(構成)
図1に示されている燃料供給装置は、原燃料タンク10と、分離器20と、凝縮器30と、第1燃料タンク40と、キャニスタ50と、制御装置(又はECU(電子制御ユニット))70とを備えている。燃料供給装置は車両に搭載され、同じく車両に搭載されている内燃機関60に対して燃料を供給するように構成されている。
原燃料タンク10には、給油口を通じて供給された通常又は市販のガソリンが原燃料F0として貯蔵される。原燃料タンク10に貯蔵されている原燃料F0は、高圧供給ポンプ(原燃料供給装置)12により指定圧力まで昇圧された後、内燃機関60に対して供給される。
また、原燃料F0は、高圧供給ポンプ12により指定圧力まで昇圧された後、加熱器16において加熱された後、原燃料経路FL0を通じて分離器20に送り込まれる。加熱器16と分離器20の間の原燃料経路FL0に、分離器温度センサ82を備える。分離器温度センサ82により、原燃料経路FL0を流れて分離器に流入する原燃料の温度(以下、分離器20の温度と同視できるため「分離器温度TM」という。)に応じた信号が出力される。
三方バルブ14により、原燃料タンク10及び加熱器16が遮断された場合、原燃料F0は分離器20を経ずに、冷却器(放熱器)26を経て原燃料タンク10に戻される。
また、燃料供給装置は、原燃料タンク10に貯蔵されている原燃料F0の温度(以下、「原燃料温度TF」という。)に応じた信号を出力する原燃料タンク温度センサ83をさらに備える。
加熱器16は、内燃機関60の冷却媒体と原燃料とを熱交換させる熱交換器により構成されている。加熱器16は、これに代えて又は加えて、電気ヒータにより構成されてもよい。
高圧供給ポンプ12の動作が調整されることにより、原燃料F0の送出量VF(原燃料経路FL0における原燃料F0の分離器20に対する供給量VF)が調節される。これに加えて又は代えて、例えば三方バルブ14の開度調整又は開閉によって原燃料F0の分離器20に対する供給量VFが調節されてもよい。
燃料供給装置は、内燃機関60を冷却するための冷却媒体を循環させるための冷却媒体循環経路LLをさらに備えている。冷却媒体循環経路LLには、冷却媒体を冷却媒体循環経路LLに循環させるための高圧供給ポンプ76が設けられている。冷却媒体循環経路LLは、内燃機関60の下流にある加熱器16において、冷却媒体と原燃料経路FL0を流れる原燃料F0とを熱交換させるように構成されている。燃料供給装置は、冷却媒体循環経路LLにおける、内燃機関60の下流かつ加熱器16の上流に、冷却媒体の温度に応じた信号を出力するように構成されている冷却媒体温度センサ81を備える。
また、高圧供給ポンプ76の動作又は開閉機構75(例えば三方バルブ)の開度調整又は開閉により、冷却媒体の流量が調整される。高圧供給ポンプ76及び開閉機構75が本発明の「熱媒体流量調整機構」を構成する。
開閉機構75が「開状態」である場合、冷却媒体は加熱器16及びウオータージャケット92を経由する冷却媒体循環経路LLを循環する。一方、開閉機構75が「閉状態」である場合、冷却媒体は加熱器16及びウオータージャケット92を経由せず、適度に放熱された後、内燃機関60に戻される。
冷却媒体と分離器20とを熱交換させるために、例えば、冷却媒体循環経路LLの一部が分離器20の外側に取り付けられているウオータージャケット92により構成される。
原燃料タンク10に貯蔵されている原燃料F0が蒸発することにより、炭化水素及びエタノールを含有する蒸発燃料Vが生じる。蒸発燃料Vは、原燃料タンク10からキャニスタ50に対して供給される。
分離器20は、原燃料F0を、透過気化法(PV(パーベーパレーション))にしたがって第1燃料F1と第2燃料F2とに分離するように構成されている。分離器20は、原燃料(ガソリン)中の高オクタン価成分を選択的に透過させる分離膜21と、分離膜21により区分されている高圧室22及び低圧室24とを備えている。
第1燃料F1は、原燃料F0よりも高オクタン価成分の含有量が多い高オクタン価燃料であり、例えばエタノール等のアルコールである。第2燃料F2は、原燃料F0よりも高オクタン価成分の含有量が少ない低オクタン価燃料である。
具体的には、分離器20の高圧室22に対して高温かつ高圧状態の原燃料F0が供給される一方、低圧室24が負圧状態に維持されることにより、原燃料F0に含有される高オクタン価成分が分離膜21を透過して低圧室24に浸出する。原燃料F0の高オクタン価成分量が増加すると、当該透過流体のオクタン価は高くなるため、分離膜21の低圧側から高オクタン価成分を多く含み、原燃料F0よりもオクタン価が高い第1燃料F1が回収されうる。
一方、高圧室22を流れる原燃料F0に含有される高オクタン価成分量は下流になる程低下するため、高オクタン価成分含有量の少ない、原燃料F0よりオクタン価の低い第2燃料F2が高圧室22に残る。分離器20から流出した第2燃料F2は、冷却器26において冷却された後、原燃料タンク10に対して供給される。
また、分離膜21の温度、原燃料F0の温度及び供給量、高圧室22の圧力並びに低圧室24の圧力(負圧)等の分離器20の作動条件が制御される。これにより、分離器20による第1燃料F1及び第2燃料F2の分離速度又は回収量等が変化する。
例えば、加熱器16により、分離器20に供給される原燃料F0の温度が制御されることにより、分離膜21の温度が調節される。また、分離器20に供給される原燃料F0の流量が制御されることによっても、分離膜21の温度が調節される。さらに、真空ポンプ36の動作による凝縮器30の減圧によって凝縮器30に連通する低圧室24の圧力が調節されうる。
分離された第2燃料F2は、第2燃料経路を通じて、冷却器26を経由して、原燃料タンク10に戻され、原燃料F0と混合されることにより、新たな原燃料F0を構成する。分離された第2燃料F2(例えば75℃程度)が冷却器26で適度に冷却されることにより、原燃料タンク10に貯蔵されている原燃料F0(例えば50℃程度)が適切に昇温される。
冷却器(放熱器)26は、風量調整可能な冷却ファン90によって、原燃料F0又は分離器20で分離された第2燃料F2が冷却されるように構成されている。なお、冷却器26は、冷却ファン90に加えて又は代えて、水冷式冷却装置により構成されてもよい。
また、冷却ファン90の風量調整によって、冷却器26における第2燃料F2の冷却量が調節される。
なお、燃料供給装置は、さらに原燃料タンク10を冷却するための冷却装置(図示略)を備えてもよい。
なお、原燃料タンク10とは別個の第2燃料タンク(図示略)に対して供給された上で、この第2燃料タンクに貯蔵されてもよい。また、第2燃料タンクに貯蔵されている第2燃料F2が、原燃料F0に代えて内燃機関60に対して供給されてもよい。
