次に、本発明の種々の実施形態を詳細に参照し、これら実施形態の1つ又は2つ以上の実施例が図示されている。図面の以下の説明の範囲内において、同一の参照符号は、同一のコンポーネントを示している。一般に、個々の実施形態に関する相違点のみを説明する。各実施例は、本発明の説明のために提供されており、本発明を限定するものではない。例えば、一実施形態の一部として図示され又は説明される特徴を他の実施形態に又はこれと関連して使用することができ、それにより更に別の実施形態が得られる。本発明は、かかる改造例及び変形例を含むものである。
本願の保護範囲を限定するものではなく、以下の説明において、荷電粒子ビーム装置又はそのコンポーネントは、例示として二次電子の検出を含む荷電粒子ビーム装置と称する。本発明は、更に、試料画像を得る目的で粒子、例えば電子若しくはイオン、光子、X線又は他の信号の形態をした二次及び/又は後方散乱荷電粒子を検出する装置及びコンポーネントに利用できる。一般に、粒子と言った場合、これは、粒子が光子である光信号並びに粒子がイオン、原子、電子又は他の粒子である粒子と理解されるべきである。
本明細書において説明するように、検出に関する議論及び説明は、走査型電子顕微鏡における電子に関して例示的に行われている。しかしながら、他形式の荷電粒子、例えば正イオンは、多種多様な機器内に設けられた荷電粒子装置によって検出できる。
他の実施形態と組み合わせ可能な本明細書の実施形態によれば、信号ビームを二次粒子のビーム又は二次ビーム、即ち二次及び/又は後方散乱粒子という。代表的には、信号ビーム又は二次ビームは、試料への一次ビームの衝突によって生じる。一次ビームは、荷電粒子ビーム源により生じ、そして検査又は画像化されるべき試料上に案内及び偏向される。
本明細書において用いられる「試料」という用語は、半導体ウェーハ、半導体ワーク及び他の加工物、例えばメモリディスク等を含むが、これらには限定されない。本発明の実施形態は、材料を蒸着させ又は構造観察される任意の加工物に利用できる。試料は、構造観察される表面又は層が蒸着される表面、エッジ及び代表的にはベベルを有する。本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な幾つかの実施形態によれば、装置及び方法は、電子ビーム検査、限界寸法検査分野及び欠陥検査用途向きに構成され又は利用される。
一般に、荷電粒子ビームの集束と言った場合、荷電粒子のビームを発散度に関して減少させることであると理解されたい。これは、ビームの荷電粒子を次のビーム光学素子に向かって集束(合焦)させ又は少なくとも視準して発散度に起因した又は荷電粒子の遮断に起因した荷電粒子の損失を減少させることを意味している。これに対応して、脱焦は、発散度を増大させることと理解されたい。
EBI用途の場合、上述したような明視野(BF)検出器が用いられるが、これは、トポグラフィ又は表面電位(電圧コントラスト‐VC)の変化に十分敏感であるとは言えない。VCは、SE信号をフィルタ処理することによって高めることができ、他方、物理的欠陥に起因して生じるトポグラフィ情報を高めるには、サンプルのところの或る特定の取り出し角度範囲内のSEのみを収集する多数のセンサを用いるのが良い。本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な代表的な実施形態によれば、トポグラフィ検出器は、別々に読み取り可能な4つ又は5つ以上のセグメント(中央BF領域の有無は問わない)に分割可能である。次に、信号を組み合わせて(例えば、減算して)コントラストを高めるのが良い。エネルギー又は角度フィルタ処理を含む有意義なマルチパースペクティブ(multi-perspective)画像化のため、SEにより運ばれる情報が保存されることが必要であり、他方、ビームは、サンプルからセンサに伝えられる。かくして、本明細書において説明する実施形態によれば、光学系又は光学システム(SE光学系)が提供される。幾つかの実施形態によれば、SE光学系は、一次ビームとSE束を分離するビームスプリッタと、1つ又は2つ以上の集束レンズと、位置合わせ偏向器とを含むのが良い。
欠陥検査ツール及び調査ツール又は限界寸法検査ツールに関し、例えばトポグラフィのような向上したコントラストを生じさせるには、これらの開始角度に基づいて二次粒子を検出するのが良い。それにより、検査した特徴部及び/又は欠陥のコントラストの向上を得ることができる。開始角度に応じた二次粒子ビームの検出のため、個々の検出素子への二次ビームの分離が実施される。しかしながら、特に本明細書において説明する実施形態で言及する高速検出用途に関し、個々のセグメント(これらセグメントは、これらセグメント相互間に死角がない状態で密に実装され、即ち、センサ素子相互間にそれほど大きな隙間を備えていない)を含むセンサを製造することは、困難である。
特にEBI用途に関し、高スループットが望ましく、その結果、極めて迅速なセンサが要望される。したがって、PINコードを用いるのが良い。しかしながら、得ることができる帯域幅は、ダイオードのサイズで決まり、1mm2以下のセンサ面積が利用されるのが通例である。したがって、検出器構造体中の死角が検出速度を上げると増大する。
本明細書において説明する実施形態は、高速トポグラフィ測定を可能にする検出器構造体及び二次ビーム光学系を提供する。本明細書において説明する幾つかの実施形態は、更に全SEが単一の検出器に達するBF画像化とトポグラフィ画像化を容易に切り換えることができるようにする高速検出器を提供し、少なくとも2つのセンサ、代表的には、大きな開始角度の4象限用の少なくとも4つのセンサが提供される。加うるに、低角SE用の中央検出器を設けるのが良い。本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な幾つかの実施形態によれば、両方の画像化モードにおいて、SEも又これらのエネルギーに応じてフィルタ処理することができ、その結果、或る特定のしきい値を超えるエネルギーを含むSEだけがセンサ、即ち検出器構造体に達するようになる。
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な実施形態によれば、信号ビームの検出のための二次荷電粒子検出装置が提供される。この二次荷電粒子検出装置は、能動的な検出領域を備えた少なくとも2つの検出素子を有する検出器構造体を含み、能動的な検出領域は、隙間によって互いに隔てられ、この二次荷電粒子検出装置は、信号ビームを信号ビームの第1の部分と信号ビームの少なくとも1つの第2の部分に分離するよう構成されていると共に信号ビームの第1の部分及び信号ビームの少なくとも1つの第2の部分を集束させるよう構成された粒子光学系を更に含む。粒子光学系は、アパーチュアプレートと、このアパーチュアプレートに設けられた少なくとも第1の内側アパーチュア型開口部及びアパーチュアプレートに設けられた少なくとも1つの第2の半径方向外側のアパーチュア型開口部とを含み、アパーチュアプレートには、第1のアパーチュア型開口部及び少なくとも1つの第2のアパーチュア型開口部を包囲した一電位に合わせてアパーチュアプレートにバイアスがかけられるよう構成されている。
