JP5820399B2 - ヘッドホン装置用コントローラ - Google Patents

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Description

本発明は、ヘッドホン装置用コントローラに関し、具体的には、ヘッドホン装置のイヤホンからの音量レベルの制限に関するが、これに限定されない。
携帯型オーディオデバイスの発達と普及により、オーディオをユーザに提供するためにイヤホンが広く利用されている。イヤホンは耳の近くにあるため、高い音圧レベルを発生することができる。これは他人に迷惑をかけずに行えるので、ユーザは、聴覚障害のリスクが高くなるほど音圧レベルを高くしてしまうことが多い。例えば、インイヤ型イヤホンが普及した結果、多くのユーザがオーディオを過大なレベルで聴いていることが多い。
イヤホンを用いて携帯型オーディオプレーヤを聴くことによる聴覚障害のリスクが大きな問題となりつつある。例えば、携帯型デバイスが提供できる最大音量レベルに対する規制が、議論され、又は多くの管轄で実施されている。しかし、このように規制を固定してしまうと、柔軟性がなくなり、携帯型オーディオプレーヤが利用される具体的なシナリオにそぐわないため十分に保護ができない可能性がある。
携帯型オーディオプレーヤでは再生レベルが高くなりやすく、背景雑音レベルが高い状態で使うことがおおいので、聴覚障害のリスクが高くなる。携帯型オーディオデバイスの利用によりヘッドホンが幅広い環境で使われ、周辺の音声や雑音のレベルが高い環境で使われることがますます多くなっている。このため、所望のオーディオを聴ける十分高い音量レベルと、聴覚障害にならない十分低い音量レベルとの間の困難なトレードオフが生じる。ユーザは、ノイズが大きい環境にいると、音量レベルを高くしがちであり、長い時間そうしていると障害が起きることがある。そのため、音量レベルとそれにより生じる音圧レベルを自動的に制御して、一般的にユーザが選択するよりも良いトレードオフを提供することが望ましい。したがって、携帯型オーディオプレーヤなどのオーディオプレゼンテーションの音量をより良く制御することが望ましい。特に、発生する音声レベルを聴覚障害が起きないレベルに制約する自動音量制御を実施することが望ましい。
特許文献1は、携帯型オーディオプレーヤが、聴覚障害のリスクが低くなるように音量を自動的に合わせるシステムを開示している。このアプローチは、オーディオプレーヤからの集積サウンド摂取量を、聴覚障害を生じると思われる量を超えないように制限するものである。これは、携帯型デバイスに設定する最大許容音量を、エクスポージャ時間と、耳をサウンドエクスポージャから回復させる無音時間とに基づき画定することにより実現される。
しかし、このアプローチはすべてのシナリオで最適であるとは言えない。例えば、オーディオプレーヤの利用のみに基づき聴覚障害の危険を推定するシステムの欠点は、ユーザがエクスポーズされるその他のサウンドを反映又は考慮していないことである。例えば、オーディオプレーヤが使われていない無音時間が、本当に無音であり、ユーザが高いサウンドレベルにエクスポーズされていないかは保証の限りではない。それゆえ、オーディオプレーヤを聴く2つのセッションの間の時間に耳が回復できるか保証できず、そのため聴覚障害のリスクは残ってしまう。
そこで、音量レベルの制御を改善できると都合がよく、特に、柔軟性が高く、適応性が高く、複雑性が低く、聴覚プロテクションが改善され、及び/又は性能がよいシステムができると都合がよい。
米国特許出願公開第2007/0129828A1号
従って、本発明は、好ましくは、単独でまたは組み合わされて、上記の1つ以上の不利な点を緩和もしくは解消するものである。
本発明の一態様によるヘッドホン装置のコントローラは:オーディオ信号から前記ヘッドホン装置のイヤホンの駆動信号を発生し、前記駆動信号を前記イヤホンに供給して、前記イヤホンに第1のサウンドレベルで前記オーディオ信号を再生させるオーディオ駆動回路と;前記オーディオ信号の信号レベルを決定する第1の回路と;マイクロホンからのマイクホン信号を受け取るレシーバと;前記マイクロホン信号から周辺サウンドレベルを決定する第2の回路と;前記マイクロホン信号と前記イヤホンの周辺サウンド減衰とから、前記ユーザの減衰された周辺サウンドレベルを決定する第3の回路と;前記周辺サウンドレベルと、前記減衰された周辺サウンドレベルと、前記信号レベルとに応じて、前記オーディオ信号の、前記オーディオ駆動回路のゲインを制御するゲインコントローラとを有する。
本発明により、ユーザに提供されるサウンドレベルの制御を改善できる。本発明により、特に、音量設定を改善して、音量設定を体験している状態に自動的かつ動的に適応させられる。本発明により、適応が特に正確になり、多くの実施形態で、聴覚障害に対するプロテクションが改善される。
信号レベルは、オーディオ信号の現在のほぼ瞬間的なエネルギーレベルに依存する動的に変化するエネルギー尺度であり得る。周辺サウンド減衰は、イヤホンを使った時の周辺サウンドの減衰又はシールディング効果を反映する。周辺サウンド減衰は、仮定の又は推定の減衰であってもよく、例えば、イヤホンの設計、製造、又はテストの段階で測定又は計算することにより決定される所定の周辺サウンド減衰であってもよい。
本発明の任意的特徴によると、ゲインコントローラは、周辺サウンドレベルと減衰された周辺サウンドレベルとに応じて、第1のサウンドレベルの目標音圧レベルを決定し、オーディオ駆動回路のゲインを、減衰された周辺サウンドレベルと、目標音圧レベルに対応する第1のサウンドレベルとの合成になる第1のゲインより大きくないように制限するように構成される。
これにより、性能が改善し、及び/又は複雑さが低減し、及び/又は操作や実施が容易になる。
