JP5791109B2 - 2電極プラズマトーチによる溶接方法 - Google Patents

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Description

本発明は、2個の電極配置空間と各電極配置空間にそれぞれが連通する2個のノズルとを有するインサートチップを備えた2電極プラズマトーチを用いて、2個のノズルの並び方向を溶接線と平行にして、トーチと溶接対象材の少なくとも一方を溶接線に沿う方向に走行駆動しつつ、各電極配置空間にある各電極でプラズマアークを発生して溶接する、2電極プラズマトーチによる溶接方法に関する。
従来の1電極トーチによるプラズマアーク溶接のプラズマアークの横断面は略円形である。板厚3mm未満ではプラズマアークによるキーホール溶接は不可能なため、なめ付け溶接(熱伝導型溶接)を採用するが、キーホール溶接及びなめ付け溶接では、高速化すると、
イ)アンダーカットが発生し、
ロ)なめ付け溶接では、広幅ビードによる高温割れが発生しやすい。高速溶接では電流が高電流で広幅アークとなるため、広幅浅溶け込みのビード形状となって、凝固時に高温割れが発生しやすい。
従来の1電極トーチによるプラズマアーク溶接では、3〜10mmの板厚でキーホール溶接を高速化すると、ビード形状が、中央部が盛り上がった凸形状で縁部が下がったアンダーカットができるため、高速化が難しい。2本トーチによるワンプール高速化もあるが、ワンプールとするにはトーチ同士を大きく傾けなければならず、引き合うアーク力と傾けたことによる磁気吹きで、アークが乱れやすく、不安定であった。
そこで本発明者等は、安定したアークで高温割れやアンダーカットのない高速溶接を実現することができるインサートチップおよびこれを用いるプラズマトーチを提供した(特許文献1)。裏波形成しながらの溶接法には、キーホール溶接となめ付け溶接があるが、以後の説明では便宜上、裏波形成はキーホール溶接で表すものとする。
特許文献1のプラズマトーチは、2個の電極配置空間と、同一直径線上に分布し各電極配置空間にそれぞれが連通し前記直径線と平行な溶接線に対向して開いた2個のノズルと、を備えるインサートチップおよび該チップを装備し各電極配置空間に各電極を挿入したプラズマトーチである。このプラズマトーチによれば、2つのアークで1つの溶融プールを形成する、ワンプール2アークの溶接をすることができる。プラズマアークの横断面は、溶接の進行方向(y)に長細い熱源となるため、熱量に対するビード幅(x方向)は狭く抑えられ、高速化しても、高温割れが発生しない。また、ワンプール2アークとすることで、後行プラズマアークによる再溶融により表ビードを平らにする(なめ付けする)ことができる。
ある程度距離を離した2本のプラズマトーチを用いる並行溶接でやや類似の効果を得ることは出来るが、溶接の進行方向のアーク間隔が広くなるため、短い溶接長のワーク(母材:溶接対象材)では、同一パスでの溶接が不可能であり、二パス溶接が必要となり、高速化は難しい。また、アーク間隔が広いため、後行アークは一度凝固したビードを再溶融しなければならず、後行溶接に高入熱が必要である。特許文献1の2電極プラズマトーチを用いるとキーホール溶接となめ付け溶接を同時に行えるので、一度の溶接ですみ、手数がかからず、しかも、キーホール溶接による溶融プールが冷める前になめ付け溶接を行うので、少ない溶接入熱ですみ、省エネ効果がある。
ところで1個のインサートチップで2アークのプラズマアーク溶接ではインサートチップに加わる熱負荷が大きくなる。より高速化するためには、インサートチップの冷却能力を向上する必要がある。
そこで本発明者等は、安定したアークで高温割れやアンダーカットのない溶接をより高速で行うことができる、冷却能力が高いインサートチップを提供した(特許文献2)。このインサートチップは、2個の電極配置空間と、各電極配置空間にそれぞれが連通する2個のノズルおよび該2個のノズルの中間点で該2個のノズルが分布する平面に対して交差する平面にあって冷却水が折り返すV型の冷却水流路を備える。これにより、チップ先端面(母材対向面)近くで冷却水が円滑に折返し、局所的に水あるいは泡が滞留することはなく、チップの冷却能力が高い。チップ端面に対して斜めにしかも先端部で交わるように穴開けすることでV型の冷却水流路を安価に形成できる。よって、溶接電流を大きくしてより高速に溶接を行うことができる。特許文献2にはさらに、チップ基体に1対のノズル部材を着脱可に結合したインサートチップも提示した。これによれば、高熱によりノズル部材の下端のノズル部分が変形又は熔損したとき、該ノズル部材を新品と取り替えて、チップ基体はそのまま使用して、メンテナンスコストを安くすることができる。
また、インサートチップの損耗交換コストを低減するため、本発明者等は、中央にノズルが開いた笠部,該笠部に連続する幹部および該幹部に連続する雄ねじ部があって、前記幹部と雄ねじ部の間にシール材があり、内部に前記ノズルに連通する電極配置空間がある、2個のノズル部材を、インサートチップ基体に対して着脱可としたインサートチップを提供した(特許文献3)。高熱によりノズル部材の下端のノズル部分が変形又は熔損したとき、該ノズル部材を新品と取り替えて、チップ基体はそのまま使用して、メンテナンスコストを安くすることができる。
ところが、2電極プラズマトーチの2個のノズルの並び方向を溶接線と平行にして、該トーチと溶接対象材の少なくとも一方を溶接線に沿う方向に走行駆動する2電極プラズマ溶接では例えば、図19の(a)に示すように、溶接方向y(溶接線が延びる方向)で先行して溶接線に作用する先行極(ノズル部材20bの内部の電極棒12b:図2)が発生するプラズマアーク19bで溶接対象材31a,31b間の突き当て端面(溶接線)の上側の表面を予熱し、溶接方向yで後行して溶接線に作用する後行極(ノズル部材20aの内部の電極12a:図2)が発生するプラズマアーク19aで溶接線をキーホール溶接する態様では、先行のノズル部材20bと後行のノズル部材aとの距離と溶接方向yのノズル角度に対応する予熱タイムラグにより、溶接線の始端部で入熱不足による裏波形成不足(残し)を生じやすい。この入熱不足(裏波形成不足:残し)は、図19の(b)に示すように、溶接速度が高いほど大きい。
また例えば、図18の(a)に示すように、溶接方向y(溶接線が延びる方向)で先行して溶接線に作用する先行極が発生するプラズマアークで溶接線をキーホール溶接し、後行極が発生するプラズマアークで溶接線を加熱(なめ付け)する態様では、先行のキーホール溶接で生成した溶融プールの溶融金属が後行のなめ付けプラズマアークのプールに吸い込まれて、キーホール溶接部となめ付け溶接部との間Aで先行極側から後行極側への溶融金属の流動があり、溶接線の後端部では減肉状態で溶接が終わる。
すなわち、2電極プラズマトーチによる溶接では、溶接対象材の先端(溶接線の始端),後端(溶接線の終端)で溶接不良を生じ易い。溶接による連続造管では、溶接始端および終端は切除するので、始端,終端の溶接不良は格別な問題とはならないが、短尺材の場合は、始端,終端の切除は、素材の歩留りを悪くするばかりでなく、切除作業が加わる分、コスト高になる。
そこで本発明者等は、溶接対象材の端部における溶接不良を改善するために、2個の電極配置空間(2a,2b)と各電極配置空間にそれぞれが連通する2個のノズルとを有するインサートチップを備えた2電極プラズマトーチを用いて、2個のノズルの並び方向を溶接線と平行にして、該トーチと溶接対象材の少なくとも一方を溶接線に沿う方向に走行駆動しつつ、各電極配置空間にある各電極でプラズマアークを発生して溶接線を溶接する、2電極プラズマトーチによる溶接方法において、
(1)各電極の一方を、溶接線の延びる方向で先行する電極すなわち先行極として溶接対象材を予熱するプラズマアーク発生に設定し、他方を、後行する電極すなわち後行極として裏波形成溶接のプラズマアークに設定し、裏波形成溶接に設定した後行極が溶接対象材の先端以前にあるときに、該後行極による裏波形成溶接のプラズマアークを起動し、前記先行極のプラズマアークは、裏波形成溶接のプラズマアーク発生と同時又はその前に起動し、先行の又は同時のプラズマアークの起動と同時又は該起動の後に走行駆動を開始し、先行極および後行極のプラズマアークは、各極が溶接対象材の後端以降にあるときに停止する、2電極プラズマトーチによる溶接方法,および、
(2)各電極の一方を、溶接線の延びる方向で先行する電極すなわち先行極として裏波形成溶接のプラズマアークに設定し、他方を、後行する電極すなわち後行極として溶接線をなめ付けするプラズマアークに設定し、先行極による裏波形成溶接のプラズマアークを起動し、後行極のプラズマアークは、裏波形成溶接のプラズマアークの起動と同時又は溶接対象材の先端にあるときに起動し、先行の又は同時のプラズマアークの起動と同時又は該起動の後に走行駆動を開始し、先行極および後行極のプラズマアークは、各極が溶接対象材の後端以降にあるときに停止する、2電極プラズマトーチによる溶接方法、を提示した(特許文献4)。
上記(1)によれば、先行極/後行極間距離相当の予熱タイムラグ(図19の(b))を生ずるが、この予熱の無い冷えた鋼板区間は、走行駆動の速度を低くすることにより、溶接対象材先端での裏波形成不良を少なくできる。予熱タイムラグ区間を過ぎると先行極の予熱効果により後行極での鋼板は溶け易くなり走行駆動速度を上げて、溶接の生産性を高くすることができる。溶接対象材の後端は低速,低電流のクレータ処理により、高速,高電流で後行の裏波形成アーク(例えばキーホールアーク)の後方に長く延びた溶融プールを短くし、後方に流れていた溶湯を後行裏波アーク側に引き戻すことで、後端表面の窪みを平坦に修正して、後端不良を少なく出来る。これらにより、溶接対象材の先端,後端の素材の歩留りをよくすることができる。
