JP5830862B2 - 水硬性材料の製造方法、及びコンクリートの破砕材の選別方法 - Google Patents

水硬性材料の製造方法、及びコンクリートの破砕材の選別方法 Download PDF

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Description

本発明は、コンクリートを破砕して得られる破砕材を利用して水硬性材料を製造する方法、及び破砕材の選別方法に関する。
建設業界では、様々な形で不要なコンクリートが発生する。例えば、解体現場における解体ガラだけでなく、生コン工場でも出荷量の約1%の割合で戻りコンクリートが発生し、また、建設現場では打設されなかった残コンクリートが発生する。現状、これらの大半は、廃棄物として処理されているが、最近では、これらのコンクリートに対して所定の処理を施すことにより、資源として再利用することが検討されている。
この再利用の対象材の一例として、例えば再生微粉が挙げられる。すなわち、コンクリート廃材を破砕等して同廃材から骨材を取り出して再生骨材を製造する際に、再生微粉(廃セメント微粉等)が副産されるが、当該再生微粉を、土壌改良材として用いることが検討されている。そして、土壌中の水分を吸収する吸水材としては、有効に使用可能である。しかし、水硬性(自硬性)が低いために、土壌改良の固化材の用途には課題がある。
ここで、特許文献1には、再生微粉の水硬性を高める方法として、再生微粉を500℃以上に加熱することが開示されている。また、再生微粉の水硬性を高める方法としてセメントを混合することも考えられる。
特開2005−320201号公報
しかしながら、再生微粉を500℃以上に加熱すると、加熱に伴いCO排出量が増加して、環境負荷を増大し、また加熱コスト分、コスト増となる。また、後者のセメントを混合する方法にあっても、セメントのCO原単位が大きいことから、やはり環境負荷の増大を来たし、セメントコスト分、コスト増となる。
ここで、この水硬性につき、本願発明者が鋭意検討したところによれば、所定条件を満足する再生微粉、更に言えば、所定条件を満足するコンクリート廃材を破砕して得られる破砕材については、加熱やセメント混合せずに、高炉スラグを混合することにより水硬性を高め得ることが判明した。
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、コンクリートを破砕して得られる再生微粉等の破砕材を用いて水硬性材料を製造する方法、及び破砕材の選別方法において、環境負荷の増大やコスト増を抑制することにある。
かかる目的を達成するために請求項1に示す発明は、
コンクリートを破砕して得られる破砕材を用いて水硬性材料を製造する方法であって、
前記コンクリートの材齢が所定年以内であるか、又は前記破砕材の懸濁液の電気伝導率が所定値以上であるかを判定する判定ステップと、
前記材齢が前記所定年以内であるか、又は前記電気伝導率が前記所定値以上であるという判定結果の場合に、前記破砕材に高炉スラグを混合する混合ステップと、を有し、
前記破砕材は、前記コンクリートを破砕してなる、骨材を含有状態の破砕コンクリートであることを特徴とする。
上記請求項1に示す発明によれば、破砕材に係るコンクリートの材齢が所定年以内であるか、又は破砕材の懸濁液の電気伝導率が所定値以上であるかを判定する。そして、当該破砕材がこの判定条件を満足する場合には、該破砕材に、高炉スラグを混合することで、水硬性を付与することができる。
つまり、これら破砕材については、加熱やセメント混合等をせずに、当該破砕材を原料として水硬性材料を製造可能となる。よって、環境負荷の増大やコスト増を抑制しながら、破砕材を用いて水硬性材料を製造可能となる。
また、高炉スラグは、前記破砕材中の六価クロムの土壌中への溶出を抑制する効果も奏するので、重金属の拡散低減の観点からも環境負荷の軽減を図れる。
また、破砕材は、コンクリートを破砕してなる骨材を含有状態のまま水硬性材料に供することができるので、コンクリート廃材の有効利用を図れる。