特に、周辺サウンドレベルと減衰された周辺サウンドレベルとの両方に基づく目標音圧レベルの利用により、イヤホンを、特定の環境に合わせるだけでなく、リスナへのインパクトを直接的に反映した音圧レベルを提供するように制御できる。特に、ユーザが体験する合成音圧レベルのより正確な制御が可能になり、これにより、例えば、聴覚障害に対するより正確かつ効果的なプロテクションが可能となる。特に、このアプローチにより、オーディオ信号からの音圧レベルが周辺サウンドとイヤホンのシールディング効果を考慮したレベルに制限され、潜在的な聴覚障害にならない。さらに、イヤホンにより発生する音圧レベルは、ユーザに聞こえる周辺サウンド(すなわち、減衰された周辺サウンドレベル)に依存するだけでなく、環境の実際のサウンドレベルも反映する。このように、このシステムは、例えば、ユーザが体験する周辺サウンドレベルが同じシナリオであっても、シールディング効果が異なり、オーディオ環境が異なることに起因して、イヤホンからの異なるサウンドレベルを提供する。
ある実施形態では、ゲインコントローラは、オーディオ駆動回路のゲインを、減衰された周辺サウンドレベルと目標音圧レベルに対応する第1のサウンドレベルとの合成となる第1のゲインに向けてバイアスをかけるように構成される。
これにより、ゲイン/音量制御が非常に有利になり、多くのシナリオで、ユーザ入力を必要とせずに、音量レベルの望ましい自動的かつ動的な設定が可能となる。
本発明の任意的特徴によると、目標音圧レベルは周辺サウンドレベルの6dB以内である。
これにより、性能が改善され、特に多くの実施形態やシナリオにおいて、聴覚障害のリスクの効果的な緩和が実現する。
このアプローチにより、ユーザが体験する合成音圧レベルが、周辺サウンドレベルにほぼ近くに維持されたレベルに制限される。よって、ユーザは、オーディオ信号を消費するか否かにかかわらず、比較的一定な(最大)サウンドレベルを体験する。例えば、携帯型オーディオプレーヤの実施形態では、ユーザは、オーディオプレーヤを使うか否かにかかわらず、同様な音圧レベルを体験する。よって、オーディオプレーヤの利用により生じる追加的サウンド摂取量は、所望のレベルに維持され、周辺サウンドと比較して低くなる。
本発明により、ヘッドホン装置を用いてサウンドを消費した時の聴覚へのインパクトを、オーディオ環境そのものにより生じる聴覚へのインパクトのほぼ近くに維持される。一般的に、サウンド環境は、聴覚障害を起こす危険性のない音圧レベル内に保たれ、したがって、本アプローチにより、オーディオ信号の消費により聴覚障害を起こすリスクはなくなる。さらに、ユーザが危険な環境にさらされると、イヤホンを用いたオーディオ信号の消費により、危険性は高まらず、完全にユーザの責任範囲内になる。
ある実施形態では、目標音圧レベルは、周辺サウンドレベル以下である。よって、ある実施形態では、本システムを用いて、総サウンド摂取量を、そのオーディオ環境でヘッドホン無しでユーザが体験するだろうサウンド摂取量未満か等しくできる。
本発明の任意的特徴によると、目標音圧レベルは周辺サウンドレベルに実質的に等しい。
これにより、性能が改善され、特に多くの実施形態やシナリオにおいて、聴覚障害のリスクの効果的な緩和が実現する。
このアプローチにより、ユーザが体験する合成音圧レベルが、周辺サウンドレベルに近くに維持されたレベルに制限される。よって、ユーザは、オーディオ信号を消費するか否かにかかわらず、実質的に一定な(最大)サウンドレベルを体験する。例えば、携帯型オーディオプレーヤの実施形態では、ユーザは、オーディオプレーヤを使うか否かにかかわらず、ほぼ同じ音圧レベルを体験する。よって、追加的サウンド摂取量は、ユーザがオーディオ信号を消費するか否かにかかわらず、ほぼ等しく保たれる。
本発明により、ヘッドホン装置を用いてサウンドを消費した時の聴覚へのインパクトを、ユーザが体験するオーディオ環境の聴覚へのインパクトのほぼ近くに維持される。一般的に、サウンド環境は、聴覚障害の危険性のない音圧レベル内に保たれ、したがって、本アプローチにより、オーディオ信号の消費により聴覚障害を起こすリスクはなくなる。さらに、ユーザが危険な環境にさらされると、イヤホンを用いたオーディオ信号の消費により、危険性は高まらず、完全にユーザの責任範囲内になる。
本発明の任意的特徴によると、ゲインコントローラは、所定の最低値を有する第1のサウンドレベルに対応する最低値より高い区間に、ゲインを制限するように構成される。
これにより、機能が改善され、多くの環境でユーザ体験が良くなる。具体的に、本アプローチにより、非常に静かな環境においても、オーディオ信号の音圧レベルが望ましくない低いレベルまで下がることはない。具体的に、上記の所定値は、連続的に長い時間用いても聴覚障害を起こさないと思われる低いレベルに設定してもよい。例えば、所定値を70dB SPLに設定してもよい。これにより、聴覚障害のリスクを無くして、快適なリスニング体験ができる。
本発明の任意的特徴によると、第1の回路は、オーディオ信号を再生する時、イヤホンの周波数応答を反映する周波数応答でオーディオ信号をフィルタするように構成される。
これにより、ゲイン制御を改善し、特に、動作をユーザの体験に正確に適応させることができる。
本発明の任意的特徴によると、第3の回路は、イヤホンの周辺サウンド減衰の周波数応答を反映する周波数応答で、マイクロホン信号をフィルタリングするように構成される。
これにより、ゲイン制御を改善し、特に、動作をユーザの体験に正確に適応させることができる。
本発明の任意的特徴によると、第1の回路は、5Hz以上の3dBカットオフ周波数を有するローパスフィルタされた信号レベルとして、信号レベルを発生するように構成される。
これにより、リスニング体験が改善され、特に、ゲインの変化に対する有害なインパクトを十分に低く抑えながら、音楽の特徴に速く合わせることができる。
本発明の任意的特徴によると、第2の回路は、5Hz以上の3dBカットオフ周波数を有するローパスフィルタされた信号レベルとして、周辺サウンドレベルを発生するように構成される。
これにより、リスニング体験が改善され、特に、ゲインの変化に対する有害なインパクトを十分に低く抑えながら、音楽の特徴に速く合わせることができる。
本発明の任意的特徴によると、ゲインを下げる時定数は20msec以下である。
これにより、リスニング体験が改善され、特に、ゲインの変化に対する有害なインパクトを十分に低く抑えながら、音楽の特徴に速く合わせることができる。
時定数はゲインがステップ変化に続いて最終(漸近)値の1−1/e・63%に達するのにかかる時間を表す。
