JP5800042B2 - 流体噴射装置及び手術用器具 - Google Patents

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本発明は、流体を高速で噴射する流体噴射装置に係り、特に、所望の噴射力を維持した状態で流体を噴射するのに好適な流体噴射装置に関する。
従来、生体組織を切開または切除する流体噴射装置として、容積が変更可能な流体室と、流体室に連通する入口流路及び出口流路と、駆動信号の供給に応じて流体室の容積を変更する容積変更部とを備える脈動発生部と、出口流路に一方の端部が連通され、他方の端部が出口流路の直径よりも縮小された流体噴射開口部(ノズル)が設けられた接続流路と、接続流路が穿設され流体室から流動される流体の脈動を流体噴射開口部に伝達し得る剛性を有する接続流路管と、入口流路に流体を供給する圧力発生部とを備え、圧力発生部により一定圧力で入口流路に流体を供給すると共に、容積変更部によって流体室の容積を変更して脈動を発生して流体の吐出動作を行うものが知られている(例えば、特許文献1)。
特開2008−82202号公報
本発明者らが出願した特許文献1によれば、流体噴射装置の流体室は流体室の容積を変更しない場合、圧力発生部(例えば、ポンプ)からの供給圧力と流路抵抗の釣り合った状態で流体が流れている。流体室を急激に縮小すると、流体室の圧力が上昇する。そのとき、入口流路から流体が流体室へ流入する流量の減少量よりも、出口流路から吐出される流体の増加量のほうが大きいため、接続流路に脈動流が発生する。この吐出の際の圧力変動が、接続流路管内を伝播して、先端のノズルの流体噴射開口部から流体が噴射される。流体室内は、入口流路からの流体流入量の減少と出口流路からの流体流出の増加との相互作用で、圧力上昇直後に真空状態(0気圧又はその近傍)となる。その結果、ポンプの圧力と、流体室内の真空状態の双方によって一定時間経過後、入口流路の流体は圧電素子の動作前と同様な速度で流体室内に向かう流れが復帰する。
上記特許文献1の従来技術において、圧電素子とダイアフラムとを含んで構成される容積変更手段を、パルス状の駆動信号によって駆動することになるが、例えば、単純な正弦波状の駆動信号で駆動した場合、流体室内に向かう流れが定常状態に戻る前に次の容積縮小動作(圧縮動作)が行われる恐れがあった。定常状態に戻る前に次の圧縮動作が行われると、十分に強い噴射力(ジェット)を得ることができない。
そこで、本発明は、このような従来の技術の有する未解決の課題に着目してなされたものであって、所望の噴射力を維持した状態で脈動流を継続して噴射するのに好適な流体噴射装置、流体噴射装置の駆動装置、流体噴射装置の駆動方法及び手術用器具を提供することを目的としている。
〔形態1〕 上記目的を達成するために、形態1の流体噴射装置は、容積が変更可能な流体室と、前記流体室に連通する入口流路及び出口流路と、駆動信号の供給に応じて前記流体室の容積を変更する容積変更部と、を備える脈動発生部と、
前記出口流路の前記流体室に連通する端部とは異なる端部に連通した流体噴射開口部と、
前記入口流路に流体を供給する圧力発生部と、
前記容積変更部を前記流体室の容積を圧縮するように動作させる圧縮駆動波形部と、前記容積変更部を前記流体室の容積を圧縮前の容積に復帰するように動作させる復帰駆動波形部とを1周期の信号波形に含む駆動信号を前記容積変更部に供給する駆動信号供給部と、を備え、
前記駆動信号供給部は、前記駆動信号における前記圧縮駆動波形部を前記容積変更部に供給してから次の前記圧縮駆動波形部を前記容積変更部に供給するまでの間に、前記流体室内に向かって流れる流体を定常状態に復帰させる復帰期間を設けるように前記駆動信号の供給内容を制御する。
このような構成であれば、駆動信号供給部によって、容積変更部に駆動信号における圧縮駆動波形部が供給されると、容積変更部が流体室の容積を圧縮するように動作し、これにより流体室内が圧縮される。そして、圧縮駆動波形部の供給が終了すると、容積変更部には駆動信号における復帰駆動波形部が供給される。これにより、容積変更部が流体室の容積を圧縮状態から圧縮前の状態に復帰させる方向に動作し、圧縮状態にある流体室内が圧縮前の状態へと復帰する。更に、駆動信号供給部によって、圧縮駆動波形部の供給終了後から次の圧縮駆動波形部を供給するまでの間に、流体室内に向かって流れる流体を定常状態に復帰させる復帰期間が設けられるように駆動信号の供給内容が制御される。
つまり、駆動信号供給部によって、容積変更部への先の圧縮駆動波形部の供給が終了すると、次の圧縮駆動波形部が供給される前に、流体室内を定常状態(圧力発生部からの供給圧力と流路抵抗とが釣りあって流体が流れている状態)に戻すことが可能である。
これにより、流体室内に向かう流体の流れが定常状態に戻ってから、容積変更部に次の圧縮動作を行わせることができるので、噴射力を強い状態で且つ一定に保ちながら流体の噴射を継続して行うことができるという効果が得られる。
ここで、上記連通とは、直接、間接を問わず、一方と他方とが流体の流通が可能に接続されていることである。例えば、出口流路の一端部と、流体噴射開口部とが直接、又は流路管などを介して互いを流体が流通できるように接続されている状態が該当する。
〔形態2〕 更に、形態2の流体噴射装置は、形態1の流体噴射装置において、前記圧縮駆動波形部の時間幅をTredとし、前記復帰駆動波形部の時間幅をTexpとし、前記圧縮駆動波形部の供給期間における前記流体室内の平均圧力をPgenとし、前記復帰駆動波形部の供給期間における前記流体室内の前記入口流路の圧力発生部側にかかる圧力をPsupとし、
前記駆動信号供給部は、次の式の関係が成立する時間幅Tredの前記圧縮駆動波形部及び時間幅Texpの前記復帰駆動波形部を含んで構成される駆動信号を、前記容積変更部に供給することを特徴とする請求項1に記載の流体噴射装置。
red×(Pgen−Psup)≦Texp×Psup
ここで、入口流路の流体室側に作用する運動量Mgは、入口流路の断面積をsとすると、Mg=s×Tred×(Pgen−Psup)となり、入口流路の圧力発生部側に作用する運動量Msは、Ms=s×Texp×Psupとなる。また、一般に、Psupは、Pgenと比較して、はるかに小さな値となる(Pgen≫Psup)。
更に、流体室の容積が拡大(元の容積に復帰)中の期間(Texpの期間)において、流体室の平均圧力は、出口流路のイナータンスで流体が引き出されるため0気圧又はその近傍の気圧となる。つまり、Texpで与えられる運動量Msが、Tredで与えられる運動量Mg以上であれば、流体は元の定常状態に復帰することができる。
従って、上記構成であれば、上記数式の関係を満たす、時間幅Tredの圧縮駆動波形部及び時間幅Texpの復帰駆動波形部とを有する駆動信号を容積変更部に供給することができるので、駆動信号の1周期の期間において、流体は真空状態から元の定常状態に復帰することができる。
これにより、流体室内に向かう流体の流れが定常状態に戻ってから、容積変更部に次の圧縮動作を行わせることができるので、噴射力を強い状態に保ちながら流体の噴射を継続して行うことができるという効果が得られる。
また、例えば、図16に示すバースト波のように急速立ち上げ後に急速立ち下げし、その後、次の信号を供給する前に流体室に向かう流れの復帰を待つことが考えられる。
しかしながら、この場合は、流体室内が急速に拡大(元の容積に復帰)するために、流体室内の真空泡が大きくなり、その真空泡に向かって、流体中に溶解しているガスが放出されやすくなる。その結果、流体室に流れが復帰し真空泡は消失するが、いったん液体から放出されたガスによる気泡は消失しないため、気泡が流体室の剛性を下げる結果、圧力の上昇を妨げ流体の噴射が弱められてしまう恐れがある。
上記構成であれば、容積変更部に上記数式の関係を満たす駆動信号を供給することができるので、Pgen≫Psupであることから、Texpは、Tredよりも長い時間幅となり、その結果、圧縮された流体室の容積は、比較的ゆっくりと元の状態に復帰することになり、その結果、生成される真空泡が小さくなり、流体から真空泡にガスを放出し難くすることができる。
これにより、ガスによる気泡によって、流体室の剛性が下がるのを防ぐことができるという効果も得られる。
〔形態3〕 更に、形態3の流体噴射装置は、形態1又は2の流体噴射装置において、前記駆動信号供給部は、前記復帰駆動波形部の供給期間中に前記復帰期間を設けるように前記駆動信号の供給内容を制御する。
このような構成であれば、駆動信号の1周期の期間において、流体室の容積の圧縮、元の容積への復帰、及び流体室内に向かう流体の流れの定常状態への復帰を行うことができる。これにより、流体室内に向かう流体の流れが定常状態に戻ってから、容積変更部に次の圧縮動作を行わせることができるので、噴射力を強い状態に保ちながら流体の噴射を継続して行うことができるという効果が得られる。
〔形態4〕 更に、形態4の流体噴射装置は、形態3の流体噴射装置において、前記駆動信号供給部は、前記圧縮駆動波形部と前記復帰駆動波形部との間に、前記復帰期間として、前記復帰駆動波形部の一部に信号の出力レベルを一定のレベルに所定期間保持する波形部を有する駆動信号を前記容積変更部に供給する。
このような構成であれば、流体室の容積の圧縮後に、復帰期間として、容積変更部を、流体室の容積を所定期間一定に保つ(容積の変更を停止する)ように動作させることができる。
これによって、容積が圧縮された状態で且つ容積が略変動しない状態で真空泡を消失させることができるので、最短時間で真空泡を消失させることができるという効果が得られる。
更に、真空泡が消失又は略消失した後に容積を復帰させることができるので、流体からのガスの放出を抑制することができるという効果も得られる。
〔形態5〕 更に、形態5の流体噴射装置は、形態1乃至4のいずれか1の流体噴射装置において、前記駆動信号の波形情報を記憶する波形情報記憶部を備え、
前記駆動信号供給部は、前記波形情報記憶部に記憶された波形情報に基づき前記駆動信号を生成し、前記駆動信号を前記容積変更部に供給する。
このような構成であれば、例えば、所定の周期でサンプリングした波形データを波形情報として記憶することで、該波形データから容易に目的の波形の駆動信号を生成することができる。
〔形態6〕 更に、形態6の流体噴射装置は、形態1乃至5のいずれか1の流体噴射装置において、前記駆動信号供給部は、前記1周期の信号波形が、前記圧縮駆動波形部となる1周期の時間幅がT1の正弦波の一部と、前記復帰駆動波形部となる1周期の時間幅がT2(T1≠T2)の正弦波の一部とを合成して構成された駆動信号を前記容積変更部に供給する。
このような構成であれば、1周期の時間幅が異なる2つの正弦波の一部ずつを合成して駆動信号を構成することができるので、例えば、T1の正弦波の波長をλ1とし、T2の正弦波の波長をλ2としたときに、正弦波の前半λ1/2の波形部分と、後半λ2/2の波形部分とを合成して駆動信号を構成することができる。
これによって、前半周期の時間幅よりも後半周期の時間幅の方が長く、且つ1周期の信号波形が単純な正弦波とはならない駆動信号を簡易に構成することができるという効果が得られる。つまり、復帰駆動波形部に復帰期間が含まれた駆動信号を簡易に構成することができる。
〔形態7〕 更に、形態7の流体噴射装置は、形態5の流体噴射装置において、前記1周期の信号波形を台形波の形状とした。
このような構成であれば、駆動信号(アナログ信号)を、正弦波信号などにしたときよりも少ないサンプリング数の波形データから生成することができるので、波形情報記憶部に記憶する波形データのデータ容量を小さくすることができる。
