JP5833433B2 - 映像信号伝送システム - Google Patents

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本発明は、ワイヤレスカメラを備えた端末側から基地局側への本線系の伝送と、基地局側から端末側への送り返し系の伝送とを行う映像信号伝送システムに関し、特に、ワイヤレスカメラに用いられる同期信号であるゲンロック信号を無線伝送する技術に関する。
従来、スポーツ中継、音楽番組、ドラマ撮影等の撮影現場において、ワイヤレスカメラに対する需要は大きい。ワイヤレスカメラは、従来の有線カメラ(ケーブル付きカメラ)と比較して、カメラワークが向上するだけでなく、設営準備の簡素化、撮影者自身を含む出演者及び観客に対する安全性が向上する等、様々な効果を生み出すことができる。そこで、ハイビジョンテレビ信号を低遅延かつ高い回線信頼性で無線伝送するワイヤレスカメラを用いた映像信号伝送システムの開発が進められている(例えば、非特許文献1を参照)。
この映像信号伝送システムには、本線系の伝送と送り返し系の伝送とがある。本線系は、カメラ(以下、「端末側」という。)により撮影されたハイビジョン映像である本線映像の映像信号とカメラ制御信号及びインカム信号等の制御情報とを、端末側から副調整室(以下、「基地局側」という。)へ伝送する系統である。送り返し系は、送り返し映像の映像信号と端末側のカメラ制御信号、インカム信号、ゲンロック信号及びタリー信号等の制御情報とを、基地局側から端末側へ伝送する系統である。映像信号伝送システムは、これらの2系統の伝送を行っている。
ここで、ゲンロック信号は、有線カメラ及びワイヤレスカメラに用いられる同期信号である。本線系のインカム信号は、カメラマンから基地局側のオペレータへ伝送される音声情報をいい、送り返し系のインカム信号は、基地局側のオペレータからカメラマンへ伝送される音声情報をいう。
鈴木、中川、池田、"ミリ波モバイルカメラ用42GHz帯送り返し伝送システムの開発"、社団法人映像情報メディア学会、映像情報メディア学会技術報告、vol.35,no.10,p.35−38,BCT2011−38、2011年2月18日
ところで、番組撮影等に用いられる有線カメラにおいて、当該カメラから出力されるハイビジョン映像である本線映像の映像信号の同期は、スイッチャーまたはCCUから送信されるゲンロック信号に基づいて実現している。しかしながら、従来のワイヤレスカメラを用いた映像信号伝送システムにおいては、ゲンロック信号に基づいて同期を実現する手法が十分に確立しておらず、ワイヤレスカメラと他の有線カメラとの間で映像信号の同期をとることができない。そのため、ワイヤレスカメラから出力されるハイビジョン映像は、有線カメラから出力されるハイビジョン映像と異なりフレーム同期がかかっていないため、有線カメラから出力されるハイビジョン映像のフレームとの間で先頭位置が異なると共に、そのフレームの位置も時間と共に変化してしまう。つまり、ワイヤレスカメラと有線カメラでは、映像出力のタイミング周期が一致していない。
そこで、現状では、ワイヤレスカメラから出力されるハイビジョン映像は、FS(Frame Synchronizer)装置に入力している。FS装置は、ワイヤレスカメラから出力されたハイビジョン映像のフレームに遅延を加え、有線カメラから出力されたハイビジョン映像との間でフレームの先頭位置を強制的に一致させて、擬似的に2つのハイビジョン映像のフレームの位置とタイミング周期とが一致するように調整するものである。
しかしながら、ワイヤレスカメラから出力されたハイビジョン映像のフレームをFSによって遅延させた結果、映像信号伝送システムから出力された映像の遅延が増大する問題があった。また、FS装置によって擬似的に一致させた2つのハイビジョン映像のタイミングについても、実際のタイミング周期(ゲンロック信号の周波数)に対してずれが大きくなっていく。そのため、一定時間内に出力される映像の枚数を一致させることができなくなり、ある瞬間でフレームを間引くフレームスキップまたはフレーム挿入が発生するという問題があった。これらの影響を受けて、ワイヤレスカメラから出力されたハイビジョン映像の遅延が一定にならず、リップシンクがずれてしまう等の問題があった。
そこで、本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ワイヤレスカメラを備えた端末側から基地局側への本線系の伝送と、基地局側から端末側への送り返し系の伝送とを行う映像信号伝送システムにおいて、基地局側に入力されるゲンロック信号のタイミングを端末側へ伝送することで、ワイヤレスカメラの映像遅延を最小限に抑制し、FS装置を不要とする映像信号伝送システムを提供することにある。
前記課題を解決するため、本発明による映像信号伝送システムは、ワイヤレスカメラにより撮影された本線映像の映像信号を前記端末側から基地局側へ伝送する本線系の伝送と、送り返し映像の映像信号、並びに前記ワイヤレスカメラにて使用されるカメラ制御信号及びゲンロック信号を含む制御情報を前記基地局側から前記端末側へ伝送する送り返し系の伝送と、を行う映像信号伝送システムにおいて、前記基地局側が、前記端末側から伝送された本線映像の映像信号から、前記本線映像の映像信号の同期タイミングを抽出し、前記同期タイミングが反映されたゲンロック信号を生成するゲンロックタイミング抽出部と、当該映像信号伝送システムにおいて基準となるゲンロック信号と、前記ゲンロックタイミング抽出部により生成されたゲンロック信号との間の位相差を検出するゲンロック位相差検出部と、前記基準となるゲンロック信号に基づいて、当該ゲンロック信号の立ち上がりを示すフラグ及び所定周波数の基準クロックを生成し、前記基準クロックをカウントしてカウンタ値を生成するフラグ及びカウンタ値生成部と、を備え、前記送り返し系により、前記フラグ及びカウンタ値生成部により生成されたフラグ及びカウンタ値、並びに前記ゲンロック位相差検出部により検出された位相差を含む制御情報を前記端末側へ伝送し、前記端末側が、前記基地局側から伝送された制御情報に含まれるフラグに基づいて、前記基準となるゲンロック信号の立ち上がりタイミングを抽出し、前記制御情報に含まれるカウンタ値に基づいて、前記フラグ及びカウンタ値生成部と同じ所定周波数の基準クロックを生成し、前記立ち上がりタイミング及び基準クロックに基づいて生成するゲンロック信号の位相を、前記制御情報に含まれる位相差に応じて、前記位相差が所定値になるように調整するゲンロック位相調整部を備え、前記本線系により、前記ゲンロック位相調整部により位相が調整されたゲンロック信号に同期した本線映像の映像信号を前記基地局側へ伝送する、ことを特徴とする。
また、本発明による映像信号伝送システムは、前記基地局側のフラグ及びカウンタ値生成部が、前記基準となるゲンロック信号に基づいて、前記所定周波数の基準クロックを生成するPLLと、前記PLLにより生成された基準クロックを用いて、前記ゲンロック信号から立ち上がりタイミング信号を生成する立ち上がり検出部と、前記PLLにより生成された基準クロックをカウントしカウンタ値を生成するカウンタと、前記カウンタにより生成されたカウンタ値を所定のパケットに記録し、前記立ち上がり検出部により検出された立ち上がりタイミング信号に基づいて、前記基準となるゲンロック信号の立ち上がりを示すフラグを生成し、前記フラグを前記所定のパケットに記録するパケット生成部と、を備え、前記基地局側が、前記送り返し系により、前記所定のパケットを前記端末側へ伝送する、ことを特徴とする。
また、本発明による映像信号伝送システムは、前記基地局側のフラグ及びカウンタ値生成部が、前記基準となるゲンロック信号からOdd/Even信号及びHsync信号を生成する同期生成部と、前記同期生成部により生成されたHsync信号から27MHzの周波数を有する基準クロックを生成するPLLと、前記PLLにより生成された基準クロックに基づいて、前記同期生成部により生成されたOdd/Even信号をサンプリングし、立ち上がりタイミング信号を生成する立ち上がり検出部と、前記PLLにより生成された基準クロックをカウントしカウンタ値を生成するカウンタと、前記カウンタにより生成されたカウンタ値をPCR(Program Clock Reference)パケットに記録し、前記立ち上がり検出部により検出された立ち上がりタイミング信号に基づいて、前記基準となるゲンロック信号の立ち上がりを示すフラグを生成し、前記フラグを前記PCRパケットに記録するPCRパケット生成部と、を備え、前記基地局側が、前記送り返し系により、前記PCRパケットを前記端末側へ伝送する、ことを特徴とする。
