JP5825593B2 - 植物耐熱性誘導剤 - Google Patents

植物耐熱性誘導剤 Download PDF

Info

Publication number
JP5825593B2
JP5825593B2 JP2011282111A JP2011282111A JP5825593B2 JP 5825593 B2 JP5825593 B2 JP 5825593B2 JP 2011282111 A JP2011282111 A JP 2011282111A JP 2011282111 A JP2011282111 A JP 2011282111A JP 5825593 B2 JP5825593 B2 JP 5825593B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
plant
isothiocyanate
heat resistance
plants
heat
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2011282111A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2013129643A (ja
Inventor
正和 原
正和 原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
THE SHIZUOKA CHAMBER OF COMMERCE AND INDUSTRY
Shizuoka University NUC
Original Assignee
THE SHIZUOKA CHAMBER OF COMMERCE AND INDUSTRY
Shizuoka University NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by THE SHIZUOKA CHAMBER OF COMMERCE AND INDUSTRY, Shizuoka University NUC filed Critical THE SHIZUOKA CHAMBER OF COMMERCE AND INDUSTRY
Priority to JP2011282111A priority Critical patent/JP5825593B2/ja
Publication of JP2013129643A publication Critical patent/JP2013129643A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5825593B2 publication Critical patent/JP5825593B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Cultivation Of Plants (AREA)
  • Agricultural Chemicals And Associated Chemicals (AREA)