本発明の任意的特徴によると、ゲインを上げる時定数は200msec以下である。
これにより、リスニング体験が改善され、特に、ゲインの変化に対する有害なインパクトを十分に低く抑えながら、音楽の特徴に速く合わせることができる。
時定数はゲインがステップ変化に続いて最終(漸近)値の1−1/e・63%に達するのにかかる時間を表す。
本発明の任意的特徴によると、ゲインを上げる時定数はゲインを下げる時定数より2倍以上高くない。
これにより、リスニング体験が改善され、特に、聴覚障害のリスクとゲイン変化による音質劣化(audible degradation)の低減との間のトレードオフを改善できる。
時定数はゲインがステップ変化に続いて最終(漸近)値の1−1/e・63%に達するのにかかる時間を表す。
本発明の任意的特徴によると、ゲインコントローラは、信号レベル、周辺サウンドレベル、及び減衰された周辺サウンドレベルの内の少なくとも1つに周波数に応じた重み付けを行うように構成される。
これにより、性能が改善され、特に、聴覚障害のリスクとゲイン変化による音質劣化(audible degradation)の低減との間のトレードオフを改善できる。
本発明の任意的特徴によると、コントローラは、周波数選択的ゲイン調整を行うように構成される。
これにより、性能が改善され、特に、聴覚障害のリスクとゲイン変化による音質劣化(audible degradation)の低減との間のトレードオフを改善できる。
本発明の一態様による、ヘッドホン装置のゲイン制御方法は、オーディオ信号から前記ヘッド本装置のイヤホンの駆動信号を発生するステップと;前記イヤホンに前記駆動信号を供給し、前記イヤホンに前記オーディオ信号を再生させるステップと;前記オーディオ信号の信号レベルを決定するステップと;マイクロホンからのマイクホン信号を受け取るステップと;前記マイクロホン信号から周辺サウンドレベルを決定するステップと;前記マイクロホン信号と前記イヤホンの周辺サウンド減衰とから、前記ユーザの減衰された周辺サウンドレベルを決定するステップと;前記周辺サウンドレベルと、前記減衰された周辺サウンドレベルと、前記信号レベルとに応じて、前記駆動信号のゲインを制御するステップとを有する。
本発明の上記その他の態様、特徴、及び利点を、以下に説明する実施形態を参照して明らかにして説明する。
図面を参照して、本発明の実施形態を例示により説明する。
本発明の実施形態によるヘッドホン装置の使用例を示す図である。 本発明の実施形態によるヘッドホン装置のコントローラの一例を示す図である。 本発明の実施形態によるヘッドホン装置のコントローラの一例を示す図である。
以下の説明は、携帯型オーディオプレーヤと共に用いるステレオヘッドホンに適用可能な、本発明の実施形態にフォーカスしている。しかし、言うまでもなく、本発明はこのアプリケーションに限定されず、イヤホンを用いる他の多数のオーディオレンダリングアプリケーションに適用可能である。
図1は、本発明の実施形態によるヘッドホン装置の使用シナリオの一例を示す。この例では、ユーザは一組のヘッドホン101で聴いており、ヘッドホン101は携帯型オーディオプレーヤ103に接続されている。ヘッドホン装置101は、ユーザの耳に配置されている2つのイヤホン105、107に加え、この例では、ヘッドホン101に取り付けられたマイクロホン109を有する。マイクロホン109は、周辺サウンド環境をキャプチャするように構成されている。以下の説明では、マイクロホン109は、周辺サウンドと比較して、イヤホン105、107で発生するサウンドからのサウンドの貢献は無視できるように構成されているものと仮定する。これは、イヤホン105、107による減衰と、ヘッドホン101のサウンドレベルが比較的低い場合である。しかし、実施形態によっては、マイクロホン信号はイヤホンサウンドからの貢献により補正してもよい。例えば、エコーキャンセリングアルゴリズムを適用して、イヤホン105、107からの貢献を除去してもよい。
この例では、2つのイヤホンを有するヘッドホンを示した。しかし、言うまでもなく、他の実施形態では、ヘッドホンのイヤホンは1つだけでもよいし、ヘッドホンは1つのイヤホンで構成されていてもよい。
この例では、さらに各イヤホンはcircumauralイヤホンとして図示したが、言うまでもなく、他の実施形態では、イヤホンは、supra-auralヘッドホン、earbudsやcanalphones(in-ear monitorやin-ear earphonesとしても知られている)などの他のタイプのイヤホンでもよい。
図1の例では、携帯型オーディオプレーヤ103は、マイクロホン109によりキャプチャされた周辺音により、イヤホン105、107により発生された音圧レベルを自動的に制御する機能を含む。携帯型オーディオプレーヤ103は、聴覚障害のリスクを低減するように、音量を、環境サウンド状態に自動的に合わせることができる。例えば、携帯型オーディオプレーヤ103は、ユーザが携帯型オーディオプレーヤ103を聴くことによるサウンドエクスポージャが限定される、又は追加されないように、音量を制御できる。
携帯型オーディオプレーヤ103は、所望のオーディオを再生するようにヘッドホン101の駆動信号を発生するコントローラを有する。コントローラの例を図2に示した。ステレオヘッドホンの例では、各イヤホンは独立に検討し、そのため、以下の説明は1つのイヤホンだけの説明にフォーカスする。言うまでもなく、説明のアプローチは、例えば、同じマイクロホン信号を用いて、ステレオヘッドホンの各イヤホンに並行して適用でき、これによりステレオイメージの歪みを防ぐ、又は低減できる。
この例では、再生するオーディオは好適なオーディオソース201により供給され、オーディオソース201は、この例では携帯型オーディオプレーヤ103の内部メモリである。この例では、オーディオソース201は音楽信号を供給する。オーディオ信号が駆動回路203に供給され、駆動回路203がオーディオ信号からイヤホン105の駆動信号を発生する。駆動信号は、所望のサウンドレベルでオーディオ信号を再生するように、イヤホン105に送られる。