凝縮器(負圧タンク)30は、分離器20の低圧室24と第1燃料タンク40とを接続する回収経路の途中に設けられ、第1燃料F1を凝縮させるように構成されている。凝縮器30は、例えば空冷式又は水冷式のタンク又は貯留器により構成されている。
凝縮器30は真空ポンプ(真空吸引装置)36の吸込側に接続されている。真空ポンプ36の動作により凝縮器30の内側が負圧状態に制御され、第1燃料F1の蒸気圧よりも低圧状態とされうる。第1燃料F1の蒸発により生じたエタノール等のアルコールを含有する蒸発燃料Vが、真空ポンプ36の動作により第1燃料タンク40等に供給される。凝縮器30には、その内部の圧力を測定するための圧力センサ(図示略)が設けられている。
分離器20と凝縮器30とを接続する1次回収経路FL1には、当該経路を開閉する第1開閉機構31が設けられている。第1開閉機構31が開かれることにより分離器20の低圧室24と凝縮器30とが連通される一方、第1開閉機構31が閉じられることにより分離器20と凝縮器30とが遮断される。
凝縮器30と第1燃料タンク40とを接続する2次回収経路FL2には、当該経路を開閉する第2開閉機構32が設けられている。第2開閉機構32が開かれることにより凝縮器30と第1燃料タンク40とが連通される一方、第2開閉機構32が閉じられることにより凝縮器30と第1燃料タンク40とが遮断される。
凝縮器30と第1燃料タンク40とが、2次回収経路FL2とは別個の第1蒸発燃料経路VL1により接続されている。第1蒸発燃料経路VL1には第3開閉機構33及び真空ポンプ36が設けられている。第3開閉機構33が開かれ、かつ、真空ポンプ36が動作することにより、蒸発燃料Vが凝縮器30から第1燃料タンク40に貯蔵されている第1燃料F1に導入される。
第1蒸発燃料経路VL1は、真空ポンプ36の上流側から分岐している第2蒸発燃料経路VL2を通じて第1燃料タンク40に対して接続されている。第2蒸発燃料経路VL2には第4開閉機構34が設けられている。第3開閉機構33が開かれている状態で第4開閉機構34が開かれることにより、第1燃料タンク40に充満している蒸発燃料Vが、第2蒸発燃料経路VL2及び第1蒸発燃料経路VL1を通じて凝縮器30に導入される。
第1燃料タンク40には、分離器20により原燃料F0から分離された第1燃料F1が貯蔵される。第1燃料タンク40に貯蔵されている第1燃料F1は、高圧供給ポンプ42により指定圧力まで昇圧された後、内燃機関60に対して供給される。
第1燃料タンク40に貯蔵されている第1燃料F1が蒸発することにより、エタノール等のアルコールを含有する蒸発燃料Vが生じる。第1燃料タンク40とキャニスタ50とが接続され、当該接続経路には第5開閉機構35が設けられている。第5開閉機構35が開かれることにより、蒸発燃料Vは第1燃料タンク40から当該接続経路を通じてキャニスタ50に対して供給される。
第1燃料タンク40には、その内部気圧を測定するための圧力センサ(図示略)が設けられている。開閉機構31〜35のそれぞれは、例えば電磁弁により構成される。真空ポンプ36の作動及び作動停止によって第1蒸発燃料経路VL1が開閉されうるので、第1蒸発燃料経路VL1を開閉するための第3開閉機構33は省略されてもよい。
キャニスタ50には、活性炭等の吸着剤が内蔵されており、原燃料F0由来の蒸発燃料Vに含まれるアルコールのほか、炭化水素が当該吸着剤に吸着される。これにより、蒸発燃料Vは、アルコール及び炭化水素と、窒素等の他の成分とに分離されうる。
分離された窒素等を含有する空気は、キャニスタ50から車両の外部に排出される。一方、内燃機関60が稼動して吸気管61が負圧状態になると、キャニスタ50において吸着剤に吸着されているアルコール及び炭化水素は、スロットルバルブ613の下流側において吸気管61に供給され、さらに燃焼室に導入された上で燃焼する。キャニスタ50に接続されている吐出経路には、当該吐出経路における蒸発燃料Vの流量を調節するための流量調節バルブ52が設けられている。
キャニスタ50は、凝縮器30において発生する第1燃料F1の凝縮熱によって加熱され、その温度が蒸発燃料Vの吸着性能を十分に発揮しうる温度範囲に維持されるように構成されていてもよい。例えば、凝縮器30の冷却媒体によりキャニスタ50が加熱されるように当該媒体の流路が構成されていてもよい。
各経路の途中には、貯留器又は熱交換器等、説明かつ図示されていない機能的な構成要素が設けられていてもよい。
内燃機関60の燃焼室に接続されている吸気管61には、吸気バルブ611と、燃料噴射装置612と、スロットルバルブ613とが設けられている。吸気バルブ611が開かれることにより吸気管61と燃焼室とが連通される一方、吸気バルブ611が閉じられることにより吸気管61と燃焼室とが遮断される。スロットルバルブ613は、内燃機関60の吸入空気量を調整するように構成されている。
燃料噴射装置612は、吸気バルブ611とスロットルバルブ613との間に配置され、原燃料F0及び第1燃料F1のうち一方を選択的に、内燃機関60の各気筒に対して噴射するように構成されている。なお、燃料噴射装置612は、原燃料F0及び第1燃料F1の両方を指定混合比で同時に、内燃機関60の各気筒に対して噴射するように構成されていてもよい。あるいは、燃料噴射装置612は、原燃料F0及び第1燃料F1を別々に噴射するように構成されていてもよい。吸気管61に吸入された空気と、燃料噴射装置612から噴射された燃料との混合ガスが吸気管61から各気筒の燃焼室に導入される。
第2燃料タンクが設けられている場合、燃料噴射装置612は、第1燃料F1及び第2燃料F2のうち一方を選択的に、又は、両方を指定混合比で同時に、内燃機関60の各気筒に対して噴射するように構成されていてもよい。
吸気管61には、スロットルバルブ613の上流側においてターボチャージャー65、ベンチュリガスミキサ651及びパージポンプ652が設けられている。蒸発燃料Vは、キャニスタ50から、パージポンプ652及びターボチャージャー65を経て吸気管61に対して供給されうる。
なお、内燃機関60はターボチャージャー65付きのエンジンではなく、自然吸気エンジンであってもよい。この場合、キャニスタ50から、蒸発燃料Vが、パージコントロールバルブ(図示略)を経て、スロットルバルブ613の下流側において吸気管61に対して供給されてもよい。
さらに、蒸発燃料Vが、ベンチュリガスミキサ651により凝縮器30から吸気管61に対して直接的に供給されてもよい。また、蒸発燃料Vが第1燃料タンク40から内燃機関60の吸気管61に対して直接的に供給されてもよい。
