される面は電気絶縁性を有し、湾曲可能な弾性を有する部材を用いる。第3の基材5としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリカーボネート(PC)等のフィルムを好適に用いることができる。特に、PETは、材料特性や加工性に優れ、製造コストも抑えることができ、測定頻度の高い糖尿病患者が用いるグルコースセンサには好適である。
第3の基材5の形状、大きさ、厚さは、本発明のバイオセンサを接続して使用する装置の接続電極の形状等により、適宜設定することができる。本実施形態に係る第3の基材5は、0.2mm以上2.5mm以下の幅の帯状の形状が好ましい。より好ましくは、0.5mm以上1.5mm以下の幅である。この範囲の幅を有する第3の基材5を用いることにより、測定に十分な血液を採取可能で、且つ、小型で軽量の測定装置に装着可能なバイオセンサカートリッジを実現することができる。また、第3の基材5の厚さは、0.004mm以上2.5mm以下が好ましく、0.006mm以上0.075mm以下がより好ましい。第3の基材5は、この範囲の厚さを有することによりロール加工し易すくなり、小型の測定装置に装着可能なバイオセンサカートリッジを実現することができる。バイオセンサ300において、第2の基材3と第3の基材5の端部は、接着層(図示せず)を介して第1の基材1と接着される。なお、第1の基材1と第2の基材3を接着層(図示せず)により接着し、接着層により空間40が形成されている場合には、第3の基材5は省いてもよい。
以上説明したように、本発明の実施形態に係るバイオセンサ400は、電極系10が配置された位置に、厚み方向に第2の基材3を貫通する切込み部を有し、その切込み部を有する第2の基材3上にカバーフィルム90を配置することにより、湿気、酸化などから電極系10を保護することができ、十分な防湿保障を得ることができるとともに電極系10に形成された酵素・電子受容体の酸化を防止できる。測定時には、カバーフィルム90を剥離して、電極系10が配置された第1の基材1の面とは反対側の面、すなわち、背面から、第1の基材1と第2の基材3とを押すことにより、切込み部で第2の基材3を開口させて、試料を検出部301の電極系10に導入して測定することができる。また、測定後には、第2の基材3により電極系10に導入された試料が外部に流出するのを防止することができる。
さらに、図示しないが、本発明の実施形態に係るバイオセンサ400は、第1の基材1の電極系10が配置された位置とずらして、第2の基材3に切込み部110を配置することができる。第1の基材1の電極系10が配置された位置とずらして、第2の基材3に切込み部110を配置するにより、第1の基材1の背面から押す力が検出部401の電極系10に直接かからないため、測定時に電極系10が破損するのを防止するとともに、電極系10の歪による測定誤差を低減することができる。
上述したバイオセンサ200では、破線を介して山折りする例を示したが、第1の基材1の同一の面に電極系10と配線部20とを電気的に接続して配置してもよい。
(吸水性を有する基材を備えたバイオセンサ)
従来のバイオセンサにおいては、センサ内部の電極系へ試料を導入しやすくするために、例えば、試料の導入部近傍の外表面を撥水処理したりしていた。しかし、このような撥水処理を上述のような帯状の形状を有する本発明に係るバイオセンサに施した場合には、切込み部110から空間40に導入しきれなかった過剰量の試料が球状となり、第2の基材3の表面に残存することとなる。このように残存した試料は、測定装置の汚染や、測定前の検出部の汚染や導通不良を招く恐れがある。殊に、試料が血液であるような場合には、第三者への感染症の拡大等の重大な問題を引き起こしかねない。
バイオセンサを収納するバイオセンサカートリッジの内部に、測定後の電極系、または電極系の近傍に付着した試料を接触することにより吸収させるような吸水性パッドを設けることも考えられるが、このような吸水性パッドを複数回の測定が可能なバイオセンサカートリッジに備えるためには、十分な吸水性を確保するために大きな部材を配設する必要があり、測定装置の小型化を阻害する。
このような問題は、以下に説明する本発明の一実施形態に係るバイオセンサ400で解決可能である。図10は、本発明の一実施形態に係るバイオセンサ400の模式図である。図10(a)は、測定前のバイオセンサ400の吸水性を有する基材がカバーフィルム90で覆われた平面図を示し、図10(b)は(a)の破線部の断面図を示す。図10に示すバイオセンサ400は、第2の基材3とカバーフィルム90との間に吸水性を有する基材7(以下、吸水性基材という)を備える点及びカバーフィルム90と吸収性基材7とをヒートシールにより直接接着させる点以外は、図8に示すバイオセンサと同様の構成を有する。なお、図10では、カバーフィルム90と吸収性基材7とをヒートシール等により直接接着させる例を示したが、吸収性基材7上に枠状の接着層91を所定の間隔で配置し、接着層91を介して吸収性基材7を密閉してもよい。
