JP5793754B1 - トリチウム水捕集器及びトリチウム水捕集システム - Google Patents

トリチウム水捕集器及びトリチウム水捕集システム Download PDF

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Abstract

【課題】トリチウム水を含む汚染水から、液体の状態のトリチウム水を捕集し除去するための、簡便で、安全な装置を提供すること。【解決手段】トリチウム水を含む汚染水からトリチウム水を捕集するトリチウム水捕集器であって、略密閉状態とすることができる箱状の容器と、容器に設けられる汚染水注入口と、容器に設けられる汚染水排出口と、容器の内部で、汚染水の通過経路に置かれ、トリチウム水を吸着する吸着剤とを有し、トリチウム水の凝固点以下の温度に冷却した汚染水を、注入口から注入し、汚染水が吸着剤を通過する際に、トリチウム水が凝固し、その凝固したトリチウム水が吸着剤に吸着され、残余の汚染水が前記排出口より排出されること。【選択図】図1

Description

本発明は、トリチウムを捕集する装置に関し、特に、原子力発電所の事故による放射性物質で汚染された廃水(汚染水)中に存在するトリチウム水を凝固によって捕集する装置に関する。
事故を起こした原子力発電所の冷却に用いられた水(汚染水)には、種々の放射性物質が含まれており、それらを除去して、生物にとって安全なレベルとして、自然界に排水できるようにすることが求められている。
ここで、汚染水中の、放射性のトリチウム(三重水素)以外の放射性物質については、既に実用化されている多核種除去設備(ALPS)などによって除去が可能である。しかしながら、トリチウムについては、その物性が水素と酷似していることから、容易に除去することができていない。
また、一般に、トリチウムは酸素と結合し、トリチウム水として、汚染水中に気体または液体の状態で存在することが多い。
トリチウムを除去する装置としては、特許文献1には、トリチウム水蒸気からパラジウム水素透過膜などを用いてトリチウムを分離する技術思想が開示されている。
また、特許文献2には、トリチウム水を含むガスを吸着剤であるゼオライトを流過させることにより、トリチウムを分離する技術思想が開示されている。
特開平7−253487号公報 特開平10−128072号公報
しかし、特許文献1及び特許文献2に記載された装置においては、いずれも気体となっているトリチウム水蒸気、あるいは、トリチウム水を含むガスを処理するようになっており、放射性物質の拡散の恐れが高い気体状態での取扱いが必要であり、簡便で、安全性の高い装置を提供することは難しい。
一方、トリチウム水は、凝固(凍結)温度が、通常の水、すなわち軽水とは異なるという物性の相違があり、それを利用することによって、気体ではなく、液体または固体状態で処理することが可能である。
そこで、本発明では、液体の状態のトリチウム水を捕集し除去するための、簡便で、安全な装置を提供することを課題とする。
本発明は、上記課題を解決するための、汚染水中のトリチウム水を捕集するトリチウム水捕集器であって、
−略密閉状態とすることができる箱状の容器と、
−容器に設けられ、汚染水を注入する注入口と、
−容器に設けられ、処理水を排出する排出口と
−容器の内部で、汚染水の通過経路に置かれ、トリチウム水を吸着する吸着剤と
を有し、トリチウム水の凝固点以下の温度に冷却した汚染水を、注入口から注入し、汚染水が吸着剤を通過する際に、トリチウム水が凝固し、その凝固したトリチウム水が吸着剤に吸着され、残余の汚染水が排出口より排出されることを特徴とする。
これによれば、凝固したトリチウム水を、通常の水から選別して吸着させて捕集することができ、効率的な汚染水処理が可能となる。
