略記号:
BSA−ウシの血清アルブミン
CDR−抗体可変領域の相補性決定領域(Kabatによって定義されるように、重鎖及び軽鎖の各々についてCDR1〜3と番号付けされる)。
Ec(0.1%) 1mg/mlのタンパク質溶液の吸光度
ED50−最大観察効果の50%を与える試験物質の濃度
ELISA−酵素結合免疫吸着検定法
FR−フレームワーク領域−CDRを支える可変ドメインの足場領域
IgG−免疫グロブリンG
mAb モノクローナル抗体
MHC 主要組織適合複合体
OD280nm−280nmで測定される光学濃度
PBS リン酸緩衝食塩水
TMB 3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
V領域 抗体鎖の可変領域
本発明は、配列番号15のアミノ酸配列を含むポリペプチドを特異的に認識して結合するヒト化抗体を提供する。ペプチド6として知られる配列番号15のポリペプチドは、HSP65に由来する点に留意するべきである。本明細書で後に実証されるように、本発明の例証されるヒト化抗体は、様々な他のヒト抗体可変領域からのアミノ酸配列のセグメントを組み合わせることによって作製された。第一の段階では、異なる可変領域遺伝子のライブラリーが生成され、発現ベクターにクローニングされ、ペプチド6(配列番号15)への結合などの望ましい特性を有するライブラリーのメンバーを回収するためにその後スクリーニングされた。
本発明によって用いられる参照マウス抗体にも存在する、エピトープ認識に関与する「制約」アミノ酸残基を含むようにこれらのセグメントは選択された。
より詳細には、Kabat抗体データベース(www.bioinf.org.uk/abs/simkab.html)、NCBIデータベース(www.ncbi.nlm.nih.gov)で利用できるものなどの公知であるヒトV領域配列、並びにUniProt(www.ebi.uniprot.org)及びPRF/SBQDB(www.prf.or.ip)などのタンパク質データベースからVH及びVL配列のセグメントを選択することによって、VH及びVL配列のライブラリーは設計される。さらに、1つ又は複数の個々のセグメントからのヒト起源の増幅されたVH及びVLのmRNAの直接配列決定による、ヒトVH及びVL配列の収集によってこれらを補うことができる。VH及びVL遺伝子の設計のために、配列セグメントの様々な組合せを考慮した。
上記の方法に加えて、本発明のヒト化抗体を作製して試験するための、及びそのような抗体の特性を最適化するための他の方法があることは、当業者に理解される。本発明の抗体は新しく、V領域の完全なヒト起源の結果として、ヒト以外の配列を含む他の抗体よりもヒトでの免疫原性は低いはずである。本発明のヒト化抗体のさらなる任意選択の特徴、すなわちT細胞エピトープの回避も、免疫原性を低下させることに寄与することができる。抗体セグメント及び組合せヒト抗体を形成するそれらの組合せは、T細胞エピトープの任意選択の回避を含む様々な基準を満たすように選択することができることが理解されよう。例えば、B細胞エピトープ及びMHCクラスI拘束エピトープなどの他のエピトープの回避のため、ヒト化抗体の発現に有害かもしれないアミノ酸配列の回避のため、N−グリコシル化などのヒト化抗体の直接の不適当な改変に導くかもしれない配列の回避のため、ヘルパーT細胞エピトープ及び/又はB細胞エピトープなどの特定の機能の組み入れのため(例えばワクチン適用で)、他の部分への後のコンジュゲーションのため、並びに様々な他の基準のために、ヒトタンパク質配列のセグメント及びその組合せを選択することができる。本明細書で用いる「T細胞エピトープ」は、T細胞受容体が認識及び結合する抗原決定基である点に留意するべきである。T細胞受容体によって認識されるエピトープは、多くの場合抗原の内部の露出していない側に位置し、抗原のタンパク分解性プロセシングの後にT細胞受容体にアクセス可能になる。MHC拘束抗原認識、すなわちMHC拘束とは、所与のT細胞が、それが特定のMHC分子に結合する場合にだけペプチド抗原を認識するという事実を指す。通常、T細胞は自己MHC分子の存在下でだけ刺激されるので、抗原は自己MHC分子に結合したペプチドとしてだけ認識される。
一実施形態では、国際公開第2006/08246号に記載のように、抗ペプチド6ヒト化抗体の重鎖及び軽鎖可変領域又はその抗原結合性断片は、1つ又は複数のヒト抗体に完全に由来する。別の実施形態では、可変領域は1つ又は複数のヒト抗体からのアミノ酸配列のセグメントで構成される。さらに別の実施形態では、ヒトセグメントは、長さが2つ以上のアミノ酸である。一実施形態では、ヒトセグメントは、長さが100個以下のアミノ酸である。さらなる実施形態では、ヒトセグメントは、長さが50個以下、40個以下、30個以下、20個以下、15個以下、10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下又は3個以下のアミノ酸である。そのようなセグメントの例は、図4によって示される。
したがって、第一の態様によると、本発明は、配列番号15を含むポリペプチドに特異的に結合する単離及び精製されたヒト化抗体又は任意のその抗原結合性断片に関する。
一実施形態によると、本発明のヒト化抗体は、
a)H22位のCys、H23位のSer、H26位のGly、H27位のPhe、H28位のSer、H29位のLeu、H30位のSer、H31位のThr、H32位のSer、H33位のAsn、H34位のMet、H35位のGly、H35A位のVal、H35B位のGly、H48位のLeu、H50位のHis、H51位のIle、H52位のLeu、H53位のTrp、H54位のAsn、H55位のAsp、H56位のSer、H57位のLys、H58位のTyr、H59位のTyr、H60位のAsn、H61位のPro、H62位のAla、H63位のLeu、H64位のLys、H65位のSer、H92位のCys、H95位のMet、H96位のGly、H97位のGly、H98位のTyr、H99位のTyr、H100位のGly、H100A位のAsn、H100B位のTyr、H100C位のGly、H100D位のTyr、H100E位のTyr、H100F位のAla、H100G位のMet、H101位のAsp及びH102位のTyrを含み、任意選択でH49位のLeu、H74位のTyr、H11位のIle、H41位のSer及びH108位のSerの少なくとも1つを含む重鎖可変領域と、
b)L1位のGln、L23位のCys、L24位のThr、L25位のAla、L26位のSer、L27位のSer、L27A位のSer、L28位のVal、L29位のSer、L30位のSer、L31位のSer、L32位のTyr、L33位のLeu、L34位のHis、L47位のTrp、L50位のSer、L51位のThr、L52位のSer、L53位のAsn、L54位のLeu、L55位のAla、L56位のSer、L71位のTyr、L88位のCys、L89位のHis、L90位のGln、L91位のTyr、L92位のHis、L93位のArg、L94位のSer、L95位のPro、L96位のPro及びL97位のThrを含み、任意選択でL21位のMet、L10位のIle及びL80位のAlaの少なくとも1つを含む軽鎖可変領域とを含む。
全ての表示位置は、Kabatのナンバリングシステムによって決定されることを理解するべきである。
特定の実施形態によると、制約アミノ酸残基、具体的には軽鎖可変領域のL27のSer、L27AのSer、L28のVal、L29のSer、L30のSer、L31のSer残基は、図1Bに示すナンバリングによって、L27のSer、L28のSer、L29のVal、L30のSer、L30AのSerと番号付けすることができる点に留意するべきである。
上に示すアミノ酸残基は、本発明によってエピトープ、ペプチド6(配列番号15)の認識に関与する「制約」アミノ酸と同定された点にさらに留意するべきである。これらの残基は、配列番号1で表される重鎖可変領域及び配列番号2で表される軽鎖可変領域を有する、対応する参照マウス抗体にも存在する。したがって、一実施形態によれば、本発明のヒト化抗体の重鎖可変領域はマウス参照可変領域の配列番号1と少なくとも30%の同一性を含み、軽鎖可変領域はマウス参照可変領域の配列番号2と少なくとも25%の同一性を含む。
重鎖及び軽鎖の位置番号は一般的なナンバリング方式、例えばKabat及びChothiaのナンバリング方式に従って命名されることを、当業者は認識する。Chothiaの番号方式はKabatの方式と同一であるが、構造的に異なる位置でCDR−L1及びCDR−H1に挿入を置く。特に明記しない限り、配列位置に関してKabatナンバリング方式が本明細書で用いられる。特定のVH又はVL配列中のアミノ酸残基の位置は、特定の配列中のアミノ酸の数を指さずに、ナンバリング方式を参照して命名される位置をむしろ指す。
ヒト重鎖及び軽鎖のCDRの位置、したがってフレームワーク領域の位置は、当分野で標準である定義を用いて決定される。例えば、以下の4つの定義が通常用いられる。Kabatの定義は配列変動性に基づき、最も普通に用いられる。Chothiaの定義は、構造ループ領域の位置に基づく。AbM定義は、Oxford Molecular’s AbM抗体モデル化ソフトウェアによって用いられる2つの間の折衷案である。コンタクト定義は最近導入され、利用できる複雑な結晶構造の分析に基づく。
例えば、本発明の軽鎖のフレームワークは、Kabatナンバリングを用いて、残基1〜23、35〜49、57〜88及び98〜109(又は98からC末端の残基にかけて、例えば98〜108)を一般的に含む。当業者によって理解されるように、これらの番号はVH又はVL配列中のアミノ酸の数を指すことはできないが、Kabatナンバリングシステム(又は他のナンバリングシステム)を用いて残基の位置を指すことができる。
用語「抗体」は、抗原に特異的に結合して認識する免疫グロブリン遺伝子、又はその機能的断片によってコードされるポリペプチドを指す(すなわち、下で定義される抗原結合性断片)。認知された免疫グロブリン遺伝子には、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン及びミュー定常領域遺伝子、並びに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖は、カッパ又はラムダと分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ又はイプシロンと分類され、それらは次に免疫グロブリンクラス、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEをそれぞれ定義する。
例示的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、四量体を含む。各四量体は、ポリペプチド鎖の2つの同一の対で構成され、各対は1つの「軽」鎖(約25kDa)及び1つの「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。各鎖のN末端は、抗原認識を主に担う約100から110以上のアミノ酸の可変領域を定義する。用語可変軽鎖(VL)及び可変重鎖(VH)は、それぞれこれらの軽鎖及び重鎖を指す。より具体的には、可変領域は超可変及びフレームワーク(FR)領域に細分化される。超可変領域は、所与の位置に、その位置で最も一般的なアミノ酸と比較して高い比率の異なるアミノ酸を有する。軽鎖及び重鎖の中に、3つの超可変領域が存在する。より安定したアミノ酸配列を有する4つのFR領域は、超可変領域を分断する。超可変領域は、抗原の表面の一部と直接的に接触する。この理由から、超可変領域は「相補性決定領域」又は「CDR」と本明細書で呼ばれる。FR領域は、抗原と接触する位置に超可変領域を保持する足場の役目を果たすベータシート構造を形成する。
N末端からC末端にかけて、軽鎖及び重鎖の両方は、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4を含む。CDRは、抗原のエピトープへの結合を主に担う。各鎖のCDRは、N末端から順番に番号付けしてCDR1、CDR2及びCDR3と一般的に呼ばれ、特定のCDRが位置する鎖によっても一般的に識別される。したがって、VH CDR3はそれが見出される抗体の重鎖の可変ドメインに位置するが、VL CDR1はそれが見出される抗体の軽鎖の可変ドメインからのCDR1である。本明細書に記載される軽鎖及び重鎖可変領域のナンバリングは、特に明記しない限りKabat[例えばJohnsonら、(2001)「Kabat Database and its applications:future directions」Nucleic Acids Research、29巻:205〜206頁;及びKabat Database of Sequences of Proteins of Immunological Interest、2002年2月22日Datasetを参照]による。
VH又はVL鎖の「フレームワーク」は、鎖のフレームワーク領域を指す。各鎖に適用される本用語は、フレームワーク領域の全てを包含する。
本明細書で用いる「ヒト化抗体」は、参照抗体の結合特異性、すなわち参照抗体、一般的にマウスモノクローナル抗体のそれらと実質的に同一であるCDR領域を含む抗体を指す。より具体的には、本発明によれば、参照抗体は、それぞれ配列番号1及び2の重鎖及び軽鎖可変領域を有するモノクローナルマウス抗ペプチド6抗体であってよい。本明細書で用いる「ヒト化抗体」は、参照抗体と同じエピトープに結合し、少なくとも25%の結合親和性を一般的に有する。結合親和性のための例示的なアッセイは、例2(図7)に記載される。抗体が同じエピトープに結合するかどうかについて判定する方法は当技術分野で周知であり、例えば、抗体が参照抗体と同じエピトープに結合するかどうかを判定するためには、エピトープマッピング或いは競合実験の技術を開示するHarlow及びLane、Using Antibodies、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1999を参照。
本明細書の上で示されるように、特定の実施形態によると、本発明はヒト化抗ペプチド6抗体及び任意のその抗原結合性断片を提供する。用語「抗原結合性断片」は、抗原への結合を保持する抗体の任意の部分を指す。抗体の機能的断片の例には、完全抗体分子、抗体断片、例えばFv、単鎖Fv(scFv)、相補性決定領域(CDR)、VL(軽鎖可変領域)、VH(重鎖可変領域)、Fab、F(ab)2’及びそれらの任意の組合せ、又は標的抗原への結合が可能な免疫グロブリンペプチドの他の任意の機能的部分が含まれるが、これらに限定されない。当業者によって理解されるように、様々な方法、例えばペプシンなどの酵素による完全な抗体の消化、又はデノボ合成によって、様々な抗体断片を得ることができる。多くの場合、抗体断片は、化学的に又は組換えDNA方法を用いることによってデノボ合成される。したがって、用語抗体は、本明細書で用いるように、完全体抗体の改変によって生成される抗体断片、又は組換えDNA方法を用いてデノボ合成されるもの(例えば、単鎖Fv)、又はファージディスプレイライブラリーを用いて同定されるものを含む。用語抗体は、二価分子、ダイアボディ、トリアボディ及びテトラボディも含む。
「VH」又は「VH」への言及は、Fv、scFv、ジスルフィド安定化Fv(dsFv)又はFabを含む、免疫グロブリン重鎖の可変領域を指す。「VL」又は「VL」への言及は、Fv、scFv、dsFv又はFabを含む、免疫グロブリン軽鎖の可変領域を指す。
より具体的には、成句「単鎖Fv」又は「scFv」は、伝統的な2鎖抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメインが連結して1つの鎖を形成している抗体を指す。一般的に、適切な折畳み及び活性結合部位の形成に干渉することなく可変ドメインの安定化を可能にするために、2つの鎖の間にリンカーペプチドが挿入されている。本発明の単鎖ヒト化抗体、例えばヒト化抗ペプチド6抗体は、モノマーとして結合することができる。他の例示的な単鎖抗体は、ダイアボディ、トリアボディ及びテトラボディを形成することができる。
さらになお、本発明のヒト化抗体、例えばヒト化ペプチド6抗体は、「再構成される」抗体又は抗体断片、例えばFab、Fab’モノマー、F(ab)2二量体又は完全体免疫グロブリン分子の1つの構成要素を形成することもできる。本発明のヒト化抗体がヒトFc領域をさらに含むことができることに留意すべきである。
特定の実施形態によると、本発明は、配列番号15(ペプチド6)のポリペプチド又は前記ペプチド6を含む任意の配列、例えば配列番号98の配列を特異的に認識するヒト化抗体を提供する。特定の実施形態では、本発明のヒト化抗体は、配列番号15の断片を含む配列を認識することもできる。そのような断片の非限定例は、配列番号101(ペプチド7と命名される)によって表される。
したがって、エピトープに言及するときの用語「結合特異性」、「抗原に特異的に結合する」、「特異的に免疫活性」、「特異的に向けられる」又は「特異的に認識する」は、タンパク質及び他の生物学的製剤の異種集団でのエピトープの存在を確定する結合反応を指すことに留意するべきである。したがって、指定されたイムノアッセイ条件の下で、特定された抗体は、バックグラウンドの少なくとも2倍、より一般的にはバックグラウンドの10〜100倍を超えて特定のエピトープに結合する。特定のタンパク質又は炭水化物に特異的に免疫活性である抗体を選択するために、様々なイムノアッセイフォーマットを用いることができる。例えば、タンパク質又は炭水化物に特異的に免疫活性である抗体を選択するために、固相ELISAイムノアッセイが日常的に用いられる。用語「エピトープ」は、その抗体が認識することもできる、抗体が結合することが可能な任意の分子の部分を指すものとする。エピトープ又は「抗原決定基」は、アミノ酸又は糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基から通常なり、特異的な3次元構造特性並びに特異的な電荷特性を有する。
上で示されるように、特定の実施形態では、本発明は単離及び精製されたヒト化抗体を提供する。本明細書で用いるように、抗体又は抗体をコードする核酸分子との関連で、「単離された」又は「実質的に精製された」は、抗体又は核酸がその天然の環境から取り出されたか、又はその天然の状態から変更されたことを意味する。このように、「単離された」は、抗体又は核酸分子が精製された程度を必ずしも反映するわけではない。しかし、ある程度精製された抗体又は核酸分子は「単離された」ことが理解されよう。抗体又は核酸分子が天然の環境に存在しない場合、すなわちそれが自然界に存在しない場合、それが存在する場所に関係なくその分子は「単離されている」。例示のために、ヒトに自然に存在しないヒト化抗体は、それがヒトに存在する場合でも「単離されている」。
さらに、核酸又はタンパク質に適用される場合、用語「単離された」又は「実質的に精製された」は、天然の状態でそれが関連する他の細胞構成要素を核酸又はタンパク質が事実上含まないことを意味する。それは好ましくは均質の状態であるが、それは乾燥又は水性溶液にあってよい。純度及び均質性は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又は高速液体クロマトグラフィーなどの分析化学技術を用いて一般的に決定される。調製物に存在する支配的な種であるタンパク質は、実質的に精製されている。
図4及び表3に示すように、本発明のヒト化抗体の可変領域は、本発明の抗体の重鎖及び軽鎖可変領域を形成するために組み合わせられる異なるヒト抗体に由来する異なるセグメントで構成される。したがって、特定の実施形態では、前記ヒト化抗体の重鎖及び軽鎖可変領域は、ヒト起源のセグメントで完全に構成されるヒト化抗体を形成する、少なくとも2つ以上のヒト抗体の少なくとも2つ以上のセグメントで構成される。セグメントは完全体CDRでもフレームワーク領域でもないことに留意すべきである。
本発明との関連で、用語「セグメント」は、抗体分子中で見出される連続したアミノ酸配列を指し、そのようなセグメントのサイズは、長さが2から125アミノ酸、好ましくは長さが2から31アミノ酸であり、そのようなセグメントは完全体CDRでも完全体フレームワーク領域でもない。図4に例示されるように、本発明のヒト化抗体は、ヒト化抗体の可変領域の中に異なるヒト抗体からのアミノ酸配列の2つ以上のセグメントを一般的に組み合わせる。詳細には、本発明は、ヒト化抗体の重鎖及び軽鎖可変領域(それぞれVH及びVL)に関し、そこで、VH及びVLの各々は2つ以上のヒト抗体可変領域からの配列のセグメントで全体が構成され、一般的には組み合わせられたVH及びVLの各々は由来源のヒト抗体VH及びVL中のそれらの位置に対応するヒト可変領域配列位置のセグメントを含み、例えば組み合わせられたVH配列中のアミノ酸1から10はヒト抗体中のアミノ酸1から10に由来する。或いは、本発明のヒト化抗体のヒトVH又はVL配列のセグメントは、由来源のヒト抗体VH又はVL中の配列位置にかかわりなく任意の配列位置に置くことができる。由来源のヒト抗体VH及びVLは、例えばヒトモノクローナル抗体V領域配列のデータベースで提供されるような、任意の既存のヒト抗体可変(V)領域アミノ酸配列であり、V領域体細胞突然変異及び生殖細胞系と異なる他の変異を有する親和性成熟抗体からの配列、生殖細胞系V領域からの配列、一揃いの固定されたV領域フレームワークを有するが可変CDRを有しない抗体などの種の抗体からの配列のセグメントから形成される人工構築の抗体V領域からの配列、ファージディスプレイライブラリーなどのヒト抗体ライブラリーから選択される配列、並びにヒト抗体又は抗体断片をコードする遺伝子を発現するトランスジェニック動物に由来するヒト抗体の配列を含むことができる。
より具体的には、図4及び表3に示すように、一実施形態によれば、本発明のヒト化抗体の重鎖可変領域は、以下のものを含むことができる。
a)配列番号12及び配列番号13又は任意のその一部のセグメント、或いは配列番号40及び配列番号13又は任意のその一部のセグメントのアミノ酸配列を含むフレームワーク領域1(FR1)、
b)配列番号13又は任意のその一部、及び配列番号14又は任意のその一部のセグメントのアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)、
c)配列番号16、配列番号14及び配列番号17又は任意のその一部のセグメント、或いは配列番号41、配列番号14及び配列番号17のセグメント、或いは配列番号41、配列番号14及び配列番号44のセグメントのアミノ酸配列を含むFR2、
d)配列番号18及び配列番号19又は任意のその一部のセグメントのアミノ酸配列を含むCDR2、
e)配列番号34、配列番号19、配列番号35及び配列番号36又は任意のその一部のセグメント、或いは配列番号43、配列番号19及び配列番号36又は任意のその一部のセグメントのアミノ酸配列を含むFR3、
f)配列番号36又は任意のその一部、配列番号37及び配列番号38又は任意のその一部のセグメント、或いは配列番号36又はその任意のその一部、配列番号37及び配列番号42又は任意のその一部のセグメント、或いは配列番号36又はその任意のその一部、配列番号96及び配列番号42又は任意のその一部のセグメントのアミノ酸配列を含むCDR3、
g)配列番号38又は任意のその一部及び配列番号39のセグメント、或いは配列番号42又は任意のその一部のセグメントのアミノ酸配列を含むFR4。
重鎖可変領域が、H10、H11、H12、H13、H15、H19、H41、H49、H74、H75、H79、H81、H82、H82A、H82C、H84、H85及びH108からなる群から選択される少なくとも1つの位置に置換を含み、位置は、Kabatのナンバリングシステムによって決定される点に留意するべきである。
別の実施形態によると、図4及び表3に示す前記複合抗体の軽鎖可変領域は、以下のものを含む。
a)配列番号45、配列番号46及び配列番号47又は任意のその一部のセグメント、或いは配列番号45、配列番号57及び配列番号47又は任意のその一部のセグメント、或いは配列番号45及び配列番号97又は任意のその一部のセグメントのアミノ酸配列を含むFR1、
b)配列番号47又は任意のその一部、配列番号48及び配列番号49又は任意のその一部のセグメント、或いは配列番号97又は任意のその一部、配列番号48及び配列番号49又は任意のその一部のセグメントのアミノ酸配列を含むCDR1、
c)配列番号49又は任意のその一部、配列番号50又は任意のその一部及び配列番号51又は任意のその一部のセグメントのアミノ酸配列を含むFR2、
d)配列番号50又は任意のその一部、配列番号51又は任意のその一部及び配列番号52又は任意のその一部のセグメントのアミノ酸配列を含むCDR2、
e)配列番号52又は任意のその一部、配列番号53又は任意のその一部、配列番号54又は任意のその一部及び配列番号55又は任意のその一部のセグメント、或いは配列番号52又は任意のその一部、配列番号58又は任意のその一部及び配列番号59又は任意のその一部のセグメントのアミノ酸配列を含むFR3、
f)配列番号54又は任意のその一部、配列番号55又は任意のその一部及び配列番号56又は任意のその一部のセグメント、或いは配列番号58又は任意のその一部、配列番号59又は任意のその一部及び配列番号56又は任意のその一部のセグメントのアミノ酸配列を含むCDR3、
g)配列番号56又は任意のその一部のセグメントのアミノ酸配列を含むFR4。別の実施形態によると、軽鎖可変領域が、L10、L11、L13、L15、L19、L21、L22、L42、L43、L60、L70、L72、L78、L79、L80、L83及びL100からなる群から選択される少なくとも1つの位置に置換を含むことができ、位置は、Kabatのナンバリングシステムによって決定される。
特定の実施形態によると、本発明のヒト化抗体は、表3に開示される複数のヒトVH及びVL配列セグメントを、最終的なヒト化抗体V領域でヒトT細胞エピトープを制限又は回避する組合せで組み合わせることによって構築されることを理解するべきである。T細胞エピトープの排除は、組合せヒト化抗体の免疫原性を低減する。
この点で、ヒトT細胞エピトープは、ヒトMHCクラスII分子に結合することができ、CD4T細胞への提示を通してヘルパーT細胞応答を誘導することができるアミノ酸配列である。最終的なヒト化抗体でT細胞エピトープを制限又は回避する、ヒトVH及びVL配列セグメント並びにセグメントの組合せを選択することができる。これは、例えばヒト生殖細胞系配列からのT細胞エピトープを含まないセグメントの使用によって、及び隣接したセグメントの連結によってT細胞エピトープを含まない新しい配列を形成することによって、例えば2つのセグメントの接合部での非MHC結合配列の形成、別のヒト生殖細胞系配列の形成、又は非生殖細胞系配列にもかかわらずヘルパーT細胞応答を誘導しない配列の形成によって達成することができる。
したがって、一実施形態によると、本発明のヒト化抗体の重鎖及び軽鎖可変領域は、ヒトT細胞エピトープが欠けている。より具体的には、全てのヒトセグメントが組み合わされて本発明の最終的なヒト化抗体が作製されるときに、全ての可能性があるT細胞エピトープの約70%から99%、75%から99%、80%から99%、85%から99%、具体的には90から99%、より具体的には91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%が除去された。
用語「免疫原性」は、レシピエントに投与されたときに免疫応答(体液性又は細胞性)を導き出す抗体又は抗原結合性断片の能力を指し、例えば、HAMA(ヒト抗マウス抗体)応答を含む。HAMA応答は、対象からのT細胞が投与された抗体への免疫応答を始めるときに開始される。T細胞は、特異的な「抗抗体」抗体を生成するために次にB細胞を動員する。
上に示すように、本発明のヒト化抗体はヒト化重鎖及びヒト化軽鎖を含む。重鎖及び軽鎖両方の可変領域は、ヒト起源の組合せセグメントで構成される。具体的な一実施形態によると、ヒト化軽鎖は、参照マウス抗ペプチド6抗体の対応する相補性決定領域と少なくとも約60%から95%実質的に同一であるアミノ酸配列を有する、3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2及びCDR3)を含む。具体的な一実施形態によると、参照マウス抗ペプチド6抗体は、配列番号1及び2のアミノ酸配列をそれぞれ含む可変重鎖及び軽鎖を有する。
さらに別の具体的な実施形態では、本発明のヒト化抗体は、参照マウス可変領域の配列番号1に示すCDR1、CDR2及びCDR3を含む重鎖可変領域、及び配列番号2に示すCDR1、CDR2及びCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。
したがって、具体的な実施形態では、本発明のヒト化抗体は以下のものを含むことができる。(a)参照マウス抗体の配列番号1と少なくとも約70%同一である重鎖可変領域、及び(b)参照マウス抗体の配列番号2と少なくとも約70%同一である軽鎖可変領域。より具体的には、本発明のヒト化抗体の重鎖及び軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号1及び2の参照マウス重鎖及び軽鎖可変領域と約70%から85%同一であってよい。より詳細には、そのようなアミノ酸配列同一性は、少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%又は85%のものでよい。
2つ以上の核酸又はポリペプチド配列との関連で、用語「同一である」、「実質的同一性」、「実質的相同性」又は「同一性」パーセントは、同じであるか或いは下記デフォルトパラメータによるBLAST若しくはBLAST2.0配列比較アルゴリズムを用いて、又は手動整列及び目視検査で測定して、特定の百分率の同じ(すなわち、比較ウインドウ又は指定領域にわたる最大対応のために比較し、整列させたときに、特定の領域(例えば、アミノ酸配列配列番号1又は2)にわたる約60%の同一性、好ましくは65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の同一性)アミノ酸残基又はヌクレオチドを有する2つ以上の配列又は部分配列を指す。その結果そのような配列は「実質的に同一である」と言われる。この定義は、試験配列の補体を指すか、又はそれに適用することもできる。この定義には、欠失及び/又は付加を有する配列、並びに置換を有するものも含まれる。下記のように、好ましいアルゴリズムは、ギャップなどを説明することができる。好ましくは、長さが少なくとも約25個のアミノ酸又はヌクレオチドの領域、より好ましくは長さが50〜100個のアミノ酸又はヌクレオチドの領域にわたって同一性は存在する。
配列比較のために、一般的に1つの配列が参照配列としての働きをし、それに対して試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験及び参照配列がコンピュータに入力され、必要に応じて部分配列座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。好ましくは、デフォルトプログラムパラメータを用いることができ、又は代替パラメータを指定してもよい。配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて参照配列と比較した試験配列の配列同一性パーセントを次に計算する。
