以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本発明の第1の態様〜第4の態様に係る頭部装着型ディスプレイにおける光学的位置調整方法、全般に関する説明
2.実施例1(本発明の第1の態様及び第3の態様に係る頭部装着型ディスプレイにおける光学的位置調整方法)
3.実施例2(実施例1の変形)
4.実施例3(実施例1の別の変形)
5.実施例4(実施例3の変形)
6.実施例5(実施例1〜実施例4の変形)
7.実施例6(実施例5の変形)
8.実施例7(実施例1の別の変形)
9.実施例8(本発明の第2の態様及び第4の態様に係る頭部装着型ディスプレイにおける光学的位置調整方法)
10.実施例9(実施例8の変形)、その他
第2の態様あるいは第4の態様に係る本発明の方法において、基準位置は、2つの光学装置の前方の所定の位置に配置された被写体を撮像装置によって撮像したときに得られる、撮像装置における被写体撮像位置である形態とすることができる。
上記の好ましい形態を含む第1の態様〜第4の態様に係る本発明の方法において、2つの画像の相互の位置の調整は、前記少なくとも一方の画像表示装置を構成する光学装置において表示される画像の左右への移動、上下への移動、及び、回転移動の任意の組合せである形態とすることができる。画像のこれらの移動にあっては、例えば、光学装置に非表示領域を確保し、その部分を画像の移動用に割り当てればよい。
上記の好ましい形態を含む第1の態様〜第4の態様に係る本発明の方法においては、光学装置を半透過型(シースルー型)とすることが望ましい。具体的には、少なくとも観察者の両眼に対向する光学装置の部分を半透過(シースルー)とし、これらの光学装置の部分を通して外景を眺めることができることが望ましい。
以上に説明した好ましい形態を含む第3の態様あるいは第4の態様に係る本発明の方法においては、画像形成装置への画像信号(第2画像信号)に加え、頭部装着型ディスプレイから観察対象物までの距離情報が、外部から頭部装着型ディスプレイに送出される構成とすることができる。尚、無線によって、距離情報を外部から頭部装着型ディスプレイに送出すればよい。あるいは又、頭部装着型ディスプレイから観察対象物までの距離を測定する距離測定装置を頭部装着型ディスプレイは更に備えており、距離測定装置によって距離情報を得る構成とすることができる。距離測定装置として、具体的には、オートフォーカス機能付きカメラや撮像装置(例えば、観察対象物に赤外線・超音波などを照射し、その反射波が戻るまでの時間や照射角度により距離を検出するアクティブ方式の距離測定装置や、パッシブ方式の距離測定装置を有するカメラや撮像装置)、オートフォーカス機能付きカメラ用の距離測定装置(アクティブ方式の距離測定装置)を挙げることができる。あるいは又、制御装置にボタンやスイッチを設け、手動にて頭部装着型ディスプレイから観察対象物までの距離を設定してもよい。
更には、以上に説明した好ましい形態、構成を含む第3の態様あるいは第4の態様に係る本発明の方法において、画像形成装置への画像信号(第2画像信号)に加え、光学装置において表示すべき画像の輝度信号が、外部から頭部装着型ディスプレイに送出される構成とすることができる。尚、無線によって、輝度信号を外部から頭部装着型ディスプレイに送出すればよい。あるいは又、受光センサーを頭部装着型ディスプレイは更に備えており、受光センサーによって得られた環境(頭部装着型ディスプレイあるいは観察対象物の置かれた雰囲気)の輝度情報に基づき、光学装置において表示すべき画像の輝度を制御する構成とすることができる。受光センサーとして、具体的には、フォトダイオードや、上述したカメラや撮像装置に備えられた露出測定用の受光素子を挙げることができる。
更には、以上に説明した好ましい形態、構成を含む第3の態様あるいは第4の態様に係る本発明の方法にあっては、頭部装着型ディスプレイから観察対象物までの距離に基づき、少なくとも一方の画像表示装置を構成する画像形成装置への画像信号(第2画像信号)を更に制御するが、このときの第2画像信号によって光学装置において表示される画像は文字から構成されている形態とすることができる。画像としての文字を表示するための第2画像信号(『文字データ』と呼ぶ場合がある)は、デジタル化されたデータであり、作業者によって、あるいは又、コンピュータ等による処理に基づき、予め作成しておけばよい。文字データのフォーマットは、使用する頭部装着型ディスプレイやシステムに依存して、適宜、選択すればよい。
更には、以上に説明した好ましい形態、構成を含む第3の態様あるいは第4の態様に係る本発明の方法にあっては、2つの光学装置によって形成される虚像の位置(虚像位置)、あるいは、2つの光学装置によって形成される虚像の2つの光学装置からの距離(虚像距離)を、経時的に変化させる構成とすることができる。ここで、経時的に変化させるとは、例えば、5分乃至10分に1回、画像の水平方向の位置を、例えば、画像形成装置における+2画素分あるいは−1画素分、例えば、1分間乃至3分間に亙り、変化させた後、元に戻すことを意味する。
第3の態様あるいは第4の態様に係る本発明の方法にあっては、頭部装着型ディスプレイから観察対象物までの距離に対応した輻輳角の調整を行うが、これによって、観察対象物と観察者(観客)との間の距離と、画像表示装置によって表示される画像の虚像距離とを等しくすることができ、あるいは又、出来るだけ等しくすることができ、観察対象物を眺める観察者(観客)が、左程、焦点を変更、変化させること無く、自然に画像表示装置によって表示される画像を眺める(観察する)ことができる。云い換えれば、このような状態が達成される限り、観察対象物と観察者(観客)との間の距離と、画像表示装置によって表示される画像の虚像距離とは等しいと云える。
本発明において、第1画像信号として、一種のテストパターンを表示し得る画像信号(入力画像信号、入力画像データ)を挙げることができる。具体的には、例えば、水平方向に延びる線、垂直方向に延びる線、斜め方向に延びる線の組合せを例示することができる。ここで、第1画像信号の制御とは、第1画像信号に表示位置補正信号を加えることを意味する。左眼用画像表示装置及び右眼用画像表示装置によって表示される画像が、例えば、無限遠方(あるいは、所望の位置)で一致するように、第1画像信号に表示位置補正信号を加える。第1の態様あるいは第3の態様に係る本発明の方法にあっては、例えば、作業者が頭部装着型ディスプレイを装着し、左眼用画像表示装置及び右眼用画像表示装置によって表示される画像が、例えば、無限遠方(あるいは、所望の位置)で一致するように、制御装置から第1画像信号に表示位置補正信号を加える。そして、無限遠方(あるいは、所望の位置)で一致したときの表示位置補正信号を表示位置制御信号として制御装置に記憶させればよい。また、第2の態様あるいは第4の態様に係る本発明の方法にあっては、各光学装置において表示される画像を対応する撮像装置で撮像し、各撮像装置によって得られた画像の位置の基準位置からのズレを求め、ズレを無くすような表示位置補正信号を求めればよく、この表示位置補正信号を表示位置制御信号として制御装置に記憶させればよい。そして、少なくとも一方の画像表示装置を構成する光学装置において表示される画像の位置を制御し、以て、2つの画像表示装置の相互の光学的な位置を調整するが、具体的には、左眼用画像表示装置及び右眼用画像表示装置によって表示される画像が、例えば、無限遠方(あるいは、所望の位置)で一致するように、少なくとも一方の画像表示装置を構成する光学装置において表示される画像の位置を制御すればよい。尚、第1の態様〜第4の態様に係る本発明の方法において、以上に説明した操作は、例えば、頭部装着型ディスプレイの組立時に行えばよいし、あるいは又、定期的に若しくは不定期に行えばよい。そして、表示位置補正信号から得られた表示位置制御信号が制御装置(制御回路)に記憶され、制御装置において第2画像信号に表示位置制御信号が加えられる。制御装置は、周知の回路から構成することができる。
第3の態様あるいは第4の態様に係る本発明の方法において、頭部装着型ディスプレイから観察対象物までの距離に基づき、少なくとも一方の画像表示装置を構成する画像形成装置への第2画像信号を更に制御するが、係る制御は、具体的には、制御装置において、距離情報に基づく輻輳角制御信号と、表示位置制御信号とを、第2画像信号に加える操作とすればよい。この操作は、例えば、観察対象物の観察時、適宜、行えばよく、観察者が行ってもよいし、上述したとおり、頭部装着型ディスプレイから観察対象物までの距離情報が外部から頭部装着型ディスプレイに送出される構成としてもよいし、距離測定装置によって距離情報を得る構成とすることもできる。あるいは又、制御装置にボタンやスイッチを設け、手動にて頭部装着型ディスプレイから観察対象物までの距離を設定してもよい。
第3の態様あるいは第4の態様に係る本発明の方法において、第2画像信号は、無線によって頭部装着型ディスプレイに送られてくる形態とすることができる。第2画像信号は、例えば、制御装置(制御回路)にて受け取られ、画像表示のための処理が制御装置においてなされる。
以上に説明した好ましい各種の形態、構成を含む第1の態様〜第4の態様に係る本発明の方法(以下、これらを総称して、単に『本発明の方法』と呼ぶ場合がある)における頭部装着型ディスプレイを構成する画像表示装置(以下、単に、『本発明における画像表示装置』と呼ぶ)において、光学装置は、
(a)入射された光が内部を全反射により伝播した後、出射される導光板、
(b)導光板に入射された光が導光板の内部で全反射されるように、導光板に入射された光を偏向させる第1偏向手段、及び、
