本発明は、車両のステアリング機構に設けられ、ステアリングの減衰力を調整するためのステアリングダンパについて、その減衰力を制御するステアリングダンパ制御装置およびそれを備えた鞍乗型車両に関する。
鞍乗型車両の姿勢変化を安定させて操縦者の負担を軽減するために、ステアリングの回動力に対して減衰力を与えるステアリングダンパが備えられている。このようなステアリングダンパとして、以下のようなものがある。
この種の第1の装置として、2つの油室と、両油室を連通するオリフィスを備えるステアリングダンパがある(例えば、特許文献1の従来技術欄参照)。オリフィス式のステアリングダンパでは、ステアリングが振られると一方の油室からもう一方の油室へ油がオリフィスを通る際に摩擦力が発生する。この摩擦力がステアリングへの減衰力となる。
この種の第2の装置として、舵角センサと、減衰力調節機構と、ダンパ駆動部と、磁性流体とを用いたステアリングダンパがある(例えば、特許文献2参照)。舵角センサのセンサ値に対応して減衰力調節機構が減衰力算出用テーブルを参照してステアリングダンパに発生させる減衰力を調整する。調整された減衰力は指令信号としてダンパ駆動部へ送られる。ダンパ駆動部は指令信号に対応してコイルに電流を流すことで磁性流体に磁場を印加する。これにより、指令された減衰力がステアリングダンパに発生する。
特開2003−170883号公報
特開2009−292258号公報
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の第1の装置は、ステアリングが振られた後にしか減衰力を発生させることができない。すなわち、ステアリングが振られていない状態では、減衰力発生させることができないので、ステアリングの振られを予防することが困難である。
また、第2の装置においても、ステアリングが振られた後にしか減衰力を発生させることができない。ステアリングが振られていない状態では舵角速度が0であるので、減衰力算出用テーブルから指令される減衰力が0であり、ステアリングダンパに減衰力が発生しない。これにより、ステアリングが振られる前には、減衰力発生させることができないので、ステアリングの振られを予防することが困難である。
本発明装置は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ステアリングが振られていない状態においてステアリングの振られを予防することができるステアリングダンパ制御装置およびそれを備えた鞍乗型車両を提供することを目的とする。
このような目的を達成するために、本発明者は、ステアリングが振られていない状態であっても減衰力を発生させることに着想した。上述したように、従来のステアリングダンパには、ステアリングが振られていない状態であっても減衰力を発生させる機能はなかった。
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、磁性流体の作用でステアリングに作用する減衰力を発生するステアリングダンパと、車両の状態量を検出する状態量検出センサと、前記状態量検出センサの出力結果を基に前記ステアリングダンパに、前記ステアリングが振動していないときも含めて常に一定以上の減衰力を発生させる減衰力指令値によって前記ステアリングダンパの減衰力を調整する減衰力調整部とを備えるステアリングダンパ制御装置である。
この構成によれば、ステアリングダンパは磁性流体の作用で減衰力を発生する。状態量検出センサは車両の状態量を検出する。減衰力調整部は、状態量検出センサの出力結果が得られると、ステアリングダンパに一定以上の減衰力を発生させる減衰力指令値によりステアリングダンパの減衰力を調整する。すなわち、状態量検出センサが検出結果を出力している間は、常に、一定以上の減衰力が発生する。これにより、ステアリングが振られていない状態であっても減衰力が発生するので、ステアリングが振られていない状態においてステアリングの振られを予防することができる。
なお、減衰力は、ステアリングの振動(回転)に対する抵抗力の意味である。この減衰力は、ステアリングが振動(回転)しているときにステアリングの振動(回転)を減衰させるように働く力のほかに、ステアリングが振動(回転)していないときにステアリングが振動(回転)し始めることを阻止するように働く力(抵抗力)を含む。
また、前記ステアリングダンパは、磁性流体と、前記磁性流体に対して磁場を与える電磁石とを有し、前記減衰力指令値に応じた電流を前記電磁石に流すダンパ駆動部を備える
ことが好ましい。
磁性流体に対して磁場を与えると、磁性流体の粘性が変化し、減衰力が発生する。これにより、ステアリングが振られなくても、ダンパ駆動部が減衰力指令値に応じた電流を電磁石に流すことでステアリングに減衰力を作用させることができる。このようにして、ステアリングが振られていなくても、減衰力指令値に応じた減衰力を好適に発生させることができる。
また、前記ステアリングダンパは、前記磁性流体のせん断力によって減衰力を発生する
ことが好ましい。減衰力が磁性流体のせん断力により発生するので、磁性流体への磁場の印加および印加の停止に敏感に反応して減衰力の発生および停止を実現できる。
また、前記減衰力調整部は、前記状態量検出センサの検出値と前記ステアリングダンパの減衰力とが対応するマップを有し、前記マップにおいて、減衰力の最小値が正であることが好ましい。状態量検出センサの検出値とステアリングダンパの減衰力とが対応するマップにおいて、減衰力の最小値が正であるので、状態量検出センサの検出値が入力されると、常に一定以上の減衰力が発生する。
また、前記減衰力調整部は、減衰力の最小値が異なる複数の前記マップを有し、前記マップを選択するマップ選択部を備えることが好ましい。これにより、マップを選択することで、ステアリングダンパが振られる前から発生する減衰力の大きさを容易に選択することができる。
また、前記状態量検出センサは、舵角センサであることが好ましい。舵角センサから出力される情報を用いることで、減衰力の調整を好適に実施することができる。
また、前記状態量検出センサは、前輪が受ける荷重に関連する情報を検出する荷重情報検出センサであることが好ましい。荷重情報検出センサから出力される前輪が受ける荷重に関連する情報を用いることで、減衰力の調整を好適に実施することができる。
また、前記荷重情報検出センサは、サスペンション圧力センサであることが好ましい。サスペンション圧力センサから出力される情報を用いることで、減衰力の調整を好適に実施することができる。
また、本発明に係る鞍乗り型車両は、上記いずれかに記載のステアリングダンパ制御装置を備えたものである。ステアリングが振られていない状態においてステアリングの振られを防止することができる。これにより、急なステアリングが発生するのを防止することができるので、ステアリングの安定感が向上し、操縦者の負担を軽減することができる。