先行極(予熱用)が溶接対象材の先端にあるときに先行極(予熱用)にプラズマアーク(予熱)を起動することにより、先行極/後行極間距離相当の予熱タイムラグ(図19の(a))による溶接対象材先端での裏波形成不良(図19の(b))を回避できる。後行極によりキーホールが形成されると先行局の予熱効果により後行極での鋼板は溶け易くなり走行駆動速度を上げることにより、溶接の生産性を高くすることができる。溶接対象材の後端は低速,低電流のクレータ処理により、高速,高電流で後行の裏波形成アークの後方に長く延びた溶融プールを短くし、後方に流れていた溶湯を後行裏波アーク側に引き戻すことで、後端表面の窪みを平坦に修正して、後端不良を少なくできる。これらにより、溶接対象材の先端,後端の素材の歩留りをよくすることができる。
上記(2)によれば、溶接対象材の先端から後端に渡って、後行極のパイロットガス流量が少なく電流も低いソフトなプラズマアークで、先行の裏波形成アークのすぐ後方近傍で表面のみアーク溶融することで溶接表面がなめ付けされて、高速溶接でも、アンダーカットの少ない表面ビードが得られる。後行極が溶接対象材の先端に達すると先行極のプラズマアーク電流を高く切換え同時に走行駆動速度を上げることにより、先端部の裏波溶接の残し(図19の(b))を少なくし溶接の生産性を高くすることができる。
しかし、溶接対象材の先端,後端の素材の歩留りがかなり改善し溶接の生産性をかなり高くすることができるが、後端のアンダーカットの抑制は、改善があるものの更に効果的に抑制することが望まれる。そこで後端のアンダーカット発生について研究して次の知見を得た。
図21の(a)に示す2電極プラズマトーチ30によるプラズマ溶接中(定常状態)では、プラズマアークを周回する磁束が発生するが、図上に点線で示す溶融プールおよびその近傍は、磁気変体温度(約730°C)以上の高温であって磁束は通り難いので、周回磁束は図21の(b)に示すように、後行極(T)の後方でプラズマフレームから遠くなる。しかし、2電極ともにプラズマアーク電流が流れるので、2電極のプラズマフレーム(アーク電流)が相互に引き合っており、後行極(T)のプラズマフレームは溶接の進行方向yに引かれている。溶接ビードは図21の(c)に示すように、アンダーカットの無いものとなる。
ところが、トーチ30が溶接対象材の後端位置となり、図22の(a)に示すように、先行極(L)が溶接対象材の後端より前方となって先行極のアークが停止すると、後行極のプラズマフレームを周回する磁束は、図22の(b)に示すように後行極のプラズマフレームによって発生するものだけになる。後行極のプラズマフレームは、先行極のプラズマフレームによる引きがなくなり、自己のプラズマフレームが発生する周回磁束との相互作用により、後行極(T)の後方に振れる。このプラズマフレームの後方偏向により、溶融プール中央を上に押し上げる。これにより表面ビードが後方に長細くなる為、ビード両サイドの湯(溶融金属)はビード中央に吸い寄せられて、ビード断面が、図22の(c)に示すように、アンダーカットの深い形状となる。このアンダーカットは、溶接部の強度を下げるので問題となり得る。
ところで、鉄製品あるいは鉄部材の連続生産ラインでは、溶接対象材(鉄製品あるいは鉄部材)が溶接ステージに次々に移送されてくる。たとえば平板を筒状に曲げたシリンダの製造過程の、筒状に曲げられた元の平板の側面同士の突き当て面の溶接では、各シリンダに溶接前にアークスタート用の先端タブを仮付けすることは生産工程数を増やすことになり、生産効率を下げ生産コストの上昇をもたらす。先端タブを用いないで溶接対象材の溶接始端で溶接アークをスタートする場合は、1つの1電極溶接トーチを用いる場合でも、アークスタートに失敗する可能性があり、また、溶接始端のビード形状が不良になりやすい。この場合には、溶接後に溶接始端を切除する後工程が必要になる。
特に特許文献1に記載の2電極プラズマトーチを用いる場合には、図30に示すように、プラズマアーク電流が形成する磁束が、先行キーホール溶接のプラズマアークPA−L(先行)および後行なめ付け溶接のプラズマアークPA−T(後行)の全体の外側を周回するが、高熱伝導体である銅製の先端タブ113の、溶接対象材Wの溶接始端に先端が当接する舌片部113pが低透磁率であるので、舌片部113pが溶接始端に接する溶接始端領域TP−Aでは、磁束は、後行プラズマアークPA−T側に収束し磁束密度が高い。すなわち磁界が強い。これにより、後行プラズマアークPA−Tが先行プラズマアークPA−Lに近づく方向に強く押されて横振れし、後行のノズル部材20b直下の溶融プールの溶融金属が同方向に強く押されて、溶接始端領域TP−Aで溶接ビードが窪む。溶接が進行して後行プラズマアークPA−Tが溶接始端領域TP−Aから離れると、後行プラズマアークPA−T直近外側の磁束が、溶接対象材の溶接ビートの直下の透磁率が高い固体部および硬化した溶接ビートを通って後行プラズマアークPA−Tから離れるので、後行プラズマアークPA−Tに作用する磁界が低減し、後行プラズマアークPA−Tの横振れが小さくなって、溶接ビードが平坦になる。溶接を終えたシリンダの用途によっては、溶接始端の溶接ビードの上述の窪みが問題になる場合には、そこを切除する後工程が必要になる。
溶接アークの起動を安定して行うために、溶接対象材の溶接始端に先端タブを当てて先端タブ上方に溶接トーチをおいて溶接アークを起動し、アークスタート後に、溶接対象材に対して溶接トーチを、又は、溶接トーチに対して溶接対象材を、相対的に移送して溶接線を溶接することが知られている(例えば特許文献5)。特許文献5には、3個の溶接トーチをタンデムに配列して先端タブ上で同時期にアークスタートさせて同時に同方向に移送して同時に並行して多層の溶接を行う、多電極溶接装置が記載されている。
特開2011− 50982号 特開2012−130965号 特開2012−157868号 特願2011−243218号 特開2012− 61497号
本発明は、2電極プラズマトーチによる溶接において、溶接対象材の尾端のアンダーカット発生を更に抑制することを第1の目的とする。2電極プラズマトーチによる溶接において、溶接対象材の両端部における溶接不良を更に改善することを第2の目的とする。溶接対象材に対する先端タブ着脱を簡易にすることを第3の目的とし、溶接始端領域の溶接ビード形状を良好にすることを第4の目的とする。
(1)2個の電極配置空間(2a,2b)と各電極配置空間にそれぞれが連通する2個のノズル(3a,3b)とを有するインサートチップ(1)を備えた2電極プラズマトーチ(30)を用いて、前記2個のノズルの並び方向を溶接線と平行にして、該2電極プラズマトーチと溶接対象材(31a,31b)の少なくとも一方を溶接線に沿う方向に走行駆動しつつ、各電極配置空間にある各非消耗電極(12a,12b)でプラズマアークを発生して溶接線を溶接する、2電極プラズマトーチによる溶接方法において、
前記溶接対象材(31a,31b)の溶接方向の後端に、プラズマフレーム直下となる位置にスリット又は凹溝がある水冷銅タブでなる後端タブ(39a,39b)を設けて、溶接線の延びる方向で先行する非消耗電極すなわち先行極で予熱プラズマアークを後行する非消耗電極すなわち後行極でキーホールプラズマアークを発生し、又は、先行極でキーホールプラズマアークを後行極でなめ付けプラズマアークを発生し、後行極が前記後端で溶接を終えプラズマアークを停止するまで、先行極のプラズマアークを継続する、ことを特徴とする2電極プラズマトーチによる溶接方法(図7,図9,図11,図14,図16)。
なお、理解を容易にするために括弧内には、図面に示し後述する実施例の対応又は相当要素の記号もしくは対応事項を、例示として参考までに付記した。以下も同様である。
後行極が溶接対象材の後端で溶接を終えプラズマアークを停止するまで、先行極のプラズマアークを継続するので、溶接対象材の溶接を終了するまで、後行極のプラズマフレームと先行極のプラズマフレームとが引き合い、後端での後行極のプラズマフレームの後方偏向を生じないので(図20)、後端で表面ビードが後方に長細くなることはなく、後端部のアンダーカットがなくなる。
(a)は、本発明の2電極プラズマトーチによる溶接方法を実施する溶接装置のシステム構成の一例を示すブロック図であり、溶接対象材である溶接対象材31a,31bに対して2電極プラズマトーチ30を走行駆動する態様を示す。(b)は、2電極プラズマトーチ30に対して溶接対象材31a,31bを走行駆動する態様のブロック図である。 図1に示す2電極プラズマトーチ30の縦断面y−zの拡大図である。 図1に示す2電極プラズマトーチ30の縦断面x−zの拡大図である。 (a)は図2に示す2電極プラズマトーチ30の先端を、IVa−IVa線方向に見上げた底面図、(b)は図3に示すIVb−IVb線方向に見上げた底面図、(c)は図2に示すIVc−IVc線方向に見下ろした横断面図である。 (a)は、図2に示すプラズマトーチの先端のインサートチップおよびインナーキャップ6をトーチ本体から取り外して示す縦断面図、(b)は(a)に示すインサートチップ1のチップ基体とインナーキャップ6のみを示す縦断面図、(c)は、(a)に示すナット25a,25bをノズル部材20a,20bから取り外してノズル部材をインサートチップ1のチップ基体から抜き出しナット25a,25bとともに示す正面図(外観図)である。 (a1)は図5の(c)に示すノズル部材20aの縦断面図、(a2)は該ノズル部材20aの底面図である。(b1)は図2に示すノズル部材20a,20bの一つ又は両方に取り替えてインサートチップ1のチップ基体に装備できる第1変形形態のノズル部材20cの縦断面図、(b2)は該ノズル部材20cの底面図である。