図2Aは、検出素子222を含む検出器構造体220を示している。図2A及び図2Cで理解できるように、検出素子222は、これら検出素子222相互間の隙間によって互いに隔てられている。検出素子222は、検出器構造体220のホルダ224によって支持されている。
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な代表的な実施形態によれば、検出素子222相互間の離隔距離(即ち隙間)は、検出素子222の能動的領域と対応の寸法と少なくとも同一の長さを有する。典型的な実施形態によれば、隙間は、1mmから10mmまでの範囲にあるのが良い。上述の隙間寸法と代替的に又はこれに追加して利用できる隙間の代表的な比G/L及び対応の能動的領域の長さは、1以上且つ7以下であるのが良い。
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な更に別の実施形態によれば、検出素子222は、二次粒子、例えば二次電子を検出するためのセンサとして用いられるPINダイオードであるのが良い。本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な更に別の実施形態によれば、光軸2に沿って伝搬する信号ビームの分離のための装置及び方法は又、他の検出器、例えばシンチレータ、アバランシェフォトダイード(APD)等を含む検出器組立体にも利用できる。
本明細書において説明するように、二次粒子又は二次電子は、後方散乱粒子/電子か試料への一次荷電粒子ビームの衝突に起因して生じる粒子/電子かのいずれかであると理解される。
PINダイオードは、1GHzから10GHzまでの範囲又は2GHz以上のこれらの広い帯域幅に照らして高速検出用途に利用できる。それにより、PINダイオードの能動的領域は、検出速度を制限する。即ち、PINダイオードの能動的領域が広ければ広いほど、検出速度は、それだけ一層遅くなる。したがって、PINダイオードの能動的領域は、2GHz以上の所望の検出速度を提供するために1mm2以下の面積に縮小される。検出素子222の能動的領域のサイズは、これら検出素子相互間の隙間と比較した場合の検出面積の比を定める。したがって、高速検出のための所望の帯域幅を有する検出器構造体220は、検出素子の能動的領域相互間に隙間を備える。したがって、検出素子222の設計により定められる空間的分離が与えられる。
本明細書において説明する実施形態によれば、二次粒子光学系200が提供される。図2A及び図2Bに示されているように、粒子光学系200は、2つ又は3つ以上のアパーチュア型開口部を備えた少なくともアパーチュアプレート201を含む。アパーチュアプレート201は減速電位にバイアスをかけることができる。それにより、検出素子222の加速と組み合わせたアパーチュアプレート201の減速は、二次粒子、例えば二次電子ビームの分離及び集束を可能にするよう実施される。2つ又は3つ以上のアパーチュア型開口部に照らして、互いに異なる検出素子上への二次ビームの分離を実施するのが良い。代表的な実施形態によれば、アパーチュアプレート201は、中央のアパーチュア型開口部202及び少なくとも2つの半径方向外側のアパーチュア型開口部204を有する。代表的には、4つの外側アパーチュア型開口部204を設けるのが良い。
代表的な実施形態によれば、二次光学系200は、少なくとも4つの外側アパーチュア型開口部又は外側穴の群によって包囲された単一の中央アパーチュア型開口部又は穴を備えたアパーチュアプレート201を含む。それにより、中心を、例えば、信号ビーム束の光軸によって定めることができる。アパーチュアプレートは、この光軸に垂直に配置されるのが良い。検出器組立体220の検出素子222は、プレートの後ろに、例えばアパーチュアに平行な平面内に配置される。
トポグラフィ測定モードのための代表的な動作条件によれば、信号ビーム、例えばSE束は、僅かに末広がりに作られ、アパーチュアプレートにはSEを減速すると共にSEがアパーチュアプレートに近づくようにするようバイアスがかけられる。電子が低速である場合、電子は、アパーチュアプレートのアパーチュア型開口部に向かって容易に偏向され、このことは、SE束が中央部分(低角SE)と大きな極性開始角度を備えると共に少なくとも4つの方位角方向周りに集められたSEに対応する少なくとも4つの外側束の群に分けられる。二次粒子は、アパーチュア型開口部の通過後、再びかなり高いエネルギー、例えばアパーチュアプレートの減速電界に入る前に二次粒子が持っていたのとほぼ同じエネルギーまで再び加速される。代表的な実施形態によれば、二次粒子は、減速前には約20keV〜30keV、例えば30keVのエネルギーを有するのが良い。これら二次粒子は、アパーチュアプレートの通過時、100eV〜15keV、例えば5keVのエネルギーまで減速される。しかる後、二次粒子は、検出素子222に向かって約20keV〜50keV、例えば30keVのエネルギーまで加速される。この加速は、分離された束を小さな検出素子上に集中させることができる集束効果を有する。アパーチュアプレートの後ろに位置する二次粒子、例えば信号ビームの二次電子の分布状態は、アパーチュアプレートの穴の投影像であるわけはなく、減速は、上述のように構成されていなければアパーチュアプレートに当たって失われるに過ぎない二次粒子をこれらの穴に偏向させ、アパーチュアプレートと検出素子との間の加速電界は、信号ビームの個々の束を集中させ、これら信号ビームの個々の束は、アパーチュアプレート及び検出素子のバイアスがけを行わなければ、小形高速センサにとって大きすぎることになる。
さらに別の実施形態によれば、減速アパーチュアプレートとほぼ同じ設計の追加の制御電極を用いると、軌道を微調整することができる。それにより、幾つかの実施形態によれば、図2Bに示されている電極とほぼ同じ電極を用いることができる。追加の制御プレートは、集束装置として働くことができる。しかしながら、図2Dに示されている設計を用いると、正又は負のバイアスをかけることによって個々の束をセンサに半径方向に位置合わせする偏向装置としてプレート203を動作させることができる。それにより、幾つかの実施形態によれば、バイアスがかけられるよう構成可能なプレート203及び/又は偏向素子302、例えば磁極片又は電極を提供するのが良い。それにより、偏向電極は、ビームを半径方向に動かすことができる。束を検出素子に合わせて調節するための電界を付形するための凹部303が設けられるのが良い。両方のオプション、即ちプレート201とプレート203が図3Bに示されており、図3Bでは、追加の制御電極は、内側部分がアパーチュアプレート201とほぼ同じであるように点線が付けられた状態で示されており、これに対し、点線付き部分がない状態で、図2Dの設計とほぼ同じ断面が得られている。
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な幾つかの実施形態によれば、図2Bに示されている二次粒子光学系200を設けるのが良い。アパーチュアプレート201に設けられた中央アパーチュア型開口部202は、図2Cの中央検出素子222に対応している。外側アパーチュア型開口部204は、図2Cの外側検出素子222に対応している。典型的な実施形態によれば、アパーチュア型開口部の直径又は対応の寸法は、中央アパーチュア型開口部202について1mm〜4mmであるのが良い。外側アパーチュア型開口部204に関し、直径又は対応の寸法は、3mm〜10mmであるのが良い。
