JP5835508B1 - ローパスフィルタの評価方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】製造プロセスで製造されたLPFのごとにフィルタリング特性を簡便に評価できる。【解決手段】第1〜第6ステップを含むLPFの評価方法であって、第1ステップ(S1)は、評価対象のLPFの減衰特性からカットオフ周波数fcを求めるステップであり、第2ステップ(S2)は、フィルタリングを予定するアナログ信号の周波数スペクトルS0を測定するステップである。第3ステップ(S3)は、LPFでフィルタリングされたアナログ信号の周波数スペクトルSを測定するステップであり、第4ステップ(S4)は、周波数スペクトルS0とSのスペクトル相関係数rを求めるステップであり、第5ステップ(S5)は、カットオフ周波数fcと設定されたサンプリングレートSRの半分の値SR/2との比として定義される比R=fc/(SR/2)を求めるステップであり、第6ステップ(S6)は、スペクトル相関係数rと比Rとの積を評価指標Pとして求めるステップである。【選択図】図3

Description

本願発明は、光ファイバを用いた光アクセスネットワーク、特に、コヒーレント光直交周波数分割多重伝送ネットワークの送信信号となる、光直交周波数分割多重信号等の生成時に高周波成分を除去するために利用されるローパスフィルタの評価方法に関する。
光アクセスネットワークは、近年のインターネットの普及による通信需要の増大を背景として、高速・大容量ネットワークとして整備されつつある。このような光アクセスネットワークを実現する技術として、特に、無線通信において普及している直交周波数分割多重(OFDM: Orthogonal Frequency Division Multiplexing)を光ファイバ伝送に適用させ得た、コヒーレント光OFDM(CO-OFDM:Coherent Optical-Orthogonal Frequency Division Multiplexing)が注目されている。
CO-OFDMは、互いに直交した複数の搬送波をそれぞれデジタル変調して多重する、マルチキャリア伝送方式である。デジタル変調方式として、例えば、4位相シフトキーイング(QPSK: Quadrature Phase Shift Keying)や、直交振幅変調(QAM: Quadrature Amplitude Modulation)等の多値変調方式と組み合わせることで、限られた周波数帯域幅を最大限利用して多くの情報を伝送することが可能である。すなわち、同一の情報量を伝送するのに必要とされる周波数帯域幅を狭く抑えることができるので、新サービスの追加等が容易に行える。更に、サービスごとに伝送容量や周波数帯域を割り当てることができるので、異なるサービスを効率よく集約することもできる。
ここで、CO-OFDMシステムにおける、デジタル-アナログ変換器(DAC: Digital-to-Analog Converter)及びアナログ-デジタル変換器(ADC: Analog-to-Digital Converter)のそれぞれにおいて、変換前の信号をどの程度再現できるかが、システムの受信特性に大きく影響を与える。DACあるいはADCの信号変換に寄与する特性パラメータは、主として分解能とサンプリングレート(SR: Sampling Rate)である。一般に、DACあるいはADCは、変換対象となる信号の2倍以上のサンプリングレートSRを設定する必要がある(サンプリング定理)。
すなわち、アナログ信号の周波数Fsigが1 GHzである場合、2 Gサンプル毎秒(GSPS: Giga Samples per Second)以上のサンプリングレートが必要となり、アナログ信号の周波数Fsigが2 GHzである場合、4 GSPS以上のサンプリングレートが必要となる。このように、伝送容量を大きくして、かつ伝送速度を高速化するためには、より高速な信号がデジタル-アナログ変換あるいはアナログ-デジタル変換の対象となるので、サンプリングレートの大きなDACあるいはADCが必要となる。