(c)導光板の内部を全反射により伝播した光を導光板から出射させるために、導光板の内部を全反射により伝播した光を複数回に亙り偏向させる第2偏向手段、
を備えている構成とすることができる。尚、「全反射」という用語は、内部全反射、あるいは、導光板内部における全反射を意味する。以下においても同様である。また、第1偏向手段の中心点が、光学装置中心点に相当する。
尚、画像形成装置の中心から出射され、光学系の画像形成装置側節点を通過した中心光線が光学装置に入射する点を光学装置中心点とし、光学装置中心点を通過し、光学装置の軸線方向と平行な軸線をX軸、光学装置中心点を通過し、光学装置の法線と一致する軸線をY軸とする。ここで、光学系は、画像形成装置と光学装置との間に配置され、画像形成装置から出射された光を平行光とする。そして、光学系にて平行光とされた光束が、光学装置に入射され、導光され、出射される。
本発明における画像表示装置においては、限定するものではないが、中心光線は、XY平面と0度以外の角度(θ)で交わる構成とすることができ、これによって、画像表示装置を眼鏡型のフレームの取付部に取り付けるときの画像表示装置の取付け角度に対する制限が少なくなり、高いデザイン自由度を得ることができる。そして、この場合、中心光線はYZ平面に含まれる形態とすることが、画像表示装置の取り扱いや設定、取付けの容易さといった観点から、好ましい。また、光学系の光軸は、YZ平面に含まれ、且つ、XY平面と0度以外の角度で交わる構成とすることができ、あるいは又、光学系の光軸は、YZ平面と平行であり、且つ、XY平面と平行であり、且つ、画像形成装置の中心から外れた位置を通過する構成とすることができる。また、XY平面が水平面と一致すると仮定したとき、中心光線がXY平面と交わる角度θは仰角である構成とすることができる。即ち、XY平面の下側から中心光線がXY平面に向い、XY平面と衝突する構成とすることができる。そして、この場合、XY平面は垂直面と0度以外の角度で交わることが好ましく、更には、XY平面は垂直面と角度θ’で交わることが好ましい。尚、θ’の最大値として、限定するものではないが、5度を挙げることができる。ここで、水平面とは、観察者が、水平方向に位置する対象物(例えば、水平方向、無限遠方の対象物、地平線や水平線)を眺めたときの視線(『観察者の水平方向視線』)が含まれ、且つ、水平に位置する観察者の2つの瞳が含まれる平面である。また、垂直面は、この水平面に対して垂直な平面である。あるいは又、観察者が、水平方向に位置する対象物(例えば、水平方向、無限遠方の対象物、地平線や水平線)を眺めたとき、光学装置から出射され、観察者の瞳に入射する中心光線は俯角をなす形態とすることができる。水平面に対する係る俯角として、例えば、5度乃至45度を例示することができる。
ここで、第1偏向手段は、導光板に入射された光を反射し、第2偏向手段は、導光板の内部を全反射により伝播した光を、複数回に亙り、透過、反射する構成とすることができる。そして、この場合、第1偏向手段は反射鏡として機能し、第2偏向手段は半透過鏡として機能する構成とすることができる。
このような構成において、第1偏向手段は、例えば、合金を含む金属から構成され、導光板に入射された光を反射させる光反射膜(一種のミラー)や、導光板に入射された光を回折させる回折格子(例えば、ホログラム回折格子膜)から構成することができる。また、第2偏向手段は、誘電体積層膜が多数積層された多層積層構造体や、ハーフミラー、偏光ビームスプリッター、ホログラム回折格子膜から構成することができる。そして、第1偏向手段や第2偏向手段は、導光板の内部に配設されている(導光板の内部に組み込まれている)が、第1偏向手段においては、導光板に入射された平行光が導光板の内部で全反射されるように、導光板に入射された平行光が反射又は回折される。一方、第2偏向手段においては、導光板の内部を全反射により伝播した平行光が複数回に亙り反射又は回折され、導光板から平行光の状態で出射される。
あるいは又、第1偏向手段は、導光板に入射された光を回折し、第2偏向手段は、導光板の内部を全反射により伝播した光を、複数回に亙り、回折する構成とすることができる。そして、この場合、第1偏向手段及び第2偏向手段は回折格子素子から成る形態とすることができ、更には、回折格子素子は、反射型回折格子素子から成り、あるいは又、透過型回折格子素子から成り、あるいは又、一方の回折格子素子は反射型回折格子素子から成り、他方の回折格子素子は透過型回折格子素子から成る構成とすることができる。尚、反射型回折格子素子として、反射型体積ホログラム回折格子を挙げることができる。反射型体積ホログラム回折格子から成る第1偏向手段を、便宜上、『第1回折格子部材』と呼び、反射型体積ホログラム回折格子から成る第2偏向手段を、便宜上、『第2回折格子部材』と呼ぶ場合がある。
本発明における画像表示装置によって、単色(例えば、緑色)の画像表示を行うことができるが、カラーの画像表示を行う場合、第1回折格子部材あるいは第2回折格子部材を、異なるP種類(例えば、P=3であり、赤色、緑色、青色の3種類)の波長帯域(あるいは、波長)を有するP種類の光の回折反射に対応させるために、反射型体積ホログラム回折格子から成るP層の回折格子層が積層されて成る構成とすることができる。各回折格子層には1種類の波長帯域(あるいは、波長)に対応する干渉縞が形成されている。あるいは又、異なるP種類の波長帯域(あるいは、波長)を有するP種類の光の回折反射に対応するために、1層の回折格子層から成る第1回折格子部材あるいは第2回折格子部材にP種類の干渉縞が形成されている構成とすることもできる。あるいは又、画角を例えば三等分して、第1回折格子部材あるいは第2回折格子部材を、各画角に対応する回折格子層が積層されて成る構成とすることができる。そして、これらの構成を採用することで、各波長帯域(あるいは、波長)を有する光が第1回折格子部材あるいは第2回折格子部材において回折反射されるときの回折効率の増加、回折受容角の増加、回折角の最適化を図ることができる。
第1回折格子部材及び第2回折格子部材を構成する材料として、フォトポリマー材料を挙げることができる。反射型体積ホログラム回折格子から成る第1回折格子部材及び第2回折格子部材の構成材料や基本的な構造は、従来の反射型体積ホログラム回折格子の構成材料や構造と同じとすればよい。反射型体積ホログラム回折格子とは、+1次の回折光のみを回折反射するホログラム回折格子を意味する。回折格子部材には、その内部から表面に亙り干渉縞が形成されているが、係る干渉縞それ自体の形成方法は、従来の形成方法と同じとすればよい。具体的には、例えば、回折格子部材を構成する部材(例えば、フォトポリマー材料)に対して一方の側の第1の所定の方向から物体光を照射し、同時に、回折格子部材を構成する部材に対して他方の側の第2の所定の方向から参照光を照射し、物体光と参照光とによって形成される干渉縞を回折格子部材を構成する部材の内部に記録すればよい。第1の所定の方向、第2の所定の方向、物体光及び参照光の波長を適切に選択することで、回折格子部材の表面における干渉縞の所望のピッチ、干渉縞の所望の傾斜角(スラント角)を得ることができる。干渉縞の傾斜角とは、回折格子部材(あるいは回折格子層)の表面と干渉縞の成す角度を意味する。第1回折格子部材及び第2回折格子部材を、反射型体積ホログラム回折格子から成るP層の回折格子層の積層構造から構成する場合、このような回折格子層の積層は、P層の回折格子層をそれぞれ別個に作製した後、P層の回折格子層を、例えば、紫外線硬化型接着剤を使用して積層(接着)すればよい。また、粘着性を有するフォトポリマー材料を用いて1層の回折格子層を作製した後、その上に順次粘着性を有するフォトポリマー材料を貼り付けて回折格子層を作製することで、P層の回折格子層を作製してもよい。
あるいは又、本発明における画像表示装置において、光学装置は、画像形成装置から出射された光が入射され、観察者の瞳に向かって出射される半透過ミラーから構成されている形態とすることができる。尚、画像形成装置から出射された光は、空気中を伝播して半透過ミラーに入射する構造としてもよいし、例えば、ガラス板やプラスチック板等の透明な部材(具体的には、後述する導光板を構成する材料と同様の材料から成る部材)の内部を伝播して半透過ミラーに入射する構造としてもよい。尚、半透過ミラーを、この透明な部材を介して画像形成装置に取り付けてもよいし、半透過ミラーを、この透明な部材とは別の部材を介して画像形成装置に取り付けてもよい。
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明における画像表示装置において、画像形成装置は、2次元マトリクス状に配列された複数の画素を有する形態とすることができる。尚、このような画像形成装置の構成を、便宜上、『第1の構成の画像形成装置』と呼ぶ。
第1の構成の画像形成装置として、例えば、反射型空間光変調装置及び光源から構成された画像形成装置;透過型空間光変調装置及び光源から構成された画像形成装置;有機EL(Electro Luminescence)、無機EL、発光ダイオード(LED)等の発光素子から構成された画像形成装置を挙げることができるが、中でも、反射型空間光変調装置及び光源から構成された画像形成装置とすることが好ましい。空間光変調装置として、ライト・バルブ、例えば、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)等の透過型あるいは反射型の液晶表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を挙げることができ、光源として発光素子を挙げることができる。更には、反射型空間光変調装置は、液晶表示装置、及び、光源からの光の一部を反射して液晶表示装置へと導き、且つ、液晶表示装置によって反射された光の一部を通過させて光学系へと導く偏光ビームスプリッターから成る構成とすることができる。光源を構成する発光素子として、赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子、白色発光素子を挙げることができるし、あるいは又、赤色発光素子、緑色発光素子及び青色発光素子から出射された赤色光、緑色光及び青色光をライトパイプを用いて混色、輝度均一化を行うことで白色光を得てもよい。発光素子として、例えば、半導体レーザ素子や固体レーザ、LEDを例示することができる。画素の数は、画像表示装置に要求される仕様に基づき決定すればよく、画素の数の具体的な値として、320×240、432×240、640×480、1024×768、1920×1080等を例示することができる。