図2Eに示されているように、粒子光学系200のアパーチュアプレート201は、円形ではないアパーチュア型開口部204を更に有するのが良い。接線方向伸長部を有し又はリング等の一部分の形態に形作られたアパーチュア型開口部は、アパーチュアプレート201の死角、即ち、信号粒子、例えば信号電子がアパーチュアプレートの開口部を通過することができない領域を減少させることができる。内側開口部202の点線で図2Eに更に示されているように、内側開口部は、オプションであって良い。したがって、外側開口部だけが本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な幾つかの実施形態に従って提供される場合がある。かかる場合、開口部204の半径方向長さを増大させることも又可能である。外側開口部204のみを備えたアパーチュアプレートを追加のエネルギー選択の有無とは無関係にトポグラフィ測定に用いることができる。
種々の実施形態によれば、アパーチュアプレート201に設けられた第1の開口部及び/又は少なくとも1つの第2の開口部は、丸形開口部、アパーチュアプレートのセクタ(扇形)の一部分、例えば環状体又は類似の形状のセクタから成る群から選択された形状を有することができる。それにより、丸形開口部を信号ビーム束のこれらの有利な集束特性に照らして考慮するのが良い。他の形状の結果として、アパーチュアプレートに生じる死角が小さくなる場合があり、かくして信号粒子の良好な収集効率が得られる。
図2Cに示されているように、検出器構造体220は、図2Bに示された二次ビーム光学系200の領域に対応した5つの検出素子222を有している。本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な代表的な実施形態によれば、5つの領域及び対応の検出素子222が設けられる。それにより、中央領域と中央検出素子及び4つの外側領域と4つの外側検出素子が設けられるのが良い。したがって、試料から放出される二次粒子を開始角度によって識別することができ、即ち、中央検出素子が二次粒子を検出するか外側検出素子が二次粒子を検出するかを識別することができる。さらに、開始角度の方向の分離が外側領域に対応した大きな開始角度について実施されるのが良い。それにより、検出器構造体の外側検出素子が二次粒子を測定するかチャネルが二次粒子を測定するかに応じて、開始角度の方向を求めることができる。
図2Cは、能動的検出領域相互間の隙間Gと比較して参照符号Lで示された検出領域のサイズを更に示している。したがって、検出器構造体220は、検出素子の能動的領域相互間に死角を有する。上述したように、これは、検出器構造体の帯域幅に反比例の関係で対応するセンサの能動的領域のサイズに起因している。
図3Aに示されているように、二次粒子光学系200は、アパーチュアプレート201を含むのが良く、二次粒子を集束させるよう構成された集束レンズ301を更に含むのが良い。それにより、図3Aに示されているように、全体として末広がりの二次粒子ビームを集束させてこれが中央アパーチュア型開口部202のところでアパーチュアプレート201を通過することができ、そしてこの二次粒子ビームを中央検出素子222のところで検出することができるようにする。
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な更に別の実施形態によれば、図3Bに示されているように、集束レンズ301をオフに切り換え又はこれを動作させて二次粒子がアパーチュアプレート201のアパーチュア型開口部のサイズに合ったビーム直径に形成されるようにするのが良い。それにより、二次粒子は、アパーチュア型開口部の全てを通過する。上述の説明に照らして、トポグラフィコントラスト及び中央BF画像化を同時に実現することができる(マルチパースペクティブ画像化)。
本明細書において説明する実施形態によれば、検出装置は、二次粒子、即ちSEの束に含まれている角度及びエネルギーに関する情報を分析することができる。それにより、十分に高いエネルギーを含む粒子だけがアパーチュアプレートのアパーチュア型開口部を通過することができるような電位へのバイアスをアパーチュアプレートにかけることによってエネルギーに関する情報を提供することができる。集束レンズ301は、信号ビームの開き角度の調節を可能にする。信号ビームを必要に応じて末広がりに又は先細に作ることができる。それにより、二次粒子の収集効率を向上させることができる。さらに、トポグラフィ画像化モードとエネルギーフィルタ処理画像化モードを切り換えることが可能になる。
したがって、本明細書において説明する実施形態は、集束レンズの動作に関し、この場合、二次粒子ビームの発散度は、集束レンズに起因して変化する。一動作モードに関し、ビームの発散度は、ビームがアパーチュアプレートのところに、結果的に最大量の二次粒子がアパーチュア型開口部のうちの少なくとも1つ、即ち内側アパーチュア型開口部又は外側アパーチュア開口部のうちの1つを通過するようなビーム直径を有するよう設定されるのが良い。この動作モードでは、信号粒子、例えば信号電子をこれらの開始角度に依存して検出することができる。別の動作モードでは、粒子ビームの発散度は、本質的に全ての二次粒子、例えば二次電子が内側アパーチュア型開口部を通過する集束レンズに起因して変化する。それにより、全ての信号粒子は、1つの検出素子222で検出される。
本明細書において説明する実施形態によれば、粒子光学系、特にアパーチュアプレート201が図5、図6A及び図6Bに示されているように設けられる。それにより、例えば図4に示されているような基本的アパーチュアプレートの性能を種々の観点について向上させることができる。図4に示されているように、5つの穴(それぞれ、202,204)を備えたアパーチュアプレート201は、かなり広い遮断又は中実領域を備えた断面を有する。破線で示された円は、衝突SE束の断面を示している。
図5に示されているように、本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な幾つかの実施形態によれば、信号粒子用に構成された粒子光学系500の一部をなすアパーチュアプレート501は、外側領域503、例えば円形本体を有する。穴504相互間の領域は、分割又は仕切りバー505によって提供されている。したがって、穴相互間の領域は、細いように又は幅が狭いように縮小されている。中央穴502が例えば針さし形状を備えている。本明細書において説明する実施形態によれば、針さし形状を有する穴は、変形例では、凹状部分、即ち開口部の中央に向かって内側に曲げられた部分を有するものとして説明される。それにより、外側穴のポテンシャル分布を平滑にすることができ、それにより特に外側穴の良好な集束特性が得られる。本明細書において説明する幾つかの実施形態によれば、外側穴503は、バー、例えば分割バー505によって少なくとも2つの側が画定される。したがって、外側穴は、これら外側穴の周長の少なくとも30%の長さのところに真っ直ぐな境界部を有する。本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な本明細書において説明する更に別の実施形態によれば、中央穴502は、周囲に少なくとも2つ、代表的には少なくとも4つの凹状領域を有し、例えば針さし形状を有する。
