JP5838276B1 - リグノセルロース系バイオマスの糖化監視制御装置及び糖化監視制御方法 - Google Patents
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しかしながら、酵素による糖化反応の指標となるグルコース、キシロースの濃度測定は、サンプリングした液を固液分離して液体クロマトグラフや吸光光度計で分析する方法が一般的であり、リアルタイムに近い監視が困難である。
また、特許文献1に開示されている糖化槽の攪拌機のモータ動力の上昇を検知する方法では、糖化不良により未糖化バイオマスが増加した結果として、上昇した攪拌機のモータの負荷を検出するものであるため、瞬時又は数分オーダーでの糖化不良の検知は難しく、また、均一な流動性を確保できない。
(1)リグノセルロース系バイオマスの糖化監視制御装置であって、
ブリックス計と、
糖化槽下部に設置された差圧計と、
糖化槽下部に設置された差圧計よりも糖化槽上部に設置された差圧計と、
糖化槽下部に設置された差圧計と糖化槽下部に設置された差圧計よりも糖化槽上部に設置された差圧計との差圧差計測部と、
前記ブリックス計で計測された糖化液のブリックス濃度及び前記差圧差計測部で計測された糖化槽上下の差圧差を二つの指標として糖化を監視し、以下(A)〜(D)のうち少なくとも1つ以上を制御する制御部を備える制御基板と、
を備えることを特徴とする糖化監視制御装置。
(A)糖化槽撹拌回転数、
(B)発酵液固液分離残渣の糖化槽への供給量、
(C)前処理済バイオマスの糖化槽への供給量、
(D)糖化槽から発酵槽への送液量。
(2)前記制御基板において、前記二つの指標の正常範囲及び異常範囲の値を設定する(1)に記載の糖化監視制御装置。
(3)前記制御基板において、
前記二つの指標の値がそれぞれ正常である、又は異常であることを検知する正常/異常検知部と、
前記検知部で少なくともどちらか一方の値が異常であると検知された場合、異常内容が糖化槽内固形分の過多又は前処理不十分による糖化不調、或いは、流動不良のいずれであるかを判断する異常内容判断部と、
前記検知部及び前記異常内容判断部の少なくともどちらか一方の結果によって異なる制御を行う前記制御部と、
を備える(2)に記載の糖化監視制御装置。
(4)糖化に用いたリグノセルロース系バイオマスの濃度がX質量%であるとき、前記糖化液のブリックス濃度の正常範囲がBrix>Y%であって、前記Xおよび前記Yは式[1]で表される関係である(2)又は(3)に記載の糖化監視制御装置。
(5)リグノセルロース系バイオマスの糖化監視制御方法であって、
糖化液のブリックス濃度及び糖化槽下部に設置された差圧計と糖化槽下部に設置された差圧計よりも糖化槽上部に設置された差圧計との差圧差を二つの指標として糖化を監視し、以下(A)〜(D)のうち少なくとも1つ以上を制御することを特徴とする糖化監視制御方法。
(A)糖化槽撹拌回転数、
(B)発酵液固液分離残渣の糖化槽への供給量、
(C)前処理済バイオマスの糖化槽への供給量、
(D)糖化槽から発酵槽への送液量。
(6)前記二つの指標の正常範囲及び異常範囲の値を設定する工程を有する(5)に記載の糖化監視制御方法。
(7)前記二つの指標の値がそれぞれ正常である、又は異常であることを検知する工程と、
前記検知する工程で少なくともどちらか一方の値が異常であると検知された場合、異常内容が糖化槽内固形分の過多又は前処理不十分による糖化不調、或いは、流動不良のいずれであるかを判断する工程と、
前記検知する工程及び前記判断する工程の結果によって異なる制御を行う工程と、
を有する(6)に記載の糖化監視制御方法。