本発明に係るステアリングダンパ制御装置およびそれを備えた鞍乗型車両によれば、ステアリングが振られていない状態においてステアリングの振られを予防することができる。
実施例に係る自動二輪車の全体を示す左側面図である。
実施例に係るステアリングダンパの取り付け状態を示した一部拡大図であり、(a)は平面図を示し、(b)は左側面図を示す。
ステアリングダンパの外観を示す平面図である。
図3のA−A矢視断面図である。
実施例1に係るステアリングダンパ制御装置の概略構成を示すブロック図である。
(a)および(b)はマップを示す説明図である。
ステアリングダンパ制御装置の動作を示すフローチャートである。
実施例2に係るステアリングダンパ制御装置の概略構成を示すブロック図である。
(a)および(b)はマップを示す説明図である。
実施例3に係るステアリングダンパ制御装置の概略構成を示すブロック図である。
ステアリングダンパ制御装置の動作を示すフローチャートである。
図12(a)乃至図12(d)は、前輪が受ける荷重に関連する情報を検出するセンサの変形実施例を示す図である。
以下、図面を参照して本発明の一実施例について説明する。なお、以下の説明においては、「鞍乗型車両」として自動二輪車を例にとって説明する。
<自動二輪車の構成>
図1は、実施例1に係る自動二輪車の全体を示す左側面図であり、図2は、実施例1に係るステアリングダンパの取り付け状態を示した一部拡大図であり、(a)は平面図を示し、(b)は左側面図を示す。
自動二輪車1は、メインフレーム3を備えている。メインフレーム3は、自動二輪車1の骨格を形成している。メインフレーム3の前端には、ヘッドパイプ5が設けられている。このヘッドパイプ5は、キャスター角に応じた傾斜姿勢で形成されている。ヘッドパイプ5は、中空に形成されており、その部分にステアリングシャフト7が回動自在に挿入されている。ステアリングシャフト7は、その上端部をアッパブラケット9に固定され、その下端部をアンダブラケット11に固定されている。アッパブラケット9とアンダブラケット11の左右方向における両端側には、一対のフロントフォーク13が取り付けられている。一対のフロントフォーク13の下端部には、前輪15が回転可能に支持されている。
フロントフォーク13には、フロントフォーク13の圧力を検出する圧力センサ16が設けられている。圧力センサ16は、フロントフォーク13内の上部に形成される空気室のエア圧力を検出する。空気室は、フロントフォークのオイルの油面の上方に位置している。フォーク13が、エア圧力を調整するため、または、エアバルブを設けるためのエア調整孔を有する場合、このエア調整孔に圧力センサ16を直接的にまたは間接的に接続してもよい。これにより、圧力センサ16を簡易に取り付けることができる。圧力センサ16の検出結果は、後述するコントローラ205に入力される。圧力センサ16は本発明における荷重情報検出センサに相当する。
アッパブラケット9は、上面に一対のハンドルホルダ17が設けられている。これらのハンドルホルダ17は、それぞれ2本のボルトBLを介してステアリングハンドル19を保持している。ステアリングハンドル19は、操縦者によって操作される。操縦者がステアリングハンドル19を操作すると、その操舵力がステアリングシャフト7を介して、一対のフロントフォーク13に伝達されて前輪15が操舵される。
ハンドルホルダ17の上部には、取り付け基台21が2本のボルトBLで共締め固定される。なお、この際、この取り付け基台21には、ステアリングダンパ23が予め4本のボルトBSで取り付けられている。このステアリングダンパ23は、操縦者がステアリングハンドル19を操作した際に減衰力を発生する機能を備えている。
メインフレーム3の上部には、燃料タンク25が設けられている。メインフレーム3のうち、燃料タンク25の後方にあたる部分には、シート27が設けられている。メインフレーム3のうちの燃料タンク25の下方にあたる部分には、エンジン29が配置されている。エンジン29の後部には、リアアーム31が揺動可能に取り付けられている。リアアーム31は、その後端部に後輪32を回転可能に保持している。後輪32は、エンジン29の駆動力が伝達されて、自動二輪車1を走行させる。
キー操作部20は、ステアリングハンドル19の中央部に設けられている。操縦者はイグニションキー22をキー操作部20に差し込むことで、電源のオン/オフ操作を行うことができる。図1中において、時計回りへのイグニションキー22の回転が電源のオンを意味する。
<ステアリングダンパの構成>
次に、図3および図4を参照して、上述したステアリングダンパ23について詳述する。なお、図3は、ステアリングダンパの外観を示す平面図であり、図4は、図3のA−A矢視断面図である。
図3に示すように、ステアリングダンパ23は、主として、下ケーシング部33と、ロータ部35と、電磁石37と、上ケーシング部39と、磁性流体室41とを備えている。
下ケーシング部33と上ケーシング39とは互いに固定されている。下ケーシング部33および上ケーシング39は、4本のボルトBSによって取り付け基台21に固定的に支持されている。下ケーシング部33および上ケーシング39は、ステアリングシャフト7やステアリングハンドル19と一体に回転する。本明細書では、ステアリングシャフト7およびステアリングハンドル19を「ステアリング」と総称する。
ロータ部35は、略円盤形状を有する円板部63と、円板部63の外周面に取り付けられる回転軸65とを有する。ロータ部35は、下ケーシング部33と上ケーシング部39との間に設けられている。ロータ35部(円板部63)は、オイルシール71およびベアリング73を介して、下ケーシング部33および上ケーシング部39に支持されている。ロータ部35は、下ケーシング部33および上ケーシング部39に対して回転可能である。また、オイルシール71によって、ロータ部35の外周部分(環状部材69を含む)が密閉されている。環状部材69は、例えば、鉄、ニッケル、マンガンなどの金属、または、亜鉛フェライトなどの鉄やニッケル、マンガンなどを含む合金などの磁性体で形成されている。
ロータ部35には、ステイアーム105の一端側が取り付けられている。ステーアーム105の他端側は、ストッパ107を介してメインフレーム3に固定されている。ロータ35は、メインフレーム3に固定的に連結されている。ステアリングハンドル19がメインフレーム3に対して回転すると、下ケーシング部33および上ケーシング39がロータ35に対して回転する。