上述の説明に照らして、アパーチュアプレートのところでの信号電子の損失分の減少を代表的には約30%から5%未満にすることが可能である。これは、とりわけ、装置の正面から見た断面を縮小することによって達成される。即ち、本明細書において説明する実施形態は、断面に中実材料を備えた減少領域を有する。
開口部の円形設計の使用を放棄したにもかかわらず、サブレンズ(部分レンズ)の静電位がほぼ回転対称であるように幾何学的形状を付形することにより、及び/又は、装置の前に強力な減速電界をかけると共にビーム分離器の後に強力な加速電界をかけることによって、ビームレットの良好な収束を達成できる。良好な集束により、大径ピンダイオードが用いられる場合に作業窓が大きくなると共に/或いは小形ピンダイオードの使用が可能になり、かくして検出器帯域幅の増大が可能である。
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な更に別の実施形態によれば、図示のように、アパーチュアプレート201,501,601は、少なくとも5mmの厚さを有する。この厚さは、軸方向又は信号粒子の光軸の方向における延長によって得られる。代表的には、軸方向又は信号粒子の光軸の方向における厚さ又は延長分は、10mm〜20mmである。それにより、ビームレット(beamlet )の離隔距離の増大を達成することができる。代表的には、中央ビームレットと外側ビームレットとの間の10mmの離隔距離を達成することができる。これにより、直径5mmの標準型ピンダイオードの利用が可能であり、しかもセンサ素子の実現可能な設計が可能である。さらに、アパーチュアとセンサとの間の加速電界のリーチスルーがアパーチュアプレートの厚さによって影響を受けることに照らして、動作電圧の低下は、装置の延長に起因して得られ、即ち、軸方向又は信号粒子の光軸の方向における最小厚さ又は最小延長分に起因して得られる有利な副次的作用結果である。これは、良好な高電圧イミュニティ、信頼性及び安定性を達成するのを助けると共に装置の実現可能な設計を可能にする。
本発明によれば、アパーチュアプレート201,501,601は、最小厚さを有するプレートとして説明される。変形例として、アパーチュアプレートは、管として説明可能であり、これらの用語を区別なく用いることができる。しかしながら、半径方向寸法は、代表的には、大抵の場合アパーチュアプレートとして言及される場合には軸方向寸法よりも大きい。さらに、本明細書において管又は管状構造体と言った場合、かかる言及は、幾つかの実施形態としてのアパーチュアプレートの最小厚さを考慮に入れている。
図6A及び図6Bに示されているように、ビームレットの調節可能な分離によって更に追加の又は別の改造例を提供することができる。これにより、ビームレットをセンサに対して常時心出しすることができるようにする微調整が可能である。本明細書において説明する実施形態によれば、調節可能な分離を可能にするには、外側領域(図5の例えば符号503を参照されたい)又はビーム分離器の外側管、即ちアパーチュアプレートを分割するのが良い。したがって、幾つかの実施形態は、開口部604、第1の外側部分601及び第2の外側部分611を分離するための分割バー605を含む。例えば、第1の外側部分601は、分割バー605と組み合わせたT字形断面を有するのが良い。それにより、少なくとも4つのT字形構造体を含む中央十字形部分が提供される。中央穴602が本質的に十字形断面の中心に設けられる。4つのT字形構造体は、中央開口部602を包囲し、各T字形構造体は、分割バー605及び第1の外側部分601によって提供されている。
中央十字形部分にはVfocへのバイアスがかけられている。これは、図6Aに示されており、電力供給源631が中央十字形部分に接続されている。4つの第2の外側部分611、例えば4つの追加の偏向プレート(外側ビームレット1つ当たり1つ)に装置の中央部分に対して±ΔVへのバイアスをかけるのが良く、即ち、ゼロでない電圧が中央部分の電位に正又は負の状態で加えられる。第2の電圧供給源632が電圧を第2の外側部分に印加し又は第1の電力供給源の電圧に対するオフセット電圧を第2の外側部分611に印加するよう設けられている。したがって、オプションとして外側ビームレットの内方又は外方偏向を生じさせることが可能である。
中央部分が図6A及び図6Bに示された4つの開口部604に相当する十字形として記載されている場合であっても、3つの開口部、5つの開口部、6個の開口部又はそれ以上の数の開口部を設けたとしても、その結果として、中央部分のそれに対応した形状が形成でき、かかる数の開口部は、図6A及び図6Bを参照して説明する実施形態の更に別の改造例であると見なされるべきである。
図6A及び図6Bを参照して説明する実施形態は、別の自由度をアパーチュアプレート601のバイアスがけに追加する。集束とビーム分離が一般に互いに連係されるが、装置の設計により、焦点の許容できないほどの劣化なしにビームレットの相互分離を変更することが可能である。これは、コラム動作のばらつき、例えば一次ビームの互いに異なるランディングエネルギーにより、又、抽出電界、局所トポグラフィ等の変化により生じるSEエネルギー又は角度分布のばらつきを補償するために使用できる。
上述した幾つかの実施形態によれば、アパーチュアプレートの厚さは、アパーチュアとセンサとの間の加速電界のリーチスルーを決定するよう調節可能である。さらに別の追加の又は別の実施形態によれば、アパーチュアプレート、例えば加速電界に向いた側に設けられている上述の追加の特徴部は、加速電界の空間分布に影響を与えるよう配置されるのが良い。さらに別の追加の又は別の実施形態によれば、内側アパーチュア型開口部、例えば中央アパーチュア型開口部のアパーチュア直径と外側アパーチュア型開口部のアパーチュア直径の比は、様々であって良い。代表的な例によれば、外側アパーチュア型開口部の直径は、内側アパーチュア型開口部の直径の少なくとも2倍であるのが良い。しかしながら、この値は、外側アパーチュア型開口部の数に依存する場合がある。即ち、外側アパーチュア型開口部の数が多ければ多いほど、上述の直径の比は、それだけ一層小さくなる。例えば、アパーチュアプレートが規則的なパターンで、例えば六角形パターンをなして多数の同一の穴を有する場合、直径の比は、1まで小さくなるであろう。代表的な実施形態によれば、アパーチュア型開口部は、丸形であっても良く或いは任意他の所望の形状、例えば環状体、リング等の一部分の形状を有しても良い。
