JP5838447B2 - 呼吸計測方法および呼吸計測装置 - Google Patents
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Description
本発明は、上記した問題を解決するものとして創案されたものである。すなわち、本発明が解決しようとする課題は、呼吸計測の対象となる生物の肺を1つ以上の部分構造の組み合わせとしたモデルを採用することで、生物の呼吸計測の精度を向上させることである。
まず、第1の発明は、肺と横隔膜とを有する生物であるヒトを対象として、このヒトの肺呼吸に伴う肺気量(V)の変動量を求めることができる呼吸計測方法である。この呼吸計測方法は、生物の体表上における第1部位の所定方向の長さとして、ヒトの腹部における臍を通る周長を測定する第1部位測定ステップと、生物の体表上における第2部位の所定方向の長さとして、前記ヒトの胸部における剣状突起を通る周長を測定する第2部位測定ステップと、第1部位の所定方向の長さを用いて、横隔膜の胸腔方向への伸縮長を求める横隔膜伸縮長導出ステップと、Nを自然数、nをN以下の自然数とした場合に、ヒトの肺を構成するN個の部分構造の1つにおける部分肺気量(Vn)を、横隔膜の伸縮長と第2部位の所定方向の長さとを用いて求めるVn導出ステップと、このVn導出ステップをN回実行することで、ヒトの肺全体に対応するN個の部分構造の全てに対して、上記部分肺気量(Vn)をそれぞれ求める繰り返しステップと、この繰り返しステップにより求められた各部分肺気量(Vn)をパラメータとする線形多項式を計算することで、ヒトの上記肺気量(V)を求めるV導出ステップと、を備えている。
ここで、本明細書において、「部分肺気量」とは、生物の肺を構成する各部分構造において、部分構造の単体での肺気量のことをいう。例えば、生物の肺を右肺と左肺という部分構造の組み合わせとみなした場合、右肺の単体での肺気量のことを右肺の部分肺気量といい、左肺の単体での肺気量のことを左肺の部分肺気量という。
上記の第1の発明によれば、ヒトの肺を所定数の部分構造の組み合わせとしたモデルを採用して各部分構造における部分肺気量を求め、求めた各部分肺気量をパラメータとする線形多項式を計算することでヒトの肺気量を求める。このため、肺気量を求めるための線形多項式において各項の係数を調整することで、ヒトの肺のモデルを適宜調整することができる。これにより、ヒトの肺のモデルにおいて、個体差や部分的な機能低下に柔軟に対応して、ヒトの呼吸計測の精度を向上させることができる。
ここで、P0、P1、P2は上記ヒトの身体部位の形状に基づいて設定される係数である。
この第2の発明によれば、ヒトの肺を楕円体形状の容器とみなし、ヒトの腹腔を楕円筒形状とみなした人体モデルを採用しながら、比較的簡単な計算によりヒトの肺の部分肺気量を求めることができる。ここで、上記人体モデルは、ヒトの肺全体を1つの円筒容器とみなした人体モデルと比べて実際の人体の形状に近いので、ヒトの呼吸計測の精度を向上させることができる。また、第1部位の所定方向の長さとしてヒトの腹部における臍を通る周長を用い、第2部位の所定方向の長さとしてヒトの胸部における剣状突起を通る周長を用いることで、ヒトの肺の形状変化をより正確に捉えて、部分肺気量を求める精度を向上させることができる。
呼吸計測の重要な目的の1つには、呼吸器疾患の診断がある。この診断において、その識別が重要視される呼吸器疾患の1つとしては、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease)がある。この慢性閉塞性肺疾患は、完治が難しく死に至ることもある呼吸器疾患であるため、症状が進行しないうちに診断されて治療が開始されることが望まれる。なお、慢性閉塞性肺疾患の兆候の1つには、最大限まで吸い込んだ息を吐き始めた直後における呼気量の減少がある。このため、最大限まで吸い込んだ息を吐き始めた直後における、単位時間(1秒)あたりの呼気量(すなわち1秒量)の肺活量に対する割合(すなわち1秒率)の変化と、フローボリューム曲線(後述)などの呼吸計測グラフにおける、最大限まで吸い込んだ息を吐き始めた直後のグラフ形状の変化と、の両方またはいずれか一方の変化を調べることで慢性閉塞性肺疾患を識別して診断することが一般に行われている。
ここで、上記第3の発明によれば、第1フィルタリングステップにより、求められた肺気量に含まれる外れ値の影響を低減させることで、肺気量の変動量(およびこの変動量から求められる気流速度)をより正確に求めることができる。また、肺気量の変動量の正負が入れ替わる時点の肺気量を極値と判定してこの極値と判定した時点およびその前後の所定の時間範囲における肺気量を保持することで、求められた肺気量に含まれるノイズを平滑化処理により低減させながら、最大限まで吸い込んだ息を吐き始めた直後(すなわち、肺気量が極大値となった直後)の呼気量が平滑化されることを抑えることができる。これにより、ヒトの呼吸計測によりこのヒトの呼吸器疾患を診断する際に、慢性閉塞性肺疾患を識別して診断する精度を向上させることができる。
