JP5804428B2 - 切開用手術器械 - Google Patents
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Description
手術的治療を行う際には、腱の滑動の改善を目的として肥厚したA1 pulleyを長軸方向に切開して腱への絞扼を解除する。絞扼が解除されることにより、速やかに手指の屈伸と痛みの改善が得られることが多い。従来の弾撥指に対する手術では、手掌の皮膚を約2cm切開して腱鞘および腱を直視しながらA1 pulleyを切開する開放的腱鞘切開術が一般的であり、この術式では、皮膚切開部の組織の瘢痕化による痛みや手指の握りにくさなどの症状といった問題や、抜糸までの期間に手を用いた日常生活動作が制限される等の問題があった。
従来のデュプイトラン拘縮における手術方法として、手掌から手指にかけて広範囲に切開を行い、異常な腱膜を切除する腱膜切除術が一般的である。しかし、この方法は侵襲が大きく、手術操作に要求される技術的な課題や皮膚切開部の創傷治癒についての問題がある。
しかし、これらの盲目的操作による手術方法は、手指の神経・血管や腱などの組織を針によって損傷する危険性が比較的高い。
特許文献1に示される腱鞘切開刀は、開放的手術と経皮的手術の両方で使用できるとされる。腱鞘切開刀はグリップ101と、グリップに取り付けたシャフト102と、シャフト102の先端部の側面に設けた刃部103と、刃部の下部から刃部の突出方向に延設したガイド部104とを有し、刃部103の尖端に設けた刃を、ガイド部104の上面から刃部103の立ち上がり部分については円弧状に形成し、この円弧状に形成した立ち上がり部分から上方の、刃の中間部分と刃の上部部分については前記シャフト102の軸線方向と略平行となる直線的に形成し、前述刃部103の上部を、前記シャフト102の側面から突出する段差形状に形成してある。この腱鞘切開刀を皮膚の中に挿入して腱鞘の切開を行う。
非特許文献1に示される切開刀は、皮膚の中に挿入する刃部105の先端が細く、低侵襲に腱を切開するための特殊なメスの刃部を有し、持ち手106を持つ術者の手の感覚と経験によって、盲目的に腱鞘の切開を行う。
(1)従来の腱鞘及び腱膜の手術的治療では、手の皮膚および皮下組織を十分な視野が得られるように切開して治療部を直視しながら行うが、ある程度の幅の切開を伴うことから、皮膚切開部の組織の瘢痕化による痛みや手指の握りにくさなどの症状といった問題や、抜糸までの期間に手を用いた日常生活動作が制限される等の問題がある。
(2)一部で実施されている経皮的手術では、盲目的操作による手術となるため、手術に際して術者の経験と指先の感覚に頼る部分が多く、手術操作上において、切開に用いている手術器械が誤って腱や神経・血管などの組織を損傷するリスクが高い。
(3)既存の経皮的腱鞘切開術においてガイド構造を有する手術器械が存在するが、この既存のガイド構造を有する手術器械は、腱鞘内に挿入するための器具に同時に腱鞘の切開を行うための刃が設置されており、腱鞘の内部かつ腱の表面にガイド部を正確に入れることが手術手技上必須である。ガイド部が腱に向かって深く入りすぎることによって刃の部分で腱を損傷する可能性がある。あるいは病的に肥厚した腱鞘内にガイド部が入りにくい場合には、腱鞘内への手術器械の挿入を試みているうちに刃が腱や腱鞘と並走する神経・血管を傷つける危険性がある。また、切開すべき絞扼をおこしている腱鞘の範囲が広い際には、一回の切開手技により十分に弾発現象が改善されない場合が有る。この際、より遠い部位にまで再度盲目的に器具を挿入する必要が有り手技の危険性は増す。
(4)手術部位の視界を確保するために術者の他に助手や手術器械が必要である。