ロータ部35には舵角センサ109が取り付けられている。舵角センサ109は、下ケーシング部33および上ケーシング39に対するロータ部35の回転角度を検出する。舵角センサ109の検出結果は、ステアリングハンドル19またはステアリングシャフト7の舵角(以下では、「ステアリングの舵角」または単に「舵角」と呼ぶ)に相当する。舵角センサ109の検出結果は、後述するコントローラ205に出力される。舵角センサ109は、本発明における状態量検出センサに相当する。
下ケーシング部33と上ケーシング39との間には、さらに、電磁石37が設けられている。電磁石37は、ロータ35の外径より若干大きな内径を有し、ロータ35の外周面を囲むように配置されている。電磁石37は、ボビン75とコイル77とヨークケース79とヨークキャップ81とを備えている。コイル77はボビン75に巻かれるとともに、ヨークケース79およびヨークキャップ81よって挟まれている。コイル77には、コイル用配線83が接続されている。
磁性流体室41は、下ケーシング部33とロータ35と電磁石37と上ケーシング部39とオイルシール71とによって仕切られている。磁性流体室41には、磁性流体42が充填されている。
磁性流体42としては、MR流体(磁性粘性流体:Magneto-rheological fluid)や、MCF流体(磁気混合流体:Magnetic compound fluid)、ER流体(電気粘性流体:Electro-rheological fluid)などが挙げられる。いずれも磁界や電界を印加することにより、粘性を調整することができるものである。
MR流体は、強磁性体微粒子が液体中に分散されたスラリーからなる。強磁性体微粒子の粒径は、通常、数十nm程度以下である。強磁性体微粒子は、例えば、鉄やニッケル、マンガンなどの金属、またはマンガン亜鉛フェライトなどの鉄やニッケル、マンガンなどを含む合金などにより形成することができる。強磁性体を分散させる液体は、水や水溶液であってもよいし、イソパラフィン、アルキルナフタレン、パーフルオロポリエーテルなどの有機溶媒などであってもよい。
磁場が印加されていない状態では、磁性流体42内の強磁性体微粒子は、ほぼ均一に分散された状態にある。これにより、一般的には、磁場が印加されていない状態の磁性流体42は、ニュートン流体としての挙動を示す。一方、磁場が印加されると、磁性流体42内の各磁区が磁気的に分極する。これにより、例えば、MR流体においては、強磁性体微粒子間に結合力が生じる。したがって、複数の強磁性体微粒子がクラスターを形成するので、見かけ上の粘性が増大し、せん断力が増大する。
すなわち、電磁石37のコイル77に電流を流し、磁性流体42に磁場を与えると、磁性流体42に磁界が印加されるので、磁性流体42の粘度が増大し、せん断力が増大する。せん断力は、下ケーシング部33および上ケーシング部39と、ロータ35との相対的な回転を減衰させる減衰力として働く。減衰力が大きくなるほど、ステアリングは動きにくくなり、減衰力が小さいほどステアリングは動きやすくなる。減衰力の大きさは、電磁石37に供給する電流によって調整される。このように、実施例1におけるステアリングダンパ23は、磁性流体42を用いたせん断式のダンパである。
なお、本明細書では、「減衰力」は、ステアリングが振動(回転)しているときにステアリングの振動(回転)を減衰させるように働く力、および、ステアリングが振動(回転)していないときにステアリングが振動(回転)し始めることを阻止するように働く力(抵抗力)の双方を意味する。
<コントローラの構成>
図5は、実施例1に係るステアリングダンパ制御装置の概略構成を示すブロック図である。ステアリングダンパ制御装置201は、フロントフォーク13の圧力の変化率に基づいて、ステアリングに作用する減衰力を調整する。ステアリングダンパ制御装置201は、上述した圧力センサ16、ステアリングダンパ23のほかに、マップ指定スイッチ203とコントローラ205とを備えている。実施例1では、車両の状態量を検出する状態検出センサとして、荷重情報検出センサである圧力センサ16の検出値を用いて減衰力を調整する。前輪15の荷重の変化率またはこれに相当する値(指標)は、外乱によるステアリングの振動と、ある程度関連性がある。たとえば、前輪15にかかる荷重が増大すると、前輪が受ける外乱によってステアリングがふられやすい傾向がある。
マップ指定スイッチ203は、複数の荷重制御マップの中から1つのマップを指定するスイッチである。マップ指定スイッチ203に入力された指令は、コントローラ205に出力される。マップ指定スイッチ203は、ステアリングハンドル19に取り付けられている(図1参照)。操縦者は、マップ指定スイッチ203を操作して各マップを指定することができる。
コントローラ205は、圧力センサ16の検出結果と、マップ指定スイッチ203からの命令とに基づいて、ステアリングダンパ23を制御する。コントローラ205は、圧力センサ16、キー操作部20、マップ指定スイッチ203、および、ステアリングダンパ23と電気的に接続されている。コントローラ205は、圧力変化率演算部211と、減衰力調整部217と、ダンパ駆動部219とを備えている。
圧力変化率演算部211は、圧力センサ16の検出結果に基づいて、圧力変化率を算出する。算出された圧力変化率は、減衰力調整部217に出力される。圧力変化率演算部211は、アナログ回路で構成されていることが好ましい。アナログ回路としては、オペアンプとコンデンサと抵抗とによって構成される微分回路などが例示される。このように構成される圧力変化率演算部211によれば、圧力変化率を時間的に連続して算出することができる。よって、圧力変化率の時間的な推移を精度よく得ることができる。
第1指令値決定部223は、マップ切替部221によって指定された圧力制御マップMPを参照し、圧力変化率に応じた減衰力指令値を決定する。この減衰力指令値を第1指令値と呼ぶ。圧力制御マップMPは、圧力変化率と減衰力指令値とが対応付けられた表形式の情報である。減衰力指令値は減衰力の大きさを規定する情報である。減衰力指令値の大小関係は、減衰力の大小関係と同じである。
ダンパ駆動部219は、減衰力調整部217から与えられる減衰力指令値に応じた大きさの電流を電磁石37のコイル77に与える。そして、コイル77が、供給された電流値に応じた磁場を発生する結果、ステアリングダンパ23の磁性流体42の粘度が変化し、ステアリングダンパ23に減衰力指令に応じた減衰力が発生する。
上述したコントローラ205は、例えば、鞍乗型車両1のECUであってもよい。あるいは、コントローラ205は、ECUとは別に、ステアリングダンパ制御装置201専用に設けてられたCPUまたはFPGA(Field Programmable Gate Array;再構成可能なゲートアレイ)でもよい。
<圧力制御マップ>
圧力制御マップMPについてさらに詳細に説明する。図6は、圧力制御マップMPの一例を示す説明図である。
