以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳述する。図1は本発明を適用した冷凍装置1の斜視図、図2は冷凍装置1の正面図、図3は冷凍装置1の平面図、図4は冷凍装置1の貯蔵室4内を透視した状態の側面図、図5は天面パネル5を開放した状態の冷凍装置1の斜視図を示している。本実施例の冷凍装置1は、例えば長期低温保存を行う生体組織や検体などの超低温保存に好適なものであり、上面に開口する断熱箱体2と、当該断熱箱体2の側方に位置して内部に圧縮機10等が設置される機械室3とにより本体が構成されている。
この断熱箱体2は、いずれも上面を開放した鋼板製の外箱6と熱伝導性の良いアルミニウム等の金属製の内箱7と、これら両箱6、7の上端間を接続する合成樹脂製のブレーカ8と、これら外箱6、内箱7及びブレーカ8にて囲繞された空間内を現場発泡方式にて充填されたポリウレタン樹脂製の断熱材9とから構成されており、内箱7内を上面が開口した貯蔵室4としている。
本実施例では、目標とする貯蔵室4内温度(以下、庫内温度と称する。)を例えば−150℃以下とするため、貯蔵室4内と外気とを区画する断熱箱体2は、庫内温度を0℃付近に設定する低温に比して大きな断熱能力が必要とされる。そのため、上述したようなポリウレタン樹脂製の断熱材9のみにより当該断熱能力を確保するためには、極めて厚く形成しなければならず、限られた本体寸法では、貯蔵室4内の収納量を十分に確保することができないという問題がある。
そのため、本実施例における断熱箱体2は、外箱6の前壁6A、後壁6B及び機械室3が設けられる側とは反対側に位置する側壁6Cの各内壁面にグラスウール製の真空断熱パネル12が配置され、一端両面粘着テープにて仮に固定した後、これら両箱6、7との間に断熱材9を現場発泡方式にて充填する。
この真空断熱パネル12は、通気性を有しないアルミニウムや合成樹脂等から成る多層フィルムにより構成される容器に断熱性を有するグラスウールを収納する。その後、所定の真空排気手段により容器内の空気を排出して、当該容器の開口部を熱溶着により接合することにより構成されるものである。そのため、この真空断熱パネル12は当該断熱性能により、従来よりも断熱材9の厚さ寸法を薄くしながら、同一の断熱効果を得ることができる。
他方、内箱7の断熱材9側の周面には、詳細は後述する冷却装置Rの冷媒回路を構成する蒸発器(蒸発パイプ)62が交熱的に取り付けられる。
そして、上述の如く構成される断熱箱体2のブレーカ8の上面は、図2や図4に示されるように階段状に成形されており、そこに図示しないパッキンを介して断熱扉13が一端、本実施例では、後端を中心に枢支部材14、14により回動自在に設けられる。また、当該貯蔵室4の上面開口は、断熱材料にて構成される内蓋15が開閉自在に設けられている。また、断熱扉13の下面には、下方に突出して構成される押さえ部が形成されており、これにより、断熱扉13の押さえ部が内蓋15を押圧し、これにより、貯蔵室4の上面開口は開閉自在に閉塞される。また、断熱扉13の他端、本実施例では前端には、把手部16が設けられており、当該把手部16を操作することで、断熱扉13が開閉操作される。
他方、断熱箱体2の側方には、前面パネル3A、図示しない後面パネル及び断熱箱体2が設けられる側とは反対側の側面を構成する側面パネル3Bにより機械室3が設けられている。本実施例における機械室3は、内部を上下に区画する仕切板17が設けられている。仕切板17の下方には、上述した如き冷却装置Rを構成する圧縮機10、20等が収容設置されており、当該仕切板17下方に位置する前面パネル3A及び側面パネル3Bには、通気用スリット3Cが形成されている。
仕切板17の上方には、上面が開口する上部機械室18とされている。当該上部機械室18の上面開口には、天面パネル5が一端、本実施例では、後端を中心に回動自在に設けられており、これにより、上部機械室18内は開閉自在に閉塞される。尚、上部機械室18の前面に位置して設けられるパネルは、当該冷凍装置1を操作するための操作パネル21である。