呼吸計測による呼吸器疾患の診断の際には、フローボリューム曲線(flow volume curve)がしばしば用いられる。このフローボリューム曲線は、時間変化する肺気量と、この肺気量の時間微分(すなわち気流速度)と、をパラメータとして作成される2次元グラフであり、フローボリューム曲線の微妙な形状の違いから、種々の呼吸器疾患を診断することができる。
ここで、上記第4の発明によれば、肺気量の時間微分により気流速度を導出し、この気流速度に含まれるノイズを平滑化処理により低減させながら、気流速度の変動量の正負が入れ替わる時点の気流速度を極値と判定し、この極値と判定した時点およびその前後の所定の時間範囲における気流速度を保持して肺気量に反映させる。このため、肺気量を、時間に対してC2級であり、かつ、時間変化の変曲点が保持された値として出力することができる。(ここで、ある値Yが「時間に対してC2級である」とは、値Yおよび値Yの時間微分のそれぞれにおいて、時間変化しないまたは滑らかに時間変化するという条件が成立することをいう。)これにより、ヒトの肺気量の時間変化からフローボリューム曲線を導出して呼吸器疾患の診断をする際に、この診断の精度を向上させることができる。
この第5の発明によれば、ヒトの肺を所定数の部分構造の組み合わせとしたモデルを採用して各部分構造における部分肺気量を求め、求めた各部分肺気量をパラメータとする線形多項式を計算することでヒトの肺気量を求める。このため、V導出手段の線形多項式において各項の係数を調整することで、ヒトの肺のモデルを適宜調整することができる。これにより、ヒトの肺のモデルにおいて、個体差や部分的な機能低下に柔軟に対応して、ヒトの呼吸計測の精度を向上させることができる。
ここで、P0、P1、P2は上記ヒトの身体部位の形状に基づいて設定される係数である。
この第6の発明によれば、ヒトの肺を楕円体形状の容器とみなし、ヒトの腹腔を楕円筒形状とみなした人体モデルを採用して、比較的簡単な計算によりヒトの肺の部分肺気量を求める呼吸計測装置が実現される。ここで、上記人体モデルは、ヒトの肺全体を1つの円筒容器とみなした人体モデルと比べて実際の人体の形状に近いので、ヒトの呼吸計測の精度を向上させることができる。また、第1部位の所定方向の長さとしてヒトの腹部における臍を通る周長を用い、第2部位の所定方向の長さとしてヒトの胸部における剣状突起を通る周長を用いることで、ヒトの肺の形状変化をより正確に捉えて、部分肺気量を求める精度を向上させることができる。
この第7の発明によれば、本発明の呼吸計測装置において、被服に設けられた引張変形検知布が検知する引張変形により部分肺気量を求めることで、ヒトの自然な状態での呼吸を低侵襲で計測することができる。また、上記各引張変形検知布は上記各引張変形を絶縁状態が維持される導電糸同士間の静電容量によって検出する。これにより、本発明の呼吸計測装置において、上記各引張変形検知布に電力を消費することなく上記各引張変形を検知させて、呼吸計測装置全体としての消費電力を低減させることができる。
この第8の発明によれば、第1フィルタが、求められた肺気量に含まれる外れ値の影響を低減させることで、肺気量の変動量(およびこの変動量から求められる気流速度)をより正確に求めることができる。また、フィルタが、肺気量の変動量の正負が入れ替わる時点の肺気量を極値と判定し、この極値と判定した時点およびその前後の所定の時間範囲における肺気量を保持することで、求められた肺気量に含まれるノイズを平滑化処理により低減させながら、最大限まで吸い込んだ息を吐き始めた直後の呼気量が平滑化されることを抑えることができる。これにより、ヒトの呼吸計測によりこのヒトの呼吸器疾患を診断する際に、慢性閉塞性肺疾患を識別して診断する精度を向上させることができる。
この第9の発明によれば、フィルタは、肺気量の時間微分により気流速度を導出し、この気流速度に含まれるノイズを平滑化処理により低減させながら、気流速度の変動量の正負が入れ替わる時点の気流速度を極値と判定し、この極値と判定した時点およびその前後の所定の時間範囲における気流速度を保持して肺気量に反映させる。このため、フィルタは、肺気量を、時間に対してC2級であり、かつ、時間変化の変曲点が保持された値として出力することができる。これにより、ヒトの肺気量の時間変化からフローボリューム曲線を導出して呼吸器疾患の診断をする際に、この診断の精度を向上させることができる。
始めに、一実施形態に係る呼吸計測装置1の構成について、図1ないし図11を用いて説明する。この呼吸計測装置1は、図1に示すように、ヒト(すなわち、本発明における「生物」)を計測対象者Hとして、この計測対象者Hの日常生活における呼吸を、計測対象者Hに対して負担をかけることなく(すなわち低侵襲の状態で)計測するための着用型の呼吸計測装置である。
