JP5781665B1 - 内燃機関用コンプレッションリング - Google Patents

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Abstract

【課題】コンプレッションリングに対するオイルスラッジの付着を従来に比しより確実に抑制し得る、内燃機関用コンプレッションリングを提供する。【解決手段】内燃機関用コンプレッションリングにおいて、該コンプレッションリングの外表面の少なくとも一部における、80℃での表面自由エネルギーを構成する分散成分、極性成分及び水素結合成分をそれぞれδd1,δp1,δh1とし、エンジンオイルの80℃での表面自由エネルギーを構成する分散成分、極性成分及び水素結合成分をそれぞれδd2,δp2,δh2としたとき、下記式にて定義されるεが8以上であることを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、内燃機関用コンプレッションリングに関する。
従来、エンジン等の内燃機関においては、長時間の運転に伴ってエンジンオイルが加熱され、ブローバイガスに曝されることにより、エンジンオイル中に炭化水素の未燃焼生成物やオイル添加剤の変性物が混在する状態となる。また、ディーゼルエンジンでは、エンジンオイル中にカーボンの微粒子も混在する状態となる。一般に、このような未燃焼生成物、オイル添加剤変性物及びカーボン微粒子を総じて「オイルスラッジ」という。
このオイルスラッジがピストンリングの一部であるコンプレッションリング、特にそのピストン対向面である内周側に堆積および固着すると(図1参照)、コンプレッションリングの運動性が損なわれ、ブローバイガスが増加することで、燃費や出力量が低下する等のエンジン機能の低下を招くことがある。
特に、ディーゼル機関や筒内圧が高い内燃機関においては、オイルスラッジによってコンプレッションリングの運動性が損なわれないように、コンプレッションリングの断面形状を、矩形形状からキーストン形状(図2参照)にすることが行われている。
また、特許文献1には、コンプレッションリングへのオイルの固着を抑制しつつも、ガスシール性能及びオイル消費性能を改善するべく、矩形の断面形状を有するコンプレッションリングの上面の傾斜角を該リング周方向で変動させる技術が開示されている。
特開2004−197857号公報
コンプレッションリングにおいては、その断面をキーストン形状にしたり、さらには、特許文献1に記載されるような形状変更を行うことによってオイルスラッジの付着を抑制する一定の効果が認められている。しかしながら、近年、エンジンは苛酷な使用状況下、例えば高温域にて高回転で使用されており、かような環境においても、コンプレッションリングに対するオイルスラッジの付着を確実に抑制し得る手段を提供することが希求されている。
そこで、本発明では、コンプレッションリングに対するオイルスラッジの付着を従来に比しより確実に抑制し得る、内燃機関用コンプレッションリングを提供することを目的とする。
発明者は、前記課題を解決する手段について鋭意究明したところ、固体及び液体の表面自由エネルギーについて水素結合成分以外の構成成分についても検討した結果、分散成分、極性成分及び水素結合成分の構成成分ごとの凝集エネルギー密度をもって、固体(コンプレッションリング)及び液体(エンジンオイル)間の付着し難さを評価できることを知見した。
そこで、表面自由エネルギーの構成成分ごとの凝集エネルギー密度について言及している、Hansenにより定義されたHSP値を応用することに想到した。このHansenのHSP値では、物質同士の接着性や相溶性を評価するにあたり、液体同士又は液体/樹脂間での分散成分、極性成分、水素結合成分の差を用いることは成功しているが、今回は、金属を含む固体・液体間、とりわけ金属製の母材からなることの多いコンプレッションリングと複雑な成分組成になるエンジンオイルとの関係を新たに構築することによって、本発明を導くに到った。