更に、本発明のトリチウム水捕集器は、トリチウム水捕集器が、持ち運び可能で、かつ、密閉可能であることを特徴としてもよい。このようにすると、捕集したトリチウム水を所定の保管場所で安全に保管することができる。
更に、本発明のトリチウム水捕集器は、吸着剤が、多孔質土類を含むことを特徴としてもよい。ここで、多孔質土類は、サイズの異なる多種類の空間を多数持つもので、活性白土が好適であるが、それに限定されない。これによれば、汚染水中のトリチウム水が、凝固した状態で、この空間によって効率よく捕集される。
また、本発明は、上記課題を解決するための、トリチウム水を含む汚染水からトリチウム水を捕集するトリチウム水捕集システムであって、
−先に述べたトリチウム水捕集器と、
−トリチウム水捕集器に冷却した汚染水を供給する配管と、
−トリチウム水捕集器から排出される汚染水を送出する配管と、
−トリチウム水捕集器周辺をトリチウム水の凝固点未満の温度に冷却する周辺冷却装置と
を有することを特徴とする。
これによれば、トリチウム水の捕集を、効率よく、安全に実行することができるシステムを提供することができる。
更に、本発明のトリチウム水捕集システムは、周辺冷却装置が、
−略密閉状態の冷却槽と
−冷却槽内に敷設され、汚染水の冷却のための冷媒を循環する冷媒循環配管と
−冷却槽内に設置された攪拌器と
を有することを特徴としてもよい。これによれば、トリチウム水捕集器の周辺の冷却が適切に行われ、効率のよいトリチウム水の捕集ができる。
更に、本発明のトリチウム水捕集システムは、周辺冷却装置の冷媒が、プロピレングリコール水溶液であることを特徴としてもよい。このようにすると、冷却温度の精密な制御が可能となる。
更に、本発明のトリチウム水捕集システムは、
−トリチウム水捕集器に注入する汚染水をトリチウム水の凝固点近傍の温度に精密に冷却する精密冷却装置
を有することを特徴としてもよい。これによれば、トリチウム水捕集器に注入される汚染水の温度が適正範囲に制御されるため、効率のよいトリチウム水の捕集が可能となる。
更に、本発明のトリチウム水捕集システムは、精密冷却装置が、
−略密閉状態の冷却槽と
−冷却槽に汚染水を注入する汚染水注入口と
−冷却槽から汚染水を排出する汚染水排出口と
−冷却槽内に敷設され、汚染水の冷却のための冷媒を循環する冷媒循環配管と
−冷却槽内に設置された攪拌器と
を有することを特徴としてもよい。これによれば、精密冷却装置が簡便に実現できる。
更に、本発明のトリチウム水捕集システムは、精密冷却用の冷媒が、プロピレングリコール水溶液であることを特徴としてもよい。このようにすると、冷却温度の精密な制御が可能となる。
更に、本発明のトリチウム水捕集システムは、
−前記精密冷却装置に注入する汚染水を予備冷却する予備冷却装置
を有することを特徴としてもよい。このようにすると、精密冷却の前に、所定温度の近くまで汚染水が冷却されているので、精密冷却が短時間に、かつ、精度高く行える。
更に、本発明のトリチウム水捕集システムは、予備冷却装置が、
−略密閉状態の冷却槽と
−冷却槽に汚染水を注入する汚染水注入口と
−冷却槽から汚染水を排出する汚染水排出口と
−冷却槽内に敷設され、汚染水の冷却のための冷媒を循環する冷媒循環配管と
−冷却槽内に設置された攪拌器と
を有することを特徴としてもよい。これによれば、予備冷却装置が簡便に実現できる。
更に、本発明のトリチウム水捕集システムは、予備冷却に用いられる冷媒が、エチレングリコール水溶液であることを特徴としてもよい。温度保持の要求が厳しくない場合に、取扱いが容易で、コストが安いエチレングリコールを用いることで、経済的な効果が期待できる。