制御装置70は、プログラマブルコンピュータにより構成されている。制御装置70には、冷却媒体温度センサ81が出力する信号、分離器温度センサ82が出力する信号、原燃料タンク温度センサ83が出力する信号等、燃料供給装置のさまざまな状態を検知するための各種センサの出力信号が入力される。制御装置70は、後述する「負圧制御処理」「第1の分離システム制御処理」「第2の分離システム制御処理」「第3の分離システム制御処理」を実行するようにプログラムされている。制御装置70は、内燃機関60の燃料噴射制御及び点火時期制御等のほか、分離器20の作動条件の調節、内燃機関60に対して供給される燃料の調節、各ポンプの動作制御及び各バルブ又は各開閉機構の開閉又は開度調節等のために必要な演算処理を実行するようにプログラムされている。
「プログラムされている」とは、コンピュータの構成要素であるCPU等の演算処理装置が、ROM若しくはRAM等のメモリ又は記録媒体から必要な情報に加えてソフトウェアを読み出し、当該情報に対して当該ソフトウェアにしたがって演算処理を実行するように構成されていることを意味する。
なお、制御装置70が本願発明の「制御機構」を構成する。
(負圧制御処理)
前記構成の燃料供給装置の機能について説明する。具体的には、制御装置70により、次に説明する手順にしたがって「負圧制御処理」が繰り返し実行される。以下、第5開閉機構35が閉状態であることを前提として説明する。
3次状態において真空ポンプ36が動作することにより凝縮器30が減圧され、その内部気圧Pが徐々に低下する(図4/t=t00以前参照)。「3次状態」とは、1次回収経路FL1、2次回収経路FL2及び第2蒸発燃料経路VL2が閉じられ、かつ、真空ポンプ36の動作により凝縮器30が減圧されている状態を意味する(図3(c)参照)。この際、第3開閉機構33により第1蒸発燃料経路VL1が開かれている。
この状態で、凝縮器30の内部気圧Pが第1負圧P1以下に到達したか否かが判定される(図2/STEP002)。「負圧」は大気圧又は常圧を基準として負値として定義される。すなわち、大気圧よりも低圧であるほどその絶対値は大きくなる。
当該判定結果が肯定的である場合(図2/STEP002‥YES(図4/t=t00参照))、第1開閉機構31が閉状態から開状態に切り替えられ、第3開閉機構33が開状態から閉状態に切り替えられ、かつ、真空ポンプ36の動作が停止される(図2/STEP004)。
これにより、図3(a)に示されているように、1次回収経路FL1が開かれている一方、2次回収経路FL2及び第2蒸発燃料経路VL2が閉じられ、かつ、真空ポンプ36の動作による凝縮器30の減圧が停止されている「1次状態」が実現される。
3次状態から1次状態への遷移要件が、凝縮器30の内部気圧Pではなく、2次又は4次状態から3次状態への遷移が実現された時点からの経過時間に応じて定義されていてもよい。例えば、当該経過時間が指定時間以上になったことを要件として、3次状態から1次状態への遷移が実現されてもよい。
1次状態において、分離器20によって第1燃料F1及び第2燃料F2の分離が開始され、第1燃料F1が分離器20から1次回収経路FL1を通じて凝縮器30に対して供給される。第1燃料F1の少なくとも一部は、負圧かつ冷却状態にある凝縮器30において凝縮(気相から液相に相転移)した上で貯留される。また、凝縮器30において蒸発燃料Vが増加し、凝縮器30の内部気圧Pが上昇する(図4/t=t00以後参照)。
凝縮器30の内部気圧Pが第1負圧P1よりも高い第2負圧P2以上に到達したか否かが判定される(図2/STEP006)。前記のように「負圧」は大気圧を基準として負値として定義されるので、第2負圧P2の絶対値は第1負圧P1の絶対値よりも小さい。
当該判定結果が肯定的である場合(図2/STEP006‥YES(図4/t=t01参照))、第1開閉機構31が開状態から閉状態に切り替えられる一方、第2開閉機構32が閉状態から開状態に切り替えられる(図2/STEP008)。これにより、図3(b)に示されているように、1次回収経路FL1及び第2蒸発燃料経路VL2が閉じられている一方、2次回収経路FL2が開かれ、かつ、真空ポンプ36の動作による凝縮器30の減圧が停止されている「2次状態」が実現される。
1次状態から2次状態への遷移要件が、凝縮器30の内部気圧Pではなく、3状態から1次状態への遷移が実現された時点からの経過時間に応じて定義されていてもよい。例えば、当該経過時間が指定時間以上になったことを要件として、1次状態から2次状態への遷移が実現されてもよい。
第1負圧P1及び第2負圧P2のそれぞれの値は予めさまざまな値に変更されていてもよく、燃料供給装置又はこれが搭載されている車両の走行状態(加速度要求など)に応じて、制御装置70によって変更されてもよい。例えば、原燃料タンク10に貯蔵されている原燃料F0の第1燃料F1の濃度又は含有量が測定され、当該測定値が高いほど、第2負圧P2が高く設定されてもよい。
第1開閉機構31により1次回収経路FL1が閉じられ、分離器20の低圧室24及び凝縮器30が遮断されることにより、分離器20による原燃料F0からの第1燃料F1及び第2燃料F2の分離が停止される。第2開閉機構32により2次回収経路FL2が開かれることにより、凝縮器30に貯留されている液相状態の第1燃料F1が2次回収経路FL2を通じて第1燃料タンク40に対して供給される(図3(b)下矢印参照)。
2次状態が実現されてから、第1指定時間Δt01(例えば10[s])が経過したか否かが判定される(図2/STEP010)。
当該判定結果が肯定的である場合(図2/STEP010‥YES(図4/t=t01+Δt01参照))、第2開閉機構32が開状態から閉状態に切り替えられる一方、第3開閉機構33が閉状態から開状態に切り替えられ、かつ、真空ポンプ36の動作が開始される(図2/STEP012)。これにより、図3(c)に示されている前記3次状態が実現される。
3次状態において、蒸発燃料V(気体)が凝縮器30から第1蒸発燃料経路VL1を通じて第1燃料タンク40に対して供給される(図3(c)下矢印参照)。蒸発燃料Vは、第1燃料タンク40において第1燃料F1のバブリングを引き起こし、気泡中の蒸発燃料Vのうち少なくとも一部が液相状態の第1燃料F1に取り込まれうる。第1燃料タンク40において第1燃料F1は二相状態(気相−液相)にあり、凝縮器30から蒸発燃料Vが供給されることにより第1燃料タンク40が昇圧される。
なお、蒸発燃料Vは凝縮器30から、第1燃料タンク40において同じく蒸発燃料Vが充満している空間に対して供給されてもよい。