請求項2に示す発明は、
コンクリートを破砕して得られる破砕材を用いて水硬性材料を製造する方法であって、
前記破砕材の懸濁液の電気伝導率が所定値以上であるかを判定する判定ステップと、
前記電気伝導率が前記所定値以上であるという判定結果の場合に、前記破砕材に高炉スラグを混合する混合ステップと、を有することを特徴とする。
上記請求項2に示す発明によれば、破砕材の懸濁液の電気伝導率が所定値以上であるかを判定する。そして、当該破砕材がこの判定条件を満足する場合には、該破砕材に、高炉スラグを混合することで、水硬性を付与することができる。
つまり、これら破砕材については、加熱やセメント混合等をせずに、当該破砕材を原料として水硬性材料を製造可能となる。よって、環境負荷の増大やコスト増を抑制しながら、破砕材を用いて水硬性材料を製造可能となる。
請求項3に示す発明は、請求項1又は2に記載の水硬性材料の製造方法であって、
前記懸濁液は、液固比を10として脱塩水に前記破砕材を加えたものであり、
前記所定値は、200(mS/m)であることを特徴とする。
上記請求項3に示す発明によれば、高炉スラグを混合することで水硬性を付与可能な破砕材を確実に選別することができる。その結果、当該破砕材に高炉スラグを混合することにより、水硬性材料を確実に製造可能となる。
請求項に示す発明は、請求項1乃至の何れかに記載の水硬性材料の製造方法であって、
前記破砕材にフライアッシュを混合する第2混合ステップを、更に有することを特徴とする。
上記請求項に示す発明によれば、破砕材を用いて水硬性材料をより確実に製造可能となる。
請求項に示す発明は、
コンクリートを破砕して得られる破砕材の選別方法であって、
前記破砕材の懸濁液の電気伝導率が所定値以上であるか否かに基づいて破砕材を選別することを特徴とする。
上記請求項に示す発明によれば、高炉スラグを混合することで水硬性を付与可能な破砕材を見分けることができる。その結果、加熱やセメント混合等をせずに、当該破砕材を原料として水硬性材料を製造可能となる。よって、環境負荷の増大やコスト増を抑制しながら、破砕材を用いて水硬性材料を製造可能となる。
本発明によれば、コンクリートを破砕して得られる再生微粉等の破砕材を用いて水硬性材料を製造する方法、及びコンクリートの破砕材の選別方法において、環境負荷の増大やコスト増を抑制可能となる。
第1実施形態に係る水硬性材料の製造方法のフロー図である。 図2Aは、再生微粉Aの供試体の圧縮強度であり、図2Bは、再生微粉Bの供試体の圧縮強度である。 第2実施形態に係る水硬性材料の製造方法のフロー図である。 破砕材の一例としての破砕コンクリートの供試体の圧縮強度である。
===第1実施形態===
第1実施形態の水硬性材料の製造方法の原料は、再生微粉である。この再生微粉は、コンクリート廃材から再生骨材として砂利等の粗骨材や砂等の細骨材を取り出す過程で副産される。すなわち、この第1実施形態では、当該再生微粉が、請求項に係る「コンクリートを破砕して得られる破砕材」に相当する。そして、その粒径は、例えば200ミクロン以下であり、また、比表面積は、例えば2000〜10000(cm/g)である。なお、コンクリート廃材から再生骨材を取り出す方法としては、例えば、加熱すりもみ法等が挙げられる。
一方、上記再生微粉を原料として当該第1実施形態の製造方法で製造された水硬性材料は、例えば、土壌改良に使用される。すなわち、改良対象の土壌中に混合され、そして、土壌中の水分と反応等して硬化して固まる性質たる水硬性を示し、これにより、改良対象の軟弱地盤等を固化してその土質を改質する。
但し、上述の再生微粉のままだと水硬性が低く、土壌中に混合しても硬化し難い。このため、再生微粉に適宜な混合物を混合する等して水硬性を高め、これをもって、水硬性材料としている。
図1は、かかる水硬性材料の製造方法のフロー図である。