また、デジタル-アナログ変換あるいはアナログ-デジタル変換に伴って、SR/2ごとに鏡像関係となる信号が変換された信号と重なって発生するエイリアシングが問題となる。エイリアシングの発生を回避する手段としては、遮断周波数より低い周波数の成分をほとんど減衰させず、遮断周波数より高い周波数の成分を逓減させるローパスフィルタ(LPF: Low Pass Filter)を用いて、デジタル-アナログ変換あるいはアナログ-デジタル変換された信号に含まれる高周波数成分を除去する方法が知られている(例えば、特許文献1あるいは2参照)。あるいは、エイリアシングを回避する別の方法として、オーバーサンプリング法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
アンチエイリアシングフィルタを用いる方法は、カットオフ周波数がSR/2であるLPFによってアナログ信号の高周波成分を予め除去することで、エイリアシングの発生を回避するものである。以後、デジタル-アナログ変換あるいはアナログ-デジタル変換に伴って発生するエイリアシングの発生を回避する手段として利用されるLPFをアンチエイリアシングフィルタということもある。
一方、オーバーサンプリング法は、サンプリングレートSRを信号周波数Fsigの2倍よりも大きく設定することによって、エイリアス信号を高周波数側にずらせて、変換信号とエイリアシング信号が重ならないようにする方法である。
特開2006−60721号公報 特開2003−273945号公報 特開2012−129688号公報
オーバーサンプリング法は、信号周波数Fsigがギガヘルツの帯域となると、SR≧2Fsigを満足するDACあるいはADCを入手することが難しい。本願発明者が知る限り、入手可能な市販のADCとして最速なものは、サンプリングレートが3.6 GSPSを実現できるものがある。なお、数十GSPSのサンプリングレートを実現するものも市販されているが、これはベンチトップ型の装置であり、サイズが大きく高価格であるので、アクセス系のシステムに採用することはできない。
高周波数動作が保証されたDACあるいはADCを利用することを断念すると、エイリアシングの発生を回避する手段としては、LPFを用いて、デジタル-アナログ変換あるいはアナログ-デジタル変換された信号に含まれる高周波数成分を除去する方法を採用するのが望ましいことになる。
最も簡単な構成のLPFは、入力信号に並列するコンデンサーと入力信号と直列する抵抗器から成る1次ローパスフィルタ(1次LPF)である。エイリアシングの発生を回避するために利用されるLPFは、1次LPFを多段に直列接続された高次LPFが必要とされ、複数のコンデンサー及び抵抗器を含んで構成される。したがって、複数のコンデンサー及び抵抗器をすべて同一規格に統一して作製することは難しく、製造されたLPFごとにフィルタリング特性にバラつきが生じる。製造工程では、何らかの方法で、フィルタリング特性が基準許容範囲に収まっているLPFを選別し、フィルタリング特性のばらつきを一定の範囲内に小さく抑えることが必要とされる。
LPFの製造工程におけるフィルタリング特性のばらつきを可能な限り小さくする手段が見つかれば、CO-OFDMシステム等において、光直交周波数分割多重信号等の生成時に高周波成分を除去する機能部分であるLPFを低価格でしかも効率よく製造できるようになる。具体的には、アンチエイリアシングフィルタであるLPFのフィルタリング特性を、製造工程において簡便に評価できる手段及びその評価指標を見出すことが求められている。
本願の発明者は、アナログ信号の周波数スペクトルと、アンチエイリアシングフィルタであるLPFを透過させた信号の周波数スペクトルとの相関係数rと、このLPFのカットオフ周波数fc、及び、サンプリング周波数の半分の値SR/2との比R、すなわちfc/(SR/2)を求め、r×Rを評価指標とすれば、フィルタリング特性を簡便に評価できることを見出した。すなわち、特性のばらつき許容範囲に対応するr×Rの値の範囲を予め設定しておき、製造プロセスで製造されたLPFごとにr×Rの値を求めて、この値が予め設定したr×Rの値の範囲に入らないLPFを不良品として排除すれば、効率よく合格品であるLPFを選別できる。