この例では、コントローラは主にデジタルドメインで実施される。よって、オーディオ信号はオーディオソース201にデジタル信号として格納されてもよいし、主にデジタル信号として処理されてもよい。言うまでもなく、駆動回路203は、この場合、一般的には、D/Aコンバータとそれに続くアナログオーディオ増幅器を有する。
駆動回路203は、オーディオ信号の駆動回路の有効ゲインを制御するように構成されたゲインコントローラ205に結合している。このように、ゲインコントローラ205は、イヤホン105により発生されるサウンド信号の音量を制御する。言うまでもなく、駆動回路203のゲインは、(例えば、アナログオーディオ増幅器の増幅率を変更することにより)アナログドメインで調節しても、(例えば、ゲイン値とオーディオサンプルとの乗算により)デジタルドメインで調節しても、両方で調節してもよい。
ゲインコントローラ205は、オーディオ環境にある周辺サウンドレベルと、イヤホンにより提供されるシールディングによりユーザが体験する周辺サウンドレベルを反映した減衰周辺サウンドレベルと、オーディオ信号の信号レベル尺度との推定に基づき、ゲイン/音量を制御するように構成されている。
周辺サウンドレベルは、マイクロホン109によりキャプチャされるサウンドに基づき推定される。すなわち、仮定として、マイクロホン109によりキャプチャされるサウンドは、ユーザのオーディオ環境中の周辺サウンドに対応する。これは、ヘッドホン101の近くにマイクロホン109を配置することにより容易に実現でき、マイクロホン109はヘッドホン101に取り付け又は集積してもよい。
マイクロホン109からの信号は、当業者には周知のように、低雑音増幅器、フィルタ、及びA/Dコンバータなどを有する受信回路207により受信される。受信回路207は第1サウンドレベルプロセッサ209に結合され、第1サウンドレベルプロセッサ209はマイクロホン209によりキャプチャされた周辺サウンドレベルの推定を生成する。一例として、第1サウンドレベルプロセッサ209は、例えば、
Figure 0005820399
として、単にエネルギー又はパワーの推定として決定できる。ここで、xは受信回路207により供給されるマイクロホン信号のサンプル値であり、nはサンプルインデックスであり、和はダイナミックゲインコントロールの所望のダイナミック応答を提供するように、好適数のサンプルにわたってとればよい。
言うまでもなく、周辺サウンドレベルは任意の好適な尺度で表し得る。特に、マイクロホン109がキャプチャしたサウンドのサウンドレベルと単調な関係を有する任意の値を用いることができる。
受信回路207は第2サウンドレベルプロセッサ211に結合している。第2サウンドレベルプロセッサ211は、マイクロホン信号と、イヤホン105の周辺サウンド減衰率とから、減衰されたユーザの周辺サウンドレベルを決定する。よって、得られた値は、イヤホン105により提供される減衰とシールディングとを考慮に入れた、ユーザの周辺サウンドへのサウンドエクスポージャを示している。
この例では、第2サウンドレベルプロセッサ211は、イヤホン105により周辺サウンドに与えられる減衰に対応して、マイクロホン信号を処理する減衰プロセッサ213を有する。簡単な例として、イヤホン105は単に一定の減衰をすると推定でき、減衰プロセッサ213はマイクロホン信号を同じだけ減衰する。減衰された信号はエネルギー推定器215に入力される。エネルギー推定器215は減衰された周辺サウンドレベルの推定を行う。例えば、第1サウンドレベルプロセッサ209と同様に、エネルギー推定器215は、
Figure 0005820399
として、減衰された周辺サウンドレベルを決定できる。ここで、xは減衰プロセッサ213により供給されるマイクロホン信号のサンプル値であり、nはサンプルインデックスであり、和はダイナミックゲインコントロールの所望のダイナミック応答を提供するように、好適数のサンプルにわたってとる。
言うまでもなく、減衰された周辺サウンドレベルは任意の好適な尺度で表し得る。特に、ユーザが体験した周辺サウンドのサウンドレベルと単調な関係を有する任意の値を用いることができる。
コントローラは、さらに、オーディオソース201に結合され、それからオーディオ信号を受け取るオーディオ信号レベルプロセッサ217を有する。オーディオ信号レベルプロセッサ217は、オーディオ信号の信号レベル推定値を生成するように構成され、具体的には、第1サウンドレベルプロセッサ209とエネルギー推定器215と同様のアプローチを用いて、すなわち
Figure 0005820399
により、エネルギー尺度を生成できる。
ここで、xはオーディオ信号のサンプル値であり、nはサンプルインデックスであり、和はダイナミックゲインコントロールの所望のダイナミック応答を提供するように、好適数のサンプルにわたってとる。
言うまでもなく、信号レベルは任意の好適な尺度で表し得る。特に、オーディオ信号の信号レベルと単調な関係を有する任意の値を用いることができる。
第1サウンドレベルプロセッサ209、第2サウンドレベルプロセッサ211、及びオーディオ信号レベルプロセッサ217は、ゲインコントローラ205に結合されている。ゲインコントローラ205は、周辺サウンドレベル、減衰された周辺サウンドレベル、及びオーディオ信号レベルの推定値/尺度を受け取る。
ゲインコントローラ205は、次に、これらの値に応じてゲイン/音量を決定する。これらのパラメータを用いることにより、多くの環境で性能を改善できる。つまり、このアプローチにより、状態に合わせてゲインと音量を最適化する際の柔軟性が高まり、自由度が増加する。
オーディオ信号レベルと減衰された周辺サウンドレベルと周辺サウンドレベルとの尺度があるので、システムは柔軟になり、多くのタイプのヘッドホンやオーディオ信号で、また多くのオーディオ環境で性能がよくなる。例えば、具体的なヘッドホンに容易に合わせることができる共通のアルゴリズムをデザインしてもよい。また、このアプローチにより、システムは、減衰された周辺サウンドレベルとの関係と、周辺サウンドレベルとの関係とが異なる音圧を維持することができる。例えば、オーディオ再生と減衰された周辺サウンドとの組み合わせにより生じる音圧レベルは、個々のレベルの単純な和には一致せず、レベルの絶対値に依存することもある。また、2つの音源では、ユーザの聴力に対するインパクトが大幅に異なることがある。例えば、オーディオ再生が主に高周波信号であり、周辺サウンドがほぼ平坦又は主に低周波である場合、再生されるオーディオの聴覚障害へのインパクトは、減衰された周辺サウンドよりも再生されたオーディオの方が大幅に大きい。