真空ポンプ36の動作により凝縮器30の内部気圧Pが低下する(図4/t=t01+Δt01以後参照)。ここで、凝縮器30の内部気圧Pが、第1負圧P1よりも高い一方、第2負圧P2よりも低い第3負圧P3以下に到達したか否かが判定される(図2/STEP014)。
当該判定結果が肯定的である場合(図2/STEP014‥YES(図4/t=t02参照))、第4開閉機構34が閉状態から開状態に切り替えられる(図2/STEP016)。これにより、図3(d)に示されているように、1次回収経路FL1及び2次回収経路FL2が閉じられている一方、第2蒸発燃料経路VL2が開かれ、かつ、真空ポンプ36の動作により凝縮器が減圧されている「4次状態」が実現される。
なお、凝縮器30の内部気圧Pが、第1負圧P1よりも高い一方、第2負圧P2よりも低い第3負圧P3以下に到達したことに代えて、内部気圧Pの低下速度|dP/dt|が所定速度以下になったことを要件として3次状態から4次状態への遷移が実現されてもよい。
4次状態において、第1燃料タンク40から第2蒸発燃料経路VL2を通じて凝縮器30に対して蒸発燃料Vが供給されるので(図3(d)上矢印参照)、凝縮器30の内部気圧Pが上昇する(図4/t=t02以後参照)。
4次状態の実現後、第2指定時間Δt02(例えば10[s]。第1指定時間Δt01と同一であってもよく、異なっていてもよい。)が経過したか否かが判定される(図2/STEP018)。
当該判定結果が肯定的である場合(図2/STEP018‥YES(図4/t=t02+Δt02参照))、第4開閉機構34が開状態から閉状態に切り替えられる(図2/STEP020)。これにより、再び3次状態が実現され、凝縮器30の内部気圧Pが上昇から低下に転じる(図4/t=t02+Δt02以後参照)。
以降、上述の一連の処理が繰り返される(図2/STEP002〜020参照)。
また、制御装置70により、負圧制御処理の実行中に、第1燃料タンク40の開放条件が満たされているか否かが判定される。「開放条件」としては、第1燃料タンク40の測定圧力が閾値以上になったという条件、若しくは、閾値を超える車両の加速要求があったという条件又はこれらの組み合わせ条件が採用されうる。
そして、開放条件が満たされていると判定された場合、第5開閉機構35が閉状態から開状態に切り替えられ、第1燃料タンク40とキャニスタ50とを結ぶ経路が開かれている「5次状態」が実現される。この際、例えば、第1開閉機構31、第2開閉機構32、第3開閉機構33及び第4開閉機構34は閉状態になるように制御される。5次状態において、蒸発燃料Vが第1燃料タンク40から放出されてキャニスタ50に吸着され、必要に応じて吸気管61を通じて内燃機関60に対して供給される。蒸発燃料Vは内燃機関60に対して直接的に供給されてもよい。これにより、蒸発燃料Vの利用効率の向上が図られる。
「負圧制御処理」によれば、分離器20で分離された第1燃料F1は、気相状態で(蒸発燃料の形で)分離器20から1次回収経路FL1を通じて凝縮器30に供給され、凝縮器30において少なくとも一部が凝縮されることにより液相状態となって貯留される。
続いて、2次状態(1次回収経路FL1‥閉、第2蒸発燃料経路VL2‥閉、2次回収経路FL2‥開、凝縮器30‥減圧停止)において、液相状態の第1燃料F1が凝縮器30から2次回収経路FL2を通じて第1燃料タンク40に対して供給される(図2/STEP008、図3(b)参照)。
さらに、3次状態(1次回収経路FL1‥閉、2次回収経路FL2‥閉、第2蒸発燃料経路VL2‥閉、凝縮器30‥減圧)において、真空ポンプ36が動作する。これにより、蒸発燃料Vが凝縮器30から第1蒸発燃料経路VL1を通じて第1燃料タンク40に対して供給される(図2/STEP012、図3(c)参照)。
この際、凝縮器30の内部気圧Pが低下する(図4/t=t01+Δt01〜t02参照)。蒸発燃料Vの少なくとも一部は気相から液相に相転移し、第1燃料F1として第1燃料タンク40に貯蔵されうる。このように、凝縮器30の減圧に際して蒸発燃料Vが回収及び利用不可能な形で車両外部等に排出されることが防止されるので、蒸発燃料Vの利用率の向上が図られる。
なお、上記「負圧制御処理」を採用せず、蒸発燃料Vが車両外部へ排出されるように構成してもよい。
(第1分離システム制御処理)
制御装置70は、以下の「第1分離システム制御処理」を繰り返し実行するように構成されている。
「第1分離システム制御処理」が開始されると、制御装置70は、冷却媒体温度センサ81を介して冷却媒体温度TCを測定する(図5/STEP110)。また、制御装置70は、分離器温度センサ82を介して分離器温度TMを測定する(図5/STEP112)。
そして、制御装置70は、測定した冷却媒体温度TCが所定の供給開始温度TC0以上か否かを判定する(図5/STEP120)。なお、原燃料F0を昇温する観点から適切な温度(例えば、原燃料温度TFよりも高温な温度)が当該供給開始温度TC0として設定される。
STEP120の判定結果が否定的である場合(図5/STEP120‥NO)、制御装置70は、開閉機構75を「閉状態」に制御し、かつ、高圧供給ポンプ12を「停止状態」に維持する。これらにより、冷却媒体の冷却媒体循環経路LLへの循環の遮断、及び原燃料F0の原燃料経路FL0への送出が停止される(図5/STEP124)。この場合、冷却媒体は前述のとおり、適度に放熱された後、内燃機関60に戻されるが、内燃機関60との熱交換が進むため、冷却媒体温度TCは上昇する(図6、時間t0まで参照)。換言すれば、冷却媒体温度TCが原燃料F0の昇温の観点から好適な温度範囲から外れている蓋然性が高い場合、高圧供給ポンプ12の動作が停止される。
STEP120の判定結果が肯定的である場合(図5/STEP120‥YES)、制御装置70は、開閉機構75を「開状態」に制御し、かつ、高圧供給ポンプ12を「動作状態」に制御する。これらにより、冷却媒体の冷却媒体循環経路LLの循環、及び原燃料F0の原燃料経路FL0への送出がなされる(図5/STEP122)。この場合、冷却媒体と原燃料F0とが熱交換することにより、分離器温度TMが上昇すると共に、熱交換後の原燃料F0が原燃料タンク10に戻されることにより、原燃料温度TFが上昇する(図6、時間t0以降参照)。
そして、制御装置70は、燃料分離開始条件が充足されているか否かを判定する。具体的には、制御装置70は、測定した分離器温度TMが所定の第1温度TM1(第1温度範囲の下限温度、ただし、TM1>TC0)以上か否かを判定する(図5/STEP130)。なお、当該第1温度TM1には、燃料分離速度が一定以上となるような分離器の温度環境(燃料分離の観点から好適な温度範囲の環境)を整える観点から適切な温度が設定される。