したがって、本願発明の目的は、評価指標としてr×Rを用いるLPFの評価方法を提供することにある。
上述の目的を達成するため、本願発明のLPFの評価方法は、次の第1〜第6ステップを含んでいる。
第1ステップは、評価対象のLPFの減衰特性からカットオフ周波数fcを求めるステップである。
第2ステップは、フィルタリングを予定するアナログ信号の周波数スペクトルS0を測定するステップである。
第3ステップは、LPFでフィルタリングされたアナログ信号の周波数スペクトルSを測定するステップである。
第4ステップは、周波数スペクトルS0とSのスペクトル相関係数rを求めるステップである。
第5ステップは、カットオフ周波数fcと、設定されたサンプリングレートSRの半分の値SR/2との比として定義される比R=fc/(SR/2)を求めるステップである。
第6ステップは、スペクトル相関係数rと比Rとの積r×Rを求めるステップである。
本願発明のLPFの評価方法は、上述の第1〜第6のステップを含んでいるので、評価対象のLPFごとに、合格品であるとする指標として予め設定しておいた積r×Rの許容範囲の値と、評価対象のLPFごとに上述のステップを実行することで得られる積r×Rとを比較できる。すなわち、積r×Rを用いることによって、一貫して使われる一つの評価指標だけで、製造された直後のLPFの評価をすることができる。
本願発明で見出された評価指標である積r×Rだけを用いて、効果的にLPFの評価をすることができるので、評価コストを低廉化できる。また、評価指標が積r×Rだけであるので、評価そのものが簡便であり、LPFの製造プロセスのどのプロセスにフィルタリング特性のばらつきを生んでいるか、短時間にその原因と考えられる要素を多数調査できる。その結果、不良品の発生とその発生の予防を検討する、製造プロセスのフィードバック課程を効率化できる。すなわち、LPFの製造工程におけるフィルタリング特性のばらつきを可能な限り小さくするためには、製造プロセスのどのプロセスを改善すればよいかについて、迅速に対策を立てられる。
CO-OFDMシステムにおける一般的なトランシーバの概略的ブロック構成図である。 アンチエイリアシングフィルタとして利用することを目的に作製した7つのLPF(LPF-A〜LPF-G)の減衰特性の測定結果を示す図である。 LPFの評価方法の実施形態を説明するためのフローチャートである。 カットオフ周波数を求める方法についての説明に供する図である。 第2及び第3ステップにおける、アナログ信号の周波数スペクトルS0の測定、及び、LPFでフィルタリングされたアナログ信号の周波数スペクトルSの測定についての説明に供する図である。 評価指標に対するエラーベクトル振幅の関係を示す図である。
以下、図を参照して、この発明の実施形態につき説明する。なお、以下の実施形態の説明において、特定のカットオフ周波数等を設定するが、この値は実施形態の説明のために便宜的に設定したものであり、本願発明の技術的範囲を限定するものではない。また、以下の説明において、CO-OFDMを取り上げるが、本願のLPFの評価方法は、このシステムに利用されるLPFの評価に限定されるものではない。
<CO-OFDMシステム>
まず、本願発明の理解に資するため、アンチエイリアシングフィルタが利用される好適例として、CO-OFDMシステムにおける一般的なトランシーバの構成例を取り上げ、アンチエイリアシングフィルタの役割について説明する。
図1を参照して、CO-OFDMシステムについて説明する。CO-OFDMシステムにおける一般的なトランシーバは、送信機部10と受信機部20を備えている。送信機部10は、デジタルシグナルプロセッサ(DSP: Digital Signal Processor)12、デジタル-アナログ変換器(DAC: Digital-to-Analog Converter) 14、変調器16、及びレーザダイオード(LD: Laser Diode)18を備えている。また、受信機部20は、DSP 22、アナログ-デジタル変換器(ADC: Analog-to-Digital Converter) 24、コヒーレント受信部26、局部発振(Local Oscillation)光源28を備えている。