他の例として、イヤホンによる減衰は、非線形であり、又は周波数選択的であり、それゆえ周辺サウンドレベルに基づくゲインと音量レベルの単純な設定は、多くのシナリオでは、最適でない音量設定となってしまう。
具体的な例として、図2に示したアプローチを用いて、ユーザが体験する総音圧レベルが、現在ユーザがおかれているオーディオ環境のサウンドレベルの所望のマージン内になるように、自動的にかつ動的に調節する。
図2の例では、ゲインコントローラ205は、まず、ユーザが体験する音圧の目標値を生成するように構成されている。この目標値は、ユーザがヘッドホンを用いてオーディオプレーヤを聴いているというシナリオで、及びユーザが音楽を聴いていない(そしてヘッドホンも装着していない)というシナリオで、ユーザが体験する音圧が同じになる周辺サウンドレベルと等しく設定してもよい。
ゲインコントローラ205は、まず、ユーザが体験すべき音圧レベルの目標値を決定できる。この音圧レベルは、減衰された周辺サウンドレベルと再生オーディオからの信号サウンドレベルとの組み合わせにより生じるので、ゲインコントローラ205は、この減衰された周辺サウンドレベルに対してユーザが体験すべき音圧レベルの目標値を補償することにより、オーディオ再生の目標音圧レベルを決定できる。求めた目標オーディオ圧レベルは、現在のオーディオ信号レベルを所望のレベルまで増幅するように、駆動回路203のゲインを設定することにより、実現できる。
このように、コントローラは、ゲインを連続的かつ動的に調節して、対応する音圧レベルが減衰された周辺サウンドから得られる音圧と組み合わせて、そのオーディオ環境の周辺サウンドレベルに等しくなるレベルまで、オーディオ信号が増幅される。よって、このシステムは、オーディオ信号とオーディオ環境の両方の変化を自動的かつ動的にトラッキングして、例えばオーディオ環境が変わったときにはサウンドレベルを変える。
このアプローチにより、ユーザが携帯型オーディオプレーヤを聴いても過剰なサウンド摂取量を受けることはなくなる。よって、オーディオプレーヤで聴くシナリオでも、ヘッドホンを装着しない通常のシナリオの場合と同じサウンド摂取量(sound dosage)とエクスポージャとなる。オーディオ環境が一般的には安全に制御され、聴覚障害のリスクが非常に低く抑えられるので、このアプローチも、柔軟性が高くユーザの自由度が高いのと同時に、聴覚障害に対するプロテクションを提供する。実際、非常にうるさく、聴覚障害を起こすかも知れないオーディオ環境でオーディオプレーヤを用いるとユーザが決めても、オーディオプレーヤの利用によりさらに聴覚障害が起こることはなく、聴覚障害は、ユーザの行動によるものであり、オーディオプレーヤの製造者やプロバイダの責任ではない。
例えば、音楽を聴くことによる追加的サウンド摂取量(additional sound dosage)の防止は、イヤホンの(既知の)サウンド減衰を用いて、再生音量を適応的に制御し、音楽と、イヤホンのシールディング効果により減衰した環境サウンドとによる総サウンドエクスポージャが環境サウンドレベルを超えないようにすることにより、実現できる。
実施形態によっては、ゲインは直接的には制御されず、むしろ決定されるゲインが最大ゲインである。例えば、ポータブルオーディオプレーヤにより、ユーザは、周辺サウンドレベルに対応する音量レベルより低いレベルを選択できる。このように、目標サウンドレベルは、実施形態によっては最大レベルである。
イヤホンの減衰効果は一般的には既知である。例えば、製造者は、設計、テスト、製造の段階でその値を決定できる。しかし、他のオプションとして、減衰効果を測定して、得られたデータをコントローラに供給してもよい。
システムにより全体的なサウンド摂取量が増えないという利点に加えて、このシステムは、さらに、再生オーディオの音量を自動的に調整して、ユーザが音量を一定の高いレベルに設定しなくてもその環境サウンド状態でもこのオーディオが聞こえるようにする。
一例として、減衰された周辺サウンドレベルは、<A>により、周辺サウンドレベルは<B>により、オーディオ信号レベルは<C>によりそれぞれ表される。駆動回路203は、オーディオ信号Cにゲイン「・」を適用してから、その結果の信号「・C」をイヤホン105に提供する。信号Cに対応するイヤホン105からの音圧レベルはDと表され、イヤホンにより生じる音圧レベルは「・D」と決定できる。
オーディオプレーヤを聴いて過剰なサウンド摂取量が生じない条件は
Figure 0005820399
と書ける。これは
Figure 0005820399
と書き直せる。
このように、このシステムはオーディオプレーヤの最大ゲイン設定を提供できる。実施形態によっては、ゲインは、ヘッドホンを装着していないのと同じ音圧レベルになる値に直接的に設定できる。すなわち、
Figure 0005820399
である。
この例では、例えば、Dは、比例係数「・」でCに比例すると考えても良い。すなわち、
Figure 0005820399
となる。
この例では、ゲインは、減衰された周辺サウンドと、イヤホン105の外側の周辺サウンドの音圧レベルに実質的に等しいオーディオ再生との組み合わせから生じる音圧レベルに対応する最大値に制約される(又は、その値に自動的に設定される)。
しかし、言うまでもなく、他の実施形態では、ゲインに対する他の制約を用いてもよく、特に周辺サウンドレベルからのバリエーションを行っても良い。
多くのシナリオでは、例えば、目標音圧レベルを周辺サウンドレベルの6dB内とすると都合がよい。例えば、少しの追加的サウンド摂取量は許容でき、目標音圧レベルを周辺サウンドレベルより例えば3dB上に設定してもよい。他の例として、(例えば、周辺音圧レベルが聴覚障害を起こす可能性がある環境では、)サウンド摂取量を周辺サウンド摂取量に対して減らすことが望ましく、目標音圧レベルを周辺サウンドレベルより例えば25%低く設定する。