この製造方法は、先ず、再生微粉の活性度を判定する判定ステップS10を有している。ここで言う活性度とは、主として高炉スラグとの反応性の高さのことである。そして、この判定ステップS10において、活性度が高いと判定された場合には、高炉スラグ混合ステップS20へ移行する。そして、高炉スラグ混合ステップS20では、再生微粉に高炉スラグが混合され、これにより、水硬性が向上する。他方、同判定ステップS10において、活性度が低いと判定された場合には、高炉スラグの混合のみでは水硬性の付与は不可能と判断して、加熱ステップS30へ移行する。そして、加熱ステップS30では、再生微粉が例えば500℃以上の温度まで加熱され、これにより水硬性が高められる。
ここで、前者の高炉スラグ混合ステップS20を経る場合には、上述の加熱処理が行われない。よって、その場合は、加熱処理のCO排出に係る環境負荷の増大や、加熱コストに係るコスト増を一切伴うことなく、水硬性材料を製造可能である。また、使用する高炉スラグも、再生微粉と同様の副産物である。よって、高炉スラグの有効利用も可能となる。
ちなみに、後述するが、加熱ステップS30の代わりに、再生微粉にセメントを混合するステップを行って、再生微粉に水硬性を付与しても良い。
以下、各ステップS10、S20、S30について説明する。
<<<判定ステップS10>>>
判定ステップS10では、再生微粉の活性度(アルカリ性の高さ)を、コンクリート廃材の材齢、又は再生微粉の懸濁液の電気伝導率で判定する。
判定指標が材齢の場合には、材齢が2年以内であれば、活性度が高いと判定して「高炉スラグ混合ステップS20」へ移行し、2年を超える場合には、活性度が低いと判定して「加熱ステップS30」へ移行する。
ここで材齢とは、コンクリートの製造日からの経過年数のことである。なお、材齢算定の起算日は、コンクリートの製造が開始された日(セメントと水と骨材とが混合された日)であるが、場合によっては、コンクリート打設日としてもよいし、おおまかには建物の竣工年としてもよい。同算定の終了日は、コンクリート廃材から再生微粉が副産された日である。また、活性度を材齢で判定可能な理由は、材齢が長ければ、大気中のCOに晒されていた期間も長く中性化も進行しており、そのアルカリ性も低くなっていると考えられるからである。なお、材齢が2年以内であれば、後述の電気伝導率が200(mS/m)以上相当の活性度を有することを多数の計測事例により確認済みである。
一方、判定指標が電気伝導率(以下、ECとも言う)の場合には、計測対象の再生微粉の懸濁液の電気伝導率が、200(mS/m)以上であれば、活性度が高いと判定して「高炉スラグ混合ステップS20」へ移行し、200(mS/m)未満であれば、活性度が低いと判定して「加熱ステップS30」へ移行する。
電気伝導率の計測は、地盤工学会基準JIG021−2000の土懸濁液の電気伝導率試験方法に準拠して行われる。すなわち、下記(1)〜(5)の手順で計測される。但し、上記のJIG021−2000の試験方法では液固比(試料の重量と水の重量との割合)を5としているところ、ここでは、再生微粉の電気伝導率が高いことを考慮して、液固比を10としている。
(1)粒径10mm以上の再生微粉を除去したものを試料とする。
(2)再生微粉10gを脱塩水100mLに入れて、攪伴棒で懸濁させる。
(3)30分以上、3時間以内静置したものを測定用の試料液とする。
(4)試料液を攪伴しながら、電気伝導率計の白金電極部分を試料液に浸漬する。
(5)電気伝導率計の指示値が安定したのち、電気伝導率の値(S/m、mS/m)を読み取る。
<<<高炉スラグ混合ステップS20>>>
高炉スラグ混合ステップS20(請求項に係る「混合ステップ」に相当)では、再生微粉に高炉スラグを、例えば0.2:0.8〜0.8:0.2の配合比(重量比)で混合する。そして混合後には袋詰め等され、しかる後に水硬性材料として、改良対象の現場へ搬入される。なお、この混合は、現場で行っても良く、つまり、改良対象の土壌に水硬性材料を撒く直前等に混合しても良い。また、配合比は、改良対象の地盤の強度や、目標の強度等に応じて適宜設定され、何等上述の範囲に限るものではない。