送信機部10において、送信信号はDSP 12でデジタル変調され、DAC 14でアナログ信号に変換される。送信光源となるLD 18で生成される送信光が、このアナログ信号に基づいて変調器16で変調され、OFDM信号光として伝送路に送出される。一方、受信機部20で受信したOFDM信号光は、コヒーレント受信部26において、LO光源28から出力されるLO光との干渉によってコヒーレント受信され、更に、ADC 24でデジタル信号に変換される。このデジタル信号をDSP 22で復調することによって受信信号が得られる。
このとき、送信機部10のDAC 14が担うデジタル信号のアナログ変換、及び受信機部20のADC 24が担うアナログ信号のデジタル変換のそれぞれにおいて、変換前の信号をどの程度再現できるかが、CO-OFDMシステムにおける受信特性に大きく影響する。DAC 14及びADC 24での信号変換に寄与するDAC 14及びADC 24のそれぞれの特性パラメータは、主として分解能とサンプリングレート(SR: Sampling Rate)である。分解能は信号の強弱に寄与し、SRは信号の時間間隔(あるいは周波数間隔)に寄与する。SRは信号を時間軸でどの程度細かく分割するかという尺度である。そして、受信特性により大きく影響するのがSRである。
デジタル-アナログ変換あるいはアナログ-デジタル変換に伴って、SR/2ごとに鏡像関係となる信号が変換された信号と重なって発生するエイリアシングを回避する手段としては、ここではローパスフィルタ(LPF: Low Pass Filter) 30を利用する。LPF 30は、図1に示すように、受信機部20のコヒーレント受信部26とADC 24の間に挿入される。すなわち、CO-OFDMシステムにおけるトランシーバの受信機部20において、アンチエイリアシングフィルタであるLPF 30によってアナログ信号の高周波成分が除去される。
<LPF>
図2を参照して、アンチエイリアシングフィルタとして利用するLPFのフィルタリング特性について説明する。図2の横軸は周波数をGHz単位で目盛って示しており、縦軸はLPFに入力させる入力光の光強度とLPFを透過した出力光の透過光強度の相対強度比をdB目盛で示してある。
LPFをアンチエイリアシングフィルタとして利用する場合に必要とされる減衰特性は、透過帯域における減衰が0近傍の小さな値であって、かつこの透過帯域で減衰特性を与える曲線が平坦であることである。そして、カットオフ周波数(LPFの透過帯域と遮断帯域との境の周波数)で急激に透過率が減少し、透過光の強度が無視できる程度に小さくできることである。そして、カットオフ周波数より大きな周波数帯域では、透過光の強度が大きな値をとることがないことである。
図2には、アンチエイリアシングフィルタとして利用することを目的に、必要とされる上述の特性が得られるべくシミュレーター等を利用して設計したLPFを実際に作製して得られたLPFから7つのLPF(LPF-A〜LPF-G)を選び出して、そのLPFの減衰特性の測定結果を示してある。7つのLPF(LPF-A〜LPF-G)はカットオフ周波数が1〜2 GHzとなるようにシミュレーター等を利用して設計したLPFであるが、その構成やパラメータの値が異なることで、図2に示すように減衰特性はそれぞれ異なる。
したがって、作製されたLPFの中から何らかの方法で、利用に適するLPFを選択する必要がある。そして、選択に当たっては、できるだけ単純な基準のもとで特性評価が流れ作業として実行できることが望ましい。
<LPFの評価方法>
図3を参照して、LPFの評価方法について説明する。図3は、本願発明のLPFの評価方法の実施形態を説明するためのフローチャートである。
まず、評価するLPFを用意し、第1ステップを実行する。第1ステップ(S1)は、評価対象のLPFの減衰特性からカットオフ周波数fcを求めるステップである。
ここで、図4を参照して、カットオフ周波数fcを減衰特性曲線から求める方法について説明する。図4は典型的なLPFの減衰特性を模式的に示す図であり、横軸は周波数をGHz単位で目盛って示してあり、縦軸はLPFに入力させる入力光の光強度とLPFを透過した出力光の透過光強度の相対強度比をdB目盛で示してある。