圧力制御マップMPは、圧力変化率を横軸とし、減衰力指令値を縦軸としたグラフである。複数種類の圧力制御マップMPが予め第1指令値決定部223に記憶されている。実施例1では圧力制御マップMPとして2種類の圧力制御マップMPaおよびMPbが記憶されている。
圧力制御マップMPaは、次のように設定されている。圧力変化率が0以下のときは、減衰力指令値は最小の一定値F1a0である。圧力変化率が0より大きく、閾値PHa以下の領域では、圧力変化率が大きくなるにしたがって減衰力指令値が大きくなる。圧力変化率が閾値PHaより大きいときは、減衰力指令値は一定値F1ahである。一定値F1ahは、圧力変化率が閾値PHaであるときの減衰力指令値と等しい。このため、閾値PHaの近傍において減衰力指令値は連続している。
圧力制御マップMPbは、圧力制御マップMPaと似た特性であるが、圧力制御マップMPaに比べて減衰力指令値が全体的に低い。具体的には、圧力制御マップMPbにおける一定値F1bhは、圧力制御マップMPaにおける一定値F1ah未満に設定されている。また、圧力制御マップMPbにおける一定値F1b0は、圧力制御マップMPaにおける一定値F1ah未満に設定されている。
この圧力制御マップMPa、MPbの技術的意義は、次の通りである。圧力変化率は、外乱によるステアリングの振動とある程度の関連性がある。例えば、フロントフォーク13の圧力が増大した直後に、前輪15が受ける外乱によってステアリングが振られやすい傾向がある。圧力制御マップMPa、MPbによれば、現実にステアリングが振られていなくても、圧力変化率が増大し、ステアリングが振られやすい状態になった時点で、減衰力を発生させることができる。
ここで、フロントフォーク13の圧力は、フロントフォーク13のストローク長(伸縮量)に相当し、前輪15が路面から受ける上向き荷重に相当する。圧力変化率は、フロントフォーク13の伸縮速度に相当し、前輪15の荷重の変化率に相当する。圧力変化率が正であるとき、フロントフォーク13は収縮中であり、前輪15の荷重は増大中である。このように、圧力変化率は、前輪15が受ける荷重の変化率に相当する値(指標である)。よって、以下では、「圧力変化率」の代わりに、「前輪15の荷重の変化率」を用いて説明する。
前輪15の荷重が増大する時としては、例えば鞍乗型車両1がコーナーに入るときや減速するとき、または、前輪15が路面の凸部に乗り上げる等により前輪15が外乱を受けたときが例示される。ただし、いずれの場合であっても、前輪15の荷重が増大する期間は極めて短く、一瞬で終了する。他方、前輪15の荷重が増大しない時としては、鞍乗型車両1がコーナーに入った直後などのほかに、次のような場面が例示される。すなわち、鞍乗型車両1を一定速度で走行しているとき、コーナーを一定速度で旋回走行しているとき、加速しているとき、コーナーを出るとき、あるいは、鞍乗型車両1をジャンプさせているとき等である。
圧力制御マップMPa、MPbによれば、前輪15の荷重が増大する方向へ変化する場合、減衰力指令値は最小値より大きくなる。そうでないときには、減衰力指令値は最小値となる。
その結果、前輪15の荷重が増大すると、ステアリングに作用する減衰力が増大し、ステアリングが動きにくくなる。その際、荷重の増大量が大きいほど、減衰力は大きくなり、ステアリングは一層動きにくくなる。ただし、荷重の増大量がさらに大きくなると、減衰力は一定となり、減衰力が必要以上に過大となることはない。前輪15への荷重が消滅すると、ステアリングに作用する減衰力は再び最小に戻り、ステアリングは動きやくなる。
また、圧力制御マップMPa、MPbのいずれのマップにおいても、減衰力指令値の最小値F1a0およびF1b0は0よりも大きい正の値をもつ。すなわち、キーオン状態においては、どのような状態であっても常に減衰力がステアリングダンパ23に発生している。
また、2種の圧力制御マップMPa、MPbを備えることによって、状況に応じて圧力制御マップMPa、MPbを使い分けることができる。また、ステアリングが振られる前に発生する初期減衰力の大きさを選択することができる。
例えば、前輪15と路面とのグリップが比較的に高く、前輪15が滑りにくい場合には、ステアリングは外乱によって比較的に大きな力で振られる。このような場合、圧力制御マップMPaを用いることにより、比較的に大きな減衰力を発生させることができ、ステアリングの振動を好適に抑制することができる。グリップが高い場合としては、整地された路面、舗装された路面またはハイグリップコース等を走行するときや、晴天時に走行するときなどが例示される。
また、例えば、前輪15と路面とのグリップが比較的に低く、前輪15が滑りやすい場合には、外乱によるステアリングの振動は比較的に小さい。そもそも、外乱を受けても、前輪15が滑ってしまえば、ステアリングの振動自体が起こりにくい。このような場合、圧力制御マップMPbを用いることにより、比較的に小さな減衰力で、ステアリングの振動を十分に抑制できる。むしろ、この場合には、減衰力が小さいほど好ましい。グリップが低いとき、操縦者はステアリングを通じて前輪15のグリップ(接地感)を感得しようとする。その際、減衰力が小さいほど、操縦者は操作感を得やすいからである。グリップが低い場合としては、荒れ地、未舗装の路面またはローグリップコース等を走行するときや、雨天時に走行するときなどが例示される。
なお、圧力制御マップMPa、MPbを使い分ける基準は、路面状態や天候に限られない。例えば、鞍乗型車両1の重量や走行速度に応じて、圧力制御マップMPa、MPbを使い分けてもよい。
<ステアリングダンパ制御装置の動作>
次に、実施例1に係るステアリングダンパ制御装置の動作について説明する。図7は、ステアリングダンパ制御装置の動作を示したフローチャートである。
ステップS1
操縦者がイグニッションキー22をキー操作部20に挿入して、キーオン位置に回転すると、自動二輪車1の電源がオンされる。電源がオンされると、コントローラ205および圧力センサ16が作動する。圧力センサ16は作動すると、直ちに、検出値をコントローラ205へ出力する。また、自動二輪車1に電源が投入されると、並行して2つの処理が実施される。
ステップS2、S3
マップ切替部221は、マップ指定スイッチ203に入力された指令を取得する。そして、この指令に基づいて、第1指令値決定部223が参照する圧力制御マップMPとして、圧力制御マップMPa、MPbのいずれかを選択して決定する。
ステップS4、S5
ステップS2、S3と並行して、圧力変化率演算部211は、圧力センサ16の検出値を読み込む。そして、圧力変化率演算部211は、読み込んだ検出値の圧力変化率を算出する。算出された圧力変化率は、第1指令値決定部223に出力される。
ステップS6
第1指令値決定部223は、指定された圧力制御マップMPを参照し、圧力変化率に応じた減衰力指令値を第1指令値として決定する。第1指令値決定部223は、第1指令値をダンパ駆動部219に出力する。
