バーストモードで狭帯域化レーザが運転されると、1バースト期間のうちの最初のパルスから所定のパルスまでの期間で、レーザ光のスペクトル幅が許容範囲から外れるといった現象が発生する。この現象について考察する。
図33はパルスの経過に応じたスペクトル幅の変化を示す図である。ここでは一例として繰り返し周波数を6kHzとし、スペクトル幅としてE95幅を採用し、スペクトル幅の目標値を0.4pmとし、許容できる範囲を±0.05pmとしている。図33に示すように、発振休止期間直後の1パルスから約150パルスまではE95幅は大きく変動し許容範囲から外れることが多いが、約150パルス以降はE95幅は許容範囲内でほぼ安定している。E95幅の時定数は150/6000=0.025sと非常に短く、フィードバック制御ではE95幅を高精度に安定化できない。
本明細書では、1バースト期間のうちの最初のパルスから所定のパルスまでのスペクトル幅が安定しない期間(図33の1パルスから150パルスまでの期間)を不安定期間と称し、1バースト期間のうちの所定のパルスから最後のパルスまでの期間(図33の150パルス以降の期間)を安定期間と称する。
不安定期間でレーザ光のスペクトル幅が許容範囲から外れるといった現象が発生するのは、次のような原因によるものと推定されている。
(1)放電空間における光波面の変化
(2)光学素子における光波面の変化
(3)共振器中のパージガスの温度分布発生による光波面の変化
上記(1)〜(3)の原因について説明する。
図34はレーザチャンバの構造を示す図であり、図34(a)は狭帯域化レーザの上面図であり、図34(b)は狭帯域化レーザの側面図である。また図34(c)は図34(b)のA−A断面図である。
レーザチャンバ20の内部には互いに対向する放電電極21、22が設けられ、さらにレーザガスが封入されている。レーザチャンバ20のリア側には、筐体35内にプリズム32、33やグレーティング31等のレーザ光を狭帯域化する光学素子を有する狭帯域化モジュール30が設けられ、レーザチャンバ20のフロント側には筐体55に収容された出力カプラ50が設けられる。
レーザチャンバ20と狭帯域化モジュール30の筐体35との間の光路上にはスリット90rが設けられ、さらにその光路はベローズタイプの管状部材92で外気から遮断されている。筐体35にはパージガス(N2)の供給口35inが設けられ、ベローズタイプの管状部材92にはパージガス(N2)の排出口92outが設けられている。筐体35とベローズタイプの管状部材92は連通しており、このため供給口35inから供給されたパージガスは、筐体35およびベローズタイプの管状部材92の内部を流れ、排出口92outから排出される。
同様に、レーザチャンバ20と出力カプラ50を備えた筐体55との間の光路上にはスリット90fが設けられ、さらにその光路はベローズタイプの管状部材93で外気から遮断されている。筐体55にはパージガス(N2)の供給口55inが設けられ、ベローズタイプの管状部材93にはパージガス(N2)の排出口93outが設けられている。筐体55とベローズタイプの管状部材93は連通しており、このため供給口55inから供給されたパージガスは、筐体55およびベローズタイプの管状部材93の内部を流れ、排出口93outから排出される。
(1)放電空間における光波面の変化
図34(c)に示すように、放電電極21、22間の空間のことを放電空間という。放電空間における光波面の変化の原因としては、(1.1)音響波による放電空間内のガス密度の変化、(1.2)放電空間内の放電位置の変化、が考えられる。
(1.1)音響波による放電空間内のガス密度の変化
放電空間で放電を発生させると音響波が生ずる。音響波は放電空間の周囲に伝搬するが、一部成分はレーザチャンバ内の構造物やレーザチャンバの内壁等で反射して放電空間に戻る。音響波の反射波が放電空間に達するタイミングで放電を発生させると、放電空間内のレーザガス密度に粗の部分と密の部分とが発生しているため、放電空間内のレーザガス密度の粗密にともない放電空間における光軸方向の光波面が歪み、レーザ光のスペクトル幅が変化する。
このスペクトル幅の変化の程度は、放電時に音響波の反射波が放電空間にどの程度存在するかに応じて変わる。すなわち、音響波の反射波が放電空間に戻るタイミング(特定の繰り返し周波数)で放電が発生するとレーザ共振器内の光の波面が歪み、これにともなって発振するレーザのスペクトルプロファイルが歪む。このようにして、スペクトル幅の変化の程度は音響波の速度(音速)とレーザの繰り返し周波数とに影響を受けることになる。図35に示すように、スペクトル幅(ここではE95幅)はレーザの繰り返し周波数に依存する。図35では、約2500Hz以降でE95幅の変化が大きくなっているが、これは約1000〜2500Hzではパルス間隔が長く、次回放電時には音響波が放電空間を通過したか又は消滅したためであると考えられる。また、音速はレーザガスの温度によって変化するため、レーザガスの温度の変化によって音響波の伝搬速度は変化し、音響波の伝搬速度の変化にともないスペクトル幅も変化する。
このように、音響波による放電空間内のガス密度の変化に応じてレーザ共振器内の放電空間内で光波面が歪み、それにともないスペクトル形状が歪みスペクトル幅が変化する。
(1.2)放電空間内の放電位置の変化
一般に、放電による光の波面は電子密度分布にも依存している。放電エネルギーが高い放電空間では電子密度が高くなり放電の光の進む速度が早くなる。一方、放電エネルギーが低い放電空間では放電エネルギーが高い空間に比べて電子密度が低くなり放電の光の進む速度が遅くなる。したがって、中央部の放電エネルギーが高く、中央部から離れるにつれて放電エネルギーが低くなるようなエネルギー分布をもつ放電空間に光を透過させると、光の波面は凸面状となる。仮に放電空間を光学素子に例えると、近似的にシリンドリカル状の凹レンズの機能を果たすことになる。
そこで、次のような原因が推測される。例えばバースト期間初期の不安定期間で放電方向が傾いてアノード電極とカソード電極の両中央部からずれて放電した状態は、シリンドリカル凹レンズの凹面の極小部を結んだ線がグレーティングの分散方向に対して傾いた状態と同等になる。このような場合は、グレーティングの分散方向に対して凹レンズが傾くと、ビームは同様にグレーティングの分散方向に対して傾いて広がる。さらに、レーザのゲイン分布がグレーティングの分散方向に対して傾いていることにより、スペクトル形状が変化し、その結果、スペクトル幅は広くなる。このときの放電空間の状態をマッハツエンダ干渉計で干渉縞を観測すると、図36(a)に示すような干渉縞となる。そして、1バースト期間のうちの安定期間で放電方向が垂直に戻った場合、放電方向がグレーティングの分散方向に対して垂直となった状態で光が広がることと、ゲイン分布がグレーティングの分散方向に対して垂直なことによって、スペクトル幅は狭くなる。このときの放電空間の状態をマッハツエンダ干渉計で干渉縞を観測すると、図36(b)に示すような干渉縞となる。
このように、放電空間内の放電位置の変化に応じてレーザ共振器内のレーザ光の光波面とゲイン分布が変化し、それにともないスペクトル形状が変化しスペクトル幅が変化する。
(2)光学素子における光波面の変化
図37はプリズムを透過する光の波面が変化する様子を示す図である。プリズム32、33の斜面32a、33aまたは垂直面32b、33bには反射防止(AR)膜がコーティングされており、この膜に光の吸収が発生すると、プリズム32、33の表面に不均一な温度分布が発生する。こうした現象によって、例えば平面波の光がプリズムを透過すると、波面が歪められた透過光が出力される。また、プリズム32、33の母材に光の吸収が発生しても、同様にプリズム32、33の表面に不均一な温度分布が発生するため、波面が歪められた透過光が出力される。さらに、光の吸収によってグレーティング31に不均一な温度分布が発生すると、波面が歪められた回折光が出力される。
このように、光学素子に不均一な温度分布が発生するに応じてレーザ共振器内のレーザ光の光波面が変化し、それにともないスペクトル形状が変化しスペクトル幅が変化する。
(3)共振器中のパージガスの温度分布発生による光波面の変化
図38はレーザ光がスリットを通過する様子を示す図である。図38に示すように、レーザ光がスリット90rを通過する際にスリット90rのエッジ部が熱せられ、エッジ部周辺のパージガスの温度が高くなる。するとスリット90rの開口内のパージガスに、開口中央よりも開口周縁の方が高温となるような不均一な温度分布が発生する。またレーザ発振とともに開口内のパージガスの密度分布が変化する。こうした現象によって、例えば平面波の光がスリット90rを透過すると、凹形状に波面が歪められた透過光が出力される。
このように、共振器中のパージガスの温度分布発生に応じてレーザ共振器内のレーザ光の光波面が変化し、それにともないスペクトル形状が変化しスペクトル幅が変化する。
また、上述した(1)〜(3)の原因の他に、次のような現象によって、バースト期間初期の不安定期間で出力されるレーザ光のスペクトル幅が目標値と一致しなくなり、レーザ光のスペクトル幅が許容範囲から外れることがある。
図39は一般的な狭帯域化レーザにおけるスペクトル幅制御系統のブロック図である。モニタモジュール60は出力カプラ50から出力されたレーザ光のスペクトル幅を検出する。レーザ共振器は、出力カプラ50、レーザチャンバ20、スペクトル幅調整機構40及びスペクトル線幅を狭くするために波長分散素子が配置された狭帯域化モジュール40により構成される。レーザコントローラ80はモニタモジュール60で検出された出力レーザ光のスペクトル幅を目標値にするようにスペクトル幅調整機構40の動作指令値に応じた動作信号をドライバ10に出力する。ドライバ10は入力された動作指令値に応じてスペクトル幅調整機構40を動作させる。
