JP5851790B2 - 微粉砕稲ワラの急速嫌気発酵処理によるエネルギー回収方法 - Google Patents

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Description

本発明は微粉砕稲ワラの急速嫌気発酵処理によるエネルギー回収方法、及び発酵ガス循環による土中発酵ガスの回収方法に関する。更に詳しくは本発明は、微細化加工を施した稲ワラを嫌気発酵タンクとしての水田土壌に混入して急速に嫌気発酵させる嫌気発酵処理方法と、この処理方法において生成する嫌気発酵ガスを捕集することによりバイオマスエネルギーを高効率で回収するエネルギー回収方法に関し、更に、湛水状態の水田土壌において、主として稲ワラの嫌気発酵に基づき生成・浮上する発酵ガスを捕集した後、この嫌気発酵ガスを水田土壌中に循環させて噴出させることにより、粘土質の水田土壌中に滞留している多量の嫌気発酵ガスを湛水上に浮上させて回収する土中発酵ガスの回収方法に関する。
(背景技術1)
旧来、例えば農業における稲ワラや籾、あるいは調理又は食事の際に出る有機性残渣等は、単に廃棄され、埋め立てられ、又は焼却処分されてきた。しかし、近年、大気中の炭酸ガス濃度の増大に基づく地球温暖化の問題がクロースアップされ、化石燃料の枯渇化の危惧等もあって、上記のような各種有機性廃棄物の有効利用が注目されている。各種有機性廃棄物の内、農業系の有機性廃棄物、とりわけ稲ワラは、我が国等においては巨大なバイオマスを構成する。
従来、下記の特許文献1〜特許文献3に例示されるように、稲ワラを好気的に発酵させてコンポスト等を得ようとする提案は盛んに行われている。
下記の特許文献1は、稲ワラ、麦ワラその他の農業廃棄物に対して一低の水生植物等の易分解性有機物を添加・混合して好気性発酵処理を行い、以てコンポスト化する方法を開示している。
下記の特許文献2は、イネ科植物(稲ワラ等)に対して、下水浄化過程において最終沈殿池以降に排出される処理水を加えて1次発酵し、これを特定の発酵機中で2次発酵させた後に熟成する、好気的発酵分解によるイネ科植物由来の有機発酵肥料の製造方法を開示している。
更に下記の特許文献3は、固液混合の腐敗性廃棄物に一定の高活性な酸化カルシウムを主成分とする添加材を添加して急激な水和反応による反応生成物を得た後、この反応生成物にイネ科植物等の珪酸質有機資材(稲ワラ等)を混合し、適度の水分と空気を供給することにより、珪酸質有機資材中の珪酸質を可溶化して珪酸質有機資材を堆肥化させる珪酸質有機資材の堆肥化法を開示している。
これらの特許文献に記載の利用方法の他にも、稲ワラは従来、例えば、家畜糞や下水汚泥のコンポスト化処理時の水分調整剤、又は好気発酵での通気路剤として使用されて来ている。
(背景技術2)
以上の従来技術とは別に、湛水状態の水田土壌では稲ワラが嫌気発酵を受け、極めて緩徐ながら嫌気発酵ガスを生成することが知られている。しかし、湛水上に浮上する嫌気発酵ガスは非常に少量であって、その発酵ガスを積極的に利用しようとする提案は、従来、ほとんど行われていない。
特開昭61−158886号公報。 特開2008−50248号公報。 特許第3546361号公報。
(課題1)
以上の従来技術に共通する点として、稲ワラそのものは単独では発酵処理の対象とはされて来なかった。即ち、稲ワラに対して、特許文献1では一定の水生植物等の易分解性有機物を添加・混合し、特許文献2では下水浄化過程において最終沈殿池以降に排出される処理水を添加し、特許文献3では腐敗性廃棄物に高活性な酸化カルシウムを添加してなる水和反応生成物を添加・混合している。そのため、これらの従来技術によれば、他の材料を添加・混合するために処理プロセスが複雑化し、効率面及びコスト面で不利益であった。又、本発明のように水田を嫌気発酵タンクとして利用しようとする場合、これらの添加物は好ましくなかった。
従来技術において稲ワラを単独では発酵処理の対象とせず、各種の添加物を混合していた理由は明確であって、「稲ワラは、単独ではうまく発酵しない」と認識されていたためである。このような認識は、稲ワラの主成分であるセルロースが難分解性で発酵効率が極めて悪い点、更には特許文献1〜3における以下の指摘から、従来の技術常識であったと認められる。
即ち、特許文献1の第1頁右欄第7行〜8行には、「稲わら等の植物体をコンポスト化する際には単独ではうまく発酵しないため、牛糞を添加・・・」の記載があり、その理由から前記の易分解性有機物を添加している。
特許文献2の段落0002においては、「イネ科植物はケイ素を多く含み、土壌微生物により分解され難い・・・」の記載があり、その理由から前記の水和反応生成物を添加している。
特許文献3の段落0002においては、「イネ科等の植物のように、外皮が珪化細胞によって覆われている珪酸質有機資料は、珪化組織が不溶性であるため分解され難い・・・」の記載があり、その理由から前記の下水浄化処理水を添加している。
上記の従来技術の共通点として、稲ワラそのものは、難分解性でありそもそも主発酵対象物としては認識されておらず、あくまでも脇役的存在としての認識であった。