ステップS7
ダンパ駆動部219は、第1指令値に応じた電流を電磁石37のコイル77に流す。これにより、ステアリングダンパ23は、電流に応じた減衰力を発生する。この後、ステップS2およびS4に戻る。
このように、実施例1に係るステアリングダンパ制御装置201によれば、圧力センサ16の検出結果に基づいてステアリングダンパ23を制御する。換言すれば、圧力変化率に応じた減衰力指令値である第1指令値を用いてステアリングダンパ23を制御する。圧力センサ16の検出結果がたとえゼロ値であっても、圧力センサ16から出力される検出値をトリガーとして、ステアリングダンパ23に減衰力が発生する。
この制御により、圧力変化率が増大している時に、減衰力を発生させることができる。また、ステアリングが振られやすい状態では、ステアリングを動きにくくすることができる。また、ステアリングが実際に振られていなくても、ステアリングの振動を予防的に抑制することができる。
第1指令値決定部223は、複数種類の圧力制御マップMPa、MPbを有しているので、状況に応じて圧力制御マップMPa、MPbを使い分けることができる。マップ指定スイッチ203を備えているので、操縦者は第1指令値決定部223が参照する圧力制御マップMPa、MPbのいずれかを好適に指定することができる。
圧力制御マップMPは、圧力変化率が正である範囲において、圧力変化率が大きくなるにしたがって、減衰力指令値が大きくなる。よって、フロントフォーク13の圧力の変化が急峻である場合であっても、ステアリングの振動を効果的に抑制することができる。特に、この領域では、前記荷重の変化率が大きくなるにしたがって、減衰力の増大量が大きくなる。よって、ステアリングの振動を一層効果的に抑制することができる。
また、圧力変化率が閾値PHaより大きいときは、減衰力指令値は一定値F1ahである。よって、必要以上に過大な減衰力が発生することがないので、操縦者の負担を好適に軽減することができる。特に、一定値F1ah、F1bhは、圧力変化率が閾値PHa、PHbであるときの減衰力指令値と等しい。よって、閾値PHa、PHbの近傍において減衰力指令値(減衰力)が連続しているので、ステアリングの操縦性(動きやすさ)が不自然に変化することを回避できる。
ステアリングダンパ23は、磁性流体42と、磁性流体42に対して磁場を与える電磁石37とを備えているので、電磁石37に電流を流すことで、ステアリングが動かなくても、ステアリングに減衰力を作用させることができる。また、圧力変化率が0以下の場合、減衰力指令値は0より大きい正の値を持つ最小値である。これにより、キーオン状態であれば、常に一定以上の減衰力がステアリングダンパ23に発生するので、ステアリングが振られる前からステアリングの振られを防止することができる。さらには、ステアリングが振られていなくても、ステアリングが振られやすい状況になった時に、減衰力指令値に応じた減衰力を好適に発生させることができる。
ステアリングダンパ23は、磁性流体42のせん断力を減衰力として利用する「せん断型」であるので、減衰力指令値が最小値であるときの減衰力を適切に小さくすことができる。これにより減衰力指令値が最小値であるときには、ステアリングの操縦性を軽くすることができる。また、「せん断型」の磁性流体42のステアリングダンパ23は、キーオフ操作により、コイル77に流す電流を停止すると、瞬時に減衰力がほとんど0になる。磁性流体42を用いるステアリングダンパであっても、オリフィス式やバルブ式のものは、磁性流体42に印加する磁場を停止しても、摩擦力が残存するので、減衰力を瞬時に低減できない。このように、「せん断型」のステアリングダンパ23は、減衰力の応答性が優れている。
自動二輪車1は、上述したようなステアリングダンパ制御装置201を備えているので、キーオン操作後直ちに、ステアリングが振られる前から、ステアリングの振られを防止することができ、ステアリングの安定感を向上することができる。これにより、操縦者の負担を好適に軽減させることができる。さらには、キーオフ操作により、ステアリングダンパ23の減衰力を瞬時に低減することができるので、キーオフ時のステアリングを軽く操作することができる。
次に、図8を参照して実施例2に係るダンパ制御装置について説明する。図8は、実施例2に係るステアリングダンパ制御装置の概略構成を示すブロック図である。図8において、実施例1に示した符号と同一の符号で示した部分は、実施例1と同様の構成であるのでここでの説明は省略する。また、以下に記載した以外の自動二輪車1の構成は実施例1と同様である。
実施例1では、圧力センサ16からの検出結果を基に減衰力を調整している。実施例2では、圧力センサ16に代えて、舵角センサ109からの出力結果を基に減衰力を調整する。
<コントローラの構成>
ステアリングダンパ制御装置201’は、ステアリングの舵角速度に基づいて、ステアリングに作用する減衰力を調整する。実施例2では、車両の状態量を検出する状態検出センサとして、舵角センサ109の検出値を用いて減衰力を調整する。ステアリングの舵角の変化率である舵角速度は、外乱によるステアリングの振動を直接的に示す。ステアリングダンパ制御装置201’は、ステアリングダンパ23および舵角センサ109のほかに、マップ指定スイッチ203’とコントローラ205’とを備えている。
マップ指定スイッチ203’は、複数の舵角制御マップの中から1つのマップを指定するスイッチである。マップ指定スイッチ203’に入力された指令は、コントローラ205’に出力される。操縦者は、マップ指定スイッチ203’を操作して各マップを指定することができる。
コントローラ205’は、舵角センサ109の検出結果と、マップ指定スイッチ203’からの命令とに基づいて、ステアリングダンパ23を制御する。コントローラ205’は、キー操作部20、舵角センサ109、マップ指定スイッチ203’、および、ステアリングダンパ23と電気的に接続されている。コントローラ205’は、舵角変化率演算部216と、ダンパ駆動部219とを備えている。
舵角変化率演算部216は、舵角センサ109の検出結果に基づいて、舵角の変化率である舵角速度を算出する。算出された舵角速度は、減衰力調整部217’に出力される。舵角変化率演算部216も、アナログ回路で構成されていることが好ましい。
減衰力調整部217’は、舵角速度に応じた減衰力指令値である第2指令値によってステアリングダンパ23の減衰力を調整する。減衰力調整部217’は、マップ切替部221’と、第2指令値決定部225とを備えている。第2指令値決定部225は、予め記憶されている複数種類の舵角制御マップMVを有する。図8では、第2指令値決定部225が2つの舵角制御マップMV(MVa、MVb)を有することを一例として示す。