これにより、波形情報記憶部の記憶容量を、駆動信号を正弦波信号としたときと比較して小さくすることができるという効果が得られると共に、駆動信号を正弦波信号としたときと比較して、同じ容量の波形情報記憶部に対してより多くの種類の波形データを記憶することができるという効果が得られる。
〔形態8〕 更に、形態8の流体噴射装置は、形態7の流体噴射装置において、前記波形情報として前記台形波の節点情報を前記波形情報記憶部に記憶し、
前記駆動信号供給部は、前記波形情報記憶部に記憶された前記節点情報に基づき前記台形波の駆動信号を生成する。
このような構成であれば、各台形波の節点情報のみを波形情報として記憶することで、この波形情報から所望の駆動信号を生成することができるので、波形情報記憶部に記憶する波形情報をより少ないデータ量に抑えることができる。
また、駆動信号を生成するためにリアルタイムのアクセスをする必要がある場合に、駆動信号を正弦波信号としたときと比較して、少ないデータ量の読み出しで済むので、正弦波信号としたとき程、高速なアクセス機構を必要としない。
従って、様々な波長や振幅の波形情報を用いた駆動制御を、駆動信号を正弦波信号としたときと比較して、低コストで実現することができるという効果が得られる。
〔形態9〕 更に、形態9の流体噴射装置は、形態1乃至8のいずれか1の流体噴射装置において、前記出口流路の流体室側端部の直径が、前記出口流路の流体噴射開口部側端部の直径よりも大きく設定されている。
このような構成であれば、出口流路の流体室側端部から流れてくる流体を、出口流路の流体噴射開口部側端部において、より高圧、高速のパルス状の液滴として噴射することができるという効果が得られる。
〔形態10〕 更に、形態10の流体噴射装置は、形態1乃至9のいずれか1の流体噴射装置において、前記入口流路のイナータンスが、前記出口流路のイナータンスよりも大きく設定されている。
このような構成であれば、容積変更部を駆動して流体室の容積を圧縮させたときに、入口流路から流体室への流体の流入量よりも大きい脈動流が出口流路に発生し、接続流路管内にパルス状の流体吐出を行うことができる。
〔形態11〕 更に、形態11の流体噴射装置は、形態1乃至9のいずれか1の流体噴射装置において、前記入口流路を含む前記流体室上流側の合成イナータンスが、前記出口流路を含む前記圧力室下流側のイナータンスよりも大きい。
このような構成であれば、容積変更部を駆動して流体室の容積を圧縮させたときに、入口流路から流体室への流体の流入量よりも大きい脈動流が出口流路に発生し、接続流路管内にパルス状の流体吐出を行うことができる。
〔形態12〕 更に、形態12の流体噴射装置は、形態1乃至11のいずれか1の流体噴射装置において、前記出口流路に一方の端部が連通され、他方の端部が前記出口流路の直径よりも縮小された流体噴射開口部が設けられた接続流路と、前記接続流路が穿設され、前記流体室から流動される流体の脈動を前記流体噴射開口部に伝達する接続流路管と、を備える。
このような構成であれば、より強い流体の噴射が可能になると共に、例えば、本形態の流体噴射装置を手術用器具として適用した場合に、脳手術等の術部が奥まった場所にある様々な手術において適用可能となる。
〔形態13〕 更に、形態13の流体噴射装置は、形態1乃至12のいずれか1の流体噴射装置において、前記容積変更部は、前記流体室の一端を封止するダイアフラムと、前記ダイアフラムに一端が固定され前記駆動信号の供給に応じて前記封止面と垂直な方向に伸長又は収縮する圧電素子とを含んで構成され、
前記駆動信号供給部は、前記駆動信号における前記圧縮駆動波形部の供給によって、前記圧電素子を伸長させて前記ダイアフラムを前記流体室の内側に向かって変形させ、前記駆動信号における前記復帰駆動波形部の供給によって、前記圧電素子を収縮させて前記ダイアフラムの変形状態を元の状態に復帰させる。
このような構成であれば、容積変更部として圧電素子を採用するようにしたので、駆動信号によって、簡易に流体室の容積変更を制御することができるという効果が得られると共に、構造の簡素化とそれに伴う小型化を実現できるという効果が得られる。また、流体室の容積変化の最大周波数を例えば1kHz以上の高い周波数にすることができるので、高速且つ短い繰り返し周期での脈動流の噴射を行わせることができるという効果も得られる。
〔形態14〕 一方、上記目的を達成するために、形態14の流体噴射装置の駆動装置は、容積が変更可能な流体室と、前記流体室に連通する入口流路及び出口流路と、駆動信号の供給に応じて前記流体室の容積を変更する容積変更部と、を備える脈動発生部と、前記出口流路の前記流体室に連通する端部とは異なる端部に連通した流体噴射開口部と、前記入口流路に流体を供給する圧力発生部とを備えた流体噴射装置の駆動装置であって、
前記容積変更部を前記流体室の容積を圧縮するように動作させる圧縮駆動波形部と、前記容積変更部を前記流体室の容積を圧縮前の容積に復帰するように動作させる復帰駆動波形部とを1周期の信号波形に含む駆動信号を前記容積変更部に供給する駆動信号供給部を備え、
前記駆動信号供給部は、前記駆動信号における前記圧縮駆動波形部を前記容積変更部に供給してから次の前記圧縮駆動波形部を前記容積変更部に供給するまでの間に、前記流体室内に向かって流れる流体を定常状態に復帰させる復帰期間を設けるように前記駆動信号の供給内容を制御する。
このような構成であれば、上記形態1の流体噴射装置と同等の作用及び効果が得られる。
〔形態15〕 また、上記目的を達成するために、形態15の流体噴射装置の駆動方法は、容積が変更可能な流体室と、前記流体室に連通する入口流路及び出口流路と、駆動信号の供給に応じて前記流体室の容積を変更する容積変更部と、を備える脈動発生部と、前記出口流路の前記流体室に連通する端部とは異なる端部に連通した流体噴射開口部と、前記入口流路に流体を供給する圧力発生部と、駆動信号供給部とを備えた流体噴射装置の駆動方法であって、
前記駆動信号供給部に、前記容積変更部を前記流体室の容積を圧縮するように動作させる圧縮駆動波形部と、前記容積変更部を前記流体室の容積を圧縮前の容積に復帰するように動作させる復帰駆動波形部とを1周期の信号波形に含む駆動信号を前記容積変更部に供給させる駆動信号供給ステップを含み、
前記駆動信号供給ステップにおいて、前記駆動信号供給部に、前記駆動信号における前記圧縮駆動波形部を前記容積変更部に供給してから次の前記圧縮駆動波形部を前記容積変更部に供給するまでの間に、前記流体室内に向かって流れる流体を定常状態に復帰させる復帰期間を設けるように前記駆動信号の供給内容を制御させる。
これにより、上記形態1の流体噴射装置と同等の作用及び効果が得られる。
〔形態16〕 また、上記目的を達成するために、形態16の手術用器具は、流体の噴射によって患部の治療的措置を支援する手術用器具であって、
形態1乃至形態13のいずれか1に記載の流体噴射装置を備える。
このような構成であれば、上記形態1乃至13のいずれか1の流体噴射装置による流体の噴射によって、腫瘍などの患部の切除などの治癒的措置の支援を行うことが可能である。
本発明に係る流体噴射装置1の概略構成を示す説明図である。 本発明に係る脈動発生部100の構造を示す断面図である。 流体噴射部2の分解図である。 入口流路503の形態を示す平面図である。 駆動部30の詳細な構成を示すブロック図である。 駆動部30における信号波形の生成処理を示すフローチャートである。 駆動部30における脈動発生部100への駆動信号の供給処理を示すフローチャートである。 2種類の正弦波を合成して生成した信号波形の一例を示す図である。 (a)は、波形の拡張方法の一例を示す図であり、(b)は、第2の実施の形態の駆動信号の信号波形の一例を示す図である。 第3の実施の形態の駆動信号供給部30dの詳細な構成を示すブロック図である。 駆動信号を構成する台形波の一例を示す図である。 第3の実施の形態の駆動信号供給処理における駆動信号の出力処理を示すフローチャートである。 ステップS308、S324のカウンタ条件セット処理を示すフローチャートである。 第3の実施の形態の波形情報の一例を示す図である。 台形波の駆動信号の出力例を示す図である。 圧電素子を駆動するバースト波の駆動信号の一例を示す図である。
〔第1の実施の形態〕
以下、本発明の第1の実施の形態を図面に基づき説明する。図1〜図8は、本発明に係る流体噴射装置、流体噴射装置の駆動装置、流体噴射装置の駆動方法及び手術用器具の第1の実施の形態を示す図である。
なお、本発明による流体噴射装置は、インク等を用いた描画、細密な物体及び構造物の洗浄、物体の切断や切除、手術用メス等様々に採用可能であるが、以下に説明する実施の形態では、生体組織を切開または切除することに好適な流体噴射装置を例示して説明する。従って、実施の形態にて用いる流体は、水、生理食塩水、薬液等である。
まず、本発明に係る流体噴射装置の構成を図1に基づき説明する。図1は、本発明に係る流体噴射装置1の概略構成を示す説明図である。
流体噴射装置1は、図1に示すように、基本構成として流体を収容する流体容器10と、圧力発生部としてのポンプ20と、ポンプ20から供給される流体を脈動流動する脈動発生部100とを含んで構成される流体噴射部2と、脈動発生部100を駆動する駆動部30とを含んで構成されている。
脈動発生部100には、細いパイプ状の接続流路管200が接続され、接続流路管200の先端部には流路が縮小されたノズル211が挿着されている。
次に、図1及び図2に基づき、流体噴射装置1における流体の流動を簡単に説明する。
ここで、図2は、本発明に係る脈動発生部100の構造を示す断面図である。なお、図2において、左右方向が上下方向に対応する。また、図2は、後述する図3におけるA−A'断面図である。
流体容器10に収容された流体は、接続チューブ15を介してポンプ20によって吸引され、一定の圧力で接続チューブ25を介して脈動発生部100に供給する。脈動発生部100には流体室501と、この流体室501の容積を駆動部30からの駆動信号に応じて変更する容積変更部とを備えており、この容積変更部を駆動して脈動を発生し、接続流路管200、ノズル211を通して流体を高速で噴射する。脈動発生部100の詳しい説明については後述する。
なお、この流体噴射装置1を用いて手術をする際には、術者が把持する部位は脈動発生部100である。従って、脈動発生部100までの接続チューブ25はできるだけ柔軟であることが好ましい。そのためには、柔軟で薄いチューブで、流体を脈動発生部100に送液可能な範囲で低圧にすることが好ましい。
また、特に、脳手術のときのように、機器の故障が重大な事故を引き起こす恐れがある場合には、接続チューブ25の切断等において高圧な流体が噴出することは避けなければならず、このことからも低圧にしておくことが要求される。
次に、図2〜図4に基づき、脈動発生部100の構造について説明する。
ここで、図3は、流体噴射部2の分解図であり、図4は、入口流路503の形態を示す平面図であり、上ケース500を下ケース301との接合面側から視認した状態を表している。
脈動発生部100は、図2〜図4に示すように、4隅に螺子穴500aの穿設された上ケース500と、4隅に螺子穴301a(図示は省略)の穿設された下ケース301とを備えている。そして、これら上ケース500と下ケース301とがそれぞれ対向する面において、螺子穴500a及び301aが対向するように接合され、4本の固定螺子600(図示は省略)を螺子穴500a及び301aに螺合することによって上ケース500と下ケース301とが螺着されている。
下ケース301は、鍔部を有する中空筒状の部材であって、一方の端部は底板311で密閉されている。この下ケース301の内部空間に、容積変更部を構成する部材の1つである圧電素子401が配設されている。
この圧電素子401は、積層型圧電素子であってアクチュエータを構成している。圧電素子401の一方の端部は上板411を介してダイアフラム400に、他方の端部は底板311の上面312に固着されている。