この上部機械室18を構成する断熱箱体2側の側面には、測定孔19が形成されている。この測定孔19は、隣接して設けられる断熱箱体2内に形成される貯蔵室4と連通するように、断熱箱体2を構成する外箱6、断熱材9及び内箱7を貫通して形成される。測定孔19は、外部から貯蔵室4内に温度センサを挿入することが可能であり、当該温度センサから引き出される配線は、測定孔19を介して外部の記録装置本体に接続されている。そして、この測定孔19は、配線との隙間をスポンジ状の変形可能、且つ、断熱性を有する特殊材料にて構成される栓19Aによって閉塞される。尚、温度センサが取り付けられていない状態では、測定孔19は、当該栓19Aによって、断熱的に閉塞される。
これにより、貯蔵室4内の温度等を測定、記録等を行う機器を用いる際には、図5に示されるように、断熱扉13が閉じられている状態においても、機械室3に設けられる天面パネル5を開放し、上部機械室18内に位置する断熱箱体2側の側面に形成される測定孔19を介して当該測定機器を貯蔵室4内に挿入することが可能となる。そのため、測定機器を所定の超低温にまで冷却された貯蔵室4内に設置する作業が容易となる。
特に、本実施例における測定孔19は、従来の冷凍装置に設けられる測定孔と異なり、断熱箱体2の機械室18側の側面に形成されているため、当該冷凍装置1を実験室などの設置環境の壁や他の機器に隣接して設置する場合であっても、格別に測定孔19を使用するために必要な間隔を存する必要がなくなる。これにより、冷凍装置1の設置に要するための面積の狭小化を図ることが可能となり、実験室などのレイアウトを行う上で好適なものとなる。
また、測定孔19が機械室3と隣接する側の断熱箱体2の壁面に形成されていることで、機械室3と隣接する以外の側面、即ち、外部に面して構成される断熱箱体2の前後壁及び側面に、測定孔19の形成位置に影響を及ぼすことなく、上述したような真空断熱パネル12を配設することが可能となる。
更に、当該測定孔19が形成される断熱箱体2の壁面には、詳細は後述する如くカスケード熱交換器43や各中間熱交換器48等が断熱材により一体に形成された断熱構造体70が配設されることから、真空断熱パネル12が設けられていなくても、効果的に当該断熱構造体70によって、貯蔵室4内を断熱することが可能となる。
これにより、貯蔵室4内の冷熱の漏洩量を低減させることができ、無駄な冷却エネルギーの浪費を抑制することが可能となる。
そのため、貯蔵室4内を本実施例の如く例えば−150℃以下のような超低温とした場合であっても、断熱箱体2自体の断熱性能を向上させることが可能となり、断熱壁の寸法の縮小を図ることができ、従来と同様の外形寸法であっても、貯蔵室4内の収納容積の拡大を図ることが可能となる。若しくは、従来と同様の収納容積であっても、外形寸法を縮小することが可能となり、これによっても、冷凍装置1の設置に要するための面積の狭小化を図ることが可能となる。
更にまた、本実施例における測定孔19は、上部機械室18の上面開口を開閉可能な天面パネル5にて隠蔽可能とされることから、外観に測定孔19が露出しない構成とすることができ、外観の向上を図ることが可能となる。また、天面パネル5を開放することで、容易に測定孔19への操作を行うことが可能となり、作業性の向上を図ることができる。また、仕切板17を取り外すことで、仕切板17下方に設置される他の冷却装置Rを構成する機器への操作も容易となり、メンテナンス作業の向上を図ることが可能となる。当該天面パネル5は、測定孔19への操作を行う場合以外には、機械室18内を閉塞した状態とすることで、当該天面パネル5を作業用の側台としても用いることが可能となり、貯蔵室4内へのサンプル等の物品の納出作業等に好適なものとなる。
尚、本実施例では、測定孔19は、上部機械室18の上面開口を閉塞する天面パネル5にて隠蔽しているが、これ以外に限定されるものではなく、測定孔19近傍に、当該測定孔19を隠蔽するための蓋部材などを設けても良いものとする。
次に、図6を参照して本実施例の冷凍装置1の冷媒回路について説明する。本実施例における冷凍装置1の冷媒回路は、多元多段の冷媒回路として、それぞれ独立した第1の冷媒回路としての高温側冷媒回路25と、第2の冷媒回路としての低温側冷媒回路38の二元二段の冷媒回路により構成されている。
