JP5854464B2 - メチル化dna結合ペプチド - Google Patents

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Description

本発明は、メチル化DNA結合ペプチドに関し、詳しくは、二本鎖DNAのメチル化領域を認識して結合するペプチドに関する。また、本発明は、該ペプチドを含んでなるキット及び該ペプチドを用いた二本鎖DNAメチル化領域の検出方法に関する。
エピジェネティクス(epigenetics)とは、遺伝子の塩基配列によらずに遺伝或いは細胞分裂後に継承される情報を扱う学問のことである。この情報はDNAのメチル化やヒストンの修飾により維持されている。DNAのメチル化またはヒストンの修飾は主に遺伝子のスイッチの制御、つまり遺伝子が働くか働かないかということを司っている。そのため、遺伝子の塩基配列が全く同じ細胞や個体であっても、表現型が全く異なるといったことが起こる。
DNAのメチル化は、主にシトシン残基の5位炭素のメチル化であり、例えば、高等真核生物ではCpG配列(DNAの塩基配列上、5’側からシトシン(C)の次にグアニン(G)が5’-CG-3’と並ぶ配列)に位置するシトシンがメチル化されていることが知られている。CpG配列は多くの遺伝子のプロモーター領域にも存在しており、一般に、当該プロモーター領域におけるCpG配列のシトシンがメチル化されると遺伝子の転写が抑制されると言われている。そのため、CpG配列におけるシトシンのメチル化は、高等真核生物では遺伝子発現調節に関わる重要なエピジェネティック機構をなしており、細胞機能自体に重要な役割を果たしていると考えられている。
エピジェネティクスは発生、分化、ゲノムインプリンティング、X染色体不活性化等様々な生命現象に関与している。また、疾患においては癌におけるメチル化異常はよく知られているが、最近では統合失調症、糖尿病等、癌以外の様々な疾患においてもメチル化異常が関与することが示唆されている。また、in vitroにおいてメチル化が不安定であることがわかってきており、再生医療において幹細胞から分化誘導した臓器のメチル化状態が正常であるかどうかを確認することが重要となってくると考えられる。
哺乳類ではCpG配列の60〜90%のシトシン残基がメチル化されているところ、多くの場合、遺伝子のプロモーター領域に密集して存在するCpG配列(CpGアイランド)のシトシンはメチル化されていない(非特許文献1)。しかし、非メチル化領域が何らかの原因によりメチル化された場合、遺伝子の転写が抑制されることになる。例えば、癌細胞における癌抑制遺伝子の転写が不活性化された場合は、癌細胞の増殖を制御できなくなってしまう。また逆に、通常はメチル化されているCpGアイランドが何らかの異常によりメチル化されなければ、遺伝子の不活性化(安定性)を維持することができず、本来の細胞機能を果たさないばかりか、細胞や組織の分化異常等の機能異常を生じてしまうおそれがある。従って、メチル化の有無やそのパターンの変化は、癌や分化異常等の疾患を惹起する可能性があり、メチル化のパターンを調べることはそのような疾患の治療及び予防を図るためにも強く求められている。
メチル化DNAの検出については、従来から種々の方法が試みられており、例えば、メチル化感受性制限酵素を用いる方法が知られている(非特許文献2〜7)。メチル化感受性制限酵素は、認識部位がメチル化されているとDNAを切断できない酵素であり、この方法はメチル化の検出に有効であるが、解析対象のCpG部位がメチル化感受性制限酵素の認識配列である必要があるため解析の自由度が低く、DNA精製の前処理も必要とされる。また解析時間は、酵素反応時間も含めて検出までに数時間以上必要である。
そこで、ヌクレオチド配列に依存しない検出方法として、非メチル化シトシンに亜硫酸水素塩を反応させてウラシルに変換してPCR及びシークエンシングを行う方法や(非特許文献8〜13)、抗メチル化シトシン抗体を用いた免疫沈降法が開発されている(特許文献1、非特許文献14〜20)。しかしながら、これらの方法ではアルカリ処理や断片化等の前処理も必要であり、検出時間が5〜16時間もかかってしまい、高感度で検出する点についても改善はできていなかった。これに対して、ビピリジン修飾DNAと酸化オスミウムとの併用によりメチル化シトシンと選択的に錯体を形成させてメチル化シトシンを特異的に検出する方法が開発され(非特許文献21〜25)、シグナル増強により高感度での検出が可能となったが、錯体形成後に加熱処理を要する等の前処理が必要な点は解消し得なかった。また、メチル化DNA結合タンパク質(MBP)を利用した方法も試みられているが(特許文献2、3)、MBP自身の分子量が数万〜数十万と非常に大きく、安定供給、保存安定性又は取り扱いの簡便性という観点において、改良の余地がある。
米国特許第7425415号明細書 特表2008-521388号公報 特表2008-521389号公報
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本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、短時間で省力的、且つヌクレオチド配列に制限されることなくDNAのメチル化領域を検出し、さらには該メチル化を定量することができるツールを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、金属フィンガーモチーフを有するペプチドを用い、該モチーフのヘリックス形成部にチロシン誘導体を導入することにより、メチル化されたシトシンを含むポリヌクレオチド(DNA)との結合性が向上することを見出した。さらに本発明者らは検討を重ね、該ペプチドがメチル化シトシンの検出のみならず定量にも利用できることに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)金属フィンガーモチーフを含み、該モチーフのヘリックス形成部にチロシン誘導体を含有する、二本鎖DNAのメチル化領域を認識して結合するペプチド。
(2)前記金属が、亜鉛、コバルト、鉄、カドミウム、マグネシウム、マンガン及びカルシウムからなる群より選択される、(1)に記載のペプチド。
(3)金属フィンガーモチーフが、下記の一般式(I)で表される構造を含む、(1)又は(2)に記載のペプチド。
(式中、Xaa1a、Xaa1b、Xaa1c及びXaa1dは同一又は異なってシステイン又はヒスチジンを、Xaaはチロシン又はその誘導体を、Yaaは任意のアミノ酸を示し、lは2又は4の整数、mは6〜10の整数、nは2〜4の整数、oは3〜5の整数である。)
(4)前記一般式(I)中の(Yaa)が、下記の一般式(II)で表される構造である、(3)に記載のペプチド。
(式中、Xaa3aは、フェニルアラニン、チロシン又はロイシンを、Yaaは任意のアミノ酸を示し、m1は2〜4の整数、m2は3〜5の整数である。)
(5)前記一般式(I)中の(Yaa)が、下記の一般式(III)で表される構造である、(3)又は(4)に記載のペプチド。
(式中、Xaa3bは、フェニルアラニン、チロシン又はロイシンを、Yaaは任意のアミノ酸を示し、n1は1〜3の整数である。)
(6)前記一般式(II)中の(Yaa)m1が、下記の一般式(IV)で表される構造である、(4)又は(5)に記載のペプチド。
(式中、Xaa4aは、リシン、アルギニン又はヒスチジンを、Yaaは任意のアミノ酸を示し、m3及びm4は0〜2の整数である。)
(7)前記一般式(III)中の(Yaa)n1が、下記の一般式(V)で表される構造である、(5)又は(6)に記載のペプチド。
(式中、Xaa4bは、リシン、アルギニン又はヒスチジンを、Yaaは任意のアミノ酸を示し、n2は0〜2の整数である。)
(8)前記一般式(II)中の(Yaa)m2が、下記の一般式(VI)で表される構造である、(4)〜(7)のいずれかに記載のペプチド。
(式中、Xaa4cはアルギニンを、Yaaは任意のアミノ酸を示し、m5は0〜2の整数、m6は1〜3の整数である。)
(9)チロシンの誘導体が、下記の一般式(VII)で表される化合物である、(1)〜(8)のいずれかに記載のペプチド。
(上記式中、
R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基若しくはリン含有基を示し、
又はRとR並びにRとRは、リン含有基でない場合、それぞれ一緒になって芳香環若しくは芳香性複素環を形成してもよく、
ただし、R、R、R、R及びRの少なくとも一つがリン含有基であり、
R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基若しくはリン含有基を示す。)
(10)金属イオンを配位結合した状態で含有する、(1)〜(9)のいずれかに記載のペプチド。
(11)金属イオンが、亜鉛イオン、マグネシウムイオン、カドミウムイオン、マンガンイオン、カルシウムイオン、コバルトイオン及び鉄イオンからなる群より選択される、(10)に記載のペプチド。
(12)(1)〜(9)のいずれかに記載のペプチド及び金属イオン供給化合物を含んでなる、二本鎖DNAのメチル化領域を検出するキット。
(13)金属イオン供給化合物が、亜鉛、マグネシウム、カドミウム、マンガン、カルシウム、コバルト及び鉄からなる群より選択される1以上の金属原子を含有する化合物である、(12)に記載のキット。
(14)以下の工程(a)又は(b)のいずれかと(c)とを含む、二本鎖DNAのメチル化領域を検出する方法:
(a)(1)〜(9)のいずれかに記載のペプチド、金属イオン供給化合物及び二本鎖DNAを接触させる工程、
(b)(10)又は(11)に記載のペプチド及び二本鎖DNAを接触させる工程、
(c)前記二本鎖DNA中のメチル化領域に結合したペプチドを検出する工程。
(15)金属イオン供給化合物が、亜鉛、マグネシウム、カドミウム、マンガン、カルシウム、コバルト及び鉄からなる群より選択される1以上の金属原子を含有する化合物である、(14)に記載の検出方法。
(16)以下の工程(i)〜(iii)を含む、採取された試料におけるDNAメチル化異常の検査方法:
(i)被検動物より採取した試料と、(1)〜(9)のいずれかに記載のペプチド及び金属イオン供給化合物、又は(10)若しくは(11)に記載のペプチドとを接触させる工程、
(ii)前記試料に含まれる二本鎖DNAのメチル化領域に結合したペプチドを測定する工程、並びに
(iii)工程(ii)の被検動物について得られる測定結果を正常対照について得られる測定結果と対比して、DNAメチル化異常の有無を調べる工程。
(17)金属イオン供給化合物が、亜鉛、マグネシウム、カドミウム、マンガン、カルシウム、コバルト及び鉄からなる群より選択される1以上の金属原子を含有する化合物である、(16)に記載の検査方法。
