JP5804428B2 - 切開用手術器械 - Google Patents

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Description

本発明は、狭窄性腱鞘炎に対する腱鞘切開術、及びデュプイトラン拘縮に対する腱膜切開術を行う切開用手術器械に関するものである。
狭窄性腱鞘炎(以下弾撥指と称す)の病態は、手指MP関節掌側に存在する靭帯性腱鞘(以下腱鞘と称す)である“A1 pulley”が肥厚して手指屈筋腱(以下腱と称す)を絞扼する事により、腱と腱鞘との滑動が妨げられる為に指が物理的に屈伸しにくくなり、痛みが発生するものである。
手術的治療を行う際には、腱の滑動の改善を目的として肥厚したA1 pulleyを長軸方向に切開して腱への絞扼を解除する。絞扼が解除されることにより、速やかに手指の屈伸と痛みの改善が得られることが多い。従来の弾撥指に対する手術では、手掌の皮膚を約2cm切開して腱鞘および腱を直視しながらA1 pulleyを切開する開放的腱鞘切開術が一般的であり、この術式では、皮膚切開部の組織の瘢痕化による痛みや手指の握りにくさなどの症状といった問題や、抜糸までの期間に手を用いた日常生活動作が制限される等の問題があった。
また、デュプイトラン拘縮の病態は、手掌から手指の皮下に存在する手掌腱膜(以下腱膜と称す)が異常に硬結化し短縮するために、手指の著しい伸展障害を生じるものである。
従来のデュプイトラン拘縮における手術方法として、手掌から手指にかけて広範囲に切開を行い、異常な腱膜を切除する腱膜切除術が一般的である。しかし、この方法は侵襲が大きく、手術操作に要求される技術的な課題や皮膚切開部の創傷治癒についての問題がある。
弾発指手術の比較的大きな皮膚切開の侵襲への改善策として、数mm程度の小さな皮膚切開より専用の手術器械や単回使用注射用針等を挿入し、盲目的にA1 pulleyを切開する経皮的手術と呼ばれる方法がある。
また、デュプイトラン拘縮に対しても針腱膜切開術という方法が存在する。この方法は皮下に存在する異常に硬結化した腱膜を手掌から刺入した単回使用注射用針等を用いて盲目的に切断する事により手指の伸展障害を改善させる事を目的に行われる。
しかし、これらの盲目的操作による手術方法は、手指の神経・血管や腱などの組織を針によって損傷する危険性が比較的高い。
以下、従来実施されてきた経皮的腱鞘切開手術に用いる手術器械について図11を用いて説明する。
特許文献1に示される腱鞘切開刀は、開放的手術と経皮的手術の両方で使用できるとされる。腱鞘切開刀はグリップ101と、グリップに取り付けたシャフト102と、シャフト102の先端部の側面に設けた刃部103と、刃部の下部から刃部の突出方向に延設したガイド部104とを有し、刃部103の尖端に設けた刃を、ガイド部104の上面から刃部103の立ち上がり部分については円弧状に形成し、この円弧状に形成した立ち上がり部分から上方の、刃の中間部分と刃の上部部分については前記シャフト102の軸線方向と略平行となる直線的に形成し、前述刃部103の上部を、前記シャフト102の側面から突出する段差形状に形成してある。この腱鞘切開刀を皮膚の中に挿入して腱鞘の切開を行う。
また、別の経皮的腱鞘切開手術に用いる手術器械について図12を用いて説明する。
非特許文献1に示される切開刀は、皮膚の中に挿入する刃部105の先端が細く、低侵襲に腱を切開するための特殊なメスの刃部を有し、持ち手106を持つ術者の手の感覚と経験によって、盲目的に腱鞘の切開を行う。
特許第3736877号公報
安永 博 薯、「ばね指に対する経皮的腱鞘切開刀の考案」、別冊整形外科21、南江堂出版、1992年発行、p.266〜269
前記した各手術器械等を用いた腱鞘切開術及び腱膜切開術は、長年実施されてきたが、以下のような課題がある。
(1)従来の腱鞘及び腱膜の手術的治療では、手の皮膚および皮下組織を十分な視野が得られるように切開して治療部を直視しながら行うが、ある程度の幅の切開を伴うことから、皮膚切開部の組織の瘢痕化による痛みや手指の握りにくさなどの症状といった問題や、抜糸までの期間に手を用いた日常生活動作が制限される等の問題がある。
(2)一部で実施されている経皮的手術では、盲目的操作による手術となるため、手術に際して術者の経験と指先の感覚に頼る部分が多く、手術操作上において、切開に用いている手術器械が誤って腱や神経・血管などの組織を損傷するリスクが高い。
(3)既存の経皮的腱鞘切開術においてガイド構造を有する手術器械が存在するが、この既存のガイド構造を有する手術器械は、腱鞘内に挿入するための器具に同時に腱鞘の切開を行うための刃が設置されており、腱鞘の内部かつ腱の表面にガイド部を正確に入れることが手術手技上必須である。ガイド部が腱に向かって深く入りすぎることによって刃の部分で腱を損傷する可能性がある。あるいは病的に肥厚した腱鞘内にガイド部が入りにくい場合には、腱鞘内への手術器械の挿入を試みているうちに刃が腱や腱鞘と並走する神経・血管を傷つける危険性がある。また、切開すべき絞扼をおこしている腱鞘の範囲が広い際には、一回の切開手技により十分に弾発現象が改善されない場合が有る。この際、より遠い部位にまで再度盲目的に器具を挿入する必要が有り手技の危険性は増す。
(4)手術部位の視界を確保するために術者の他に助手や手術器械が必要である。
