JP2012130851A - 塔型接触装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】塔型接触装置10には、塔型容器11内にハニカム構造体22が収容された容器20が設置されており、塔型容器11と容器20の間には、高さ方向に連続したクリアランス19が存在している。クリアランス19は、所望位置の高さ位置において、クリアランス19を通過する気体と液体の圧力損失が、容器20内のハニカム構造体22を通過する気体と液体の圧力損失以上になるような流動制御手段30を有している。
【選択図】図1
Description
反応物質が気体と液体の二相で、反応塔の下から気体と液体が入り上側に排出されるアップフロー反応塔では、多くの場合は液体が連続相で気体が気泡として存在する離散相となり、このような場合にはバイパス流れが特に顕著である。
クリアランスに触媒粒子を充填することで、クリアランスへのバイパス流れは抑制されるものと考えられるが、触媒粒子の充填作業又は交換作業自体は作業負荷の増大につながる。
また、この方法では、クリアランスへのバイパス流れを適正に制御するための触媒粒子の大きさや充填密度等が不明であり、制御も困難であると考えられる。クリアランスの充填物も触媒であるため、バイパス流れが存在しても問題が小さいという考えもあり得るが、本来活用すべきモノリス触媒への流れが減少することは、効率的な触媒利用の上で問題がある。
塔型容器内において、底部から供給した気体と液体を上向き流れで接触させた後に頂部から取り出すための塔型接触装置であって、
前記塔型容器内には、ハニカム構造体が収容された容器が設置されており、
前記塔型容器と前記ハニカム構造体の収容容器の間には、前記塔型容器の底部から頂部まで高さ方向に連続したクリアランスが形成されており、
前記クリアランスの所望の高さ位置において、前記クリアランスを通過する気体と液体の圧力損失(PL1)が、前記ハニカム構造体を通過する気体と液体の圧力損失(PL2)以上になるように制御できる流動制御手段を有している塔型接触装置を提供する。
このため、ハニカム構造体に気液の流れを集中させることで、ハニカムの細管流路における気液の接触効率が高められ、ハニカム構造体を触媒の支持体として反応装置として使用したときは、触媒を有効に使用することができ、反応効率が高められる。
図1〜図3により、本発明の塔型接触装置の一実施形態を説明する。
図1に示す塔型接触装置10で用いている塔型容器11は、目的に応じた大きさ及び形状のもので、気液を塔下部から供給し、塔頂部で取り出すことができ、上向き流れで接触させることができるものであればよい。
図1では容器20が複数段で設置されているが、本発明では1段であってもよい。段数は、交換作業の観点(例えば、一部容器20のみを交換作業する場合)からは、多数のハニカム構造体を1段で設置等するよりも、複数段に分けて設置等する方が好ましく、また、塔型接触装置10の使用目的に応じて選択することもできる。例えば反応装置として使用するときには2段以上あることが好ましく、より好ましくは4段以上であり、10段以上又は20段以上であってもよい。
容器20は、図示していないが、気液の流通が可能な部材により支持・固定されている。
ハニカム構造体22は、その内部において気液を接触させるためのものである。
例えば、図2(a)、(b)に示すように、容器20a〜20d内にハニカム構造体22a〜22dが収容されたものを1つにまとめて、全体として円柱状になるようにしたものを用いることができる。
本発明の装置10では、クリアランス19の所望の高さ位置において、クリアランス19を通過する気体と液体の圧力損失(PL1)が、容器20に収容されたハニカム構造体22を通過する気体と液体の圧力損失(PL2)以上になるように制御できる流動制御手段(圧力損失制御手段)30(図1参照)を有している。
流動制御手段となる環状板30は、環状本体部31、環状本体部31の内側に交差して掛け渡された2本の補強材32を有している。
環状本体部31の外周縁31aには、中心方向に窪んだ4つの凹部33a〜33dが形成されている。
環状板30(環状本体部31)の外径は、塔型容器11の内径と一致しており、環状本体部31の内径はハニカム構造体の収容容器20の外径よりも小さい。