また、本発明による映像信号伝送システムは、前記端末側のゲンロック位相調整部が、前記基地局側から伝送されたフラグに基づいて、前記基準となるゲンロック信号の立ち上がりタイミングを抽出し、立ち上がりタイミング信号を生成する立ち上がり抽出部と、前記基地局側から伝送された位相差に対し、所定の時定数にてフィルタ処理を施し、フィルタ処理後の位相差が大きいほど周波数オフセット量が大きくなり、前記フィルタ処理後の位相差が小さいほど周波数オフセット量が小さくなるように、前記周波数オフセット量を決定する周波数オフセット量決定部と、前記基地局側から伝送されたカウンタ値及び前記周波数オフセット量決定部により決定された周波数オフセット量に基づいて、前記フラグ及びカウンタ値生成部と同じ基準クロックの所定周波数を、前記周波数オフセット量だけずらして調整し、調整後の周波数を有する基準クロックを生成するPLLと、前記PLLにより生成された調整後の周波数を有する基準クロックを用いて、前記立ち上がり抽出部により生成された立ち上がりタイミング信号からゲンロック信号を生成し、前記位相を調整したゲンロック信号として出力するゲンロック生成部と、を備えたことを特徴とする。
また、本発明による映像信号伝送システムは、前記端末側のゲンロック位相調整部が、前記基地局側から伝送されたフラグに基づいて、前記基準となるゲンロック信号の立ち上がりタイミングを抽出し、立ち上がりタイミング信号を生成する立ち上がり抽出部と、前記基地局側から伝送された位相差に対し、所定の時定数にてフィルタ処理を施し、前記位相差が大きいほど位相移動量が大きくなり、前記位相差が小さいほど位相移動量が小さくなるように、前記位相移動量を出力する時定数フィルタと、前記時定数フィルタにより出力された位相移動量に応じて、前記位相移動量が大きいほど周波数オフセット量が大きくなり、前記位相移動量が小さいほど周波数オフセット量が小さくなるように、前記周波数オフセット量を決定するゲンロック周波数調整部と、前記基地局側から伝送されたカウンタ値及び前記ゲンロック周波数調整部により決定された周波数オフセット量に基づいて、前記フラグ及びカウンタ値生成部と同じ基準クロックの27MHzの周波数を、前記周波数オフセット量だけずらして調整し、調整後の周波数を有する基準クロックを生成するPLLと、前記PLLにより生成された基準クロックに基づいて、前記立ち上がり抽出部により生成された立ち上がりタイミング信号をサンプリングし、Odd/Even信号を生成するOdd/Even信号生成部と、前記Odd/Even信号生成部により生成されたOdd/Even信号に基づいて、ゲンロック信号を生成し、前記位相を調整したゲンロック信号として出力する同期生成部と、を備えたことを特徴とする。
以上のように、本発明によれば、基地局側の基準となるゲンロック信号と、本線系にて伝送された本線映像の映像信号から抽出されたゲンロック信号との周波数及び位相を一致させることができ、基地局側が出力する本線映像の映像信号を、基準となるゲンロック信号に同期させることができる。したがって、他の有線カメラとワイヤレスカメラとの間でカメラ同期をとったハイビジョン映像を、ワイヤレスカメラから得ることができる。また、端末側から伝送される本線映像の映像信号の遅延を最小限度に抑えることができる。また、本線映像の映像信号を遅延させるFS装置が不要になるから、フレームスキップ及びフレーム挿入の発生を防止することができる。
本発明の実施形態による映像信号伝送システムの全体構成を示すブロック図である。 映像信号伝送システムにおいて、端末側と基地局側との間の伝送信号の例を示す図である。 本発明の概要を説明するブロック図である。 本発明の概要を説明する制御図である。 基地局装置に備えた多重分離部の構成を示すブロック図である。 基地局装置に備えた多重部の構成を示すブロック図である。 基地局装置に備えたゲンロック位相差検出部の構成を示すブロック図である。 基地局装置に備えた復調部の構成を示すブロック図である。 端末装置に備えた本線/送り返し伝送部の構成を示すブロック図である。 端末装置に備えたゲンロック位相調整部の構成を示すブロック図である。
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。
〔映像信号伝送システムの構成〕
まず、本発明の実施形態による映像信号伝送システムの構成について説明する。図1は、映像信号伝送システムの全体構成を示すブロック図である。この映像信号伝送システム1は、端末側に設けられたN台の端末装置2−1〜2−Nと、基地局側に設けられた1台の基地局装置3とを備えて構成され、ワイヤレスカメラであるカメラ20−1〜20−Nが、基地局側から伝送されたゲンロック信号を調整した新たなゲンロック信号に同期し、この新たなゲンロック信号を用いて撮影された本線映像を端末側から基地局側へ伝送するシステムである。N台の端末装置2−1〜2−Nと1台の基地局装置3との間は、複数の送信アンテナ及び複数の受信アンテナを用いるMIMO(Multiple Input Multiple Output:多入力多出力)伝送環境が構築されており、本線映像等の各種データが無線により双方向伝送される。また、映像信号伝送システム1の伝送経路には、前述のとおり、端末側から基地局側へ伝送を行う本線系と、基地局側から端末側へ伝送を行う送り返し系とがある。
以下、本線系として2本の送信アンテナを有すると共に、送り返し系として1本の受信アンテナを有するN台の端末装置2−1〜2−Nと、本線系として4本の受信アンテナを有すると共に、送り返し系として4本の送信アンテナを有する基地局装置3との間で、双方向伝送を行うワイヤレスカメラによる映像信号伝送システム1を例にして説明する。また、制御情報とは、カメラ制御信号、ゲンロック信号、インカム信号等の、映像信号伝送システム1にて用いる映像信号に関連する情報をいい、本線映像の映像信号にはその音声信号も含まれるものとする。伝送される信号形式は、ARIB STD−B43に従うOFDM信号を例にとって説明する。
尚、以下に説明する映像信号伝送システム1は、MIMO伝送環境を例にして示すが、本発明は、MIMO伝送環境に限定されるものではない。また、映像信号伝送システム1は、カメラ20−1〜20−Nを備えた端末装置2−1〜2−Nと基地局装置3との間で各種データを双方向に無線伝送するシステムとして示すが、本線映像等の伝送を中継する複数のFPU装置により構成されるシステムであってもよい。
〔端末側の構成〕
映像信号伝送システム1の端末側において、端末装置2−1は、カメラ(HDTVカメラ)20−1、インカム21−1、本線/送り返し伝送部(端末側伝送部)22−1、送信部23−1及び受信部24−1を備えている。カメラ20−1は、ワイヤレスカメラであり、オペレータの操作により被写体の映像が撮影される。インカム21−1は、カメラ20−1を操作するカメラマンと基地局側のオペレータとの間で音声情報のやりとりを行うための機器である。
本線/送り返し伝送部22−1は、送り返し系の処理として、受信部24−1からN台の端末装置2−1〜2−Nに対する送り返し映像及び制御情報を含むMIMO信号を入力し、MIMO信号を復調してTS信号を生成し、TS信号から、端末装置2−1〜2−Nに対する送り返し映像の映像信号及び制御情報を含むTS信号にそれぞれ分離し、当該端末装置2−1の送り返し映像の映像信号及び制御情報を含むTS信号から、送り返し映像の映像信号、カメラ制御信号、インカム信号、ゲンロック信号1の周波数及び位相を示す周波数情報、ゲンロック信号1とゲンロック信号3との間の位相差、及びタリー信号にそれぞれ分離する。そして、本線/送り返し伝送部22−1は、ゲンロック信号1の周波数情報、及びゲンロック信号1とゲンロック信号3との間の位相差に基づいてゲンロック信号2を生成し、カメラ制御信号、インカム信号、ゲンロック信号2及びタリー信号をカメラ20−1及びインカム21−1等へ出力する。これにより、カメラ20−1にて、ゲンロック信号2を用いて本線映像が撮影される。ここで、ゲンロック信号1は、ワイヤレスカメラであるカメラ20−1〜20−Nを備えた端末側から送信されるハイビジョン映像と、他の有線カメラから送信されるハイビジョン映像との間で同期をとるための基準信号である。ゲンロック信号1の周波数情報、及びゲンロック信号1とゲンロック信号3との間の位相差の詳細については後述する。
また、本線/送り返し伝送部22−1は、本線系の処理として、カメラ20−1から、ゲンロック信号2に同期した本線映像の映像信号及びカメラ制御信号を入力すると共に、インカム21−1からインカム信号を入力し、本線映像の映像信号及び制御情報(カメラ制御信号及びインカム信号)を変調し、2系統のOFDM信号を生成し、本線映像の映像信号及び制御情報を含む2系統のOFDM信号を送信部23−1に出力する。尚、本線/送り返し伝送部22−2〜22−Nの構成は、本線/送り返し伝送部22−1と同じである。本線/送り返し伝送部22−1〜22−Nの詳細については後述する。