Description

本発明は、植物耐熱性誘導剤、特にイソチオシアネートを有効成分とする植物耐熱性誘導剤、及びイソチオシアネートを用いた植物耐熱性を誘導する方法に関する。
地球温暖化による植物生産性の低下は、農林業や環境の分野で、国際的な重要課題となっている。その克服方法は、熱の反射や放散を促す技術の開発と耐熱性植物の作出とに大別される。特に、後者は植物自体の耐熱性を高めるため、根本的な方法として注目されている。
耐熱性植物の作出には、交配育種による方法、遺伝子組み換えによる方法、及び耐熱性誘導剤による方法がある。現在、交配育種により耐熱性作物が作出されつつあるが、交配には手間と時間がかかり、効率的ではない。また、遺伝子組み換えによる方法は理論的に有効ではあるものの、遺伝子組み換え作物の栽培は、規制が多く実用化が困難である。従って、耐熱性誘導剤による方法が有望視されている。
植物耐熱性誘導剤については、酵母分解物や生薬粗抽出液などの混合物を利用することが報告されている(特許文献1及び2)。しかしながらこれらの植物耐熱性誘導剤は、混合物における有効成分及びその作用機作は分かっていないため、有効性や安定性を確保しにくいのが現状である。したがって、有効成分が明確な耐熱性誘導剤が望まれている。
一方、イソチオシアネートは「−N=C=S」との構造を持つ化合物群であり、例えば、フェネチルイソチオシアネートやアリルイソチオシアネートが挙げられる。これらの化合物は、植物の辛味成分として知られており、殺虫や抗菌、抗癌作用があることが報告されている(特許文献3〜5)。また、本発明者らは、イソチオシアネートに殺草作用があることも見出した(非特許文献1)。
特開平11−199419号公報 特開2007−45709号公報 特開2001−31510号公報 特開2001−187706号公報 特表2008−539261号公報
Jounal of Plant Physiology、167(8):643−649(2010)
本発明は、有効成分が明確な、新規の植物耐熱性誘導剤を提供すること、及び、該新規の植物耐熱性誘導剤を用いた植物耐熱性を誘導する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究の結果、殺草作用を発現しない濃度のイソチオシアネートの水溶液をシロイヌナズナに噴霧適用すると、シロイヌナズナが耐熱性を獲得し、また、イソチオシアネートで処理したシロイヌナズナにおいて熱ショックタンパク質の転写産物が増加したことを見出し、本発明の完成に至った。
本発明は、イソチオシアネートを有効成分とする植物耐熱性誘導剤を提供する。本発明の植物耐熱性誘導剤によれば、植物耐熱性を向上させることができ、例えば25〜55℃の比較的高温環境下においても植物が成長できるようにすることができる。
上記イソチオシアネートが、フェネチルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、及びメチルイソチオシアネートから選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの既知のイソチオシアネートは人体や動物に対して安全であり、かつ、有効成分が明確であるため、有効性及び安定性を確保できる。
また、上記植物が熱ショックタンパク質を発現する植物であることが好ましい。本発明の植物耐熱性誘導剤は、熱ショックタンパク質遺伝子の転写産物を増加させる効果があるため、熱ショックタンパク質を発現する植物においては耐熱性を確実に誘導できる。上記熱ショックタンパク質が、アクセッション番号がNM_111731.3、NM_105769.1、NM_128771.2、NM_121241.2、NM_128504.2、NM_127615.2、NM_101471.2、NM_125364.1、NM_119862.2、NM_118906.2、及びNM_124642.2であるタンパク質から選択される少なくとも1つであることが好ましい。また、上記植物がシロイヌナズナ、アルファルファ又はホウレンソウであることが好ましい。
本発明はまた、イソチオシアネートを用いた、植物耐熱性を誘導する方法を提供する。本発明の方法によれば、植物の耐熱性を向上させることができ、例えば25〜55℃の比較的高温環境下においても植物が成長できるようにすることができる。
上記イソチオシアネートの水溶液を植物に適用することが好ましい。イソチオシアネートは殆ど水溶性であるため、水溶液での使用が可能であり、環境にやさしい。
上記イソチオシアネート水溶液の濃度が1mM〜10mMであることが好ましい。この濃度範囲は、殺草作用を発現せず、かつ、高い耐熱性誘導効果を発揮できる。
上記方法においてイソチオシアネートが、フェネチルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、及びメチルイソチオシアネートから選択される少なくとも1種であることが好ましく、また、上記植物が熱ショックタンパク質を発現する植物であることが好ましい。
本発明の植物耐熱性誘導剤及び植物耐熱性の誘導方法は、植物耐熱性を向上させることができ、例えば25〜55℃の比較的高温環境下においても植物が成長できるようにすることができるとの効果が得られる。また、本発明の植物耐熱性誘導剤は、有効成分が明確であり、酵母分解物や生薬粗抽出液などの混合物を利用した従来技術に比べて、有効性や安定性を容易に制御できるとの利点がある。
本発明の植物耐熱性誘導剤のメカニズムは必ずしも明確でないものの、植物の熱ショックタンパク質遺伝子の転写を促進する効果があることが分かっている。熱ショックタンパク質は生物において広く存在し、細胞の耐熱性を向上させることが知られているものであるため、本発明の植物耐熱性誘導剤によれば、広範の植物において耐熱性促進効果を発揮できると考えられる。
実施例1のフェネチルイソチオシアネートによる植物耐熱性誘導の結果を示す図である。 実施例2のフェネチルイソチオシアネートによる植物耐熱性誘導の結果を示す図である。 実施例3のフェネチルイソチオシアネートによる熱ショックタンパク質遺伝子の発現への影響の結果を示す図である。 実施例4のフェネチルイソチオシアネートによる長期高温栽培への影響の結果を示す図である。 実施例5のアリルイソチオシアネートによる植物耐熱性誘導の結果を示す図である。 実施例6のメチルイソチオシアネートによる植物耐熱性誘導の結果を示す図である。 実施例7のフェネチルイソチオシアネートによるアルファルファに対する耐熱性誘導の結果を示す図である。 実施例8のフェネチルイソチオシアネートによるホウレンソウに対する耐熱性誘導の結果を示す図である。
本発明の植物耐熱性誘導剤は、イソチオシアネートを有効成分とするものである。本発明の植物耐熱性を誘導する方法は、イソチオシアネートを用いた方法である。
イソチオシアネートは、辛味成分(カラシ油)として知られており、抗癌効果や抗菌効果があることは知られている。天然ではアブラナ科などの植物に含まれており、合成することもできる。本発明におけるイソチオシアネートは、下式に示す「−N=C=S」との構造を持つ化合物群を意味し、Rは任意の有機基であり、例えば、フェネチルイソチオシアネート(R=フェニルエチル)や、アリルイソチオシアネート(R=アリル)、メチルイソチオシアネート(R=メチル)、インドリルメチルイソチオシアネート(R=インドリルメチル)、フルオレセインイソチオシアネート(R=フルオレセイン)などが挙げられる。

