本願発明の実施の形態のナノファイバ製造システムを、図面を参照しつつ説明する。なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示したものではない。
また、以下で説明する実施の形態は、本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、工程、工程の順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。
まず、図1および図2を用いて、実施の形態のナノファイバ製造システムの基本的な構成について説明する。
図1は、実施の形態のナノファイバ製造システムの構成概要を示す斜視図である。
図1に示すように、実施の形態のナノファイバ製造システム10は、ナノファイバ製造装置100と、イオン風検知装置200とを備える。
ナノファイバ製造装置100は、原料液300を空間中で電気的に延伸させて、ナノファイバ301を製造する装置である。ナノファイバ製造装置100は、流出体115と、供給部107と、帯電電源122と、誘引部104と、帯電電極121と、帯電電源125と、基材128と、移動部129とを備える。
イオン風検知装置200は、ナノファイバ製造装置100から発生するイオン風を検知する装置であり、検知用電源220と接続されている。イオン風検知装置200の詳細については、図3〜図8を用いて後述する。
なお、帯電電源122および帯電電源125の少なくとも一方は、第一電源の一例であり、検知用電源220は、第二電源の一例である。
図2は、実施の形態における流出体115を斜め下方から見た場合の斜視図である。
流出体115は、内部に貯蔵された原料液300の圧力(重力も含む場合がある)により原料液300を空間中に流出させるための部材であり、第一側面部116と、第二側面部117と、底面部120を有する。
底面部120は、複数の開口部119が配置されており、それぞれの開口部119から原料液300が空間中に流出する。つまり、流出体115には、原料液300の貯留空間から各開口部119からにいたる流出孔が設けられている。
また、流出体115は、流出する原料液300に電荷を供給する電極としても機能しており、原料液300と接触する部分の少なくとも一部は導電性を備えた部材で形成される。
本実施の形態の場合、流出体115全体が金属で形成されている。なお、金属の種類は導電性を備えておれば、特に限定されるものではなく、黄銅やステンレス鋼など任意の材料を選定しうる。
また、開口部119が並べられる間隔は、全てを等間隔としてもよく、また、流出体115の端部における間隔が、流出体115の中央部における間隔よりも広く(狭く)なるように開口部119が配置されてもよい。
また、開口部119は、同一直線上に配置されるばかりでなく、ジグザグに配置されてもよく、サインカーブなどの波を描くように配置されてもよい。
また、図2に示すように、第二側面部117は底面部120に向かって徐々に細くなるように配置されている。そのため、底面部120に電荷を集中させやすく、原料液300に効率的に電荷を供給することができる。
このような構造を有する流出体115には、供給部107から原料液300が供給される。供給部107は、図1に示すように、原料液300を貯蔵するタンク151と、原料液300を所定の圧力で搬送するポンプ(図示せず)と、原料液300をタンク151から流出体115に案内する案内管114とを備えている。
帯電電源122は、流出体115に高電圧を印加することのできる電源である。帯電電源122は、一般には、直流電源が好ましい。特に、発生させるナノファイバ301の帯電極性に影響を受けないような場合、生成したナノファイバ301の帯電を利用して、逆極性の電位を印加した電極でナノファイバ301を誘引するような場合には、直流電源を採用することが好ましい。
帯電電極121は、流出体115と所定の間隔を隔てて配置され、自身が流出体115に対し高い電圧もしくは低い電圧となることで、流出体115に電荷を誘導するための導電性を備える部材である。
本実施の形態の場合、帯電電極121は、ナノファイバ301を誘引する誘引部104としても機能している。具体的には、帯電電極121は、本実施の形態では、流出体115の底面部120と対向する位置に配置されており、帯電電源125と接続されている。
また、本実施の形態では、流出体115には帯電電源122によって正の電圧が印加され、かつ、帯電電極121には、帯電電源125によって負の電圧が印加されるが、正負が逆であってもよい。また、帯電電極121は帯電電源125に接続されず、接地されていてもよい。