(c1)は図2に示すノズル部材20a,20bの一つ又は両方に取り替えてインサートチップ1のチップ基体に装備できる第2変形形態のノズル部材20dの縦断面図、(c2)は該ノズル部材20dの底面図である。 図1の(a)に示す溶接装置を用いる本発明の第1実施例の溶接方法を実施するときの、溶接対象材31a,31bに対する2電極プラズマトーチ30の相対位置を示し、(1)はキーホール溶接を行う後行極を溶接対象材31a,31bの先端において溶接を開始する位置を、(2)は溶接開始時に予熱を行う先行極が対向した位置に後行極が到達し対向する位置を、(3)は定常溶接状態の位置を、(4)は先行極が溶接対象材31a,31bの後端に達する直前の位置を、(5)は後行極が溶接対象材31a,31bの後端に達した位置を、そして(6)は溶接を終了した後に走行駆動を停止した位置を示す。 本発明の第1実施例の溶接方法での、先行極,後行極に対する溶接電流およびプラズマガスの供給量切換えのタイミングおよび停止タイミング、ならびに溶接走行(速度)の停止タイミング、の概要(基本パターン)を示すタイムチャートであり、タイミングT1〜T4はそれぞれ、先行極が図7の(3)〜(6)に示す位置に対応する。 図1の(a)に示す溶接装置を用いる本発明の第2実施例の溶接方法を実施するときの、溶接対象材31a,31bに対する2電極プラズマトーチ30の相対位置を示し、(1)は予熱を行う先行極を溶接対象材31a,31bの始端において溶接を開始する位置を、(2)はキーホール溶接を行う後行極が溶接対象材31a,31bの先端に達した位置を、(3)は定常溶接状態の位置を、(4)は後行極が溶接対象材31a,31bの後端に達した位置を、そして(5)は溶接を終了した後に走行駆動を停止した位置を示す。 本発明の第2実施例の溶接方法での、先行極,後行極に対する溶接電流およびプラズマガスの停止タイミングならびに溶接走行(速度)の停止タイミングの概要(基本パターン)を示すタイムチャートであり、タイミングT1〜T3はそれぞれ、先行極が図9の(3)〜(5)に示す位置に対応する。 図1の(a)に示す溶接装置を用いる本発明の第3実施例の溶接方法を実施するときの、溶接対象材31a,31bに対する2電極プラズマトーチ30の相対位置を示し、(1)はキーホール溶接を行う先行極を溶接対象材31a,31bの先端において溶接を開始する位置を、(2)は予熱を行う後行極が溶接対象材31a,31bの先端に達した位置を、(3)は定常溶接状態の位置を、(4)は先行極が溶接対象材31a,31bの後端に達する直前の位置を、(5)は後行極が溶接対象材31a,31bの後端直前に達した位置を、そして(6)は溶接を終了した後に走行駆動を停止した位置を示す。 本発明の第3実施例の溶接方法での、先行極,後行極に対する溶接電流およびプラズマガスの供給量切換えのタイミングおよび停止タイミングならびに溶接走行速度の切換えタイミングの概要(基本パターン)を示すタイムチャートであり、タイミングT1〜T4はそれぞれ、図11に示す(3)〜(6)の位置に対応する。 図1の(a)に示す溶接装置および先端,後端タブを用いる本発明の溶接方法を実施するときの、溶接対象材31a,31bに対する2電極プラズマトーチ30の相対位置を示し、(a)は溶接を開始するタイミングでの溶接線の断面を、(b)は溶接線の平面(溶接対象材の表面)を示す。(c)は溶接終了タイミングでの溶接線の断面を示す。 図1の(a)に示す溶接装置を用いる本発明の第4実施例の溶接方法を実施するときの、溶接対象材31a,31bに対する2電極プラズマトーチ30の相対位置を示し、(1)はキーホール溶接を行う先行極を溶接対象材31a,31bの先端において溶接を開始する位置を、(2)は予熱を行う後行極が溶接対象材31a,31bの先端に達した位置を、(3)は定常溶接状態の位置を、(4)は後行極が溶接対象材31a,31bの後端に達した位置を、そして(5)は溶接を終了した後に走行駆動を停止した位置を示す。 本発明の第4実施例の溶接方法での、先行極,後行極に対する溶接電流およびプラズマガスの供給,停止タイミングと供給量切換えのタイミングならびに溶接速度の切換えタイミングの概要(基本パターン)を示すタイムチャートであり、タイミングT1〜T3は、図14に示すタイミングT1〜T3に対応する。 図1の(a)に示す溶接装置を用いる本発明の第5実施例の溶接方法を実施するときの、溶接対象材31a,31bに対する2電極プラズマトーチ30の相対位置を示し、(1)はなめ付け溶接を行う先行極を溶接対象材31a,31bの先端において溶接を開始する位置を、(2)は定常溶接状態の位置を、(3)はキーホール溶接を行う後行極が溶接対象材31a,31bの後端に達した位置を、そして(4)は溶接を終了した後に走行駆動を停止した位置を示す。 本発明の第5実施例の溶接方法での、先行極,後行極に対する溶接電流およびプラズマガスの停止タイミングと溶接走行の停止タイミングの概要(基本パターン)を示すタイムチャートであり、タイミングT1〜T4はそれぞれ、図16に示す(1)〜(4)の位置に対応する。 (a)は、先行極のキーホール溶接のプールの溶融金属が、後行極のなめ付け溶接のプールに吸い込まれる状態を示す、溶接線部位の断面図である。(b)は、吸い込みを防ぐ程度に溶接対象材31a,31bおよび2電極プラズマトーチ30を下進方向へ傾けた状態を示す溶接線部位の断面図である。 (a)は予熱を行う先行極に対してキーホール溶接を行う後行極が離れていることにより、後行極を溶接対象材31a,31bの先端において先行極と同時に溶接を起動する場合の溶接対象材先端部の予熱タイムラグ(予熱不足領域)を示す断面図である。(b)は、予熱タイムラグによるキーホール不良領域(残し)を点線で示す側面図である。 (a)は本発明により、溶接対象材31a,31bの後端に後端タブを設けて、後行極のプラズマフレームが溶接対象材領域にある間は、先行極のプラズマフレームが溶接対象材を外れた後端タブ39a,39bの領域にあるときも、先行極のプラズマアークを継続する、溶接対象材31a,31bに対する2電極プラズマトーチ30の相対位置を示す縦断面図、(b)は(a)上のB−B線断面の溶接ビードを示す横断面図である。 (a)は、2電極プラズマトーチ30が溶接対象材31a,31bの先端と後端の間の定常溶接領域にある間の先行極,後行極のプラズマフレームの相互作用を示す縦断面図、(b)は先行極,後行極のプラズマフレームによって溶接対象材に誘起する磁束の分布を示す平面図、(c)は、(a)上のC−C線断面の溶接ビードを示す横断面図である。 (a)は、2電極プラズマトーチ30が、溶接対象材の、後端タブが付かない後端に達して、先行極が該後端を外れるので先行極のプラズマアークを停止している場合の、後行極のプラズマフレームが後方偏向しているときの、溶接対象材31a,31bと2電極プラズマトーチ30の縦断面図、(b)は、後行極のプラズマフレームによって溶接対象材に誘起する磁束の分布を示す平面図、(c)は、(a)上のC−C線断面の、アンダーカットが現れた溶接ビードを示す横断面図である。
(2)前記後行極による前記後端の溶接を終了したとき、前記先行極および後行極のプラズマアークを停止し、その後に前記走行駆動を停止する、上記(1)に記載の2電極プラズマトーチによる溶接方法(図7,図9,図11,図14,図16)。
(3)前記溶接対象材および後端タブを、溶接対象材の先端よりも後端が低くなる姿勢に傾けて、前記走行駆動を溶接線と平行な方向とする、上記(1)に記載の2電極プラズマトーチによる溶接方法(図18の(b))。溶接対象材を水平とした場合、溶接対象材の後端部で、裏波形成プラズマによって生ずるプールの溶融金属がなめ付け溶接のプールに吸い込まれて後端部のビードが減肉状態となりやすく、これは、厚板であるほどまた粘性が低い金属ほど顕著になる。本実施態様のように溶接対象材を傾けると、重力によりプールの溶融金属に溶接方向に向かう力が加わって上記吸い込みが抑制され、後端部ビードの減肉が低減し後端部のビード表面が平坦になる。
(4)前記2電極プラズマトーチ(30)は、溶接対象材の表面に対して垂直姿勢である、上記(3)に記載の2電極プラズマトーチによる溶接方法。これによれば、2電極プラズマトーチ30が溶接対象材31a,31bの表面に対して垂直姿勢であるので、先行極の裏波形成溶接条件および後行極のなめ付け溶接条件の設定又は調整が容易である。
(5)前記先行極を溶接対象材を予熱するプラズマアーク発生に設定し、前記後行極をキーホール溶接のプラズマアークに設定し、
裏波形成溶接に設定した後行極が溶接対象材の先端以前(先端を含む)にあるときに、該後行極によるキーホール溶接のプラズマアークを起動し、
前記先行極のプラズマアークは、キーホール溶接のプラズマアーク発生と同時又はその前に起動し、先行の又は同時のプラズマアークの起動と同時又は該起動の後に前記走行駆動を開始する、
上記(1)乃至(4)のいずれか1つに記載の2電極プラズマトーチによる溶接方法(図7,図9,図16)。
これによれば、先行極/後行極間距離相当の予熱タイムラグ(図19の(a),(b)の残し)を生ずるが、この予熱の無い冷えた鋼板区間は、走行駆動の速度を低くすることにより、溶接対象材先端での裏波形成不良を少なくできる。予熱タイムラグ区間を過ぎると先行極の予熱効果により後行極での鋼板は溶け易くなり走行駆動速度を上げて、溶接の生産性を高くすることができる。
先行極(予熱用)が溶接対象材の先端にあるときに先行極(予熱用)にプラズマアーク(予熱)を起動することにより、先行極/後行極間距離相当の予熱タイムラグ(図19の(a))による溶接対象材先端での裏波形成不良(図19の(b)の残し)を回避できる。後行極によりキーホールが形成されると先行極の予熱効果により後行極での鋼板は溶け易くなり走行駆動速度を上げることにより、溶接の生産性を高くすることができる。