発振停止期間中にレーザ共振器内の状態(例えばレーザチャンバ20内の温度やガスの状態、または光学素子及びパージガスの温度)の変化によって、スペクトル幅は徐々にずれていく。但し、現実には発振停止期間中にレーザ発振は行われないため、発振停止期間中にレーザ光自体が出力されず、当然の如くスペクトル幅も検出されない。ここでいう発振停止期間中のスペクトル幅というのは、仮に発振停止期間中の各時点でレーザ発振された場合に検出されるであろうレーザ光のスペクトル幅のことを意味する。
図40は従来技術における時間経過に応じたスペクトル幅の変化とバーストON・OFFの変化とスペクトル幅調整機構の動作量の変化とを示す図である。
図40(b)に示すように、時刻t1以前の期間および時刻t2以降の期間がバーストON状態であり、この期間がバースト期間である。また、時刻t1から時刻t2までの期間がバーストOFF状態であり、この期間が発振休止期間である。
時刻t1までのバースト期間では、図39に示すモニタモジュール60はレーザ光のE95幅E95を検出し、検出値E95に応じた信号をレーザコントローラ80に送る。レーザコントローラ80は次回パルスの動作指令値Vを求め、動作指令値Vに応じたスペクトル幅調整機構40の動作信号をドライバ10に送る。ドライバ10は動作信号に従いスペクトル幅調整機構40を操作する。こうしてスペクトル幅調整機構40のフィードバック制御が行われる。ここでは図40(a)に示すようにE95幅が安定した状態でフィードバック制御が行われており、図40(c)に示すようにスペクトル幅調整機構40の動作指令値Vの変動は小さくなる。
次に、時刻t1から時刻t2までの発振休止期間では、スペクトル幅は検出できないので、スペクトル幅調整機構40に動作指令値に応じた動作信号は送られず、スペクトル幅調整機構40は直前のバースト期間における最後の動作位置を維持する。ここでは、スペクトル幅調整機構40を動作させないので、図40(c)に示すようにスペクトル幅調整機構40の動作量は一定を維持する。一方。この間にレーザチャンバ20内の状態は変化し、図40(a)に示すように検出されるであろうスペクトル幅は徐々に一方向(ここでは太くなる方向)に変化する。
そして、時刻t2直後のバースト期間では、発振休止期間中にずれた分だけに最初のパルスのスペクトル幅が太くなり、目標値より太い値が検出される。この検出値に基づいてスペクトル幅調整機構40に動作指令値に応じた動作信号が送られ、スペクトル幅調整機構40を制御するフィードバック制御が行われる。しかし、検出したスペクトル幅と目標値との開きが大きいと、スペクトル幅調整機構40の動作量を大きくしなければならないため、次のパルスまでにスペクトル幅調整機構40の動作が終了しない場合がある。この場合、次のパルスのレーザ光のスペクトル幅は目標値に達しない。このような状態でフィードバック制御が行われ、徐々にスペクトル幅が安定していく。
以上のように様々な原因によって、バースト期間の1パルス目から所定パルスまでの不安定期間でレーザ光のスペクトル幅は許容範囲から外れる。すると、集積回路パターンの品質が悪化し、デバイスの製作ができなくなる。このことを防止するためには、不安定期間のパルス発振分を露光に使用しなければよいのであるが、そのようにすると十分な露光量を得るために1バーストのパルス数を増やさなければならず、生産効率の低下を招くことになる。
本発明はこうした実状に鑑みてなされたものであり、バースト期間初期の不安定期間に出力されるレーザ光のスペクトル幅を目標値近くに安定させ、レーザ光のスペクトル幅を許容範囲内に収めることによって、集積回路パターンの品質悪化や生産効率の低下を防止することを目的とするものである。
第1発明は、
狭帯域化したレーザ光を連続してパルス発振するバースト期間と発振休止する発振休止期間とを交互に繰り返して動作する狭帯域化レーザに、
レーザ光のスペクトル幅を変化させるスペクトル幅調整機構と、
前記スペクトル幅調整機構の動作を制御するレーザコントローラと、
を備えた狭帯域化レーザのスペクトル幅調整装置において、
発振休止期間の長さを計測する休止期間計測部と、
スペクトル幅と当該スペクトル幅が得られるような前記スペクトル幅調整機構の動作指令値とを互いに対応付け、さらにそのスペクトル幅と動作指令値とを発振休止期間の長さと対応付けて記憶する指令値記憶部と、
レーザ光のスペクトル幅を検出するスペクトル幅検出部と、を備え、
前記レーザコントローラは、発振休止期間中に、
前記指令値記憶部から、前記休止期間計測部で計測した発振休止期間の長さに対応する動作指令値を読み出し、
読み出した動作指令値に基づいて実際に使用する動作指令値を求め、
求めた動作指令値に応じた動作信号を前記スペクトル幅調整機構に出力して当該スペクトル幅調整機構の動作を制御し、
前記レーザコントローラは、バースト期間の不安定期間後の安定期間中に、
前記スペクトル幅検出部で検出されたスペクトル幅とその目標値との差分に基づいて、前記スペクトル幅調整機構の動作をフィードバック制御する
ことを特徴とする。
第2発明は、第1発明において、
前記指令値記憶部は、スペクトル幅と動作指令値とをさらに狭帯域化レーザの繰り返し周波数と対応付けて記憶し、
前記レーザコントローラは、発振休止期間中に、
前記指令値記憶部から、狭帯域化レーザの繰り返し周波数と前記休止期間計測部で計測した直前の発振休止期間の長さと一致又は近似し、スペクトル幅の目標値と一致又は近似するスペクトル幅およびそのスペクトル幅に対応する動作指令値を読み出し、
読み出した動作指令値に基づいて実際に使用する動作指令値を求め、
求めた動作指令値に応じた動作信号を前記スペクトル幅調整機構に出力して当該スペクトル幅調整機構の動作を制御する
ことを特徴とする。
第1、第2発明は発振休止期間中に発振休止期間の長さに応じてスペクトル幅の変動を抑制することによって、不安定期間のレーザ光のスペクトル幅を安定させる装置に関する。
狭帯域化したレーザ光を連続してパルス発振するバースト期間と発振休止する発振休止期間とを交互に繰り返して動作する狭帯域化レーザは、レーザチャンバから出力されたレーザ光のスペクトル幅(例えばE95幅)をアクチュエータの動作によって調整するスペクトル幅調整機構と、そのアクチュエータの動作指令値を出力するレーザコントローラと、その動作指令値を記憶する指令値記憶部と、発振休止期間の長さを計測する休止期間計測部と、を備える。
指令値記憶部は、動作指令値とスペクトル幅とを互いに対応付けて記憶しており、また互いに対応付けられた動作指令値とスペクトル幅とを、発振休止期間の長さと狭帯域化レーザの繰り返し周波数と対応付けて記憶する。
レーザコントローラは、発振休止期間中に、休止期間計測部で計測される休止期間と繰り返し周波数と一致又は近似し、スペクトル幅の目標値と一致又は近似するスペクトル幅と、そのスペクトル幅に対応付けられている動作指令値とを指令値記憶部から読み出す。そして読み出した動作指令値に基づいて実際に使用する動作指令値を求め、求めた動作指令値に応じた動作信号をスペクトル幅調整機構に送信する。なお、スペクトル幅の目標値と一致するスペクトル幅が指令値記憶部にあれば、その際に読み出した動作指令値と求めた動作指令値は一致することになるが、スペクトル幅の目標値と一致するスペクトル幅が指令値記憶部になければ、その際に読み出した動作指令値と求めた動作指令値は一致する場合もあれば相違する場合もある。
スペクトル幅調整機構のアクチュエータはレーザコントローラから送信された動作信号に従って動作する。こうして発振休止期間の経過と共にスペクトル幅調整機構は制御される。
なお、繰り返し周波数を一定にして動作する狭帯域化レーザの場合は、指令値記憶部に繰り返し周波数を記憶させなくてもよい。
第3発明は、
狭帯域化したレーザ光を連続してパルス発振するバースト期間と発振休止する発振休止期間とを交互に繰り返して動作する狭帯域化レーザに、
レーザ光のスペクトル幅を変化させるスペクトル幅調整機構と、
前記スペクトル幅調整機構の動作を制御するレーザコントローラと、
を備えた狭帯域化レーザのスペクトル幅調整装置において、
スペクトル幅と当該スペクトル幅が得られるような前記スペクトル幅調整機構の動作指令値とを互いに対応付け、さらにそのスペクトル幅と動作指令値とを、パルス番号と対応付けて記憶する指令値記憶部と、
レーザ光のスペクトル幅を検出するスペクトル幅検出部と、を備え、
前記レーザコントローラは、バースト期間の初期の不安定期間に、
前記指令値記憶部から、その時点のパルス番号に一致し、スペクトル幅の目標値と一致又は近似するスペクトル幅およびそのスペクトル幅に対応する動作指令値を読み出し、
読み出した動作指令値に基づいて実際に使用する動作指令値を求め、
求めた動作指令値に応じた動作信号を前記スペクトル幅調整機構に出力して当該スペクトル幅調整機構の動作を制御すると共に、
前記スペクトル幅検出部で検出されたスペクトル幅と前記レーザコントローラで求められた動作指令値とを互いに対応付け、さらにそのスペクトル幅と動作指令値とをその時点のパルス番号と対応付けて前記指令値記憶部に記憶させ、
前記レーザコントローラは、バースト期間の不安定期間後の安定期間中に、
前記スペクトル幅検出部で検出されたスペクトル幅とその目標値との差分に基づいて、前記スペクトル幅調整機構の動作をフィードバック制御する
ことを特徴とする。
第4発明は、第3発明において、
発振休止期間の長さを計測する休止期間計測部を備え、
前記指令値記憶部は、スペクトル幅と動作指令値とをさらに狭帯域化レーザの繰り返し周波数と発振休止期間の長さと対応付けて記憶し、
前記レーザコントローラは、バースト期間の初期の不安定期間に、
前記指令値記憶部から、その時点のパルス番号と狭帯域化レーザの繰り返し周波数と前記休止期間計測部で計測した直前の発振休止期間の長さと一致又は近似し、スペクトル幅の目標値と一致又は近似するスペクトル幅およびそのスペクトル幅に対応する動作指令値を読み出し、
読み出した動作指令値に基づいて実際に使用する動作指令値を求め、
求めた動作指令値に応じた動作信号を前記スペクトル幅調整機構に出力して当該スペクトル幅調整機構の動作を制御すると共に、
前記スペクトル幅検出部で検出されたスペクトル幅と前記レーザコントローラで求められた動作指令値とを互いに対応付け、さらにそのスペクトル幅と動作指令値とをその時点のパルス番号と狭帯域化レーザの繰り返し周波数と前記休止期間計測部で計測した直前の発振休止期間の長さと対応付けて前記指令値記憶部に記憶させる