本願は、発生した稲ワラを発生したその場所で分解しエネルギーを回収するものである。これは、物質移動を最小限にして、得られるバイオマスエネルギーから差し引かれるエネルギー消費を極力抑えトータルで発生エネルギーをプラスにするためである。
そこで本発明は、稲ワラに対して添加物を混合することなく、しかも高品位のバイオマスエネルギーを回収できる嫌気発酵によって稲ワラの発酵効率を劇的に向上させる手段を提供することを、解決すべき第1の課題とする。
(課題2)
一方、前記のように農業系の有機性廃棄物、とりわけ稲ワラは我が国等においては巨大なバイオマスを構成する。更に、稲ワラの嫌気発酵によれば、メタンガス、水素ガス等の高品位のバイオマスエネルギーガスが生成する。
このような観点から前記した「背景技術1」及び「背景技術2」を再検討したとき、以下のような点を指摘することができる。
「背景技術1」に関しては、特許文献1〜3について前記したように、従来、稲ワラそのものは、「単独ではうまく発酵しない」と認識されていたため、単独では発酵処理の対象とはされて来なかった。更に、上記の従来技術の共通点として、好気発酵方法を提案している点が挙げられる。しかし、好気発酵は稲ワラのコンポスト化等には有効であり得るが、例えば稲ワラから高品位のバイオマスエネルギーを回収するという目的には不適当な方法である。
「背景技術2」に関しては、たしかに、水田土壌の湛水上に浮上する嫌気発酵ガスは非常に少量である。
即ち、本願発明者の観察によれば、水田土壌は意外に大量の嫌気発酵ガスを内包しているが、水田土壌の表層部が高粘度のシール層を形成している場合、大半の嫌気発酵ガスが水田土壌中に封入されているのである。そのため、水田土壌に適宜な攪拌効果もしくはシール破壊効果を与えれば、封入されていた大量の嫌気発酵ガスを湛水上に浮上させて回収することができると考えられる。
そこで本発明は、湛水状態の水田土壌に内包されている大量の嫌気発酵ガスを高効率に回収できる土中発酵ガス回収手段を提供すること、更に好ましくは、このような回収手段の効果を最大化するために、湛水状態の水田土壌における稲ワラの嫌気発酵効率を劇的に向上させる手段を提供することを、解決すべき第2の課題とする。
本願発明者は、上記第1の課題の解決手段を追求する過程で、稲ワラを種々のサイズの切片状に微細化して水田土壌中に混入したとき、稲ワラの切片が長径9mm以下である場合に、稲ワラが水田土壌中で急速な嫌気的発酵を受けると言う驚くべき知見を得るに至った。
更に本願発明者は、上記第2の課題の解決手段を追求する過程で、水田土壌中に気体を噴出させると水田土壌に良好な攪拌効果とシール破壊効果を与えることができ、従って水田土壌に内包されている大量の嫌気発酵ガスを容易かつ低コストに、かつ高効率に回収できることを見出した。更に、稲ワラを特定のサイズの切片状に微細化して湛水状態の水田土壌中に混入させると急速な嫌気発酵を受けると言う驚くべき知見も得た。
本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
(第1発明の構成)
上記課題を解決するための本願第1発明の構成は、長径が9mm以下である切片に微細化した稲ワラを湛水状態の水田土壌中に混入して嫌気発酵に供し、生成した発酵ガスを前記水田土壌の上面に設置した密閉容器によって捕集するとともに、捕集した前記発酵ガスを配管系により前記水田土壌中に循環させて噴出させることにより、前記水田土壌中に滞留している前記発酵ガスを湛水上に浮上させて前記密閉容器によって捕集する、エネルギー回収方法である。
上記の第1発明において、稲ワラ中に稲籾その他の不純物が多少混入していても構わない。第1発明は、稲ワラに特段の添加物を混合することなく急速に嫌気発酵させる点に特徴があるが、かかる発明の効果を阻害しない限りにおいて、稲ワラの混入と同期して、あるいは稲ワラ混入後の適宜な時期に、あえて一定の添加物を加えることを排除するものではない。
第1発明において、「長径が9mm以下である切片」とは、稲ワラの切片における最長部分の長さが9mm以下であることを言う。切片の形状は、茎の裁断物としてのリング状であっても、そのリングが切れた断面「C」字状であっても、あるいは平らな小片状であっても構わない。
第1発明に規定する稲ワラの切片は「長径9mm以下」である。稲ワラ切片の長径が9mmを超えるもの、例えば12mmのものでも、本発明の目的とする嫌気発酵を起こすことができるが、急速な嫌気発酵による発酵ガスの高効率回収は期待できない。
又、稲ワラ切片の集合体に関してのべれば、全ての切片の長径が例外なく9mm以下であることは必ずしも要求されない。発酵に供される稲ワラ100kgに対し10gを任意に採取し、任意に取りだした1000個の稲ワラ切片の長径を測定し、70%以上の稲ワラ切片が9mm以下であれば良い。
嫌気性発酵の効果を増大させる意味から、更には、次に述べる稲ワラ切片の沈降性を向上させる意味から、稲ワラ切片の長径を1mm程度又はそれ以下とすることが特に好ましく、とりわけ、後述の実施例、実施例に示すように、0.5mm程度とすることが好ましい。
「稲ワラ切片の沈降性」とは以下(1)、(2)の2点において重要な概念である。
(1)水田の湛水中に散布した稲ワラ切片を一定の撹拌作業を通じて水田土壌中にすき込む際に、沈降性の良好な稲ワラ切片は湛水面に浮遊することなく、極めて高い比率で水田土壌中にすき込まれる。従って、稲ワラ切片が極めて高い効率で水田土壌中での嫌気性発酵に供される。
