上述した特許文献1および特許文献2に記載の空気入りタイヤは、凹部によって車両走行時のタイヤの周囲に乱流(空気の攪拌)を生じさせ、凸部によって乱流発生効果(攪拌効果)の向上を図る作用が示されている。すなわち、凹部は、乱流や空気の攪拌を生じさせるものとされ、凸部は、乱流や空気の攪拌を助長させるものとされている。
ところで、発明者等の研究によれば、凸部や凹部は、これらの機能を効率よく得られるように配置することで、さらなる効果が得られることが発見された。
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、タイヤ周りの空気流をさらに改善することのできる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の空気入りタイヤは、少なくとも一方のタイヤサイド部に、多数の凸部および多数の凹部を有する空気入りタイヤにおいて、前記凸部は、タイヤ径方向に沿って長手状の突条として形成され、かつタイヤ周方向で間隔を空けて配置されており、前記凹部は、各前記凸部の間の領域に設けられていることを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、空気の流れは、タイヤサイド部の表面において、凸部を乗り越えるようにして通過する。凸部は、この空気の流れを乱流化させる。このため、凸部を有する部分に乱流境界層が発生し、通過する空気がタイヤサイド部から離れて広がることが抑えられるので、タイヤの空気抵抗が低減され、燃費を向上することができる。しかも、この空気入りタイヤによれば、各凸部の間の領域に凹部が設けられているため、当該凹部がタイヤサイド部のゴムボリュームを低減するとともに空気を乱流化させる。このため、ゴムボリュームの低減化によって熱の発生が抑制される。さらに、凹部による空気の乱流化によって、凸部の間を通過する空気がタイヤサイド部から離れて広がることがより抑えられることで、空気の流れによって放熱性が向上するため、タイヤ発熱や温度上昇が抑えられ、タイヤの耐久性を向上することができ、かつ凸部の間を通過する空気のタイヤサイド部の外側への広がりをより抑えることで、タイヤの空気抵抗がより低減され、燃費を向上することができる。このように、この空気入りタイヤによれば、タイヤサイド部に設けられた突条の凸部と、凸部の間の領域に設けられた凹部とで、それぞれタイヤ周りの空気流をさらに改善することができる。
また、本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向で隣接する各前記凸部の間の領域を、タイヤ周方向で3つの領域に分割して各前記凸部寄りの各領域D1と、前記各領域D1の間の領域D2とし、前記各領域D1と前記領域D2とに配置される前記凹部の割合を異ならせることを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、各領域D1と領域D2とに配置される凹部の割合を異ならせることで、タイヤ周りの空気流をさらに改善することができる。例えば、各領域D1での凹部の配置割合を、領域D2での凹部の配置割合よりも比較的大きくすれば、凸部付近で空気が滞留して溜まりやすい領域での放熱性がより向上する傾向となる。一方、例えば、領域D2での凹部の配置割合を、各領域D1での凹部の配置割合よりも比較的大きくすれば、凸部の間を通過する空気が、領域D2においてタイヤサイド部から離れて広がることがより抑えられ、タイヤの空気抵抗がより低減される傾向となる。このように、各領域D1と領域D2とに配置される凹部の割合を異ならせることで、放熱性を向上させる効果、またはタイヤの空気抵抗を低減する効果をより顕著に得ることができる。
また、本発明の空気入りタイヤは、前記各領域D1に配置される前記凹部の割合を等しくし、かつ前記各領域D1に配置される前記凹部の割合を前記領域D2よりも大きくすることを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、凸部付近で空気が滞留して溜まりやすい各領域D1での放熱性がより向上する傾向となるため、放熱性を向上させる効果をより顕著に得ることができる。各領域D1に配置される凹部の割合を等しくすることは、車両装着時でのタイヤ回転方向が指定されていない空気入りタイヤにおいて、タイヤ回転方向がどちらであっても、放熱性を向上させる効果を同等に得ることが可能となるうえで好ましい。
また、本発明の空気入りタイヤは、各前記凸部に近づくに従って前記凹部の配置間隔を小さくすることを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、凸部に近づくほど凹部の配置間隔が小さくなることで、空気が滞留して溜まりやすい凸部付近での放熱性がさらに向上する傾向となるため、放熱性を向上させる効果をより顕著に得ることができる。
また、本発明の空気入りタイヤは、前記各領域D1に配置される前記凹部の割合を等しくし、かつ前記領域D2に配置される前記凹部の割合を前記各領域D1よりも大きくすることを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、凸部の間を通過する空気が、領域D2においてタイヤサイド部から離れて広がることがより抑えられ、タイヤの空気抵抗がより低減される傾向となるため、タイヤの空気抵抗を低減する効果をより顕著に得ることができる。各領域D1に配置される凹部の割合を等しくすることは、車両装着時でのタイヤ回転方向が指定されていない空気入りタイヤにおいて、タイヤ回転方向がどちらであっても、放熱性を向上させる効果を同等に得ることが可能となるうえで好ましい。
また、本発明の空気入りタイヤは、各前記凸部から遠ざかるに従って前記凹部の配置間隔を小さくすることを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、凸部から遠ざかるほど凹部の配置間隔が小さくなることで、空気の流れがタイヤサイド部から離れて広がることがさらに抑えられ、タイヤの空気抵抗がさらに低減される傾向となるため、タイヤの空気抵抗を低減する効果をより顕著に得ることができる。