また、ダイアフラム400は、円盤状の金属薄板からなり、下ケース301の上面側に形成された円環状の凹部303内において周縁部が凹部303の底面に密着固着されている。ダイアフラム400の上面には、中心部に円形の開口部を有する円盤状の金属薄板からなる補強板410が積層配設される。
この構成により、駆動部30によって、圧電素子401に駆動信号を入力することで、圧電素子401が伸張、収縮し、その伸長時の上方向の力及び収縮時の下方向の力が上板411を上下方向に移動させる。そして、上板411が移動することでダイアフラム400が変形し、流体室501の容積を変更する。
つまり、圧電素子401、上板411、ダイアフラム400及び補強板410から容積変更部が構成されている。
上ケース500は、下ケース301と対向する面の中心部に円形の凹部が形成され、この凹部とダイアフラム400とから構成され、内部に流体が充填された状態の回転体形状が流体室501である。つまり、流体室501は、上ケース500の凹部の封止面505と内周側壁501aとダイアフラム400によって囲まれた空間となる。流体室501の略中央部には出口流路511が穿設されている。
出口流路511は、流体室501から上ケース500の一方の端面から突設された出口流路管510の端部まで貫通されている。出口流路511の流体室501の封止面505との接続部は、流体抵抗を減ずるために滑らかに丸められている。
なお、以上説明した流体室501の形状は、本実施形態では、両端が封止された略円筒形状としているが、側面視して円錐形や台形、あるいは半球形状等でもよく限定されない。例えば、出口流路511と封止面505との接続部を漏斗のような形状にすれば、後述する流体室501内の気泡を排出しやすくなる。
出口流路管510には接続流路管200が接続されている。接続流路管200には接続流路201が穿設されており、接続流路201の直径は出口流路511の直径より大きい。また、接続流路管200の管部の厚さは、流体の圧力脈動を吸収しない剛性を有する範囲に形成されている。
接続流路管200の先端部には、ノズル211が挿着されている。このノズル211には流体噴射開口部212が穿設されている。流体噴射開口部212の直径は、接続流路201の直径より小さい。
上ケース500の側面には、ポンプ20から流体を供給する接続チューブ25を挿着する入口流路管502が突設されており、入口流路管502に入口流路側の接続流路504が穿たれている。この接続流路504は入口流路503に連通されている。入口流路503は、流体室501の封止面505の周縁部に溝状に形成され、流体室501に連通している。
上ケース500と下ケース301との接合面において、ダイアフラム400の外周方向の離間した位置には、下ケース301側にパッキンボックス304、上ケース500側にパッキンボックス506が形成されており、パッキンボックス304,506にて形成される空間にリング状のパッキン450が装着されている。
ここで、上ケース500と下ケース301とを組立てたとき、ダイアフラム400の周縁部と補強板410の周縁部とは、上ケース500の封止面505の周縁部と下ケース301の凹部303の底面によって密接されている。この際、パッキン450は上ケース500と下ケース301によって押圧されて、流体室501からの流体漏洩を防止している。
流体室501内は、流体吐出の際に例えば30気圧(3MPa)以上の高圧状態となり、ダイアフラム400、補強板410、上ケース500、下ケース301それぞれの接合部において流体が僅かに漏洩することが考えられるが、パッキン450によって漏洩を阻止している。
図2に示すようにパッキン450を配設すると、流体室501から高圧で漏洩してくる流体の圧力によってパッキン450が圧縮され、パッキンボックス304,506内の壁にさらに強く押圧されるので、流体の漏洩を一層確実に阻止することができる。このことから、駆動時において流体室501内の高い圧力上昇を維持することができる。
続いて、上ケース500に形成される入口流路503についてさらに詳しく説明する。
入口流路503は、図4に示すように、上ケース500の封止面505の周縁部に形成された溝部と封止面505に押圧固定される補強板410によって形成される。
入口流路503は、一方の端部が流体室501に連通し、他方の端部が接続流路504に連通している。入口流路503と接続流路504との接続部には、流体溜り507が形成されている。そして、流体溜り507と入口流路503との接続部は滑らかに丸めることによって流体抵抗を減じている。
また、入口流路503は、流体室501の内周側壁501aに対して略接線方向に向かって連通している。ポンプ20から一定の圧力で供給される流体は、内周側壁501aに沿って(図中、矢印で示す方向に)流動して流体室501に旋回流を発生する。旋回流の遠心力により、流体室501内に含まれる低密度の気泡は旋回流の中心部に集中する。
そして、中心部に集められた気泡は、出口流路511から排除される。このことから、出口流路511は旋回流の中心近傍、つまり回転形状体の軸中心部に設けられることがより好ましい。図4の例では、入口流路503は平面形状が渦巻状に湾曲されている。入口流路503は、直線で流体室501に連通させてもよいが、狭いスペースの中で所望のイナータンスを得るために、入口流路503の流路長を長くする必要性から湾曲させている。
なお、図2に示したように、ダイアフラム400と入口流路503が形成されている封止面505の周縁部との間には、補強板410が配設されている。補強板410を設ける意味は、ダイアフラム400の耐久性を向上することである。入口流路503の流体室501との接続部には切欠き状の接続開口部509が形成されるので、ダイアフラム400が高い周波数で駆動されたときに、接続開口部509近傍において応力集中が生じて疲労破壊を発生することが考えられる。そこで、切欠き部がない連続した開口部を有している補強板410を配設することで、ダイアフラム400に応力集中が発生しないようにしている。
また、以上説明した流体噴射部2においては、上ケース500の外周隅部に、4箇所の螺子穴500aが開設されており、この螺子穴位置において、上ケース500と下ケース301とを螺合接合するようにしたがこの構成に限らない。例えば、図示は省略するが、補強板410とダイアフラム400とを接合し、一体に積層固着することができる。固着手段としては、接着剤を用いる貼着としても、固層拡散接合、溶接等を採用することが可能であるが、補強板410とダイアフラム400とが、接合面において密着されていることがより好ましい。
また、以上説明した流体噴射部2においては、出口流路511とノズル211とを接続流路管200を介して接続する構成としているが、この構成に限らず、接続流路管200を用いずに、出口流路511の流体室501とは反対側の端部にノズル211を挿着することも可能である。この場合は、より簡素な構成が可能になる。
また、手術に用いる場合には、接続流路管200を用いてハンドピースと流体噴射口の距離がある構成にしたほうが好適である。
次に、本実施形態の脈動発生部100の流体吐出は、入口流路側のイナータンスL1(合成イナータンスL1と呼ぶことがある)と出口流路側のイナータンスL2(合成イナータンスL2と呼ぶことがある)の差によって行われる。
まず、イナータンスについて説明する。
イナータンスLは、流体の密度をρ、流路の断面積をS、流路の長さをhとしたとき、L=ρ×h/Sで表される。流路の圧力差をΔP、流路を流れる流体の流量をQとした場合に、イナータンスLを用いて流路内の運動方程式を変形することで、ΔP=L×dQ/dtという関係が導き出される。
つまり、イナータンスLは、流量の時間変化に与える影響度合いを示しており、イナータンスLが大きいほど流量の時間変化が少なく、イナータンスLが小さいほど流量の時間変化が大きくなる。
また、複数の流路の並列接続や、複数の形状が異なる流路の直列接続に関する合成イナータンスは、個々の流路のイナータンスを電気回路におけるインダクタンスの並列接続、または直列接続と同様に合成して算出することができる。
なお、入口流路側のイナータンスL1は、接続流路504が入口流路503に対して直径が十分大きく設定されているので、イナータンスL1は、入口流路503のイナータンスのみ算出すればよい。また、ポンプ20と入口流路を接続する接続チューブは柔軟性を有するため、イナータンスL1の算出から除かれる。
また、出口流路側のイナータンスL2は、接続流路201の直径が出口流路よりもはるかに大きく、接続流路管200の管部(管壁)の厚さが薄い場合イナータンスL2への影響は軽微である。従って、出口流路側のイナータンスL2は出口流路511のイナータンスに置き換えてもよい。
接続流路管200の管壁の厚さが厚い場合には、イナータンスL2は、出口流路511、接続流路201及びノズル211の合成イナータンスとなる。
そして、本実施形態では、入口流路側のイナータンスL1が出口流路側のイナータンスL2よりも大きくなるように、入口流路503の流路長及び断面積、出口流路511の流路長及び断面積を設定している。
次に、図5〜図7に基づき、駆動部30の詳細な構成を説明する。
ここで、図5は、駆動部30の詳細な構成を示すブロック図である。また、図6は、駆動部30における信号波形の生成処理を示すフローチャートである。また、図7は、駆動部30における脈動発生部100への駆動信号の供給処理を示すフローチャートである。
駆動部30は、図5に示すように、動作制御部30aと、信号波形生成部30bと、データ記憶部30cと、駆動信号供給部30dと、同期信号発生部30eとを含んで構成されている。
動作制御部30aは、流体噴射装置1の入力装置(不図示)からの操作入力に応じて、各構成部に動作指令を与える役割を担うもので、信号波形の生成処理、駆動信号の供給処理などの各種動作処理を制御する機能を有している。
信号波形生成部30bは、入力装置を介したユーザの入力情報に基づき設定された流体噴射部2の噴射強さに基づき、データ記憶部30cに記憶された波形情報、データテーブル及び測定データを用いて、脈動発生部100を駆動するのに適切な形状の信号波形を生成する機能を有している。
具体的に、駆動信号の1周期の信号波形として、流体室501の容積を圧縮するように圧電素子401を動作させる圧縮駆動波形部と、圧縮状態にある流体室501の容積を圧縮前の状態へと復帰するように圧電素子401を動作させる復帰駆動波形部とを含んで構成される信号波形を生成する。
本実施の形態の信号波形生成部30bは、下式(1)の関係が成立する圧縮駆動波形部及び復帰駆動波形部から構成される信号波形を生成するようになっている。
ここで、圧縮信号波形部の時間幅をTredとし、復帰駆動波形部の時間幅をTexpとする。更に、圧縮駆動波形部の供給期間における流体室501内の平均圧力をPgenとし、復帰駆動波形部の供給期間における流体室501内の入口流路503のポンプ20側にかかる圧力をPsupとする。

red×(Pgen−Psup)≦Texp×Psup ・・・(1)

以下、上式(1)について説明する。
入口流路503の断面積をSとすると、入口流路503の流体室501側に作用する運動量Mgは、「Mg=S×Tred×(Pgen−Psup)」となる。一方、入口流路503のポンプ20側に作用する運動量Msは、「Ms=S×Texp×Psup」となる。また、上記構成の流体噴射部2において、Psupは、Pgenと比較して、通常は、はるかに小さな値(Pgen≫Psup)となることが解っている。従って、上式(1)において、Psupを無視することも可能である。