溶接対象材の後端を低速,低電流のクレータ処理を施すことにより(図7,図8,表1)、高速,高電流で後行の裏波形成アーク(例えばキーホールアーク)の後方に長く延びた溶融プールを短くし、後方に流れていた溶湯を後行裏波アーク側に引き戻すことで、後端表面の窪みを平坦に修正して、後端不良を少なく出来る。これらにより、溶接対象材の先端,後端の素材の歩留りをよくすることができる。
(6)前記先行極をキーホール溶接のプラズマアークに設定し、前記後行極を溶接線をなめ付けするプラズマアークに設定し、
キーホール溶接に設定した先行極が溶接対象材の先端以前(先端を含む)にあるときに、該先行極によるキーホール溶接のプラズマアークを起動し、
前記後行極のプラズマアークは、キーホール溶接のプラズマアークの起動と同時又は溶接対象材の先端にあるときに起動し、先行の又は同時のプラズマアークの起動と同時又は該起動の後に前記走行駆動を開始する、
上記(1)乃至(4)のいずれか1つに記載の2電極プラズマトーチによる溶接方法(図11,図14)。
これによれば、溶接対象材の先端から後端に渡って、後行極のパイロットガス流量が少なく電流も低いソフトなプラズマアークで、先行の裏波形成アークのすぐ後方近傍で表面のみアーク溶融することで溶接表面がなめ付けされて、高速溶接でも、アンダーカットの少ない表面ビードが得られる。後行極が溶接対象材の先端に達すると先行極のプラズマアーク電流を高く切換え同時に走行駆動速度を上げることにより、先端部のキーホール溶接の残し(図19の(b))を少なくし溶接の生産性を高くすることができる。
溶接対象材の後端を低速,低電流のクレータ処理を施すことにより(図11,図12,表3)、高速,高電流で後行の裏波形成アーク(例えばキーホールアーク)の後方に長く延びた溶融プールを短くし、後方に流れていた溶融を後行裏波アーク側に引き戻すことで、後端表面の窪みを平坦に修正して、後端不良を少なく出来る。これらにより、溶接対象材の先端,後端の素材の歩留りをよくすることができる。
(7)前記後行極が溶接対象材の先端にあるときに、前記先行極および後行極のプラズマアークを同時に起動し、この起動と同時に前記走行駆動を低速で開始し、
前記先行極がプラズマアークを起動した位置に前記後行極が到達すると、前記走行駆動を高速に、かつ後行極のプラズマアーク電流およびプラズマガス流量の両方又は片方を高く切換え、
前記先行極が溶接対象材の後端に達する直前に先行極のプラズマアーク電流およびプラズマガス流量の両方又は片方を下げ、後行極が該後端に達すると前記走行駆動の速度を下げ、かつ後行極のプラズマアーク電流およびプラズマガス流量の両方又は片方を下げ、後行極によるクレータ処理期間後に、先行極および後行極のプラズマアークを停止する、上記(5)に記載の2電極プラズマトーチによる溶接方法(図7,表1)。
これによれば、溶接対象材の先端より溶接対象材領域に入り込んだ先行極(予熱用)と溶接対象材の先端にある後行極(裏波形成溶接用)が同時にプラズマアークを起動するので、先行極/後行極間距離相当の予熱タイムラグ(図16の(b)の残し)を生ずるが、走行駆動の速度が低いので、溶接対象材先端での裏波形成不良が少ない。予熱タイムラグ区間を過ぎると走行駆動速度を上げるので、溶接の生産性は高い。溶接対象材の後端は低速、ならびに、低電流又は低プラズマガス流量、のクレータ処理により、後端表面の窪みが平坦に修正され、後端不良が少ない。これらにより、溶接対象材の先端,後端の素材の歩留りがよくなる。
(8)前記先行極が溶接対象材の先端にあるときに、先行極のプラズマアーク(予熱)を起動すると同時に前記走行駆動を低速で開始し、前記後行極が溶接対象材の先端に達すると後行極のプラズマアークを起動し、
前記後行極によりキーホールが形成されるときに、前記走行駆動を高速に、かつ後行極のプラズマアーク電流およびプラズマガス流量の両方又は片方を高く切換える、上記(5)に記載の2電極プラズマトーチによる溶接方法(図9,図10,表2)。
これによれば、先行極(予熱用)が溶接対象材の先端にあるときに先行極(予熱用)がプラズマアーク(予熱)を起動するので、先行極/後行極間距離相当の予熱タイムラグ(図16の(b))による溶接対象材先端での裏波形成不良を生じない。後行極により裏波(例えばキーホール)が形成されると走行駆動速度を上げるので、溶接の生産性は高い。
(9)前記先行極が溶接対象材の先端にあるときに、先行極のプラズマアーク(裏波形成溶接)を起動すると同時に前記走行駆動を低速で開始し、前記後行極が溶接対象材の先端に達すると後行極のプラズマアーク(なめ付け)を起動し、
前記後行極が溶接対象材の先端に達すると前記走行駆動を高速に、かつ先行極のプラズマアーク電流およびプラズマガス流量の両方又は片方を高く切換え、
前記先行極が溶接対象材の後端に達する直前に先行極のプラズマアーク電流およびプラズマガス流量の両方又は片方を下げ前記走行駆動を低速に切換えて後端で先行極および後行極のプラズマアークを停止する、上記(6)に記載の2電極プラズマトーチによる溶接方法(図11,図12,表3)。
これによれば、溶接対象材の先端から後端に渡って、後行極のプラズマによって溶接表面がなめ付けされて、高速溶接でも、アンダーカットの少ない表面ビードが得られる。溶接の生産性が高い。後行極が溶接対象材の先端に達すると先行極のプラズマアーク電流を高く切換え同時に走行駆動速度を上げるので、溶接の生産性が高い。溶接対象材の後端は低速、ならびに、低電流又は低プラズマガス流量、のクレータ処理により、後端表面の窪みが平坦に修正され、後端不良が少ない。これらにより、溶接対象材の先端,後端の素材の歩留りがよくなる。
(10)前記溶接対象材(31a,31b)の溶接方向の先端に先端タブ(38a,38b)を設けて、前記先行極および後行極が前記溶接対象材(31a,31b)の先端以前(先端を含む)にあるときに両極に同時にプラズマアークを起動する、上記(1)乃至(4)のいずれか1つに記載の2電極プラズマトーチによる溶接方法(図13,図14,図16)。
これによれば、溶接対象材の先端,後端の外側でプラズマアークの起動と停止が行われるので、先端,後端に溶接不良を生じない。溶接対象材の先端,後端の素材の歩留りがよくなる。板厚や材質によっては、先端および後端で、後行裏波形成溶接側の電流やプラズマガス流量,溶接速度を低くし、先端部の溶接残しや、後端部のクレータ処理を行う。
(11)両極に同時にプラズマアークを起動すると前記走行駆動を開始する、上記(4)に記載の2電極プラズマトーチによる溶接方法(図14,図16)。
(12)前記先行極をキーホール溶接のプラズマアークに設定し、前記後行極を溶接線をなめ付けするプラズマアークに設定し、
キーホール溶接に設定した先行極が溶接対象材の先端以前(先端を含む)にあるときに、該先行極によるキーホール溶接のプラズマアークを起動し、
前記後行極のプラズマアークは、キーホール溶接のプラズマアークの起動と同時又は溶接対象材の先端にあるときに起動し、先行の又は同時のプラズマアークの起動と同時又は該起動の後に前記走行駆動を開始する、
上記(10)に記載の2電極プラズマトーチによる溶接方法(図14,図15,表4)。
(13)前記先行極を溶接対象材を予熱するプラズマアーク発生に設定し、前記後行極をキーホール溶接のプラズマアークに設定し、
裏波形成溶接に設定した後行極が溶接対象材の先端以前(先端を含む)にあるときに、該後行極によるキーホール成溶接のプラズマアークを起動し、
前記先行極のプラズマアークは、キーホール溶接のプラズマアーク発生と同時又はその前に起動し、先行の又は同時のプラズマアークの起動と同時又は該起動の後に前記走行駆動を開始する、
上記(10)に記載の2電極プラズマトーチによる溶接方法(図16,図17)。
本発明の他の目的および特徴は、図面を参照した以下の実施例の説明より明らかになろう。
図1の(a)に、本発明の2電極プラズマトーチによる溶接方法を実施する溶接装置のシステム構成の一例を示す。この例では、紙面と垂直な水平方向xで対向端面が突き当てられて溶接線を形成する溶接対象材31aおよび31bは固定で、2電極プラズマトーチ30が、図示を省略した走行機構で支持されトーチ走行モータ36で、該溶接線に対向して溶接線の左側の始端(溶接対象材の先端)よりも左側から右側の終端(溶接対象材の後端)の右側まで、溶接線と平行な方向yに、走行駆動される。なお、本発明を実施する態様には、2電極プラズマトーチ30を走行駆動するのに代えて、図1の(b)に示すように、2電極プラズマトーチ30を固定設置して、溶接対象材31a,31bを走行台で支持し走行台を走行機構を介してワーク走行モータで、溶接対象材の始端が2電極プラズマトーチ30よりも右側となる位置から、溶接対象材の始端が2電極プラズマトーチ30よりも左側となる位置まで、溶接線と平行な方向yに、走行駆動する態様もある。しかし説明を簡易にするため、以下には、前者すなわち2電極プラズマトーチ30を走行駆動する態様を示す。
図1の(a)を再度参照すると、溶接制御を行う並列運転制御盤35は、CPUおよびメモリを内蔵するシーケンサ(マイコン),ディスプレイおよび操作ボード(タッチパネルなど)を主要素とするコンピュータ制御回路であり、オペレータがプログラムした2電極プラズマアーク溶接制御シーケンスを実行する。2電極プラズマトーチ30は2組のプラズマアーク発生機構を内蔵しており、一方の組と他方の組のプラズマアーク起動,停止を、それぞれ溶接電力・ガス供給装置32aおよび32bが実行する。