(18)DNAメチル化異常がDNAメチル化異常に関連する疾患に起因するものである、(16)又は(17)に記載の検査方法。
(19)DNAメチル化異常に関連する疾患が、癌、精神疾患、生活習慣病、神経疾患、自己免疫疾患又は循環器疾患である、(18)に記載の検査方法。
本発明のメチル化DNA結合ペプチドを用いれば、検出すべきメチル化DNAは二本鎖構造そのままで解析することが可能であり、被検試料の前処理も特に必要とされない。また、実際の反応時間も30分未満であり、解析工程においても特殊な装置を必要とせず、被検試料も分解されず、そのまま観察をすることができる。従って、本発明のメチル化DNA結合分子であれば、短時間で省力的、且つ検出すべきメチル化DNAのヌクレオチド配列に制限されることなく、メチル化DNAを検出及び定量することができる。
本発明のメチル化DNA結合ペプチドは、分子量が10000を超えない程度の小分子であるため、検出対象の二本鎖DNAとの結合において立体障害を起こしにくく、液相系又は固相系を問わず、メチル化DNAの検出に汎用性が高い。また、高分子量のメチル化DNA結合タンパク質(MBP)又は抗メチル化シトシン抗体と比べて長期間の保存安定性が高く、これを試薬として用いた場合には安定的に供給されることができ、且つその取り扱いも簡便に行うことができる。
また、本発明のメチル化DNA結合ペプチドについては、化学標識を付加することもできる。これにより、該ペプチドを検出しやすくすることができ、定量性も向上させることができる。標識の種類によっては、メチル化DNAの高感度検出及び定量も可能となり、或いは検出及び定量以外にも、DNAのメチル化領域に結合することによって該メチル化領域における化学反応を誘起できる等、該メチル化領域に新たな機能を付与することもできる。
4種類のペプチドのCDスペクトル測定結果を示した図である。(A)はペプチドY(実施例1)、(B)はペプチドY(PO3)(実施例2)、(C)はペプチドF(比較例1)、(D)はペプチドY(SO3)(比較例2)の結果を示し、それぞれ、グラフの横軸は波長(nm)を、縦軸は平均残基分子楕円率(deg・cm・dmol−1)を示す。 4種類のペプチドとメチル化DNAとの結合性を調べたゲルシフトアッセイの結果を示した図である。(1)はペプチドY(実施例1)、(2)はペプチドY(PO3)(実施例2)、(3)はペプチドF(比較例1)、(4)はペプチドY(SO3)(比較例2)の結果を示し、それぞれ、左のゲルシフトアッセイの結果はメチル化DNAとの結合を調べたものであり、右のゲルシフトアッセイの結果は非メチル化DNAとの結合を調べたものである。ゲルに示された上方のバンドは、ペプチドとDNAとが結合したものを示し、下方はペプチドとは結合していないDNAのみのバンドを示す。 ペプチドY(PO3)(実施例2)とメチル化DNAとの結合における蛍光偏光を測定した結果を示す図である。縦軸は偏光度(mP)を、横軸はDNAの濃度(ng/μL)を示す。丸印はペプチドY(PO3)とメチル化DNAとの結合における蛍光偏光を、三角印はペプチドY(PO3)と非メチル化DNAとの結合における蛍光偏光を表す。
本発明は、金属フィンガーモチーフを含み、該モチーフのヘリックス形成部にチロシン誘導体を含有する、二本鎖DNAのメチル化領域を認識して結合するペプチドを提供する。
本発明において、DNAのメチル化とは、DNAを構成する一又は二以上のヌクレオチドがメチル基で修飾されることをいう。本発明では、特にシトシン残基の5位炭素にメチル基が結合した5-メチルシトシンを対象とする。また、本発明における金属フィンガーモチーフとは、金属イオンと配位結合することによりDNAに結合するように設計された、特定のアミノ酸配列をいう。該特定のアミノ酸配列は、その一部にアミノ酸誘導体を含んでいてもよい。
該金属フィンガーモチーフの構造は、所定の金属イオンが配位することによりその立体構造が変化し、該配位部分を付け根として指のように長いループを突き出した構造となることを特徴とする。この構造変化によって、金属フィンガーモチーフは二本鎖DNA、特に二本鎖DNAのメジャーグルーブ(主溝)に結合することが可能となる。金属フィンガーモチーフを構成するアミノ酸残基の総数は特に限定されないが、例えば、10〜50のアミノ酸残基長とすることができ、好ましくは15〜40のアミノ酸残基長、さらに好ましくは20〜35のアミノ酸残基長とすることができる。
金属フィンガーに用いられる金属は、該モチーフに配位し得る金属イオンとなる金属であれば特に限定されないが、二価のカチオンとなる金属が好ましく、例えば、亜鉛、コバルト、鉄、カドミウム、マグネシウム、マンガン、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ニッケル、銅、水銀、スズ又は鉛等が挙げられる。金属フィンガーモチーフの構造安定性の観点から、該金属は、亜鉛、コバルト、鉄、カドミウム、マグネシウム、マンガン又はカルシウムが好ましく、亜鉛、コバルト、鉄又はカドミウムがさらに好ましく、中でも亜鉛が特に好ましい。
金属として亜鉛を用いた場合、該金属フィンガーは亜鉛フィンガー又はジンクフィンガーとも言うことができる。天然に存在する亜鉛フィンガーは、タンパク質ドメインの大きなスーパーファミリーを形成し、2つの逆並行βシートと1つのαヘリックスからなり、それ自体がDNAに結合する性質を有する。また、分子量が小さく、亜鉛イオン(Zn2+)が該ドメインに配位結合し、これにより亜鉛フィンガーの構造安定化が維持されることになる。天然に存在する亜鉛フィンガーとしては、2個のシステインと2個のヒスチジンとを含むCHクラスに属するものや、4個のシステイン又は6個のシステインを含むC又はCクラスに属するもの等が挙げられ、本発明の金属フィンガーモチーフも、このようなクラスに分けることができる。
上記の通り、金属フィンガーモチーフは一般にDNAに結合することができる構造を有するがDNAのメチル化領域と選択的に結合する性質を付与するためには、該モチーフ内にチロシン誘導体を含有するように設計することが必要である。チロシンは、芳香族アミノ酸の一種であり、その側鎖にフェノール部位を有する。チロシン誘導体は、チロシン側鎖に、官能基の導入、酸化、還元又は原子の置き換え等、主鎖の構造や性質を大幅に変えない程度に改変された化合物である。チロシン誘導体を金属フィンガーモチーフ内に導入することにより、側鎖の芳香環由来のπ電子とメチルシトシン由来の水素原子とが相互作用を生じ(CH-π相互作用)、芳香環と該水素原子との安定的な距離が維持され、一種の水素結合を形成して選択的にDNAのメチル化領域と結合することが可能となる。これにより、従来技術では成し得なかった二本鎖DNAのメチル化領域とも結合することができるようになる。
チロシン誘導体は、二本鎖DNAとの結合性の観点から、本発明では金属フィンガーモチーフのヘリックス形成部に配置させることが求められる。本発明における金属フィンガーモチーフはヘリックス(らせん)を形成することを特徴としており、ヘリックス形成部とは、該モチーフが形成するヘリックスの部分に該当し得るアミノ酸残基の位置をいう。本発明におけるヘリックスとしては、例えば、αヘリックス、310ヘリックス、πヘリックス等が挙げられ、αヘリックスが特に好ましい。また、本発明におけるヘリックス形成部は、金属フィンガーの構造によって一義的に決定される領域である。この領域において、チロシン誘導体の位置は、例えば、後述する一般式(I)においてXaaで示されるが、ヘリックス形成部内であれば、Xaaとヘリックスの同じ側に来る位置に配置されていてもよい。なお、Xaaとヘリックスの同じ側とは、具体的には、Xaaのアミノ酸位置より3〜5個又はこれらの倍数のアミノ酸残基だけ離れた位置であることをいう。このようなヘリックス構造は、X線回折や核磁気共鳴分光法(NMR)、円二色性(CD)スペクトル等によって確認することができる。特に、CDスペクトルでは、208nm及び222nm付近に負のピーク、190nm付近に正のピークが検出される。
本発明における金属フィンガーモチーフは、好適には、下記の一般式(I)で表される構造を含むものとして表すことができる。
(式中、Xaa1a、Xaa1b、Xaa1c及びXaa1dは同一又は異なってシステイン又はヒスチジンを、Xaaはチロシン又はその誘導体を、Yaaは任意のアミノ酸を示し、lは2又は4の整数、mは6〜10の整数、nは2〜4の整数、oは3〜5の整数である。)
上記式(I)は、種々のアミノ酸及びチロシン又はその誘導体の結合により構成される構造を有しており、その結合は、水素結合、共有結合、van der Waals結合、静電相互作用等の様々な結合様式を取ることができる。本発明においてはその結合様式は特に限定されないが、共有結合にて該構造が構成されることが好ましく、中でもアミド結合であることが好ましく、さらにはペプチド結合であることが特に好ましい。なお、アミノ酸はL体、D体及びDL体を包含するものであるが、通常はL体を用い、またアミノ酸の不斉中心は、R配置、S配置又はRS配置のいずれであってもよい。
上記式(I)で表される構造を構成する両端のアミノ酸残基(Xaa1a及びXaa1d)はそれぞれ独立してシステイン又はヒスチジンを示すが、本発明における金属フィンガーモチーフは、さらにその両端に1個又は2個以上の任意のアミノ酸残基又はその他の分子を付加結合させることができる。自体公知の方法を用いて、適宜所定のアミノ酸残基又はその他の分子を両端に付加結合させることにより、金属フィンガーモチーフの構造安定性等をさらに向上させることができる。
上記式(I)中のXaa1a、Xaa1b、Xaa1c及びXaa1dは、それぞれ独立してシステイン(Cys)又はヒスチジン(His)を示し、これらは全てCysであってもよく、また逆に全てHisであってもよい。これらのCys又はHisは金属イオンの配位結合に直接的に関与するアミノ酸残基であるため、本発明の金属フィンガーモチーフについては、特に該モチーフにおけるそれらの位置が重要となる。本発明では、Xaa1a、Xaa1b、Xaa1c及びXaa1dについて、CysとHisとをその数及び順序に関して自由に組み合わせることができ、その組み合わせについては特に限定されないが、例えば、CysとHisとを2個ずつ用いることが好ましく、さらにはその順序が、Xaa1a、Xaa1b、Xaa1c、Xaa1dの順に、Cys、Cys、His、Hisとすることが特に好ましい。また、このときに配位する金属イオンとしては、上述した通りであるが、亜鉛イオンが最も好ましい。
上記式(I)中のXaaは、チロシン又はその誘導体を示す。本発明では、金属フィンガーモチーフ内にチロシン誘導体を用いることを上記で説明しているが、複数個のアミノ酸により構成される上記式(I)において、このXaaの位置であれば、チロシン誘導体のみならずチロシンそのものであっても本発明の効果を奏することができる。この位置にチロシン残基を配置することにより、上記説明と同様に、チロシン残基側鎖の芳香環由来のπ電子とメチル化シトシンとの間にCH-π相互作用が発生し、上記式(I)の構造を含む金属フィンガーモチーフが選択的にDNAのメチル化領域と結合できるようになる。なお本発明では、いずれの残基であっても特に構わないが、CH-π相互作用の大きさの観点からはチロシン誘導体の方が好ましい。