ことを特徴とする。
第3、第4発明は前回以前のバースト期間の際のデータに基づいて不安定期間のスペクトル幅制御を行うことによって、バースト期間初期の不安定期間におけるレーザ光のスペクトル幅を安定させる装置に関する。
狭帯域化したレーザ光を連続してパルス発振するバースト期間と発振休止する発振休止期間とを交互に繰り返して動作する狭帯域化レーザは、レーザチャンバから出力されたレーザ光のスペクトル幅(例えばE95幅)をアクチュエータの動作によって調整するスペクトル幅調整機構と、そのアクチュエータの動作指令値を出力するレーザコントローラと、その動作指令値を記憶する指令値記憶部と、発振休止期間の長さを計測する休止期間計測部と、レーザ光のスペクトル幅を検出するスペクトル幅検出部と、を備える。
指令値記憶部は、動作指令値とスペクトル幅とを互いに対応付けて記憶しており、また互いに対応付けられた動作指令値とスペクトル幅とを、パルス番号と狭帯域化レーザの繰り返し周波数と直前の発振休止期間の長さと対応付けて記憶する。
レーザコントローラは、バースト期間初期の不安定期間中に、その時点のパルス番号と休止期間計測部で計測された直前の休止期間の長さと繰り返し周波数と一致又は近似し、スペクトル幅の目標値と一致又は近似するスペクトル幅と、そのスペクトル幅に対応付けられている動作指令値とを指令値記憶部から読み出す。そして読み出した動作指令値に基づいて実際に使用する動作指令値を求め、求めた動作指令値に応じた動作信号をスペクトル幅調整機構に送信する。なお、スペクトル幅の目標値と一致するスペクトル幅が指令値記憶部にあれば、その際に読み出した動作指令値と求めた動作指令値は一致することになるが、スペクトル幅の目標値と一致するスペクトル幅が指令値記憶部になければ、その際に読み出した動作指令値と求めた動作指令値は一致する場合もあれば相違する場合もある。
スペクトル幅調整機構のアクチュエータはレーザコントローラから送信された動作信号に従って動作する。こうしてパルス毎に発振休止期間の経過と共にスペクトル幅調整機構は制御される。そしてレーザ光のスペクトル幅はスペクトル幅検出部で検出される。
レーザコントローラは、求めた動作指令値をスペクトル幅検出部で検出されたスペクトル幅と互いに対応付け、また互いに対応付けた動作指令値とスペクトル幅をその時点のパルス番号と狭帯域化レーザの繰り返し周波数と直前の発振休止期間の長さと対応付けて記憶させる。
なお、繰り返し周波数を一定にして動作する狭帯域化レーザの場合は、指令値記憶部に繰り返し周波数を記憶させなくてもよい。また、発振休止期間を一定にして動作する狭帯域化レーザの場合は、指令値記憶部に発振休止期間の長さを記憶させなくてもよい。
第1、第2発明によれば、発振休止期間の長さに応じて発振休止期間中にスペクトル幅制御を行うので、発振休止期間中のスペクトル幅の変動によって発生する不安定期間におけるスペクトル幅の目標値と計測値のずれが小さくなる。このため、不安定期間におけるスペクトル幅が1パルス目から比較的安定し許容範囲内に収まる。その結果、集積回路パターンの品質悪化を防止でき、またバースト1パルス目から露光に使用できるので生産効率の低下を防止できる。
第3、第4発明によれば、前回以前の不安定期間に計測されたスペクトル幅の計測値とそのときのスペクトル幅調整機構の動作指令値といった実績に基づいて不安定期間中にスペクトル幅制御を行うので、不安定期間におけるスペクトル幅の目標値と計測値のずれが小さくなる。このため、不安定期間におけるスペクトル幅が1パルス目から比較的安定し許容範囲内に収まる。その結果、集積回路パターンの品質悪化を防止でき、またバースト1パルス目から露光に使用できるので生産効率の低下を防止できる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、スペクトル幅にはFWHMやE95幅等があるが、本発明は如何なるスペクトル幅の場合にも適用可能である。以下の説明ではスペクトル幅の具体例として主にE95幅を用いている。
本発明の特徴は、大きくは、発振休止期間中にスペクトル幅を制御する点と、不安定期間に予め記憶した動作指令値に応じてスペクトル幅を制御する点にある。何れか一方の制御を行うことによって不安定期間のスペクトル幅を安定させることが期待できるが、以下では両制御を共に行う実施形態を説明する。
先ず、本実施形態の装置構成を図1を用いて説明する。
図1は狭帯域化レーザ装置のスペクトル幅を調整するための装置構成の一構成例を示す。
図1に示すように、狭帯域化レーザ装置1においては、レーザチャンバ20のリア側(図面右側)の光路上にはスリット90rおよび狭帯域化モジュール30が配置され、レーザチャンバ20のフロント側(図面左側)の光路上にはスリット90fおよびスペクトル幅調整機構40が配置され、スペクトル幅調整機構40のフロント側(図面左側)の光路上には入射面にPR膜がコーティングされ出射面にAR膜がコーティングされた出力カプラ50と、モニタモジュール60とが配置されている。狭帯域化モジュール30と出力カプラ50は共振器を構成する。
レーザチャンバ20の内部には、所定距離だけ離隔し、互いの長手方向が平行であって、かつ放電面が対向する一対の放電電極21、22が設けられている。また、レーザチャンバ20におけるレーザ光の光軸上にあって、レーザ光出力部分には、ウインドウ23、24が設けられている。ウインドウ23、24は、レーザ光に対する透過性を有する材料、例えばCaF2等によって構成されている。両ウインドウ23、24は、外側の面が互いに平行に配置され、また、レーザ光に対して反射損失を低減すべくブリュースタ角で設置される。
レーザチャンバ20にはレーザ媒質としてレーザガスが封入される。F2レーザの場合にレーザガスは、F2ガスと、HeやNe等からなるバッファガスとの混合ガスである。KrFエキシマレーザの場合にレーザガスは、KrガスおよびF2ガスと、HeやNe等からなるバッファガスの混合ガスである。ArFエキシマレーザの場合にレーザガスは、ArガスおよびF2ガスと、HeやNe等からなるバッファガスの混合ガスである。各ガスは、図示しないガス供給・排出機構によって供給と排出が制御される。
レーザチャンバ20に設けられた放電電極21、22は電源回路70によって高電圧が印加される。放電電極21、22間の電圧が所定電圧を越えると放電が発生する。すると、レーザチャンバ20内のレーザガスは励起されて高エネルギー準位に移行した後に、低エネルギー準位に移行する。このとき光が放出される。
狭帯域化モジュール30には、プリズムビームエキスパンダ(以下、「プリズム」という)32、33と波長分散素子であるグレーティング31等の光学素子が設けられている。図1には2つのプリズムが設けられているが、その数は自由である。グレーティング31やプリズム32、33は固定部材を介して狭帯域化モジュール30の筐体に固定されるが、回転自在にして固定される場合もある。この場合、プリズム32やグレーティング31は図示しない回転機構に固定される。回転機構の駆動によってグレーティング31やプリズム32、33に対するレーザ光の入射角度が変化する。また、狭帯域化モジュール30は、波長分散素子であるエタロンと全反射ミラー等の光学素子で構成される場合もある。
スペクトル幅調整機構40はレーザ光のスペクトル幅を調整するための光学素子とこの光学素子を駆動するアクチュエータとを有する。図1ではレーザチャンバ20のフロント側にスペクトル幅調整機構40が設けられているが、この配置に限定する必要はない。単一のレーザチャンバを備えたレーザ装置であれば、共振器内にスペクトル幅調整機構40が配置されていればよい。また、複数のレーザチャンバを具えた所謂ダブルチャンバシステムのレーザ装置であれば、発振段レーザの共振器内又は発振段レーザと増幅段レーザの間にスペクトル幅調整機構40が配置されていればよい。スペクトル幅調整機構40の構成および配置には幾つかの形態が考えられるため、図2〜図19を用いてまとめて後述する。
モニタモジュール60にはビームスプリッタ61とモニタ62とが設けられている。モニタ62はE95幅や中心波長を検出するモニタと、レーザ光のエネルギーを検出するモニタとからなる。E95幅や中心波長を検出するモニタは、例えば、拡散板、エタロン、集光レンズ、ラインセンサ等を有するエタロン分光器を有する。モニタモジュール60に入射したレーザ光はビームスプリッタ61で分割され、一部がモニタ62に入射し、残りが外部に出射される。モニタ62では出力レーザ光のパルスエネルギー、中心波長及びスペクトル線幅が検出される。
レーザコントローラ80は、電源回路70の充電電圧の指令値に応じた信号を出力してレーザのパルスエネルギーを制御する。また、レーザコントローラ80は、モニタモジュール60のモニタ62で検出された中心波長に基づいて、狭帯域化モジュール30内の各光学素子が固定されている回転機構を駆動するための指令値に応じた信号を出力してレーザの中心波長を制御する。また、レーザコントローラ80は、スペクトル幅の目標値、パルス番号、繰り返し周波数、発振休止時間といったパラメータを使用して、指令値記憶部11に記憶されているスペクトル幅とそのスペクトル幅に対応するスペクトル幅調整機構40の動作指令値を読み出し、この動作指令値に基づき実際にスペクトル幅調整機構40を制御するために使用する動作指令値を求め、求めた動作指令値に応じた動作信号をドライバ10に出力してスペクトル線幅を制御する。
ドライバ10はスペクトル幅調整機構40に設けられた個々のアクチュエータ毎に設けられ、レーザコントローラ10から出力された動作指令値に応じて対応するアクチュエータを動作させる。