更に、本発明のトリチウム水捕集器またはトリチウム水捕集システムは、精密冷却装置、周辺冷却装置、トリチウム水捕集器、または、その間を接続する配管の内部の汚染水の流路に凝固促進剤を投入する、凝固促進剤投入部を設けたことを特徴としてもよい。
例えばホウ酸ソーダのような凝固作用を促進する凝固促進剤を汚染水中に投入すれば、凝固作用が促進され、効率よくトリチウム水が捕集できる。
本発明のトリチウム水捕集器及びトリチウム水捕集システムによれば、精密冷却による温度制御によってトリチウム水を凝固させて、多孔質土類に吸着させることで捕集(捕まえて集める)し、かつ、捕集器を取り外し、密閉して保管できるようにしたから、トリチウムの拡散などの危険を最小限にした安全で、かつ、効率のよいトリチウム水捕集処理が可能となる。
本発明の一実施形態のトリチウム水捕集システムの説明図である。 本発明の一実施形態のトリチウム水捕集システムの冷却装置の斜視図である。 本発明の一実施形態のトリチウム水捕集器の周辺の斜視図である。 本発明の一実施形態のトリチウム水捕集器の斜視図である。 本発明の一実施形態のトリチウム水捕集器の断面図である。 本発明の一実施形態のトリチウム水捕集器の側面図である。
図面を参照しながら、本発明の実施の形態について以下に説明する。
図1は本発明の一実施形態のトリチウム水捕集システム1の構成図である。
トリチウム水捕集システム1は、汚染水の流れの順に、汚染水に混合している夾雑物を除去する夾雑物除去部10、汚染水の予備冷却を行う予備冷却装置20、予備冷却された汚染水を精密冷却する精密冷却装置30、精密冷却された汚染水からトリチウム水を捕集するトリチウム水捕集器40、トリチウム水捕集器40の周辺を冷却する周辺冷却装置50、トリチウム水が除去された汚染水を貯える貯水槽60を有する。
更に、精密冷却装置30及び周辺冷却装置50に用いる冷媒を冷却する3次冷媒槽70、3次冷媒槽70及び予備冷却装置20に用いる冷媒を冷却する2次冷媒槽80、2次冷媒槽80を冷却するための1次冷媒冷却装置90を含んでいる。
夾雑物除去部10は、内部に網目状のフィルターを有し、汚染水に含まれる夾雑物が下流へと送られることを阻止する。
図2は本発明の一実施形態のトリチウム水捕集システム1に用いられる予備冷却装置20の構造を示す斜視図である。略密閉状態(冷媒や汚染水などの出入口を除き開口部がない状態)の、内部に空間を有する直方体であり、上面に設けられた冷媒入口21と冷媒出口22との間を結び、直方体の下方へらせん状に降下し、底部近くで直線状に上昇していく冷媒配管23(4組)と、直方体の上面に設けられ、直方体内部に汚染水を供給する汚染水入口24と、汚染水入口から供給された汚染水を送出するための汚染水出口25と、直方体内部の汚染水を攪拌するために軸に4枚の羽根を設置して軸の回転で攪拌を行う、2個の攪拌器26とを有する。
冷却配管23は、コイル状で、高さ50cm、管の外径6cm、6〜7段のスパイラル形状とすることが望ましいが、システム全体の規模にもよるので、この寸法形状に限定されない。
なお、予備冷却装置20だけでなく、精密冷却装置30、3次冷媒槽70、2次冷媒槽80も同様の構造とすることができる。ここで、精密冷却装置30においては、冷媒入口31、冷媒出口32、冷媒配管33、汚染水入口34と、汚染水出口35、攪拌器36と読み替える。
冷媒槽においては、冷却対象は、汚染水でなく、被冷却冷媒であるので、汚染水入口、汚染水出口は、それぞれ、被冷却冷媒入口、被冷却冷媒出口とするため、3次冷媒槽70では、冷媒入口71、冷媒出口72、冷媒配管73、被冷却冷媒入口74と、被冷却冷媒出口75、攪拌器76と読み替え、2次冷媒槽80では、冷媒入口81、冷媒出口82、冷媒配管83、被冷却冷媒入口84、被冷却冷媒出口85、攪拌器86と読み替えるものとする。