ちなみに、この高炉スラグ混合ステップS20において再生微粉に高炉スラグを混合しただけでは、水がほぼ介在しない略乾燥下にあるために、未だ硬化はしない。つまり、水硬性は発現しない。但し、改良対象の土壌中に当該水硬性材料が混合された際には、土壌中の水分と反応して水硬性材料は硬化する(つまり、水硬性を発現する)。
このように活性度の高い再生微粉(つまり、電気伝導率が高く、或いは材齢の若い再生微粉)に対して高炉スラグを混入すると、なぜ水硬性を付与できるのかの理由については、仮説ではあるが、以下のように説明できる。
先ず、再生微粉には,セメントの水和生成物であるケイ酸カルシウム水和物(nCaO・SiO)と水酸化カルシウム(Ca(OH))が含まれている。
一方、高炉スラグは、SiO,Al,CaO,MgOの4成分が約97%を占めるCaOとMgOとを塩基とするアルミノ・シリケートである。そして、この高炉スラグが、水と接すると粒子表面にシリケートを主成分とした薄い緻密な水和物が生成され、これが被膜となるので、基本的には、それ以上の水和反応は進まない。但し、Ca(OH)などのアルカリ溶液中では、この被膜が破られて、高炉スラグ中のSiO,Al,CaO,MgOが溶出し、その結果、セメントのクリンカーと同じように水和反応が始まり、水和生成物が生成され硬化する。これを、スラグの潜在水硬性というが、ここで、再生微粉のなかでも、電気伝導率が高く或いは材齢が若いものほどCa(OH)が多く存在し、アルカリ性が高いため、これら再生微粉が、Ca2+やOHの供給源となって高炉スラグの水硬性を効果的に高め、これにより水硬性材料全体の水硬性が向上されるものと考えられる。
ところで、高炉スラグは、再生微粉中の六価クロムの土壌中への溶出を抑制する効果も奏する。詳しくは次の通りである。高炉スラグは、鋳鉄を製造する際に還元状態で生成されるので、高炉スラグに小量含まれている鉄等は還元されており、還元力を持つ。よって、この高炉スラグの還元力により、再生微粉中の六価クロムは、三価クロムへと還元されて不溶化し、これにより、土壌中への溶出が抑制される。また、再生微粉のアルカリ分と高炉スラグとが反応して水和鉱物が生成される際に、六価クロムが取り込まれることも、溶出抑制に寄与しているものと考えられる。
なお、この高炉スラグ混合ステップS20に加えて、更に、再生微粉にフライアッシュを混合するフライアッシュ混合ステップ(請求項に係る「第2混合ステップ」に相当)を行っても良い。フライアッシュは火力発電所で副産される石炭灰であり、SiOが60%,Alが25%でそれ自体に水硬性はない。しかし、可溶性のSiOが、セメントの水和反応によって生成する水酸化カルシウム(Ca(OH))と徐々に化合して不溶性の安定したケイ酸カルシウムを生成する。この反応をポゾラン反応というが、このポラゾン反応により、全体として水硬性材料が硬化する。よって、フライアッシュの混合も、水硬性の向上に寄与する。
<<<加熱ステップS30>>>
他方、加熱ステップS30では、適宜な加熱炉により再生微粉を加熱する。この時、再生微粉の温度が500℃以上になるように、望ましくは600℃以上に、更に望ましくは700℃以上になるように加熱する。これにより、再生微粉に水硬性が付与される。
そして、当該再生微粉を水硬性材料として、改良対象の土壌に混合した際には、再生微粉は、土壌中の水分と反応して硬化するようになり、つまり水硬性を示すようになる。
加熱炉としては、例えば炉内にスクリューコンベアや燃焼バーナーを有した構成が挙げられる。そして、スクリューコンベアによって再生微粉が炉内を搬送される間に、再生微粉は燃焼バーナーにより上述の目標温度まで加熱される。
なお、前述したように、この加熱ステップS30の代わりに、セメント混合ステップを行っても良い。すなわち、セメント混合ステップでは、再生微粉に対して所定の配合比でセメントを混合し、これにより、水硬性を付与して、水硬性材料を製造する。そして、当該水硬性材料を、土壌に混合した際には、水硬性材料は、主にセメントの水和反応による硬化に基づいて全体として硬化していくことになる。
<<<再生微粉への高炉スラグの混合による水硬性の向上効果確認実験>>>
