JP5789151B2 - 合わせガラス用中間膜 - Google Patents
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Description
上記中間膜としては、ポリビニルブチラール(PVB)やエチレン‐酢酸ビニル共重合体(EVA)が従来知られていた。
一方、EVAからなる中間膜は、ガラス転移温度が低く、柔軟な特性を有する。このため、およそ−30℃以下の低温領域では良好な堅さ(タフネス)を示すが、室温領域において急激に堅さが低下する問題があった(図1参照)。
しかし、市場では常に従来品よりも耐候性や透明性の高い中間膜の開発が望まれているのに加え、広い温度領域(特に、実際に合わせガラスが使用される温度領域である5℃〜40℃付近)にてタフネスを維持できる中間膜は、まだ得られていない。中間膜のタフネスが不十分だと、ガラス板が割れた時に、破片の飛散は抑えられるものの、亀裂が入ったガラス板にさらなる負荷がかかると粉々になりやすいことがあった。さらに、3元共重合体のアイオノマー樹脂だと、一般的な成形機では製膜しにくいことがあった。
(1)(A)エチレンと、(B)(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸アクリルエステルとの2元共重合体が金属イオンで架橋され、190℃×2.16KgfにおけるMFRが5〜15g/10分、金属イオンによる中和量が60〜80mol%であるアイオノマー樹脂からなり、該アイオノマー樹脂は、ゲル化温度が170℃以上であって、かつメタクリル基を有するシランカップリング剤を含み、ガラス板に接する層であることを特徴とする合わせガラス用中間膜。
(2)合わせガラス用中間膜が3層以上の多層構造からなり、前記アイオノマー樹脂がガラス板と接する最表層であることを特徴とする前記(1)に記載の合わせガラス用中間膜。
(3)合わせガラス用中間膜の最表層における表面粗さ(算術平均粗さ)が、両面とも0.5μm以上であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の合わせガラス用中間膜。
しかも、これまで一般的なEVAや3元共重合体アイオノマー樹脂からなる合わせガラス用中間膜に比べ、5℃〜40℃付近という常温領域にて優れた堅労性(タフネス)を有し、特に、亀裂が入ったガラス板にさらなる負荷がかかっても破片飛散をし難くできるばかりか、ガラス板に強大な歪みが生じた際には、この歪みを十分に吸収することができ、ヒビの発生自体を大幅に低減することができるものである。
上記MFRが低すぎるアイオノマー樹脂では、ラミネート時に溶融した樹脂が端部まで広がり難く、その結果ガラス板との接着強度が劣ったり、合わせガラスとしての強度を保ちにくい傾向がある。一方、MFRが高すぎても、ガラス板間に接着させた際に、溶融した樹脂がガラス板の端部からはみ出しやすく、やはり貼り合わせ加工性に劣るものとなるので、好ましくは、5〜7g/10分である。
(B)成分に対する(A)成分が上記範囲より少ない2元共重合体だと、融点が低下して粘度が上昇し、強度が低下する傾向にあり、一方、(A)成分に対する(B)成分が上記範囲より少ない2元共重合体だと、ポリエチレンの結晶成分が増加するため透明性が悪化する傾向にある。
なお、(メタ)アクリル酸アクリルエステルの具体例としては、アクリル酸またはメタクリル酸のエチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、ドデシルエステルなどが挙げられる。
本発明のアイオノマー樹脂としては、予めイオン架橋したものを使用してもよいが、中間膜の製膜時にこれら金属化合物を2元共重合体へ添加してイオン架橋させてもよい。
中和量が、60mol%より少ないと、架橋度(架橋点の割合)が低すぎて所望の物理的強度(タフネス、特に引張弾性率)が得られない虞があり、80mol%を超えると、今度は架橋度が強すぎることになり、中間膜としての柔軟性が低下し、ガラス板との接着強度はもとより、ガラス板への追随性が劣るものとなる。
このような添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤(UVA)、光安定剤、酸化防止剤(AO)、カップリング剤、ブロッキング防止剤、粘着性(密着)付与剤、架橋助剤などを挙げることができる。
分子量が450g/mol未満の紫外線吸収剤では、中間膜を製膜する前のマスターバッチの状態でブリードアウトしやすく、製膜性の悪化やガラス密着の悪化が生じやすく、また、直射日光や紫外線に対して変色が生じる虞がある。
中でも、中間膜の製膜条件やガラス板との密着効果、ガラス板との追随効果などを考慮すると、ゲル化する温度が170℃以上であって、かつ(B)成分と反応しにくい官能基(例えば、メタクリル基など)を有するシランカップリング剤がより好適であり、具体例としては、信越化学工業(株)製 商品名“KBM503”、東レ・コーニング(株)製 商品名“Z6300”等である。
このような算術平均粗さ(Ra)を得るためのエンボス加工は、上記急冷固化する際と同時に施してもよいし、あるいは、成形後に施すこともできる。
このように、中間膜を多層化した場合、ガラス板と接する最表層以外の層について、その厚みや、その構成樹脂の種類(配合比)などを適宜調製することで、タフネス(引張弾性率)やガラス板との追随性などを向上させてもよい。
加熱・加圧条件は、設備あるいはガラス板の種類や中間膜自体の配合などにより若干異なるものの、真空度を保持した状態で120〜160℃×2〜3分圧着した後、常圧下120〜160℃×2〜3分圧着しただけで十分な接着性が得られるうえ、調湿工程は一切不要である。