(5)また、経皮的手術の上記の危険性に関する理由とともに、切開手術を行う場合には助手および手術設備環境が必要とされ、小規模の診療所で手術を行うことは困難であり、手術を行うことができる施設は限定されている。
本発明は前記従来の課題を解決するもので、腱や神経・血管など組織を損傷するリスクが少なく低侵襲で安全かつ容易に手術ができる切開用手術器械を提供することを目的としたものである。
上記目的を達成するため本発明の切開用手術器械は、治療対象近傍の皮膚表面を予め切開した皮膚切開部から体内に挿入され、腱鞘及び腱膜の切開部分を受ける切開受け手段と、前記切開受け手段を体外で固定する案内固定手段と、前記案内固定手段によるガイドに沿って切開する単回使用注射用針等切開手段(以下切開手段と称す)とからなり、前記切開手段を前記切開受け手段に押し当て走行させることにより腱鞘及び腱膜を切開する構成としてある。
この切開用手術器械によれば治療対象近傍の皮膚表面を予め切開した皮膚切開部から切開受け手段の切開台部を体内の病変部下に挿入し、その後、切開受け手段を案内固定手段で固定し、案内固定手段によるスリットから切開手段を体内に穿刺し、前記切開手段を切開受け手段の切開台部に当接するようにし、その後、切開受け手段に切開手段を走行して腱鞘及び腱膜を切開する。
この切開用手術器械によれば、皮膚や皮下組織を大きく切開せず、安全に腱鞘及び腱膜の切開が可能であり、経皮的で侵襲が極めて少ない手術が実現できるという効果を有する。
また、ここで本発明の切開用手術器械は、更に治療対象近傍の皮膚表面を予め切開した皮膚切開部から体内に挿入し、治療部位近傍までの経路を作成する一部屈曲した組織穿孔手段を備えた構成とすることもできる。
これにより、切開受け手段を治療部位近傍の腱や神経・血管など組織を損傷することなく、容易に前記経路から体内へ挿入することができるようになる。
また、更に本発明の切開用手術器械は、前記腱鞘及び腱膜を切開する切開手段を保持する切開手段用保持手段を備えた構成とすることもできる。
これにより、切開手段用保持手段を把持し、切開手段に十分な力を加えることができるようになり、腱鞘及び腱膜の切開が容易になる。
また、本発明の切開用手術器械は、治療対象近傍の皮膚表面を予め切開した皮膚切開部から、体内に挿入され、腱鞘及び腱膜の切開のガイドとなるガイド溝付の切開台部を備えた切開受け手段と、前記切開受け手段を固定するとともに、前記切開受け手段のガイド溝と対応するスリット付の腕部を備えた案内固定手段とからなり、前記案内固定手段のスリットから切開手段を体内に穿刺して前記切開受け手段のガイド溝に押し当て当該ガイド溝とスリットに沿って切開手段を走行させることにより腱鞘及び腱膜を切開する構成としてある。
この切開用手術器械によれば、皮膚や皮下組織を大きく切開せず、安全に腱鞘及び腱膜の切開が可能であり、切開手段がぶれることなく切開できる。そして、経皮的で侵襲が極めて少ない手術が実現できるという効果を有する。
また、本発明の切開用手術器械に用いる切開受け手段は、持ち手部と、持ち手部先端に形成された切開台部とからなり、前記切開台部はその長手方向に沿ってガイド溝を有するとともに、ガイド溝の先端には陥凹部を有する構成としてある。
これにより、腱鞘及び腱膜の切開時に切開手段の先端をガイド溝に押し当てて当該ガイド溝に沿って走行させることにより正確に腱鞘及び腱膜の切開ができるとともに、切開手段の先端が陥凹部に落ち込むときの感触によって切開を終えたことを知ることができ、治療部位近傍の腱や神経・血管など組織を損傷するリスクを大幅に低減できる。
また、本発明の切開用手術器械に用いる切開受け手段の持ち手部と案内固定手段の腕部には、案内固定手段に固定した切開受け手段の切開台部位置を特定付ける相互に同期した目盛りを設けてある。
これにより、案内固定手段に対して切開受け手段がどの位置にあるかが明確で、治療部位と案内固定手段と切開受け手段の相対的な関係が把握でき、手術を正確に行うことができる。
また、本発明の切開用手術器械に用いる案内固定手段は、基台部と、基台部から延設した腕部とからなり、基台部は切開受け手段の持ち手部を保持固定する構造を有するとともに、腕部は基台部に保持固定した切開受け手段の切開台部と対向するように設け、かつ当該腕部には切開受け手段の切開台部のガイド溝と対向するスリットを設けた構成としてある。
これにより、治療対象となる部位を切開受け手段と案内固定手段で強固に保持して切開手術を安定化させることができると同時に、腕部のスリットから切開手段を挿入し体内に穿刺し、その先端を切開受け手段切開台部のガイド溝に押し当てて切開手段を走行させる際に、切開手段はスリット及びガイド溝に案内されて左右にぶれることなく安定走行させることができ、容易かつ正確な切開が可能になる。
また、本発明の案内固定手段は基台部と支柱部との間の腕部下方は逃がし空間としてある。これにより、案内固定手段設置時に腕部が皮膚と離れて設置されることにより、スリットを通して皮膚に穿刺した切開手段を術者が観察しやすくすると同時に、肉抜き部の皮膚と皮下組織が動きやすくなる事によって、切開手段が一度の皮膚穿刺で動ける範囲を広くすることに寄与している。
また、本発明の切開用手術器械に用いる組織穿孔手段は、持ち手部と、持ち手部先端に形成され、刃部を持たずに人体内に挿入して腱膜や腱鞘を穿孔することが可能であり、その先端は、先端部と先端部より幅広の拡張部とを有するとともに、持ち手部に対し滑らかに屈曲し、その底面部は円弧状となる構成としてある。