なお、上記の冷却装置及び冷却槽及び後述の周辺冷却装置の構成は、同様のものでなくてもよく、それぞれが用途に合った周知の冷却機構で構成してもよい。
図3は本発明の一実施形態のトリチウム水捕集器40の周辺の斜視図である。トリチウム水捕集器40は、周辺冷却装置50の中に、4台設置される。周辺冷却装置50は、他の冷却装置と類似の構造となっており、冷媒入口51、冷媒出口52、冷媒配管53、攪拌器56を有し、冷媒配管53を通る冷媒と攪拌器56によって冷却がなされるが、冷却されるのは、内部に設置されたトリチウム水捕集器40及びその周辺の配管と空気である。
なお、トリチウム水捕集器40を複数個設置するのは、いずれかが満杯になった場合の交換の間も運転を停止しなくてよいようにしたものであるが、その個数は4に限定されず、1つ以上であればよい。
トリチウム水捕集器40を4台内蔵した周辺冷却装置50の外形寸法は、幅200cm、高さ140cm、奥行60cm程度が望ましいが、システム全体の規模や内蔵するトリチウム水捕集器の寸法にもよるため、この寸法には限定されない。 更に、高さ方向の両サイドには、それぞれ、例えば、長さ20cm、16cmのガイド付きの溝を4組設け、この溝でトリチウム水捕集器40を保持する。
図4は、本発明の一実施形態のトリチウム水捕集器40の斜視図、図4は断面図、図5は側面図である。トリチウム水捕集器40は、略密閉状態の内部に空間を有する直方体の容器41と、その上面に設けられた汚染水の入口である汚染水入口42と処理された水(処理水)の出口である処理水出口43とを有する。容器の外形寸法は、幅100cm以上、高さ50cm程度、奥行5〜10cm程度が望ましいが、システム全体の規模などからこの寸法には限定されない。容器の上蓋及び底板については脱着可能な構造とするが、それと異なる構造であってもよい。
汚染水入口42からは配管421が容器41内部の上方に水平状態で延伸し、容器41内で下方に向けて汚染水を噴出できる噴出口422が複数個設けられている。
容器41の内部は、高さ方向に3層のトリチウム水捕集層411a、411b、411cを設ける。各層は底面に金属の格子状の網412を有し、その上に金属製またはポリプロピレン製の細かい網状容器413を置き、その中に吸着剤414を、網状容器413の容積の90%程度充填する。吸着剤414としては、サイズの異なる多種類の空間を多数持つ、多孔質土類、例えば、活性白土などが望ましい。なお、充填量は、汚染水の濃度、捕集されるトリチウム水の濃度などを勘案して適宜、変更すればよい。
最下層のトリチウム水捕集層411cの下方には、多数の孔416を有する底板415が設けられ、更にその下方に、処理された水を受けて処理水出口43方向へ傾斜により流す処理水受け皿431を有し、その受け皿431の終端には処理水出口へ向かう配管432が接続されている。
なお、必要に応じ、汚染水入口42あるいは処理水出口43の近傍には、流量を調整したり、逆流を防止したりする周知のバルブ(弁)を設けてもよい。
このトリチウム水捕集器40は、周辺冷却装置50から、略密閉状態を維持したまま、脱着可能なように構成されている。例えば、トリチウム水捕集器40の容器41に、周辺冷却装置50側に設けたガイド付きの溝と摺動するような形状または部材を設けるなどの周知の手段でよい。また、密閉状態の維持には、先に述べたバルブを自動または手動で閉じることで実現ができる。なお、トリチウム水捕集器40は、遠隔操作で脱着が可能であるようにする。このようにすれば放射線被曝の危険を少なくすることができる。
このような構成のトリチウム水捕集システム1の作用について説明する。