これらの溶接電力・ガス供給装置32a,32bのそれぞれには並列運転制御盤35が、各プラズマアーク電流,各プラズマガス流量ならびに起動,停止を指令し、溶接電力・ガス供給装置32a,32bは各指令に従って各プラズマアークを起動,プラズマアーク電流切換え,ガス流量切換えおよび停止を行い、また、各組の状態情報を並列運転制御盤35に与える。並列運転制御盤35はまた、トーチ走行モータ36の駆動,停止および速度制御を行うモータドライバ(モータ制御器:図示略)に、起動(走行),停止および速度を指令し、該モータドライバが指令に従ってモータ36の起動,停止および速度変更を行いしかも、2電極プラズマトーチ30の走行駆動の位置(溶接対象材に対する溶接方向yの位置)を計測して位置データを並列運転制御盤35に与える。並列運転制御盤35はこの位置データを参照してシーケンス制御の内容を切換える(図8,表1)。
図2に、図1に示す2電極プラズマトーチ30の一部の縦断面を拡大して示す。インサートチップのインサートチップ1のチップ基体は、インナーキャップ6をチップ台5にねじ締めすることにより、チップ台5に固定されている。チップ台5は絶縁本体7に固定され、絶縁本体7に電極台10a,10bおよび絶縁スペーサ11が固定されている。
シールドキャップ8は絶縁本体7に固定されている。2つ割で外筒14の直径方向に分離した第1電極台10aと第2電極台10bは、絶縁スペーサ11で分離されている。
図示のインサートチップは、インサートチップ1のチップ基体に2個のノズル部材20a,20bを装着したものであり、詳細を示す図5を参照すると、各ノズル部材20a,20bには、中央にノズル3a,3bが開いた笠部21a,21b,該笠部に連続する幹部22a,22bおよび該幹部に連続する雄ねじ部24a,24bがあって、前記幹部と雄ねじ部の間にシール材であるOリング23a,23bがあり、内部に前記ノズル3a,3bに連通する電極配置空間2a,2bがある。
インサートチップ1のチップ基体には、各ノズル部材の前記雄ねじ部から幹部までが挿通する各ノズル部材挿入穴18a,18b,各ノズル部材挿入穴に挿通した各ノズル部材の笠部が先端平面1d,1eに当接することにより閉じられる、ノズル部材挿入穴の一部をなし幹部との間に冷却水通流空間を形成する冷却水循環穴1f,1g,水受穴1h(図4),水出穴1i,隣り合う冷却水循環穴をつなぐ横通水穴1j,冷却水循環穴1fを水受穴1hにつなぐ横通水穴1k、および、冷却水循環穴1gを水出穴1iにつなぐ横通水穴1lがある。
図5の(a)に示すように、ノズル部材20a,20bの雄ねじ部24a,24bにナット25a,25bをねじ結合してインサートチップ1のチップ基体に締め付けることにより、ノズル部材20a,20bをインサートチップ1のチップ基体に結合している。
図2を再度参照すると、ノズル部材20a,20bの電極配置空間2a,2bは、インサートチップ1のチップ基体の中心軸(z)と直交する同一直径線(y)に分布し、該中心軸から等距離にあって中心軸(z)に平行に延びる。電極配置空間2a,2bに連続するノズル3a,3bはこの実施例では、電極配置空間2a,2bの中心軸と同心であって、溶接対象材31a,31bに対向する。これらのノズル3a,3bも、本実施例では、インサートチップ1のチップ基体(外筒14)の中心軸(z)と直交する同一直径線(y)上に分布し、該中心軸に平行かつそれから等距離にある。
各電極配置空間2a,2bに先端部が挿入された第1の電極12a,第2の電極12bが、絶縁本体7を貫通し各電極台10a,10bに押さえねじ13a,13bで固定され、各電極配置空間2a,2bの軸心位置に、センタリングストーン9a,9bで位置決めされている。インサートチップ1のチップ基体の、溶接対象材31a,31bに対向する先端面(下端面)には、各電極配置空間2a,2bにつながったノズル3a,3bが開口している。ノズル3a,3bを結ぶ直線(y)が延びる方向が溶接方向である。インサートチップ1のチップ基体は、該直線(y)が延びる方向(溶接方向)には図2に示すように広幅であるが、該直線(y)と直交する方向(x)すなわち溶接対象の開先の幅方向では楔状であって側面が傾斜面1a,1b(図4の(a))となっている。
トーチ先端面(図2上ではノズルが開いた下端面)を示す図4の(a)も参照すると、
インサートチップ1のチップ基体の先端の中心軸位置には先端突起1cがあり、溶接方向となるy方向で該先端突起1cの両側に、ノズル部材20a,20bの笠21a,21bの裏面をうける先端平面1d,1eがある。各先端平面1d,1eの中央位置に、ノズル部材挿入穴18a,18b(図5の(b))がある。ノズル部材挿入穴18a,18bに挿入されたノズル部材20a,20bの笠部21a,21bの、円弧の一部を直線状に削除した切欠面26a,26bが、先端突起1cの側面である係止面にぴったり接触する。すなわち係合する。これによりインサートチップ1のチップ基体に対するノズル部材20a,20bの、中心軸を中心とする回転が阻止される。この係合は、ノズル部材20a,20bをインサートチップ1のチップ基体に挿入してナット25a,25bでねじ締め付けして固定するときのノズル部材20a,20bの廻り止め、および、ノズル部材20a,20bをインサートチップ1のチップ基体から取り外すためにナット25a,25bを緩め廻しするときのノズル部材20a,20bの廻り止め、として機能する。この係合は更に、ノズル軸がインサートチップ1のチップ基体中心軸(z)に対して傾斜したノズル部材20c,20d(図6)の該ノズル軸の傾斜方向を溶接方向(y)に固定(設定)する機能もある。
ノズル部材挿入穴18a,18bの、先端平面1d,1e側の部分は大径の冷却水循環穴1f,1gとなっており、冷却水循環穴1f,1gとその中を貫通した幹部22a,22bの外周面との間に冷却水通流空間(冷媒通流空間)が形成される。
図4の(c)に、インサートチップ1のチップ基体の横断面(図2上のIVc−IVc線断面)を示す。インサートチップ1のチップ基体には、水受穴1h,水出穴1i,冷却水循環穴1f,1gをつなぐ横通水穴1j,冷却水循環穴1fを水受穴1hにつなぐ横通水穴1k、および、冷却水循環穴1gを水出穴1iにつなぐ横通水穴1lがある。
図3に、図2の断面と直交する断面を示す。インサートチップ1のチップ基体の水受穴1hは水流管16aに、水出穴1iは水流管16bに連通している。図4の(c)も参照すると、水流管16aに注入された冷却水は、電極台10a,絶縁本体7およびチップ台5の水流路を通ってインサートチップ1のチップ基体の水受穴1hに入って穴底に至り、そこから横通水穴1kを通って、水循環穴1fと幹部22aの外周面との間の冷却水通流空間に入り、次に横通水穴1jを通って、水循環穴1gと幹部22bの外周面との間の冷却水通流空間に入り、つぎに横通水穴1lを通って水出穴1iに入りそして水流管16bに流れ、そしてトーチ外部に流出する。
冷却水が、水循環穴1fと幹部22aの外周面との間の冷却水通流空間と、水循環穴1gと幹部22bの外周面との間の冷却水通流空間を流れている間に、ノズル部材20a,20bの幹部22a,22bが効果的に冷却され、しかも冷却水が、水受穴1h,横通水穴1k,水循環穴1f,横通水穴1j,水循環穴1g,横通水穴1lおよび水出孔1iを流れている間に、インサートチップ1のチップ基体が効果的に冷却されるので、インサートチップの冷却能力が高い。溶接時にはノズル部材20a,20bが最も加熱されるが、その外周面が直接に冷却水に触れて冷却されるので、ノズル部材20a,20bの使用寿命が長い。
再度図2を参照すると、パイロットガスは、パイロットガス管15a,15bおよび電極挿入空間を通って電極配置空間2a,2bに入り、電極先端部でプラズマアークとなってノズル3a,3bを通ってトーチの先端面から噴出する。シールドガスは、シールドガス管(図示略)を通って、インナーキャップ7とシールドキャップ8との間の円筒状の空間に入り、そしてトーチの先端から溶接対象材である溶接対象材31a,31bに向けて噴出する。
図2に示すように、電極12a,12bとノズル部材20a,20bとの間にパイロットアークを発生させるパイロット電源34a,34b、および、電極12a,12bと溶接対象材31a,31bの間に、電極側が負で溶接対象材側が正のプラズマアーク電流を流すプラズマアーク電源33a,33bがある。パイロット電源34a,34bおよびプラズマアーク電源33a,33bは、溶接電力・ガス供給装置32a,32bにあり、プラズマアーク電源33a,33bはいずれも、予熱,キーホール溶接(本溶接)およびなめ付けの溶接条件を設定できるものであり、2電極12a,12bのいずれを溶接方向で先行する先行極とするか、また、先行極と後行極の何れをキーホール溶接に設定し、他の電極が先行極となる場合はそれを予熱に後行極となる場合はそれをなめ付けに設定し各プラズマアーク電流を設定することができる。図2は、先行の電極12bを予熱に、後行の電極12aをキーホール溶接に設定した溶接態様を示している。プラズマアーク19aと19bは、お互いの磁気干渉で引き合う力が働き、アークが図の様に多少曲がったアークとなる。
各パイロット電源34a,34bにより各電極12a,12bとチップ1との間にパイロットアークを発生させて、電極12a,12bと溶接対象材31a,31bとの間に、電極側が負で母材側が正のプラズマアーク電流を流す、溶接方向で先行の電極12bに給電するプラズマアーク電源33bおよび溶接方向で後行の電極12aに給電するプラズマアーク電源33aにより、溶接アーク(プラズマアーク)を発生させると、プラズマアーク電流が各電極12a,12bと溶接対象材31a,31bの間に流れて、1プール2アーク溶接が実現する。図2は、先行の電極12bで予熱し、後行の電極12aでキーホール溶接(本溶接)する態様を示すが、先行の電極12bでキーホール溶接し、後行の電極12aでなめ付け溶接(平滑化溶接)する態様も実施できる。すなわち、先行する電極12bのキーホール溶接で生成した溶融プールに後行する電極12aのなめ付けのプラズマアークが当たって、例えば高速でのキーホール溶接で発生する表ビードの深いアンダーカットを後行のなめ付け溶接が均す。これにより、高速でも、アンダーカットの少ない溶接ビードが得られる。