さらになお、本発明のヒト化抗体は、配列番号1の参照マウス重鎖可変領域に少なくとも約30%から70%同一である、より具体的には配列番号1の参照マウス重鎖可変領域に少なくとも約40%、50%、60%、65%又は70%同一である重鎖可変領域を含むことができる。具体的な一実施形態では、本発明のヒト化抗体は、配列番号1の参照マウス重鎖可変領域に少なくとも約70%同一であり、H10、H11、H12、H13、H15、H19、H41、H49、H74、H75、H79、H81、H82、H82A、H82C、H84、H85及びH108からなる群から選択される少なくとも1つの位置に置換を有する重鎖可変領域を含むことができる。本発明のヒト化抗体の軽鎖可変領域は、配列番号2の参照マウス重鎖可変領域に少なくとも約70%同一であってよく、L10、L11、L13、L15、L19、L21、L22、L42、L43、L60、L70、L72、L78、L79、L80、L83及びL100からなる群から選択される少なくとも1つの位置に置換を含む。本明細書で上に示すように、全ての示される位置はKabatナンバリングシステムによって決定される。
一実施形態では、抗ペプチド6ヒト化抗体又はその抗原結合性断片の重鎖及び軽鎖可変領域は、ペプチド6(配列番号15)、又は配列番号15のアミノ酸配列を含む任意のペプチド、例えば配列番号98のペプチド、又は配列番号15の断片を含むペプチド、例えば配列番号101によって表される配列に結合するマウス参照又は親抗体との比較で、18個以下のアミノ酸置換を有する。別の実施形態では、抗ペプチド6ヒト化抗体の重鎖及び軽鎖可変領域は、参照マウス抗ペプチド6抗体との比較で、17個以下、16個以下、15個以下、14個以下、13個以下、12個以下、11個以下、10個以下、9個以下、8個以下、又は7個以下のアミノ酸置換を示された位置に有する。一実施形態では、重鎖又は軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号1及び2の重鎖及び軽鎖可変領域を有する参照マウス抗ペプチド6抗体との比較で、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12又は少なくとも13個のアミノ酸置換を、具体的には上に示す位置に有する。
アミノ酸配列に関して、コード配列で単一のアミノ酸又は小さな割合のアミノ酸を変更、付加又は削除する、核酸、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質配列への個々の置換、欠失又は付加は、「保存的に改変された変異体」であり、変更は化学的に類似したアミノ酸によるアミノ酸の置換をもたらすことを当業者は認識する。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換の表は、当技術分野で周知である。そのような保存的に改変された変異体は、本発明の多形性変異体、種間同族体及び対立遺伝子に加えるものであって、それらを排除しない。
例えば、脂肪族アミノ酸(G、A、I、L又はV)がその群の別の構成員で置換される置換、又は1つの極性残基による別の残基の置換、例えばアルギニンによるリシンの置換、グルタミン酸によるアスパラギン酸の置換、若しくはグルタミンによるアスパラギンの置換などの置換を加えることができる。以下の8群の各々は、お互いの保存的置換である他の例示的なアミノ酸を含む。
1)アラニン(A)、グリシン(G)、
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、
4)アルギニン(R)、リシン(K)、
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、
7)セリン(S)、トレオニン(T)、及び
8)システイン(C)、メチオニン(M)。
特定の一実施形態によると、本発明のヒト化抗体は
a)H10がAlaであり、H11がIle又はLeuであり、H12がValであり、H13がLysであり、H15がThrであり、H19がThrであり、H41がSer又はAlaであり、H49がLeu又はAlaであり、H74がTyr又はSerであり、H75がLysであり、H79がValであり、H81がThrであり、H82がMetであり、H82AがThrであり、H82CがMetであり、H84がProであり、H85がValであり、H108がSer又はLeuである以外は配列番号1に示す通りの重鎖可変領域と、
b)L10がIle又はThrであり、L11がLeuであり、L13がLeuであり、L15がProであり、L19がAlaであり、L21がMet又はLeuであり、L22がSerであり、L42がLysであり、L43がAlaであり、L60がSerであり、L70がAspであり、L72がThrであり、L78がLeuであり、L79がGlnであり、L80がAla又はProであり、L83がPheであり、L100がGlnである以外は配列番号2に示す通りの軽鎖可変領域とを含む。位置はKabatのナンバリングシステムによって決定される。
より具体的には、本発明は
a)配列番号21、22、23及び20のいずれか1つのアミノ酸配列又は任意のその変異体を含む重鎖可変領域であって、そのような変異体はH10、H11、H12、H13、H15、H19、H41、H49、H74、H75、H79、H81、H82、H82A、H82C、H84、H85及びH108からなる群から選択される少なくとも1つの位置に置換を含み得る重鎖可変領域と、
b)配列番号26、24及び25のいずれか1つのアミノ酸配列又は任意のその変異体を含む軽鎖可変領域であって、そのような変異体が、L10、L11、L13、L15、L19、L21、L22、L42、L43、L60、L70、L72、L78、L79、L80、L83及びL100からなる群から選択される少なくとも1つの位置に置換を含み得る(Kabatのナンバリングシステムによる)軽鎖可変領域とを含むヒト化抗体を提供する。
本発明のヒト化抗体の変異体は、対象のタンパク質、例えば本発明のヒト化抗ペプチド6抗体の様々な変異体と、アミノ酸レベルで少なくとも80%の配列類似性、多くの場合少なくとも85%の配列類似性、90%の配列類似性、又は少なくとも95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列類似性を有することができる。
上記のように、用語「変異体」は、アミノ酸及び核酸配列の両方に適用することができる。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された変異体が好ましい。これらの変異体は、同一であるか事実上同一であるアミノ酸配列をコードする核酸配列を指し、又は核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、事実上同一である核酸配列を指す。遺伝子コードの変性のため、多数の機能的に同一である核酸が任意の所与のポリペプチドをコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG及びGCUは、全てアミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンによって指定されるあらゆる位置で、コードされるポリペプチドを変更することなく記載される対応するコドンのいずれかにコドンを変更することができる。そのような核酸変異は「サイレント変異」であり、それは保存的に改変された変異の1種である。ポリペプチドをコードする本明細書のあらゆる核酸配列は、核酸のあらゆる可能なサイレント変異も記載する。核酸中の各コドン(通常はメチオニンの唯一のコドンであるAUG以外)は、機能的に同一の分子を産するために改変することができることを、当業者は認識する。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記載される各配列に内在する。
アミノ酸は、置換のために、CDR立体構造及び/又はペプチド6抗原への結合に及ぼすそれらの可能な影響に基づいて選択されることを理解するべきである。そのような可能な影響の調査は、モデリング、特定の場所のアミノ酸の特性の検査、又は特定のアミノ酸の置換若しくは突然変異誘発の影響の経験的観察による。
通常、ヒト化抗体でのCDR領域は、マウス参照抗体での対応するCDR領域に実質的に同一であり、より普通には同一である。通常は望ましくないが、生じるヒト化免疫グロブリンの結合親和性にあまり影響を及ぼすことなく、CDR残基の1つ又は複数の保存的アミノ酸置換を加えることが時にはできる。時折、CDR領域の置換は、結合親和性を強化することができる。
特定の一実施形態では、配列番号21、配列番号22、配列番号23及び配列番号20からなる群から選択される重鎖可変領域を有するヒト化抗体に本発明は関する。別の具体的な実施形態によると、そのようなヒト化抗体の軽鎖可変領域は、配列番号26、配列番号24及び配列番号25からなる群から選択することができる。
様々な実施形態では、本明細書で提示されるヒト化抗ペプチド6抗体は、配列番号21、22、23及び20のアミノ酸配列、又は配列番号21、22、23及び20と60%以上、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、若しくは99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する可変重鎖領域を含む。配列番号21、22、23及び20と90%以上、95%以上、98%以上、又は99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を抗体が含む一部の実施形態では、アミノ酸の差の1つ又は複数又は全ては、保存的置換である。
一部の実施形態では、本明細書で提示される抗ペプチド6抗体は、配列番号26、24及び25のアミノ酸配列、又は配列番号26、24及び25と60%以上、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、若しくは99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変重鎖領域を含む。配列番号26、24及び25と90%以上、95%以上、98%以上、又は99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を抗体が含む一部の実施形態では、アミノ酸の差の1つ又は複数又は全ては、保存的置換である。当然ながら、そのような重鎖及び軽鎖アミノ酸配列の任意の可能な組合せは、本明細書で企図されている。
したがって、一実施形態では、本発明は、配列番号21の重鎖可変領域、並びに配列番号26、配列番号24及び配列番号25からなる群から選択することができる軽鎖可変領域を有するヒト化抗体を提供する。
具体的な一実施形態によると、本発明のヒト化抗体は、配列番号21の重鎖可変領域、並びに配列番号26の軽鎖可変領域を有する。そのようなヒト化抗体変異体は、VH2/VK3と命名される。
別の具体的な実施形態では、本発明のヒト化抗体は、配列番号21の重鎖可変領域及び配列番号25の軽鎖可変領域を含む。そのようなヒト化抗体は、VH2/VK2と命名される。
別の具体的な実施形態では、本発明のヒト化抗体は、配列番号21の重鎖可変領域及び配列番号24の軽鎖可変領域を含む。そのような変異体は、VH2/VK1と命名される。
別の実施形態では、本発明は、配列番号22の重鎖可変領域及び配列番号24、配列番号25及び配列番号26からなる群から選択され得る軽鎖可変領域を提供する。
具体的な一実施形態によると、本発明のヒト化抗体は、配列番号22の重鎖可変領域及び配列番号25の軽鎖可変領域を含む。そのようなヒト化抗体変異体は、VH3/VK2と命名される。
本発明の他の実施形態は、配列番号22の重鎖可変領域及び配列番号24の軽鎖可変領域(VH3/VK1)、配列番号22の重鎖可変領域及び配列番号26の軽鎖可変領域(VH3/VK3)、配列番号23の重鎖可変領域及び配列番号24の軽鎖可変領域(VH4/VK1)、配列番号23の重鎖可変領域及び配列番号25の軽鎖可変領域(VH4/VK2)、配列番号23の重鎖可変領域及び配列番号26の軽鎖可変領域(VH4/VK3)、配列番号20の重鎖可変領域及び配列番号24の軽鎖可変領域(VH1/VK1)、配列番号20の重鎖可変領域及び配列番号25の軽鎖可変領域(VH1/VK2)、配列番号20の重鎖可変領域及び配列番号26の軽鎖可変領域(VH1/VK3)を有するヒト化抗体を提供する。
本明細書で前に開示されるように、具体的な実施形態によると、本発明のヒト化抗体は、それぞれ配列番号21、22、23及び20によって表される、重鎖変異体H2、H3、H4及びH1のいずれかによって実証されるように、H10がAla、H11がIle若しくはLeu、H12がVal、H13がLys、H15がThr、H19がThr、H41がSer若しくはAla、H49がLeu若しくはAla、H74がTyr若しくはSer、H75がLys、H79がVal、H81がThr、H82がMet、H82AがThr、H82CがMet、H84がPro、H85がVal、及びH108がSer若しくはLeuであること以外は配列番号1に示す通りの重鎖可変領域を含み、並びにそれぞれ配列番号26、25及び24に表される軽鎖変異体K3、K2及びK1のいずれかによって実証されるように、L10がIle若しくはThr、L11がLeu、L13がLeu、L15がPro、L19がAla、L21がMet若しくはLeu、L22がSer、L42がLys、L43がAla、L60がSer、L70がAsp、L72がThr、L78がLeu、L79がGln、L80がAla若しくはPro、L83がPhe、及びL100がGlnであること以外は配列番号2に示す通りの軽鎖可変領域を含む場合は、IL−10の誘導に特に適している。位置は、Kabatのナンバリングシステムによって決定されることに留意するべきである。
以下の実施例、並びに特に比較図7、14及び15に示すように、これらの置換のどの1つも重要であり、ペプチド6への異なる変異体の結合親和性に寄与することができ、又はIL−10発現を誘導する異なる変異体の能力に反映させることができる。
より具体的には、図7に示すように、VH2重鎖で構成された変異体は、ペプチド6への最高の結合親和性を示したが、VH1変異体は最も低い結合親和性を示した。したがって、特定の実施形態によると、変異体VH2に示すように、残基H11の好ましい置換はLeuであってよい。さらに別の実施形態では、変異体VH1の場合のように、残基H41の好ましい置換はAlaであり、好ましいH74置換はTyrであってよく、好ましいH108置換はLeuであってよい。変異体VH2/VK3は最高の親和性を示すが、変異体VH3/VK2は非常に低減された親和性を示すことを図15Bは示す。H3でのSerと比較して、H2でのTyrへの残基H74の置換が重要なようである。異なる軽鎖による様々な組合せは、差別的な結合親和性に寄与することもでき、例えば変異体VH2/VK3はVH2/VK2と比較してより良い結合親和性を示す。両方の変異体の軽鎖間の唯一の差は、好ましい変異体VK3でのL21 Leuと比較して、VK2含有変異体におけるL21でのMetへの置換である。VH2/VK1の組合せは最も低い親和性を示し、したがって、軽鎖での置換の好ましい組合せがL10 Thr、L21 Leu及びL80 Proであろうことを示すことができる。
図15に示すように、ペプチド6への異なる変異体の結合及びIL−10の誘導は、直接的に相関していない。したがって、重鎖及び軽鎖での異なる組合せの置換は、IL−10の発現を誘導する変異体の異なる能力に反映させることができる。例えば、図15A及びBに示すように、VH2/VK3変異体は、最高のIL−10誘導を示す。異なる重鎖を比較するとき、VH2含有変異体はVH3変異体よりも優れる。両者の間の唯一の差は、変異体VH3でのH74 Serと比較してVH2変異体での位置H74のTyr残基である。IL−10誘導では、異なるVK変異体による組合せも機能的に反映されることにも留意すべきである。例えば、変異体VH2/VK2と比較したとき、VH2/VK3変異体はIL−10の有意に高い誘導を示した。両変異体間の唯一の差は、1つの残基が異なる軽鎖である。より効果的でないVK2を含む変異体でのMetと比較して、VK3変異体の位置L21でのLeu。これらの結果は、1つの置換でさえ有意な機能的影響を及ぼすことができることを示す。
したがって、ある特定の実施形態では、H11はIle及びLeuのいずれか1つ、ペプチド6との結合のためには好ましくはLeu、IL−10の発現を誘導するためには好ましくはLeuで置換することができ、H41はSer及びAlaのいずれか1つ、ペプチド6との結合のためには好ましくはAla、IL−10の発現を誘導するためには好ましくはAlaであってよく、H49はLeu及びAlaのいずれか1つ、ペプチド6との結合のためには好ましくはLeu、IL−10の発現を誘導するためには好ましくはLeuであってよく、H74はTyr及びSerのいずれか1つ、ペプチド6との結合のためには好ましくはTyr、IL−10の発現を誘導するためには好ましくはTyrであってよく、H108はLeu及びSerのいずれか1つ、ペプチド6との結合のためには好ましくはLeu、IL−10の発現を誘導するためには好ましくはLeuであってよく、L10はIle及びThrのいずれか1つ、ペプチド6との結合のためには好ましくはThr、IL−10の発現を誘導するためには好ましくはThrで置換することができ、L21はMet及びLeuのいずれか1つ、ペプチド6との結合のためには好ましくはLeu、IL−10の発現を誘導するためには好ましくはLeuで置換することができ、L80はPro及びAlaのいずれか1つ、ペプチド6との結合のためには好ましくはPro、IL−10の発現を誘導するためには好ましくはProで置換することができることに留意するべきである。
上述の置換の全ての組合せも企図され、それらは、H11 Leu、H41 Ala、H49 Ala、H74 Ser及びH108 Leuを含む置換された重鎖、並びにL10 Thr、L21 Leu及びL80 Proを含む置換された軽鎖;H11 Leu、H41 Ala、H49 Ala、H74 Ser及びH108 Leuを含む置換された重鎖、並びにL10 Thr、L21 Met及びL80 Proを含む置換された軽鎖;H11 Leu、H41 Ala、H49 Ala、H74 Ser及びH108 Leuを含む置換された重鎖、並びにL10 Ile、L21 Met及びL80 Alaを含む置換された軽鎖;H11 Leu、H41 Ala、H49 Leu、H74 Tyr及びH108 Leuを含む置換された重鎖、並びにL10 Thr、L21 Leu及びL80 Proを含む置換された軽鎖;H11 Leu、H41 Ala、H49 Leu、H74 Tyr及びH108 Leuを含む置換された重鎖、並びにL10 Thr、L21 Met及びL80 Proを含む置換された軽鎖;H11 Leu、H41 Ala、H49 Leu、H74 Tyr及びH108 Leuを含む置換された重鎖、並びにL10 Ile、L21 Met及びL80 Alaを含む置換された軽鎖;H11 Ile、H41 Ser、H49 Leu、H74 Tyr及びH108 Serを含む置換された重鎖、並びにL10 Thr、L21 Leu及びL80 Proを含む置換された軽鎖;H11 Ile、H41 Ser、H49 Leu、H74 Tyr及びH108 Serを含む置換された重鎖、並びにL10 Thr、L21 Met及びL80 Proを含む置換された軽鎖;H11 Ile、H41 Ser、H49 Leu、H74 Tyr及びH108 Serを含む置換された重鎖、並びにL10 Ile、L21 Met及びL80 Alaを含む置換された軽鎖;H11 Leu、H41 Ala、H49 Leu、H74 Ser及びH108 Leuを含む置換された重鎖、並びにL10 Thr、L21 Met及びL80 Proを含む置換された軽鎖;H11 Leu、H41 Ala、H49 Leu、H74 Ser及びH108 Leuを含む置換された重鎖、並びにL10 Ile、L21 Met及びL80 Alaを含む置換された軽鎖;及び最も好ましくはH11 Leu、H41 Ala、H49 Leu、H74 Ser及びH108 Leuを含む置換された重鎖、並びにL10 Thr、L21 Leu及びL80 Proを含む置換された軽鎖を含む。
前述の置換の一部が発生し、一部が発生しない部分置換も企図されることを、見落すべきでない。
本発明のヒト化抗体には、IgM、IgG、IgD、IgA及びIgE、並びにIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む任意のアイソタイプを含む全ての種類の定常領域を有する抗体が含まれることを認識するべきである。ヒト化抗体は、複数のクラス又はアイソタイプからの配列を含むことができる。具体的な実施形態によると、本発明の抗体は、IgG−1アイソタイプである。
特定の実施形態によると、本発明のヒト化抗体は、それらのそれぞれの抗原(ペプチド6又は前記ペプチドを含む任意のアミノ酸配列、例えば配列番号98のペプチド)に、少なくとも105、106、107、108、109又は1010M−1の特異的な結合親和性を示すことができる。多くの場合、ヒト化抗体の結合親和性の上下限は、それらが由来する参照マウス抗体のそれの3倍又は5倍又は10倍以内である。
本発明の重鎖及び軽鎖領域は、組換えDNA技術を用いて一般的に得られる。これを実施するために通常使用される組換えDNA方法は、当業者に周知である。一般的に、本発明の組合せヒト化抗体に含まれる異なるセグメントをコードする核酸配列は、PCRによって、例えば重複伸張によって生成される。この技術では、セグメント配列は、所望の配列をオリゴヌクレオチドに組み込み、所望のセグメント配列を含むPCRを用いて一連の生成物を形成することによって一般的に連結される。一般的にさらなるPCR反応を用いて、生成物を適切な配向で次に連結して、VH及びVL鎖を形成することができる。VL及びVHのDNA配列は、当業者に周知の技術を用いて直接的に、又はペプチドリンカーをコードするDNA配列を通して互いに連結することができる。これらの技術には、PCR並びにin vitroライゲーションなどの技術が含まれる。VL及びVH配列は、いずれの配向にでも連結することができる。
可変領域について提供される配列情報を利用すると、これらの配列をコードする核酸は当業者に周知である任意の数のさらなる方法を用いて得られることを、当業者は認識する。したがって、Fv領域をコードするDNAは、例えば他の増幅技術、例えばリガーゼ連鎖反応(LCR)、転写増幅及び自律的配列複製、又はクローニング及び適当な配列の制限を含む任意の適する方法によって調製される。相補的な配列とのハイブリダイゼーションによって、又は鋳型として単鎖を用いるDNAポリメラーゼによる重合によって、これを二本鎖DNAに変換することができる。単鎖Fv領域全体を化学的に合成することができるが、例えば重複伸張PCRを用いて後に一般的に一緒にスプライシングされるより短い配列(約100から150塩基)をいくつか合成することが好ましい。
核酸については、サイズはキロベース(kb)又は塩基対(bp)で与えられる。これらは、アガロース又はアクリルアミドゲル電気泳動、配列決定された核酸、又は公開されたDNA配列から導かれる推定値である。タンパク質については、サイズはキロダルトン(kDa)又はアミノ酸残基数で与えられる。タンパク質のサイズは、ゲル電気泳動、配列決定されたタンパク質、導かれたアミノ酸配列、又は公開されたタンパク質配列から推定される。
本発明の抗体のVH及びVLドメインは、直接的に連結されるか又は例えばそれぞれ軽鎖及び重鎖の可変抗体ドメインを安定させるためにリンカーによって分断されてもよい。適するリンカーは当業者に周知であり、周知のGlyGlyGlyGlySerリンカー又はその変異体を含む。
本発明のヒト化抗体、例えばヒト化抗ペプチド6抗体又はそのFab断片をコードするcDNAなどの、クローニングされた遺伝子又は核酸の高レベルの発現を得るために、抗体をコードする核酸が、転写を誘導する適当なプロモーター、転写/翻訳ターミネーター、及びタンパク質をコードする核酸のためには翻訳開始のためのリボソーム結合部位を含む発現ベクターに一般的にサブクローニングされる。適する細菌プロモーターは当技術分野で周知であり、例えばSambrookら及びAusubelらに記載されている。タンパク質を発現するための細菌発現系は、例えば、大腸菌(E.coli)、バシラス属(Bacillus)の種、及びサルモネラ属(Salmonella)で利用できる。そのような発現系のキットは、市販されている。哺乳動物細胞、酵母及び昆虫細胞のための真核生物発現系は当技術分野で周知であり、市販されてもいる。
多くの場合、タンパク質、例えば本発明のVH又はVK変異体を細胞で高レベルで発現させるために、発現させる核酸配列の構築において発現系に対するコドンの嗜好が考慮される。したがって、1つの生物体、例えばヒト又はマウスからの核酸は、発現系のコドン嗜好に適合するように操作することができる。
異種核酸の発現を誘導するために用いられるプロモーターは、特定の適用に依存する。任意選択で、プロモーターは、その天然の場面での転写開始点からとほぼ同じ異種転写開始点からの距離に置かれる。しかし、当技術分野で公知であるように、プロモーター機能を失わずにこの距離の多少の変動を受け入れることができる。
プロモーターに加えて、発現ベクターは、タンパク質をコードする核酸の宿主細胞での発現のために必要とされる全ての追加エレメントを含む、転写単位又は発現カセットを一般的に含む。したがって、一般的な発現カセットは、発現されるタンパク質をコードする核酸配列に作動可能に連結されるプロモーター、並びに転写産物の効率的なポリアデニル化、リボソーム結合部位及び翻訳終結のために必要とされるシグナルを含む。形質転換細胞によるコードされたタンパク質の分泌を促進するために、タンパク質をコードする核酸配列は、切断可能なシグナルペプチド配列に一般的に連結されてもよい。そのようなシグナルペプチドには、中でも、組織プラスミノーゲン活性化因子、インスリン及びニューロン増殖因子からのシグナルペプチド、並びにヘリオチス・ビレセンス(Heliothis virescens)の幼若ホルモンエステラーゼが含まれよう。カセットのさらなるエレメントには、エンハンサー、及びゲノムDNAが構造遺伝子として用いられる場合には、機能的スプライスドナー及び受容体部位を有するイントロンが含まれてもよい。
プロモーター配列に加えて、効率的な終結を可能にするために、発現カセットは構造遺伝子の下流に転写終結領域も含むべきである。終結領域は、プロモーター配列と同じ遺伝子から得られても、又は異なる遺伝子から得られてもよい。
特定の宿主細胞での使用に適する発現制御配列は、その細胞で発現される遺伝子をクローニングすることによって多くの場合得られる。任意選択でオペレーターとともに転写開始のためのプロモーターを、リボソーム結合部位配列と一緒に含むと本明細書で定義される、一般に用いられる原核生物の制御配列。そのような一般に用いられるプロモーターは、例えば図2のベクターに示すCMVプロモーター、ベータラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)及びラクトース(lac)プロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、tacプロモーター及びラムダ由来PLプロモーター及びN遺伝子リボソーム結合部位である。本発明にとって特定のプロモーター系が重要ではなく、原核生物で機能する任意の利用可能なプロモーターを用いることができる。
哺乳動物細胞、酵母及び昆虫細胞のための真核生物発現系は当技術分野で周知であり、市販されてもいる。酵母では、ベクターには、酵母組込みプラスミド(例えば、YIp5)及び酵母複製プラスミド(YRpシリーズのプラスミド)及びpGPD−2が含まれる。真核生物の発現ベクターでは、真核生物のウイルスからの調節エレメントを含む発現ベクター、例えばSV40ベクター、乳頭腫ウイルスベクター及びエプスタインバールウイルスに由来するベクターが一般的に用いられる。他の例示的な真核生物のベクターには、SV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター、メタロチオネインプロモーター、マウス乳癌ウイルスプロモーター、Rous肉腫ウイルスプロモーター、ポリヘドリンプロモーター、又は真核細胞での発現に有効であることが示された他のプロモーターの指示の下でタンパク質の発現を可能にするベクターが含まれる。
一部の発現系は、遺伝子増幅を提供するマーカー、例えばチミジンキナーゼ、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ及びジヒドロ葉酸レダクターゼを有する。或いは、遺伝子増幅を含まない高収率発現系、例えば昆虫細胞のバキュロウイルスベクターを、ポリヘドリンプロモーター又は他の強いバキュロウイルスプロモーターの指示下のGPCRコード配列と用いることも適する。
発現ベクターに一般的に含まれるエレメントには、大腸菌で機能するレプリコン、組換え体プラスミドを抱える細菌の選択を可能にする抗生物質耐性をコードする遺伝子、及び真核生物の配列の挿入を可能にするプラスミドの非必須領域の特異な制限部位も含まれる。選択される特定の抗生物質耐性遺伝子は重要でなく、当技術分野で公知である多くの耐性遺伝子のいずれも適する。必要に応じて、真核生物の細胞でそれらがDNAの複製に干渉しないように、原核生物の配列が任意選択で選択される。
大量のタンパク質、特に本発明の異なるヒト化抗ペプチド6抗体変異体を発現する細菌、哺乳動物、酵母又は昆虫細胞系を生成するために、標準のトランスフェクション方法が用いられ、それらは標準技術を用いて次に精製される。
外来のヌクレオチド配列を宿主細胞に導入するための周知の手法のいずれも用いることができる。これらには、リン酸カルシウムトランスフェクション、ポリブレン、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソーム、マイクロインジェクション、プラズマベクター、ウイルスベクターの使用、及びクローニングされたゲノムDNA、cDNA、合成DNA又は他の外来の遺伝物質を宿主細胞に導入するための他の周知の方法のいずれも含まれる。用いる特定の遺伝子工学手順が、本発明のポリペプチドを発現することが可能な宿主細胞に少なくとも1つの遺伝子をうまく導入することが可能であることが必要なだけである。
発現ベクターが細胞に導入された後、トランスフェクション細胞はタンパク質の発現に有利な条件下で培養され、それは下で特定される標準技術を用いて培養物から回収される。