本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)本発明の内燃機関用コンプレッションリングは、中心線平均粗さで0.10μm以上0.50μm以下に研磨された、基材の外周面以外の外表面の少なくとも一部に被覆材を有するコンプレッションリング(PTFEを除く)の前記被覆材表面における、80℃での表面自由エネルギー(単位面積(mJ/m)あたり)を構成する分散成分、極性成分及び水素結合成分をそれぞれδd1,δp1,δh1とし、エンジンオイルの80℃での表面自由エネルギー(単位面積(mJ/m)あたり)を構成する分散成分、極性成分及び水素結合成分をそれぞれδd2,δp2,δh2 (δ d2 =38.9,δ p2 =13.6,δ h2 =0.0)としたとき、下記式にて定義されるεが8以上であることを特徴とする。
[式A]
Figure 0005781665
かかる構成の内燃機関用コンプレッションリングによれば、オイルスラッジの付着を従来に比しより確実に抑制し得るコンプレッションリングを提供することができる。
なお、本発明における「表面自由エネルギー」とは、拡張Fowkes式に従う分子間力からなる極性成分、分散成分及び水素結合成分の総和である。
(2)本発明の内燃機関用コンプレッションリングでは、前記被覆材が金属又は樹脂(PTFEを除く)であることが好ましい。
(3)本発明の内燃機関用コンプレッションリングにおいて、前記被覆材による被膜の厚みは、0.1μm以上8.0μm以下であることが好ましい。
)本発明の内燃機関用コンプレッションリングにおいて、前記被覆材の表面粗さは、中心線平均粗さで0.0050μm以上0.40μm以下であることが好ましい。
なお、本発明における表面粗さは、JIS B 0601:2001に準拠する。
本発明により、コンプレッションリングに対するオイルスラッジの付着を、従来に比しより確実に抑制し得る内燃機関用コンプレッションリングを提供することができる。
コンプレッションリングを組み付けたピストンにおいて、オイルスラッジが 堆積および固着した状態を示す概略的な断面図である。 キーストン形状のコンプレッションリングの断面図である。 各種被覆材とオイルスラッジ付着量との相関関係を示す図である。 各種エンジンオイルの表面自由エネルギーの成分を示す図である。 本発明の実施例で用いた固着試験機の断面図である。 オイルスラッジの付着量を示す図である。
以下、本発明の内燃機関用コンプレッションリングを詳細に説明する。
本発明に係る内燃機関用コンプレッションリング(PTFEを除では、上記したように、中心線平均粗さで0.10μm以上0.50μm以下に研磨された、基材の外周面以外の外表面の少なくとも一部に被覆材を有するコンプレッションリング(PTFEを除く)の前記被覆材表面における、80℃での表面自由エネルギー(単位面積(mJ/m)あたり)を構成する分散成分、極性成分及び水素結合成分をそれぞれδd1,δp1,δh1とし、エンジンオイルの80℃での表面自由エネルギー(単位面積(mJ/m)あたり)を構成する分散成分、極性成分及び水素結合成分をそれぞれδd2,δp2,δh2 (δ d2 =38.9,δ p2 =13.6,δ h2 =0.0)としたとき、下記式にて定義されるεが8以上であることが肝要である。
[式A]
Figure 0005781665
ここで、図3に、後述する実施例1で得られた実験結果、すなわち、各種基材及び被覆材に対するオイルスラッジの付着し難さを評価した結果を、縦軸にオイルスラッジの付着量(mg/cm2)、横軸に上記A式で表わされるεをとって示すように、上記εが8以上であれば、コンプレッションリングにおけるオイルスラッジの付着量が8mg/cm2未満に抑制されることが分かった。すなわち、上記εが8以上となる表面自由エネルギーを有する基材を用いること、又は同表面自由エネルギーを有する被覆材で、コンプレッションリングの少なくとも一部を被覆することにより、オイルスラッジに対して優れた耐付着性が得られる。
なお、オイルスラッジに対する耐付着性をより高次に実現するにあっては、上記式Aで表わされるεが13以上であることが好ましく、15以上であることがさらに好ましい。