また本発明においては、前記一般式(I)中の(Yaa)の構造を、下記の一般式(II)で表すことができる。
(式中、Xaa3aは、フェニルアラニン、チロシン又はロイシンを、Yaaは任意のアミノ酸を示し、m1は2〜4の整数、m2は3〜5の整数である。)
さらに本発明では、前記一般式(I)中の(Yaa)の構造を、下記の一般式(III)で表すことができる。
(式中、Xaa3bは、フェニルアラニン、チロシン又はロイシンを、Yaaは任意のアミノ酸を示し、n1は1〜3の整数である。)
上記式(II)及び(III)は、いずれもフェニルアラニン、チロシン又はロイシンから選ばれるアミノ酸と、1個以上の任意のアミノ酸とで構成されることを特徴としており、それらの結合は、上記式(I)と同様に様々な結合様式を取ることができる。その結合様式の中でも、上記式(I)と同様にアミド結合が好ましく、さらにはペプチド結合であることが特に好ましい。また、アミノ酸はL体、D体及びDL体を包含するものであるが、通常はL体を用い、アミノ酸の不斉中心は、R配置、S配置又はRS配置のいずれであってもよい。
本発明では、上記式(I)の中において、上記式(II)及び(III)の通り、Xaa3a及びXaa3bの位置に、フェニルアラニン、チロシン又はロイシンから選ばれるアミノ酸を配置させることを特徴としている。これらのアミノ酸残基は疎水性中心を形成し、また疎水性相互作用を形成することから、上記の通りフェニルアラニン、チロシン又はロイシンを配置させることによって、本発明における金属フィンガーモチーフの構造をさらに安定化させることができる。なお、上記式(II)及び(III)を上記式(I)の中に組み込んだ構造は、下記の一般式(VIII)で表すことができる。
(式中、Xaa1a、Xaa1b、Xaa1c及びXaa1dは同一又は異なってシステイン又はヒスチジンを、Xaaはチロシン又はその誘導体を、Xaa3a及びXaa3bはそれぞれ独立してフェニルアラニン、チロシン又はロイシンを、Yaaは任意のアミノ酸を示し、lは2又は4の整数、m1は2〜4の整数、m2は3〜5の整数、n1は1〜3の整数、oは3〜5の整数である。)
また本発明においては、前記一般式(II)又は(VIII)中の(Yaa)m1の構造を、下記の一般式(IV)で表すことができる。
(式中、Xaa4aは、リシン、アルギニン又はヒスチジンを、Yaaは任意のアミノ酸を示し、m3及びm4は0〜2の整数である。)
さらに本発明では、前記一般式(III)又は(VIII)中の(Yaa)n1の構造を、下記の一般式(V)で表すことができる。
(式中、Xaa4bは、リシン、アルギニン又はヒスチジンを、Yaaは任意のアミノ酸を示し、n2は0〜2の整数である。)
上記式(IV)及び(V)は、いずれもリシン、アルギニン又はヒスチジンから選ばれるアミノ酸のみ、或いはそれに1個以上の任意のアミノ酸を加えた形式で構成されることを特徴としている。複数のアミノ酸で構成される場合、該アミノ酸の結合は、上記式(I)と同様に様々な結合様式を取ることができる。その結合様式の中でも、上記式(I)と同様にアミド結合が好ましく、さらにはペプチド結合であることが特に好ましい。また、アミノ酸はL体、D体及びDL体を包含するものであるが、通常はL体を用い、アミノ酸の不斉中心は、R配置、S配置又はRS配置のいずれであってもよい。
リシン、アルギニン又はヒスチジンは、正電荷又は水素原子供与性のアミノ酸であり、本発明では上記式(VIII)の中において、上記式(IV)及び(V)の通り、Xaa4a及びXaa4bの位置にこれらのアミノ酸を配置させることを特徴としている。これらの残基は、チロシン誘導体と相互作用して該チロシン誘導体をCH-π相互作用に適した構造に固定させることができ、また、チロシン誘導体及び二本鎖DNAと相互作用して本発明の金属フィンガーモチーフと二本鎖DNAとの複合体を安定化することができる。従って、上記のようにリシン、アルギニン又はヒスチジンを配置させることによって本発明の金属フィンガーモチーフに含まれるチロシン又はその誘導体の配座をより固定させることができ、メチル化DNAに対する結合の効果をさらに高めることができる。なお、上記式(IV)及び(V)を上記式(VIII)の中に組み込んだ構造は、下記の一般式(IX)で表すことができる。
(式中、Xaa1a、Xaa1b、Xaa1c及びXaa1dは同一又は異なってシステイン又はヒスチジンを、Xaaはチロシン又はその誘導体を、Xaa3a及びXaa3bはそれぞれ独立してフェニルアラニン、チロシン又はロイシンを、Xaa4a及びXaa4bはそれぞれ独立してリシン、アルギニン又はヒスチジンを、Yaaは任意のアミノ酸を示し、lは2又は4の整数、m3及びm4は0〜2の整数、m2は3〜5の整数、n2は0〜2の整数、oは3〜5の整数である。)
また本発明においては、前記一般式(II)、(VIII)又は(IX)中の(Yaa)m2の構造を、下記の一般式(VI)で表すことができる。
(式中、Xaa4cはアルギニンを、Yaaは任意のアミノ酸を示し、m5は0〜2の整数、m6は1〜3の整数である。)
上記式(VI)は、アルギニン及び1個以上の任意のアミノ酸で構成されることを特徴としており、該アミノ酸の結合は、上記式(I)と同様に様々な結合様式を取ることができる。その結合様式の中でも、上記式(I)と同様にアミド結合が好ましく、さらにはペプチド結合であることが特に好ましい。また、アミノ酸はL体、D体及びDL体を包含するものであるが、通常はL体を用い、アミノ酸の不斉中心は、R配置、S配置又はRS配置のいずれであってもよい。
本発明は、上記式(II)、(VIII)又は(IX)の中において、上記式(VI)の通り、Xaa4cの位置にアルギニンを配置させることを特徴としている。このアルギニンは、CpGアイランドにおけるグアニン(G)と高い結合性を示すアミノ酸であることから、上記の通りアルギニンを配置させることによって、検出すべき二本鎖DNAとの親和性が向上し、本発明における金属フィンガーモチーフの二本鎖DNAへの結合力をさらに高めることができる。なお、上記式(VI)を上記式(IX)の中に組み込んだ構造は、下記の一般式(X)で表すことができる。
(式中、Xaa1a、Xaa1b、Xaa1c及びXaa1dは同一又は異なってシステイン又はヒスチジンを、Xaaはチロシン又はその誘導体を、Xaa3a及びXaa3bはそれぞれ独立してフェニルアラニン、チロシン又はロイシンを、Xaa4a及びXaa4bはそれぞれ独立してリシン、アルギニン又はヒスチジンを、Xaa4cはアルギニンを、Yaaは任意のアミノ酸を示し、lは2又は4の整数、m3及びm4は0〜2の整数、m5は0〜2の整数、m6は1〜3の整数、n2は0〜2の整数、oは3〜5の整数である。)
本発明における金属フィンガーモチーフに含まれるチロシン誘導体は、チロシンを母体として、官能基の導入、酸化、還元又は原子の置き換え等、母体の構造や性質を大幅に変えない程度に改変された化合物であれば特に限定されないが、好ましくは下記の一般式(VII)で表される化合物とすることができる。
(上記式中、
R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基若しくはリン含有基を示し、
又はRとR並びにRとRは、リン含有基でない場合、それぞれ一緒になって芳香環若しくは芳香性複素環を形成してもよく、
ただし、R、R、R、R及びRの少なくとも一つがリン含有基であり、
R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基若しくはリン含有基を示す。)
R、R、R、R、R、R及びRにおけるハロゲン原子としては、特に限定されないが、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子等が挙げられる。また、アルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のものがあり、例えば、炭素数が1〜6の低級アルキル基が挙げられ、その中では、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が例示されるが、本発明では特にこれらに限定されない。アルコキシ基としては、例えば、炭素数が1〜6の低級アルコキシ基が挙げられ、その中では、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。
R、R、R、R、R、R及びRにおけるリン含有基とは、リン原子(P)を含有する化学基をいい、そのリン原子は3価であっても5価であってもよい。本発明におけるリン含有基としては、酸素原子、水素原子、窒素原子、硫黄原子、炭素原子又はハロゲン原子等に結合しているリン原子が含まれるものであれば特に限定されないが、例えば、リン酸基、二リン酸基、三リン酸基、ピロリン酸基、アルキルリン酸基、ホスホロチオエート基、ホスホロジチオエート基、ホスホロアミデート基等が挙げられる。例えば、検出すべきメチル化DNA含有試料中にホスファターゼ等の分解酵素が存在している場合は、該分解に耐性を有するホスホロチオエート基等を用いることが好ましい。本発明においては、R〜Rの置換基のうち少なくとも一つがリン含有基であり、好ましくは、リン含有基は一つであって、残りはリン含有基ではない。また、より好ましくは、Rの置換基のみがリン含有基であって、残りの置換基がリン含有基以外の化学基であるか、又は芳香環若しくは芳香性複素環を形成する。なお、これらのうち、リン含有基の中でもリン酸基であることが好ましい。
また、R、R、R及びRについては、それぞれがリン含有基でない場合、RとR並びにRとRがそれぞれ一緒になって、芳香環若しくは芳香性複素環を形成することができる。ここで、芳香環とは、π電子を持つ原子が環状に並んだ不飽和環状構造を有し、その環上のπ電子系に含まれる電子の数が4n+2個(nは0以上の整数)であるものをいう。また、芳香性複素環とは、前記芳香環のうち、炭素原子以外の原子(ヘテロ原子ともいう)を構成元素として有する芳香環をいう。本発明においては、これらの芳香環又は芳香性複素環は単環式のみならず、二環式、又はそれ以上の多環式の構造も含むものであり、その芳香環又は芳香性複素環としては、特に限定されないが、例えば、ベンゼン、フラン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、クリセン、トリフェニレン、テトラフェン、ピレン、ペンタセン、ピセン、ペリレン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、ピラジン、キノキサリン、アクリジン、ピリミジン、キナゾリン、ピリダジン、シンノリン、トリアジン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ピロール、インドール、イソインドール、チオフェン、ベンゾチオフェン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、プリン、ピラゾール、インダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、イソオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール等により形成される環が挙げられる。