あるいは又、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明における画像表示装置において、画像形成装置は、光源、及び、光源から出射された平行光を走査する走査手段を備えた形態とすることができる。尚、このような画像形成装置の構成を、便宜上、『第2の構成の画像形成装置』と呼ぶ。
第2の構成の画像形成装置における光源として発光素子を挙げることができ、具体的には、赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子、白色発光素子を挙げることができるし、あるいは又、赤色発光素子、緑色発光素子及び青色発光素子から出射された赤色光、緑色光及び青色光をライトパイプを用いて混色、輝度均一化を行うことで白色光を得てもよい。発光素子として、例えば、半導体レーザ素子や固体レーザ、LEDを例示することができる。第2の構成の画像形成装置における画素(仮想の画素)の数も、画像表示装置に要求される仕様に基づき決定すればよく、画素(仮想の画素)の数の具体的な値として、320×240、432×240、640×480、1024×768、1920×1080等を例示することができる。また、カラーの画像表示を行う場合であって、光源を赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子から構成する場合、例えば、クロスプリズムを用いて色合成を行うことが好ましい。走査手段として、光源から出射された光を水平走査及び垂直走査する、例えば、二次元方向に回転可能なマイクロミラーを有するMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)やガルバノ・ミラーを挙げることができる。
第1の構成の画像形成装置あるいは第2の構成の画像形成装置において、光学系(出射光を平行光とする光学系であり、『平行光出射光学系』と呼ぶ場合があり、具体的には、例えば、コリメート光学系やリレー光学系)にて複数の平行光とされた光を導光板に入射させるが、このような、平行光であることの要請は、これらの光が導光板へ入射したときの光波面情報が、第1偏向手段と第2偏向手段を介して導光板から出射された後も保存される必要があることに基づく。尚、複数の平行光を生成させるためには、具体的には、例えば、平行光出射光学系における焦点距離の所(位置)に、例えば、画像形成装置の光出射部を位置させればよい。平行光出射光学系は、画素の位置情報を光学装置の光学系における角度情報に変換する機能を有する。平行光出射光学系として、凸レンズ、凹レンズ、自由曲面プリズム、ホログラムレンズを、単独、若しくは、組み合わせた、全体として正の光学的パワーを持つ光学系を例示することができる。平行光出射光学系と導光板との間には、平行光出射光学系から不所望の光が出射されて導光板に入射しないように、開口部を有する遮光部材を配置してもよい。
導光板は、導光板の軸線(X軸)と平行に延びる2つの平行面(第1面及び第2面)を有している。光が入射する導光板の面を導光板入射面、光が出射する導光板の面を導光板出射面としたとき、第1面によって導光板入射面及び導光板出射面が構成されていてもよいし、第1面によって導光板入射面が構成され、第2面によって導光板出射面が構成されていてもよい。導光板を構成する材料として、石英ガラスやBK7等の光学ガラスを含むガラスや、プラスチック材料(例えば、PMMA、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、非晶性のポリプロピレン系樹脂、AS樹脂を含むスチレン系樹脂)を挙げることができる。導光板の形状は、平板に限定するものではなく、湾曲した形状を有していてもよい。
本発明において、フレームは、観察者の正面に配置されるフロント部と、フロント部の両端に蝶番を介して回動自在に取り付けられた2つのテンプル部とから成る構成とすることができる。尚、各テンプル部の先端部にはモダン部が取り付けられている。画像表示装置はフレームに取り付けられているが、具体的には、例えば、画像形成装置をテンプル部に取り付ければよい。
更には、本発明において、ノーズパッドが取り付けられている構成とすることができる。即ち、本発明における頭部装着型ディスプレイの全体を眺めたとき、フレーム及びノーズパッドの組立体は、通常の眼鏡と略同じ構造を有する。尚、リム部は、有っても、無くともよい。フレームを構成する材料は、金属や合金、プラスチック、これらの組合せといった、通常の眼鏡を構成する材料と同じ材料から構成することができる。ノーズパッドも周知の構成、構造とすることができる。
前述したとおり、フロント部の中央部分に撮像装置が取り付けられている形態とすることができる。撮像装置は、具体的には、例えば、CCDあるいはCMOSセンサーから成る固体撮像素子とレンズから構成されている。撮像装置からの配線は、例えば、フロント部を介して、一方の画像表示装置(あるいは画像形成装置)に接続すればよく、更には、画像表示装置(あるいは画像形成装置)から延びる配線に含ませればよい。
本発明における頭部装着型ディスプレイにあっては、デザイン上、あるいは、装着の容易性といった観点から、2つの画像形成装置からの配線(信号線や電源線等)が、テンプル部、及び、モダン部の内部を介して、モダン部の先端部から外部に延び、制御装置(制御回路)に接続されている形態とすることが望ましい。更には、各画像形成装置はヘッドホン部を備えており、各画像形成装置からのヘッドホン部用配線が、テンプル部、及び、モダン部の内部を介して、モダン部の先端部からヘッドホン部へと延びている形態とすることもできる。ヘッドホン部として、例えば、インナーイヤー型のヘッドホン部、カナル型のヘッドホン部を挙げることができる。ヘッドホン部用配線は、より具体的には、モダン部の先端部から、耳介(耳殻)の後ろ側を回り込むようにしてヘッドホン部へと延びている形態とすることが好ましい。
本発明における頭部装着型ディスプレイは、例えば、映画等の字幕の表示;映像に同期した映像に関する説明文やクローズド・キャプションの表示;芝居や歌舞伎、能、狂言、オペラ、音楽会、バレー、各種演劇、遊園地(アミューズメントパーク)、美術館、観光地、行楽地、観光案内等における観察対象物に関する各種説明、その内容や進行状況、背景等を説明するための説明文等の表示;各種装置等の観察対象物の運転、操作、保守、分解時等における各種説明や、記号、符号、印、標章、図案等の表示;人物や物品等の観察対象物に関する各種説明や、記号、符号、印、標章、図案等の表示;クローズド・キャプションの表示に用いることができる。芝居や歌舞伎、能、狂言、オペラ、音楽会、バレー、各種演劇、遊園地(アミューズメントパーク)、美術館、観光地、行楽地、観光案内等にあっては、適切なタイミングで観察対象物に関連した画像としての文字を画像表示装置において表示すればよい。具体的には、例えば、映画等の進行状況に応じて、あるいは又、芝居等の進行状況に応じて、所定のスケジュール、時間配分に基づき、作業者の操作によって、あるいは、コンピュータ等の制御下、第2画像信号が画像表示装置に送出され、画像(文字)が画像表示装置にて表示される。また、各種装置、人物や物品等の観察対象物に関する各種説明の表示を行う場合、頭部装着型ディスプレイに撮像装置を配設し、撮像装置によって各種装置、人物や物品等の観察対象物を撮影し、画像表示装置において撮影内容を解析することで、予め作成しておいた各種装置、人物や物品等の観察対象物に関する各種説明の表示を画像表示装置にて行うことができる。あるいは又、本発明における頭部装着型ディスプレイは、立体視ディスプレイ装置として用いることもできる。
そして、画像形成装置への第2画像信号には、文字データだけでなく、例えば、表示すべき文字に関する輝度データ、又は、色度データ、又は、輝度データ及び色度データを含めることができる。輝度データは、光学装置を通して眺めた観察対象物を含む所定の領域の輝度に対応した輝度データとすることができるし、色度データは、光学装置を通して眺めた観察対象物を含む所定の領域の色度に対応した色度データとすることができる。このように、文字に関する輝度データを含めることで、表示される文字の輝度(明るさ)の制御を行うことができるし、文字に関する色度データを含めることで、表示される文字の色度(色)の制御を行うことができるし、文字に関する輝度データ及び色度データを含めることで、表示される文字の輝度(明るさ)及び色度(色)の制御を行うことができる。画像表示装置を通して眺めた観察対象物を含む所定の領域の輝度に対応した輝度データとする場合、画像表示装置を通して眺めた観察対象物を含む所定の領域の輝度の値が高くなるほど、画像の輝度の値が高くなるように(即ち、画像がより明るく表示されるように)、輝度データの値を設定すればよい。また、画像表示装置を通して眺めた観察対象物を含む所定の領域の色度に対応した色度データとする場合、画像表示装置を通して眺めた観察対象物を含む所定の領域の色度と、表示すべき画像の色度とが、おおよそ補色関係となるように色度データの値を設定すればよい。補色とは、色相環(color circle)で正反対に位置する関係の色の組み合わせ指す。赤に対しての緑、黄に対しての紫、青に対しての橙など、相補的な色のことでもある。或る色に別の色を適宜割合で混合して、光の場合は白、物体の場合は黒というように、彩度低下を引き起こす色についても云うが、並列した際の視覚的効果の相補性と混合した際の相補性は異なる。余色、対照色、反対色ともいう。但し、反対色は補色が相対する色を直接に指示するのに対し、補色の指示する範囲はやや広い。補色同士の色の組み合わせは互いの色を引き立て合う相乗効果があり、これは補色調和といわれる。