また、帯電電極121に帯電電源125を接続することで帯電電極121を高電圧に維持する場合、流出体115を接地することで原料液300に電荷を付与することも可能である。
つまり、帯電電極121と流出体115との間に、ナノファイバ301の誘引のための電位差が与えられればよい。ここで、帯電電極121と流出体115との間における電位差は、例えば、5KV以上、100KV以下の範囲の値から設定されるのが好適である。
基材128は、静電延伸現象により製造されるナノファイバ301を堆積させて収集する部材である。本実施の形態の場合、基材128は、ロール127に巻き付けられた状態で供給されている。
なお、基材128の材種に特に限定はなく、例えば、基材128は、剛性のある板状の部材であってもよい。また、基材128の表面にフッ素コートを行うなど、ナノファイバ301を剥ぎ取る際の剥離性が高い基材128であってもよい。
誘引部104は、空間中で製造されたナノファイバ301を基材128に誘引するための装置である。本実施の形態の場合、誘引部104は、帯電電極121としても機能する金属板であり、基材128の後方に配置されている。誘引部104は、帯電しているナノファイバ301を電界により基材128に誘引する。つまり、誘引部104は、帯電したナノファイバ301を誘引するための電界を発生させるための電極である。
移動部129は、流出体115と、基材128とを相対的に移動させる装置である。本実施の形態の場合、流出体115は固定されており、基材128のみを移動する。具体的に移動部129は、長尺の基材128を巻き取りながらロール127から引き出し、堆積するナノファイバ301と共に基材128を搬送する。
なお、移動部129は、基材128を移動させるばかりではなく、流出体115を基材128に対して移動させるものでもかまわない。また、移動部129は、基材128を一定方向に移動させ、流出体115を往復動させるなど、任意の動作状態を例示することができる。
ここで、原料液300は、溶質としてナノファイバ301を構成する樹脂(高分子樹脂)と、溶質を溶解、または、分散させる溶媒とを含んでいる。
溶質としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−m−フェニレンテレフタレート、ポリ−p−フェニレンイソフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン−アクリレート共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル−メタクリレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステルカーボネート、ポリアミド、アラミド、ポリイミド、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ酢酸ビニル、ポリペプチド等およびこれらの共重合体等の高分子樹脂を例示できる。また、溶質としては、上記より選ばれる一種でもよく、また、複数種類が混在してもかまわない。なお、上記は例示であり、本願発明は上記溶質に限定されるものではない。
溶媒としては、揮発性のある有機溶剤などを例示することができる。具体的に例示すると、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジベンジルアルコール、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、ヘキサフルオロアセトン、フェノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、クロロホルム、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、酢酸、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキシド、ピリジン、水等を挙示することができる。また、溶媒としては、上記より選ばれる一種でもよく、また、複数種類が混在してもかまわない。なお、上記は例示であり、本願発明に用いられる原料液300は上記溶媒を採用することに限定されるものではない。