(2)更に重要な点として、稲ワラ切片の沈降性は、当該稲ワラ切片の比重、換言すれば空気の抱き込み量に関係することが挙げられる。即ち、沈降性の良くない稲ワラ切片は、ミクロなスケールにおいて相対的の多量の空気(気泡)を抱き込んでおり、これに対して、沈降性の良好な稲ワラ切片はほとんど空気を抱き込んでいないと考えられる。空気は当然ながら多量の酸素ガスを含むため、水田土壌における嫌気性発酵を阻害する。本願発明者の研究によって、稲ワラ切片のサイズと沈降性とが大きな相関性を持つことが見出された。
稲ワラ切片の沈降性に関する好ましいパラメーターとして、以下の「式1」に示す「沈降率」を提案することができる。沈降率の高い稲ワラ切片である程、沈降性が良好である。
沈降率(%)=(B/A)×100・・・・・(式1)
上記の「式1」中、Aは特定条件下の水面に散布する乾燥状態の稲ワラ切片の質量(単位:g)であり、Bは前記水面に特定条件下の撹拌を加えてから特定の時間静置した時点で水面から沈降していた稲ワラ切片の乾燥時の質量(単位:g)である。
又、上記の「特定条件下の水面」とは、封止可能な開口部を持つ容量600mL〜800mL程度の縦長透明容器中にほぼ500mL収容された水の水面であり、「特定条件下の撹拌」とは、前記容器の開口部を封止したもとで、容器全体を上下倒立させた後に元に戻すという撹拌操作を連続して5回行うことであり、「特定の時間静置した時点」とは、撹拌終了後に容器を正しい姿勢に戻してから4時間静置した時点をいう。
稲ワラ切片の沈降率は20%を超えることが好ましく、更には80%以上であることがより好ましく、とりわけ85%以上であることがより好ましい。
一方、稲ワラ切片の長径の下限値は、発明の効果の点からは特段に限定されない。しかし、実施技術上の問題として、稲ワラ切片が過剰に微細化されると嵩高くなったり、飛散し易くなったりすること、図7から更に微細化を進めても著しくメタン濃度は向上しないことが予想される半面、微細化のためのエネルギーは線形的に増加する点を考慮して、稲ワラ切片の長径の下限値を0.1mm程度とするのが好ましい。
第1発明において、稲ワラを切片に微細化する手段は限定されない。例えば、やカッター等の簡易な切断用具を用いて微細化しても良く、公知のミル等の粉砕・微細化装置を用いて微細化しても良い。稲ワラの切片を水田土壌中に混入する態様も特段に限定されず、手作業により、又は水田土壌のすき起こし装置等を用いて、稲ワラを水田土壌になるべく均一に混入させれば良い。稲ワラは、特に、いわゆる「混練する」ような状態で水田土壌に対して十分に分散して練り込まれていることが好ましい。
発酵ガス」には、嫌気発酵によって比較的多量に生成するメタンガス(CH4)、水素ガス(H2)等の高品位なバイオマスエネルギーガスの他、本発明の目的から言えば不純物である、炭酸ガス(CO2)や窒素ガス(N2)等の非エネルギーガスも含まれる。捕集された発酵ガス中の非エネルギーガスは、その後の適宜なガス処理段階において、分留装置、フィルタリング等の公知の適宜な分離手段によって高品位なバイオマスエネルギーガスと分離することができる。
水田土壌の上面に設置した密閉容器」とは、少なくとも、発酵ガス捕集口が下方に向かって開口し、他の部分は密閉され、十分量の発酵ガスを貯留するに足る容量を有する容器を言う。より具体的には、例えば、嫌気発酵が起きている水田土壌の上面全体を覆うように広い面積にわたって設置された、ドーム形、箱形等の構成の扁平なハウジングであって、その下端部が発酵ガス捕集口として開口された容器を挙げることができる。このような容器は、例えば適宜な剛体材料をもって構成することもできるし、容器の輪郭を構成する骨格材によって支えられた柔軟なシート材からなるビニールハウス形式の容器であっても良い。
この密閉容器は、大気の混入を避けるため、その下端の発酵ガス捕集口が水田の湛水面よりも下方に位置するように設置する必要がある。密閉容器の好ましい設置形態として、密閉容器の発酵ガス捕集口が、水田の湛水中に水没している形態、水田土壌に接地している形態、水田土壌中にある程度食い込んでいる形態が例示される。
密閉容器の内部には、捕集された発酵ガスを回収するために水田土壌中又は湛水中に配管された輸送パイプの先端を導入しておくことができる。この輸送パイプの配管中には、開閉弁等の適宜なバルブ機構、バイオマスエネルギーガスと非エネルギーガスを分離するための分離手段、輸送パイプ中を負圧にするための吸引手段等を設けることができる。更に、輸送パイプは、前記分離手段を介して、あるいは介さずに、発酵ガス貯留用タンクに接続することが好ましい。
酵ガスは、そのまま嫌気発酵に好適な環境にある水田土壌中に循環させて噴出させる。このような循環サイクルによって大量に得られた発酵ガスは、特定のエネルギー利用の目的のために、最終的にはガスタンク等に貯留される。その際には、発酵ガス中の非エネルギーガスは、分留装置、フィルタリング等の公知の適宜な分離手段によって高品位なバイオマスエネルギーガスと分離することができる。