実施例1は、本発明の第1の態様及び第2の態様に係る頭部装着型ディスプレイにおける光学的位置調整方法に関する。実施例1の頭部装着型ディスプレイにおける画像表示装置の概念図を図1に示す。また、実施例1の頭部装着型ディスプレイにおいて、画像表示装置を構成する導光板における光の伝播を模式的に図2に示し、頭部装着型ディスプレイを上方から眺めた模式図を図3に示し、横から眺めた模式図を図4に示す。更には、実施例1の頭部装着型ディスプレイを正面から眺めた模式図を図5に示し、実施例1の頭部装着型ディスプレイを観察者の頭部に装着した状態を上方から眺めた図(但し、画像表示装置のみを示し、フレームの図示は省略)を図6に示し、実施例1の頭部装着型ディスプレイを使用している状態の概念図を図7及び図8に示す。
実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例8の頭部装着型ディスプレイは、
(イ)観察者の頭部に装着される眼鏡型のフレーム10、並びに、
(ロ)フレーム10に取り付けられた右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置100,200,300,400,500、
を備えている。そして、各画像表示装置100,200,300,400,500は、
(A)画像形成装置111,211、並びに、
(B)画像形成装置111,211から出射された光が入射され、導光され、出射される光学装置(導光手段)120,320,520、
を備えている。尚、各画像表示装置100,200,300,400,500は、更に、
(C)画像形成装置111,211から出射された光を平行光とする光学系(平行光出射光学系)112,254、
を備えている。ここで、光学系112,254は、画像形成装置111,211と光学装置120,320,520との間に配置されている。そして、光学系112,254にて平行光とされた光束が、光学装置120,320,520に入射され、導光され、出射される。画像形成装置111,211は、単色(例えば、緑色)の画像を表示する。また、光学装置120,320,520は半透過型(シースルー型)である。具体的には、少なくとも観察者の両眼に対向する光学装置の部分(より具体的には、後述する導光板121,321及び第2偏向手段140,340)は、半透過(シースルー)である。
尚、実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例8において、画像形成装置111,211の中心から出射され、光学系112,254の画像形成装置側節点を通過した中心光線CLが光学装置120,320,520に入射する点を光学装置中心点Oとし、光学装置中心点Oを通過し、光学装置120,320,520の軸線方向と平行な軸線をX軸、光学装置中心点Oを通過し、光学装置120,320,520の法線と一致する軸線をY軸とする。尚、次に述べる第1偏向手段130,330の中心点が、光学装置中心点Oである。
そして、実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例6の光学装置120,320は、
(a)入射された光が内部を全反射により伝播した後、出射される導光板121,321、
(b)導光板121,321に入射された光が導光板121,321の内部で全反射されるように、導光板121,321に入射された光を偏向させる第1偏向手段130,330、及び、
(c)導光板121,321の内部を全反射により伝播した光を導光板121,321から出射させるために、導光板121,321の内部を全反射により伝播した光を複数回に亙り偏向させる第2偏向手段140,340、
を備えている。
ここで、実施例1において、第1偏向手段130及び第2偏向手段140は導光板121の内部に配設されている。そして、第1偏向手段130は、導光板121に入射された光を反射し、第2偏向手段140は、導光板121の内部を全反射により伝播した光を、複数回に亙り、透過、反射する。即ち、第1偏向手段130は反射鏡として機能し、第2偏向手段140は半透過鏡として機能する。より具体的には、導光板121の内部に設けられた第1偏向手段130は、アルミニウム(Al)から成り、導光板121に入射された光を反射させる光反射膜(一種のミラー)から構成されている。一方、導光板121の内部に設けられた第2偏向手段140は、誘電体積層膜が多数積層された多層積層構造体から構成されている。誘電体積層膜は、例えば、高誘電率材料としてのTiO2膜、及び、低誘電率材料としてのSiO2膜から構成されている。誘電体積層膜が多数積層された多層積層構造体に関しては、特表2005−521099に開示されている。図面においては6層の誘電体積層膜を図示しているが、これに限定するものではない。誘電体積層膜と誘電体積層膜との間には、導光板121を構成する材料と同じ材料から成る薄片が挟まれている。尚、第1偏向手段130においては、導光板121に入射された平行光が導光板121の内部で全反射されるように、導光板121に入射された平行光が反射(又は回折)される。一方、第2偏向手段140においては、導光板121の内部を全反射により伝播した平行光が複数回に亙り反射(又は回折)され、導光板121から平行光の状態で、観察者の瞳41に向かって出射される。
第1偏向手段130は、導光板121の第1偏向手段130を設ける部分124を切り出すことで、導光板121に第1偏向手段130を形成すべき斜面を設け、係る斜面に光反射膜を真空蒸着した後、導光板121の切り出した部分124を第1偏向手段130に接着すればよい。また、第2偏向手段140は、導光板121を構成する材料と同じ材料(例えば、ガラス)と誘電体積層膜(例えば、真空蒸着法にて成膜することができる)とが多数積層された多層積層構造体を作製し、導光板121の第2偏向手段140を設ける部分125を切り出して斜面を形成し、係る斜面に多層積層構造体を接着し、研磨等を行って、外形を整えればよい。こうして、導光板121の内部に第1偏向手段130及び第2偏向手段140が設けられた光学装置120を得ることができる。
ここで、実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例6において、光学ガラスやプラスチック材料から成る導光板121,321は、導光板121,321の内部全反射による光伝播方向(X軸)と平行に延びる2つの平行面(第1面122,322及び第2面123,323)を有している。第1面122,322と第2面123,323とは対向している。そして、光入射面に相当する第1面122,322から平行光が入射され、内部を全反射により伝播した後、光出射面に相当する第1面122,322から出射される。但し、これに限定するものではなく、第2面123,323によって光入射面が構成され、第1面122,322によって光出射面が構成されていてもよい。
実施例1あるいは後述する実施例3において、画像形成装置111は、第1の構成の画像形成装置であり、2次元マトリクス状に配列された複数の画素を有する。具体的には、画像形成装置111は、反射型空間光変調装置150、及び、白色光を出射する発光ダイオードから成る光源153から構成されている。各画像形成装置111全体は、筐体113(図1あるいは図12では、一点鎖線で示す)内に納められており、係る筐体113には開口部(図示せず)が設けられており、開口部を介して光学系(平行光出射光学系,コリメート光学系)112から光が出射される。反射型空間光変調装置150は、ライト・バルブとしてのLCOSから成る液晶表示装置(LCD)151、及び、光源153からの光の一部を反射して液晶表示装置151へと導き、且つ、液晶表示装置151によって反射された光の一部を通過させて光学系112へと導く偏光ビームスプリッター152から構成されている。液晶表示装置151は、2次元マトリクス状に配列された複数(例えば、640×480個)の画素(液晶セル)を備えている。偏光ビームスプリッター152は、周知の構成、構造を有する。光源153から出射された無偏光の光は、偏光ビームスプリッター152に衝突する。偏光ビームスプリッター152において、P偏光成分は通過し、系外に出射される。一方、S偏光成分は、偏光ビームスプリッター152において反射され、液晶表示装置151に入射し、液晶表示装置151の内部で反射され、液晶表示装置151から出射される。ここで、液晶表示装置151から出射した光の内、「白」を表示する画素から出射した光にはP偏光成分が多く含まれ、「黒」を表示する画素から出射した光にはS偏光成分が多く含まれる。従って、液晶表示装置151から出射され、偏光ビームスプリッター152に衝突する光の内、P偏光成分は、偏光ビームスプリッター152を通過し、光学系112へと導かれる。一方、S偏光成分は、偏光ビームスプリッター152において反射され、光源153に戻される。光学系112は、例えば、凸レンズから構成され、平行光を生成させるために、光学系112における焦点距離の所(位置)に画像形成装置111(より具体的には、液晶表示装置151)が配置されている。