ゲインが周辺サウンドレベルに対応するように自動的に設定されるような実施形態では、ゲインコントローラ205は、所定の最低値を有する再生オーディオサウンドレベルに対応する最低値より上の範囲にゲインを制約するように構成できる。このように、ゲインコントローラ205は、最大ゲインを実施するだけでなく、最低ゲインを実施してもよい。例えば、低周辺サウンドレベルによりゲインが非常に低い値に下がる状況を回避するため、ゲインコントローラ205は、ゲインには好適なレベルに対応する最低値(例えば、70dB SPL)があるように構成してもよい。これなら、エクスポージャ時間が長く連続していても害がないと考えられる。これは、ゲインコントローラ205が最大ゲインだけではなく実際のゲインも自動的に設定する実施形態では特に有利である。
説明したアプローチにより、ユーザへのサウンドエクスポージャが、合理的なレベル以内に自動的に保たれ、具体的には周辺サウンドに対応するように自動的に設定される。このように、聴覚障害のリスクは大幅に減らせる。さらに、これは複雑でないアプローチで実現でき、時間的にサウンド摂取量をモニタし集計する必要を回避できる。
このシステムはゲインコントローラ205のゲインを動的かつ自動的に適応させるように構成されている。多くの実施形態では、システムのダイナミクスは、オーディオ信号及び/又は周辺サウンドの特徴の比較的速い変化をトラッキングして補償できるように、設計できる。
多くの実施形態では、信号レベルは5Hz以上の3dBカットオフ周波数を有するローパスフィルタされた信号レベルとして決定される。例えば、オーディオ信号のエネルギー尺度に対する平均化を、数が十分に多いサンプルに拡大して、5Hz以上の3dBカットオフ周波数を有するローパスフィルタ効果を得てもよい。もちろん、他の実施形態では、単純な方形ウィンドウ平均化以外の平均化/ローパスフィルタリングを用いても良い。かかる平均化とローパスフィルタリングも、好都合にも5Hz以上の3dBカットオフ周波数を有する。実施形態によっては、ローパスフィルタリング効果は、好都合にも10Hz以上の、さらには20Hz以上の3dBカットオフ周波数を有してもよい。
これにより、ゲインコントロールがオーディオ信号レベルの比較的速い変化をトラッキングできる。しかし、同時に、かかるローパスフィルタリングのデザインにより、オーディオとインターラクトして望ましくないオーディオアーティファクトや信号劣化を生じるゲイン変化に対する十分なプロテクションとなる。多くの実施形態では、3dBカットオフ周波数は好都合にも100Hz又は200Hzより低いので、オーディオがゲイン変化により変調されたように聞こえるリスクが低くなる。
周辺サウンドレベルと減衰された周辺サウンドレベルの決定にも同じ考え方を適用できる。このように、これらの値も、5Hz以上の、より好都合には10Hzさらには20Hz以上の3dBカットオフ周波数を有するローパスフィルタリング効果で決定できる。同様に、多くの実施形態では、カットオフ周波数は好都合にも500Hzより低い。
言うまでもなく、平均化/ローパスフィルタリング特性は、推定されるパラメータに応じて異なる。例えば、周辺サウンドレベルに適用される平均化は減衰された周辺サウンドレベルの平均化とは異なってもよく、両者はオーディオ信号に適用される平均化と異なってもよい。
このように、多くの実施形態では、図2のシステムは、状態を比較的速くトラッキングできるように設計すると好都合である。別の実施形態では、おそらく数msないし数100msのオーダーの変化をトラッキングする。
さらに、決定されるレベルの変化に対するゲインコントローラ205の応答は、比較的高速に設計してもよい。さらに、ゲインコントロールの設計は非対称であってもよい。
実際、多くの実施形態では、システムが非常に速く反応してゲインを低くするが、ゲインを高くするときは十分遅いリカバリ時間をとると有利であることが分かっている。実施形態によっては、ゲイン修正はオーディオレベルの変化の特性に依存してもよい。例えば、システムは、オーディオレベルの短いピークの後には速く回復し、長い期間サウンドレベルが高くなっていた後には遅く回復するようにしてもよい。このアプローチにより、鋭いピークの場合にはほぼ瞬時にレベルが下がり、大きい信号の始めにおける非常に高いサウンドエクスポージャを回避又は低減できる。始めに瞬時の低減を行っても一般的にはそれほど気づかれず、信号レベルの低減後に徐々に大きくして言っても一般的にはあまり気づかれない。
確かに、多くのシナリオにおいて、ゲインを大きくする時定数がゲインを小さくする時定数の2倍より小さいと都合がよいことが分かっている。実施形態によっては、ゲインを大きくする時定数がゲインを小さくする時定数の5倍又は10倍より小さいと性能が改善されることも分かっている。
多くのシナリオでは、ゲインを小さくする時定数が20msec未満であると、又は10msecや5msec未満であると、特に有利な性能が得られることが分かっている。同様に、ゲインを大きくする時定数が200msec未満であると、又は100msec未満であると、特に有利な性能が得られることが分かっている。
時定数はゲインがステップ変化に続いて最終(漸近)値の1−1/e・63%に達するのにかかる時間を表すと考えられる。この例では、ステップ変化は、例えば、オーディオ信号及び/又は周辺サウンドの信号レベルにおけるステップ変化である。
これらの設計パラメータにより、性能が改善し、特に聴覚プロテクション、ゲイン設定の精度、及び望ましくないオーディオアーティファクトの緩和の間の有利にトレードオフをできる。
実施形態によっては、減衰された周辺サウンドレベルは、最初にマイクロホン信号を処理して、シールディング効果をより正確に反映させることにより、より正確に決定できる。具体的には、一定の減衰を仮定するだけよりも、イヤホンにより生じるシールド効果の周波数応答を考慮できる。