他の実施形態と組み合わせ可能な幾つかの実施形態によれば、4つの外側アパーチュア型開口部が設けられるのが良い。それにより、検出装置は、2つの互いに直交する方向におけるトポグラフィに敏感である。これは又、ウェーハ構造体が2つの別々の垂直方向を有していることに関連している。代表的な動作方法によれば、検出器を画像化されるべき物体、例えばウェーハ構造体の所望のトポグラフィに関して最大の感度を得るための第1の角度まで回転させるのが良い。さらに、検出器を第1の角度と比較して45°だけ回転させても良く、その目的は、規則的な構造体からの信号を抑制し、欠陥コントラストを高めることにある。それにより、かかる実施形態の更に別の具体化例によれば、8つの外側アパーチュア型開口部を利用することができる。検出器の回転角度を上述したように選択することによって、全ての第2のアパーチュア型開口部(例えば、開口部番号1、番号3、番号5及び番号7)及び8つの外側検出素子のうちの対応の検出素子が画像化されるべき物体の規則的な構造体を検出することができ、他方、間に位置するアパーチュア型開口部(例えば、開口部番号2、番号4、番号6及び番号8)及び対応の検出素子は、欠陥に対して敏感であろう。上述の変形例は、別個独立に又は組み合わせた状態で、高い検出効率、即ち、分割アパーチュアに対する二次粒子の少ない損失及び検出器に対する二次粒子の少ない損失並びに開始角度に依存する二次粒子の良好な識別を得るよう利用できる。
幾つかの実施形態によれば、検出装置をトポグラフィ測定モードと一検出チャネルモード(one-detection-channel mode)との間で切り換えることができる。100%BF像を作り出すことができる。それにより、アパーチュアプレートに信号ビームの電位へのバイアスをかけることによって減速をオフに切り換えることができる。さらに、集束レンズ301は、ビームを集束させるよう制御され、その結果、このビームが対応の中央検出素子222上で検出可能に中央アパーチュア202を完全に通過することができるようにする。さらに別の動作モードによれば、信号ビームを中央アパーチュア型開口部の中心に向かって集束させるのが良く、減速電圧をアパーチュアプレートに印加するのが良い。それによりエネルギーフィルタを提供することができ、この場合、十分に高いエネルギーを持つ信号粒子だけがアパーチュア型開口部を通過することができる。強すぎる減速作用を与えた信号粒子は、アパーチュアプレートのところで反射される。したがって、エネルギーフィルタを提供することができる。同様に、これ又上述した外側アパーチュア型開口部を利用するトポグラフィ動作モードをエネルギーフィルタ処理と組み合わせるのが良く、そのようにするために、アパーチュアプレートの減速電圧を上昇させ、ついには、開始エネルギーの最も低い信号粒子が反射されるようにする。したがって、開始エネルギーの大きな信号粒子だけがアパーチュアプレートの開口部のうちの1つを通過して対応の検出素子に向かって加速されて信号発生を可能にするよう検出される。
上述したように、本明細書において説明する実施形態としての粒子光学系200は、信号ビーム、例えばSE束を複数の小さな束に分割する。例えば、これは、中央の内側束(開始角度の低いSE)及び極性開始角度の大きい番号1、2、4、8又はそれ以上の外側束であるのが良い。それにより、各部分束を平均方位角を中心として心出しするのが良い。代表的な具体化例では、外側束の数は、2つの寸法方向におけるトポグラフィ感度を得るために少なくとも4であるのが良い。しかしながら、これよりも大きい数も又採用可能である。
本明細書において説明する実施形態によれば、束、即ち信号ビームの部分は、検出器組立体の個々の検出素子を用いて検出される。検出素子は、図2Cに示されているように隙間Gだけ空間分離されている。例えば、検出素子は、電子検出器(pinダイオード、シンチレータ等)であるのが良い。したがって、密に配置された検出素子、例えばセグメント化pinダイオード等の使用を回避することができる。それにより、能動的セグメントを分離するpinダイオード領域に関連した問題、例えば充電、信号ロス及び/又はクロストークの発生を回避することができる。セグメント化検出器の高価な且つ複雑な開発サイクルを回避することができる。さらにもう1つ、センサ設計における融通性が高くなり、その結果、迅速な製品化までの時間サイクルが得られる。
本明細書において説明する実施形態によれば、二次ビーム光学系200は、荷電粒子ビーム装置のために利用され、この場合、二次ビーム又は信号ビームは、一次ビーム、即ち、試料上で案内されている一次ビームから分離され、それにより一次ビームが試料上に当たると共に信号ビーム又は二次ビームが結果的に生じる。
一次電子ビームと二次電子ビームを分離する2つの主要な方法が存在し、これら方法の両方は、磁界を横切る移動中の電子に加わる力が電子の速度に依存するという事実を利用する。これは、ローレンツ力の法則により説明される基本的な原理である。一次電子と二次電子は、本質的に互いに逆方向に移動するので、2つの束に作用する力は、横方向磁界中を移動しているときに方向が逆になるであろう。
考えられるビーム分離器の1つは、ウィーンフィルタである。本発明の実施形態としてのウィーンフィルタ構成が図7Aに概略的に示されている。エミッタ205が一次電子ビーム130を放出し、この一次電子ビームは、ウィーン型運動量‐分散フィルタ215を通過し、そして対物レンズ10によってサンプル125上に集束される。二次電子ビーム140が対物レンズ10及びウィーン型フィルタ215を一次電子ビーム130の方向とは逆の方向に通過する。ウィーンフィルタは、一次電子ビーム130がウィーンフィルタ215によって影響を受けないで通り、他方、二次電子ビーム140がウィーンフィルタ215を通過しているときに二次電子ビーム140が曲げられて二次電子ビーム140が一次電子ビーム130に対して傾けられた状態でコラムから出るように構成されているのが良い。二次電子を一次電子ビームからいったん分離すると、二次電子ビームを例えば二次電子光学系200、即ち、荷電粒子を偏向させると共に集束させる荷電粒子ユニットによって一次電子ビームに影響を及ぼさないで集束させると共にフィルタ処理するのが良い。電子検出器220が二次電子を検出し、検出素子220の各々について、即ち、検出チャネルの各々について二次電子信号145を生じさせる。一次ビーム及び二次ビームは、試料平面上の同一の物理的空間を実際に占めるが、これらビームは、説明を分かりやすくするために図7Aでは別々の矢印で描かれている。
ウィーンフィルタは、互いに交差する電界と磁界を利用し、これら磁界の大きさは、一次ビームに加わる正味の力がゼロであり、二次ビームに加わる偏向(横方向)力が生じるように調節される。
ウィーンフィルタ215の使用の仕方について概略的な図が図7B及び図7Cに更に示されている。それにより、ウィーンフィルタ内の電界と磁界は、図7Bでは、一次荷電粒子ビームが影響を受けないように調節される。これとは対照的に、図7Cでは、電界と磁界は、二次電子粒子ビームが影響を受けないよう調節される。それにもかかわらず、両方の実施形態は、一次ビームと二次ビームの分離を利用している。かくして、集束又はフィルタ処理を一次荷電粒子ビームに影響を及ぼさないで二次荷電粒子のビームに利用することができる。さらに、図7Dに示されている別のオプションによれば、両方のビームを或る程度偏向させ、それによりビーム分離が達成されるようにすることが可能である。例えば、本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な幾つかの実施形態によれば、アクロマート(色消し)1/2(二分の一)E×Bウィーンフィルタが提供されるのが良い。それにより、一次ビームを色収差補正的に偏向させるのが良く、すると一次ビームと二次ビームが互いに分離される。