その生物活性を減らすことなく本発明のヒト化抗体変異体をコードする核酸に改変を加えることができることを、当業者は認識する。一部の改変は、クローニング、発現又は融合タンパク質への標的分子の組込みを促進させるために加えることができる。そのような改変は当業者に周知であり、例には、終結コドン、開始部位を提供するためにアミノ末端に加えられるメチオニン、便利に位置する制限部位を形成するためにいずれかの末端に置かれる追加のアミノ酸、又は精製段階で手助けするためのさらなるアミノ酸(ポリHisなど)が含まれる。
発現されると、本発明のヒト化抗体は、硫安沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィーなどを含む当技術分野の標準手順によって精製することができる。少なくとも約90から95%の均一性の実質的に純粋な組成物が好ましく、98から99%又はそれ以上の均一性が医薬用途に最も好ましい。部分的に、又は治療に用いる場合には所望により均一性まで精製されると、ポリペプチドは実質的にエンドトキシンフリーであるべきである。
多くの場合、大腸菌又は他の細菌からの機能的異種タンパク質は封入体から単離され、強い変性剤を用いる可溶化及び以降のリフォールディングを必要とする。可溶化段階の間、当技術分野で周知であるように、ジスルフィド結合を分離するために還元剤が存在しなければならない。還元剤を有する例示的な緩衝液は、以下の通りである。0.1MトリスpH8、6Mグアニジン、2mM EDTA、0.3M DTE(ジチオエリトリトール)。ジスルフィド結合の再酸化は、還元及び酸化型の低分子量チオール試薬の存在下で起こることができる。
復元は、変性及び還元されたタンパク質のリフォールディング緩衝液への希釈(例えば、100倍)によって一般的に達成される。例示的な緩衝液は、0.1Mトリス、pH8.0、0.5M L−アルギニン、8mM酸化型グルタチオン(GSSG)及び2mM EDTAである。
2鎖抗体精製プロトコルへの改変として、重鎖及び軽鎖領域が別々に可溶化、還元され、次にリフォールディング溶液中で一体化される。これらの2つのタンパク質が、1つのタンパク質が他のものより5倍のモル過剰を超えないモル比で混合されるとき、好ましい収率が得られる。酸化還元シャフリングの完了後、リフォールディング溶液に過剰な酸化型グルタチオン又は他の酸化性低分子量化合物を加えることが望ましい。
組換え方法に加えて、本発明の抗体は、標準のペプチド合成を用いて全体的又は部分的に構築することもできる。長さが約50アミノ酸未満の本発明のポリペプチドの固相合成は、配列のC末端アミノ酸を不溶性支持体に結合し、続いて配列の残りのアミノ酸を逐次的に付加することによって達成することができる。
さらに、望ましい抗体を特定するために抗体をスクリーニングするために用いられる技術は、得られる抗体の特性に影響することができる。特に望ましい抗体を特定するために、抗体/抗原相互作用を試験するための様々な異なる技術を利用できる。そのような技術には、ELISA、表面プラズモン共鳴結合アッセイ(例えば、Biacore結合アッセイ、Bia−core AB、Uppsala、Sweden)、サンドイッチアッセイ(例えば、IGEN International,Inc.、Gaithersburg、Marylandの常磁性ビーズシステム)、ウェスタンブロット、ドットブロット、ELIspot、免疫沈降アッセイ及び免疫組織化学が含まれる。
本明細書に記載される抗体の重鎖及び軽鎖のフレームワーク領域及びCDRをコードするポリヌクレオチド配列に加えて、哺乳動物細胞でのそれらの効率的な発現のための発現ベクターも本出願は提供し、したがって包含することを、さらに理解するべきである。より具体的には、本発明は、本発明の可変重鎖及び軽鎖変異体、具体的には配列番号21、22、23、20、26、24及び25のいずれか1つによって表されるVH1〜4及びVK1〜3をコードする核酸配列を包含する。特定の一実施形態では、そのような核酸配列は、それぞれ、28、29、30、27、33、31及び32のいずれか1つによって表される配列を含むことができる。本発明は、前記核酸配列の少なくとも1つ及びその任意の組合せを含む核酸構築物及び発現ベクター、並びに前記VH及びVK変異体の少なくとも1つを発現する、前記構築物で形質転換又はトランスフェクトされた宿主細胞をさらに提供する。
用語「核酸」及び「ポリヌクレオチド」は、一本鎖又は二本鎖の形のデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド及びその重合体を指すものとして、本明細書で互換的に用いられる。本用語は、公知のヌクレオチド類似体又は改変された骨格残基若しくは結合を含む核酸を包含し、それらは合成され、天然に存在し、及び天然に存在せず、それらは参照核酸に類似した結合特性を有し、それらは参照ヌクレオチドに類似した方法で代謝される。そのような類似体の例には、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート、メチルホスホネート、キラル−メチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定されない。当業技術者が認識するように、核酸配列の補体は、他方の鎖の配列から容易に決定することができる。したがって、本明細書に示す任意の特定の核酸配列は、相補鎖も開示する。
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、アミノ酸残基の重合体を指すものとして、本明細書で互換的に用いられる。本用語は、天然に存在するアミノ酸重合体、並びに1つ又は複数のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工の化学的模倣体であるアミノ酸重合体に適用される。
「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸及び合成アミノ酸、並びに天然に存在するアミノ酸に類似した方法で機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣体を指す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝子コードによってコードされるもの、並びに後に改変されるアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸及びO−ホスホセリンである。「アミノ酸類似体」は、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的な化学構造、すなわち水素、カルボキシル基、アミノ基及びR基に結合しているアルファ炭素を有する化合物、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。そのような類似体は改変されたR基又は改変されたペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的な化学構造を保持する。「アミノ酸模倣体」は、アミノ酸の一般化学構造と異なるが、天然に存在するアミノ酸に類似した方法で機能する構造を有する化合物を指す。本明細書で、アミノ酸は、それらの一般に公知である3文字記号によって、又はIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionが推奨する1文字記号によって呼ぶことができる。
特定の態様では、本出願は、ハイブリドーマ細胞系並びにこれらのハイブリドーマ細胞系によって生成されるモノクローナルヒト化抗体を提供することを認識するべきである。開示される細胞系は、モノクローナル抗体の生成とは別の用途を有する。例えば、さらなるハイブリドーマを生成し、したがってモノクローナル抗体をコードする遺伝子の導入を可能にするために、細胞系を他の細胞(適切に薬剤でマークしたヒト骨髄腫、マウス骨髄腫、ヒト−マウスヘテロ骨髄腫又はヒトリンパ芽球腫細胞など)と融合させることができる。さらに、単離し、発現させることができる、抗ペプチド6ヒト化抗体をコードする核酸の供与源として、細胞系を用いることができる。
さらになお、本明細書で後に記載される診断的又は治療的な使用のために、本発明の抗体は、検出可能な標識又はさらなる治療薬に共有結合又は非共有結合的に任意選択で連結されてもよい。そのような使用のために適する検出可能な標識には、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的又は化学的な手段によって検出することが可能な任意の組成物が含まれる。本発明で有用な標識には、磁気ビーズ(例えばDYNABEADS)、蛍光色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミン、緑色蛍光タンパク質など)、放射性標識(例えば、3H、125I、35S、14C又は32P)、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、並びにELISA及び競合的ELISA及び当技術分野で公知である他の類似した方法で一般に用いられるその他のもの)、並びに比色標識、例えばコロイド金又は色ガラス又はプラスチック(例えばポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)ビーズが含まれる。
そのような標識を検出する手段は、当業者に周知である。したがって、例えば、放射性標識は写真フィルム又はシンチレーションカウンターを用いて検出することができ、蛍光マーカーは放出された照射を検出するための光検出器を用いて検出することができる。酵素標識は、酵素に基質を提供し、基質上の酵素の作用で生じる反応生成物を検出することによって一般的に検出され、比色標識は単に変色標識を可視化することによって検出される。
本発明の別の態様は、配列番号15を含むポリペプチドに特異的に結合する、少なくとも1つの単離及び精製されたヒト化抗体の有効量を有効成分として含む組成物に関し、ヒト化抗体は、
a)H22位のCys、H23位のSer、H26位のGly、H27位のPhe、H28位のSer、H29位のLeu、H30位のSer、H31位のThr、H32位のSer、H33位のAsn、H34位のMet、H35位のGly、H35A位のVal、H35B位のGly、H48位のLeu、H50位のHis、H51位のIle、H52位のLeu、H53位のTrp、H54位のAsn、H55位のAsp、H56位のSer、H57位のLys、H58位のTyr、H59位のTyr、H60位のAsn、H61位のPro、H62位のAla、H63位のLeu、H64位のLys、H65位のSer、H92位のCys、H95位のMet、H96位のGly、H97位のGly、H98位のTyr、H99位のTyr、H100位のGly、H100A位のAsn、H100B位のTyr、H100C位のGly、H100D位のTyr、H100E位のTyr、H100F位のAla、H100G位のMet、H101位のAsp及びH102位のTyrを含み、任意選択でH49位のLeu、H74位のTyr、H11位のIle、H41位のSer及びH108位のSerの少なくとも1つを含む重鎖可変領域と、
b)L1位のGln、L23位のCys、L24位のThr、L25位のAla、L26位のSer、L27位のSer、L27A位のSer、L28位のVal、L29位のSer、L30位のSer、L31位のSer、L32位のTyr、L33位のLeu、L34位のHis、L47位のTrp、L50位のSer、L51位のThr、L52位のSer、L53位のAsn、L54位のLeu、L55位のAla、L56位のSer、L71位のTyr、L88位のCys、L89位のHis、L90位のGln、L91位のTyr、L92位のHis、L93位のArg、L94位のSer、L95位のPro、L96位のPro及びL97位のThrを含み、任意選択でL21位のMet、L10位のIle及びL80位のAlaの少なくとも1つを含む軽鎖可変領域とを含み、位置はKabatのナンバリングシステムによって決定される。特定の実施形態によると、本発明の組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を任意選択でさらに含むことができる。
一実施形態によると、本発明の組成物は、本発明によって記載されるヒト化抗体のいずれかの少なくとも1つ、又は任意のその組合せ若しくは断片を有効成分として含むことができる。特定の一実施形態では、本発明の組成物は、配列番号21の重鎖可変領域及び配列番号26の軽鎖可変領域(VH2/VK3)を有する少なくとも1つのヒト化抗体を含むことができる。
別の特定の実施形態では、本発明の組成物は、配列番号21の重鎖可変領域及び配列番号24の軽鎖可変領域(VH2/VK1)を有する少なくとも1つのヒト化抗体を含むことができる。
別の特定の実施形態では、本発明の組成物は、配列番号21の重鎖可変領域及び配列番号25の軽鎖可変領域(VH2/VK2)を有する少なくとも1つのヒト化抗体を含むことができる。
別の特定の実施形態によると、本発明の組成物は、配列番号22の重鎖可変領域及び配列番号25の軽鎖可変領域(VH3/VK2)を有する少なくとも1つのヒト化抗体を含むことができる。
本発明の他の具体的な実施形態は、以下の少なくとも1つを含む組成物を提供する。配列番号22の重鎖可変領域及び配列番号24の軽鎖可変領域(VH3/VK1)を有するヒト化抗体、配列番号22の重鎖可変領域及び配列番号26の軽鎖可変領域(VH3/VK3)を有するヒト化抗体、配列番号23の重鎖可変領域及び配列番号24の軽鎖可変領域(VH4/VK1)を有するヒト化抗体、配列番号23の重鎖可変領域及び配列番号25の軽鎖可変領域(VH4/VK2)を有するヒト化抗体、配列番号23の重鎖可変領域及び配列番号26の軽鎖可変領域(VH4/VK3)を有するヒト化抗体、配列番号20の重鎖可変領域及び配列番号24の軽鎖可変領域(VH1/VK1)を有するヒト化抗体、配列番号20の重鎖可変領域及び配列番号25の軽鎖可変領域(VH1/VK2)を有するヒト化抗体、並びに配列番号20の重鎖可変領域及び配列番号26の軽鎖可変領域(VH1/VK3)を有するヒト化抗体。
本発明は、免疫関連障害を予防、治療、改善又は阻害するための医薬組成物をさらに提供する。本発明の医薬組成物は、配列番号15を含むポリペプチド又は同じものを含む任意のアミノ酸配列、例えば配列番号98に特異的に結合する少なくとも1つの単離、精製されたヒト化抗体の治療的有効量を有効成分として含む。一実施形態によると、本発明の組成物は、
a)H22位のCys、H23位のSer、H26位のGly、H27位のPhe、H28位のSer、H29位のLeu、H30位のSer、H31位のThr、H32位のSer、H33位のAsn、H34位のMet、H35位のGly、H35A位のVal、H35B位のGly、H48位のLeu、H50位のHis、H51位のIle、H52位のLeu、H53位のTrp、H54位のAsn、H55位のAsp、H56位のSer、H57位のLys、H58位のTyr、H59位のTyr、H60位のAsn、H61位のPro、H62位のAla、H63位のLeu、H64位のLys、H65位のSer、H92位のCys、H95位のMet、H96位のGly、H97位のGly、H98位のTyr、H99位のTyr、H100位のGly、H100A位のAsn、H100B位のTyr、H100C位のGly、H100D位のTyr、H100E位のTyr、H100F位のAla、H100G位のMet、H101位のAsp及びH102位のTyrを含み、任意選択でH49位のLeu、H74位のTyr、H11位のIle、H41位のSer及びH108位のSerの少なくとも1つを含む重鎖可変領域と、
b)L1位のGln、L23位のCys、L24位のThr、L25位のAla、L26位のSer、L27位のSer、L27A位のSer、L28位のVal、L29位のSer、L30位のSer、L31位のSer、L32位のTyr、L33位のLeu、L34位のHis、L47位のTrp、L50位のSer、L51位のThr、L52位のSer、L53位のAsn、L54位のLeu、L55位のAla、L56位のSer、L71位のTyr、L88位のCys、L89位のHis、L90位のGln、L91位のTyr、L92位のHis、L93位のArg、L94位のSer、L95位のPro、L96位のPro及びL97位のThrを含み、任意選択でL21位のMet、L10位のIle及びL80位のAlaの少なくとも1つを含む軽鎖可変領域とを含むヒト化抗体を含む。全ての位置は、Kabatのナンバリングシステムによって決定される。本発明の組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を任意選択でさらに含むことができることにさらに留意するべきである。
具体的な一実施形態によると、本発明の医薬組成物は、本発明によって記載されるヒト化抗体のいずれかの少なくとも1つ、又は任意のその組合せを有効成分として含むことができる。
具体的な一実施形態では、本発明の医薬組成物は、配列番号21の重鎖可変領域及び配列番号26の軽鎖可変領域(VH2/VK3)を有する少なくとも1つのヒト化抗体、又は任意のその組合せ若しくは混合物を含む。
本発明によって提示される結果は、免疫関連障害に対する本発明の抗体の治療的能力を明らかに実証する。したがって、別の実施形態によると、免疫関連障害、例えば自己免疫性又は炎症性の障害を治療するために、本発明の医薬組成物は特異的に適することができる。
上に示すように、下の例10〜13は、2つの異なる動物モデルを用いて、本発明のヒト化抗体の確立された炎症性関節炎の治療への適用性を明らかに実証する。より具体的には、AA誘導のために、及びその後本発明の抗ペプチド6ヒト化抗体(特にVH2/VK3変異体)で処置したルイスラットは、関節炎の有意な減少を示した。同様に、コラーゲン誘発関節炎(CIA)を発症させるように誘導したDBA/1マウスの抗ペプチド6ヒト化抗体による治療は、関節炎の重症度を低減した。本発明は、慢性関節リウマチ(RA)患者から収集されたPBMC、並びに健康な個体からのPBMCで、IL−10のex vivo誘導をさらに実証した。したがって、具体的な実施形態では、本発明のヒト化抗体は、免疫関連障害、例えば関節炎、IBD、大腸炎、クローン病及び糖尿病の患者のPBMCからのIL−10の分泌を誘導する。例えば、例13に示すように、本発明のヒト化抗体は、慢性関節リウマチ患者から収集されたPBMCでIL−10の分泌を誘導した。したがって、具体的な実施形態によると、本発明のヒト化抗体は、無処置のPBMCと比較してPBMCのIL−10分泌の少なくとも1.1倍の増加、少なくとも1.2倍の増加、少なくとも1.3倍の増加、少なくとも、1.4倍の増加、少なくとも1.5倍の増加、少なくとも1.6倍の増加、少なくとも1.7倍の増加、少なくとも1.8倍の増加、少なくとも1.9倍の増加、又は好ましくは少なくとも2倍の増加を誘導する。さらに、実施例に示すように、本発明の抗体による確立された関節炎の処置は、無処置対照での疾患スコアと比較して疾患スコアを少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、又は少なくとも55若しくは60%又はそれ以上でさえも低減することができる。
さらに、Berent,J.ら、[Berent,J.ら、Springer Semin.Immunopathol.25巻:7〜63頁(2003)]によって示されるように、アジュバント関節炎(AA)は、慢性関節リウマチ(RA)、若年性特発性関節炎(JIA)及び敗血性関節炎のよく確立された動物モデルである。さらに、異なる刊行物[それぞれMyersら、Life Sciences 61巻(19号):1861〜1878頁(1997)及びBrandら、Springer Semin Immunopathol(2003)25巻:3〜18頁(2003)]は、コラーゲン誘発関節炎(CIA)がRAだけでなく、他の自己免疫性のリウマチ性疾患及び炎症の確立されたモデルでもあることを明らかに示す。
各々異なる原因による2つの主要なカテゴリー、炎症性関節炎及び変性性関節炎に一般に分類することができる、異なる型の関節炎があることを認識するべきである。したがって、具体的な一実施形態によると、本発明の医薬組成物は、炎症性障害、例えば炎症性関節炎の治療及び/又は改善を特に目的とすることができる。
炎症性関節炎は、滑膜炎、骨の浸食、骨減少症、軟組織膨潤及び均一な関節空間の狭小化を特徴とする。より具体的には、関節炎症の特質は、滑膜炎及び骨の浸食である。後者は、薄く、白い、肋軟骨下の骨プレートの局所不連続部として最初に現れる。通常、この肋軟骨下の骨プレートは重度の骨減少症の場合でさえ見ることができるが、その不連続部は浸食を示す。関節周囲骨減少症及び局所の肋軟骨下の骨減少症が真の骨浸食の前に現れることができるのは真実であるが、確かな関節炎症を示すのは骨浸食の存在である。骨の浸食が拡大するに従って、骨破壊は骨髄腔の中の小柱に拡張する。炎症性関節炎の1つの重要な特徴は、境界線上の骨浸食の概念に関連する。この用語は、炎症を起こした滑膜関節の縁に位置する骨浸食に与えられる。この特異的な場所は、関節内であるが、ガラス軟骨によって被覆されない関節の部分を表す。したがって、早期の関節炎症は、関節面の下の肋軟骨下の骨プレートの浸食の前に、境界線上の浸食を引き起こす。骨浸食を探す場合には、様々な骨面を概観するために関節の複数の図が必須である。炎症性関節の過程の二番目に重要な特性は、均一な関節空間の狭小化である。関節軟骨の破壊が関節内空間全体で均一であるので、これが起こる。炎症性関節疾患の第三の所見は、軟組織膨潤である。
炎症性関節炎は、いくつかのサブグループにさらに分けることができ、したがって、組成物、並びに本明細書で後に記載される本発明の方法、組合せ組成物及びキットは、異なるサブグループのあらゆる炎症性関節炎状態を治療することに適用できることを認識するべきである。
より具体的には、単一の関節の関与は、敗血性関節炎を指し示している。敗血性関節炎の原因は、ブドウ球菌性又は連鎖球菌性微生物による血行性接種に通常関連する。敗血性関節のレントゲン写真の特徴は、任意の炎症性関節炎、すなわち関節周囲骨減少症、均一な関節空間狭小化、軟組織膨潤及び骨浸食のそれらを包含する。全ての所見が同時に存在することができるわけではなく、急性では、骨の浸食は明白でないかもしれない。したがって、一実施形態によれば、本発明の組成物及び方法は、敗血性関節炎の治療及び/又は改善のために用いることができる。
対照的に、全身性の関節炎は複数の関節の関与を特徴とし、2つの主要なカテゴリー、慢性関節リウマチ及び血清陰性の脊椎関節症を含む。
一実施形態によると、本発明の組成物並びに方法、組合せ組成物及びキットは、慢性関節リウマチの治療及び/又は改善のために用いることができる。慢性関節リウマチ(RA)は、貧血と一緒に、関節(関節炎)及び腱鞘で炎症及び組織傷害を最も一般に引き起こす、慢性、全身性の自己免疫疾患である。それは、肺、心嚢、肋膜及び目の強膜でび漫性の炎症を、並びに皮下組織で最も一般的な結節性病変を引き起こすこともできる。それは障害性で痛みを伴う状態を起こすことができ、それは機能及び運動性の実質的な損失をもたらすことができる。リウマチ因子及び環式のシトルリン化ペプチドに対する抗体などの血清学的マーカーは、慢性関節リウマチの重要な指標である。慢性関節リウマチのレントゲン写真の特徴は、関節炎症のそれらであり、特定の骨減少症、均一な関節空間の損失、骨浸食及び軟組織膨潤を含む。炎症の慢性的性質のため、関節の不全脱臼及び肋軟骨下の嚢胞などのさらなる所見が明白になることもある。
血清陰性の脊椎関節症カテゴリーには、乾癬性関節炎、反応性関節炎及び強直性脊椎炎が含まれ、炎症、複数の関節の関与、及び骨増殖のさらなる特徴を有する手及び足の遠位性関与の徴候を特徴とする。したがって、一実施形態によれば、本発明の組成物及び方法は、血清陰性の脊椎関節症カテゴリーの任意の状態の治療及び/又は改善のために用いることができる。
より具体的には、一実施形態によれば、本発明の組成物及び方法は、乾癬性関節炎を予防、治療、改善又は阻害するために用いることができる。乾癬性関節炎は、皮膚(乾癬)及び関節(関節炎)の炎症を特徴とする慢性疾患である。米国ではほぼ306,000人が乾癬性関節炎を起こし、欧州の5つの主要な市場ではさらなる308,000人がその疾患を起こすと考えられている。乾癬及び関節炎は、多くの場合別々に現れる。実際、患者のほぼ80%では、皮膚疾患は関節炎に先行する。患者の最高15%では、関節炎は乾癬に先行することができる。
乾癬性関節炎の特性の1つである乾癬は、スケーリングを伴う皮膚炎症のまだらの、隆起した赤い領域を特徴とする一般的な皮膚状態である。乾癬は、肘及び膝の先端、頭皮、臍及び性器又は肛門を囲む領域に多くの場合影響を及ぼす。乾癬を有する患者の約10%は、関節の関連炎症も発症する。通常、皮膚症状が重いほど、乾癬性関節炎を発症する可能性が大きい。乾癬性関節炎の原因は未知であり、それは遺伝的、環境及び免疫的原因の複合したものであるかもしれない。
男性及び女性は、乾癬を同程度に起こす可能性がある。乾癬性関節炎については、男性は脊椎炎の形態(脊柱が影響を受ける)を、女性はリウマチの形態(多くの関節が関与する)を示す可能性がより高い。乾癬性関節炎は、通常35〜55歳の人で発症する。しかし、それはほとんどいかなる年齢の人でも発症することができる。乾癬性関節炎は、いくつかの他の関節炎状態、例えば強直性脊椎炎、反応性関節炎、並びにクローン病及び潰瘍性大腸炎と関連する関節炎と多くの特徴を共有する。これらの状態の全ては、脊柱及び関節、目、皮膚、口及び様々な器官で炎症を引き起こすことができる。
別の実施形態によると、本発明の組成物、並びに方法、組合せ組成物及びキットは、強直性脊椎炎を予防、治療、改善、又は阻害するために用いることができる。強直性脊椎炎(AS、以前はベヒテレフ病、ベヒテレフ症候群、Marie Strumpell病及び脊椎関節炎の一形態として知られる)は、通常慢性及び進行型の関節炎であり、複数の関節、特徴的には脊髄椎間関節及び脊柱の基部の仙腸関節の炎症により引き起こされる。強直性脊椎炎はこれらの関節及び脊柱周囲の軟組織に影響を及ぼす傾向があるが、他の関節、並びに関節周囲の組織(腱及び靭帯が骨に結合する埋植)にも影響を及ぼすことができる。強直性脊椎炎は、関節以外の体の領域、例えば目、心臓及び肺を巻き込むこともできる。
この障害はしばしば骨性強直(又は融合)をもたらし、そこから用語強直性が生まれたが、それは関節の硬直を意味するギリシア語の単語ankylosに由来する。Spondylosは脊椎骨(又は脊柱)を意味し、1つ又は複数の椎骨の炎症を指す。
この疾患は、一般集団の約0.1〜0.2%に影響を及ぼすと推定される。強直性脊椎炎は、主に若い男性に影響を及ぼす。男性は、女性よりも4倍から10倍強直性脊椎炎を起こす可能性がある。この疾患のあるほとんどの人は、15〜35歳でそれを発症し、開始時の平均年齢は26歳である。
正確な原因は未知であるが、強直性脊椎炎は遺伝的影響及び誘発環境要因の組合せによると考えられている。一般集団の7%と比較して、強直性脊椎炎患者の約90〜95%は、組織抗原ヒト白血球抗原B27(HLA−B27)を有する。強直性脊椎炎のある人は、多くの場合その疾患の家族歴を有する。
さらに別の実施形態では、本発明の組成物、並びに方法、組合せ組成物及びキットは、反応性関節炎(ReA)を予防、治療、改善、又は阻害するために用いることができる。別の種類の血清陰性の脊椎関節症である反応性関節炎は、体の別の部分での感染に応じて発症する自己免疫性状態である。細菌と接触して、感染を起こすことは、反応性関節炎を誘発することができる。それは、リウマチなどの「関節炎」として一括して知られる様々な他の状態に類似した症状を有する。それは別の感染によって起こり、したがって「反応性」であり、すなわち他の状態に依存する。「誘発」感染は多くの場合治癒しているか、慢性症例では寛解期にあり、このように最初の原因の判定を困難にする。
反応性関節炎の症状には、見かけ上無関係の3症状、大きな関節の炎症性関節炎、目の炎症(結膜炎及びブドウ膜炎)及び尿道炎の組合せが頻繁に含まれる。ドイツの医師Hans Reiterに因んでReAはライター症候群としても知られ、それは尿道関節炎、性病関節炎及び腸管多発性動脈炎としても知られることが示されるべきである。
若年性特発性関節炎、痛風及び疑似痛風、並びに大腸炎又は乾癬に関連する関節炎を含む、多くの他の型の炎症性関節炎があることを認識するべきである。したがって、本発明の組成物、並びに方法、組合せ組成物及びキットは、これらの状態にも同様に適用できることを認識するべきである。
したがって、別の実施形態によれば、本発明の組成物及び方法は、若年性特発性関節炎(JIA)を予防、治療、改善又は阻害するために用いることができる。JIAは、子供で最も一般的な型の持続的関節炎である。(この関係において、若年性とは16歳より前の開始を指し、特発性は定義された原因のない状態を指し、関節炎は関節の関節滑膜の炎症である)。JIAは子供時代に見られる関節炎のサブセットであり、それは一過性及び自己限定的又は慢性的であり得る。それは、成人で一般に見られる関節炎(慢性関節リウマチ)、及び子供時代に存在することができる、慢性状態である他の型の関節炎(例えば乾癬性関節炎及び強直性脊椎炎)とかなり異なる。
別の実施形態によると、本発明の組成物並びに方法、組合せ組成物及びキットは、痛風の治療及び/又は改善のために用いることができる。痛風(代謝性関節炎)は、尿酸の蓄積によって生じる疾患である。この状態では、尿酸一ナトリウム又は尿酸の結晶が、関節の関節軟骨、腱及び周囲の組織の上に析出する。これらの結晶は炎症及び疼痛を引き起こし、両方とも重症である。処置されない場合、結晶は痛風結節を形成し、それはかなりの組織傷害を引き起こすことができる。疑似痛風は、カルシウム結晶に起因する状態である。カルシウム結晶が腱で炎症の発作を引き起こすとき、それは「石灰沈着性腱炎」と呼ばれる。本発明は、この障害の治療のための組成物及び方法も同様にさらに提供する。
一般に、上でも開示されるように、多くの種類の関節炎があり、本発明の組成物並びに方法、組合せ組成物及びキットは、示した全ての一次形関節炎に加えて全ての二次形関節炎の治療にも適用できることに留意するべきである。これらの状態には、エリテマトーデス、ヘノッホ−シェーンライン紫斑病、乾癬性関節炎、反応性関節炎、ヘモクロマトーシス、肝炎、ヴェーゲナー肉芽腫症(及び多くの他の血管炎症候群)、ライム病、家族性地中海熱、回帰熱を伴うグロブリン過剰血症D、TNF受容体関連の周期的症候群及び炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む)を含めることができる。
例14及び15は、TNBS大腸炎動物モデルを用いて、ヒト化抗ペプチド6抗体のかなりの改善効果を明らかに実証する。したがって、別の具体的な実施形態では、本発明の医薬組成物、並びに方法、組合せ組成物及びキットは、炎症性腸疾患(IBD)、特に潰瘍性大腸炎及びクローン病を予防、治療、改善又は阻害することに適用可能である。