指令値記憶部11は、1バースト期間の最初のパルスから所定のパルスまでの各パルス番号kと繰り返し周波数fと発振休止期間の長さT毎に、スペクトル幅とそのスペクトル幅が得られるようなスペクトル幅調整機構40の動作指令値とを互いに対応付けて記憶する。スペクトル幅として例えばE95幅を採用し、動作指令値として例えばアクチュエータの駆動電圧値Vを採用したとすると、記憶される情報はE95k、f、T、Vk、f、Tのように表される。これは「繰り返し周波数がfで直前の発振休止期間の長さがTであるkパルス目の動作指令値をVk、f、TとしたときにE95幅はE95k、f、Tとなる」ことを示している。すなわちE95幅と動作指令値との対応関係は、E95−V曲線としても表される。情報の記憶方法はこれに限るものでななく、例えば、スペクトル幅E95、動作指令値V、パルス番号k、繰り返し周波数f、発振休止期間の長さTを相互に対応させたテーブルを用意してもよい。
また、指令値記憶部11は、1バースト期間の所定のパルスから最後のパルスまでに関しては、スペクトル幅例えばE95幅E95と動作指令値例えば駆動電圧値Vとの対応関係を示すE95−V曲線を記憶する。
なお、繰り返し周波数を一定にして動作する狭帯域化レーザの場合は、指令値記憶部11に繰り返し周波数fを記憶させなくてもよい。また、発振休止期間を一定にして動作する狭帯域化レーザの場合は、指令値記憶部11に発振休止期間の長さTを記憶させなくてもよい。
休止期間計測部12は、バースト期間の最後のパルス発振時に露光装置2から狭帯域化レーザ装置1に出力されるレーザ発振トリガを検出した時点から、次のバースト期間の最初のパルス発振時に露光装置2から狭帯域化レーザ装置1に出力されるレーザ発振トリガを検出する時点までの経過時間、すなわち発振休止期間の長さTを計測する。
露光装置2は、狭帯域化レーザ装置1にステップアンドリピートまたはステップアンドスキャンの動作に応じてレーザ発振トリガを出力し、また、次のバースト期間で目標とする繰り返し周波数を指示する信号を出力する。
シャッタ3は、狭帯域化レーザ装置1の出射口に設けられており、狭帯域化レーザ装置1のレーザコントローラ80から出力される開閉指令に応じて開閉動作する。
次に、図1に示すスペクトル幅調整機構40の具体的な構成および配置の形態について、図2〜図19を用いて説明する。
図2は第1の形態に係るスペクトル幅調整機構の構成および出力カプラとスペクトル幅調整機構とレーザチャンバと狭帯域化モジュールの位置関係を示す。図2(a)は上面図であり、図2(b)は側面図である。第1の形態は二つのレンズの間隔を変化させて光の波面を調整するものである。光の波面はシリンドリカル形状であり、そのシリンドリカル形状の頂点を結ぶ直線をレーザ共振器内の波長選択素子(グレーティング)の波長分散面に対して略垂直にし、シリンドリカル状の光の波面の曲率を変化させることにより、レーザのE95幅を変化させることができる。波長分散面とは、図2において、グレーティング31の回折面に形成された多数の溝に直交する方向をx軸とし、グレーティング31の回折面に形成された多数の溝と平行する方向をy軸とし、グレーティング31の回折面に直交する方向をz軸とした場合のxz平面と一致する。
図2に示すスペクトル幅調整機構40は、互いに離隔して対向し離隔距離が調整自在であるシリンドリカル凹レンズ41およびシリンドリカル凸レンズ42を有する。シリンドリカル凹レンズ41およびシリンドリカル凸レンズ42は、中心軸がレーザ共振器内の光路上に位置するように、また機械軸がグレーティング31の波長分散面に対して略垂直になるように配置される。シリンドリカル凹レンズ41およびシリンドリカル凸レンズ42の中心軸とは、シリンドリカル面の曲率半径の中心を結ぶ直線である。シリンドリカル凹レンズ41の機械軸とは、当該レンズの凹部の最も凹んだ位置を結ぶ直線である。シリンドリカル凸レンズ42の機械軸とは、当該レンズの凹部の最も高い位置を結ぶ直線である。シリンドリカル凹レンズ41は移動プレート43の上面に固定される。移動プレート43は1軸ステージ44に形成されたリニアガイド45に沿って移動自在である。1軸ステージ44はリニアガイド45の延在方向が光軸と平行になるように配置される。
移動プレート43の一側面には凸状に突き出た凸部43aが形成されており、凸部43aの正面にはPZT素子48の一端が当接し、凸部43aの背面には突起部47の頭部が当接している。PZT素子48の他端にはパルスモータ46の頭部が当接している。パルスモータ46およびPZT素子48はリニアガイド45の延在方向に伸縮自在であり、伸張によって凸部43aに対して突起部47方向の押圧力を与える。また、突起部47はリニアガイド45の延在方向に伸縮自在のバネが頭部に接続されており、このバネによって凸部43aに対してパルスモータ46およびPZT素子48方向の付勢力を与える。したがって、パルスモータ46およびPZT素子48はコントローラ80からドライバ10を介して送信される指令値に応じた動作信号を入力することによって伸縮し、それにともない移動プレート43はリニアガイド45に沿って移動する。
なお、図2ではパルスモータ46およびPZT素子48が設けられる例を示しているが、何れか一方のみが設けられていてもよい。パルスモータ46は駆動範囲が大きいというメリットを有する反面、応答性があまり良くないというデメリットを有する。PZT素子48は応答性が良いというメリットを有する反面、駆動範囲が小さいというデメリットを有する。そこで、この両者を設ければ互いのデメリットをカバーしあい、駆動範囲が大きく且つ応答性が良い機構を得ることができる。以下で説明する他の形態においても同様のことがいえる。
スペクトル幅調整機構40とレーザチャンバ20と狭帯域化モジュール30は図2に示すような向きに配置される。すなわち、狭帯域化モジュール30に設けられたシリンドリカル凹レンズ41およびシリンドリカル凸レンズ42の各シリンドリカル面の曲率半径中心がレーザ光軸上にあり、かつシリンドリカル凹レンズ41およびシリンドリカル凸レンズ42の各機械軸がグレーティング31の回折面に形成された多数の溝と平行となるように、スペクトル幅調整機構40とレーザチャンバ20と狭帯域化モジュール30が配置される。
図3は第2の形態に係るスペクトル幅調整機構の構成を示す。図3(a)は上面図であり、図3(b)は側面図である。本実施形態では、図2に示すシリンドリカル凹レンズ41の代わりに平凹シリンドリカルレンズ101が設けられ、図2に示すシリンドリカル凸レンズ42の代わりに平凸シリンドリカルレンズ102が設けられている。平凹シリンドリカルレンズ101および平凸シリンドリカルレンズ102を除いた他の構成は図2に示す第1の形態と同一である。本実施形態の場合は、平凸シリンドリカルレンズ102が出力カプラの機能を有するため、図1に示す出力カプラ50は不要である。平凸シリンドリカルレンズ102の入射面(レーザチャンバに近い側の面)には反射防止(AR)膜がコーティングされ、出射面(レーザチャンバから遠い側の面)には部分反射(PR)膜がコーティングされている。平凹シリンドリカルレンズ101は両面に反射防止(AR)膜がコーティングされている。平凹シリンドリカルレンズ101および平凸シリンドリカルレンズ102の曲率半径中心がレーザ光軸上にあり、かつ平凹シリンドリカルレンズ101および平凸シリンドリカルレンズ102の各機械軸がグレーティング31の回折面に形成された多数の溝と平行となる点も図2に示す構成と同様である。
図4は第2の形態に係るスペクトル幅調整機構を用いた場合の平凹シリンドリカルレンズ101の相対位置とE95幅およびレーザ出力相対値の関係を示す。図4においては、平凹シリンドリカルレンズ101と平凸シリンドリカルレンズ102とが所定距離だけ離れた状態を相対位置の「1」としている。また、平凹シリンドリカルレンズ101の相対位置が増加すると共に、平凹シリンドリカルレンズ101が平凸シリンドリカルレンズ102から離れていくものとする。
図4に示されるように、平凹シリンドリカルレンズ101の相対位置が増加するに伴い、E95幅は0.23pmから1.2pmまで単調増加した。一方、平凹シリンドリカルレンズ101の相対位置が1から9まで増加するに伴い、レーザ出力の相対値は0.42から1.63まで単調増加し、平凹シリンドリカルレンズ101の相対位置が9から11まで増加するに伴い、レーザ出力は1.63から1.2まで単調減少した。
例えば、E95幅の目標値を0.4pmとする場合は、平凹シリンドリカルレンズ101の相対位置が4.2になるように調整する。この状態におけるレーザの出力の相対値は0.95となる。
平凹シリンドリカルレンズ101の相対位置のうち、PZT素子48で駆動可能な範囲は±1程度であり、この範囲をE95幅に換算すると±0.1pm以上となる。つまり、PZT素子48で制御できるE95幅は±0.1pm程度であり、この値を超えて制御する必要がある場合は、パルスモータ46で平凹シリンドリカルレンズ101を駆動する。
図5は第3の形態に係るスペクトル幅調整機構の構成およびスペクトル幅調整機構とレーザチャンバと狭帯域化モジュールの位置関係を示す。図5は上面図である。第3の形態はシリンドリカルミラーの曲率を変化させて光の波面を調整するものである。
図5に示すスペクトル幅調整機構40は、曲率が調整自在であるシリンドリカルミラー111を有する。本実施形態の場合は、シリンドリカルミラー111とレーザチャンバ20との間にはビームスプリッタ117が配置される。ここでビームスプリッタ117は出力カプラの機能を果たしている。シリンドリカルミラー111の背面の両端には二つのロッド112の一端が接続され、シリンドリカルミラー111の背面の中央にはPZT素子116を介してバネ113の一端が接続される。二つのロッド112の他端はシリンドリカルミラー111の背後に配置されたプレート114に接続され、バネ113の他端はシリンドリカルミラー111の背後に配置されたパルスモータ115の頭部に接続される。パルスモータ115はプレート114に対して固定される。パルスモータ115とPZT素子116の伸縮方向を同一である。
シリンドリカルミラー111は、シリンドリカル面の曲率半径中心がレーザ光軸上にあり、かつシリンドリカル面の機械軸がグレーティング31の回折面に形成された多数の溝と平行になるように(つまり波長分散面に対して略垂直となるように)配置される。シリンドリカル面の機械軸の定義は、前記したシリンドリカル凹レンズ41等の機械軸の定義と同じである。
