JP5826664B2 - グライダー曳航用ロープ - Google Patents
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Description
上記のような用途に使用されるロープとしては、金属や化学繊維製のロープが使用されているが、化学繊維製のロープとしては、例えば、超高分子量ポリオレフィン繊維であるダイニーマ(登録商標)を使用した十二打ち(芯無し)の組編み構造のロープ等が一般に使用されている。
特に日本では、欧州とは異なり、河川敷のようにロープが摩れ易い場所でグライダーを飛ばすことが多いため、その寿命は日本学生航空連盟によると、1/2.5ないし1/3程度になるといわれている。
また、上述のロープは更に、ウインチのドラムに巻き取られる際に、高い張力がかかることで潰れた状態で巻き取られるため、ロープ同士で咬み込みが起き、それによりロープが損傷するという問題もあった。
上記の問題は、ロープを芯を有する構成として潰れ難くすることにより回避することができる。
しかし、芯の無いロープであれば荷重がかかるとロープが伸びることによりストランドが長さ方向に角度をとって、適正な耐摩耗角度を取り得るものの、上記のように芯を有する構成にすると、荷重がかかると直ちに側ストランドが芯を圧縮してロープが伸びようとするのを妨げるため、ストランドの角度は、適正な耐摩耗角度をとり得ず、それにより、耐摩耗性が低下するという問題が生じた。
更に、上記のように、荷重付加によるロープの伸びが抑制されることから、急激に荷重がかかった際の衝撃吸収性が低下するという問題も生じることがわかった。
ロープにおいて、使用する芯を、通常用いられる芯よりも細い特定の範囲の太さ、具体的には、芯の断面形状が円形である場合は、その直径を0.8mmないし1.8mmの範囲とし、芯の断面形状が円形でない場合は、断面形状において幅が最大となる箇所の長さを、0.8mmないし1.8mmの範囲とすると、ロープに荷重がかかった際のロープの伸び縮みは、芯の無いロープと同様に維持され、即ち、衝撃吸収性の低下が抑制されたままで、優れた耐摩耗性を示すロープとなることを見出し本発明を完成させた。
(1)合成樹脂繊維から構成される芯と超高分子量ポリオレフィン繊維を撚ってなる12打の側ストランドから構成される直径4〜7mmのグライダー曳航用ロープであって、前記側ストランドの総合繊度は、90000dtexないし120000dtexの範囲であり、前記芯の太さは、芯の断面形状が円形である場合は、その直径が0.8mmないし1.8mmの範囲であり、芯の断面形状が円形でない場合は、断面形状において幅が最大となる箇所の長さが、0.8mmないし1.8mmの範囲となるグライダー曳航用ロープ、
(2)前記側ストランドは、8880dtexのストランド12本を撚合したものであり、前記芯は、ポリオレフィンモノフィラメントを撚った4700ないし21000dtexのヤーンである前記(1)記載のグライダー曳航用ロープ、
(3)前記芯は、7000ないし14000dtexのヤーンである前記(2)記載のグライダー曳航用ロープ、
(4)前記側ストランドは、8880dtexのストランド12本を撚合したものであり、前記芯は、ポリオレフィンモノフィラメントを撚った3本のヤーンを撚った3つ打のトワインであり、総合繊度が3200ないし16000dtexである前記(1)記載のグライダー曳航用ロープ、
(5)前記芯は、総合繊度が5000ないし10000dtexである前記(4)記載のグライダー曳航用ロープ、
に関する。
本発明のグライダー曳航用ロープは、芯と側ストランドから構成されるロープにおいて、使用する芯を、通常用いられる芯よりも細い特定の範囲の太さとすることを特徴とし、そして、このような構成を採用することにより耐摩耗性の低下を抑制するものであるが、このような効果が奏される理由は以下のように考えることができる。
即ち、本発明のグライダー曳航用ロープに荷重をかけてゆくと、側ストランドは伸びてゆき、また、同時に締まって細くなってゆくこととなるが、この際、芯は側ストランドの内径より細くなっているため、側ストランドの伸びが芯と側ストランドとが密着することにより妨げられることはなく、そのため、ロープが伸びることにより側ストランドにおけるストランドが長さ方向に角度をとって、適正な耐摩耗角度を取り得ることとなり、その結果として耐摩耗性の低下が抑制されたものと考えられる。