更に、流体室501の容積が拡大(元の容積に復帰)中の期間(Texpの期間)において、流体室501の平均圧力は、出口流路511のイナータンスで流体が引き出されるため0気圧又はその近傍の気圧(以下、この気圧状態を真空状態という)となる。
つまり、Texpの期間で与えられる運動量Msが、Tredの期間で与えられる運動量Mg以上であれば、流体は元の定常状態に復帰することができる。
ここで、定常状態とは、ポンプ20からの供給圧力と流路全体の流体抵抗とが釣りあっている状態で流体室501を流体が流れている状態のことである。
従って、1周期の信号波形が、上式(1)の関係を満たす時間幅Tredの圧縮駆動波形部及び時間幅Texpの復帰駆動波形部とから構成される駆動信号を、容積変更部を構成する圧電素子401に供給することで、駆動信号の1周期の期間において、流体を元の定常状態へと復帰させることができる。これにより、定常状態に戻る前に圧電素子401に次の1周期の圧縮駆動波形部が供給されるのを防ぐことができるので、それが要因で生じる流体の噴射力の低下を防ぐことができる。
更に、上式(1)の関係を満たす駆動信号を供給することで、入口流路503の流速が復帰するのに必要な時間を有効に用いて流体室501の容積をゆっくりと元の状態に復帰させる(拡大させる)ことができる。これにより、真空泡の拡大が抑制され、その真空泡へのガスの放出が小さくなるので、流体室501内にガス泡が略無い状態で定常状態へと復帰させることができる。これにより、ガス泡による流体室501の剛性低下が要因で生じる流体の噴射力の低下を軽減することができる。
本実施の形態の信号波形生成部30bは、更に、データ記憶部30cに記憶された、周期の異なる複数種類の正弦波の波形情報を用いて、上式(1)を満たす信号波形を生成するようになっている。ここで、波形情報とは、複数種類の正弦波信号の1周期の信号レベル(例えば、電圧値)を、Δt(1周期より短い時間)の時間間隔でサンプリングして得たデータ(デジタルデータ)である。
具体的には、本実施の形態の信号波形生成部30bは、信号波形を、周期の異なる2つの正弦波信号の一部のデータを合成して生成するようになっている。例えば、一方の正弦波の前半半周期(T1/2(λ1/2))と、他方の正弦波の後半半周期(T2/2(λ2/2)))とをつなぎ合せて生成する。
なお、正弦波の波形情報は、基本情報を1つだけ、又はいくつかを記憶し、この基本情報から演算処理によって所望の波形情報を生成するようにしてもよい。
本実施の形態の信号波形生成部30bは、例えば、電源投入時や、流体噴射部2を交換時などにおいて、波形情報の較正を行うときなどに用いられる。
そのため、ユーザによって設定された噴射強さに対応する信号波形のTred及びTexpを、流体噴射部2の有する、流体室501や入口流路503などの圧力を測定できる圧力センサ(図示は省略)からの測定データなどに基づき決定する機能を有している。
具体的に、信号波形を生成するにあたって、まず、データ記憶部30cに記憶されたデータテーブルによって、ユーザによって設定された噴射強さに対応するTred及び仮のTexpを決定し、このTred及び仮のTexpに基づき駆動信号波形を生成する。次に、この駆動信号波形で脈動発生部100(圧電素子401)を駆動し、そのときのPgen及びPsupを圧力センサの検出データに基づき測定する。更に、この測定したPgen及びPsupが上式(1)の関係を満たすように、Texpを調整する。以降は、測定したPgen及びPsupが上式(1)の関係を満たすまで、決定したTred及び調整後のTexpに基づく駆動信号波形の生成、生成した信号波形による脈動発生部100の駆動、及びTexpの調整を繰り返し行う。
次に、データ記憶部30cは、周期や振幅の異なる複数種類の正弦波の上記した波形情報、設定された噴射強さに対するTred及びTexpを決定するためのデータテーブル、それ以外の各構成部の処理に用いるデータなどを記憶する記憶媒体を含んで構成され、各構成部からの読み出し要求に応じて記憶媒体に記憶されたデータを読み出し、各構成部からの書き込み要求に応じて記憶媒体にデータを書き込む機能を有している。つまり、波形情報記憶部としての機能に加え、他に必要なデータも記憶する機能を有している。
駆動信号供給部30dは、動作制御部30aから駆動信号の供給指令に応じて、同期信号発生部30eからの同期信号に同期させて、駆動信号を脈動発生部100を構成する容積変更部の圧電素子401に供給する機能を有している。
具体的に、供給指令に含まれる波形指定情報に基づき、該当する波形情報(デジタルの波形データ)をデータ記憶部30cから読み出し、該読み出した波形情報をDA変換してアナログの駆動信号を生成し、該生成した駆動信号を同期信号に同期させて圧電素子401に供給する。なお、波形指定情報は、上記信号波形生成部30bで生成した信号波形に付された識別情報などとなる。
また、駆動信号の供給途中で動作制御部30aから停止指令が入力されたときに、供給途中の1周期の波形を最後まで圧電素子401に供給してから駆動信号の供給を停止するようになっている。
同期信号発生部30eは、セラミック振動子、水晶振動子などの発振子、カウンタ(又はPLL回路)などを含み、発振子から出力される信号を基準クロック信号clkとして、該clkから同期信号を生成する機能を有している。そして、基準クロック信号及び同期信号を駆動信号供給部30dに供給する。
なお、駆動部30は、上記各構成部の機能をソフトウェアを用いて実現するため、および上記各機能の実現に必要なハードウェアを制御するソフトウェアを実行するためのコンピュータシステムを備えている。このコンピュータシステムのハードウェア構成は、図示しないが、プロセッサ(Processer)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)とを有し、これらの間を各種内外バスで接続した構成となっている。
更に、バスには、IEEE1394、USB、パラレルポート等の入出力インターフェース(I/F)を介して、例えば、CRTまたはLCDモニター等の表示装置、操作パネル、マウス、キーボード等の入力装置が接続されている。
そして、電源を投入すると、ROM等に記憶されたシステムプログラムが、ROMに予め記憶された上記各部の機能を実現するための各種専用のコンピュータプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムに記述された命令に従ってプロセッサが各種リソースを駆使して所定の制御および演算処理を行うことで前述したような各機能をソフトウェア上で実現するようになっている。
次に、図6に基づき、信号波形生成部30bにおける信号波形生成処理の流れを説明する。
プロセッサによって専用のプログラムが実行され、信号生成処理が開始されると、図6に示すように、まず、ステップS100に移行する。
ステップS100では、信号波形生成部30bにおいて、動作制御部30aからの信号波形の生成指令が入力されたか否かを判定し、入力されたと判定した場合(Yes)は、ステップS102に移行し、そうでない場合(No)は、入力されるまで判定処理を繰り返す。
ステップS102に移行した場合は、信号波形生成部30bにおいて、流体の噴射強さの設定画面を表示して、ステップS104に移行する。
ステップS104では、信号波形生成部30bにおいて、入力装置を介してユーザによって噴射強さが設定されたか否かを判定し、設定されたと判定した場合(Yes)は、ステップS106に移行し、そうでない場合(No)は、設定されるまで判定処理を繰り返す。
ステップS106に移行した場合は、信号波形生成部30bにおいて、データ記憶部30cに記憶された所定の噴射強さに対する圧縮信号波形部の時間幅Tredが登録されたデータテーブルに基づき、ステップS104で設定された噴射強さに対するTredを決定して、ステップS108に移行する。
ステップS108では、信号波形生成部30bにおいて、データ記憶部30cに記憶された所定種類の噴射強さに対する復帰信号波形部の時間幅Texpが登録されたデータテーブルに基づき、ステップS104で設定された噴射強さに対する仮のTexpを決定し、ステップS110に移行する。
ステップS110では、信号波形生成部30bにおいて、データ記憶部30cに記憶された複数種類の正弦波の波形情報から、ステップS106で決定したTred及びステップS108で仮決定したTexpにそれぞれ対応する2種類の波形情報を読み出して、ステップS112に移行する。
ステップS112では、信号波形生成部30bにおいて、ステップS112で読み出した2種類の波形情報から生成される信号波形の一方の前半半周期と他方の後半半周期とを合成して1周期の信号波形を生成して、ステップS114に移行する。
ステップS114では、信号波形生成部30bにおいて、動作制御部30aに、駆動信号供給部30dにステップS112で生成した信号波形によって脈動発生部100を駆動させるための駆動要求を出力して、ステップS116に移行する。
ステップS116では、駆動信号供給部30dにおいて、動作制御部30aからの駆動指令に応じて、同期信号発生部30eからの同期信号に同期して、ステップS112で生成したデジタルの波形信号(波形情報)をアナログの波形信号にDA変換してなる駆動信号を、脈動発生部100の圧電素子401に出力して、ステップS118に移行する。
ステップS118では、信号波形生成部30bにおいて、ステップS116の圧電素子401への駆動信号の供給に応じて、流体噴射部2に設けられた圧力センサからの検出データに基づき、圧縮駆動波形部の供給期間における流体室501内の平均圧力Pgenと、復帰駆動波形部の供給期間における流体室501内の入口流路503のポンプ20側にかかる圧力Psupとを測定して、ステップS120に移行する。
ステップS120では、信号波形生成部30bにおいて、ステップS118で測定したPgen及びPsupと、決定されたTred及びTexpとが、上式(1)の関係を満たすか否かを判定し、満たすと判定した場合(Yes)は、ステップS122に移行し、そうでない場合(No)は、ステップS128に移行する。
ステップS122に移行した場合は、信号波形生成部30bにおいて、ステップS112で生成した信号波形の波形情報を、該波形情報に固有の識別情報と対応付けてデータ記憶部30cに記憶して、ステップS124に移行する。
ステップS124では、信号波形生成部30bにおいて、駆動停止要求を動作制御部30aに出力して、ステップS126に移行する。
ステップS126では、駆動信号供給部30dにおいて、1周期分の信号波形を全て出力後に、駆動信号の供給を停止して、一連の処理を終了する。
一方、ステップS120において条件を満足せずに、ステップS128に移行した場合は、信号波形生成部30bにおいて、上式(1)の関係を満たすように、Texpを調整して、ステップS130に移行する。
ステップS130では、信号波形生成部30bにおいて、データ記憶部30cに記憶された複数種類の正弦波の波形情報から、ステップS106で決定したTred及びステップS122で調整後のTexpにそれぞれ対応する2種類の波形情報を読み出して、ステップS112に移行する。
なお、ステップS102〜S104における流体の噴射強さの設定は、流体噴射部2の性能に応じた範囲指定で行うようにしてもよい。この場合は、設定された範囲における噴射強さ毎に、ステップS106〜S124の処理を繰り返し行うようにする。
次に、図7に基づき、駆動信号供給部30dにおける駆動信号供給処理の流れを説明する。
プロセッサにより専用のプログラムが実行され、駆動信号供給処理が開始されると、図7に示すように、まず、ステップS200に移行する。
ステップS200では、駆動信号供給部30dにおいて、動作制御部30aからの駆動指令が入力されたか否かを判定し、入力されたと判定した場合(Yes)は、ステップS202に移行し、そうでない場合(No)は、ステップS200に移行する。
