JP5799865B2 - 触媒粒子を活性化する方法 - Google Patents

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Description

本発明は、触媒粒子を活性化する方法、より詳細には、いわゆるコア−シェル構造を有する触媒粒子を活性化する方法に関する。
燃料電池は、燃料と酸化剤を電気的に接続された2つの電極に供給し、電気化学的に燃料の酸化を起こさせることで、化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する。火力発電とは異なり、燃料電池はカルノーサイクルの制約を受けないので、高いエネルギー変換効率を示す。燃料電池は、通常、電解質膜を一対の電極で挟持した膜電極接合体を基本構造とする単セルを複数積層して構成されている。
従来、燃料電池のアノード及びカソードの電極触媒として、白金触媒及び白金合金触媒等の貴金属触媒が採用されてきた。しかし、電極に必要とされる貴金属触媒は、燃料電池を商業的に大量生産するには依然として高価である。
一方、貴金属触媒粒子において、触媒反応は粒子表面のみで生じ、粒子内部は触媒反応にほとんど関与しない。したがって、貴金属触媒粒子における、材料コストに対する触媒活性は、必ずしも高くなかった。
貴金属単価が触媒価格に与える影響は大きく、貴金属触媒粒子の単位質量当たりの触媒活性に更なる向上が望まれている。
上記課題の解決を目的とした技術の1つとして、中心粒子、及び当該中心粒子を被覆する最外層を備える構造、いわゆるコア−シェル構造を有する触媒粒子に関する技術が知られている。当該触媒粒子においては、最外層には優れた触媒活性を有する材料を用い、中心粒子には比較的安価な材料を用いることにより、触媒反応にほとんど関与しない粒子内部のコストを低く抑えることができる。
例えば、特許文献1には、導電性担体に貴金属含有粒子を担持させた燃料電池用電極触媒であって、該貴金属含有粒子は、少なくとも貴金属を含むコア部とその外周に形成された貴金属酸化物のシェル部とのコア−シェル構造を有することを特徴とする燃料電池用電極触媒が記載されている。
特開2005−100731号公報 特開2010−020930号公報
しかしながら、コア−シェル触媒は、合成直後の初期状態において、期待しているような充分な高活性を発現しない。これは、(1)合成時、最外層で充分に被覆されない中心粒子が発生する、(2)最外層の表面が平滑でない、といった原因のためである。従って、コア−シェル触媒を電極触媒として用いた燃料電池は、一般的には、電極触媒が充分な触媒活性を発現するまで、ならし運転を行う必要があり、発電性能が充分に高くなるまでに時間を要するという問題があった。
一方、特許文献2には、短時間での燃料電池の出力電圧の向上を目的とするものであって、触媒と前記触媒を担持する触媒担体とを含む電極層と、前記電極層が電解質膜の両面の燃料極側及び空気極側に設けられ、前記空気極側電極層の前記触媒担体を燃焼させる触媒担体燃焼段階を有することを特徴とする燃料電池のならし運転方法が記載されている。特許文献2において、触媒担体燃焼段階では、空気極の電位を1V以上1.3V以下としている。
特許文献2には、触媒担体を燃焼させることで、触媒担体の体積が減少する一方、空気の通路が広がり、空気が触媒と接触しやすくなることから、電気化学反応が促進され、電池の出力電圧が大きくなる旨が記載されている。特許文献2に記載の技術は、コア−シェル触媒の触媒活性を高めるという技術課題は有しておらず、特許文献2には該課題を解決するための方法についてはなんら記載されていない。
本発明は、上記実状を鑑みて成し遂げられたものであり、本発明の目的は、コア−シェル触媒、具体的には、パラジウム及びパラジウム合金の少なくとも一方を含む中心粒子と、該中心粒子を被覆し且つ白金を含む最外層と、を備える触媒粒子を、短時間で活性化することが可能な方法を提供することである。
本発明の触媒粒子の活性化方法は、パラジウム及びパラジウム合金の少なくとも一方を含む中心粒子と、該中心粒子を被覆し且つ白金を含む最外層と、を備える触媒粒子を活性化する方法であって、
前記触媒粒子、固体高分子電解質及び導電性材料を少なくとも含む電極に対して、0V〜0.12V(vs.RHE)の下限電位と、1.1V〜1.4V(vs.RHE)の上限電位との間で、電位走査を行うことを特徴とする。