イソチオシアネートとして、1種のイソチオシアネート化合物又は2種以上のイソチオシアネート化合物の混合物を使用することができ、また、合成品のほうに、植物から抽出されたイソチオシアネートやイソチオシアネートを含む植物抽出物も使用することができる。本発明におけるイソチオシアネートは、特にフェネチルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、及びメチルイソチオシアネートから選択される少なくとも1種であることが好ましい。
また、対象植物は特に限定されないが、熱ショックタンパク質を発現する植物であることが好ましい。熱ショックタンパク質(Heat Shock Protein)は、高温ストレスによって発現が誘導されるタンパク質をいい、分子シャペロンと呼ばれる一群のタンパク質として知られている。熱ショックタンパク質は、原核生物から真核生物まで多くの生物種にわたって広くその存在が認められており、また、一部の熱ショックタンパク質は高温耐性以外の環境ストレス(例えば、低温、塩、乾燥、又は強光)耐性に関与していることが知られている。本発明における「熱ショックタンパク質」としては、植物に存在する熱ショックタンパク質の全てを含み、例えば表1に記載の熱ショックタンパク質、すなわち、アクセッション番号がNM_111731.3、NM_105769.1、NM_128771.2、NM_121241.2、NM_128504.2、NM_127615.2、NM_101471.2、NM_125364.1、NM_119862.2、NM_118906.2、及びNM_124642.2である熱ショックタンパク質から選択される少なくとも1つであることが好ましい。
熱ショックタンパク質を発現する植物としては、例えば、キャベツやアブラナ、ダイコン、わさびなどのアブラナ科植物、イネ、コムギ、オオムギ、カラスムギ、ライムギ、キビ、アワ、ヒエ、トウモロコシ、シコクビエ、モロコシなどのイネ科植物、トマト、ナス、ピーマン、トウガラシ、ジャガイモなどのナス科植物、ニンジン、セロリ、ミシマサイコなどのセリ科植物、ビート、ホウレンソウなどのアカザ科植物、シュンギク、レタス、ゴボウなどのキク科植物、ダイズ、エンドウ、カンゾウなどのマメ科植物、ネギ、タマネギ、ニンニク、チューリップなどのユリ科植物、イチゴ、バラ、リンゴ、モモ、ナシなどのバラ科植物、スイカ、メロン、キュウリなどのウリ科植物、サツマイモなどのヒルガオ科、チャ、ツバキなどのツバキ科植物、スギ、ヒノキなどのヒノキ科植物、ユーカリなどのフトモモ科植物、オリーブなどのモクセイ科植物、ウンシュウミカン、レモンなどのミカン科植物、ブドウなどのブドウ科植物、シソ、バジル、ミント、ローズマリー、セージなどのシソ科植物などが挙げられる。そのうち、シロイヌナズナ、アルファルファ又はホウレンソウであることが好ましい。
本発明の植物耐熱性誘導剤は、固形製剤又は液体製剤のいずれでもよく、保存安定性の観点から固形製剤が好ましい。固形製剤は、有効成分のイソチオシアネートのほかに、必要に応じて結合剤や界面活性剤、分散剤、湿潤剤、増量剤、さらに他の農薬活性成分を含んでもよい。液体製剤は、必要に応じて水などの溶剤、界面活性剤、さらに他の農薬活性成分を含んでもよい。
本発明の植物耐熱性誘導剤は、植物に適用する場合、液体、特に水溶液として適用することが好ましい。水溶液の濃度は、イソチオシアネートの種類や植物の品種によって異なり、一概とはいえないが、通常1mM〜10mMの範囲、好ましくは1mM〜8mM、さらに好ましくは2mM〜5mMであれば、殺草作用を発現せずに、植物耐熱性を向上させることができる。植物に適用する部位は特に限定しないが、地上部にほぼ均一に散布することが好ましい。散布にあたり、1〜300mg/mであればよく、好ましくは、10〜100mg/m、さらに好ましく30〜75mg/mである。また、植物に適用する量は、一回の散布では1〜300μg/g植物地上部重量であればよく、好ましくは、10〜100μg/g植物地上部重量、さらに好ましくは30〜75μg/g植物地上部重量である。