マップ切替部221’は、マップ指定スイッチ203’の命令に基づいて、舵角制御マップMVa、MVbのいずれかに切り替える。
第2指令値決定部225は、マップ切替部221’によって指定された舵角制御マップMVを参照し、舵角速度に応じた減衰力指令値を決定する。この減衰力指令値を第2指令値と呼ぶ。舵角制御マップMVは、舵角速度と減衰力指令値とが対応付けられた表形式の情報である。
<舵角制御マップ>
舵角制御マップMVについてさらに詳細に説明する。図9は、舵角制御マップMVの一例を示す説明図である。
舵角制御マップMVは、舵角速度の絶対値を横軸とし、減衰力指令値を縦軸としたグラフである。複数種類の舵角制御マップMVが、予め第2指令値決定部225に記憶されている。実施例2では舵角制御マップMVとして2種類の圧力制御マップMVaおよびMVbが記憶されている。
舵角制御マップMVaは、次のように設定されている。舵角速度の絶対値が0のときは、減衰力指令値は最小の一定値F2a0である。舵角速度の絶対値が0より大きく、閾値VHa以下の領域では、舵角速度の絶対値が大きくなるにしたがって減衰力指令値が大きくなる。舵角速度の絶対値が閾値VHaより大きいときは、減衰力指令値は一定値F2ahである。一定値F2ahは、舵角速度が閾値VHaであるときの減衰力指令値と等しい。このため、閾値VHaの近傍において減衰力指令値は連続している。
舵角制御マップMVbは、舵角制御マップMVaと似た特性を有するが、舵角制御マップMVaに比べて減衰力指令値が全体的に低い。また、舵角制御マップMVbにおける一定値F2bhは、舵角制御マップMVaにおける一定値F2ah未満に設定されている。また、舵角制御マップMVbにおける一定値F2b0は、舵角制御マップMVaにおける一定値F2a0未満に設定されている。
舵角制御マップMVa、MVbの技術的意義は、次の通りである。舵角制御マップMVa、MVbによれば、現実にステアリングが振られている時に、減衰力を発生させることができる。なお、ステアリングの振動は、前輪15が路面から外乱を受けたときのほか、後輪32が進行方向に対して横方向にスライドしたとき(言い換えれば、後輪32およびメインフレーム3がステアリングシャフト7を中心に回転したとき)にも、発生する。
具体的には、舵角速度が0のときは、ステアリングに作用する減衰力は最小であり、ステアリングは動きやすい。舵角速度が0より大きいときは、減衰力がさらにステアリングに作用し、ステアリングが動きにくくなる。その際、舵角速度が大きいほど、減衰力が大きくなり、ステアリングは一層動きにくくなる。ただし、舵角速度がさらに大きくなると、減衰力が一定となり、減衰力が必要以上に過大となることはない。
これら2種の舵角制御マップMVa、MVbを備えることによって、状況に応じて舵角制御マップMVa、MVbを使い分けることができる。これにより、適切な大きさの減衰力を発生させることができる。
例えば、グリップが比較的に高い場合には、ステアリングは比較的大きな力で振られる傾向がある。換言すれば、グリップが高い場合にステアリングがある舵角速度で振られたときには、グリップが低い場合にステアリングが同じ舵角速度で振られるときに比べて、ステアリングはより大きな力で振られていることが多い。よって、グリップが高い場合、舵角制御マップMVaを用いることにより、比較的に大きな減衰力を発生させて、ステアリングの振動を好適に抑制することができる。他方、グリップが低い場合、舵角制御マップMVbを用いることにより、比較的に小さな減衰力で、ステアリングの振動を十分に抑制できる。
なお、舵角制御マップMVa、MVbを使い分ける基準は、路面状態や天候に限られない。例えば、鞍乗型車両1の重量や走行速度に応じて、使い分けてもよい。
<ステアリングダンパ制御装置の動作>
次に、実施例2に係るステアリングダンパ制御装置の動作について説明する。実施例2のステアリングダンパ制御装置の動作は、実施例1の動作と基本的に同じ動作をするので、図7のフローチャートを基に同じ動作については説明を省略し、実施例1における動作との違いを説明する。
ステップS1
イグニッションキー22をキー操作部20に挿入して、キーオン位置に回転すると、自動二輪車1の電源がオンされる。電源がオンされると、コントローラ205’および舵角センサ109が作動する。舵角センサ109が作動すると、検出値を直ちにコントローラ205’へ出力する。
ステップS2、S3
マップ切替部221’は、マップ指定スイッチ203に入力された指令を取得する。そして、この指令に基づいて、第2指令値決定部225が参照するマップを、舵角制御マップMVa、MVbのいずれかを選択して決定する。
ステップS4、S5
ステップS2、S3と並行して、舵角変化率演算部216は、舵角センサ109の検出値を読み込む。そして、舵角変化率演算部216は、読み込んだ検出値を基に舵角速度を算出する。算出された舵角速度は、第2指令値決定部225に出力される。
ステップS6
第2指令値決定部225は、指定された舵角制御マップMVを参照し、舵角速度に応じた減衰力指令値を第2指令値として決定する。第2指令値決定部225は、第2指令値をダンパ駆動部219に出力する。
ステップS7
ダンパ駆動部219は、第2指令値に応じた電流を電磁石37のコイル77に流す。これにより、ステアリングダンパ23は、電流に応じた減衰力を発生する。この後、ステップS2およびS4に戻る。
このように、実施例2に係るステアリングダンパ制御装置201によれば、舵角センサ109の検出結果に基づいてステアリングダンパ23を制御する。換言すれば、舵角速度に応じた減衰力指令値である第2指令値を用いてステアリングダンパ23を制御する。舵角センサ109の検出結果によれば、ステアリングが振られている時に、減衰力を発生させることができる。これにより、当然ながら、ステアリングの振動を有効に抑制することができる。
このように、ステアリングダンパ制御装置201によれば、多様な外乱によるステアリングの種々の振れに対して、一層好適に対応することができる。
第2指令値決定部225は、複数種類の舵角制御マップMVa、MVbを有しているので、状況に応じて舵角制御マップMVa、MVbを使い分けることができる。マップ指定スイッチ203を備えているので、操縦者は第2指令値決定部225が参照する舵角制御マップMVa、MVbのいずれかを好適に指定することができる。
舵角制御マップMVは、舵角速度の絶対値が正である範囲において、舵角速度が大きくなるにしたがって、減衰力指令値が大きくなる。よって、舵角速度が大きい場合であっても、ステアリングの振動を効果的に抑制することができる。特に、この領域では、舵角速度が大きくなるにしたがって、減衰力の増大量が大きくなる。よって、ステアリングの振動を一層効果的に抑制することができる。