また、別の具体的な態様として、電解質膜と、該電解質膜の少なくとも一方の面に設けられ、且つ、前記触媒粒子、固体高分子電解質及び導電性材料を少なくとも含む電極と、を有する膜電極接合体に対して、前記電位走査を行う態様を挙げることができる。
本発明の触媒粒子の活性化方法によれば、触媒粒子の重量活性を、従来と比較して短時間で、合成直後の200%以上に向上させることができる。
本発明の活性化方法において、前記上限電位は1.2V〜1.3V(vs.RHE)であることが好ましい。触媒粒子のより高い活性化が可能であるからである。
同様の観点から、本発明の活性化方法において、前記下限電位は0.05V(vs.RHE)であることが好ましい。
本発明の活性化方法において、前記電位走査は、水存在環境下行うことが好ましい。触媒粒子の活性化を効率良く行うことができるからである。
また、本発明の活性化方法において、前記電位走査の電位走査速度は、0.1mV/sec〜500mV/secとすることが好ましい。
本発明の活性化方法の具体的な態様として、例えば、前記触媒粒子を、電解液に浸漬させた状態又は加湿ガス雰囲気下で、前記電位走査を行う態様が挙げられる。
本発明の触媒粒子の活性化方法によれば、パラジウム及びパラジウム合金の少なくとも一方を含む中心粒子と、該中心粒子を被覆し且つ白金を含む最外層と、を備える触媒粒子を、短時間で、初期活性の200%以上に活性化することが可能である。
実施例1〜6及び比較例1、2の重量活性を示すグラフである。 実施例1、7、8及び比較例3、4の重量活性を示すグラフである。 比較例5の電位サイクル数と重量活性とを示すグラフである。
本発明の触媒粒子の活性化方法は、パラジウム(Pd)及びパラジウム合金(Pd合金)の少なくとも一方を含む中心粒子と、該中心粒子を被覆し且つ白金(Pt)を含む最外層と、を備える触媒粒子を活性化する方法であって、
前記触媒粒子に対して、0V〜0.12V(vs.RHE)の下限電位と、1.1V〜1.4V(vs.RHE)の上限電位との間で、電位走査を行うことを特徴とする。
Pd及びPd合金の少なくとも一方を含む中心粒子(以下、Pd中心粒子ということがある)を、Ptを含む最外層(以下、Pt最外層ということがある)で被覆したコア−シェル触媒粒子は、合成時にPtによって充分に被覆されないPd中心粒子が発生する、Pd中心粒子を被覆したPt上にさらにPtが析出し、Pt最外層表面が平滑にならない、といった理由で、合成後の初期状態では、充分な触媒活性を発現できない。このような初期状態における活性の低さを改善するためには、コア−シェル触媒粒子においてPtで被覆されていない部分のPd又は単独のPd粒子を溶解させたり、Pt最外層を溶解させたりすることで、充分に被覆されていないPd中心粒子をPtで被覆させるための処理や、最外層のPtを移動させることで、平滑なPt表面を形成させるための処理が必要である。
そこで、本発明者らが鋭意検討したところ、上記コア−シェル触媒粒子に対して、水存在環境下、0V〜0.12V(vs.RHE)の下限電位と、1.1V〜1.4V(vs.RHE)の上限電位との間で、電位走査処理を行うことによって、上記コア−シェル触媒粒子の触媒活性を大幅に且つ短時間で向上できることが見出された。具体的には、上記電位走査により、上記コア−シェル触媒の重量活性を初期重量活性の2倍以上に上昇させることが可能であることが見出された。
Pd中心粒子がPt最外層で被覆されたコア−シェル触媒粒子に対して、上記電位範囲の電位走査を行うことによって、初期重量活性の2倍以上の活性が得られるメカニズムは次のように考えられる。
すなわち、上記電位範囲での電位走査により、コア−シェル構造におけるPd中心粒子のPt最外層による被覆状態を改善することができるためである。
まず、上限電位を1.1V以上とすることによって、Pd中心粒子上のPtを移動させることができ、また、Ptの溶解速度が確保できるため、コア−シェル構造における上記のような被覆不良や低平滑性を効率良く解消することができる。例えば、上限電位が0.9V以下では、Ptが動かない、Ptの溶解速度が遅いといった理由で、得られる電位処理効果は低い。