フレーム10は、観察者の正面に配置されるフロント部11と、フロント部11の両端に蝶番12を介して回動自在に取り付けられた2つのテンプル部13と、各テンプル部13の先端部に取り付けられたモダン部(先セル、耳あて、イヤーパッドとも呼ばれる)14から成る。また、ノーズパッド10’が取り付けられている。即ち、フレーム10及びノーズパッド10’の組立体は、基本的には、通常の眼鏡と略同じ構造を有する。更には、各筐体113が、取付け部材19によってテンプル部13に取り付けられている。フレーム10は、金属又はプラスチックから作製されている。尚、各筐体113は、取付け部材19によってテンプル部13に着脱自在に取り付けられていてもよい。また、眼鏡を所有し、装着している観察者に対しては、観察者の所有する眼鏡のフレームのテンプル部に、各筐体113を取付け部材19によって着脱自在に取り付けてもよい。
更には、画像形成装置111A,111Bから延びる配線(信号線や電源線等)15が、テンプル部13、及び、モダン部14の内部を介して、モダン部14の先端部から外部に延び、制御装置(制御回路、制御手段)18に接続されている。更には、各画像形成装置111A,111Bはヘッドホン部16を備えており、各画像形成装置111A,111Bから延びるヘッドホン部用配線16’が、テンプル部13、及び、モダン部14の内部を介して、モダン部14の先端部からヘッドホン部16へと延びている。ヘッドホン部用配線16’は、より具体的には、モダン部14の先端部から、耳介(耳殻)の後ろ側を回り込むようにしてヘッドホン部16へと延びている。このような構成にすることで、ヘッドホン部16やヘッドホン部用配線16’が乱雑に配置されているといった印象を与えることがなく、すっきりとした頭部装着型ディスプレイとすることができる。
また、フロント部11の中央部分11’には、CCDあるいはCMOSセンサーから成る固体撮像素子とレンズ(これらは図示せず)とから構成された撮像装置17が、適切な取付部材(図示せず)によって取り付けられている。撮像装置17からの信号は、撮像装置17から延びる配線(図示せず)を介して、画像形成装置111Aに送出される。
実施例1の頭部装着型ディスプレイにおける光学的位置調整方法を、以下、説明する。尚、この光学的位置調整方法は、例えば、頭部装着型ディスプレイの組立時、あるいは又、定期的に若しくは不定期に、以下の操作を行う。
即ち、少なくとも一方の画像表示装置(実施例1においては、右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置100,200,300,400,500)を構成する画像形成装置111A,111Bへの第1画像信号(入力画像信号、入力画像データ)を制御する。具体的には、有線又は無線で、第1画像信号としての一種のテストパターンを表示し得る画像信号(入力画像信号、入力画像データ)を制御装置18に送る。そして、制御装置18において、第1画像信号に対して画像表示のための処理が行われ、画像形成装置111A,111Bにおいて画像を生成する。この画像は、光学系112,254、光学装置120,320,520を介して、最終的に、頭部装着型ディスプレイを装着した作業者40の両眼に到達する。テストパターンは、例えば、水平方向に延びる線、垂直方向に延びる線、斜め方向に延びる線の組合せである。
そして、作業者40が、左眼用及び右眼用の画像表示装置100,200,300,400,500によって表示される画像が、例えば、無限遠方(あるいは、所望の位置)で一致するように(重なり合うように)、制御装置18を介して、具体的には、制御装置18に配置されたスイッチ(図示せず)を用いて、画像を左右、上下に移動させ、また、回転移動させる。即ち、例えば、図21の(B)における点「C」が無限遠方(あるいは、所望の位置)となるように、画像を左右、上下に移動させ、また、回転移動させる。このように、制御装置18に配置されたスイッチの操作によって、第1画像信号の制御が行われる。即ち、制御装置18内で表示位置補正信号が生成され、第1画像信号に表示位置補正信号が加えられる。
左眼用及び右眼用の画像表示装置100,200,300,400,500によって表示される画像が、例えば、無限遠方(あるいは、所望の位置)において、左右にずれている状態を模式的に図9の(A)に示し、上下にずれている状態を模式的に図9の(B)に示し、回転した状態でずれている状態を模式的に図9の(C)に示す。ここで、図9の(A)、(B)及び(C)における右手側の図は、右眼用の画像表示装置100,200,300,400,500によって表示される画像を示し、図9の(A)、(B)及び(C)における左手側の図は、左眼用の画像表示装置100,200,300,400,500によって表示される画像を示す。また、図9の(A)、(B)及び(C)における右手側の図における点線は、左眼用の画像表示装置100,200,300,400,500によって表示される画像を重ね合わせて示すものである。
ここで、テストパターンの水平方向の移動のためには、表示位置補正信号として、第1画像信号に基づく画像の水平方向の位置を+i画素あるいは−i画素分、変える信号を制御装置18において生成すればよい。あるいは又、水平同期信号のタイミングを+i画素あるいは−i画素分、変える信号を制御装置18において生成すればよい。また、テストパターンの垂直方向の移動のためには、表示位置補正信号として、第1画像信号に基づく画像の垂直方向の位置を+j画素あるいは−j画素分、変える信号を制御装置18において生成すればよく、あるいは又、垂直同期信号のタイミングを+j画素あるいは−j画素分、変える信号を制御装置18において生成すればよい。即ち、画像のメモリ読み出し位置を、タイミング的に、遅らす、又は、早めることにより実現することができ、あるいは、垂直同期信号と水平同期信号のタイミングをずらすことによって実現することができる。更には、テストパターンの回転移動のためには、周知の方法に基づく画像の回転のための信号を表示位置補正信号として、制御装置18において生成すればよい。
そして、左眼用及び右眼用の画像表示装置100,200,300,400,500によって表示される画像が無限遠方(あるいは、所望の位置)で一致したときの(重なり合ったときの)表示位置補正信号を表示位置制御信号として制御装置18に記憶させる。このような操作は、例えば、制御装置18に設けられたボタン(図示せず)を用いることで行うことができる。こうして、少なくとも一方の画像表示装置100,200,300,400,500を構成する光学装置120,320,520において表示される画像の位置を制御し、以て、2つの画像表示装置100,200,300,400,500における2つの画像の相互の位置を調整することができる。
そして、表示位置補正信号から得られた表示位置制御信号は、上述したとおり、制御装置(制御回路、制御手段)18に記憶される。制御装置18には、例えば、文字データ再生装置51や画像データ及び文字データ再生装置51’によって再生された第2画像信号(例えば、文字データ)が文字データ無線送信装置52を介して無線によって送られてくる。そして、制御装置18において、第2画像信号に対して画像表示のための処理がなされる。即ち、制御装置18において第2画像信号に表示位置制御信号が加えられる。こうして、左眼用及び右眼用の画像表示装置100,200,300,400,500によって表示される画像が、例えば、無限遠方(あるいは、所望の位置)で一致するように(重なり合うように)、少なくとも一方の画像表示装置100,200,300,400,500を構成する光学装置120,320,520において表示される画像(第2画像信号に基づく種々の画像)の位置を制御することができる。
更には、頭部装着型ディスプレイから観察対象物までの距離に基づき、少なくとも一方の画像表示装置(実施例1においては、右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置100,200,300,400,500)を構成する画像形成装置111A,111Bへの第2画像信号を更に制御することで、頭部装着型ディスプレイから観察対象物までの距離に対応した輻輳角の調整を行う。
ここで、画像形成装置111A,111Bへの画像信号(第2画像信号)に加え、頭部装着型ディスプレイから観察対象物までの距離情報が、外部から頭部装着型ディスプレイに送出される。このような信号のフォーマットの概念図を図10の(A)に示す。そして、この距離情報に基づき、第2画像信号に基づく画像の水平方向の位置を+k画素分あるいは−k画素分、変える信号(輻輳角制御信号)を制御装置18において生成すればよい。尚、画像の水平方向の位置を1画素、変化させると、輻輳角がどの程度、変化し、あるいは又、虚像距離がどの程度、変化するかを、予め、調べておき、制御装置18にこれらの関係を記憶しておけばよい。尚、この信号に、画像の水平方向の位置を+i画素あるいは−i画素分、変える表示位置制御信号、画像の垂直方向の位置を+j画素あるいは−j画素分、変える表示位置制御信号、更には、画像の回転のための表示位置制御信号が加重されて、画像形成装置111A,111Bへ送出される。このように、距離情報(あるいは、左右の画像シフト量)によって、能動的に画像をシフトさせ、虚像を所望の位置に配することができる。