そして、図3(b)に示すように、凹部33aと内壁面11aにより形成される穴が連通孔35となる。連通孔35の長さは環状板30(環状本体部31)の厚さとなる。
図3に示す環状板30を使用した場合には、凹部33a〜33dと内壁面11aにより、合計で4つの連通孔35が形成される。
環状板30が設置されている位置では、クリアランス19の大部分は環状本体部31で閉塞されており、軸方向(高さ方向)の上下は連通孔35のみによって連通されており、連通孔35で気液の通過に対する圧力損失が少なくともPL1≧PL2になるように制御される。
なお、流動制御手段として図3に示す環状板30を用いたが、図3に示す環状板30において、凹部33a〜33dがなく、その代わりに環状本体部31に連通孔となる複数(例えば4個)の穴を有するものを用いることもできる。
図4に示す塔型接触装置100は、基本的な構造は図1に示す塔型接触装置10と同じであるが、流動制御手段として図3に示す環状板30に代えて、高さの低い筒状体130を使用している点で異なっている。図1と同じ番号を付した部分は同じものであることを意味する。
筒状体130は、筒状本体部131と、筒状本体部131に多数形成された穴(連通孔)132を有するものである。
筒状体130は、筒状本体部131の上方周縁部131aがフランジ140に当接され、下方周縁部131bが最上段の容器20に当接された状態で設置されている。このため、クリアランス19の上端部は閉塞されている。
筒状体130の内径及び外径は、容器20の内径及び外径と一致している。
また、最上段の容器20の筒状壁の上端がフランジ140に当接されているならば、最上段の容器20の筒状壁を上方に延ばすことなく、容器20の筒状壁に直接多数の穴(連通孔)を形成してもよい。この場合、最上段の容器20が流動制御手段を兼ねており、最上段のハニカム構造体と同じ高さ位置に流動制御手段が設置されることになる。
環状平板部41の外径が塔型容器11の内径よりも僅かに大きくなるように調整しておき、環状平板部41が塔型容器の内壁面11aに対して圧接されるようにしてもよい。
誘導手段40は、環状平板部41とクリアランス入口19aが間隔w1をおいて正対されており、筒状部42と筒状壁部20aは、間隔w2をおいて、長さw3の範囲で重なり合って正対されている。
間隔w1、間隔w2及び長さw3は同一寸法である必要はない。長さw3は気泡の流入を防げる程度に十分な長さが必要であり、長いほど良い。通常、気泡の密度は液体の密度より著しく小さく、乱れた流れの中でも気泡が液体中を下降することは少ないため、長さw3は気泡の大きさと同程度以上の長さであればよい。
長さw3は5 mm以上が好ましく、より好ましくは10 mm以上であり、更に好ましくは20 mm以上である。上限は塔型容器11の大きさとハニカム構造体の収容容器20の大きさ、収容容器20の段数などから決定される。
間隔w1と間隔w2は、気泡が流入しないという観点からできるだけ小さいことが望ましい。間隔w1と間隔w2は、同一である必要はないが、50 mm以下が好ましく、より好ましくは30 mm以下であり、さらに好ましくは10 mm以下である。
図6中の矢印方向から供給された気液に含まれている気泡は、誘導手段40(環状平板部41と筒状部42)の作用により、容器20に収容されたハニカム構造体22の方向に誘導され、クリアランス入口19aに向かうことが防止される。
このような多数の穴を有する整流板14を設置した場合、前記の穴を気泡が下から上に通過する間、気泡がその穴に栓をするような働きをすることで、液体がその穴を上から下に逆流することを抑制するように作用する。
整流板として多孔板を用いる場合、多孔板の面積に対する開口率は多孔板の穴径と関係するため、逆混合抑制効果を得る観点から、開口率は70%以下が好ましく、より好ましくは60%以下、さらに好ましくは50%以下である。また、多孔板を気液が通過するときの圧力損失を小さく抑えるという観点と、塔型接触装置10(図1)又は塔型接触装置100(図4)内で流れの停滞部が生じないようにするという観点から、多孔板の面積に対する開口率は1%以上が好ましく、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上である。なお、「逆混合」とは流れの主流に対して逆流する向きで流体が混合する現象であり、軸方向拡散とも呼ばれる。