これにより、腱の表面等を傷つけることなく腱と平行に滑膜性腱鞘内に挿入でき、しかも挿入度合いを先端部と拡張部にかかる圧感触によって確認しつつ、切開受け手段の挿入路を形成し、更に生体内に深く刺しすぎるようなことなく標的部位の経路を作成することができる。
また、本発明の切開用手術器械に用いる切開手段用保持手段は、切開手段を装着保持する嵌合部を備えた軸部と、この軸部を固定または揺動自在に支持する本体部と、前記本体部に対し前記軸部を緩締するボルト等の締結手段とからなる構成としてある。
これにより、当該切開手段を軸部に装着して使用することにより、切開手段に十分な力を加えることができて切開が容易に行えるようになるとともに、切開手段を取り替えて使用することにより常に良好な切削性能で切開ができ、しかも、締結手段を緩めて軸部を揺動自在とすることによって、切開手段の嵌合部への装着を容易にすることができる。
本発明の切開用手術器械は以下のような効果を有する。
今までの経皮的な盲目的手術のように、勘と経験に大きく頼って手術するのではなく、また、器械を用いた手術であっても、切開する部分に対して他の組織を傷つけるようなことはなく、確実な手術ができる器械として提供することができる。以下、詳述する。
(1)皮膚や皮下組織を大きく切開せず、腱鞘及び腱膜の切開が可能であり、侵襲が極めて少ない手術が実現できるという効果を有する。それにより、術後生じる皮膚や皮下組織の瘢痕等の障害も最小限に予防することができる。すなわち、術後の皮膚縫合を必要としない場合も多く、抜糸までの縫合創管理による日常生活動作制限も軽減し、患者の生活の質の向上に寄与できる。
(2)体内に切開のガイドとして挿入する切開受け手段と、腱鞘及び腱膜の切開を行う為の切開手段、および切開を行う為の切開手段の走行範囲を制限する為の体外の案内固定手段とを組み合わせて用いるという構造により、病変部周囲の重要な組織を損傷する可能性を排除し、従来の経皮的手術で不十分であった周囲組織への安全性が確保される。
(3)弾発指に対して経皮的腱鞘切開を行う際には、既存の専用手術器械と異なり、腱鞘内に挿入するための切開受け手段には刃がついていない為、腱や周囲組織を傷つけず、より安全に腱鞘内にガイドとして挿入する事が出来る。腱鞘を切開するための挿入部となる皮膚切開部は、病変部位から多少離れていても構造上問題なく、広範囲に腱鞘の狭窄が及んでいる場合や、一回の腱鞘切開手術で絞扼解除が不十分であった場合などでも安全に腱鞘を切開する事ができる。
(4)また従来の開放的手術では、手術に対して術者の他に手術部位の視野を確保するための助手や器具が必要であったが、本発明の切開用手術器械を使用することにより、一人での手術操作が可能である。
(5)設備環境の術前準備も簡略で、診療所等の小規模医療施設でも導入が可能である。
本発明の実施の形態1における切開用手術器械の使用状態を示す概略側面図 本発明の切開用手術器械の組織穿孔手段の斜視図 本発明の切開用手術器械の切開受け手段の斜視図 本発明の切開用手術器械の案内固定手段の斜視図 本発明の切開用手術器械の切開手段用保持手段に切開手段を嵌合した正面図 本発明の図2に示す組織穿孔手段の使用方法を説明するための病態説明図 本発明の切開用手術器械の使用例を示す概略断面図 本発明の切開用手術器械の手掌表面の切開位置を説明するための病態説明図 本発明の実施の形態2における切開用手術器械の使用方法を説明するための病態説明図 本発明の切開用手術器械の他の実施例における切開受け手段の使用方法を説明するための病態説明図 従来例の一実施例を示す説明図 従来例の一実施例を示す説明図
以下に、本発明の実施例を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
実施の形態1
実施の形態1では、弾撥指における本発明の切開用手術器械1の実施例を元に説明する。
図1は本発明の実施の形態1における切開用手術器械の使用状態を示す概略側面図、図2は同切開用手術器械の組織穿孔手段の斜視図、図3は同切開用手術器械の切開受け手段の斜視図、図4は同切開用手術器械の案内固定手段の斜視図、図5は切開用手術器械の切開手段用保持手段に切開手段を嵌合した正面図、図6は同図2に示す組織穿孔手段の使用方法を説明するための病態説明図、図7は同切開用手術器械の使用例を示す概略断面図、図8は同切開用手術器械の手掌表面の切開位置を説明するための病態説明図である。
図1において、1は本発明の切開用手術器械を示し、この切開用手術器械1は、ここでの治療対象の靱帯性腱鞘38(以下腱鞘と称す)内に挿入され腱鞘38内に固定される事で腱鞘38の位置を示すと同時に腱鞘38を支えるガイド機能を有した切開受け手段2と、前記切開受け手段2を保持固定して切開が行われる範囲を制限するガイドとしての機能を有する案内固定手段3と、前記案内固定手段3によるガイドによって腱鞘38を切開する切開手段28とからなる。前記案内固定手段3には前記切開手段28を挿入するためのスリット18が設けてある。ここでは案内固定手段3のガイド機能としてスリット18で説明するが、スリット18以外の孔のようなものや、凹部を形成して一側面を定規のような使い方として構成しても良い。なお、ここではこの切開手段28を装着する切開手段用保持手段4とともに説明する。更に前記切開受け手段2を腱鞘38内に挿入するための手術経路を作成する組織穿孔手段5(図2参照)を用いた場合の構成で説明する。
