JP5792067B2 - αアドレナリン受容体拮抗薬と抗ムスカリン薬の併用 - Google Patents

αアドレナリン受容体拮抗薬と抗ムスカリン薬の併用 Download PDF

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Description

本発明は、αアドレナリン受容体拮抗薬(R)-5-(2-{[2-(2-エトキシフェノキシ)エチル]アミノ}プロピル)-2-メトキシベンゼン-1-スルホンアミド(以降タムスロシンと称する)又はその医薬的に許容できる塩と、抗ムスカリン薬(1S)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸(3R)-キヌクリジン-3-イルエステル(以降ソリフェナシンと称する)又はその医薬的に許容できる塩との、実質的な蓄尿構成要素(storage component)のある、良性前立腺肥大症(benign prostatic hyperplasia)に伴う下部尿路症状(lower urinary tract symptom)(LUTS/BPH)の治療用薬物を調製するための併用に関する。
(発明の背景)
以前は症候性BPHと呼ばれていた、良性前立腺肥大症(BPH)に伴う下部尿路症状(LUTS)つまりLUTS/BPHは、50歳を超えた男性の一般的な状態である。この状態は65歳より若い男性の約20%で起こり、65歳以上の男性の約40%で起こる(Br. J. Gen. Pract. (1993) 43:318-321e)。
LUTSには、蓄尿症状、例えば頻尿、切迫尿及び夜間多尿、並びに排尿症状、例えば排尿躊躇、弱流、間欠性、排尿不全、滴下及び腹部緊張が含まれる。排尿症状は蓄尿症状よりよく見られるが、蓄尿症状が最も厄介であると考えられる。また、蓄尿症状は日常生活の活動を大いに妨げ、生活の質に大きな影響を及ぼす(J. Urol. (1997) 157:885-889)。
BPHは、組織学的診断、すなわち前立腺の尿道周囲ゾーン内で始まる間質性及び上皮性細胞の過形成によって特徴づけられるプロセスである。ほとんど全ての男性が組織学的BPHを発症するが、過形成に起因する前立腺肥大症の度合は非常に可変性である。その原因は完全には理解されていないが、年齢と男性ホルモンレベルの両者がその進行に寄与する。
BPHに伴うLUTSは、前立腺細胞数の増加によって誘発される前立腺サイズの増大が原因の閉塞によることがある。それは、前立腺、尿道及び膀胱頚部内の平滑筋細胞の収縮の増加が原因の閉塞によることもある(Br. J. Urol. (1975) 47:193-202)。しかし、前立腺肥大症とLUTSの間の関係は、それほど強くない(JAMA (1993) 270(7):860-864; Urology (2001) 58(6 Suppl 1):5-16)。前立腺レベルの閉塞以外に、排尿筋障害、中枢神経系障害、加齢及び/又は虚血などの他の要因が、BPHに伴うLUTSの発生に寄与し得ることが一層明らかになっている(Eur. Urol. (2001) 40(Suppl 4):1-4)。
BPHに伴うLUTSのある男性で観察される蓄尿症状は、共存する排尿筋活動過剰によることがあり、両状態の発生は年齢と共に増加するので、また二次的に膀胱下尿道閉塞になる可能性もある。膀胱下尿道閉塞は、排尿筋のコリン作用性の脱神経に導き、結果としてムスカリン受容体がアセチルコリンに過感受性になる可能性がある。膀胱下尿道抵抗性上昇は、虚血、排尿筋コラーゲン含量増加、排尿平滑筋細胞の電気特性の変化及び脊髄排尿反射の再組織化をもたらこともあり、動物モデルにおいてこれらは全て排尿筋活動過剰の発生と関係がある(Eur. Urol. (2006) 49:651-659)。BPHに伴うLUTSのある男性における排尿筋活動過剰の有病率は40〜70%と推定されている(J. Urol. (2001) 66:550; Scand. J. Urol. Nephrol. (2001) 35:463)。治療しないまま放置すると、LUTSが悪化する可能性があり、長期で最終的には(不可逆的)膀胱機能障害及び重篤な合併症、例えば急性尿貯留(acute urinary retention)(AUR)につながり得る(Eur. Urol. (2001) 39:390-399)。