バイオセンサ400は、電極系10が配置された位置に第2の基材3を貫通する切込み部110と、切込み部110に対応する吸水性基材7の位置に開口部75を有し、吸水性基材7の開口部75をカバーフィルム90が密閉するように覆う。吸水性基材7には、良好な吸湿性を有する部材を用いるのが好ましく、スパンボンド、メルトブロー等の不織布、各種基材に高分子吸収剤を含むまたはコーティングしたフィルム、紙等を用いることができる。不織布は、吸収量が安定しているため、試料が血液であるような場合には好適である。また、試料の性状に応じて、吸水性基材7には抗菌性を有する部材を用いたり、抗菌性を付与する処理を施したりしてもよい。
吸水性基材7の形状、大きさ、厚さは、試料の性状やバイオセンサに接触する可能性のある量を考慮して、適宜設定することができる。図10に示すように、本実施形態に係る吸水性基材7には切込み部110より0.1mm以上ずつ離間して開口部75を設けることが好ましく、吸水性基材7の幅は第2の基材3と同一もしくは狭い幅が好ましい。この範囲の幅を有する吸水性基材7を用いることにより、過剰量の試料を十分に吸収可能で、且つ、小型で軽量の測定装置に装着可能なバイオセンサカートリッジを実現することができる。また、吸水性基材の7厚さは、0.005mm以上1.0mm以下が好ましく、0.01mm以上0.2mm以下がより好ましい。吸水性基材7は、この範囲の厚さを有することによりロール加工し易すくなり、過剰量の試料を十分に吸収可能で、且つ、小型の測定装置に装着可能なバイオセンサカートリッジを実現することができる。その他の構成は、バイオセンサ100及びバイオセンサ200と同様であるため、詳細な説明は省略する。
本実施形態に係るバイオセンサ400を用いることにより、測定前のバイオセンサの電極系について湿気、酸化などに対する十分な防湿保障を得ることができるとともに電極系10に形成された酵素・電子受容体の酸化を防止できる。また、測定時に切込み部110から空間40に導入しきれない過剰量の試料を吸収することができ、測定装置の汚染や、測定前の検出部の汚染や導通不良を防止することができる。試料が血液であるような場合にも、第三者への感染症の拡大等を防止することができる。
(バイオセンサの製造方法)
バイオセンサの製造方法の一例として、上述の実施形態において説明したバイオセンサ400の製造方法について説明する。第1の基材1の上部表面に金属箔等の部材を配設して、配線部20を配設する。配線部20の形成には、印刷法、蒸着法、エッチング、メッキ、切削、レーザ加工(レーザトラッキング)等を用いることができる。配線部20の材料に応じて適宜選択することができる。
その後、配線部20の上面及び側面に電極系10を形成する。電極系10の形成には、印刷法、蒸着法、エッチング、メッキ、切削、レーザ加工(レーザトラッキング)等を用いることができる。配線部20の材料に応じて適宜選択することができる。
このように形成した電極の1つの作用極11の上面に、酵素及び電子受容体を含む溶液をディスペンサで塗布した後、40℃で乾燥させ、溶媒成分を除去する。このようにして、酵素反応部を形成し、検出部401を製造する。
第2の基材3にロールカット、ダイカット、スリット加工等切り込みをいれる事により切込み部110を形成することができる。切込み部110の大きさは、第1の基材1と第2の基材3との間に形成される電極系10に試料を接触させて、保持する所定の空間40に試料を導入可能な大きさで任意に設定可能である。
さらに第3の基材5を形成して、第1の基材1上に形成した電極系10を貼付し、バイオセンサ400を製造する。第3の基材5、第1の基材1及び電極系10を貼付する面と、第2の基材3を貼付する面とに、接着層を形成する。上面及び下面の両面に接着層が形成された第3の基材5に打ち抜き加工を施して、空間40を形成する。
第3の基材5の一方の面に第2の基材3を貼合する。その後、第3の基材5の他方の面に、第3の基材5と電極系10が対向するように配置して第1の基材1を貼合する。このようにして、第1の基材1と第3の基材5の両端部は、接着層で貼付される。なお、貼合の順序は第3の基材5と第1の基材1を貼合してから、第3の基材5に第2の基材3を貼合してもよい。次に、第2の基材3上にカバーフィルム90をヒートシールする。以上の工程により、バイオセンサ400を製造することができる。なお、第2の基材3の切込み部110上に枠状の接着層91を所定の間隔で貼付し、その上にカバーフィルム90を形成してもよい。