STEP130の判定結果が否定的である場合(図5/STEP130‥NO)、制御装置70は、「負圧制御処理」が実行されない(図5/STEP134)。換言すれば、燃料分離速度が比較的小さい場合、「負圧制御処理」が実行されない(図6、時間t0〜t2参照)。
STEP130の判定結果が肯定的である場合(図5/STEP130‥YES)、制御装置70は、「負圧制御処理」を実行する(図5/STEP132)。換言すれば、燃料分離速度が比較的大きい場合、燃料分離処理(負圧制御処理)が実行される(図6、時間t2以降参照)。
STEP124,132,134のいずれかの処理の後、制御装置70は、「第1分離システム制御処理」の今回周期を終了し、次回周期を開始する。
(第1分離システム制御処理の効果)
「第1分離システム制御処理」によれば、冷却媒体温度TCに応じて冷却媒体の循環及び原燃料の送出が制御されることにより(図5/STEP120〜124)、冷却媒体温度TCが低い場合(図6、t0まで参照)に開閉機構75が「閉状態」に制御され、かつ、高圧供給ポンプ12が「停止状態」に制御されるから、これらの機器の動作により消費されるエネルギー節約の観点からの燃料分離処理の効率化が図られる。また、分離器温度TMに応じて燃料分離処理の実行可否が制御されることにより(図5/STEP130〜134)、燃料分離速度が比較的低い場合(図6、t2まで参照)に、負圧ポンプ36等の動作が停止されるから、当該負圧ポンプ36等に消費されるエネルギー節約の観点から燃料分離処理の効率化が図られる。
(第1分離システム制御処理の変形態様)
STEP120において、冷却媒体温度TCが所定の温度以上か否かが判定され、その結果に応じてSTEP122又は124で開閉機構75の開閉及び高圧供給ポンプ12の作動の有無が制御されたが、これに代えて又は加えて、冷却媒体温度TCが高温であるほど、開閉機構75の開度が大きくなるように及び高圧供給ポンプ12による原燃料F0の供給量が多くなるように制御されてもよい。
STEP122において、高圧供給ポンプ12の動作が制御されることにより原燃料F0の送出量が制御されたが、これに代えて又は加えて、三方バルブ14の動作が制御されることにより分離器20への原燃料F0の供給量が制御されてもよい。
STEP122において、開閉機構75の開度が制御されることにより冷却媒体の供給量が制御されたが、これに代えて又は加えて、高圧供給ポンプ76の動作が制御されることにより冷却媒体の供給量が制御されてもよい。
STEP130において、燃料分離開始条件が充足されているか否かの判定として、分離器温度TMが所定の温度(第1温度TM1)以上か否かが判定されたが、これに代えて又は加えて、冷却媒体温度TCが所定の温度以上か否かに応じて燃料分離開始条件が充足されているか否かが判定されてもよい。当該所定の温度は、分離器20の温度を好適な温度範囲に制御する観点又は原燃料F0の温度を第1温度TM1以上にする観点から定められる温度であり、本発明の「第2温度範囲の下限温度」に相当する。
なお、分離器温度TMが第1温度TM1よりも高温であり、冷却媒体温度TCが前記所定の温度に達しない場合であっても、内燃機関60の運転中、冷却媒体温度TCはすぐに昇温される。そのため、冷却媒体温度TCが不十分な状態であっても、消費されるエネルギー節約の観点から十分に効率的な燃料分離処理ができる。
また、冷却媒体温度TCが前記所定の温度よりも高温である一方、分離器温度TMが第1温度TM1に達しない場合、冷却媒体温度TCが前記観点から定められている温度以上であることから、「負圧制御処理」開始後まもなく分離器温度TMが第1温度TM1以上となる蓋然性が高い。そのため、分離器温度TMが不十分な状態であっても、消費されるエネルギー節約の観点から十分に効率的な燃料分離処理ができる。
STEP130において、燃料分離開始条件が充足されているか否かの判定として、分離器温度TMが第1温度TM1以上か否かが判定されたが、これに代えて又は加えて、燃料分離速度が一定以上となるような分離器の温度環境(好適な温度範囲の環境)を整える観点から定められる所定温度以下か否かに応じて燃料分離開始条件が充足されているか否かが判定されてもよい。当該所定温度は、本発明の「第1温度範囲」の上限を設けた場合の上限温度に相当する。第2温度範囲の上限温度も同様の観点から定めることができる。また、これらに加えて、第1燃料タンク40に格納される第1燃料F1が所定の量以下であるか否か、内燃機関の始動後の時間が所定時間を過ぎたか否か、及び原燃料F0の供給開始からの時間が所定時間を過ぎたか否かのうち少なくとも1つに応じて燃料分離開始条件が充足されているか否か判定されてもよい。
STEP130において、分離器温度TMが所定の温度(第1温度TM1)以上である場合に負圧制御処理が開始されたが、これに代えて又は加えて、分離器温度TMが高温になるほど、分離処理を促進するように、例えば、「負圧制御処理」における第1負圧P1が低くなるように制御されてもよい。
また、STEP120及び124の処理が省略されてもよい。
(第2分離システム制御処理)
制御装置70は、「第1分離システム制御処理」に代えて以下の「第2分離システム制御処理」を繰り返し実行するように構成されてもよい。
「第2分離システム制御処理」が開始されると、制御装置70は、冷却媒体温度センサ81を介して冷却媒体温度TCを測定する(図7/STEP210)。また、制御装置70は、分離器温度センサ82を介して分離器温度TMを測定する(図7/STEP212)。そして、制御装置70は、原燃料タンク温度センサ83を介して原燃料温度TFを測定する(図7/STEP214)。
制御装置70は、測定した冷却媒体温度TCが所定の供給開始温度TC0以上か否かを判定する(図7/STEP220)。
STEP220の判定結果が否定的である場合(図7/STEP220‥NO)、制御装置70は、開閉機構75を「閉状態」に制御し、かつ、高圧供給ポンプ12を「停止状態」に制御する。これらにより、冷却媒体の冷却媒体循環経路LLへの循環の遮断、及び原燃料経路FL0への原燃料F0の送出の停止がなされる(図7/STEP224)。当該処理により、「第1分離システム制御処理」で述べたように、冷却媒体が昇温される(図8、時間t0まで参照)。