また、本発明の空気入りタイヤは、車両装着時でのタイヤ回転方向が指定されており、タイヤ回転方向前側の前記凸部寄りの前記領域D1に配置される前記凹部の割合をA、前記領域D2に配置される前記凹部の割合をB、タイヤ回転方向後側の前記凸部寄りの前記領域D1に配置される前記凹部の割合をCとした場合、A>B>Cの関係とすることを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、タイヤの回転時の空気の流れは、タイヤ回転方向前側からタイヤ回転方向後側に流れる。この場合、タイヤ回転方向前側の凸部寄りの領域D1では、凸部のタイヤ回転方向後側に位置するため、凸部を乗り越えた直後の空気の流れが滞留して溜まりやすく、空力的に凹部の効果が比較的小さい。そこで、このタイヤ回転方向前側の凸部寄りの領域D1での凹部の配置割合Aを他(B,C)よりも増加させることで、タイヤ回転方向前側の凸部寄りの領域D1においてタイヤサイド部の表面に空気の流れを引き込んで、凹部による放熱性を向上させる効果、またはタイヤの空気抵抗を低減する効果を得やすい傾向とする。また、タイヤ回転方向後側になるに従って凹部の配置割合B,Cを減少させることで、タイヤ回転方向後側の凸部に近づくに従って空気の流れがタイヤサイド部から剥離しやすくなり、タイヤ回転方向後側の凸部を空気の流れが乗り越えやすくなるため、タイヤの空気抵抗を低減するとともに、排熱しやすくして放熱性を向上させることができる。
また、本発明の空気入りタイヤは、タイヤ回転方向前側の前記凸部寄りの前記領域D1に配置される前記凹部の間隔を前記凸部の長手方向で一定にすることを特徴とする。
車両装着時でのタイヤ回転方向が指定された場合、上述したように、タイヤ回転方向前側の凸部寄りの領域D1では、凸部のタイヤ回転方向後側に位置するため、凸部を乗り越えた直後の空気の流れが滞留して溜まりやすく、空力的に凹部の効果が比較的小さい。そこで、タイヤ回転方向前側の凸部寄りの領域D1に配置される凹部の間隔を凸部の長手方向で一定にすることで、タイヤ回転方向前側の凸部寄りの領域D1において、凸部の長手方向に沿ってタイヤサイド部の表面に空気の流れを引き込んで、凹部による放熱性を向上させる効果、またはタイヤの空気抵抗を低減する効果をより得やすい傾向とすることができる。
また、本発明の空気入りタイヤは、タイヤ回転方向後側に近づくに従い、前記領域D2の前記凹部の配置間隔を大きくすることを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、タイヤ回転方向後側の凸部に近づくに従って空気の流れがタイヤサイド部から剥離しやすくなり、タイヤ回転方向後側の凸部を空気の流れが乗り越えやすくなるため、タイヤの空気抵抗を低減するとともに、排熱しやすくして放熱性を向上させる効果をより得やすい傾向とすることができる。
また、本発明の空気入りタイヤは、タイヤ回転方向後側の前記凸部寄りの前記領域D1に前記凹部を配置しないことを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、タイヤ回転方向後側の凸部寄りの領域D1に凹部を配置しないこと、すなわち配置割合Cを0とすることで、タイヤ回転方向後側の凸部に近づくに従って空気の流れがタイヤサイド部から剥離しやすくなり、タイヤ回転方向後側の凸部を空気の流れが乗り越えやすくなるため、タイヤの空気抵抗を低減するとともに、排熱しやすくして放熱性を向上させる効果をより得やすい傾向とすることができる。
また、本発明の空気入りタイヤは、タイヤ回転方向前側の前記凸部寄りの前記領域D1に配置される前記凹部の開口割合Aが、前記各領域D1および前記領域D2全ての前記凹部に対して20[%]以上50[%]以下であり、前記領域D2に配置される前記凹部の開口割合Bが、前記各領域D1および前記領域D2全ての前記凹部に対して5[%]以上30[%]以下であることを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、タイヤ回転方向前側の凸部寄りの領域D1に配置される凹部の開口割合Aが、各領域D1および領域D2全て凹部に対して20[%]以上50[%]以下であることが、タイヤ回転方向前側の凸部寄りの領域D1において、タイヤサイド部の表面に空気の流れを引き込んで、凹部による放熱性を向上させる効果、またはタイヤの空気抵抗を低減する効果を得やすい傾向とするうえで好ましい。また、領域D2に配置される凹部の開口割合Bが、各領域D1および領域D2全ての凹部に対して5[%]以上30[%]以下であることが、タイヤ回転方向後側の凸部に近づくに従って空気の流れがタイヤサイド部から剥離しやすくなり、タイヤ回転方向後側の凸部を空気の流れが乗り越えやすくなるため、タイヤの空気抵抗を低減するとともに、排熱しやすくして放熱性を向上させる効果を得るうえで好ましい。
また、本発明の空気入りタイヤは、前記凹部は、タイヤ径方向内側に向かって容積を大きく形成されていることを特徴とする。
タイヤサイド部は、タイヤ径方向内側に近づくに連れて回転速度が相対的に遅くなるため、その部分により近い側の凹部の容積を大きくすることで、タイヤ径方向内側において回転速度が遅くても、凸部の間を通過する空気のタイヤサイド部の外側への広がりをより抑えることで、タイヤ発熱や温度上昇が抑えられる傾向となり、かつタイヤの空気抵抗がより低減される傾向となる。また、車両装着時でのタイヤ回転方向が指定される空気入りタイヤにおいては、タイヤ径方向内側において回転速度が遅くても、タイヤ回転方向前側の凸部寄りの領域D1において、タイヤサイド部の表面に空気の流れを引き込んで、凹部による放熱性を向上させる効果、またはタイヤの空気抵抗を低減する効果が得やすい傾向となる。
また、本発明の空気入りタイヤは、前記凸部の長手方向寸法が5[mm]以上であることを特徴とする。
凸部の長手方向寸法が5[mm]未満であると、当該凸部による空気を乱流化させる作用が得難くなる。このため、凸部の長手方向寸法を5[mm]以上とすることが、空気を乱流化させ、タイヤの空気抵抗を低減する効果を顕著に得ることができる。
また、本発明の空気入りタイヤは、前記凸部の突出高さが0.5[mm]以上10.0[mm]以下であることを特徴とする。