また、接着層を介して第2の基材3と吸水性基材7を貼合した後に、切込み部110を形成する。次に、吸収性基材7上に枠状の接着層91を所定の間隔で貼付し、その上にカバーフィルム90を接着することによって、バイオセンサを製造してもよい。
[バイオセンサカートリッジ]
上述のバイオセンサを収容する本発明の実施形態に係るバイオセンサカートリッジ500について説明する。図11は、本発明の一実施形態に係るバイオセンサカートリッジ500を示す模式図である。バイオセンサカートリッジ500は、容器510の内部に回収部540と、第1の回転部551と、カバーフィルム回収部である第3の回転部(カバーフィルム収容回転部ともいう)555を備え、回収部540に第2の回転部553を備える。第1の回転部551は、バイオセンサ100を巻き付けて格納する。バイオセンサ100の一端は、回収部540に配置された第2の回転部553に固着し、測定済みの検出部101を回収部540に巻き取って回収する。バイオセンサ100のカバーフィルム90の一端は、カバーフィルム回収部である第3の回転部555に固着し、測定時にカバーフィルム90を剥離してカバーフィルム回収部に巻き取って回収する。
バイオセンサカートリッジ500は、測定前の検出部101がカバーフィルム90で覆われたバイオセンサ100を支柱557を介し、さらに、カバーフィルム90を剥離させる第1のカバーフィルム剥離部671を介して第3の回転部555に巻き付けて格納することにより、バイオセンサカートリッジ500の内部に、バイオセンサ100をコンパクトに収容することができるとともに、検出部101への異物付着、バイオセンサを収納する際の検出部の擦傷及び測定時のバイオセンサの検出部の擦傷を防止することができる。また、バイオセンサカートリッジ500は、測定前のバイオセンサ100の防湿保障が確保できるとともに電極系10に形成された酵素・電子受容体の酸化を防止できる。さらに、回収部540を備えることにより、測定後の検出部101を有するバイオセンサ100を収容することにより、付着・凝固した血液による汚染を防止することができる。回収部540に第2の回転部553をさらに備えることにより、測定後の検出部101を有するバイオセンサ100をコンパクトに収容することができる。
図12は、本発明の一実施形態に係るバイオセンサカートリッジ500を示す模式図である。図12に示すように、バイオセンサカートリッジ500は、第2のカバーフィルム剥離部675の形状が略三角形状であり、接続電極520がない点で図11に示すバイオセンサカートリッジ500とは相違している。
また、バイオセンサカートリッジ500は、測定時にバイオセンサ100の検出部101を容器510の外部に押し出す押出部530を備えてもよい。図中の矢印は、第1〜第3の回転部が回転する方向を示し、バイオセンサ100の送り方向を示す。例えば、押出部530は、楕円形状の回転部535を回転することにより、バイオセンサカートリッジ500の開口部方向に前後運動させることができる。また、押出部530はスライド式であってもよく、これらに限定されるものではない。バイオセンサカートリッジ500は、押出部530によりバイオセンサ100の検出部101を外部に押し出して、試料の採取及び被検出物の検出を可能にする。上述の第1の回転部551を回転させることにより、検出部101を押出部530の先端に位置する測定位置に移動させることができる。ここで、図11に示すバイオセンサカートリッジ500は、カバーフォルム90を第1のカバーフィルム剥離部671で剥離し、第1のカバーフィルム剥離部671より前方、すなわち押出部530の方向に配置した接続電極520でさらにバイオセンサ100の送り方向をガイドする。
図示しないが、バイオセンサカートリッジ500の開口部に開閉機構を備えることがきできる。開閉機構は、押出部530の押出し方向にバイオセンサカートリッジ500を開口させる扉状の機構でもよく、スライドシャッタでもよい。なお、押出部530を固定式として、密閉性の高いキャップを用いて、測定時以外はバイオセンサカートリッジ500の開口部を塞ぐようにしてもよい。