また、本発明のグライダー曳航用ロープは、ある程度の荷重がかかると側ストランドが芯と密着して、その形状が円形として維持されるため、芯無しのロープのように、潰れた形状となって地面との接触面積を大きくしてロープの摩れを増し、それによりロープの寿命を短くするという問題は生じ難く、また、ウインチのドラムに巻き取られる際にもロープ同士で咬み込みが起きてロープが損傷するという問題も生じ難いという利点を有する。
また、本発明のグライダー曳航用ロープは、芯が側ストランドの内径より細くなり、芯を容易に取り除くことができるため、ロープを繋ぐ時に、通常の芯入りロープに比べて楽に接続できるという利点も有する。
本発明のグライダー曳航用ロープにおける芯として使用し得る合成樹脂繊維としては、一般的に合成樹脂繊維として使用されているものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維、ポリエステル、ナイロン等が挙げられ、好ましくは、ポリオレフィン繊維が挙げられ、また、ポリエチレンが挙げられる。
合成樹脂繊維の使用形態としては、特に限定されるものではないが、例えば、単繊維のモノフィラメント糸、長繊維を多数撚りあわせたモノフィラメント糸、短繊維を撚ったスパン糸等を挙げることができ、単繊維のモノフィラメント糸が好ましく、特に、ポリエチレンモノフィラメント、ポリプロピレンモノフィラメントが好ましい。
単繊維のモノフィラメント糸を用いる際の繊度としては、300dtexないし600dtexの範囲が挙げられ、400dtexないし500dtexの範囲が好ましい。
特に、500dtex程度のポリプロピレンモノフィラメント、400dtex程度のポリエチレンモノフィラメントが好ましい。
芯の構成としては、合成樹脂繊維を撚ったヤーン(撚り糸)、該ヤーンを撚ったストランド、該ストランド又は前記ヤーンを撚った3つ打、8つ打、12打、16打の索の何れの構成も採用することができるが、合成樹脂繊維を撚ったヤーン、合成樹脂繊維を撚った3本のヤーンを撚った3つ打のトワイン等とするのが好ましい。
芯の構成としては、長く繋がった紐状の形態、ある程度の長さ毎に切断された紐状の形態、短く切断された芯が断続的に存在する形態の何れの形態も採用することができるが、ある程度の長さ毎に切断された紐状の形態とするのが好ましい。
芯として、ある程度の長さ毎に切断された紐状の形態を採用する場合、その長さは、200mないし600mの範囲とするのが好ましい。
上記のように、芯をある程度の長さ毎に切断された紐状の形態とすると、ロープへの荷重がなくなった際にロープの一部にかかる、大きく膨らもうとする力を解放することができるという利点を有する。
また、芯として合成樹脂繊維を撚ったヤーンを採用する場合、その撚りは、通常、10回/30cmないし40回/30cmの範囲であり、16回/30cmないし24回/30cmの範囲が好ましく、芯として合成樹脂繊維を撚った3本のヤーンを撚った3つ打のトワインを採用する場合、その各ヤーンの撚りは、通常、12回/30cmないし30回/30cmの範囲であり、18回/30cmないし24回/30cmの範囲が好ましく、ヤーン3本の撚りは、通常、10回/30cmないし40回/30cmの範囲であり、18回/30cmないし24回/30cmの範囲が好ましい。
芯の太さは、芯の断面形状が円形である場合は、その直径が、通常、0.8mmないし1.8mmの範囲であり、1.0ないし1.4mmの範囲が好ましく、芯の断面形状が円形でない場合は、断面形状において幅が最大となる箇所の長さが、通常、0.8mmないし1.8mmとなる範囲であり、1.0ないし1.4mmの範囲が好ましい。
上記芯の太さに対応する総合繊度は、芯の断面形状が円形である場合は、通常、4700ないし21000dtexの範囲が挙げられ、7000ないし14000dtexの範囲が好ましい。
上記の場合、総合繊度が21000dtexを超えるとストランドが適正な耐摩耗角度をとり難くなって、耐摩耗性が低下し易くなるため好ましくなく、4700dtex未満になるとロープが潰れて表面積が増えて、ロープの摩れが増し易くなるため好ましくない。