高温側冷媒回路25を構成する圧縮機10は、一相若しくは三相交流電源を用いる電動圧縮機であり、当該圧縮機10の吐出側配管10Dは、補助凝縮器26に接続される。この補助凝縮器26は貯蔵室4開口縁を加熱して露付きを防止するためのフレームパイプ27に接続される。また、このフレームパイプ27は、圧縮機10のオイルクーラー29に接続された後、凝縮器28に接続される。そして、凝縮器28を出た冷媒配管は、低温側冷媒回路38を構成する圧縮機20のオイルクーラー30に接続された後、凝縮器31に接続され、当該凝縮器31を出た冷媒配管は、乾燥器32及び減圧装置としてのキャピラリーチューブ33を順次介して蒸発器を構成する蒸発器部分としての蒸発器34に接続される。蒸発器34の出口側冷媒配管には、冷媒液溜としてのアキュムレータ35が接続され、当該アキュムレータ35を出た冷媒配管は、圧縮機10の吸入側配管10Sに接続される。尚、本実施例における補助凝縮器26と凝縮器28及び31は、一体の凝縮器として構成されており、凝縮器用送風機36により冷却される。
高温側冷媒回路25には沸点の異なる非共沸冷媒として、R407Dとn−ペンタンとから成る冷媒が充填される。R407Dは、R32(ジフルオロメタン:CH2F2)と、R125(ペンタフルオロエタン:CHF2CF3)と、R134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン:CH2FCF3)とから構成され、その組成は、R32が15重量%、R125が15重量%、R134aが70重量%である。各冷媒の沸点は、R32が−51.8℃、R125が−48.57℃、R134aが−26.16℃である。また、n−ペンタンの沸点は、+36.1℃である。
圧縮機10から吐出された高温ガス状冷媒は、補助凝縮器26、フレームパイプ27、オイルクーラー29、凝縮器28、低温側冷媒回路38の圧縮機20のオイルクーラー30、凝縮器31にて凝縮されて放熱液化した後、乾燥器32で含有する水分が除去され、キャピラリーチューブ33にて減圧されて蒸発器34に次々に流入して冷媒R32、R125及びR134aが蒸発し、気化熱を周囲から吸収して蒸発器34を冷却し、冷媒液溜めとしてのアキュムレータ35を経て圧縮機10に帰還する。
このとき、圧縮機10の能力は例えば1.5HPであり、運転中の蒸発器34の最終到達温度は−27℃乃至−35℃になる。かかる低温下では冷媒中のn−ペンタンは沸点が+36.1℃であるので蒸発器34では蒸発せず液状態のままであり、従って冷却には殆ど寄与しないが、圧縮機10の潤滑油や乾燥器32で吸収しきれなかった混入水分をその中に溶け込ませた状態で圧縮機10に帰還せしめる機能と、その液冷媒の圧縮機10内での蒸発により、圧縮機10の温度を低減させる機能を奏する。
他方、低温側冷媒回路38は、圧縮機20は、前記圧縮機10と同様に一相若しくは三相交流電源を用いる電動圧縮機であり、当該圧縮機20の吐出側配管20Dには、ワイヤコンデンサにて構成される放熱器39を介してオイル分離器40が接続される。このオイル分離器40は、圧縮機20に戻るオイル戻し管41が接続される。オイル分離器40の出口側に接続された冷媒配管は、前記蒸発器34内に挿入された高圧側配管としての凝縮パイプ42に接続される。この凝縮パイプ42は、蒸発器34と共に、カスケード熱交換器43を構成している。
そして、凝縮パイプ42の出口側に接続される吐出配管は乾燥器44を介して第1の気液分離器46に接続される。気液分離器46により分離された気相冷媒は、気相配管47を介して第1の中間熱交換器48内を通過し、第2の気液分離器49に流入する。第1の気液分離器46により分離された液相冷媒は、液相配管50を介して乾燥器51、減圧装置としてのキャピラリーチューブ52を経て第1の中間熱交換器48に流入して気相冷媒を蒸発することで冷却している。
第2の気液分離器49により分離された液相冷媒は、液相配管53により、乾燥器54を経た後減圧装置としてのキャピラリーチューブ55を経て第2の中間熱交換器56に流入する。第2の気液分離器54により分離された気相冷媒は、気相配管57を介して、第2の中間熱交換器56内を通過し、第3、第4の中間熱交換器58、59内を通過する間に冷却されて液化し、配管68を介して乾燥器60を経て減圧装置としてのキャピラリーチューブ61に流入する。キャピラリーチューブ61は、蒸発器としての蒸発パイプ62に接続され、更に蒸発パイプ62は戻り配管69を介して第4の中間熱交換器59に接続される。