整流板は、上下に隣接するハニカム構造体のいずれにも接触しないように設置する。整流板が上下に隣接するハニカム構造体に接触した場合には、整流板による逆混合抑制効果が低下するため好ましくない。なお、ここで言う「接触していない」とは、例えば、ハニカム構造体からの支持・固定により整流部を空間部に保持する態様まで排除するものではない。
例えば、ハニカム構造体22として、平板状のフィルムと波板状のフィルムが厚さ方向に交互に積み重ねられたもので、細管流路の幅方向の断面形状が略三角形のものを用いることができる。「略三角形」は、三角形において、1つ以上の角部が丸みを帯びていたり、1つ以上の辺が曲線を含んでいたりする形状であるものを意味する。このようなハニカム構造体の外観形状及び構造としては、図7に示すものを用いることができる。
図7で示すハニカム構造体50は、平板状フィルム51と波板状フィルム52が交互に積層されてなるものであり、多数の平行な略三角形(1つの角部が丸みを帯び、2辺が曲線を含んでいる)の細管流路53が形成されている。
このようなハニカム構造体50の表面に触媒が固定化されたものは周知であり、例えば、特開2009-262145号公報の図3、特開2008-110341号公報の図6に示されたものを用いることができる。
本発明の塔型接触装置100(図4)においても、流動制御手段となる筒状体130により、同様の作用効果が得られる。
気液がハニカム構造体22を流れるときの圧力損失は、細管流路での摩擦損失が支配的でFanningの式として知られる公式を用いて計算することができる(非特許文献1、p.286)。
クリアランス19はハニカム構造体の細管流路に比べて通常断面積が大きく、摩擦損失が無視できる。このため、クリアランス19を気液が流れるときの支配的な圧力損失は、気液が流動制御手段30を通過するときの局所損失である。例えば、流動制御手段が連通孔を有するもの(具体的には連通孔35を有する環状板30や連通孔132を有する筒状体130等)である場合、気液が穴あるいはオリフィスを通過するときの圧力損失として知られる公式を用いて計算することができる(K.S. Knaebel, Chemical Engineering 88 (1981) 116)。
なお、摩擦損失とは圧力損失の一形態で、流体が管路内を流れるときの壁面での摩擦に起因した圧力損失のことである。局所損失とは、形状損失とも呼ばれ、流路形状の変化に起因する圧力損失である。圧力損失には、他にも、重力(流体の密度が関係)に起因したものもあり、位置損失と呼ばれる。
これらの公式は、気体あるいは液体単独で流れる単相流に対するものであるが、装置内を気体が単独で流れる場合、あるいは液体が単独で流れる場合に対して個別に圧力損失を計算し、個別に比較して流動制御手段を設計することができる。
気体単独で流れた場合及び液体単独で流れた場合、いずれの場合でもクリアランスにおける圧力損失がハニカム構造体における圧力損失より大きければ、気液が同時に流れた場合でも同様の圧力損失の大小関係になる。
気液二相流の圧力損失を計算する場合、気体と液体の各相が単独で流れた場合の圧力損失をもとにして気液二相流の圧力損失を推算する方法が提案されており、Lockhart≡Martinelliの方法として知られている。摩擦損失に対しては、例えばChisholmの近似式を用いることができ、オリフィスの局所損失に対しては、例えばMurdockの式として知られる計算方法を用いることができる(管路・ダクトの流体抵抗(日本機械学会,1979))。
誘導手段40の作用により、気泡がハニカム構造体22に誘導されることで、ハニカム構造体22における位置損失が小さくなり、液体もハニカム構造体22に誘導される。クリアランス19は密閉されていないため、液体が充満しているが、気泡が流入しない場合、クリアランス19の液流れは下向きになる。つまり、装置10(図1)又は装置100(図4)には液体の内部循環流れが生じるが、気体はほぼ全てがハニカム構造体を流れることになるため、ハニカム構造体22における気液の接触効率が高められる。
次に、図1に示す塔型接触装置10(図1)又は塔型接触装置100(図4)により、本発明の塔型接触装置の好ましい運転方法(気液の接触方法乃至は気液の反応方法)について説明する。