本発明における植物耐熱性とは、植物の通常生育温度よりも高い温度環境に晒される場合における熱ストレスに対する耐性をいう。通常生育温度よりも高い温度環境とは、植物や地域によって異なるが、例えば25℃または30℃を超える高温、例えば25〜55℃、または30〜45℃の比較的高温をいう。熱ストレスは、数時間などの短時間のものや、数日間、数ヶ月間、数年間などの長期にわたるものも含まれる。また、耐熱性の評価は、植物の生育状態によって評価する。何ら処理されていない対照の植物に比べて、植物耐熱性誘導剤を適用した植物の成長・生育状態がより良好であれば、耐熱性が獲得されたと評価する。評価項目として例えば、植物体の高さ、重さ、色などが挙げられ、これらを総合的に判断することができる。さらに、植物における熱ショックタンパク質遺伝子の転写産物の量又は熱ショックタンパク質の発現量が増加することも一つの指標である。
以下、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1 フェネチルイソチオシアネートによる植物耐熱性誘導1)
植物栽培用培養土ピートバン(株式会社サカタのタネ)が入ったプラスチックポット(直径7cm、高さ8.5cm)に、シロイヌナズナの種子を20個/ポットで播種し、23℃、明期16時間、暗期8時間の条件にて発芽、栽培した(株式会社日本医化器械製作所、人工気象器、LPH−410SP)。播種後2週間を過ぎた頃、標準的な成長の個体を3個体残して間引いた。播種後21日目に、フェネチルイソチオシアネート(PEITC)の水溶液(1mM、2mM及び5mM)及び対照としての水(0mM)をそれぞれの試験区プレートにほぼ均一に22μg、44μg、110μg/個体(それぞれ、1mM、2mM、5mMに相当)で噴霧した。次に、播種後23日目に、噴霧処理した植物体を55℃にて1時間高温処理した。さらに、播種後31日目(31DAS)及び播種後42日目(42DAS)に、植物体の成長・生育状態を観察し、フェネチルイソチオシアネートによる植物耐熱性誘導を評価した(図1)。
図1から分かるように、対照(0mM)に比べて、1mM(160ppm)及び2mM(330ppm)のPEITCで処理した群は、植物体が大きいため耐熱性が向上し、また、植物の成長(成熟)につれ、成長の度合いの差が大きいことが分かった。一方、5mMのPEITCで処理した植物体には、成長が悪いものがあった。これは恐らく、PEITC濃度が5mMを超えると、弱いながら殺草様の作用を示すためと思われる。
(実施例2 フェネチルイソチオシアネートによる植物耐熱性誘導2)
23℃を対照温度として、高温処理温度を35℃、45℃、55℃又は65℃とした以外に、実施例1と同じように実験した。播種後31日目(31DAS)及び播種後42日目(42DAS)に、それぞれの被検群の植物体の地上部を採取し、その新鮮重量を測定し、個体の平均新鮮重量(g/個体)を計算した(n=6)。その結果を図2に示した。
図2から、高温処理温度が35℃〜55℃の範囲において、フェネチルイソチオシアネートによる植物耐熱性誘導が認められたものの、65℃で処理した場合いずれの濃度においても植物が殆ど死滅してしまった。また、植物が若いうち(31DAS)には耐熱性誘導効果は明確ではなく、成熟段階(42DAS)では効果が明確になる傾向があった。
(実施例3 フェネチルイソチオシアネートによる熱ショックタンパク質遺伝子の発現への影響)
2mMのフェネチルイソチオシアネートを用いた噴霧処理までは、実施例1と同様にして行った。噴霧処理した1時間後に、被検植物及び水のみを噴霧した対照植物の地上部を採集し、RNAを抽出し、マイクロアレイによって、遺伝子の転写量を測定した。マイクロアレイのチップは、Ocimum BiosolutionsのArabidopsis OciChipを用い、2色法で検出した。得られたスポットデータは、FilgenのMicroarray Data Analysis Toolによって解析した。
その結果、対照に比べて転写量が10倍以上増加した遺伝子(活性化された遺伝子)を表1に示した。そのうち、シャドーの遺伝子は熱ショックタンパク質遺伝子として知られているものである。このことから、イソチオシアネート処理による植物の熱ショックタンパク質遺伝子の転写量の増加が、耐熱性誘導のメカニズムの一つであると推測される。