管系は上記の循環配管系であるが、その配管中には、開閉弁等の適宜なバルブ機構、密閉容器中の発酵ガスを輸送パイプから吸引し水田土壌中へ循環させて噴出させるための圧送ポンプ等を設けることができる。更に、循環配管系には、循環用の発酵ガスを一次的に貯留しておくための一次貯留タンクを設けても良い。
循環配管系の端末には、水田土壌中に循環させた発酵ガスを噴出させるための噴出用パイプを多数本、分岐状に設ける。この噴出用パイプは水田土壌中に埋設され、かつ、その管壁部には発酵ガスを噴出させる多数の噴出孔が設けられる。噴出孔の径は特段に限定されない。又、噴出用パイプにおける噴出孔の開口方向も限定されず、噴出用パイプの径方向の上方、横方向、下方等の任意の方向に開口させれば良いが、後述する第4発明の(3)の場合には、少なくとも噴出用パイプの径方向の下方へ開口した噴出孔を設けることが好ましい。
終的には多量の発酵ガスを取得し集積することを目的とするから、上記の循環配管系と共に、最終的に発酵ガスを貯留するための最終貯留タンクとその配管系(集積配管系)を設けることが好ましい。そして、上記密閉容器の内部に連絡された輸送パイプは、この集積配管系にも接続される。集積配管系には、開閉弁等の適宜なバルブ機構、密閉容器中の発酵ガスを輸送パイプから吸引し最終貯留タンクへ送り込むための圧送ポンプ、バイオマスエネルギーガスと非エネルギーガスを分離するための分離手段等を設けることができる。
上記した循環配管系と集積配管系とは、互いに独立した配管系として構成することもできる。この場合、密閉容器の内部に連絡された輸送パイプには、循環配管系への連絡又は集積配管系への連絡を切り替えるための制御用バルブを設けることが好ましい。
一方、同じ配管系を適宜な手段により循環配管系又は集積配管系として使い分けることもできる。この場合、例えば、配管系の適宜な部位に配管内の流体を一方向へ送るポンプとその逆の方向へ送るポンプとを設け、あるいは正/逆回転の可能なポンプを設け、これらのポンプ駆動の切り替えにより、配管系を循環配管系として用いたり、集積配管系として用いたりすることができる。そして、同じガスタンクを前記の一次貯留タンク及び最終貯留タンクとして兼用することもできる。
同じ配管系を循環配管系又は集積配管系として使い分ける際には、密閉容器の内部に連絡された輸送パイプと、循環配管系の端末に設けた噴出用パイプとに流体用の逆止弁等を装備させ、配管系の使い分けに基づき、これらのパイプにおける流体の逆流が起こらないように構成することが重要である。
第1発明によれば、稲ワラに対して添加物を混合しなくても、急速な嫌気発酵の進行によって、メタンガス、水素ガス等の形態で高品位のバイオマスエネルギーを生成させることができる。稲ワラの長径が9mmを超えると、この効果は不十分となり、特に発酵速度が遅くなり、一定期間のエネルギー回収効率が有意に低下する。
第1発明によって上記の効果が得られるという知見は本願発明者にとっても予測外であって、その理由は未だ明確ではないが、稲ワラが9mm以下、特に9mm未満に微細化されることにより、稲ワラの表皮に対して切断面面積が顕著に増大することによるものと思われる。この切断面部分は表皮に比較して水田土壌中の嫌気発酵に関わる微生物に対して易分解部分と成り、先ず切断面部分に接する微生物フローラが活性化され、比較的短時間で初期の嫌気発酵プロセスを開始して当該微生物フローラの増殖と温度上昇が短期に起こり、それが更なる嫌気発酵プロセスを促進する、という良好な循環を生み出したものと思われる。
3mm角の方形の稲ワラ切片を想定した場合、該方形の稲ワラ切片における周囲断面長は、12mmと成る。
3mm×6mmの矩形の稲ワラ切片を想定した場合、該矩形の稲ワラ切片における周囲断面長は、18mmと成る。該3mm×6mmの矩形の稲ワラ切片は、上記3mm角の稲ワラ切片2個の表皮面積と同等と考えると、該3mm×6mmの矩形の稲ワラ切片を、2個の3mm角の稲ワラにすることにより周囲断面長は、133%増加する。
3mm×9mmの矩形の稲ワラ切片を想定した場合、該矩形の稲ワラ切片における周囲断面長は24mmと成る。該3mm×9mmの矩形の稲ワラ切片は、3mm角の稲ワラ切片3個の表皮面積と同等と考えると、該3mm×9mmの矩形の稲ワラ切片を、3個の3mm角の稲ワラ切片にすることにより周囲断面長は、150%増加する。
3mm×12mm矩形の稲ワラ切片を想定した場合、該矩形の稲ワラ切片における周囲断面長は30mmと成る。該3mm×12mmの矩形の稲ワラ切片は、3mm角の稲ワラ切片4個の表皮面積と同等と考えると、該3mm×12mmの矩形の稲ワラ切片を、4個の3mm角の稲ワラ切片にすることにより周囲断面長は、160%増加する。
3mm×15mmの矩形の稲ワラ切片を想定した場合、該矩形の稲ワラ切片における周囲断面長は36mmと成る。該3mm×15mmの矩形の稲ワラ切片は、3mm角の稲ワラ切片5個の表皮面積と同等と考えると、該3mm×15mmの矩形の稲ワラ切片を、5個の3mm角の稲ワラ切片にすることにより周囲断面長は、167%増加する。
上記から12mm、15mmは、エネルギーを投入し更に小片に切断することで切断面面積増加に有意な意義を認められるが、6mm、9mmは、これらと比較して更なる切断エネルギーを投入しても切断面面積増加に有意な意義を見出し難いため、切断せず発酵に供すことが、エネルギー生産と消費のバランスから好ましいと考えられる。