送信部23−1は、本線系の伝送を行うための2本の送信アンテナTx1,Tx2を有し、本線/送り返し伝送部22−1から本線映像の映像信号及び制御情報を含む2系統のOFDM信号(第1の送信アンテナから送信されるOFDM信号、及び第2の送信アンテナから送信されるOFDM信号)を入力する。そして、送信部23−1は、2系統のOFDM信号をアナログ信号にそれぞれD/A変換し、アナログ信号をRF帯の信号に周波数変換し、一定レベルになるように増幅した後、RF信号をフィルタ処理する。フィルタ処理後の送信信号は、2本の送信アンテナを介して、電波となって放射される。尚、送信部23−2〜23−Nの構成は、送信部23−1と同じである。
受信部24−1は、送り返し系の伝送を行うための1本の受信アンテナを有し、基地局装置3から送信されたN台の端末装置2−1〜2−Nに対する送り返し映像の映像信号及び制御情報を含む信号を、1本の受信アンテナを介して受信する。そして、受信部24−1は、その受信信号をフィルタ処理し、フィルタ処理後のRF信号を増幅した後、RF帯の信号を周波数変換し、周波数変換後のアナログ信号をデジタル信号にA/D変換し、N台の端末装置2−1〜2−Nに対する送り返し映像及び制御情報を含むMIMO信号を本線/送り返し伝送部22−1に出力する。尚、受信部24−2〜24−Nの構成は、受信部24−1と同じである。また、端末装置2−2〜2−Nの構成は、端末装置2−1と同じである。
〔基地局側の構成〕
映像信号伝送システム1の基地局側において、基地局装置3は、本線/送り返し送受信部30−1〜30−4、信号多重分離部31,32、復調部33−1〜33−N、多重分離部34、送り返し送信処理部35、カメラコントローラ36−1〜36−N及びインカム37−1〜37−Nを備えている。復調部33−1〜33−N、多重分離部34及び送り返し送信処理部35により、基地局側伝送部が構成される。
本線/送り返し送受信部30−1〜30−4は、本線系の受信部の処理として、対応する1本の受信アンテナを介して受信した信号に対しフィルタ処理、増幅処理、周波数変換処理、A/D変換処理を行い、これらの処理後の信号を信号多重分離部31に出力する。一方、本線/送り返し送受信部30−1〜30−4は、送り返し系の送信部の処理として、送り返し送信処理部で4系統のOFDM信号の生成及びD/A変換処理を行う。すなわち、本線/送り返し送受信部30−1〜30−4は、信号多重分離部31を経由してN台の端末装置2−1〜2−Nに対する送り返し映像の映像信号及び制御情報を含むOFDM信号を入力し、入力したOFDM信号に対して、周波数変換処理、増幅処理、フィルタ処理等を行う。フィルタ処理後の送信信号は、対応する1本の送信アンテナを介して、電波となって放射される。
信号多重分離部31は、本線系の処理として、本線/送り返し送受信部30−1〜30−4から、4系統のOFDM信号を入力し、これらを波長多重して光信号に変換し、光信号を信号多重分離部32に出力する。信号多重分離部32は、本線系の処理として、信号多重分離部31から光信号を入力し、光信号を、多重したOFDM信号に変換し、変換後のOFDM信号を復調部33−1〜33−Nにそれぞれ出力する。
信号多重分離部32は、送り返し系の処理として、送り返し送信処理部35から、送り返し映像の映像信号及び制御情報を含むOFDM信号を入力し、これらを波長多重して光信号に変換し、光信号を信号多重分離部31に出力する。信号多重分離部31は、送り返し系の処理として、信号多重分離部32から光信号を入力し、光信号をOFDM信号に変換し、変換後のOFDM信号を4系統に分離し、本線/送り返し送受信部30−1〜30−4にそれぞれ出力する。
復調部33−1〜33−Nは、信号多重分離部32から、4系統が多重されたOFDM信号のIF信号を入力し、A/D変換処理等を行い、各OFDM信号を復調し、MIMO復調により、対応する端末装置2−1〜2−Nにおける本線映像の映像信号及び制御情報を生成し、対応する本線映像の映像信号からゲンロック信号3(位相及び周期が反映された実際のパルス信号)を抽出する。そして、復調部33−1〜33−Nは、本線映像の映像信号を外部へ出力すると共に、制御情報及びゲンロック信号3を多重分離部34に出力する。尚、復調部33−1〜33−Nの詳細については後述する。
多重分離部34は、本線系の処理として、復調部33−1〜33−Nから対応する制御情報をそれぞれ入力し、制御情報からカメラ制御信号及びインカム信号(カメラマンから基地局側のオペレータへ伝送される音声情報)を抽出し、カメラ制御信号を、対応するカメラコントローラ36−1〜36−Nにそれぞれ出力し、インカム信号を、対応するインカム37−1〜37−Nにそれぞれ出力する。
また、多重分離部34は、送り返し系の処理として、復調部33−1〜33−Nから対応するゲンロック信号3をそれぞれ入力すると共に、スイッチャー等(図示せず)から送り返し映像の映像信号及びゲンロック信号1(カメラ20−1〜20−Nから送信される映像と、他の有線カメラから送信される映像との間で同期をとるための基準となるパルス信号)を入力し、カメラコントローラ36−1〜36−Nから対応するカメラ制御信号及びタリー信号をそれぞれ入力し、さらに、インカム37−1〜37−Nから対応するインカム信号をそれぞれ入力する。そして、多重分離部34は、ゲンロック信号1とゲンロック信号3との間の位相差をそれぞれ検出し、ゲンロック信号1に基づいて、ゲンロック信号1の周波数及び位相を示す周波数情報(ゲンロック信号1のタイミングを示すフラグ及び27MHzの周波数の基準クロックを生成するためのカウンタ値)を生成する。そして、多重分離部34は、送り返し映像の映像信号、端末装置2−1〜2−N毎のゲンロック信号1の周波数情報、位相差、カメラ制御信号及びインカム信号等を多重し、送り返し映像の映像信号及び制御情報(ゲンロック信号1の周波数情報、位相差等)を含むTS信号を送り返し送信処理部35に出力する。尚、多重分離部34の詳細については後述する。
送り返し送信処理部35は、多重分離部34から、N台の端末装置2−1〜2−Nに対する送り返し映像の映像信号及び制御情報を含むTS信号を入力し、TS信号に対し、所要CNRが低いBPSK等により多値変調し、OFDMフレームのデータキャリアに配置する。そして、送り返し送信処理部35は、OFDM信号を生成し、信号多重分離部32に出力する。TS信号に対して所要CNRが低いBPSK等により多値変調し、OFDM信号を生成するのは、送り返し系の伝送では本線系の伝送と異なり、高画質のハイビジョン映像等の大容量伝送よりも高い伝送信頼性が求められるからである。
〔伝送信号〕
次に、図1に示した映像信号伝送システム1において、端末側と基地局側との間で伝送される信号について説明する。図2は、端末側と基地局側との間で伝送される信号の例を示す図である。端末側から基地局側へ無線伝送する本線系では、撮影されたカメラ映像である本線映像の映像信号、及び制御情報(カメラ制御信号、インカム信号等)が伝送される。これに対し、基地局側から端末側へ無線伝送する送り返し系では、送り返し映像の映像信号、及び制御情報(カメラ制御信号、インカム信号、ゲンロック信号1の周波数情報、位相差、タリー信号等)が伝送される。
〔本発明の概要〕
次に、本発明の概要について説明する。図3は、本発明の概要を説明するブロック図であり、図4は、本発明の概要を説明する制御図である。図3において、端末側は、カメラ20−1〜20−N(以下、総称して「カメラ20」という。)毎に、多重分離部221、本線変調部223及びゲンロック位相調整部225等を備え、基地局側は、本線映像の映像信号毎に(カメラ20毎に)復調部33を備え、さらに、多重分離処理部341及びゲンロック位相差検出部343等を備えている。図3には、本発明の概要を説明するための構成部のみが示してあり、図3に示す構成部及び図3に示していない他の構成部の詳細については後述する。
映像信号伝送システム1において、端末側から基地局側への本線系の伝送により、撮影したカメラ映像を伝送する。本発明の実施形態では、基地局側のゲンロックタイミング抽出部333は、端末側から基地局側への本線系にて伝送されデコードされた本線映像の映像信号から、ゲンロック信号3を抽出する。また、基地局側のゲンロック位相差検出部343は、スイッチャー等(図3及び図4には図示せず)からのゲンロック信号1と、ゲンロックタイミング抽出部333により抽出されたゲンロック信号3との間の位相差を検出し、多重分離処理部341は、ゲンロック信号1に基づいて、ゲンロック信号1の周波数情報(ゲンロック信号1のタイミングを示すフラグ及び27MHzの周波数の基準クロックを生成するためのカウンタ値)を生成する。そして、ゲンロック信号1の周波数情報、及びゲンロック信号1とゲンロック信号3との間の位相差は、基地局側から端末側への送り返し系にて伝送される。