カットオフ周波数fcを求めるには、まず透過帯域の減衰特性を与える曲線の平均的位置を直線Aで結ぶ、次に、急激に透過率が低下する部分の降下曲線を直線Bで近似して、直線Aと直線Bとの交点を求める。この交点の位置の周波数Fを読み、このFの値をカットオフ周波数fcとする。カットオフ周波数fcを求める手法はこのほかにも複数存在するが、いずれの手法によって求めてもよい。
第2ステップ(S2)は、フィルタリングを予定するアナログ信号の周波数スペクトルS0を測定するステップである。第3ステップ(S3)は、LPFでフィルタリングされたアナログ信号の周波数スペクトルSを測定するステップである。
図5(A)(B)に、コヒーレント受信部26から出力されるアナログ信号の周波数スペクトルS0と、アンチエイリアシングフィルタであるLPF 30から出力されるアナログ信号の周波数スペクトルSの一例を示す。図5において、横軸は周波数をGHz単位で目盛って示してあり、縦軸は信号光の強度を任意スケールで示してある。ここでは、実際に作製して得られたLPF(LPF-A〜LPF-G)から代表してLPF-AとLPF-Eの二つのLPFを選んで、のそれぞれ図5(A)と図5(B)に示してある。図5(A)はLPF-Aに関する周波数スペクトルに関し、図5(B)はLPF-Eに関する周波数スペクトルに関する図である。
図5(A)中で(a)と示す曲線はコヒーレント受信部26から出力されるアナログ信号、すなわちフィルタリングを予定するアナログ信号の周波数スペクトルS0を示し、(b)はLPF-Aによってフィルタリングされて出力されたアナログ信号の周波数スペクトルSを示している。図5(B)中で(a)と示す曲線は図5(A)中で(a)と示す曲線と同一のものであり、コヒーレント受信部26から出力されるアナログ信号の周波数スペクトルS0を示し、(b)はLPF-Eによってフィルタリングされて出力されたアナログ信号の周波数スペクトルSを示している。図5(A)中の曲線(b)で与えられる周波数スペクトルと図5(B)中の曲線(b)で与えられる周波数スペクトルは一見類似しているが、後述する周波数スペクトルS0とSのスペクトル相関係数rを求めると両者に差が存在する。
第4ステップ(S4)は、周波数スペクトルS0とSのスペクトル相関係数rを求めるステップである。スペクトル相関係数rは次式(1)によって求める。
Figure 0005835508
ここで、xiは、図5に示したLPF 30を通過させる前の、コヒーレント受信部26から出力されたアナログ信号の周波数スペクトルを与える曲線の、測定した周波数帯域をn等分してそのn等分したそれぞれの周波数における信号光の強度値を周波数順にx1,x2,x3,…xi,…xnと並べた数列のi番目の値を意味する。yiも同様に、LPF 30を通過して出力されたアナログ信号の周波数スペクトルを与える曲線の、測定した周波数帯域をn等分してそのn等分したそれぞれの周波数における信号光の強度値を周波数順にy1,y2,y3,…yi,…ynと並べた数列のi番目の値を意味する。iは1からnの全ての整数である。nの大きさは、nの値を変化させても、求めるべきスペクトル相関係数rの値に有意に大きな変化を与えない程度の十分に大きな値に設定する。
Xは、コヒーレント受信部26から出力されたアナログ信号の信号光強度の平均値を示し、Yは、それぞれ、LPF 30を通過して出力されたアナログ信号の信号光強度の平均値を示す。
第5ステップ(S5)は、次式(2)で定義されるカットオフ周波数fcと、設定されたサンプリングレートSRの半分の値SR/2との比として定義される比Rを求めるステップである。
R=fc/(SR/2) (2)
サンプリングレートSRは、ADC 24に固有の特性値である。
第6ステップ(S6)は、次式(3)で定義されるスペクトル相関係数rと比Rとの積を評価指標Pとして求めるステップである。
P=r×R (3)
この評価指標Pは、評価対象とするLPFごとに異なる値となるが、周波数スペクトルS0とSのスペクトル相関係数rが1で、かつ、カットオフ周波数fcとサンプリングレートSRの半分の値SR/2とが等しいときに1となる。