なお、コンプレッションリングの基材又は被覆材の表面自由エネルギーの3成分、すなわち、分散成分、極性成分および水素結合成分は、表面自由エネルギー既知の液体を用い、自動接触角計にて基材又は被覆材による被膜表面の接触角を測定し、拡張Fowkes式によって算出することができる。
また、エンジンオイルの表面自由エネルギーの同3成分は、拡張Fowkes式によって算出した表面自由エネルギー既知の固体材料と、エンジンオイルとの接触角を測定し、拡張Fowkes式及びSellとNewmannの実験式から算出することができる。
さらにまた、本発明に係る内燃機関用コンプレッションリングでは、前記被覆材が金属又は樹脂であることが好ましい。具体的な例としては、Ni、Mo、Co、PTFE、PFA及びFEP並びにそれらを含む合金、又は化合物等が挙げられるが、本発明において重要なのは、上記式Aで表わされるεが8以上の材料にてコンプレッションリングの所定部位が被覆材もしくは基材により形成されていることである。
材料の被覆方法としては、一般に、金属であれば湿式電解法、湿式無電解法、真空蒸着法、化成処理法、PVD(Physical Vapor Deposition)、CVD(Chemical Vapor Deposition)、またはAD(Aerosol Deposition)等が挙げられ、樹脂であればディッピング法、スプレー法、スピンコート法等が挙げられるが、本発明では任意の被覆方法を採用することができる。
また、本発明に係るコンプレッションリングでは、被覆材による被膜の厚みは0.1μm以上8.0μm以下であることが好ましい。
被膜の厚みを0.1μm以上とすれば、膜欠陥の発生を回避して、上記εが8以上となる被膜を安定して得られるため、オイルスラッジの付着をさらに確実に抑制することができる。一方、被膜の厚みが8.0μmを越えると、オイルスラッジの付着の抑制に優れた効果を得られる一方で、被覆に要するコスト増加が懸念される。従って、上限値は8.0μmとするのが好ましい。
また、本発明に係るコンプレッションリングは、該リングの外表面の少なくとも一部に表面処理を施してなることができ、ここでいう表面処理とは、例えば、洗浄・防錆処理、熱処理(例えば、大気熱処理、不活性ガス雰囲気熱処理、浸炭処理、窒化処理、浸硫処理等を含む)もしくは研磨等である。また、防錆処理剤を用いる以外の方法には、ArF2ガスによってコンプレッションリング表面にフッ化処理を行う方法がある。
さらに、本発明に係るコンプレッションリングでは、コンプレッションリングの表面粗さは、中心線平均粗さで0.0050μm以上0.50μm以下であることが好ましい。コンプレッションリングの表面粗さをこの範囲内とすることにより、コンプレッションリングへのオイルスラッジの付着を抑制する効果が高まる。下限値を0.0050μmとするのは、表面粗さが小さいほどオイルスラッジの付着の抑制効果は高まるが、0.0050μm未満では、その効果の向上幅が、加工に要するコストに見合わなくなるからである。また、被膜の表面粗さを0.50μm以下とすることで、上記効果を十分に高めることができる。
図1に示すように、オイルスラッジ(図中の黒塗り部分)は、コンプレッションリング1の内周側とピストン2との間のバッククリアランスに蓄積しやすい。そのため、コンプレッションリング1のピストン2に対抗する面F1、すなわちコンプレッションリング1の内周面を、上記式Aで表わされるεが8以上の基材又は被覆材により形成することにより、オイルスラッジの付着を抑制することができる。
また、コンプレッションリングの全表面にεが8以上の材料が基材又は被覆材により形成されていることにより、コンプレッションリングへのオイルスラッジの付着をより効果的に抑制することができる。
以下、実施例に基づき、本発明をさらに具体的に説明する。