図6の(b1)に、図2に示すノズル部材20aおよび又は20bに置換して用いる第1変形形態のノズル部材20cの縦断面を、図6の(b2)には該ノズル部材20cの底面(先端面)を示す。図2に示すノズル部材20a,20bのノズル3a,3bの中心軸は、ノズル部材の中心軸と同心である。しかし、ノズル部材20cのノズル3cは、ノズル部材20cの中心軸に対して傾斜しているので、このノズル部材20cをインサートチップ1のチップ基体に装着すると、その切欠面26cがインサートチップ1のチップ基体の先端突起1cに係合した状態で、ノズル3cの中心軸はインサートチップ1のチップ基体の中心軸(ノズル部材挿入穴の中間点)から離れる方向に傾斜したものとなる。すなわち、インサートチップ1のチップ基体の中心軸に対して溶接方向(y)の前方側(先行ノズルとなる場合)又は後方側(後行ノズルとなる場合)に傾斜したものとなり、極間(前後溶接点間の距離)を広げた溶接が可能となる。
図6の(c1)に、図2に示すノズル部材20aおよび又は20bに置換して用いる第2変形形態のノズル部材20dの縦断面を、図6の(c2)には該ノズル部材20dの底面(先端面)を示す。ノズル部材20dのノズル3dは、ノズル部材20dの中心軸に対してノズル3cとは逆方向に傾斜しているので、このノズル部材20dをインサートチップ1のチップ基体に装着すると、その切欠面26dがインサートチップ1のチップ基体の先端突起1cに係合した状態で、ノズル3dの中心軸はインサートチップ1のチップ基体の中心軸(ノズル部材挿入穴の中間点)に近づく方向に傾斜したものとなる。すなわち、溶接方向(y)でインサートチップ1のチップ基体の中心軸に近づくように傾斜したものとなり、後行極のプラズマアークは、溶接の進行方向に対して前進角となり、溶接が寄り安定した状態となる。
なお、ノズル部材をインサートチップ1のチップ基体に装着したインサートチップとしては、
(1)図2,図5に示す態様,
(2)図2に示すノズル部材20aをノズル部材20cに置換し、ノズル部材20cを溶接方向(y)で先行ノズルとする態様,
(3)図2に示すノズル部材20bをノズル部材20cに置換し、ノズル部材20cを後行ノズルとする態様,
(4)図2に示すノズル部材20a,20bを共にノズル部材20cの形態とする態様,
(5)図2に示すノズル部材20aをノズル部材20dに置換し、ノズル部材20dを先行ノズルとする態様,
(6)図2に示すノズル部材20bをノズル部材20dに置換し、ノズル部材20dを後行ノズルとする態様,
(7)図2に示すノズル部材20a,20bを共にノズル部材20dの形態とする態様,
(8)図2に示すノズル部材20a,20bをノズル部材20c,20dに置換し、ノズル部材20cを先行ノズルとする態様、および、
(9)図2に示すノズル部材20a,20bをノズル部材20c,20dに置換し、ノズル部材20dを先行ノズルとする態様、
がある。溶接対象板厚ならびに所望の溶接電流,溶接速度および溶接品質(例えば所望ビード形状)に対応して、上記(1)〜(9)の態様のいずれかを選択することができる。図20〜図22には、図2に示すノズル部材20aを図6の(c1),(c2)に示すノズル部材20dに置換し、図2に示すノズル部材20bを図6の(b1),(b2)に示すノズル部材20cに置換した態様を示す。なお、以下の実施例のいずれも、図20〜図22に示す態様と同様に、図2に示すノズル部材20aを図6の(c1),(c2)に示すノズル部材20dに置換し、図2に示すノズル部材20bを図6の(b1),(b2)に示すノズル部材20cに置換した、前進角ノズルを用いる態様である。次に、2電極プラズマトーチを用いる本発明の溶接方法の実施例を示す。
−第1実施例−
1.後行キーホールモード(先行極,後行極同時着火)−図7,図8,表1−
第1実施例は、2個の電極配置空間2a,2bと各電極配置空間にそれぞれが連通する2個のノズル3a,3bとを有するインサートチップ1を備えた2電極プラズマトーチ30を用い、溶接対象材31a,31bの後端に後端タブ39a,39bを設けて、前記2個のノズルの並び方向を溶接線と平行にして、該2電極プラズマトーチ30を溶接対象材31a,31bに対して溶接線に沿う方向に走行駆動しつつ、各電極配置空間にある各電極12a,12bでプラズマアークを発生して溶接線を溶接する。
本実施例ならびに後述の全実施例において、後端タブ39a,39bは、プラズマフレーム直下となる位置にスリットが開いた水冷銅タブであり、後述の先端タブ38a,38bも同様な水冷銅タブであるが、スリットの代わりにそこに凹溝を形成したものを使用する態様もある。
第1実施例では、先行極は予熱プラズマアークに、後行極はキーホールプラズマアークに設定して、図7の(1)に示すように、後行極(ノズル部材20a)が溶接対象材31a,31bの始端にあるときに、先行極(ノズル部材20b)および後行極のプラズマアークを同時に起動し、この起動と同時に2電極プラズマトーチ30の走行駆動を低速で開始する。
図7の(2)に示すように後行極が、先行極がプラズマアークを起動した位置に到達すると、2電極プラズマトーチ30の走行駆動を高速に、かつ後行極のプラズマアーク電流および後行極のプラズマガス流量を高く切換える。その後は図7の(3)に示すように、同じ条件を継続する。そして、図7の(4)に示すように先行極が溶接対象材31a,31bの後端に達する直前に、先行極のプラズマアーク電流を下げて、溶接対象材31a,31bの後端で先行極のプラズマアークを停止し、図7の(5)に示すように後行極が該後端に達すると前記走行駆動の速度を下げ、かつ後行極のプラズマアーク電流を下げ、後行極によるクレータ処理期間後に、後行極のプラズマアークを停止する。そしてその後に、トーチの走行駆動を停止する(図7の(6))。
図8には、先行極が図7の(3)〜(6)に示す各位置に到達したタイミングT1〜T4での溶接電流,プラズマガス流量および溶接速度の切換えの基本パターンを示し、表1に、第1実施例で採用した溶接条件値を示す。これは、溶接対象材31a,31bを板厚3.6mm(厚板),長さ200mmの軟鋼として、溶接シーケンスプログラムに、溶接開始(STEP1)から溶接終了(STEP12)まで12ステップの各ステップにつき溶接条件値を設定したものである。ステップ間では先行ステップの溶接条件値が継続して維持される。なお、ノズル傾斜角20°前進角とは、ノズルが溶接方向yの前方方向に20°傾斜したものであり、図2に示す先行極12bが進入するノズル部材20bを図6の(b1),(b2)に示すノズル部材20cに交換し、図2に示す後行の電極12aが進入するノズル部材20aを図6の(c1),(c2)に示すノズル部材20dに交換することによってノズル傾斜角20°前進角を実現した。
Figure 0005791109
第1実施例によれば、溶接対象材である溶接対象材31a,31bの先端より溶接対象材領域に入り込んだ予熱用の先行極と溶接対象材の先端にあるキーホール用の後行極が同時にプラズマアークを起動するので、先行極/後行極間距離相当の予熱タイムラグ(図19の(b))を生ずるが、走行駆動の速度が低いので、溶接対象材先端での裏波形成不良が少ない。予熱タイムラグ区間を過ぎると走行駆動速度を上げるので、溶接の生産性は高い。溶接対象材31a,31bの後端は低速,低電流のクレータ処理により、後端表面の窪みが平坦に修正され、しかも、後行極が溶接対象材の後端で溶接を終えプラズマアークを停止するまで、先行極のプラズマアークを継続するので、溶接対象材の溶接を終了するまで、後行極のプラズマフレームと先行極のプラズマフレームとが引き合い、後端での後行極のプラズマフレームの後方偏向を生じないので、後端で表面ビードが後方に長細くなることはなく、後端部のアンダーカットがなくなる。これらにより、溶接対象材31a,31bの先端,後端の素材の歩留りがよくなる。
−第2実施例−
2.後行キーホールモード(先行極先行着火)−図9,図10,表2−
第2実施例も、2個の電極配置空間2a,2bと各電極配置空間にそれぞれが連通する2個のノズル3a,3bとを有するインサートチップ1を備えた2電極プラズマトーチ30を用い、溶接対象材31a,31bの後端に後端タブ39a,39bを設けて、前記2個のノズルの並び方向を溶接線と平行にして、該2電極プラズマトーチ30を溶接対象材31a,31bに対して溶接線に沿う方向に走行駆動しつつ、各電極配置空間にある各電極12a,12bでプラズマアークを発生して溶接線を溶接する。
先行極は予熱プラズマアークに、後行極はキーホールプラズマアークに設定して、低速で2電極プラズマトーチ30の走行駆動を開始して、図9の(1)に示すように、先行極(ノズル部材20b)が溶接対象材31a,31bの先端にあるときに、先行極のプラズマアークを起動する。図9の(2)に示すように、後行極が溶接対象材31a,31bの始端に達すると後行極のプラズマアークを起動し、後行極によりキーホールが形成されるときに、走行駆動を高速に、かつ後行極のプラズマアーク電流および後行極のプラズマガス流量を高く切換える。その後は図9の(3)に示すように、同じ条件を継続する。そして、図9の(4)に示すように、後行極が溶接対象材31a,31bの後端に達すると先行極および後行極のプラズマアークを停止する。そしてその後に、トーチの走行駆動を停止する(図9の(5))。
