JP5796953B2 - ハニカム充填塔型の気液接触装置 - Google Patents
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Description
しかし、現在では、実際には一部の細管に気泡が集中して流れが不安定になり、ハニカム断面で不均一な流れになることが知られている。
完全混合流れでは、極めて短い滞留時間で反応塔から排出される流体が多いため、反応塔内部で十分に反応が進行せず、反応活性の面で問題が生じる場合がある。一方で、反応塔における滞留時間が非常に長い流体も並存する。このとき、過剰に反応することで本来得るはずの生成物とならず、副生物となる可能性が高まる。つまり、反応の選択性に悪影響を及ぼすこともある。
ダウンフローにおいては液分散が重要であることから、特許文献1ではハニカム構造体をずらして重ねることで液分散を図っており、非特許文献5ではスプレーノズルやスタティックミキサーが用いられている。
アップフローにおいても、例えば特許文献2のようにスタティックミキサーで気液分散を図る方法が開示されているが、非特許文献2に見られるように、ガス分散性を向上しても液体の滞留時間分布は完全混合流れに近いことが知られている。特許文献2では、スタティックミキサーによる気液分散で物質移動を促進し、反応効率が増しているが、流動状態が安定になっているわけではない。
塔型容器内において気液を上向き流れで接触させるための塔型接触装置であって、
前記塔型容器内には2段以上のハニカム構造体が縦方向に収容されており、
前記2段以上のハニカム構造体の各段間に空間部が形成されており、
前記各段間の空間部において、逆流防止手段となる整流部がハニカム構造体に接触しない状態で設置されており、
前記整流部が、穴径0.5〜8 mmの多数の穴を有するものである塔型接触装置を提供する。
上記発明の塔型接触装置の運転方法であって、
液空塔速度0.0001〜0.5 m/s、ガス空塔速度0.05〜10 m/sで気液を接触させる塔型接触装置の運転方法を提供する。
本発明の塔型接触装置を図1により説明する。図1は、本願発明の塔型接触装置10の一実施形態を示した縦方向の断面図である。本願発明の塔型接触装置は図1のものに限定されるものではない。
本発明の塔型接触装置10で用いる塔型容器11は、目的に応じた大きさ及び形状のもので、気液を塔下部から供給し、塔頂部で取り出せて、上向き流れで接触させることができるものであればよい。
ハニカム構造体12は、その内部において気液を接触させるためのものである。
図1ではハニカム構造体12は計8段収容されているが、ハニカム構造体12の収容数は2段以上であればよく、塔型接触装置10の使用目的に応じて選択されるものである。2段以上が収容されているということは、段と段の間に間隔が形成された状態で収容されていることを意味する。なお、本発明において、1つの段を「ハニカム充填層」ということがある。
本願発明の逆混合抑制効果を効果的に得るためには4段以上であることが好ましく、10段以上又は20段以上であってもよい。
1つの段のハニカム構造体12は、1個のハニカム構造体からなるものでもよいし、複数個のハニカム構造体の組み合わせからなるものでもよい。
また、細管流路の幅方向の断面形状として、図2のように任意の数、任意の大きさのフィンが任意の場所に付いた形状のものでもよい。
このような平板状フィルムと波板状フィルムの複合ハニカム構造体の外観形状及び構造としては、図3に示すものを用いることができる。
図3で示す平板状フィルムと波板状フィルムの複合ハニカム構造体50は、平板状フィルム51と波板状フィルム52が交互に積層されてなるものであり、多数の平行な略三角形(1つの角部が丸みを帯び、2辺が曲線を含んでいる)の細管流路53が形成されている。
このようなハニカム構造体12の表面に触媒が固定化されたものは周知であり、例えば、特許文献1、2に記載されたものを用いることができる。
上記の平板状フィルムと波板状フィルムの複合ハニカム構造体に触媒が固定化されたものは、図3で示すハニカム構造体50に触媒を固定化させて得ることができる。図3で示すハニカム構造体50に触媒を固定化させたものは、特開2009-262145号公報の図3、特開2008-110341号公報の図6に示されたものと同じ製造方法を適用して得ることができる。