ステップS202に移行した場合は、駆動信号供給部30dにおいて、駆動指令に含まれる指定波形の識別情報に基づき、流体噴射部2の駆動に用いる波形種類の波形情報を設定して、ステップS204に移行する。
ステップS204では、駆動信号供給部30dにおいて、ステップS202で設定された波形種類の波形情報をデータ記憶部30cから読み出して、ステップS206に移行する。
ステップS206では、駆動信号供給部30dにおいて、同期信号発生部30eからの同期信号に同期して、読み出したデジタルの波形信号をアナログの波形信号にDA変換してなる駆動信号を、脈動発生部100の圧電素子401に出力して、ステップS208に移行する。
ステップS208では、駆動信号供給部30dにおいて、動作制御部30aから停止指令が入力されたか否かを判定し、入力されたと判定した場合(Yes)は、ステップS210に移行し、そうでない場合(No)は、ステップS206の駆動信号の出力処理を続行する。
ステップS210に移行した場合は、駆動信号供給部30dにおいて、1周期分の信号波形を全て出力後に、駆動信号の供給を停止して、ステップS212に移行する。
ステップS212では、駆動信号供給部30dにおいて、動作制御部30aから再開指令が入力されたか否かを判定し、入力されたと判定した場合(Yes)は、ステップS206に移行して駆動信号の出力処理を再開し、そうでない場合(No)は、ステップS214に移行する。
ステップS214に移行した場合は、動作制御部30aから終了指令が入力されたか否かを判定し、入力されたと判定した場合(Yes)は、駆動信号供給処理を終了し、そうでない場合(No)は、ステップS212に移行する。
次に、図8に基づき、本実施の形態の流体噴射装置1の具体的な動作を説明する。
ここで、図8は、2種類の正弦波を合成して生成した信号波形の一例を示す図である。
まず、信号波形の生成処理の具体的な動作について説明する。
入力装置を介して利用者からの信号波形の較正指示が駆動部30に入力されると、動作制御部30aは、信号波形の生成指令を信号波形生成部30bに出力する。
一方、信号波形生成部30bは、信号波形の生成指令を受けると、流体の噴射強さの設定処理に移行する(ステップS100の「Yes」の分岐)。
信号波形生成部30bは、まず、不図示の表示部に、ユーザが所望する流体の噴射強さの設定画面を表示して(ステップS102)、ユーザに噴射強さの設定を促す。
入力装置を介したユーザの入力情報によって噴射強さが設定されると(ステップS104の「Yes」の分岐)、データ記憶部30cに記憶されたTredを決定するためのデータテーブルに基づき、設定された噴射強さに対応するTred(設定された噴射強さに一番近い値に対応するもの)を決定する(ステップS106)。
引き続き、データ記憶部30cに記憶されたTexpを仮決定するためのデータテーブルに基づき、設定された噴射強さに対応する仮のTexp(設定された噴射強さに一番近い値に対応するもの)を決定する(ステップS108)。
red及び仮のTexpが決定されると、信号波形生成部30bは、次に、データ記憶部30cから、1周期が、決定したTredの2倍(例えば、0.2[ms])に最も近い正弦波sin1の前半半周期の波形情報と、1周期が、決定した仮のTexpの2倍に最も近い正弦波sin2の後半半周期の波形情報とを読み出す(ステップS110)。
そして、これら読み出した2種類の波形情報を合成して、圧縮駆動波形部が上記決定したTredの時間幅となり、且つ復帰駆動波形部が上記仮決定したTexpの時間幅となる信号波形の波形情報を生成する(ステップS112)。
信号波形が生成されると、信号波形生成部30bは、該生成した信号波形で駆動信号供給部30dに脈動発生部100の圧電素子401を駆動させるための駆動要求を動作制御部30aに出力する(ステップS114)。
これにより、動作制御部30aは、上記生成された信号波形の駆動信号を圧電素子401に供給させる、駆動信号の供給指令を駆動信号供給部30dに出力する。
一方、駆動信号供給部30dは、動作制御部30aから、上記生成した信号波形の駆動信号の供給指令を受けると、同期信号発生部30eからの同期信号に同期して、供給指令に含まれる波形情報をDA変換し、DA変換後のアナログ信号を駆動信号として脈動発生部100の圧電素子401に出力する(ステップS116)。
信号波形生成部30bは、圧電素子401への駆動信号の供給が開始されると、流体噴射部2に設けられた圧力センサからの検出データに基づき、流体室501内の平均圧力Pgenと、流体室501内の入口流路503のポンプ20側にかかる圧力Psupとを測定する(ステップS118)。
そして、測定したPgen及びPsupが、上式(1)の関係を満たすか否かを判定する(ステップS120)。
例えば、圧力センサの検出データに基づき、Pgen=12気圧(1.2MPa)と、Psup=2気圧(0.2MPa)とが取得されたとする。
この場合は、上式(1)より、「0.1×(12−2)≦Texp×2=0.5≦Texp」となる。従って、Texpが0.5[ms]未満のときは、上式(1)の関係を満たしていないと判定される(ステップS120の「No」の分岐)。
例えば、現在のTexpが0.4[ms]であった場合は、上式(1)の関係を満たしていないと判定され、現在のTexp(0.4[ms])に0.1[ms]を加えるなどの調整を施す(ステップS128)。そして、上記決定したTred及び調整後のTexpに対応する波形情報をデータ記憶部30cから読み出し(ステップS130)、これら波形情報に基づき、Texpを調整後の波形情報を生成する(ステップS112)。
具体的に、図8の太線波形に示すように、1周期の信号波形における、圧縮駆動波形部Wcとなる正弦波sin1の前半半周期(λ/2)の最大値と、復帰駆動波形部Wrとなる正弦波sin2の後半半周期(λ/2)の最大値とを接続した合成波形が生成される。
信号波形生成部30bは、生成した波形情報の信号波形で圧電素子401を駆動するように駆動要求を動作制御部30aに出力する(ステップS114)。これにより、調整後の信号波形によって圧電素子401が駆動され(ステップS116)、再び、圧力センサの検出データに基づき、Pgenと、Psupとが測定される(ステップS118)。
そして、再び、Pgen=12気圧(1.2MPa)と、Psup=2気圧(0.2MPa)とが取得されたとすると、今度は、Tredが0.1[ms]及びTexpが0.5[ms]となっているので、上式(1)の関係を満たすと判定される(ステップS120の「Yes」の分岐)。
red及びTexpが上式(1)の関係を満たすと判定されると、信号波形生成部30bは、このTred及びTexpに対応する1周期分の信号波形の波形情報を、識別情報に対応付けてデータ記憶部30cに記憶する(ステップS122)。
なお、この場合は、Tredの0.1[ms]に対して、Texpを0.5[ms]以上の値に決定しても問題ない。
また、1周期の波形情報に限らず、複数周期の波形情報として記録するようにしてもよい。その場合は、隣り合う上記1周期の波形において、一方の圧縮駆動波形部と他方の復帰駆動波形部の最低値同士を接続する。
上式(1)の関係を満たす波形情報が記憶されると、信号波形生成部30bは、駆動中の圧電素子401を停止させるための駆動停止要求を動作制御部30aに出力する(ステップS124)。
これにより、動作制御部30aは、圧電素子401への駆動信号の供給を停止させる、駆動信号の供給停止指令を駆動信号供給部30dに出力する。
一方、駆動信号供給部30dは、動作制御部30aから、駆動信号の供給停止指令を受けると、1周期分の信号波形を全て出力後に、駆動信号の供給を停止する(ステップS126)。
次に、駆動信号の供給処理の具体的な動作について説明する。
利用者によって駆動スイッチ(不図示)が押下され、駆動信号の供給指示が駆動部30に入力されると、動作制御部30aは、駆動信号の供給指令を駆動信号供給部30dに出力する。
一方、駆動信号供給部30dは、駆動信号の供給指令を受けると、波形情報の設定処理に移行する(ステップS200の「Yes」の分岐)。
供給指令には、駆動信号として用いる波形情報の識別情報を含む指定波形情報が含まれているので、指定波形情報に対応する識別情報の波形情報を駆動に用いる波形情報として設定する(ステップS202)。ここでは、上記生成した図8に示す太線の信号波形の波形情報が設定されたとする。
駆動信号に用いる波形情報が設定されると、次に、データ記憶部30cから設定された波形情報に対応する波形情報をRAMなどのワークメモリに読み出す(ステップS204)。次に、同期信号発生部30eからの同期信号に同期して、ワークメモリに読み出した波形情報をDA変換し、DA変換後のアナログ信号を駆動信号として脈動発生部100の圧電素子401に出力する(ステップS206)。
駆動信号の供給前は、ポンプ20によって入口流路503には、常に一定圧力の液圧で流体が供給されている。その結果、圧電素子401が動作を行わない場合、ポンプ20の吐出力と入口流路側全体の流体抵抗値の差によって流体は流体室501内に流動する。
ここで、圧電素子401に駆動信号が入力され、Tred(0.1[ms])の時間で急激に圧電素子401が伸張したとすると、流体室501内の圧力は、入口流路側及び出口流路側のイナータンスL1,L2が十分な大きさを有していれば急速に上昇して数十気圧に達する。
この圧力は、入口流路503に加えられていたポンプ20による圧力よりはるかに大きいため、入口流路側から流体室501内への流体の流入はその圧力によって減少し、出口流路511からの流出は増加する。
しかし、入口流路503のイナータンスL1は、出口流路511のイナータンスL2よりも大きいため、入口流路503から流体が流体室501へ流入する流量の減少量よりも、出口流路から吐出される流体の増加量のほうが大きいため、接続流路201にパルス状の流体吐出、つまり、脈動流が発生する。この吐出の際の圧力変動が、接続流路管200内を伝播して、先端のノズル211の流体噴射開口部212から流体が噴射される。
ここで、ノズル211の流体噴射開口部212の直径は、出口流路511の直径よりも小さいので、流体は、さらに高圧、高速のパルス状の液滴として噴射される。
一方、流体室501内は、入口流路503からの流体流入量の減少と出口流路511からの流体流出の増加との相互作用で、圧力上昇直後に真空状態となる。
一方、圧力上昇後は、Texp(0.5[ms])の期間において、伸長状態にある圧電素子401は、伸長時の時間Tred(0.1[ms])の5倍の時間をかけてゆっくりと収縮していく。これによって、真空泡の拡大が抑制されるので、流体室501内のガスの発生を抑えつつ、流体の流れは、駆動信号を供給する前の定常状態へと復帰する。
なお、流体室501が、略回転体形状を有し、入口流路503を備えていることと、出口流路511が略回転体形状の回転軸近傍に開設されていることから、流体室501内において旋回流が発生し、流体内に含まれる気泡(真空泡及びガス泡)は速やかに出口流路511から外部に排出される。
従って、図8に示す太線の信号波形の駆動信号を連続で圧電素子401に供給することで、高い噴射力を維持した状態で、ノズル211からの脈動流を継続して噴射することができる。
更に、図8の細線波形に示すように、Tredの期間の駆動電流のレベルと比較して、Texpの期間の駆動電流のレベルを低く抑えることができる。従って、圧電素子401を駆動する駆動回路にブリッジ回路などを用いている場合に、回路に用いるトランジスタのうち、電流放出用のトランジスタ(例えば、ローサイド側のトランジスタ)の最大電流定格値を低く抑えることができるので、トランジスタにかかるコストを低減することができる。