第4の中間熱交換器59は第3、第2及び第1の中間熱交換器58、56、48に次々に接続された後、圧縮機20の吸入側配管20Sに接続される。吸入側配管20Sには更に圧縮機20停止時に冷媒を貯溜する膨張タンク65が減圧装置としてのキャピラリーチューブ66を介して接続されており、当該キャピラリーチューブ66には、膨張タンク65の方向を順方向とした逆止弁67が並列に接続されている。
低温側冷媒回路38には沸点の異なる7種類の混合冷媒として、R245faと、R600と、R404Aと、R508と、R14と、R50、R740とを含む非共沸混合冷媒が封入される。R245faは、1,1,1,−3,3−ペンタフルオロプロパン(CF3CH2CHF2 )であり、R600はブタン(CH3CH2CH2CH3)である。R245faの沸点は、+15.3℃、R600の沸点は、−0.5℃である。そのため、これらを所定割合で混合することで、従来用いられていた沸点が+8.9℃のR21の代替として使用可能となる。
尚、R600は、可燃性物質であるため、不燃性であるR245faと所定割合、本実施例ではR245fa/R600:70/30の割合で混合することにより、不燃性として冷媒回路38に封入するものとする。尚、本実施例では、R245faとR600を合わせた総重量に対してR245faを70重量%としているが、それ以上であれば不燃性となるため、それ以上であっても良いものとする。
R404Aは、R125(ペンタフルオロエタン:CHF2CF3)と、R143a(1,1,1−トリフルオロエタン:CH3CF3)と、R134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン:CH2FCF3)とから構成され、その組成は、R125が44重量%、R143aが52重量%、R134aが4重量%である。当該混合冷媒の沸点は、−46.48℃である。そのため、従来用いられていた沸点が−40.8℃のR22の代替として使用可能となる。
R508は、R23(トリフルオロメタン:CHF3)と、R116(ヘキサフルオロエタン:CF3CF3)とから構成され、その組成は、R23が39重量%、R116が61重量%である。当該混合冷媒の沸点は、−88.64℃である。
また、R14は、テトラフルオロメタン(四弗化炭素:CF4)であり、R50は、メタン(CH4)、R740は、アルゴン(Ar)である。これらの沸点は、R14が−127.9℃、R50が−161.5℃、R740が−185.86℃である。尚、R50は酸素との結合にて爆発を生じる危険があるが、R14と混合することによって爆発の危険は無くなる。従って、混合冷媒の漏洩事故が発生したとしても爆発は発生しない。
尚、これら上述した如き冷媒は、一旦、R245faとR600、及び、R14とR50を予め混合し、不燃化状態とした後、R245faとR600の混合冷媒と、R404Aと、R508Aと、R14とR50の混合冷媒と、R740とを予め混合した状態で、冷媒回路に封入される。若しくは、R245faとR600、次にR404A、R5080A、R14とR50、最後にR740と沸点の高い順に封入される。各冷媒の組成は、例えば、R245faとR600の混合冷媒が10.3重量%、R404Aが28重量%、R508Aが29.2重量%、R14とR50の混合冷媒が26.4重量%、R740が5.1重量%であるものとする。
尚、本実施例では、R404A中に4重量%のn−ペンタン(非共沸冷媒の総重量に対して0.5〜2重量%の範囲)を添加しても良いものとする。
次に、低温側の冷媒の循環を説明する。圧縮機20から吐出された高温高圧のガス状混合冷媒は、吐出側配管20Dを介して放熱器39内に流入し、そこで放熱されて混合冷媒中の沸点が高く、オイル相溶性の良好なオイルキャリア冷媒としてのn−ペンタンやR600の一部が凝縮液化する。
放熱器39を経た混合冷媒は、オイル分離器40内に流入し、冷媒と混合している圧縮機20の潤滑オイルの大部分と放熱器39にて凝縮液化した冷媒の一部(n−ペンタン、R600の一部)が油戻し管41にて圧縮機20に帰還される。これにより、カスケード熱交換器43より後段の冷媒回路38には、より純度の高い低沸点冷媒が流れることとなり、効率的に超低温を得ることが可能となる。これにより、同一の能力の圧縮機10及び20であっても、より大きな容積の被冷却対象である貯蔵室4内を所定の超低温にまで冷却することが可能となり、冷凍装置1全体が大型化することなく収納容量の増大を図ることが可能となる。