まず、エンジンオイルの表面自由エネルギーを測定するにあたって必要となる、3種の固体材料の表面自由エネルギーの各構成成分を求めた。固体材料としては、Cu、Al、Niを選定した。各構成成分は液体と固体との接触角を求めることで算出できる。接触角は協和界面化学(株)のDM-501で行い、表面自由エネルギーの各構成成分はアドインソフトのFAMASにて拡張Fowkes式を用いて算出した。固体材料の表面粗さは、中心線平均粗さで0.10μ以上0.20μ以下となるようエメリー研磨紙で研磨した。プローブ液滴は約1μLとした。表1に、プローブ液体と表面自由エネルギーの構成成分(25℃における理論値)を示し、表2に固体材料と算出したその構成成分を示す。なお、本実施形態における表面自由エネルギーの測定はすべて80℃で行った。
Figure 0005781665
Figure 0005781665
使用が想定される新油の市販エンジンオイル及び一定の負荷の下でエンジン内を循環させたエンジンオイルについて、表2に示す固体材料との接触角を協和界面化学(株)のDM-501で測定し、拡張Fowkes式及びSellとNewmannの実験式からエンジンオイルの表面自由エネルギーの各構成成分を算出した(表3参照)。エンジンオイルは各社から販売されているものを選定し、プローブ液滴は約1μLとした。
[計算例]
各構成成分を求めるために、オイルIの表面自由エネルギーγLを求める。
既存のDupre式より、

Wa=γs+γL−γSL ・・・(1)

SellとNewmannの実験式から、
Figure 0005781665
式(1)より、
Figure 0005781665
が成立する。
また、Young-Dupre式より、

Wa=γL(1+cosθ) ・・・(4)

式(3)、(4)より、
Figure 0005781665
式(5)に、測定して求めているγSならびに接触角θを代入して、γLを求める。
例)Cuの表面自由エネルギー:γSとオイルIの接触角θからγL Cuを求める。
γS=48.7 θ=31.5

式(5)に代入して、
Figure 0005781665
これを解いて、γL Cu=56.3, 201.6
他知見(パラフィン類のγL)と比較し、201.6は取り得ない。
従って、Cuより算出されたオイルIのγL Cuは56.3である。
同様に、Al,NiからγLを算出すると、それぞれ37.2,34.8となる。
Cu,Al,Niの接触角θ,γL(それぞれの固体表面より算出した値を用いる)から、オイルIの表面自由エネルギーを求める。
Cu:θ=23.7 γL Cu=56.3 γS d=32.7 γS p=16.0 γS h=0
Al:θ=19.3 γL Al=37.2 γS d=35.3 γS p=1.2 γS h=1.1
Ni:θ=20.9 γL Ni=34.8 γS d=35.4 γS p=0 γS h=0
なお、Cu,Al,Ni,d,p,hは、各成分を表すために表示している。
ここで、拡張Fowkes式を(6)に示す。
Figure 0005781665
各数値を代入して、
Figure 0005781665
(7)〜(9)式からなる三元一次方程式を解き、
γL d=32.0 γL p=29.2 γL h=0(虚数解となるため0とした)より、γL=61.2
図4及び表3に、各種エンジンオイルの表面自由エネルギーの各構成成分を算出した結果を示す。このように、エンジンオイルの表面自由エネルギーの各構成成分については、オイルメーカーやオイルの粘度によるばらつきが殆ど認められなかった。そこで、コンプレッションリングを被覆する金属又は樹脂材料の表面自由エネルギーの算出には、エンジンオイルの表面自由エネルギーの各構成成分として、各種エンジンオイルの平均値を用いた。すなわち、分散成分γL d=38.9mJ/m2、極性成分γL p=13.6mJ/m2、水素結合成分γL h=0mJ/m2を用いた。
Figure 0005781665
次に、入手が比較的容易な板材料及び鋼材に表面処理を施した板材料の計16種類について、80℃における表面自由エネルギーの各構成成分を求めた。上記したように、各構成成分は液体と固体との接触角を求めることで算出できる。接触角は協和界面化学(株)のDM-501で測定し、表面自由エネルギーの各構成成分はアドインソフトのFAMASにて拡張Fowkes式を用いて算出した。