まず、1次冷媒冷却装置90において、1次冷媒であるフロンガスが冷却される。1次冷媒冷却装置90については、詳細は図示しないが、周知のコンプレッサとコンデンサを用いるフロンガス冷却装置を用いればよい。フロンガスは、周知のように冷却能力は高いが、その温度の安定性は十分ではなく、精密な冷却には適さない。ここではフロンガスを概ね摂氏0度以下に粗冷却する。
次に、冷却されたフロンガスは、2次冷却槽80の冷媒入口81に送り込まれ、冷媒配管83を通過して冷媒出口82へと流れ、最終的には1次冷却槽90へと戻ってくる。ここで、2次冷媒槽80には、被冷却冷媒入口81から流入し被冷却冷媒出口82へと向かう冷却対象の冷媒で満たされている。ここで冷却対象の冷媒としては、フロンガスよりやや温度安定性の高い、エチレングリコールの50%水溶液(EGブラインと呼ぶ)を用いる。
なお、EGブラインには、防錆添加剤や表面張力降下性界面活性剤などの添加剤を添加してもよい。添加剤としては、それらの効果が高い、合成脂肪酸、モリブデンソーダ、トリルトリアゾール、更にアルカリ性とするための苛性ソーダ水溶液、苛性カリ水溶液などの一部または全部を含むものが望ましい。
2次冷却槽80の冷媒配管83と攪拌器86の働きで、フロンガスとEGブラインとの間の熱交換がなされ、EGブラインは、好ましくは摂氏−0.5度から摂氏3.0度、より好ましくは、摂氏1.0度から摂氏2.5度の範囲で、汚染水の予備冷却と3次冷媒の冷却が適切に行うことができる温度を選定して冷却される。
なお、これらの温度の制御は、図示しないバルブや流量計を用いてフロンガスやEGブラインの流量を制御することと、攪拌器86の運転・停止や攪拌速度調節によって、EGブラインの攪拌を制御することとで、実現できる。
この冷却されたEGブラインは、3次冷却槽70に送られる。3次冷却槽70では、冷媒入口71、冷媒配管73、冷媒出口72へと進む間に、攪拌器76の助けもあって、3次冷却槽で冷却されるべき別の冷媒を冷却する。ここで用いられる冷却対象の冷媒は、プロピレングリコールの30%水溶液(PGブラインと呼ぶ)が好ましい。PGブラインは、水分比率を高くすることができ、そのことにより水の大きな潜熱を利用して、EGブラインよりも更に温度安定性をよくすることができるので、精密な冷却に適しており、また、EGブラインと比較すると金属に対する酸化作用が低いので、防錆添加剤を少なくすることができるからである。
なお、PGブラインには、防錆添加剤や表面張力降下性界面活性剤などの添加剤を添加してもよい。添加剤としては、それらの効果が高い、合成脂肪酸、モリブデンソーダ、トリルトリアゾール、更にアルカリ性とするための苛性ソーダ水溶液、苛性カリ水溶液などの一部または全部を含むものが望ましい
ここで、PGブラインは、好ましくは摂氏0.5度から摂氏4.0度、より好ましくは、摂氏2.0度から摂氏3.5度の範囲で、トリチウム水の捕集が最も効率的になる温度を選定し、かつ、その温度変動を、好ましくは+−0.2度以内、より好ましくは+−0.1度以内に維持するように冷却される。
なお、これらの温度の制御は、図示しないバルブや流量計を用いてEGブラインやPGブラインの流量を制御することと、攪拌器76の運転・停止や攪拌速度調節によって、PGブラインの攪拌を制御することとで、実現できる。
次に、汚染水の処理について説明する。図示しないトリチウム水を含む汚染水の発生源から本システムに供給される汚染水は、まず、夾雑物除去部10を通過して汚染水に混合している夾雑物(ゴミ、固形物など)をフィルターによって除去する。なお、既にそれらのものが除去されていればこの部分は必要ない。