図2は組織穿孔手段5を示す。図2において、6は予め切開された皮膚切開部43(図8参照)から挿入し、滑膜性腱鞘34を穿孔するための比較的細い先端を有する先端部、7は前記先端部6が完全に滑膜性腱鞘34内に入ったあとに滑膜性腱鞘34の穿孔部を拡張する為の拡張部、8は前記先端部6および前記拡張部7をその先端部分に有する平行部で、R形状に屈曲し、その底面部は円弧状にして丸みを帯びた角筒形状となっている。この手術では、この平行部8は先端部6で手指屈筋腱33(以下腱と称す)周囲に存在する滑膜性腱鞘34を穿孔した後に、屈曲を利用して挿入していくことで、先端部6が腱33と平行に滑膜性腱鞘34内に挿入され腱33の表面を傷つけることのない構造となっている。9は前記平行部8に連なる持ち手部で、上面を切断された断面円形状としてあり、上面がカットされている事により、術者は持ち手部9を保持しやすく、平行部8を滑膜性腱鞘34内に挿入した後も先端部6が向いている方向を認識できるようになっている。
図3は切開受け手段2を示す。図3において、10は切開受け手段2の先端部で、前記組織穿孔手段5の先端部6に比べて尖端が鈍で、生体内への挿入時に組織を傷つけにくい構造を有する。11は前記先端部10が形成された切開台部で、組織穿孔手段5によって形成された手術経路に円滑に挿入できるよう、幅は組織穿孔手段5の挿入部8よりやや狭く設計されている。切開台部11は、その上面に浅いガイド溝11aが形成してあり、このガイド溝11aの内側を切開に用いる切開手段28の先端31を走行させるようになっている。12は前記ガイド溝11aの尖端側に形成した陥凹部で、ガイド溝11aよりも深い窪みを成し、前記ガイド溝11aを走行する切開手段28がガイド溝11aの最尖端に達したことを術者に認識させるものである。13は組織穿孔手段5の平行部8と同形状のRに屈曲している屈曲部。14は屈曲部13を介して切開台部11に連なる持ち手部で、組織穿孔手段5の持ち手部9より短く、敢えて力を入れて把持する事が難しい構造を有している。持ち手部14はその上面に目盛り14aが刻印してあり、案内固定手段3に連結保持させた時に切開受け手段2の先端部10が皮下にどれだけの深さで挿入されているかが目視で分かるようになっている。15は案内固定手段3との連結を容易にするために角度をつけて絞った基端部である。
切開受け手段2は、組織穿孔手段5によって確保された手術経路に、組織穿孔手段5と同位置の皮膚切開部43から挿入する手術器械である。組織穿孔手段5と切開受け手段2は同角度に屈曲しており、共通の動作で操作しやすい利点がある。切開受け手段2は複数の長さのものがあり、皮膚切開部43から切開すべき腱鞘又は腱膜までの距離によって、手術器械の長さを変えて手術を行うことが可能である。
図4は案内固定手段3を示す。図4において、16は支柱部。17は支柱部16をその先端部に有する腕部で、基台部19から延設してある。基台部19は、手術の際に邪魔にならない範囲で、十分広い底面積を有し、案内固定手段3が不安定になる事を防止するように構成してある。20は基台部19にその上面から底面まで貫通して設けた斜穴部で、その下部開口より前記切開受け手段2の持ち手部14をその基端部15から挿入し摺動させて所定位置に保持する。22は前記斜穴部20に挿入した切開受け手段2の持ち手部14を固定するローレットノブ22で、締結することによってその先端が切開受け手段2の持ち手部14に圧接してこれを固定保持する。
ここで、前記腕部17は、前記基台部19に切開受け手段2を固定保持した際、切開受け手段2の切開台部11の直上に位置する構成となっており、その長手方向には前記スリット18が形成してある。このスリット18は切開用の切開手段28よりわずかに太い長孔で構成してあり、基台部19に固定保持した切開受け手段2のガイド溝11aの直上に位置する。切開手段28はスリット18内で円滑に可動すると同時に、腕部17の厚みがスリット18部以外の方向に切開手段28が向く事を防止している。この構造により切開受け手段2を案内固定手段3に結合させた状態では、スリット18の上方より挿入した切開手段28が切開受け手段2の側方へ逸脱しないようになっている。17aはスリット18に沿って腕部17の上表面に形成した目盛り17aで、前記切開受け手段2の持ち手部14に形成した目盛り14aと同期付けてあり、基台部19に固定保持した切開受け手段2の切開台部11先端の皮下部位置を示すようになっている。また腕部17先端の支柱部16は皮膚37と接触するための十分広い底面積を有する事により、案内固定手段3の安定に寄与している。また切開受け手段2の切開台部11先端が過度に深く生体内に入らないようにガイドする機能も併せ持ち、かつ、基台部19との間に皮膚接地面からの逃がし空間としての肉抜き部21を形成している。肉抜き部21は、案内固定手段3設置時に腕部17が皮膚37と離れて設置されることにより、スリット18から挿入して皮膚37に穿刺した切開手段28を術者が観察しやすくすると同時に、肉抜き部21の皮膚37と皮下組織36が動きやすくなる事によって、切開手段28が一度の皮膚穿刺で動ける範囲を広くすることに寄与している。