気液二相のアップフローでは、ガス空塔速度が大きいとクリアランス19へのバイパス流れが顕著になると一般に考えられているが、本発明ではガス空塔速度が0.05 m/s以上であっても、流動制御手段となる環状板30又は筒状体130の作用によりクリアランス19へのバイパス流れが抑制でき、ハニカム構造体で適切に気液を接触できる。ガス空塔速度が0.1 m/s以上であってもよく、さらに0.3 m/s以上であってもよい。上限は気体の元圧(ライン圧)で決まるが、おおむね10 m/s以下である。
液空塔速度は、好ましくは0.0001 m/s〜0.5 m/s、より好ましくは0.0005〜0.1 m/s、さらに好ましくは0.001〜0.05 m/sとなるように運転して、気液を接触させる。ここで空塔速度とは、液体又は気体の流量を塔断面積で割ったものである。
本発明の塔型接触装置を使用しない場合には、本発明の運転方法を適用しても、バイパス流れの抑制効果は得ることができない。
気体と液体が混合される前の液体の配管の途中からシリンジでトレーサーを瞬間的(概ね1秒以内)に注入した。トレーサーとして、液体の滞留時間分布を求めるために20質量% NaCl水溶液を1 mL用いた。
塔型接触装置に気液(トレーサーを含む)をアップフローで供給し、塔型接触装置から排出された気体と液体が気液分離されるようにカップに受け、そこで液体の導電率を測定した。測定した導電率は、濃度と導電率の検量線(相関線)を用いて濃度に換算される。
トレーサーを注入してから、そのトレーサーが装置から十分に排出されるまでの時間、濃度応答を測定した。この測定時間は、装置の容積(トレーサー注入口から装置までの配管の容積と装置から導電率を測定するカップまでの配管の容積を含む)を液体の流量で割って算出した時間の少なくとも4倍以上である。なお、トレーサーの注入位置から塔型接触装置までの配管の長さと、塔型接触装置からカップ(導電率の測定位置)までの配管の長さはなるべく短くして、塔型接触装置以外の流動状態が測定に与える影響を減らした。
図8(a)で示されるトレーサーの濃度応答を、その積分が1になるように規格化すると、図8(b)に示されるような実時間tで表した滞留時間分布E(t) が得られる。さらに平均滞留時間τを用いてE(t) を無次元化して、図8(c)で示されるような無次元時間θで表した滞留時間分布E(θ) を評価した。なお、図9は完全混合流れの滞留時間分布を示す図である。
滞留時間分布を表現するモデルとして知られる槽列モデルを用いて滞留時間分布、すなわち流動状態を評価する。槽列モデルとは、装置を仮想的に等しい体積の完全混合槽に分割し、完全混合槽の槽数Nで流動状態を表すものであり、滞留時間分布は式(I)で表される。
なお、完全混合槽とは、内部の流動状態として完全混合流れが仮定される装置のことである。槽数N = 1は完全混合流れに対応し、槽数Nが1より大きくなるほど押出流れに近くなる。
一般的には、滞留時間分布が完全混合流れに近いとき(槽数N=1に近いとき)、装置内部での流体の混合が激しいことを示しており、流れが非常に乱れていることを意味する。槽数Nが1より大きくなるほど流れが整流されていると理解できる。槽数Nは滞留時間分布E(t) の分散σt 2、あるいは滞留時間分布E(θ) の分散σθ 2から式(II)により求めることができる。
式(II)中のτは平均滞留時間で、図8と同じく、式(III)から得られる。分散σt 2、分散σθ 2は、式(IV)から求められる。
気泡がクリアランスに流入せず、全ての気体がハニカム構造体の収容容器に誘導された場合、液体も収容容器に誘導される。一方、クリアランスには液体が充満しており、そこでは液体は下向きに流れ、内部循環流れが生じる。
このような内部循環流れでは、塔型容器の入口でトレーサーを入れ、塔型容器の出口でその濃度の応答を測定するような液体の滞留時間分布のデータでは、完全混合流れに近い結果となる。
これは、流動状態の乱れに帰着したものではなく、クリアランスへのバイパス流れが抑制された結果である。
従って、クリアランスへのバイパス流れの有無については、気泡がクリアランスに流入するか、クリアランスの液体が下向きに流れているかを目視で観察した。なお、液体の流れが明瞭に観察できないときは1%メチレンブルー水溶液をトレーサーとして使用し、液体を着色して観察することで流動状態を判断した。
図10に示す塔型接触装置200を用いて、気液の接触を行った。