次に、上限電位を1.4V以下にすることによって、PtやPdが過度に溶解するのを抑制することができ、コア−シェル構造を維持することができる。また、上限電位を1.4V以下にすることによって、後述するように、コア−シェル触媒粒子を含有する電極や膜電極接合体に対して、電位走査処理を行う場合に、該電極や該膜電極接合体に炭素材料が含まれていても、電位走査処理による該炭素材料の酸化を抑制できるというメリットもある。
また、下限電位を0V以上0.12V以下とすることによって、水存在環境下では、水素が発生し、該水素がPd中心粒子にほどよく脱吸着することで、コア−シェル構造を保持しつつ、Pd中心粒子上のPtを動きやすくさせることができる。
一方、下限電位を0V未満とすると、水存在環境下では水素が大量に発生するため、溶解したPt、Pdがコア−シェル触媒粒子の表面に再析出するためPt最外層表面が平滑化しない、Pdが大量の水素を吸蔵してコア−シェル構造が壊れる、等の悪影響がある。また、下限電位を0.6V〜0.9Vにすると、Pt、Pdに酸素が吸着したままとなり、触媒性能が低下するおそれがある。特に、酸水溶液等の電解液中にて電位走査処理を行う場合、Pt、Pdに酸素が吸着することによってPt、Pdが酸水溶液に溶解し、コア−シェル構造が壊れ、性能低下を招いてしまう。また、下限電位を0.4V〜0.6Vにすると、PdやPt表面に吸着する酸素はなくなるが、上記したような水素の脱吸着による効果が得られないため、高い活性向上効果は得られない。
本発明において触媒粒子に印加される上記のような上限電位は、燃料電池の出力電位を超えるため、従来の慣らし運転では印加することができない高電位である。また、Pd中心粒子がPt最外層で被覆されたコア−シェル触媒粒子を効率良く活性化することができる電位処理範囲は従来知られていなかった。従って、従来の慣らし運転では、充分な触媒活性化効果が得られなかったと考えられる。
以下、本発明の触媒粒子の活性化方法について詳細に説明する。
本発明において、上記触媒粒子に対する電位走査処理は、下限電位を0V〜0.12V(vs.RHE)の範囲内とし、上限電位を1.1V〜1.4V(vs.RHE)の範囲内とする電位範囲において行われる。
本発明において、上記電位走査処理を上記電位範囲で行うことによって、触媒粒子の触媒活性を向上できる理由は既に述べた通りである。触媒活性をより効率良く向上できることから、上記上限電位は1.2V〜1.3V(vs.RHE)、特に1.25Vであることが好ましく、上記下限電位は0〜0.1V(vs.RHE)であることが好ましく、特に0.05Vであることが好ましい。
上記電位走査の走査速度は特に限定されないが、0.1mV/sec〜500mV/secであることが好ましく、特に10〜100mV/secであることが好ましい。上記範囲の走査速度で電位走査することによって、触媒粒子に対して確実に電位処理を行うことができると共に、電位走査を効率良く行い、短時間で触媒粒子を活性化することができる。
また、上記電位走査の走査サイクル数は、電位範囲、走査速度等に応じて適宜設定することができるが、本発明によれば、例えば、300サイクル以下、さらには150サイクル以下でも、初期活性の2倍以上の活性を得ることが可能である。確実に電位処理する観点からは、50サイクル以上、特に100サイクル以上の電位走査を行うことが好ましい。
ここで、電位走査のサイクル数は、下限電位と上限電位との間を往復する電位走査を1サイクルとする。
上記したように、本発明において、触媒粒子には、酸素と水素を供給して発電する燃料電池の出力電位よりも高い電位が印加される。従って、本発明では、外部電源により、触媒粒子に対して電位が印加される。外部電源は特に限定されず、上記範囲の電位走査を行うことができればよい。外部電源としては、例えば、ポテンシオスタット等が挙げられる。
本発明において、電位走査は、上記したようなPtの移動や溶解、Pdの溶解等が生じ、コア−シェル構造の被覆不良や最外層の表面平滑性の低さを改善することができれば、その他条件も特に限定されない。
例えば、Ptの移動や溶解、Pdの溶解等が生じやすいことから、上記電位走査は、水存在環境下で行うことが好ましい。
ここで、水存在環境下とは、触媒粒子が水と接触可能な環境を意味する。具体的には、例えば、水や水溶液中に触媒粒子を浸漬した状態で該触媒粒子に電位走査処理を施す態様や、水蒸気を含む雰囲気中で触媒粒子に電位走査処理を施す態様が挙げられる。触媒粒子を浸漬させる水溶液としては、例えば、過塩素酸、硫酸等の電解液が挙げられる。触媒粒子を浸漬させる水や水溶液は、酸素飽和処理等の酸化性ガス飽和処理や窒素飽和処理等の不活性ガス飽和処理などを実施してもよい。上記水蒸気を含む雰囲気は、例えば、電位走査処理雰囲気を加湿ガスにより加湿する等によって形成することができる。