具体的な実施形態によると、大腸炎又はクローン病での治療、予防又は改善は、体重減少の抑制及び疾患と関連する炎症性応答、並びに全体的な顕微鏡的組織学的疾患スコアの改善に反映させることができる。例えば、本発明のヒト化抗体による治療は、無処置対照での顕微鏡的疾患スコアと比較して、顕微鏡的疾患スコアを少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、又は少なくとも55若しくは60%も、又はそれ以上でさえも低減することができる。さらに、別の実施形態では、本発明のヒト化抗体による治療は、無処置対照での体重減少と比較して、体重減少を少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、又は75%も、又はそれ以上でさえも低減することができる。
炎症性腸疾患(IBD)は、免疫応答のTh1−炎症誘発性及びTh2−抗炎症性のサブタイプ間の不均衡の結果であると認めることができる一般的な胃腸障害である。IBDは、結腸及び小腸の一群の炎症性状態である。主要な種類のIBDは、クローン病及び潰瘍性大腸炎(UC)である。他の形のIBDは、はるかに少ない症例を占める。これらは、コラーゲン蓄積大腸炎、リンパ性大腸炎、虚血性大腸炎、転換大腸炎、ベーチェット症候群、及びクローン病と潰瘍性大腸炎を区別する確定診断を下すことができない不確定の大腸炎である。
クローン病とUC間の主な差は、炎症性変化の位置及び性質である。クローン病は、口から肛門まで(スキップ病変)胃腸管の任意の部位に影響を及ぼすことができるが、大多数の症例は末端の回腸から始まる。潰瘍性大腸炎は、対照的に結腸及び直腸に限定される。顕微鏡観察では、潰瘍性大腸炎は粘膜(腸の上皮内膜)に限定されるが、クローン病は全腸壁に影響を及ぼす。最後に、クローン病及び潰瘍性大腸炎は、異なる割合で腸管外徴候(肝臓の問題、関節炎、皮膚の徴候及び目の問題など)を示す。クローン病及び潰瘍性大腸炎は、下痢、嘔吐、体重減少、発熱及び腹痛などの同じ症状を共有する。
寄生虫及びワームなどの伝統的な標的の欠如のため、消化管の様々な組織を攻撃する過敏性免疫系によってIBDが起こることができると、最近の仮説は断定する。回虫、鉤虫及びヒト鞭虫などの寄生虫による感染症数が減少するに従ってIBDと診断される人数は増加し、その状態は寄生虫感染が一般的である国ではなお稀である。
IBDに付随するいくつかの腸管外徴候がある、例えば自己免疫性現象;免疫複合体は、標的器官の傷害で役割を果たす;疾患を軽減するために、グルココルチコイド、アザチオプリン、メトトレキセート及びシクロスポリンなどの免疫抑制剤が用いられる。IBD患者は、結腸細胞の構成成分及びいくつかの異なる細菌抗原に対する抗体を有する。これらの抗原は、上皮傷害の結果として免疫系に接近する。T細胞刺激への同世代の(coetaneous)アネルギー及び応答性低下を含むT細胞性免疫の異常も、これらの患者で記載されている。さらに、抗原刺激を示唆する粘膜IgG細胞濃度の増加及びT細胞サブセットの変化を含む、粘膜細胞性免疫の変化が特定された。感染性、免疫性又は毒性の傷害の後の標的抗原の曝露は、粘膜免疫細胞の活性化につながり、結果として粘膜炎症性応答につながるサイトカインが生じる。IFNγなどの炎症誘発性サイトカインの分泌は、粘膜透過性の増加に寄与し、それはIBDの動物モデルで記載されている。
CD4及びCD8リンパ球は、IL−2及びIFNγを産生するTh1細胞、又はIL−4及びIL−10を産生するTh2細胞として分けることができる。免疫系が外来及び自己の抗原に応答する方法は、応答の2つのサブタイプ間の均衡の結果である。Th1型応答は、IBDなどのいくつかの自己免疫性及び慢性の炎症性障害の発生病理に関与する。したがって、ヒトでの実験的な大腸炎及びIBDは、炎症誘発性Th1型及び抗炎症Th2型のサイトカイン間の不均衡として認めることができる。動物及びヒトで、IL10などの抗炎症サイトカインがTh1媒介サイトカインの炎症誘発性の影響を下方制御し、それによって免疫媒介障害を軽減することができることが最近示された。
通常、IBDの治療は、プレドニゾンなどの強い抗炎症効果を有する薬剤を投与することによって開始される。炎症が上手く制御されると、疾患を寛解に保つために、患者はより穏やかな薬剤へ通常切り替えられる。不成功の場合には、免疫抑制剤の組合せを投与することができる。治療の目標は寛解の達成に向けられ、その後、患者はより少ない潜在的副作用を有するより弱い薬剤に通常切り替えられる。時々、元の症状の急な復活が現れることがあり、これは「再発」として知られる。状況に従い、それはそれ自体で消散することがあるか、又は薬物投与を必要とすることがある。再発から再発までの時間は数週から数年までのいずれかであり、患者の間で大幅に変動する−少数の患者は再発を全く経験していない。多くの場合、疾患再発を制御するためにステロイドが用いられ、それらはかつて維持薬剤として許容されていた。TNF阻害剤などの生物学的製剤が、クローン病患者で数年間使用されており、最近では潰瘍性大腸炎患者で使用されている。重症例は、腸切除、狭窄形成術又は一時的若しくは恒久的な人工肛門形成若しくは回腸フィステル形成などの手術を必要とすることがある。
クローン病は、1種の炎症性腸疾患(IBD)である。それは、現在治療法がない慢性状態である。それは、改善と、それに続く症状が再発するときの発症との周期を特徴とする。それは、口から肛門にかけての胃腸(GI)管とも呼ばれる消化管のどの領域にも影響を及ぼすことができるが、それは、回腸と呼ばれる小腸の下部に最も一般的に影響を及ぼす。膨潤は、罹患器官の内膜の中に深く伸展する。膨潤は疼痛を引き起こすことができ、しばしば腸を空にすることがあり、下痢が生じる。クローン病は、それが影響を及ぼす領域によって分類することができる。回結腸のクローン病は、回腸(大腸に連結する小腸の最後部)及び大腸の両方に影響を及ぼし、症例の50パーセントを占める。回腸だけに影響を及ぼすクローン回腸炎は、症例の30パーセントを占め、大腸に影響を及ぼすクローン大腸炎は、小腸の最後部及び大腸を巻き込むクローン病の症例の残りの20パーセントを占め、それは潰瘍性大腸炎と区別するのが特に困難であることがある。胃十二指腸クローン病は、胃、及び十二指腸と呼ばれる小腸の最初の部分で炎症を引き起こす。空回腸炎は、空腸と呼ばれる小腸の上半分で斑点状の炎症を引き起こす。クローン病は、回腸炎又は腸炎と呼ぶこともできる。
腹痛は、クローン病の最初の症状である可能性がある。それは多くの場合下痢が付随する。腸狭窄に起因する症状もクローン病で一般的である。腹痛は、狭窄を有する腸の領域で多くの場合最も重症である。
クローン病は、多くの他の慢性の炎症性疾患と同様に、様々な全身症状を引き起こすことができる。子供の間では、成長障害が一般的である。多くの子供は、成長を維持することができないことに基づいて、先ずクローン病と診断される。全身及び胃腸の関与に加えて、クローン病は多くの他の器官系に影響を及ぼすことができる。ブドウ膜炎として知られる目の内部の炎症は、特に光に曝露したとき、目の疼痛を引き起こすことができる(羞明)。炎症は目の白い部分(強膜)を巻き込むこともでき、これは上強膜炎と呼ばれる状態である。上強膜炎及びブドウ膜炎の両方は、無処置の場合失明につながることがある。
クローン病は、血清陰性の脊椎関節症として知られる1種のリウマチ疾患と関連する。この群の疾患は、1つ又は複数の関節(関節炎)又は筋肉付着(付着部炎)の炎症を特徴とする。関節炎は膝又は肩などのより大きな関節に影響を及ぼすことができるか、又は手及び足の小さな関節を排他的に巻き込むことができる。関節炎は脊柱を巻き込むこともでき、それは、全体の脊柱が含まれる場合は強直性脊椎炎をもたらし、又は下部脊柱だけが含まれる場合は単に仙腸骨炎をもたらす。関節炎の症状には、痛みを伴う、暖かく、はれた、硬直した関節、及び関節の可動性又は機能の損失が含まれる。
結腸及び末端回腸の直接可視化を可能にし、疾患関与のパターンを特定するので、結腸鏡検査はクローン病の診断を下すために最良の検査である。結腸又は回腸が関与し、直腸は関与しない疾患の斑状分布の所見は、クローン病を示唆する。
現在、クローン病の治療法はなく、寛解は可能でないか、達成されても長続きさせることはできない。クローン病の治療は症状が活動性であるときだけであり、それは、急性の問題を先ず治療し、次に寛解を維持することを含む。
急性の治療は、炎症を低減するための薬物投与を用いる(通常アミノサリチレート抗炎症薬及びコルチコステロイド)。症状が寛解期のとき、治療は維持に入り、症状の再発を避けることが目標である。コルチコステロイドの長期使用は、かなりの副作用を有する。その結果、それらは長期治療のために一般に用いられない。代替手段にはアミノサリチレートだけが含まれるが、少数の者だけが治療を維持することができ、多くは免疫抑制剤を必要とする。
クローン病の症状を治療するために用いられる薬物投与には、5−アミノサリチル酸(5−ASA)製剤、プレドニゾン、免疫調節薬、例えばアザチオプリン、メルカプトプリン、メトトレキセート、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブ及びナタリズマブが含まれる。ヒドロコルチゾンは、クローン病の重度の発作で用いられる。1990年代後期から、生物的薬物投与が利用できる(インフリキシマブを参照)。手術によってクローン病を治癒させることはできないが、腸の部分的又は完全な閉塞が起こる場合には手術が用いられる。
クローン病の発生率は、ノルウェー及び米国での集団研究から確かめられ、6〜7.1:100,000で同程度である。クローン病は北の国でより一般的で、同じ国の北の領域でより高い優勢を示す。クローン病の発生率は欧州では同程度であるが、アジア及びアフリカではより低いと考えられている。クローン病は、年齢の関数として双峰分布の発生率を有する。その疾患は、10代及び20代の者、並びに50代から70代にかけての者を襲う傾向がある。
本発明のヒト化抗体は、前記のようにクローン病の、及び下記のように潰瘍性大腸炎の治療又は予防にも適用できることに留意するべきである。
潰瘍性大腸炎(U.C.)は、GI管の内膜の別の慢性(長期にわたる)炎症である。UCは通常直腸から連続的であり、直腸はほとんど普遍的に関係し、疾患は結腸(大腸)に限られる。内膜は炎症を起こすようになり、開放性のただれ又は潰瘍を特徴とする。活動性疾患の間、結腸の内側に通常存在する細胞を炎症が死滅させた場所に潰瘍は形成され、その後出血し、膿を生じる。結腸の炎症は結腸がしばしば空になる原因にもなり、段階的に始まる血液の混ざった下痢を引き起こす。潰瘍性大腸炎は症状の悪化する期間、及び比較的症状のない期間を有する、間欠性の疾患である。潰瘍性大腸炎の症状はそれ自身で減少することが時々あるが、この疾患は寛解に入るために治療を通常必要とする。
潰瘍性大腸炎は、米国では100,000人あたり35〜100人で、又は人口の0.1%未満で起こる。この疾患は、世界の北の国で、並びに個々の国の北の領域又は他の領域でより多発する。
北アメリカでの潰瘍性大腸炎の発生率は1年につき100,000人あたり10〜12の新症例であり、潰瘍性大腸炎のピークの発生率は15歳から25歳の年齢で起こる。有病率は、1000人に1人である。発病年齢に双峰分布があると考えられ、発生率の第二のピークは60代で起こる。本疾患は、男性よりも女性により影響を及ぼす。
潰瘍性大腸炎及びクローン病の地理的分布は世界中で類似しており、米国、カナダ、英国及びスカンジナビアで最高の発生率が見られる。欧州及び米国では、南の場所と比較して北の場所でより高い発生率が見られる。
クローン病と同様に、潰瘍性大腸炎の有病率はアシュケナージユダヤ人の間でより高く、ユダヤ人の子孫の他の人々、非ユダヤ系の白人、アフリカ人、ヒスパニック系及びアジア人で次第に低下する。
潰瘍性大腸炎の臨床症状は、疾患の進行程度に依存する。患者は、段階的に始まる血液及び粘液の混合した下痢症状を通常示す。患者は、体重減少、及び直腸診での血液の徴候を有することもある。本疾患は、軽度の不快から重度の有痛性痙攣まで、異なる程度の腹痛を通常伴う。
潰瘍性大腸炎は、体の多くの部分に影響を及ぼす全身の炎症性経過と関連する。時には、10代の痛みを伴う関節炎性の膝などの、これらの関連する腸管外症状は、本疾患の最初の徴候である。しかし、疾患の存在は、腸の徴候の開始まで確認することができない。
潰瘍性大腸炎と診断される人々の約半分は、軽度の症状を有する。他の人は、頻繁な発熱、出血性下痢、吐き気及び重度の腹部痙攣を起こす。潰瘍性大腸炎は、関節炎(血清陰性の関節炎、強直性脊椎炎、仙腸骨炎)、目の炎症(虹彩炎、ブドウ膜炎、上強膜炎)、肝疾患及び骨粗鬆症などの問題を引き起こすこともある。潰瘍性大腸炎のある人々は免疫系の異常を起こしているので、これらの合併症は免疫系によって引き起こされる炎症の結果であるかもしれない。
潰瘍性大腸炎は、通常直腸から結腸まで連続的である。本疾患は、疾患が結腸のどれくらい上まで伸展しているかによって関与の範囲によって分類される。関与の範囲に加えて、UC患者は、疾患の重症度によって特徴付けることもできる。
潰瘍性大腸炎のための標準治療は、関与の範囲及び疾患の重症度に依存する。目標は、最初は薬物投与で寛解を誘導し、続いて維持薬剤を投与して疾患の再発を予防することである。寛解の誘導及び寛解の維持の概念は、非常に重要である。寛解を誘導するため、及び維持するために用いられる薬物は多少重複するが、治療法は異なる。症状の軽減及び結腸内膜の粘膜治癒を含む寛解を誘導するための治療を先ず医師は指示し、次に寛解を維持するためのより長期の治療を指示する。
用いられる薬剤には、アミノサリチレート(例えば5−アミノサリチル酸又は5−ASA)、コルチコステロイド(例えばプレドニゾン)、免疫抑制剤(例えばメトトレキセート)及び生物的治療薬(例えばインフリキシマブ)が含まれる。クローン病と異なって、潰瘍性大腸炎は大腸の外科的切除によって一般に治癒させることができる。
潰瘍性大腸炎は感情的な苦痛又は特定の食物若しくは食品への感受性に起因しないが、これらの因子は一部の人々で症状を引き起こすことがある。潰瘍性大腸炎と一緒に生活することのストレスも、症状を悪化させることに寄与することがある。疾患からの寛解を誘導及び維持するために利用できる薬剤があるが、これらは部分的に成功しているだけであり、潰瘍性大腸炎患者の約25から40パーセントは、大出血、重度の病気、結腸の破裂又は癌のリスクのために、結局結腸を除去しなければならない。
潰瘍性大腸炎の診断のために最良の検査は、内視鏡検査のままである。弾力性のS状結腸鏡検査法は、診断をサポートするのに通常十分である。UCを確定診断して、それを臨床的に異なる方法で管理されるクローン病と区別するために、粘膜の生検材料がとられる。
本発明のヒト化抗体は、IBD、及びそのいくつかは先により詳細に記載されている全てのそのサブタイプの治療又は予防にも適用できることに留意するべきである。
クローン病及びUCを含むIBDと同様に、乾癬も炎症誘発性及び抗炎症サイトカイン生成に影響を与え、及びその影響を受ける炎症性障害である。乾癬の正確な原因及び発生病理は未知であるが、炎症誘発性の1型(Th1)サイトカインの過剰発現が乾癬で実証されており、病態生理学的に重要であると考えられている。重要なことに、他の炎症性皮膚症と比較して、皮膚IL−10 mRNAの発現の相対的な欠乏が実証された。さらに、確立された抗乾癬療法の間、患者が療法前の患者よりも高い、末梢血単核細胞のIL−10 mRNA発現を示したことを以前の刊行物は実証している。これは、IL−10が抗乾癬能力を有する可能性を示唆した。実際、IL−10の皮下投与は、患者で免疫抑制効果(抑制された単核球性HLA−DR発現、TNFα及びIL−12分泌能、IL−12血漿レベル及び抗原リコール応答)をもたらしただけでなく、2型(Th2)サイトカインパターン(IL−4、IL−5及びIL−10産生T細胞の割合の増加、IgE血清レベルの選択的な増加)への移行が観察された。したがって、乾癬の治療のためのIL−10の重要性は明らかである。したがって、具体的な一実施形態によれば、本発明のヒト化抗体は、乾癬又は任意の関連状態を予防、治療、改善又は阻害するために用いることができる。
より詳細には、乾癬は、スケーリングを伴う斑状の、隆起した赤い領域の皮膚炎症を特徴とする一般的な皮膚状態である。乾癬は、肘及び膝の先端、頭皮、臍及び性器又は肛門を囲む領域に多くの場合影響を及ぼす。それは、免疫系が皮膚細胞の成長周期の速度を上げる欠陥のあるシグナルを出すときに起こる。乾癬プラークと呼ばれる一般に乾癬に起因する鱗状の斑は、炎症及び過度の皮膚生成の領域である。皮膚はこれらの部位に速やかに集積し、そのことはそれに銀白色の外観を与える。プラークは、肘及び膝の皮膚にしばしば起こるが、頭皮、手のひら及び足底、及び性器を含むいかなる領域にも影響を及ぼすことができる。湿疹と対照的に、乾癬は関節の外側に見出される可能性がより高い。本障害は、軽微な局所斑から体全体を覆うまで重症度が異なる、慢性の再発性状態である。指の爪及び足の爪は、しばしば影響を受け(乾癬性爪ジストロフィー)、孤立した症状とみなすことができる。関節炎に関連して指摘したように、乾癬は関節の炎症を起こすこともでき、それは乾癬性関節炎として知られる。乾癬を有する人々の10から15パーセントが乾癬性関節炎を発症する。利用できる多くの治療法があるが、その慢性再発性の性質のため、乾癬は治療するのに困難を伴う。乾癬の症状は、様々な形で現れることができる。変形体には、プラーク、膿疱性、滴状及び間擦疹型の乾癬が含まれる。乾癬は、非膿疱性及び膿疱性型に分類することができる。本発明の方法は、非膿疱性だけでなく膿疱性の乾癬の治療を企図することに留意するべきである。
より具体的には、非膿疱性乾癬には、尋常性乾癬及び乾癬性紅皮症が含まれる。尋常性乾癬(慢性静止乾癬又は斑状乾癬としても知られる)は、乾癬の最も一般的な形である。それは、乾癬を有する人々の80から90%に影響を及ぼす。プラーク乾癬は、銀白色の鱗片状皮膚で覆われた炎症皮膚の隆起した領域として一般的に現れる。これらの領域は、プラークと呼ばれる。
乾癬性紅皮症(紅皮症性乾癬)は、大部分の体表面の皮膚の広範囲にわたる炎症及び剥脱を含む。それには、重症のかゆみ、膨潤及び疼痛が付随することがある。それは多くの場合、特に全身治療の急激な撤退に続く、不安定なプラーク乾癬の増悪の結果である。極度の炎症及び剥脱は、温度を調節する体の能力、及び皮膚が障壁機能を果たすことを阻害するので、この形の乾癬は致命的となることがある。
さらに別の具体的な実施形態では、本発明のヒト化抗体並びにその組成物、方法及びキットは、膿疱性乾癬を治療するために用いることができる。膿疱性乾癬は、非感染性の膿で満たされた隆起した瘤(膿疱)として現れる。膿疱の下及び周囲の皮膚は、赤く、敏感になった。膿疱性乾癬は、一般に手及び足(掌蹠膿疱症)に局在化するか、又は体の任意の部分にランダムに発生する広範囲にわたる斑で全身化することもある。膿疱性乾癬サブタイプには、全身性膿疱性乾癬(von Zumbuschの膿疱性乾癬)、掌蹠膿疱症(持続的掌蹠膿疱症、バーバー型の膿疱性乾癬、四肢の膿疱性乾癬)、環状膿疱性乾癬、稽留性肢端皮膚炎及び疱疹状膿痂疹が含まれる。
本発明のヒト化抗体並びにその組成物、方法及びキットは、任意のさらなる種類の乾癬、例えば、皮膚の平滑な炎症斑として出現する薬物性乾癬、逆転乾癬又は間擦疹型乾癬を治療するために適用することもできることを認識するべきである。それは、皮膚のひだ、特に性器の周囲(腿と鼠径の間)、腋の下、過体重胃の下(パンヌス)、及び乳房の下(乳房下ひだ)で起こる。それは摩擦及び汗によって悪化し、真菌感染に弱い。
さらになお、ヒト化抗体は、滴状乾癬を治療するために用いることができる。この種の乾癬は、多数の小さな、鱗状の赤色又はピンク色の涙形病変を特徴とする。乾癬のこれらの多数のスポットは、体の大きな領域、主に体幹部にわたって現れるが、手足及び頭皮にも現れる。滴状乾癬は、多くの場合連鎖球菌感染症、一般的に連鎖球菌性咽頭炎の後に起こる。
本発明の方法によってさらに治療することができる爪乾癬は、指及び足の爪の外観に様々な変化を起こす。これらの変化には、爪甲の下の退色、爪の点食、爪を横切る線、爪の下の皮膚の肥厚化、並びに爪のゆるみ(爪甲離床症)及び崩壊が含まれる。
本明細書で上に指摘したように、本発明のヒト化抗体並びにその組成物、方法及びキットは、乾癬性関節炎を治療するために用いることができる。乾癬性関節炎は、関節及び結合組織の炎症を含む。乾癬性関節炎はいかなる関節にも影響を及ぼすことができるが、指及び足指の関節で最も一般的である。これは、指炎として知られる指及び足指のソーセージ形の腫脹をもたらすことができる。乾癬性関節炎は、臀部、膝及び脊柱(脊椎炎)に影響を及ぼすこともできる。乾癬を有する人々の約10〜15%は、乾癬性関節炎も有する。
一部の実施形態では、乾癬を患っている対象の治療は、対象の生理的状態を改善すること、例えば疾患のために荒れていた皮膚を滑らかにすることができる。好ましい実施形態では、本発明のヒト化抗体の局所適用は皮膚を刺激せず、炎症を促進しない。
本発明のヒト化抗体並びにその組成物、方法及びキットによって、他の慢性又は急性の炎症関連の皮膚病態を治療することができることを認識するべきである。そのようなさらなる状態には、皮膚炎、炎症性皮膚損傷、皮膚色素沈着の炎症関連の障害、例えば白斑及び湿疹が含まれる。
より具体的には、本発明の特定の実施形態は、皮膚炎を治療する本発明のヒト化抗体並びにその組成物、方法及びキットの使用に関する。用語「皮膚炎」は、皮膚の炎症一般を指す。異なる種類は、特定のアレルゲンに対するアレルギー反応を通常共通して有する。この用語は湿疹を指すために用いることができ、それは皮膚炎湿疹又は湿疹様皮膚炎としても知られる。湿疹の診断は多くの場合アトピー皮膚炎(小児湿疹)を含意するが、適切な脈絡なしで、それは「発疹」、すなわち一過性の皮膚炎症以外の何物も意味しない。一部の言葉づかいでは「皮膚炎」及び湿疹は同義語であり、他の言葉づかいでは「皮膚炎」は急性の状態を含意し、「湿疹」は慢性のものを含意する。2つの状態は、多くの場合一緒に分類されている。
別の具体的な実施形態によると、本発明の組成物並びに方法、組合せ組成物及びキットは、自己免疫障害、例えば糖尿病の治療及び/又は改善のために用いることができる。したがって、具体的な一実施形態によれば、本発明のヒト化抗体は、I型糖尿病を予防、治療、改善又は阻害するために用いることができる。
真性糖尿病は、障害を起こした代謝、及び低レベルのホルモンインスリン、又は補償するために不十分なレベルのインスリン分泌と一緒になったインスリン作用への異常な抵抗性から生じる、不適当に高い血糖(高血糖)を特徴とする症候群である。特徴的な症状は、過度の尿生産(多尿)、過度の渇き及び水分摂取量の増加(多飲)、並びにかすみ目である。血糖が少しだけ上昇する場合、これらの症状はおそらく現れない。
糖尿病の3つの主な形態がある。1型、2型及び妊娠性糖尿病(妊娠中に起こる)。1型真性糖尿病は、インスリンの欠乏につながる、すい臓のランゲルハンス島のインスリン産生ベータ細胞の損失を特徴とする。このベータ細胞損失の主要な原因は、T細胞媒介自己免疫性の攻撃である。1型糖尿病に対してとることができる公知の予防手段はない。最も影響を受ける人々は、さもなければ健康であり、開始が起こるときに健全な体重の人である。インスリンへの感受性及び応答性は、特に初期段階では通常正常である。1型糖尿病は子供又は成人を襲うことができ、それは子供を襲う糖尿病の症例の大半に該当するので、伝統的に「若年型糖尿病」と呼ばれた。
1型糖尿病の主要な治療は、最も早い段階からでさえ、血液検査モニターを用いる血糖レベルの慎重な監視と組み合わせたインスリンの補充である。インスリンなしでは、糖尿病ケトアシドーシスが起こる可能性があり、昏睡又は死をもたらすことがある。ライフスタイルの調整(ダイエット及び運動)も重視されるが、これらは損失を元に戻すことができない。一般的な皮下注射は別として、予めセットされたレベルでの1日24時間インスリンの連続注入、及び食事時間に必要に応じてインスリンの用量(ボーラス)をプログラムする能力を可能にするポンプによって、インスリンを送達することもできる。
1型の治療は、際限なく連続しなければならない。検査及び薬物投与で十分な認識、適当な注意及び規律が守られるならば、治療は正常な活動を損なわない。
米国での有病率は人口の0.12%、又はほぼ340,000人である。発生率は、年間約30,000症例、人口の0.01%である。
さらに別の具体的な実施形態では、糖尿病II型を予防、治療、改善又は阻害するために、本発明のヒト化抗体を用いることができる。真性糖尿病2型、又はインスリン非依存性真性糖尿病(NIDDM)若しくは成人発症糖尿病は、インスリン抵抗性及び相対的なインスリン欠乏症との関連で高い血糖を特徴とする代謝障害である。状態が進行するに従って、薬物投与が必要になろう。高血糖による長期合併症には、心発作、脳卒中、切断及び腎不全のリスクの増加が含まれる。可能性として2型糖尿病を発生又は悪化させることができる、多くの因子がある。これらには、肥満、高血圧、高コレステロール(複合高脂血症)が含まれ、しばしばメタボリックシンドローム(それはエックス症候群、Reavanの症候群又はCHAOSとしても知られる)と呼ばれる状態を伴う。他の原因には、先端巨大症、クッシング症候群、甲状腺中毒症、褐色細胞腫、慢性すい炎、癌及び薬剤が含まれる。2型糖尿病のリスクを増加させることが見出されているさらなる因子には、加齢、高脂肪食及びより低い活動性のライフスタイルが含まれる。
インスリン抵抗性とは、インスリンが存在するときにも体細胞が適切に応答しないことを意味する。1型真正糖尿病と異なって、インスリン抵抗性は一般に「受容体後」であり、そのことは、それがインスリンの産生の問題ではなく、インスリンに応答する細胞の問題であることを意味する。不適切に管理された2型糖尿病からは、腎不全、勃起不全、盲目、治癒の遅い傷(外科切開を含む)及び冠状動脈疾患を含む動脈疾患を含む重度の合併症が生じることがある。2型の開始は中年以後が最も一般的であるが、児童の肥満及び不活動性の増加により若者及び若年成人でよりしばしば見られる。MODYと呼ばれる種類の糖尿病が若者でますます見られているが、これは特別な原因による糖尿病と分類され、2型糖尿病と分類されてはいない。
炎症と2型糖尿病の発生病理との間に関連があるかもしれないとの証拠が、ますます増えている。インスリン抵抗性及び2型糖尿病が免疫要素を有することを示唆するこの発展途上の概念は、2型糖尿病の発生病理を理解すること、及び疾患のための新しい治療法を開発することの両方のための免疫療法的手法を調査するための新しいアベニューを提供する。
免疫関連障害のさらに別の例では、本発明は、多発硬化症を予防、治療、改善又は阻害するための方法での、本発明のヒト化抗体、並びにその組成物及びキットの使用をさらに提供する。より具体的には、多発硬化症(MSと省略される、以前は散在硬化症又は播種性脳脊髄炎として知られる)は、中枢神経系(CNS)に影響を及ぼす、慢性、炎症性の脱髄性疾患である。疾患の開始は通常若年成人で起こり、女性でより一般的で、国又は特定の集団に従い100,000人中2人から150人の間の有病率を有する。
MSは、白質として知られる脳及び脊髄の領域のニューロンに影響を及ぼす。処理が行われる灰白質領域の間で、及びこれらと体の残りとの間で、これらの細胞はシグナルを伝える。より具体的には、髄鞘として知られる、ニューロンが電気シグナルを伝えるのを助ける脂肪層を形成及び維持することを担う細胞である、希突起膠細胞をMSは破壊する。MSは、ミエリンの密度低下又は完全な消失をもたらし、及びより稀にニューロン伸張部又はアクソンの切断(離断)をもたらす。ミエリンが失われる場合、ニューロンはそれらの電気シグナルを効果的に伝えることがもはやできない。名称多発硬化症は、白質中の瘢痕(硬化症−プラーク又は病変としてよりよく知られる)を指す。これらの病変でのミエリンの消失は、どのシグナルが妨害されたかによって大きく変動する症状の一部を引き起こす。しかし、より高度化した形の画像化は、傷害の多くはこれらの領域外で起こることを現在示している。ほとんどいかなる神経症状も、疾患に付随することができる。
MSはいくつかの形をとり、新しい症状は別々の発症で起こる(再発形)か、又は経時的に徐々に蓄積する(進行形)。ほとんどの人は再発寛解型MSと先ず診断されるが、数年後に二次的進行性MS(SPMS)を発症する。発症又は発作の間に症状が完全に消失することもあるが、特に疾患が進行するに従って、恒久的な神経学的な問題が多くの場合持続する。
疾患の経過に関与する機構について多くのことが知られているが、原因は曖昧なままである。最も多くの支持者の理論は、それが自己免疫性反応から生じるということである。疾患には治療法がないが、いくつかの療法が役に立つことが判明している。治療は、発症の後に機能を取り戻すこと、新しい発作を予防すること、及び障害を予防することを企てる。いかなる治療と同様に、薬物投与はいくつかの有害作用を有し、多くの療法がなお調査中である。
臨床的に、MSは、CNSの病変に起因する再発性又は慢性的に進行性の神経機能障害を一般的に特徴とする。病理学上、病変には、脳、視神経及び脊髄に影響を及ぼす脱髄の複数の領域が含まれる。根本的な病因は不確実であるが、MSは少なくとも部分的に自己免疫性又は免疫介在性の疾患であると広く考えられている。EAEは、MSで新しい治療手法を研究するための有用な実験モデルの役目を果たす。コルチコステロイド及び共重合体1を含む様々な免疫抑制剤が、EAEの予防及び治療で有効であることが見出された。しかし、これまでは患者は対症的に、又は免疫抑制剤で治療され、MSの良好な療法はまだ確立されていない。
したがって、本発明は、それを必要とする対象に本発明の抗体を投与することを含む、MSを治療するか、又はその開始を遅らせるか予防する組成物及び方法を含む。
下の実施例で示すように、本発明の抗ペプチド6ヒト化抗体は、抗炎症効果を明らかに示す。より具体的には、本発明の抗ペプチド6ヒト化抗体(具体的には、VH2/VK3変異体及びそのF(ab)2断片)へのヒトPBMCの曝露は、最終的にIL−10遺伝子発現の上方制御をもたらす逐次的事象を導き出すことを、図14及び15は示す。炎症部位でのIL−10分泌の増加は、局所サイトカインプロファイルを炎症性から抗炎症性の応答に変えることができ、このようにこれらの抗体によって与えられる炎症に対する保護機構を説明することができる。
IL−10分泌の誘導は、マクロファージタンパク質との抗体の相互作用の直接効果である可能性があり、いかなるHSP抗原の存在も必要としない。図12で例示されるように、本発明の抗ペプチド6ヒト化抗体は、ヒトマクロファージ膜タンパク質に特異的に結合する。したがって、本発明の抗体は、Th1/Th2細胞均衡を抗炎症Th2応答の方へ調節する免疫調節薬として用いることができる。したがって、本発明は、IL−10(インターロイキン10)の発現及びレベルを増加させるための組成物及び方法をさらに提供する。この態様によると、本発明の組成物は、配列番号15のアミノ酸配列からなるペプチドに対する少なくとも1つの単離、精製された抗ペプチド6ヒト化抗体の有効量を有効成分として含む。本発明の組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を任意選択で含むことができる。