医学的処置は、BPHに伴うLUTSの一次治療である。現在前立腺肥大症に使われている代表的な治療薬として、機能妨害を軽減することを目的としたアドレナリンα受容体拮抗薬が世界中で知られ、臨床的に使用されている。アドレナリンα受容体拮抗薬の作用機序は、前立腺及び尿道平滑筋の収縮に関与する受容体がアドレナリンα受容体であるという概念に基づいている。タムスロシンは該化合物の例であり、主に前立腺を標的にする。結果として、国際前立腺症状スコア(International Prostate Symptom Score)(I-PSS)によって測定した場合、排尿症状で最強の症状改善、特に弱流の改善が見られる。
他方で、前立腺は、前立腺肥大症の起源及び発生に本質的に関与する男性ホルモン、アンドロゲンの標的器官である。該アンドロゲン作用を抑制するための薬物として、日本国では酢酸クロルマジノン及びアリルエストレノールが使用されている。欧米では、前立腺内でテストステロンをジヒドロテストステロンに変換する酵素(5α還元酵素)を阻害する薬物であるフィナステリド及びデュタステリドが、前立腺縮小に伴うLUTSを改善するための治療で使用されている。
ムスカリン受容体拮抗薬は、その作用機序に照らして蓄尿症状の改善に有効であるかもしれないが、それは排尿時に膀胱の収縮を抑制し得るので、排尿症状に及ぼす改善効果に拮抗する可能性がある。実際に、前立腺肥大症に伴う下部尿路症状の改善が望ましい場合、十分に注意してムスカリン受容体拮抗薬を投与すべきであり、或いはそれはカテーテル処置又は外科手術を必要とし得る尿貯留又は尿閉をもたらすことがあるので禁忌である(Br. J. Urol. (1975), 47(2): 193-202; Folia Pharmacologica Japonica (2003) 12: 331)。例えば、日本国では、ムスカリン受容体拮抗薬であるソリフェナシンコハク酸塩への添付文書(insert)は、「それは排尿時に膀胱の収縮を抑制し、ひいては症状を悪化させ得る」ので、「閉尿の患者」には忌避であると、また「それは抗コリン作用によって尿閉を引き起こし得る」ので、「下部尿路閉塞を伴う疾患(前立腺肥大症など)の患者では」十分に注意して投与すべきであると述べている。添付文書は、排尿障害(下部尿路閉塞疾患[前立腺肥大症など]又は排尿平滑筋収縮障害など)のある患者では、この薬物の投与前に残存尿量を測定すべきであり、必要な場合は特別な試験を考慮すべきであるとう重要な基本的警告をも与えている。また、患者は排尿障害が悪化していないことを定期的に確認することによって、投与期間を通して慎重な観察をし続けるべきである。
しかしながら、スカリン受容体拮抗薬がそれ自体の作用機序のため排尿症状を悪化させ得るという事実にもかかわらず、LUTS/BPHの治療のためαアドレナリン受容体拮抗薬と抗ムスカリン薬の併用がEP-1123707で提唱されている。多くのαアドレナリン受容体拮抗薬及び抗ムスカリン薬が開示されているが、最良の組合せは、それぞれドキサゾシンとダリフェナシン及び4-アミノ-6,7-ジメトキシ-2-(5-メタンスルホンアミド-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノル-2-イル)-5-(2-ピリジル)キナゾリン(UK 338,003としても知られる)とダリフェナシンだった。これらの併用の効力はI-PSS-質問表に基づいて評価されるといわれていた。しかし、この文献には臨床研究結果のいずれの説明も欠けていた。J. Urol. (2005) 174: 1334-1338は、前立腺肥大症に伴う確かな下部尿路症状の病歴が6カ月にわたってあり、1日に少なくとも1回の切迫エピソード及び1日に8回以上の排尿を有する男性患者において、αアドレナリン受容体拮抗薬ドキサゾシンと、ムスカリン受容体拮抗薬プロピベリン塩酸塩の組合せを用いた臨床研究の結果を開示した。この文献の表3に示されるように、ドキサゾシンのみでは総I-PSSを7.3点高め、一方ドキサゾシンとプロピベリン塩酸塩の組合せは総I-PSSを7.4点高めた。蓄尿症状スコアについては、ドキサゾシンのみでは2.9点高め、一方ドキサゾシンとプロピベリン塩酸塩の組合せは3.8点高めた。従って、総I-PSS及び蓄尿症状スコアに関して、ムスカリン受容体拮抗薬との併用療法による改善は、αアドレナリン受容体拮抗薬のみの治療による改善と同様か又はそれ以上だった。他方で排尿スコアに関しては、ドキサゾシンのみでは4.5点高めたが、ドキサゾシンとプロピベリン塩酸塩の組合せは3.7点しか向上させず、ムスカリン受容体拮抗薬との併用が、αアドレナリン受容体拮抗薬のみに比べて改善効果を下げたことを示唆している。従って、αアドレナリン受容体拮抗薬とムスカリン受容体拮抗薬の併用治療は、αアドレナリン受容体拮抗薬のみによる治療に比べて蓄尿症状をさらに改善したが、併用治療は排尿症状の改善効果に拮抗し、すなわち、併用治療は排尿症状に対して負の効果を及ぼした。この結果は予測できた。しかし、プロピベリンは尿流速に影響を与えず、急性尿貯留(AUR)が観察されなかった。