さらに、原料液300に無機質固体材料などを添加してもよい。無機質固体材料としては、酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、珪化物、弗化物、硫化物等を挙げることができるが、製造されるナノファイバ301の耐熱性、加工性などの観点から酸化物を用いることが好ましい。当該酸化物としては、Al2O3、SiO2、TiO2、Li2O、Na2O、MgO、CaO、SrO、BaO、B2O3、P2O5、SnO2、ZrO2、K2O、Cs2O、ZnO、Sb2O3、As2O3、CeO2、V2O5、Cr2O3、MnO、Fe2O3、CoO、NiO、Y2O3、Lu2O3、Yb2O3、HfO2、Nb2O5等を例示することができる。また、添加される材料としては、上記より選ばれる一種でもよく、また、複数種類が混在してもかまわない。なお、上記は例示であり、本願発明は、上記添加材料が原料液300に含まれるか否かについて影響は受けない。
原料液300における溶媒と溶質との混合比率は、選定される溶媒の種類と溶質の種類とにより異なるが、溶媒量は、約60重量%から98重量%の間が望ましい。好適には溶質が5〜30%となる。
次に、ナノファイバ製造装置100から発生するイオン風を検知することのできるイオン風検知装置200について、図3〜図8を用いて説明する。
図3は、実施の形態におけるイオン風検知装置200の構成概要を示す斜視図である。
図4は、実施の形態におけるイオン風検知装置200の構成概要を示す断面図である。なお、図4は、図3におけるA−A´断面を表している。
図3および図4に示すように、本実施の形態におけるイオン風検知装置200は、箱体201と、箱体201の内部に配置された粒状部材208とを有する。
より具体的には、イオン風検知装置200はさらに、箱体201の底部に配置された検知用電極210と、箱体201の底部と対向する位置に、検知用電極210とは絶縁状態で配置された天面部205とを有する。
また、イオン風検知装置200には、検知用電極210に高電圧を印加することのできる検知用電源220が接続されている。検知用電源220が検知用電極210に印加する電圧は、例えば、5KV以上、100KV以下の範囲の値から設定される。検知用電極210上の複数の粒状部材208のそれぞれは、直流電源である検知用電源220による検知用電極210に対する電圧の印加により、例えば負に帯電する。
その結果、粒状部材208は、検知用電極210と、イオン風により例えば正に帯電した天面部205との間で往復動する。
ここで、粒状部材208は、天面部205が自身とは逆の極性に帯電した場合、重力に逆らって飛翔する程度の質量の部材である。具体的には、粒状部材208として、アルミニウム製の中空の球体、アルミニウム箔を緩く丸めたもの、発泡樹脂製の粒状物などを例示することができる。イオン風に起因する粒状部材208の挙動の具体例については、図6を用いて後述する。
箱体201は、本実施の形態では、厚さ(Z軸方向の幅)が例えば20mm程度であって、縦および横の長さ(X軸方向およびY軸方向の長さ)が例えば150mm程度の、全体として直方体の容器である。もちろん、上記の箱体201のサイズおよび形状は一例であり、他のサイズおよび形状が採用されてもよい。
また、箱体201の素材としては、例えば絶縁性の樹脂が採用されるが、天面部205と検知用電極210とを絶縁状態に維持できるのであれば、箱体201の素材として金属が採用されてもよい。
天面部205は、本実施の形態では、箱体201の外方から、箱体201の内部の粒状部材208が視認可能な程度の透光性を有している。そのため、ユーザは、粒状部材208の往復動を直接的に視認することができる。
なお、図2および図3のイオン風検知装置200における斜線は、天面部205を明確に図示するための表現であり、実際に天面部205に斜線が付されているわけではない。
また、本実施の形態では、箱体201には、例えば絶縁材料からなる把持部202が備えられている。そのため、ユーザは、把持部202を持って、イオン風検知装置200をナノファイバ製造装置100近傍の様々な位置に移動させることで、これら様々な位置におけるイオン風の発生の有無および発生量等を確認することができる。
図5は、流出体115からのイオン風の検知のためにイオン風検知装置200を移動させる様子を示す図である。
なお、当該検知は、流出体115への電圧の印加が行われ、かつ、ナノファイバ301の製造のための実体的な動作(流出体115からの原料液300の流出および、基材128の巻き取り等)は停止した状態で行われる。