表1に示す配合割合の樹脂組成物を、メインスクリュー径40mmのTダイテスト押出機より押し出した後、冷却ロールとエンボス型ロールとで挟圧し、厚さが0.4mm、表裏面(両面)のJIS B 0601−2001(ISO4287−1997準拠)に準拠する算術平均粗さ(Ra)がいずれも1.6μmの合わせガラス用中間膜を製膜した。
・アイオノマー(i)(三井・デュポンポリケミカル(株)社製“ハイミラン1705”):エチレン/メタクリル酸 2元共重合体をZnイオンで中和したもの、中和量60mol%、MFR=5.0(g/10分)
・アイオノマー(ii)(三井・デュポンポリケミカル(株)社製“ハイミラン1652”):エチレン/メタクリル酸 2元共重合体をZnイオンで中和したもの、中和量70mol%、MFR=5.5(g/10分)
・アイオノマー(iii)(三井・デュポンポリケミカル(株)社製“ハイミラン1855”):エチレン/メタクリル酸/アクリル酸エステル 3元共重合体をZnイオンで中和したもの、中和量60mol%、MFR=1.0(g/10分)
・アイオノマー(iv)(三井・デュポンポリケミカル(株)社製“ハイミラン1555”):エチレン/メタクリル酸 2元共重合体をNaイオンで中和したもの、中和量35mol%、MFR=10(g/10分)
・アイオノマー(v)(三井・デュポンポリケミカル(株)社製“ハイミラン1601”):エチレン/メタクリル酸 2元共重合体をNaイオンで中和したもの、中和量50mol%、MFR=1.3(g/10分)
・EVA(三井・デュポンポリケミカル(株)社製“エバフレックスEV250R”):エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、MFR=20(g/10分)
・PE(住友化学(株)社製“スミカセンL705”):低密度ポリエチレン、MFR=20(g/10分)
・UVA(ii)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製 商品名"チヌビン770"):紫外線吸収剤、分子量481g/mol
・HALS(旭電化 (株)製 商品名"アデカスタブ81"):光安定剤
・AO(旭電化 (株)製 商品名"アデカスタブ81"):酸化防止剤
・ブロッキング防止剤(シンコー技研(株)製 商品名"セパライト")
・粘着性付与剤(荒川化学工業(株)製 商品名"アルコンM135")
・SiC剤(i)(信越化学工業(株)製 商品名"KBM503"):官能基がメタクリル基であり、ゲル化温度が170℃のシランカップリング剤
・SiC剤(ii)(信越化学工業(株)製 商品名"KBM602"):官能基がモノシラン基であり、ゲル化温度160℃のシランカップリング剤
・(製膜時の)加工適正は、160℃で押出し、冷却ロールとエンボス型ロールとで挟圧した後、巻き取りロールに巻き取る直前の状態を目視にて観察した。
ゲル状化する部分や添加剤のブリードアウト等の発生が全く無いものを「◎」、ブリードアウトが若干発生するものの製品としては問題ないものを「○」、ゲル状化する部分や添加剤のブリードアウト等の発生があるものを「×」とした。
変色が全く見られなかったものを「○」、若干変色が見られたものを「△」とした。
得られた各合わせガラスについて、JIS A 5759に準拠して測定した全光線透過率が、80%以上のものを「◎」、60以上80%未満のものを「○」、60%未満のものを「△」とした。
得られた各中間膜を、厚さ50μmの支持体(PET)に貼り合わせ、幅25mm、長さ200mmの試料をそれぞれ作製した。得られた各試料を、厚さ2mmの建築用無機ガラス板にラミネートした後、支持体側から、剥離速度(CHS)200mm/minにて引っ張り、180°剥離する際に要した力(引張せん断強度)を測定した。
この引張せん断強度が、10N以上のものを「◎」、8N以上10N未満のものを「○」、8N未満のものを「×」とした。
実施例3、比較例1、参考例1に示す配合組成物の厚さを2mmに変えた中間膜について、測定周波数10Hz、設定温度範囲−100℃〜90℃における引張弾性率(MPa)をJIS K 7244に規定される方法により測定した。
結果を、図1のグラフに示す。図1中、縦軸は、対数値で表しており、「3元」は比較例1、「2元」は実施例3、「EVA」は参考例1のプロットを表している。
本発明の中間膜を用いて得られた合わせガラスは、自動車用安全ガラス、公共施設や運動施設などのグレージング材、間仕切り、防犯用ドアなどに好適に用いることができる。
Claims (3)
- (A)エチレンと、(B)(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸アクリルエステルとの2元共重合体が金属イオンで架橋され、190℃×2.16KgfにおけるMFRが5〜15g/10分、金属イオンによる中和量が60〜80mol%であるアイオノマー樹脂からなり、該アイオノマー樹脂は、ゲル化温度が170℃以上であって、かつメタクリル基を有するシランカップリング剤を含み、ガラス板に接する層であることを特徴とする合わせガラス用中間膜。
- 合わせガラス用中間膜が3層以上の多層構造からなり、前記アイオノマー樹脂がガラス板と接する最表層であることを特徴とする請求項1に記載の合わせガラス用中間膜。
- 合わせガラス用中間膜の最表層における表面粗さ(算術平均粗さ)が、両面とも0.5μm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の合わせガラス用中間膜。
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