本発明の活性化方法の処理対象となる触媒粒子は、Pd及びPd合金の少なくとも一方を含む中心粒子(Pd中心粒子)と、該中心粒子を被覆し且つPtを含む最外層(Pt最外層)と、を備えるものである。
本発明において、Pt最外層が、Pd中心粒子を被覆するとは、Pd中心粒子の全表面をPt最外層が覆っている状態の他、Pt中心粒子の表面の一部にPtに被覆されずに露出した領域がある状態も含む。
Pd中心粒子は、Pd及びPd合金の少なくとも一方を含む。Pd合金としては、例えば、パラジウムと、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、コバルト、ニッケル、銅、マンガンから選ばれる少なくとも1種との合金が挙げられる。Pd中心粒子は、上記電位範囲での電位走査処理により高い効果が得られることから、Pd単体からなるPd粒子であることが好ましい。Pd中心粒子は、Pd及びPd合金以外の成分を含んでいてもよい。
Pd中心粒子の平均粒径は特に限定されず、例えば、0.5〜50nm、特に2〜20nmであることが好ましい。Pd中心粒子の平均粒径は、TEM、CO吸着法、XRD、サイクリックボルタモグラム(CV)等により測定することができる。
Pt最外層は、Ptを含めば、その他の成分を含んでいてもよいが、上記電位範囲での電位走査処理により高い効果が得られることから、Pt単体からなることが好ましい。
Pt最外層の厚さは、特に限定されないが、例えば、最外層のPt量が少ないためコストが低い、触媒性能が高い、といった理由から、単原子層であることが好ましい。
触媒粒子の平均粒径は、中心粒子の粒径に依存し、特に限定されない。
触媒粒子は、担体に担持されていてもよい。担体として使用できる導電性材料の具体例としては、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー、カーボンブラック、グラッシーカーボン、アセチレンブラック等の炭素材料、チタン、シリコン、スズ、銅、チタニア、シリカ、酸化スズ等の金属や金属酸化物、等を挙げることができる。これら構成材料は、1種類のみでも、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
触媒粒子の製造方法は特に限定されず、公知の方法を利用したり、或いは市販された触媒粒子を用いることもできる。また、触媒粒子を担体へ担持させる方法は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。
触媒粒子に対して、上記電位走査を行う方法は特に限定されず、触媒粒子そのものに対して電圧を印加してもよいし、或いは、触媒粒子を担持体に担持させた状態で実施してもよいし、触媒粒子をその他材料と混合、結着等した状態で実施してもよい。
具体的には、処理対象である触媒粒子を用いて電極を形成し、該電極に電位を印加することで、触媒粒子の電位走査処理を行ってもよい。例えば、処理対象である触媒粒子と、固体高分子電解質と、導電性材料(触媒粒子担体)とを少なくとも含む電極に電位を印加、走査することで、触媒粒子に対して電位走査を行うことができる。このような電極の作製方法は特に限定されず、例えば、触媒粒子、固体高分子電解質及び導電性材料を含む触媒インク、又は、導電性材料に担持させた触媒粒子及び固体高分子電解質を含む触媒インクを、支持基材上に塗布、乾燥する方法が挙げられる。上記支持基板は必要に応じて剥離することができる。
電極を構成する固体高分子電解質としては、例えば、プロトン伝導性を有する固体高分子電解質として、フッ素系高分子電解質、炭化水素系高分子電解質等が挙げられる。フッ素系高分子電解質とは、ナフィオン(商品名、デュポン製)やアシプレックス(商品名、旭化成製)、フレミオン(商品名、旭硝子製)に代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂の他、部分フッ素化高分子電解質等の含フッ素高分子電解質を意味する。また、炭化水素系高分子電解質とは、フッ素を含有しない高分子電解質を意味し、具体的には、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリパラフェニレン等のエンジニアリングプラスチックや、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の汎用プラスチックにスルホン酸基、スルホンイミド基、カルボン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、フェノール性水酸基等のプロトン酸基(プロトン伝導性基)を導入したもの又はこれらの共重合体等が挙げられる。