端末側のゲンロック位相調整部225は、基地局側から端末側への送り返し系にて伝送されたゲンロック信号1の周波数情報及び位相差に基づいて、位相差を用いて位相を調整したゲンロック信号2を生成する。ゲンロック位相調整部225にて生成されたゲンロック信号2は、カメラ20に出力される。そして、カメラ20により撮影された、ゲンロック信号2に同期した本線映像の映像信号は、端末側から基地局側への本線系にて伝送される。
図4に示すように、映像信号伝送システム1は、ゲンロック位相差検出部343と、基地局装置3及び端末装置2−1〜2−N(端末装置2−1〜2−Nを総称して「端末装置2」という。)を含む送り返し系の伝送路と、ゲンロック位相調整部225と、カメラ20と、端末装置2及び基地局装置3を含む本線系の伝送路と、ゲンロックタイミング抽出部333とにより、フィードバック制御系を構成し、ゲンロック信号1とゲンロック信号3との間の位相差が0になるように、ゲンロック信号2を生成する。これにより、ゲンロック信号3の周波数及び位相がゲンロック信号1の周波数及び位相に一致し、ゲンロック信号1に同期した本線映像の映像信号が外部へ出力される。したがって、ワイヤレスカメラであるカメラ20からの映像と、他の有線カメラからの映像との間でカメラ同期をとることができる。
ここで、ワイヤレスカメラであるカメラ20を用いた映像信号伝送システム1において、スイッチャー等から出力されるゲンロック信号1の周波数情報を基地局側から端末側へ伝送し、端末側にて受信したゲンロック信号1の周波数情報からゲンロック信号2を生成し、このゲンロック信号2をカメラ20に使用した場合を想定する。この場合には、他の有線カメラとワイヤレスカメラであるカメラ20との間で本線映像の映像信号が同期しない。これは、映像信号伝送システム1において、システム上の固定遅延があり、また、撮影環境に応じた伝搬遅延(本線系の伝送路による伝送遅延及び送り返し系の伝送路による伝送遅延)があることから、端末側の端末装置2の移動に伴い端末装置2の位置が変わると、端末装置2の位置に応じて、カメラ20が使用するゲンロック信号2の位相が変わるからである。そのため、基準の同期信号であるゲンロック信号1と、カメラ20にて使用されるゲンロック信号2との間では、位相ずれが生じる。すなわち、送信側である基地局側にて入力されたゲンロック信号1と、送り返し系にてゲンロック信号1の周波数情報が伝送され端末側にて使用されるゲンロック信号2との間では、位相ずれが生じる。また、カメラ20により出力される端末側における本線映像の映像信号の位相と、本線系にて端末側から基地局側へ伝送され、基地局側にてデコードされた本線映像の映像信号の位相との間では、位相ずれが生じる。すなわち、端末側のカメラ20にて使用されるゲンロック信号2と、基地局側にて受信した本線映像の映像信号に基づいて抽出されるゲンロック信号3との間の位相がずれており、ゲンロック信号1とゲンロック信号3との間の位相もずれている。
そこで、本発明の実施形態による映像信号伝送システム1では、ゲンロック信号1とゲンロック信号3との間の位相ずれを0にするために、送り返し系にて基地局側から端末側へ、ゲンロック信号1のタイミング等を示す周波数情報を送信するのに加えて、ゲンロック信号1と、デコードした本線映像の映像信号に基づいて抽出したゲンロック信号3との間の位相差も送信する。そして、端末側は、ゲンロック信号1の周波数情報に基づいて生成されるゲンロック信号2の位相を、位相差に応じて調整する。
このようなフィードバック制御により、ゲンロック信号3の周波数及び位相を、ゲンロック信号1に一致させることができる。したがって、他の有線カメラとワイヤレスカメラであるカメラ20との間でカメラ同期(カメラから出力される映像同期)をとったハイビジョン映像を、ワイヤレスカメラから得ることができる。このハイビジョン映像は、他の有線カメラとフレーム同期がとれた映像(フレームの先頭位置が一致した映像)である。また、ワイヤレスカメラから出力される映像信号の遅延を最小限度に抑えることができる。さらに、映像信号を遅延させるFS装置が不要になるため、フレームスキップ及びフレーム挿入の発生を防止することができる。
〔基地局側:多重分離部〕
次に、図1に示した映像信号伝送システム1の基地局側において、基地局装置3に備えた多重分離部34について詳細に説明する。図5は、多重分離部34の構成を示すブロック図である。この多重分離部34は、多重分離処理部341、エンコーダ342及びゲンロック位相差検出部343を備えている。
多重分離処理部341は、分離部344及び多重部345を備えている。多重分離部341は、本線系の処理を分離部344により行い、送り返し系の処理を多重部345により行う。
(分離部:本線系の処理)
多重分離部341の分離部344は、復調部33−1〜33−Nから対応する制御情報をそれぞれ入力し、多重された制御情報からカメラ制御信号及びインカム信号を抽出し、カメラ制御信号を、対応するカメラコントローラ36−1〜36−Nにそれぞれ出力し、インカム信号を、対応するインカム37−1〜37−Nにそれぞれ出力する。
(多重部:送り返し系の処理)
多重部345は、エンコーダ342から送り返し映像の映像信号を入力し、ゲンロック信号1を入力し、カメラコントローラ36−1〜36−Nからカメラ制御信号及びタリー信号を入力し、さらに、インカム37−1〜37−Nからインカム信号を入力する。そして、多重部345は、ゲンロック信号1,3をゲンロック位相差検出部343に出力し、ゲンロック位相差検出部343からゲンロック信号1とゲンロック信号3との間の位相差を入力し、ゲンロック信号1の周波数情報(ゲンロック信号1のタイミングを示すフラグ及び27MHzの周波数の基準クロックを生成するためのカウンタ値)を生成する。そして、多重部345は、端末装置2毎のゲンロック信号1の周波数情報、位相差、カメラ制御信号、タリー信号及びインカム信号を含む制御情報に、付属情報としてカメラ20(または端末装置2)を識別するためのシリアル番号を付加し、送り返し映像の映像信号及び制御情報等を多重し、多重したTS信号を送り返し送信処理部35に出力する。尚、カメラ制御信号は、カメラ20のメーカーによってプロトコル及びパケット形式が異なるから、サンプリングしたそのままの信号として扱う。
図6は、図5に示した多重部345の構成を示すブロック図である。この多重部345は、同期生成部350、PLL(Phase Locked Loop(位相同期)回路)351,352、立ち上がり検出部353、STC(System Time Clock(システム時刻基準値)カウンタ)354、PCR(Program Clock Reference(プログラム時刻基準値))パケット生成部355及びTS多重部356を備えている。同期生成部350、PLL351,352、立ち上がり検出部353、STC354及びPCRパケット生成部355により、フラグ及びカウンタ値生成部が構成される。
同期生成部350は、スイッチャー等から74.25MHzの周波数を有するゲンロック信号1を入力し、ゲンロック信号1からOdd/Even信号(奇数フィールド/偶数フィールド信号)及びHsync信号(水平同期信号)を生成し、Odd/Even信号を立ち上がり検出部353に出力し、Hsync信号をPLL351に出力する。ゲンロック信号1は、3値シンク信号またはNTSC−BB信号である。ゲンロック信号2,3も同様である。尚、ゲンロック信号1からOdd/Even信号及びHsync信号を生成する手法は既知であるから、ここでは説明を省略する。
PLL351は、同期生成部350からHsync信号を入力し、Hsync信号の周波数を2200倍し、74.25MHz/1.001の周波数を有する映像クロックを再生し、映像クロックをPLL352に出力する。PLL352は、PLL351から74.25MHz/1.001の周波数を有する映像クロックを入力し、映像クロックの周波数(74.25MHz/1.001)を(11/4)×1.001倍し、27MHzの周波数を有するTSパケットの基準クロックを生成し、この基準クロックを立ち上がり検出部353及びSTC354に出力する。このように、ゲンロック信号1から生成されたHsync信号がPLL351,352にて周波数制御され、27MHzの周波数を有するTSパケットの基準クロックが生成される。
立ち上がり検出部353は、同期生成部350からOdd/Even信号を入力すると共に、PLL352から基準クロックを入力し、基準クロックである27MHzのクロックに基づいてOdd/Even信号をサンプリングし、サンプリングしたOdd/Even信号から立ち上がりタイミング信号を生成し、この立ち上がりタイミング信号をPCRパケット生成部355に出力する。これにより、Odd/Even信号の立ち上がりタイミングが、27MHzの周波数を有するTSパケットの基準クロックのタイミングに修正され、後述するSTC354のカウンタ値に同期した立ち上がりタイミング信号として出力される。