この部材は、塔型容器11に固定した又は着脱自在に取り付けた支持手段であり、例えば、リング、格子、円板状の網、多孔板、円筒状に形成された枠体、骨組構造で形成された枠体等を用いることができる。
ハニカム構造体12aの下側にも、整流部17を設置することができる。整流部17は設置してもよいし、設置しなくてもよいが、設置した場合には、塔型接触装置10内に気液を流したとき、整流部17の上側で気体の分散状態が向上するので好ましい。また、図示していないが、ハニカム構造体12hの上側にも整流部を設置することができる。このとき、ハニカム構造体12hの上側の空間からの逆混合を抑制できるので好ましい。
貫通した複数の流路(穴)を有する整流部は、気泡が整流部の流路(穴)を下から上に通過する間、気泡がその流路(穴)に栓をするような働きをすることで、液体が整流部の流路(穴)を上から下に逆流することを抑制するように作用するものである。具体的にはパンチングメタル等の多孔板、薄板によって鉛直方向の流路が三角、四角、六角形状等に仕切られたハニカム厚板(ハニカム構造の厚板)、2枚のメッシュ間に球状、円柱状等の規則充填物が充填されたもの等が好ましい。加工が容易であり、均一な円形の流路を持つ多孔板が特に好ましい。
前記作用をするため、整流部14a〜14gの穴径は、塔型接触装置10内の気泡の最大径と同程度以下であることが望ましく、好ましくは8 mm以下、より好ましくは6 mm以下、さらに好ましくは5 mm以下である。また、整流部を気液が通過するときの圧力損失を小さく抑えるという観点と、塔型接触装置10内で流れの停滞部が生じないようにするという観点から、整流部14a〜14gの穴径は、0.5 mm以上が好ましく、より好ましくは0.8 mm以上、さらに好ましくは1 mm以上である。整流部で液体の逆流を防止するためには、穴に弁を取り付けてもよく、このときは下から上への流れのときには弁を開いて通過させるが、逆流するときには弁が閉じるようにする。
空間部13a〜13gの長さは、それぞれ同じであっても異なっていてもよいが、逆混合抑制効果を得る観点から、5 mm以上が好ましく、より好ましくは10 mm以上、さらに好ましくは20 mm以上である。
空間部の長さの上限は、塔型容器11の大きさと、収容するハニカム構造体の大きさと段数を考慮して決定されるが、空間部の流動状態を考慮して決定されることがより望ましい。すなわち、空間部では液体の循環流れが生じるときがあるが、これは整流部による逆混合の抑制に好ましくないと考えられる。循環流れは大きいもので塔径程度の大きさを持つため、大きな循環流れを抑制するという観点から、空間部の長さの上限は塔型容器11の内径との関係を考慮して決めることが望ましい。整流部が空間部に設置されることを考慮すると、空間部の長さの上限は、好ましくは塔型容器11の内径の2倍以下、より好ましくは塔型容器11の内径以下、さらに好ましくは塔型容器11の内径の1/2以下である。
8個のハニカム構造体12a〜12hを4個ずつの2つに分けて2段として、1段が連続して設置した4個のハニカム構造体から形成されるようにして、1段目と2段目の間の空間部に1枚の整流部を設置したもの(図6(a)に示すように2段になっている。但し、図6(a)では、下段112aは8個のハニカム構造体を使用し、上段112bは8個のハニカム構造体を使用している。)、
8個のハニカム構造体12a〜12hを2個ずつの4つに分けて4段として、1段が連続して設置した2個のハニカム構造体から形成されるようにして、各段の間の空間部にそれぞれ1枚ずつの整流部を設置したもの(図6(b)に示すように4段になっている。但し、図6(b)では4つの段112a〜112dは、それぞれ4個のハニカム構造体を使用している)、
8個のハニカム構造体12a〜12hを3つに分けて3段として、2段が連続して設置した3個のハニカム構造体、残りの1段が連続して設置した2個のハニカム構造体からなるものとして、各段の間の空間部にそれぞれ1枚ずつの整流部を設置したもの、
8個のハニカム構造体12a〜12hを連続的に設置して全体で1段のハニカム構造体として、一番下にあるハニカム構造体12aの下に1枚の整流部を設置したもの(図6(c)に示すように1段になっている。但し、図6(c)では、1段112aは、16個のハニカム構造体を使用している)、
にすることもできる。
しかし、本発明の塔型接触装置10は、整流部14a〜14gを有しているため、気液をアップフローで接触させたときには、液体の逆混合が抑制され、より押出流れに近い状態となり、液体の滞留時間分布の分布幅を狭くすることができる。