凸部の高さが0.5[mm]未満の場合、凸部が空気に接触する範囲が小さいことから、空気の流れが乱流化し難く、タイヤの空気抵抗の低減効果が小さくなる。また、凸部の高さが10.0[mm]を超える場合、凸部が空気に接触する範囲が大きいことから、凸部の後方での空気の流れが膨らむ傾向となり、タイヤの空気抵抗の低減効果が小さくなる。この空気入りタイヤによれば、凸部が空気に適宜接触することで、空気の流れが乱流化し、凸部の後方での空気の膨らみが減少するため、タイヤの空気抵抗を低減する効果を顕著に得ることができる。
また、本発明の空気入りタイヤは、前記凸部の断面形状が、頂点を有して底面側に漸次広がることを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、凸部の長手方向に直交する断面形状が三角形状に近似することとなり、これにより、凸部の体積が矩形断面などと比較して少なくなることから、凸部のゴムボリュームが低減化されてタイヤ重量の増加を抑えるため、燃費をより向上することができる。
また、本発明の空気入りタイヤは、前記凸部の断面形状が、少なくとも1つの円弧を有することを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、例えば、凸部の断面形状が円弧で膨らむように形成されていたり、凸部の断面形状が円弧で凹むように形成されていたりすることで、凸部の体積が矩形断面などと比較して少なくなることから、凸部のゴムボリュームが低減化されてタイヤ重量の増加を抑えるため、燃費をより向上することができる。
また、本発明の空気入りタイヤは、前記凹部の深さが0.5[mm]以上5.0[mm]以下であることを特徴とする。
凹部の深さが0.5[mm]未満の場合、凹部の内面が空気に接触する範囲が小さいことから、空気の流れが乱流化し難くなる。また、凹部の深さが5.0[mm]を超える場合、凹部の内面が空気に接触する範囲が大きすぎて、空気抵抗が増加する傾向となるうえ、凹部を有する領域の元々のゴムボリュームが増大するため、タイヤ重量の増大を招く。この空気入りタイヤによれば、凹部の内面が空気に適宜接触することで、空気の流れが適宜乱流化するため、タイヤの空気抵抗を低減する効果や、放熱性を向上させる効果を顕著に得ることができる。
本発明に係る空気入りタイヤは、タイヤ周りの空気流をさらに改善することができる。
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
図1は、本実施の形態に係る空気入りタイヤの子午断面図である。以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸(図示せず)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、前記回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、前記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤ1の回転軸に直交するとともに、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ幅は、タイヤ幅方向の外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまりタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。本実施の形態では、タイヤ赤道線にタイヤ赤道面と同じ符号「CL」を付す。
本実施の形態の空気入りタイヤ1は、図1に示すようにトレッド部2と、その両側のショルダー部3と、各ショルダー部3から順次連続するサイドウォール部4およびビード部5とを有している。また、この空気入りタイヤ1は、カーカス層6と、ベルト層7と、ベルト補強層8とを備えている。
トレッド部2は、ゴム材(トレッドゴム)からなり、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面が空気入りタイヤ1の輪郭となる。トレッド部2の外周表面、つまり、走行時に路面と接触する踏面には、トレッド面21が形成されている。トレッド面21は、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ赤道線CLと平行なストレート主溝である複数(本実施の形態では4本)の主溝22が設けられている。そして、トレッド面21は、これら複数の主溝22によりタイヤ周方向に沿って延び、タイヤ赤道線CLと平行なリブ状の陸部23が複数形成されている。また、図には明示しないが、トレッド面21は、各陸部23において、主溝22に交差するラグ溝が設けられている。陸部23は、ラグ溝によってタイヤ周方向で複数に分割されている。また、ラグ溝は、トレッド部2のタイヤ幅方向最外側でタイヤ幅方向外側に開口して形成されている。なお、ラグ溝は、主溝22に連通している形態、または主溝22に連通していない形態の何れであってもよい。
ショルダー部3は、トレッド部2のタイヤ幅方向両外側の部位である。また、サイドウォール部4は、空気入りタイヤ1におけるタイヤ幅方向の最も外側に露出したものである。また、ビード部5は、ビードコア51とビードフィラー52とを有する。ビードコア51は、スチールワイヤであるビードワイヤをリング状に巻くことにより形成されている。ビードフィラー52は、カーカス層6のタイヤ幅方向端部がビードコア51の位置で折り返されることにより形成された空間に配置されるゴム材である。
カーカス層6は、各タイヤ幅方向端部が、一対のビードコア51でタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返され、かつタイヤ周方向にトロイド状に掛け回されてタイヤの骨格を構成するものである。このカーカス層6は、タイヤ周方向に対する角度がタイヤ子午線方向に沿いつつタイヤ周方向にある角度を持って複数並設されたカーカスコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。カーカスコードは、有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。このカーカス層6は、少なくとも1層で設けられている。