(8)糖化に用いたリグノセルロース系バイオマスの濃度がX質量%であるとき、前記糖化液のブリックス濃度の正常範囲がBrix>Y%であって、前記Xおよび前記Yは式[1]で表される関係である(6)又は(7)に記載の糖化監視制御方法。
<第一実施形態>
本実施形態の糖化監視制御装置10は、図1に示すように、糖化槽1、前処理済バイオマス供給機2、発酵液の固液分離機3、及び発酵槽9が配管を介して配設されている。
本発明において、「前処理済バイオマス」とは、希硫酸による加熱加水分解処理を行い、リグノセルロース系バイオマスに含まれるリグニンを除去または軟化させ、セルロースやヘミセルロースを取り出しやすくした状態のものを示す。また、発酵液の固液分離機とは、発酵工程後に生成したエタノールと、セルロースやヘミセルロースを含む未発酵の固形残渣とを分離する機械を示す。
本発明において、「酵素」とは、リグノセルロース系バイオマスを単糖単位に分解する酵素を意味し、リグノセルロース系バイオマスを単糖にまで分解するものであればよく、セルラーゼ及びヘミセルラーゼの各活性を持つものであればよい。
同じくヘミセルラーゼは、ヘミセルロースをキシロース等の単糖に分解するものであればよく、キシラナーゼ、キシロシダーゼ、マンナナーゼ、ペクチナーゼ、ガラクトシダーゼ、グルクロニダーゼ及びアラビノフラノシダーゼの各活性の少なくとも1つの活性を有するものを挙げることができ、これらの各活性を有する酵素混合物であることが、酵素活性の観点から好ましい。
これらセルラーゼ及びヘミセルラーゼの起源は限定されることはなく、糸状菌、担子菌、細菌類等のセルラーゼ及びヘミセルラーゼを用いることができる。
本発明の糖化監視制御装置10で用いるブリックス計は、屈折率を利用して液体中に溶解している固形分を計測するものであって、工業的に用いられるものであれば何でもよい。
本発明の糖化監視制御装置10で用いる差圧計は、圧力差を計測するものであって、工業的に用いられるものであれば何でもよい。また、差圧計の圧力計測端子は、糖化槽内の一定の深度差のある地点に設置されている。この深度差の下限値は、深度差が小さいと差圧がとりにくいことから50cm以上が好ましく、80cm以上がより好ましい。一方、上限値は、深度差が大きいと糖化槽内の深度差範囲内での不均一性を検出し難いため2m以下が好ましく、1.5m以下がより好ましい。
さらに、前記糖化槽上部に設置された差圧計及び前記糖化槽下部に設置された差圧計の糖化槽内の位置は、前記糖化槽上部に設置された差圧計が糖化槽の上部にあり、前記糖化槽下部に設置された差圧計が糖化槽の下部にあればどこでもかまわなく、前記糖化槽上部に設置された差圧計の下側にある圧力計測端子が、前記糖化槽下部に設置された差圧計の上側にある圧力計測端子と同じ位置にあってもかまわない。
前記糖化槽上部及び下部に設置された差圧計の差圧差計測部6は、前記糖化槽上部に設置された差圧計で計測された差圧と前記糖化槽下部に設置された差圧計で計測された差圧との差を計測するものである。
前記糖液のブリックス濃度は、前処理済バイオマス中に溶解している固形分の量を表しているが、その成分は主に、糖化工程においてセルロースが糖化して生成されるグルコースおよび前処理工程および糖化工程において生成されるキシロースである。しかしながら、キシロースは希硫酸を使用した前処理工程で生成されるものが大部分であるため、糖化工程においてブリックス濃度の上昇に大きく寄与しているのはグルコースである。
本発明において、「監視・制御」とは、監視のみを実行する場合と、監視および制御を実行する場合とを意味する。これは、本実施形態の糖化監視制御装置は、前記ブリックス計で計測された糖化液のブリックス濃度及び前記差圧差計測部で計測された糖化槽上下の差圧差の監視と、必要に応じて、前記監視に基づいた制御を実行するためである。