酵ガスを、空気を混入させることなく、密閉容器中に確実に捕集することができる。密閉容器中に捕集された発酵ガスは、そのまま、あるいは非エネルギーガスを分離して高品位のバイオマスエネルギーガスとしたもとで、例えば輸送パイプにより搬送して発酵ガス貯留用タンク中に集積させることができる。又、発酵ガス貯留用タンク中に集積させることなく直ちに、一定の有用な用途のために用いることもできる。
田土壌中に発酵ガスを循環させて噴出させることにより、水田土壌に良好な攪拌効果とシール破壊効果を与えて、水田土壌に内包されている大量の発酵ガスを容易かつ低コストに、かつ高効率に回収することができる。
しかも、このような目的に用いるガスとしては、当該水田土壌から捕集された発酵ガスが最適である。なぜなら、循環ガスとして酸素を含む空気を用いれば、嫌気発酵を抑制してしまう。酸素を含まない適宜な不活性ガスを用いた場合、そのようなガスを別途に準備する必要があって設備面、コスト面で不利である一方、回収されるガス中における発酵ガスの濃度が低下する。
参考例システムの構成を示す斜視図である。 図1におけるX−X線に沿う断面図である。 本発明に係る実施例システムの構成例を示す斜視図である。 図3におけるX−X線に沿う断面図である。 実施例の測定結果を示す図である。 実施例の測定結果を示す図である。 実施例の測定結果を示す図である。 実施例の測定結果を示す図である。
1 水田
2 水田土壌
3 湛水
4 密閉容器
5 気泡
6 発酵ガス貯留用タンク
7a 幹パイプ
7b 分岐パイプ
7c 枝パイプ
8 切り替えバルブ
9 噴出ジェット
10 噴出用パイプ
11 太陽光発電装置
以下に本発明の実施例を説明する。本発明の技術的範囲は以下の実施例によって限定されない。
参考1〕
参考例システムの構成を図1に示す。この図は、湛水状態にある水田における一定の面積の方形のエリアを切り出して、斜視図により示したものである。
図1において、水田1の水田土壌2の表面には適宜な量の湛水3が張ってある。水田土壌2の特に20〜30cm程度までの深さの表層部には、図示を省略するが、本発明に係るサイズの稲ワラ切片が良好な分散状態で多量に混入されている。
一方、水田1には、下端部が開口した扁平な箱形もしくはドーム形の密閉容器4が複数個設置されている。この密閉容器4は、水田土壌2に混入した稲ワラ切片の嫌気発酵により生成した発酵ガスを捕集するための容器である。
図2に示すように、密閉容器4は、水田土壌2から発生して湛水3中を浮上してくる嫌気発酵ガスの気泡5を全て捕集できるように設置することが好ましい。従って、図1に示すように互いに独立した複数個の密閉容器4を設けることもできるが、水田土壌2の全域をカバーする程の大きな平面面積を持つ単一の密閉容器4を用いる方が好ましく、あるいは、独立した複数個の密閉容器4を設けるとしても、図1に示すように各密閉容器4を互いに離れた状態で設置するよりも、互いに密接した状態で設置する方が好ましい。密閉容器4としては、下端部が開口した扁平で方形の箱状体を図示しているが、設置の簡易さを考慮した場合、細い骨格材によって支持された薄いビニールシート等からなるドーム状のハウジング、即ち「ビニールハウス」形式のものが、より好ましい。
密閉容器4の下端の開口部は、図2に示すように、湛水3の水面よりも低い位置に開口しており、そのことにより、密閉容器4中に大気が混入することを防止している。
次に、各々の密閉容器4には、水田1の適所に設置された発酵ガス貯留用タンク6に接続された配管系である輸送パイプが付設されている。輸送パイプは、発酵ガス貯留用タンク6から延びる幹パイプ7aと、この幹パイプ7aより各密閉容器4に沿うように分岐した分岐パイプ7bと、更にこの分岐パイプ7bより分枝した枝パイプ7cからなる配管系である。
輸送パイプにおける、特に幹パイプ7aの適宜な部位には、図示を省略するが、開閉弁や、ガスの一方向への通過を許し逆方向への通過を許さない可逆弁を設けることができる。又、幹パイプ7aにおける、特に発酵ガス貯留用タンク6に接続する基部には、発酵ガスを発酵ガス貯留用タンク6内へ吸引するための吸引ポンプ等を設けることもできる。更に発酵ガスの利用目的によっては、幹パイプ7aに、前記吸引ポンプに代えて、発酵ガスを配管系の先端方向へ圧送するための圧送ポンプを設けても良い。前記の吸引ポンプと圧送ポンプを共に設ける場合には、これらの両ポンプを同時に作動させないための制御機構を設ける。
前記枝パイプ7cは、図2に示すように、水田土壌2中に一旦もぐってから密閉容器4中に先端が突出するように設置される。あるいは、湛水3中にもぐってから密閉容器4中に先端が突出するように設置しても良い。
参考例のシステムは以上の構成を有するので、水田土壌2を嫌気発酵タンクとして利用することにより、所定のサイズの稲ワラ切片を急速に嫌気発酵させてメタンガス、水素ガス等の形態で高品位のバイオマスエネルギーを生成させることができ、更にこの発酵ガスを密閉容器4によって効率的に捕集することができ、かつ、捕集した発酵ガスを輸送パイプの配管系によって発酵ガス貯留用タンク6に確実に集積させることができる。