電極を構成する導電性材料としては、例えば、上記にて触媒粒子の担体として例示した導電性材料が挙げられる。
触媒インクは、触媒粒子、固体高分子電解質及び導電性材料を、適切な溶媒、例えば、エタノール等のアルコールのような有機溶媒に、溶解、分散させることで調製することができる。
或いは、処理対象である触媒粒子を用いて形成した電極と電解質膜とが接合した膜電極接合体に電位を印加することで、触媒粒子の電位走査を行ってもよい。例えば、電解質膜と、該電解質膜の少なくとも一方の面に設けられ、且つ、処理対象である触媒粒子、固体高分子電解質及び導電性炭素を少なくとも含む電極と、を有する膜電極接合体を作製し、該膜電極接合体に対して電位を印加、走査することで、触媒粒子の電位走査処理を行うことができる。
膜電極接合体は、例えば、高分子電解質膜上に、触媒インクを塗布、乾燥したり、或いは、触媒インクを支持基板上に塗布、乾燥して作製した電極転写シートを用いて、電解質膜上に電極を転写したりすることによって作製することができる。
電解質膜としては、プロトン伝導性を有する固体高分子電解質膜として、上記固体高分子電解質を製膜したものが挙げられる。具体的には、上記固体高分子電解質の分散液を塗布、乾燥させる方法、或いは、上記固体高分子電解質を溶融し、膜状に成形する方法等が挙げられる。
上記のように触媒粒子を含む電極や膜電極接合体に対して、電位を印加、走査することによって、触媒粒子への均一な電位印加が可能であると共に、電位走査処理を簡便化することができる。尚、電極や膜電極接合体に対して電位走査を行う場合も、上記したように、水存在環境下において電位走査を行うことが好ましい。具体的には、例えば、電極や膜電極接合体を電解液等の水溶液中に浸漬した状態で電位走査を行ったり、加湿ガスにより加湿した雰囲気下で電位走査を行うことが好ましい。
本発明の触媒粒子の活性化方法は、Pd中心粒子とPt最外層とを有するコア−シェル触媒粒子であれば、様々な用途の触媒粒子に対して有効であるが、特に燃料電池用触媒粒子、より具体的には、酸素及び水素の供給により発電する燃料電池、中でも、固体高分子電解質型燃料電池用の触媒粒子に有効である。
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
Pdからなる中心粒子がPtからなる最外層で被覆されたコア−シェル触媒粒子を準備した。
上記コア−シェル触媒粒子を、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂(商品名:Nafion)の5%溶液及びエタノールと混合し、超音波振動装置を用いて分散させ、触媒インクを調製した。
上記触媒インクを、0.196cmの回転電極上に、触媒粒子量が10μgとなるように、塗布し、コア−シェル触媒粒子含有電極を作製した。
コア−シェル触媒粒子含有電極を、窒素飽和させた0.1M過塩素酸に浸漬させ、該電極を回転させることなく、100mV/secの走査速度で、0.05Vから1.25V(vs.RHE 以下同じ。)の電位範囲を150サイクル走査した(0.05V→1.25V→0.05Vの電位走査を1サイクルとする)。尚、ここでは、電極を回転させなかったが、回転させてもよい。
上記コア−シェル触媒粒子の初期重量活性及び上記150サイクルの電位走査中の重量活性を算出したところ、255[A/g−Pt]だった初期重量活性が、150サイクル以内の電位走査により1003[A/g−Pt]に向上したことが確認された。初期重量活性を100%とすると、電位走査後の重量活性は393%(電位走査後の重量活性/初期重量活性=1003/255=393%)であり、電位走査により初期重量活性の約4倍の活性が得られた。結果を図1に示す。
尚、触媒粒子の上記初期重量活性及び上記電位走査後の重量活性は、次のようにして算出した。