本発明において、「正常範囲」とは、糖化槽内において、リグノセルロース系バイオマスの糖化反応が正常に行われている場合のブリックス濃度及び糖化槽上下の差圧差の数値の幅であり、「異常範囲」とは、糖化槽内において、リグノセルロース系バイオマスの糖化反応に何らかの理由により異常がある場合のブリックス濃度及び糖化槽上下の差圧差の数値の幅を意味している。
また、ブリックス濃度の正常範囲および異常範囲は、使用するリグノセルロース系バイオマスの量に比例するため、糖化に用いたリグノセルロース系バイオマスの濃度がX質量%であるとき、前記糖化液のブリックス濃度の正常範囲をBrix>Y%とすると、前記Xおよび前記Yは式[1]で表される関係である。
具体的には、糖化に用いたリグノセルロース系バイオマスの濃度がX=10質量%であるとき、上記式[1]からY=6となり、前記糖化液のブリックス濃度の正常範囲はBrix>6.0%であり、異常範囲はBrix≦6.0%である。また、糖化に用いたリグノセルロース系バイオマスの濃度が10質量%であり、糖化槽上下部に設置された差圧計の深度差がそれぞれ1mであるとき、前記糖化槽上下の差圧差の正常範囲は−0.5kPa≦(槽上下差圧差)≦1.5kPaであり、異常範囲は、−0.5kPa>(槽上下差圧差)及び1.5kPa<(槽上下差圧差)である。なお、前記糖化槽上下の差圧差が−0.5kPa>(槽上下差圧差)である異常範囲のときは、前処理済バイオマスの供給量が過剰に少ない、発酵液固液分離残渣の供給量が過剰に少ない、或いは、差圧計の不良であるなど糖化反応以外の不調が原因であるため、前記糖化槽上下の差圧差が−0.5kPa>(槽上下差圧差)である異常範囲のときの制御は、本発明の糖化監視制御装置の制御の対象外とする。
(A)糖化槽撹拌回転数、
(B)発酵液固液分離残渣の糖化槽への供給量、
(C)前処理済バイオマスの糖化槽への供給量、
(D)糖化槽から発酵槽への送液量。
<第一実施形態>
次に、本発明の糖化監視制御装置10を用いた糖化監視制御方法の一例について説明する。
制御基板7では、糖化液のブリックス濃度及び糖化槽上下の差圧差を二つの指標とし、それぞれ正常範囲及び異常範囲が設定される。そして、糖化槽1内での前記二つの指標の値がそれぞれ正常である、又は異常であることを検知する工程と、前記検知する工程で少なくともどちらか一方の値が異常であると検知された場合、異常内容が糖化槽内固形分の過多又は前処理不十分による糖化不調、或いは、流動不良のいずれであるかを判断する工程と、前記検知する工程及び前記判断する工程のどちらか一方の結果によって異なる制御を行う工程と、が行われる。
前記モータ8bの出力がゼロになり、(B)発酵液固液分離残渣の糖化槽への供給量がゼロになってもブリックス濃度が正常範囲に入らない場合、前処理済バイオマスの前処理不十分が原因であると判断し、(C)前処理済バイオマスの糖化槽への供給量を段階的に減少させるために、前処理済バイオマス供給機2のモータ8cの出力を段階的に低下させる。モータ8cの出力を低下させる時間は、20分〜72時間が好ましい。酵素の流動促進を目的として、10分〜1時間毎に糖化槽1の攪拌機のモータ8aのモータ出力を上昇させて、その後低下させて元の出力に戻す操作を繰り返すことが好ましい。
前記モータ8cの出力がゼロになり、(C)前処理済バイオマスの糖化槽への供給量がゼロになってもブリックス濃度が正常範囲に入らない場合、ポンプ8dを停止することで糖化槽から発酵槽への送液を停止し、そのまま固液の流入・流出のない状態で糖化工程を監視する。