次に、汚染水は、予備冷却装置20の汚染水入口24から装置内部に供給される。一方、予備冷却装置20の冷媒入口21には、先に説明した2次冷却槽80からのEGブラインが供給されるように配管されており、冷媒配管23、冷媒出口22へと進む間に、攪拌器26の助けもあって、汚染水は、EGブラインとの間で熱交換がなされ、トリチウム水の凝固温度と同程度か、やや高めの温度、好ましくは摂氏4.5度から摂氏6.0度、より好ましくは、摂氏4.5度から摂氏5.0度の範囲で、精密冷却を効率よく行える温度を選定して冷却され、汚染水出口25から次工程へと流出する。ここで、トリチウム水の凝固温度は、1気圧で摂氏4.49度であるが、高圧や低圧の環境であると、変動することはある。
なお、これらの温度の制御は、図示しないバルブや流量計を用いてEGブラインや汚染水の流量を制御することと、攪拌器26の運転・停止や攪拌速度調節によって、汚染水の攪拌を制御することとで、実現できる。
引き続き、予備冷却された汚染水は精密冷却装置30の汚染水入口34から装置内部に供給される。一方、精密冷却装置30の冷媒入口31には、先に説明した3次冷却槽70からのPGブラインが供給されるように配管されており、冷媒配管33、冷媒出口32へと進む間に、攪拌器36の助けもあって、汚染水は、PGブラインとの間で熱交換がなされ、トリチウム水の凝固温度近傍の温度、すなわち、好ましくは摂氏2.5度から摂氏5.0度、より好ましくは、摂氏3.5度から摂氏4.5度の範囲で、トリチウム水の捕集が最も効率的になる温度を選定し、かつ、その温度変動を、好ましくは+−0.2度以内、より好ましくは+−0.1度以内に維持するように冷却され、汚染水出口35から次工程へと流出する。
なお、これらの温度の制御は、図示しないバルブや流量計を用いてPGブラインや汚染水の流量を制御することと、攪拌器36の運転・停止や攪拌速度調節によって、汚染水の攪拌を制御することとで、実現できる。
引き続き、精密冷却された汚染水は、4個あるトリチウム水捕集器40のいずれかの汚染水入口42へと向かう。なお、トリチウム水捕集器40を内蔵している周辺冷却装置50の冷媒入口51には、3次冷媒槽70からのPGブラインが供給され、冷媒配管53、冷媒出口52へと向かう間に攪拌器56の助けもあって、内部に設置されたトリチウム水捕集器40及びその周辺の配管と空気が、PGブラインとの間で熱交換がなされ、好ましくは摂氏1.5度以上でトリチウム水凝固温度未満、より好ましくは、摂氏3.0度から摂氏4.4度の範囲で、トリチウム水の捕集が最も効率的になる温度を選定し、かつ、その温度変動を、好ましくは+−0.2度以内、より好ましくは+−0.1度以内に維持するように冷却される。
なお、これらの温度の制御は、図示しないバルブや流量計を用いてPGブラインの流量を制御することと、攪拌器56の運転・停止や攪拌速度調節によって、トリチウム水捕集器40周辺の空気の攪拌を制御することとで、実現できる。
トリチウム水捕集器40の内部では、供給された汚染水が、汚染水入口42から、配管421、噴出口422を通って、最上層のトリチウム水捕集層411aへと散布される。ここで、トリチウム水は、好ましくは摂氏1.5度以上でトリチウム水凝固温度未満、より好ましくは、摂氏3.0度から摂氏4.4度の範囲の中の適切な温度に保たれ、既に一部凝固を開始しているか、まだ液体の状態(過冷却状態)で、トリチウム水捕集層411aの網状容器413の中の吸着剤414を通過しようとする。その際に、吸着剤414との接触による刺激によって未凝固の部分も急速に凝固が生じ、固体となったトリチウム水は、吸着剤414に吸着される。
ここで、トリチウム水捕集層は、更に2層あり、中間層411b、最下層411cにおいても、凝固トリチウム水の吸着が行われる。