<触媒粒子の重量活性の算出方法>
まず、電位走査前及び電位走査後の上記コア−シェル触媒粒子含有電極を、酸素飽和させた0.1M過塩素酸に浸漬させ、10mV/secの走査速度で、1.05Vから0.05V(vs.RHE 以下同じ)の電位走査(1.05V→0.05V→1.05Vの電位走査を1サイクルとする)をし、2サイクル目の0.05Vから1.05Vへの電位走査時の0.3V時の電流値(Ilim)、及び0.9V時の電流値(I0.9V)を記録した。得られた電流値Ilim、I0.9Vを用いて、下記式(1)により、活性化支配電流Ik[A]を算出した。
Figure 0005799865
一方、コア−シェル触媒粒子含有電極におけるPt量[g]は、ICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析装置)でコア−シェル触媒粒子のPt量(重量%)を測定しておき、上記触媒インクの塗布量から算出した。
上記式(1)より得られた活性支配電流Ik[A]と、電極におけるPt量[g]から、触媒粒子の単位Pt重量あたりの活性=Ik/Pt量[A/g−Pt]を算出し、触媒粒子の重量活性とした。
(実施例2)
実施例1において、電位走査の電位範囲の上限を1.3Vに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてコア−シェル触媒粒子含有電極を作製した。尚、実施例1で用いたコア−シェル触媒粒子と同じロットのコア−シェル触媒粒子を用いた。
実施例1と同様にして、コア−シェル触媒粒子の初期重量活性及び上記150サイクルの電位走査中の重量活性を算出したところ、251[A/g−Pt]の初期重量活性が、150サイクル以内の電位走査により725[A/g−Pt]に向上したことが確認された。初期重量活性を100%とすると、電位走査後の重量活性は289%であった。結果を図1に示す。
(実施例3)
実施例1において、電位走査の電位範囲の上限を1.2Vに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてコア−シェル触媒粒子含有電極を作製した。尚、実施例1で用いたコア−シェル触媒粒子とは異なるロットのコア−シェル触媒粒子を用いた。
実施例1と同様にして、コア−シェル触媒粒子の初期重量活性及び上記150サイクルの電位走査中の重量活性を算出したところ、297[A/g−Pt]の初期重量活性が、150サイクル以内の電位走査により780[A/g−Pt]に向上したことが確認された。初期重量活性を100%とすると、電位走査後の重量活性は263%であった。結果を図1に示す。
(実施例4)
実施例1において、電位走査の電位範囲の上限を1.1Vに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてコア−シェル触媒粒子含有電極を作製した。尚、実施例3で用いたコア−シェル触媒粒子と同じロットのコア−シェル触媒粒子を用いた。
実施例1と同様にして、コア−シェル触媒粒子の初期重量活性及び上記150サイクルの電位走査中の重量活性を算出したところ、285[A/g−Pt]の初期重量活性が、150サイクル以内の電位走査により、570[A/g−Pt]に向上したことが確認された。初期重量活性を100%とすると、電位走査後の重量活性は200%であった。結果を図1に示す。
(実施例5)
実施例1において、電位走査の電位範囲の上限を1.35Vに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてコア−シェル触媒粒子含有電極を作製した。尚、実施例1〜4で用いたコア−シェル触媒粒子とは異なるロットのコア−シェル触媒粒子を用いた。
実施例1と同様にして、コア−シェル触媒粒子の初期重量活性及び上記150サイクルの電位走査中の重量活性を算出したところ、365[A/g−Pt]の初期重量活性が、150サイクル以内の電位走査により、822[A/g−Pt]に向上したことが確認された。初期重量活性を100%とすると、電位走査後の重量活性は225%であった。結果を図1に示す。
(実施例6)
実施例1において、電位走査の電位範囲の上限を1.4Vに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてコア−シェル触媒粒子含有電極を作製した。尚、実施例5で用いたコア−シェル触媒粒子と同じロットのコア−シェル触媒粒子を用いた。