以上説明してきた水硬性材料の製造方法は、基本的には、活性度が低い再生微粉では高炉スラグを混合しても水硬性を付与できないが、活性度が高い再生微粉については、高炉スラグの混合によって水硬性を付与できるという考え方に基づいている。その定性的理由については既に説明済みであるが、実際に確認実験も行っているので、以下ではその実験結果について説明する。
表1に、実験に用いた材料を示す。また、表2には、実験条件を示す。なお、表2中の各数値は、配合比(重量比)を示している。
上述したように、この実験では、先ず、再生骨材を製造した際に副産した2種類の再生微粉A,Bについて、高炉スラグの添加の有無の水硬性への影響を調べている。すなわち、表1に示すように、活性度の高い再生微粉として、材齢が1年の再生微粉Aを用意し、活性度が低い再生微粉として、材齢が24年の再生微粉Bを用意している。
また、高炉スラグの配合量の水硬性への影響も調べている。すなわち、再生微粉と高炉スラグとの混合物を基材とした場合に、表2に示すように、当該基材(再生微粉及び高炉スラグ)の総重量を一定に維持しながら、再生微粉と高炉スラグとの割合を変化させている。具体的には、基材に対する高炉スラグの重量比を0.25、0.5、及び0.75の三水準で変化させている。
更に、活性度の高い再生微粉Aについては、再生微粉Aの加熱温度の水硬性への影響、並びに、過リン酸石灰の混入の有無の水硬性への影響についても調べている。ちなみに、過リン酸石灰の影響を調べる理由は、改良対象の土壌のpHを下げる必要が有る場合に、当該過リン酸石灰を水硬性材料の一部として混入する可能性があるためである。
加熱条件は、非加熱、300℃、500℃、700℃の四水準で変化させている。
水硬性は、土壌を模した供試体の圧縮強度で評価する。供試体は、表2のK0〜Q4の各実験水準につき、それぞれ、次のようにして作成される。
先ず、表2の配合比で、再生微粉、高炉スラグ、土壌の土の模擬材としての標準砂を配合し、場合によっては過リン酸石灰も配合する。基本的には、水と、水硬性材料(再生微粉と高炉スラグと過リン酸石灰)と、標準砂との配合比を0.7:1:3としている。また、基材(再生微粉及び高炉スラグ)に対する高炉スラグの重量比を、前述の三水準(0.25、0.5、0.75)で変化させている。
そして、練混ぜとして、空練り10秒、及び、表2の分量の水を加えての低速練り20秒、並びに、高速練り40秒をそれぞれ行う。そうしたら、この練り混ぜ材を、直径50mm×高さ100mmの筒状鋼製型枠に入れて、封かん養生の上、20℃で強度試験材齢まで養生を行う。強度試験材齢としては例えば7日である。
そうしたら、筒状鋼製型枠から脱型して供試体を取り出し、この供試体を圧縮試験機にセットして一軸圧縮試験を行う。そして、破壊までの最大荷重を直径50mmの断面積で除算した値を、その供試体の圧縮強度とする。
なお、本実験では、従来手法のセメント混合による水硬性の向上レベルを比較対象とするために、高炉スラグの代わりに表1のセメントを再生微粉に混合した供試体も比較例として用意している。これら比較例は、表2中のK11及びQ4である。
図2Aに、再生微粉Aの実験結果を示し、また図2Bには再生微粉Bの実験結果を示す。なお、図2A及び図2B中のSgに係る各パーセント(0%、25%、50%、75%)は、基材(再生微粉及び高炉スラグ)に対する高炉スラグの重量比である。
図2A及び図2Bからは、活性度の高い再生微粉Aに高炉スラグを混合すると、全体として圧縮強度が大きく向上するが、活性度の低い再生微粉Bに高炉スラグを混合しても、圧縮強度は向上しないことがわかる。よって、活性度の高い再生微粉Aに高炉スラグを混合するだけで、その水硬性が向上することが実験的にも確認された。
また、従来手法たるセメント混合の供試体K11の圧縮強度が約1(N/mm)であるのに対して、再生微粉A(材齢1年)に高炉スラグを0.25の重量比で配合した供試体K1は、2.1(N/mm)の圧縮強度を有しており、もって、従来手法と同等以上の水硬性が付与されている。このことから、コンクリート廃材の材齢が2年以内の再生微粉の場合には、基材の総重量(再生微粉と高炉スラグとの合計重量)に対する高炉スラグの重量比を、0.25以上にすれば、従来のセメント混合による方法以上の水硬性を確保可能であると考えられる。