また、上記測定手段10は、上記各引張変形検知布11、12とケーブル11A、11B、12A、12Bで接続された信号検出装置13を備えている。この信号検出装置13は、上記各引張変形検知布11、12から上記ケーブル11A、11B、12A、12Bを介して伝えられる電気的な信号から各引張変形検知布11、12が検知する各引張変形の信号を抽出し、抽出された各引張変形の信号をデータ処理装置20に随時所定のサンプリング周波数で送信する。すなわち、上記測定手段10は、本発明における「第1部位測定手段」および「第2部位測定手段」として機能する。
ここで、測定手段10からデータ処理装置20へのデータ送信は、無線送信装置10B、無線受信装置20B、および、電波Rを用いた無線送信により行われる。これにより、計測対象者Hの呼吸を、この計測対象者Hの行動範囲および運動状態に制限を設けることなく、外部の計測者(図示省略)が静止した状態で計測することができる。
引張変形検知布11は、図2に示すように、織物(すなわち、本発明における「布構造」)11Cとして構成される。この織物11Cは、互いに平行な緯糸(横糸)に弾性糸(図示省略)が、互いに平行な経糸(縦糸)に導電糸11D、11Eがそれぞれ織り込まれて構成される。この導電糸11D、11Eは、1本おきに別の電極11F、11Gに接続されている。すなわち、図2で左から見たときに、偶数列となる導電糸11Dは電極11Fに接続され、奇数列となる導電糸11Eは電極11Gに接続されている。
芯:三菱マテリアル社製のシルファイバー(登録商標)(ポリエステル・銀メッキ糸、太さ:167dTex)
内層鞘:ポリエステル糸(太さ:330dTex)
外層鞘:綿の撚糸(太さ:20/1、撚り方:S476t/m)
導電糸11D、11Eの芯糸としては、この他に、日本蚕毛染色社製のサンダーロン(登録商標)、クラレトレーディング社製のクラカーボ(登録商標)、一般的なステンレス線のような金属線、炭素繊維などが使用可能である。すなわち、導電糸11D、11Eは、互いに絶縁状態が維持されるように構成されて、引張変形検知布11の織物11Cの静電容量Cを測定するための一対の電極となるように構成されていればよい。
糸1:弾性繊維(東レ社製のライクラ(登録商標)、太さ:33dTex)
糸2:綿(太さ:綿番手40/1)2本
撚糸条件:S撚り850t/m、送り比:2.7
弾性糸としては、この他に、旭化成せんい社製のロイカ(登録商標)などが使用可能である。
織物11Cは、図5に示すように、収縮状態において導電糸11D、11Eの方向の寸法がwであり、弾性糸の方向の寸法がLであり、導電糸11D、11Eの間隔がDである。この織物11Cは、図6に示すように、上記弾性糸の方向(以下、この方向を「伸張方向」(図6参照)とも称する。)に引張変形dLだけ伸張されると、その伸張方向の寸法がL+dLとなる。このとき、導電糸11D、11Eの間隔は、上記伸張方向に伸縮量dDだけ伸張されて、DからD+dDに広げられる。
この(式2)から、上述した静電容量Cを求めることができる。すなわち、引張変形検知布11を互いに平行に配設された導電糸11D、11Eにより構成されるMc個のキャパシタの並列接続と考えることで、上記静電容量Cを下記の(式3)で求めることができる。ただし、Dは各導電糸の間隔であり、aは各導電糸を均一な太さの円柱とみなした際の円柱の半径であり、εは各導電糸間にある物質の誘電率であり、wは織物11Cの導電糸11D、11Eの方向の寸法である。
この(式3)から、引張変形検知布11の織物11Cにおける伸縮方向の引張変形dLにより、導電糸11D、11E間の間隔Dが伸縮量dDだけ変化されて、引張変形検知布11の静電容量Cが変化されることが分かる。この静電容量Cの変化は、ケーブル11Bを介した電気的な信号として信号検出装置13に伝えられ(図1参照)、この信号検出装置13により引張変形検知布11が検知する引張変形dLの信号として抽出される。同様に、引張変形検知布12の静電容量の変化は、ケーブル12Bを介した電気的な信号として信号検出装置13に伝えられ、この信号検出装置13により引張変形検知布12が検知する引張変形の信号として抽出される。
また、引張変形検知布11、12は引張変形dLを絶縁状態が維持される導電糸同士間の静電容量Cによって検出するので、電力を消費することなく引張変形dLを検知することができる。これにより、呼吸計測装置1の全体としての消費電力を低減させることができる。
本実施形態のデータ処理装置20は、上述した出力装置20Aおよび無線受信装置20B(図1参照)と、キーボードおよびマウスを含む入力手段20C(図7参照)と、記録媒体および演算装置を含むハードウェア資源(図示省略)と、を備えたパーソナルコンピュータである。ここで、データ処理装置20は、前もってインストールされたソフトウェアにより、上記ハードウェア資源を、後述する記憶部20D、横隔膜伸縮長導出手段21、Vn導出手段22、V導出手段23、および、フィルタ24の各構成として機能させるようになっている。