αアドレナリン受容体拮抗薬としてタムスロシン及びムスカリン受容体拮抗薬としてトルテロジンを使用する併用療法について単一薬物及びプラセボと比較したさらなる報告(JAMA (2006) 296(19): 2319)は、12以上のI-PSSスコアによって特徴づけられるLUTS及び8回以上の排尿/日と1日3回以上の切迫エピソードによって特徴づけられる過活動膀胱(overactive bladder)(OAB)を有する男性における12週間の臨床研究の結果を述べている。この文献は、タムスロシンとトルテロジンの併用療法がプラセボに比べて総I-PSSを有意に向上させたこと、並びにそれぞれ蓄尿症状の指標である24時間中の切迫排尿頻度、及び夜間排尿頻度をもプラセボに比べて有意に改善したことを実証している。しかし、見たところ併用の結果は単一薬物の結果より有意に良いわけではない。排尿症状に関して異なる治療群の効力については何もデータが示されなかった。
従って、本発明が解決すべき課題は、排尿症状の実質的な悪化を引き起こすことなく、BPHに伴う下部尿路症状を改善するため、特により厄介なことが分かっている蓄尿症状を改善するための安全かつ有効な治療を見い出すことだった。
(発明の概要)
本発明は、実質的な蓄尿構成要素のある、良性前立腺肥大症に伴う下部尿路症状(LUTS/BPH)の改善のため、男性患者に(R)-5-(2-{[2-(2-エトキシフェノキシ)エチル]アミノ}プロピル)-2-メトキシベンゼン-1-スルホンアミド(タムスロシン)又はその医薬的に許容できる塩と、(1S)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸(3R)-キヌクリジン-3-イルエステル(ソリフェナシン)又はその医薬的に許容できる塩とを併用することを提供する。
広範な研究後、本発明者らは、(R)-5-(2-{[2-(2-エトキシフェノキシ)エチル]アミノ}プロピル)-2-メトキシベンゼン-1-スルホンアミド又はその医薬的に許容できる塩と、(1S)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸(3R)-キヌクリジン-3-イルエステル又はその医薬的に許容できる塩との併用が、実質的な畜尿症状のある、前立腺肥大症に伴う下部尿路症状(LUTS/BPH)に苦しむ男性患者の畜尿症状を改善するための薬物の調製のため、それぞれ総I-PSSスコア(LUTS/BPH)並びに排尿数/日及び切迫エピソード数/日(畜尿症状)を利用して診断した場合に有益であることを実証した。
本発明者らはさらに驚くべきことに、特にタムスロシン塩酸塩とソリフェナシンコハク酸塩の併用が、実質的な畜尿構成要素のない、良性前立腺肥大症に伴う下部尿路症状を有する男性患者には、同じ組合せが効果を及ぼさないか又は効果が低下さえすることを示すのを見い出した。
タムスロシン又はその塩は、アドレナリンα受容体拮抗薬(米国特許第4,703,063号;特許文献1)として知られており、その化学構造を以下に示す。タムスロシンは、YM617としても知られている。
Figure 0005792067
本発明の医薬組成物の有効成分であるタムスロシン又はその医薬的に許容できる塩は、例えば、上記特許文献1に記載の方法によって、又は当業者に明らかな方法によって、又はそのいずれの変形によっても容易に入手可能である。
好ましくは第1の活性成分として(R)-5-(2-{[2-(2-エトキシフェノキシ)エチル]アミノ}プロピル)-2-メトキシベンゼン-1-スルホンアミド塩酸塩又はタムスロシン塩酸塩を使用する。
治療すべき集団に応じて、この活性成分を0.2mg又は0.4mgの量で使用することができる。通常、この活性成分は放出調節製剤内に、例えばカプセル中の被覆顆粒の形態(OMNIC(登録商標)又はHARNAL(登録商標)カプセル剤として商業的に入手可能)又は被覆マトリックス錠剤の形態(OMNIC OCAS(登録商標)錠剤として商業的に入手可能)で含められる。或いは、併用組成物の放出調節部分内に活性成分を組み込むことができる。
ソリフェナシン又はその塩は、ムスカリン受容体拮抗薬として知られており(国際出願公開第WO96/20194号;特許文献2)、その化学構造を以下に示す。ソリフェナシンはYM905としても知られている。
Figure 0005792067
