JP5777194B1 - 複合潤滑素材、エンジンオイル、グリース及び潤滑油並びに複合潤滑素材の製造方法 - Google Patents

複合潤滑素材、エンジンオイル、グリース及び潤滑油並びに複合潤滑素材の製造方法 Download PDF

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Abstract

潤滑性に優れる複合潤滑素材、エンジンオイル、グリース及び潤滑油を提供する。母材に少なくとも黒鉛系炭素素材及び/又は黒鉛系炭素材から剥離されたグラフェン様が分散された複合潤滑素材であって、前記黒鉛系炭素素材は、菱面晶系黒鉛層(3R)と六方晶系黒鉛層(2H)とを有し、前記菱面晶系黒鉛層(3R)と前記六方晶系黒鉛層(2H)とのX線回折法による次の(式1)により定義される割合Rate(3R)が31%以上であることを特徴とする複合潤滑素材。Rate(3R)=P3/(P3+P4)?100・・・・(式1)ここで、P3は菱面晶系黒鉛層(3R)のX線回折法による(101)面のピーク強度P4は六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(101)面のピーク強度である。

Description

本発明は、複合潤滑素材、エンジンオイル、グリース及び潤滑油並びに複合潤滑素材の製造方法に関する。
近年、燃費向上、摩擦の低減などを目的として、エンジン等の機関、変速機、減速機等の伝動機構には様々なナノマテリアルの添加が研究されている。特に環境や資源の問題で、非金属のナノマテリアルとしてグラフェン、CNT、フラーレン等の炭素素材が注目されている。
例えば、エンジンオイルでは、二硫化モリブデン(MoS)や、せん断抵抗の小さい層状結晶構造を有する鱗片状黒鉛などを添加することが知られている(非特許文献5)。また、粒子状のグラファイトを用いて、摺動面での摩擦損失をより低減させた摺動部材が検討されている(特許文献1)。
一方、潤滑油について、温度変化や酸化などによる基油そのものの劣化を抑制することにより、潤滑油の寿命を長くするために、基油の酸化防止効果及び分解劣化防止効果を有する炭素繊維、カーボンナノチューブなどのカーボンマテリアル、マイナスイオン等を発生する放射性物質を配合することが検討されている(特許文献2、3、4)。
特開2013−203905号公報([0091],[0120]) 特開2008−298097号公報([0015]) 特表2013−538914号公報([0074],[0090]) 特開2007−277500号公報([0002]-[0003]) 国際公開第2014/064432号([0040])
黒鉛の研磨に伴う構造変化;著:稲垣道夫、麦島久枝、細川健次;1973年2月1日(受理) 炭素加熱処理に伴う確率P1,PABA,PABCの変化;著:野田稲吉、岩附正明、稲垣道夫;1966年9月16日(受理) Spectroscopic and X-ray diffraction studies on fluid deposited rhombohedral graphite from the Eastern Ghats Mobile Belt, India; G.Parthasarathy, Current Science, Vol.90, No.7, 10 April 2006 固体炭素材料の分類と各々の構造的特徴;名古屋工業大学 川崎晋司 カタログ「機械用カーボン製品、東洋炭素株式会社」(発行日:2013年9月12日) Tribological properties of monolayer graphene oxide sheets as water-based lubricant additives; H. Kinoshita, Y. Nishina, A.A.Alias, M. Fujii; Carbon, Volume 66, Jan 2014, Pages 720-723
しかしながら、特許文献1で示される方法は、摺動部にグラファイトを直接塗布するため再塗布が難しいことが問題である。また、特許文献2、特許文献3で示される方法は、基油に炭素繊維やカーボンナノチューブを分散させること、これらの分散により摺動性や酸化防止や温度変化に伴う粘度変化の抑制の効果があると示されているが、これらの効果はわずかである。特許文献4で示される方法は、トルマリの粉状を添加することにより潤滑油の酸化防止、分解劣化防止を目的としているが、潤滑性への寄与は明らかではない。