さらに、上記結果を踏まえて、2mM及び5mMのフェネチルイソチオシアネート(PEITC)を用いて、代表的な熱ショックタンパク質5つの転写産物の相対量をRT−PCR法によって測定した。RT−PCR法は、RNA PCR Kit (TakaraBio)を使い、45℃、3分で逆転写反応を行った後、94℃、2分の予備熱変性を施し、続いて、熱変性(94℃、30秒)、アニーリング(55℃、30秒)、及び伸長反応(72℃、90秒)のサイクルを26回繰り返す(TakaraBio Thermal Cycler Dice)ことによって行った。反応後、アガロースゲル電気泳動を行いバンドの濃さから相対的な転写強度を算出し、グラフ化した。また、対照としてアクチンの転写量も測定した。その結果を図3に示した。図3から、フェネチルイソチオシアネート処理において2mMと5mMとで程度の差があるものの、代表的な熱ショックタンパク質遺伝子のいずれも転写量の増加が認められた。
(実施例4 フェネチルイソチオシアネートによる長期高温栽培への影響)
1mM、2mM及び5mMのフェネチルイソチオシアネートを用いた噴霧処理までは、実施例1と同様にして行った。その後、23℃での栽培を対照とし、30℃、37℃及び44℃での高温栽培をそれぞれ10日間行った。10日目に植物の地上部を採集し、その新鮮重量を測定し、個体の平均新鮮重量(g/個体)を算出した。結果は、図4に示した。
図4から、長期高温栽培において、0mMに比べて、1mM、2mM及び5mMのフェネチルイソチオシアネートによる成長促進効果は認められなかったものの、37℃での高温処理において、フェネチルイソチオシアネートによる植物の緑色(クロロフィル)維持が確認され、耐熱性の向上は認められた。また、5mMのフェネチルイソチオシアネートは0mMに比べて、植物の成長が著しく悪く、死滅する個体もあった。これは恐らく殺草作用が現れたためと考えられる。
(実施例5 アリルイソチオシアネートによる植物耐熱性誘導)
フェネチルイソチオシアネートの代わりに、0mM(対照)、2mM及び5mMのアリルイソチオシアネートを使用し、高温処理温度を55℃とした以外に、実施例2と同じように実験した。開花期(播種後42日目)に、それぞれの被検群の植物体の地上部を採取し、その新鮮重量を測定し、個体の平均新鮮重量(g/個体)を算出した(n=6)。その結果を図5に示した。図5から、2mM及び5mMのいずれの濃度においもアリルイソチオシアネートによる植物耐熱性誘導が認められた。また、フェネチルイソチオシアネートの場合は5mMで殺草作用が現れるに対して、アリルイソチオシアネートの場合は5mMでも殺草作用が現れず、より高い濃度も許容されると考えられる。
(実施例6 メチルイソチオシアネートによる植物耐熱性誘導)
フェネチルイソチオシアネートの代わりに、0mM(対照)、2mM及び5mMのメチルイソチオシアネートを使用し、高温処理温度を55℃とした以外に、実施例2と同じように実験した。開花期(播種後42日目)に、それぞれの被検群の植物体の地上部を採取し、その新鮮重量を測定し、個体の平均新鮮重量(g/個体)を計算した(n=6)。その結果を図6に示した。図6から、2mM及び5mMのいずれの濃度においもメチルイソチオシアネートによる植物耐熱性誘導が認められており、5mMがより耐熱性誘導効果が高かったことが分かった。メチルイソチオシアネートは5mMより高い濃度においても耐熱性誘導効果があることが示唆された。
(実施例7 フェネチルイソチオシアネートによるアルファルファに対する耐熱性誘導)
シロイヌナズナの代わりに、アルファルファを用いて実施例1と同様に栽培した。播種後19日目に、植物にアルファルファの耐熱性が5 mMのPEITC処理で向上傾向にある。フェネチルイソチオシアネート(PEITC)の水溶液(2mM及び5mM)及び対照としての水(0mM)をそれぞれの試験区プレートにほぼ均一に44μg、110μg/個体(それぞれ、2mM、5mMに相当)で噴霧した。次に、播種後21日目に、噴霧処理した植物体を55℃にて1時間熱ショックを与えた。さらに、播種後28日目に、植物体の成長・生育状態を観察し、フェネチルイソチオシアネートによる植物耐熱性誘導を評価した(図7)。さらに、播種後28日目のそれぞれの被検群の植物体の地上部を採取し、その新鮮重量を測定し、個体の平均新鮮重量(g/個体)を計算した(n=3)。その結果を図7に示した。
図7から分かるように、対照(0mM)に比べて、2mM及び5mMのPEITCで処理した群は、植物体の耐熱性が向上したことが分かった。また、2mMよりも5mMのPEITCで処理した植物体のほうはより高い耐熱性を示した。
(実施例8 フェネチルイソチオシアネートによるホウレンソウに対する耐熱性誘導)
アルファルファの代わりにホウレンソウを用いて実施例7と同様に実験した。その結果を図8に示した。図8から分かるように、ホウレンソウにおいてもアルファルファと同様な傾向が示され、対照(0mM)に比べて、2mM及び5mMのPEITCで処理した群は、植物体の耐熱性が向上し、また、2mMよりも5mMのPEITCで処理した植物体のほうはより高い耐熱性を示した。