本発明のペプチドは、以上のような特定の金属フィンガーモチーフを含有することを特徴とする。本発明におけるペプチドとは、「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」を用語として交換可能に使用することができるものであり、アミド結合(ペプチド結合)等によって結合された2以上のアミノ酸により構成される。該アミノ酸は、L体、D体及びDL体を包含するものであるが、通常はL体を用い、該アミノ酸の不斉中心は、R配置、S配置、又はRS配置のいずれであってもよい。
本発明のペプチドは、アミノ酸残基の長さとして任意の長さとすることができる。例えば、5〜100のアミノ酸残基長とすることができ、好ましくは15〜80のアミノ酸残基長、さらに好ましくは20〜70のアミノ酸残基長とすることができる。該ペプチドの分子量は、アミノ酸残基の長さに応じればよく、特に限定されないが、例えば、10000未満とすることができ、好ましくは8000未満、さらに好ましくは6000未満、特に好ましくは4000未満とすることができる。
本発明のペプチドは、上記の金属フィンガーモチーフ1種に加え、さらに該金属フィンガーモチーフと同一又は異なるアミノ酸配列からなる金属フィンガーモチーフ、或いはメチル化DNAは認識しないが非メチル化DNAに結合する金属フィンガーモチーフを1個又は2個以上含むことができる。また、金属フィンガーモチーフのみならず、例えば、ロイシンジッパーやヘリックス−ターン−ヘリックス(HTH)等のDNA結合モチーフを含むこともできる。これらのDNA結合モチーフは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記の金属フィンガーモチーフは、これらのDNA結合モチーフと直接的に連結させることもできれば、1個若しくは2個以上のアミノ酸残基又はその他の分子等を介して連結させることもできる。これらのDNA結合モチーフをさらに含むことにより、高いDNA結合性が得られるとともに、メチルシトシンを含む特定の塩基配列を認識する機能を付与することができる。
本発明のペプチドが複数の金属フィンガーモチーフ及び/又はその他のDNA結合モチーフを含む場合、それらのモチーフ間のN末端からの順序は特に限定されない。
本発明のペプチドは、そのN末端及びC末端が修飾されていてもよい。該修飾としては、ペプチドの安定化、機能調節、化学反応の誘起等のために通常行われる修飾が限定なく用いられる。N末端の修飾としては、例えば、アセチル化やベンゾイル化などのアシル化、ホルミル化、ミリストイル化、メチル化、ピログルタミン酸化、糖化、ビオチン化、蛍光ラベル等の色素修飾等が挙げられ、C末端の修飾としては、アミド化、SUMO化、GPIアンカー化、ビオチン化、蛍光ラベル等の色素修飾等が例示される。
本発明のペプチドは、その塩も含むことができる。ペプチドの塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸等)との塩、有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等)との塩、又は塩基(例えば、アルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、マグネシウム等)、アンモニウム及び置換アンモニウム(例えば、ジメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム等)等)との塩等が挙げられる。
本発明のペプチドは、アミノ酸のみで構成されるものに限定されず、上記の金属フィンガーモチーフに直接的に又は1個以上のアミノ酸残基を介してアミノ酸以外の他の分子が結合したものも含まれる。他の分子としては、例えば、オルトニトロベンジル基やジアゾ基、アゾ化合物等を有する光反応性分子、インターカレーター(例えば、アントラセン、エチジウム等)、シグナル分子(例えば、量子ドット、フッ化物、ガドリニウムイオン及びそのキレーター等)、又は固相担体(例えば、磁性粒子、プラスチック、ゲル等)等が挙げられる。また、他のペプチド(タンパク質)であってもよく、抗体やキャリアタンパク等が挙げられる。当該他の分子として、DNAに結合するという特徴を有する天然化合物又は化学的に合成された化合物等を用いれば、さらに本発明のペプチドのDNA結合親和性を高めることができる。
本発明のペプチドは、さらに標識剤により標識されることも可能である。本発明に用いられる標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質、ハプテン等が用いられる。放射性同位元素としては、例えば、32P、33P、35S、H、14C、65Zn、57Co、59Fe、109Cd、28Mg、54Mn、45Ca、90Sr、133Ba、63Ni、64Cu、203Hg、113Sn、202Pb等が用いられ、日本アイソトープ協会等より適宜購入することができる。なお、65Zn、57Co、59Fe、109Cd、28Mg、54Mn、45Ca、90Sr、133Ba、63Ni、64Cu、203Hg、113Sn、202Pb等の金属放射性同位元素は、本発明の金属フィンガーモチーフに金属イオンの形で配位して標識してもよい。酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素等が用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレセイン、フルオレスカミン、フルオレセインイソチオシアネート等が用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニン等が用いられる。ハプテンとしては、例えば、ビオチン、ジゴキシゲニン、ジニトロフェノール(DNP)、チミン二量体等が用いられる。これらにより、本発明のペプチドを介してDNAのメチル化領域の検出又は定量が可能となり、さらにはその検出感度を向上させることもできる。
本発明のペプチドの製造方法については特に制限はなく、公知のペプチド合成法(ペプチド鎖の合成)により化学的又は生物学的に製造することができる。ペプチドの合成法としては、例えば、カルボキシル基を保護したアミノ酸(アミノ成分)にアミノ基を保護したアミノ酸(酸成分)を反応させ、遊離のアミノ基とカルボキシル基とをジシクロヘキシルカルボジイミド等を用いて脱水縮合させてペプチド結合を合成し、反応後に保護基を除去する方法が用いられる。この際、アミノ基の保護基のみを除去し、新たな酸成分を加えて反応させることを繰り返せば、C末端側からN末端側にアミノ酸を一つずつ伸長することができる。また、一アミノ酸ずつ付加させるのみならず、ある程度の長さのペプチド(オリゴペプチド)同士を結合させる方法も用いることができる。このペプチド合成法は、不溶性高分子担体上で行う固相合成法、又は溶液で行う液相合成法のいずれによって行ってもよい。なお、N-アミノ基の保護基としては、t-ブトキシカルボニル(Boc)基、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)基等を用いることができる。このようなペプチド合成法は、市販のペプチド自動合成機を用いて行うことができる。
また、その他の方法としては、公知の遺伝子組み換え技術を用いて本発明のペプチドを製造することもできる。この場合、例えば、先ず本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドを取得し、該ポリヌクレオチドを含む発現ベクターで宿主を形質転換し、得られる形質転換体を培養することによって、該ペプチドを製造することができる。
該ポリヌクレオチドは、DNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよいが、好ましくはDNAが挙げられる。また、該ポリヌクレオチドは二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNA、又はDNA:RNAのハイブリッドでもよい。該ポリヌクレオチドは、それぞれの公知の配列情報等を利用することにより適当なプライマーを設計し、DNAクローン等を鋳型として用い、PCRによって直接増幅することができる。例えば、本発明の金属フィンガーが亜鉛フィンガーである場合、ヒトを始めとする多生物種の転写調節因子(例えば、Sp1等)に含まれる塩基配列をその配列情報として利用することができ、さらに部位特異的変異導入等を利用してチロシンを所定の位置に導入することができる。その他、該配列情報に基づいて、市販のポリヌクレオチド合成装置を用い、該ポリヌクレオチドを合成してもよい。
ベクターとしては発現ベクター、クローニングベクター等を挙げることができ、目的に応じて選択することが可能である。該発現ベクターは、該ポリヌクレオチドを適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に機能的に連結することにより製造することができる。ベクターの種類としては、プラスミドベクター、ウイルスベクター等を挙げることができ、用いる宿主に応じて適宜選択することができる。
該ベクターを、自体公知の遺伝子導入法(例えば、リポフェクション法、リン酸カルシウム法、マイクロインジェクション法、プロプラスト融合法、エレクトロポレーション法、DEAEデキストラン法、Gene Gunによる遺伝子導入法等)に従って宿主へ導入することにより、該ベクターが導入された形質転換体を製造することができる。導入されるベクターとして発現ベクターを使用することにより、該形質転換体は本発明のペプチドを発現し得る。該形質転換体を、宿主の種類に応じて自体公知の方法で培養し、培養物から本発明のペプチドを単離することにより、本発明のペプチドを製造することができる。
上記のようにして得られたペプチドは、通常の精製方法、例えば溶媒抽出;蒸留;逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等の複数のクロマトグラフィー;再結晶等を組み合わせて単離精製することができる。また、上記方法で得られたペプチドが遊離体である場合には公知の方法によって適当な塩に変換可能であり、逆に塩で得られた場合には、公知の方法によって遊離体に変換することも可能である。