実施例1と同様にして、コア−シェル触媒粒子の初期重量活性及び上記150サイクルの電位走査中の重量活性を算出したところ、370[A/g−Pt]の初期重量活性が、150サイクル以内の電位走査により、743[A/g−Pt]に向上したことが確認された。初期重量活性を100%とすると、電位走査後の重量活性は201%であった。結果を図1に示す。
(比較例1)
実施例1において、電位走査の電位範囲の上限を1.0Vに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてコア−シェル触媒粒子含有電極を作製した。尚、実施例3で用いたコア−シェル触媒粒子と同じロットのコア−シェル触媒粒子を用いた。
実施例1と同様にして、コア−シェル触媒粒子の初期重量活性及び上記150サイクルの電位走査中の重量活性を算出したところ、280[A/g−Pt]の初期重量活性が、150サイクル以内の電位走査により445[A/g−Pt]に向上したことが確認された。初期重量活性を100%とすると、電位走査後の重量活性は159%にとどまった。結果を図1に示す。
(比較例2)
実施例1において、電位走査の電位範囲の上限を1.45Vに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてコア−シェル触媒粒子含有電極を作製した。尚、実施例3で用いたコア−シェル触媒粒子と同じロットのコア−シェル触媒粒子を用いた。
実施例1と同様にして、コア−シェル触媒粒子の初期重量活性及び上記150サイクルの電位走査中の重量活性を算出したところ、270[A/g−Pt]の初期重量活性が、150サイクル以内の電位走査により、453[A/g−Pt]に向上したことが確認された。初期重量活性を100%とすると、電位走査後の重量活性は168%にとどまった。結果を図1に示す。
(実施例7)
実施例1において、電位走査の電位範囲の下限を0Vに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてコア−シェル触媒粒子含有電極を作製した。尚、実施例3で用いたコア−シェル触媒粒子と同じロットのコア−シェル触媒粒子を用いた。
実施例1と同様にして、コア−シェル触媒粒子の初期重量活性及び上記150サイクルの電位走査中の重量活性を算出したところ、289[A/g−Pt]の初期重量活性が、150サイクル以内の電位走査により、580[A/g−Pt]に向上したことが確認された。初期重量活性を100%とすると、電位走査後の重量活性は201%であった。結果を図2に示す。尚、図2には、実施例1の結果も示した。
(実施例8)
実施例1において、電位走査の電位範囲の下限を0.1Vに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてコア−シェル触媒粒子含有電極を作製した。尚、実施例3で用いたコア−シェル触媒粒子と同じロットのコア−シェル触媒粒子を用いた。
実施例1と同様にして、コア−シェル触媒粒子の初期重量活性及び上記150サイクルの電位走査中の重量活性を算出したところ、278[A/g−Pt]の初期重量活性が、150サイクル以内の電位走査により、675[A/g−Pt]に向上したことが確認された。初期重量活性を100%とすると、電位走査後の重量活性は243%であった。結果を図2に示す。
(比較例3)
実施例1において、電位走査の電位範囲の下限を−0.05Vに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてコア−シェル触媒粒子含有電極を作製した。尚、実施例3で用いたコア−シェル触媒粒子と同じロットのコア−シェル触媒粒子を用いた。
実施例1と同様にして、コア−シェル触媒粒子の初期重量活性及び上記150サイクルの電位走査中における重量活性を算出したところ、270[A/g−Pt]の初期重量活性が、150サイクル以内の電位走査により、271[A/g−Pt]になったことが確認された。初期重量活性を100%とすると、電位走査後の重量活性は100%であった。結果を図2に示す。
(比較例4)
実施例1において、電位走査の電位範囲の下限を0.15Vに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてコア−シェル触媒粒子含有電極を作製した。尚、実施例3で用いたコア−シェル触媒粒子と同じロットのコア−シェル触媒粒子を用いた。