バイオセンサカートリッジ500は、バイオセンサ100の検出部101を外部に押し出す押出部530をさらに備えることにより、測定時以外は、バイオセンサ100の検出部101をバイオセンサカートリッジ500の内部に収容することができる。これにより、バイオセンサカートリッジ500や測定装置の輸送時や、測定装置へのバイオセンサカートリッジ500の装着時に、バイオセンサ100の検出部101が外部に曝されることなく、検出部101の劣化や損壊を防止することができる。
図11に示すように、バイオセンサカートリッジ500は、バイオセンサ100の検出部101の配線部20の一部と接触して、電極系10からの電気信号を受信するための接続電極520を備える。図中、接続電極520は、バイオセンサ100の送り方向に対して、押出部530より前に配置される。また、接続電極520に代わって、接続電極529の位置、すなわち、バイオセンサ100の送り方向に対して、押出部530より後ろに配置することもできる。図2及び図3に示したように、測定時に、第1の基材1を介して電極系10の背面に配線部の一部130を配置する場合には、バイオセンサカートリッジ500は、押出部530に接続電極520を備えてもよい。押出部530に接続電極520を備える場合には、検出部101の配線部の一部130と接触する押出部530の先端部付近に接続電極520を配設する。なお、電極系10が配置された面と、配線部の一部130が配置された面とのなす角を0°より大きく90°より小さい場合には、接続電極520や接続電極529は、バイオセンサ100の角度に応じた形状とすればよい。上述のバイオセンサカートリッジ500では、配線部を折り曲げて、配線部の一部と接続電極とを電気的に接続する例について説明したが、同一の面に電極系と配線部とを形成して、電気的に配線部と接続電極とを接続してもよい。この場合、接続電極は、電極系からの電気信号を配線部から受信できるように配置すればよい。
バイオセンサカートリッジ500は、配線部の一部と接触して、電極系からの電気信号を受信するための接続電極をさらに備えることにより、電極系からの電気信号を測定装置に伝達することができる。また、バイオセンサカートリッジ500が接続電極を備えることにより、バイオセンサと測定装置とが直接接触しないため、測定装置への血液による汚染を防止することができる。
本実施形態に係るバイオセンサカートリッジ500は、図2に示したように、バイオセンサ200を第1の基材1を介して電極系10からの電気信号を測定装置に伝達するための配線部の一部130を電極系10の背面に配置した状態に折り曲げて、第1の回転部551に巻き付けて格納してもよい。また、バイオセンサ200を折り曲げずに、第1の回転部551に巻き付けて格納してもよい。この場合、電極系10と配線部の一部130とが空間的に異なる2つの面にそれぞれ配置するように、測定時にバイオセンサ200を折り曲げればよい。
図示しないが、バイオセンサカートリッジは、測定時にバイオセンサ200を折り曲げる機構を備えてもよい。この場合、バイオセンサカートリッジにおいて、バイオセンサ200は、折り曲げ部の2つの支点である支柱と支柱との間を通過する間に、配線部の一部130が電極系10の背面に配置するように折り曲げられる。また、折り曲げ機構は、ガイドを有してもよい。ガイドは、バイオセンサ200の送り方向に対して、入口よりも出口が狭い構造を有する。バイオセンサ200は、ガイドを通過することにより、送りとともに折り曲げられる。このガイド部を用いることにより、バイオセンサ200の折り返しを確実に行うことができる。本実施形態に係るバイオセンサカートリッジは、折り曲げ部を備えることにより、バイオセンサ200を折り曲げずに、第1の回転部551に巻き付けて格納することができるため、バイオセンサ200を折り曲げて格納する場合に比して巻き付けてロール状に格納した時の厚さ方向の嵩張りを減らせ、より多くのバイオセンサ200を収納可能であり、または、より省スペースでバイオセンサ200を収納可能である。
上述の本実施形態においては、回収部に第2の回転部553を備えるバイオセンサカートリッジについて説明したが、本発明に係るバイオセンサカートリッジは、回収部に第2の回転部553を備えるものに限定されない。バイオセンサカートリッジは、図示しないが、回収部に第2の回転部に代わって、支柱を備えてもよい。バイオセンサカートリッジにおいては、バイオセンサ100の一端は、回収部に配置された支柱に固着して、バイオセンサ100のカバーフィルム90の一端は、カバーフィルム剥離部を介して第3の回転部555に固着する。バイオセンサカートリッジは、第1の回転部551をバイオセンサの送り方向に回転させることにより、測定時にカバーフィルム90を剥離させ、バイオセンサの検出部101を押出部530の先端に位置する測定位置に移動させることができる。