また、芯の断面形状が円形でない場合に対応する総合繊度としては、例えば、芯として合成樹脂繊維を撚った3本のヤーンを撚った3つ打のトワインを採用する場合、通常、3200ないし16000dtexの範囲が挙げられ、5000ないし10000dtexの範囲が好ましい。
上記の場合、総合繊度が16000dtexを超えるとストランドが適正な耐摩耗角度をとり難くなって、耐摩耗性が低下し易くなるため好ましくなく、3200dtex未満になるとロープが潰れて表面積が増えて、ロープの摩れが増し易くなるため好ましくない。
尚、芯は、その表面の一部又は全部を樹脂加工することもできる。
超高分子量ポリオレフィン繊維は、通常、フィラメントを撚ったヤーンの形態で使用され、その繊度としては、100dtexないし2000dtexの範囲が挙げられ、1000dtexないし2000dtexの範囲が好ましい。
特に、1700ないし1800dtex程度のヤーンが好ましい。
側ストランドの構成は、超高分子量ポリオレフィン繊維(ヤーン)を撚ったストランドを更に撚った12打の索となる。
側ストランドの総合繊度は、通常、90000dtexないし120000dtexの範囲が挙げられ、好ましくは、100000dtexないし110000dtexの範囲が挙げられ、具体的には、106560dtexが挙げられる。
各ストランドの繊度としては、8000dtexないし10000dtexの範囲が挙
げられ、好ましくは、8300dtexないし9300dtexの範囲が挙げられ、具体的には、8880dtexが挙げられる。
上記ストランドの撚りとしては、15回/30cmないし25回/30cmの範囲であり、16回/30cmないし20回/30cmの範囲が好ましい。
上記ストランドとしては、例えば、1000dtexないし2000dtexの範囲のヤーン、例えば、1776dtexのヤーン5本を撚ったもの等が挙げられる。
前記側ストランドが伸びきってその太さが変らなくなるまでの荷重は、通常5kNないし10kNであり、また、5kNないし6kN程度で有り得る。
より好ましい態様としては、芯が、7000ないし14000dtexのヤーンである上述のグライダー曳航用ロープが挙げられる。
本発明のグライダー曳航用ロープの別の好ましい態様としては、側ストランドが、8880dtexのストランド12本を撚合したものであり、芯が、ポリオレフィンモノフィラメントを撚った3本のヤーンを更に撚った3つ打のトワインであり、総合繊度が3200ないし16000dtexである上述のグライダー曳航用ロープが挙げられる。
より好ましい態様としては、総合繊度が5000ないし10000dtexである上述のグライダー曳航用ロープが挙げられる。
図1に、荷重がかかってない状態における本発明のグライダー曳航用ロープであって、芯4が合成樹脂繊維を撚った1本のヤーンであって、側ストランド(撚り方が右ストランド(S撚り)のヤーン2と左ストランド(Z撚り)のヤーン3から構成される)が超高分子量ポリオレフィン繊維を撚ってなるヤーン12本を組編みした(12打)グライダー曳航用ロープ1の断面の模式図を示した。
ここで、側ストランド(2及び3)における各ストランドは互いに接し、それにより、側ストランドは実質的に外面(ロープ表面)と内面を有することになるが、該内側と芯4の表面との間には空間が存在して密着していないと考えられる。
グライダー曳航用ロープ1に荷重をかけた際の想定される形状の変化を図3に示した。
グライダー曳航用ロープ1は、荷重がかかっていない状態(1a)では、芯4の表面は、側ストランド(2及び3)の内側との間に空間が存在して側ストランドの内側とは密着していないと考えられるが、これに徐々に荷重をかけてゆくと、側ストランドが伸びてゆくと同時に締まってゆき、伸びきってその太さが変らなくなった状態(1b)で、芯4の表面は、側ストランド(2及び3)の内面と密着するものと考えられる。
ここで、側ストランド(2及び3)における各ストランドは互いに接し、それにより、側ストランドは実質的に外面(ロープ表面)と内面を有することになるが、該内側と芯6
の表面との間には空間が存在して密着していないと考えられる。
グライダー曳航用ロープ5に荷重をかけた際の想定される形状の変化を図4に示した。
グライダー曳航用ロープ5は、荷重がかかっていない状態(5a)では、芯6の表面は、側ストランド(2及び3)の内側との間に空間が存在して側ストランドの内側とは密着していないと考えられるが、これに徐々に荷重をかけてゆくと、側ストランドが伸びてゆくと同時に締まってゆき、伸びきってその太さが変らなくなった状態(5b)で、芯6の表面は、側ストランド(2及び3)の内面と密着するものと考えられる。