一実施形態によると、抗炎症サイトカイン、例えばIL−10、IL−4及びIL−6のいずれか1つ、特にIL−10の発現又はレベルを「増加」又は「強化」することが示される場合、そのような増加又は強化がそのようなサイトカインの発現の約10%から100%の間の増加又は上昇であってよいことが意味される。本明細書で用いる用語「増加」、「増強」及び「強化」は、サイズ、量、数又は強度が次第により大きくなる動きに関する。特に、適する対照と比較したときの発現の10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%の増加。増加又は上昇が約2倍から100倍の増加であってもよい点にさらに留意するべきである。さらになお、前記IL−10サイトカインのレベル又は発現の増加が、前記サイトカインの転写、翻訳又は安定性のいずれかにおいてであってよいことを認識するべきである。上記に関して、提供される場合、百分率値、例えば10%、50%、120%、500%などが「倍率変化」値、すなわちそれぞれ0.1、0.5、1.2、5などと交換可能であることを理解するべきである。
上で示すように、IL−10の強化された発現は、Th1/Th2均衡をTh2抗炎症応答の方へ調節することができる。したがって、Th1/Th2均衡の抗炎症反応の方への調節が望まれる状態で、本発明の抗体は役立つことができる。したがって、一実施形態によれば、それを必要とする対象でIL−10の発現及びレベルを増加させ、それによって治療される対象でTh1/Th2細胞均衡を抗炎症Th2応答の方へ調節するために、本発明の組成物を用いることができる。具体的な一実施形態によると、そのような対象は、免疫関連の障害を患っている対象である。例えば、自己免疫性疾患(例えば関節炎、IBD、乾癬、1型及び2型糖尿病、多発硬化症(MS)、ループス、グラーブ病及び甲状腺炎)、移植片拒絶病理及び移植片対宿主病、並びに毒素ショック、敗血症性ショック及び重度の敗血症などのスーパー抗原によって誘発される障害などの免疫関連障害。
一般に、本発明の組成物並びに方法、組合せ組成物及びキットは、任意の自己免疫性疾患、例えば、それらに限定されないが、イートン−ランバート症候群、グッドパスチャー症候群、Greave’s病、ギラン−バール症候群、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、肝炎、インスリン依存型糖尿病(IDDM)及びNIDDM、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発硬化症(MS)、重症筋無力症、叢疾患、例えば急性上腕神経炎、多腺性欠乏症候群、原発性胆汁性肝硬変症、慢性関節リウマチ、強皮症、血小板減少、甲状腺炎、例えば橋本病、シェーグレン症候群、アレルギー性紫斑病、乾癬、混合型結合組織病、多発筋炎、皮膚筋炎、血管炎、結節性多発動脈炎、リウマチ性多筋痛、ヴェーゲナー肉芽腫症、ライター症候群、ベーチェット症候群、強直性脊椎炎、天疱瘡、水疱性類天疱瘡、疱疹状皮膚炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎及びクローン病及び脂肪肝疾患を予防、治療、改善又は阻害することに用いることができることをさらに認識するべきである。
本発明のヒト化抗体を含む医薬組成物は、非経口投与、すなわち腹腔内(i.p.)、皮下(s.c.)、筋内(i.m.)及び静脈内(i.v.)、並びに経口及び局所の適用に有用である。非経口投与のための組成物は、許容される担体、好ましくは水性担体に溶解される、抗体又はそのカクテルの溶液を一般に含む。種々の水性担体が使用可能であり、例えば、水、緩衝水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシンなどがある。これらの溶液は無菌であり、粒子状物質を一般に含まない。組成物は、生理条件に近づけるのに必要とされる薬学的に許容される補助物質、例えばpH調節及び緩衝剤、毒性調節剤など、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリ、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムを含むことができる。これらの製剤中のヒト化抗体の濃度は広範囲に、すなわち約0.01%未満、通常少なくとも約0.1%から5重量%まで変動してもよく、選択される特定の投与様式に従って液の量及び粘度に主に基づいて選択される。
より具体的には、本発明の抗ペプチド6ヒト化抗体を含む注射可能な組成物は、水、生理食塩水、等張性生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、クエン酸緩衝生理食塩水などで調製されてもよく、非毒性界面活性剤と任意選択で混合されてもよい。通常の貯蔵及び使用条件で、これらの調製物は、微生物の増殖を防止するために防腐剤を含むことができる。注射又は注入のために適する医薬用剤形には、無菌の水性溶液若しくは分散液、又は注射若しくは注入が可能である無菌の溶液若しくは分散液の即席の調製に適合する、有効成分を含む無菌の粉末が含まれる。好ましくは、最終的な剤形は無菌の流体で、製造条件及び貯蔵条件下で安定である。溶液、懸濁液又は分散液の液体担体又はビヒクルは、例えば水、エタノール、ポリオール、例えばグリセロール、プロピレングリコール、又は液体ポリエチレングリコールなど、植物油、非毒性グリセリルエステル及びその適する混合物を含む溶媒又は液体分散媒体であってよい。溶液、懸濁液又は分散液の適切な流動性は、例えばリポソームの形成によって、分散液の場合は所望の粒径の維持によって、又は非毒性界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物活動の防止は、様々な抗細菌性及び抗かび剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。糖、緩衝液又は塩化ナトリウムなどの等張剤が含まれてもよい。吸収を遅らせる剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムのヒドロゲル及びゼラチンの組成物中への含有によって、注射可能な組成物の長期にわたる吸収をもたらすことができる。溶解性強化剤を加えてもよい。
無菌の注射可能な組成物は、様々な他の成分、例えば上で列挙されるようなものと一緒に適当な溶媒に抗ペプチド6ヒト化抗体を所望の量で組み込み、続いて、所望により、例えば濾過滅菌によって滅菌することによって調製することができる。無菌の注射可能な溶液の調製のための無菌粉末の場合、調製法には減圧乾燥及び凍結乾燥技術が含まれ、それらは、前もって濾過滅菌された溶液に存在する有効成分プラス任意のさらなる所望成分の粉末を与える。濾過滅菌、例えば0.22ミクロンフィルター又はナノ濾過、ガンマ又は電子ビーム殺菌などの、任意の適する滅菌法を用いることができる。
様々な実施形態では、最終的な溶液は、約4から約9の間、約5から約7の間、約5.5から約6.5の間、又は約6のpHを有するように調節される。組成物のpHは、薬理的に許容される酸、塩基又は緩衝液で調節することができる。
さらになお、1用量につき所定量の各有効成分を含む単位用量の形で、本発明の組成物を提供することができる。そのような単位は、体重1Kgにつき本発明のヒト化抗体の0.1〜100mgを提供するように適合させることができる。具体的には、0.1〜10mg/Kg、5〜15mg/Kg、10〜30mg/Kg、25〜50mg/Kg、40〜80mg/Kg又は60〜100mg/Kg。より具体的には、前記有効投薬量は、約0.01から約100mg/Kg、約0.1から約90mg/Kg、約0.3から約8mg/Kg、約0.4から約70mg/Kg、約0.5から約60mg/Kg、約0.7から約50mg/Kg、約0.8から約40mg/Kg、約0.9から約30mg/Kg、約1から約20mg/Kg、特に約1から約10mg/Kgのヒト化抗体である。そのような用量は、単一の用量又はいくつかの別々の用量として提供されてもよい。最終的な用量は当然ながら治療される状態、投与経路及び年齢、体重及び患者の状態に依存し、医者の判断次第である。
上で示すように、非経口経路に加えて、本発明の組成物は、任意の他の適当な経路、例えば経口(口内若しくは舌下を含む)、直腸、経鼻、局所(口内、舌下若しくは経皮を含む)又は膣の経路による投与に適合させることができる。そのような製剤は、薬学分野で公知である任意の方法によって、例えば有効成分を担体(単数又は複数)又は賦形剤(単数又は複数)と一緒にすることによって調製されてもよい。
経口投与に適合する医薬製剤は、別々の単位として、例えば、カプセル若しくは錠剤、粉末若しくは顆粒剤、水性若しくは非水性液体中の溶液若しくは懸濁液、食用のフォーム若しくはホイップ、又は水中油型液体乳濁液若しくは油中水型液体乳濁液として提供することができる。
経皮投与に適合する医薬製剤は、長時間にわたってレシピエントの表皮と密接に接触し続けることを目的にした別々のパッチとして提供できる。
局所投与に適合する医薬製剤は、軟膏、クリーム、懸濁液、ローション、粉末、溶液、ペースト、ゲル、噴霧剤、エアゾール又は油として製剤化されてよい。
目又は他の外部組織、例えば口及び皮膚への適用のために、製剤は局所の軟膏又はクリームとして好ましくは適用される。軟膏で製剤化される場合、有効成分はパラフィン又は水混和性の軟膏基剤と使用されてもよい。或いは、有効成分は水中油型のクリーム基剤又は油中水形基剤とクリームに製剤化されてもよい。
目への局所投与に適合する医薬製剤には、有効成分が適する担体、特に水性溶媒に溶解又は懸濁される点眼剤が含まれる。
口への局所投与に適合する医薬製剤には、ロゼンジ、トローチ及び洗口剤が含まれる。
具体的な実施形態は、本発明のヒト化抗体を含む軟膏、クリーム、懸濁液、ペースト、ローション、粉末、溶液、油、カプセル化ゲル、リポソーム、抗体を含む任意のナノ粒子、又は前記抗体を含む噴霧可能なエアゾール若しくは吸入剤による患部皮膚領域の局所投与による皮膚炎症状態、具体的には乾癬の治療を企図する。従来の医薬担体、水性、粉末若しくは油性基剤、増粘剤などが必要であるか又は望ましいであろう。用語「局所適用される」又は「局所投与される」は、軟膏、クリーム、緩和剤、香油、ローション、溶液、膏薬、滑材又は任意の他の薬剤形態が、乾癬の1つ又は複数の症状の影響を受けるか影響を受けている、又はそれを示すか若しくは示している患者皮膚の皮膚の一部又はその全部に適用されることを意味する。
好ましい実施形態では、皮膚障害、具体的には乾癬の治療のための本発明のヒト化抗体の投与は、局所ドレッシングによる。用語「ドレッシング」は、布、織物、合成膜、ガーゼなどで一般的に構成される、傷又は手術部位のための被覆物を意味する。それは、通常、皮膚の領域を被覆するポリマー含有マトリックスである。ドレッシングは、皮膚と密接に接触してもしなくともよい。それは、例えば、布又はガーゼでよいか、又はそれは皮膚に塗布若しくは噴霧されるポリマー溶液でもよく、そのポリマーは、溶媒が乾燥するとき、及び/又はポリマーが架橋するときに皮膚の上で固化する。ドレッシングには、ゲル、一般的に架橋ヒドロゲルも含まれ、それは傷、手術部位などを主に被覆及び保護することが目的である。
直腸投与に適合する医薬製剤は、坐薬又は浣腸として提供されてよい。
担体が固体である経鼻投与に適合する医薬製剤には、例えば20から500ミクロンの粒径を有する粗粉末が含まれ、それは、嗅剤を服用する方法、すなわち鼻の近くに保持される粉末の容器からの鼻通路を通しての急速な吸入によって投与される。鼻噴霧剤又は点鼻剤としての投与のための、担体が液体である適する製剤には、有効成分の水性又は油性の溶液が含まれる。
吸入による投与に適合する医薬製剤には、様々な種類の計量用量加圧式エアゾール、ネブライザー又は吹入器によって生成させることができる、微粒子粉塵又はミストが含まれる。
膣投与に適合する医薬製剤は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又は噴霧製剤として提供することができる。
好ましい単位投薬量製剤は、本明細書で上に挙げたような、有効成分の毎日、週2回、週1回、数週毎又は毎月の用量又は下位用量、或いはその適当な分画を含むものである。特にIBDでは、大量瞬時投与量が最初に与えられ、次に継続治療のために用量が低減される例もあることが、示されるべきである。
詳細に上で指摘した成分に加えて、問題の種類の製剤に関係する技術分野で慣用される他の剤を製剤が含むこともできることを理解するべきであり、例えば、経口投与に適するものは香料を含むことができる。
本発明のさらなる態様は、免疫性関連障害を予防、治療、改善又は阻害するための方法を提供する。本発明の方法は、それを必要とする対象に、配列番号15を含むポリペプチドに特異的に結合する少なくとも1つの単離及び精製されたヒト化抗体、又は前記ヒト化抗体を含む組成物の治療的有効量を投与する段階を含む。一実施形態によると、本発明の方法によって用いられるヒト化抗体は、以下のものを含む。
a)H22位のCys、H23位のSer、H26位のGly、H27位のPhe、H28位のSer、H29位のLeu、H30位のSer、H31位のThr、H32位のSer、H33位のAsn、H34位のMet、H35位のGly、H35A位のVal、H35B位のGly、H48位のLeu、H50位のHis、H51位のIle、H52位のLeu、H53位のTrp、H54位のAsn、H55位のAsp、H56位のSer、H57位のLys、H58位のTyr、H59位のTyr、H60位のAsn、H61位のPro、H62位のAla、H63位のLeu、H64位のLys、H65位のSer、H92位のCys、H95位のMet、H96位のGly、H97位のGly、H98位のTyr、H99位のTyr、H100位のGly、H100A位のAsn、H100B位のTyr、H100C位のGly、H100D位のTyr、H100E位のTyr、H100F位のAla、H100G位のMet、H101位のAsp及びH102位のTyrを含み、任意選択でH49位のLeu、H74位のTyr、H11位のIle、H41位のSer及びH108位のSerの少なくとも1つを含む重鎖可変領域、並びに
b)L1位のGln、L23位のCys、L24位のThr、L25位のAla、L26位のSer、L27位のSer、L27A位のSer、L28位のVal、L29位のSer、L30位のSer、L31位のSer、L32位のTyr、L33位のLeu、L34位のHis、L47位のTrp、L50位のSer、L51位のThr、L52位のSer、L53位のAsn、L54位のLeu、L55位のAla、L56位のSer、L71位のTyr、L88位のCys、L89位のHis、L90位のGln、L91位のTyr、L92位のHis、L93位のArg、L94位のSer、L95位のPro、L96位のPro及びL97位のThrを含み、任意選択でL21位のMet、L10位のIle及びL80位のAlaの少なくとも1つを含む軽鎖可変領域(位置はKabatのナンバリングシステムによって決定される)。
一実施形態によると、本発明の方法は、本発明によって記載される本発明のヒト化抗体のいずれか、又は同じものを含む任意の組成物を用いることができる。特定の一実施形態は、配列番号21の重鎖可変領域及び配列番号26の軽鎖可変領域(VH2/VK3)を有する少なくとも1つのヒト化抗体の使用に関する。
一実施形態によると、本発明の方法は、自己免疫性又は炎症性障害などの免疫関連障害を予防、治療、改善又は阻害することに特に適用可能であろう。
具体的な一実施形態によると、本発明の方法は、炎症性関節炎を治療することに特に適用できる。
別の実施形態によると、本発明の方法は、炎症性腸疾患(IBD)の治療のために用いることができる。
別の実施形態によると、本発明の方法は、乾癬の治療のために用いることができる。
さらに別の実施形態では、本発明の方法は、糖尿病などの自己免疫不全を治療するために用いることができる。
さらに別の実施形態では、本発明の方法は、MS(多発硬化症)の治療のために用いることができる。
本出願の明細書及び下記の請求項の節で用いるように、用語「治療する」又は治療すること及びそれらの派生語は、状態の進行を実質的に阻害、減速又は逆転すること、状態の臨床症状を実質的に改善すること、又は状態の臨床症状の出現を実質的に予防することを含む。
本明細書で用いるように、「疾患」、「障害」、「状態」などは、それらが対象の健康に関する場合には互換的に用いられ、そのような用語のそれぞれ及び全てに帰される意味を有する。
本明細書で用いるように、「対象」は、治療又は調査のために抗体などの剤が投与される哺乳動物を意味する。哺乳動物には、マウス、ラット、ネコ、モルモット、ハムスター、イヌ、サル、チンパンジー及びヒトが含まれる。
本発明は、上記状態に関係する任意の状態を治療するための、本発明の抗体の使用をさらに包含する。互換的に用いられる用語「関連する」及び「関係する」は、本明細書で病理に言及するとき、因果関係を共有するか、偶然よりも高い頻度で共存するか、又は少なくとも1つの疾患、障害、状態又は病理が第二の疾患、障害、状態又は病理を引き起こす場合の少なくとも1つである、疾患、障害、状態又は任意の病理を意味するものと理解される。
関節炎については、そのような関連又は関係する状態には、例として、全ての種類の原発性炎症性関節炎、例えば慢性関節リウマチ、敗血性関節炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎(ReA)、強直性脊椎炎(以前はベヒテレフ病、ベヒテレフ症候群として知られる)、若年性特発性関節炎(JIA)及び痛風(代謝性関節炎)を含めることができる。示した全ての原発形関節炎に加えて、本発明によって治療される状態には、全ての二次的形態の関節炎、例えばエリテマトーデス、ヘノッホ−シェーンライン紫斑病、ヘモクロマトーシス、肝炎、ヴェーゲナー肉芽腫症(及び他の多くの血管炎症候群)、ライム病、家族性地中海熱、回帰熱を伴うグロブリン過剰血症D、TNF受容体関連の周期的症候群及び炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む)を含めることができる。
IBDについては、そのような関連又は関係する状態には、例として、クローン病、潰瘍性大腸炎、コラーゲン蓄積大腸炎、リンパ性大腸炎、虚血性大腸炎、転換大腸炎、ベーチェット症候群及び不確定の大腸炎を含めることができる。
乾癬については、そのような関連又は関係する状態には、例として、乾癬性関節炎、尋常天疱瘡、水疱性類天疱瘡、皮膚筋炎、瘢痕性類天疱瘡、CREST症候群、ループス、円板状ループス及び白斑を含めることができる。
糖尿病については、そのような関連又は関係する状態には、例として、目関連の合併症(白内障、緑内障、網膜症)、神経病、腎症、心筋症、脳卒中、高血圧、末梢動脈疾患及びただれを含めることができる。
本発明のさらなる態様は、それを必要とする対象でIL−10の発現及びレベルを増加させるための方法であって、前記対象に、配列番号15を含むポリペプチドに特異的に結合する少なくとも1つの単離及び精製されたヒト化抗体、又は前記ヒト化抗体を含む組成物の治療的有効量を投与する段階を含む上記方法を提供する。一実施形態によると、本発明のヒト化抗体のいずれでも前記方法のために用いることができる。
一実施形態によると、IL−10の発現及びレベルを増加させることは、免疫関連障害を患っている治療対象で、Th1/Th2細胞均衡の抗炎症Th2応答の方への調節に導く。
本発明は、免疫関連障害を予防、治療、改善又は阻害するための組成物を調製するための、本明細書に記載されるヒト化抗体、具体的にはVH2/VK3変異体の使用を提供する点にさらに留意するべきである。
本発明は、免疫関連障害の治療に適用できる免疫調節剤としての、新規ヒト化抗ペプチド6抗体の使用を実証する。前記抗体の有益な免疫調節作用が、他の公知の抗炎症剤とのその組合せによって強化することができることも認識するべきである。したがって、本発明は、任意の治療薬、特に抗炎症剤との本発明の抗体の任意の組合せ又は混合物をさらに提供する。したがって、特定の実施形態によると、本発明は、少なくとも1つの単離及び精製されたヒト化抗体又は任意のその抗原結合性断片、及びメチルプレドニソン(MPS)、抗TNF剤、エタナーセプト(Enbrel)、インフリキシマブ(Remicade)、アダリムマブ(Humira)及びセルトリズマブペゴール(Cimzia)、抗IL−6剤、トシリズマブ(Actemra)、抗IL−1受容体剤、キネレット(kineret)(アナキンラ(Anakinra))、CTLA−4−Ig、アバタセプト(Orencia)、抗CD20剤、リツキシマブ(MabThera;Rituxan)、メトトレキセート、任意のコルチコステロイド誘導体並びに、免疫関連障害を治療、予防、改善、低減又は遅延させるための任意の他の抗炎症剤からなる群から選択される少なくとも1つの抗炎症剤の組合せの治療的有効量の使用を提供する。そのようなさらなる抗炎症剤は、IL−10の誘導を含む経路を含む抗ペプチド6抗体の機構以外の、任意の経路を通して抗炎症応答を誘導する剤であってよいことに留意するべきである。
したがって、本発明は、少なくとも1つの単離及び精製されたヒト化抗体又は任意のその抗原結合性断片、及びメチルプレドニソン(MPS)、抗TNF剤、エタナーセプト(Enbrel)、インフリキシマブ(Remicade)アダリムマブ(Humira)及びセルトリズマブペゴール(Cimzia)、抗IL−6剤、トシリズマブ(Actemra)、抗IL−1受容体剤、キネレット(kineret)(アナキンラ(Anakinra))、CTLA−4−Ig、アバタセプト(Orencia)、抗CD20剤、リツキシマブ(MabThera;Rituxan)、メトトレキセート、任意のコルチコステロイド誘導体、並びに抗ペプチド6経路とは異なる任意のシグナル伝達経路を誘導する任意の抗炎症剤からなる群から選択される少なくとも1つの抗炎症剤の付加的及び相乗的組合せに特に関し、それによって、それらの付加的及び相乗的組合せは免疫関連障害、例えば関節炎、IBD、乾癬又は糖尿病を患っている対象を治療することに有用である。本発明の相乗的及び付加的組成物は、そのような障害の症状又は徴候を示している対象の治療のために用いることもできる。
相乗的組合せは、単離及び精製されたヒト化抗体又は任意のその抗原結合性断片、及びメチルプレドニソン(MPS)、抗TNF剤、エタナーセプト(Enbrel)、インフリキシマブ(Remicade)アダリムマブ(Humira)及びセルトリズマブペゴール(Cimzia)、抗IL−6剤、トシリズマブ(Actemra)、抗IL−1受容体剤、キネレット(kineret)(アナキンラ(Anakinra))、CTLA−4−Ig、アバタセプト(Orencia)、抗CD20剤、リツキシマブ(MabThera;Rituxan)、メトトレキセート及び任意のコルチコステロイド誘導体、又は任意の他の抗炎症剤からなる群から選択される少なくとも1つの抗炎症剤の両方の効果が、唯一の治療法としてのこれらの化合物のいずれかの別々の投与の治療効果の合計より大きいことを意味する。より具体的には、さらなる抗炎症剤は、抗ペプチド6抗体によって誘導される経路とは異なる経路、例えばIL−10誘導に関与する任意の経路を誘導することができる。
本発明の組合せ化合物は、薬学的に許容される担体又は希釈剤と一緒に本発明の両方の化合物を含む医薬組成物の形で一般に投与される。しかし、一部の実施形態によると、両方の化合物は別々に投与されてもよい。したがって、本発明によって用いられる化合物は、キット内で個々に、又は任意の従来の経口又は粘膜剤形で一緒に投与されてもよい。
より詳細には、本発明は別々に投与されてもよい有効成分の組合せによる疾患及び状態の治療に関するので、さらなる態様として、本発明は、キットの形で別々の医薬組成物を組み合わせることにも関する。キットは、少なくとも2つの別々の医薬組成物を含む。(i)任意選択で第一の剤形での、単離及び精製されたヒト化抗体又は任意のその抗原結合性断片、特に本発明のヒト化抗体のいずれか、(ii)任意選択で第二の剤形での、メチルプレドニソン(MPS)、抗TNF剤、エタナーセプト(Enbrel)、インフリキシマブ(Remicade)アダリムマブ(Humira)及びセルトリズマブペゴール(Cimzia)、抗IL−6剤、トシリズマブ(Actemra)、抗IL−1受容体剤、キネレット(kineret)(アナキンラ(Anakinra))、CTLA−4−Ig、アバタセプト(Orencia)、抗CD20剤、リツキシマブ(MabThera;Rituxan)、メトトレキセート、任意のコルチコステロイド誘導体並びに抗ペプチド6経路と異なる任意の他の経路を誘導する任意の抗炎症剤からなる群から選択される少なくとも1つの抗炎症剤。
本発明のキットは、前記第一及び第二の剤形を含有するための(iii)容器手段をさらに含むこともできる。
より具体的には、キットは、別々の組成物の両方を含有するための容器手段、例えば分けられたボトル又は分けられたホイル箱を含む。しかし、別々の組成物は、単一の、分けられていない容器に含有されてもよい。一般的に、キットは別々の構成成分の投与のための指示書を含む。別々の構成成分が好ましくは異なる剤形(例えば、腸管外)で投与される場合、異なる投与間隔で投与される場合、又は組合せの個々の構成成分の滴定が処方医師によって望まれる場合、キットの形は特に有利である。
治療効果を達成することは、例えば、キットが特定の障害の治療を目的とする場合、治療効果は例えば治療される状態の進行を遅らせることでよいことを意味する。
キットの両構成成分、任意選択で第一の剤形にある本発明の単離及び精製されたヒト化抗体、並びに任意選択で第二の剤形にある、メチルプレドニソン(MPS)、抗TNF剤、エタナーセプト(Enbrel)、インフリキシマブ(Remicade)アダリムマブ(Humira)及びセルトリズマブペゴール(Cimzia)、抗IL−6剤、トシリズマブ(Actemra)、抗IL−1受容体剤、キネレット(kineret)(アナキンラ(Anakinra))、CTLA−4−Ig、アバタセプト(Orencia)、抗CD20剤、リツキシマブ(MabThera;Rituxan)、メトトレキセート、任意のコルチコステロイド誘導体並びに抗ペプチド6経路と異なる任意の他の経路を誘導する任意の抗炎症剤からなる群から選択される少なくとも1つの抗炎症剤は、同時に投与されてよいことを認識するべきである。
或いは、前記第一の化合物又は剤形及び前記第二の化合物又は剤形は、いずれかの順序で順番に投与される。
本ヒト化抗体を含む組成物、又は任意のその組合せ、混合物若しくはカクテルは、予防及び/又は治療的な処置のために投与されてよい。治療的適用では、既に免疫関連障害(例えば、関節炎、IBD、乾癬、MS及び糖尿病)に冒されている患者に対して、状態及びその合併症を治癒させるか又は少なくとも部分的に停止させるのに十分な量で組成物は投与される。これを達成するのに十分な量は、「治療有効用量」と定義される。これのために有効な量は、状態の重症度及び患者自身の免疫系の一般状態に依存するが、一般に1用量につき約0.01から約100mg/Kgのヒト化抗体であり、体重1Kgにつき0.1から50mg及び1から10mgの投薬量がより一般に用いられる。より具体的には、前記有効投薬量は、約0.01から約100mg/Kg、約0.1から約90mg/Kg、約0.3から約8mg/Kg、約0.4から約70mg/Kg、約0.5から約60mg/Kg、約0.7から約50mg/Kg、約0.8から約40mg/Kg、約0.9から約30mg/Kg、約1から約20mg/Kg、特に約1から約10mg/Kgのヒト化抗体である。毎日、週2回、週1回、数週毎又は毎月のスケジュールでの単一又は複数の投与を実施することができ、用量レベル及びパターンは治療にあたる医師によって選択される。
予防適用では、患者の抵抗性を強化するために、疾患状態を発症する危険のある患者に、ヒト化抗体を含む組成物又は任意のその組合せ、混合物若しくはカクテルが投与される。そのような量は、「予防的有効用量」と定義される。この使用では、正確な量は再び患者の健康状態及び免疫の一般的レベルに依存するが、体重1Kgにつき1用量あたり一般に0.1から100mg、特に1から10mgである。より具体的には、前記有効投薬量は、約0.01から約100mg/Kg、約0.1から約90mg/Kg、約0.3から約8mg/Kg、約0.4から約70mg/Kg、約0.5から約60mg/Kg、約0.7から約50mg/Kg、約0.8から約40mg/Kg、約0.9から約30mg/Kg、約1から約20mg/Kg、特に約1から約10mg/Kgのヒト化抗体である。
患者によって必要とされ、許容される投薬量及び頻度に従い、組成物の単一又は複数の投与が投与される。いかなる事象でも、組成物は、患者を効果的に治療するために、本発明のヒト化抗体の十分な量を提供するべきである。好ましくは、投薬量が一度投与される、単一の投与が望まれる。しかし、ほとんどの場合、治療が達成されるまで、及び治療効果を維持するために、又は副作用のために療法の中止が正当化されるまで、投薬量は定期的に投与される。一般に、用量は、患者に受け入れがたい毒性をもたらさずに、疾患の症状又は徴候を治療又は改善するのに十分である。
本発明の免疫複合体組成物の制御放出非経口製剤は、移植片、油性注射又は粒状系として作製されてもよい。
粒状系には、マイクロスフェア、微小粒子、マイクロカプセル、ナノカプセル、ナノスフェア及びナノ粒子が含まれる。マイクロカプセルは、中心コアとして治療的タンパク質を含有する。マイクロスフェアでは、治療薬は粒子全体に分散する。約1μmより小さな粒子、マイクロスフェア及びマイクロカプセルは、それぞれナノ粒子、ナノスフェア及びナノカプセルと一般に呼ばれる。毛細血管は約5μmの直径を有するので、ナノ粒子だけが静脈内に投与される。微小粒子は直径が一般的に100μm前後であって、皮下又は筋内に投与される。
本発明のヒト化抗ペプチド6抗体組成物のイオン制御放出のために、ポリマーを用いることができる。制御された薬物送達に用いられる様々な分解性及び非分解性のポリマーマトリックスが、当技術分野で公知である。
さらに別の実施形態では、脂質封入薬剤の制御放出並びに薬剤ターゲッティングのために、リポソームが用いられる。
本発明のさらなる態様は、本発明のヒト化抗体をコードする発現ベクターで形質転換又はトランスフェクトされる宿主細胞系に関する。特定の一実施形態では、この発現ベクターは、可変重鎖及び可変軽鎖の両方をコードする。
特定の実施形態では、そのような細胞系は、配列番号21によって表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号26によって表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有するヒト化抗体を発現する。
特定の一実施形態では、本発明の細胞系は例23〜26に記載され、受託番号CNCM I−4356の下で寄託されている。
本明細書で用いる「宿主細胞」は、組換えDNA技術を用いて構築されるベクターによって組換えで形質転換することができる細胞を指す。薬剤耐性又は他の選択可能なマーカーは、形質転換体の選択を容易にすることを一部意図する。さらに、選択可能なマーカー、例えば薬剤耐性マーカーの存在は、培養物培地中で汚染微生物が増殖することを防止することに役に立つことができる。形質転換された宿主細胞のそのような純粋培養は、生存のために誘導される表現型を必要とする条件下で細胞を培養することによって得られる。