上記式(VII)で表されるチロシン誘導体については、リン酸化酵素(キナーゼ、ホスホキナーゼ、プロテインキナーゼともいう)又はアミダイト試薬を用い、上記のように合成したペプチドを修飾することによって、上記式(VII)のRの位置にリン含有基を導入することができる。リン酸化酵素を用いる場合は、例えば、ATP等のリン含有基の供与体、及びマグネシウムイオンやマンガンイオン等の金属イオンを併せて用いて、自体公知の方法により該ペプチドのチロシン残基にリン含有基を導入することができる。
また、チロシン誘導体、又は蛍光基若しくはビオチン等を側鎖に有する非天然アミノ酸を本発明のペプチドに導入する場合は、非天然アミノ酸導入タンパク質合成法(CloverDirectTM、ProteinExpress)を用いることもできる。該合成法は、終止コドンであるUAGコドン(アンバーコドン)又はCGGGコドン(4塩基コドン)による方法を利用することができる。
アンバーコドンを用いる場合について具体的に説明すると、本発明のペプチドをコードする遺伝子について、非天然アミノ酸を導入しようとする部位にUAGコドンを挿入又は置換したmRNAを構築し、該mRNAを、非天然アミノ酸を結合させたアンバーサプレッサーtRNAとともに無細胞翻訳系に加えると、該tRNAがUAGコドンを読み取り、その指定の位置に非天然アミノ酸が導入されることになる。ここで、アンバーサプレッサーtRNAとは、変異等により生じたアンバーコドン(UAG)をあるアミノ酸に対応するコドン(センスコドン)として読み取り、本来は中断又は終了するはずのタンパク質合成を回復及び継続させる因子をいう。もし、このUAGコドンを終結因子が読み取った場合には、その時点でペプチド合成が停止することになるので、完全に反応が終了した後に完全長のペプチドのみを単離すれば、高い効率で非天然アミノ酸が導入された目的のペプチドを得ることができる。
CGGGコドンを用いる場合は、本発明のペプチドをコードする遺伝子について、非天然アミノ酸を導入しようとする部位にCGGGコドンを挿入又は置換したmRNAを構築し、該mRNAを、非天然アミノ酸を結合させた4塩基アンチコドンCCCG含有tRNAとともに無細胞翻訳系に加えると、該tRNAがCGGGコドンを読み取り、その指定の位置に非天然アミノ酸が導入されることになる。この際、CGGコドンを認識するArg-tRNAが読み取った場合には、コドンの読み取り枠がずれて下流の終止コドンによりペプチド合成が停止するが、CGGコドンは一般に使用頻度が低いコドン(マイナーコドン)であるため、その読み取りが行われる可能性は低い。これにより、所定の位置に非天然アミノ酸が導入された目的のペプチドを得ることができる。
本発明はまた、上記のペプチドについて金属イオンを配位結合した状態で含有するものを提供する。本発明のペプチドに含有される金属フィンガーモチーフは、金属イオンが該モチーフに配位することによりその立体構造が変化するという特徴を有する。変化後の立体構造については、円偏光二色性(円二色性又はcircular dichroism(CD)とも呼ぶ)を利用した測定法によって、222nm及び208nm近傍に負のシグナル、190nm近傍に正のシグナルが得られることで確認をすることができる。この立体構造の変化により、DNAのメチル化領域(メチルシトシン)への結合性がさらに高められる。また、本発明のペプチドは金属イオンとともにメチル化DNAの検出に供されるところ、既に金属イオンが配位した状態であれば該金属イオンを別個に供する必要がなく、単一回の処理で検出操作を行うことができる。
該金属イオンは、金属フィンガーモチーフに配位結合し得る金属イオンであれば特に限定されないが、二価のカチオンとなる金属イオンが好ましく、例えば、亜鉛イオン、コバルト(II)イオン、鉄(II)イオン、カドミウムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、ニッケルイオン、銅イオン、水銀イオン、スズイオン又は鉛イオン等が挙げられる。これらのうち、該金属イオンとしては、金属フィンガーモチーフの構造安定性の観点から亜鉛イオン、コバルト(II)イオン、鉄(II)イオン、カドミウムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン又はカルシウムイオンが好ましく、それらの中でも亜鉛イオン、コバルト(II)イオン、鉄(II)イオン又はカドミウムイオンがさらに好ましく、中でも亜鉛イオンが特に好ましい。なお、該金属イオンがコバルト(II)イオンである場合は、紫外可視吸収スペクトルの測定により、配位子の中心金属への電荷移動吸収帯(Ligand to Metal Charge Transfer(LMCT)帯)に相当する吸収帯が320nmに見られ、d-d遷移(transition)に相当する吸収帯が582nm及び640nmを中心に見られることで、本発明のペプチドとコバルト(II)イオンとの結合及び構造を確認することができる。
本発明はまた、上記のペプチド及び金属イオン供給化合物を含んでなる、二本鎖DNAのメチル化領域を検出するキットを提供する。本発明における金属フィンガーモチーフは、DNAのメチル化領域に結合するために、金属イオンの配位によって構造が変化されることが必要とされる。そのため、本発明のペプチドに加えて、該金属イオンを供給することができる化合物を同時に用いることが好ましい。従って、本発明のキットを用いれば、効率よくDNAのメチル化領域の検出を行うことができる。
本発明における金属イオン供給化合物は、上記の金属フィンガーモチーフと配位結合をする金属イオンを供給する化合物であれば特に限定されないが、二価のカチオンとなる金属イオンを供給する化合物が好ましく、例えば、亜鉛、コバルト、鉄、カドミウム、マグネシウム、マンガン、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ニッケル、銅、水銀、スズ又は鉛等の金属原子を含有する化合物が挙げられる。これらのうち、該金属原子としては、金属フィンガーモチーフの構造安定性の観点から亜鉛、コバルト、鉄、カドミウム、マグネシウム、マンガン又はカルシウムが好ましく、それらの中でも亜鉛、コバルト、鉄又はカドミウムがさらに好ましく、中でも亜鉛が特に好ましい。金属イオン供給化合物としては、例えば、上記の金属原子を含有する塩等が挙げられ、その塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸等)との塩、有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、グルコン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等)との塩等が挙げられる。なお、該金属原子が亜鉛原子である場合、金属イオン供給化合物としては、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、クエン酸亜鉛、乳酸亜鉛、グルコン酸亜鉛等を例示することができ、これらの中でも、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、クエン酸亜鉛が好ましく、中でも塩化亜鉛がさらに好ましい。本発明では、これらのような金属イオン供給化合物について単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明はまた、(a)金属イオンを配位しない上記のペプチド、金属イオン供給化合物及び二本鎖DNAを接触させる工程、並びに(c)該二本鎖DNAのメチル化領域に結合したペプチドを検出する工程を含む、二本鎖DNAのメチル化領域を検出する方法を提供する。上述の通り、本発明における金属フィンガーモチーフを含むペプチドがメチル化DNAに結合するためには金属イオンが該モチーフに配位することが求められる。そのため、本発明のメチル化DNA検出方法は、金属イオンを配位していないペプチドとこれに配位結合する金属イオンを供給する化合物とをあわせて用いることを特徴とする。該ペプチドと該金属イオン供給化合物は、メチル化DNAを含有する試料に同時に加えてもよいし、ペプチドを先に加えておいてから後で金属イオン供給化合物を加えてもよく、又はその逆であってもよい。
また本発明は、(b)金属イオンを既に配位した上記のペプチド及び二本鎖DNAを接触させる工程、並びに(c)該二本鎖DNAのメチル化領域に結合したペプチドを検出する工程を含む、二本鎖DNAのメチル化領域を検出する方法を提供する。本発明によれば、既に金属イオンは該ペプチドに配位しており、該ペプチドはメチル化DNAに結合し得る構造態様を既に取っているため、金属イオン供給化合物を別途用いることなく二本鎖DNAのメチル化領域を検出することができる。
本発明では、検出すべき二本鎖DNAを含有する試料の由来については特に制限されず、いかなる生物由来のものであってもよいが、好ましくは哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、サル、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、ハムスター等)であり、より好ましくはヒト、マウス、ラット、サル、イヌであり、特に好ましくはヒトである。
また二本鎖DNAを含有する試料としては、例えば、哺乳動物の組織(例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆嚢、骨髄、副腎、皮膚、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、血液(例、末梢血、臍帯血)、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、毛髪、関節、脂肪組織、骨格筋等)、又は該組織より単離された細胞(例えば、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、杯細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、線維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞若しくは間質細胞又はこれら細胞の前駆細胞、幹細胞若しくはガン細胞等)、その他として、尿、痰、精液等とすることができる。