塔(塔型容器211)は流動状態が目視できるようにアクリル樹脂からなる、内径85 mm、高さ830 mmのものである。
ハニカム構造体22が収容された容器20は、1段にハニカム構造体5個で4段の構成とし、合計20個のハニカム構造体を用いた。最下段のハニカム構造体が、塔型容器211の底面から142 mmの位置になるように容器20を設置した。なお、ハニカム構造体を重ねる際には、細管流路の整合を取っていない。
環状板30(環状本体部31)の外径は84 mm、内径は73 mmで、厚さ2 mmである。環状本体部31の凹部33a〜33dは、図3のように半円と長方形が連結した形状であり、その半円の直径は2 mm、それに連結する長方形の大きさは2 mm×1 mmである。凹部一つあたりの断面積は約3.6 mm2である。図3に示される環状本体部31の外周縁31a(凹部33a〜33dの部分を除く)にはシールを施し、塔型容器211の内壁面に当接されるようにして環状板30を固定して設置した。
ハニカム構造体22は、六角形の細管流路を持つ新日本フエザーコア(株)製のアルミマイクロハニカム(細管幅1.5mm)を用いた。
気体として空気、液体としてイオン交換水を常温で使用した。気体と液体はそれぞれ独立した配管から流量計を通して、一定の流量になるように維持した。
気体と液体の配管は塔に入る前に予め合流して、気体と液体を直径10mm、長さ30mmの直管に通すことでガス分散させた。直管は、円錐状に断面が漸増する広がり管に接続した。広がり管の出口は塔の内径に合うようになっており、塔の下側に接続した。
気体と液体は、表1に示す空塔速度で、下側から塔に入れ、上側から排出させた。
空塔速度は流量を塔の断面積で割って算出している。なお、使用したハニカム構造体の開口率はおおよそ98 %と大きいため、ハニカムの開口面積を基準として空塔速度を算出してもほとんど変わらない。
液空塔速度は一定の0.012 m/sであり、実施例1ではガス空塔速度0.059 m/s、実施例2ではガス空塔速度0.235m/sである。Chisholmの式とMurdockの式を用いると、図3(a)で示す環状板30を設置したときのクリアランスにおける圧力損失(局所損失)PL1とハニカム構造体における圧力損失(摩擦損失)PL2の比(PL1/PL2)を求めることができる。おおよそ、実施例1ではPL1/PL2 = 3.7、実施例2ではPL1/PL2 = 4.0であった。
実施例2、比較例2の滞留時間分布は図12(a)、(b)のようになる。図12(b)は図12(a)の縦軸を対数表示したものである。実線は完全混合流れの場合の滞留時間分布である。
一方、実施例1、2では、クリアランスへの流れは抑制され、ハニカム構造体を収容した容器20、クリアランスの両方において気体と液体が上向きに流れていることが観察された。すなわち、クリアランスへの気液のバイパス流れは存在するが抑制されており、容器20内のハニカム構造体22において、適切に気液が接触していた。クリアランスへの流れの抑制に対応して、得られた滞留時間分布は完全混合流れと異なるものであった。
滞留時間分布の分散から、槽列モデルの槽数に相当するNの値を算出すると比較例1、2では完全混合流れの時の値N=1に極めて近かったが、実施例1、2ではNの値が1より十分大きく、改めてクリアランスへのバイパス流れが抑制されていることが確認できた。
図13に示す塔型接触装置300を用いて、気液の接触を行った。図13に示す塔型接触装置300は、誘導手段40と多孔板320を設置したほかは、図10に示す塔型接触装置200と同じものである。315は空間部、316は整流板を示す。
なお、実施例3は、4つの連通孔35の内の正対する2つを閉塞して、連通孔35を2つにした例である。
さらに塔型容器311の入口にも直径84 mm、厚さ1 mmの多孔板(パンチングメタル;穴径3 mm、ピッチ5 mm、開口率33%)320を設置した。
Chisholmの式、Murdockの式を用いると、図3(a)で示す環状板30を設置したときのクリアランスにおける圧力損失(局所損失)PL1とハニカム構造体における圧力損失(摩擦損失)PL2の比(PL1/PL2)を求めることができる。実施例3の連通孔2個の場合は、PL1/PL2はおおよそ5.2〜7.8である。実施例4の連通孔4個の場合は、PL1/PL2はおおよそ1.3〜2.0である。