図10には、先行極が図9の(3)〜(5)に示す各位置に到達したタイミングT1〜T3での溶接電流,プラズマガス流量および溶接速度の切換えの基本パターンを示し、表2に、第2実施例で採用した溶接条件値を示す。これは、溶接対象材31a,31bを板厚2.3mm(薄板),長さ220mmの軟鋼として、溶接シーケンスプログラムに、溶接開始(STEP1)から溶接終了(STEP13)まで13ステップの各ステップにつき溶接条件値を設定したものである。ステップ間では先行ステップの溶接条件値が継続して維持される。
Figure 0005791109
第2実施例によれば、先行極(予熱用)が溶接対象材31a,31bの先端にあるときに先行極(予熱用)がプラズマアーク(予熱)を起動するので、先行極/後行極間距離相当の予熱タイムラグ(図16の(b))による溶接対象材31a,31bの先端での裏波形成不良を生じない。後行極によりキーホールが形成されると走行駆動速度を上げるので、溶接の生産性は高い。後行極が溶接対象材の後端で溶接を終えプラズマアークを停止するまで、先行極のプラズマアークを継続するので、溶接対象材の溶接を終了するまで、後行極のプラズマフレームと先行極のプラズマフレームとが引き合い、後端での後行極のプラズマフレームの後方偏向を生じないので、後端で表面ビードが後方に長細くなることはなく、後端部のアンダーカットがなくなる。これらにより、溶接対象材31a,31bの先端,後端の素材の歩留りがよくなる。
−第3実施例−
3.先行キーホールモード(先行極先行着火)−図11,図12−
第3実施例も、2個の電極配置空間2a,2bと各電極配置空間にそれぞれが連通する2個のノズル3a,3bとを有するインサートチップ1を備えた2電極プラズマトーチ30を用い、溶接対象材31a,31bの後端に後端タブ39a,39bを設けて、前記2個のノズルの並び方向を溶接線と平行にして、該2電極プラズマトーチ30を溶接対象材31a,31bに対して溶接線に沿う方向に走行駆動しつつ、各電極配置空間にある各電極12a,12bでプラズマアークを発生して溶接線を溶接する。
先行極はキーホールプラズマアークに、後行極はなめ付けプラズマアークに設定して、低速でトーチの走行駆動を開始し、図11の(1)に示すように、先行極(ノズル部材20b)が溶接対象材31a,31bの始端にあるときに、先行極のプラズマアーク(キーホール溶接)を起動し、図11の(2)に示すように後行極が溶接対象材31a,31bの始端に達すると後行極のプラズマアーク(なめ付け)を起動し、走行駆動を高速に、かつ先行極のプラズマアーク電流および先行極のプラズマガス流量を高く切換え、その後は図11の(3)に示すように、同じ条件を継続する。そして、図11の(4)に示すように先行極が溶接対象材31a,31bの後端に達する直前に、先行極のプラズマアーク電流およびプラズマガス流量を下げ走行駆動を低速に切換え、図11の(5)に示すように後行極が該後端に達すると後行極のプラズマアーク電流を下げ、後行極によるクレータ処理期間後に、先行極および後行極のプラズマアークを停止する。そしてその後に、トーチの走行駆動を停止する(図11の(6))。
図12には、先行極が図11の(3)〜(6)に示す各位置に到達したタイミングT1〜T4での溶接電流,プラズマガス流量および溶接速度の切換えの基本パターンを示し、表3に、第3実施例で採用した溶接条件値を示す。これは、溶接対象材31a,31bを板厚5.0mm(厚板),長さ300mmの軟鋼として、溶接シーケンスプログラムに、溶接開始(STEP1)から溶接終了(STEP15)まで15ステップの各ステップにつき溶接条件値を設定したものである。ステップ間では先行ステップの溶接条件値が継続して維持される。
Figure 0005791109
第3実施例によれば、溶接対象材31a,31bの先端から後端に渡って、後行極のプラズマによって溶接表面がなめ付けされて、高速溶接でも、アンダーカットの少ない表面ビードが得られる。溶接の生産性が高い。後行極が溶接対象材31a,31bの先端に達すると先行極のプラズマアーク電流を高く切換え同時に走行駆動速度を上げるので、溶接の生産性が高い。後行極が溶接対象材の後端で溶接を終えプラズマアークを停止するまで、先行極のプラズマアークを継続するので、溶接対象材の溶接を終了するまで、後行極のプラズマフレームと先行極のプラズマフレームとが引き合い、後端での後行極のプラズマフレームの後方偏向を生じないので、後端で表面ビードが後方に長細くなることはなく、後端部のアンダーカットがなくなる。これらにより、溶接対象材31a,31bの先端,後端の素材の歩留りがよくなる。
−第4実施例−
4.先行キーホールモード(タブ材使用;先行極,後行極同時着火)
第4実施例は、2個の電極配置空間2a,2bと各電極配置空間にそれぞれが連通する2個のノズル3a,3bとを有するインサートチップ1を備えた2電極プラズマトーチ30を用い、図13に示すように溶接対象材31a,31bの先端および後端に、先端タブ38a,38bおよび後端タブ39a,39bを設けて、前記2個のノズルの並び方向を溶接線と平行にして、該2電極プラズマトーチ30を溶接対象材31a,31bに対して溶接線に沿う方向に走行駆動しつつ、各電極配置空間にある各電極12a,12bでプラズマアークを発生して溶接線を溶接する。
先行極はキーホールプラズマアークに、後行極はなめ付けプラズマアークに設定して、図14の(1)に示すように、先行極(ノズル部材20b)が溶接対象材31a,31bの始端にあるときに、先行極のプラズマアーク(キーホール溶接)および後行極のプラズマアーク(なめ付け溶接)を起動するともにトーチの走行駆動を低速で開始し、図14の(2)に示すように後行極が溶接対象材31a,31bの始端に達すると、走行駆動を高速に、かつ先行極のプラズマアーク電流および先行極のプラズマガス流量を高く切換え、その後は図14の(3)に示すように、同じ条件を継続する。そして、図14の(4)に示すように後行極が溶接対象材31a,31bの後端に達すると、先行極および後行極のプラズマアークを停止する。そしてその後に、トーチの走行駆動を停止する(図14の(5))。
図15には、先行極が図14の(3)〜(5)に示す各位置に到達したタイミングT1〜T3での溶接電流,プラズマガス流量および溶接速度の切換えの基本パターンを示し、表4に、第4実施例で採用した溶接条件値を示す。これは、溶接対象材31a,31bを板厚1.4mm(薄板),長さ300mmの軟鋼として、溶接シーケンスプログラムに、溶接開始(STEP1)から溶接終了(STEP11)まで11ステップの各ステップにつき溶接条件値を設定したものである。ステップ間では先行ステップの溶接条件値が継続して維持される。
Figure 0005791109
第4実施例によれば、溶接対象材31a,31bの先端から後端に渡って、後行極のプラズマによって溶接表面がなめ付けされて、高速溶接でも、アンダーカットの少ない表面ビードが得られる。溶接の生産性が高い。後行極が溶接対象材31a,31bの先端に達すると先行極のプラズマアーク電流を高く切換え同時に走行駆動速度を上げるので、溶接の生産性が高い。溶接対象材の先端および後端に、先端タブ38a,38bおよび後端タブ39a,39bを設けて、先行極が溶接対象材の先端にあるときから後行極が溶接対象材の後端にあるときまで、先行極および後行極のプラズマアークを継続するので、溶接対象材の溶接を開始し終了するまで、後行極のプラズマフレームと先行極のプラズマフレームとが引き合い、溶接対象材の先端,後端で、後行極のプラズマフレームの先方偏向,後方偏向を生じないので、先端直後および後端で表面ビードが後方に長細くなることはなく先端部,後端部のアンダーカットがなくなる。これらにより、溶接対象材31a,31bの先端,後端の素材の歩留りがよくなる。
−第5実施例−
5.後行キーホールモード(タブ材使用;先行極,後行極同時着火)
第5実施例も、2個の電極配置空間2a,2bと各電極配置空間にそれぞれが連通する2個のノズル3a,3bとを有するインサートチップ1を備えた2電極プラズマトーチ30を用い、図13に示すように溶接対象材31a,31bの先端および後端に、先端タブ38a,38bおよび後端タブ39a,39bを設けて、前記2個のノズルの並び方向を溶接線と平行にして、該2電極プラズマトーチ30を溶接対象材31a,31bに対して溶接線に沿う方向に走行駆動しつつ、各電極配置空間にある各電極12a,12bでプラズマアークを発生して溶接線を溶接する。
先行極は予熱プラズマアークに、後行極はキーホールプラズマアークに、設定する。図16の(1)に示すように、先行極が溶接対象材31a,31bの先端に、後行極が先端タブ38a,38bのスリットに対向する位置で先行極,後行極のプラズマアークを起動して2電極プラズマトーチ30の走行駆動を開始し、図16の(3)に示すように後行極が溶接対象材31a,31bの後端に達し、そして後端の溶接を終了すると各極のプラズマアークを停止する。図17には、先行極が図16の(1)〜(4)に示す各位置に到達したタイミングT1〜T4での溶接電流,プラズマガス流量および溶接速度の切換えの基本パターンを示す。
第5実施例によれば、溶接対象材31a,31bの先端から後端に渡って、先行極のプラズマによって溶接対象材が予熱されて、高速溶接でも、アンダーカットの少ない表面ビードが得られる。溶接の生産性が高い。後行極が溶接対象材31a,31bの先端に達すると先行極のプラズマアーク電流を高く切換え同時に走行駆動速度を上げるので、溶接の生産性が高い。先行極が溶接対象材31a,31bの始端にあり後行極が先端タブ38a,38bのスリットに対向するときに先行極および後行極のプラズマアークが起動され、後行極が溶接対象材31a,31bの後端にあり先行極が後端タブ38a,38bのスリットに対向するときに先行極および後行極のプラズマアークの停止が行われるので、溶接対象材の溶接を開始し終了するまで、後行極のプラズマフレームと先行極のプラズマフレームとが引き合い、溶接対象材の先端,後端で、後行極のプラズマフレームの先方偏向,後方偏向を生じないので、先端直後および後端で表面ビードが後方に長細くなることはなく先端部,後端部のアンダーカットがなくなる。これらにより、溶接対象材31a,31bの先端,後端の素材の歩留りがよくなる。