二本鎖DNA含有試料は、上記のような生体試料そのものであってもよく、該生体試料からDNAが単離されたものであってもよい。DNAの単離(抽出)方法としては、例えば、プロテイナーゼK及びlysis buffer(50mM Tris-HCl(pH7.5)、20mM EDTA、0.1M NaCl、1% SDS)等を用いて細胞のタンパク質を溶解し、フェノール/クロロホルムを用いてDNAを抽出する方法や、市販のDNA抽出試薬を用いてDNAを抽出する方法、その他、カラムキット(GENERATION Capture Column Kit Gentra、Qiagen)による抽出方法等が挙げられ、自体公知の方法に従って行うことができる。
上記の(a)又は(b)における該ペプチド等と二本鎖DNAとを接触させる工程は、その方法としては特に限定されず、液中に必要な要素を添加して反応させるような態様(液相系)であってもよく、或いは、固相に必要な要素を固定しておいて、その固定化された要素に対して別の要素を加えるような態様(固相系)であってもよい。また、上記(c)における該ペプチドを検出する工程において、特にその検出方法は制限されず、あらゆる方法を利用することができる。
液相系での検出方法としては、まず、例えば、緩衝液等の溶液中に、金属イオンを配位していない上記ペプチド及び金属イオン供給化合物、又は金属イオンを既に配位している上記ペプチドのいずれかと、被検試料、即ち二本鎖DNAを含有する試料とを添加することにより、これらを接触することができる。このとき、二本鎖DNAを含有する試料としては、特に限定されないが、組織又は細胞から単離したDNA抽出物を用いることが好ましい。また、緩衝液としては、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水、トリス緩衝生理食塩水等が例示される。また、ここではEDTA等のキレート剤は加えないほうが好ましい。キレート剤の添加によって、本発明に用いられる金属イオンが該ペプチドに配位しなくなるおそれがあるからである。これらの溶液中における接触時間は、該ペプチドと二本鎖DNAのメチル化領域とが結合する条件であれば特に限定されないが、0〜50℃の条件において1〜30分間とすることが好ましい。また、該ペプチド等を加える順序は特に制限されず、同時に添加してもよい。
該ペプチドと被検試料とを接触させた後は、例えば、蛍光偏光法、蛍光相関分光法又は等温滴定熱量測定等を利用して該ペプチドを検出することができる。
蛍光偏光法とは、蛍光性の物質に励起光として偏光を照射すると、生じる蛍光の偏光度が分子の状態によって異なること(蛍光異方性)を利用し、分子の状態を計測する方法である。そのため、該ペプチドは、二本鎖DNA含有試料との接触を行う前に、あらかじめフルオレセイン、フルオレスカミン、フルオレセインイソチオシアネート等の蛍光物質を標識として付与しておく必要がある。蛍光物質の標識は自体公知の方法により付与することができ、例えば、市販の蛍光物質を用いた場合は、その製品に含まれる説明書プロトコールに従って行うことができる。蛍光偏光の測定は、市販のプレートリーダーを用い、蛍光物質に応じた特定の波長で励起させて特定の波長を検出することにより行うことができる。
また、蛍光相関分光法とは、蛍光物質の分子運動を調べるために用いられる方法であり、蛍光の自己相関を利用し、試料の微小範囲に特定波長の光を当てて蛍光強度のゆらぎを測定する方法である。従って、上記と同様に該ペプチドをあらかじめ蛍光標識しておく必要があり、二本鎖DNAとの接触を行った後、例えば、光学顕微鏡、好ましくは共焦点顕微鏡又は二光子顕微鏡等、及び市販の検出装置を用いて蛍光強度のゆらぎを観測し、その強度スペクトルを逆フーリエ変換して時間スペクトルを得ながら、蛍光物質の運動状態をその数を測定することができる。
等温滴定熱量測定は、一定の温度下で滴定に伴う熱量変化を検出するものであり、該ペプチドと二本鎖DNAとが結合するときに発生する微小な熱量変化を計測し、得られる滴定曲線から、結合比、結合定数及び結合のエンタルピー変化を求めることにより両分子の結合状態を観測することができる。等温滴定熱量を測定する装置としては、市販の等温滴定型熱量計等があり、例えば、MicroCal社やTA INSTRUMENTS社等の装置が挙げられる。
また、液相系における別の検出態様としては、ゲルシフトアッセイを利用することもできる。
ゲルシフトアッセイを利用する場合は、本発明のペプチドを二本鎖DNAに接触する前にあらかじめ標識を付与しておく必要がある。ここでの標識は、特に限定されず、32P等の放射性同位元素、フルオレセイン等の蛍光物質、ジゴキシゲニンやビオチン等のハプテン等を用いることができ、自体公知の方法によって標識付与することができる。標識付与した該ペプチドと二本鎖DNAとを接触させた後で、例えば、ポリアクリルアミドゲル等を用い、従来の公知技術に基づいて電気泳動を行う。電気泳動を行った後、使用したゲルからナイロンメンブレン等に泳動物質の転写を行い、得られたバンドの観察を行う。その観察方法は、放射性同位元素で該ペプチドを標識した場合には、例えばオートラジオグラフィー等を用いてバンドを検出し、また蛍光物質を用いた場合には特定波長の光を当てることにより検出を行い、ハプテンを用いた場合は、該ハプテンに結合する物質(抗体、ストレプトアビジン等)とかかる結合物質を認識する蛍光標識抗体とを用いた免疫反応の蛍光検出により行うことができる。
他方、固相系での検出方法としては、例えば、in situによるメチル化DNAの検出方法等を利用することができる。この場合、まず、検体とすべき組織又は細胞を、その形態や構造内容物を観察可能な状態で固体支持体の上に固定する。検体としては、組織試料の場合、ミクロトーム等で薄く切片化された組織切片を用いても、ホールマウントされた組織又は個体を用いてもよいが、好ましくは、組織切片が用いられる。組織切片は、凍結組織を切片化し、パラフィン又は樹脂で包埋された切片であってもよい。また、固体支持体としては、固定操作に耐えられるものであれば特に限定されないが、好ましくは顕微鏡観察に適するものがよく、例えば、スライドガラス等が挙げられる。試料の固定には自体公知の方法を用いればよく、例えば、パラホルムアルデヒド液、グルタルアルデヒド液、四酸化オスミウム液、酢酸アルコール、メタノール、エタノール等を用いる方法、又は凍結法、マイクロウェーブ法等が挙げられる。
次に、固定化した試料をタンパク質分解酵素等で処理することが好ましく、この処理によって、その後に固定化試料に作用させる本発明のペプチド等の固定化試料内部への浸透性を高めることができる。また、該処理によって内因性ヌクレアーゼが不活性化されるため、標的物質である二本鎖DNAの保存にも効果的である。該処理に用いられるタンパク質分解酵素は特に制限されないが、例えば、トリプシン、プロナーゼ、プロテイナーゼK等が挙げられ、特にプロテイナーゼKが好ましい。また、該処理の条件は、用いるタンパク質分解酵素に応じて適宜設定することができるが、例えば、プロテイナーゼKを用いる場合、酵素濃度を1〜100μg/mLとし、リン酸緩衝液中において20〜40℃の条件で1〜60分間とすることができる。固定化試料がパラフィン包埋切片又は樹脂包埋切片の場合は、定法により脱パラフィン又は脱樹脂を行った後にタンパク質分解酵素処理に供することができる。
そして、固定化試料の上に、あらかじめ標識が付与された本発明のペプチド等を含有する溶液を乗せることにより、該ペプチド等と二本鎖DNAとを接触させることができる。接触時間としては、例えば、20〜40℃の条件において10〜120分間とすることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。また、接触の前に、該ペプチド等を含有しない溶液(緩衝液等)のみを乗せて、1〜数十分間のプレインキュベーションを行うことも可能である。
上記の通り、該ペプチド等と二本鎖DNAとの接触を行った後は、該ペプチドに付された標識を検出することにより、メチル化DNAの検出を行うことができる。該標識としては、例えば、蛍光物質、発光物質、放射性同位元素又はハプテン等を用いることができる。蛍光物質又は発光物質を用いた場合は、蛍光顕微鏡、光学顕微鏡又は多光子レーザー顕微鏡等を用いてその蛍光又は発光を検出することができる。また、検出したシグナルをデジタル画像処理して三次元的に検出することも可能である。放射性同位元素を用いた場合であれば、オートラジオグラフィーやシンチレーション計測器等を用いて、その放射線測定を行うことにより検出することができる。ハプテンの場合は、ハプテンに結合する物質(抗体等)とかかる結合物質を認識する蛍光標識抗体とを用いた免疫反応の蛍光検出により行うことができる。なお、ハプテンを認識するための蛍光標識抗体に使用する蛍光物質は、上記と同様に、蛍光顕微鏡等を用いて検出することができる。
また、固相系での別の実施態様としては、enzyme-linked immunosorbent assay(ELISA)様によるメチル化DNAの検出方法も挙げられる。
例えば、本発明のペプチドを支持体に固定し、ここに被検試料を加えて該ペプチドと二本鎖DNAとを接触させ、インキュベートを行って該ペプチドと二本鎖DNAのメチル化領域とを結合させた後に洗浄して、洗浄後に、二本鎖DNAを特異的に認識する標識抗体又は標識された二本鎖DNA結合ペプチドを加え、支持体に残存している二本鎖DNAに結合させて該標識を検出することにより、被検試料中のメチル化DNAの検出を行うことができる。該被検試料としては特に限定されないが、好ましくは組織又は細胞からのDNA単離抽出物である。該支持体としては、例えば、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネイト樹脂等の合成樹脂や、ガラス等の支持体を挙げることができる。これらの支持体は、プレート等の形状で用いることが可能であり、例えば、マルチウェルプレート(96穴マルチウェルプレート等)等を用いることができる。本発明のペプチドと支持体との結合は、化学結合や物理的な吸着等の通常用いられる方法により結合することができる。これらの支持体は全て市販されたものを用いることができる。なお、被検試料を加える前には、支持体を洗浄後、タンパク質等の非特異的な支持体への結合を防ぐため、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)、ゼラチン、アルブミン等でブロッキング処理を行うこともできる。ブロッキング処理を行った場合は、その後、再度洗浄を行ってから、被検試料を加えればよい。
該ペプチドと二本鎖DNAとの結合は、通常、緩衝液中で行われる。緩衝液としては、例えば、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸塩緩衝液、炭酸塩緩衝液等が使用される。また、インキュベーションの条件としては、通常用いられる条件であれば特に限定されず、例えば、4℃〜室温にて10分間〜15時間のインキュベーションが行われる。インキュベーション後の洗浄においては、該ペプチドと二本鎖DNAとの結合を妨げないものであれば特に制限されず、例えば、Tween 20、Tween 80、Triton X-100等の界面活性剤を含む緩衝液などが使用される。
