JP5795188B2 - 医療用ナイフ - Google Patents
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Description
(イ) 先端部側に刃部6を有する刃板4の基端部側に対し柄1を設けている。この柄1に設けた把持部2の延設方向X1と刃板4の延設方向X4とを互いに交差させている。この刃板4の刃部6は、刃板4の厚み方向Zの上下両側のうち、柄1の把持部2の延設向き側である上側に形成した表部7と、柄1の把持部2の延設向きに対する反対向き側である下側に形成した裏部8とを有している。この刃部6の表部7及び裏部8でこの厚み方向Zに交差する刃板4の幅方向Yの両側には、それぞれ、刃板4の幅方向Yの中央部側から幅方向Yの両外縁部側へ互いに厚み方向Zの間隔を狭めるように傾斜する刃面9,10を形成するとともに、この表部7の刃面9と裏部8の刃面10とが互いに交差する外縁部で刃部6の先端部から基端部側へ延びる刃先縁11を形成している。
(ハ) 前記刃部6の表部7と裏部8とにおいて、それぞれ、幅方向Yの両刃面9,10の刃先縁11が互いに交差する尖端部14と幅方向Yの両刃面9,10の対辺12,13が互いに交差する頂端部15,16との間には幅方向Yの両刃面9,10間の境界縁17,18を形成するとともに、その幅方向Yの両刃面9,10の対辺12,13間に中間面19,20を形成している。前記刃板4において、刃部6の幅方向Yの両刃先縁11は尖端部14から終端部21まで延設され、その幅方向Yの両刃先縁11の終端部21間で最大の幅方向Yの間隔Wをなしている。従って、、経結膜・強角膜一面切開法による白内障手術を行う場合、手術者が刃部6を輪部31の付近から結膜32と強膜33と角膜34とを経て前房35へ略S字状の移動軌跡38で押し進め易くなる。
(ニ) 前記刃部6の幅方向Yの両刃先縁11の終端部21間を互いに結ぶ線分から幅方向Yの両刃先縁11の尖端部14側の範囲で、前記刃部6の裏部8の幅方向Yの両刃面10で刃先縁11に対する対辺13の間隔G10は、前記刃部6の表部7の幅方向Yの両刃面9で刃先縁11に対する対辺12の間隔G9よりも大きく設定されている。従って、経結膜・強角膜一面切開法による白内障手術を行う場合、手術者が刃部6を輪部31の付近から結膜32と強膜33と角膜34とを経て前房35へ略S字状の移動軌跡38で押し進め易くなるばかりでなく、刃部6の基端部側を押し上げるとともに刃部6の先端部側を押し下げる向きDの回動モーメントや、刃部6の先端部側を押し上げるとともに刃部6の基端部側を押し下げる向きUの回動モーメントの発生について、刃部6の裏部8における幅方向Yの両刃面10が刃部6の表部7における幅方向Yの両刃面9よりも影響を与え易くなる。
(ホ) 幅方向Yの両刃先縁11を通る面に対し刃部6の表部7の刃面9がなす傾斜角度αは、幅方向Yの両刃先縁11を通る面に対し刃部6の裏部8の刃面10がなす傾斜角度βよりも大きく設定されている。従って、刃部6の基端部側を押し上げるとともに刃部6の先端部側を押し下げる向きDの回動モーメント、または、刃部6の先端部側を押し上げるとともに刃部6の基端部側を押し下げる向きUの回動モーメントを生じさせ易くなる。
(ヘ) 前記柄1に対し前記刃板4は刃部6の表部7側に屈曲されている。刃部6の先端部側から基端部側にわたる刃板4の長さLは、刃板4の厚みTの10倍以上50倍以下に設定されている。従って、経結膜・強角膜一面切開法による白内障手術を行う場合、手術者が刃部6を輪部31の付近から結膜32と強膜33と角膜34とを経て前房35へ略S字状の移動軌跡38で押し進める際、刃板4の撓みを規制して操作性を向上させることができる。
(ト) 前記刃部6において、幅方向Yの両刃先縁11間の開き角度θは、60度以上120度以下、好ましくは60度以上90度以下に設定されている。従って、幅方向Yの両刃先縁11間の開き角度θを鈍角化して、切開創37の内方切開線37aが山形にならず一本の直線状に形成され易い。
図1(a)に示す医療用ナイフは、主に白内障手術などにおいて眼球などの生体組織を切開する各種手術用切断具として利用され、合成樹脂からなる把持部2とステンレス鋼などの金属からなる支持板3とを有する柄1と、ステンレス鋼などの金属からなる刃板4とを備えている。図1(b)に示すように、この支持板3は把持部2の先端部に挿着され、それらの延設方向X1は互いに一致している。この刃板4は、支持板3から一体に連続して延設され、刃板4の基端部に設けられた屈曲部5で支持板3に対し屈曲されている。この柄1における把持部2及び支持板3の延設方向X1と刃板4の延設方向X4とが45度で互いに交差している。図1(c)(d)に示すように、刃板4の先端部側には刃部6が設けられている。この刃板4の刃部6は、刃板4の厚み方向Zの上下両側のうち、柄1の把持部2及び支持板3の延設向き側(屈曲向き側)である上側に形成された表部7と、柄1の把持部2及び支持板3の延設向きに対する反対向き側である下側に形成された裏部8とを有している。