なお、トリチウム水と通常の水では、凝固点の差が摂氏で約4.5度あること、及び、トリチウム水の解離度が小さいことから、凝固時に必要なエネルギーが小さいことなどから、トリチウム水は、通常の水と混合した状態でも、摂氏1.5度とトリチウム水凝固温度との間で、大部分が凝固して捕集されるものと考えられる。
このようにしてトリチウム水が除去された汚染水(処理水と呼ぶ)は、処理水受け皿432から配管432を経て処理水出口43へと送られる。
その後、処理水は、貯水槽60に貯えられ、成分測定などの後、排水適格であれば、直接または保存槽65を経由して河川や海への排水や蒸発による大気中への放出がなされ、あるいは、最終処分まで保存槽65に保存される。また、更に残留トリチウム水が存在する場合には、貯水槽60から、予備冷却装置20へ供給し、再度、トリチウム水の捕集を行ってもよい。
なお、トリチウム水の凝固を促進するために、汚染水をトリチウム水捕集器40に供給する直前の配管部分に、凝固促進剤投入部を設けてもよい。例えば、ホウ酸ソーダの微粉末のような凝固促進剤をシリンダを用いて配管内に注入する構成とする。ホウ酸ソーダの微粉末は、トリチウム水が凝固点以下の温度になった際に、凝固を促進する効果がある。この場合、ホウ酸ソーダは、できるだけ結晶水の少ないものが望ましいが、必ずしも無結晶でなくてもよい。なお、凝固促進剤としては、ホウ酸ソーダに限定されず、ケイ酸ソーダ、硝酸ソーダ、次亜リン酸ソーダなどの、凝固促進の効果のあるものであればよい。また、凝固促進剤の投入場所も、トリチウム水捕集器40に汚染水を供給する直前でなく、精密冷却装置30内やそこからトリチウム水捕集器40までの間、あるいはトリチウム水捕集器40内部で投入してもよい。
また、これまでの説明では触れなかったが、冷媒や汚染水を移送する配管についても、適切なブラインを用いて冷却を行い、温度の上昇が起きないようにするものとする。
また、これまでの説明の中で、ブラインの濃度を、EGブラインの場合、エチレングリコールの50%水溶液としたが、これに限定されず、好ましくは30%から55%、より好ましくは40%から55%のうちの、適切な濃度とすればよい。PGブラインの場合も、プロピレングリコールの30%水溶液としたが、これに限定されず、好ましくは10%から50%、より好ましくは20%から40%のうちの、適切な濃度とすればよい。また、エチレングリコールとプロピレングリコールの組合せにも限定されず、他の予備冷却と精密冷却とに使い分けて使用できる冷媒であればそのようなものでもよい。
また、EGブラインの冷却用にフロンを用いるとしたが、それに限定されず、ノンフロン冷媒(例えばプロパン・ブタン・イソブタン)やアンモニアなどの冷却剤を用いてもよい。
更に、これまでの説明では、汚染水の冷却手段として、EGブラインを用いる予備冷却装置20とPGブラインを用いる精密冷却装置30を設けるとしたが、どちらか一方のみで、必要な温度精度の冷却が可能であれば、他方は省略することが可能である。その場合は、2次冷却槽80、3次冷却槽70のいずれかが不要となる場合もある。
また、多孔質土類として、活性白土を好適例として挙げたが、これに限定されず、カオリン、酸性白土、珪藻土、ゼオライト、陶土などであってもよく、セラミックスであってもよい。
なお、本発明のシステムを構成する装置の間の配管については、適宜、流量調整弁、逆流防止弁(逆止弁)、コック、ドレインなどを必要に応じて設けてもよい。
1 トリチウム水捕集システム
20 予備冷却装置
30 精密冷却装置
40 トリチウム水捕集器
50 周辺冷却装置
60 貯水槽
70 3次冷媒槽
80 2次冷媒槽
90 1次冷媒冷却装置

Claims (9)

  1. トリチウム水を含む汚染水からトリチウム水を捕集するトリチウム水捕集器であって、
    −冷媒や汚染水の出入口を除き開口部がない状態である略密閉状態の容器と、