具体的には、減衰プロセッサ213は、イヤホンの周辺サウンド減衰の周波数応答を反映した周波数応答で、マイクロホン信号をフィルタリングするように構成できる。例えば、使用時のイヤホンの減衰の周波数応答は、生産者により与えられる(又は、そのための測定により決定できる)。この周波数応答は、減衰プロセッサ213によりマイクロホン信号に適用されるFIRフィルタ又はIIRフィルタにより近似できる。このように、フィルタは具体的にはイヤホンの減衰の周波数応答の近似である周波数応答を有する。
言うまでもなく、ある実施形態では、周波数応答は粗い近似であり、イヤホン減衰の周波数応答の一部のみを表すこともある。さらに、言うまでもなく、ある実施形態では、マイクロホン信号に適用されるフィルタの周波数応答は、上記の周波数応答には直接的には対応せず、これに係わる貢献を含むだけであってもよい。例えば、減衰プロセッサ213は、減衰と所望の平均化/ローパスフィルタリングとの合成周波数応答に対応する周波数応答を有するフィルタを含む。
減衰の周波数応答を考慮することにより、ヘッドホンのユーザに対する周辺サウンドの実際のインパクトをずっと正確に考慮できる。
ある実施形態では、図2のシステムでは、サウンドを再生する時のイヤホン105の特徴をさらに考慮する。具体的に、オーディオ信号レベルを決定する時、これがイヤホン105により生じる音圧レベルをより正確に反映するように、イヤホン105の周波数応答を考慮する。
かかる実施形態の一例を図3に示した。図3では、コントローラは、オーディオ再生時のイヤホンの周波数応答を反映する周波数応答でオーディオ信号をフィルタするように構成されたフィルタ301をさらに有する。フィルタされたオーディオ信号は、オーディオ信号レベルプロセッサ217に入力され、オーディオ信号レベルの決定に用いられる。このように、この実施形態では、コントローラは、オーディオ信号をフィルタしてフィルタされたオーディオ信号を発生するように構成されたフィルタ301を有する。オーディオ信号レベルプロセッサ217は、フィルタされたオーディオ信号のエネルギー尺度として、オーディオ信号レベルを決定するように構成されている。ここで、フィルタ301はイヤホンの周波数応答を反映する周波数応答を有する。
これにより、性能が改善され、ユーザが体験する音圧レベルをより正確に推定するようにゲインを設定するにあたり、精度が改善される。
ある実施形態では、コントローラは決定されたパラメータの周波数に応じた重み付け(frequency weighting)を行う。具体的に、コントローラは、オーディオ信号レベル、周辺サウンドレベル、及び減衰された周辺サウンドレベルの周波数に応じた重み付けを行う。
言うまでもなく、かかる周波数に応じた重み付けは、例えば、パラメータの決定の一部として行ってもよいし、(例えば、その後のフィルタリングにより)パラメータの処理後の修正として行っても良い。
ある例では、周波数に応じた重み付けをしたパラメータは、周波数ドメインで決定してもよい。例えば、パラメータが基づく信号(オーディオ信号、マイクロホン信号、又はフィルタされたマイクロホン信号)は、例えば好適な高速フーリエ変換により、最初に周波数ドメインに変換される。得られる周波数値を重み付けして、全体的なエネルギーレベルを決定する。例えば、パラメータ値は
Figure 0005820399
により決定できる。ここで、x(k)は適切な信号の周波数ドメインサンプルであり、kは周波数インデックス(例えば、FFTビン番号)であり、W(k)はビンkの重みである。
かかる周波数に応じた重み付けは、多くのシナリオで非常に有利である。これにより、人間に対するサウンドの実際のインパクトをより正確に決定及び表現できるからである。例えば、高周波信号成分は、低周波信号成分よりも、聴覚障害を起こす比較的大きな潜在力を有するということを反映できる。
ある実施形態では、コントローラは周波数選択的ゲイン調整を行うように構成されている。例えば、ある実施形態では、ゲインコントローラ205は、複数の周波数帯域に独立に作用するように設計できる。
例えば、ある実施形態では、オーディオ信号レベル、減衰された周辺サウンドレベル、及び周辺サウンドレベルのうちの少なくとも1つを、周波数に依存する値として決定でき、それに応じて、ゲインを周波数に依存するゲインとして決定してもよい。
ある実施形態では、オーディオ信号レベル、減衰された周辺サウンドレベル、及び周辺サウンドレベルのうちの少なくとも1つを、複数の周波数帯域に対して決定し、その複数の周波数帯域の内の各周波数帯域のゲインを、その周波数帯域のパラメータに基づいて決定してもよい。各周波数帯域のゲインを駆動回路203によりオーディオ信号に別々に適用できる。例えば、オーディオ信号はFFTにより周波数ドメインに変換され、個々の周波数に依存するゲインを適用し、その結果として得られる信号を変換して時間ドメインに戻す。
かかるアプローチにより、より正確なゲイン制御と、特に聴覚障害に対するより柔軟なプロテクションが可能となる。
言うまでもなく、上記の説明では、明りょうにするため、異なる機能回路、ユニット、及びプロセッサを参照して本発明の実施形態を説明した。しかし、言うまでもなく、本発明から逸脱することなく、異なる機能回路、ユニット、及びプロセッサの間で機能を適宜分配して、用いることができる。例えば、別のプロセッサやコントローラにより実行される機能は、同じプロセッサやコントローラで実行してもよい。このように、具体的な機能ユニットや回路の参照は、説明した機能を提供する好適な手段の参照であり、論理的あるいは物理的に厳密な構造や組織を表しているわけではない。
本発明は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアまたはこれらの組み合わせを含むいかなる好適な形式で実施することもできる。本発明は、任意的に、1つ以上のデータプロセッサ及び/またはデジタル信号プロセッサ上で実行されるコンピュータソフトウェアとして、少なくとも部分的に実施することができる。本発明の実施形態の構成要素は、いかなる好適な方法で物理的、機能的、論理的に実施してもよい。機能は単一のユニット、複数のユニット、または他の機能ユニットの一部として実施することもできる。このように、本発明は、単一ユニットで実施することもできるし、異なる複数のユニット、回路、及びプロセッサに物理的かつ機能的に分散して実施することもできる。