例えば、図5に示すように、正の電圧が印加されている流出体115の角部Cからイオン風が発生している場合を想定する。
この場合、検知用電極210に、検知用電源220による負の電圧が印加された状態で、イオン風検知装置200の箱体201を、当該角部Cから所定の範囲内(例えば、50cm内)に配置すると、当該角部Cの下方に位置する1以上の粒状部材208が往復動する。
図6は、粒状部材208が検知用電極210と天面部205との間を往復動する様子を示す図である。
図6の(a)に示すように、検知用電極210上の粒状部材208は、検知用電極210と接触することで負に帯電する。また、天面部205には、上方に存在する、正に帯電した流出体115から発生したイオン風により正に帯電する。
その結果、図6の(b)に示すように、粒状部材208はクーロン力により天面部205に引き付けられる。さらに、図6の(c)に示すように、粒状部材208が天面部205に接触すると、粒状部材208の帯電は中和される。
これにより、粒状部材208と天面部205とを引き付けあっていたクーロン力は失われ、粒状部材208は、図6の(d)に示すように、検知用電極210の電荷により粒状物質内の電荷が偏って発生するクーロン力と重力との合力によって検知用電極210に向かって落下する。
粒状部材208は、自身の、検知用電極210による負の帯電と、天面部205のイオン風による正の帯電とが継続する限り、以上の図6の(a)〜(d)の動作を繰り返す。すなわち、粒状部材208は、検知用電極210と天面部205との間での往復動を繰り返す。
また、粒状部材208と天面部205との間に働くクーロン力は、粒状部材208および天面部205それぞれが持つ電荷の積に比例する。そのため、検知用電源220による印加電圧が一定であれば、天面部205に吹き付けるイオン風の量が多いほど、当該クーロン力は大きくなる。その結果、粒状部材208はより速く往復動を行う。つまり、粒状部材208の往復動の速さによって当該イオン風の発生量が特定される。また、粒状物質の数が複数の場合は、多くの粒状物質が往復動を行うこととなるため、イオン風の影響を受ける範囲を特定することができる。
例えば、ある位置(第一位置)にイオン風検知装置200の箱体201を配置した場合よりも、他の位置(第二位置)に箱体201を配置した場合の方が、粒状部材208が激しく往復動した場合を想定する。この場合、第二位置の近傍で、第一位置の近傍よりも多くのイオン風が発生していることが特定される。つまり、イオン風の発生量が定性的に特定される。
また、例えば、実験または理論計算により、イオン風の発生量と粒状部材208の往復動の速さを示す情報(例えば、粒状部材208の天面部205に向かう移動速度、または、粒状部材208の往復の周期)とを対応付けた関数またはテーブルを作成する。これにより、当該関数またはテーブルと、実測した粒状部材208の速度とから、例えばコンピュータに、イオン風の発生量を定量的に算出させることも可能である。
また、図5では、流出体115からのイオン風をイオン風検知装置200によって検知する場合を例示した。しかし、イオン風検知装置200は、流出体115以外の、ナノファイバ製造装置100の構成要素からのイオン風も検知することができる。
図7は、イオン風検知装置200の配置位置の例を示す図である。なお、図7および後述する図8では、天面部205の図示は省略している。
また、図7に例示される、イオン風検知装置200によるイオン風の検知は以下の状態で行われる。当該検知は、例えば、流出体115または帯電電極121への電圧の印加は行われ、かつ、ナノファイバ301の製造のための実体的な動作(流出体115からの原料液300の流出および、基材128の巻き取り等)は停止した状態で行われる。
例えば、図7の(a)に示すように、帯電電源122と流出体115とを接続する被覆電線122aの被覆に孔があき、当該孔からイオン風が発生している場合を想定する。
この場合、被覆電線122aから所定の範囲内に配置された箱体201における粒状部材208の往復動によって、被覆電線122aから発生するイオン風が検知される。
また、例えば、図7の(b)に示すように、誘引部104である帯電電極121の角部からイオン風が発生している場合を想定する。
この場合、誘引部104(帯電電極121)から所定の範囲内に配置された箱体201における粒状部材208の往復動によって、帯電電極121から発生するイオン風が検知される。