(5)また、経皮的手術の上記の危険性に関する理由とともに、切開手術を行う場合には助手および手術設備環境が必要とされ、小規模の診療所で手術を行うことは困難であり、手術を行うことができる施設は限定されている。
本発明は前記従来の課題を解決するもので、腱や神経・血管など組織を損傷するリスクが少なく低侵襲で安全かつ容易に手術ができる切開用手術器械を提供することを目的としたものである。
今までの経皮的な盲目的手術のように、勘と経験に大きく頼って手術するのではなく、また、器械を用いた手術であっても、切開する部分に対して他の組織を傷つけるようなことはなく、確実な手術ができる器械として提供することができる。以下、詳述する。
始めに図6及び図7において実施の形態1における弾撥指の病態を説明する。
まず手掌部・手指の皮下の構造を述べる。最も深い層に中手骨39、基節骨40等の骨32および関節が存在し、その掌側に腱33および滑膜性腱鞘34が存在する。腱33の両側には指の知覚や血行を保つための神経・血管35が存在し、さらに浅い層には皮下組織36が存在する。最も表層に皮膚37が存在する。皮下組織36は主に脂肪組織からなり、指や手掌部で物を把持する際のパッドとして機能する。皮下組織内36には適度な弾性と抗張力を備えた結合組織である手掌腱膜44(図9参照)が存在し、皮下組織36が手掌の形を保つことに役立っている。
まず、組織穿孔手段5を用いて切開受け手段2の挿入路を形成する。これは、切開すべき腱鞘38から約2cm近傍の予め切開した約3mmの皮膚切開部43より、滑膜性腱鞘34内、腱33よりも表層へ組織穿孔手段5を長軸方向へ挿入して行う。組織穿孔手段5は先端が単純なテーパー状ではなく、先端部6から拡張部7へとその横幅が広がっており、滑膜性腱鞘34の穿孔と拡張という二つの操作を一つで安全に行えることに寄与している。
切開受け手段2は先端部10から体内に挿入されるが、組織穿孔手段5に比べて尖端が鈍な形状となっているから、生体内への挿入時に組織を傷つけにくい。挿入した切開受け手段2は超音波検査短軸像で腱33の掌側表層に接して切開台部11が設置されている事を確認する。さらに超音波検査長軸像で、切開受け手段2の陥凹部12を確認する事により、切開前に、切開を行う腱鞘38の範囲を確認する事が出来る。
始めに図9において実施の形態2におけるデュプイトラン拘縮の病態を説明する。
デュプイトラン拘縮は手掌腱膜44(以下腱膜と称す)が異常な線維性の肥厚と収縮をきたし、手指の屈曲拘縮を来す原因不明の疾患である。多くの症例では、環指や小指、中指の手掌部の遠位手掌皮線付近の皮下硬結病変として発症し、徐々に手指PIP関節皮下まで腱膜44の硬結が及び、同時に腱膜44が収縮する。肥厚収縮した病的な腱膜44aは皮下の長軸方向の索状物として体表より触知する事ができる。放置し、症状が進行した場合には図10のように手指が伸ばせなくなり握った状態の肢位しかとることができず、伸ばせない指が邪魔となる為に罹患した手全体の機能が極めて低下する。
まず、実際のデュプイトラン拘縮に対する経皮的手術においては、切断すべき腱膜44の近傍に予め切開した皮膚切開部46より、腱膜44より深層へ、組織穿孔手段5を先端部6から短軸方向へ挿入する。この際、超音波診断装置を使用して手掌に超音波診断装置のプローブ45を当て、神経・血管35と腱33の位置を確認し、これらの組織よりも浅層に超音波ガイド下に組織穿孔手段5を挿入することにより、安全な皮下経路の作成が可能となる。
2 切開受け手段
3 案内固定手段
4 切開手段用保持手段
5 組織穿孔手段
6 先端部
7 拡張部
8 平行部
9 持ち手部
10 先端部
11 切開台部
11a ガイド溝
12 陥凹部
13 屈曲部