すなわち、無線受信装置20Bは、上記電波Rから引張変形検知布11が検知する引張変形の信号を抽出して、この信号と前もって入力されている被服10Aの寸法とから、計測対象者Hの腹部における臍を通る周長abgを求める。これは、本発明における「第1部位測定ステップ」に相当する。また、無線受信装置20Bは、上記電波Rから引張変形検知布12が検知する引張変形の信号を抽出して、この信号と前もって入力されている被服10Aの寸法とから、計測対象者Hの胸部における剣状突起を通る周長chgを求める。これは、本発明における「第2部位測定ステップ」に相当する。そして、無線受信装置20Bは、上記周長abgを横隔膜伸縮長導出手段21に出力し、上記周長chgをVn導出手段22に出力する。
ついで、横隔膜伸縮長導出手段21は、計測対象者Hの横隔膜H3(図8ないし図10参照)の胸腔方向(図示上下方向)への伸縮長Hdiaを、下記の(式4)により導出する。これは、本発明における「横隔膜伸縮長導出ステップ」に相当する。
ここで、上記腹腔形状パラメータ[pab]および関数Hdia〈〉は、技術者(図示省略)が入力手段20Cを介して前もって記憶部20Dに入力して記憶させたものである。具体的には、腹腔形状パラメータ[pab]は、人体の前後方向および左右方向の寸法、人体の胸部における楕円率および上下方向の寸法などを成分としたベクトル量であり、各成分には公知の統計量または計測対象者Hに合わせて調整された量が用いられる。また、関数Hdia〈〉は、技術者により後述する人体モデル(図8ないし図10参照)に対応して設定される。
n回目(1≦n≦N)に実行されるVn導出ステップにおいては、Vn導出手段22は、記憶部20Dから関数Vn〈〉および部分構造形状パラメータ[pn]を参照する。ついで、Vn導出手段22は、計測対象者Hの肺を構成するn番目の部分構造における部分肺気量Vnを、下記の(式5)により導出する。
ここで、上記部分構造形状パラメータ[pn]および関数Vn〈〉ならびに部分構造数Nは、技術者(図示省略)が入力手段20Cを介して前もって記憶部20Dに入力して記憶させたものである。具体的には、部分構造形状パラメータ[pn]は、人体の前後方向および左右方向の寸法、人体の胸部における楕円率および上下方向の寸法などを成分としたベクトル量であり、各成分には公知の統計量または計測対象者Hに合わせて調整された量が用いられる。また、関数Vn〈〉および部分構造数Nは、技術者により後述する人体モデル(図8ないし図10参照)に対応して設定される。
上記各パラメータは、所定の人体モデルを設定することで、ヒトの腹部における臍を通る周長abgと、ヒトの胸部における剣状突起を通る周長chgと、から変換して求めることができる。周長abgと周長chgとの組み合わせによりヒトの肺の形状を求める構成により、この肺の形状変化をより正確に捉えて、部分肺気量を求める精度を向上させることができる。
このため、上記人体モデルにおける部分肺気量Vn=V1(これは肺H1全体の肺気量Vに等しい。)は、上記周長chgと、上記関数Hdia〈〉および周長abgから導かれる肺H1の上下方向の伸張と、から求めることができる。なお、上記人体モデルにおける各関係を文字式で表して式変形を行うと、以下の(式1)が導出される。
ここで、P0、P1、P2は腹腔形状パラメータ[pab]および部分構造形状パラメータ[pn]から求めることができる所定の係数であり、ヒトの身体部位の形状に基づいて設定される。
上記方法によれば、ヒトの肺H1を楕円体形状の容器とみなし、ヒトの腹腔H2を楕円筒形状とみなした人体モデルを採用しながら、比較的簡単な計算により計測対象者Hの肺の部分肺気量Vnを求めることができる。ここで、上記人体モデルは、ヒトの肺全体を1つの円筒容器とみなした人体モデルと比べて実際の人体の形状に近いので、計測対象者Hの呼吸計測の精度を向上させることができる。
このため、上記人体モデルにおける右肺H6および左肺H5の各部分肺気量V1、V2は、上記周長chgと、上記関数Hdia〈〉および周長abgから導かれる肺H1の上下方向の伸張と、から求めることができる。この各関係は、上述した(式5)と同様の式で表してこの式の式変形を行うことで、上記周長chgおよび周長abgを用いて書き下された推定式として導出することができる。
なお、本発明において採用することができる人体モデルは上述した3例に限定されない。すなわち、肺H1を構成する各部分構造の数および形状は特に限定されず、この各部分構造および腹腔H2が、周長abgおよび周長chgの伸張および収縮によってどのように変形するかを示す人体モデルは、適宜変更することができる。
ついで、V導出手段23は、計測対象者Hの肺全体における肺気量Vを、下記の線形多項式(式6)により導出する。これは、本発明における「V導出ステップ」に相当する。