パルスモータ115又はPZT素子116が伸張するとシリンドリカルミラー111の中央が押され、パルスモータ115又はPZT素子116が縮退するとシリンドリカルミラー111の中央が引っ張られる。こうしてシリンドリカルミラー111のシリンドリカル面の曲率が調整される。
ここまではスペクトル幅調整機構をレーザチャンバのフロント側に配置する形態について説明した。しかし、図6に示すように、スペクトル幅調整機構40′をレーザチャンバ20のリア側に配置してスペクトル幅を調整することも可能である。次にこの形態について説明する。
図7は第4の形態に係るスペクトル幅調整機構の構成を示す。図7(a)、(b)は同一のスペクトル幅調整機構において、それぞれ異なるパターンの波面調整をした様子を示している。図7(a)、(b)に示すスペクトル幅調整機構40′の構成は、多くの点で図2に示すスペクトル幅調整機構40と一致する。異なるのはシリンドリカル凹レンズ121が移動プレートに固定されるのではなく、シリンドリカル凸レンズ122が移動プレートに固定されている点である。
図7に示すスペクトル幅調整機構40′は、互いに離隔して対向し離隔距離が調整自在であるシリンドリカル凹レンズ121およびシリンドリカル凸レンズ122を有する。シリンドリカル凹レンズ121とシリンドリカル凸レンズ122は両面にに反射防止(AR)膜がコーティングされている。シリンドリカル凸レンズ122は、シリンドリカル面の曲率半径中心がレーザ光軸上にあり、かつシリンドリカル面の機械軸がグレーティング31の回折面に形成された多数の溝と平行になるように(つまり、機械軸が波長分散面と略直交するように)レーザチャンバ20のリア側に配置され、シリンドリカル凹レンズ121はシリンドリカル面の曲率半径中心がレーザ光軸上にあり、かつシリンドリカル面の機械軸がグレーティング31の回折面に形成された多数の溝と平行になるように(つまり、機械軸が波長分散面と略直交するように)シリンドリカル凸レンズ122のリア側に配置される。シリンドリカル凸レンズ122は移動プレート123の上面に固定される。移動プレート123は1軸ステージ124に形成されたリニアガイド125に沿って移動自在である。1軸ステージ124はリニアガイド125の延在方向が光軸と平行になるように配置される。
移動プレート123の一側面には凸状に突き出た凸部123aが形成されており、凸部123aの正面にはPZT素子128の一端が当接し、凸部123aの背面には突起部127の頭部が当接している。PZT素子128の他端にはパルスモータ126の頭部が当接している。パルスモータ126およびPZT素子128はリニアガイド125の延在方向に伸縮自在であり、伸張によって凸部123aに対して突起部127方向の押圧力を与える。また、突起部127はリニアガイド125の延在方向に伸縮自在のバネが頭部に接続されており、このバネによって凸部123aに対してパルスモータ126およびPZT素子128方向の付勢力を与える。したがって、パルスモータ126およびPZT素子128はコントローラ80からドライバ10を介して送信される指令値に応じた動作信号を入力することによって伸縮し、それにともない移動プレート123はリニアガイド125に沿って移動する。
なお、図8に示すように、図7に示すスペクトル幅調整機構40′を狭帯域化モジュール30に設けられたプリズム33とグレーティング31との間に設けても良い。
図9は第5の形態に係るスペクトル幅調整機構の構成を示す。図9(a)、(b)は同一のスペクトル幅調整機構において、それぞれ異なるパターンの波面調整をした様子を示している。図9(a)、(b)に示すスペクトル幅調整機構40′の構成は、多くの点で図5に示すスペクトル幅調整機構40と一致する。異なるのはビームスプリッタが存在しない点と、光の入射方向と反射方向とが異なるという点である。
図9に示すスペクトル幅調整機構40′は、曲率が調整自在であるシリンドリカルミラー131を有する。シリンドリカルミラー131の背面の両端には二つのロッド132の一端が接続され、シリンドリカルミラー131の背面の中央にはPZT素子136を介してバネ133の一端が接続される。二つのロッド132の他端はシリンドリカルミラー131の背後に配置されたプレート134に接続され、バネ133の他端はシリンドリカルミラー131の背後に配置されたパルスモータ135の頭部に接続される。パルスモータ135はプレート134に対して固定される。パルスモータ135とPZT素子136の伸縮方向を同一である。
シリンドリカルミラー131は、レーザ光の入射方向と反射方向とが異なるような向きにして配置される。シリンドリカルミラー131は、シリンドリカル面の機械軸がグレーティング31の回折面に形成された多数の溝と平行になるように配置される。シリンドリカル面の機械軸の定義は、前記したシリンドリカル凹レンズ41等の機械軸の定義と同じである。
パルスモータ135又はPZT素子136が伸張するとシリンドリカルミラー131の中央が押され、パルスモータ135又はPZT素子136が縮退するとシリンドリカルミラー131の中央が引っ張られる。こうしてシリンドリカルミラー131のシリンドリカル面の曲率が調整される。
なお、図10に示すように、図9に示すスペクトル幅調整機構40′を狭帯域化モジュール30に設けられたプリズム32とプリズム33との間に設けても良い。
図11は第6の形態に係るスペクトル幅調整機構の構成を示す。第6の形態は狭帯域化モジュールに設けられたグレーティングの曲率を変化させて光の波面を調整するものであり、第3、第5の形態に使用されるパルスモータ等の構造をグレーティングの曲率調整に適用するものである。
グレーティング31の背面の両端には二つのロッド142の一端が接続され、グレーティング31の背面の中央にはPZT素子146を介してバネ143の一端が接続される。二つのロッド142の他端はグレーティング31の背後に配置されたプレート144に接続され、バネ143の他端はグレーティング31の背後に配置されたパルスモータ145の頭部に接続される。パルスモータ145はプレート144に対して固定される。
パルスモータ145又はPZT素子146が伸張するとグレーティング31の中央が押され、パルスモータ145又はPZT素子146が縮退するとグレーティング31の中央が引っ張られる。こうしてグレーティング31の多数の溝を直線状に維持した状態で回折面の曲率が調整される。
図12は第7の形態に係るスペクトル幅調整機構の構成を示す。第7の形態は狭帯域化モジュールに設けられたプリズムの回転角度を変化させてグレーティング31に入射するビームの拡大倍率を調整するものである。入射するビームをグレーティング31の波長分散面と垂直な方向に拡大するとビーム広がり角度が小さくなるため、スペクトル幅が狭くなる。
プリズム32は回転プレート151に固定され、回転プレート151は回転ステージ152に軸支される。回転プレート151の側面には凸状に突き出た凸部151aが形成されており、凸部151aの正面にはPZT素子155の一端が当接し、凸部151aの背面には突起部154の頭部が当接している。PZT素子155の他端にはパルスモータ153の頭部が当接している。パルスモータ153又はPZT素子155は伸張によって凸部151aに対して突起部154方向の押圧力を与える。また、突起部154は伸縮自在のバネが頭部に接続されており、このバネによって凸部151aに対してパルスモータ153およびPZT素子155方向の付勢力を与える。したがって、パルスモータ153又はPZT素子155の伸縮によって回転プレート151は回転する。
プリズム33は回転プレート156に固定されているが、その構造はプリズム32が回転プレート151に固定される構造と同一であるため、説明を省略する。
スペクトル幅を調整する場合は、レーザの発振波長が変化しないようにしつつ、パルスモータ153又はPZT素子155を調整して回転プレート151およびプリズム32を回転させ、またパルスモータ158又はPZT素子160を調整して回転プレート156およびプリズム33を回転させる。この際、回転プレート151およびプリズム32の回転方向と回転プレート156およびプリズム33の回転方向を逆方向にし、さらにそれぞれの回転角度を一致させる。すると、プリズム32、33によるビーム拡大倍率が変化する。倍率が小さくなるとスペクトル幅は広くなり、倍率が大きくなるとスペクトル幅は狭くなる。
ところで、図13に示すように、本発明は二つのレーザチャンバを有する狭帯域化レーザ装置、所謂ダブルチャンバシステムにおいてE95幅を調整することも適用対象としている。次にダブルチャンバシステムにおけるスペクトル幅調整機構の形態について説明する。
例えば、ダブルチャンバシステムは、シードレーザ光を発生させるMO(発振段レーザ)200と、MO200から出力されたレーザ光を増幅するPO(増幅段レーザ)300とを有する。MO200においては、レーザチャンバ220のリア側に狭帯域化モジュール230が配置され、フロント側に出力カプラ250が配置される。狭帯域化モジュール230には、グレーティング231とプリズム232、233とが設けられる。PO300においては、レーザチャンバ320のリア側にリアミラー331が配置され、フロント側に出力カプラ350が配置される。この実施例ではリアミラー331は部分反射(PR)膜がコーティングされており、この膜の反射率は例えば80〜90%となっている。
この実施例ではMO200は出力カプラ250とスペクトル幅調整機構とレーザチャンバ220と狭帯域化モジュール230を有する。MO200から出力されたスペクトル幅が狭いレーザ光はミラー501、502で反射され、PO300に注入される。PO300内ではリアミラー331に裏面からシードレーザ光が注入され、一部はこのリアミラー331を透過し、増幅段のレーザのリアミラー331とレーザチャンバ320と出力カプラ350の間でシード光が共振して増幅され、レーザ発振する。PO300から出力されたレーザ光はビームスプリッタ503で分離され、一方のレーザ光は外部に出力され、他方のレーザ光はモニタモジュール560に入力される。モニタモジュール560では、ビームスプリッタ561でレーザ光が分離され、波長モニタ562でスペクトル幅や中心波長が検出され、エネルギモニタ563でパルスエネルギが検出される。