一次ビームと二次ビームを分離する別の方法は、電界を用いないで磁気偏向を用いることである。図8Aは、本発明の実施形態としての磁気ビーム分離器光学系の構成を概略的に示している。エミッタ205が一次電子ビーム130を生じさせ、この一次電子ビームは、先ず、第1の磁気偏向器415によって偏向され、その結果、一次電子ビーム130が角度をなして二次磁気偏向器420に入る。一次ビームに対する磁気ビーム分離器の影響を小さく保つためには、第1の磁気偏向器415での偏向角を10°未満に保つ必要がある。一次電子ビームは、二次磁気偏向器420を通過して試料125に方向付けられる。次に、ビーム140の二次電子が第2の磁気偏向器420によって偏向され、その結果、一次ビーム130と二次ビーム140の全分離角αは、第1の磁気偏向器415中の一次ビームの全偏向角のほぼ2倍になる(15〜20°)。この分離は、ビームベンダであるセクタ440を一次ビーム130から機械的に隔離して二次ビーム140を偏向させるのに足るほど強力に作ることができるのに十分であり、その結果、二次電子は、今や、一次ビームに対して大きな角度、即ち、30°〜100°の角度をなして移動しているようになる。
一般に、本明細書において開示する実施形態と組み合わす場合のあるセクタは、静電セクタであっても良く磁気セクタであっても良く静電と磁気の組み合わせセクタであっても良い。静電セクタに必要な空間は、磁気部分を含むセクタに必要な空間よりも狭いので、代表的には、静電セクタが用いられる。
少なくとも一寸法方向に発散度(集束)の減少を既に実施したセクタ440に続き、1組の二次電子光学系200が設けられ、この1組の二次電子光学系は、二次電子の開始角度に応じて二次電子を更に集束させると共に偏向させる。注目すべきこととして、この形態の採用の結果として、コラムがシフトされる場合があり、即ち、一次ビーム光学系の上側部分(例えば、エミッタ205及びパート1磁気偏向器415)が下側部分(例えば、パート2磁気偏向器420及び対物レンズ10)から側方にシフトされる。かくして、エミッタ205は、試料125の視線ビューをもたない。二次電子ビーム140は、二次電子光学系200の通過後、電子検出器組立体220によって検出され、それにより検出素子の各々又は検出チャネルの各々にとってそれぞれの二次電子信号145が生じる。
広角ビーム分離を達成するため、ビームベンダ又はセクタをビーム分離器の後ろに使用するのが良い。一次ビームは、完全に遮蔽され、したがって、セクタ電界及び/又は磁界の影響を受けない。セクタ440は、静電セクタであっても良く磁気セクタであっても良く又はこれら両方のセクタであっても良い。空間が検討事項である場合、静電ビームベンダが用いられる。
図8Aは、一次及び二次荷電粒子ビームに影響を及ぼす磁気偏向器で実現された特定の実施形態を示している。図8B及び図8Cは、一般に実現可能な用途を概略的に示している。これらビーム経路を他の実施形態の任意他の細部と組み合わせることができる。
磁気偏向器420が図示されている。図8Bでは、一次荷電粒子ビームは、規定された入射角で磁気偏向器に入り、そして試料に向かって偏向される。試料から放出された二次電子のビームは、磁気偏向器のその途中まで入って光コラムの方へ戻り、そして偏向されて一次荷電粒子ビームと二次荷電粒子ビームが分離されるようになる。磁気偏向器420は、一次荷電粒子ビームと二次荷電粒子ビームとの間の分離ユニットとして作用する。
図8Bに示された一般的な使用法を図8C及び図8Dに示されている互いに異なる実施形態に適用することができる。図8Cでは、電子を放出する銃(ガン)405は、試料への衝突における電子方向に対して傾けられている。放出された電子及び試料に当たる電子の平行な一次電子ビーム方向が必要な場合、別の磁気偏向器415を用いて磁気偏向器420によって導入されるビーム傾斜を補償するのが良い。この場合も又、これら概略的なビーム経路を荷電粒子光学系の別の細部を示す任意他の実施形態を組み合わせることができる。
図9A及び図9Bを参照して別の実施形態について説明する。図9Aは、セクタ440を示している。セクタ440は、電子ビームを曲げるのに役立つ負に帯電したU字形曲がり部535及び正に帯電したU字形曲がり部525を有している。オプションとして、1対のセクタ側板が設けられるのが良い。それにより、電子ビームは、一寸法方向に集束され、更に高エネルギー状態に維持され、それにより高速検出に影響を及ぼす場合のある飛行時間効果が回避される。第2の寸法方向における集束は、四極素子545内で生じる。それにより、セクタ440と四極素子は、二重集束セクタユニットを形成する。さらに、二重集束を得るために四極素子の代わりにシリンダーレンズを用いることが可能な場合がある。
電子ビームは、本明細書において説明するように二次ビーム光学系200に入る。しかる後、高速でありしかも開始角度と相関関係をなすトポグラフィ情報を含む検出を検出器組立体220によって実施することができる。
図9Bの別の実施形態では、半球形セクタ570が用いられている。半球形に鑑みて、このセクタに入った電子ビームは、両方の寸法方向に集束される。かくして、二重集束セクタユニット570には、必要な追加の集束ユニットはない。二次粒子の結果として、上述したように信号が発生する。
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な更に別の実施形態によれば、図9Bは、電圧供給源992,994,996を更に示している。電圧供給源992は、アパーチュアプレート201にバイアスをかけるためにアパーチュアプレート201に接続されている。それにより、上述したような減速電界を提供することができる。代表的な例によれば、減速電界は、約20keV〜30keVの粒子エネルギーの減少分に対応することができる。電圧供給源994は、二次粒子を検出素子222に向かって加速するために検出素子222に接続されている。それにより、この場合も又集束が提供される。加速電界は、約20keV〜30keVの粒子エネルギーの増大分に対応することができる。
別の実施形態(図示せず)によれば、二重集束セクタユニット(図4Aでは符号440,545で示され又は図9Bでは符号570で示されている)の集束を追加の集束ユニットを用いて支援するのが良い。かくして、二重集束セクタユニットは、追加のレンズ、例えばアインゼル(Einzel)レンズを更に含むのが良い。この追加のレンズは又、セクタのピントをフィルタ、例えばアパーチュアプレートの中央開口部内に形成された電位サドルの位置に対応した位置に動かすよう利用できる。
次に、図9Cを参照して別の観点について説明するが、一実施形態としての検出光学系が示されている。図9Cは、偏向角度増大ユニットとして働くセクタ440を示している。例えば3°〜15°の角度だけ光軸から既に隔てられた二次電子ビームは、検出器組立体220に向かって更に偏向される。
一般に、静電ビームベンダは、円筒形か半球形かのいずれかである場合がある。円筒形形式には、ビームを曲げると、二次電子が一方の平面内に集束され、他方の平面内には集束されないという欠点がある。半球形ビームベンダは、二次ビームを両方の平面内に集束させる。円筒形セクタを横方向平面内の集束を達成するためにバイアスがかけられる側部プレートと共に使用するのが良く、それにより、半球形セクタとほぼ同じ集束特性を生じる。