STC354は、PLL352から27MHzの周波数を有するTSパケットの基準クロックを入力し、入力した基準クロックをカウントし、カウンタ値をPCRパケット生成部355に出力する。このカウンタ値は、27MHzの周波数を有する基準クロックに同期した値となり、映像信号伝送システム1を構成する端末装置2及び基地局装置3において、ゲンロック信号2を生成する際の基準信号としても使用される。
PCRパケット生成部355は、立ち上がり検出部353から立ち上がりタイミング信号を入力すると共に、STC354からカウンタ値を入力し、Odd/Even信号の立ち上がりタイミングを示すフラグ(ゲンロック信号1の立ち上がりタイミングを示すフラグ)と、入力したカウンタ値(ゲンロック信号1の時間情報)とをPCRパケットに記録し、PCRパケットをTS多重部356に出力する。具体的には、PCRパケット生成部355は、入力したカウンタ値をPCRパケットに常に記録する。また、PCRパケット生成部355は、立ち上がり検出部353から立ち上がりタイミング信号を入力していない場合、0を設定したフラグをPCRパケットに記録し、立ち上がり検出部353から立ち上がりタイミング信号を入力した場合、1を設定したフラグをPCRパケットに記録する。
これにより、PCRパケットには、ゲンロック信号1のタイミングを示すフラグ(0または1)及び27MHzの基準クロックに同期したカウンタ値が記録され、所定の周期で基地局側から端末側へ伝送される。そして、端末側は、PCRに記録されたフラグが0から1へ変化するタイミングを、ゲンロック信号1の立ち上がりタイミングとして出力し、さらに、PCRパケットに記録されたカウンタ値から27MHzの基準クロックを再生することで、ゲンロック信号1と同じ周波数のゲンロック信号2を生成することができる。
また、PCRパケット生成部355は、ゲンロック位相差検出部343から、ゲンロック信号1とゲンロック信号3との間の位相差を入力し、位相差をPCRパケットに記録し、PCRパケットをTS多重部356に出力する。
これにより、PCRパケットには位相差が記録され、所定の周期で基地局側から端末側へ伝送される。そして、端末側は、PCRに記録された位相差に応じて、ゲンロック信号1と同じ基準信号で生成したゲンロック信号2に対しその位相を調整し、ゲンロック信号1とゲンロック信号3との間の位相差が0になるようにする。
TS多重部356は、送り返し映像の映像信号、カメラ制御信号、インカム信号及びタリー信号等を入力すると共に、PCRパケット生成部355からPCRパケットを入力し、これらのデータを多重し、1つのTS信号として送り返し送信処理部35に出力する。
尚、多重部345は、ゲンロック信号1及びゲンロック信号3を入力し、これらの信号をそのままゲンロック位相差検出部343に出力する。また、図6に示した多重部345の例では、ゲンロック信号1の周波数情報(フラグ及びカウンタ値)、及びゲンロック信号1とゲンロック信号3との間の位相差はPCRパケットに記録され、TS信号として端末側へ伝送されるが、PCRパケット以外のパケットに記録して伝送されるようにしてもよい。
図5に戻って、エンコーダ342は、送り返し映像の映像信号を入力し、送り返し映像の映像信号を符号化し、符号化した送り返し映像の映像信号を多重分離処理部341に出力する。
(ゲンロック位相差検出部:位相差検出処理)
ゲンロック位相差検出部343は、多重分離処理部341の多重部345からゲンロック信号1,3を入力し、ゲンロック信号1とゲンロック信号3との間の位相差を検出し、位相差を多重分離処理部341の多重部345に出力する。
図7は、ゲンロック位相差検出部343の構成を示すブロック図である。このゲンロック位相差検出部343は、立ち上がり検出部360,361及び位相差検出部362を備えている。立ち上がり検出部360は、ゲンロック信号1を入力し、ゲンロック信号1の立ち上がりタイミングを検出し、立ち上がりタイミング信号を位相差検出部362に出力する。立ち上がり検出部361は、ゲンロック信号3を入力し、ゲンロック信号3の立ち上がりタイミングを検出し、立ち上がりタイミング信号を位相差検出部362に出力する。
位相差検出部362は、立ち上がり検出部360からゲンロック信号1の立ち上がりタイミング信号を入力すると共に、立ち上がり検出部361からゲンロック信号3の立ち上がりタイミング信号を入力し、これらの立ち上がり信号からゲンロック信号1とゲンロック信号3との間の位相差を検出し、ゲンロック信号1とゲンロック信号3との間の位相差を多重部345に出力する。これにより、映像信号伝送システム1の遅延(システム上の固定遅延、並びに端末装置2の移動(位置の変化)及び撮影環境に伴う伝搬遅延)により生じるゲンロック信号1とゲンロック信号3との間の位相差が検出される。
〔基地局側:復調部〕
次に、図1に示した映像信号伝送システム1の基地局側において、基地局装置3に備えた復調部33−1〜33−N(以下、総称して「復調部33」という。)について詳細に説明する。図8は、復調部33の構成を示すブロック図である。この復調部33は、本線復調部331、デコーダ332及びゲンロックタイミング抽出部333を備えている。
本線復調部331は、信号多重分離部32から、4系統が多重されたOFDM信号のIF信号を入力し、A/D変換処理等及び各OFDM信号を復調し、MIMO復調により、対応する本線映像の映像信号及び制御情報を含むOFDMフレームを生成する。そして、本線復調部331は、対応する復調部33のOFDMフレームのデータキャリアから本線映像の映像信号を抽出し、復調処理、誤り訂正復号等の信号処理を施し、本線映像の映像信号をデコーダ332に出力する。また、本線復調部331は、対応するOFDMフレームのACキャリアから制御情報を抽出し、復調処理等の信号処理を施し、制御情報を多重分離部34に出力する。また、本線復調部331は、ゲンロックタイミング抽出部333からゲンロック信号3を入力し、ゲンロック信号3をそのまま多重分離部34に出力する。
デコーダ332は、本線復調部331から本線映像の映像信号を入力し、本線映像の映像信号を復号し、復号した本線映像の映像信号をゲンロックタイミング抽出部333に出力すると共に、外部へ出力する。
ゲンロックタイミング抽出部333は、デコーダ332から本線映像の映像信号を入力し、本線映像の映像信号からフレームの先頭タイミングを検出し、その先頭タイミングに基づいて、本線映像の映像信号の同期タイミングを抽出し、同期タイミングが反映されたゲンロック信号3を生成し、ゲンロック信号3を本線復調部331に出力する。尚、フレームの先頭タイミングに基づいてゲンロック信号3を抽出する手法は既知であるから、ここでは説明を省略する。
〔端末側:本線/送り返し伝送部〕
次に、図1に示した映像信号伝送システム1の端末側において、端末装置2に備えた本線/送り返し伝送部22−1〜22−N(以下、総称して「本線/送り返し伝送部22」という。)について詳細に説明する。図9は、本線/送り返し伝送部22の構成を示すブロック図である。この本線/送り返し伝送部22は、多重分離部221、エンコーダ222、本線変調部223、送り返し復調部224及びゲンロック位相調整部225を備えている。
多重分離部221は、多重部226及び分離部227を備えている。多重分離部221は、本線系の処理を多重部226により行い、送り返し系の処理を分離部227により行う。
(分離部:送り返し系の処理)
多重分離部221の分離部227は、送り返し復調部224からTS信号を入力し、TS信号から、送り返し映像及び制御情報に付加された、カメラ20毎に割り当てられたシリアル番号を抽出し、シリアル番号に基づいて、TS信号から、端末装置2に対する送り返し映像の映像信号及び制御情報を含むTS信号にそれぞれ分離する。そして、分離部227は、対応する送り返し映像の映像信号及び制御情報を含むTS信号から、ゲンロック信号1の周波数情報(ゲンロック信号1のタイミングを示すフラグ及び27MHzの周波数の基準クロックを生成するためのカウンタ値)及び位相差(ゲンロック信号1とゲンロック信号3との間の位相差)が記録されたPCRパケットを抽出すると共に、送り返し映像の映像信号、カメラ制御信号、インカム信号及びタリー信号を抽出し、PCRパケットをゲンロック位相調整部225に出力する。そして、分離部227は、ゲンロック位相調整部225からゲンロック信号2(位相及び周期が反映された実際のパルス信号)を入力し、ゲンロック信号2、並びに送り返し映像の映像信号、カメラ制御信号、インカム信号及びタリー信号を対応するカメラ20等に出力する。
(多重部:本線系の処理)
多重分離部221の多重部226は、対応するカメラ20から、カメラ制御信号を入力すると共に、対応するインカム21−1〜21−Nからインカム信号を入力し、これらの信号をTS多重し、制御情報として本線変調部223に出力する。
エンコーダ222は、対応するカメラ20から本線映像の映像信号を入力し、本線映像の映像信号を符号化し、符号化した本線映像の映像信号を本線変調部223に出力する。