ここで、本実施例では、オイル分離器40内に流入される冷媒は、一旦、放熱器39にて冷却されているため、カスケード熱交換器43に入る冷媒温度を下げることが可能となる。具体的には、従来では、カスケード熱交換器43内に流入される冷媒温度が+65℃程度であったものを本実施例では、+45℃程度にまで下げることが可能となる。
そのため、カスケード熱交換器43において、低温側冷媒回路35内の冷媒を冷却するための高温側冷媒回路25の圧縮機に加わる負荷を軽減することが可能となる。また、効果的に低温側冷媒回路35内の冷媒を冷却することが可能となるため、当該低温側冷媒回路35を構成する圧縮機20に加わる負荷を軽減することが可能となる。これにより、冷凍装置1全体の運転効率の改善を実現することが可能となる。
他の混合冷媒自体はカスケード熱交換器43にて蒸発器34より−40℃〜−30℃程度に冷却されて混合冷媒中の沸点の高い一部の冷媒(R245fa、R600、R404A、R508の一部)を凝縮液化する。そして、カスケード熱交換器43の凝縮パイプ42を出た混合冷媒は乾燥器44を経て第1の気液分離器46に流入する。この時点では混合冷媒中のR14とR50とR740は沸点が極めて低いために未だ凝縮されておらずガス状態であり、R245fa、R600、R404A、R508の一部のみが凝縮液化されているため、R14とR50とR740は気相配管47に、R245faとR600とR404AとR508Aは液相配管50へと分離される。
気相配管47に流入した冷媒混合物は第1の中間熱交換器48と熱交換して凝縮された後、第2の気液分離器49に至る。ここで第1の中間熱交換器48には蒸発パイプ62より帰還してくる低温の冷媒が流入し、更に液相配管50に流入した液冷媒が乾燥器51を経てキャピラリーチューブ52で減圧された後、第1の中間熱交換器48に流入してそこで蒸発することにより、冷却に寄与するため、未凝縮のR14、R50、R740、及びR508の一部を冷却する結果、第1の中間熱交換器48の中間温度は−60℃程となっている。従って、気相配管47を通過した混合冷媒中のR508は完全に凝縮液化され、第2の気液分離器49に分流される。R14、R50、R740は更に沸点が低いために未だガス状態である。
第2の中間熱交換器56では、第2の気液分離器49で分流されたR508が乾燥器54で水分が除去され、キャピラリーチューブ55で減圧された後、第2の中間熱交換器56へ流入し、蒸発パイプ62から帰還してくる低温の冷媒と共に気相配管57中のR14、R50及びR740を冷却し、このうちで蒸発温度が最も高いR14を凝縮させる。この結果、第2の中間熱交換器56の中間温度は−90℃程となる。
この第2の中間熱交換器56を通過する気相配管57は、続いて第3の中間熱交換器58を経て第4の中間熱交換器59を通過する。ここで、第4の中間熱交換器59には蒸発器62を出て直ぐの冷媒が帰還されており、実験によれば第4の中間熱交換器59の中間温度が−130℃程とかなり低い温度に達する。
このため、第4の中間熱交換器59では気相配管57中のR50及びR740の一部が凝縮し、これら液化したR14、R50及びR740の一部が乾燥器60で水分が除去され、キャピラリーチューブ61で減圧された後、蒸発パイプ62に流入し、そこで蒸発して周囲を冷却する。実験によれば、このとき、蒸発パイプ62の温度は−160.3℃〜−157.3℃という超低温となった。
このように、低温側冷媒回路38における各冷媒の蒸発温度の差を利用して各中間熱交換器48、56、58、59でまだ気相状態にある冷媒を次々に凝縮させ、最終段の蒸発パイプ42において−150℃以下という超低温を達成することができる。そのため、当該蒸発パイプ62が内箱6の断熱材9側に沿って熱交換的に巻回して構成されることで、冷凍装置1の貯蔵室4内は、−152℃以下の庫内温度を実現することが可能となる。
蒸発パイプ62を出た冷媒は、第4の中間熱交換器59、第3の中間熱交換器58、第2の中間熱交換器56、第1の中間熱交換器48に次々に流入し、各熱交換器で蒸発した冷媒と合流して吸入配管20Sから圧縮機20に帰還する。
圧縮機20から冷媒に混入して吐出されるオイルは、大部分がオイル分離器40により分離されて圧縮機20に戻されているが、ミスト状となって冷媒と共にオイル分離器40から吐出されてしまったものは、オイルとの相溶性の高いR600に溶け込んだ状態で圧縮機20に戻される。これにより、圧縮機20の潤滑不良やロックを防止できる。また、R600は液状態のまま圧縮機20へ帰還してこの圧縮機20内で蒸発されるので、圧縮機20の吐出温度を低減できる。