また、潤滑性について、酸化グラフェンを用いて行った実験では、グラフェンの水分散液からなる潤滑剤は、通常の潤滑剤よりも潤滑性が良いことで示されている(非特許文献6)。そこで、グラフェンを潤滑剤に利用することが考えられる。
しかしながら、通常、天然黒鉛をそのまま処理しても、剥離されるグラフェン量が少ないことが問題となっていた。しかし、鋭意研究の結果、材料となる黒鉛に所定の処理を施すことで、グラフェンに剥離し易く、高濃度又は高分散させることが出来る黒鉛系炭素素材(グラフェン前駆体)を得た。このグラフェン前駆体が、超音波や撹拌、摺動するうちに一部又は全部が剥離され、グラフェン前駆体からグラフェンまでの混在物「グラフェン様黒鉛」となる。グラフェン様黒鉛は、グラフェン前駆体の添加量やプロセス時間などによって、サイズ、厚さ等は変化するため、限定はしないが、より薄片化していることが望ましい。つまり、言い換えれば、例えば、エンジン、変速機、減速機等の駆動系ユニットで摺動することで、グラフェン様黒鉛に剥離・分散し易い黒鉛が黒鉛系炭素素材(グラフェン前駆体)である。
これらグラフェン前駆体及び/又はグラフェン様黒鉛を母材に少量分散させることによって、潤滑性を向上させることができることを見出した。しかも、特殊な製造方法を経ることが無く、該複合潤滑素材を製造できることを見出した。潤滑性としては、例えば、摩擦係数の低減、摩擦抵抗の低減、摺動熱の放散性、基油の酸化防止・分解劣化防止等を向上させることができ、結果として例えば燃費などの向上に寄与する。
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、潤滑性に優れる複合潤滑素材、エンジンオイル、グリース及び潤滑油並びに複合伝導素材の製造方法を提供することを目的とする。
また、母材に分散・配合させるグラフェン様黒鉛の量が少なくても所望する性状を奏する複合潤滑素材を提供することを目的とする。
さらにまた、従来の製造プロセスを用いて潤滑性に優れる複合潤滑素材を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明の複合潤滑素材は、
母材に少なくとも黒鉛系炭素素材及び/又は黒鉛系炭素材から剥離されたグラフェン様黒鉛が分散された複合潤滑素材であって、
前記黒鉛系炭素素材は、菱面晶系黒鉛層(3R)と六方晶系黒鉛層(2H)とを有し、前記菱面晶系黒鉛層(3R)と前記六方晶系黒鉛層(2H)とのX線回折法による次の(式1)により定義される割合Rate(3R)が31%以上であることを特徴としている。
Rate(3R)=P3/(P3+P4)×100・・・・(式1)
ここで、
P3は菱面晶系黒鉛層(3R)のX線回折法による(101)面のピーク強度
P4は六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(101)面のピーク強度
である。
この特徴によれば、複合素材は潤滑性に優れる。これは、母材に黒鉛系炭素素材及びグラフェン様黒鉛の少なくともいずれか一方が分散し、摺動部で摺動する際に、黒鉛系炭素素材又はグラフェン様黒鉛が更に薄片化し、グラフェン様黒鉛の絶対数が増えるため、時間が経つほどにグラフェン様黒鉛の密度が上がり、潤滑性が改善されると推察される。
ここで、黒鉛系炭素素材及び/又は黒鉛系炭素材から剥離されたグラフェン様黒鉛が分散されたとは、黒鉛系炭素素材及び黒鉛系炭素材から剥離されたグラフェン様黒鉛の少なくともいずれか一方が分散されたことを意味する。
前記母材に対する前記黒鉛系炭素素材の重量比は、1/10000以上〜1未満であることを特徴としている。
この特徴によれば、添加物の有する潤滑機能を十分に発揮させられる。
前記母材は少なくとも、鉱物由来、合成由来、植物由来及び動物由来の基油の一以上であることを特徴としている。
この特徴によれば、潤滑性に優れる複合潤滑素材を得ることが出来る。
前記前記複合潤滑素材は酸化劣化防止を目的とする添加物が一種以上含有されていることを特徴としている。
この特徴によれば、潤滑性に優れる上、長い間、潤滑機能を十分に発揮さられる。
前記添加物には放射性物質が含まれることを特徴としている。
この特徴によれば、放射性物質を出すマイナスイオンによって、基油の酸化、分解の原因となる活性酸素を抑制するため、複合潤滑素材の寿命をさらに伸ばす。
エンジンオイルは、前記複合潤滑素材を用いたことを特徴としている。
この特徴によれば、潤滑性に優れる内燃機関などのエンジンオイルを得ることができる。
グリースは、前記複合潤滑素材を用いたことを特徴としている。
この特徴によれば、潤滑性に優れる転がり軸受等の摺動部材に用いられるグリースを得ることができる。