Claims (8)

  1. イソチオシアネートを有効成分とする植物耐熱性誘導剤であって、
    前記イソチオシアネートが、フェネチルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、及びメチルイソチオシアネートから選択される少なくとも1種である植物耐熱性誘導剤
  2. 前記植物が熱ショックタンパク質を発現する植物である、請求項1に記載の植物耐熱性誘導剤。
  3. 前記熱ショックタンパク質が、アクセッション番号がNM_111731.3、NM_105769.1、NM_128771.2、NM_121241.2、NM_128504.2、NM_127615.2、NM_101471.2、NM_125364.1、NM_119862.2、NM_118906.2、及びNM_124642.2であるタンパク質から選択される少なくとも1つである、請求項に記載の植物耐熱性誘導剤。
  4. 前記植物がシロイヌナズナ、アルファルファ又はホウレンソウである、請求項1〜のいずれか一項に記載の植物耐熱性誘導剤。
  5. イソチオシアネートを用いた、植物耐熱性を誘導する方法であって、
    前記イソチオシアネートが、フェネチルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、及びメチルイソチオシアネートから選択される少なくとも1種である方法
  6. 前記イソチオシアネートの水溶液を植物に適用する、請求項に記載の方法。
  7. 前記イソチオシアネート水溶液の濃度が1mM〜10mMである、請求項に記載の方法。
  8. 前記植物が熱ショックタンパク質を発現する植物である、請求項のいずれか一項に記載の方法。
JP2011282111A 2011-12-22 2011-12-22 植物耐熱性誘導剤 Active JP5825593B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011282111A JP5825593B2 (ja) 2011-12-22 2011-12-22 植物耐熱性誘導剤