STEP220の判定結果が肯定的である場合(図7/STEP220‥YES)、制御装置70は、開閉機構75を「開状態」に制御し、かつ、高圧供給ポンプ12を「動作状態」に制御する。これらにより、冷却媒体の冷却媒体循環経路LLへの循環、及び原燃料F0の原燃料経路FL0への送出がなされる(図7/STEP222)。
そして、制御装置70は、供給制限条件が充足されているか否かを判定する。具体的には、制御装置70は、原燃料温度TFが所定の供給制限温度TF0以上か否かを判定する(図7/STEP230)。ここで、供給制限温度TF0は、第1温度TM1よりも低温な温度であり、消費エネルギー節約の観点から燃料分離が効率に行われるのに十分な温度以上、原燃料F0の変質又は蒸発を防ぐ観点から十分な温度以下に設定される。また、当該判定に代えて又は加えて、原燃料F0の供給開始からの時間が所定時間を過ぎたか否かに応じて供給制限条件が充足されているか否かが判定されてもよい。
STEP230の判定結果が否定的である場合(図7/STEP230‥NO)、制御装置70は、高圧供給ポンプ12の動作を制御することにより、原燃料F0の送出量(燃料流量)VFを所定の送出量βに設定する(図7/STEP234)。送出量βは、原燃料F0が加熱器16から受ける熱量を最大にする観点から適切な量(例えば送出の最大量)に設定される。当該処理により、原燃料F0と冷却媒体とが熱交換させられるから、原燃料温度TFが上昇する(図8、t0〜t1参照)。
STEP230の判定結果が肯定的である場合(図7/STEP230‥YES)、制御装置70は、高圧供給ポンプ12の動作を制御することにより、原燃料F0の送出量(燃料流量)VFを所定の送出量α(ただし、α<β)に設定する(図7/STEP232)。送出量αは、原燃料F0の加熱器16における昇温幅を拡大させることにより分離速度を上げる観点から適切な量(例えば送出の最大量の半分)に設定される。当該処理により、原燃料F0の昇温幅が拡大されるから、分離器温度TMが上昇する(図8、t1〜t2+参照)。
さらに、制御装置70は、燃料分離開始条件が充足されているか否かを判定する。具体的には、制御装置70は、測定した分離器温度TMが所定の第1温度TM1以上か否かを判定する(図7/STEP240)。なお、消費エネルギー節約の観点から燃料分離が効率的に行われるのに十分な温度が当該第1温度TM1として定められる。
STEP240の判定結果が肯定的である場合(図7/STEP240‥YES)、制御装置70は、「負圧制御処理」を実行する(図7/STEP242)。
STEP240の判定結果が否定的である場合(図7/STEP240‥NO)、制御装置70は、「負圧制御処理」を停止する(図7/STEP244)。
STEP224,242,244のいずれかの処理の後、制御装置70は、「第2分離システム制御処理」の今回周期を終了し、次回周期を開始する。
(第2分離システム制御処理の作用・効果)
内燃機関60の始動直後のように、原燃料F0の循環経路(原燃料タンク10→加熱器16→分離器20→冷却器26→原燃料タンク10)の全体における当該原燃料F0の温度が、分離器20の迅速な温度制御又は昇温の観点から不適当な蓋然性が高い状態となることがある。このような状態では、当該循環経路の分離器20上流側において原燃料F0の局所的な昇温が図られても、図9(a)に示すように、原燃料タンクに格納されている原燃料F0の温度TFが所定の温度TF0に達する時期が遅れる。このため、かえって分離器20の分離開始条件が充足される時期が遅延する可能性がある。
しかるに、本実施形態によれば、供給制限条件が充足されていない場合には(図7/STEP230‥NO)、原燃料F0の分離器20への供給量VFが比較的多く、すなわちβになるように高圧供給ポンプ12の動作が調節される(図7/STEP234)。これにより、熱媒体(冷却媒体)と原燃料F0との間で比較的多くの熱量が交換される。このため、図9(a)に示すように、原燃料タンク10の原燃料F0の温度TFが、早期に分離器20の迅速な温度制御又は昇温の観点から適当な温度である供給制限温度TF0に制御される。
ここで、原燃料温度TFは、原燃料F0の循環経路の全体における当該原燃料F0の大部分が格納されている原燃料タンク10内の原燃料F0の温度である。このため、原燃料温度TFは、原燃料F0の循環経路の全体における当該原燃料F0の温度と同等視され得る。
一方、供給制限条件が充足されている場合には(図7/STEP230‥YES)、分離器20への原燃料F0の供給量VFが比較的少なく、すなわちα(α<β)となるように調節される(図7/STEP232)。これにより、分離器20に供給される原燃料F0が熱媒体(冷却媒体)から受け取る単位流量当たりの熱量が増加する。このため、図8/t1〜t2+に示すように、原燃料F0の循環経路の分離器20上流側において原燃料F0の局所的な昇温が図られる。
より具体的には、図9(a)に示すように、原燃料温度TFが同じ温度TF0の場合、送出量αの分離器温度TMαは、送出量βの分離器温度TMβよりも高くなる。この結果、図9(b)に示すように、送出量αでの分離器温度TMαである場合の分離速度はMα[kg/h]となり、送出量βでの分離器温度TMβである場合の分離速度Mβ[kg/h]よりも高くなる。
このように、当該循環経路の分離器20上流側における原燃料F0の局所的な温度TMが、分離器20への原燃料F0の供給量VFを減少させなかった場合よりも早期に各機器のエネルギーに対する燃料分離の効率の観点から適当な温度TM1に制御される。
以上のとおり、原燃料タンク10内の原燃料F0を加熱するためまたは当該循環経路の分離器20上流側において、局所的に原燃料F0を加熱するための別個の専用の加熱装置の動作等に消費される追加的なエネルギーを要することなく燃料分離処理の早期開始が図られうる。このため、各機器の消費エネルギーの観点から燃料分離の効率化が図られる。
(第2分離システム制御処理の変形態様)
STEP220において、冷却媒体温度TCが所定の温度(供給開始温度TC0)以上か否かが判定され、その結果に応じてSTEP222又は224で開閉機構75の開閉及び高圧供給ポンプ12の作動の有無が制御されたが、これに代えて又は加えて、冷却媒体温度TCが高温であるほど、開閉機構75の開度が大きくなるように及び高圧供給ポンプ12の作動が強くなるように制御されてもよい。
STEP222において、高圧供給ポンプ12の動作が制御されることにより原燃料F0の送出量VFが制御されたが、これに代えて又は加えて、三方バルブ14の動作が制御されることにより分離器20への原燃料F0の供給量が制御されてもよい。