潤滑油は、前記複合潤滑素材を用いたことを特徴としている。
この特徴によれば、流体軸受けなどの動作部分に用いる潤滑油を得ることができる。
また、母材に少なくとも黒鉛系炭素素材を混錬するステップを含む複合潤滑素材の製造方法であって、
前記黒鉛系炭素素材は、菱面晶系黒鉛層(3R)と六方晶系黒鉛層(2H)とを有し、前記菱面晶系黒鉛層(3R)と前記六方晶系黒鉛層(2H)とのX線回折法による次の(式1)により定義される割合Rate(3R)が31%以上であることを特徴としている。
Rate(3R)=P3/(P3+P4)×100・・・・(式1)
ここで、
P3は菱面晶系黒鉛層(3R)のX線回折法による(101)面のピーク強度、
P4は六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(101)面のピーク強度、
である。
黒鉛の結晶構造を示す図であり、(a)は六方晶、(b)は菱面体晶の結晶構造である。 一般的な天然黒鉛のX線回折プロファイルを示す図である。 実施例1のジェットミルとプラズマとを用いた製造装置Aを説明する図である。 実施例1のボールミルとマグネトロンとを用いた製造装置Bを説明する図であり、(a)は粉砕する状態を説明する図、(b)は黒鉛系炭素素材(前駆体を)収集する状態を説明する図である。 実施例1の製造装置Bにより製造された試料5の黒鉛系炭素素材のX線回折プロファイルを示す図である。 実施例1の製造装置Aにより製造された試料6の黒鉛系炭素素材のX線回折プロファイルを示す図である。 比較例を示す試料1の黒鉛系炭素素材のX線回折プロファイルを示す図である。 黒鉛系炭素素材を前駆体として用いて分散液を作成する分散液作成装置を示す図である。 比較例を示す試料1と実施例1の製造装置Bにより製造された試料5の黒鉛系炭素素材を用いて作成した分散液の分散状態を示す図である。 分散液に分散された黒鉛系炭素素材(グラフェン)のTEM撮像図である。 試料5の黒鉛系炭素素材(前駆体)を用いて作成した分散液に分散された黒鉛系炭素素材の分布状態を示す図であり、(a)は平均サイズの分布、(b)は層数の分布を示す図である。 比較例を示す試料1の黒鉛系炭素素材を用いて作成した分散液に分散された黒鉛系炭素素材の分布状態を示す図であり、(a)は平均サイズの分布、(b)は層数の分布を示す図である。 試料1−7を前駆体として用いて作成した分散液に分散された黒鉛系炭素素材の層数の分布を示す図である。 分散液に分散された菱面体晶の含有率に対する10層以下のグラフェンの割合を示す図である。 実施例2の試料5の黒鉛系炭素素材(前駆体)を用いて分散液を作成する条件を変えた場合の黒鉛の分布状態を示す図であり、(a)は超音波処理とマイクロ波処理を併用した場合の分布、(b)は超音波処理をした場合の層数の分布を示す図である。 実施例3の黒鉛系炭素素材を導電性インクに分散させたときの抵抗値を示す図である。 実施例4の黒鉛系炭素素材を樹脂に混練したときの引張強さを示す図である。 実施例5の黒鉛系炭素素材を樹脂に混練したときの弾性率を示す図である。 実施例5における分散状態を補足的に説明するため、N−メチルピロリドン(NMP)に分散させた分散液の黒鉛炭素系素材の分布状態を示す図であり、(a)は試料12の分布状態、(b)は試料2の分布状態を示す図である。 実施例6の摩擦摩耗試験機を説明する図である。 実施例6の試験片の摩擦係数を示すグラフである。 実施例6の試験片の摩耗深さを示すグラフである。 グラフェン前駆体のSEM撮像図(平面図)である。 グラフェン前駆体のSEM撮像図(側面図)である。 実施例7の試験片の摩擦係数を示すグラフである。 実施例7の試験片の摩耗深さを示すグラフである。 実施例8の試験片の摩擦係数を示すグラフである。 実施例8の試験片の摩耗深さを示すグラフである。 実施例9の試験片の摩擦係数を示すグラフである。 実施例9の試験片の摩耗深さを示すグラフである。
本発明は、黒鉛の結晶構造に着目したものであり、この結晶構造に関連する事項を先ず説明する。天然黒鉛は層の重なり方によって六方晶、菱面体晶及び無秩序の3種類の結晶構造に区別されることが知られている。図1に示されるように、六方晶は、層がABABAB・・の順に積層された結晶構造であり、菱面体晶は層がABCABCABC・・の順に積層された結晶構造である。
天然黒鉛は、発掘された段階では菱面体晶が殆ど存在しないが、精製段階で破砕など行われるため、一般的な天然黒鉛系炭素素材中には、菱面体晶が14%程度存在する。また、精製時における破砕を長時間行っても、菱面体晶の比率は30%程度で収束することが知られている(非特許文献1、2)。