ここで、上記各Wnは各Vnをパラメータとした線形多項式(式6)の係数であり、技術者(図示省略)が入力手段20Cを介して前もって記憶部20Dに入力して記憶させた各Vnの重み付けである。なお、上記線形多項式(式6)により導出されたVは、フィルタ24によるフィルタリング処理(本発明における「フィルタリングステップ」に相当する。)を経て出力装置20Aから出力される。
例えば、計測対象者Hが気胸の患者であってその右肺が正常に機能しない場合、計測対象者Hの胸部または腹部の周長が変化しても、計測対象者Hの右肺にはほとんど空気の出入りがない。この場合、Vn導出手段22において図9または図10に示す人体モデル(すなわち、右肺H6と左肺H5とが別々の部分構造となる人体モデル)を採用し、右肺H6の部分肺気量V1に対応する係数W1を0または0に近い値とすることで、計測対象者Hの肺H1全体の肺気量Vをより正確に評価することができる。
ついで、第1フィルタ24Aは、上記肺気量Vの時系列における所定の区間(本実施形態では当該区間に前後の2区間ずつを加えた5区間)の単純移動平均を算定する。これにより、肺気量Vの時系列に含まれる外れ値の影響を低減させて、肺気量Vの変動量(およびこの変動量から求められる気流速度VA)をより正確に求めることができる。すなわち、上記単純移動平均の算定は、本発明における「第1フィルタリングステップ」に相当する。そして、第1フィルタ24Aは、算定することができた単純移動平均を第1フィルタ24Aが機能された肺気量Vとして第1判定手段24Bおよび気流速度導出部24Fに随時出力する。
ここで、ある変動量Xの「正負が入れ替わる時点」とは、変動量Xに対して以下の3つの条件が全て成立する時点のことである。
(あ)その時点から過去側に向かう所定数の区間(本実施形態では2区間)において、変動量Xの正負が変化しない。
(い)その時点から未来側に向かう所定数の区間(本実施形態では2区間)において、変動量Xの正負が変化しない。
(う)上記(あ)において変化しない変動量Xの正負と、上記(い)において変化しない変動量Xの正負とは、その正負が異なる。
また、上記第2フィルタ24Dは、入力された肺気量Vに対して、第1判定手段24Bが極値と判定した時点およびその前後の所定の時間範囲を除いた肺気量Vの全体をハイカットフィルタにより平滑化処理し、平滑化処理された肺気量Vを合成出力部24Eに出力する。すなわち、上記操作は本発明における「第2フィルタリングステップ」に相当する。
ついで、気流速度導出部24Fは、肺気量Vの変動量と第1フィルタ24Aからの入力の時間間隔とから気流速度VAを肺気量Vの時間微分として算定して時系列の順に保存する。そして、気流速度導出部24Fは、保存された気流速度VAを第2判定手段24Gに出力する。すなわち、上記操作は本発明における「気流速度導出ステップ」に相当する。
ついで、第2判定手段24Gは、上記気流速度VAの変動量の時系列において、この変動量の正負が入れ替わる時点の気流速度VAに対して、この気流速度VAが極値となっていると判定する。ここで、気流速度VAの「正負が入れ替わる時点」とは、気流速度VAを変動量Xとしたときに、上述した(あ)から(う)の3つの条件が全て成立する時点のことである。すなわち、上記操作は本発明における「第2判定ステップ」に相当する。
また、上記第2シャープネスフィルタ24Hは、入力された気流速度VAに対して、第2判定手段24Gが極値と判定した時点およびその前後の所定の時間範囲における気流速度VAを保持するように平滑化処理を行い、平滑化処理された気流速度VAを合成出力部24Eに出力する。すなわち、上記操作は本発明における「第2シャープネスステップ」に相当する。
上記合成出力ステップにおいて、第1シャープネスフィルタ24Cおよび第2フィルタ24Dからそれぞれ入力される肺気量Vは、まず、合成出力部24EのV合成部24Jにおいて、第1シャープネスフィルタ24Cから入力される肺気量Vの、各極値およびその前後の所定の時間範囲における値が保持されるように1つの肺気量Vに合成される。上記V合成部24Jを経た肺気量Vを用いると、V導出手段23が導出した肺気量Vに含まれるノイズを平滑化処理により低減させながら、計測対象者Hが最大限まで吸い込んだ息を吐き始めた直後(すなわち、肺気量Vが極大値となった直後)において、呼気量が平滑化されることを抑えることができる。このため、計測対象者Hの呼吸計測により計測対象者Hの呼吸器疾患を診断する際に、慢性閉塞性肺疾患を識別して診断する精度を向上させることができる。
なお、上記肺気量Vと気流速度VAとの統合において、V合成部24Jを経た肺気量Vおよび第2シャープネスフィルタ24Hから入力される気流速度VAの、各極値およびその前後の所定の時間範囲における値は、それぞれが保持されるように肺気量Vに反映される。このため、合成出力部24Eは、肺気量Vを、時間に対してC2級であり、かつ、時間変化の変曲点が保持された値として出力する。