次に、図1に示す塔型接触装置10により、本発明の塔型接触装置の好ましい運転方法(気液の接触方法乃至は気液の反応方法)について説明する。
気液二相のアップフローでは、ガス空塔速度が大きいと流れの乱れが顕著になると一般に考えられているが、本発明ではガス空塔速度が0.05 m/s以上であっても適切に気液を接触できる。ガス空塔速度が0.1 m/s以上であってもよく、さらに0.3 m/s以上であってもよい。上限は気体の元圧(ライン圧)で決まるが、概ね10 m/s以下である。
液空塔速度は、好ましくは0.0001〜0.5 m/s、より好ましくは0.0005〜0.1 m/s、さらに好ましくは0.001〜0.05 m/sとなるように運転して、気液を接触させる。ここで空塔速度とは、液体又は気体の流量を塔断面積で割ったものである。
本発明の塔型接触装置を使用しない場合には、本願発明の運転方法を適用しても、液体の滞留時間分布の分布幅を狭くすることができない。
気体と液体が混合される前の液体の配管の途中からシリンジでトレーサーを瞬間的(概ね1秒以内)に注入した。トレーサーとして、液体の滞留時間分布を求めるために20質量% NaCl水溶液を1 mL用いた。
塔型接触装置に気液(トレーサーを含む)をアップフローで供給し、塔型接触装置から排出された気体と液体が分離されるようにカップに受け、そこで液体の導電率を測定した。測定した導電率は、濃度と導電率の検量線(相関線)を用いて濃度に換算される。
トレーサーを注入してから、そのトレーサーが装置から十分に排出されるまでの時間、濃度応答を測定した。この測定時間は、装置の容積(トレーサー注入口から装置までの配管の容積と装置から導電率を測定するカップまでの配管の容積を含む)を液体の流量で割って算出した時間の少なくとも4倍以上である。なお、トレーサーの注入位置から塔型接触装置までの配管の長さと、塔型接触装置からカップ(導電率の測定位置)までの配管の長さはなるべく短くして、塔型接触装置以外の流動状態が測定に与える影響を減らした。
図4(a)で示されるトレーサーの濃度応答を、その積分が1になるように規格化すると、図4(b)に示されるような実時間tで表した滞留時間分布E(t) が得られる。さらに平均滞留時間τを用いてE(t) を無次元化して、図4(c)で示されるような無次元時間θで表した滞留時間分布E(θ) を評価した。なお、図5は完全混合流れの滞留時間分布を示す図である。
滞留時間分布を表現するモデルとして知られる槽列モデルを用いて滞留時間分布、すなわち流動状態を評価する。槽列モデルとは、装置を仮想的に等しい体積の完全混合槽に分割し、完全混合槽の槽数Nで流動状態を表すものであり、滞留時間分布は式(I)で表される(非特許文献1)。
なお、完全混合槽とは、内部の流動状態として完全混合流れが仮定される装置のことである。槽数N = 1は完全混合流れに対応し、槽数Nが1より大きくなるほど押出流れに近くなる。
滞留時間分布が完全混合流れに近いとき(槽数N = 1に近いとき)、既に述べたとおり、装置内部での流体の混合が激しいことを示しており、流れが非常に乱れていること、流れが不安定であることを意味し、滞留時間分布の分布幅が広い。槽数Nが1より大きくなるほど流れが整流されていることを意味し、滞留時間分布の分布幅が狭くなる。槽数Nは滞留時間分布E(t) の分散σt 2、あるいは滞留時間分布E(θ) の分散σθ 2から式(II)により求めることができる。
式(II)中のτは平均滞留時間で、図4と同じく、式(III)から得られる。分散σt 2、分散σθ 2は、式(IV)から求められる。
塔型接触装置100A〜100Cは図6(a)〜(c)で示すようなもの(但し、図1と同じ番号は同じものを意味する)を用いた。表に示す充填段数2の装置は図6(a)に示す100A、充填段数4の装置は図6(b)に示す装置100B、充填段数1の装置は図6(c)に示す装置100Cである。
塔の底面より115mmの位置から上方に向かってハニカム構造体が装填されている。
ハニカム構造体は、六角形の細管流路を蜂の巣状に持つ新日本フエザーコア(株)製のアルミマイクロハニカム(細管幅1.5 mm)を用いた。ハニカム構造体は円柱形状に切り出されたものであり、1個の直径は84 mm、高さは26 mmであり、計16個を用いた。なお、ハニカム構造体を重ねる際には、細管流路の整合を取っていない。