本発明の医薬組成物の有効成分であるソリフェナシン又はその医薬的に許容できる塩は、例えば、上記特許文献2に記載の方法によって、又は当業者に明らかな方法によって、又はそのいずれの変形によっても容易に入手可能である。
好ましくは、第2の成分として、(1S)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸(3R)-キヌクリジン-3-イルエステルコハク酸塩又はソリフェナシンコハク酸塩を使用する。
治療すべき集団に応じて、この活性成分を2.5mg、5.0若しくは10.0mgの量又は3mg、6mg若しくは9mgの量で使用することができる。この活性成分は、例えばコーティング錠剤(VESICARE(登録商標)錠剤として商業的に入手可能)の形態の即時放出剤形内、又は併用剤形の即時放出部分内に組み込まれる。
「タムスロシン又はその医薬的に許容できる塩」及び「ソリフェナシン又はその医薬的に許容できる塩」における「医薬的に許容できる塩」は、それぞれ上記特許文献1又は上記特許文献2に記載の塩と同一である。それらの具体例は、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、及びリン酸、又は有機酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジトルオイル酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、アスパラギン酸、及びグルタミン酸との付加塩、並びに無機塩基、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウムとの塩、又は有機塩基、例えばメチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、リシン、及びオルニチンとの塩、並びに種々のアミノ酸及びアミノ酸誘導体、例えばアセチルロイシンとの塩、アンモニウム塩などである。
さらに、「タムスロシン又はその医薬的に許容できる塩」及び「ソリフェナシン又はその医薬的に許容できる塩」における「医薬的に許容できる塩」は種々の水和物、溶媒和物及び多形晶質(polymorphic crystalloid)であってよく、全て本発明に従って用いられる医薬組成物の調製用の活性成分として含まれる。本発明は、本発明に従って用いられる医薬組成物の調製のための放射性又は非放射性同位元素標識化合物の使用をも包含する。
第1の活性成分タムスロシン塩酸塩及び第2の活性成分ソリフェナシンコハク酸塩を含む上記生成物は、キットの一部を形成してもよい。
本発明は、(R)-5-(2-{[2-(2-エトキシフェノキシ)エチル]アミノ}プロピル)-2-メトキシベンゼン-1-スルホンアミド又はその医薬的に許容できる塩の、実質的な畜尿構成要素のある、前立腺肥大症に伴う下部尿路症状(LUTS/BPH)を有する男性患者の畜尿症状を改善するための(1S)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸(3R)-キヌクリジン-3-イルエステル又はその医薬的に許容できる塩を含む薬物と同時又は逐次投与される薬物の調製のための使用を提供する。
さらに、本発明は、(1S)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸(3R)-キヌクリジン-3-イルエステル又はその医薬的に許容できる塩の、実質的な畜尿構成要素のある、前立腺肥大症に伴う下部尿路症状(LUTS/BPH)を有する男性患者の畜尿症状を改善するための(R)-5-(2-{[2-(2-エトキシフェノキシ)エチル]アミノ}プロピル)-2-メトキシベンゼン-1-スルホンアミド又はその医薬的に許容できる塩を含む薬物と同時又は逐次投与される薬物の調製のための使用を提供する。
また、本発明は、(R)-5-(2-{[2-(2-エトキシフェノキシ)エチル]アミノ}プロピル)-2-メトキシベンゼン-1-スルホンアミド又はその医薬的に許容できる塩及び(1S)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸(3R)-キヌクリジン-3-イルエステル又はその医薬的に許容できる塩の、実質的な畜尿構成要素のある、前立腺肥大症に伴う下部尿路症状(LUTS/BPH)を有する男性患者の畜尿症状を改善するための多剤混合薬(fixed-dose combination)組成物の調製のための使用を提供する。