最大攪拌機回転数60Hzのモータ(エレポン加工機製)を設置した深さ1m、容積80Lの撹拌槽に、バイオマス乾燥重量に対して純硫酸として2質量%の希硫酸で前処理を行ったサトウキビバガス(乾燥重量6kg)を投下した。撹拌機回転数を20Hz、45Hzで、それぞれ50℃、48時間糖化工程を行った。得られた糖化液について、撹拌機回転数の大小によるC6糖化率の差異を図6に示した。C6糖化率とは、前処理済バイオマス中のセルロース(グルコース換算)から糖化を経て生成するグルコース量の比率を示す。サンプリングした液に対して高速液体クロマトグラフ(島津製作所製LC−20AD)を使用してグルコース量を計測した。本来、前処理と糖化を経てキシロース(C5糖)も生成するが、その大半は希硫酸を使った前処理で生成するため、糖化性の比較としてはC6糖化率で比較するのがよい。
また、撹拌機回転数の大小による糖化工程後の液深と固形分(Suspended Solids(SS))濃度の分布の差異を図7に示した。液深とは、糖化槽の天面からの深さを示す。液深は、サンプリングの都度メジャーを用いて測定した。固形分(SS)濃度はサンプリング液を0.7μmの濾紙を介して真空濾過して回収した固形分を恒温乾燥器(ADVANTEC社製DRS620DA)を用いて105〜110℃にて絶乾状態になるまで乾燥した後の重量を測定し、元のサンプリング液量で割った値を使用した。
Claims (8)
- リグノセルロース系バイオマスの糖化監視制御装置であって、
ブリックス計と、
糖化槽下部に設置された差圧計と、
糖化槽下部に設置された差圧計よりも糖化槽上部に設置された差圧計と、
糖化槽下部に設置された差圧計と糖化槽下部に設置された差圧計よりも糖化槽上部に設置された差圧計との差圧差計測部と、
前記ブリックス計で計測された糖化液のブリックス濃度及び前記差圧差計測部で計測された糖化槽上下の差圧差を二つの指標として糖化を監視し、以下(A)〜(D)のうち少なくとも1つ以上を制御する制御部を備える制御基板と、
を備えることを特徴とする糖化監視制御装置。
(A)糖化槽撹拌回転数、
(B)発酵液固液分離残渣の糖化槽への供給量、
(C)前処理済バイオマスの糖化槽への供給量、
(D)糖化槽から発酵槽への送液量。 - 前記制御基板において、前記二つの指標の正常範囲及び異常範囲の値を設定する請求項1に記載の糖化監視制御装置。
- 前記制御基板が、
前記二つの指標の値がそれぞれ正常である、又は異常であることを検知する正常/異常検知部と、
前記検知部で少なくともどちらか一方の値が異常であると検知された場合、異常内容が糖化槽内固形分の過多又は前処理不十分による糖化不調、或いは、流動不良のいずれであるかを判断する異常内容判断部と、
前記検知部及び前記異常内容判断部の少なくともどちらか一方の結果によって異なる制御を行う前記制御部と、
を備える請求項2に記載の糖化監視制御装置。 - リグノセルロース系バイオマスの糖化監視制御方法であって、
糖化液のブリックス濃度及び糖化槽下部に設置された差圧計と糖化槽下部に設置された差圧計よりも糖化槽上部に設置された差圧計との差圧差を二つの指標として糖化を監視し、以下(A)〜(D)のうち少なくとも1つ以上を制御することを特徴とする糖化監視制御方法。
(A)糖化槽撹拌回転数、
(B)発酵液固液分離残渣の糖化槽への供給量、
(C)前処理済バイオマスの糖化槽への供給量、
(D)糖化槽から発酵槽への送液量。 - 前記二つの指標の正常範囲及び異常範囲の値を設定する請求項5に記載の糖化監視制御方法。
- 前記二つの指標の値がそれぞれ正常である、又は異常であることを検知する工程と、
前記検知する工程で少なくともどちらか一方の値が異常であると検知された場合、異常内容が糖化槽内固形分の過多又は前処理不十分による糖化不調、或いは、流動不良のいずれであるかを判断する工程と、
前記検知する工程及び前記判断する工程のどちらか一方の結果によって異なる制御を行う工程と、
を有する請求項6に記載の糖化監視制御方法。
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