上述した如き低温側冷媒回路38を構成する圧縮機20は、貯蔵室4内の庫内温度に基づき、図示しない制御装置により、ON−OFF制御が行われる。この場合、制御装置により圧縮機20の運転が停止されると、低温側冷媒回路38内の混合冷媒は、膨張タンク65方向を順方向とする逆止弁67を介して、膨張タンク65内に回収される。
そのため、圧縮機20の停止時においてキャピラリーチューブ66を介して膨張タンク65内に冷媒が回収される場合に比して、著しく迅速に逆止弁67を介して冷媒回路38中の冷媒を膨張タンク65内に回収することが可能となる。
これにより、冷媒回路38内の圧力が上昇することを防止することができ、制御装置により圧縮機20が起動された際には、キャピラリーチューブ66を介して徐々に膨張タンク65から冷媒回路38中に冷媒を戻すことで、圧縮機20の起動負荷を軽減することが可能となる。
従って、圧縮機20の停止時における冷媒の膨張タンク65への回収を迅速に行うことで、冷媒回路38内の圧力を迅速に平衡とすることが可能となり、圧縮機20の再起動時に、圧縮機20に負荷をかけることなく、円滑に圧縮機20の再起動を実行することができる。これにより、圧縮機起動時における冷媒回路38内が平衡圧となるまでに要する時間を著しく短縮することで、圧縮機20の運転効率を向上することができ、例えばプルダウン運転に要する時間を短縮することができ、利便性の向上を図ることができる。
一方、上述した如き冷凍装置1の冷媒回路において、低温側冷媒回路38の蒸発パイプ62で、−160.3℃〜−157.3℃という超低温となり、カスケード熱交換器43でも−40℃〜−30℃程の低温となる。更には、第1の中間熱交換器48は、−60℃程度、第2の中間熱交換器56は、−90℃程度、第3、第4の中間熱交換器58、59では、−130℃程度と超低温となる。そのため、断熱箱体2内に配設される蒸発パイプ62を除く他の熱交換器43等についても、十分に断熱を行う必要がある。
そこで、これらカスケード熱交換器43と、第1、第2、第3及び第4の中間熱交換器は、これらの周囲を断熱材によって囲繞して矩形体とした断熱構造体70とする。図7は断熱構造体70の斜視図を示し、図8は断熱構造体70の断熱材を取り除いた状態の斜視図を示している。
ここで、断熱構造体70の詳細な構造について説明する。尚、図6における点線で囲む部分、即ち、上記各熱交換器に加えて、高温側冷媒回路25を構成するアキュムレータ35、キャピラリーチューブ33と、低温側冷媒回路38を構成する乾燥器44、各気液分離器46、49、、乾燥器51、54、キャピラリーチューブ52、55は、当該断熱構造体70を構成する。断熱構造体70の一端には、カスケード熱交換器43が配設されており、このカスケード熱交換器43の側方に位置して各中間熱交換器48、56、58、59が層状に配設されている。
各中間熱交換器48、56、58、59は、比較的大径の外側配管を螺旋状に複数段巻回して偏平としたものを相互に重合し、その内側を間隔を存して各気相配管47、57が内側配管となって通過する螺旋二重管構造で構成されている。本実施例では、下から温度が低い順に、即ち、最下層に第4、第3の中間熱交換器58、59が配置され、その上に第2の中間熱交換器56が配置され、最上層に第1の中間熱交換器48が配置される。
そして、これら中間熱交換器の内側やカスケード熱交換器43の周囲に各気液分離器46、49(尚、第2の気液分離器49は、図8では図示しない)、乾燥器44、51、54(図8には図示しない)、図示しない各キャピラリーチューブ33、52、55及びアキュムレータ35が配設されて、デッドスペースを少なくし、寸法の小型化を図っている。
また、当該実施例における断熱構造体70は、当該断熱構造体70内に配設される機器と、該断熱構造体70外に配設される機器とを接続する配管は、前記カスケード熱交換器34が配設される側とは反対側の一端側面に臨ませて配設されている。具体的には、カスケード熱交換器34に接続される高温側冷媒回路25の凝縮器31を経た後の吐出側配管10Dと、圧縮機10に接続される吸込側配管10S、同じくカスケード熱交換器34に接続される低温側冷媒回路38のオイル分離器40を経た後の吐出側配管20D、圧縮機20の吸込側に接続される吸込側配管20S、第4の中間熱交換器59内に配設される気相配管57から蒸発パイプ62に接続される配管68と、当該蒸発パイプ62から第4の中間熱交換器59に接続される戻り配管69の各配管の接続部分が、断熱構造体70の一側面に集中的に配設される。