板材料には、炭素鋼(C:0.8〜0.9mass%)、Si−Cr鋼(Si:1.2〜1.6mass%、Cr:0.5〜0.8mass%)、SUS304、SUS440B、Cr鋼(Cr:12〜14mass%)、Ti、Co、Mo及びPTFEを選定した。なお、Si−Cr鋼(表面処理あり)、SUS440B(表面処理あり)、Cr鋼(表面処理あり)においては、洗浄として、エチルアルコールで超音波洗浄を5分行ったあと、有機系成分としてアルキルアルコキシシラン類を含む防錆処理剤を用いて1分処理し、引き上げ、120℃で30分乾燥を行ったものとした。
板材料のめっきには、Cu、Pを10%含むNi−P合金めっき、金属Niめっき(純度が99mass%)及びPTFEを分散させたNiめっきを選定した。固体材料の表面粗さは、中心線平均粗さで0.10μm以上0.50μm以下となるようエメリー研磨紙で研磨した。プローブ液滴は約1μLとした。表4にプローブ液体と表面自由エネルギーの構成成分を、表5に各構成成分を算出した結果を示す。
Figure 0005781665
Figure 0005781665
ここで、オイルスラッジの付着のしやすさを確認するため、簡易固着試験を行った。各種板材料を約30×15×1tに加工して、φ3の孔を空けたテストピースを作製し、試験前の重量を測定した。それから、図5に示す固着試験機に懸垂したテストピースに対して、オイルスラッジ入りのエンジンオイル(表3に示す、D社<1>約20万km走行相当品)で満たしたオイルバスへの1分間の浸漬と、ヒーターを用いた間接加熱による15分間のオイル固着と、を50サイクル繰り返し、テストピースにオイルスラッジを固着させた。50サイクルの所要時間は、約14時間であった。テストピース温度は熱電対で測定し、その温度域が190〜200℃となるようにヒーター温度を設定した。試験後、アセトンで超音波洗浄を行い、オイルスラッジ付着重量を測定した。
なお、図5に示す固着試験機では、テストピースをオイルバスに浸漬後、当該テストピースをモータで引き上げ、円筒ヒーター内に留置する。温度モニタリングはヒーター表面及び試料表面のそれぞれで実施した。
上記の表5から、HSP値で定義された凝集エネルギー密度の差を比較する方法を用いて、その大小を算出した。固体材料の80℃での表面自由エネルギー(単位面積(mJ/m 2 )あたり)を構成する分散成分、極性成分及び水素結合成分をそれぞれδd1,δp1,δh1とし、エンジンオイルの80℃での表面自由エネルギー(単位面積(mJ/m2)あたり)
を構成する分散成分、極性成分及び水素結合成分をそれぞれδd2,δp2,δh2として式Aに代入した。
表6に、εの値及び単位面積当たりのオイルスラッジ付着重量を示す。また、図3には、εと単位面積当たりのオイルスラッジ付着重量との相関関係を示す。ここに示されるように、εが8以上となる基材及び被覆材では、他の基材及び被覆材に比べてオイルスラッジの付着量が有意に減少している。なお、本発明では、単位面積当たりのオイルスラッジ付着量が8.0mg/cm2未満の場合を、オイルスラッジの付着量が十分に少ないものとして評価した。さらに、εが13以上となる金属又は樹脂材料では、オイルスラッジの付着量が2.0mg/cm2未満にまで減少していて、特に、εが15以上となる金属又は樹脂材料では、オイルスラッジの付着量が1.0mg/cm2未満にまでさらに減少していることが分かる。すなわち、コンプレッションリングの外表面の少なくとも一部を、上記式Aにおいて、εが8以上、好ましくは13以上、さらに好ましくは15以上とすることにより、オイルスラッジに対して優れた耐付着性が得られる。
Figure 0005781665
本発明では、素材自体が本発明にて規定するεを満足するものを選択して使用するか、又は、表面自由エネルギーを構成する分散成分、極性成分及び水素結合成分の夫々の数値が、エンジンオイルの表面自由エネルギーのそれとの比較において大幅に低いか又は大幅に高い材料を、たとえばコンプレッションリングを被覆するめっき中に分散させることにより、εを8以上、好ましくは13以上、より好ましくは15以上とすることができる。