図5は切開手段用保持手段4に切開手段28を嵌合させた状態を示す。図5において、23はここでは一般的な管理医療機器の単回使用注射用針を切開手段28として示し、切開手段28の針基29と嵌合するための規格角度を有する嵌合部で、軸部26に一体形成してある。25は前記軸部26を固定保持する腕部で、左側上部にはストリッパボルト27が通る貫通穴、平行して右側上部にはネジ27が止まるめねじ部を有し、軸部26を貫通させてストリッパボルト27を締め付けることによって軸部26を固定保持している。ここで、上記本体部25の左右上部はストリッパボルト27を締め付けた際、中央部に向けてたわみが生じるが、敢えて貫通穴をもつ左側の体積を減らすことで、貫通穴を有する左側のたわみがより大きくなり、めねじ部をもつ右側が安定するため、ストリッパボルト27のおねじ部が強く締めつけられる構造としてある。(この図面では右利き用を示し、左利き用では、加工の際に左右裏表を逆にしてストリッパボルト27は右側から締め付けるように構成される)。24は前記腕部25の先端部側に厚みを薄くして形成した把持部で、中央に切開手段28の針管30の直径より僅かに大きい溝24aが設けてあり、切開のための切開手段28の針管30を嵌合させることで切開手段28の把持力を高める構造を有する。また把持した際に滑り止めとなるローレット24bを有し、使用時には指先で両面および側面より把持するようになっている。
以上の構成をもとに上記切開用手術器械の使用法及び効用について説明する。
始めに図6及び図7において実施の形態1における弾撥指の病態を説明する。
まず手掌部・手指の皮下の構造を述べる。最も深い層に中手骨39、基節骨40等の骨32および関節が存在し、その掌側に腱33および滑膜性腱鞘34が存在する。腱33の両側には指の知覚や血行を保つための神経・血管35が存在し、さらに浅い層には皮下組織36が存在する。最も表層に皮膚37が存在する。皮下組織36は主に脂肪組織からなり、指や手掌部で物を把持する際のパッドとして機能する。皮下組織内36には適度な弾性と抗張力を備えた結合組織である手掌腱膜44(図9参照)が存在し、皮下組織36が手掌の形を保つことに役立っている。
中手骨39と基節骨40の間に存在するMP関節41に接してその掌側を腱33が長軸方向に走行している。腱33が中枢方向に筋肉によって牽引される事により、手指の自動的な屈曲が行われる。腱33は袋状の柔らかい滑膜性腱鞘34にほぼ全周性に包まれており、滑膜性腱鞘内34は少量の滑液で満たされている事によって滑らかな手指の運動が可能となっている。また、MP関節41掌側には、滑膜性腱鞘34だけでなく比較的硬く丈夫な結合組織で構成される腱鞘38のひとつであるA1 pulley38aが存在する。A1 pulley38aは骨32やMP関節41などの組織に腱33を固定する為に存在する組織であると考えられているが、ヒトでは解剖学的な特徴から腱鞘38が無い状態でも手指の屈伸運動に支障を来す事はない。腱33を包む滑膜性腱鞘34とA1 pulley38aのさらに掌側には、主に脂肪組織と結合組織で構成される手掌部の皮下組織36が存在する。
弾発指の病態は、腱鞘38が病的に肥厚して腱33を絞扼する事により、腱33と腱鞘38との滑動が妨げられる為に指が物理的に屈伸しにくくなり、痛みが発生するものである。
手術的治療を行う際には、腱33の滑動の改善を目的として肥厚した腱鞘38を長軸方向に切開して腱33への絞扼を解除する。通常、腱鞘38は掌側中央で切開される。切開が完了した後は、腱鞘38は放置しても良い。絞扼が解除されることにより、速やかに手指の屈伸と痛みの改善が得られることが多い。
次に、実施の形態1における実際の弾撥指に対する腱鞘切開術の動作を説明する。
まず、組織穿孔手段5を用いて切開受け手段2の挿入路を形成する。これは、切開すべき腱鞘38から約2cm近傍の予め切開した約3mmの皮膚切開部43より、滑膜性腱鞘34内、腱33よりも表層へ組織穿孔手段5を長軸方向へ挿入して行う。組織穿孔手段5は先端が単純なテーパー状ではなく、先端部6から拡張部7へとその横幅が広がっており、滑膜性腱鞘34の穿孔と拡張という二つの操作を一つで安全に行えることに寄与している。
滑膜性腱鞘内34に穿孔するための先端部6は比較的細く設計されており、少ない抵抗で滑膜性腱鞘内34を穿孔する事が可能である。拡張部7は先端部6が完全に滑膜性腱鞘内34内に入ったあとに滑膜性腱鞘内34の穿孔部を拡張していき、拡張時には先端部6が滑膜性腱鞘内34の中に入っている事から、拡張するために強めの力を加えても滑膜性腱鞘内34から組織穿孔手段5が脱落する事は無い。
術者が先端部6で滑膜性腱鞘内34の穿刺を行う際に抵抗を指先で感知するが、先端部6が完全に滑膜性腱鞘内34内に入ると抵抗は一旦消失する。組織穿孔手段5をさらに挿入し拡張部7で滑膜性腱鞘内34の拡張を行う際には再度抵抗が増加する事が感知できる。拡張を十分に行い、平行部8まで滑膜性腱鞘内34に刺入すると、再度抵抗が消失した事が感知できる。手技途中で穿孔部拡張時の抵抗増加と軽減を感じることにより、滑膜性腱鞘34の穿刺・拡張の各段階を術者が確認できる利点がある。
平行部8は滑膜性腱鞘34を穿孔した後に、先端に設けられた屈曲を利用して操作することで、先端部6が腱33と平行に滑膜性腱鞘34内に挿入され腱33の表面を傷つけることを避けることができる。また、組織穿孔手段5の先端部6から挿入部8にかけての上面は平面で、超音波を良好に反射する。一連の手技に対して、術中に超音波診断装置を用いて腱33や滑膜性腱鞘34などの組織と組織穿孔手段5の位置関係を確認することが可能であり、より安全に手術を行う事ができる。これにより、滑膜性腱鞘34に切開受け手段2を挿入するのに十分な手術経路が作成される。
次に上記のようにして作成した切開受け手段2挿入路に切開受け手段2を挿入する。