有利には、(R)-5-(2-{[2-(2-エトキシフェノキシ)エチル]アミノ}プロピル)-2-メトキシベンゼン-1-スルホンアミド塩酸塩又はタムスロシン塩酸塩を0.4mgの量で使用し、かつ(1S)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸(3R)-キヌクリジン-3-イルエステルコハク酸塩又はソリフェナシンコハク酸塩を3mg、6mg又は9mg、好ましくは6mg又は9mgの量で使用する、多剤混合薬組成物内でこれらの2つの活性成分をで使用する。
タムスロシン又はその医薬的に許容できる塩及びソリフェナシン又はその医薬的に許容できる塩で一般的に採用される方法によって、通常の製剤用の担体、賦形剤、又は他の添加剤と共に、本発明に従って用いる医薬組成物を調製することができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤などの形態で経口投与することができ、或いは関節内、静脈内、又は筋肉内注射、座剤、点眼液、眼軟膏剤、経皮液剤、経皮軟膏剤、経皮吸収パッチ、経粘膜液剤、経粘膜パッチ、又は吸入剤の形態で非経口投与することができる。好ましい態様として経口投与を挙げることができる。
経口投与用の固体組成物として、錠剤、散剤、顆粒剤などを使用する。これらの固体組成物では、有効成分を少なくとも1種の不活性な賦形剤などと混合する。組成物は、常法に従って不活性な添加剤、例えば滑沢剤、崩壊剤、安定剤、又は可溶化剤を含んでよい。必要ならば、錠剤及び丸剤を糖又は胃コーティングフィルム若しくは腸溶コーティングフィルムで被覆してよい。
経口投与用の液体組成物は、医薬的に許容できる乳化剤、可溶化剤、懸濁剤、シロップ剤、又はエリキシル剤などを含む。それらは、一般的に採用される不活性な希釈剤、例えば精製水又はエタノールを含んでもよい。これらの液体組成物は、不活性な希釈剤に加えて、アジュバント、例えば可溶化剤、加湿剤(humidifier)若しくは懸濁液、又は甘味料、香味料、芳香剤、又は防腐剤を含んでもよい。
非経口投与用の注射剤は、無菌の水性若しくは非水性可溶化剤、懸濁剤、又は乳化剤を含む。水性溶媒として、例えば注射用蒸留水又は生理食塩水が挙げられる。該組成物は、等張剤、防腐剤、加湿剤、乳化剤、分散剤、安定化剤又は可溶化剤をさらに含んでよい。例えば、細菌保持フィルターを通すろ過、滅菌剤(sterilizer)の添加、又は照射によって、これらを滅菌することができる。無菌的に固体組成物を調製してから注射用の滅菌水又は滅菌溶媒にそれらを可溶化又は懸濁させることによって、これらを調製してもよい。
局所製剤には、軟膏剤、硬膏剤、クリーム、ゼリー、湿布(epithem)、噴霧剤(nebula)、ローション剤、点眼液又は眼軟膏剤などがある。それらは、常用される軟膏基剤、ローション基剤、水性若しくは非水性液剤、懸濁剤、乳化剤などを含む。
吸入剤又は経皮剤などの経粘膜剤は、固体、液体、又は半固体を利用し、かつ常法でそれらを調製することができる。例えば、既知の賦形剤、又はさらに、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、潤沢剤、安定剤、若しくは増粘剤を適宜添加してよい。吸入又はガス注入用の適切な装置で薬物投与を助けてよい。例えば、前計測吸入装置又は噴霧器などの既知装置を使用することによって、化合物を単独又は散剤中の処方混合物として、或いは溶液又は懸濁液中で医薬的に許容できる担体と組み合わせて投与することができる。乾燥散剤吸入器は、乾燥散剤又は散剤含有カプセル剤の単回投与又は複数回投与用であってよく、或いは噴霧剤としてクロロフルオロアルカン、ヒドロフルオロアルカン、又は二酸化炭素などの適切なガスを利用する加圧エアロゾル噴霧器で補助されるものであってよい。
2種の薬物を同時に投与するか、一方の直後に他方を投与するか、又は2種の薬物を所望の時間間隔で投与することによって、本発明の併用投与を達成し得る。同時に投与する場合、両有効成分が含まれる単回剤形である併用組成物で2種の薬物を投与するか、又はそれぞれ有効成分を含む2つの別々の製剤を同時に投与してよい。
タムスロシン塩酸塩とソリフェナシンコハク酸塩の2種の活性成分の併用は、良性前立腺肥大症に伴う下部尿路症状(LUTS/BPH)を有する患者であって、下部尿路症状の重症度が13以上の総I-PSSスコアによって特徴づけられ、かつ実質的な畜尿症状が≧8回の排尿/日及び≧1、好ましくは≧2、さらに好ましくは≧3回の切迫エピソード/日として特徴づけられている患者の症状を改善するのに特に有用である。さらに詳しくは、患者は、PPIUSに準拠してグレード3又は4として特徴づけられる切迫エピソードを有する。(PPIUSはPatient Perception of Intensity and Urgency Scale(切迫強度の患者知覚スケール)の略語であり、0〜4に及び、グレード3及び4は重度の切迫及び切迫失禁を意味する。PPIUSは、排尿毎に患者が感じる切迫度を評価する場合に欧州医薬品委員会(Committee for Proprietary Medical Products)によって推奨されている。)