「細胞」、「宿主細胞」又は「組換え体細胞」は、本明細書で互換的に用いられる用語である。そのような用語は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の後代又は可能な後代も指すものと理解される。突然変異又は環境の影響のために後の世代で特定の変化が起こることがあるので、実際、そのような後代は親細胞と同一でないかもしれないが、本明細書で用いる用語の範囲になお含まれる。
本明細書で用いるように、用語「トランスフェクション」は、核酸媒介性の遺伝子導入による、レシピエント細胞への核酸、例えば発現ベクターの導入を意味する。本明細書で用いる「形質転換」は、外来性のDNA又はRNAの細胞内取り込みの結果として細胞の遺伝子型が変わる過程を指す。
本発明は、配列番号21によって表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号26によって表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域の両方を有するヒト化抗体の発現のための発現ベクターをさらに提供する。
具体的な実施形態では、本発明は、配列番号21によって表されるアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変領域の発現のための発現ベクターを提供する。そのようなベクターの例は、図2及び例2に示されるpANTVhG1/4ベクターである。
他の実施形態では、本発明は、配列番号26によって表されるアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変領域の発現のための発現ベクターを提供する。そのようなベクターの例は、図2及び例2に示されるベクターpANTVKである。
最も好ましくは、本発明は、配列番号21によって表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号26によって表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域の両方を有するヒト化抗体の発現のための発現ベクターを提供する。そのようなベクターの例は、図26及び例22に示されるpPRO14ベクターである。
1つの特に好ましい発現ベクターは、図26に示される哺乳動物の発現プラスミドpPRO14であってよい。他の好ましい発現ベクターは、図2に示される哺乳動物の発現ベクターpANTVK及びpANTVhG1/4である。
一般的に発現ベクターは、所望の遺伝子又はその断片、及び適する宿主細胞で認識され、所望の遺伝子の発現を実行する、作動可能に連結した遺伝子制御エレメントを含む、自己再生性のDNA又はRNA構築物である。これらの制御エレメントは、適する宿主の中で発現を実行することが可能である。一般に、遺伝子制御エレメントは、原核生物のプロモーター系又は真核生物のプロモーター発現制御系を含むことができる。これには、転写プロモーター、転写の開始を制御する任意選択のオペレーター、RNA発現レベルを上昇させる転写エンハンサー、適するリボソーム結合部位をコードする配列、RNAスプライス部位、転写及び翻訳を終結する配列などが一般的に含まれる。発現ベクターは、宿主細胞から独立してベクターが複製することを可能にする複製起点を通常含む。
ベクターは、適当な制限部位、ベクター含有細胞の選択のための抗生物質耐性又は他のマーカーをさらに含むことができる。プラスミドは、ベクターの中で最も一般に用いられる形であるが、同等な機能を果たし、当技術分野で公知であるか、公知になる他の形のベクターは、本明細書での使用に適している。例えば、参照により本明細書に組み込まれている、Pouwelsら、Cloning Vectors:a Laboratory Manual(1985及び補遺)、Elsevier、N.Y.;及びRodriquezら(編)Vectors:a Survey of Molecular Cloning Vectors and their Uses、Buttersworth、Boston、Mass(1988)を参照。
配列番号9、10及び11によってコードされるキメラ抗ペプチド6抗体を、本発明がさらに包含することに留意するべきである。これらの抗体は、配列番号1の重鎖可変領域及び配列番号2の軽鎖可変領域を有する。これらの抗体がマウス可変領域及びヒト定常領域を運び、参照又は親抗体とも呼ばれることに留意するべきである。特定の実施形態によると、本発明のマウス抗ペプチド6抗体、キメラ又はヒト化抗体は、その抗体が米国特許第7,488,476号でMF9と命名されるマウスモノクローナル抗体と同一でないという条件で、本明細書に記載される重鎖及び軽鎖可変領域を含む。
キメラ抗体は、当技術分野で公知の組換えDNA技術によって生成することができる。例えば、マウス(又は他種)のモノクローナル抗体分子のFc定常領域をコードする遺伝子は、マウスFcをコードする領域を除去するために制限酵素で消化され、ヒトFc定常領域をコードする遺伝子の同等部分が置換される。
したがって、別の態様によれば、本発明は、配列番号15を含むポリペプチドに特異的に結合し、ヒト免疫グロブリン定常領域及びマウス免疫グロブリン可変領域を含むキメラマウスモノクローナル抗体であって、前記可変領域は、配列番号2によって表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域及び配列番号1によって表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む上記抗体を提供する。
一部の実施形態によると、本発明は、配列番号15を含むポリペプチドに特異的に結合する、本発明による少なくとも1つの単離及び精製されたキメラモノクローナル抗体の有効量を有効成分として含む組成物を提供する。
より具体的な実施形態によると、本発明は、免疫関連障害の治療、予防処置改善、又はその開始の遅延のための医薬組成物であって、配列番号15を含むポリペプチドに特異的に結合する、本発明による少なくとも1つの単離及び精製されたキメラモノクローナル抗体の治療的有効量を有効成分として含む上記組成物を提供する。
本発明は、免疫関連障害の治療、予防処置改善、又はその開始の遅延のための方法であって、それを必要とする対象に、配列番号15を含むポリペプチドに特異的に結合する、本発明による少なくとも1つの単離及び精製されたキメラモノクローナル抗体の治療的有効量を投与する段階を含む上記方法も企図する。
他の実施形態によると、本発明は、配列番号15を含むポリペプチドに特異的に結合する本発明による少なくとも1つの単離及び精製されたキメラモノクローナル抗体、及びメチルプレドニソン(MPS)、抗TNF剤、エタナーセプト(Enbrel)、インフリキシマブ(Remicade)アダリムマブ(Humira)及びセルトリズマブペゴール(Cimzia)、抗IL−6剤、トシリズマブ(Actemra)、抗IL−1受容体剤、キネレット(kineret)(アナキンラ(Anakinra))、抗IL−1受容体剤、アナキンラ(anakinra)(キネレット(Kineret))、CTLA−4−Ig、アバタセプト(Orencia)、抗CD20剤、リツキシマブ(MabThera;Rituxan)、メトトレキセート、任意のコルチコステロイド誘導体並びに任意のシグナル伝達経路、特に抗ペプチド6によって誘導される経路とは異なる経路、例えばIL−10誘導に関与する任意の経路を誘導する任意の抗炎症剤からなる群から選択される少なくとも1つの抗炎症剤を含む組合せ組成物を提供する。
特定の実施形態によると、本発明は、免疫関連障害の治療、予防処置、開始の遅延又は改善のための組成物の調製における、配列番号15を含むポリペプチドに特異的に結合する本発明による少なくとも1つの単離及び精製されたキメラモノクローナル抗体の治療的有効量の使用を考慮する。
さらになお、本発明は、キットでの、並びに診断適用のための本明細書に記載されるキメラ抗体の使用を提供する。
発明者らは、血清中の抗ペプチド6抗体の力価が、健康な対象と比較して慢性関節リウマチ患者で有意に低いことを前に実証した。したがって、発明者らは、慢性関節リウマチ、又は実際は炎症性障害全般のためのマーカーとしての、血清抗ペプチド6の使用を企図する。
したがって、さらなる態様では、本発明は、哺乳動物の対象で、免疫障害、特に抗炎症サイトカインの発現、特にIL−10発現の減少を含むものを含む免疫関連障害の検出及び監視のための診断キット及び方法を提供する。そのような免疫関連障害には、関節炎、IBD(例えば、クローン病及び潰瘍性大腸炎)、乾癬、糖尿病及びMSが含まれる。より具体的には、本発明によって提供される診断方法及びキットは、免疫関連障害のためのマーカーとして試験生体試料中の抗ペプチド6抗体のレベルを用いる。健康な対照でのレベルと比較した試験試料中の抗ペプチド6抗体のレベルの低下は、試料が免疫関連障害を患っている対象のものであることを示す。ヒト化抗ペプチド6抗体による治療が有益である可能性がある、特定の炎症性疾患を患っている対象を特定することによって、本発明の診断キット及び方法が「オーダーメイド」の又はカスタマイズされた療法の手段をさらに提供することを認識するべきである。
本発明により提供される診断方法及びキットは、競合抗体結合アッセイを構成することが認識され、そこで、対象の試料、特に血清試料に含まれる抗ペプチド6抗体の量は、前記試料と既知量の単離及び精製されたペプチド6とのインキュベーション、及び続く同じペプチド6と、任意選択で検出可能な部分又は標識で標識された、既知量の本発明のヒト化抗ペプチド6抗体とのインキュベーションによって決定される。したがって、対象の前記試料中の抗ペプチド6抗体の量は、ペプチド6に結合した標識抗ペプチド6抗体の減少に比例する。
一実施形態によると、本発明は、哺乳動物の対象での、ヒト化抗ペプチド6抗体による治療に応答しそうな免疫障害の検出及び監視のための、以下の段階を含む診断方法を提供する。(a)抗ペプチド6抗体への前記ペプチドの結合を可能にする好適条件下で、試験試料を所定量の単離されたペプチド6(配列番号15)と接触させる段階、(b)(a)の試料−ペプチド6混合物に、任意選択で検出可能な標識で標識された所定量の本発明のヒト化抗ペプチド6抗体を加える段階。段階(a)及び(b)は、順番に又は同時に実行されてもよいことを認識するべきである、(c)適する手段によって試料中のペプチド6へのヒト化抗ペプチド6抗体の結合を判定する段階、試料中の抗ペプチド6抗体の結合はペプチド6への本発明のヒト化抗ペプチド6抗体の結合と競合するので、試料中の抗ペプチド6抗体によるヒト化抗ペプチド6抗体の置換は、ペプチド6−ヒト化抗体結合の減少に反映される、
(d)ペプチド6及び本発明の標識ヒト化抗体の連続希釈の抗ペプチド6抗体の連続希釈による置換によって確立される標準曲線からの外挿によって、試験試料中の抗ペプチド6抗体の量を評価する段階。試験試料中の抗ペプチド6抗体の量の減少は、その試料が、ヒト化抗ペプチド6抗体による治療が有益となりそうな免疫関連障害を患っている対象のものであることを示す。
具体的な一実施形態によると、試料は、所定量の、固体支持体に結合されている単離されたペプチド6と一緒にインキュベートされ、続いて所定量の、検出可能な標識で標識された本発明のヒト化抗ペプチド6抗体が添加される。
本明細書及び請求項で、用語「試料」は生物的試料を含むものとする。生物的試料は哺乳動物から、特にヒト対象から得ることができ、流体、固体(例えば、大便)又は組織を含むことができる。用語「試料」には、血清、尿、血液、乳、脳脊髄液などの体液、体腔の洗浄から得られる洗浄液、痰、膿が含まれてもよい。アプリオリに液体でない一部の試料は、液体緩衝液と接触させられ、それが次に本発明の診断方法によって用いられる。
生物的試料は様々な科の家畜動物の全て、並びに、それらに限定されないが、有蹄類、クマ、魚類、ウサギ(lagamorph)、齧歯動物などの動物を含む、自然のままの動物又は野生動物から得られてもよい。好ましくは、試料は液体、特に体液試料、最も好ましくは血清試料であり、哺乳動物、特にヒト起源のものである。
本発明は、哺乳動物対象での免疫障害の検出及び監視のためのキットをさらに提供する。本発明のキットは、本発明の抗ペプチド6抗体を用いる治療に応答する検査患者の潜在的応答性に関する情報をさらに提供することができる。本発明のキットは、以下のものを含むことができる。(a)試験対象から生物的試料を得るための手段、(b)検出可能な部分で標識されたヒト化抗ペプチド6抗体、(c)単離されたペプチド6、任意選択で固体支持体に結合される、(d)標識ヒト化抗ペプチド6抗体と固体支持体に結合されたペプチド6との間で形成される免疫複合体の量を検出するための手段、(e)非標識抗ペプチド6抗体の連続希釈による、ペプチド6及び本発明の標識ヒト化抗体の連続希釈の置換によって確立される標準曲線(f)好ましくは先に記載される本発明の方法によって、前記試料中の抗ペプチド6抗体の存在及び量の検出を実行するための説明書。
本発明のキットで使用するために適することができる前記固体支持体は、一般的に液相に実質的に不溶性であるものと理解される。本発明の固体支持体は、特定の種類の支持体に限定されない。むしろ、多数の支持体を利用でき、それらは当業者に公知である。したがって、有用な固体支持体には、エーロゲル及びヒドロゲル、樹脂、ビーズ、バイオチップ(薄膜を塗布したバイオチップを含む)、微流動チップ、シリコンチップなどの固体マトリックス、好ましくはマルチウェルプレート(マイクロタイタープレート又はマイクロプレートとも呼ばれる)が含まれる。
本明細書に記載される診断適用のために、本発明のヒト化抗体は検出可能な標識にコンジュゲートされてよいことに留意するべきである。本発明による抗体が検出可能に標識されてよい方法の1つは、同じものを酵素に連結し、エンザイムイムノアッセイ(EIA)で用いることによる。この酵素は、適当な基質にその後曝露させたとき、今度は、例えば分光光度的、蛍光定量的又は視覚的手段によって検出することができる化学部分を生成するような方法で基質と反応する。抗体を検出可能に標識するために用いることができる酵素には、リンゴ酸脱水素酵素、ブドウ球菌のヌクレアーゼ、デルタ−5−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、アルファ−グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ及びアセチルコリンエステラーゼが含まれるが、これらに限定されない。検出は、酵素のために発色性基質を使用する比色法によって達成されてもよい。検出は、同じように調製された標準と比較した基質の酵素反応の程度の目視比較によって達成されてもよい。
検出は、様々な他のイムノアッセイのいずれかを用いて達成されてよい。例えば、本発明の抗体又は抗体断片の放射性標識によって、ラジオイムノアッセイ(RIA)を用いることによって試料中の抗ペプチド6抗体のレベルを検出することができる。放射性同位元素は、γカウンター若しくはシンチレーションカウンターの使用といった手段又はオートラジオグラフィーによって検出することができる。
或いは、本発明に従って、蛍光化合物、蛍光放射金属、化学発光化合物又は生物発光化合物で抗体を標識することもできる。
本発明の診断及び方法は、本発明の抗体及び試験試料に含まれる抗体のペプチド6との相互作用のために、並びに2つの抗体の競合結合アッセイのために適する緩衝液及び溶液を両方とも任意選択で利用すると認識される。緩衝液は、本発明の方法による試料分析の前の、固体及び半固体試料の溶解のためにも有用である。
本発明の診断キット及び方法による、本発明の抗体及び対象試料に存在する抗体の競合的結合は、特定のpH及びモル浸透圧濃度条件の維持を通常必要とする。一部の界面活性剤及び溶媒の存在又は非存在は、結合効率を変化させることもできる。pHは、比較的中性レベルに、例えば約6から約9、及び一部の実施形態では約7に一般的に維持される。モル浸透圧濃度は、塩、例えば塩化ナトリウム、塩化カリ、塩化マグネシウム及び他の塩の添加によって通常調整される。結合条件の調整のために用いることができる界面活性剤及び溶媒の一部の非限定例には、ツイーン20、Triton X100、PEG、DMSO、Nonidet P−40その他が含まれる。所望のpH及びモル浸透圧濃度を維持するために用いることができる生物学的に適合する緩衝液の一部の非限定例には、ボレート緩衝液、リン酸緩衝食塩水(PBS)、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(「MES」)、トリス−ヒドロキシメチルアミノメタン(「トリス」)、クエン酸塩緩衝液などが含まれる。
本明細書で用いられる全ての科学用語及び技術用語は、特に明記しない限り当技術分野で一般に用いられる意味を有する。本明細書に提供される定義は、本明細書でしばしば用いられる特定の用語の理解を促進するためのものであり、本開示の範囲を限定するものではない。
本発明は、例示するだけであり本発明をいかなる形であれ限定するものではない、以下の実施例に基づいてさらに詳細に記載される。本教示に照らし、本発明の多くの改変形及び変異形が可能である。したがって、添付の請求項の範囲内で、具体的に記載されるものと別の方法で本発明を実施することができることが理解される。
開示及び記載されたが、そのような方法段階及び組成物は多少変動することがあるので、本発明は、本明細書に開示される特定の実施例、方法段階及び組成物に限定されないことを理解するべきである。本発明の範囲は添付の請求項及びその等価物だけによって限定されるので、本明細書で用いられる用語は、特定の実施形態を記載することだけのために用いられ、限定するものではないことも理解するべきである。
本明細書及び添付の請求項で用いられるように、内容が明らかに別途指示しない限り、単数形「a」、「an」及び「the」には複数形が含まれる点に留意しなければならない。
文脈上特に必要がない限り、本明細書並びに以下の実施例及び請求項全体で、単語「含む(comprise)」並びに「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」などの変異形は、明示される整数若しくは段階又は整数若しくは段階の群が含まれることを意味するが、任意の他の整数若しくは段階又は整数若しくは段階の群が除外されることを意味しないものと理解される。
以下の実施例は、本発明の態様の実施において発明者らによって使用される技術を代表するものである。これらの技術は本発明の実施のための好ましい実施形態の例であるが、当業者は、本発明の精神及び意図する範囲を逸脱しない範囲で、本開示を考慮して多数の改変を加えることができることを認識することを理解するべきである。
実験手順
さらなる詳述なしで、前の記載を用いて、当業技術者が本発明をその最大限まで利用することができると考えられている。したがって、以下の好ましい具体的な実施形態は、単に例示的であって、請求されている発明をいかなる方法でも限定するものではないと解釈されるべきである。
基本的にSambrookら、Molecular cloning:A laboratory manual、Cold Springs Harbor Laboratory、New York(1989、1992)及びAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley and Sons、Baltimore、Maryland(1988)の通りに、本明細書で具体的に記載されていない当技術分野で公知の標準分子生物学プロトコルに一般的に従う。
基本的にOrganic syntheses:1〜79巻、編集者は異なる、J.Wiley、New York、(1941〜2003);Gewertら、Organic synthesis workbook、Wiley−VCH、Weinheim(2000);Smith & March、Advanced Organic Chemistry、Wiley−Interscience;第5版(2001)の通りに、本明細書で具体的に記載されていない当技術分野で公知の標準有機合成プロトコルに一般的に従う。
基本的に、Pergamon Pressによって出版された、様々な著者及び編集者によるシリーズ「Comprehensive Medicinal Chemistry」の通りに、本明細書で具体的に記載されていない当技術分野で公知の標準薬化学方法に一般に従う。
さらなる推敲なしで、前の記載を用いて、当業技術者が本発明をその最大限まで利用することができると考えられている。したがって、以下の好ましい具体的な実施形態は、単に例示的であって、請求されている発明をいかなる方法でも限定するものではないと解釈されるべきである。
基本的にVanderkerken K The 5T2MM murine model of multiple myeloma:maintenance and analysis。[Methods Mol.Med.113巻:191〜205頁(2005);Epstein J.The SCID−hu myeloma model。Methods Mol.Med.113巻:183〜90頁(2005)]の通りに、本明細書で具体的に記載されていない当技術分野で公知の標準分子生物学プロトコルに一般的に従う。
抗体
*マウス抗ペプチド6抗体は、ハイブリドーマ技術によってペプチド6で免疫化されたBalb/Cマウスから開発されたマウスモノクローナル抗体であり、IgMアイソタイプである。
*キメラ抗ペプチド6 IgG1マウス抗体は、例1に記載されるように、キメラ化技術を用いてAntitope Ltd.によって開発された。生じたキメラ抗体は、マウス抗体のマウス可変領域(配列番号1及び2並びに図1A、1Bによって表される)及びIgG1アイソタイプのヒト定常領域で構成される。
*マウス参照抗体に基づくヒト化抗ペプチド6抗体は、例2に記載されるように、Composite Human Antibody(商標)技術(国際公開第2006/082406号に記載される)を用いてAntitope Ltd.によって作製された。
FITC標識ヒト化抗体は、FACS分析のために用いられた。
一部の実施形態では、用語Proximabは、MT HSP65のペプチド6エピトープに対するモノクローナル抗体を記載するために用いることができる。
*抗CD14−PE(Sigma)
*抗CD14−APC(Miltenyi Biotech)
*HRP標識マウス抗ヒトカッパ軽鎖(Sigma、カタログ番号A7164)
*ヤギ抗マウスIgMペルオキシダーゼ(Sigmaカタログ番号A8786)
*ヤギ抗ヒトIgGペルオキシダーゼ(Sigmaカタログ番号A7164)
細胞系
*CHO dhfr−(ECACCカタログ番号94060607、ロット番号05G020)
*THP−1(ATCC番号TIB−202)単球細胞
*RAWマウスマクロファージ
*NSO細胞(ECACC 85 110503、Porton、UK)
制限酵素
*BssH II(New England Biolabsカタログ番号R0199)
*BamH I(New England Biolabsカタログ番号R0136)
*Mlu I(New England Biolabsカタログ番号R0198)
*Hind III(New England Biolabsカタログ番号R0140)
*SspI(New England Biolabsカタログ番号R0132)
培養物培地及び追加物
*CD DG44(Invitrogen、カタログ番号12610−010)
*Glutamax(Invitrogen、カタログ番号35050)
*DMEM(Invitrogen、カタログ番号41966)
*透析されたFBS(Invitrogen、カタログ番号26400)
*H/T(Invitrogen、カタログ番号11067)
*CD−OptiCHO(Invitrogen、カタログ番号12681−029)
*FBS(Ultra low IgGカタログ番号16250−078 Invitrogen、Paisley UK)
*ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen、Paisley UK)
*DMSO(Sigma、カタログ番号D2650)
*メトトレキセート(Sigma、カタログ番号A6770)
試薬及びキット
*リポフェクトアミン2000(Invitrogen、カタログ番号11668027)
*TMB基質(Invitrogenカタログ番号00−2023)又は(Sigmaカタログ番号T0440)
*Minerva Biolabs Venor(登録商標)GeMマイコプラズマ検出キット(カタログ番号11−1050)
*プロテインAセファロースカラム(GE Healthcareカタログ番号110034−93)
*ヒトIgG1/カッパ又はIgG4/カッパ標準(Sigmaカタログ番号I5154及びI4631)に対するFc捕獲/カッパ鎖検出ELISA(Sigmaカタログ番号I6260及びA7164)
器材
*Binder CB150インキュベーター
*Dynex Technologies MRX TC IIプレートリーダー
*Vi−CELL(商標)XRカウンター(Beckman Coulter)
*6穴組織培養プレート(Corning、カタログ番号3516)
*MaxiSorp96ウェル平底マイクロタイタープレート(Fisher、カタログ番号DIS−971−030J)
*エーレンマイヤーフラスコ(Corning、カタログ番号431407)
動物
*アジュバントによって誘導された関節炎モデルについては、6〜8週齢の雌近交系ルイスラット(Harlan Laboratories、Israel)に、CFA(Difco)中の1mgのヒト結核菌(Mycobacterium Tuberculosis)(MT)H37Ra(Difco、Detroit、MI)を尾の基部に皮内注射した。
*コラーゲンによって誘発された関節炎モデルについては、9週齢雄DBA/1マウス(Harlan Laboratories、Israel)を用いた。マウスに、CFA(Difco)で乳化した200μgのコラーゲンII型を尾の基部にs.c.注射した。3週間後、マウスに、同じ濃度のコラーゲンIIをs.c.により追加注射した。
*TNBS大腸炎モデルについては、50%エタノール中に2.5%の濃度の160μLのハプテン化剤TNBS(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)で、皮膚塗布によってBalb/Cマウスを感作させた。
*Sprague−Dawley(SD)雄ラット、Harlan−Israel施設から購入、糖尿病I型モデルとして用いるためにストレプトゾトシン(70mg/kg)で処置した。
*8週齢雌C57BL/6マウス、MSモデルとして用いるために、5mg/mlの熱死滅ヒト結核菌を含む完全フロイントアジュバント(CFA)で乳化した、125μgのミエリン希突起膠細胞糖タンパク質35−55ペプチド(MOG35−55)を左側の周腰部にs.c.注射することによる。
Cap1のクローニング
Cap1は、THP−1 cDNAから、プライマーCap1bamF
及びcap1xhoyeshstopR
でPCR増幅させた。生じた約1400bpのPCR生成物をPGEMTベクター(Promega)に挿入し、PGEMTに終止コドンを有するCap1が生成された。(配列決定結果は、完全な配列を示す)。
次に、BamHI及びXhoIでCap1をpGEMTベクターから切断した。同じもので切断された改変Pet22bベクター(Novagen)に1400bpバンドを連結させ、N末端に6xHIS及び遺伝子の末端に終止コドンが連なるCap1が生成された。
マウス抗ペプチド6産生ハイブリドーマの生成
6週齢の雌Balb/cマウス又はルイスラットに、完全フロイントアジュバント(CFA)に懸濁させた100μgのペプチド6(配列番号15によって表されるGPKGRNVVLEKKWGAP)を皮下注射した。動物は、不完全フロイントアジュバント(IFA)中のペプチドでさらに2回、3週間の間隔で注射された。ELISAによる抗ペプチド6抗体レベルの測定のために血清を収集し、最高レベルの動物はPBS中の50μgのペプチドによる2連続腹注で処置された。次の日に、脾臓をBALB/c Ig非分泌性骨髄腫NSOと融合させた。ペプチド6(配列番号15)を特異的に認識する抗体の存在が特異的ELISAによって上清で検出され、陽性クローンは増殖させた。
抗ペプチド6抗体は、ハイブリドーマ細胞の上清から精製された。精製は、チオ吸着と、続くプロテインGクロマトグラフィー(Adar Biotech、Israel)とによって実施された。抗体の純度は、SDS−PAGEによって確認された。
ヒト化抗ペプチド6抗体のF(ab)2断片の調製
ヒト化VH2/VK3抗ペプチド6抗体のF(ab)2断片は、ペプシン消化に基づくF(ab)2調製キット(Pierce;製造業者の説明書に従って)を用いて生成された。Dylight(商標)抗体標識キット(Pierce;製造業者の説明書に従って)を用いて、F(ab)2断片をFITCで標識した。
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)の調製
ヒト静脈血を健康なドナーから収集し、白血球分画を分離して濃縮するために、Ficol勾配の上に重層させた。遠心分離(1800RPMで30分間)の後、単核バンドを収集し、新しい管に移し、20mlリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、1100RPMで10分の間遠心分離した。2mMグルタミン、100μg/mlストレプトマイシン、100U/mlペニシリン(全ての試薬はBiological Industries、Israelからのもの)及び10%ヒト血清(Sigma)を追加した1mlのRPMI中の1.5×106細胞/ウェルの濃度で、細胞を24穴細胞培養プレートに平板培養した。
蛍光標示式細胞分取(FACS)分析
106のPBMC細胞を、エッペンドルフ管に入れた(PBS中の1%BSA及び1%ヤギ血清(Sigma)の100μlに106細胞)。次に、抗CD14抗体単独と、又はヒト化完全体若しくはF(ab)2抗ペプチド6抗体と一緒に、細胞を4℃で1時間インキュベートした。細胞をPBSで次に洗浄し、染色はLSRIIフローサイトメーター(BD)によって判定された。FCS express3プログラム(De novo)を用いて、データを分析した。
ELISA−ペプチド6への変異体複合抗体の結合
Immulon MaxiSorp、96穴平底マイクロタイタープレート(Fisherカタログ番号DIS−971−030J)を、暗室内でPBS(100μl/ウェル)中の5%グルタルアルデヒドによって室温で一晩前処置し、次にPBS中の10μg/mlのペプチド6(配列番号15)によって4℃で一晩コーティングした。プレートをPBS/0.05%ツイーン20で洗浄し、次に2%BSA/PBSで1時間ブロックした。100μg/mlの開始濃度まで、抗体を2%BSA/PBSで希釈した。プレートに沿って倍加希釈液を作製し、次にプレートを室温で1時間インキュベートした。
各ELISAプレートは、陽性対照としてキメラ抗ペプチド6抗体を含んだ。プレートを洗浄し、PBS/0.05%ツイーン20で1:1000に希釈した100μlヤギ抗ヒトIgGカッパペルオキシダーゼコンジュゲート(Sigmaカタログ番号A7164)を各ウェルに加えた。室温で1時間のインキュベーションの後、プレートを洗浄し、100μl/ウェルのTMB基質(Sigmaカタログ番号T0440)の添加によってアッセイを展開した。50μl/ウェルの3M HClの添加によって反応を止めた。吸光度を450nmで読みとり(Dynex MRX TCIIプレートリーダー)、抗体濃度に対してプロットした。