洗浄を行った後は、二本鎖DNAを認識可能な抗体であらかじめ標識がされているもの又は標識された二本鎖DNA結合ペプチドを加える。ここで、該抗体はメチル化された二本鎖DNAを認識するものに限らず、一般に二本鎖DNAを認識するものを用いることができる。また、該標識された二本鎖DNA結合ペプチドは、二本鎖メチル化DNAに結合する本発明のペプチドばかりでなく、メチル化されていない二本鎖DNAに結合するペプチド(例、公知の亜鉛フィンガーペプチド)を用いることもできる。また、該標識としては、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質、ハプテン等を用いることができ、自体公知の方法により該抗体又は該ペプチドに付与することができる。
そして適度な条件でインキュベーションを行った後、再度洗浄を行い、支持体に残存した標識を検出する。当該検出方法は、当業者に公知の方法により行うことができ、例えば、放射性同位元素による標識の場合には液体シンチレーションやRIA法等により検出することができる。また、酵素による標識の場合には基質を加え、基質の酵素的変化、例えば発色を吸光度計により検出することができる。該基質としては、例えば、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)、2,2’-アジノビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)ジアンモニウム塩(ABTS)、1,2-フェニレンジアミン(オルソ-フェニレンジアミン)等が挙げられる。蛍光物質の場合には蛍光光度計により検出することができる。
本発明の検出方法においては、対照試料と検出対象の試料とを準備し、これらの試料間でDNAのメチル化の有無、程度又はパターンを比較する工程を含むことができる。この比較結果に基づいて、DNAのメチル化の異常に基づく疾患の検査又は診断をすることが可能となる。検査又は診断目的のためには、DNAのメチル化を定量的に検出することが好ましい。
本発明は、(i)被検動物より採取した試料と、金属イオンを配位しない上記のペプチド及び金属イオン供給化合物、又は金属イオンを既に配位した上記のペプチドとを接触させる工程、(ii)前記試料に含まれる二本鎖DNAのメチル化領域に結合したペプチドを測定する工程、並びに(iii)工程(ii)の被検動物について得られる測定結果を正常対照について得られる測定結果と対比して、DNAメチル化異常の有無を調べる工程を含む、採取された試料におけるDNAメチル化異常の検査方法を提供する。
工程(i)に係る試料は、被検動物の二本鎖DNAを含有する試料であり、上述した検出方法の二本鎖DNA含有試料と同様にして入手することができる。また、同工程における接触、及び工程(ii)におけるペプチドの測定も上記の検出方法と同様にして行うことができる。
工程(iii)において、工程(ii)で得られた測定結果を、正常対照について得られる結果と対比して、DNAメチル化異常の有無を調べることができる。DNAメチル化異常の結果として、例えば、正常対照ではメチル化されていない領域に検出が見られたり、若しくはその逆であったり、又は検出されるペプチドの程度が異なっていたり(増減が見られる)、或いは複数個所において調べた場合にそれぞれの検出パターンが異なっていたりする等の相違が見られた場合は、かかる被検動物はDNAメチル化異常に関連する疾患を発症している、又はその発症可能性を有している蓋然性が高いと判定することができる。さらに、本発明の二本鎖DNAのメチル化領域を検出する方法を用いて様々なDNAメチル化異常に関連する疾患の患者におけるDNAのメチル化異常の程度を調べて得られた知見と本測定方法により得られた結果とを総合的に検証して、当該疾患の診断(悪性度、予後を含む)、治療方針などに役立てることができる。
DNAメチル化異常に関連する疾患としては、特に限定されるものではないが、例えば、大腸癌、肺癌、中皮腫、膵臓癌、胃癌、食道癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、肝臓癌、甲状腺癌、腎臓癌、子宮癌、脳腫瘍、黒色腫(メラノーマ)、肉腫、膀胱癌、多発性骨髄腫を含む血液癌等の癌;統合失調症、うつ病、てんかん、不安神経症、双極性障害、躁病、アルコール依存症、薬物依存症等の精神疾患;糖尿病(例えば、2型糖尿病、妊娠糖尿病、肥満型糖尿病等)、耐糖能不全[IGT(Impaired Glucose Tolerance)]、糖尿病合併症(例えば、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経症、糖尿病性腎症等)、高脂血症(例えば、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDL血症、食後高脂血症等)、動脈硬化症、膝関節炎等の生活習慣病;神経疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、リソソーム蓄積症、多発性硬化症、虚血性神経障害、脊髄損傷等)、自己免疫疾患(例えば、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、強直性脊椎炎、多発性硬化症、自己免疫性甲状腺炎、橋本病、自己免疫性溶血性貧血、悪性貧血、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性血球減少症、重症筋無力症、強皮症、多発性筋炎、続発性アディソン病、不妊症、自己免疫性糸球体腎炎、シェーグレン病、脈管炎、自己免疫性脊髄炎、1型糖尿病、潰瘍性大腸炎、クローン病等)、循環器疾患(例えば、狭心症、高血圧、心不全、血栓症等)等の後天的疾患等が挙げられる。
癌の場合、様々な癌抑制遺伝子がエピジェネティックな異常により不活化されており、各種癌における癌抑制遺伝子を対象としてDNAメチル化異常の検査を行うことができる。胃癌の場合、例えばLOX遺伝子を始めとして種々の遺伝子のDNAメチル化を測定することができ、大腸癌の場合、例えばSTAT1、STAT2、STAT3、3-OST-2等の遺伝子を、膀胱癌の場合、例えばKRT8、KRT17、H19、TIMP3、STAT1等の遺伝子を、肝臓癌の場合、例えばp21WAF1、CYR61、NIPSNAP1、CTGF、DNMT1等の遺伝子を始めとして種々の遺伝子のDNAメチル化を測定することができる。例えば、正常対照と比較して前記癌抑制遺伝子のDNAメチル化が増加している場合、被検動物は、癌に罹患しているか罹患するリスクが高いと判断され得る。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.試薬類
各試験に用いたアミノ酸、ゲノムDNA及びその他の全ての試薬類は、市販品を購入して使用した。また、ゲルシフトアッセイに使用したオリゴDNAは、株式会社ジーンデザインより購入した。
2.ペプチドの合成
被検試料として、下記アミノ酸配列:
RPFMCTWSYCGKRFTRSDXLQRHKRTHTGEKKFACPECPKRFMRSDHLSKHIKTHQNKK
からなるポリペプチドを合成し、表1に従って4種類のペプチドを作製した。それぞれのペプチドについて、N末端はアミンとし、C末端はアミドとして、ペプチドY(PO3)(実施例2)のリン酸化位置及びペプチドY(SO3)(比較例2)の硫酸化位置は、それぞれp位(上記式(VII)におけるRの位置)とした。
上記のアミノ酸配列からなるペプチドは59アミノ酸残基で構成されており、金属フィンガーモチーフに該当する部分はN末端より5〜27番目のアミノ酸配列である。各ペプチドの金属フィンガーモチーフは、ペプチドYは配列番号5で、ペプチドY(PO3)は配列番号6で、ペプチドFは配列番号7で、ペプチドY(SO3)は配列番号8で、それぞれ表す。なお、上記アミノ酸配列は、そのN末端より35〜51番目のアミノ酸配列が別の金属フィンガーモチーフ(亜鉛フィンガー)であることを特徴としている。
各ペプチドは、ペプチド自動合成機(Model 433A、Applied Biosystems)を使用して、Fmoc固相合成法でアミド樹脂担体上に作製した。得られた固相担体100mgに、trifluoroacetic acid(TFA)/triisopropylsilane(TIS)/1,2-ethanedithiol(EDT)/H2O(94:1:2.5:2.5[v/v])2mLを添加し、室温で3時間攪拌後、濾過した。濾液にエーテル40mLを添加し、白色固体の粗ペプチドを得た。逆相HPLCで30分間精製(カラム:Chemcobond 5-ODS-H(10×150mm、株式会社ケムコ)、溶媒:20-50% acetonitrile/0.1% TFA aq.)し、所定のペプチドを得た。各ペプチドについて、MALDI-TOF MS(Reflex、Bruker Daltonics)を用い、質量分析を通してペプチドの同定を行った。ペプチドYの実測値は7255.94([M+H]+、計算値:7255.49)、ペプチドY(PO3)の実測値は7335.30([M+H]+、計算値:7335.48)、ペプチドFの実測値は7239.08([M+H]+、計算値:7239.49)、ペプチドY(SO3)の実測値は7334.9([M+H]+、計算値:7334.55)であった。得られた各ペプチドに過剰量のZnCl2を添加し、ジンクフィンガーペプチドを得た。
3.ペプチドの構造確認
上記の通り作製した4種類のペプチドについて、金属イオンとの結合によりフォールディング構造を形成するかどうかを調べるため、これらのCDスペクトルを測定した。方法としては、希釈液(10mM Tris-HCl緩衝液(pH7.5)、50mM NaCl、0.1mM TCEP、60μM ZnCl)を用いて、ペプチドYの濃度を20μM、ペプチドY(PO3)の濃度を18μM、ペプチドFの濃度を18μM、ペプチドY(SO3)の濃度を19μMにそれぞれ調整し、光路長1mmのセルを用いて、窒素下、4℃で測定を行った。測定には円二色性分光計(JASCO、J-720)を用い、装置付属のソフトウェアを用いてベースライン補正、及び下記計算式(1)によるデータ処理を行い、それぞれのCDスペクトルを得た。その結果を図1に示す。
図1の結果より、いずれのペプチドも208nm及び222nm付近に負のピークが、190nm付近に正のピークが検出され、それぞれαヘリックス構造を形成していることが確認できた。
4.標識標的DNAの調製
下記のヌクレオチド配列:
5’- GGGGMGGGGCC -3’(G鎖)(配列番号9)
5’- GGCCCMGCCCC -3’(C鎖)(配列番号10)