刃部6は、図4(a)に示すように、結膜32に刺入するP矢印向きの移動軌跡38aと、強膜33から角膜34に進入するQ矢印向きの移動軌跡38bと、前房35内に穿孔するR矢印向きの移動軌跡38cとにより、順次進入向きを変更しながら略S字状の移動軌跡38に沿って移動する。刃部6の裏部8で幅方向Yの両刃面10の面積が刃部6の先端部側よりも基端部側で大きくなっているため、刃部6を押し上げる上向き力(外向き力)が裏部8に付与される際に、裏部8の基端部側に付与される上向き力が裏部8の先端部側に付与される上向き力よりも大きくなり、図2(a)に示すようにそれらの上向き力の差により刃部6の基端部側を押し上げるとともに刃部6の先端部側を押し下げる向きDの回動モーメントが生じ易い。なお、刃部6の表部7で幅方向Yの両刃面9の面積が刃部6の先端部側から基端部側にわたり略同一になっているため、刃部6を押し下げる下向き力(内向き力)の差による回動モーメントは生じにくい。従って、図4(a)に示すように、前述した略S字状の移動軌跡38のうち、強膜33から角膜34に進入するQ矢印向きの移動軌跡38bを経て前房35内に穿孔するR矢印向きの移動軌跡38cに移る際には、刃部6の基端部側を押し上げるとともに刃部6の先端部側を押し下げる向きDの回動モーメントによりそれらの移動軌跡38b,38cの変更を行い易い。
前記刃部6における裏部8の幅方向Yの両刃面10は、第1実施形態の刃部6における裏部8と異なり、刃先縁11に対する対辺13の間隔G10が第1実施形態の刃部6における裏部8とは逆の広がり向きで刃部6の基端部(両対辺12の終端部22を互いに結ぶ線分部分と、両対辺13の終端部23を互いに結ぶ線分部分とのうち、尖端部14から遠い位置にある両終端部22間の線分部分に該当)側から先端部側へ向かうに従い次第に広がるように形成されている。この間隔G10については、刃部6の基端部側で0.2mm以上1.5mm以下の範囲に設定し、刃部6の先端部側で0.3mm以上2.0mm以下の範囲に設定することが好ましく、例えば、刃部6の先端部側で0.63mmに設定し、刃部6の基端部側で0.44mmに設定している。前記刃部6における表部7の幅方向Yの両刃面9は、刃部6の先端部から基端部にわたる刃先縁11の全体で刃先縁11に対する対辺12の間隔G9が第1実施形態の刃部6における表部7と同様に略同一になるように形成されている。この間隔G9については、刃部6の先端部側及び基端部側で共に0.2mm以上1.5mm以下の範囲に設定することが好ましく、例えば、刃部6の先端部側で0.42mmに設定し、刃部6の基端部側で0.38mmに設定している。従って、前記刃部6の表部7の刃面9と刃部6の裏部8の刃面10とは互いに異なる形状になる。
刃部6は、図4(a)に示すように、結膜32に刺入するP矢印向きの移動軌跡38aと、強膜33から角膜34に進入するQ矢印向きの移動軌跡38bと、前房35内に穿孔するR矢印向きの移動軌跡38cとにより、順次進入向きを変更しながら略S字状の移動軌跡38に沿って移動する。刃部6の裏部8で幅方向Yの両刃面10の面積が刃部6の基端部側よりも先端部側で大きくなっているため、刃部6を押し上げる上向き力が裏部8に付与される際に、裏部8の先端部側に付与される上向き力が裏部8の基端部側に付与される上向き力よりも大きくなり、図5(a)に示すようにそれらの上向き力の差により刃部6の先端部側を押し上げるとともに刃部6の基端部側を押し下げる向きUの回動モーメントが生じ易い。なお、刃部6の表部7で幅方向Yの両刃面9の面積が刃部6の先端部側から基端部側にわたり略同一になっているため、刃部6を押し下げる下向き力の差による回動モーメントは生じにくい。従って、図4(a)に示すように、前述した略S字状の移動軌跡38のうち、結膜32に刺入するP矢印向きの移動軌跡38aを経て強膜33から角膜34に進入するQ矢印向きの移動軌跡38bに移る際には、刃部6の先端部側を押し上げるとともに刃部6の基端部側を押し下げる向きUの回動モーメントによりそれらの移動軌跡38a,38bの変更を行い易い。
(1) 第1実施形態では、経結膜・強角膜一面切開法による白内障手術を行う場合、手術者が刃部6を輪部31の付近から結膜32と強膜33と角膜34とを経て前房35へ略S字状の移動軌跡38で押し進める際に、強膜33から角膜34に進入するQ矢印向きの移動軌跡38bを経て前房35内に穿孔するR矢印向きの移動軌跡38cへ刃部6を抵抗感の少ない自然な流れで押し進めることができる。従って、自己閉鎖性に優れた略S字状の切開創37を容易に形成することができる。また、刃部6は前房35内に進入する際に上向きまたは下向きに平行移動することなくR矢印向きの移動軌跡38cで直線的に進入するので、切開創37の内方切開線37aが山形にならず一本の直線状に形成され易い。