前述した第1〜第7の形態をMO200に設けられているレーザチャンバ220のフロント側又はリア側に設けてもよい。図13はダブルチャンバシステムに第1〜第3の形態を適用する場合の配置を示している。
図14は第8の形態に係るスペクトル幅調整機構とレーザチャンバと狭帯域化モジュールの位置関係を示す。図15は第8の形態に係るスペクトル幅調整機構の構成を示し、図14に示すA方向からみたスペクトル幅調整機構を示している。第8の形態はスリットの間隔を調整するものである。
スペクトル幅調整機構240は、グレーティング231の分散方向に移動自在の2枚のブレード401、402によってスリットを形成する。ブレード401およびブレード402は図示しないリニアガイドレールに移動自在に取り付けられている。ブレード401はバネが内蔵されたプランジャネジ403によってブレード402方向の付勢力を受け、ブレード402はバネが内蔵されたプランジャネジ404によってブレード401方向の付勢力を受ける。ブレード401とブレード402の間には三角部材405の頭部が挿入される。三角部材405はブレード401、402と同程度の厚みを持つ板状部材であり、レーザチャンバ220の放電方向と平行する方向に移動自在である。三角部材405の側面はブレード401、402に対して摺動自在に接し、三角部材405の底面はPZT素子407の一端に接し、PZT素子407の他端はパルスモータ406の頭部に接する。
図15(b)に示すように、パルスモータ406又はPZT素子407が伸張すると、三角部材405がブレード401、402間を進む。すると三角部材405の側面に沿ってブレード401、402が離隔する方向に移動する。図15(a)に示すように、パルスモータ406又はPZT素子407が縮退すると、三角部材405がブレード401、402間から退く。すると三角部材405の側面に沿ってブレード401、402が接近する方向に移動する。このようにしてスリット間隔が変化する。
グレーティング231が角度分散素子なので、分散方向に対してMO200のレーザ発振する領域を調整することにより、MO200のスペクトル幅を調整することができる。なお、図14の構成では第8の形態に係るスペクトル幅調整機構240をレーザチャンバ220のフロント側に配置しているが、第8の形態に係るスペクトル幅調整機構240をレーザチャンバ220のリア側や狭帯域化モジュール230の内部に配置してもよい。
図16に示すように、ダブルチャンバシステムにおいては、MO200とPO300の間の光路にスペクトル幅調整機構410を配置してもよい。
図17はMOとPOの間にシリンドリカルレンズが配置された様子を示す。
MO200とPO300の間の光路には平凸シリンドリカルレンズ411と平凹シリンドリカルレンズ412とが互いに対向して配置されている。平凸シリンドリカルレンズ411と平凹シリンドリカルレンズ412の何れかは光軸に沿って移動自在にされている。移動機構としては例えば図2に示す機構と同一のものを用いればよい。また、平凸シリンドリカルレンズ411と平凹シリンドリカルレンズ412の代わりに、シリンドリカル凸レンズとシリンドリカル凹レンズを用いてもよい。
一般に分散素子をレーザ共振器内に配置すると、出力されるレーザビームの波長分布は、分散素子の分散方向に沿って分布する。例えば、図17において、紙面を含む平面の方向が発振段レーザの分散方向であるとすると、出力されたビームの波長分布はビームの位置に比例して発生する。そこで、平凸シリンドリカルレンズ411と平凹シリンドリカルレンズ412の間隔を調整すると、MO200に搭載される分散素子(グレーティング231)の分散方向のビームのうちPO300のレーザ共振器に有効に注入されるビームを調整することができる。結果としてPO300で増幅発振されるレーザ光のスペクトル幅を変化させることができる。平凸シリンドリカルレンズ411と平凹シリンドリカルレンズ412の間隔を調整することによってビームを分散方向に対して広げると、スペクトル幅は狭くなる。これに対して、平凸シリンドリカルレンズ411と平凹シリンドリカルレンズ412の間隔を調整することによってビームをグレーティング231の分散方向に対して狭めると、スペクトル幅は広くなる。
図18はMOとPOの間にプリズムが配置された様子を示す。
MO200とPO300の間の光路には二つのプリズム421、422が配置されている。二つのプリズム421、422は回転自在にされている。回転機構としては例えば図12に示す機構と同一のものを用いればよい。
プリズム421の回転方向とプリズム422の回転方向を逆方向にし、さらにそれぞれの回転角度を一致させる。すると、プリズム421、422によるビーム拡大倍率が変化する。ビーム拡大倍率を調整することによって、PO300に注入されるビーム幅のうち、MO200に搭載される分散素子(グレーティング231)の分散方向のビーム幅を調整することができ、PO300のレーザ共振器に注入されるスペクトル幅を変化させることができる。結果としてPO300で増幅発振されるレーザ光のスペクトル幅を変化させることができる。プリズム421、422の回転角度を調整することによってビームの拡大倍率を大きくすると、スペクトル幅は狭くなる。これに対して、プリズム421、422の回転角度を調整することによってグレーティング231の分散方向に対してビームの拡大倍率を小さくすると、スペクトル幅は広くなる。
図19はMOとPOの間にスリットが配置された様子を示す。
MO200とPO300の間の光路にはスリット431が配置されている。スリット431としては例えば図15と同一のものを用いればよい。
スリット431の間隔を調整することによって、PO300のレーザ共振器に注入されるスペクトル幅を変化させることができる。結果としてPO300で増幅発振されるレーザ光のスペクトル幅を変化させることができる。スリット431の間隔を広げると、スペクトル幅は広くなる。これに対して、スリット431の間隔を狭めると、スペクトル幅は狭くなる。PO300において、放電幅よりも狭いビームが注入されても、ビームに広がり角があれば、PO300の光共振器を光が往復することによって出力レーザ光は広がることが可能である。
なお、本発明は三以上のレーザチャンバを有する狭帯域化レーザ装置に適用することも可能である。この場合もスペクトル幅調整機構をMOに設けたり、各段の間に設けたりすればよい。さらに、実施例ではダブルチャンバシステムとしてMOPO方式の例を示したが、本発明は、増幅段にレーザ共振器が設置されず、シード光をそのまま増幅するMOPA方式のダブルチャンバシステムにも適用可能である。
次に、発振休止期間中にスペクトル幅調整機構40を制御した場合の動作指令値Vの変化とE95幅E95の変化を、図20〜図22に示す3つケースのタイミングチャートを用いて説明する。なお、図20〜図22に示す形態では、レーザ発振中すなわちバースト期間のスペクトル幅調整機構40の制御は全て従来のフィードバック制御が行われているものとする。
第1のケースとして、基本的な動作すなわち発振休止期間中にE95幅の目標値E95tや繰り返し周波数fを一定にする場合の動作を説明する。
図20は第1のケースにおける時間経過に応じたE95幅の変化とバーストON・OFFの変化とスペクトル幅調整機構の動作指令値の変化とを示す図である。
図20(b)に示すように、時刻t1以前の期間および時刻t2以降の期間がバーストON状態であり、この期間がバースト期間である。また、時刻t1から時刻t2までの期間がバーストOFF状態であり、この期間が発振休止期間である。
時刻t1までのバースト期間では、図1に示すモニタモジュール60はレーザ光のE95幅E95を検出し、検出値E95に応じた信号をレーザコントローラ80に送る。レーザコントローラ80は次回パルスの動作指令値Vを求め、動作指令値Vに応じたスペクトル幅調整機構40の動作信号をドライバ10に送る。ドライバ10は動作信号に従いスペクトル幅調整機構40を操作する。こうしてスペクトル幅調整機構40のフィードバック制御が行われる。ここでは図20(a)に示すようにE95幅が安定した状態でフィードバック制御が行われており、図20(c)に示すようにスペクトル幅調整機構40の動作指令値Vの変動は小さくなる。
時刻t1から時刻t2までの発振休止期間では、休止期間計測部12は前回バースト期間の最後のレーザ発振トリガを検出した時を基点として経過時間Tを計測し、その計測値に応じた信号を常時又は一定期間毎にレーザコントローラ80に送る。レーザコントローラ80は計測された経過時間Tに基づいてスペクトル幅調整機構40の動作指令値Vを求め、その動作指令値Vに応じた動作信号をドライバ10に送る。ドライバ10は動作指令値Vに従いスペクトル幅調整機構40を操作する。図20(c)に示すように発振休止期間中もスペクトル幅調整機構40の動作指令値Vは常時調整されており、その結果、図20(a)に示すように発振休止期間中でもE95幅E95は目標値E95tと略一致する。なお前述したように、発振休止期間中のE95幅E95というのは、仮に発振停止期間中の各時点でレーザ発振された場合に検出されるであろうレーザ光のE95幅E95のことを意味する。
時刻t2直後のバースト期間では、時刻t1までのバースト期間と同様にスペクトル幅調整機構40のフィードバック制御が行われる。発振休止期間中にスペクトル幅調整機構40が操作されるため、発振休止期間直後の最初のパルス時にモニタモジュール60で検出されるレーザ光のE95幅E95は目標値E95tに近くなる。したがって、図20(a)に示すようにバースト期間の初期からE95幅E95は比較的に安定する。図20(c)に示すようにバースト期間の最初の数パルスはスペクトル幅調整機構40の動作指令値Vの変動は大きいが、フィードバック制御が繰り返されるうちに変動は小さくなっていく。