からなるオリゴヌクレオチドのうち、G鎖の5’末端を[γ-32P]ATP及びT4 polynucleotide kinaseを用いて32P標識し、これに非標識のC鎖を添加してアニーリングさせ、32P標識標的メチル化DNAを得た。なお、配列中のMは、5位炭素をメチル化したメチルシトシンを表している。
また、下記のヌクレオチド配列:
5’- GGGGCGGGGCC -3’(配列番号11)
からなるオリゴヌクレオチドについて、同様に5’末端を32P標識し、これに相補する同塩基数のオリゴヌクレオチド(非標識)を添加して、32P標識標的非メチル化DNAを得た。
5.蛍光ラベルペプチド(ペプチドY(PO3))の合成
Fmoc-6-aminohexanoic acid 12.4mg(35mmol)、benzotriazole-1-yl-oxy-tris-pyrrolidino-phosphonium hexafluorophosphate(PyBOP)18.2mg(35mmol)、1-hydroxybenzotriazole(HOBt)4.7mg(35mmol)をN,N-dimethylformamide(DMF)0.5mLに溶解し、次いでこれにN,N-diisopropylethylamine(DIEA)12.2mL(70mmol)を添加し、ペプチド自動合成機で作製した担体上のペプチド(ペプチドY(PO3))100mg(7mmol)に加えた。室温で1時間攪拌後、反応溶液を廃棄し、担体をDMF、メタノール、及びエーテルで洗浄し、減圧乾燥した。得られた担体に20% piperidine/DMF 1mLを添加し、2分間攪拌後、溶液を廃棄した。この操作を5回繰り返した後、担体をDMF、メタノール、及びエーテルで洗浄し、減圧乾燥した。5-(and-6)-carboxyfluorescein succinimidyl ester 6.6mg(FAM SE, 14mmol)及びHOBt 1.9mg(14mmol)をDMF 0.5mLに溶解し、これにDIEA 4.9mL(28mmol)を添加して担体に加えた。室温及び暗所で12時間攪拌後、反応溶液を廃棄し、担体をDMF、メタノール、及びエーテルで洗浄し、減圧乾燥した。得られた担体上のペプチドは、上記に記載した方法に従って担体から切り出し、脱保護及び精製を行い、所定のペプチドを得た。ペプチドの同定は上記と同様にMALDI-TOF MS(Reflex、Bruker Daltonics)で行った。なお、実測値は7805.64([M+H]、計算値:7806.93)であった。
試験1.ゲルシフトアッセイ
32P標識標的(メチル化又は非メチル化)DNA(500cpm、〜50pM)、上記合成ペプチド(0〜7.5μM)、20mM Tris-HCl(pH8.0)、100mM NaCl、100μM ZnCl2、1mM Tris(2-carboxyethyl)-phosphine(TCEP)、0.05% Nonidet P-40、5% glycerol、40ng/μL bovine serum albumin(BSA)、100ng/μL poly(dI-dC)を4℃で30分間静置して反応させた後、反応溶液を12%ポリアクリルアミドゲル(1×Tris-borate(TB)buffer)で電気泳動した。その結果を図2に示す。
図2に示されたように、ペプチドY(実施例1)は0.25μMの濃度からメチル化DNAとの結合が見られ始め、濃度が高くなるにつれてその結合性は高まることがわかった。非メチル化DNAに対しても0.5μMの濃度から結合が見られたが、メチル化DNAよりは結合しにくいことがわかった。また、ペプチドY(PO3)(実施例2)についても、濃度が高くなるにつれてメチル化DNAとの結合性が高まり、0.1μMからその結合が観察された。そして、非メチル化DNAに対してはほとんど結合しないことがわかった。これらに対して、ペプチドF(比較例1)は、メチル化DNAと非メチル化DNAとの間で結合状態に差を見ることができなかった。また、ペプチドY(SO3)(比較例2)に至っては、図1に示されたようにαヘリックス構造を形成していたにもかかわらず、メチル化DNA及び非メチル化DNAともに結合そのものがほとんど見られなかった。
このようなゲル上で得られたバンドについて、Image Gauge software(富士フイルム、ver.4.01)を用いて定量化を行った。各ペプチド濃度におけるバンド強度から、ペプチドに結合したDNAの割合([bound]/[bound]+[free])を算出し、それに該ペプチドの濃度を用いて、下記計算式(2)からペプチドとDNAとの解離定数を算出した。その結果を表2に示す。
表2に示されたように、ペプチドY(実施例1)及びペプチドY(PO3)(実施例2)はいずれもメチル化DNAにおける解離定数が1.0未満であり、非常に結合性が高いことが明らかとなった。また、非メチル化DNAにおける解離定数はいずれも1.0を超えており、メチル化DNAに特異的に結合することが示された。さらに、その非メチル化DNAに対するメチル化DNAの解離定数の比率を求めると、ペプチドYは約1.94(1.39/0.718)であり、ペプチドY(PO3)は約12.5(8.74/0.698)であった。これにより、ペプチドY(PO3)の方がペプチドYよりも特異的にメチル化DNAに結合することが明らかとなった。なお、ペプチドF(比較例1)及びペプチドY(SO3)(比較例2)はいずれもメチル化DNA及び非メチル化DNAに対する結合性は低く、メチル化DNAとの結合の特異性も見られなかった。
試験2.蛍光偏光測定
メチル化ゲノムDNA(Jurkat Genomic DNA)及び非メチル化ゲノムDNA(5-Azadc treated Jurkat Genomic DNA)について、各々エタノール沈澱を行い、10mM Tris-HCl(pH8)に溶解した。蛍光ラベルペプチド(0.05μM)、20mM Tris-HCl(pH8)、100mM NaCl、20mM ZnCl2、1mM TCEP、0.05% Nonidet P-40に各ゲノムDNAを添加し、攪拌した。これを25℃で10分間静置して反応させた後、プレートリーダー(Mithras LB 940, Berthold)を用いて蛍光偏光測定を行った。各ゲノムDNAの濃度(ng/μL)は、0.4、0.8、1.2、1.6、2.0、2.4、2.8、3.2、3.6、4.0とし、偏光度はプレートリーダーによって算出された値を使用した。その結果を図3に示す。
図3に示されたように、蛍光ラベルペプチドとメチル化ゲノムDNA(Jurkat)とを反応させたものは、添加したDNAの濃度依存的に蛍光偏光の測定値が大きくなった。これに対して、非メチル化ゲノムDNA(5-Azadc treated Jurkat)と反応させたものは、DNAを添加しても蛍光偏光測定値はほとんど変わらなかった。これらの結果から、蛍光ラベルペプチド(ペプチドY(PO3))はゲノムレベルにおいてもメチル化された二本鎖DNAと結合することが明らかとなり、また、本発明のペプチドと二本鎖DNAのメチル化領域との結合は定量性を有することが示された。
本発明によれば、短時間で省力的、且つヌクレオチド配列非特異的にDNAのメチル化領域を検出及び定量することが可能となり、DNAのメチル化異常によって引き起こされる癌、分化異常、統合失調症、糖尿病等の様々な疾患における有用な診断又は検査のツールを提供することができる。また、本発明のペプチドは移植臓器の確認のためのツールとなり、再生医療においても重要な役割を果たすことができる。
本出願は、日本で出願された特願2009-239657(出願日:2009年10月16日)を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。

Claims (12)

  1. 金属フィンガーモチーフを含み、かつ、配列番号1、2、5および6からなる群より選ばれるアミノ酸配列を含む、二本鎖DNAのメチル化領域を認識して結合するペプチド。
  2. 前記金属が、亜鉛、コバルト、鉄、カドミウム、マグネシウム、マンガン及びカルシウムからなる群より選択される、請求項1に記載のペプチド。
  3. 金属イオンを配位結合した状態で含有する、請求項1または2に記載のペプチド。
  4. 金属イオンが、亜鉛イオン、マグネシウムイオン、カドミウムイオン、マンガンイオン、カルシウムイオン、コバルトイオン及び鉄イオンからなる群より選択される、請求項3に記載のペプチド。
  5. 請求項1又は2に記載のペプチド及び金属イオン供給化合物を含んでなる、二本鎖DNAのメチル化領域を検出するキット。
  6. 金属イオン供給化合物が、亜鉛、マグネシウム、カドミウム、マンガン、カルシウム、コバルト及び鉄からなる群より選択される1以上の金属原子を含有する化合物である、請求項5に記載のキット。
  7. 以下の工程(a)又は(b)のいずれかと(c)とを含む、二本鎖DNAのメチル化領域を検出する方法:
    (a)配列番号1、2、5および6からなる群より選ばれるアミノ酸配列を含むペプチド、金属イオン供給化合物及び二本鎖DNAを接触させる工程、
    (b)配列番号1、2、5および6からなる群より選ばれるアミノ酸配列を金属イオンを配位結合した状態で含むペプチド及び二本鎖DNAを接触させる工程、
    (c)前記二本鎖DNA中のメチル化領域に結合したペプチドを検出する工程。
  8. 金属イオン供給化合物が、亜鉛、マグネシウム、カドミウム、マンガン、カルシウム、コバルト及び鉄からなる群より選択される1以上の金属原子を含有する化合物である、請求項7に記載の検出方法。
  9. 以下の工程(i)〜(iii)を含む、採取された試料におけるDNAメチル化異常の検査方法:
    (i)被検動物より採取した試料と、配列番号1、2、5および6からなる群より選ばれるアミノ酸配列を含むペプチド及び金属イオン供給化合物、又は配列番号1、2、5および6からなる群より選ばれるアミノ酸配列を金属イオンを配位結合した状態で含むペプチドとを接触させる工程、
    (ii)前記試料に含まれる二本鎖DNAのメチル化領域に結合したペプチドを測定する工程、並びに
    (iii)工程(ii)の被検動物について得られる測定結果を正常対照について得られる測定結果と対比して、DNAメチル化異常の有無を調べる工程。
  10. 金属イオン供給化合物が、亜鉛、マグネシウム、カドミウム、マンガン、カルシウム、コバルト及び鉄からなる群より選択される1以上の金属原子を含有する化合物である、請求項9に記載の検査方法。
  11. DNAメチル化異常がDNAメチル化異常に関連する疾患に起因するものである、請求項9又は10に記載の検査方法。
  12. DNAメチル化異常に関連する疾患が、癌、精神疾患、生活習慣病、神経疾患、自己免疫疾患又は循環器疾患である、請求項11に記載の検査方法。
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