実施例1にて優れた耐付着性が得られた電解Niめっき材料ならびにマルテンサイト系ステンレスについて、実際のエンジンにてスラッジ堆積重量を評価した。コンプレッションリングを以下のように作製した。なお、いずれのコンプレッションリングも、段落0041で述べた表面処理は実施していない。
今回はトップリングで評価を行った。トップリングは、幅2.3mm 、厚さ1.0mmのマルテンサイト系ステンレスを円環状に成形・切断後、外周にCr系のイオンプレーティング処理を施し、外周ラップ、バフ仕上げ工程を経て作製した。
なお比較例として、#4には、幅2.3mm 、厚さ1.0mmのSi−Cr鋼を円環状に成形・切断後、外周にCr系のイオンプレーティング処理を施し、外周ラップ、バフ仕上げ工程を経て作製した。
また、#1には、外周面をめっき用マスキング剤を用いてマスキング処理を実施後、電解Niめっき法により、3〜5μmのNiを被覆した。
さらに#2には、外周面をめっき用マスキング剤にてマスキング後、一般的なニッケルストライク浴(ウッド浴)を建浴し、電流密度20A/dm2、処理時間1分で下地処理を行い、JCU(株)製 テフジットで分散ニッケルめっき浴を建浴して、3〜5μmのNi−PTFE分散めっきを被覆した。
これらのコンプレッションリングをシリンダ内径72.5mmのガソリン直接噴射型の1,300cc、直列4気筒水冷のエンジンに実装して、加速,減速を組み合わせた耐久運転を実施した。あわせて、トップリングならびにピストン溝でのオイルスラッジ付着状態ならびに重量を確認した。トップリングならびにピストン溝に堆積したオイルスラッジ付着重量の結果を表7及び図6に示す。
Figure 0005781665
被覆材による被覆あるいは表面改質された内燃機関用コンプレッションリングであって、該コンプレッションリングの少なくとも一部、特にはピストン対向面における、80℃での表面自由エネルギー(単位面積(mJ/m 2 )あたり)を構成する分散成分、極性成分及び水素結合成分をそれぞれδd1,δp1,δh1とし、エンジンオイルの80℃での表面自由エネルギー(単位面積(mJ/m 2 )あたり)を構成する分散成分、極性成分及び水素結合成分をそれぞれδd2,δp2,δh2としたとき、上記の式Aにて定義されるεが8以上であることで、オイルスラッジが付着し難いコンプレッションリングが得られた。

Claims (4)

  1. 内燃機関用コンプレッションリングにおいて、中心線平均粗さで0.10μm以上0.50μm以下に研磨された、基材の外周面以外の外表面の少なくとも一部に被覆材を有するコンプレッションリング(PTFEを除く)の前記被覆材表面における、80℃での表面自由エネルギー(単位面積(mJ/m)あたり)を構成する分散成分、極性成分及び水素結合成分をそれぞれδd1,δp1,δh1とし、エンジンオイルの80℃での表面自由エネルギー(単位面積(mJ/m)あたり)を構成する分散成分、極性成分及び水素結合成分をそれぞれδd2,δp2,δh2 (δ d2 =38.9,δ p2 =13.6,δ h2 =0.0)としたとき、下記式にて定義されるεが8以上であることを特徴とする内燃機関用コンプレッションリング。
    Figure 0005781665
  2. 前記被覆材が金属又は樹脂(PTFEを除く)である、請求項1に記載の内燃機関用コンプレッションリング。
  3. 前記被覆材による被膜の厚みは、0.1μm以上8.0μm以下である、請求項1又は2に記載の内燃機関用コンプレッションリング。
  4. 前記被覆材の表面粗さが、中心線平均粗さで0.0050μm以上0.40μm以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載の内燃機関用コンプレッションリング。
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