図9Cは、かかる円筒形セクタの略図である。側部プレート(図示せず)をセクタ電極525,535相互間の隙間の前及び後に位置決めするのが良い(この図の透視図に関して)。代表的な実施形態によれば、信号ビームの第1のクロスオーバが本質的に対物レンズ10内に又はその直後に提供される。信号ビームの第2のクロスオーバが、代表的には、セクタ440の後ろに提供される。第3のクロスオーバが集束レンズ301の集束行為によって動作モード(これについては、例えば図3Aを参照されたい)に応じて提供されるのが良い。
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な更に別の実施形態によれば、粒子光学系200は、図9Cに示されているような別の素子を含むのが良い。特に、EBI用途及び一次電子ビームの走査が検出に影響を及ぼす広い視野、例えば、50μm×50μm以上の走査面積を有する他の用途の場合、二次光学系200のために別の光学素子を利用するのが良い。それにより、粒子光学系は、信号ビームがビーム分割アパーチュアプレート201に入る前に信号ビーム、例えばSE束を整形することができる。本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な代表的な実施形態によれば、粒子光学系は、集束レンズ301及び/又は1つ又は2つ以上の偏向組立体901/903を含むのが良い。
幾つかの実施形態によれば、集束レンズが設けられるのが良い。集束レンズは、信号ビームを中央検出素子上に集束させて明視野像を生じさせる。変形例として、集束レンズは、信号ビームを中央アパーチュア内の電位サドル上に集束させ、他方、アパーチュアプレートには、エネルギーフィルタ処理像を発生させるためにバイアス電圧がかけられる。さらに別の変形例によれば、集束レンズ301は、信号ビームを末広がりにすることができ又は信号ビームの発散度を調節して信号ビームの直径を減速アパーチュアプレートの直径に合わせて調節するようにすることができる。したがって、集束レンズを用いると、互いに異なる動作モード、即ち画像化モードを切り換えることができる。
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な更に別の実施形態によれば、粒子光学系200は、1つ又は2つ以上の偏向組立体を更に含むのが良い。それにより、偏向組立体901,903は、信号ビーム、例えばSE束をアパーチュアプレートに位置合わせするよう制御可能である。追加的に又は代替的に、偏向組立体は、信号ビームをデスキャン(de-scan )するために制御できる。即ち、試料に当たった際に信号ビームを発生させる一次ビームの走査の結果として生じる信号ビームの運動を補償するために偏向(デスキャン又は脱走査、アンチスキャン又は走査防止(anti-scan )、又はカウンタースキャン又は対抗走査(counter-scan))が行われる。
代表的な実施形態によれば、走査防止を特に広い視野(FOV)を備えたシステムで利用するのが良い。例えば100μm×100μm以上の広いFOVの場合、一次ビームの走査によっても、信号ビームが偏向される。信号ビームのこの偏向を補償しない場合、かかる偏向の結果として、検出器上での信号ビームの運動が生じ、このことは、検出結果が一様ではなく、FOV内のビーム位置で決まることを意味する。かかる運動は、信号ビームに影響を及ぼす粒子光学系全体(例えば、対物レンズ、ビームスプリッタ、ビームベンダ及び集束レンズを含む)が像走査運動を検出素子上に拡大する場合に、特に顕著であろう。
代表的な実施形態によれば、偏向組立体901,903の各々に関し、偏向電圧に接続可能な少なくとも4枚で1組をなす偏向プレートを設けるのが良い。偏向電圧を一次ビームの像走査と同期させて増幅させるのが良く且つ/或いは回転させて一次ビーム走査により生じた信号ビームの偏向がセンサ平面内における信号ビームの運動を打ち消すようにするのが良い。
幾つかの実施形態によれば、偏向組立体、例えばデスキャン偏向器を中央開口部の中心上に固定されたSE束の光軸をウェーハ上のPEビーム位置とは無関係に保つよう、示唆された検出器組立体のすぐ前に配置するのが良い。しかしながら、代表的な例によれば、デスキャンも又、二次粒子発生後にできるだけ早く行われるのが良い。これにより、信号ビームに関して一定の軸線が確立され、この軸線は、かくして、信号ビームの集束素子に容易に位置合わせ可能である。したがって、信号ビームが集束素子の軸外れ状態で移動している間における信号ビームの集束に起因して生じる信号ビームの収差を回避することができる。
図9Cに示されているように、第1の偏向組立体901は、信号ビームをデスキャンして信号ビームを集束レンズ301に位置合わせすることができる。第1の偏向組立体901の偏向により、信号ビームの光軸に対するビーム傾きが導入される場合がある。第2の偏向組立体903によってこのビーム傾きを補償することができる。第2の偏向組立体は、アパーチュアプレート201上への位置合わせ具合を一段と向上させることができる。
二次電子ビーム140は、対物レンズ10に設けられた開口部410及びプレート520に設けられた開口部を通過してセクタ440に入る。セクタ440は、二次電子ビーム405を曲げるのに役立つ負に帯電したU字形曲がり部535及び正に帯電したU字形曲がり部525を有する。さらに、1対のセクタ側板が設けられている。それにより、二次電子ビーム405は、これがSE位置合わせ四極素子を通っているときに位置合わせされ、これがSE集束レンズ450を通っているときに集束される。次に、二次電子ビーム405は、接地プレート455に設けられた開口部及びSE光学系200に設けられた開口部を通過して電子検出器組立体220に至る。
側部プレートが設けられていない円筒形セクタの欠点は、このセクタがSEビームを一方の平面(この紙面の上下)に集束させ、他方の平面(紙面に出入りする方向)には集束させないということにある。このように集束しないという事態は、円筒形セクタの側部に電極を配置してこの平面内での集束作用を強制的に実施することによって補償できる。セクタによる一様な集束作用に関して2つの動因が存在する。一方の動因は、高速検出器上に小さなスポットを設けることであり、他方の動因は、フィルタが二次ビームのエネルギーと方向の両方に対して敏感なので良好なエネルギーフィルタ処理を可能にすることにある。
かくして、フィルタは、二次電子のほぼ焦点に配置されるべきである。
図10は、本発明の実施形態としてのウェーハ検査システム900の略図であり、このウェーハ検査システムは、図2〜図6を参照して上述した電子光学サブシステムを採用している。電子ビームコラム902がe‐ビーム(電子ビーム)源904、磁気ビーム分離器906及び一次ビーム910をx‐yステージ915上に支持されたウェーハ912に当てる対物レンズ908を収容している。ウェーハ912からの二次電子がビーム分離器906、セクタ914及び集束・偏向素子200を通過して検出器220に至る。検出器220から信号は、画像化エレクトロニクス920に送られる。