クリアランスの上端に環状板30を設置した実施例3、4では、ガス空塔速度0.059〜0.470 m/sまで、クリアランスへの気泡の流入が観察されなかった。さらにクリアランスの液体は下向きに流れており、クリアランスへのバイパス流れが生じていなかった。この結果は、流動制御手段(環状板30)と誘導手段40を併用することで、実施例1、2と比べて更に効果的にクリアランスへのバイパス流れが抑制されることを示している。
穴個数2個の環状板を用いた実施例3では、ガス空塔速度0.470 m/sのとき、実施例4と同様にクリアランスへの気泡の流入とバイパス流れが観察された。一方、ガス空塔速度0.235 m/sのときは、まれに気泡がクリアランスに流入したが、クリアランスの液流れは安定的に下向きで、バイパス流れは生じなかった。
このような実施例3と実施例4の違いは、流動制御手段を用いてクリアランスにおける圧力損失を増大することで、バイパス流れをより効果的に抑制できることを示している。
Claims (13)
- 塔型容器内において、底部から供給した気体と液体を上向き流れで接触させた後に頂部から取り出すための塔型接触装置であって、
前記塔型容器内には、ハニカム構造体が収容された容器が設置されており、
前記塔型容器と前記ハニカム構造体の収容容器の間には、前記塔型容器の底部から頂部まで高さ方向に連続したクリアランスが形成されており、
前記クリアランスの所望の高さ位置において、前記クリアランスを通過する気体と液体の圧力損失(PL1)が、前記ハニカム構造体を通過する気体と液体の圧力損失(PL2)以上になるように制御できる流動制御手段を有している塔型接触装置。 - 前記流動制御手段が、PL1/PL2≧2の関係を満たすものである請求項1記載の塔型接触装置。
- 前記流動制御手段が、連通孔を備えたもの又は連通孔を形成できるものであり、
前記連通孔が1個又は2個以上である請求項1又は2記載の塔型接触装置。 - 前記流動制御手段が、環状板からなるものであり、
前記環状板は連通孔を備えたもの又は連通孔を形成できるものであり、
前記連通孔が1個又は2個以上である請求項1〜3のいずれか1項記載の塔型接触装置。 - 前記クリアランスの上側が閉塞された前記塔型接触装置であって、
前記流動制御手段が筒状部材からなるものであり、
前記筒状部材が連通孔を備えたものであり、
前記連通孔が1個又は2個以上である請求項1〜3のいずれか1項記載の塔型接触装置。 - 前記クリアランスの上側が閉塞された前記塔型接触装置であって、
前記流動制御手段が、ハニカム構造体の収容容器に連通孔を形成したものであり、
前記連通孔が1個又は2個以上である請求項1〜3のいずれか1項記載の塔型接触装置。 - 前記流動制御手段が、前記塔型容器内に充填された最上段のハニカム構造体の上側又は最上段のハニカム構造体と同じ高さ位置に設置されている請求項1〜6のいずれか1項記載の塔型接触装置。
- 前記塔型容器の底部に設けられた気体と液体の供給口と、前記塔型容器と最下段のハニカム構造体の収容容器で形成されるクリアランスとの間において、前記供給口から供給された気泡を前記最下段のハニカム構造体に誘導するための誘導手段が設置されている請求項1〜7のいずれか1項記載の塔型接触装置。
- ハニカム構造体が収容された容器が、縦方向に2段以上設置されている請求項1〜8のいずれか1項記載の塔型接触装置。
- 1つの段におけるハニカム構造体が収容された容器が、複数の容器の組み合わせからなるものである請求項1〜9のいずれか1項記載の塔型接触装置。
- 各段のハニカム構造体の収容容器が空間部をおいて設置されており、前記空間部に逆流防止手段となる穴径0.5〜8mmの多数の穴を有する整流板がハニカム構造体の収容容器に接触しない状態で設置されている請求項1〜10のいずれか1項記載の塔型接触装置。
- 前記ハニカム構造体が、その表面に触媒が固定化されたものである請求項1〜11のいずれか1項記載の塔型接触装置。
- 請求項1〜12のいずれか1項記載の塔型接触装置の運転方法であって、
液空塔速度0.0001〜0.5m/s、ガス空塔速度0.05〜10m/sで気体と液体を接触させる塔型接触装置の運転方法。
Priority Applications (6)
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