整流板は、厚さ1 mm、直径84 mmで、表1に示す穴径、ピッチの多孔板である。多孔板の穴の配列は、穴の中心点を結んだ形状が正三角形となるような正三角形配列である。
空間部113a〜113cには、それぞれ整流板114a〜114cが設置されており、ハニカム構造体(4個)112aの下側にも整流板117が設置されている。
表1に示す実施例及び比較例は、図6(a)〜(c)の塔型接触装置100A〜100Cにおいて、それぞれ表1に示す充填段数、1段当たりの充填数、各段間の空間部の長さにてハニカム構造体を収容した。なお、空間部の長さは、整流板の厚さを除いた長さである。
実施例1(図6(a))では、段間の空間部113aに1枚の整流板114aを設置し、最下段のハニカム構造体の下にも1枚の整流板117を設置することで、合計2枚の整流板を用いている。実施例2〜5(図6(b))では、段間の空間部113a〜113cに整流板114a〜114cを1枚ずつ設置し、最下段のハニカム構造体112aの下にも1枚の整流板117を設置することで、合計4枚の整流板を用いている。
比較例1(図6(c))は1段のため、空間部113、整流板114は存在せず、整流板117のみ設置している。比較例2、比較例3では、図6(b)において空間部113a〜113cに整流板を設置せず、整流板117も設置していない。
気体として空気、液体としてイオン交換水を常温で使用した。気体と液体はそれぞれ独立した配管から流量計を通して、一定の流量になるように維持した。
気体と液体の配管は塔に入る前に予め合流して、気体と液体を直径10 mm、長さ30 mmの直管に通すことでガス分散させた。直管は、円錐状に断面が漸増する広がり管に接続している。広がり管の出口は塔の内径に合うようになっており、塔の下側に接続する。
気体と液体は、表1に示す空塔速度で、下側から塔に入れ、上側から排出させた。空塔速度は、一般的な定義に従い、流量を塔の断面積で割って算出した。なお、使用したハニカム構造体(細管幅1.5 mm)の開口率は、おおよそ98%と大きいため、ハニカムの開口面積を基準として空塔速度を算出しても、空塔速度は2%程度しか変わらない。
実施例1は、ハニカム充填層の段数が2段で、厚さ1 mmの整流板(多孔板;穴径3 mm、ピッチ5 mm、開口率33%)の上下に39 mmずつの空隙を設けることで、空間部の長さを78 mm(整流板の厚さを含まない)とした。
実施例2は、ハニカム充填層の段数が4段で、厚さ1 mmの整流板(多孔板;穴径3 mm、ピッチ5 mm、開口率33%)の上下に13 mmずつの空隙を設けることで、空間部の長さを26 mm(整流板の厚さを含まない)とした。
比較例1は、ハニカム充填層の段数が1段で、図6(c)で示す整流板(多孔板)117のみが設置されている。
滞留時間分布から算出した槽数Nの値は、ハニカム充填層1段の比較例1では1.3で、完全混合流れのときの値1に近く、従来から一般に知られているように完全混合流れに近いことが分かり、整流効果が確認できなかった。
一方、ハニカム充填層2段の実施例1、4段の実施例2では、槽数Nの値はそれぞれ1.8、2.4で、明らかに押出流れに近づいており、整流効果が確認できた。特に段数の多い実施例2で整流効果が顕著であった。
比較例2、比較例3は、実施例2とほとんど同じ構成であるが、整流板(多孔板)を全て除いた例である。
実施例3、実施例4は、実施例2に対してガス空塔速度を増加している。一般に、ガス空塔速度が大きくなると、流れの乱れが顕著になると考えられているが、実施例3と実施例4を実施例2と比べてもNの値はあまり変わらずに1より十分大きく、多段化により安定して整流できていることが分かった。
実施例5は、実施例3に対して液空塔速度を増加した。このときも多段化による整流効果が維持されていた。
一方、整流板(多孔板)を用いない場合、比較例2ではNの値から整流効果が見られるものの、同じ空塔速度条件の実施例2に比べると整流効果が落ちていた。ガス空塔速度を増加した比較例3では、Nの値は1に極めて近く、整流効果が確認できなかった。
図6及び表2に示す塔型接触装置を用いて、実施例1〜5と同様に実施した。結果を表2に示す。なお、参考のため、実施例2、4を合わせて示している。
実施例2と実施例6〜9、比較例4との槽数Nの値の対比からは、穴径とピッチ(開口率)の違いによる大きな影響は認められなかった。