また、舵角速度が閾値VHa、VHbより大きいときは、減衰力指令値は一定値F2ah、F2bhである。よって、必要以上に過大な減衰力が発生することがないので、操縦者の負担を好適に軽減することができる。特に、一定値F2ah、F2bhは、舵角速度が閾値VHa、VHbであるときの減衰力指令値と等しい。よって、閾値VHa、VHbの近傍において減衰力指令値(減衰力)が連続しているので、ステアリングの操縦性(動きやすさ)が不自然に変化することを回避できる。
また、舵角速度が0の場合においても、減衰力指令値は0より大きい正の値を持つ最小値である。これにより、キーオン状態であれば、常に一定以上の減衰力がステアリングダンパ23に発生するので、ステアリングが振られる前からステアリングの振られを防止することができる。また、鞍乗型車両1をジャンプさせたときに、操縦者はステアリングを容易に切ることができる。
次に、図10を参照して実施例3に係るダンパ制御装置について説明する。図10は、実施例3に係るステアリングダンパ制御装置の概略構成を示すブロック図である。図10において、実施例1または2に示した符号と同一の符号で示した部分は、実施例1または2と同様の構成であるのでここでの説明は省略する。また、以下に記載した以外の自動二輪車1の構成は実施例1または2と同様である。
実施例1および2では、自動二輪車1の状態量を検出する1個のセンサの検出結果に基づいて減衰力を調整している。すなわち、圧力センサ16または舵角センサ10からの検出結果を用いて減衰力を調整している。実施例3では、自動二輪車1の状態量を検出する2個のセンサの検出結果に基づいて減衰力を調整する。すなわち、圧力センサ16に加えて舵角センサ109からの出力結果を基に減衰力を調整する。
<コントローラの構成>
図10は、実施例3に係るステアリングダンパ制御装置の概略構成を示すブロック図である。ステアリングダンパ制御装置201’’は、フロントフォーク13の圧力の変化率およびステアリングの舵角速度に基づいて、ステアリングに作用する減衰力を調整する。ステアリングダンパ制御装置201’’は、上述した圧力センサ16、ステアリングダンパ23および舵角センサ109のほかに、マップ指定スイッチ203’’とコントローラ205’’とを備えている。
マップ指定スイッチ203’’は、複数の荷重制御マップおよび複数の舵角制御マップの中から1対の荷重制御マップおよび舵角制御マップを指定するスイッチである。マップ指定スイッチ203’’に入力された指令は、コントローラ205’’に出力される。操縦者は、マップ指定スイッチ203’’を操作して各マップを指定することができる。
コントローラ205’’は、圧力センサ16および舵角センサ109の各検出結果と、マップ指定スイッチ203’’からの指令とに基づいて、ステアリングダンパ23を制御する。コントローラ205’’は、圧力センサ16、キー操作部20、舵角センサ109、マップ指定スイッチ203’’、および、ステアリングダンパ23と電気的に接続されている。コントローラ205’’は、圧力変化率演算部211と、舵角変化率演算部216と、減衰力調整部217’’と、ダンパ駆動部219とを備えている。
減衰力調整部217’’は、圧力変化率に応じた減衰力指令値である第1指令値、および、舵角速度に応じた減衰力指令値である第2指令値のいずれかによってステアリングダンパ23の減衰力を調整する。
減衰力調整部217’’は、マップ切替部221’’と、第1指令値決定部223と、第2指令値決定部225と、指令値選択部227とを備えている。マップ切替部221’’は、マップ指定スイッチ203’’の命令に基づいて、圧力制御マップMPa、MPbのいずれかに切り替える。同様に、舵角制御マップMVa、MVbのいずれかに切り替える。
圧力制御マップMPaと舵角制御マップMVaとは、互いに関連付けられており、グループAを構成する。同様に、圧力制御マップMPbと舵角制御マップMVbとは、互いに関連づけられており、グループBを構成する。これにより、マップ指定スイッチ203’’は、グループA、Bのいずれかを選択するだけで、圧力制御マップMPおよび舵角制御マップMVを一挙に指定することができる。
第1指令値決定部223は、マップ切替部221’’によって指定された圧力制御マップMPを参照し、圧力変化率に応じた減衰力指令値を決定する。第2指令値決定部225は、マップ切替部221’’によって指定された舵角制御マップMVを参照し、舵角速度に応じた減衰力指令値を決定する。
指令値選択部227は、第1指令値と第2指令値のうち、大きい方を選択する。ダンパ駆動部219は、指令値選択部227によって選択された指令値に応じた電流を電磁石37のコイル77に流す。
<ステアリングダンパ制御装置の動作>
次に、実施例3に係るステアリングダンパ制御装置の動作について説明する。図11は、ステアリングダンパ制御装置の動作を示したフローチャートである。
ステップS1
イグニッションキー22をキー操作部20に挿入して、キーオン位置に回転すると、自動二輪車1の電源がオンされる。電源がオンされると、コントローラ205’’、圧力センサ16および舵角センサ109が作動する。
ステップS2
マップ切替部221’’は、マップ指定スイッチ203’’に入力された命令を取得する。そして、この命令に基づいて、第1指令値決定部223が参照する圧力制御マップMPを、圧力制御マップMPa、MPbのいずれかに切り替える。同様に、第2指令値決定部225が参照するマップを、舵角制御マップMVa、MVbのいずれかに切り替える。
具体的には、マップ切替部221’’は、マップ指定スイッチ203’’に入力された命令がグループAの指定であるか否かを判断する(ステップS3a)。グループAの指定である場合には、圧力制御マップMPaおよび舵角制御マップMVaを指定する(ステップS3b)。そうでない場合には、圧力制御マップMPbおよび舵角制御マップMVbを指定する(ステップS3c)。
ステップS4’、S5’
圧力変化率演算部211は、圧力センサ16の検出結果を取得する。そして、圧力変化率を算出する。算出された圧力変化率は、第1指令値決定部223に出力される。第1指令値決定部223は、指定された圧力制御マップMPを参照し、圧力変化率に応じた減衰力指令値を決定する。決定された減衰力指令値は第1指令値である(ステップS6a)。
同様に、舵角変化率演算部216は、舵角センサ109の検出結果を取得する。そして、舵角速度を算出する。算出された舵角速度は、第2指令値決定部225に出力される。第2指令値決定部225は、指定された舵角制御マップMVを参照し、舵角速度に応じた減衰力指令値を決定する。決定された減衰力指令値は第2指令値である(ステップS6a)。
ステップS6b
指令値選択部227は、第1指令値と第2指令値とを比較し、第1指令値が第2指令値に比べて大きいか否かを判断する。その結果、第1指令値の方が大きい場合は、ステップS6cに進む。そうでない場合は、ステップS6dに進む。