測定時にバイオセンサのカバーフィルムを剥離させることによって、測定前のバイオセンサ100の防湿保障が確保できるとともに電極系10に形成された酵素・電子受容体の酸化を防止できる。さらに、バイオセンサの一部をカバーフィルムで密閉することによって、検出部101への異物付着、バイオセンサを収納する際の検出部の擦傷及び測定時のバイオセンサの検出部の擦傷を防止することができる。また、測定後の検出部101を有するバイオセンサ100を回収部740に収容することにより、付着・凝固した血液による汚染を防止することができる。バイオセンサカートリッジは、回収部にバイオセンサの一端を固着した支柱を備えることにより、第2の回転部を別途配設することなく、回収部に測定後の検出部101を有するバイオセンサを収容することができるため、小型軽量化を図ることが可能となる。
図13は、本発明の一実施形態に係るバイオセンサカートリッジ800を示す模式図である。バイオセンサカートリッジ800は、容器710の内部に回収部740と、第1の回転部751と、カバーフィルム回収部である第3の回転部755を備え、回収部740に第2の回転部753を備える。第1の回転部751、第2の回転部753及び第3の回転部755は、それぞれが図中の矢印方向に回転し、第2の回転部753の端部を手動で回すことによって、第1の回転部751と第3の回転部755が連動して回転する。第1の回転部751は、バイオセンサ100を巻き付けて格納する。バイオセンサ100の一端は、回収部740に配置された第2の回転部753に固着し、測定済みの検出部101を回収部740に巻き取って回収する。バイオセンサ100のカバーフィルム90の一端は、カバーフィルム剥離部765を介してカバーフィルム回収部である第3の回転部755に固着し、測定時にカバーフィルム90を剥離してカバーフィルム回収部に巻き取って回収する。
バイオセンサカートリッジ800は、測定時にバイオセンサの検出部を容器710の外部に押し出す押出部730を備えてもよい。図中の矢印は、第1〜第3の回転部が回転する方向を示し、バイオセンサの送り方向を示す。バイオセンサカートリッジ800は、押出部730によりバイオセンサの検出部を外部に押し出して、試料の採取及び被検出物の検出を可能にする。上述の第2の回転部753を回転させることにより、検出部を押出部730の先端に位置する測定位置に移動させることができる。なお、押出部730を固定式として、密閉性の高いキャップを用いて、測定時以外はバイオセンサカートリッジ800の開口部を塞ぐようにしてもよい。
図13に示すように、バイオセンサカートリッジ800は、バイオセンサの検出部の配線部の一部と接触して、電極系からの電気信号を受信するための接続電極729を備える。図中、接続電極729は、バイオセンサの送り方向に対して、押出部730より後ろに配置される。測定時に、第1の基材を介して電極系の背面に配線部の一部を配置する場合には、バイオセンサカートリッジ800は、押出部730に接続電極を備えてもよい。押出部730に接続電極を備える場合には、検出部の配線部の一部と接触する押出部730の先端部付近に接続電極を配設する。なお、電極系が配置された面と、配線部の一部が配置された面とのなす角を0°より大きく90°より小さい場合には、接続電極729は、バイオセンサの角度に応じた形状とすればよい。
バイオセンサカートリッジ800において、測定前には電極系10がカバーフィルム90で密閉されたバイオセンサ100を第1の回転部751から第1のカバーフィルム剥離部765を介して第2の回転部553に巻きつける。測定時にはカバーフィルム90を剥離する第1のカバーフィルム剥離部765で巻き付けて格納することにより、バイオセンサカートリッジ800の内部に、バイオセンサ100をコンパクトに収容することができるとともにバイオセンサ100が湿気、酸化による影響を防止できる。また、回収部740を備えることにより、測定後の検出部101を有するバイオセンサ100を収容して、付着・凝固した血液による汚染を防止することができる。回収部740に第2の回転部753をさらに備えることにより、測定後の検出部101を有するバイオセンサ100をコンパクトに収容することができる。
(測定装置)
以下に、上述したバイオセンサカートリッジを装着した本発明の一実施形態に係る測定装置について説明する。図14は、本発明の一実施形態に係る測定装置1000を示す模式図である。図14においては、一例としてバイオセンサカートリッジ500を装着した測定装置1000について説明する。測定装置1000は、図示しないが、電極系10で生じた電気信号をバイオセンサカートリッジ500から受信するための接続電極と演算部とを備える。また、測定装置1000は、表示部1100及び電源を備える。