次に、ガス空塔速度を大きくして、実施例10〜13と比較例5を実施例4と比較した。槽数Nの値より、実施例10〜13では実施例4と同様に、整流効果が維持できていることが分かった。ただし、実施例10、13では、N=1.5というやや小さい値で、少し整流効果が落ちていた。比較例5では、Nの値がさらに小さく、1に近いもので、整流効果が確認できなかった。
整流板(多孔板)の開口率が小さい場合、塔内部に流れの停滞部が生じて流動状態が悪化すると考えられる。整流板(多孔板)の穴径が大きい場合、整流板(多孔板)による逆混合の抑制効果が小さくなり、整流板(多孔板)を用いていない比較例2や比較例3と似た状況になっていると考えられる。なお、これらの実験における気泡径は概ね3 mm〜12 mmの間であった。
図6及び表3に示す塔型接触装置を用いて、実施例1〜5と同様に実施した。結果を表3に示す。なお、参考のため、実施例2、実施例4を合わせて示している。
実施例14、実施例15では、厚さ1 mmの整流板(多孔板)の上下に26 mmずつの空隙を設けることで、空間部の長さを52 mm(整流板の厚さを含まない)とした。比較例6、比較例7では、厚さ1 mmの整流板(多孔板)の上下に2 mmずつの空隙を設けることで、空間部の長さを4 mm(整流板の厚さを含まない)とした。
実施例14、実施例15の結果からは、ガス空塔速度によって槽数Nの値が変わることが確認されたが、いずれも整流効果は確認できた。特に、実施例14のNの値は実施例2より大きく、実施例14と実施例15の間のガス空塔速度でも、概ねその間のNの値を取る。
一方、比較例6ではNの値から整流効果が見られるものの、同じ空塔速度条件の実施例2よりはNの値が小さく、整流効果が落ちていることが確認できるとともに、比較例7では、Nの値が1に近くなり、整流効果が確認できなかった。空間部の長さが小さいことで、特にガス空塔速度が大きくなると整流効果が落ちることが分かる。なお、これらの実験における気泡径は概ね3mm〜12mmの間であった。十分な整流効果を得るためには、気泡径に比べて大きい空間部の長さが必要であると考えられる。
図6及び表4に示す塔型接触装置を用いて、実施例1〜5と同様に実施した。結果を表4に示す。なお、参考のため、実施例3を合わせて示している。
実施例16では、図6(b)で示す空間部113a〜113cの整流板114a〜114cとして、穴径とピッチの異なる2枚の多孔板を用いた。空間部の構成は次の通りである。
上から26 mm、13 mm、26 mmの空間を設け、26 mmと13 mmの空間の間に、上側の整流板として穴径2mm、ピッチ3 mmの多孔板(開口率40%、厚さ1 mm)を固定し、13 mmと26 mmの空間の間に、下側の整流板として穴径3 mm、ピッチ5mmの多孔板(開口率33%、厚さ1 mm)を固定した。空間部の長さは65mm(2枚の整流板の厚さを含まない)である。すなわち、整流板114a〜114cは、それぞれ上記2枚の多孔板からなる。整流板117には、穴径3mm、ピッチ5 mmの多孔板(開口率33%、厚さ1 mm)を1枚用いた。
実施例17では、図6(b)で示す空間部113a〜113cの整流板114a〜114cとして、細管幅0.9 mmのハニカム厚板(直径84 mm、厚さ26 mm、開口率96%)を用いた(新日本フエザーコア(株)製のアルミマイクロハニカム)。ハニカム厚板の上下に13mmの空隙を設けて、空間部の長さを26 mm(整流板の厚さを含まない)とした。空間部に整流板の厚さを含めると52 mmである。整流板117には、穴径1 mm、ピッチ2 mmの多孔板(開口率23%、厚さ1 mm)を1枚用いた。
実施例16、17は、同じ空塔速度条件の実施例3と比べると、槽数Nの値がやや大きく、より高い整流効果が確認できた。一つの空間部には、実施例16のように異なる種類の2枚の整流板を用いることができ、一般に同じ種類、又は異なる種類の整流板を複数枚組み合わせて用いることができる。実施例17より、整流板の開口率が大きくても、穴径が小さければ十分な逆混合抑制効果を発現することが分かる。
実施例18は、塔型容器11に収容するハニカム構造体が異なる他は実施例3と同じである。
比較例8は、比較例1とほぼ同じ構成であるが、整流板を全く使用していない点で異なる。
比較例8からは、細管幅の小さいハニカム構造体を使用したとき、ハニカム充填層が1段であっても整流効果が確認されたが、実施例18と比較すると、ハニカム充填層を4段とし、空間部に整流板を使用することで、より整流効果が高められることが確認された。