実施形態に関して本発明を説明したが、ここに記載した具体的な形態に限定することを意図したものではない。むしろ、本発明の範囲は添付した請求の範囲のみにより限定される。また、具体的な実施形態に関して構成を説明したように見えるかも知れないが、当業者には言うまでもなく、説明した実施形態の様々な構成を、本発明により、組み合わせることができる。請求項では、「有する」という用語は他の要素やステップの存在を排除するものではない。
さらに、個別的に列挙されていても、複数の手段、要素、回路、方法ステップは、例えば単一の回路、ユニット、またはプロセッサにより実施してもよい。また、個々の機能(feature)は異なる請求項に含まれていても、これらを有利に組み合わせることが可能であり、異なる請求項に含まれていても、機能を組み合わせられないとか、組み合わせても有利ではないということを示唆するものでもない。また、ある構成をあるカテゴリーのクレームに含めたとしても、そのカテゴリーに限定することを意味するのではなく、むしろその構成が必要に応じて他のクレームカテゴリーにも等しく適用できることを示すものである。さらに、クレーム中の構成の順序は、その構成が機能しなければならない特定の順序を示すものではなく、特に、方法クレームにおける個々のステップの順序はそのステップがこの順序で実行されなければならないことを示すものではない。むしろ、ステップは任意の好適な順序で実行してもよい。また、単数扱いをしても複数の場合を排除するものではない。よって、「1つの」、「第1の」、「第2の」等は複数の場合を排除するものではない。請求項中の参照符号は、明りょうにするために設けており、請求項の範囲を限定するものと解してはならない。

Claims (15)

  1. ヘッドホン装置のコントローラであって:
    オーディオ信号から前記ヘッドホン装置のイヤホンの駆動信号を発生し、前記駆動信号を前記イヤホンに供給して、前記イヤホンに第1のサウンドレベルで前記オーディオ信号を再生させるオーディオ駆動回路と;
    前記オーディオ信号の信号レベルを決定する第1の回路と;
    マイクロホンからのマイクロホン信号を受け取るレシーバと;
    前記マイクロホン信号から周辺サウンドレベルを決定する第2の回路と;
    前記マイクロホン信号と前記イヤホンの周辺サウンド減衰とから、ユーザの減衰された周辺サウンドレベルを決定する第3の回路と;
    前記周辺サウンドレベルと、前記減衰された周辺サウンドレベルと、前記信号レベルとに応じて、前記オーディオ信号の、前記オーディオ駆動回路のゲインを制御するゲインコントローラとを有する、コントローラ。
  2. 前記ゲインコントローラは、前記周辺サウンドレベルと前記減衰された周辺サウンドレベルとに応じて、前記第1のサウンドレベルの目標音圧レベルを決定し、前記オーディオ駆動回路のゲインを、サウンドレベルが、前記減衰された周辺サウンドレベルと、前記目標音圧レベルに対応する第1のサウンドレベルとの合成になる第1のゲインより大きくないように制限するように構成された、
    請求項1に記載のコントローラ。
  3. 前記目標音圧レベルは前記周辺サウンドレベルの6dB以内である、
    請求項2に記載のコントローラ。
  4. 前記目標音圧レベルは前記周辺サウンドレベルに実質的に等しい、
    請求項2に記載のコントローラ。
  5. 前記ゲインコントローラは、所定の最低値を有する前記第1のサウンドレベルに対応する最低値より高い区間に、前記ゲインを制限するように構成された、
    請求項2に記載のコントローラ。
  6. 前記第1の回路は、前記オーディオ信号を再生する時、前記イヤホンの周波数応答を反映する周波数応答で前記オーディオ信号をフィルタするように構成された、
    請求項1に記載のコントローラ。
  7. 前記第3の回路は、前記イヤホンの周辺サウンド減衰の周波数応答を反映する周波数応答で、前記マイクロホン信号をフィルタリングするように構成された、
    請求項1に記載のコントローラ。
  8. 前記第1の回路は、5Hz以上の3dBカットオフ周波数を有するローパスフィルタされた信号レベルとして、前記信号レベルを発生するように構成された、
    請求項1に記載のコントローラ。
  9. 前記第2の回路は、5Hz以上の3dBカットオフ周波数を有するローパスフィルタされた信号レベルとして、前記周辺サウンドレベルを発生するように構成された、
    請求項1に記載のコントローラ。
  10. 前記ゲインを下げる時定数は20msec以下である、
    請求項1に記載のコントローラ。
  11. 前記ゲインを上げる時定数は200msec以下である、
    請求項1に記載のコントローラ。
  12. 前記ゲインを上げる時定数は前記ゲインを下げる時定数より2倍以上高くない、
    請求項1に記載のコントローラ。
  13. 前記ゲインコントローラは、前記信号レベル、前記周辺サウンドレベル、及び前記減衰された周辺サウンドレベルの内の少なくとも1つに周波数に応じた重み付けを行うように構成された、
    請求項1に記載のコントローラ。
  14. 周波数選択的ゲイン調整を行うように構成された、
    請求項1に記載のコントローラ。
  15. ヘッドホン装置のゲイン制御方法であって、
    オーディオ信号から前記ヘッドホン装置のイヤホンの駆動信号を発生するステップと;
    前記イヤホンに前記駆動信号を供給し、前記イヤホンに前記オーディオ信号を再生させるステップと;
    前記オーディオ信号の信号レベルを決定するステップと;
    マイクロホンからのマイクロホン信号を受け取るステップと;
    前記マイクロホン信号から周辺サウンドレベルを決定するステップと;
    前記マイクロホン信号と前記イヤホンの周辺サウンド減衰とから、ユーザの減衰された周辺サウンドレベルを決定するステップと;
    前記周辺サウンドレベルと、前記減衰された周辺サウンドレベルと、前記信号レベルとに応じて、前記駆動信号のゲインを制御するステップとを有する、
    ゲイン制御方法。
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