ベルト層7は、少なくとも2層のベルト71,72を積層した多層構造をなし、トレッド部2においてカーカス層6の外周であるタイヤ径方向外側に配置され、カーカス層6をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト71,72は、タイヤ周方向に対して所定の角度(例えば、20度〜30度)で複数並設されたコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。コードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。また、重なり合うベルト71,72は、互いのコードが交差するように配置されている。
ベルト補強層8は、ベルト層7の外周であるタイヤ径方向外側に配置されてベルト層7をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト補強層8は、タイヤ周方向に略平行(±5度)でタイヤ幅方向に複数並設されたコード(図示せず)がコートゴムで被覆されたものである。コードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。図1で示すベルト補強層8は、ベルト層7のタイヤ幅方向端部を覆うように配置されている。ベルト補強層8の構成は、上記に限らず、図には明示しないが、ベルト層7全体を覆うように配置された構成、または、例えば2層の補強層を有し、タイヤ径方向内側の補強層がベルト層7よりもタイヤ幅方向で大きく形成されてベルト層7全体を覆うように配置され、タイヤ径方向外側の補強層がベルト層7のタイヤ幅方向端部のみを覆うように配置されている構成、あるいは、例えば2層の補強層を有し、各補強層がベルト層7のタイヤ幅方向端部のみを覆うように配置されている構成であってもよい。すなわち、ベルト補強層8は、ベルト層7の少なくともタイヤ幅方向端部に重なるものである。また、ベルト補強層8は、帯状(例えば幅10[mm])のストリップ材をタイヤ周方向に巻き付けて設けられている。
図2は、本実施の形態に係る空気入りタイヤをタイヤ幅方向から視た外観図であり、図3〜図6は、本実施の形態に係る空気入りタイヤをタイヤ幅方向から視た一部外観図である。上述のように構成された空気入りタイヤ1は、図2に示すように、少なくとも一方のタイヤサイド部Sにおいて、当該タイヤサイド部Sの面よりタイヤの外側に突出する凸部9が多数設けられ、かつタイヤサイド部Sの面よりタイヤの内側に窪む凹部10が多数設けられている。
ここで、タイヤサイド部Sとは、図1において、トレッド部2の接地端Tからタイヤ幅方向外側であってリムチェックラインLからタイヤ径方向外側の範囲で一様に連続する面をいう。また、接地端Tとは、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みし、かつ正規内圧を充填するとともに正規荷重の70%をかけたとき、この空気入りタイヤ1のトレッド部2のトレッド面21が路面と接地する領域において、タイヤ幅方向の両最外端をいい、タイヤ周方向に連続する。また、リムチェックラインLとは、タイヤのリム組みが正常に行われているか否かを確認するためのラインであり、一般には、ビード部5の表側面において、リムフランジよりもタイヤ径方向外側であってリムフランジ近傍となる部分に沿ってタイヤ周方向に連続する環状の凸線として示されている。
なお、正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、あるいは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。また、正規荷重とは、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。
凸部9は、図2に示すように、タイヤサイド部Sの範囲において、タイヤ径方向に長手状に形成されたゴム材(タイヤサイド部Sを構成するゴム材であっても、当該ゴム材とは異なるゴム材であってもよい)からなる突条として形成され、かつタイヤ周方向に間隔をおいて複数配置されている。凸部9のタイヤ周方向の個数は、例えば、乗用車用タイヤの場合、10個〜70個が好ましい。
凸部9は、図3に示すように、タイヤ径方向に沿って直線状に形成されていてもよく、図4に示すように、タイヤ径方向に対して傾いて直線状に形成されていてもよく、図5に示すように、屈曲して形成されていてもよく、図6に示すように、湾曲して形成されていてもよい。この凸部9は、図2に示すように、タイヤ周方向に等間隔で配置されていてもよく、図には明示しないが、タイヤ周方向に所定間隔で隣接する複数の凸部9を1つの群とし、当該凸部9の群がタイヤ周方向に等間隔で配置されていてもよい。また、凸部9は、図には明示しないが、タイヤ周方向に互い違いに長さが異なるように配置されていてもよい。
また、凸部9は、タイヤ幅方向から視た場合の外形状が、図2〜図6に示すように長方形状であったり、図には明示しないが、端部が円弧状であったり、端部が尖っていたり、三角形状であったりしてもよい。
また、凸部9は、長手方向に直交する断面形状が、半円形状、半楕円形状、半長円形状、三角形状、四角形状、台形状、または断面外形の少なくとも1部が円弧を有して形成されている。ここで、凸部9の長手方向に直交するとは、その延在方向に直交することを意味し、凸部9が湾曲して形成されている場合は、湾曲部分の接線に直交することを意味する。
凹部10は、各凸部9の間の領域に設けられている。この凹部10を有する領域は、図3〜図6に示すように、タイヤ周方向で隣接する各凸部9のタイヤ径方向最外側の端部同士を繋ぐ仮想直線と、タイヤ周方向で隣接する各凸部9のタイヤ径方向最内側の端部同士を繋ぐ仮想直線との間の領域をいう。なお、凹部10は、上記領域内に少なくとも配置されていればよいが、上記領域外のタイヤサイド部Sに設けられていてもよい。
凹部10は、タイヤサイド部Sの表面に開口する開口形状が、円形状、楕円形状、長円形状、多角形状などに形成されている(図2では、円形状の開口形状として示す)。また、凹部10は、断面形状が、半円形状、半楕円形状、半長円形状、すり鉢形状、または矩形状などに形成されている。