STEP230において、原燃料温度TFが所定の温度(供給制限温度TF0)以上か否かの結果に応じてSTEP232又は234で原燃料F0の送出量VFが所定の値α又はβに制御されたが、これに代えて又は加えて、原燃料温度TFに応じた適切な原燃料F0の送出量VFが制御されてもよい。この場合、原燃料温度TFに応じた適切な原燃料F0の送出量VFは、分離器20における単位時間当たりの又は燃料分離開始条件が充足された後の所定期間おける分離される第1燃料F1の量が最大となる観点から定められる。例えば、当該原燃料F0の送出量VFは、原燃料温度TFに基づいて分離される第1燃料F1の量が最大となる送出量を求める方程式により、求められてもよい。または、当該原燃料F0の送出量VFは、原燃料温度TFと分離される第1燃料F1の量が最大となる送出量との対応関係を記憶したデータベースを参照することにより定められてもよい。当該所定の方程式及び当該対応関係は、あらかじめ実験等により定められる。
なお、「単位時間」とは、分離される第1燃料F1の量の大小を有効に測定するために必要な時間をいう。当該単位時間は、例えば1秒、30秒、1分、5分、10分、1時間等の時間でもよい。
また、「燃料分離開始条件が充足された後の所定期間」とは、原燃料F0の送出量VFの調整が必要が無くなるまでの期間をいう。当該所定期間は、例えば30分、1時間、5時間、10時間等の時間によってあらわされる期間でもよい。また、当該所定期間は、原燃料タンク10に格納されている原燃料F0の温度、冷却媒体循環経路を流れる冷却媒体の温度TC及び冷却媒体循環経路LLを流れる冷却媒体の流量に関する所定の条件が満たされることにより終了するような期間であってもよい。
STEP240において、燃料分離開始条件が充足されているか否かの判定として、分離器温度TMが所定の温度(第1温度TM1)以上か否かが判定されたが、これに代えて又は加えて、冷却媒体温度TCが所定の温度以上か否かに応じて燃料分離開始条件が充足されているか否かが判定されてもよい。また、これらに加えて、第1燃料タンク40に格納される第1燃料F1が所定の量以下であるか否か及び内燃機関の始動後の時間が所定時間を過ぎたか否かのうち少なくとも1つに応じて燃料分離開始条件が充足されているか否かが判定されてもよい。
STEP240において、分離器温度TMが所定の温度(第1温度TM1)以上である場合に負圧制御処理が開始されたが、これに代えて又は加えて、分離器温度TMが高温になるほど、分離処理を促進するように、例えば、「負圧制御処理」における第1負圧P1が低くなるように制御されてもよい。
また、STEP220及び224の処理が省略されてもよい。
(第3分離システム制御処理)
第2分離システム制御処理に代えて、分離器温度TMが所定の温度(第1温度TM1)以上となったときに原燃料F0の送出量VFを原燃料温度TFに応じて変更する第3分離システム制御処理が実行されてもよい。以下、第2分離システム制御処理と同一の処理については、同じ符号を付して説明を省略する。
図10に示すように、第3分離システム制御処理では、STEP210〜STEP242(又はSTEP244)までは、第2分離システム制御処理と同一の処理が行われる。すなわち、第3分離システム制御処理では、燃料分離開始条件が充足された場合に(図10/STEP240‥YES)、負圧制御処理(図10/STEP242)が開始される。
この状態において、原燃料F0の送出量VFが所定の量γ以下である場合(図10/STEP246‥YES)、制御装置70が、燃料分離開始条件を充足させながら、原燃料温度TFが高くなるほど、所定の量γになるまで連続的又は段階的に増加するような原燃料F0の送出量VFを示す関数f(TF)によって原燃料F0の送出量VFを制御する(図10/STEP248)。なお、当該所定の量γは、βと同一でもよいし、βと同一でなくともよい。
関数fとしては、燃料分離開始条件が充足される原燃料F0の送出量VFのうちで、原燃料送出量VFが最大となる、又は単位時間当たりの又は燃料分離開始条件が充足された後の所定期間における分離される第1燃料F1の量が最大となる観点から、α≦f(TF)≦γの範囲で、原燃料タンク10に格納されている原燃料F0の温度が高くなるほど連続的又は段階的に増加するような原燃料F0の送出量VFを示す関数f1が採用され得る。当該関数f1としては、所定の方程式又は所定の対応関係を記憶したデータベースにより原燃料F0の送出量VFを求める関数が採用され得る。当該所定の方程式としては、例えば、原燃料温度TF、冷却媒体温度TC及び冷却媒体流量のうち少なくとも1つに基づいて分離される第1燃料F1の量が最大となる原燃料F0の送出量VFを求める所定の方程式が採用され得る。当該所定の対応関係を記憶したデータベースとしては、分離器温度TMが第1温度TM1以上となる原燃料F0の送出量VFについての原燃料温度TFと単位時間当たり又は燃料分離開始条件が充足された後の所定期間における分離される第1燃料F1の量が最大となる送出量VFとの対応関係を記憶したデータベースが採用され得る。当該所定の方程式及び所定の対応関係は、あらかじめ実験等により定められる。
また、関数fとして、原燃料タンク10に格納されている原燃料F0の温度が高くなるほど連続的又は段階的に増加するような原燃料F0の送出量VFを示す関数に代えて又は加えて、冷却媒体温度TCが高くなるほど、連続的又は段階的に増加するような原燃料F0の送出量VFを示す関数f2が採用されてもよい。
他に、原燃料タンク10に格納されている原燃料F0の温度が高くなるほど連続的又は段階的に増加するような原燃料F0の送出量VFを示す関数に代えて又は加えて、冷却媒体の流量が多くなるほど、連続的又は段階的に増加するような原燃料F0の送出量VFを示す関数f3が採用されてもよい。また、関数fとして、燃料分離開始条件が充足された後の経過時間に従って連続的又は段階的に増加する原燃料の送出量VFを示す関数f4が採用されてもよい。当該関数f2、f3及びf4は、あらかじめ実験等により定められる。
図10/STEP224,244,248のいずれかの処理の後、制御装置70は、「第3分離システム制御処理」の今回周期を終了し、次回周期を開始する。
(第3分離システム制御処理の作用・効果)
原燃料F0の循環経路の当該原燃料F0の温度が、局所的には各機器の消費エネルギーに対する燃料分離の効率の観点から適当な温度範囲に収まっているとしても、当該循環経路の全体においては当該効率の観点から適当な温度範囲に収まっていない蓋然性が高い場合がある。このような場合、分離器20への原燃料F0の供給量VFが過剰に増加されると、当該循環経路の局所的な当該原燃料F0の温度も当該効率の観点から適当な温度範囲から逸脱するおそれがある。