本線変調部223は、エンコーダ222から本線映像の映像信号を入力すると共に、多重分離部221の多重部226から制御情報を入力し、本線映像の映像信号に対し、誤り訂正符号化等を施し、16QAM等により多値変調し、OFDMフレームのデータキャリアに配置する。また、本線変調部223は、制御情報に対し、誤り訂正符号化等により圧縮等の信号処理を施し、所要CNRが低いBPSK等により多値変調し(伝送レートが低くても所要CNRが低い(高い回線信頼性を持つ)多値変調を行い)、OFDMフレームのACキャリアに配置する。そして、本線変調部223は、2系統のOFDM信号を生成し、本線映像の映像信号及び制御情報を含む2系統のOFDM信号を、対応する送信部23−1〜23−Nに出力する。図1に示したように、ワイヤレスカメラである複数のカメラ20を同時に運用する場合には、各カメラ20に周波数チャネルを割り当てて使用する。
送り返し復調部224は、受信部24−1からN台の端末装置2に対する送り返し映像及び制御情報を含む受信信号を入力し、受信信号を復調してTS信号を生成し、TS信号を多重分離部221の分離部227に出力する。
(ゲンロック位相調整部:ゲンロック信号2の生成処理)
ゲンロック位相調整部225は、多重分離部221の分離部227からゲンロック信号1の周波数情報(ゲンロック信号1のタイミングを示すフラグ及び27MHzの周波数の基準クロックを生成するためのカウンタ値)及び位相差(ゲンロック信号1とゲンロック信号3との間の位相差)が記録されたPCRパケットを入力し、PCRパケットからゲンロック信号1の周波数情報及び位相差を抽出し、ゲンロック信号1の周波数情報及び位相差に基づいてゲンロック信号2を生成し、位相差に応じてゲンロック信号2の位相を調整し、調整後のゲンロック信号2を多重分離部221の分離部227に出力する。
図10は、ゲンロック位相調整部225の構成を示すブロック図である。このゲンロック位相調整部225は、PCRパケット抽出部230、STC231、時定数フィルタ232、ゲンロック周波数調整部233、PLL234、Odd/Even信号生成部235及び同期生成部236を備えている。時定数フィルタ232及びゲンロック周波数調整部233により、周波数オフセット量決定部が構成される。また、Odd/Even信号生成部235及び同期生成部236により、ゲンロック生成部が構成される。ゲンロック位相調整部225におけるPCRパケット抽出部230、STC231、PLL234、Odd/Even信号生成部235及び同期生成部236は、図6に示した同期生成部350、PLL351,352、立ち上がり検出部353、STC354及びPCRパケット生成部355とは逆の処理を行う。
PCRパケット抽出部230は、立ち上がり抽出部を含み、多重分離部221の分離部227からPCRパケットを入力し、PCRパケットに含まれるゲンロック信号1の周波数情報であるフラグ及びカウンタ値、並びに位相差を抽出する。そして、PCRパケット抽出部230は、立ち上がり抽出部により、ゲンロック信号1のタイミングを示すフラグが0から1に変化したタイミングを抽出し、そのタイミングでゲンロック信号1の立ち上がりタイミング信号をOdd/Even信号生成部235に出力する。また、PCRパケット抽出部230は、カウンタ値をSTC231に出力し、位相差を時定数フィルタ232に出力する。
STC231は、PCRパケット抽出部230からカウンタ値を入力し、カウンタ値に基づいて、27MHzの周波数に同期したサンプリング信号を生成し、生成したサンプリング信号をPLL234に出力する。STC231が出力するサンプリング信号は、27MHzの周波数に同期した連続的な信号である。
時定数フィルタ232は、PCRパケット抽出部230から位相差を入力し、位相差に対し、所定の時定数にてフィルタ処理を施し、フィルタ処理後の位相差をゲンロック信号2の位相移動量としてゲンロック周波数調整部233に出力する。この場合、時定数フィルタ232は、位相差が大きいほど位相移動量が大きくなり、位相差が小さいほど位相移動量が小さくなるようにフィルタ処理を施す。ただし、一度に移動させる位相移動量の最大値は、映像に影響を及ぼさない量以下に固定する。つまり、時定数フィルタ232は、フィルタ処理により得られた位相移動量が所定のしきい値以上である場合、しきい値を位相移動量に設定する。
ゲンロック周波数調整部233は、時定数フィルタ232から位相移動量を入力し、位相移動量に基づいて周波数オフセット量を決定し、周波数オフセット量をPLL234に出力する。この場合、ゲンロック周波数調整部233は、位相移動量が大きいほど周波数オフセット量が大きくなり、位相移動量が小さいほど周波数オフセット量が小さくなるように周波数オフセット量を決定する。この周波数オフセット量により、ゲンロック信号1とゲンロック信号3との間の位相差が0となるように調整される。
PLL234は、STC231から入力される27MHzの周波数に同期したサンプリング信号に基づいて、27MHzの基準クロック信号を生成し、ゲンロック周波数調整部233から入力される周波数オフセット量だけ基準クロック信号の周波数をずらす調整を行い、調整後の周波数を有する基準クロックをOdd/Even信号生成部235に出力する。これにより、PLL234の発振周波数は、PCRパケットから抽出された位相差に応じて変化することになる。
Odd/Even信号生成部235は、PCRパケット抽出部230から立ち上がりタイミング信号を入力すると共に、PLL234から調整後の周波数を有する基準クロックを入力し、調整後の周波数を有する基準クロックに基づいて、立ち上がりタイミング信号をサンプリングし、サンプリングした立ち上がりタイミング信号をOdd/Even信号として生成し、Odd/Even信号を同期生成部236に出力する。これにより、調整後の周波数を有する基準クロックのタイミングに従ったOdd/Even信号として出力される。
同期生成部236は、Odd/Even信号生成部235からOdd/Even信号を入力し、Odd/Even信号に基づいてゲンロック信号2を生成し、ゲンロック信号2を多重分離部221の分離部227に出力する。尚、Odd/Even信号からゲンロック信号を生成する手法は既知であるから、ここでは説明を省略する。
このようにして生成されたゲンロック信号2はカメラ20に出力され、ゲンロック信号2に同期した本線映像の映像信号が、本線系の処理により基地局側へ伝送され、基地局側において、本線映像の映像信号からゲンロック信号3が抽出される。
本発明の実施形態では、上記で説明した処理を繰り返し行う。すなわち、基地局側は、ゲンロック信号1とゲンロック信号3との間の位相差を再度検出し、また、端末側へ位相差情報として送信することで、常にゲンロック信号3とゲンロック信号1の位相及び周波数が一致するように、調整が続けられる。これは、映像信号伝送システム1の遅延(システム上の固定遅延、並びに端末装置2の移動(位置の変化)及び撮影環境に伴う伝搬遅延)が常に変化するため、位相差も変化し続けるためである。
ところで、カメラ20はワイヤレスカメラであり端末側は移動するから、端末側の位置に応じて、基地局側から端末側までの伝送距離は常に変化し、基地局側にて送信した信号が端末側へ到達する時間も変化する。そのため、基地局側におけるゲンロック信号1と、当該ゲンロック信号1が送り返し系にて端末側へ伝送された場合に端末側で再生されるゲンロック信号2との間の位相差は、端末側の移動に伴って大きく変化する。例えば、ゲンロック信号1の周波数が約75MHzに対し、電波の伝搬速度は3×10[m/s]なので、1/(75×10)×3×10≒4[m]移動すると、ゲンロック信号1とゲンロック信号2との間の位相は約1周期ずれる。以上より、撮影位置である端末側の位置に応じて、常にゲンロック信号2の位相を調整する必要があり、前述のゲンロック位相調整部225によって、位相が調整される。
ゲンロック信号2の位相が調整されることにより、ゲンロック信号3の位相が変化する。ゲンロック信号1とゲンロック信号3との間の位相差については、スイッチャーのAVDL(Automatic Variable Delay Line)引き込み範囲内で十分に調相が可能であればよい。しかし、この位相差が、スイッチャーに依存する調相範囲を超えると、ハイビジョン映像が縦方向のラインずれを生じてしまう。そこで、ワイヤレスカメラであるカメラ20では、使用するゲンロック信号2の位相変化が特定のライン数(1/4〜1)以上にならないように、ゲンロック位相調整部225により出力されるゲンロック信号2の周波数を早くする、または遅くするようにした。つまり、ゲンロック信号1とゲンロック信号3との間の位相差が0になるように、ゲンロック位相調整部225の時定数フィルタ232及びゲンロック周波数調整部233により、ゲンロック信号2の位相を、位相差に応じてゆっくりと変化させる(ゲンロック信号2に周波数オフセット量を加える)ようにする。