周波数スペクトルS0とSのスペクトル相関係数rが1に十分近ければ、LPFの透過帯域における減衰が小さく減衰特性を与える曲線が平坦であり、カットオフ周波数より大きな周波数帯域で透過光の強度が十分小さいことを意味する。
式(2)で与えられる比Rが1より小さい場合、すなわちfc<SR/2である場合、fcが低周波数側であるので、本来遮断されてはならないアナログ信号の一部もLPFによって遮断されてしまい、スペクトル相関係数rも小さな値となる。したがって、評価指標Pは1より小さな値となる。
一方、fc>SR/2である場合は、式(2)で与えられる比Rは1より大きな値となる。この場合、fcは高周波数側であるので、アナログ信号は遮断されないが、LPFで除去すべき高周波成分が残ってしまうため、スペクトル相関係数rは1より小さくなる。一般に、スペクトル相関係数rの減少よりも式(2)で与えられる比Rの増加の変動のほうが大きいので、この場合は、評価指標Pは1より大きな値となる。
fc=SR/2である場合は、式(2)で与えられる比Rは1となり、LPFを透過した信号光の周波数スペクトルSは、LPFの透過周波数帯域の平坦性(図4の直線Aで近似した部分の平坦性)、あるいは遮断周波数近傍の減衰の仕方の急峻性(図4の直線Bの傾き)を反映するため、スペクトル相関係数rの値がLPFの評価指標Pそのものとなる。
第6ステップ(S6)が終了したら、予め設定したP=r×Rの値と比較する。Pの値を設定するに当たっては、このLPFの仕様を予定しているCO-OFDMシステムに応じて、後述するデジタル変調信号の品質を評価する指標であるエラーベクトル振幅(EVM: Error Vector Magnitude)の許容範囲等を勘案する。
予め設定したr×Rの許容範囲の値と比較した結果によって、良品あるいは不良品とを識別し、次に評価するLPFを用意して、以下同様に第1〜第6ステップを実行する。
ここで、実際に作製して得られたLPFから7つのLPF(LPF-A〜LPF-G)に対する評価指数Pを求め、それぞれのLPFを用いてCO-OFDMシステムにおけるトランシーバで受信した場合のそれぞれのLPFによる受信特性としてEVMを計測し、両者の対応関係を調べた。図6にその結果を示す。
EVMはデジタル変調信号の品質を評価する指標である。デジタル変調信号は、横軸を搬送波と同じ位相、縦軸を搬送波と直交する位相にとったコンスタレーションダイアグラム上のシンボル位置で表される。理想的なシンボル位置と復調器により復調されたシンボル位置とのずれがエラーベクトルで、このエラーベクトルの大きさと理想シンボル位置の位置ベクトルの大きさとの比がエラーベクトル振幅である。
図6は、評価指標Pに対するEVMの関係を示しており、横軸は評価指標Pを示し、縦軸はEVMをdB目盛で示してある。EVMが小さいほど良好な受信であることを示す。EVM<-15dBを目安とすると、評価指標P≧0.75を満たすLPFであれば良好な受信が確保される。
なお、評価指標Pが大きくなりすぎるとEVMも大きくなって良好な受信状態を実現する条件であるEVM<-15dBを満たさなくなることもあり得る。これは、fc<SR/2である場合、本来遮断されてはならないアナログ信号の一部もLPFによって遮断されてしまうことがあるが、エイリアシングを発生させる高周波数成分は十分に取り除かれるのに対し、fc>SR/2である場合は、アナログ信号は遮断されないがLPFで除去すべき高周波成分が残ってしまうという事情があるためである。すなわち、アナログ信号の一部を失うことと、高周波数成分を十分に取りきることとは、トレードオフの関係にあるためである。したがって、評価指標Pの値には最適値が存在し得る。このような場合は、許容される評価指数Pの値として、上限値及び下限値を設定して、LPFの選択を行えばよい。
以上説明したように、本願発明のLPFの評価方法によれば、評価指標Pを用いることによって、LPFの製造工程において発生する特性のばらつきの評価を含め、エイリアシングを回避するのに必要とされるアンチエイリアシングフィルタの選別が効率よく行え、製造過程におけるLPFの選択過程を実行するためのコストの削減が期待できる。
10:送信機部
12、22:デジタルシグナルプロセッサ(DSP: Digital Signal Processor)