実施例1と同様にして、コア−シェル触媒粒子の初期重量活性及び上記150サイクルの電位走査中の重量活性を算出したところ、272[A/g−Pt]の初期重量活性が、150サイクル以内の電位走査により、205[A/g−Pt]に減少したことが確認された。初期重量活性を100%とすると、電位走査後の重量活性は75%であった。結果を図2に示す。
上記結果より、Pdをコアとし、Ptをシェルとするコア−シェル触媒粒子に対して、0V〜0.12Vの下限電位と、1.1V〜1.4Vの上限電位との間で、電位走査を行うことによって、150サイクル以下で、初期重量活性の200%まで活性化できることがわかる。特に、上限電位が1.2V〜1.3V、下限電位が0.05Vの場合、約250%〜400%という高活性化が可能である。
(比較例5)
実施例1において、電位走査の電位範囲の下限を0.65V及び上限を1.0V、走査速度を50mV/sec、電位走査のサイクル数を600サイクル、5000サイクルに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてコア−シェル触媒粒子含有電極を作製した。尚、上記実施例1〜8及び比較例1〜4で用いたコア−シェル触媒粒子と異なるロットのコア−シェル触媒粒子を用いた。
実施例1と同様にして、コア−シェル触媒粒子の初期重量活性(0サイクル)、600サイクル及び5000サイクル後の重量活性を算出した。結果を表1及び図3に示す。
Figure 0005799865
表1及び図3に示すように、初期重量活性を100%とすると、600サイクル後でも118.20%、さらには5000サイクル後でも124.55%にとどまった。また、この結果から、5000サイクルよりさらに電位走査を行えば、さらに重量活性が上昇すると思われる。
従って、従来の慣らし運転で印加されるような電位範囲での電位走査では、5000サイクル後でも124.55%程度しか活性化できず、時間をかけても触媒粒子を充分に活性化できないことが確認された。
これに対して、上記実施例の結果から、本発明によれば、150サイクル以内の短時間で、200%以上の活性化が可能であり、短時間で触媒粒子を高活性化できるといえる。

Claims (7)

  1. パラジウム及びパラジウム合金の少なくとも一方を含む中心粒子と、該中心粒子を被覆し且つ白金を含む最外層と、を備える触媒粒子を活性化する方法であって、
    前記触媒粒子、固体高分子電解質及び導電性材料を少なくとも含む電極に対して、0V〜0.12V(vs.RHE)の下限電位と、1.1V〜1.4V(vs.RHE)の上限電位との間で、電位走査を行うことを特徴とする活性化方法。
  2. パラジウム及びパラジウム合金の少なくとも一方を含む中心粒子と、該中心粒子を被覆し且つ白金を含む最外層と、を備える触媒粒子を活性化する方法であって、
    電解質膜と、該電解質膜の少なくとも一方の面に設けられ、且つ、前記触媒粒子、固体高分子電解質及び導電性材料を少なくとも含む電極と、を有する膜電極接合体に対して、0V〜0.12V(vs.RHE)の下限電位と、1.1V〜1.4V(vs.RHE)の上限電位との間で、電位走査を行うことを特徴とする活性化方法。
  3. 前記上限電位が1.2V〜1.3V(vs.RHE)である、請求項1又は2に記載の活性化方法。
  4. 前記下限電位が0.05V(vs.RHE)である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の活性化方法。
  5. 前記電位走査を、水存在環境下行う、請求1乃至のいずれか1項に記載の活性化方法。
  6. 前記電位走査の電位走査速度が、0.1mV/sec〜500mV/secである、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の活性化方法。
  7. 前記触媒粒子を、電解液に浸漬させた状態又は加湿ガス雰囲気下で、前記電位走査を行う、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の活性化方法。
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