〔実施例:本発明システムの構成例
第1発明に係る実施例システムの構成例を図3に示す。この図は、湛水状態にある水田における一定の面積の方形のエリアを切り出して、斜視図により示したものである。
図3において、水田1の水田土壌2の表面には適宜な量の湛水3が張ってある。水田土壌2の特に20〜30cm程度までの深さの表層部には、図示を省略するが、本発明に係るサイズの稲ワラ切片が良好な分散状態で多量に混入されている。
一方、水田1には、下端部が開口した扁平な箱形もしくはドーム形の密閉容器4が複数個設置されている。この密閉容器4は、水田土壌2に混入した稲ワラ切片の嫌気発酵により生成した発酵ガスを捕集するための容器である。
図4に示すように、密閉容器4は、水田土壌2から発生して湛水3中を浮上してくる嫌気発酵ガスの気泡5を全て捕集できるように設置することが好ましい。従って、図3に示すように互いに独立した複数個の密閉容器4を設けることもできるが、水田土壌2の全域をカバーする程の大きな平面面積を持つ単一の密閉容器4を用いる方が好ましく、あるいは、独立した複数個の密閉容器4を設けるとしても、図3に示すように各密閉容器4を互いに離れた状態で設置するよりも、互いに密接した状態で設置する方が好ましい。密閉容器4としては、下端部が開口した扁平で方形の箱状体を図示しているが、設置の簡易さを考慮した場合、細い骨格材によって支持された薄いビニールシート等からなるドーム状のハウジング、即ち「ビニールハウス」形式のものが、より好ましい。
密閉容器4の下端の開口部は、図4に示すように、湛水3の水面よりも低い位置に開口しており、そのことにより、密閉容器4中に大気が混入することを防止している。
次に、各々の密閉容器4には、水田1の適所に設置された発酵ガス貯留用タンク6に接続された配管系である輸送パイプが付設されている。輸送パイプは、発酵ガス貯留用タンク6から延びる幹パイプ7aと、この幹パイプ7aより各密閉容器4に沿うように分岐した分岐パイプ7bと、更にこの分岐パイプ7bより分枝した枝パイプ7cからなる配管系である。
輸送パイプにおける、特に幹パイプ7aの適宜な部位には、図示を省略するが、開閉弁や、ガスの一方向への通過を許し逆方向への通過を許さない可逆弁を設けることができる。又、幹パイプ7aにおける、特に発酵ガス貯留用タンク6に接続する基部には、発酵ガスを発酵ガス貯留用タンク6内へ吸引するための吸引ポンプ等を設けることもできる。更に発酵ガスの利用目的によっては、幹パイプ7aに、前記吸引ポンプに代えて、発酵ガスを配管系の先端方向へ圧送するための圧送ポンプを設けても良い。前記の吸引ポンプと圧送ポンプを共に設ける場合には、これらの両ポンプを同時に作動させないための制御機構を設ける。
前記枝パイプ7cは、図4に示すように、水田土壌2中に一旦もぐってから密閉容器4中に先端が突出するように設置される。あるいは、湛水3中にもぐってから密閉容器4中に先端が突出するように設置しても良い。
以上の発酵ガス貯留用タンク6、幹パイプ7a、分岐パイプ7b及び枝パイプ7cは、基本的に本発明の集積配管系を構成している。
次に、各々の枝パイプ7cの管路の適宜な部位にはそれぞれ切り替えバルブ8が設けられ、これらの切り替えバルブ8には、下向きに開口して、気体及び/又は液体を図4に示す噴出ジェット9のように噴出できる多数の噴出孔を備えた噴出用パイプ10が接続されている。そして、切り替えバルブ8の切り替えにより、密閉容器4中に突出した枝パイプ7cの先端部は、分岐パイプ7bに連通した状態と、噴出用パイプ10に連通した状態とが選択される。
更に、図示はしないが、稲ワラ切片の懸濁水をストックしている懸濁水貯留槽が設けられ、配管系の適宜な部位に連結されている。そして、その連結口は開閉バルブにより必要なタイミングで開閉され、懸濁水を配管系に導入できるようになっている。
なお図4のシステムでは個々の枝パイプ7cに切り替えバルブ8が設けられているが、このようなシステムにおける制御の困難を避けるため、切り替えバルブ8を省略すると共に、図4における枝パイプ7cと噴出用パイプ10との分岐部付近における枝パイプ7c側には内部流体が密閉容器4方向へ逆流することを防止する逆止弁を、噴出用パイプ10側には内部流体が枝パイプ7c方向へ逆流することを防止する逆止弁をそれぞれ設けることもできる。この場合、例えば、幹パイプ7aにおける発酵ガス貯留用タンク6方向の基部に正/逆回転の可能なポンプを設ければ、このポンプ駆動の切り替えにより、図示の配管系を前記した循環配管系/集積配管系に切り替えることが可能である。
一方、前記した密閉容器4の上面には、複数個の太陽光発電装置11を設けている。図3では図示の便宜上、単一の密閉容器4のみに太陽光発電装置11を図示しているが、実際にはいずれの密閉容器4の上面にも、同様に、太陽光発電装置11を設けている。太陽光発電装置11により獲得された電力エネルギーは簡便にヒーター等により熱エネルギーへと変換され、上記の懸濁水貯留槽にストックされた懸濁水を加温するために用いられる。