14:デジタル-アナログ変換器(DAC: Digital-to-Analog Converter)
16:変調器
18:レーザダイオード(LD: Laser Diode)
20:受信機部
24:アナログ-デジタル変換器(ADC: Analog-to-Digital Converter)
26:コヒーレント受信部
28:局部発振(Local Oscillation)光源
30:ローパスフィルタ(LPF: Low Pass Filter)

Claims (5)

  1. 評価対象のローパスフィルタの減衰特性からカットオフ周波数fcを求める第1ステップと、
    フィルタリングを予定するアナログ信号の周波数スペクトルS0を測定する第2ステップと、
    前記評価対象のローパスフィルタでフィルタリングされたアナログ信号の周波数スペクトルSを測定する第3ステップと、
    前記周波数スペクトルS0とSのスペクトル相関係数rを求める第4ステップと、
    前記カットオフ周波数fcと、設定されたサンプリングレートSRの半分の値SR/2との比として定義される比R=fc/(SR/2)を求める第5ステップと、
    前記スペクトル相関係数rと前記比Rとの積r×Rを求める第6ステップと
    を含むことを特徴とするローパスフィルタの評価方法。
  2. 前記第6ステップに続いて、
    予め設定した積r×Rの許容範囲に対して、前記第6ステップで求めた前記積r×Rの値が前記予め設定した積r×Rの許容範囲に含まれるか否かを判断し、良品あるいは不良品を識別する第7ステップを更に含む
    ことを特徴とする請求項1に記載のローパスフィルタの評価方法。
  3. 前記評価対象のローパスフィルタは、アンチエイリアシングフィルタであることを特徴とする請求項1又は2に記載のローパスフィルタの評価方法。
  4. 前記第1ステップは、
    前記評価対象のローパスフィルタの減衰特性の透過帯域を与える曲線の平均的位置を直線Aで結び、
    前記評価対象のローパスフィルタの減衰特性の急激に透過率が低下する部分の降下曲線を直線Bで近似して、
    前記直線Aと前記直線Bとの交点を求め、当該交点の位置の周波数Fを読み、当該Fの値をカットオフ周波数fcとして求めるステップである
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のローパスフィルタの評価方法。
  5. 前記第4ステップで求める前記相関係数rは、
    次式によって求める
    Figure 0005835508
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のローパスフィルタの評価方法。
    ここで、xiは、前記評価対象のローパスフィルタを通過させる前のアナログ信号の周波数スペクトルを与える曲線の、測定した周波数帯域をn等分してそのn等分したそれぞれの周波数における前記アナログ信号の強度値を周波数順にx1,x2,x3,…xi,…xnと並べた数列のi番目の値であり、
    yiは、前記評価対象のローパスフィルタを通過して出力された前記アナログ信号の周波数スペクトルを与える曲線の、測定した周波数帯域をn等分してそのn等分したそれぞれの周波数における信号光の強度値を周波数順にy1,y2,y3,…yi,…ynと並べた数列のi番目の値であり、
    Xは、前記評価対象のローパスフィルタを通過させる前の前記アナログ信号の信号光強度の平均値であり、
    Yは、前記評価対象のローパスフィルタを通過して出力された前記アナログ信号の信号光強度の平均値であり、
    iは1からnの全ての整数であり、当該nの大きさは、nの値を変化させても、求めるべき前記スペクトル相関係数rの値に有意に大きな変化を与えない程度の十分に大きな値である。
JP2015034123A 2015-02-24 2015-02-24 ローパスフィルタの評価方法 Expired - Fee Related JP5835508B1 (ja)

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