また、供試体K1、K2、K3の比較から、基材の総重量に対する高炉スラグの重量比を0.5より大きくしても水硬性はあまり向上しないことがわかる。よって、水硬性を効率良く向上させる観点からは、コンクリート廃材の材齢が1年以内の再生微粉の場合には、同高炉スラグの重量比を0.5以上0.75以下にすれば良いと考えられる。
更には、供試体K2、K4、K5、K6の比較から、再生微粉Aに対する加熱処理の水硬性への影響は小さいことがわかる。よって、必要に応じて、再生微粉Aを加熱しても大きな問題はないものと推察される。
また、供試体K3〜K10の比較からは、過リン酸石灰の有無について、次のことも言える。水硬性材料に対する重量比として想定される5%の重量比(=過リン酸石灰の重量/(再生微粉と高炉スラグとの合計重量))で過リン酸石灰を水硬性材料に混入した場合でも、その水硬性は概ね高いレベルに維持される。例えば、圧縮強度が最も下がっている実験水準K10(加熱温度700℃)の場合であっても、少なくとも、セメント混合の比較例K11よりも圧縮強度は高くなっており、もって、実用上大きな問題はないものと考えられる。
===第2実施形態===
前述の第1実施形態の水硬性材料の製造方法では、その原料たる「コンクリートを破砕して得られる破砕材」の一例として「再生微粉」を用いていたが、以下で説明する第2実施形態の水硬性材料の製造方法では、同破砕材として、「コンクリート廃材を破砕してなる骨材を含有状態の破砕コンクリート」を用いている点で主に相違する。よって、以下では、主にこの相違点についてのみ説明し、同じ内容については適宜説明を省略する。
破砕コンクリートは、例えば、生コン工場からの出荷後にそのまま戻された戻りコンクリートや建設現場で打設されずに残った残コンクリートを、例えば翌日〜数ヶ月間(つまり2年以内)放置等して硬化後に、粉砕機で粉砕して生成される。
よって、この破砕コンクリートは、セメントと骨材とを含有している。ここで、一般に骨材というのは、砂利等の粗骨材や砂等の細骨材のことを指すが、この例にあっては、破砕コンクリートには、これら粗骨材及び細骨材のうちのどちらか一方のみが入っていても良いし、或いは、両者が入っていても良い。
例えば、破砕コンクリートをふるいにかける等して、粒径が5mm超えのものを取り除くことにより、骨材として粒径が5mm以下のもののみを含有するようにしても良いし、或いは、ふるいにかけずに、種々の粒径のものを混合・調整するようにしても良い。
ここで、この破砕コンクリートは、上述のように戻りコンクリートや残コンクリートから生成される場合がある。そして、その場合には、コンクリートの製造開始からの経過時間たるコンクリート廃材としての材齢が例えば翌日〜3日というように極めて短く、故に、それらに含まれるセメント成分のアルカリ性は高い状態、つまり活性度が高いにある。そのため、前述の第1実施形態の再生微粉の場合と同様のメカニズムに基づいて、その活性度によっては、以下で説明するように、高炉スラグを混合するだけで水硬性を高めることが可能である。
図3は、この破砕コンクリートを用いて水硬性材料を製造する方法のフロー図である。
この製造方法も、概ね第1実施形態と同様である。つまり、前述した第1実施形態の製造方法の説明中の「再生微粉」の言葉を、「破砕コンクリート」に置き換えて読めば、概ねそれがそのまま第2実施形態の製造方法の説明となる。
詳説すると、この製造方法は、先ず、破砕コンクリートの活性度を判定する判定ステップS110を有している。そして、この例でも、活性度は材齢又は電気伝導率で判定される。すなわち、コンクリート廃材の材齢が2年以内であるか、或いは破砕コンクリートの懸濁液の電気伝導率が200(mS/m)以上であれば、活性度は高いと判定し、他方、材齢が2年を超えるか、或いは電気伝導率が200(mS/m)未満であれば、活性度は低いと判定する。