しかし、グライダー曳航の用途において用いられるロープは長いものであるため、総合的な吸収力としては、実用的にも有効なものになると考えられる。
また、本発明のグライダー曳航用ロープは、ある荷重までは、芯無しのロープと同様の高い応答性(伸び縮み)を維持するが、これにより、グライダーの離陸時の感覚をウインチ作業者及びパイロットに伝えることができる。
また、本発明のグライダー曳航用ロープは、荷重が一定量を超えると側ストランドが芯と密着してロープを圧縮する力が生じ、ロープを膨らませる力が蓄えられるが、これは、荷重が減少した際にロープが弛むのを防止し、次に来る衝撃を減弱することに寄与することが期待できる。
また、本発明のグライダー曳航用ロープは、上記の機構によりロープにかかる細かな衝撃を吸収して快適な離陸に寄与する可能性も考えられる。
表1に記載された種々の芯(ヤーン)の周囲に下記の側ストランドを形成(組編)することにより直径5mmのロープ1ないし8(芯の長さ:200m)を製造した。
図1を用いて説明すると、表1に記載された種々の芯(ヤーン)4を製造し、その周囲に、ダイニーマ(登録商標)SK−75(東洋紡績株式会社製、繊度:1776dtex)のヤーン5本をS撚りに撚って製造したストランド2(8880dtex)6本と、ダイニーマ(登録商標)SK−75(東洋紡績株式会社製、繊度:1776dtex)のヤーン5本をZ撚りに撚って製造したストランド3(8880dtex)6本の合計12本のストランドを、撚り数:19回/30cmで組編みして(12打:サザンブレード)、総繊度106560dtexの側ストランド(2及び3)を形成した。
上記で製造したロープ1ないし8を以下の摩耗試験に付し、削り取られたロープの質量を測定した。
測定結果を表2及び図5に示した。
<試験条件>
使用機器:サンドペーパー式摩耗試験機(三河繊維技術センター製)
サンドペーパー:耐水♯400
荷重:19.6N(約2.0kg)
ドラム:毎分2回転(周径594mm)
スライド幅:7mm/回転
表2及び図5からわかるように、ロープ3(芯:4716dtex)からロープ6(芯21222dtex)の間において、耐摩耗性に優れており、特に、ロープ4(芯:7074dtex)からロープ5(芯:14148dtex)の間の耐摩耗性が優れていた。
尚、ロープ3ないし6に荷重をかけた際の伸び具合は、芯無しのロープ(ロープ1)と同程度であった。
2:側ストランドを構成するストランド(S撚り)
3:側ストランドを構成するストランド(Z撚り)
4:芯(1本のヤーン)
5:グライダー曳航用ロープ(芯が3本のヤーンを撚ったトワイン)
6:芯(3本のヤーンを撚ったトワイン)
Claims (5)
- 合成樹脂繊維から構成される芯と超高分子量ポリオレフィン繊維を撚ってなる12打の側ストランドから構成される直径4〜7mmのグライダー曳航用ロープであって、前記側ストランドの総合繊度は、90000dtexないし120000dtexの範囲であり、前記芯の太さは、芯の断面形状が円形である場合は、その直径が0.8mmないし1.8mmの範囲であり、芯の断面形状が円形でない場合は、断面形状において幅が最大となる箇所の長さが、0.8mmないし1.8mmの範囲となるグライダー曳航用ロープ。
- 前記側ストランドは、8880dtexのストランド12本を撚合したものであり、前記芯は、ポリオレフィンモノフィラメントを撚った4700ないし21000dtexのヤーンである請求項1記載のグライダー曳航用ロープ。
- 前記芯は、7000ないし14000dtexのヤーンである請求項2記載のグライダー曳航用ロープ。
- 前記側ストランドは、8880dtexのストランド12本を撚合したものであり、前記芯は、ポリオレフィンモノフィラメントを撚った3本のヤーンを撚った3つ打のトワインであり、総合繊度が3200ないし16000dtexである請求項1記載のグライダー曳航用ロープ。
- 前記芯は、総合繊度が5000ないし10000dtexである請求項4記載のグライダー曳航用ロープ。
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