第2のケースとして、発振休止期間中にE95幅の目標値E95tを変更する場合の動作を説明する。
図21は第2のケースにおける時間経過に応じたE95幅の変化とバーストON・OFFの変化とスペクトル幅調整機構の動作量の変化とを示す図である。
時刻t1までのバースト期間では、図20を用いて説明した第1のケースの時刻t1までのバースト期間と同様にスペクトル幅調整機構40のフィードバック制御が行われる。
時刻t1から時刻ta1までの発振休止期間では、図20を用いて説明した第1のケースの時刻t1から時刻t2までの発振休止期間と同様に休止期間計測部12の計測値Tに応じてスペクトル幅調整機構40の制御が行われる。
発振休止期間中の時刻ta1で目標とするE95幅がE95t1からE95t2に変更されたとする。E95t1とE95t2の差が小さい場合はPZT素子の制御のみで対応できるが、E95t1とE95t2の差が大きい場合はPZT素子の制御のみでは対応できない。そこで、レーザコントローラ80はE95幅を目標値E95t2まで大まかに近づけるための動作指令値V1を求め、その動作指令値V1に応じた動作信号をパルスモータのドライバに送る。パルスモータのドライバは動作指令値V1に従いパルスモータを介してスペクトル幅調整機構40を操作する。時刻ta2でパルスモータの制御が終了したら、レーザコントローラ80は時刻ta2からの経過時間に基づいてスペクトル幅調整機構40の動作指令値V2を求め、その動作指令値V2に応じた動作信号をPZT素子のドライバに送る。PZT素子のドライバは動作指令値V2に従いPZT素子を介してスペクトル幅調整機構40を操作する。
時刻t2直後のバースト期間では、図20を用いて説明した第1のケースの時刻t2直後のバースト期間と同様にスペクトル幅調整機構40のフィードバック制御が行われる。発振休止期間中に目標値E95tが変更されても、スペクトル幅調整機構40が操作されるため、発振休止期間直後の最初のパルス時にモニタモジュール60で検出されるレーザ光のE95幅E95は目標値E95tに近くなる。したがって、図21(a)に示すようにバースト期間の初期からE95幅E95は比較的に安定する。図21(c)に示すようにバースト期間の最初の数パルスはスペクトル幅調整機構40の動作指令値Vの変動は大きいが、フィードバック制御が繰り返されるうちに変動は小さくなっていく。
第3のケースとして、発振休止期間中に繰り返し周波数fを変更する場合の動作を説明する。
図22は第3のケースにおける時間経過に応じたE95幅の変化とバーストON・OFFの変化とスペクトル幅調整機構の動作量の変化とを示す図である。
時刻t1までのバースト期間では、図20を用いて説明した第1のケースの時刻t1までのバースト期間と同様にスペクトル幅調整機構40のフィードバック制御が行われる。
時刻t1から時刻ta1までの発振休止期間では、図20を用いて説明した第1のケースの時刻t1から時刻t2までの発振休止期間と同様に休止期間計測部12の計測値Tに応じてスペクトル幅調整機構40の制御が行われる。
発振休止期間中の時刻ta1で繰り返し周波数がf1からf2に変更されたとする。この場合、レーザコントローラ80は、図35に示すようなE95幅の周波数特性に基づいて、繰り返し周波数f1におけるE95幅E95f1と繰り返し周波数f2におけるE95幅E95f2との差ΔE95(=E95f2−E95f1)を求め、E95幅がΔE95だけ変化するような動作指令値V1を求め、その動作指令値V1に応じた動作信号をPZT素子のドライバに送る。PZT素子のドライバは動作指令値V1に従いPZT素子を介してスペクトル幅調整機構40を操作する。PZT素子は高速で動作するので、PZT素子の制御開始時刻ta1と制御終了時刻ta1′はほぼ一致する。PZT素子の制御が終了したら、レーザコントローラ80は時刻ta1′からの経過時間に基づいてスペクトル幅調整機構40の動作指令値V2を求め、その動作指令値V2に応じた動作信号をPZT素子のドライバに送る。PZT素子のドライバは動作指令値V2に従いPZT素子を介してスペクトル幅調整機構40を操作する。
時刻t2直後のバースト期間では、図20を用いて説明した第1のケースの時刻t2直後のバースト期間と同様にスペクトル幅調整機構40のフィードバック制御が行われる。発振休止期間中に繰り返し周波数fが変更されても、スペクトル幅調整機構40が操作されるため、発振休止期間直後の最初のパルス時にモニタモジュール60で検出されるレーザ光のE95幅E95は目標値E95tに近くなる。したがって、図22(a)に示すようにバースト期間の初期からE95幅E95は比較的に安定する。図22(c)に示すようにバースト期間の最初の数パルスはスペクトル幅調整機構40の動作指令値Vの変動は大きいが、フィードバック制御が繰り返されるうちに変動は小さくなっていく。
次に、図1に示す構成を用いて発振休止期間中にスペクトル幅を制御した場合および不安定期間に予め記憶したスペクトル幅と動作指令値の実績に応じてスペクトル幅を制御する場合の処理フローを、図23〜図30に示すフローチャートを用いて説明する。
図23は「メインルーチン」の処理フローである。
「メインルーチン」は、実露光前に行われる「調整発振によるE95幅制御データ取得サブルーチン」(ステップ101)と、実露光中に行われる「E95幅制御サブルーチン」(ステップ102)とからなる。1バースト期間が終了する毎にE95幅が許容範囲を超えたか否かの判断が行われ(ステップ103)、E95幅が許容範囲を超えていれば、改めて「調整発振によるE95幅制御データ取得サブルーチン」(ステップ101)が行われる(ステップ103判断Y)。E95幅が許容範囲を超えていなければ、引き続き「E95幅制御サブルーチン」(ステップ102)が行われる(ステップ103判断N)。
「調整発振によるE95幅制御データ取得サブルーチン」(ステップ101)は、シャッタ3を閉じて調整発振を行いながら各バースト毎に繰り返し周波数fや発振休止時間Tを変えていき、動作指令値記憶部11に記憶するE95幅E95と動作指令値Vの初期情報を取得するサブルーチンである。
「E95幅制御サブルーチン」(ステップ102)は、発振休止期間とバースト期間にE95幅を制御するサブルーチンである。
図24は図23に示される「調整発振によるE95幅制御データ取得サブルーチン」の処理フローである。
このサブルーチンに入ると、レーザコントローラ80からシャッタ3にシャッタ閉を指令する露光禁止信号が送られ、シャッタ3が閉められる(ステップ201)。
後のステップ(ステップ204〜208)で、レーザコントローラ80は動作指令値記憶部11にパルス番号kと繰り返し周波数fと発振休止期間の長さTの各パラメータ毎のE95幅E95k、f、Tと動作指令値Vk、f、Tの初期値が記憶されるが、その前に各パラメータの範囲すなわち繰り返し周波数fの範囲(最小値fmin、最大値fmax)およびこの範囲の刻み間隔Δfと、発振休止期間の範囲(最小値Tmin、最大値Tmax)およびこの範囲の刻み間隔ΔTと、不安定期間の最後のパルス番号(n)とを設定する(ステップ202)。そして、各パラメータの初期値として、繰り返し周波数f=fmin、発振休止期間T=Tmin、パルス番号k=1を設定する(ステップ203)。
その後、「E95幅制御サブルーチン」では、シャッタ3が閉じた状態で1バースト(発振休止期間+バースト期間)のパルス発振が行われる。各パルスでレーザコントローラ80は動作指令値記憶部11に、動作指令値V1〜n、f、Tとそのときに検出されたE95幅E951〜n、f、Tとを動作指令値記憶部11に記憶させる(ステップ204)。1バーストが終了すると、次の繰り返し周波数f=f+Δfを設定し、「E95幅制御サブルーチン」が行われる(ステップ205)。レーザコントローラ80は、ステップ204〜205の処理を繰り返し周波数fが最大値fmaxを超えるまで繰り返し、動作指令値V1〜n、fmin〜fmax、Tとそのときに検出されたE95幅E951〜n、fmin〜fmax、Tとを動作指令値記憶部11に記憶させる(ステップ206判断N)。繰り返し周波数fが最大値fmaxを超えたら(ステップ206の判断Y)、次の発振休止期間T=T+ΔTを設定し、「E95幅制御サブルーチン」が行われる(ステップ207)。レーザコントローラ80は、ステップ204〜207の処理を発振休止期間Tが最大値Tmaxを超えるまで繰り返し、動作指令値V1〜n、fmin〜fmax、Tmin〜Tmaxとそのときに検出されたE95幅E951〜n、fmin〜fmax、Tmin〜Tmaxとを動作指令値記憶部11に記憶させる(ステップ207判断N)。
こうして、繰り返し周波数fおよび発振休止期間Tがそれぞれ変更されて、各繰り返し周波数fおよび各発振休止期間Tに対応するパルス毎の動作指令値Vk、f、Tが、計測されたE95幅E95k、f、Tと共に記憶されていく。そして、発振休止期間Tが最大値Tmaxを超えたら(ステップ208の判断Y)、動作指令値の初期値は全て取得されたことになるので、レーザコントローラ80からシャッタ3にシャッタ開を指令する露光OK信号が送られ、調整発振は終了する(ステップ209)。
図25は図23、図24に示される「E95幅制御サブルーチン」の処理フローである。「E95幅制御サブルーチン」は、発振休止期間中に行われる「発振休止中スペクトル幅調整機構ドライブルーチン」(ステップ301)と、バースト期間の不安定期間中に行われる「不安定期間E95幅予測制御サブルーチン」(ステップ303)と、バースト期間の安定期間中に行われる「安定期間E95幅フィードバック制御サブルーチン」(ステップ304)とからなる。「発振休止中E95幅調整機構ドライブサブルーチン」(ステップ301)は、露光装置2から送られるレーザ発振トリガを狭帯域化レーザ装置1のレーザコントローラ80が受け取るまで続けられる(ステップ302)。また「安定期間E95幅フィードバック制御サブルーチン」(ステップ304)はバースト期間が終了するまで続けられる(ステップ305)。
図26は図25に示される「発振休止中スペクトル幅調整機構ドライブサブルーチン」の処理フローである。