そして、この判定ステップS110において、活性度が高いと判定された場合には、高炉スラグ混合ステップS120へ移行し、同ステップS120では、破砕コンクリートに高炉スラグが混合され、これにより、水硬性が向上する。
他方、同判定ステップS110において、活性度が低いと判定された場合には、高炉スラグの混合のみでは水硬性の付与は不可能と判断して、再利用ステップS130へ移行する。そして、同ステップS130では、破砕コンクリートは路盤材や再生骨材の原料として利用される。
ここで、前者の高炉スラグ混合ステップS120を経る場合には、前述の加熱処理が行われない。よって、その場合は、加熱処理のCO排出に係る環境負荷の増大や、加熱コストに係るコスト増を一切伴うことなく、水硬性材料を製造可能である。また、使用する高炉スラグも、破砕コンクリートと同様の副産物であるので、高炉スラグの有効利用も可能となる。
また、上記製造方法によれば、破砕コンクリートは、コンクリート廃材を破砕してなる骨材含有状態のまま水硬性材料に供される。その結果、水硬性材料を安価にできる。
なお、材齢の算定方法は、再生微粉の場合と概ね同様である。すなわち、廃材にかかるコンクリートの製造開始日を起算日とし、同終了日は、コンクリート廃材から破砕コンクリートが破砕生成された日である。
また、電気伝導率の計測方法も、前述の再生微粉の場合と概ね同様である。すなわち、前述の再生微粉の試験方法と同様、当該計測に供する懸濁液の液固比(試料の重量と水の重量との割合)を10とし、そして、下記(1)〜(5)の手順で計測される。
(1)粒径10mm以上の破砕コンクリートを除去したものを試料とする。
(2)試料たる破砕コンクリート10gを脱塩水100mLに入れて、攪伴棒で懸濁させる。
(3)30分以上、3時間以内静置したものを測定用の試料液とする。
(4)試料液を攪伴しながら、電気伝導率計の白金電極部分を試料液に浸漬する。
(5)電気伝導率計の指示値が安定したのち、電気伝導率の値(S/m、mS/m)を読み取る。
ちなみに、このようにして製造された第2実施形態に係る水硬性材料は、ある程度の成型性を期待できるので、その用途としては、土壌改良材以外に、例えば建物周りの外構材等といったコンクリートあるいはモルタル代替品としての利用も考えられる。
ところで、この活性度の高い破砕コンクリートへの高炉スラグの付与による水硬性の改善効果及び六価クロムの抑制効果については、実際に実験で確認しており、以下、それについて説明する。
コンクリート廃材としては、生コン工場へ戻された戻りコンクリートを用いた。すなわち、この戻りコンクリートの硬化後に破砕機で破砕し、これをふるいにかけて粒径5mm以下のものを取り出し、これを破砕コンクリートとした。以下では、この破砕コンクリートのことを「再生砂」とも言う。表3に実験条件を示す。なお、表3中の水、再生砂、高炉スラグに係る各数値は、配合比(重量比)を示している。また、再生砂に占めるセメントと骨材との配合比(重量比)は1:3であり、再生砂に係るコンクリート廃材の材齢は約半年であり、その電気伝導率は、474(mS/m)であり、またpHは、12.6であった。
そして、高炉スラグの配合量の水硬性への影響を調べた。ここでは、水硬性を、供試体の圧縮強度で評価している。
すなわち、先ず、表3のC1〜C4に示すように、再生砂と高炉スラグとの割合を、再生砂と高炉スラグとの合計重量(以下、基材の重量とも言う)を一定に維持しながら四水準で変化させて、これにより4水準の供試体を作成する。
次に、各配合比で配合した各供試体を、練混ぜとして、空練り10秒、及び、表の分量の水を加えての低速練り20秒、並びに、高速練り40秒をそれぞれ行う。そして、この練り混ぜ材を、直径50mm×高さ100mmの筒状鋼製型枠に入れて、封かん養生の上、20℃で強度試験材齢まで養生を行う。強度試験材齢としては例えば7日である。
最後に、筒状鋼製型枠から脱型して供試体を取り出し、この供試体を圧縮試験機にセットして一軸圧縮試験を行う。そして、破壊までの最大荷重を直径50mmの断面積で除算した値を、その供試体の圧縮強度とする。