なお、第4,第5実施例に関して、先行極と後行極は同時着火,同時停止とするばかりでなく、各極がともに先端タブ材の領域にあるときに別々に着火してもよく、また、各極がともに後端タブ材の領域にあるときに別々に停止してもよい。また、後端で後行極のクレータ処理を行うこともできる。
−第1〜5実施例の変形−
2電極プラズマトーチ30を用いる溶接では、先行極/後行極間距離が短いので、溶接条件によっては、図18の(a)に示すように、先行のキーホール溶接で生成した溶融プールの溶融金属が後行のなめ付けプラズマアーク直下に吸い込まれて、キーホール溶接部となめ付け溶接部との間Aで先行極側から後行極側への溶融金属の流動があり、溶接線の後端部では減肉状態で溶接が終わることがある。これは厚板であるほどまた粘性が低い金属ほど顕著になる。これを回避するために、溶接対象材31a,31bを先端よりも後端が低くなる姿勢に傾けて、2電極プラズマトーチ30を溶接対象材31a,31bの表面に対して垂直姿勢としてその走行駆動を溶接線と平行な方向とする。このように、溶接対象材を傾けると、重力によりプールの溶融金属に溶接方向に向かう力が加わって上記吸い込みが抑制され、後端部ビードの減肉が低減し後端部のビード表面が平坦になる。2電極プラズマトーチ30が溶接対象材31a,31bの表面に対して垂直姿勢であるので、先行極のキーホール溶接条件および後行極のなめ付け溶接条件の設定又は調整が容易である。
上述の実施例1〜5ならびに変形例のいずれにおいても、材質,板厚によっては、後端のクレータ処理を行っても表ビードの減肉が多い場合、後端部へワイヤを送給し余盛することもできる。以上には、平板同士の溶接を示したが、本発明はこれに限らず、筒状に曲げた一枚板の両端部の突合せ溶接やパイプ同士の突合せ溶接,重ね隅肉溶接等の円周溶接にも適応できる。
1:インサートチップ
1a,1b:傾斜面
1c:先端突起
1d,1e:先端平面
1f,1g:水循環穴
1h:水受穴
1i:水出穴
1j,1k,1l:横通水穴
2a〜2d:電極配置空間
3a〜3d:ノズル
5:チップ台
6:インナーキャップ
7:絶縁本体
8:シールドキャップ
9a,9b:センタリングストーン
10a,10b:電極台
11:絶縁スペーサ
12a,12b:電極
13a,13b:押さえねじ
14:外筒
15a,15b:パイロットガス管
16a,16b:水流管
18a,18b:ノズル部材挿入穴
19a,19b:プラズマアーク
20a〜20d:ノズル部材
21a〜21d:笠部
22a〜22d:幹部
23a〜23d:Oリング
24a〜24d:雄ねじ部
25a,25b:ナット
26a〜26d:切欠面
30:トーチ
31a,31b:溶接片
31p:プール
32a,32b:溶接電力・ガス供給装置
33a,33b:プラズマアーク電源
34a,34b:パイロット電源
35:並行運転制御盤
36:トーチ走行モータ
37:ワーク走行モータ
38a,38b:先端タブ
39a,39b:後端タブ

Claims (13)

  1. 2個の電極配置空間と各電極配置空間にそれぞれが連通する2個のノズルとを有するインサートチップを備えた2電極プラズマトーチを用いて、前記2個のノズルの並び方向を溶接線と平行にして、該2電極プラズマトーチと溶接対象材の少なくとも一方を溶接線に沿う方向に走行駆動しつつ、各電極配置空間にある各非消耗電極でプラズマアークを発生して溶接線を溶接する、2電極プラズマトーチによる溶接方法において、
    前記溶接対象材の溶接方向の後端に、プラズマフレーム直下となる位置にスリット又は凹溝がある水冷銅タブでなる後端タブを設けて、溶接線の延びる方向で先行する非消耗電極すなわち先行極で予熱プラズマアークを後行する非消耗電極すなわち後行極でキーホールプラズマアークを発生し、又は、先行極でキーホールプラズマアークを後行極でなめ付けプラズマアークを発生し、後行極が前記後端で溶接を終えプラズマアークを停止するまで、先行極のプラズマアークを継続する、ことを特徴とする2電極プラズマトーチによる溶接方法。
  2. 前記後行極による前記後端の溶接を終了したとき、前記先行極および後行極のプラズマアークを停止し、その後に前記走行駆動を停止する、請求項1に記載の2電極プラズマトーチによる溶接方法。
  3. 前記溶接対象材および後端タブを、溶接対象材の先端よりも後端が低くなる姿勢に傾けて、前記走行駆動を溶接線と平行な方向とする、請求項1に記載の2電極プラズマトーチによる溶接方法。
  4. 前記2電極プラズマトーチは、溶接対象材の表面に対して垂直姿勢である、請求項3に記載の2電極プラズマトーチによる溶接方法。
  5. 前記先行極を溶接対象材を予熱するプラズマアーク発生に設定し、前記後行極をキーホール溶接のプラズマアークに設定し、
    キーホール溶接に設定した後行極が溶接対象材の先端以前にあるときに、該後行極によるキーホール溶接のプラズマアークを起動し、
    前記先行極のプラズマアークは、キーホール溶接のプラズマアーク発生と同時又はその前に起動し、先行の又は同時のプラズマアークの起動と同時又は該起動の後に前記走行駆動を開始する、
    請求項1乃至4のいずれか1つに記載の2電極プラズマトーチによる溶接方法。
  6. 前記先行極をキーホール溶接のプラズマアークに設定し、前記後行極を溶接線をなめ付けするプラズマアークに設定し、
    キーホール溶接に設定した先行極が溶接対象材の先端以前にあるときに、該先行極によるキーホール溶接のプラズマアークを起動し、
    前記後行極のプラズマアークは、キーホール溶接のプラズマアークの起動と同時又は溶接対象材の先端にあるときに起動し、先行の又は同時のプラズマアークの起動と同時又は該起動の後に前記走行駆動を開始する、
    請求項1乃至4のいずれか1つに記載の2電極プラズマトーチによる溶接方法。
  7. 前記後行極が溶接対象材の先端にあるときに、前記先行極および後行極のプラズマアークを同時に起動し、この起動と同時に前記走行駆動を低速で開始し、
    前記先行極がプラズマアークを起動した位置に前記後行極が到達すると、前記走行駆動を高速に、かつ後行極のプラズマアーク電流およびプラズマガス流量の両方又は片方を高く切換え、
    前記先行極が溶接対象材の後端に達する直前に先行極のプラズマアーク電流およびプラズマガス流量の両方又は片方を下げ、後行極が該後端に達すると前記走行駆動の速度を下げ、かつ後行極のプラズマアーク電流およびプラズマガス流量の両方又は片方を下げ、後行極によるクレータ処理期間後に、先行極および後行極のプラズマアークを停止する、請求項5に記載の2電極プラズマトーチによる溶接方法。
  8. 前記先行極が溶接対象材の先端にあるときに、先行極のプラズマアークを起動すると同時に前記走行駆動を低速で開始し、前記後行極が溶接対象材の先端に達すると後行極のプラズマアークを起動し、
    前記後行極によりキーホールが形成されるときに、前記走行駆動を高速に、かつ後行極のプラズマアーク電流およびプラズマガス流量の両方又は片方を高く切換える、請求項5に記載の2電極プラズマトーチによる溶接方法。
  9. 前記先行極が溶接対象材の先端にあるときに、先行極のプラズマアークを起動すると同時に前記走行駆動を低速で開始し、前記後行極が溶接対象材の先端に達すると後行極のプラズマアークを起動し、
    前記後行極が溶接対象材の先端に達すると前記走行駆動を高速に、かつ先行極のプラズマアーク電流およびプラズマガス流量の両方又は片方を高く切換え、
    前記先行極が溶接対象材の後端に達する直前に先行極のプラズマアーク電流およびプラズマガス流量の両方又は片方を下げ前記走行駆動を低速に切換えて後端で先行極および後行極のプラズマアークを停止する、請求項6に記載の2電極プラズマトーチによる溶接方法。
  10. 前記溶接対象材の溶接方向の先端に先端タブを設けて、前記先行極および後行極が前記溶接対象材の先端以前にあるときに両極に同時にプラズマアークを起動する、請求項1乃至4のいずれか1つに記載の2電極プラズマトーチによる溶接方法
  11. 両極に同時にプラズマアークを起動すると前記走行駆動を開始する、請求項4に記載の2電極プラズマトーチによる溶接方法。
  12. 前記先行極をキーホール溶接のプラズマアークに設定し、前記後行極を溶接線をなめ付けするプラズマアークに設定し、
    キーホール溶接に設定した先行極が溶接対象材の先端以前にあるときに、該先行極によるキーホール溶接のプラズマアークを起動し、
    前記後行極のプラズマアークは、キーホール溶接のプラズマアークの起動と同時又は溶接対象材の先端にあるときに起動し、先行の又は同時のプラズマアークの起動と同時又は該起動の後に前記走行駆動を開始する、
    請求項10に記載の2電極プラズマトーチによる溶接方法。
  13. 前記先行極を溶接対象材を予熱するプラズマアーク発生に設定し、前記後行極をキーホール溶接のプラズマアークに設定し、
    裏波形成溶接に設定した後行極が溶接対象材の先端以前にあるときに、該後行極によるキーホール溶接のプラズマアークを起動し、
    前記先行極のプラズマアークは、キーホール溶接のプラズマアーク発生と同時又はその前に起動し、先行の又は同時のプラズマアークの起動と同時又は該起動の後に前記走行駆動を開始する、
    請求項10に記載の2電極プラズマトーチによる溶接方法。
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