本実施例のシステムは以上の構成を有するので、水田土壌中に嫌気発酵ガスを稲ワラ切片の懸濁水と共に噴出して水田土壌に良好な攪拌効果とシール破壊効果を与え、水田土壌に内包されている大量の嫌気発酵ガスを容易かつ低コストに、かつ高効率に回収することができる。又、嫌気発酵ガスの供給源である稲ワラ切片を急速に嫌気発酵させ、嫌気発酵ガスの回収量を累積的に増大させることができる。更に、外部エネルギーを導入することなく水田土壌を加温して、嫌気発酵を一層促進することができる。
〔実施例:嫌気発酵実験〕
本実施例は、長径が9mm以下である切片に微細化した稲ワラを湛水状態の水田土壌中に混入すると、従来の技術常識では予測できない程に急速な嫌気発酵によって、高品位のバイオマスエネルギーを高い効率で得られるという事実を実証するラボ実験に関する。
名城大学付属農場の水田の無施肥区画から採取した水田土壌65gをシーラム(バイアル)瓶に分注し、更に長径が3mmとなるように刻んだ稲ワラ切片を0.5g添加して混合し、稲わら処理区とした。堆肥処理区では、前記の稲わら処理区で添加した稲ワラ切片に代えて、堆肥(熟成牛糞)0.5gを添加した。これらの稲わら処理区及び堆肥処理区のシーラム瓶に対してそれぞれ、名城大学付属農場の灌漑水9mLを分注した後スパーテルでよく撹拌し、あらかじめオートクレーブ滅菌(121℃、15分)したブチルゴム及びアルミキャップで栓をし、30℃でそれぞれ14日間、24日間、28日間静置培養した時点におけるシーラム瓶内のメタンガス濃度をGC−TCDで測定した。
一方、コントロールとして、名城大学付属農場の水田の無施肥区画から採取した水田土壌65gをシーラム(バイアル)瓶に分注し、オートクレーブ滅菌(121℃、15分)し、24時間放置した後再びオートクレーブ滅菌(121℃、30分)し、コントロール(無菌区)用のシーラム瓶とした。又、灌漑水をオートクレーブ滅菌(121℃、15分)し、コントロール用の灌漑水とした。前記コントロール用のシーラム瓶にコントロール用の灌漑水9mLを分注し、あらかじめオートクレーブ滅菌(121℃、15分)したブチルゴム及びアルミキャップで栓をし、30℃でそれぞれ14日間、28日間静置培養した時点におけるシーラム瓶内のメタンガス濃度をGC−TCDで測定した。
なお、稲わら処理区においてバイアルビン内のメタン分圧が上昇し、数本のシーラム(バイアル)瓶が割れていた。よって割れていないバイアルビンのメタンガスを測定し、この条件下での最大値を求めた。
上記の測定結果を図5に示す。図5はメタンガス濃度の測定結果を数値で表した表である。この表において、「稲わら」との表記は上記の稲わら処理区の測定結果を、「堆肥」との表記は上記の堆肥処理区の測定結果を、「コントロール(滅菌)」との表記は上記のコントロールの測定結果を、それぞれ示す。
〔実施例:嫌気発酵ガスの循環によるガス回収量の増大〕
本実施例は、湛水状態の水田土壌に対して嫌気発酵ガスを循環・噴出させることにより、嫌気発酵ガスの回収量が飛躍的に増大することを確認した実施例に関する。
名城大学附属農場の水田に1kg/mになるように稲ワラを施肥した。この水田を湛水状態で98日間維持した。
その後、水田は、2重のビニールトンネルマルチ(幅:100cm、長さ:30cm、高さ:40cm)で被覆し、水田より嫌気発酵により発生する発生するバイオガスを捕集した。このビニールトンネルマルチは実施例1でいう密閉容器4に相当するもので、これに対して図4に示す形態で枝パイプ7c及び噴出用パイプ10を取り付けている。但し、枝パイプ7cは分岐パイプ7bには接続されず、空気を送り込むための適宜なポンプに接続されている。
本実施例では、以上のパイプにつき、図4においてU字状に示された枝パイプ7cの部分を「U字管」と呼び、図4において枝パイプ7cからL字状に延設された噴出用パイプ10の部分を「L字管」と呼ぶ。
土中にガスを通気することよる湛水土壌中に滞留するバイオガスの捕集効果を確認するため、メタン発酵を停止する目的で15日間、湛水を停止した(落水状態)。このとき、土壌表面に水は存在していなかった。
次に、ビニールトンネルマルチ内の空気をU字管により20ml捕集後、メタンガス濃度をGC−TCDで測定した。これは、土壌中通気をしない状態でのメタンガス発生状態を計測し、通気後と比較する基準とするものである(コントロールと称呼する)。
その後速やかに、土壌中深さ5cmの位置に埋設した開口部付きのL字管を左右の長さ30cmの2カ所よりそれぞれ1分間空気を通気した後、ビニールトンネルマルチ内に十分に拡散させた嫌気発酵ガスを含む空気をU字管により20ml捕集し、ビニールトンネルマルチ内のメタンガス濃度をGC−TCD(島津製作所、GC-2014)で測定した(通気区)。
上記の測定結果を図6に示す。本分析条件では、メタンガスは、測定開始後9.25分から9.60分に検出される。
コントロールは、9.25から9.60分に検出が無いため、メタンガスが存在しないことが分かる。一方、通気後は9.25分から9.60分に顕著な検出が有り、この検出から、通気により16mgのメタンガスが捕集されたことが分かる。
メタン発酵を停止する目的で15日間湛水を停止した後の状態では、地表からの自然噴出は確認されないが(コントロール)、土壌中に空気を通気することにより土壌中に残存していたメタンガスが誘導噴出したと考えられる。
〔実施例:メタンガス発生に対する稲ワラの微細化度の影響〕
(試験区の設定)