より具体的には、原燃料F0の送出量VFをαに制御することにより、局所的に分離器温度TMが第1温度TM1に到達したとしても、全体的な原燃料温度TFがいまだ低いままである場合(図11/t2+付近)がある。このような場合に、いきなり原燃料F0の送出量VFをαからβに増加すると、原燃料F0が冷却媒体との熱交換により得られる単位流量当たり熱量が減少するため、図11/t2+付近に1点鎖線で示すように、局所的な分離器温度TMが第1温度TM1を大きく下回る可能性がある。
ここで、原燃料タンク10に格納されている原燃料F0の温度TFまたは冷却媒体循環経路LLを流れる冷却媒体の温度TCは、原燃料F0の循環経路の全体における原燃料F0の温度TFに直接的または間接的に関係する。
第3分離システム制御処理によれば、原燃料F0の温度TF又は冷却媒体の温度TCが高くなるほど、図11の下のグラフに示すように、例えば関数f(TF)によって、分離器20への原燃料F0の供給量VFが連続的又は段階的に増加するように調節される(図11/t2+〜t3)。このため、当該循環経路の分離器20上流側における局所的な原燃料F0の温度TMを、各機器の消費エネルギーに対する燃料分離の効率の観点から適当な温度範囲(例えば第1温度TM1以上)に収めながら、分離器20への原燃料F0の供給量VFを、当該循環経路の全体における原燃料F0の温度TFに鑑みて適当に増加させることが出来る。
(第3分離システム制御処理の変形態様)
STEP220において、冷却媒体温度TCが所定の温度(供給開始温度TC0)以上か否かが判定され、その結果に応じてSTEP222又は224で開閉機構75の開閉及び高圧供給ポンプ12の作動の有無が制御されたが、これに代えて又は加えて、冷却媒体温度TCが高温であるほど、開閉機構75の開度が大きくなるように及び高圧供給ポンプ12の作動が強くなるように制御されてもよい。
STEP222において、高圧供給ポンプ12の動作が制御されることにより原燃料F0の送出量VFが制御されたが、これに代えて又は加えて、三方バルブ14の動作が制御されることにより分離器20への原燃料F0の供給量が制御されてもよい。
STEP230において、原燃料温度TFが所定の温度(供給制限温度TF0)以上か否かの結果に応じてSTEP232又は234で原燃料F0の送出量VFが所定の値α又はβに制御されたが、これに代えて又は加えて、原燃料温度TFに応じた適切な原燃料F0の送出量VFが制御されてもよい。この場合、原燃料温度TFに応じた適切な原燃料F0の送出量VFは、分離器20における単位時間当たりの又は燃料分離開始条件が充足された後の所定期間における分離される第1燃料F1の量が最大となる観点から定められる。例えば、当該原燃料F0の送出量VFは、原燃料温度TFから分離される第1燃料F1の量が最大となる送出量を求める所定の方程式により求められてもよい。また、当該原燃料F0の送出量VFは、原燃料温度TFと分離される第1燃料F1の量が最大となる送出量との対応関係を記憶したデータベースを参照することにより定められてもよい。当該所定の方程式及び所定の対応関係は、あらかじめ実験等により定められる。
STEP240において、燃料分離開始条件が充足されているか否かの判定として、分離器温度TMが所定の温度(第1温度TM1)以上か否かが判定されたが、これに代えて又は加えて、冷却媒体温度TCが所定の温度以上か否かに応じて燃料分離開始条件が充足されているか否かが判定されてもよい。また、これらに加えて、第1燃料タンク40に格納される第1燃料F1が所定の量以下であるか否か及び内燃機関の始動後の時間が所定時間を過ぎたか否かのうち少なくとも1つに応じて燃料分離開始条件が充足されているか否かが判定されてもよい。
STEP240において、分離器温度TMが所定の温度(第1温度TM1)以上である場合に負圧制御処理が開始されたが、これに代えて又は加えて、分離器温度TMが高温になるほど、分離処理を促進するように、例えば、「負圧制御処理」における第1負圧P1が低くなるように制御されてもよい。
また、STEP220及び224の処理が省略されてもよい。
また、関数fとして、燃料分離開始条件を充足させながら、原燃料温度TFが高くなるほど、所定の量γになるまで連続的又は段階的に増加するような原燃料F0の送出量VFを示す関数に代えて、原燃料温度TF、冷却媒体温度TC及び冷却媒体流量のうちの少なくとも1つに基づいて、単位時間当たりに又は燃料分離開始条件が充足された後の所定期間において分離される第1燃料F1が最大となるような原燃料F0の送出量VFを示す関数f5が採用されてもよい。
この場合、単位時間当たりに又は燃料分離開始条件が充足された後の所定期間において分離される第1燃料F1が最大となるような原燃料F0の送出量VFは、所定の方程式又は所定の対応関係を記憶したデータベースにより求められてもよい。
例えば、当該所定の方程式としては、原燃料温度TF、冷却媒体温度TC及び冷却媒体流量のうち少なくとも1つに基づいて分離される第1燃料F1の量が最大となる原燃料F0の送出量VFを求める所定の方程式が採用されてもよい。また、当該所定の対応関係を記憶したデータベースとしては、原燃料温度TF、冷却媒体温度TC及び冷却媒体流量のうち少なくとも1つと分離される第1燃料F1の量が最大となる原燃料F0の送出量VFとの対応関係を記憶したデータベースが採用されてもよい。当該所定の方程式及び所定の対応関係は、あらかじめ実験等により定められる。
(燃料供給装置の変形態様)
本実施形態においては、冷却媒体と加熱器16内部の原燃料F0及び分離器20とを熱交換させるように冷却媒体循環経路LLが構成されたが、これに代えて、冷却媒体と加熱器16又はその内部の原燃料F0とを熱交換させるにように冷却媒体循環経路LLが構成されてもよい。又は、これらに代えて、冷却媒体と分離器20とを熱交換させるように冷却媒体循環経路LLが構成されてもよい。
本実施形態の冷却媒体及び冷却媒体循環経路LLに代えて又は加えて、内燃機関60又はその他の車載機器由来の熱量により加熱された熱媒体(例えば空気等の気体)及び当該熱媒体が流れるように構成された熱媒体経路が用いられてもよい。
本実施形態の燃料供給装置は、加熱器16の下流に三方バルブと、当該三方バルブ及び原燃料タンク10を結ぶ燃料経路とを備えるように構成されてもよい。この場合、制御装置70は、「第1分離システム制御処理」のSTEP134又は「第2分離システム制御処理」若しくは「第3分離システム制御処理」のSTEP244において、「負圧制御処理」を停止すると共に、当該燃料経路を通じて熱交換後の原燃料F0を原燃料タンク10に戻すように当該三方バルブの動作を制御してもよい。