以上のように、本発明の実施形態による映像信号伝送システム1によれば、基地局装置3の復調部33に備えたゲンロックタイミング抽出部333は、本線系の処理にて伝送された本線映像の映像信号からフレームの先頭タイミングを検出し、その先頭タイミングに基づいてゲンロック信号3を抽出するようにした。また、基地局装置3の多重分離部34に備えたゲンロック位相差検出部343は、ゲンロック信号1とゲンロック信号3との間の位相差を検出し、多重分離部34に備えた多重分離処理部341の多重部345は、ゲンロック信号1からOdd/Even信号及びHsync信号を生成し、Hsync信号に基づいて27MHzの周波数を有するTSパケットの基準クロックを生成し、TSパケットの基準クロックに基づいてOdd/Even信号をサンプリングし、サンプリングしたOdd/Even信号の立ち上がりタイミングを示すフラグ、及びTSパケットの基準クロックをカウントしたカウンタ値をPCRパケットに記録し、PCRパケット及び送り返し映像信号等を多重したTS信号を生成するようにした。このようにして生成されたゲンロック信号1の周波数情報(ゲンロック信号1のタイミングを示すフラグ及び27MHzの周波数の基準クロックを生成するためのカウンタ値)及び位相差(ゲンロック信号1とゲンロック信号3との間の位相差)を含むPCRパケットは、送り返し系の処理により端末側へ伝送される。
また、端末側の本線/送り返し伝送部22に備えたゲンロック位相調整部225は、送り返し系の処理にて伝送されたPCRパケットからゲンロック信号1の周波数情報及び位相差を抽出し、周波数情報のフラグに基づいてゲンロック信号1の立ち上がりタイミング信号を生成し、周波数情報のカウンタ値に基づいて27MHzの周波数を有する基準クロックを生成し、位相差に応じて基準クロックの周波数を調整し、調整後の基準クロックに基づいて立ち上がりタイミング信号を修正し、修正後の立ち上がりタイミング信号に基づいてゲンロック信号2を生成するようにした。この処理により、ゲンロック信号2の周波数は、ゲンロック信号1とゲンロック信号3との間の位相差が0になるように調整される。ゲンロック信号2はカメラ20に出力され、カメラ20から出力された本線映像の映像信号は、本線系の処理にて基地局側へ伝送される。
これにより、ゲンロック信号3の周波数及び位相がゲンロック信号1の周波数及び位相に一致し、ゲンロック信号1に同期した本線映像の映像信号が外部へ出力される。したがって、ワイヤレスカメラであるカメラ20からの映像と、他の有線カメラからの映像との間でカメラ同期をとることができる。また、ワイヤレスカメラから出力される映像信号の遅延を最小限度に抑えることができる。さらに、映像信号を遅延させるFS装置が不要になるから、フレームスキップ及びフレーム挿入の発生を防止することができる。
〔本線系及び送り返し系の伝送遮断〕
ところで、ワイヤレスカメラであるカメラ20を用いた映像信号伝送システム1では、有線カメラと異なり、本線系の伝送及び送り返し系の伝送が遮断する可能性がある。以下、本線系及び送り返し系の伝送が遮断した場合の、端末側のカメラ20にて使用されるゲンロック信号2の生成及び位相調整について説明する。
(本線系の伝送遮断)
本線系の伝送が遮断した場合、送り返し系の処理によりゲンロック信号1の周波数情報が伝送され、ゲンロック信号1とゲンロック信号3との間の正しい位相差は伝送されない。そのため、ゲンロック信号2は、ゲンロック信号1の周波数情報のみから生成される。したがって、ゲンロック信号2の周波数はゲンロック信号1と一致するが、ゲンロック信号2の位相はゲンロック信号1と一致しなくなる。そして、本線系の伝送が復帰した場合、その瞬間に、ゲンロック信号2の位相は、送り返し系の処理により伝送されたゲンロック信号1とゲンロック信号3との間の位相差に応じて調整される。本線系の伝送が復帰し、本線系の伝送が復帰して間もないときには、時定数フィルタ232及びゲンロック周波数調整部233により、ゲンロック信号2の位相を所定の範囲内で急激に変化させたとしても、本線映像に与える影響はシステム全体からみると実用上問題にならない。これは、本線系の伝送が遮断している間は本線映像の映像信号が伝送されておらず、本線系の伝送が復帰したときに本線映像の映像信号の伝送が開始することになり、この伝送開始時に、位相が急激に変化したゲンロック信号2に同期した本線映像の映像信号が伝送されたとしても、本線映像が破綻する等の実用上の問題が発生しないからである。
(送り返し系の伝送遮断)
送り返し系の伝送が遮断した場合、送り返し系により、ゲンロック信号1の周波数情報及び位相差が伝送されてこないから、ゲンロック信号2は、端末側のPLLによって独自に生成される。この場合、ゲンロック信号2の周波数はゲンロック信号1と一致しないから、ゲンロック信号2の位相は時間と共に徐々にずれていく。そして、送り返し系の伝送が復帰した場合、送り返し系により伝送されてくるゲンロック信号1の周波数情報及び位相差に基づいて、ゲンロック信号2が直ちに生成され、ゲンロック信号2の位相が急激に変化したとすると、カメラ20にてカメラ映像の同期が外れ、本線映像が破綻してしまう(ハイビジョンカメラの映像機器のゲンロック信号の周波数誤差の許容値は規格で決まっており、実際の装置においても許容値を超えると、本線映像が破たんする場合がある)。このような不具合が生じないように、端末側のゲンロック位相調整部225は、時定数フィルタ232及びゲンロック周波数調整部233を備えている。すなわち、送り返し系の伝送が復帰した場合には、時定数フィルタ232及びゲンロック周波数調整部233により生成される周波数オフセット量を用いて、周波数誤差の許容範囲内でゲンロック信号2の周波数を早くしたり遅くしたりすることで、本線映像に影響がないように、ずれた位相をゆるやかに調整する。
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、前記実施形態では、端末側の端末装置2に備えた本線/送り返し伝送部22のゲンロック位相調整部225は、ゲンロック信号1とゲンロック信号3との間の位相差が0になるように、ゲンロック信号2の周波数を調整するようにしたが、ゲンロック信号1とゲンロック信号3との間の位相差が0でない所定の値になるように、ゲンロック信号2の周波数を調整するようにしてもよい。この場合、ゲンロック位相調整部225のゲンロック周波数調整部233は、ゲンロック信号1とゲンロック信号3との間の位相差が所定の値になるようにオフセット許容範囲内で周波数オフセット量を決定する。
また、例えば、図1に示した映像信号伝送システム1が、ミリ波帯電波を用いて十分なチャネル数を確保できる状況では、複数のカメラ20を同時に運用することができ、各カメラ20に対し、異なる周波数チャネルを割り当てて使用する。この場合、端末装置2の送信部23−1〜23−Nは、対応するカメラ20に対して異なる周波数チャネルを割り当て、割り当てた周波数チャネルを用いてOFDM信号を送信する。ARIB STD−B43では、最大で16チャネルを使用することができる。例えば、映像信号伝送システム1が、15台のカメラ20を備え、本線系において、カメラ1台に対し1周波数チャネルを割り当て、合計15の周波数チャネルにてOFDM信号を伝送する。また、送り返し系において、送り返し映像及び制御情報に対し残りの1周波数チャネルを割り当て、OFDM伝送するようにしてもよい。また、例えばカメラ1台に対し、1周波数チャネルの本線系のOFDM信号と、1周波数チャネルの送り返し系のOFDM信号とを割り当てるようにしてもよい。
また、映像信号伝送システム1を構成する基地局装置3は、送り返し系において、送り返し映像の映像信号及び制御情報に対し、所要CNRが低いBPSK等により多値変調し、データキャリアを用いてOFDM信号にて伝送するようにした。これに対し、例えば、送り返し映像の映像信号のレートが必要な場合には、基地局装置3は、送り返し映像の映像信号に対し、16QAM等により多値変調し、データキャリアを用いてOFDM信号にて伝送すると共に、制御情報に対し、所要CNRが低いBPSK等により多値変調し、ACキャリアを用いてOFDM信号にて伝送するようにしてもよい。
尚、本発明の実施形態による映像信号伝送システム1を構成する端末装置2−1〜2−N及び基地局装置3のハードウェア構成としては、通常のコンピュータを使用することができる。端末装置2−1〜2−N及び基地局装置3は、CPU、RAM等の揮発性の記憶媒体、ROM等の不揮発性の記憶媒体、及びインターフェース等を備えたコンピュータによってそれぞれ構成される。端末装置2−1〜2−Nに備えた本線/送り返し伝送部22−1〜22−N、送信部23−1〜23−N及び受信部24−1〜24−Nの各機能は、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。また、基地局装置3に備えた本線/送り返し送受信部30−1〜30−4、信号多重分離部31,32、復調部33−1〜33−N、多重分離部34及び送り返し送信処理部35の各機能も、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。これらのプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD等)、半導体メモリ等の記憶媒体に格納して頒布することもできる。