14 持ち手部
14a 目盛り
15 基端部
16 支柱部
17 腕部
17a 目盛り
18 スリット
19 基台部
20 斜穴部
21 肉抜き部
22 ローレットノブ
23 嵌合部
24 把持部
24a 溝
24b ローレット
25 腕部
26 軸部
27 ストリッパボルト
28 単回使用注射用針等切開手段(切開手段と称す)
29 針基
30 針管
31 先端
32 骨
33 手指屈筋腱(腱と称す)
34 滑膜性腱鞘
35 神経・血管
36 皮下組織
37 皮膚
38 靱帯性腱鞘(腱鞘と称す)
38a A1 pulley
39 中手骨
40 基節骨
41 MP関節
42 皮膚穿刺部
43 皮膚切開部
44 手掌腱膜(腱膜と称す)
44a 病的な腱膜
45 プローブ
46 皮膚切開部
101 グリップ
102 シャフト
103 刃部
104 ガイド部
105 刃部
106 持ち手部
Claims (10)
- 治療対象近傍の皮膚表面を予め切開した箇所から、体内に挿入され、腱鞘及び腱膜の切開部分を受ける切開受け手段と、前記切開受け手段を体外で固定する案内固定手段と、前記案内固定手段によるガイドによって切開する切開手段とからなり、前記切開手段を前記切開受け手段に押し当て走行させることにより腱鞘及び腱膜を切開する構成とした切開用手術器械。
- 治療対象近傍の皮膚表面を予め切開した箇所から、体内に挿入し、治療部位近傍までの挿入経路を作成する組織穿孔手段と、前記組織穿孔手段によって作成した挿入経路に切開受け手段を挿入してなる請求項1項に記載の切開用手術器械。
- 切開手段を保持する切開手段用保持手段とからなる請求項2項に記載の切開用手術器械。
- 腱鞘及び腱膜の切開のためのガイド溝付の切開台部を備えた切開受け手段と、前記切開受け手段の前記ガイド溝と対応するスリット付の腕部を備えた案内固定手段とからなり、前記案内固定手段のスリットから切開手段を挿通して前記切開受け手段のガイド溝に押し当て当該ガイド溝とスリットに沿って切開手段を走行させるようにしてなる請求項1項から3項のいずれか1項に記載の切開用手術器械。
- 切開受け手段は持ち手部と、持ち手部先端に形成された切開台部とからなり、前記切開台部はその長手方向に沿ってガイド溝を有するとともに、ガイド溝の先端には陥凹部を有する請求項1項から4項のいずれか1項に記載の切開手術用器械。
- 切開受け手段の持ち手部と案内固定手段の腕部に、案内固定手段に固定した切開受け手段の切開台部位置を特定付ける相互に同期した目盛りを設けたことを特徴とする請求項5項に記載の切開用手術器械。
- 案内固定手段は基台部と、基台部から延設した腕部とからなり、基台部は切開受け手段の持ち手部を保持固定する構造を有するとともに、腕部は基台部に保持固定した切開受け手段の切開台部と対向するように設け、かつ当該腕部には切開受け手段の切開台部のガイド溝と対向するスリットを設けた請求項1項から6項のいずれか1項に記載の切開用手術器械。
- 案内固定手段は基台部と支柱部との間の腕部下方は逃がし空間とした請求項7記載の切開手術用器械。
- 組織穿孔手段は持ち手部と、持ち手部先端に形成され人体内に挿入して腱膜や腱鞘を穿孔することが可能な挿入部を備え、挿入部は先端部と先端部より幅広の拡張部とを有するとともに、持ち手部に対し滑らかに屈曲し、その底面部は円弧状とした請求項2または3に記載の切開用手術器械。
- 切開手段用保持手段は切開手段を装着保持する嵌合部を備えた軸部と、この軸部を固定または揺動自在に支持する本体部と、前記本体部に対し前記軸部を緩締する締結手段とからなる請求項3に記載の切開用手術器械。
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