測定装置1000において、接続電極は、バイオセンサカートリッジ500に配設された接続電極520を介して電極系10で生じた電気信号を受信してもよく、接続電極が接続電極520を介さずに配線部20と直接接続して電極系10で生じた電気信号を受信してもよい。接続電極がバイオセンサカートリッジ500に配設された接続電極520を介して電極系10で生じた電気信号を受信する場合には、バイオセンサと測定装置とが直接接触しないため、測定装置への血液による汚染を防止することができる。
また、測定装置1000は、電極系10から受信した電気信号を演算部で測定値に変換する。得られた測定値は、表示部1100に表示され、測定者は測定結果を視覚的に認識することができる。
測定装置1000は、図示しないが、駆動部をさらに備えてもよい。駆動部は、バイオセンサカートリッジ500に配設された第1の回転部551、第2の回転部553及び第3の回転部を駆動し、バイオセンサ100の測定前の1つの検出部101を外部の測定位置に配置する。ここで、本実施形態に係る駆動部は、図13に示した手動式のダイヤルでもよく、モータでもよい。駆動部がモータである場合には、制御部を備えることにより、電子制御することもできる。駆動部がバイオセンサ100の測定前の1つの検出部101を外部の測定位置に配置させることにより、測定者である患者の確実に測定を行えるようにすることができる。
このように構成された本実施形態に係る測定装置は、電極系からの電気信号を測定装置に伝達するための配線部の一部を、測定時に電極系と空間的に異なる面に位置させたバイオセンサを収容するバイオセンサカートリッジを装着することにより、付着・凝固した血液による導通不良を防止することができ、正確な血糖値の測定を行うことができる。なお、本実施形態に係る測定装置は、バイオセンサカートリッジ500の他にバイオセンサカートリッジ800を装着することもでき、また、装着するバイオセンサカートリッジに応じてバイオセンサ200、300、400を用いることもできる。
(測定方法)
以下に、上述した測定装置を用いる測定方法について説明する。本実施形態に係るバイオセンサを収納したバイオセンサカートリッジは、供給者より測定者に提供される。本実施形態に係る測定装置が、例えば、血糖測定装置である場合は、供給者は医師、病院、薬局等であり、測定者は糖尿病患者である。測定者は、バイオセンサカートリッジを測定装置に装着する。測定者は、電源を入れて、演算部、表示部1100、駆動部、制御部等を起動する。
バイオセンサカートリッジを測定装置に装着するときや測定時以外には、測定前の検出部が押出部と接触しない位置にあることが好ましい。測定者は、測定時には、バイオセンサを外部に押し出し、駆動部により回転部を駆動して測定前の1つの検出部を外部の測定位置に配置する。このとき、本実施形態に係る測定方法においては、電極系からの電気信号を測定装置に伝達するための配線部の一部を、測定時に電極系と空間的に異なる面に位置させる。また、バイオセンサの検出部を密閉するように覆っていたカバーフィルムは、回転部の駆動によりバイオセンサカートリッジ内に設けられたカバーフィルム剥離部によって、検出部1個分が剥離される。
測定者は、被験物が含まれる試料を検出部の電極系に供給する。血糖値を測定する場合は、試料は血液であり、付着・凝固した血液による検出部の配線部の導通不良を防止することができ、正確な血糖値の測定を行うことができる。
測定により生じた電極系からの電気信号は、バイオセンサの配線部から、バイオセンサカートリッジの接続電極を介して、または直接に測定装置の接続電極で受信され、演算部で測定値に変換される。変換された測定値は、表示部に表示され、測定者は測定結果を認識することができる。
測定後には、駆動部により回転部を駆動して、測定後の検出部を有するバイオセンサの一部を回収部に収容することにより、付着・凝固した血液による汚染を防止することができる。本実施形態に係るバイオセンサカートリッジは検出部を複数有するバイオセンサを収容しているため、この一連した測定動作を連続して複数回行うことができる。このため、従来のような測定毎のバイオセンサの着脱操作行う必要がない。また、電極系からの電気信号を測定装置に伝達するための配線部の一部を、測定時に電極系と空間的に異なる面に位置させることにより、付着・凝固した血液による導通不良を防止することができ、正確な血糖値の測定を行うことができる。