なお、上述のように、本実施の形態では、帯電電極121には、帯電電源125によって負の電圧が印加されているため、誘引部104から発生するイオン風の検出の際には、イオン風検知装置200の検知用電極210には、正の電圧が印加される。
また、帯電電源125と帯電電極121とを接続する被覆電線125aの被覆に孔があき、当該孔からイオン風が発生している場合を想定する。この場合も、検知用電極210に正の電圧が印加された状態で当該イオン風の検知が可能である。
また、例えば、図7の(c)に示すように、原料液300を貯蔵するタンク151からイオン風が発生している場合を想定する。
なお、タンク151の本体部分が絶縁性の材料で作製されている場合、当該本体部分からはイオン風は発生しない。しかし、原料液300が導電性の液体であり、かつ、タンク151と案内管114とを接続する接続部152が金属である場合、流出体115および原料液300を介して接続部152に電圧が印加される。その結果、タンク151の接続部152からイオン風が発生する可能性がある。
そこで、タンク151から所定の範囲内に箱体201を配置する。その結果、箱体201における粒状部材208の往復動によって、タンク151の例えば接続部152から発生するイオン風が検知される。
以上のように、本実施の形態のイオン風検知装置200は、高電圧を用いる機器であるナノファイバ製造装置100の様々な箇所で発生し得るイオン風を検知することができる。
なお、図7の(a)〜(c)のそれぞれに示すイオン風の発生箇所は、イオン風が発生し得る箇所の例示である。つまり、ナノファイバ製造装置100の他の部分からイオン風が発生した場合であっても、当該部分から所定の範囲内に箱体201を配置できるのであれば、イオン風検知装置200は、当該部分からのイオン風を検知することは可能である。
また、箱体201は、往復動する1以上の粒状部材208の、箱体201における位置(XY平面(図1参照)における位置)によって、イオン風の発生位置をより詳細に特定することも可能である。
図8は、イオン風検知装置200の箱体201の上面図である。なお、図8では、天面部205の図示は省略している。
例えば、流出体115の下方に箱体201を配置した場合、箱体201内の複数の粒状部材208のうちの、図8に示す領域B1内の1以上の粒状部材208が往復動した場合を想定する。この場合、流出体115の、箱体201の上方に相当する領域のうち、領域B1の直上の領域にイオン風の発生位置が存在すると判断される。
また、同様に、図8に示す領域B2内の1以上の粒状部材208が往復動した場合は、流出体115の、箱体201の上方に相当する領域のうち、領域B2の直上の領域にイオン風の発生位置が存在すると判断される。
さらに、図8に示す領域B1およびB2それぞれの領域内の1以上の粒状部材208が往復動した場合は、流出体115の、箱体201の上方に相当する領域のうち、領域B1およびB2それぞれの直上の領域にイオン風の発生位置が存在すると判断される。
このように、イオン風検知装置200を用いることで、箱体201における、往復動を行う粒状部材208の位置に応じて、イオン風の発生位置を特定することが可能となる。
次に、実施の形態におけるナノファイバ製造システム10におけるナノファイバ301の製造方法を以下にまとめる。当該製造方法は少なくとも以下の各工程を含んでいる。
原料液300から繊維が製造される繊維製造空間中に原料液300を流出体115から流出させる(流出工程)。
流出体115と所定の間隔を隔てて配置される帯電電極121と、流出体115との間に所定の電圧を第一電源(帯電電源122および帯電電源125の少なくとも一方)により印加する(電圧印加工程)。
イオン風検知装置200の箱体201の内方に配置された粒状部材208であって、第二電源(検知用電源220)により帯電させた粒状部材208の往復動によって、ナノファイバ製造装置100から発生するイオン風を検知する(イオン風検知工程)。
また、本実施の形態におけるナノファイバ301の製造方法は、上記各工程に加えて、流出体115が配置される側と反対側に配置される誘引部104によって、繊維を基材128に電気的に誘引する誘引工程を含んでいる。
また、上記のイオン風検知工程では、流出体115、誘引部104、被覆電線122aおよび125a、および、タンク151等の、ナノファイバ製造装置100の構成要素のそれぞれから発生するイオン風の検知が可能である。
また、上記のイオン風検知工程では、往復動する粒状部材208の、箱体201における位置および当該往復動の速さのそれぞれにより、イオン風の発生位置および発生量のそれぞれを特定することが可能である。