このとき、比較的温度の高い冷媒が流通する吸込側配管10S、20Sと、吐出側配管20Dは、集束されて外方に、本実施例では、当該断熱構造体70が断熱箱体2に取り付けられた状態で、機械室3側に向けて配設されていると共に、蒸発パイプ62に接続され、超低温の冷媒が流通する配管68と戻り配管69が収束されて前記吸込側配管10S等とは反対側の外方に、本実施例では、当該断熱構造体70が断熱箱体2に取り付けられた状態で、断熱箱体2側に向けて配設されている。尚、配管68に接続される乾燥器60及びキャピラリーチューブ61は断熱構造体70の外側に配設される。
一方、図9は冷凍装置1の背方斜視図を示している。当該冷凍装置1は、機械室3側に位置する断熱箱体2の側壁には、前後方向に延在すると共に、後方に開放する矩形状の開口71が形成されており、当該開口71に対応して機械室3側の側壁後部にも切欠72が形成されている。この開口71には、断熱箱体2の背方から、上述した如き断熱構造体70が挿入される。このとき、断熱構造体70は、カスケード熱交換器34が配設されている側から開口71内に挿入され、これにより、断熱構造体70の一側に延出して配設される各配管10S、20S、20D、68、69、高温側冷媒回路25のキャピラリーチューブ33が接続される配管10Dは、当該断熱構造体70が挿脱される方向の面、本実施例では、断熱箱体2の背面に臨むこととなる。
そのため、機械室3内に圧縮機10、20等の機器を設置した後、最後に断熱構造体70を開口71内に挿入し、その状態で、配管68、69を断熱箱体2側に設けられる蒸発パイプ62への配管接続を行うと共に、配管10S、10D、20S、20Dを機械室3側の機器と配管接続を行う。これにより、当該断熱構造体70を構成する機器と、断熱箱体2内に配設される蒸発パイプ62や、機械室3内に配設される圧縮機10、20等の機器と、断熱箱体2の背面から容易に配管接続することが可能となり、配管作業性や、組立作業性の向上を図ることが可能となる。また、当該断熱構造体70を構成する各機器が故障等した場合であっても、当該断熱構造体70を断熱箱体2や機械室3が構成される側ではない方向に引き出すことで、容易にメンテナンス作業を実行することが可能となる。
そして、当該断熱構造体70の各配管が延出して構成される背面及び機械室3側に臨む側面の一部は、断面略L字状に折曲形成されたカバー部材73により閉塞される。尚、この場合において、断熱構造体70と機械室3側の側面との間に形成される隙間には、グラスウールなどを装填した図示しない断熱板を配設しても良い。
上述した如き構成によれば、カスケード熱交換器43や各中間熱交換器48、56、58、59は、断熱材により一体に形成された断熱構造体70の状態で、断熱箱体2の機械室3側の側壁に配設されることから、従来の如く当該断熱構造体70を断熱箱体2の背面部に設置した場合に比して、冷凍装置1全体の奥行き寸法を縮小することが可能となる。
従って、カスケード熱交換器43等を囲繞するための断熱構造体70による張出部の存在により、装置1全体の奥行き寸法が大きくなる不都合を回避することができ、本実施例の如く庫内温度が−150℃以下の冷凍装置であっても、例えば、庫内の奥行き寸法を495mm程度確保しながらも、全体の奥行き寸法を765mm程度に抑えることが可能となり、これによって、通常の搬入口(一般的には、約800mm程度)につかえてしまう不都合を回避することが可能となる。特に、当該断熱構造体70は、装置1に取り付けられた状態で、一般の搬入口から納出することが可能であることから、当該設置場所において、断熱構造体70を本体から分離・接続する必要がなくなり、煩雑な作業を回避することが可能となる。
これにより、庫内の収納容積を格別に縮小することなく、容易に冷凍装置1の搬入出を実現することが可能となる。また、設置場所においても、当該カスケード熱交換器43等を囲繞するための断熱構造体70が背面から外方に向けて突出しないことから、設置に要する面積を狭小化することが可能となる。