切開受け手段2は先端部10から体内に挿入されるが、組織穿孔手段5に比べて尖端が鈍な形状となっているから、生体内への挿入時に組織を傷つけにくい。挿入した切開受け手段2は超音波検査短軸像で腱33の掌側表層に接して切開台部11が設置されている事を確認する。さらに超音波検査長軸像で、切開受け手段2の陥凹部12を確認する事により、切開前に、切開を行う腱鞘38の範囲を確認する事が出来る。
次に術者は、皮膚切開部42より滑膜性腱鞘34内、腱33よりも表層に挿入した切開受け手段2を、滑膜性腱鞘34内より抜去する事無く、案内固定手段3の斜穴部20に、その底面側から基端部15の絞り角度を利用して挿入し摺動させる。案内固定手段3は手掌に乗る状態になるまで切開受け手段2に対し摺動させて手掌に設置し、切開受け手段2を案内固定手段3の斜穴部20と連結する。これら両者の連結後は、切開受け手段2の切開台部11の直上に案内固定手段3の腕部17と、腕部17に設けたスリット18が位置する。
この状態で切開受け手段2の持ち手部14を、切開受け手段2の切開台部11の平行を保ちながら手掌側へ引き上げ、腱鞘38を皮膚37側へ牽引した状態で切開受け手段2と案内固定手段3を固定する。この固定はローレットノブ22を締結することによって行う。上記切開受け手段2と案内固定手段3の固定により、切開受け手段2の切開台部11と案内固定手段3の基台部19の底面および支柱部16の底面で、患者の腱鞘38と皮膚37を挟み込む形となり、案内固定手段3および切開受け手段2は安定して固定される。切開受け手段2を引き上げる事により、滑膜性腱鞘34内の最も掌側の位置で切開受け手段2の切開台部11が腱33の直上で固定されることになる。
このとき、術者は、案内固定手段3の腕部17上面の目盛り17aを見て、切開受け手段2の陥凹部12の位置を知ることができる。すなわち、案内固定手段3の腕部17上面の目盛り17aは、切開受け手段2の示す目盛り14aと同期しており、切開受け手段2の持ち手部14の上面に刻印された目盛り14aは、案内固定手段3の斜穴部20の上面の高さで、切開受け手段2の切開台部11の皮下の深さを示す。よって、切開受け手段2上面の目盛り14aが、皮下2mmを示すとき、腕部17上面の目盛り17aで2mmを示す位置の直下に、切開受け手段2の陥凹部12がある事を示し、皮下で腱鞘38を切開すべき範囲を術者が確認しやすくなっている。
以上のようにして切開受け手段2と案内固定手段3を治療対象近傍の皮膚37表面に設置固定し終えたのち腱鞘38切開を始める。
その前に、あらかじめ切開手段28の把持を容易にするため、切開手段用保持手段4の嵌合部23に切開手段28を嵌合させる。このとき、術者はストリッパボルト27を緩めて軸部26を腕部25に対し回転させれば嵌合部23の位置を変えることができ、切開手段28の嵌合部23への嵌合を容易に行うことができる。また同時に術者は、切開手段28の先端31のカット面を切開の行いやすい方向になるように嵌合部23に嵌合させる。
上記のようにしてセットした切開手段28は軸部26を腕部25に対し回転させ、針管30を把持部24の正面にある溝24aに嵌合させた状態にしてストリッパボルト27で締め付け、切開手段用保持手段4に固定する。
次に上記切開手段用保持手段4に固定した切開手段28の先端31を案内固定手段3のスリット18上部より挿入し、体表からの解剖学的観察により、切開を行うべき目標の位置を決定した皮膚穿刺部42に、皮膚37および皮下組織36を貫いて腱鞘38に接するまで進める。この時、腱鞘38の反対側には切開受け手段2の切開台部11が存在しており、切開手段28の先端31は案内固定手段3のスリット18に案内されて切開台部11のガイド溝11aに受け止められる。よって、切開手段28の穿刺時に腱33の損傷を防ぐ事が出来る。
この状態で切開手段28の先端31をガイド溝11aに押し付けるようにしながら走行させて腱鞘38を切開する。すなわち、切開手段28の先端をガイド溝11aに押し当てて当該ガイド溝11a及びその直上のスリット18に沿って走行させ腱鞘38を切開する。これによって切開手段28はガイド溝11a及びスリット18の両者によって案内されて、走行させるときに切開手段28が左右にぶれるようなことがなくなる。また、前記ガイド溝11aの先端部には陥凹部12が設けてあるから、ガイド溝11aに沿って切開手段28を走行させているとき、切開手段28の先端が陥凹部12に落ち込む。これにより、述者はそのときの感触によって切開を終えたことを知ることができるとともに、それ以上に切開手段28を走行させて不要な部分まで切開してしまうことを未然に防止することができる。
以上説明してきたように、切開受け手段2と案内固定手段3と切開手段28の3つの手段で決まる病態の切開部分に案内固定手段3に設けたスリット18に沿って走行させることで、盲目的操作における勘と経験ではなく、器械による位置決めが可能となった。その結果、本発明による切開用手術器械によれば、腱鞘38近傍の神経・血管35など組織を損傷することなく正確に腱鞘38及び腱膜44の切開ができる。また、正確な切開が可能となるから、皮膚37や皮下組織36を大きく切開するような必要もなくなり、侵襲が極めて少ない手術が実現でき、術後生じる皮膚37や皮下組織36の瘢痕等の障害も最小限に予防することができる。
また、上記案内固定手段3はスリット18を設けた腕部17下方に肉抜き部21を形成しているので、案内固定手段3のスリット18に挿入した切開手段28の皮膚穿刺部42を直接視認しながら腱鞘38切開を行うことができ、切開手術を容易に、かつ安心感を持って行うことができる。