図6及び表5に示す塔型接触装置を用いて、実施例1〜5と同様に実施した。結果を表5に示す。なお、参考のため、比較例1を合わせて示している。
ハニカム充填層の段数は、比較例1、比較例9、及び比較例10において、1段(図6(c))である。
比較例1では、図6(c)で示す整流板(多孔板)117が設置されており、整流板(多孔板)は穴径3 mm、ピッチ5 mm(開口率33%、厚さ1 mm)である。
比較例9では、図6(c)で示す整流板(多孔板)117が、間隔を空けて2枚重ねて設置されており、2枚とも整流板(多孔板)は穴径1 mm、ピッチ20 mm(開口率0.23%、厚さ1 mm)で、2枚の間隔は26 mmである。比較例10では整流板(多孔板)を使用していない。
比較例1、比較例9では、ハニカム構造体の手前で整流板(多孔板)により気体が分散されるが、比較例10では整流板(多孔板)を使用していないため、比較例1、比較例9のようなガス分散作用はなされない点で異なっている。
比較例1、比較例9、比較例10とも槽数Nの値は1に近く、完全混合流れに近い。
比較例1と比較例9、比較例10は、いずれも完全混合流れに極めて近く、滞留時間分布で比較すると、ほとんど同じ流動状態であることが確認できた。この結果から、最下段に整流板(多孔板)を設置しても(図6(c)の整流板117)、ガス分散によって流れが整流される効果は殆どないことが確認された。
次に、比較例9において、整流板117の下の位置で静圧を測定した。これは、おおよそ、塔下部から入った気体と液体が塔頂部から出て行くまでの圧力損失と考えてよい。結果を図8に示す。誤差棒は、圧力計の数値の振れ幅を目視で読み取ったもので、数値の変動の大まかな目安である。
図8には、比較として、比較例9と全く同じ構成であるが、図6(c)の整流板117を、穴径3 mm、ピッチ5 mmの整流板(多孔板;開口率33%、厚さ1 mm)2枚に変えた場合を比較として併記している。開口率0.23%の整流板(多孔板)2枚を用いた比較例9では、開口率33%の整流板(多孔板)2枚を用いた場合に比べ、ガス空塔速度の増加とともに圧力損失が大きく増大していることが確認でき、圧力損失の観点から整流板に適さないことが分かる。
Claims (8)
- 塔型容器内において気体及び液体を上向き流れで接触させるための塔型接触装置であって、
前記塔型容器内には2段以上のハニカム構造体が縦方向に収容されており、
前記2段以上のハニカム構造体の各段間に、長さが5mm以上で前記塔型容器の内径の2倍以下である空間部が形成されており、
前記各段間の空間部において、逆流防止手段となる整流部として開口率10〜70%の多孔板がハニカム構造体に接触しない状態で設置されており、
前記多孔板が、穴径0.5〜8mmの多数の穴を有するものである塔型接触装置。 - 塔型容器内において気体及び液体を上向き流れで接触させるための塔型接触装置であって、
前記塔型容器内には2段以上のハニカム構造体が縦方向に収容されており、
前記2段以上のハニカム構造体の各段間に空間部が形成されており、
前記各段間の空間部において、逆流防止手段となる整流部として5mm以上でハニカム構造体高さの25%以下の厚さであるハニカム構造の板がハニカム構造体に接触しない状態で設置されており、
前記ハニカム構造の板が、穴径0.5〜8mmの多数の穴を有するものである塔型接触装置。 - 前記空間部の長さが、5mm以上で前記塔型容器の内径の2倍以下である請求項2記載の塔型接触装置。
- 前記ハニカム構造体が、平板状のフィルムと波板状のフィルムが厚さ方向に交互に積み重ねられたもので、細管流路の幅方向の断面形状が略三角形のものである請求項1〜3のいずれか1項記載の塔型接触装置。
- 前記ハニカム構造体が、その表面に触媒が固定化されたものである請求項1〜4のいずれか1項記載の塔型接触装置。
- 前記塔型接触装置において、最下段のハニカム構造体の下に、逆流防止手段となる整流部がハニカム構造体に接触しない状態で設置されている請求項1〜5のいずれか1項記載の塔型接触装置。
- 請求項1〜6のいずれか1項記載の塔型接触装置の運転方法であって、
液空塔速度0.0001〜0.5m/s、ガス空塔速度0.05〜10m/sで気体及び液体を接触させる塔型接触装置の運転方法。 - ガスホールドアップが0.05〜0.8になるように気体及び液体を接触させる請求項7記載の塔型接触装置の運転方法。
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