名城大学附属春日井農場の湛水状態の水田に、畦波シートで3m×3mの区画を所定数作成し、それぞれの区画中に1m×2mの小区画(試験区)を設定した。
次に、稲ワラ(愛知のひかり)を手作業でそれぞれ7mm、3mmに刻んだ稲ワラ切片と、フードプロセッサーで0.5mmに粗粉砕した稲ワラ切片を調製した。各試験区の水面上にそれぞれ、7mm、3mm、0.5mmの稲ワラ切片を0.8kgずつ散布した。これらの試験区を、以下、「7mm処理区」、「3mm処理区」、「0.5mm処理区」と呼ぶ。又、稲わらを処理しない無処理区を準備した。7mm処理区、3mm処理区、0.5mm処理区及び無処理区は、いずれも3連ずつ設定した。
(ガス捕集装置の設置)
全ての処理区において正確に同一寸法の箱型透明プラスチックケースを用い、水田から発生するガスを捕集するためのガス捕集装置を構成した。これらのプラスチックケースは直方体形状で、開口部が40cm×50cm、高さが40cmである。
それぞれ3連の各処理区において、プラスチックケースの開口部を下側にして水平に保ち、水田の湛水面に対して静かに接触させ、そのまま水面下5cmまで沈めて、その位置で適宜な支持具によりプラスチックケースを固定させた。このとき、プラスチックケース内の空気は水圧により圧縮されるため、プラスチックケース内の水面が開口部より幾分上昇する。従って、各処理区におけるプラスチックケース内の空気は外気から遮断され、かつ、各処理区におけるプラスチックケース内の空気量及び気圧は正確に同一となる。
次にプラスチックケースに対し、ガス捕集用のU字形状の透明パイプを、その一端がプラスチックケース内の空気中に開口し、U字状の湾曲部がプラスチックケースの開口部下端縁を潜り、他端が湛水面上の外気に開口するように取付けた。その取付けに当たっては、パイプ中を予め水で満たして、パイプの取付けに起因するプラスチックケース内の空気量の変化が起こらないように注意した。
(捕集ガスの測定)
ガス捕集装置の設置を完了してから所定の日数を経過する度に、それぞれ3連の各処理区におけるプラスチックケース内の空気を一定の少量ずつ採取し、これを島津製作所製のガスクロ装置「GC-2014、カラム:SHINCARBON、検出器:熱伝導度型検出器(TCD)」を用いて分析し、サンプル空気中のメタンガス濃度を定量した。
なお、サンプル空気の採取に当たっては、気密に構成された小さなシリンジに可撓性パイプを接続し、この可撓性パイプの先端を、前記U字形状パイプの中を通してプラスチックケース内に連通させ、プラスチックケース内の空気をシリンジに吸引した。
(測定結果)
上記の経時的なメタンガス濃度の定量結果を、各処理区ごとに、3連処理区の平均値として図7に示す。図7のグラフにおいて横軸の「培養期間(日)」とは、ガス捕集装置の設置を完了してからの経過日数を示す。図7から分かるように、稲ワラ切片を散布したいずれの処理区でも無処理区に比較して有意にメタンガスの発生が認められるが、特に0.5mm処理区での顕著なメタンガスの発生が注目される。
〔実施例:稲ワラ切片の沈降試験〕
容量700mLの3体の透明沈底瓶に各500mLの水道水を収容し、それらの沈底瓶に7mm(7mm試験区)、3mm(3mm試験区)、0.5mm(0.5mm試験区)の乾燥させた稲ワラ切片を各1g(0.1%w/v)投入し、沈底瓶の開口部を封止したもとで、沈底瓶全体を上下倒立させた後に元に戻すという撹拌操作を連続して5回行った。この撹拌の終了後に沈底瓶を正しい姿勢に戻してから4時間静置した。なお、7mm試験区、3mm試験区、0.5mm試験区は、いずれも3連ずつ設定した。
この静置時間の経過時点で、沈底瓶中の水及び水面に浮いている稲ワラ切片を流し去り、沈降している稲ワラ切片を回収した。各沈底瓶ごとに、回収した稲ワラ切片を80℃で3日間乾燥させた後、それらの質量を測定した。
(測定結果)
回収した稲ワラ切片の質量の測定結果を、各試験区ごとに3連試験区の平均値として図8に示す。図8から分かるように、0.5mm試験区においては他の試験区と比較して稲ワラ切片の沈降性が顕著に良好であり、投入した稲ワラ切片量に対する沈降した稲ワラ切片量の比率を示す沈降率は、ほぼ90%に達した。一方、7mm試験区及び3mm試験区の稲ワラ切片の沈降率は、共に20%にとどまった。
本発明によって、稲ワラに対して添加物を混合することなく、しかも高品位のバイオマスエネルギーを回収できる嫌気発酵によって稲ワラの発酵効率を劇的に向上させる手段が提供される。又、湛水状態の水田土壌に内包されている大量の嫌気発酵ガスを高効率に回収できる手段と、湛水状態の水田土壌における稲ワラの嫌気発酵効率を劇的に向上させる手段が提供される。

Claims (1)

  1. 長径が9mm以下である切片に微細化した稲ワラを湛水状態の水田土壌中に混入して嫌気発酵に供し、生成した発酵ガスを前記水田土壌の上面に設置した密閉容器によって捕集するとともに、捕集した前記発酵ガスを配管系により前記水田土壌中に循環させて噴出させることにより、前記水田土壌中に滞留している前記発酵ガスを湛水上に浮上させて前記密閉容器によって捕集することを特徴とするエネルギー回収方法
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