また、前記切開手段28は切開手段用保持手段4に装着して使用するので、切開時に切開手段28に十分な力を加えることができるようになり、容易かつ正確な切開が可能になる。また、切開手段28は軸部26の嵌合部23に着脱自在に装着できることから、切開手段28を単回使用において取り替えて使用することにより常に良好な切削性能で切開ができ、しかも、ストリッパボルト27を緩めて軸部26を揺動自在とすることによって、切開手段28の嵌合部23への装着も容易に行うことができる。
以下に、本発明の他の実施例を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
実施の形態2
実施の形態2では、デュプイトラン拘縮における本発明の切開用手術器械1の他の実施例を元に説明する。
始めに図9は本発明の実施の形態2における切開用手術器械1の使用方法を説明する為の病態説明図である。
前記の切開用手術器械1の構成をもとに他の実施例における、上記切開用手術器械の使用法及び効用について説明する。
始めに図9において実施の形態2におけるデュプイトラン拘縮の病態を説明する。
デュプイトラン拘縮は手掌腱膜44(以下腱膜と称す)が異常な線維性の肥厚と収縮をきたし、手指の屈曲拘縮を来す原因不明の疾患である。多くの症例では、環指や小指、中指の手掌部の遠位手掌皮線付近の皮下硬結病変として発症し、徐々に手指PIP関節皮下まで腱膜44の硬結が及び、同時に腱膜44が収縮する。肥厚収縮した病的な腱膜44aは皮下の長軸方向の索状物として体表より触知する事ができる。放置し、症状が進行した場合には図10のように手指が伸ばせなくなり握った状態の肢位しかとることができず、伸ばせない指が邪魔となる為に罹患した手全体の機能が極めて低下する。
手術的治療を行う場合は大別して、1)肥厚した腱膜44を観血的に可及的に切除する場合、2)腱膜44が索状に突っ張り手指の伸展制限に関わっている部位のみを経皮的に切断する場合の2種類がある。後者の手術では、手掌部で長軸方向に皮下で突っ張っている腱膜44を触知し、単回使用注射用針等を皮下に穿刺して単回使用注射用針等の先端を用いて腱膜44の線維を切断し、手指の屈曲拘縮を解除する。前者1)では手掌から指まで広範囲に皮下の展開が必要であり侵襲が大きいこと、後者2)では腱膜44より深層には指神経・血管35、腱33が走行しており、盲目的操作により針先で損傷する危険性があることが主なデメリットである。
臨床上、デュプイトラン拘縮に対してどのような手術を行うかは、その時点の手指の可動域所見等と患者の生活上の制限、希望等により決定される。経皮的に拘縮を解除する後者の方法は、手術侵襲が比較的軽く治療の為に受ける生活上の制限が少ない方法として患者の有用であると考えられるが、手術手技自体の安全性が十分確保されているとは言えず、改善の余地がある。本発明は、デュプイトラン拘縮の経皮的手術において安全性を高める事に寄与する。
次に、図9及び図10を用いて実際のデュプイトラン拘縮に対する腱膜切断術の動作を説明する。
まず、実際のデュプイトラン拘縮に対する経皮的手術においては、切断すべき腱膜44の近傍に予め切開した皮膚切開部46より、腱膜44より深層へ、組織穿孔手段5を先端部6から短軸方向へ挿入する。この際、超音波診断装置を使用して手掌に超音波診断装置のプローブ45を当て、神経・血管35と腱33の位置を確認し、これらの組織よりも浅層に超音波ガイド下に組織穿孔手段5を挿入することにより、安全な皮下経路の作成が可能となる。
組織穿孔手段5の形状は、実施の形態1と同様に穿孔と拡張という二つの操作を一つの器具で安全に行えることに寄与し、腱膜44に対する穿孔にあっても、少ない抵抗で腱膜44を穿孔する事が可能であり、先端部6、拡張部7、平行部8に至るまで腱膜44より深層に十分組織穿孔手段5を挿入し、皮膚37と腱膜44および腱膜下の組織に切開受け手段2を挿入するのに十分な経路を作成する。また、実施の形態1と同様に、穿孔時の拡張に強めの力を加えても腱膜44より組織穿孔手段5が脱落する事は無い。
術者は、実施の形態1と同様に組織穿孔手段5を使用することにより、手技途中で穿孔部拡張時の抵抗増加と軽減を感じることができ、腱膜44の穿刺・拡張の各段階を確認できる。腱膜44を穿孔した後には、先端に設けられた屈曲を利用して操作することで、先端部6が皮膚37と平行に挿入され神経・血管35や腱33を傷つけることを避ける利点がある。また、組織穿孔手段5の先端部6上面は平面で、超音波を良好に反射する。
組織穿孔手段5を使用して皮膚37および腱膜44より深部の経路を作成した後、同じ皮膚切開部46より、腱33、神経・血管35よりも浅層に、図9及び図10のように切開受け手段2を単軸方向へ挿入するが、一連の手技に対して、術中に超音波検査装置を併用することは本手術においては重要であり、これにより腱33や神経・血管35などの組織と切開受け手段2の位置関係を確認する事と、切開範囲を確認することが可能であり、より安全に手術を行うことができる。
切開受け手段2及び案内固定手段3及び切開手段用保持手段4の動作については、実施の形態1と同様であるので省略する。
以上、本発明の切開用手術器械1についてその実施の形態を説明してきたが、この切開用手術器械1は上記実施の形態に示した構成に限定されるものではなく、本発明の目的を達成する範囲で適宜変更可能であることはいうまでもない。