例えば、計測対象者Hの肺気量Vにおいて時間変化の変曲点が保持されることで、この肺気量Vから導出されるフローボリューム曲線において、呼吸器の拘束性障害と中枢気道狭窄との間における形状の違いなどの微妙な形状の違いを識別して計測対象者Hの呼吸器疾患を診断することができる。また、例えば計測対象者Hの気道に痰などの分泌物が貯留している場合には、計測対象者Hのフローボリューム曲線に細かい揺らぎが生じるが、上記肺気量Vが時間に対するC2級の値であることで、上記揺らぎを明りょうに識別して計測対象者Hの診断を行うことができる。
(1)データ処理装置のフィルタにおいて、合成出力部のV合成部を経た肺気量Vを直接出力装置に出力させる実施形態を採用することができる。この場合でも、V導出手段が導出した肺気量Vに含まれるノイズを平滑化処理により低減させながら、計測対象者が最大限まで吸い込んだ息を吐き始めた直後(すなわち、肺気量Vが極大値となった直後)において、呼気量が平滑化されることを抑えることができる。このため、計測対象者の呼吸計測によりこの計測対象者の呼吸器疾患を診断する際に、慢性閉塞性肺疾患を識別して診断する精度を向上させることができる。
(2)データ処理装置のフィルタにおいて、第1判定ステップを経た肺気量Vを1つの第1兼用フィルタに出力し、この第1兼用フィルタを第1判定手段の判定結果に基づいて第1シャープネスフィルタと第2フィルタとに切り替えて処理を行うことで、合成出力部からV合成部を省略することができる。
(3)データ処理装置のフィルタにおいて、第2判定ステップを経た気流速度VAを1つの第2兼用フィルタに出力し、この第2兼用フィルタを第2判定手段の判定結果に基づいて第2シャープネスフィルタと第3フィルタとに切り替えて処理を行う実施形態を採用することができる。
(4)引張変形検知布は、織物として構成されたものに限定されない。すなわち、引張変形検知布を、編物や不織布、組紐、または、上記各素材を組み合わせた複合素材など、任意の布構造(textile)により構成されたものとすることができる。
(5)引張変形検知布が取り付けられる被服はTシャツに限定されず、ブラジャー、コルセット、ショーツ、パンツ、ボディースーツ、ブラウスなど、計測対象者の胴体に着用される被服であればどんなものでもよい。また、引張変形検知布が取り付けられる被服を腹巻やベルトなどの帯とすることで、測定手段の計測対象者への着脱を容易とした構成を用いることもできる。
(6)測定手段の形状および構成は、上記実施形態の構成に限定されない。例えば、測定手段において、引張変形検知布の形状および配置を変更して、計測対象者の体表上における任意の複数部位の長さを測定する構成を用いることができる。また、計測対象者の体表上における部位の長さを測定する際に、上記実施形態の引張変形検知布の代わりにひずみゲージが取り付けられた被服や、計測対象者の体表上に複数個のマーカを貼り付けて、この各マーカの位置を検知して計測対象者の測定を行うモーションキャプチャシステムを使用することができる。
(7)本発明の呼吸計測方法および呼吸計測装置は計測対象者としてヒトを対象としたものに限定されない。すなわち、本発明は、呼吸計測装置の測定手段の形状および構成と、データ処理装置に入力される各パラメータおよびモデルと、を変更することで、肺と横隔膜とを有する任意の生物に対して、この生物の肺呼吸に伴う肺気量の変動量を求めることができる。
10 測定手段(第1部位測定手段、第2部位測定手段)
10A 被服
10B 無線送信装置
11 第1の引張変形検知布
11A ケーブル
11B ケーブル
11C 織物(布構造)
11D 導電糸
11E 導電糸
11F 電極
11G 電極
12 第2の引張変形検知布
12A ケーブル
12B ケーブル
13 信号検出装置
20 データ処理装置
20A 出力装置
20B 無線受信装置
20C 入力手段
20D 記憶部
21 横隔膜伸縮長導出手段
22 Vn導出手段
23 V導出手段
24 フィルタ
24A 第1フィルタ
24B 第1判定手段
24C 第1シャープネスフィルタ
24D 第2フィルタ
24E 合成出力部
24F 気流速度導出部
24G 第2判定手段
24H 第2シャープネスフィルタ
24I 第3フィルタ
24J V合成部
24K 統合部
D 間隔
dD 伸縮量
dL 引張変形
H 計測対象者(ヒト、生物)
H1 肺
H2 腹腔
H3 横隔膜
H4 横断面
H5 左肺
H6 右肺
L 寸法
R 電波
V 肺気量
VA 気流速度
w 寸法
Claims (9)
- 肺と横隔膜とを有する生物であるヒトを対象として、当該ヒトの肺呼吸に伴う肺気量(V)の変動量を求めることができる呼吸計測方法であって、
前記生物の体表上における第1部位の所定方向の長さとして、前記ヒトの腹部における臍を通る周長を測定する第1部位測定ステップと、
前記生物の体表上における第2部位の所定方向の長さとして、前記ヒトの胸部における剣状突起を通る周長を測定する第2部位測定ステップと、
前記第1部位の所定方向の長さを用いて、前記横隔膜の胸腔方向への伸縮長を求める横隔膜伸縮長導出ステップと、