また、駆動信号の1周期の信号波形を、図8の太線波形に示すように正弦波の組み合わせで生成するようにしたので、異なる周期の信号波形を滑らかに接続することができ、流体噴射部2の機構部へのストレスを小さくすることができる。
また、信号波形生成部30bにおいて、流体噴射部2のPgen及びPsupの値に応じて、適切な信号波形の波形情報を生成することができるので、Pgen及びPsupの異なる流体噴射部への交換などを容易に行うことができる。
〔第2の実施の形態〕
以下、本発明の第2の実施の形態を図面に基づき説明する。図9は、本発明に係る流体噴射装置、流体噴射装置の駆動装置、流体噴射装置の駆動方法及び手術用器具の第2の実施の形態を示す図である。
本実施の形態は、上記第1の実施の形態と比較して、駆動部30の信号波形生成部30bにおける、上式(1)の関係を満たす信号波形の作成方法が一部異なる。従って、他の構成部については、上記第1の実施の形態の駆動部30と同様となるので、以下、異なる部分を詳細に説明し、重複する部分は適宜説明を省略する。
本実施の形態における信号波形生成部30bは、圧縮駆動波形部と復帰駆動波形部との間に、復帰駆動波形部の一部を拡張して、流体室501を圧縮後に、その容積を維持(容積変更を停止)するように圧電素子401を駆動する出力レベルの波形部の設けられた信号波形を生成するようになっている。
ここで、図9(a)は、波形の拡張方法の一例を示す図であり、(b)は、本実施の形態の駆動信号の信号波形の一例を示す図である。
具体的には、図9(a)に示す正弦波信号の前半半周期t1を上式(1)の関係を満たす時間幅Tred(t1=Tred)の圧縮駆動波形部とし、同じ正弦波信号の後半半周期t2(t1=t2)における最大値の期間を、上式(1)の関係を満たすTexpの期間に拡張し、この拡張部を含む波形部を復帰駆動波形部とした図9(b)に示すような波形形状の信号波形を生成する。
つまり、真空泡の拡大は、圧電素子401の伸長後(容積圧縮後)の急激な伸縮動作による流体室501の容積の急な拡大によって生じ易くなるので、容積圧縮後に圧電素子の状態を伸長させたまま維持することで、真空泡の拡大を防ぎ、ガス泡の発生を抑制することができる。また、圧縮状態で真空泡の消失を待つことになるので、上記第1の実施の形態よりも短い時間で真空泡を消失させることができ、ひいては上記第1の実施の形態よりも短い時間で定常状態に復帰させることができる。
次に、本実施の形態の信号波形生成処理の流れを説明する。
本実施の形態の信号波形生成処理は、上記第1の実施の形態の図6のフローチャートにおけるステップS110、S112及びS130の処理内容が異なるのみで、他のステップの処理は同様となる。
以下、本実施の形態のステップS110及びS112の処理を説明する。
ステップS110では、信号波形生成部30bにおいて、データ記憶部30cに記憶された複数種類の正弦波の波形情報から、ステップS106で決定したTredに対応する波形情報を読み出して、ステップS112に移行する。
ステップS112では、信号波形生成部30bにおいて、ステップS108で仮決定したTexpに基づき、ステップS110で読み出した波形情報の後半半周期を拡張した信号波形を生成して、ステップS114に移行する。
なお、ステップS130では、調整後のTexpに基づき、Tredに対応する波形情報の後半半周期を拡張した信号波形を生成する。
ここで、Tredに対応する波形情報は、合致するものが無い場合は最も近いものを読み出し、補正して用いる。
次に、図9に基づき、本実施の形態の流体噴射装置1の具体的な動作を説明する。
まず、信号波形の生成処理の具体的な動作について説明する。
redの決定処理及びTexpの仮決定処理は上記第1の実施の形態と同様となるので、決定後の処理から説明する。
red及び仮のTexpが決定されると、信号波形生成部30bは、次に、データ記憶部30cから、1周期が、決定したTredの2倍(例えば、0.2[ms])に最も近い正弦波sin1の前半半周期の波形情報を読み出す(ステップS110)。
そして、上記読み出した波形情報における、後半半周期の最大値の期間を拡張して、後半半周期が少なくとも仮決定されたTexpの期間以上となるようにした信号波形の波形情報を生成する(ステップS112)。
以降の処理(ステップS114〜S120,S128)は、上記第1の実施の形態と同様となるので、ステップS128でTexpを調整後の処理から説明する。
信号波形生成部30bは、Texpを調整すると、上記決定したTredの2倍の周期に対応する台形波の波形情報をデータ記憶部30cから読み出し(ステップS130)、読み出した波形情報のうち節点CとEの間の時間幅を、調整後のTexpとなるよう補正して、Texpを調整後の波形情報を生成する(ステップS112)。
そして、駆動要求を出力して(ステップS114)、駆動信号供給部30dに、この生成した波形情報の信号波形によって圧電素子401を駆動させる(ステップS116)。
圧電素子401に駆動信号が供給されると、信号波形生成部30bは、Pgen及びPsupを測定し(ステップS118)、これら測定結果と、Tred及び調整後のTexpとが、上式(1)の関係を満たすか否かを判定する(ステップS120)。
この判定により、Texpを調整後の波形情報が、上式(1)の関係を満たしている場合(ステップS120の「Yes」の分岐)は、この波形情報を、識別番号に対応付けてデータ記憶部30cに記憶する(ステップS122)。以降のステップS124〜S126の処理は、上記第1の実施の形態と同様となるので説明を省略する。
上式(1)の関係を満たすようにTexpが調整されると、上記決定したTredに対応する波形情報をデータ記憶部30cから読み出し(ステップS130)、読み出した波形情報のうち後半半周期を、調整後のTexpに基づき拡張して、Texpを調整後の波形情報を生成する(ステップS112)。
具体的に、図9(b)に示すように、復帰駆動波形部の最大値の期間が約0.4[ms]間継続する波形形状となる信号波形を生成する。
この生成した1周期分の信号波形の波形情報は、識別番号に対応付けてデータ記憶部30cに記憶される(ステップS122)。なお、1周期の波形情報に限らず、複数周期の波形情報として記録するようにしてもよい。その場合は、隣り合う上記1周期の波形において、一方の圧縮駆動波形部と他方の復帰駆動波形部の最低値同士を接続する。
駆動信号供給処理の動作は上記第1の実施の形態と同様となるので説明を省略する。
以上、上記生成した図9(b)に示す信号波形の駆動信号を、脈動発生部100の圧電素子401に供給することで、0.1[ms]間の圧縮駆動波形部の期間において急激に圧電素子を伸長させて流体室501の容積圧縮後に、圧電素子の状態を伸長させたまま維持することで、真空泡の拡大を防ぎ、ひいてはガス泡の発生を抑制することができる。
〔第3の実施の形態〕
以下、本発明の第3の実施の形態を図面に基づき説明する。図10〜図14は、本発明に係る流体噴射装置、流体噴射装置の駆動装置、流体噴射装置の駆動方法及び手術用器具の第3の実施の形態を示す図である。
本実施の形態は、上記第1及び第2の実施の形態と比較して、駆動部30のデータ記憶部30cに記憶される波形情報の内容と、駆動部30の信号波形生成部30bにおける、上式(1)の関係を満たす信号波形の作成方法の一部と、駆動部30の駆動信号供給部30dにおける駆動信号の供給方法とが異なる。従って、他の構成部については、上記第1及び第2の実施の形態の駆動部30と同様となるので、以下、異なる部分を詳細に説明し、重複する部分は適宜説明を省略する。
本実施の形態の信号波形生成部30bは、入力装置を介したユーザの入力情報に基づき設定された流体噴射部2の噴射強さに基づき、データ記憶部30cに記憶された台形波の波形情報、データテーブル及び測定データを用いて、上式(1)の関係を満たすTred及びTexpを決定し、脈動発生部100を駆動するのに適切な形状の台形波となる信号波形を生成する機能を有している。
具体的に、上記第1の実施の形態と同様に、上式(1)の関係を満たす、Tredの時間幅の圧縮駆動波形部と、Texpの時間幅の復帰駆動波形部とを有する台形波の信号波形を生成する。そして、生成した台形波の節点情報を波形情報として、データ記憶部30cに記憶する。
本実施の形態のデータ記憶部30cは、周期や振幅の異なる複数種類の台形波の1周期の節点の情報(時間、電圧レベル)を波形情報として記憶し、更にそれ以外の各構成部の処理に用いるデータを記憶する記憶媒体を含んで構成され、各構成部からの読み出し要求に応じて記憶媒体に記憶されたデータを読み出し、各構成部からの書き込み要求に応じて記憶媒体にデータを書き込む機能を有している。
次に、図10に基づき、本実施の形態の駆動信号供給部30dの詳細な構成を説明する。
ここで、図10は、本実施の形態の駆動信号供給部30dの詳細な構成を示すブロック図である。
本実施の形態の駆動信号供給部30dは、図10に示すように、補間部31と、カウンタ33と、増幅器35とを含んだ構成となっている。
補間部31は、動作制御部30aからの駆動信号の供給指令に応じて、データ記憶部30cから駆動信号として用いる台形波の節点情報を読み出し、この節点情報に基づき、脈動発生部100に駆動信号を供給するためのカウンタ33の動作条件を設定する機能を有している。
ここで、図11は、駆動信号を構成する台形波の一例を示す図である。
データ記憶部30cには、図11に示す台形波の節点A〜Eの電圧情報及び時間情報が波形情報として記憶されている。節点A〜Cの波形情報によって、圧縮駆動波形部が構成され、接点C〜Eの波形情報によって、復帰駆動波形部が構成される。また、時間情報が絶対時間の情報であれば、節点Cの絶対時間から節点Aの絶対時間を引いた差の時間がTredとなり、節点Eの絶対時間から節点Cの絶対時間を引いた差の時間がTexpとなる。
そして、カウンタの動作条件は、各節点の波形情報から、隣り合う節点間の波形データをクロック信号clkの分解能で補間して、台形波の節点の情報から連続的なアナログの台形波の信号情報へとDA変換するための条件となる。従って、カウンタの動作条件として、カウント初期値、カウントの増減回数(時間方向)、カウントの増減量(電圧方向)などが設定される。
カウンタ33は、補間部31によって設定された動作条件に基づき同期信号発生部30eからのクロック信号clkのカウント動作を行ない、動作条件に応じたカウント値の信号を増幅器35に出力する機能を有している。
増幅器35は、カウンタ33から入力される信号を、圧電素子401を駆動するのに適切なレベルに増幅して、脈動発生部100の圧電素子401に出力する機能を有している。
次に、図12に基づき、本実施の形態の駆動信号供給部30dにおける駆動信号供給処理の流れを説明する。
ここで、図12は、駆動信号供給処理における本実施の形態の駆動信号の出力処理(上記第1の実施の形態のステップS204〜ステップS206に対応)を示すフローチャートである。
駆動信号の出力処理が開始されると、図12に示すように、まず、ステップS300に移行する。
ステップS300では、補間部31において、データ参照アドレスAに、駆動信号として設定された波形情報の開始アドレスを設定して、ステップS302に移行する。
ステップS302では、補間部31において、アドレスAの時刻データ「read(A,1)」を変数T(1)に読み込んで、ステップS304に移行する。
これにより、「T(1)=read(A,1)」となる。
ステップS304では、補間部31において、アドレスAの波形データ「read(A,2)」を変数D(1)に読み込んで、ステップS306に移行する。
これにより、「D(1)=read(A,2)」となる。