切迫感を評価するためのPPIUSは以下のとおりである。
Figure 0005792067
さらに詳しくは、上述した第1の活性成分及び第2の活性成分の併用は、症状が13以上のI-PSSの総スコアによって特徴づけられ、かつ実質的な畜尿症状が≧8回の排尿/日、≧2回のグレード3及び4(PPIUS)の切迫エピソード/日並びに4〜15mL/秒のQmaxとして特徴づけられている男性患者のBPHに伴う下部尿路症状を改善するために非常に有用であることが分かった。
国際前立腺症状スコア(International Prostate Symptom Scoring)(I-PSS)は、上述した下部尿路症状の重症度を評価するための判断基準の1つであり、以下の質問への返答を点数化して重症度を判断するために使われる。
(1)過去1カ月間、排尿後に残尿感を抱いたことがありますか?
(2)過去1カ月間、排尿後2時間以内に再び排尿しなければならないことがありますか?
(3)過去1カ月間、断尿を経験したことがありますか?
(4)過去1カ月間、排尿をあとに延ばすのが困難なことに気づいたことがありますか?
(5)過去1カ月間、尿流が弱かったことがありますか?
(6)過去1カ月間、排尿しようと力まなければならなかったことがありますか?
(7)過去1カ月間、就寝後、朝起きるまでに典型的に何回排尿するために起なければならなかったですか?
これらの質問から、(1)〜(6)に対する返答を、全く返答がなければ0と、5中1未満であれば1と、2中1未満であれば2と、2中約1であれば3と、2中1を超えれば4と、ほとんどいちもであれば5と点数化し、(7)への返答は、返答がなし、1回、2回、3回、4回、及び5回以上だった場合、それぞれ0、1、2、3、4、及び5と点数化する。
指標(1)、(3)、(5)、及び(6)は、排尿症状を評価するための指標であり、(2)、(4)、及び(7)は、畜尿症状を評価する指標である。
総I-PSSスコアが13以上の患者は、本発明の方法に従って治療するのに十分重症であると診断される。しかし、実質的な畜尿構成要素が存在すべきであり、そうでなければ患者はタムスロシン塩酸塩とソリフェナシンコハク酸塩の併用から利益を得ないだろう。
以下の実施例は、さらに本発明を実証する。
単純盲検の2週間のプラセボ導入期間後、ランダム化二重盲検の並行群のプラセボ制御12週間の治療期間の多施設用量範囲探索研究(multi-center dose-ranging study)では、≧3カ月間、排尿症状(膀胱の残尿感、間欠性、弱流又は躊躇など)及び畜尿症状(頻尿、切迫尿、夜間多尿など)のある、BPHに伴うLUTSを有する男性患者(彼らの症状の重症度は、排尿体積≧120mLで、≧13の総国際前立腺症状スコア(I-PSS)及び≧4.0mL/秒かつ≦15.0mL/秒の最大尿流率によって特徴づけられる)を下記8つの治療の1つにランダム化した。
・プラセボ、
・放出調節OCAS製剤(OMNIC OCAS(登録商標)錠剤として商業的に入手可能)中0.4mgのタムスロシン塩酸塩の単剤療法、
・即時放出錠剤製剤中それぞれ3、6、又は9mgのソリフェナシンコハク酸塩の単剤療法、
・放出調節OCAS製剤(OMNIC OCAS(登録商標)錠剤として商業的に入手可能)中0.4mgのタムスロシン塩酸塩を即時放出錠剤製剤中それぞれ3、6、又は9mgのソリフェナシンコハク酸塩と組み合わせた併用療法。
プラセボ導入期間じゅう、被験者は1日1回2つのプラセボ錠剤を摂取した。12週間の二重盲検治療期間じゅう、被験者は1日1回2つの錠剤(タムスロシン塩酸塩OCAS 0.4mg又はプラセボ及びソリフェナシンコハク酸塩3、6若しくは9mg又はプラセボ)を摂取した。研究薬物は、朝に食物と共に又は食物なしで経口摂取された。薬物は1杯とと共に摂取され、丸ごと嚥下された。
(効力分析結果)
ベースライン畜尿症状の重症度に基づいて亜集団に関して分析を行なった。調査した亜集団は、1日の排尿頻度≧8並びに1日当たりそれぞれ≧1、2又は3回のグレード3及び4(PPIUS)の切迫エピソードを有する畜尿症状亜群1、2及び3だった。第4の亜群は、そのベースライン症状が畜尿症状亜群1の判断基準を満たさない制限された畜尿症状亜群だった。総切迫スコア、1日当たりの全切迫グレード(PPIUS)の平均和を新しいパラメーターとして加えた。