1 映像信号伝送システム
2 端末装置
3 基地局装置
20 カメラ
21,37 インカム
22 本線/送り返し伝送部
23 送信部
24 受信部
30 本線/送り返し送受信部
31,32 信号多重分離部
33 復調部
34,221 多重分離部
35 送り返し送信処理部
36 カメラコントローラ
222,342 エンコーダ
223 本線変調部
224 送り返し復調部
225 ゲンロック位相調整部
226,345 多重部
227,344 分離部
230 PCRパケット抽出部
231,354 STC
232 時定数フィルタ
233 ゲンロック周波数調整部
234,351,352 PLL
235 Odd/Even信号生成部
236,350 同期生成部
331 本線復調部
332 デコーダ
333 ゲンロックタイミング抽出部
341 多重分離処理部
343 ゲンロック位相差検出部
353,360,361 立ち上がり検出部
355 PCRパケット生成部
356 TS多重部
362 位相差検出部

Claims (5)

  1. ワイヤレスカメラにより撮影された本線映像の映像信号を端末側から基地局側へ伝送する本線系の伝送と、送り返し映像の映像信号、並びに前記ワイヤレスカメラにて使用されるカメラ制御信号及びゲンロック信号を含む制御情報を前記基地局側から前記端末側へ伝送する送り返し系の伝送と、を行う映像信号伝送システムにおいて、
    前記基地局側は、
    前記端末側から伝送された本線映像の映像信号から、前記本線映像の映像信号の同期タイミングを抽出し、前記同期タイミングが反映されたゲンロック信号を生成するゲンロックタイミング抽出部と、
    当該映像信号伝送システムにおいて基準となるゲンロック信号と、前記ゲンロックタイミング抽出部により生成されたゲンロック信号との間の位相差を検出するゲンロック位相差検出部と、
    前記基準となるゲンロック信号に基づいて、当該ゲンロック信号の立ち上がりを示すフラグ及び所定周波数の基準クロックを生成し、前記基準クロックをカウントしてカウンタ値を生成するフラグ及びカウンタ値生成部と、を備え、
    前記送り返し系により、前記フラグ及びカウンタ値生成部により生成されたフラグ及びカウンタ値、並びに前記ゲンロック位相差検出部により検出された位相差を含む制御情報を前記端末側へ伝送し、
    前記端末側は、
    前記基地局側から伝送された制御情報に含まれるフラグに基づいて、前記基準となるゲンロック信号の立ち上がりタイミングを抽出し、前記制御情報に含まれるカウンタ値に基づいて、前記フラグ及びカウンタ値生成部と同じ所定周波数の基準クロックを生成し、前記立ち上がりタイミング及び基準クロックに基づいて生成するゲンロック信号の位相を、前記制御情報に含まれる位相差に応じて、前記位相差が所定値になるように調整するゲンロック位相調整部を備え、
    前記本線系により、前記ゲンロック位相調整部により位相が調整されたゲンロック信号に同期した本線映像の映像信号を前記基地局側へ伝送する、
    ことを特徴とする映像信号伝送システム。
  2. 請求項1に記載の映像信号伝送システムにおいて、
    前記基地局側のフラグ及びカウンタ値生成部は、
    前記基準となるゲンロック信号に基づいて、前記所定周波数の基準クロックを生成するPLLと、
    前記PLLにより生成された基準クロックを用いて、前記ゲンロック信号から立ち上がりタイミング信号を生成する立ち上がり検出部と、
    前記PLLにより生成された基準クロックをカウントしカウンタ値を生成するカウンタと、
    前記カウンタにより生成されたカウンタ値を所定のパケットに記録し、前記立ち上がり検出部により検出された立ち上がりタイミング信号に基づいて、前記基準となるゲンロック信号の立ち上がりを示すフラグを生成し、前記フラグを前記所定のパケットに記録するパケット生成部と、を備え、
    前記基地局側は、前記送り返し系により、前記所定のパケットを前記端末側へ伝送する、ことを特徴とする映像信号伝送システム。
  3. 請求項1または2に記載の映像信号伝送システムにおいて、
    前記基地局側のフラグ及びカウンタ値生成部は、
    前記基準となるゲンロック信号からOdd/Even信号及びHsync信号を生成する同期生成部と、
    前記同期生成部により生成されたHsync信号から27MHzの周波数を有する基準クロックを生成するPLLと、
    前記PLLにより生成された基準クロックに基づいて、前記同期生成部により生成されたOdd/Even信号をサンプリングし、立ち上がりタイミング信号を生成する立ち上がり検出部と、
    前記PLLにより生成された基準クロックをカウントしカウンタ値を生成するカウンタと、
    前記カウンタにより生成されたカウンタ値をPCR(Program Clock Reference)パケットに記録し、前記立ち上がり検出部により検出された立ち上がりタイミング信号に基づいて、前記基準となるゲンロック信号の立ち上がりを示すフラグを生成し、前記フラグを前記PCRパケットに記録するPCRパケット生成部と、を備え、
    前記基地局側は、前記送り返し系により、前記PCRパケットを前記端末側へ伝送する、ことを特徴とする映像信号伝送システム。
  4. 請求項1から3までのいずれか一項に記載の映像信号伝送システムにおいて、
    前記端末側のゲンロック位相調整部は、
    前記基地局側から伝送されたフラグに基づいて、前記基準となるゲンロック信号の立ち上がりタイミングを抽出し、立ち上がりタイミング信号を生成する立ち上がり抽出部と、
    前記基地局側から伝送された位相差に対し、所定の時定数にてフィルタ処理を施し、フィルタ処理後の位相差が大きいほど周波数オフセット量が大きくなり、前記フィルタ処理後の位相差が小さいほど周波数オフセット量が小さくなるように、前記周波数オフセット量を決定する周波数オフセット量決定部と、
    前記基地局側から伝送されたカウンタ値及び前記周波数オフセット量決定部により決定された周波数オフセット量に基づいて、前記フラグ及びカウンタ値生成部と同じ基準クロックの所定周波数を、前記周波数オフセット量だけずらして調整し、調整後の周波数を有する基準クロックを生成するPLLと、
    前記PLLにより生成された調整後の周波数を有する基準クロックを用いて、前記立ち上がり抽出部により生成された立ち上がりタイミング信号からゲンロック信号を生成し、前記位相を調整したゲンロック信号として出力するゲンロック生成部と、を備えたことを特徴とする映像信号伝送システム。
  5. 請求項1から4までのいずれか一項に記載の映像信号伝送システムにおいて、
    前記端末側のゲンロック位相調整部は、
    前記基地局側から伝送されたフラグに基づいて、前記基準となるゲンロック信号の立ち上がりタイミングを抽出し、立ち上がりタイミング信号を生成する立ち上がり抽出部と、
    前記基地局側から伝送された位相差に対し、所定の時定数にてフィルタ処理を施し、前記位相差が大きいほど位相移動量が大きくなり、前記位相差が小さいほど位相移動量が小さくなるように、前記位相移動量を出力する時定数フィルタと、
    前記時定数フィルタにより出力された位相移動量に応じて、前記位相移動量が大きいほど周波数オフセット量が大きくなり、前記位相移動量が小さいほど周波数オフセット量が小さくなるように、前記周波数オフセット量を決定するゲンロック周波数調整部と、
    前記基地局側から伝送されたカウンタ値及び前記ゲンロック周波数調整部により決定された周波数オフセット量に基づいて、前記フラグ及びカウンタ値生成部と同じ基準クロックの27MHzの周波数を、前記周波数オフセット量だけずらして調整し、調整後の周波数を有する基準クロックを生成するPLLと、
    前記PLLにより生成された基準クロックに基づいて、前記立ち上がり抽出部により生成された立ち上がりタイミング信号をサンプリングし、Odd/Even信号を生成するOdd/Even信号生成部と、
    前記Odd/Even信号生成部により生成されたOdd/Even信号に基づいて、ゲンロック信号を生成し、前記位相を調整したゲンロック信号として出力する同期生成部と、を備えたことを特徴とする映像信号伝送システム。
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