露光装置2で半導体の露光が行われる前に、露光装置2は狭帯域化レーザ装置1のレーザコントローラ80に、次回露光の繰り返し周波数fとE95幅の目標値E95tを示す信号を送信する(ステップ401)。休止期間計測部12は発振休止期間の長さTを継続的に計測し、計測した長さTを信号化してレーザコントローラ80に送信する(ステップ402)。
発振休止期間中のパルス番号kはバースト1パルス目とみなせる。そこでレーザコントローラ80は、k=1を設定した後(ステップ403)、「記憶されたE95幅E95k、f、Tと動作指令値Vk、f、Tを読み出すサブルーチン」で、バースト1パルス目の制御のために、指令値記憶部11に記憶されたE95幅E95k、f、Tと動作指令値Vk、f、Tとを読み出す(ステップ404)。
次に、レーザコントローラ80は読み出されたE95幅E95k、f、Tとその時点のE95幅の目標値E95tとの差ΔE95=E95k、f、T−E95tを計算する(ステップ405)。そして、「ΔE95に基づき使用する動作指令値Vk、f、Tを計算するサブルーチン」で、ΔE95と読み出された動作指令値Vk、f、Tとに基づいて、実際に使用する動作指令値Vk、f、Tを求め(ステップ406)、求めた動作指令値Vk、f、Tに応じた動作信号をドライバ10に送信する(ステップ407)。この動作信号に応じてスペクトル幅調整機構40は調整される。
図27は図25に示される「不安定期間E95幅予測制御サブルーチン」の処理フローである。
モニタモジュール60は1パルスのレーザ発振毎にレーザ光のE95幅を検出し、レーザコントローラ80に送信する(ステップ501)。検出されたE95幅E95およびそのときのスペクトル幅調整機構40の動作指令値Vは、そのときのパルス番号k、繰り返し周波数f、直前の発振休止期間の長さTと対応づけられてE95k、f、T、Vk、f、Tとされる。このE95k、f、T、Vk、f、Tは互いに対応付けられて、指令値記憶部11に記憶される(ステップ502)。
レーザコントローラ80は、次のパルス番号k=k+1を設定した後(ステップ503)、「記憶されたE95幅E95k、f、Tと動作指令値Vk、f、Tを読み出すサブルーチン」で、次のパルス発振時の制御のために、指令値記憶部11に記憶されたE95幅E95k、f、Tと動作指令値Vk、f、Tとを読み出す(ステップ504)。
次に、レーザコントローラ80は、読み出されたE95幅E95k、f、Tとその時点のE95幅の目標値E95tとの差ΔE95=E95k、f、T−E95tを計算する(ステップ505)。そして、「ΔE95に基づき使用する動作指令値Vk、f、Tを計算するサブルーチン」で、ΔE95と読み出された動作指令値Vk、f、Tとに基づいて、実際に使用する動作指令値Vk、f、Tを求め(ステップ506)、その動作指令値Vk、f、Tに応じた動作信号をドライバ10に送信する(ステップ507)。この動作信号に応じてスペクトル幅調整機構40は調整される。
ステップ501〜507の処理は、パルス番号kがnを超えるまで、すなわち不安定期間が終了するまで繰り返される(ステップ508)。
図28は図26、図27に示される「記憶されたE95幅E95k、f、Tと動作指令値Vk、f、Tを読み出すサブルーチン」の処理フローである。
レーザコントローラ80は、その時点の繰り返し周波数fと直前の発振休止期間の長さTとを読み込む(ステップ601)。
そして、レーザコントローラ80は、その時点のパルス番号k、読み出した繰り返し周波数f、直前の発振休止期間の長さTに基づいて、指令値記憶部11に記憶された情報の中からE95幅の目標値E95tと一致するか又は近似するE95k、f、T′と、そのE95k、f、T′と共に記憶されているVk、f、T′を読み出す(ステップ602)。なお、読み出した繰り返し周波数f及び直前の発振休止期間の長さTは、E95k、f、T′及びVk、f、T′のパラメータである繰り返し周波数f及び発振休止期間の長さTと完全に一致していなくてもよく、近似していればよい。ここで読み出されたE95k、f、T′とVk、f、T′は、それぞれE95k、f、T、Vk、f、Tとされる(ステップ603)。
図29は図26、図27に示される「ΔE95に基づき使用する動作指令値Vk、f、Tを計算するサブルーチン」の処理フローである。
指令値記憶部11に記憶されたE95幅E95と動作指令値Vとの間にはE95−V曲線がある。そこで、レーザコントローラ80はこの曲線のうち、図28に示される「記憶されたE95幅E95k、f、Tと動作指令値Vk、f、Tを読み出すサブルーチン」の処理で求めた動作指令値Vk、f、Tにおける勾配(dV/dE95)=αを計算する(ステップ701)。なお、勾配αの求め方は、指令値記憶部11に記憶されたE95−V曲線から求めるのではなく、予め動作指令値VとE95幅E95の関係の微分曲線を記憶しておき、その微分曲線から直接勾配αを求めるようにしてもよい。
ステップ701に続き、レーザコントローラ80は、求めた勾配αと、図26に示される「発振休止中スペクトル幅調整機構ドライブサブルーチン」の処理又は図27に示される「不安定期間E95幅予測制御サブルーチン」の処理で求めたΔE95と、図28に示される「記憶されたE95幅E95k、f、Tと動作指令値Vk、f、Tを読み出すサブルーチン」の処理で求めた動作指令値Vk、f、Tとを用いて、実際に使用する動作指令値Vk、f、T=α・ΔE95+Vk、f、Tを求める(ステップ702)。
なお、ここで求める動作指令値Vk、f、Tは、図28に示される「記憶されたE95幅E95k、f、Tと動作指令値Vk、f、Tを読み出すサブルーチン」の処理のステップ602で、指令値記憶部11に目標値E95tと一致するE95k、f、T′があった場合は、結果としてそのE95k、f、T′と共に記憶されているVk、f、T′に一致することになる。
図30は図25に示される「安定期間E95幅フィードバック制御サブルーチン」の処理フローである。
モニタモジュール60は1パルスのレーザ発振毎にレーザ光のE95幅を検出し、レーザコントローラ80に送信するとともに、レーザコントローラ80はそのときに使用した動作指令値Vを読み出す(ステップ801)。
次に、レーザコントローラ80は、検出されたE95幅E95とその時点のE95幅の目標値E95tとの差ΔE95=E95−E95tを計算する(ステップ802)。
レーザコントローラ80は指令値記憶部11に記憶されているE95−V曲線のうち、ステップ801で読み出した動作指令値Vにおける勾配(dV/dE95)=αを計算する(ステップ803)。
レーザコントローラ80は、求めた勾配αと、E95幅の検出値ΔE95と、ステップ801で読み出した動作指令値Vとを用いて、実際に使用する動作指令値V=α・ΔE95+Vを求める(ステップ804)。
そして、レーザコントローラ80は、求めた動作指令値Vに応じた動作信号をドライバ10に送信する(ステップ805)。この動作信号に応じてスペクトル幅調整機構40は調整される。
スペクトル幅調整機構40が調整されると次のパルス発振が行われ(ステップ806)、モニタモジュール60で検出されたE95幅E95およびそのときのスペクトル幅調整機構40の動作指令値Vは互いに対応付けられて、指令値記憶部11に記憶される(ステップ807)。
以上、図23〜図30の処理は各パルス毎にスペクトル幅調整機構40を制御する形態について説明した。しかし、各パルス毎ではなく複数パルス毎にスペクトル幅調整機構40を制御するようにしてもよい。
図31(a)は各パルス毎に検出されるE95幅と検出されるE95幅を複数パルス毎に平均化したE95幅とを時間経過と共に示す図であり、図31(b)は各パルス毎にスペクトル幅調整機構を制御する場合の動作指令値と複数パルス毎にスペクトル幅調整機構を制御する場合の動作指令値とを時間経過と共に示す図である。
複数パルス毎にスペクトル幅調整機構40を制御する場合の処理フローは、パルス毎にスペクトル幅調整機構40を制御する場合の処理フロー(図23〜図30)と大筋で一致し、各パルス毎にスペクトル幅調整機構40を制御するのではなく、複数パルス毎にスペクトル幅調整機構40を制御するようにすればよい。また、E95幅をパルス毎のE95k、f、Tから複数パルスの平均値Eav95k、f、Tに置き換えればよい。例えばpパルス毎の平均値Eav95k、f、Tは、
Eav95k、f、T=(E95k−(p−1)、f、T+E95k−(p−2)、f、T+…+E95k−(p−p)、f、T)/p
という式で表される。
ところで、pパルス毎にスペクトル幅調整機構40を制御する場合は、バースト期間の1パルス目からp−1パルス目までの期間ではスペクトル幅調整機構40が制御されないことになる。しかし、このような場合であっても図26に示される「発振休止中スペクトル幅調整機構ドライブサブルーチン」が行われれば、発振休止中にもスペクトル幅調整機構40が制御されるので、バースト期間の1パルス目からp−1パルス目までの期間に検出されるE95幅の目標値に対するずれは小さくなる。
また、複数パルス毎にE95幅を平均化することにより、ノイズの影響を少なくすることができる。
本実施形態によれば、発振休止期間の長さに応じて発振休止期間中にスペクトル幅制御を行うので、発振休止期間中のスペクトル幅の変動によって発生する不安定期間におけるスペクトル幅の目標値と計測値のずれが小さくなる。このため、不安定期間におけるスペクトル幅が1パルス目から比較的安定し許容範囲内に収まる。その結果、集積回路パターンの品質悪化を防止でき、またバースト1パルス目から露光に使用できるので生産効率の低下を防止できる。
また、本実施形態によれば、前回以前の不安定期間に計測されたスペクトル幅の計測値とそのときのスペクトル幅調整機構の動作指令値といった実績に基づいて不安定期間中にスペクトル幅制御を行うので、不安定期間におけるスペクトル幅の目標値と計測値のずれが小さくなる。このため、不安定期間におけるスペクトル幅が1パルス目から比較的安定し許容範囲内に収まる。その結果、集積回路パターンの品質悪化を防止でき、またバースト1パルス目から露光に使用できるので生産効率の低下を防止できる。