図4に実験結果を示す。図4を参照してわかるように、高炉スラグを未混合の供試体C1については、圧縮強度が0.1(N/mm)と低いのに対し、高炉スラグを混合した供試体C2、C3、C4については、それぞれ2.8、7.0、9.8(N/mm)というように、各圧縮強度は大きく向上している。よって、再生微粉によらず、再生砂、すなわち破砕コンクリートであっても、材齢が若い場合には、高炉スラグの混合により、圧縮強度が大きく向上することがわかる。そして、これにより、活性度の高い破砕コンクリートに高炉スラグを混合するだけで、その水硬性が向上することが実証された。
また、図4からは、高炉スラグの混合比率が高くなるに従って、水硬性が高くなることもわかる。
更に、図2A及び図2Bの従来手法たるセメント混合の供試体K11、Q4との対比から、高炉スラグの混合により、従来手法と同等以上の水硬性を付与可能であることもわかる。すなわち、従来手法と同等以上の水硬性を付与可能である。
六価クロムの溶出量の計測ついては、平成15年3月6日環境省告示第18号(平成3年8月23日環境庁告示第46号)の溶出試験に準拠しつつ、表3の実験水準毎に行っている。
表3にその結果を示す。表3における供試体C1と、供試体C2乃至C4との比較から、高炉スラグの混合により六価クロムの溶出が抑制されていることがわかる。よって、再生微粉によらず、再生砂、すなわち破砕コンクリートであっても、高炉スラグの混合により、六価クロムの溶出が抑制されることが実証された。
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で以下に示すような変形が可能である。
上述の実施形態では、再生微粉又は破砕コンクリートの活性度の判定に供するコンクリート廃材の材齢の閾値を2年とし、電気伝導率に係る閾値を200(mS/m)としていたが、何等これに限るものではなく、水硬性材料の水硬性の目標レベル等に応じて適宜変更可能である。
上述の実施形態では、水硬性材料の用途として土壌改良材等を例示したが、その用途は何等これに限るものではなく、或る程度の水硬性が要求される用途に適用可能である。例えば、単なる埋め戻し材や裏込め材として使用しても良い。

Claims (5)

  1. コンクリートを破砕して得られる破砕材を用いて水硬性材料を製造する方法であって、
    前記コンクリートの材齢が所定年以内であるか、又は前記破砕材の懸濁液の電気伝導率が所定値以上であるかを判定する判定ステップと、
    前記材齢が前記所定年以内であるか、又は前記電気伝導率が前記所定値以上であるという判定結果の場合に、前記破砕材に高炉スラグを混合する混合ステップと、を有し、
    前記破砕材は、前記コンクリートを破砕してなる、骨材を含有状態の破砕コンクリートであることを特徴とする水硬性材料の製造方法。
  2. コンクリートを破砕して得られる破砕材を用いて水硬性材料を製造する方法であって、
    前記破砕材の懸濁液の電気伝導率が所定値以上であるかを判定する判定ステップと、
    前記電気伝導率が前記所定値以上であるという判定結果の場合に、前記破砕材に高炉スラグを混合する混合ステップと、を有することを特徴とする水硬性材料の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の水硬性材料の製造方法であって、
    前記懸濁液は、液固比を10として脱塩水に前記破砕材を加えたものであり、
    前記所定値は、200(mS/m)であることを特徴とする水硬性材料の製造方法。
  4. 請求項1乃至3の何れかに記載の水硬性材料の製造方法であって、
    前記破砕材にフライアッシュを混合する第2混合ステップを、更に有することを特徴とする水硬性材料の製造方法。
  5. コンクリートを破砕して得られる破砕材の選別方法であって、
    前記破砕材の懸濁液の電気伝導率が所定値以上であるか否かに基づいて前記破砕材を選別することを特徴とするコンクリートの破砕材の選別方法。
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