(I-PSSデータの要約)
制限された畜尿症状亜群と畜尿症状亜群の間には逆の治療効果が見られた。
・タムスロシンOCASのみ組み合わせて高用量のソリフェナシンを使用すると、制限された畜尿症状亜群ではI-PSSスコアについて悪化が見られたが、畜尿症状亜群1、2及び3は、改善への非統計的に有意な傾向を示した。
・タムスロシン単剤療法に対して併用治療を利用すると、全ての亜群でI-PSS排尿スコアの悪化が見られた。制限された畜尿症状亜群では、ソリフェナシンの薬用量を増やし、かつタムスロシンの存在下で唯一の統計的に有意な勾配があった(p=0.0006)。
・I-PSS畜尿スコアについては、畜尿症状のある3つ全ての亜群は、単剤療法に対する3つの異なる併用治療群で、かつ用量反応において統計的に有意な改善を示したが(それぞれp=0.0016、p<0.0001、p=0.0006)、制限された畜尿症状亜群は、統計的に有意でない悪化傾向を示した。
・畜尿症状のあ3つ全ての亜群は、タムスロシンOCASのみに比べてソリフェナシン-タムスロシンOCAS併用療法によって、I-PSS QoLスコアの統計的に有意な改善傾向を示したが(それぞれp=0.0094、p=0.0008及びp=0.0106)、制限された畜尿症状亜群は、統計的に有意な悪化傾向を示した(表2参照)。
Figure 0005792067
Sol dose=タムスロシンOCAS 0.4mgと組み合わせたmgでのソリフェナシンの薬用量;
左列は差異、右列は有意なp値;n=いずれかの用量のソリフェナシンの関連データを有する亜群内の被験者の総数;
*統計的に有意(p<0.05);
↑改善を示す統計的に有意な勾配;↓悪化を示す統計的に有意な勾配(p<0.05)
(排尿日誌データの要約)
・畜尿症状亜群2及び3は、タムスロシンOCASのみに対してタムスロシンOCASにソリフェナシンを加えた場合、全パラメーターについて統計的に有意な用量関連改善を示した。ソリフェナシン6mg−タムスロシンOCAS併用群は、全パラメーターについて統計的に有意な改善を示し、ソリフェナシン9mg−タムスロシンOCAS併用群は、総切迫スコア、頻度及び排尿体積について統計的に有意な用量関連改善を示した(表3参照)。
・タムスロシンのみに対してソリフェナシン−タムスロシンOCAS併用治療を利用した場合、畜尿症状亜群2及び3ではグレード3及び4(PPIUS)の切迫エピソードの統計的に有意な用量関連改善が見られた(それぞれ、p=0.0128及びp=0.0241)。6mgのソリフェナシン−タムスロシンOCAS併用治療群についても畜尿症状のある3つの亜群では、タムスロシン単剤療法に対して統計的に有意な改善があった。
・総切迫スコアについては、畜尿症状のある3つの亜群で統計的に有意な改善があり(それぞれ、p=0.0013、p=0.0004及びp=0.0038)、畜尿症状のある3つの亜群でタムスロシンOCAS単剤療法に対して6mgと9mgの両方のソリフェナシン−タムスロシンOCAS併用治療群について統計的に有意な改善があった。
・畜尿症状のある3つの亜群は、頻度について統計的に有意な用量関連改善を示し(それぞれ、p=0.0004、p=0.0003及びp=0.0032)、3種全ての薬用量のソリフェナシン−タムスロシンOCAS併用治療群がタムスロシンOCAS単剤療法に対して統計的に有意な改善を示した。
・ソリフェナシンをタムスロシンOCASに添加すると、排尿体積は、4つ全ての亜群でタムスロシンOCAS単剤療法に対して統計的に有意な用量関連改善を示し(それぞれ、p<0.0001、p=0.0003、p=0.0042及びp=0.0067)、かつ4つ全ての亜群でタムスロシンOCAS単剤療法に対して9mgのソリフェナシン−タムスロシンOCAS併用治療群も統計的に有意な改善を示した。
畜尿症状亜群1の陽性結果は、主に畜尿症状亜群2の陽性結果によって推進された。
Figure 0005792067

Claims (12)

  1. 0.4mgの(R)-5-(2-{[2-(2-エトキシフェノキシ)エチル]アミノ}プロピル)-2-メトキシベンゼン-1-スルホンアミド又はその医薬的に許容できる塩を含有する、≧8回の排尿/日及び≧1回のグレード3又は4(PPIUS)の切迫エピソード/日によって特徴づけられる畜尿構成要素のある、13以上の総I-PSSスコアによって特徴づけられかつ前立腺肥大症に伴男性患者の下部尿路症状(LUTS/BPH)の治療用の(1S)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸(3R)-キヌクリジン-3-イルエステル又はその医薬的に許容できる塩を含む薬物5〜10mgと同時又は逐次投与される医薬組成物。