この凹部は、例えば、図2に示すようにタイヤ周方向とタイヤ径方向とで等間隔に配置されている。また、凹部10は、図には明示しないが、千鳥状に配置されていてもよく、四角形または三角形を基準とするように配置されていてもよい。
このように、本実施の形態の空気入りタイヤ1は、少なくとも一方のタイヤサイド部Sに、多数の凸部9および多数の凹部10を有し、凸部9は、タイヤ径方向に沿って長手状の突条として形成され、かつタイヤ周方向で間隔を空けて配置されており、凹部10は、各凸部9の間の領域に設けられている。
図7は、本実施の形態に係る空気入りタイヤのタイヤサイド部の一部をタイヤ周方向で切断した断面図である。なお、図7においては、凹部10を省略して示している。例えば、図7中の左側をタイヤ回転方向前側とし、図7中の右側をタイヤ回転方向後側とした場合、空気の流れは、図7に矢印Fで示すように、タイヤ回転方向前側からタイヤ回転方向後側に流れる。そして、この空気の流れは、タイヤサイド部Sの表面において、凸部9を乗り越えるようにして通過する。凸部9は、この空気の流れを乱流化させる。このため、凸部9を有する部分に乱流境界層が発生し、通過する空気がタイヤサイド部Sから離れて広がることが抑えられるので、タイヤの空気抵抗が低減され、燃費を向上することが可能になる。
ところで、凸部9付近では、図7に示すように空気が滞留して溜まりやすい部分となる。また、凸部9を設けた箇所のゴムゲージが他の箇所よりも厚くなることでタイヤの発熱量が多くなったり、エンジンやブレーキの排熱を持った空気によってタイヤのゴムの温度が上昇したりする。このため、凸部9のタイヤ周方向の両側での放熱性が低下するおそれがある。この点、本実施の形態の空気入りタイヤ1では、各凸部9の間の領域に凹部10が設けられているため、当該凹部10がタイヤサイド部Sのゴムボリュームを低減するとともに空気を乱流化させる。このため、ゴムボリュームの低減化によって熱の発生が抑制される。しかも、凹部10による空気の乱流化によって、凹部10を設けていない場合である図7に一点鎖線で示す空気の流れF1に対し、凹部10を設けた場合である図7に実線で示す空気の流れF2のように、凸部9の間を通過する空気がタイヤサイド部Sから離れて広がることがより抑えられる。このように、凸部9の間を通過する空気のタイヤサイド部Sの外側への広がりをより抑えることで、空気の流れF2によって放熱性が向上するため、タイヤ発熱や温度上昇が抑えられ、タイヤの耐久性を向上することが可能になる。さらに、凸部9の間を通過する空気のタイヤサイド部Sの外側への広がりをより抑えることで、タイヤの空気抵抗がより低減され、燃費を向上することが可能になる。
すなわち、この空気入りタイヤ1によれば、タイヤサイド部Sに設けられた突条の凸部9と、凸部9の間の領域に設けられた凹部10とで、それぞれタイヤ周りの空気流をさらに改善することが可能である。
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1は、図3〜図6に示すように、タイヤ周方向で隣接する各凸部9の間の領域を、タイヤ周方向で3つの領域に分割して各凸部9寄りの各領域D1と、各領域D1の間の領域D2とし、各領域D1と領域D2とに配置される凹部10の割合を異ならせている。
領域D1は、図3〜図6に示すように、隣接する各凸部9のタイヤ径方向の各中点Mを結ぶ直線をピッチ長Pとし、このピッチ長Pの1/5の範囲で各凸部9寄りの領域である。また、領域D2は、ピッチ長Pの3/5の範囲の各領域D1の間の領域である。各領域D1と領域D2との境界線は、図3〜図6に示すように、凸部9の長手方向に沿って当該凸部9の中心を通過する凸部9の中心線Gを、凸部9のタイヤ周方向での配置に基づいて凸部9からピッチ長Pの1/5の位置に配置したものとする。
この空気入りタイヤ1によれば、各領域D1と領域D2とに配置される凹部10の割合を異ならせることで、タイヤ周りの空気流をさらに改善することが可能である。例えば、各領域D1での凹部10の配置割合を、領域D2での凹部10の配置割合よりも比較的大きくすれば、図7において、凸部9付近で空気が滞留して溜まりやすい領域D1での放熱性がより向上する傾向となる。一方、例えば、領域D2での凹部10の配置割合を、各領域D1での凹部10の配置割合よりも比較的大きくすれば、凸部9の間を通過する空気が、領域D2においてタイヤサイド部Sから離れて広がることがより抑えられ、タイヤの空気抵抗がより低減される傾向となる。このように、各領域D1と領域D2とに配置される凹部10の割合を異ならせることで、放熱性を向上させる効果、またはタイヤの空気抵抗を低減する効果をより顕著に得ることが可能になる。
なお、凹部10の配置割合とは、凹部10の開口面積および深さを一定(凹部10の容積を一定)として凹部10の間隔を異ならせても、凹部10の間隔を一定として凹部10の開口面積または深さを(凹部10の容積を)異ならせてもよい。タイヤを製造する上では、凹部10の開口面積および深さを一定(凹部10の容積を一定)として凹部10の間隔を異ならせるほうが容易であり好ましい。
具体的に、本実施の形態の空気入りタイヤ1は、本実施の形態に係る空気入りタイヤをタイヤ幅方向から視た一部外観図である図8に示すように、各領域D1に配置される凹部10の割合を等しくし、かつ各領域D1に配置される凹部10の割合を領域D2よりも大きくする。なお、図8は、凸部9がタイヤ径方向に沿って直線状に形成され、凹部10が円形に開口している形態を例示している。
この空気入りタイヤ1によれば、凸部9付近で空気が滞留して溜まりやすい各領域D1での放熱性がより向上する傾向となるため、放熱性を向上させる効果をより顕著に得ることが可能になる。各領域D1に配置される凹部10の割合を等しくすることは、車両装着時でのタイヤ回転方向が指定されていない空気入りタイヤにおいて、タイヤ回転方向がどちらであっても、放熱性を向上させる効果を同等に得ることが可能となるうえで好ましい。
さらに、本実施の形態の空気入りタイヤ1は、本実施の形態に係る空気入りタイヤをタイヤ幅方向から視た一部外観図である図9に示すように、各凸部9に近づくに従って凹部10の配置間隔を小さくすることが好ましい。この場合は、凹部10の開口面積および深さを一定(凹部10の容積を一定)として凹部10のタイヤ周方向の間隔を異ならせる。なお、図9は、凸部9がタイヤ径方向に沿って直線状に形成され、凹部10が円形に開口している形態を例示している。