Nを自然数、nをN以下の自然数とした場合に、前記ヒトの前記肺を構成するN個の部分構造の1つにおける部分肺気量(Vn)を、前記横隔膜の前記伸縮長と前記第2部位の所定方向の長さとを用いて求めるVn導出ステップと、
前記Vn導出ステップをN回実行することで、前記ヒトの前記肺全体に対応する前記N個の前記部分構造の全てに対して、前記部分肺気量(Vn)をそれぞれ求める繰り返しステップと、
前記繰り返しステップにより求められた前記各部分肺気量(Vn)をパラメータとする線形多項式を計算することで、前記ヒトの前記肺気量(V)を求めるV導出ステップと、を備えていることを特徴とする呼吸計測方法。 - 請求項1に記載の呼吸計測方法であって、
前記ヒトの腹部における臍を通る周長をabgと表し、
前記ヒトの胸部における剣状突起を通る周長をchgと表した場合に、
前記Vn導出ステップにおいて、前記部分肺気量(Vn)を次に示す式1と同値な式により求めることを特徴とする呼吸計測方法。
ここで、P0、P1、P2は前記ヒトの身体部位の形状に基づいて設定される係数である。 - 請求項1または請求項2に記載の呼吸計測方法であって、
前記肺気量(V)にフィルタリング処理を行うフィルタリングステップを備え、
前記フィルタリングステップは、
前記V導出ステップにより求められた前記肺気量(V)に、当該肺気量(V)に含まれる外れ値の影響を低減させる第1フィルタを機能させる第1フィルタリングステップと、
前記第1フィルタリングステップを経た前記肺気量(V)に対して当該肺気量(V)の変動量を求め、当該変動量の正負が入れ替わる時点の前記肺気量(V)に対して、当該肺気量(V)が極値となっていると判定する第1判定ステップと、
前記第1判定ステップにより極値となっていると判定された時点およびその前後の所定の時間範囲における前記肺気量(V)に対して、極値と判定した時点およびその前後の所定の時間範囲における前記肺気量(V)を保持する第1シャープネスフィルタを機能させる第1シャープネスステップと、
前記第1判定ステップにより極値と判定した時点およびその前後の所定の時間範囲を除いた時間範囲における前記肺気量(V)に対して、当該肺気量(V)を平滑化処理する第2フィルタを機能させる第2フィルタリングステップと、を備え、
前記肺気量(V)に前記第1シャープネスフィルタが適用される、極値と判定された時点およびその前後の所定の時間範囲は、この極値が極大値である場合に、慢性閉塞性肺疾患の兆候が前記肺気量(V)に現れる前記極大値の直後の時間範囲が含まれる時間範囲とされている、
呼吸計測方法。 - 請求項3に記載の呼吸計測方法であって、
前記第1フィルタリングステップを経た前記肺気量(V)に対して、当該肺気量(V)の時間微分により気流速度を導出する気流速度導出ステップと、
前記気流速度導出ステップにより導出された前記気流速度に対して当該気流速度の変動量を求め、当該変動量の正負が入れ替わる時点の前記気流速度に対して、当該気流速度が極値となっていると判定する第2判定ステップと、
前記第2判定ステップにより極値となっていると判定された時点およびその前後の所定の時間範囲における前記気流速度に対して、極値と判定した時点およびその前後の所定の時間範囲における前記気流速度を保持する第2シャープネスフィルタを機能させる第2シャープネスステップと、
前記第2判定ステップにより極値と判定した時点およびその前後の所定の時間範囲を除いた時間範囲における前記気流速度に対して、当該気流速度を平滑化処理する第3フィルタを機能させる第3フィルタリングステップと、
前記第1シャープネスステップを経た前記肺気量(V)および前記第2フィルタリングステップを経た前記肺気量(V)を、前記第2シャープネスステップを経た前記気流速度および前記第3フィルタリングステップを経た前記気流速度を反映させながら合成して、合成された前記肺気量(V)を出力する合成出力ステップと、を備え、
前記気流速度に前記第2シャープネスフィルタが適用される、極値と判定された時点およびその前後の所定の時間範囲は、前記合成出力ステップにおいて出力される前記肺気量(V)を、時間に対してC 2 級であり、かつ、時間変化の変曲点が保持された値とすることを可能とする時間範囲とされている、
呼吸計測方法。 - 肺と横隔膜とを有する生物であるヒトを対象として、当該ヒトの肺呼吸に伴う(V)の変動量を求めることができる呼吸計測装置であって、
前記生物の体表上における第1部位の所定方向の長さとして、前記ヒトの腹部における臍を通る周長を測定するための第1部位測定手段と、
前記生物の体表上における第2部位の所定方向の長さとして、前記ヒトの胸部における剣状突起を通る周長を測定するための第2部位測定手段と、
前記第1測定手段が測定した前記第1部位の所定方向の長さが入力されることで、前記横隔膜の胸腔方向への伸縮長を導出する横隔膜伸縮長導出手段と、