・ 第1実施形態における刃部6の表部7や刃部6の裏部8において、尖端部14に頂端部15,16を近付けて境界縁17,18を短くしてもよい。
・ 第1〜2実施形態において、刃部6の表部7及び裏部8を含む外面全体には、シリコーン樹脂やフッ素樹脂やダイヤモンドライクカーボンなどによる被覆層を設けてもよい。また、その刃部6の外面全体において、表面粗さを調整したり、光を反射しない被覆層や光を反射しにくい被覆層を設けたりして、手術時に照明による刃部6の外面全体の反射を抑制してもよい。
Claims (7)
- 先端部側に刃部を有する刃板の基端部側に対し柄を設けて、この柄に設けた把持部の延設方向と刃板の延設方向とを互いに交差させ、この刃板の刃部は、刃板の厚み方向の上下両側のうち、柄の把持部の延設向き側である上側に形成した表部と、柄の把持部の延設向きに対する反対向き側である下側に形成した裏部とを有し、この刃部の表部及び裏部でこの厚み方向に交差する刃板の幅方向両側には、それぞれ、刃板の幅方向中央部側から幅方向両外縁部側へ互いに厚み方向間隔を狭めるように傾斜する刃面を形成するとともに、この表部の刃面と裏部の刃面とが互いに交差する外縁部で刃部の先端部から基端部側へ延びる刃先縁を形成した医療用ナイフにおいて、
前記刃部における表部の幅方向両刃面と裏部の幅方向両刃面とのうち、
裏部の幅方向両刃面は、刃先縁に対する対辺の間隔が先端部側と基端部側とのうち一方の側から他方の側へ向かうに従い次第に広がるように形成され、
表部の幅方向両刃面は、刃先縁の先端部から基端部にわたる刃先縁の全体で刃先縁に対する対辺の間隔が同一になるように形成され、
前記刃部の表部と裏部とにおいて、それぞれ、幅方向両刃面の刃先縁が互いに交差する尖端部と幅方向両刃面の対辺が互いに交差する頂端部との間には幅方向両刃面間の境界縁を形成するとともに、その幅方向両刃面の対辺間に中間面を形成し、
前記刃板において、刃部の幅方向両刃先縁は尖端部から終端部まで延設され、その幅方向両刃先縁の終端部間で最大の幅方向間隔をなし、
前記刃部の幅方向両刃先縁の終端部間を互いに結ぶ線分から幅方向両刃先縁の尖端部側の範囲で、前記刃部の裏部の幅方向両刃面で刃先縁に対する対辺の間隔は、前記刃部の表部の幅方向両刃面で刃先縁に対する対辺の間隔よりも大きく設定され、
幅方向の両刃先縁を通る面に対し刃部の表部の刃面がなす傾斜角度は、幅方向の両刃先縁を通る面に対し刃部の裏部の刃面がなす傾斜角度よりも大きく設定され、
前記柄に対し前記刃板は刃部の表部側に屈曲され、刃部の先端部側から基端部側にわたる刃板の長さは、刃板の厚みの10倍以上50倍以下に設定され、
前記刃部にあって幅方向の両刃先縁間の開き角度は60度以上120度以下に設定されている
ことを特徴とする医療用ナイフ。 - 前記裏部の幅方向両刃面は、刃先縁に対する対辺の間隔が先端部側から基端部側へ向かうに従い次第に広がるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の医療用ナイフ。
- 前記裏部の幅方向両刃面は、刃先縁に対する対辺の間隔が基端部側から先端部側へ向かうに従い次第に広がるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の医療用ナイフ。
- 前記刃部の幅方向両刃先縁の終端部間を互いに結ぶ線分上またはその線分よりも基端部側または先端部側で目印を付し、その目印と尖端部との間の距離とその幅方向両刃先縁の終端部間の幅方向間隔とを同一に設定したことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一つの請求項に記載の医療用ナイフ。
- 前記刃部の表部の中間面と刃部の裏部の中間面とは互いに平行に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一つの請求項に記載の医療用ナイフ。
- 前記刃部の表部と裏部とにおいて、それぞれ、幅方向の両刃面間の境界縁を通る厚み方向面に対し幅方向の両刃面は対称形状に形成されていることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか一つの請求項に記載の医療用ナイフ。
- 前記刃部の裏部の刃面がなす傾斜角度は、前記刃部の表部の刃面がなす傾斜角度の半分以下に設定されていることを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか一つの請求項に記載の医療用ナイフ。
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