あるいは又、頭部装着型ディスプレイから観察対象物までの距離を測定する距離測定装置を更に備えており、距離測定装置によって距離情報を得る構成としてもよい。距離測定装置として、例えば、撮像装置17を、オートフォーカス機能付き撮像装置(パッシブ方式の距離測定装置を有する撮像装置)とすればよい。あるいは又、制御装置18にボタンやスイッチを設け、手動にて頭部装着型ディスプレイから観察対象物までの距離18を設定してもよい。
図10の(B)に基づき、頭部装着型ディスプレイから観察対象物までの距離に対応した輻輳角の調整の説明を行う。ここで、画像表示装置によって表示される第2画像信号に基づく画像(文字)の虚像距離を『a』とし、このときの画像に対する輻輳角を『α』とする。また、『γ』を、虚像距離aから『c』だけ遠ざかった場合の画像における輻輳角とし、『β』を、虚像距離aから『b』だけ近づいた場合の画像における輻輳角とする。更には、左右の瞳間距離を『D』とする。ここで、仮に、
D=61.5mm
a=4000mm
とすると、
α=53分(53’)
となる。
画像形成装置における1画素を、3分(3’)と定義する。ここで、画像表示位置を、所定の位置から水平方向に1画素分、内側にずらしたとすると、
β=56分(56’)
となり、
b=225mm
となる。一方、画像表示位置を、所定の位置から水平方向に1画素分、外側にずらしたとすると、
γ=50分(50’)
となり、
c=228mm
となる。また、
a=8000mm
とした場合は、1画素分、画像をシフトさせると、虚像距離を約1m、シフトさせることができる。
このように、画像表示位置を所定の位置から水平方向に所望の画素分、ずらすことで、輻輳角の調整を行うことができる。云い換えれば、右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置100,200,300,400,500)を構成する画像形成装置111A,111Bへの第2画像信号を、表示位置制御信号のみならず、輻輳角制御信号によっても制御することで、頭部装着型ディスプレイから観察対象物までの距離に対応した輻輳角の正確な調整を行うことができ、その結果、観察対象物と観察者(観客)40との間の距離と、画像表示装置によって表示される画像(例えば文字)の虚像距離とを等しくすることができ、あるいは又、出来るだけ等しくすることができ、観察対象物を眺める観察者(観客)40が、左程、焦点を変更、変化させること無く、自然に画像表示装置によって表示される画像を眺めることができる。
尚、前述した第1画像信号の制御においても、基本的には、以上に説明した画像の変化と同様の変化を得ることができ、その結果、表示位置制御信号を求めることができる。
画像形成装置への画像信号(第2画像信号)に加え、光学装置において表示すべき画像の輝度信号を、外部から頭部装着型ディスプレイに送出することで、表示される画像の視認性を高めることができる。あるいは又、受光センサーを更に備えており、受光センサーによって得られた環境(頭部装着型ディスプレイあるいは観察対象物の置かれた雰囲気)の輝度情報に基づき、光学装置において表示すべき画像の輝度を制御する構成とすることもできる。受光センサーとして、具体的には、フォトダイオードや、撮像装置17に備えられた露出測定用の受光素子を挙げることができる。
頭部装着型ディスプレイを例えば劇場にて使用する場合、芝居等におけるその内容や進行状況、背景等を説明するための説明文を画像として頭部装着型ディスプレイに表示すればよいが、虚像距離を所望の距離とすることが要求される。即ち、観劇者の座る位置によって、観察対象物と観察者(観客)との間の距離と、画像表示装置によって表示される画像(例えば文字)の虚像距離が変化する。従って、観劇者の位置に依存して、虚像距離の最適化を図る必要があるが、実施例1の頭部装着型ディスプレイにあっては、頭部装着型ディスプレイから観察対象物までの距離に対応した輻輳角の最適化が図られているので、観劇者の位置に依存して虚像距離が最適化されている。また、場面によって、虚像距離を変化させたい場合があるが、このような場合、頭部装着型ディスプレイから観察対象物までの距離情報を外部から頭部装着型ディスプレイに送出することで、容易に対処することができる。
あるいは又、観察者(使用者)が、虚像距離を所望の距離に設定したり、虚像位置を所望の位置に設定することも可能である。具体的には、制御装置18にスイッチやボタンを配し、これを観察者が操作することにより、所望の距離あるいは位置に虚像を配置させることが可能である。例えば、背景が変化した場合、任意に虚像距離や虚像位置を変更することが可能である。このような操作は、例えば、観察対象物の観察時、適宜、観察者が行えばよく、このような操作は、具体的には、制御装置18において第2画像信号に輻輳角制御信号を加える操作である。そして、これによって、観客が視線を余り動かさずに、例えば、字幕等の文字を確実に読むことが可能となるし、観客のそれぞれに適した字幕等(例えば、異なる言語に基づく字幕等)を、容易に、同時に表示することができる。
ここで、第2画像信号はデジタル化されたデータであり、表示の前に、予め、作成されている。画像の表示位置は、観察対象物を眺めたときに邪魔にならない位置とすればよい。また、画像の表示は、具体的には、例えば、所定のスケジュール、時間配分等に基づき、あるいは又、観察対象物の進行状況に応じて、文字データ再生装置51や画像データ及び文字データ再生装置51’に備えられたコンピュータ(図示せず)の制御下、文字データ無線送信装置52によって制御装置18に無線にて送出される。
実施例1の頭部装着型ディスプレイにおいて、第2画像信号として、文字データだけでなく、表示すべき文字に関する輝度データや色度データを含めれば、字幕等の文字が、文字の背景に依存して視認し難くなることを確実に防止することができる。尚、輝度データとして、画像表示装置を通して眺めた観察対象物(登場人物や背景等)を含む所定の領域(例えば、舞台全体の下方三分の一に相当する領域)の輝度に対応した輝度データを例示することができる。また、色度データとして、画像表示装置を通して眺めた観察対象物を含む所定の領域の色度に対応した色度データとすることができる。特に、半透過型(シースルー型)の光学装置越しに見るスクリーンや舞台等の明るさと、光学装置に表示される文字の明るさや色のバランスが一定の範囲にないと、字幕やスクリーン、舞台等を良好に観察することが困難となる場合があるが、表示すべき文字の明るさや色をスクリーンや舞台等に合わせることができ、文字を良好に視認することができる。即ち、観察者(観客)が眺めた観察対象物等の説明等のための文字が、文字の背景に依存して視認し難くなることを確実に防止することが可能である。そして、実施例1の頭部装着型ディスプレイの使用においては、例えば、観劇にあっては、適切なタイミングで観察対象物に関連した文字(例えば、劇の状況や背景に関する説明文、登場人物の説明文、登場人物の会話等)を画像表示装置100,200,300,400,500において表示すればよい。具体的には、例えば、芝居の進行状況に応じて、作業者の操作によって、あるいは、コンピュータ等の制御下、文字データを画像表示装置100,200,300,400,500に送出し、文字を画像表示装置100,200,300,400,500にて表示すればよい。
更には、虚像位置が固定されると、目が疲れると云われている。焦点が固定されると、眼球の動きが少なくなるためである。それ故、適度に虚像距離を変化させ、あるいは、虚像位置を動かすことにより、目の疲れを低減させる効果がある。即ち、2つの光学装置によって形成される虚像位置、あるいは、2つの光学装置によって形成される虚像の2つの光学装置からの距離(虚像距離)を、経時的に変化させてもよい。具体的には、例えば、5分に1回、画像の水平方向の位置を、例えば、画像形成装置における+2画素分、例えば、1分間に亙り、変化させた後、元に戻せばよい。
以上に説明したとおり、実施例1の方法においては、少なくとも一方の画像表示装置を構成する画像形成装置への第1画像信号を制御することで、少なくとも一方の画像表示装置を構成する光学装置において表示される画像の位置を制御し、以て、2つの画像の相互の位置を調整する。それ故、例えば、両眼視タイプの頭部装着型ディスプレイの製造時、右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置の光学的調整、即ち、所望の画像が得られるように2つの画像表示装置の光学的な位置調整を容易に行うことができる。
実施例2は、実施例1における画像表示装置の変形である。実施例2あるいは後述する実施例4の頭部装着型ディスプレイにおける画像表示装置200,400の概念図を図11及び図13に示すように、画像形成装置211は、第2の構成の画像形成装置から構成されている。即ち、光源251、及び、光源251から出射された平行光を走査する走査手段253を備えている。より具体的には、画像形成装置211は、
光源251、
光源251から出射された光を平行光とするコリメート光学系252、
コリメート光学系252から出射された平行光を走査する走査手段253、及び、
走査手段253によって走査された平行光をリレーし、出射するリレー光学系254、
から構成されている。尚、画像形成装置211全体が筐体213(図11及び図13では、一点鎖線で示す)内に納められており、係る筐体213には開口部(図示せず)が設けられており、開口部を介してリレー光学系254から光が出射される。そして、各筐体213が、取付け部材19によって、テンプル部13に取り付けられている。