以上説明したように、実施の形態におけるナノファイバ製造システム10は、ナノファイバ製造装置100とイオン風検知装置200とを備える。
イオン風検知装置200では、天面部205がイオン風によって正または負に帯電した場合、箱体201の底部の検知用電極210によって負または正に帯電した粒状部材208が、検知用電極210と天面部205との間で往復動する。これにより、ユーザは、イオン風を知覚することができる。
具体的には、本実施の形態では、天面部205は所定の透光性を有しているため、ユーザは、天面部205を介して粒状部材208の往復動を直接的に視認可能である。
つまり、イオン風検知装置200を用いることで、ユーザは、ナノファイバ製造装置100のどこからイオン風が発生しているかを容易に知覚できるため、イオン風の発生を抑制するための補修等を効率よく行うことができる。
さらに、イオン風の発生位置および発生量を特定することが可能であるため、例えば、イオン風の発生を抑制するためのより効果的な対策を講じることが可能となる。
以上、本発明のナノファイバ製造方法について、実施の形態に基づいて説明した。しかしながら、本発明は、当該実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものも、あるいは、上記説明された複数の構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
例えば、本実施の形態では、流出体115には開口部119がそれぞれ複数備えられるとした。しかしながら、流出体115に、開口部119が一つのみ備えられていてもかまわない。
また、本実施の形態では、帯電電極121が、ナノファイバ301を誘引する誘引部104としても機能するとした。しかしながら、この構成に限定されず、誘引部104と帯電電極121とが互いに別の構成要素として設けられていてもよい。例えば、誘引部104は、電界によりナノファイバ301を誘引するものではなく、エア吸引、または送風によりナノファイバ301を誘引するものでもかまわない。
また、イオン風検知装置200は、粒状部材208を複数有する必要はなく、粒状部材208を一つのみ有していてもよい。
また、イオン風検知装置200がイオン風を検出する対象であるナノファイバ製造装置100は、図1に示す構成以外の構成が採用されてもよい。
例えば、高電圧が印加された円筒形状の流出体を回転させることで、当該流出体に貯蔵された原料液300を遠心力によって噴射するロータリー式の装置が、ナノファイバ製造装置100として採用されてもよい。
つまり、ナノファイバ301の製造の手法がどのようなものであっても、高電圧を用いる装置であればイオン風が発生する可能性があるため、イオン風検知装置200によって、イオン風を検知することは有用である。
また、イオン風検知装置200は把持部202を備えていなくてもよい。つまり、イオン風の検知の際に、箱体201をユーザが手で支える必要はない。例えば、箱体201を、流出体115の下方の所定の位置(例えば基材128の上面)に載置した状態で、帯電電源122による流出体115への電圧の印加を開始する。その結果、箱体201内の1以上の粒状部材208が往復動をした場合、流出体115の、当該1以上の粒状部材208の直上の位置に、イオン風の発生位置が存在すると判断できる。
また、イオン風検知装置200の天面部205は、透光性を有していなくてもよい。この場合、例えば、箱体201の少なくとも一部が、箱体201の外方から箱体201の内方の粒状部材208を視認可能な程度の透光性を有していれば、ユーザは、往復動する粒状部材208を視覚でとらえることができる。
また、天面部205および箱体201のいずれもが透光性を有していなくてもよい。この場合、例えば、往復動する粒状部材208が、天面部205および検知用電極220に衝突する音により、ユーザは、少なくとも、往復動する粒状部材208が存在すること、つまり、イオン風が発生していることを聴覚でとらえることができる。
また、イオン風検知装置200は、粒状部材208の往復動を、ユーザに直接的に知覚させなくてもよい。例えば、光学センサまたは音響センサ等によって、箱体201内で往復動している粒状部材208の有無、往復動している粒状部材208の位置、および、粒状部材208の往復動の速度または周期等が計測されてもよい。
つまり、イオン風検知装置200は、ユーザに、センサ等の機器を介してイオン風の有無、発生位置、および発生量等を知覚させてもよい。