    −前記容器に設けられ、前記汚染水を注入する注入口と、
    −前記容器に設けられ、処理水を排出する排出口と
    −前記容器の内部で、前記汚染水の通過経路に置かれ、前記トリチウム水を吸着する、活性白土、カオリン、のいずれか1つ以上を含む多孔質土類を含む吸着剤と
    を有し、前記トリチウム水の凝固点以下の温度に冷却した前記汚染水を、前記注入口から注入し、前記汚染水が前記吸着剤を通過する際に、前記トリチウム水が凝固し、その凝固したトリチウム水が前記吸着剤に吸着され、残余の汚染水が前記排出口より排出されることを特徴とするトリチウム水捕集器。
  2. 請求項1に記載のトリチウム水捕集器であって、前記吸着剤が複数の層からなることを特徴とするリチウム水捕集器。
  3. トリチウム水を含む汚染水からトリチウム水を捕集するトリチウム水捕集システムであって、
    −1以上の請求項1に記載のトリチウム水捕集器と、
    −前記トリチウム水捕集器に冷却した汚染水を供給する配管と、
    −前記トリチウム水捕集器から排出される汚染水を送出する配管と、
    −前記トリチウム水捕集器に注入する汚染水を、プロピレングリコールの10%から40%の水溶液である冷媒によって、前記トリチウム水の凝固点近傍の温度に、水の大きな潜熱を利用して、精密に冷却する精密冷却装置と、
    −前記精密冷却装置に注入する汚染水を、エチレングリコールの30%から55%の水溶液である冷媒によって、予備冷却する予備冷却装置と
    を有することを特徴とするトリチウム水捕集システム。
  4. 請求項に記載のトリチウム水捕集システムであって、前記精密冷却装置が、
    −略密閉状態の冷却槽と
    −前記冷却槽に汚染水を注入する汚染水注入口と
    −前記冷却槽から汚染水を排出する汚染水排出口と
    −前記冷却槽内に敷設され、汚染水の冷却のための冷媒を循環する冷媒循環配管と
    −前記冷却槽内に設置された攪拌器と
    を有することを特徴とするトリチウム水捕集システム。
  5. 請求項4に記載のトリチウム水捕集システムであって、前記精密冷却装置の前記冷媒循環配管が、スパイラル形状であることを特徴とするトリチウム水捕集システム。
  6. 請求項に記載のトリチウム水捕集システムであって、前記予備冷却装置が、
    −略密閉状態の冷却槽と
    −前記冷却槽に汚染水を注入する汚染水注入口と
    −前記冷却槽から汚染水を排出する汚染水排出口と
    −前記冷却槽内に敷設され、汚染水の冷却のための冷媒を循環する冷媒循環配管と
    −前記冷却槽内に設置された攪拌器と
    を有することを特徴とするトリチウム水捕集システム。
  7. 請求項に記載のトリチウム水捕集システムであって、更に、
    −前記トリチウム水捕集器周辺を、プロピレングリコールの10%から40%の水溶液である冷媒によって、前記トリチウム水の凝固点未満の温度に、水の大きな潜熱を利用して、冷却する周辺冷却装置と
    を有することを特徴とするトリチウム水捕集システム。
  8. 請求項に記載のトリチウム水捕集システムであって、前記周辺冷却装置は、
    −略密閉状態の冷却槽と
    −前記冷却槽内に敷設され、汚染水の冷却のための冷媒を循環する冷媒循環配管と
    −前記冷却槽内に設置された攪拌器と
    を有することを特徴とするトリチウム水捕集システム。
  9. 請求項8に記載のトリチウム水捕集システムであって、前記周辺冷却装置の前記冷媒循環配管が、スパイラル形状であることを特徴とするトリチウム水捕集システム。
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