光源251は、白色を発光する発光素子から構成されている。そして、光源251から出射された光は、全体として正の光学的パワーを持つコリメート光学系252に入射し、平行光として出射される。そして、この平行光は、全反射ミラー256で反射され、マイクロミラーを二次元方向に回転自在とし、入射した平行光を2次元的に走査することができるMEMSから成る走査手段253によって水平走査及び垂直走査が行われ、一種の2次元画像化され、仮想の画素(画素数は、例えば、実施例1と同じとすることができる)が生成される。そして、仮想の画素からの光は、周知のリレー光学系から構成されたリレー光学系(平行光出射光学系)254を通過し、平行光とされた光束が光学装置120に入射する。
リレー光学系254にて平行光とされた光束が入射され、導光され、出射される光学装置120は、実施例1にて説明した光学装置と同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。また、実施例2の頭部装着型ディスプレイは、以上の相違点を除き、実施例1の頭部装着型ディスプレイと同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
実施例3も、実施例1における画像表示装置の変形である。実施例3の頭部装着型ディスプレイにおける画像表示装置300の概念図を図12の(A)に示す。また、反射型体積ホログラム回折格子の一部を拡大して示す模式的な断面図を図12の(B)に示す。実施例3にあっては、画像形成装置111は、実施例1と同様に、第1の構成の画像形成装置から構成されている。また、光学装置320は、第1偏向手段及び第2偏向手段の構成、構造が異なる点を除き、基本的な構成、構造は、実施例1の光学装置120と同じである。
実施例3において、第1偏向手段及び第2偏向手段は導光板321の表面(具体的には、導光板321の第2面323)に配設されている。そして、第1偏向手段は、導光板321に入射された光を回折し、第2偏向手段は、導光板321の内部を全反射により伝播した光を、複数回に亙り、回折する。ここで、第1偏向手段及び第2偏向手段は、回折格子素子、具体的には反射型回折格子素子、より具体的には反射型体積ホログラム回折格子から成る。以下の説明において、反射型体積ホログラム回折格子から成る第1偏向手段を、便宜上、『第1回折格子部材330』と呼び、反射型体積ホログラム回折格子から成る第2偏向手段を、便宜上、『第2回折格子部材340』と呼ぶ。
そして、実施例3あるいは後述する実施例4において、第1回折格子部材330及び第2回折格子部材340は、1層の回折格子層が積層されて成る構成としている。尚、フォトポリマー材料から成る各回折格子層には、1種類の波長帯域(あるいは、波長)に対応する干渉縞が形成されており、従来の方法で作製されている。回折格子層(回折光学素子)に形成された干渉縞のピッチは一定であり、干渉縞は直線状であり、Z軸に平行である。尚、第1回折格子部材330及び第2回折格子部材340の軸線はX軸と平行であり、法線はY軸と平行である。
図12の(B)に反射型体積ホログラム回折格子の拡大した模式的な一部断面図を示す。反射型体積ホログラム回折格子には、傾斜角φを有する干渉縞が形成されている。ここで、傾斜角φとは、反射型体積ホログラム回折格子の表面と干渉縞の成す角度を指す。干渉縞は、反射型体積ホログラム回折格子の内部から表面に亙り、形成されている。干渉縞は、ブラッグ条件を満たしている。ここで、ブラッグ条件とは、以下の式(A)を満足する条件を指す。式(A)中、mは正の整数、λは波長、dは格子面のピッチ(干渉縞を含む仮想平面の法線方向の間隔)、Θは干渉縞へ入射する角度の余角を意味する。また、入射角ψにて回折格子部材に光が侵入した場合の、Θ、傾斜角φ、入射角ψの関係は、式(B)のとおりである。
m・λ=2・d・sin(Θ) (A)
Θ=90°−(φ+ψ) (B)
第1回折格子部材330は、上述したとおり、導光板321の第2面323に配設(接着)されており、第1面322から導光板321に入射されたこの平行光が導光板321の内部で全反射されるように、導光板321に入射されたこの平行光を回折反射する。更には、第2回折格子部材340は、上述したとおり、導光板321の第2面323に配設(接着)されており、導光板321の内部を全反射により伝播したこの平行光を、複数回、回折反射し、導光板321から平行光のまま第1面322から出射する。
そして、導光板321にあっても、平行光が内部を全反射により伝播した後、出射される。このとき、導光板321が薄く導光板321の内部を進行する光路が長いため、各画角によって第2回折格子部材340に至るまでの全反射回数は異なっている。より詳細に述べれば、導光板321に入射する平行光のうち、第2回折格子部材340に近づく方向の角度をもって入射する平行光の反射回数は、第2回折格子部材340から離れる方向の角度をもって導光板321に入射する平行光の反射回数よりも少ない。これは、第1回折格子部材330において回折反射される平行光であって、第2回折格子部材340に近づく方向の角度をもって導光板321に入射する平行光の方が、これと逆方向の角度をもって導光板321に入射する平行光よりも、導光板321の内部を伝播していく光が導光板321の内面と衝突するときの導光板321の法線と成す角度が小さくなるからである。また、第2回折格子部材340の内部に形成された干渉縞の形状と、第1回折格子部材330の内部に形成された干渉縞の形状とは、導光板321の軸線に垂直な仮想面に対して対称な関係にある。
後述する実施例4における導光板321も、基本的には、以上に説明した導光板321の構成、構造と同じ構成、構造を有する。実施例3の頭部装着型ディスプレイは、以上の相違点を除き、実施例1の頭部装着型ディスプレイと同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
実施例4は、実施例3における画像表示装置の変形である。実施例4の頭部装着型ディスプレイにおける画像表示装置の概念図を図13に示す。実施例4の画像表示装置400における光源251、コリメート光学系252、走査手段253、平行光出射光学系(リレー光学系254)等は、実施例2と同じ構成、構造(第2の構成の画像形成装置)を有する。また、実施例4における光学装置320は、実施例3における光学装置320と同じ構成、構造を有する。実施例4の頭部装着型ディスプレイは、以上の相違点を除き、実質的に、実施例1、実施例2の頭部装着型ディスプレイと同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
実施例5は、実施例1〜実施例4における画像表示装置の変形である。実施例5の頭部装着型ディスプレイにおいて、画像表示装置を構成する導光板等の配置状態を示す概念図を、図14(A)及び(B)に示し、実施例5における頭部装着型ディスプレイを横から眺めた模式図を図15に示す。
実施例1〜実施例4にあっては、図2に示したように、画像表示装置100,300において、画像形成装置111,211の中心から出射され、光学系112,254の画像形成装置側節点を通過した中心光線CLは、導光板121,321に垂直に衝突する設計となっている。即ち、中心光線CLは、導光板121,321へ、入射角0度で入射する設計となっている。そして、この場合、表示される画像の中心は、導光板121,321の第1面122,322の垂線方向に一致する。
即ち、画像表示装置100で代表させるこのような画像表示装置にあっては、図2に示したように、コリメート光学系112の光軸上にある画像形成装置111の中心から出射する中心光線CLは、コリメート光学系112にて略平行光に変換された後、導光板121の第1面(入射面)122に垂直に入射する。そして、第1偏向手段130により第1面122と第2面123との間で全反射されながら、伝播方向Aに沿って進む。続いて、この中心光線CLは、第2偏向手段140により反射、回折され、導光板121の第1面122から垂直に出射され、観察者(観客)の瞳41に達する。
シースルー型の頭部装着型ディスプレイにおいて、観察者(観客)が、水平方向に位置する観察対象物を眺めたときに、光学装置120,320,520が邪魔にならないようにするためには、観察者の水平方向の視線(観察者の水平方向視線)よりも、光学装置120,320,520を下側にずらして配置することが好ましい。このような場合、画像表示装置100,300、全体を、観察者の水平方向視線の下側に配置する。ところで、このような構成にあっては、図20に示すように、画像表示装置100、全体を、角度θ”だけ傾ける必要があり、観察者の頭部への装着のための眼鏡型のフレームの取付部(テンプル部)との関係から、画像表示装置100を傾けることができる角度θ”が制限されたり、デザイン自由度が低くなる場合がある。それ故、観察者の水平方向視線の邪魔にならないように、高い自由度での配置を可能とし、しかも、高いデザイン自由度を有する画像表示装置とすることが、一層、望ましい。
実施例5にあっては、中心光線CLは、XY平面と0度以外の角度(θ)で交わる構成とした。更には、中心光線CLはYZ平面に含まれる構成とした。更には、実施例5あるいは後述する実施例6において、光学系112,254の光軸は、YZ平面に含まれ、且つ、XY平面と0度以外の角度、具体的には、角度θで交わる(図14の(A)及び(B)参照)。また、実施例5あるいは後述する実施例6において、XY平面が水平面と一致すると仮定したとき、中心光線CLがXY平面と交わる角度θは仰角である。即ち、XY平面の下側から中心光線CLがXY平面に向い、XY平面と衝突する。そして、XY平面は垂直面と0度以外の角度、具体的には、角度θで交わる。