ウェーハ912及びステージ915は、隔離フレーム924上に支持された真空チャンバ922内に納められている。真空ポンプ926が動作中、チャンバ922及びコラム902内に適当な真空を維持する。ウェーハ912は、ウェーハハンドラサブシステム928によってチャンバ922内に配置されたりこれから取り出されたりする。
ウェーハ検査システム900は、例えば制御プロセッサ、画像プロセッサ及び画像メモリを含むコンピュータシステム930によって制御される。コンピュータシステム930は、入力/出力装置934、例えばキーボード及びポインティング装置又はヒューマンインタラクション(人との対話)を可能にする他の適当な装置及びディスプレイ936を含むワークステーション932と通信状態にある。制御プロセッサ930は、バス938を介して制御回路、例えば一次電子ビーム910を調節するPEビーム制御部940、検出器220に当たる適当な二次電子ビームを生じさせるためにコラム902の集束・偏向素子を制御するSE光学系制御部942、ウェーハ912に対する一次ビーム910の当て具合を制御するPE位置合わせ・偏向制御部944、真空ポンプ926を制御する真空ポンプ制御部946、ウェーハ電圧制御部948、ステージ制御部950及びハンドラ制御部952と通信する。制御プロセッサ930は又、記憶、処理及び画像分析のためにバス938を介して画像化エレクトロニクス920から画像化データを受け取る。
単一コラムシステムで可能なスループットよりも大きなスループットを提供するために、マルチコラムシステムも又想定される。図11は、ウェーハ912の多数の領域の同時検査を可能にするためにe‐ビームコラム1010,1015,1020の列1005を含むマルチコラムe‐ビームウェーハ検査システム1000を概略的に示している。
図11には、3つのサブユニットを含むマルチコラム装置が示されている。当業者には理解されるように、任意適当な他の数を利用することができる。例えば、5本、10本又は15本の電子ビームの列をなした状態で配列することができる。
さらに、数個の列を隣接して位置決めすることが可能である。それにより、試料に当たる電子ビームのアレイが実現される。分離された荷電粒子ビームにとって十分な空間を提供するため、例えば、2つの列を代表的には互いに隣接して配列するのが良い。それにもかかわらず、空間上の制約がない場合、3つ、5つ又は任意他の適当な数の列も又利用することができる。
数個のサブコラムを、一線をなして、アレイをなして又は他のパターンをなして配置するため、単一ビームコラムの場合、通常、単一電子ビームに個々に作用するコンポーネントのうちの幾つかを組み合わせるのが良い。かくして、1つのエミッタアレイは、全ての電子ビームを放出し又は1つの対物レンズがマルチビーム装置の全てのビームを集束させる。以下に例示が与えられている。
多数のビームをアレイ状に配置する別の実施形態が図12に示されている。この図では、各ビームについて追加的にマルチアパーチュアが設けられている。かくして、偏向器を用いて互いに異なるアパーチュアを選択するのが良い。本出願人と同一の譲受人に譲渡された欧州特許出願第03006716号明細書に開示されているようなマルチアパーチュアのアパーチュア型開口部の選択に関する追加の詳細も又利用するのが良い。
装置130は、ハウジング131及び試料チャンバ135を有している。このハウジング並びに試料チャンバは、真空ポートを介して排気されるのが良い。試料チャンバ内では、試料13は、試料ステージ136上に置かれ、この試料ステージは、試料を2つの方向に別個独立に動かすことができる。試料の制御のため、運動制御ユニット136′が試料ステージ136に連結されている。4本の電子ビーム12の各々がそれ自体の光軸11を有する。ビームは、エミッタアレイ132によって放出される。エミッタアレイは、制御ユニット132′によって制御され、即ち、ビーム電流、アノード電位及び各電子ビームのための試料13に対する走査と電子ビームの考えられる同期がそれぞれ制御される。各電子ビームのためのアインゼルレンズモジュールを含むマルチレンズシステム(系)133が4本の荷電粒子ビームのためのコンデンサレンズとして用いられる。レンズシステム133は、制御ユニット133′によって制御される。制御ユニットを共通制御部139に接続するのが良い。
一般に、図12の実施形態を参照するまでもなく、単一ビーム又はマルチビームコラムが代表的には各一次電子ビームのための少なくとも2つの集束素子を有する。複数枚のレンズ(又は少なくとも1枚のレンズ)が電子ビームをレンズ相互間の高い電位(ビームブースト電位)状態にあるようにさせることができる浸漬レンズであれば有利である。さらに、一変形例によれば、放出されたビームを付形するのに組み合わせ型銃‐コンデンサレンズが好ましい。
電子ビームを試料13上に集束させるため、全ての電子ビームについて磁気静電複合レンズ134が用いられる。それにより、磁気サブレンズは、共通励起コイルを共有し、各電子ビームに関し、静電サブレンズが複合レンズ内に組み込まれる。磁気静電複合レンズのコンポーネントは、制御ユニット134′によって制御される。
図12では、静電レンズ133及び磁気静電複合レンズ134が例示的に用いられている。これとは異なり、2つの静電レンズを用いることができ、即ち、コンデンサレンズ及び対物レンズとして用いることができる。変形例として、2つの磁気静電複合レンズを用いることができ、即ち、コンデンサレンズ及び対物レンズとして用いることができる。しかしながら、コンデンサレンズが必要なく、たった1枚のマルチビームレンズを用いることも又可能である。それにより、静電レンズ又は磁気静電複合レンズを用いることができる。さらに、近接電極82及びそれぞれの制御ユニット82′が提供され、それにより、4本の電子ビームの各々に対応した抽出電界が実現される。加うるに、各電子ビーム12に関し、ビームブースト電位を提供する電極137が提供される。上述のコンポーネントのほかに、偏向スイッチシステムが各電子ビームについて設けられる。
図8A〜図8Dに示された磁気偏向システムとは対照的に、4つの偏向器の組み合わせは、エミッタサブユニットの光軸と共通した対物レンズサブユニットの光軸を見込んでいる。第1の偏向ステージ14は、電子ビーム12をアパーチュアユニット41内で用いられているアパーチュアの種類に応じて、左又は右に偏向させる。各電子ビームに関し、アパーチュアユニット41は、大電流測定モードについては大きなアパーチュアを含み、高分解能測定モードのために小さなアパーチュアを含む。
二次電子は、各電子ビームについて設けられたセクタ440によって一次電子ビームから分離される。図12の略図に記載されたビーム分離は、図の平面内に示されている。これは、図面を分かりやすくするためにのみ行われている。一般に、ビーム分離及びかくして検出ユニットの配置状態は又、図の平面に直交した寸法方向に実現できる。
二次電子の検出のため、集束・偏向光学系200が設けられている。全ての検出ユニットは、コントローラ16′/44′によって制御され、これに対し、各偏向ステージ14は、制御ユニット14′によって制御される。
上述の内容は、本発明の実施形態に関するが、本発明の基本的な範囲から逸脱することなく本発明の他の実施形態及び別の実施形態を想到でき、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲の記載に基づいて定められる。