ELISA−サイトカインレベルの評価
R&D SYSTEMS、Minneapolis MN USAからの特定のキットを利用して、細胞培養又は動物血清中のサイトカインレベルの評価を実施した(製造業者の説明書に従う)。
アジュバントによって誘発される関節炎の誘導及び臨床評価
6〜8週齢の雌近交系ルイスラット(Harlan Laboratories、Israel)に、CFA(Difco)中の1mgのヒト結核菌(MT)H37Ra(Difco、Detroit、MI)を尾の基部に皮内注射した。関節炎の重症度(関節炎指数)は、盲検化されたオブザーバーによって以下の通りに一日おきに評価された。0、関節炎なし;1、関節の発赤;2、関節の発赤及び腫脹。各足の足首及び足根骨−中足骨関節を評価した。16の最大スコアを得ることができる。
アジュバントによって誘発された関節炎での組織病理学評価
ラットを安楽死させ、後肢を切除してホルマリンで固定した。関節をヘマトキシリン及びエオシン(H&E)による染色で染色し、専門の獣医病理学者が評価した。
コラーゲンによって誘発される関節炎の誘導及び臨床評価
9週齢雄DBA/1マウス(Harlan Laboratories、Israel)に、CFA(Difco)に乳化させた200μgのコラーゲンII型を尾の基部にs.c.注射した。3週間後、マウスに、同じ濃度のコラーゲンIIをs.c.により追加注射した。関節炎の重症度は、後足及び前足の足直径をノギスで測定することによって、盲検化されたオブザーバーによって毎日評価された。対照として、コラーゲンを注射されなかったほぼ同じ年齢の4匹のマウスを発明者らは測定した。健康なマウスの平均は、「カットオフ」測定の役目を果たした。追加注射の後の5日目から、健康なマウス(1つ又は複数の足)の平均を超えるスコア値を有するあらゆるマウスを、処置群の1つに割り当てた。
ハプテン媒介(TNBS)大腸炎の誘導及び臨床評価
50%エタノール中に2.5%の濃度の160μLのハプテン化剤TNBS(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)で、皮膚塗布によってBalb/Cマウスを感作させた。1週後に、50%エタノール中の120μlの1%TNBSを、3.5フランス式カテーテルによって直腸内に投与した。直腸内TNBS投与の3日後にマウスを屠殺した。感作時、直腸内投与時及びその後屠殺まで毎日、動物を秤量した。体重減少及び死後の結腸組織の組織病理を評価することによって、臨床評価を実施した。
TNBS大腸炎での組織病理学評価
4%ホルマリンを含むリン酸緩衝食塩水で組織を固定し、パラフィンに包埋した。切片(5μm)は、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。炎症の程度は、以下の0〜4の評価法を用いて盲検化された病理学者によって評価された。0、炎症の徴候なし;1、低レベルの白血球浸潤;2、中レベルの白血球浸潤;3、高レベルの白血球浸潤、高い脈管密度、腸壁の肥厚化;4、経壁の浸潤、杯細胞の損失、高い脈管密度、強い腸壁肥厚化、水腫。
s.c.及びi.p.投与の後の血清のヒト化抗ペプチド6の薬物動態学的分析
18匹の雄DBA/1マウス(7〜8週齢)を、各々9匹のマウスの2群に分けた。第一の群は500μgのVH2/VK3によりi.p.で、第二の群は500μgのVH2/VK3によりs.c.で、両方とも0日目に処置した。各群を各々3匹のマウスの3つのサブグループに分け、各サブグループの全てのマウスは抗体投与後の同じ日に目から採血した。サブグループ1は0、3及び8日目に採血し、サブグループ2は、1、4及び10日目に、サブグループ3は2日目及び11日目に採血した。実験終了後、マウスを屠殺し、採血し、器官(心臓、脾臓、腎臓、肺及び肝臓)を取り出して4%ホルマリンに24時間インキュベートし、次に80%エタノール(免疫蛍光スライド調製のために最適)に移した。血清を収集し、IL−10及びVH2/VK3含量の測定のために−20℃で保存した。
MSのためのEAEモデル−EAEは、5mg/mlの熱死滅ヒト結核菌を含む完全フロイントアジュバント(CFA)で乳化した、125μgのミエリン希突起膠細胞糖タンパク質35−55ペプチド(MOG35−55)を左側の周腰部にs.c.注射することによって、8週齢雌C57BL/6マウスで誘導される。その直後に、及び48時間後に再び、マウスを0.5mlの百日咳毒素(400ng)でi.p.接種する。7日後に、右側の周腰部に注入されるCFA中のMOG35−55ペプチドのさらなる注射で、マウスにさらに抗原投与する。示すように、本発明のヒト化抗ペプチド6抗体、リツキシマブ又はビヒクル(PBS)でマウスを処置する。
EAE臨床スコアは、以下の通りに評価される。
0−臨床疾患なし、
1−尾の弱さ、
2−矯正を損なうのに十分な後肢の弱さ、
3−1肢が斜向、
4−前肢の弱さを有する対麻痺、
5−四肢麻痺、
6−死。
(例1)
キメラ抗ペプチド6抗体の生成
抗ペプチド6ヒト化抗体の生成の第一段階として、重鎖及び軽鎖可変領域(VH及びVL)配列がマウス抗ペプチド6モノクローナル抗体に由来するキメラ抗体が構築された。マウス抗体の重鎖及び軽鎖可変領域(VH及びVL)配列が決定され、マウス可変領域及びヒトIgG1又はIgG4/カッパ定常領域を含むキメラ抗ペプチド6抗体が生成された。
簡潔には、冷凍バイアルからマウス細胞をうまく復活させ、製造業者の説明書(Promegaカタログ番号Z5400)に従ってmRNA抽出キットを用いて、ハイブリドーマ細胞からmRNAを抽出した。単一の定常領域プライマーを有するマウスシグナル配列のための変性プライマープールを用いて、RT−PCRを実施した。6個の変性プライマープール(表1に示すように、5’プライマー:MuIgV
H5’AからF、並びに3’プライマー:MuIgMV
H3’−1及びMuIgGV
H3’−2)のセットを用いて重鎖可変領域mRNAを増幅させ、8個の変性プライマープール(表1に示すように、5’プライマー:MuIGκV
L5’−AからκG、及びMuIGλV
L5’−A、並びに3’プライマー:MuIgκV
L3’−1及びMuIgλV
L3’−1)のセットを用いて軽鎖可変領域mRNAを増幅させた。50μlの反応混合液には、36.25μlのPCR級の水、5μlの10×NovaTaq緩衝液、5.25μlのdNTP(0.2mMの最終濃度)、2.5μlプライマー(10pmol/μl)及び1μl(1.25U)NovaTaq DNAポリメラーゼ(カタログ番号7103−3)が含まれていた。反応条件は、94℃で1分間の変性、50℃で1分間のアニーリング、72℃で2分間の伸張、及び72℃で6分間の最終伸張を30〜40サイクルであった。増幅生成物は重鎖及びκ軽鎖プライマープールから得られたが、λプライマープールからは得られなかった。したがって、各場合に軽鎖はκクラスターからのものである。クローニング目的のために、VH領域遺伝子は、5’MluI及び3’HindIII制限酵素部位を組み込むように設計されたプライマーを用いて、PCRによって増幅されたことに留意するべきである。VL領域は、BssHII及びBamHI制限酵素部位を組み込むように設計されたプライマーを用いて増幅された。
増幅生成物は、pSTBlue−1 Perfectly Bluntクローニングキット(TB183、カタログ番号70191−3)又はSingle dA Tailingキット(TB059、カタログ番号69282−3)及びpSTBlue AccepTorベクタークローニングキット(TB248、カタログ番号70595−3)にクローニングして、配列決定をした。得られたマウスVH(配列番号1)及びVL(配列番号2)のアミノ酸配列を、図1A〜1Bに示す。表2に提示される配列の簡単な分析は、可変領域配列のいずれも異常でないことを示す。
キメラ抗体の発現
マウス可変領域は、IgG1及びIgG4重鎖のための発現ベクター系にその後移した。より具体的には、VH及びVL領域のPCR生成物は、それぞれMluI/HindIII及びBssHII/BamHI部位でベクターpANTVhG1/4及びpANTVκにそれぞれクローニングした(図2)。pANTVhG1/4及びpANTVκの両方は、ヒトIg発現カセットを含むpAT153ベースのプラスミドである。pANTVhG1/4の重鎖カセットは、下流側ヒトIgG4ポリA領域を有する、hCMVプロモーターによって促進されるヒトゲノムIgG1定常領域遺伝子からなる。pANTVhG1/4は、下流側SV40ポリA領域を有するSV40プロモーターによって促進されるハムスターdhfr遺伝子も含む。
pANTVκの軽鎖カセットは、下流側軽鎖ポリA領域を有するhCMVプロモーターによって促進されるゲノムヒトカッパ定常領域を含む。ヒトIgリーダー配列と定常領域間のクローニング部位は、可変領域遺伝子の挿入を可能にする。
エレクトロポレーションによってこれらの2つのプラスミドでNSO細胞(ECACC 85 110503、Porton、UK)を同時トランスフェクトし、DMEM(Invitrogen、Paisley UK)+5%FBS(Ultra low IgGカタログ番号16250−078 Invitrogen、Paisley UK)+ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen、Paisley UK)+100nMメトトレキセート(Sigma、Poole UK)で選択を実施した。いくつかのメトトレキセート耐性コロニーを特定し、IgG発現に陽性の細胞系を増殖させた。さらに、脂質ベースの送達系によって、CHO−K1細胞を一時的にトランスフェクトした。トランスフェクションの72時間後に、抗体精製のために細胞培地を集めた。プロテインAセファロースカラム(GE Healthcareカタログ番号110034−93)で細胞培養上清からキメラマウス抗体を精製し、適宜、ヒトIgG1/カッパ又はIgG4/カッパ標準(Sigmaカタログ番号I5154及びI4631)に対してFc捕獲/カッパ鎖検出ELISA(Sigmaカタログ番号I6260及びA7164)を用いて定量化した。キメラマウス−ヒトVκ、VH IgG4及びVH IgG1の完全なベクター核酸配列は、配列番号9、10及び11によってそれぞれ表される。
ペプチド6へのキメラ抗体の結合
参照マウスモノクローナル抗体と比較して、ペプチド6(配列番号15)へのキメラマウスIgG1抗体の結合を、ELISAによって評価した。抗体を300μg/ml(30μg/ウェル)の開始濃度まで2%BSA/PBSで希釈し、次にプレート全体に倍希釈した。10μg/ml(100μl/ウェル)ペプチド6でプレコートしたNunc Immuno MaxiSorp96穴平底マイクロタイタープレート(Fisherカタログ番号DIS−971−030J)の上で、これらの抗体希釈溶液を室温で1時間インキュベートした。適当な二次抗体を100μl/ウェルで加えた。ヤギ抗マウスIgMペルオキシダーゼ又はヤギ抗ヒトIgGペルオキシダーゼ。室温でさらなる1時間のインキュベーションの後、アッセイを100μl/ウェルのTMB基質(Sigmaカタログ番号T0440)の添加によって展開させた。50μl/ウェルの3M HClの添加によって反応を止めた。
吸光度を450nmで読みとり(Dynex MRX TCII)、抗体濃度に対してプロットした。図3に示すように、キメラマウス結合曲線は最も高い濃度でプラトーに達せず、したがって正確なED50値は決定されなかった。しかし、マウスモノクローナル参照抗体(図3A)の結合との比較は、キメラマウス抗体(図3B)が参照抗体よりも高い効率で結合することを示した。さらに、五量体IgMからモノマーのIgGへの転換の結果としての結合効率の減少はなかったようである。
(例2)
マウス抗ペプチド6抗体のComposite Human Antibody変異体の生成
マウスモノクローナル抗体のために、次に抗ペプチド6Composite Human Antibodyを生成した。一般に、ヒト可変領域(V領域)配列のセグメントは、無関係なヒト抗体配列データベースから供給された。各選択された配列セグメント(並びにセグメント間の接合部)をMHCクラスIIに結合する能力について試験し、T細胞エピトープを避けるように全ての最終Composite Human Antibody配列変異体を設計した。Composite Human AntibodyのV領域遺伝子は、ヒト配列セグメントの組合せをコードする合成オリゴヌクレオチドを用いて生成された。ヒト定常領域を含むベクターに次にこれらをクローニングし、抗体を生成し、標的抗原への結合について競合ELISAで試験した。
Composite Human Antibody可変領域配列の設計
複合ヒト配列を造るために、マウス配列並びに異なる天然に存在するヒトVH及びVL配列の断片の比較、並びにそのようなヒト断片の選択によって複合ヒトVH及びVL配列を設計した。より具体的には、Swiss PDBを用いてマウスモノクローナル抗体V領域の構造モデルを作製し、抗原への抗体の結合に関与しそうなマウスV領域の重要な「制約」アミノ酸を特定するために分析した。したがって、抗体結合に潜在的に関与するとみなされた、参照マウス抗体の対応する位置の特定のアミノ酸の存在のために、ヒトVH及びVL配列断片の選択が制約された。CDRの中に含まれる残基(Kabat及びChothiaの両方の定義を用いる)が、いくつかのFR(フレームワーク)残基と一緒に関連するとみなされた。より具体的には、VHについては、制約アミノ酸は以下の通りである。H22位のCys、H23位のSer、H26位のGly、H27位のPhe、H28位のSer、H29位のLeu、H30位のSer、H31位のThr、H32位のSer、H33位のAsn、H34位のMet、H35位のGly、H35A位のVal、H35B位のGly、H48位のLeu、H50位のHis、H51位のIle、H52位のLeu、H53位のTrp、H54位のAsn、H55位のAsp、H56位のSer、H57位のLys、H58位のTyr、H59位のTyr、H60位のAsn、H61位のPro、H62位のAla、H63位のLeu、H64位のLys、H65位のSer、H92位のCys、H95位のMet、H96位のGly、H97位のGly、H98位のTyr、H99位のTyr、H100位のGly、H100A位のAsn、H100B位のTyr、H100C位のGly、H100D位のTyr、H100E位のTyr、H100F位のAla、H100G位のMet、H101位のAsp及びH102位のTyr、並びに任意選択でH49位のLeu、H74位のTyr、H11位のIle、H41位のSer及びH108位のSer。VKについては、制約アミノ酸は以下の通りである。L1位のGln、L23位のCys、L24位のThr、L25位のAla、L26位のSer、L27位のSer、L27A位のSer、L28位のVal、L29位のSer、L30位のSer、L31位のSer、L32位のTyr、L33位のLeu、L34位のHis、L47位のTrp、L50位のSer、L51位のThr、L52位のSer、L53位のAsn、L54位のLeu、L55位のAla、L56位のSer、L71位のTyr、L88位のCys、L89位のHis、L90位のGln、L91位のTyr、L92位のHis、L93位のArg、L94位のSer、L95位のPro、L96位のPro及びL97位のThr、並びに任意選択でL21位のMet、L10位のIle及びL80位のAlaの少なくとも1つ(Kabatナンバリング)。参照マウス抗体のVH及びVK配列は、CDRの近くにいくつかの一般的なヒトFR残基モチーフを含むが、両鎖のCDR1及び2モチーフは多くのマウス抗体に同等であることが見出された。一般に、上記の分析から、ヒト化抗体のための複合ヒト配列は、CDR以外は広い寛容域の代替物で作製することができるが、CDR配列の中では狭いメニューの可能な代替残基だけでしか作製することができないと考えられた。いくつかのヒト抗体からの対応する配列セグメントを組み合わせて、マウス配列のそれらに類似するか同一であるCDRを作製することができることを、予備分析は示した。CDR以外の及び連なる領域のために、広い選択肢のヒト配列セグメントが、新規Composite Human Antibody可変領域の可能な構成成分として特定された。
エピトープ回避及び変異体の設計
上記の分析に基づき、ヒトMHCクラスII対立遺伝子へのペプチド結合の分析のためにiTope(商標)技術(PCT/GB2007/000736に記載される)を用い、及び既知の抗体配列関連のT細胞エピトープのTCED(商標)(T細胞エピトープデータベース、Antitope Ltd.)データベースを用いて、抗ペプチド6マウスに基づくComposite Human Antibody変異体を作製するために用いることができた配列セグメントの大きな予備セットを選択し、分析した。かなりのヒト以外のMHCクラスII結合ペプチドが特定されたか、TCED(商標)に対してかなりのヒットを記録した配列セグメントは廃棄された。これはセグメントのセットの縮小をもたらし、これらの組合せは、セグメント間の接合部が潜在的なT細胞エピトープを含まないことを確実にするために、上記のように再び分析された。図4でも例示されるように、合成のための重鎖及び軽鎖可変領域配列を生成するために、表3に提示される選択されたセグメントを次に組み合わせた。
完全長合成V領域を与えるために、アニールされ、連結され、PCR増幅された一連の重複オリゴヌクレオチドを用いて、最初の変異体1Composite Human Antibody(商標)のVH及びVK領域遺伝子を合成した。以降のComposite Human Antibody配列変異体は、鋳型として最初の変異体1を用いて、長く重複するオリゴヌクレオチド及びPCRを用いて構築された。クローニングのための制限酵素部位を含むように、隣接ヌクレオチド配列も遺伝子の両端に加えられた。VH遺伝子は、それぞれMluI及びHindIII制限部位を含むさらなる短い5’及び3’配列を組み込んだ。MluI部位はシグナル配列に位置し、HindIII部位は、VH遺伝子スプライスドナー部位の直下の最初のイントロンに位置する。VK遺伝子は、BssHII制限部位を含むさらなる短い5’配列、及びBamHI制限部位を組み込んでいる伸長した3’配列を組み込んだ。BssHII部位はシグナル配列に位置し、BamHI部位は、VK遺伝子スプライスドナー部位の32ヌクレオチド下流のイントロンに位置する。隣接配列を図5に、ベクターの図を図2に示す。4つの重鎖及び3つの軽鎖が構築された。図6は、これらの変異体のアミノ酸配列並びにコード核酸配列を提示する[それぞれ配列番号20、21、22及び23(アミノ酸配列)並びに27、28、29及び30(核酸配列)によって表される重鎖可変領域VH1〜4、それぞれ配列番号24、25、26(アミノ酸配列)及び31、32、33(核酸配列)によって表される軽鎖可変領域VK1〜3]。
配列の確認及び増殖のために、合成された遺伝子をT/Aクローニングベクターにクローニングした。精製されたVH遺伝子ベクターDNAはMluI及びHindIIIで消化し、精製されたVK遺伝子ベクターDNAはBssHII及びBamHIで消化し、得られた断片はアガロースゲルで分離した。変異体遺伝子バンドをゲルから切り取り、精製し、同じように消化、精製された発現ベクターDNAに連結させた。大腸菌XL1−ブルーへの形質転換の後、挿入断片の存在についてコロニーをPCRでスクリーニングした。陽性のコロニーを選択し、増殖させ、ベクターDNAを精製し、配列決定をして、挿入された遺伝子の同一性を確認した。1:2のモル比で合計30μgのDNAを混合し、制限酵素SspIでの消化による線状化によって、VH及びVKが確認されたDNA調製物をNS0細胞へのトランスフェクションのために調製した。消化されたDNAをエタノール沈殿させ、50μlのPBS、pH7.4に再懸濁させた。
変異体抗体の発現及び精製
複合重鎖(VH1〜4)及び軽鎖(Vk1〜3)の全ての組合せ(すなわち合計12の対合)を、エレクトロポレーションを通してNS0細胞に安定的にトランスフェクトし、200nMメトトレキセート(Sigmaカタログ番号M8407−500MG)を用いて選択した。各構築物のメトトレキセート耐性コロニーをIgG発現レベルについて試験し、最良の発現系を選択して、液体窒素の下で冷凍した。
プロテインAセファロースカラム(GE Healthcareカタログ番号110034−93)でIgG1変異体を細胞培養上清から精製し、表4に示すように、予測されたアミノ酸配列に基づく吸光係数、Ec
(0.1%)を用いてOD
280nmによって定量化した。2mgを超える各抗体を、SDS PAGEによって精製、分析した。重鎖及び軽鎖の予測されたサイズに対応するバンドが観察され、いかなる汚染の証拠もなかった(図示せず)。
ペプチド6への変異体抗体の結合
実験手順に示すように、キメラマウス−ヒト抗体と比較したペプチド6へのヒト化IgG1変異体の各々の結合を、ELISAによって評価した。図7に示すように、全ての抗体変異体は、少なくともキメラマウス−ヒト抗体と同程度にペプチド6に結合し、いくつかはかなりよりよく結合するようであった。図に示すように、ほとんどの場合曲線のプラトーに到達せず、一部の抗体については50%最大シグナル値が得られなかったので、キメラ抗体及びヒト化変異体の結合はED50値の計算によって定量化することができなかった。
それでも、変異体間の相違は、見かけの結合によって見分けられた。VH1を含む変異体が一貫して高いバックグラウンド結合を与え、したがって好ましい変異体とみなすことができない点に発明者らは留意した。結合(図7)及び配列データの両方を考慮すると、VH2/VK1、VH2/VK2、VH2/VK3及びVH3/VK2は、4つのリード候補であると考えられる。これらの中で、VH2/VK2及びVH2/VK3は明らかに最良の結合剤であり、同じプレート上でVH2/VK2と直接比較したとき、VH2/VK3は以降の実験においてかろうじて最良の結合を与えた(データ示さず)。
要約すると、本発明で示すように、無関係なヒト抗体可変領域に全体が由来するアミノ酸配列セグメントから、ペプチド6に特異的な複合Human Antibodiesが構築された。Composite Human Antibody変異体の全てのCDR及びフレームワーク領域は、複数の無関係なヒト配列セグメント(ヒト配列データベースから供給される)を含み、全てのComposite Human AntibodyはT細胞エピトープを避けるように特に設計された。4系統の変異体が選択され、いくつかはキメラ参照抗体と比較して増加した結合を有することが実証された。
(例3)
キメラモノクローナル抗ペプチド6 IgG抗体は、ヒトPBMCからのIL−10の分泌を誘導する
キメラマウス−ヒト抗ペプチド6 IgG抗体がペプチド6に結合して(図3)、PBMCでIL−10の分泌を誘導する(図8)ことを示して、発明者らはIL−10分泌のin vitro用量依存性をさらに分析した。ヒトPBMCを健康なドナーから収集し、様々な用量のキメラマウス−ヒト抗ペプチド6抗体と48時間インキュベートした。無処置の細胞は、対照の役目を果たした。上清を収集し、IL−10のELISA検出キット(R&D systems)で分析した。図8に示すように、無処置の細胞との比較でキメラ抗ペプチド6抗体で処置した細胞から分泌されたIL−10の有意な増加があり、さらに、初回量応答効果が見られる(20及び50μg/ml)。
(例4)
キメラモノクローナル抗ペプチド6 IgG抗体は、確立されたアジュバント誘発関節炎(AA)を抑制する
発明者らは、確立された関節炎の実験モデルで、キメラマウス−ヒト抗ペプチド6 IgG抗体のin vivo効果を次に検討した。関節炎を誘導するために50匹のルイスラットをCFA中のMTで0日目に免疫化し、関節炎の重症度は臨床評価によって測定された。MTを注射された50匹のラット中、43匹が関節炎を発症した。16日目に、最も高い関節炎スコアをもつ動物を5つの群(6匹のラットが4群及び7匹のラットが1群)に組み合わせ、その平均疾患重症度は6.16と6.7の間の範囲であった。
疾患のピークを受けて、ラットを以下のもので処置した。a.マウス抗ペプチド6抗体(IgM)、b.キメラマウス−ヒト抗ペプチド6抗体(キメラマウス−ヒト、配列番号1及び2)。対照ラットは、生理食塩水及びリツキシマブ(ラットに存在しない分子を標的にするキメラ抗体、F.Hoffmann−La Roche Ltd)で処置した。17日目(疾患のピークに到達する直前)及び21日目に、抗体を5mg/kgの用量で腹腔内(i.p.)に投与した。
実験終了後、ラットを屠殺し、対照処置及びキメラマウス−ヒト抗ペプチド6処置のラットの後足を病理分析のために切除した。
図9に見られるように、マウスIgM及びキメラマウス−ヒトIgG1抗ペプチド6抗体の両方は、AAの重症度を有意に低減させた。対照キメラリツキシマブはAAに影響を及ぼさず、このように、抗体のヒトFc断片を通して発揮される効果は除外することができる。
さらに、図10は、対照抗体リツキシマブで処置したラットと比較したキメラマウス−ヒト抗ペプチド6抗体で処置したラットからの関節の病理所見を表す。キメラ抗ペプチド6抗体で処置されたラットからの関節は正常構造(図10B)を有するが、リツキシマブ処置ラットからの関節は顕著な線維形成及び反応性骨膜骨の形成(図10A)を示す。反応性骨は、線維結合組織によって囲まれる小葉を形成し、固体線維骨塊を形成する。
(例5)
キメラ抗ペプチド6抗体は、Enbrel及びメチルプレドニソン(MPS)に類似した確立されたアジュバント誘発関節炎を抑制し、MPSとの相乗効果を示唆する
抗ペプチド6抗体の免疫調節作用は、それらの治療的能力の基礎である。したがって、これらの抗ペプチド6抗体は、単独の治療法として、又は他の抗炎症剤と組み合わせて用いることができることを認識するべきである。したがって、ルイスラットでAAに及ぼすキメラ抗ペプチド6抗体の影響を、エタナーセプト(Enbrel)又はメチルプレドニソン(MPS)などの抗炎症剤との併用で又は併用なしで発明者らは評価した。
ルイスラットを、0日目にMT/CFAで免疫化した。16日目に、ラットを各々6匹のラットの6群に分けた。17日目に、ラットを以下の通りに処置した。第一群 PBS(i.p.)、第二群 キメラマウス−ヒト抗ペプチド6抗体(i.p.5mg/kg)、第三群 Enbrel(皮下(s.c.)(0.5mg/kg)、第四群 メチルプレドニゾロン(MPS)(s.c.5mg/kg)、第五群 キメラマウス−ヒト抗ペプチド6抗体(i.p.5mg/kg)及びEnbrel(s.c.0.5mg/kg)並びに第六群 キメラマウス−ヒト抗ペプチド6抗体(i.p.5mg/kg)及びMPS(s.c.5mg/kg)。
図11に見られるように、処置の全ては、関節炎の重症度を抑制することに有効であった。キメラマウス−ヒト抗ペプチド6抗体は、単独で投与された場合のMPS又はEnbrelのいずれとも同じように有効であった。さらに、キメラ抗ペプチド6抗体が高用量MPSと一緒に投与されるとき、より高いレベルの疾患抑制が達成され、それによって両者の組合せの潜在的相乗効果を示唆する。
(例6)
ヒト化抗ペプチド6抗体は、ヒトマクロファージ(CD14+細胞)に結合する
例2に記載されるヒト化抗ペプチド6抗体変異体がペプチド6にかなり結合することを示して(図7)、発明者らは、ヒトマクロファージ細胞への結合で最も有効な変異体(VH2/VK3)の影響をさらに分析した。ヒトPBMC(106)を健康なドナーから収集し、抗CD14抗体(APCコンジュゲート)単独で染色したか、ヒト化VH2/VK3抗ペプチド6抗体(FITCコンジュゲート;10μg)で二重染色した。次に抗体の結合について、FACSによって細胞を分析した。CD14マーカーはマクロファージ細胞に存在し、したがって、CD14陽性細胞の染色は、ヒトマクロファージへの染色を指し示している。
図12A及び12Bの密度グラフで提示される結果は、ヒト化VH2/VK3抗ペプチド6抗体が、大部分のCD14陽性の細胞に結合することを示す(マクロファージは単離細胞集団の約10%を構成する、図12Aの右下の四半部)。これらの結果は、元のマウスモノクローナル抗体(IgM)のヒトマクロファージへの結合に類似する(データ示さず)。図12Cのヒストグラムグラフの結果は、FITCで染色したCD14+集団からの細胞のパーセントを表し(抗ペプチド6抗体なし−黒、抗ペプチド6抗体あり−白)、ヒト化抗ペプチド6抗体が高いパーセントのCD14+集団に結合することを示す。
(例7)
ヒト化抗ペプチド6抗体は、アデニリルシクラーゼ関連タンパク質1(CAP1)に結合する
以前の特許出願IL2010/000231(未発表)では、抗ペプチド6抗体がマクロファージ表面の親水性膜タンパク質を認識することを発明者らは示した。質量分光分析は、この標的タンパク質をアデニリルシクラーゼ関連タンパク質1(CAP1)と特定した。これらの結果は、抗ペプチド6アフィニティーカラムの上での抗CAP1で認識されるタンパク質の保持によって補強された(対照リツキシマブカラムの上では保持されなかった)。
ヒト化抗ペプチド6変異体抗体がキメラ抗ペプチド6抗体のようにCAP1を認識することを立証するために、発明者らは、ヒト化VH2/VK3変異体を用いてウェスタンブロット分析を実施した。N末端のHisタグに融合されたヒトCAP1を、大腸菌BL21にクローニングして発現させた。Niセファロースカラムでアフィニティークロマトグラフィーによって、細菌溶解物の上清からタンパク質を濃縮した。溶出液は、対照の無関係のHis標識タンパク質(HisCREB)とともに、SDS−PAGEのために、続いてウェスタンブロット分析のために用いた。以下の抗体による検出のために、3つの類似したブロットを調製し、用いた。市販のマウス抗ヒトCAP1、市販のマウス抗His及び本発明のヒト化抗ペプチド6抗体。図13に見られるように、ヒト化VH2/VK3は、His標識CAP1タンパク質を特異的に認識し、この特異的な変異体が、CAP1を通して結合する能力及び可能性としてシグナル伝達の能力を保持することのさらなる指標を提供した。
(例8)
ヒト化VH2/VK3変異体抗ペプチド6抗体は、ヒトPBMCからのIL−10の分泌をかなり誘導する
VH2/VK3変異体(配列番号21の重鎖可変領域及び配列番号26の軽鎖可変領域を含む)がペプチド6への結合で最も有効であり(図7)、ヒトマクロファージへのかなりの結合を同様に示した(図12)ことを考慮し、発明者らはIL−10分泌のin vitro生物アッセイでこの抗体の活性を次に分析した。発明者らは、ペプチド6への結合で有効であったさらなるヒト化抗ペプチド6抗体変異体(VH2/VK1)のIL−10分泌をさらに分析した。ヒトPBMCを健康なドナーから収集し、ヒト化抗ペプチド6変異体VH2/VK1又はVH2/VK3のいずれかの200μgと48時間インキュベートした。無処置の細胞は、対照の役目を果たした。上清を収集し、IL−10のELISA検出キット(R&D systems)で分析した。