この空気入りタイヤ1によれば、凸部9に近づくほど凹部10の配置間隔が小さくなることで、空気が滞留して溜まりやすい凸部9付近での放熱性がさらに向上する傾向となるため、放熱性を向上させる効果をより顕著に得ることが可能になる。
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1は、本実施の形態に係る空気入りタイヤをタイヤ幅方向から視た一部外観図である図10に示すように、各領域D1に配置される凹部10の割合を等しくし、かつ領域D2に配置される凹部10の割合を各領域D1よりも大きくする。なお、図10は、凸部9がタイヤ径方向に沿って直線状に形成され、凹部10が円形に開口している形態を例示している。
この空気入りタイヤ1によれば、凸部9の間を通過する空気が、領域D2においてタイヤサイド部Sから離れて広がることがより抑えられ、タイヤの空気抵抗がより低減される傾向となるため、タイヤの空気抵抗を低減する効果をより顕著に得ることが可能になる。各領域D1に配置される凹部10の割合を等しくすることは、車両装着時でのタイヤ回転方向が指定されていない空気入りタイヤにおいて、タイヤ回転方向がどちらであっても、放熱性を向上させる効果を同等に得ることが可能となるうえで好ましい。
さらに、本実施の形態の空気入りタイヤ1は、本実施の形態に係る空気入りタイヤをタイヤ幅方向から視た一部外観図である図11に示すように、各凸部9から遠ざかるに従って凹部10の配置間隔を小さくすることが好ましい。この場合は、凹部10の開口面積および深さを一定(凹部10の容積を一定)として凹部10のタイヤ周方向の間隔を異ならせる。なお、図11は、凸部9がタイヤ径方向に沿って直線状に形成され、凹部10が円形に開口している形態を例示している。
この空気入りタイヤ1によれば、凸部9から遠ざかるほど凹部10の配置間隔が小さくなることで、空気の流れがタイヤサイド部Sから離れて広がることがさらに抑えられ、タイヤの空気抵抗がさらに低減される傾向となるため、タイヤの空気抵抗を低減する効果をより顕著に得ることが可能になる。
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1は、本実施の形態に係る空気入りタイヤをタイヤ幅方向から視た一部外観図である図12に示すように、車両装着時でのタイヤ回転方向が指定されており、タイヤ回転方向前側の凸部9寄りの領域D1に配置される凹部10の割合をA、領域D2に配置される凹部10の割合をB、タイヤ回転方向後側の凸部9寄りの領域D1に配置される凹部10の割合をCとした場合、A>B>Cの関係とする。なお、図12は、凸部9がタイヤ径方向に沿って直線状に形成され、凹部10が円形に開口している形態を例示している。
ここで、車両装着時でのタイヤ回転方向が指定される空気入りタイヤ1は、図には明示しないが、タイヤ回転方向が、例えば、サイドウォール部4に設けられた指標により示されている。すなわち、タイヤ回転方向の指定に従ってリム組みし、車両に装着することにより、タイヤ回転方向が規定される。
図13は、本実施の形態に係る空気入りタイヤのタイヤサイド部の一部をタイヤ周方向で切断した断面図である。なお、図13においては、凹部10を省略して示している。図13に示すように、タイヤの回転時の空気の流れは、図13に矢印Fで示すように、タイヤ回転方向前側からタイヤ回転方向後側に流れる。この場合、タイヤ回転方向前側の凸部9寄りの領域D1では、凸部9のタイヤ回転方向後側に位置するため、凸部9を乗り越えた直後の空気の流れが滞留して溜まりやすく、空力的に凹部10の効果が比較的小さい。そこで、このタイヤ回転方向前側の凸部9寄りの領域D1での凹部10の配置割合Aを他(B,C)よりも増加させることで、図13に実線で示す空気の流れF3のように、タイヤ回転方向前側の凸部9寄りの領域D1においてタイヤサイド部Sの表面に空気の流れを引き込んで、凹部10による放熱性を向上させる効果、またはタイヤの空気抵抗を低減する効果を得やすい傾向とする。また、タイヤ回転方向後側になるに従って凹部10の配置割合B,Cを減少させることで、図13に実線で示す空気の流れF3のように、タイヤ回転方向後側の凸部9に近づくに従って空気の流れがタイヤサイド部Sから剥離しやすくなり、タイヤ回転方向後側の凸部9を空気の流れが乗り越えやすくなるため、タイヤの空気抵抗を低減するとともに、排熱しやすくして放熱性を向上させることが可能になる。
さらに、本実施の形態の空気入りタイヤ1は、図12に示すように、車両装着時でのタイヤ回転方向が指定される空気入りタイヤ1において、タイヤ回転方向前側の凸部9寄りの領域D1に配置される凹部10の間隔を凸部9の長手方向で一定にすることが好ましい。
上述したように、タイヤ回転方向前側の凸部9寄りの領域D1では、凸部9のタイヤ回転方向後側に位置するため、凸部9を乗り越えた直後の空気の流れが滞留して溜まりやすく、空力的に凹部10の効果が比較的小さい。そこで、タイヤ回転方向前側の凸部9寄りの領域D1に配置される凹部10の間隔を凸部9の長手方向で一定にすることで、タイヤ回転方向前側の凸部9寄りの領域D1において、凸部9の長手方向に沿ってタイヤサイド部Sの表面に空気の流れを引き込んで、凹部10による放熱性を向上させる効果、またはタイヤの空気抵抗を低減する効果をより得やすい傾向とする。
さらに、本実施の形態の空気入りタイヤ1は、本実施の形態に係る空気入りタイヤをタイヤ幅方向から視た一部外観図である図14に示すように、車両装着時でのタイヤ回転方向が指定される空気入りタイヤ1において、タイヤ回転方向後側に近づくに従い、領域D2の凹部10の配置間隔を大きくすることが好ましい。なお、図14は、凸部9がタイヤ径方向に沿って直線状に形成され、凹部10が円形に開口している形態を例示している。
凹部10の間隔とは、タイヤ径方向やタイヤ周方向での凹部10の間隔をいう。この空気入りタイヤ1によれば、タイヤ回転方向後側に近づくに従い、領域D2の凹部10の配置間隔を大きくすることで、タイヤ回転方向後側の凸部9に近づくに従って空気の流れがタイヤサイド部Sから剥離しやすくなり、タイヤ回転方向後側の凸部9を空気の流れが乗り越えやすくなるため、タイヤの空気抵抗を低減するとともに、排熱しやすくして放熱性を向上させる効果をより得やすい傾向とする。