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011282111A JP5825593B2 (ja) 2011-12-22 2011-12-22 植物耐熱性誘導剤

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2013129643A JP2013129643A (ja) 2013-07-04
JP5825593B2 true JP5825593B2 (ja) 2015-12-02

Family

ID=48907514

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2011282111A Active JP5825593B2 (ja) 2011-12-22 2011-12-22 植物耐熱性誘導剤

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5825593B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2023210570A1 (ja) * 2022-04-26 2023-11-02 国立大学法人東海国立大学機構 植物気孔開口調節剤

Also Published As

Publication number Publication date
JP2013129643A (ja) 2013-07-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
AU2015318730B2 (en) Method of seed treatments and resulting products
Handiseni et al. Effect of Brassicaceae seed meals with different glucosinolate profiles on Rhizoctonia root rot in wheat
BRPI0618229A2 (pt) uso de prolinas para melhorar o crescimento e/ou o rendimento
Mondal et al. Adverse effects of allelopathy from legume crops and its possible avoidance
BR112016002520B1 (pt) Composição compreendendo cetosuccinamato, e método para melhorar o desempenho de plantas
Matteo et al. Effectiveness of defatted seed meals from Brassicaceae with or without crude glycerin against black grass (Alopecurus myosuroides Huds.)
Najeeb et al. Inducing waterlogging tolerance in cotton via an anti-ethylene agent aminoethoxyvinylglycine application
CA2991140A1 (en) A method for using mustard meal or an extract thereof
WO2018147440A1 (ja) 植物浸透圧ストレス耐性誘導剤及び乾燥ストレス緩和方法
Wakjira Allelopathic effects of Parthenium hysterophorus L. on germination and growth of onion.
JP5825593B2 (ja) 植物耐熱性誘導剤
Intanon et al. Field evaluation of meadowfoam (Limnanthes alba) seed meal for weed management
Gilreath et al. Efficacy of early post-transplant herbicides in leeks (Allium porrum L.)
BR112020017631A2 (pt) Método de aumento da resistência de plantas e semente de cereal
Roseberg Herbicide tolerance of Euphorbia lagascae Spreng.,(Euphorbiaceae)
Moyo et al. Efficacy of the botanical pesticides, Derris elliptica, Capsicum frutescens and Tagetes minuta for the control of Brevicoryne brassicae in vegetables
RU2626174C1 (ru) Средство для предпосевной обработки семян овощных культур в условиях защищенного грунта
Piccinini et al. Effect of two liquid formulations based on Brassica carinata co-products in containing powdery mildew on melon
Man Singh et al. Influence of row spacing and nitrogen levels on herb and essential oil production and oil quality of Tagetes minuta L.
Murmu et al. Efficacy of different fungicides for management of early blight disease of potato
JP6998256B2 (ja) タマネギ中のケルセチン増量剤およびタマネギの栽培方法
Dongre et al. Effects of leaf extracts of weeds on growth and yield of green gram.
JP7429968B2 (ja) 害虫抵抗性誘導剤及び植物の害虫防除方法
RU2798880C2 (ru) Способ повышения стойкости злакового растения
US20230157283A1 (en) Compositions and methods for inhibiting a fungal pathogen

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20141111

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20141111

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20150610

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20150703

A975 Report on accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971005

Effective date: 20150717

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20150804

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20150831

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20150929

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20151005

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5825593

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313117

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250