また、従来の如く断熱箱体2の背面にカスケード熱交換器や、各中間熱交換器の周囲を囲繞するための断熱構造体が設けられていないことから、上述したように、外部に面して構成される断熱箱体2の前壁6A後壁6B及び機械室とは反対側の側壁6C内に真空断熱パネル12を配置することが可能となり、貯蔵室4内を例えば−150℃以下のような超低温となる場合であっても、断熱箱体2自体の断熱性能を向上させることが可能となる。そのため、寸法の縮小を図ることができ、従来と同様の外形寸法であっても、貯蔵室4内の収納容積の拡大を図ることが可能となる。若しくは、従来と同様の収納容積であっても、外形寸法を縮小することが可能となり、これによっても、冷凍装置1の設置に要するための面積の狭小化を図ることが可能となる。
尚、本実施例では、断熱構造体70を、冷凍装置1の後方、即ち背面から断熱箱体2の側壁内に挿脱可能としているが、これに限定されるものではなく、例えば、断熱箱体2の前方から、或いは、上方から挿脱可能としても良い。これにより、本実施例と同様に、断熱構造体70として一体化されたカスケード熱交換器43及び各中間熱交換器48等を容易に装置1本体に組み込むことが可能となり、組立作業性を向上させることができる。
また、本実施例と同様に、断熱構造体70を前方や上方に引き出すことで、装置1本体から取り出すことが可能となり、当該断熱構造体70を構成するカスケード熱交換器43や各中間熱交換器48等のメンテナンス作業を容易に行うことが可能となる。
尚、本実施例では、断熱構造体70は、当該冷凍装置1を構成するカスケード熱交換器43や各中間熱交換器48等を一体に構成しているものであるが、これ以外にも、カスケード熱交換器43のみ、若しくは、各中間熱交換器48等だけを断熱構造体70として一体に構成し、本実施例の如く断熱箱体2の側壁に挿脱可能に配設しても良いものとする。
また、本実施例では、冷凍装置1を構成する冷媒回路をそれぞれ圧縮機10又は20から吐出された冷媒を凝縮した後、蒸発せしめて冷却作用を発揮する独立した冷媒閉回路を構成する高温側冷媒回路25と、低温側冷媒回路38とから構成し、低温側冷媒回路38は、圧縮機20、凝縮パイプ42、蒸発パイプ62、この蒸発パイプ62からの帰還冷媒が流通するように直列接続された複数の、具体的には、4つの中間熱交換器48、56、58、59と、複数の、具体的には、3つのキャピラリーチューブ42、55、61を有し、複数種の非共沸混合冷媒が封入され、凝縮パイプ42を経た冷媒中の凝縮冷媒を各キャピラリーチューブを介して各中間熱交換器に合流させ、該中間熱交換器で冷媒中の未凝縮冷媒を冷却することにより、順次より低い沸点の冷媒を凝縮させ、最終段のキャピラリーチューブ61を介して最低沸点の冷媒を蒸発パイプ62に流入させると共に、高温側冷媒回路25の蒸発器34と低温側冷媒回路38の凝縮パイプ42とでカスケード熱交換器43を構成し、低温側冷媒回路38の蒸発パイプ42にて超低温を得る二元多段方式の冷凍装置1として説明しているが、本発明は、これに限定されるものではない。
即ち、例えば、それぞれ圧縮機から吐出された冷媒を凝縮した後蒸発せしめて冷却作用を発揮する独立した冷媒閉回路を構成する高温側冷媒回路と低温側冷媒回路とを備え、高温側冷媒回路の蒸発器と低温側冷媒回路の凝縮器とでカスケード熱交換器を構成すると共に、低温側冷媒回路の蒸発器にて超低温を得る単純多元(二元)方式の冷凍装置であっても、当該カスケード熱交換器43を本実施例の如き断熱構造体70に構成し、当該断熱構造体70を断熱箱体2の機械室3側の側面に挿脱自在とすることで、同様の効果を得ることができる。
また、同様に、圧縮機、凝縮器、蒸発器、該蒸発器からの帰還冷媒が流通するように直列接続された複数の中間熱交換器及び複数の減圧装置を備え、複数種の非共沸混合冷媒が封入され、凝縮器を経た冷媒中の凝縮冷媒を減圧装置を介して中間熱交換器に合流させ、該中間熱交換器で冷媒中の未凝縮冷媒を冷却することにより、順次より低い沸点の冷媒を凝縮させ、最終段の減圧装置を介して最低沸点の冷媒を蒸発器に流入させることにより超低温を得る単純多段方式の冷凍装置であっても各中間熱交換器を本実施例の如き断熱構造体70に構成し、当該断熱構造体70を断熱箱体2の機械室3側の側面に挿脱自在とすることで、同様の効果を得ることができる。