さらに、本実施の形態の空気入りタイヤ1は、本実施の形態に係る空気入りタイヤをタイヤ幅方向から視た一部外観図である図15に示すように、車両装着時でのタイヤ回転方向が指定される空気入りタイヤ1において、タイヤ回転方向後側の凸部9寄りの領域D1に凹部10を配置しなくてもよい。なお、図15は、凸部9がタイヤ径方向に沿って直線状に形成され、凹部10が円形に開口している形態を例示している。
この空気入りタイヤ1によれば、タイヤ回転方向後側の凸部9寄りの領域D1に凹部10を配置しないこと、すなわち配置割合Cを0とすることで、タイヤ回転方向後側の凸部9に近づくに従って空気の流れがタイヤサイド部Sから剥離しやすくなり、タイヤ回転方向後側の凸部9を空気の流れが乗り越えやすくなるため、タイヤの空気抵抗を低減するとともに、排熱しやすくして放熱性を向上させる効果をより得やすい傾向とする。
さらに、本実施の形態の空気入りタイヤ1は、車両装着時でのタイヤ回転方向が指定される空気入りタイヤ1において、タイヤ回転方向前側の凸部9寄りの領域D1に配置される凹部10の開口割合Aが、各領域D1および領域D2全ての凹部10に対して20[%]以上50[%]以下であり、領域D2に配置される凹部10の開口割合Bが、各領域D1および領域D2全ての凹部10に対して5[%]以上30[%]以下であることが好ましい。
タイヤ回転方向前側の凸部9寄りの領域D1に配置される凹部10の開口割合Aが、各領域D1および領域D2全ての凹部10に対して20[%]以上50[%]以下であることが、タイヤ回転方向前側の凸部9寄りの領域D1において、タイヤサイド部Sの表面に空気の流れを引き込んで、凹部10による放熱性を向上させる効果、またはタイヤの空気抵抗を低減する効果を得やすい傾向とするうえで好ましい。また、領域D2に配置される凹部10の開口割合Bが、各領域D1および領域D2全ての凹部10に対して5[%]以上30[%]以下であることが、タイヤ回転方向後側の凸部9に近づくに従って空気の流れがタイヤサイド部Sから剥離しやすくなり、タイヤ回転方向後側の凸部9を空気の流れが乗り越えやすくなるため、タイヤの空気抵抗を低減するとともに、排熱しやすくして放熱性を向上させる効果を得るうえで好ましい。
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1では、本実施の形態に係る空気入りタイヤをタイヤ幅方向から視た一部外観図である図16に示すように、凹部10は、タイヤ径方向内側に向かって容積を大きく形成されていることが好ましい。なお、図16は、凸部9がタイヤ径方向に沿って直線状に形成され、凹部10が円形に開口している形態を例示している。
凹部10の容積は、凹部10の深さ、または凹部10の開口部の面積によって変化する。例えば、図16では、凹部10の深さを一定として開口部の面積をタイヤ径方向内側に向かって漸次大きくしている形態を例示している。タイヤサイド部Sは、タイヤ径方向内側に近づくに連れて回転速度が相対的に遅くなるため、その部分により近い側の凹部の容積を大きくすることで、タイヤ径方向内側において回転速度が遅くても、凸部9の間を通過する空気のタイヤサイド部Sの外側への広がりをより抑えることで、タイヤ発熱や温度上昇が抑えられる傾向となり、かつタイヤの空気抵抗がより低減される傾向となる。また、車両装着時でのタイヤ回転方向が指定される空気入りタイヤ1においては、タイヤ径方向内側において回転速度が遅くても、タイヤ回転方向前側の凸部9寄りの領域D1において、タイヤサイド部Sの表面に空気の流れを引き込んで、凹部10による放熱性を向上させる効果、またはタイヤの空気抵抗を低減する効果が得やすい傾向となる。なお、図16では、車両装着時でのタイヤ回転方向が指定される空気入りタイヤ1として示しているが、車両装着時でのタイヤ回転方向が指定されない空気入りタイヤ1であってもよく、タイヤ径方向内側に向かって凹部10の容積を大きく形成することの上記効果を得ることが可能である。
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1は、凸部9の長手方向寸法が5[mm]以上であることが好ましい。
凸部9の長手方向寸法が5[mm]未満であると、当該凸部9による空気を乱流化させる作用が得難くなる。このため、凸部9の長手方向寸法を5[mm]以上とすることが、空気を乱流化させ、タイヤの空気抵抗を低減する効果を顕著に得ることが可能になる。
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1は、凸部9の突出高さが0.5[mm]以上10.0[mm]以下であることが好ましい。
凸部9の高さが0.5[mm]未満の場合、凸部9が空気に接触する範囲が小さいことから、空気の流れが乱流化し難く、タイヤの空気抵抗の低減効果が小さくなる。また、凸部9の高さが10.0[mm]を超える場合、凸部9が空気に接触する範囲が大きいことから、凸部9の後方での空気の流れが膨らむ傾向となり、タイヤの空気抵抗の低減効果が小さくなる。この点、本実施の形態の空気入りタイヤ1によれば、凸部9が空気に適宜接触することで、空気の流れが乱流化し、凸部9の後方での空気の膨らみが減少するため、タイヤの空気抵抗を低減する効果を顕著に得ることが可能になる。なお、タイヤの空気抵抗を低減する効果をより顕著に得るため、凸部9の高さを1[mm]以上5[mm]以下とすることが好ましい。なお、凸部9の高さが0.5[mm]以上10.0[mm]以下の範囲は、乗用車用の空気入りタイヤにおいて好ましく、重荷重用のような外径が大きい空気入りタイヤの場合は、この範囲に限らず、当該乗用車用の範囲を超える。
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1は、凸部9の断面形状が、頂点を有して底面側に漸次広がることが好ましい。
すなわち、凸部9の長手方向に直交する断面形状が三角形状に近似することとなり、これにより、凸部9の体積が矩形断面などと比較して少なくなることから、凸部9のゴムボリュームが低減化されてタイヤ重量の増加を抑えるため、燃費をより向上することが可能になる。