  2. 前記(R)-5-(2-{[2-(2-エトキシフェノキシ)エチル]アミノ}プロピル)-2-メトキシベンゼン-1-スルホンアミド又はその医薬的に許容できる塩が(R)-5-(2-{[2-(2-エトキシフェノキシ)エチル]アミノ}プロピル)-2-メトキシベンゼン-1-スルホンアミド塩酸塩である、請求項1に記載の医薬組成物。
  3. (R)-5-(2-{[2-(2-エトキシフェノキシ)エチル]アミノ}プロピル)-2-メトキシベンゼン-1-スルホンアミド塩酸塩が、放出調節製剤内又は併用組成物の放出調節部分内に含まれる、請求項2に記載の医薬組成物。
  4. 前記(1S)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸(3R)-キヌクリジン-3-イルエステル又はその医薬的に許容できる塩が、(1S)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸(3R)-キヌクリジン-3-イルエステルコハク酸塩ある、請求項1乃至3のいずれかに記載の医薬組成物。
  5. (1S)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸(3R)-キヌクリジン-3-イルエステルコハク酸塩5.0mg、6mg、9mgまたは10.0mgの量で使用する、請求項4に記載の医薬組成物。
  6. (1S)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸(3R)-キヌクリジン-3-イルエステルコハク酸塩を6mg又は9mgの量で使用する、請求項4に記載の医薬組成物。
  7. (1S)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸(3R)-キヌクリジン-3-イルエステルコハク酸塩が即時放出製剤内又は併用組成物の即時放出部分内に含まれる、請求項4、5又は6に記載の医薬組成物
  8. (R)-5-(2-{[2-(2-エトキシフェノキシ)エチル]アミノ}プロピル)-2-メトキシベンゼン-1-スルホンアミド又はその医薬的に許容できる塩及び(1S)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸(3R)-キヌクリジン-3-イルエステル又はその医薬的に許容できる塩が、多剤混合薬組成物中に含まれている、請求項1乃至7のいずれかに記載の医薬組成物。
  9. 前記(R)-5-(2-{[2-(2-エトキシフェノキシ)エチル]アミノ}プロピル)-2-メトキシベンゼン-1-スルホンアミド又はその医薬的に許容できる塩が(R)-5-(2-{[2-(2-エトキシフェノキシ)エチル]アミノ}プロピル)-2-メトキシベンゼン-1-スルホンアミド塩酸塩0.4mgであり、かつ前記(1S)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸(3R)-キヌクリジン-3-イルエステル又は医薬的に許容できる塩が(1S)-1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボン酸(3R)-キヌクリジン-3-イルエステルコハク酸塩5mg、6mg、9mg、または10.0mgである、請求項8に記載の医薬組成物。
  10. 前記畜尿構成要素が、≧8回の排尿/日及び≧2回のグレード3及び4(PPIUS)の切迫エピソード/日によって特徴づけられている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  11. 前記畜尿構成要素が、≧8回の排尿/日及び≧3回のグレード3及び4(PPIUS)の切迫エピソード/日によって特徴づけられている、請求項10に記載の医薬組成物。
  12. 前記畜尿構成要素が、≧8回の排尿/日、≧2回のグレード3及び4(PPIUS)の切迫エピソード/日並びに4〜15mL/秒のQmaxによって特徴づけられている、請求項10〜11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
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