Nを自然数、nをN以下の自然数とした場合に、前記第2測定手段が測定した前記第2部位の所定方向の長さと、前記横隔膜伸縮長導出手段が導出した前記横隔膜の前記伸縮長と、が入力されることで、前記ヒトの前記肺を構成するN個の部分構造の1つにおける部分肺気量(Vn)を導出することをN回実行して、前記ヒトの前記肺全体に対応する前記N個の前記部分構造の全てに対して、前記部分肺気量(Vn)をそれぞれ導出するVn導出手段と、
前記Vn導出手段が導出した前記各部分肺気量(Vn)が入力されることで、当該各部分肺気量(Vn)をパラメータとする線形多項式を計算して、前記ヒトの前記肺気量(V)を導出するV導出手段と、を備えていることを特徴とする呼吸計測装置。 - 請求項5に記載の呼吸計測装置であって、
前記ヒトの腹部における臍を通る周長をabgと表し、
前記ヒトの胸部における剣状突起を通る周長をchgと表した場合に、
前記Vn導出手段は、前記部分肺気量(Vn)を次に示す式1と同値な式により導出することを特徴とする呼吸計測装置。
ここで、P0、P1、P2は前記ヒトの身体部位の形状に基づいて設定される係数である。 - 請求項6に記載の呼吸計測装置であって、
前記第1部位測定手段は、前記ヒトの胴体に着用される被服における少なくとも前記ヒトの臍を含む腹部に対応して設けられた第1の引張変形検知布が検知する引張変形により前記abgを測定し、
前記第2部位測定手段は、前記ヒトの前記胴体に着用される被服における少なくとも前記ヒトの剣状突起を含む胸部に対応して設けられた第2の引張変形検知布が検知する引張変形により前記chgを測定し、
前記第1の引張変形検知布および前記第2の引張変形検知布は、複数の導電糸を含んで構成された布構造(textile)を、引張変形を検知するべき周長の周長方向に伸縮自在にするとともに、その伸縮に伴って前記導電糸の隣接するもの同士の間隔が変化し、その隣接する導電糸同士間は絶縁状態が維持されるように構成されて、隣接する各導電糸が静電容量を測定するための一対の電極となることで、当該一対の電極間の静電容量によって引張変形を検知することを特徴とする呼吸計測装置。 - 請求項5から請求項7のいずれかに記載の呼吸計測装置であって、
前記肺気量(V)にフィルタリング処理を行うフィルタを備え、
前記フィルタは、
前記V導出手段が導出した前記肺気量(V)に機能して、当該肺気量(V)に含まれる外れ値の影響を低減させる第1フィルタと、
前記第1フィルタが機能された前記肺気量(V)に対して当該肺気量(V)の変動量を求め、当該変動量の正負が入れ替わる時点の前記肺気量(V)に対して、当該肺気量(V)が極値となっていると判定する第1判定手段と、
前記第1判定手段により極値となっていると判定された時点およびその前後の所定の時間範囲における前記肺気量(V)に対して、極値と判定した時点およびその前後の所定の時間範囲における前記肺気量(V)を保持するように機能する第1シャープネスフィルタと、
前記第1判定手段により極値と判定した時点およびその前後の所定の時間範囲を除いた時間範囲における前記肺気量(V)に対して、当該肺気量(V)を平滑化処理する第2フィルタと、を備え、
前記肺気量(V)に前記第1シャープネスフィルタが適用される、極値と判定された時点およびその前後の所定の時間範囲は、この極値が極大値である場合に、慢性閉塞性肺疾患の兆候が前記肺気量(V)に現れる前記極大値の直後の時間範囲が含まれる時間範囲とされている、
呼吸計測装置。 - 請求項8に記載の呼吸計測装置であって、
前記第1フィルタが機能された前記肺気量(V)に対して、当該肺気量(V)の時間微分により気流速度を導出する気流速度導出部と、
前記気流速度導出部が導出した前記気流速度に対して当該気流速度の変動量を求め、当該変動量の正負が入れ替わる時点の前記気流速度に対して、当該気流速度が極値となっていると判定する第2判定手段と、
前記第2判定手段により極値となっていると判定された時点およびその前後の所定の時間範囲における前記気流速度に対して、極値と判定した時点およびその前後の所定の時間範囲における前記気流速度を保持するように機能する第2シャープネスフィルタと、
前記第2判定手段により極値と判定した時点およびその前後の所定の時間範囲を除いた時間範囲における前記気流速度に対して、当該気流速度を平滑化処理する第3フィルタと、
前記第1シャープネスフィルタおよび前記第2フィルタからそれぞれ入力される前記肺気量(V)を、前記第2シャープネスフィルタおよび前記第3フィルタからそれぞれ入力される前記気流速度を反映させながら合成し、合成された前記肺気量(V)を出力する合成出力部と、を備え、
前記気流速度に前記第2シャープネスフィルタが適用される、極値と判定された時点およびその前後の所定の時間範囲は、前記合成出力部において出力される前記肺気量(V)を、時間に対してC 2 級であり、かつ、時間変化の変曲点が保持された値とすることを可能とする時間範囲とされている、
呼吸計測装置。
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