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1は、凸部9の断面形状が、少なくとも1つの円弧を有することが好ましい。
例えば、凸部の断面図である図17に示すように、凸部9の断面形状が円弧で膨らむように形成されていたり、凸部の断面図である図18に示すように、凸部9の断面形状が円弧で凹むように形成されていたりすることで、凸部9の体積が矩形断面などと比較して少なくなることから、凸部9のゴムボリュームが低減化されてタイヤ重量の増加を抑えるため、燃費をより向上することが可能になる。
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1は、凹部10の深さが0.5[mm]以上5.0[mm]以下であることが好ましい。
凹部10の深さが0.5[mm]未満の場合、凹部10の内面が空気に接触する範囲が小さいことから、空気の流れが乱流化し難くなる。また、凹部10の深さが5.0[mm]を超える場合、凹部10の内面が空気に接触する範囲が大きすぎて、空気抵抗が増加する傾向となるうえ、凹部10を有する領域の元々のゴムボリュームが増大するため、タイヤ重量の増大を招く。この点、本実施の形態の空気入りタイヤ1によれば、凹部10の内面が空気に適宜接触することで、空気の流れが適宜乱流化するため、タイヤの空気抵抗を低減する効果や、放熱性を向上させる効果を顕著に得ることが可能になる。なお、凹部10の深さが0.5[mm]以上5.0[mm]以下の範囲は、乗用車用の空気入りタイヤにおいて好ましく、重荷重用のような外径が大きい空気入りタイヤの場合は、この範囲に限らず、当該乗用車用の範囲を超える。
なお、上述した空気入りタイヤ1は、乗用車用のみならず、重荷重用やランフラット用の空気入りタイヤに適用される。乗用車用の場合は、上述のごとく効果が得られる。また、重荷重用の場合は、特に、大荷重において、凸部9によってタイヤサイド部Sの圧縮時でのタイヤの変形をより抑えるとともに、凹部10によってタイヤサイド部Sの圧縮時での温度上昇を抑えて、耐久性を向上する。また、ランフラット用の場合も、特に、パンク時において、凸部9によってタイヤサイド部Sの圧縮時でのタイヤの変形をより抑えるとともに、凹部10によってタイヤサイド部Sの圧縮時での温度上昇を抑えて、耐久性を向上する。
本実施例では、条件が異なる複数種類の空気入りタイヤについて、燃費や荷重耐久性に関する性能試験が行われた(図19および図20参照)。
この性能試験では、タイヤサイズ185/65R15の空気入りタイヤを、正規リムにリム組みし、正規内圧を充填した。
燃費の性能試験は、上記空気入りタイヤを、排気量1500[cc]+モータアシスト駆動の小型前輪駆動車に装着し、この試験車両にて、全周2[km]のテストコースで時速100[km/h]にて50周走行した場合の燃費を計測した。そして、この計測結果に基づいて、従来例の空気入りタイヤを基準(100)とし燃費改善率を指数評価する。この指数評価は、数値が大きいほど燃費改善率が向上されていることを示している。
荷重耐久性の性能試験は、上記空気入りタイヤを正規リムに装着し、空気圧を180[kPa]にした。この空気入りタイヤを、ドラム表面が平滑な鋼性で直径1707[mm]のドラム試験機を用い、周辺温度38±3[℃]に制御した環境にて、速度を81[km/h]、負荷加重をJATMA規定の最大荷重の88[%]から2時間毎に13[%]ずつ荷重を増加させてタイヤが破壊するまでの総走行距離を測定した。そして、この測定結果に基づいて、従来例の空気入りタイヤを基準(100)とし荷重耐久性を指数評価する。この指数評価は、数値が大きいほど荷重耐久性が向上されていることを示している。
図19において、従来例の空気入りタイヤは、両側のタイヤサイド部に凸部および凹部を有していない。また、比較例の空気入りタイヤは、両側のタイヤサイド部に突条の凸部が設けられているが、凸部間に凹部を有していない。なお、凸部は、タイヤ径方向に沿って長さが均等で、タイヤ周方向で等間隔に配置され、タイヤ周方向に30個設けられ、幅が3[mm]とされ、ピッチ長Pが51[mm]とされている。
一方、図19および図20において、実施例1〜実施例18の空気入りタイヤは、両側のタイヤサイド部に凸部が設けられ、凸部間に凹部が設けられている。なお、凸部は、タイヤ径方向に沿って長さが均等で、タイヤ周方向で等間隔に配置され、タイヤ周方向に30個設けられ、幅が3[mm]とされ、ピッチ長Pが51[mm]とされている。また、凹部は、実施例1〜実施例12、実施例14において開口面積および深さを一定(容積を一定)とされ、実施例13、実施例15〜実施例18において深さが一定で開口面積(容積)を異ならせている。そして、実施例1〜実施例3の空気入りタイヤは、凹部の開口割合(配置割合)が各領域D1=領域D2であって、凹部の間隔が均等とされている。また、実施例4〜実施例6の空気入りタイヤは、凹部の開口割合(配置割合)が領域D1=領域D1であって、領域D1>領域D2とされている。そのうち、実施例6は、凸部に近づくに従って凹部の間隔が小さく配置されている。また、実施例7および実施例8の空気入りタイヤは、凹部の開口割合(配置割合)が領域D1=領域D1であって、領域D1<領域D2とされている。そのうち、実施例8は、凸部から遠ざかるに従って凹部の間隔が小さく配置されている。また、実施例9〜実施例18の空気入りタイヤは、タイヤの回転方向が指定され、凹部の開口割合(配置割合)A,B,Cが、A>B>Cの関係とされている。そのうち、実施例実施例11、実施例12および実施例18の空気入りタイヤは、タイヤ回転方向前側の領域D1での凹部のタイヤ径方向の間隔が一定とされている。実施例12および実施例18の空気入りタイヤは、タイヤ回転方向後側への領域D2での凹部の配置間隔が大きくされている。実施例14〜実施例18の空気入りタイヤは、タイヤ回転方向後側の頂域D1に凹部が設けられていない。実施例16の空気入りタイヤは、凸部の断面形状が三角形(二等辺三角形)とされている。実施例17および実施例18の空気入りタイヤは、凸部の断面形状が三角形(二等辺三角形)の2辺が円弧の凹みで形成されている(図18参照)。
そして、図19および図20の試験結果に示すように、実施例1〜実施例18の空気入りタイヤは、燃費や荷重耐久性が改善されていることが分かる。