ステップS306では、補間部31において、変数cntに、カウンタの初期値としてステップS304で読み込んだD(1)の値をセットして、ステップS308に移行する。
これによって、「cnt=D(1)=read(A,2)」となる。
ステップS308では、補間部31において、後述するカウンタ条件セット処理を実行してカウンタ条件をセットし、ステップS310に移行する。
ステップS310では、補間部31において、同期信号を検出したか否かを判定し、検出したと判定した場合(Yes)は、ステップS312に移行し、そうでない場合(No)は、同期信号を検出するまで判定処理を繰り返す。
ステップS312に移行した場合は、補間部31において、変数kに「0」を設定して、ステップS314に移行する。ここで変数kは、カウンタのカウント回数を計数する変数である。
ステップS314では、カウンタ33において、変数kの値は変数Nの値よりも小さいか否かを判定し、小さいと判定した場合(Yes)は、ステップS316に移行し、そうでない場合(No)は、ステップS322に移行する。ここで変数Nは、ある節点から次の節点に至るまでに必要な時間軸のカウント回数を設定する変数であり、後述するカウンタ条件セット処理において設定される。
ステップS316に移行した場合は、カウンタ33において、増幅器35に信号波形を出力して、ステップS318に移行する。
ステップS318では、補間部31において、変数cntの現在の値に変数Sの値を加算して、ステップS320に移行する。ここで、変数Sは、ある節点から次の節点に至るまでの、カウント1回あたりの電圧軸のカウント増減量を設定する変数であり、後述するカウンタ条件セット処理において設定される。変数Sの値が正であれば、カウンタ33はSの値だけカウントアップされ、変数Sの値が負であれば、カウンタ33はSの値だけカウントダウンされる。
ステップS320では、補間部31において、変数kの現在の値に1を加算して、ステップS314に移行する。
一方、ステップS314において、変数kの値が変数Nの値以上となり、ステップS322に移行した場合は、補間部31において、次の節点データがあるか否かを判定し、あると判定した場合(Yes)は、ステップS324に移行し、そうでない場合(No)は、一連の処理を終了して元の処理に復帰する。
ステップS324に移行した場合は、補間部31において、カウンタ条件セット処理を実行してカウンタ条件をセットし、ステップS312に移行する。
次に、図13に基づき、ステップS308、S324のカウンタ条件セット処理の流れを説明する。
ここで、図13は、ステップS308、S324のカウンタ条件セット処理を示すフローチャートである。
ステップS308、又はS324に移行し、カウンタ条件セット処理が開始されると、図13に示すように、まず、ステップS400に移行する。
ステップS400では、補間部31において、データ参照アドレスAの値に1を加算して、ステップS402に移行する。
ステップS402では、補間部31において、アドレスAの時刻データを変数T(2)に読み込んで、ステップS404に移行する。
これにより、「T(2)=read(A,1)」となる。
ステップS404では、補間部31において、アドレスAの波形データを変数D(2)に読み込んで、ステップS406に移行する。
これにより、「D(2)=read(A,2)」となる。
ステップS406では、補間部31において、変数T(2)の値から変数T(1)の値を減算した値をクロック信号clkの1周期の時間(t_clk)で除算した値を、次の節点に至るまでに必要な時間軸のカウント回数として変数Nに代入して、ステップS408に移行する。
ステップS408では、補間部31において、変数D(2)の値から変数D(1)の値を減算し、その減算結果を変数Nの値で除算した値を、カウント1回あたりの電圧軸のカウント増減量として変数Sに代入して、ステップS410に移行する。
ステップS410では、補間部31において、変数T(1)に変数T(2)の値を代入し、変数D(1)に変数D(2)の値を代入して、一連の処理を終了し元の処理に復帰する。
次に、図14及び図15に基づき、本実施の形態の流体噴射装置1の具体的な動作を説明する。
ここで、図14は、本実施の形態の波形情報の一例を示す図である。また、図15は、台形波の駆動信号の出力例を示す図である。
redの決定処理及びTexpの仮決定処理は上記第1の実施の形態と同様となるので、決定後の処理から説明する。
red及び仮のTexpが決定されると、信号波形生成部30bは、次に、データ記憶部30cから、1周期が、決定したTredの2倍(例えば、0.2[ms])に最も近い台形波の波形情報を読み出す(ステップS110)。
ここで、読み出した台形波の波形情報における節点AとEの間の時間幅が上記決定したTredと異なっている場合は、読み出した波形情報の時間情報を補正する。
そして、上記読み出した台形波の波形情報における節点CとEの間の時間幅を、仮決定されたTexp以上となるよう補正する。このようにして、1種類の台形波の波形情報を補正することによって、台形波の信号波形の波形情報を生成する(ステップS112)。
なお、台形波の信号波形の他の生成方法としては、上記第1の実施の形態のように、周期の異なる2種類の台形波の波形情報の一方の前半半周期と他方の後半半周期とを合成して生成する方法がある。更に、その節点AとEの間の時間幅の補正は上記同様で、節点CとEの間の時間幅を補正するときに、上記第2の実施の形態のように、節点CとDとの間の時間幅を拡張して行う方法がある。
以降の処理(ステップS114〜S120、S128)は、上記第1の実施の形態と同様となるので、ステップS128でTexpを調整後の処理から説明する。
信号波形生成部30bは、Texpを調整すると、上記決定したTredの2倍の周期に対応する台形波の波形情報をデータ記憶部30cから読み出し(ステップS130)、読み出した波形情報のうち節点CとEの間の時間幅を、調整後のTexpとなるよう補正して、Texpを調整後の波形情報を生成する(ステップS112)。
そして、駆動要求を出力して(ステップS114)、駆動信号供給部30dに、この生成した波形情報の信号波形によって圧電素子401を駆動させる(ステップS116)。
圧電素子401に駆動信号が供給されると、信号波形生成部30bは、Pgen及びPsupを測定し(ステップS118)、これら測定結果と、Tred及び調整後のTexpとが、上式(1)の関係を満たすか否かを判定する(ステップS120)。
この生成した1周期分の信号波形の波形情報が、上式(1)の関係を満たしている場合(ステップS120の「Yes」の分岐)は、この波形情報を、識別番号に対応付けてデータ記憶部30cに記憶する(ステップS122)。
次に、駆動信号供給処理の動作を説明する。
利用者によって駆動スイッチ(不図示)が押下され、駆動信号の供給指示が駆動部30に入力されると、動作制御部30aは、駆動信号の供給指令を駆動信号供給部30dに出力する。
一方、駆動信号供給部30dは、駆動信号の供給指令を受けると、波形情報の設定処理に移行する(ステップS200の「Yes」の分岐)。
供給指令には、駆動信号として用いる波形情報の識別情報を含む指定波形情報が含まれているので、指定波形情報に対応する識別情報の波形情報を駆動に用いる波形情報として設定する(ステップS202)。ここでは、図14に示す波形情報が設定されたこととする。
駆動信号に用いる波形情報が設定されると、次に、補間部31において、データ参照アドレスAに開始アドレス101を設定し(ステップS300)、次に、アドレス101の時刻データt0を変数T(1)に読み込む(ステップS302)。これによって、「T(1)=t0」となる。
次に、アドレス101の波形データP0を変数D(1)に読み込む(ステップS304)。これによって、「D(1)=P0」となる。
次に、変数cntにカウンタの初期値として変数D(1)の値P0をセットして(ステップS306)、カウンタ条件セット処理へと移行する(ステップS308)。
カウンタ条件セット処理が開始されると、まず、データ参照アドレスAの値に1を加算する(ステップS400)。これにより、「A=102」となる。
次に、変数T(2)に、アドレス102の時刻データt1を読み込み(ステップS402)、変数D(2)に、アドレス102の波形データP1を読み込む(ステップS404)。これによって、「T(2)=t1、D(2)=P1」となる。
次に、変数T(2)の値t1から変数T(1)の値t0を減算し、この減算結果をクロック信号clkの1周期の時間(t_clk)で除算して時間軸のカウント回数を算出し、該算出結果「(t1−t0)/t_clk」を変数Nに代入する。これにより、「N=(t1−t0)/t_clk」となる。
次に、変数D(2)の値P1から変数D(1)の値P0を減算し、この減算結果をカウント回数Nで除算して電圧軸のカウンタ増減量を算出し、該算出結果「(P1−P0)/N」を変数Sに代入する。これにより、「S=(P1−P0)/N」となる。
最後に、変数T(1)に、変数のT(2)の値t1を代入し、変数D(1)に、変数D(2)の値P1を代入して、カウンタ条件セット処理を終了し元の処理に復帰する(ステップS410)。これにより、「T(1)=t1」、「D(1)=P1」となる。
カウンタ33に対するカウンタ条件がセットされると、次に、補間部31は、同期信号発生部30eからの同期信号が検出されるのを待ち、同期信号が検出されると(ステップS310の「Yes」の分岐)、変数kに「0」を設定して初期化し、kの値「0」とNの値「(t1−t0)/t_clk」とを比較して、kの値がNの値よりも小さいか否かを判定する(ステップS314)。
そして、kの値がNの値よりも小さい間は(ステップS314の「Yesの分岐」)、1クロック毎にカウンタ33から増幅器35に変数cntの値で決まる電圧値の信号波形が出力され(ステップS316)、その後、変数cntの値に変数Sの値が加算され(ステップS318)、次いで、変数kの値に1が加算される(ステップS320)。
図15に示す例では、P0及びP1が「0[V]」となっているので、カウンタ増減量Sは「0」となり、変数kの値が増加していっても、変数cntの値は初期値「0」のままとなる。従って、カウンタ33から増幅器35には、kの値がNの値よりも小さい間は「0[V]」の信号波形が出力され続ける。
次に、kの値がNの値以上になると(ステップS314の「Noの分岐」)、ここでは次の節点データがあるので(ステップS322の「Yes」の分岐)、再びカウンタ条件セット処理に移行する(ステップS324)。
上記同様にステップS400〜S410を経て、「A=103」、「T(2)=t2」、「D(2)=P2」、「N=(t2−t1)/t_clk」、「S=(P2−P1)/N」、「T(1)=t2」、「D(1)=P2」となる。
カウンタ33に対するカウンタ条件がセットされると、次に、補間部31は、同期信号発生部30eからの同期信号が検出されるのを待ち、同期信号が検出されると(ステップS310の「Yes」の分岐)、変数kに「0」を設定して初期化し、kの値「0」とNの値「(t2−t1)/t_clk」とを比較して、kの値がNの値よりも小さいか否かを判定する(ステップS314)。
そして、kの値がNの値よりも小さい間は(ステップS314の「Yesの分岐」)、1クロック毎にカウンタ33から増幅器35に変数cntの値で決まる電圧値の信号波形が出力され(ステップS316)、その後、変数cntの値に変数Sの値が加算され(ステップS318)、更に、変数kの値に1が加算される(ステップS320)。