例えば、切開受け手段2と組織穿孔手段5とは別体物で説明したが、これらは一体物としてその各機能を持ち合わせたものとして構成しても良いものである。
また、本発明の切開用手術器械1として、組織穿孔手段5、切開受け手段2、案内固定手段3、切開手段用保持手段4、切開手段28からなるものを一例として示したが、これは少なくとも切開受け手段2と案内固定手段3と切開手段28を備えていれば良く、その他の組織穿孔手段5、切開手段用保持手段4は上記実施の形態で説明したものが好適であるが、汎用のものであってもよいものである。
なお、本発明では同様の対象であれば、上述した実施例に関わらず、体内のどの部位であっても使用が可能であり、同様の使用方法で簡単に手術が可能な切開用手術器械1を提供できる。
以上説明してきたように、本発明によれば、皮膚や皮下組織を大きく切開せず穿刺のみで腱鞘及び腱膜の切開が可能であり、安全で侵襲が極めて少ない手術が実現できる。よって、術後生じる皮膚や皮下組織の瘢痕等の障害も最小限に予防することができ、糸による縫合の必要性も無く術後抜糸までの縫合創管理による制限も軽減し、患者の生活の質の向上に寄与できるとともに、手術も一人で容易に実施可能な器械を提供することとなり、小規模医院でも導入が可能になる等、産業上の利用価値も大きいものであり、切開用手術器械として広範囲に使用できる。
1 切開用手術器械
2 切開受け手段
3 案内固定手段
4 切開手段用保持手段
5 組織穿孔手段
6 先端部
7 拡張部
8 平行部
9 持ち手部
10 先端部
11 切開台部
11a ガイド溝
12 陥凹部
13 屈曲部
14 持ち手部
14a 目盛り
15 基端部
16 支柱部
17 腕部
17a 目盛り
18 スリット
19 基台部
20 斜穴部
21 肉抜き部
22 ローレットノブ
23 嵌合部
24 把持部
24a 溝
24b ローレット
25 腕部
26 軸部
27 ストリッパボルト
28 単回使用注射用針等切開手段(切開手段と称す)
29 針基
30 針管
31 先端
32 骨
33 手指屈筋腱(腱と称す)
34 滑膜性腱鞘
35 神経・血管
36 皮下組織
37 皮膚
38 靱帯性腱鞘(腱鞘と称す)
38a A1 pulley
39 中手骨
40 基節骨
41 MP関節
42 皮膚穿刺部
43 皮膚切開部
44 手掌腱膜(腱膜と称す)
44a 病的な腱膜
45 プローブ
46 皮膚切開部
101 グリップ
102 シャフト
103 刃部
104 ガイド部
105 刃部
106 持ち手部

Claims (10)

  1. 治療対象近傍の皮膚表面を予め切開した箇所から、体内に挿入され、腱鞘及び腱膜の切開部分を受ける切開受け手段と、前記切開受け手段を体外で固定する案内固定手段と、前記案内固定手段によるガイドによって切開する切開手段とからなり、前記切開手段を前記切開受け手段に押し当て走行させることにより腱鞘及び腱膜を切開する構成とした切開用手術器械。
  2. 治療対象近傍の皮膚表面を予め切開した箇所から、体内に挿入し、治療部位近傍までの挿入経路を作成する組織穿孔手段と、前記組織穿孔手段によって作成した挿入経路に切開受け手段を挿入してなる請求項1項に記載の切開用手術器械。
  3. 切開手段を保持する切開手段用保持手段とからなる請求項2項に記載の切開用手術器械。
  4. 腱鞘及び腱膜の切開のためのガイド溝付の切開台部を備えた切開受け手段と、前記切開受け手段の前記ガイド溝と対応するスリット付の腕部を備えた案内固定手段とからなり、前記案内固定手段のスリットから切開手段を挿通して前記切開受け手段のガイド溝に押し当て当該ガイド溝とスリットに沿って切開手段を走行させるようにしてなる請求項1項から3項のいずれか1項に記載の切開用手術器械。
  5. 切開受け手段は持ち手部と、持ち手部先端に形成された切開台部とからなり、前記切開台部はその長手方向に沿ってガイド溝を有するとともに、ガイド溝の先端には陥凹部を有する請求項1項から4項のいずれか1項に記載の切開手術用器械。
  6. 切開受け手段の持ち手部と案内固定手段の腕部に、案内固定手段に固定した切開受け手段の切開台部位置を特定付ける相互に同期した目盛りを設けたことを特徴とする請求項5項に記載の切開用手術器械。
  7. 案内固定手段は基台部と、基台部から延設した腕部とからなり、基台部は切開受け手段の持ち手部を保持固定する構造を有するとともに、腕部は基台部に保持固定した切開受け手段の切開台部と対向するように設け、かつ当該腕部には切開受け手段の切開台部のガイド溝と対向するスリットを設けた請求項1項から6項のいずれか1項に記載の切開用手術器械。
  8. 案内固定手段は基台部と支柱部との間の腕部下方は逃がし空間とした請求項7記載の切開手術用器械。
  9. 組織穿孔手段は持ち手部と、持ち手部先端に形成され人体内に挿入して腱膜や腱鞘を穿孔することが可能な挿入部を備え、挿入部は先端部と先端部より幅広の拡張部とを有するとともに、持ち手部に対し滑らかに屈曲し、その底面部は円弧状とした請求項2または3に記載の切開用手術器械。
  10. 切開手段用保持手段は切開手段を装着保持する嵌合部を備えた軸部と、この軸部を固定または揺動自在に支持する本体部と、前記本体部に対し前記軸部を緩締する締結手段とからなる請求項3に記載の切開用手術器械。
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