図14に明らかに示されるように、ヒト化VH2/VK1抗ペプチド6抗体変異体又は無処置の細胞と比較して、ヒト化VH2/VK3抗ペプチド6抗体で処置した細胞から分泌されるIL−10の有意な増加がある。VH2/VK3変異体で見られた結果は、キメラ抗ペプチド6抗体で示された以前の所見に類似している(図8)。抗ペプチド6抗体のこの生物活性は、VH2/VK3変異体によって保持されたが、VH2/VK1変異体によって保持されなかったことを本結果は示す。
例2(図7)は、異なるVH及びVKヒト化抗体変異体のペプチド6結合動態を実証した。それらの次の実験で、発明者らは抗体変異体ペプチド6結合親和性とIL−10誘導との間の相関を調査しようと努めた。発明者らは、VH3/VK2、VH2/VK3、VH2/VK1及びVH2/VK2へのペプチド6の親和性を調査するためにペプチド6でコーティングされたELISAプレート(例2の場合のように)を用い、IL−10誘導を判定するために抗体変異体の各々の33又は100μg/mlとインキュベートしたPBMC培養から上清を収集した。図15Aは、一般に、100μg/ml抗体が33μg/mlがそうしたより高いIL−10発現を誘導したこと、及びVH2/VK3変異体が他の変異体より高いIL−10発現を誘導したことを示す。図15Bは異なる変異体のペプチド6結合親和性を例示し、最も高い親和性もVH2/VK3によって示されたことを示している。しかし、意外にも、他の変異体の場合、ペプチド6結合及びIL−10誘導は必ずしも相関しなかった。
最高のIL−10誘導を示したので、VH2/VK3はさらなるin vivo実験のためのリード抗体として選択された。
(例9)
ヒト化VH2/VK3抗ペプチド6抗体のF(ab)2断片は、ヒトマクロファージ(CD14+細胞)に結合して、ヒトPBMCからのIL−10の分泌を誘導する
VH2/VK3抗体で示される効果が抗体のFc部分によって媒介されないことを確認するために、発明者らはVH2/VK3抗ペプチド6抗体のF(ab)2断片を調製し、ヒトマクロファージへの結合及びIL−10の分泌の誘導に対する効果を評価した。
ヒトPBMC(106)を健康なドナーから収集し、抗CD14抗体(PEとコンジュゲートした)単独で染色したか、ヒト化VH2/VK3抗ペプチド6抗体(FITCとコンジュゲートした;10μg)のF(ab)2断片で二重染色した。次に抗体の結合について、FACSによって細胞を分析した。別の実験では、ヒトPBMCを健康なドナーから収集し、ヒト化抗ペプチド6 VH2/VK3抗体のF(ab)2断片の150μgと48時間インキュベートした。無処置の細胞は、対照の役目を果たした。上清を収集し、IL−10のELISA検出キット(R&D systems)で分析した。
図16A及び16Bの密度グラフで提示される結果は、ヒト化VH2/VK3抗ペプチド6抗体のF(ab)2断片がCD14陽性細胞に結合することを示す(マクロファージはドナーの単離細胞集団の約11%を構成する、図16Aの右下の四半部)。これらの結果は、ヒトマクロファージへの完全体VH2/VK3抗ペプチド6抗体の結合に類似している(図12B)。図16Cのヒストグラムグラフの結果は、FITCで染色されたCD14+集団中の細胞のパーセントを表し(抗ペプチド6抗体のF(ab)2断片なし−黒、抗ペプチド6抗体のF(ab)2断片あり−白)、ヒト化抗ペプチド6抗体のF(ab)2断片が高いパーセントのCD14+集団に結合することを示している。
図17に示すように、無処置の細胞との比較で、ヒト化VH2/VK3抗ペプチド6抗体のF(ab)2断片で処置した細胞から分泌されるIL−10の有意な増加がある。完全体VH2/VK3抗ペプチド6抗体によるIL−10分泌の増加を表す上の結果に、これらの結果は類似している(図14)。VH2/VK3抗ペプチド6抗体の機能的特性が、その分子のF(ab)2部分の抗原結合性領域に関係していることを、これらの所見は明らかに示し、確認する。
(例10)
ヒト化VH2/VK3抗ペプチド6抗体は、確立されたアジュバント誘発関節炎を抑制する
発明者らは、確立された関節炎の実験モデルで、ヒト化VH2/VK3抗ペプチド6抗体のin vivo効果を次に検討した。関節炎を誘導するためにルイスラットを0日目にMT/CFAで免疫化し、関節炎の重症度を臨床評価により測定した。14日目に、ラットを3群に分けた。15日目に、疾患のピークに向けて、ラットを以下の通りに処置した。第一群 PBS(i.p.);第二群 ヒト化VH2/VK3(i.p.2.5mg/kg);及び第三群 キメラマウスヒト抗ペプチド6抗体(i.p.5mg/kg)。
図18に見られるように、キメラマウス−ヒト抗ペプチド6抗体と同様に、及びPBS処置動物と比較して、ヒト化VH2/VK3抗ペプチド6抗体は、確立されたAAの重症度を有意に抑制することに効果的であった。
(例11)
ヒト化VH2/VK3抗ペプチド6抗体は、確立されたアジュバント誘発関節炎を有するラットの血清でIL−10の分泌を誘導する
発明者らは、確立された関節炎を有する動物の血清でのIL−10分泌の誘導に対するヒト化抗ペプチド6抗体のin vivo効果をさらに評価した。ルイスラットを0日目にMT/CFAで免疫化した。11及び15日目に、ラットをヒト化VH2/VK3(IP 1mg/kg)で、又は比較のためのPBSで処置した。関節炎の重症度を臨床評価によって評価し、動物を19日目に屠殺し、様々なサイトカインの血清中レベルをELISA(R&D systems)で測定した。健康な無処置動物の血清は、対照の役目を果たした。
図19に見られるように、ヒト化VH2/VK3で処置したアジュバント誘発関節炎動物で、IL−10レベルの明らかな誘導がある。これらの所見は、ヒト化VH2/VK3による処置を受けての関節炎の重症度の低減と相関する(図18)。
さらに、VH2/VK3投与に続いて、関節炎動物で上昇する他のサイトカイン、例えばIL−6及びIFN−γのレベルの低減があるが、IL−4、IL−17、IL−1及びTNFαなどの他のサイトカインのレベルは全ての群で無視できる程度のままである。
(例12)
ヒト化VH2/VK3抗ペプチド6抗体は、コラーゲン誘発関節炎を抑制する
発明者らは、さらなる関節炎の実験モデル、マウスのコラーゲン誘発関節炎(CIA)で、ヒト化VH2/VK3抗ペプチド6抗体のin vivo効果を次に検討した。関節炎を誘導するために、雄DBA/1マウスを0日目にCFAで乳化したコラーゲンII型で免疫化し、21日目に追加用量を与えた。マウスの85%は、追加注射の後2.5週以内にCIAを発症した。疾患の臨床徴候を受けて、マウスをヒト化VH2/VK3抗ペプチド6抗体(i.p.200μg)又はトリス緩衝食塩水(TBS)の単一用量で処置した。
図20に見られるように、TBS対照処置との比較で、ヒト化VH2/VK3抗ペプチド6抗体は、確立されたCIAの重症度を有意に抑制することに効果的であった。
(例13)
ヒト化抗ペプチド6抗体は、慢性関節リウマチ患者のPBMCからのIL−10分泌を誘導する
ヒト化抗ペプチド6抗体が健康なドナーのPBMCでIL−10発現を誘導することが示された例8、及びヒト化抗体による処置がAAラット血清の血清でより高いIL−10レベルを誘導することを示す例11に従って、発明者らは、慢性関節リウマチ(RA)患者から収集されたPBMCでのIL−10の誘導におけるVH2/VK3変異体の効力を調査した。PBMCを2人のRA患者から収集し、200μgのヒト化抗ペプチド6抗体(VH2/VK3)と一緒に又はそれなしに48時間インキュベートした。分泌されたIL−10含量について、次に上清を分析した。図21に明らかに見られるように、VH2/VK3変異体は、処置されたPBMCによって分泌されるIL−10の量の頑健な増加を誘導した。
(例14)
ヒト化VH2/VK3抗ペプチド6抗体は、TNBS大腸炎、炎症性腸疾患(IBD)の動物モデルを改善する
抗ペプチド6抗体の特異な抗炎症機構に基づき、発明者らは、自己免疫炎症性疾患のさらなる実験モデルで、ヒト化VH2/VK3抗ペプチド6抗体の効果を評価した。本明細書で表されるモデルは、TNBS大腸炎モデル、IBDの動物モデルである。
20匹のBalb/CマウスをTNBS皮膚塗布により感作させ(−7日目と命名)、続いて1週後にTNBSを直腸内投与した(0日目と命名)。無処置の対照動物と比較した処置動物に、ヒト化VH2/VK3抗体(200μg)がi.p.注射によって3時点(−6、−2、+1)で投与された。感作時、直腸内投与時及びその後毎日、全動物を秤量した。対照群で直腸内投与の3日後(+3と命名)、かなりの体重減(>5%)の後に動物を屠殺し、結腸組織を取り出して組織病理学的分析のために送った。
図22及び23に見られるように、疾患と関連する体重減少及び炎症性応答の抑制で、ヒト化VH2/VK3抗体は有効であった。これは、1群あたりの全体的な顕微鏡的疾患評価(*対照マウスと比較してp<0.05)及び代表的な組織学的画像(倍率×100)に基づいて見ることができる。対照マウスの結腸で見られるかなりの炎症に対して、最小限の炎症性応答がVH2/VK3処置マウスの結腸で見られる。
(例15)
対照抗体と比較して、ヒト化VH2/VK3抗ペプチド6抗体はTNBS大腸炎の重症度を改善する
例14で、マウスIBDモデルでハプテン化剤TNBSによって及ぼされる有害な影響をVH2/VK3変異体が改善することを発明者らは示した。これらの結果を補強するために、発明者らは類似の実験を実施し、ヒト化VH2/VK3抗ペプチド6抗体の効果をリツキシマブ陰性対照mAb及びPBS(ビヒクル)と比較した。
Balb/CマウスをTNBS皮膚塗布により感作させ(−7日目)、続いて1週後にTNBSを直腸内投与した(0日目と命名)。VH2/VK3変異体(8mg/kg)、リツキシマブ(8mg/kg)又はPBSを、感作後、及び直腸内誘導から1日目に投与した。感作時、直腸内投与時及びその後毎日、マウスを秤量した。対照群で直腸内投与の3日後(3日目)、かなりの体重減の後に、動物を屠殺した。
ヒト化抗ペプチド6 VH2/VK3変異体は体重減少の抑制で有効であり、PBS処置動物での15%の体重減少及びリツキシマブ動物での14%と比較して、TNBS誘発体重減少を3.5%に最小化したことを、図24は明らかに示す。
(例16)
糖尿病のマウスモデルを用いる糖尿病の治療のためのヒト化VH2/VK3抗ペプチド6抗体
関節炎及びIBDモデルを用いて実証された、炎症状態に対する本発明の抗体の有益効果に励まされて、発明者らは、マウス糖尿病モデルを用いて、別の免疫関連障害に対するヒト化抗ペプチド6抗体の潜在的な有益効果を次に検討する。したがって、糖尿病のモデルとしてNODマウスを用いて、糖尿病の予防処置及び/又は改善でのVH2/VK3変異体の可能な使用を次に検討する。
発明者らは、NODマウスを用いて、8週目及び12周目にNODマウス(1群につきn=8)に8mg/kgのヒト化VH2/VK3抗ペプチド6抗体をi.v.により投与することによって、ヒト化VH2/VK3抗ペプチド6抗体の効果を検討する。対照マウスは、PBSを投与される。血糖レベル及び重量について、マウスを隔週に監視する。
(例17)
乾癬の治療のためのヒト化VH2/VK3抗ペプチド6抗体
試験は、17歳から71歳の男性10人及び女性10人の20人の患者標本の間で実施される。あらゆる形の乾癬が代表される。プラーク乾癬、頭皮乾癬、滴状乾癬、紅皮症乾癬及び反転乾癬。
処置は、1カ月の間2週間毎に1回(3投与)の、体重1Kgにつき5mgのVH2/VK3変異体のi.v.注射からなる。
得られる結果がVH2/VK3変異体だけに帰することができるように、この試験の間、乾癬のための通常の処置のいずれも用いられない。
ヒト化抗ペプチド6抗体の局所適用の効果をさらに検討する。したがって、500μlのプラセボ(PBS)又は500μl(10mg/ml)のVH2/VK3変異体が、耐水密閉包帯に置かれる。その後、処置が開始されるときに両肘に大きな可視乾癬性プラークを有する乾癬患者の左肘(VH2/VK3変異体)及び右肘(PBS)に密閉包帯を置く。
密閉包帯は、毎日更新する。包帯を新たに取り替えるとき、古い投与された物質の残りを除去して毒性を推定した後に、新しい抗ペプチド6 VH2/VK3変異体又はPBSを含む新しい密閉包帯を置く。肘及び膝の状態は、全ての画像に自動タイムスタンプを有するデジタル写真撮影によって記録する。
処置を4日間投与し、治療された乾癬性プラークの平滑化並びに正常な様子の皮膚を伴う治癒を監視する。
(例18)
マウスでの実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の治療及び予防におけるヒト化VH2/VK3抗ペプチド6抗体
ヒト化VH2/VK3抗ペプチド6抗体の免疫関連障害に対する効果をさらに調査するために、多発硬化症(MS)のモデルとしてEAEを次に用いる。実験の初日及び7日目にミエリン希突起膠細胞糖タンパク質35−55ペプチド(MOG35−55)を注射することによって、EAEを8週齢雌C57BL/6マウスで誘導する。実験手順に示す通りに、実験の初日及び2日目に、百日咳毒素をマウスにさらに接種する。実験手順に詳述される通りに、4群のマウス(各々10匹のマウスを含む)を臨床評価のために評価する。ヒト化抗ペプチド6抗体の潜在的予防及び保護効果を検討する第一群(A)は、MOG注射の3日前に開始され、37日目に終了されるVH2/VK3変異体(200μg)による毎週の処置を受け、その後37日目から52日目までビヒクル処置が続く。第二群(B)のマウスは、MOG注射から7日目に開始され、52日目の実験終了まで続く、VH2/VK3変異体(200μg)で毎週処置される。第三群(C)は、初日に開始され、52日目の実験終了まで続く、VH2/VK3変異体(200μg)による毎週の処置を受ける。対照群(D)は、初日から52日目の実験終了まで、ビヒクル(PBS)で処置される。マウスは、実験手順に示される基準に従って臨床的に評価される。
(例19)
ヒト化VH2/VK3抗ペプチド6抗体は、増加させた用量でいかなる有意な病理作用を有しない
発明者らは、動物で増加させた用量のヒト化VH2/VK3抗ペプチド6抗体の投与の安全性を次に評価した。各々2匹のマウスの5群に分けた10匹の雄Balb/Cマウス(7週齢)を、以下の通りに漸増用量のマウス抗ペプチド6 IgM抗体又はヒト化VH2/VK3抗体(2つの別々の実験)で一度i.p.により処置した。
マウス1及び2 生理食塩水(対照)
マウス3及び4 5mg/kg体重(BW)
マウス5及び6 10mg/kg BW
マウス7及び8 20mg/kg BW
マウス9及び10 40mg/kg BW
体重、挙動の変化並びにいかなる他の異常な徴候について、マウスを1日おきに観察した。2週後に、マウスを屠殺し、心臓、肝臓、肺、脾臓及び腎臓を病理分析のために取り出した。
結果は次の通りであった。
1.挙動の監視
マウスは、1日おきに観察した。マウスの挙動は正常で、毛、皮膚及び目を含む外観に変化はなかった。摂食量に変化は見出されず、体重は時間とともに増加した。
2.病理知見
40mg/kgの最も高い用量でさえ有意な病理所見はなく、それによって抗ペプチド6抗体、特にヒト化VH2/VK3の投与の安全性に関して初期データを提供した。
(例20)
ヒト化VH2/VK3抗ペプチド6抗体の薬物動態学的プロファイル
本発明の重要な適用は、本発明の抗体を用いることによる患者の処置である。この目的のために、in vivoでの抗体半減期について概略を記さなければならない。したがって、発明者らは、マウスの血液に残っている注射されたヒト化Ab(VH2/VK3変異体)のレベルを経時的に測定した。7〜8週齢DBA/1マウスの1つの群を0日目に500μgのVH2/VK3で腹腔内投与(i.p.)により処置し、第二の群を0日目に500μgのVH2/VK3で皮下投与(s.c.)により処置した。2つの群を各々3つの群へさらに分け、各群は注射後の異なる日、すなわち、サブグループ1:0、3及び8日目、サブグループ2:1、4及び10日目並びにサブグループ3:2及び11日目に眼窩後方から採血した。血清を収集し、VH2/VK3の測定のために−20℃で保存した。図25は、11日間のVH2/VK3血清含量を示し、i.p.及びs.c.両方の投与の血清半減期が約10日であることを示す。
(例21)
PRO01 VH2/VK3発現ベクターの構築
患者を治療するためにヒト化VH2/VK3抗ペプチド6抗体を用いるためには大量の抗体が必要であり、したがって、抗体生産収率を向上させるために、抗体軽鎖及び重鎖を組み込む2シストロン性発現プラスミドを生成した。
軽鎖発現カセットのいずれかの末端のものに適合する制限酵素部位(SpeI及びPciI)を含んでいた、重鎖発現カセットのCMVプロモーターの上流での短いリンカーの挿入によって、重鎖ベクターpANTVhG1を改変した。軽鎖発現カセットを次に軽鎖発現ベクターpANTVKから切り取り、改変された重鎖発現ベクターに移して二重発現ベクターpANT18を作製した。この発現ベクターは、原核細胞での増殖のためのpMB1複製起点及び原核生物の選択のためのβラクタマーゼ(ApR)遺伝子も含む。
二重発現ベクターpANT18(前記のもの)及びPRO01軽鎖変異体VK3を制限酵素BssH II及びBamH Iで消化した。消化された断片をゲル精製して連結した。この新しいプラスミドを、PRO01重鎖変異体VH2とともに制限酵素Mlu I及びHind IIIで消化し、消化された断片をゲル精製及び連結して、図26に示すPRO01二重発現ベクターpPRO14を生成した。
(例22)
PRO01 VH2/VK3発現ベクターのトランスフェクション、最初の細胞系選択及び既知組成培地での懸濁培養への適応
ベータラクタマーゼ遺伝子に位置する単一のSspI認識部位を有するプラスミドpPRO14を、この制限酵素を用いて線状にした。適用される規則に沿って、細菌、真菌類、マイコプラズマ及び偶発因子を含まないと検査及び保証された(ECACC、Health Protection Agency、Porton Down、UKによって実施された)マスター細胞バンクからとられたCHO dhfr−細胞に、線状化プラスミドDNAをトランスフェクトした。8%CO2及び37℃のバッフルエーレンマイヤーフラスコで100rpmに設定された振盪インキュベーター(Kuhner Climo振盪機ISF1−X)中の、40ml/LのGlutamaxを追加した既知組成培地(CD DG44)で細胞培養を維持した。トランスフェクションの48時間前に、6穴組織培養プレート中の、1%の透析されたFBS、Glutamax及びH/Tを追加したDMEM培地で細胞を平板培養した。リポフェクトアミン2000を用いる脂質媒介トランスフェクションによって、プラスミドDNAを導入した。トランスフェクションの24時間後に、細胞を100ml DMEM+1%FBS+10ml/Lで加えたGlutamaxに希釈し(H/T追加物は省略された)、100μl/ウェルで96穴平底組織培養プレートに分注した。次に、8%CO2及び37℃の加湿環境で、細胞をインキュベートした(Binder CB150)。さらなる24時間後に、DMEM培地を取り出して、40ml/lのGlutamaxを追加した100μl/ウェルのCD−OptiCHOで置換した。プレートをインキュベーターに戻し、Genetix、Clone Select Imagerを用いて定期的にスキャンして、各ウェルでの細胞増殖を追跡した。栄養素レベルが一定であるように、インキュベーション期間中、新しい選択培地を定期間隔で加えた。
数週間後、活発に増殖する細胞コロニーを含む多数のウェルが特定された。これらのウェルから上清を採取し、ヒトIgG1 Fc捕獲/カッパ軽鎖検出ELISAを用いてヒトIgG力価について分析した。このアッセイからの結果に基づいて、40ml/LのGlutamaxを追加したCD OptiCHO培地を1ウェルにつき0.5ml含む24穴プレートに、合計46個のコロニーを移した。ウェル内の細胞がほとんど集密状になったとき、これらの46個のウェルの各々からの上清を採取してIgG力価について分析した。これらの結果に基づいて、29個の最良の発現細胞系を、T−25フラスコでの増殖のために選択した。これらの細胞系を集密近くまで再び増殖させ、その時点で上清を採取し、上記のようにIgG力価について分析した。これらの結果に基づいて、20個の最良の発現細胞系をT−75フラスコで増殖させた。集密状のT−75フラスコからの細胞培養上清を採取し、IgG力価を上記のように定量化した。これらの全てのアッセイの結果を、表5に示す。20個の細胞系間の発現レベルの比較は、12個の最良の発現細胞系(表5の太字/イタリック)を、さらなる分析及び発展のために繰り越すものとして特定することを可能にした。
比生産速度(SPR)分析をこれらの12個の細胞系の各々で実施し、比生産性をpg/細胞/日で表した。結果を、表6に示す。
表6に示す選択された12個の細胞系を、第一ラウンドの遺伝子増幅に進めた。メトトレキセート(MTX)の漸増濃度の下の選択圧の結果として、遺伝子増幅過程が起こる。第一ラウンドの遺伝子増幅のために、T75フラスコからの培養物を、各ウェルがMTXの漸増濃度を含む12穴プレートに播種した。細胞が集密状になるまで、各ウェルの培地を毎週交換した。2週後に、MTXの漸増レベル(0.05〜50.0μM)を有する各培養からの上清を採取し、IgG力価について分析した。12個の細胞系の各々の結果を表7に示す。一部の例では、MTXが省略されたウェル(ウェルA1)と比較して、MTXの特定のレベルで抗体力価の増加が観察されたことをこれらの結果は実証した。各細胞系の選択されたウェルを、SPRの調査に進めた。
SPR分析を実施し、生産性をpg/細胞/日で表した。全ての細胞系について異なるMTX濃度で増殖する培養の間で比較を行った結果を表7に示す。
最適なSPRを示す12個の細胞系(表6を参照)を12穴フォーマットに播種し、指示された範囲のMTXと一緒にインキュベートした。2週間毎に抗体力価のために上清を採取した。MTX選択圧の下で遺伝子増幅を検出するために、SPRを分析した。
漸増MTX濃度に曝露させたいくつかの培養については、生産性の明らかな増加があったことを表7は示す。詳細には、0.8μM MTXを含む細胞系PRO01−B−14−524−0.8は、比生産性の4倍近くの増加を示した。表7で太字/イタリックで強調された培養を、第二ラウンドの遺伝子増幅に入れるために選択した。
MTXの存在下での第二ラウンドの遺伝子増幅を実施した。細胞が集密状になるまで、毎週、12穴プレートの各ウェルで培地を交換した。2から4週後に、MTXの漸増レベルを有する各培養からの上清を採取し、IgG力価について分析した。細胞系の各々の結果を表8に示す。12穴プレートからの初期力価データは、大多数のウェルで増幅が起こらなかったことを示した。しかし、14個のウェルはSPRの調査をした(表8)。用いた濃度の増加したMTXではさらなる遺伝子増幅が起こらなかったことを、このSPR分析からの結果は実証した。現段階で、第二ラウンドの増幅からの細胞は冷凍され、気相液体窒素で保存された。
第二ラウンドの遺伝子増幅の後のhIgG発現の増加の欠如のために、第一ラウンドからの最良の発現細胞系、PRO01−B−14−524−0.8を、MTXの不在下での限定希釈クローニングに進めるために選択した。1日のインキュベーションの後、Genetix Clone Select Imagerを用いてプレートを検査した。その後2週間、1週につき2回各プレートを撮影した。単一のコロニーを特定するためにプレートを評価した。これは2人の研究者によって独立に実行され、両研究者によって単一であると評価されたコロニーを増殖させた。その結果、84個のウェルが単一の細胞に由来するクローン細胞系を含むと考えられた。84個全てのウェルから試料を採取し、hIgG1力価について分析した。これらの結果に基づいて、最良の57個のクローンを24穴プレートで増殖させた。増殖は、MTXの不在下で、6穴プレート、T−25フラスコ及びT−75フラスコによって進行させた。各段階で、増殖の前に、細胞上清をhIgG1力価について分析した。低いIgG力価のために、各段階でいくつかのクローンが落とされ、クローンをT−75フラスコで増殖させるまでに合計38個が残っていた。38個の選択されたクローンの各々は、次にSPRが分析された。この分析の結果は、表9に見ることができる。
これらの結果に基づいて、13個のクローン細胞系が最高の生産性を有すると特定された。PRO01−D−14−524−AG、PRO01−D−14−524−AJ PRO01−D−14−524−AO PRO01−D−14−524−AR PRO01−D−14−524−AW PRO01−D−14−524−AZ PRO01−D−14−524−BE PRO01−D−14−524−BH PRO01−D−14−524−BI PRO01−D−14−524−BJ PRO01−D−14−524−BN PRO01−D−14−524−CA及びPRO01−D−14−524−CD。これらのクローンを次に増殖させ、少量のストックを冷凍し、気相液体窒素に保存した。これらの細胞系を、懸濁培養に順応させた。
上の培養は、既知組成培地(1リットルにつき40mlのglutamaxを補ったCD OptiCHO)での懸濁培養に順応させた。半粘着性の培養としてT175組織培養フラスコで増殖する、活発に分裂している細胞の培養を、軽くたたくことによってプラスチックから解離させた。懸濁液を計数し、65mlのCD OptiCHO増殖培地を含む250mLのバッフルエーレンマイヤーフラスコに、2×107個の細胞を播種した。Tフラスコ培養から確保された5mlの馴化培地を次にフラスコに継ぎ足した。37℃の8%CO2で100rpmに設定された加湿振盪プラットホーム(Kuhner Climo振盪機ISF1−X)に培養を置いた。Vi−CELL(商標)XRカウンターを用いて、2〜3日おきに培養の生細胞密度を測定した。細胞密度が2倍になったとき、新しい培地に1:1に分けることによって細胞を継代培養した。第二の継代の後、2反復のフラスコに播種し、2バイアル(1×107細胞/バイアル)の少量細胞ストックを冷凍するために用いた。細胞はさらなる継代を経、細胞密度が2〜3日おきに倍加し、細胞生存能力を約95%に維持することができたならば、懸濁培養に順応したとみなされた。既知組成増殖培地での懸濁培養への各細胞系の順応の後、細胞ストックを液体窒素で低温保存した(1×107細胞/バイアル)。
(例23)
懸濁培養での増殖特性、比生産速度及び安定性の測定
既知組成培地での懸濁培養順応細胞系のSPRを測定した。簡潔には、250mlバッフルエーレンマイヤーフラスコの総量70mlの既知組成培地に播種するために、健康な培養からの3×10
7個の細胞を用いた。細胞数及びIgG力価のための試料を2週間にわたって毎日とり、IgG力価をELISAによって定量化した。細胞数及びIgG ELISAからの結果を時間に対してプロットし、SPR及び細胞倍加時間を以下の通りに計算した。
SPRは、3日間隔で計算した。この調査から得られるピーク値を、12個の懸濁順応クローンの各々の推定された倍加時間、最大の細胞密度及びピークのIgG力価と一緒に表10に示す。これらの値に基づいて、4つのクローンをリード候補として選択した。PRO01−SF−14−524−AJ、PRO01−SF−14−524−AO、PRO01−SF−14−524−AZ及びPRO01−SF−14−524−BE。これらの4つの系を連続培養で維持し、さらなる試料をSPRのために採取して、10世代の安定性プロファイルを与えた。両試験のための生産性曲線を図27から30に示し、結果を表11に要約する。
全4つの細胞系について、試験が停止される前に、培養の総時間は9日から8日まで減少した。細胞倍加時間が2つの試験の間で減少したという事実にこれは反映され、細胞系の全てが振盪フラスコ培養に完全に順応したわけではなかったことを示す。細胞系PRO01−SF−14−524−AOについては、培養の比生産速度は2つの試験の間で減少したが、それはなお高いままであった。他の3つの細胞系、PRO01−SF−14−524−AJ、PRO01−SF−14−524−AZ及びPRO01−SF−14−524−BEについては、比生産性は2つの試験の間で非常に類似したままであり、10世代にわたって1細胞あたりの生産性が安定であることを示している。
4つのリード細胞系を増殖させ、種細胞バンクを調製した。簡潔には、細胞を300mlの総量に増殖させ、細胞密度が0.85×10
6細胞/mlを超え、細胞生存能力が>90%のときに収穫した。細胞を遠心分離によって収穫し、適当な容量の寒剤に再懸濁して、1×10
7細胞/mLの細胞懸濁液を与えた。これを、2mlの無菌クリオチューブに1mlの一定量で分注した。1℃/分の制御された速度でバイアルを−80℃に冷凍した。より長い期間の保存のために、細胞バンクを気相液体窒素に次に移した。リード細胞系の冷凍ストックの目録を、表12に示す。
既知組成Opti−CHO培地での懸濁培養に順応した各細胞系について、解凍試験を実施した。各細胞バンクからの1バイアルを液体窒素保存装置から取り出し、70mlの既知組成増殖培地に解凍した。解凍後5日間、細胞密度及び生存能力を毎日監視した。データの概要を表13に示す。このデータは、種ストック細胞バンクが生存能力を有し、成長する培養を液体窒素保存装置から回収することができることを実証する。
(例24)
細胞系によって産生された抗体の標的抗原への結合
リード細胞系(既知組成培地への順応後)によって分泌される抗体のペプチド6への結合を、ELISAによって確認した。簡潔には、プロテインAアフィニティーカラムを用いて、細胞培養上清から抗体を精製した。精製された抗体を次に10mM酢酸ナトリウム緩衝液、pH5.5で製剤化し、+4℃で保存した。グルタルアルデヒド処置Nunc MaxiSorp96穴平底マイクロタイタープレートを、PBS中のペプチド6の10μg/ml溶液により、100μl/ウェルで4℃で一晩コーティングした。400μg/mlから6.25μg/mlの各抗体の連続希釈溶液を調製し、100μl/ウェルをコーティングされたプレートに加え、室温で1時間インキュベートした。HRP標識マウス抗ヒトカッパ軽鎖の1/1000希釈溶液の100μl/ウェルと室温で1時間インキュベートし、続いて100μl/ウェルのTMB基質で検出することによって、抗体結合を判定した。50μl/ウェルの3M HClで反応を停止した後に、450nmで吸光度を測定した。リード細胞系の上清からの各抗体が、NS0細胞から産生されたキメラ及びヒト化抗体に類似した結合曲線で、及びそれと同様にペプチド6に結合することを、図31は示す。
(例25)
抗体産生細胞系のマイコプラズマ及び無菌試験
Minerva Biolabs Venor(登録商標)GeMマイコプラズマ検出キットを用いて、マイコプラズマについて細胞バンク材料からの培養上清を社内で試験した。1試料につき3つのマイコプラズマの検出限界で、79種のマイコプラズマから16SのRNAを検出するために、このキットはPCRを用いる。反応が働いたことを実証する191bpの陽性対照が各試料に含まれ、マイコプラズマに陽性の試料は265〜278bpのバンドを与える。細胞系PRO01−D−14−524−AJ、PRO01−D−14−524−AO、PRO01−D−14−524−AZ及びPRO01−D−14−524−BEのPCR反応のアガロースゲルは、マイコプラズマ特異バンドの証拠を示さなかった。
PRO01−D−14−524−AJ細胞系は、ブダペスト条約登録及び受託番号CNCM I−4356によって寄託された。細胞の寄託は、ブダペスト条約の規定に基づいて実施された。