図15に示す例では、P2が「0[V]よりも大きい値(ここでは、3[V]とする)」となっているので、カウンタ増減量Sは「(3/N)[V]」となり、変数kの値が1増加していく毎に、変数cntの値は「(3/N)[V]」ずつ増加した値となる。従って、カウンタ33から増幅器35には、kの値が「1」増える毎に「(3/N)[V]」ずつ増加する信号波形が出力される。
次に、kの値がNの値以上になると(ステップS314の「Noの分岐」)、ここでは次の節点データがあるので(ステップS322の「Yes」の分岐)、再びカウンタ条件セット処理に移行する(ステップS324)。
上記同様にステップS400〜S410を経て、「A=104」、「T(2)=t3」、「D(2)=P3」、「N=(t3−t2)/t_clk」、「S=(P3−P2)/N」、「T(1)=t3」、「D(1)=P3」となる。
カウンタ33に対するカウンタ条件がセットされると、次に、補間部31は、同期信号発生部30eからの同期信号が検出されるのを待ち、同期信号が検出されると(ステップS310の「Yes」の分岐)、変数kに「0」を設定して初期化し、kの値「0」とNの値「(t3−t2)/t_clk」とを比較して、kの値がNの値よりも小さいか否かを判定する(ステップS314)。
そして、kの値がNの値よりも小さい間は(ステップS314の「Yesの分岐」)、1クロック毎にカウンタ33から増幅器35に変数cntの値で決まる電圧値の信号波形が出力され(ステップS316)、その後、変数cntの値に変数Sの値が加算され(ステップS318)、更に、変数kの値に1が加算される(ステップS320)。
図15に示す例では、P3が「P2と同じ値(3[V])」となっているので、カウンタ増減量Sは「0[V]」となり、変数kの値が増加していっても、変数cntの値は「3[V]」のままとなる。従って、カウンタ33から増幅器35には、kの値がNの値よりも小さい間は「3[V]」の信号波形が出力され続ける。従って、カウンタ33から増幅器35には、kの値が「1」増える毎に「3[V]」の信号波形が出力される。
次に、kの値がNの値以上になると(ステップS314の「Noの分岐」)、ここでは次の節点データがあるので(ステップS322の「Yes」の分岐)、再びカウンタ条件セット処理に移行する(ステップS324)。
上記同様にステップS400〜S410を経て、「A=105」、「T(2)=t4」、「D(2)=P4」、「N=(t4−t3)/t_clk」、「S=(P4−P3)/N」、「T(1)=t4」、「D(1)=P4」となる。
カウンタ33に対するカウンタ条件がセットされると、次に、補間部31は、同期信号発生部30eからの同期信号が検出されるのを待ち、同期信号が検出されると(ステップS310の「Yes」の分岐)、変数kに「0」を設定して初期化し、kの値「0」とNの値「(t4−t3)/t_clk」とを比較して、kの値がNの値よりも小さいか否かを判定する(ステップS314)。
そして、kの値がNの値よりも小さい間は(ステップS314の「Yesの分岐」)、1クロック毎にカウンタ33から増幅器35に変数cntの値で決まる電圧値の信号波形が出力され(ステップS316)、その後、変数cntの値に変数Sの値が加算され(ステップS318)、更に、変数kの値に1が加算される(ステップS320)。
図15に示す例では、P4が「0[V]」でP3が「3[V]」となっているので、カウンタ増減量Sは「(−3/N)[V]」となり、変数kの値が1増加していく毎に、変数cntの値は、3[V]から「(−3/N)[V]」ずつ減少した値となる。従って、カウンタ33から増幅器35には、kの値が「1」増える毎に前の値よりも「(−3/N)[V]」ずつ減少する信号波形が出力される。
次に、kの値がNの値以上になると(ステップS314の「Noの分岐」)、ここでは次の節点データがないので(ステップS322の「No」の分岐)、元の処理に復帰し、停止指令又は終了指令があった場合は、駆動信号の供給処理を停止又は終了する。一方、停止指令又は終了指令が無い場合は、設定された波形情報に対して、再び、ステップS300からの処理を実行する。これにより、同じ波形情報の信号波形を連続して出力することができる。
なお、駆動信号を圧電素子401に供給してからの流体噴射部2の動作は、上記第1の実施の形態と概ね同様の動作となるので説明を省略する。
以上、説明したように、本実施の形態の流体噴射装置1は、台形波の節点データをデータ記憶部30cに記憶しておけば、この節点データを用いて接点間のデータを補間しながらアナログの台形波の信号波形から構成される駆動信号を脈動発生部100の圧電素子401に供給することができる。
これにより、波形情報のデータ容量を正弦波と比較して大幅に削減することができるので、大容量のメモリを必要とせず、比較的低コストで流体噴射装置を構成することができる。
また、上記ステップS208〜S220、及び上記ステップS300〜S324のフローチャートに示すアルゴリズムを用いて信号波形の出力処理を行うようにしたので、駆動信号の供給指令及び停止指令を、どのようなタイミングで入力しても、圧電素子401への駆動信号の供給を、必ず波形の最初から始まって、最後で終わるように行うことができる。
これにより、駆動信号が波形の途中から圧電素子401に供給されたり、供給途中でいきなり無信号状態にされたりすることがないので、圧電素子401が急に縮められるなどして破損してしまうのを防止することができる。
なお、上記第1の実施の形態では、流体噴射部2のPgen及びPsupの測定値に応じて、適切な信号波形の波形情報を生成することができる構成を説明したが、この構成に限らず、予めPgen及びPsupの値に応じた信号波形の波形情報を生成して保持する構成としてもよい。この構成であれば、駆動部30が同じ圧力仕様の流体噴射部2にしか対応できなくなるが、圧力センサ、信号波形生成部30bなどを設ける必要がなくなるので、その分のコスト(センサのコスト、プログラムの作成コストなど)を低減することができる。また、他の形態として流体噴射部2に、工場出荷前に予め測定したPgen及びPsupの値を持たせておき(例えば、値の記憶されたメモリを付加する)、流体噴射部2の交換時や電源投入時などにおいて、Pgen及びPsupの値を取得して、Pgen及びPsupの値に応じた信号波形の波形情報を生成する構成としてもよい。この構成であれば、複数種類の圧力仕様に対応できると共に、Pgen及びPsupを測定するための圧力センサを設ける必要がなくなるので、その分のコストを低減することができる。
また、上記第1〜第3の実施の形態は、本発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、上記の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。また、上記の説明で用いる図面は、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。
また、本発明は上記第1〜第3の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
1…流体噴射装置、2…流体噴射部、20…圧力発生部としてのポンプ、30…駆動部、30a…動作制御部、30b…信号波形生成部、30c…データ記憶部、30d…駆動信号供給部、100…脈動発生部、200…接続流路管、201…接続流路、400…ダイアフラム、401…圧電素子、501…流体室、212…流体噴射開口部、503…入口流路、511…出口流路。

Claims (11)

  1. 容積が変更可能な流体室と、
    前記流体室に連通する入口流路及び出口流路と、
    駆動信号の供給に応じて前記流体室の容積を変更可能な容積変更部と、
    記出口流路に連通する流体噴射開口部と、
    前記流体室の容積を減少するように前記容積変更部を動作させる第一の駆動波形部と、前記流体室の容積が減少前の容積に復帰するように前記容積変更部を動作させる第二の駆動波形部とを一周期の信号波形に含む駆動信号を前記容積変更部に供給可能な駆動信号供給部と、を備え、
    前記駆動信号供給部は、
    前記第一の駆動波形部の時間幅をTredとし、前記第二の駆動波形部の時間幅をTexpとしたとき、次の式の関係が成立するような前記駆動信号を供給可能であり、
    Texp≧5・Tred
    前記駆動信号は、
    前記第一の駆動波形部として、一周期の時間幅がT1の正弦波の一部を含み、
    前記第二の駆動波形部として、一周期の時間幅がT2(T1<T2)の正弦波の一部を含む、
    ことを特徴とする流体噴射装置。
  2. 前記第一の駆動波形部の供給期間における前記流体室内の平均圧力をPgenとし、前記第二の駆動波形部の供給期間における前記入口流路の入口側にかかる圧力をPsupとしたとき
    前記駆動信号供給部は、次の式の関係
    Tred×(Pgen−Psup)≦Texp×Psup
    が成立する時間幅Tredの前記第一の駆動波形部及び時間幅Texpの前記第二の駆動波形部を含んで構成される駆動信号を、前記容積変更部に供給可能である、ことを特徴とする請求項1に記載の流体噴射装置。
  3. 前記駆動信号供給部は、前記第一の駆動波形部と前記第二の駆動波形部との間に、前記第二の駆動波形部の一部に信号の出力レベルを一定のレベルに所定期間保持する波形部を有する駆動信号を前記容積変更部に供給可能である、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の流体噴射装置。
  4. 前記駆動信号の波形情報を記憶する波形情報記憶部を備え、
    前記駆動信号供給部は、前記波形情報記憶部に記憶された波形情報に基づき前記駆動信号を生成し、前記駆動信号を前記容積変更部に供給することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の流体噴射装置。
  5. 前記周期の信号波形を台形波の形状としたことを特徴とする請求項に記載の流体噴射装置。
  6. 前記駆動信号の波形情報を記憶する波形情報記憶部を備え、
    前記波形情報として前記台形波の節点情報を前記波形情報記憶部に記憶し、
    前記駆動信号供給部は、前記波形情報記憶部に記憶された前記節点情報に基づき前記台形波の駆動信号を生成することを特徴とする請求項5に記載の流体噴射装置。
  7. 前記出口流路の流体室側端部の直径が、前記出口流路の流体噴射開口部側端部の直径よりも大きい、ことを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の流体噴射装置。
  8. 前記入口流路のイナータンスが、前記出口流路のイナータンスよりも大きい、ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の流体噴射装置。
  9. 前記入口流路を含む前記流体室上流側の合成イナータンスが、前記出口流路を含む前記流体室下流側のイナータンスよりも大きいことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の流体噴射装置。
  10. 前記出口流路に一方の端部が連通され、他方の端部が前記出口流路の直径よりも縮小された流体噴射開口部が設けられた接続流路を有する接続流路管を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の流体噴射装置。
  11. 流体の噴射によって患部の治療的措置を支援する手術用器具であって、
    請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の流体噴射装置を備えることを特徴とする手術用器具。
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