実施例5にあっては、θ=5度とした。より具体的には、このような構成にあっては、中心光線CL(図15では、点線で示す)は、水平面に含まれる。そして、光学装置120,320,520は、垂直面に対して角度θだけ傾いている。云い換えれば、光学装置120,320,520は、水平面に対して角度(90−θ)度だけ傾いている。また、光学装置120,320,520から出射される中心光線CL’(図15では、一点鎖線で示す)は、水平面に対して角度2θだけ傾いている。即ち、観察者が、水平方向、無限遠方の対象物を眺めたとき、光学装置120,320,520から出射され、観察者の瞳に入射する中心光線CL’は俯角θ’(=2θ)をなす(図15参照)。中心光線CL’が光学装置120,320,520の法線と成す角度はθである。図14の(A)あるいは後述する図16の(A)においては、光学装置120,320,520から中心光線CL’が出射される点を「O’」で示し、点O’を通過するX軸、Y軸、Z軸と平行な軸線をX’軸、Y’軸、Z’軸で表している。
実施例5の画像表示装置にあっては、中心光線CLは、XY平面と0度以外の角度(θ)で交わる。ここで、光学装置から出射され、観察者(観客)の瞳に入射する中心光線CL’は俯角θ’をなすが、
θ’=2θ
の関係にある。一方、図20に示した例にあっては、同じ俯角を得ようとする場合、画像表示装置の全体を角度θ”だけ傾ける必要があるが、ここで、θ”とθの関係は、
θ”=2θ
であり、結局、図20に示した例にあっては、光学装置を垂直面に対して2θだけ、傾けなければならない。一方、実施例5にあっては、光学装置を垂直面に対してθだけ、傾ければよいし、画像形成装置を水平に保持すればよい。従って、画像表示装置を眼鏡型のフレームの取付部に取り付けるときの画像表示装置の取付け角度に対する制限が少なく、高いデザイン自由度を得ることができる。また、光学装置の垂直面に対する傾きが、図20に示した例よりも小さいので、外光が光学装置にて反射し、観察者(観客)の瞳に入射するといった現象が生じ難い。それ故、より高品質の画像の表示を行うことができる。
実施例5の頭部装着型ディスプレイは、以上の相違点を除き、実施例1〜実施例4の頭部装着型ディスプレイと同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
実施例6は、実施例5における画像表示装置の変形である。実施例6における画像表示装置を構成する導光板等の配置状態を示す概念図を図16(A)及び(B)に示す。ここで、実施例6にあっては、光学系(平行光出射光学系,コリメート光学系)112の光軸は、YZ平面と平行であり、XY平面と平行であり、且つ、画像形成装置111の中心から外れた位置を通過する。このような構成とすることで、中心光線CLは、YZ平面に含まれ、しかも、XY平面と仰角θをなして交わる。実施例6の頭部装着型ディスプレイは、以上の相違点を除き、実施例1〜実施例5の頭部装着型ディスプレイと同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
実施例7も、実施例1における画像表示装置の変形である。実施例7の頭部装着型ディスプレイを正面から眺めた模式図を図17に示し、上方から眺めた模式図を図18に示す。
実施例7にあっては、光学装置520は、画像形成装置111A,111Bから出射された光が入射され、観察者40の瞳41に向かって出射される半透過ミラーから構成されている。尚、実施例7にあっては、画像形成装置111A,111Bから出射された光は、ガラス板やプラスチック板等の透明な部材521の内部を伝播して光学装置520(半透過ミラー)に入射する構造としているが、空気中を伝播して光学装置520に入射する構造としてもよい。また、画像形成装置は、実施例2において説明した画像形成装置211とすることもできる。
各画像形成装置111A,111Bは、フロント部11に、例えば、ビスを用いて取り付けられている。また、部材521が各画像形成装置111A,111Bに取り付けられ、光学装置520(半透過ミラー)が部材521に取り付けられている。実施例7の頭部装着型ディスプレイは、以上の相違点を除き、実質的に、実施例1〜実施例6の頭部装着型ディスプレイと同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
実施例8は、本発明の第3の態様及び第4の態様に係る頭部装着型ディスプレイにおける光学的位置調整方法に関する。実施例8の頭部装着型ディスプレイにおける光学的位置調整方法を説明するための、実施例8の頭部装着型ディスプレイを上方から眺めた模式図を、図19に示す。
実施例8にあっては、各光学装置120,320,520において表示される画像を対応する撮像装置(カメラ)61A,61Bで撮像する。各撮像装置61A,61Bによって得られた画像は、例えば、図9の(A)、(B)、あるいは(C)に示したような画像である。そして、各撮像装置61A,61Bによって得られた画像の位置の基準位置からのズレを求める。
ここで、基準位置とは、画像形成装置111,211が正しい位置に取り付けられているとしたとき、各光学装置120,320,520において表示される所定の画像を対応する撮像装置(カメラ)61A,61Bで撮像したときの、撮像装置(カメラ)61A,61Bにおける画像撮像位置を指す。この所定の画像は、第1画像信号としての一種のテストパターンを表示し得る画像信号(入力画像信号、入力画像データ)を制御装置18に送り、制御装置18において、第1画像信号に対して画像表示のための処理を行い、画像形成装置において画像を生成することで得ることができる。画像形成装置111,211が正しい位置からずれて取り付けられている場合、各光学装置120,320,520において表示される所定の画像を対応する撮像装置(カメラ)61A,61Bで撮像したとき、撮像装置(カメラ)61A,61Bにおいて得られた画像撮像位置は、基準位置からずれている。
ズレを無くす作業は、制御装置18において行ってもよいし、制御装置18に接続された外部のコンピュータにより行ってもよい。そして、ズレを無くすように、少なくとも一方の画像表示装置を構成する画像形成装置111,211への第1画像信号を制御することで、実施例1と同様に、2つの画像の相互の位置を調整する。即ち、ズレを無くすような表示位置補正信号を求める。具体的には、制御装置18において作業者がスイッチやボタンを操作して、テストパターンを、左右へ移動させ、上下へ移動させ、また、回転移動させることで、基準位置と画像とを一致させる。そして、基準位置と画像とが一致したときの左右への移動量、上下への移動量、回転移動量に基づき表示位置補正信号を求め、決定すればよい。あるいは又、コンピュータによって、基準位置と画像との間の左右のズレ量、上下のズレ量、回転移動ズレ量を求めれば、係るズレ量が、基準位置と画像とを一致させるための表示位置補正信号となる。そして、この表示位置補正信号を表示位置制御信号として制御装置に記憶させる。
以上の点を除き、実施例8の頭部装着型ディスプレイにおける光学的位置調整方法は、実施例1において説明した頭部装着型ディスプレイにおける光学的位置調整方法と、実質的に同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。また、実施例8における頭部装着型ディスプレイの構成、構造は、実施例1〜実施例7にて説明した頭部装着型ディスプレイと同様とすればよいので、詳細な説明は省略する。
実施例9は、実施例8の変形である。実施例9にあっては、基準位置を、2つの光学装置120,320,520の前方の所定の位置に配置された被写体を撮像装置61A,61Bによって撮像したときに得られる、撮像装置61A,61Bにおける被写体撮像位置とした。具体的には、例えば、図9の(C)の左手側に図示したような十字型の図形を被写体として、例えば、2つの光学装置120,320,520の前方、例えば4mの位置に配置しておく。一方、2つの光学装置120,320,520において所定の画像(十字型の図形)を表示する。ここで、所定の画像の虚像距離も、例えば4mとする。即ち、第1画像信号としての一種のテストパターンを表示し得る画像信号(入力画像信号、入力画像データ)を制御装置18に送り、制御装置18において、第1画像信号に対して画像表示のための処理を行い、画像形成装置において所定の画像を表示する。そして、併せて、各光学装置120,320,520において表示される所定の画像を対応する撮像装置(カメラ)61A,61Bで撮像して、画像撮像位置を得る。
そして、被写体を撮像して得られた像と光学装置120,320,520に表示された画像とが一致する(重なり合う)ように、即ち、被写体撮像位置と画像撮像位置とが一致する(重なり合う)ように、制御装置18において、あるいは又、制御装置18に接続された外部のコンピュータにおいて、少なくとも一方の画像表示装置を構成する画像形成装置111,211への第1画像信号を制御することで、実施例8と同様に、2つの画像の相互の位置を調整する。即ち、実施例8において説明したと同様の操作、方法で、ズレを無くすような表示位置補正信号を求める。そして、この表示位置補正信号を表示位置制御信号として制御装置に記憶させる。
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらの実施例に限定するものではない。実施例において説明した頭部装着型ディスプレイ、画像表示装置の構成、構造は例示であり、適宜変更することができる。例えば、導光板に表面レリーフ型ホログラム(米国特許第20040062505A1参照)を配置してもよい。実施例3あるいは実施例4の光学装置320にあっては、回折格子素子を透過型回折格子素子から構成することもできるし、あるいは又、第1偏向手段及び第2偏向手段の内のいずれか一方を反射型回折格子素子から構成し、他方を透過型回折格子素子から構成する形態とすることもできる。あるいは又、回折格子素子を、反射型ブレーズド回折格子素子とすることもできる。