ステップ6c
指令値決定部227は、第1指令値を選択し、第1指令値をダンパ駆動部219に出力する。ダンパ駆動部219は、第1指令値に応じた電流を電磁石37のコイル77に流す。ステアリングダンパ23は、電流に応じた減衰力を発生する。
ステップS6d
指令値決定部227は、第2指令値を選択し、第2指令値をダンパ駆動部219に出力する。ダンパ駆動部219は、第2指令値に応じた電流を電磁石37のコイル77に流す。ステアリングダンパ23は、電流に応じた減衰力を発生する。
このように、実施例3に係るステアリングダンパ制御装置201によれば、圧力センサ16の検出結果、および、舵角センサ109の検出結果に基づいてステアリングダンパ23を制御する。換言すれば、圧力変化率に応じた減衰力指令値である第1指令値、および、舵角速度に応じた減衰力指令値である第2指令値を選択的に用いてステアリングダンパ23を制御する。
また、指令値選択部227は、第1指令値、および、第2指令値のうち、大きい方を選択するので、圧力センサ16の検出結果に基づく制御と、舵角センサ109の検出結果に基づく制御を互いに補完させることができる。すなわち、ステアリングが振られていない場合であっても圧力変化率が増大しているときには減衰力を発生させることができ、かつ、圧力変化率が増大していない場合であってもステアリングが振動しているときには減衰力を発生させることができる。これにより、例えば、鞍乗型車両1がコーナーに入るときや減速するとき等においては、ステアリングの振動を好適に抑制でき、かつ、コーナーを出る時や加速するとき等においては、後輪32が横滑りすることを好適に抑制することができる。
また、各圧力制御マップMPはそれぞれ、いずれかの舵角制御マップMVとセットになっているので、マップ指定スイッチ203は、圧力制御マップMPと舵角制御マップMVを一括して指定することができる。
本装置発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
(1)上述したステアリングダンパ制御装置に、センサ値の異常を判別するセンサ値異常判別部をコントローラ205、205’、205’’に設けてもよい。センサ値異常判別部により、センサ値が異常であると判別されると、コイル77に流す電流をゼロにする制御を実施する。この構成によれば、センサの故障により、減衰力が発生するのを防止することができ、メンテナンス時の作業効率が向上する。センサ値の異常として、例えば、検出されたセンサ値が予め定められた異常閾値を超える場合や、電源オン状態でセンサ値が入力されない場合が挙げられる。
(2)上述したステアリングダンパ制御装置では、自動二輪車1の車両状態検出センサとして、荷重情報検出センサである圧力センサ16または舵角センサ109を採用したがこれに限られない。例えば、自動二輪車1に車速センサを備え、このセンサの検出結果がコントローラ205、205’、205’’に入力されると、減衰力調整部217、217’、217’’が予め定められた減衰力が発生するように、コイル77に電流を流す構成でもよい。この構成であっても、自動二輪車1の状態量を検出するセンサの出力値をトリガーとして、ステアリングダンパ23に減衰力を発生させることができる。
(3)上述した実施例1および3では、荷重情報検出センサとして圧力センサ16を例示したが、これに限られない。例えば、前輪15が受ける荷重に関連する情報を検出する他の検出センサに適宜に変更することができる。
図12(a)乃至(d)を参照する。図12(a)乃至(d)は、前輪15が受ける荷重に関連する情報を検出する荷重情報検出センサの変形実施例を示す図である。図12(a)乃至(d)は、自動二輪車1を正面から見たときのフロントフォーク13の一部を拡大した図である。
図12(a)に示すように、車軸100が受ける荷重を検出する歪みゲージ241、242を備えてもよい。各歪みゲージ241、242は、それぞれ前輪15の車軸240の上部および下部に配置されることが好ましい。これにより、車軸240が受ける荷重を精度良く検出することができる。なお、車軸240が受ける荷重は、前輪15が受ける荷重に相当する。よって、歪みゲージ241、242の検出結果から、前輪15が受ける荷重の変化率を得ることができる。
図12(b)に示すように、フロントフォーク13の伸縮速度を検出する速度センサ243を備えてもよい。速度センサ243は、コイル等を含んで構成され、磁束の変化に基づいてフロントフォーク13の伸縮速度を検出するものであってもよい。あるいは、速度センサ243は、レーザー光等による光学式の表面速度センサであってもよい。なお、フロントフォーク13の伸縮速度は、前輪15の荷重の変化率に相当する値である。
図12(c)に示すように、フロントフォーク13の軸方向(伸縮方向)の加速度を検出する加速度センサ245を備えてもよい。なお、加速度センサ245の検出結果は、前輪15の荷重の変化率をさらに時間微分したものに相当する。よって、加速度センサ245の検出結果から、前輪15が受ける荷重の変化率に相当する値を得ることができる。
図12(d)に示すように、車軸240の上下方向の加速度を検出する加速度センサ247を備えてもよい。なお、加速度センサ247の検出結果は、前輪15の荷重の変化率をさらに時間微分したものに相当する。よって、加速度センサ247の検出結果から、前輪15が受ける荷重の変化率に相当する値を得ることができる。
また、図示を省略するが、圧力センサ16に代えて、フロントフォーク13のストローク量を検出するストロークセンサを備えてもよい。なお、フロントフォーク13のストローク量は、前輪15が受ける荷重に相当する。よって、ストロークセンサの検出結果から、前輪15が受ける荷重の変化率を得ることができる。
上述した各種センサ241、242、243、245、247、及び、ストロークセンサは、それぞれ、この発明における荷重情報検出センサに相当する。
(4)上述した自動二輪車1の実施例では、鞍乗型車両として自動二輪車1を例示した。本発明は、上述した自動二輪車1とは異なる、例えば、スクータ、スクータタイプ以外のモペットなどの自動二輪車、ATV(All Terrain Vehicle(全地形型車両)四輪バギー)、スノーモービルなどの鞍乗型車両であっても適用することができる。
1 … 自動二輪車
16 … 圧力センサ
23 … ステアリングダンパ
37 … 電磁石
42 … 磁性流体
77 … コイル
109 … 舵角センサ
201、201’、201’’ … ステアリングダンパ制御装置
217、217’、217’’ … 減衰力調整部
219 … ダンパ駆動部
221、221’、221’’ … マップ切り替え部
241、242 … 歪みゲージ
243 … 速度センサ
245、247 … 加速度センサ