また、破砕などの物理的力以外でも加熱によって黒鉛を膨張させて薄片化する方法も知られているが、黒鉛に1600K(摂氏約1300度)の熱をかけて処理を行っても菱面体晶の比率は25%程度である(非特許文献3)。更に超高温の摂氏3000度の熱をかけても30%程度までとなっている(非特許文献2)。
このように、天然黒鉛を物理的力や熱によって処理することで、菱面体晶の比率を増加させることが可能であるがその上限は30%程度である。
天然黒鉛に多く含まれる、六方晶(2H)は非常に安定的で、そのグラフェン同士の層間のファンデルワールス力は、(式3)で示される(特許文献5)。この力を超えるエネルギーを与えることでグラフェンが剥離する。剥離に必要なエネルギーは厚さの3乗に反比例するため、層が無数に重なった厚い状態では非常に微弱で超音波などの弱い物理的な力でグラフェンは剥離するが、ある程度薄い黒鉛から剥離する場合には非常に大きなエネルギーが必要となる。つまり、黒鉛を長時間処理しても、表面の弱い部分のみが剥離し、大部分は剥離されないままになる。
Fvdw=H・A/(6π・t3) ・・・・(式3)
Fvdw:ファンデルワールス力
H :Hamaker定数
A :黒鉛又はグラフェンの表面積
t :黒鉛又はグラフェンの厚み
本願の発明者らは、天然黒鉛に下記に示すような所定の処理を施すことで、粉砕や超高温に加熱する処理では30%程度までしか増えない菱面体晶(3R)の割合を、それ以上まで増加させることに成功した。黒鉛系炭素材料の菱面体晶(3R)の含有率がより多くなると、特に31%以上の含有率であると、この黒鉛系炭素素材を前駆体として用いることで、グラフェンに剥離しやすくなる傾向があり、簡単に高濃度、高分散度されたグラフェン溶液などが得られることが実験・研究の結果として知見として得られた。これは、菱面体晶(3R)にせん断などの力が加わった際に、層間に歪みが生じ、つまり黒鉛の構造全体の歪みが大きくなり、ファンデルワールス力に依存せずに、剥離しやすくなるためであると考えられる。このため、本発明においては、天然黒鉛に所定の処理を施すことでグラフェンが剥離しやすく、グラフェンを高濃度又は高分散させることができる黒鉛系炭素素材をグラフェン前駆体と呼び、以下、後述の実施例において、所定の処理を示すグラフェン前駆体の製造方法、グラフェン前駆体の結晶構造、グラフェン前駆体を用いたグラフェン分散液の順に説明する。
ここで、本明細書においてグラフェンは、平均サイズが100nm以上の結晶であって平均サイズが数nm〜数十nmの微結晶ではなく、かつ層数が10層以下の薄片状又はシート状のグラフェンをいう。
なお、グラフェンは平均サイズが100nm以上の結晶であるため、天然黒鉛以外の非晶質(微結晶)炭素素材である、人造黒鉛、カーボンブラックは、これらを処理してもグラフェンは得られない(非特許文献4)。
また、本明細書において、グラフェン複合体は、本発明に係るグラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材、すなわちRate(3R)が31%以上の黒鉛系炭素素材(例えば後述する実施例1の試料2−7、実施例5の試料2、21・・・)を用いて作成した複合体を意味する。
以下、本発明に係る複合潤滑素材、エンジンオイル、グリース及び潤滑油を実施するための実施例を説明する。
<グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材の製造について>
図3に示されるジェットミルとプラズマとを用いた製造装置Aにより、グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材を得る方法について説明する。製造装置Aは、電波的力による処理としてプラズマを施し、また、物理的力による処理としてジェットミルを用いた場合を例にしている。
図3において、符号1は5mm以下の粒子の天然黒鉛材料(日本黒鉛工業製 鱗片状黒鉛ACB-50)、2は天然黒鉛材料1を収容するホッパー、3はホッパー2から天然黒鉛材料1を噴射するベンチュリーノズル、4はコンプレッサ5から8箇所に分けて圧送された空気を噴射させて天然黒鉛材料をジェット噴流によりチャンバ内に衝突させるジェットミル、7はタンク6から酸素、アルゴン、窒素、水素などのガス9をノズル8から噴射させるとともに、ノズル8の外周に巻回されたコイル11に高圧電源10から電圧を付与し、ジェットミル4のチャンバ内でプラズマを発生させるプラズマ発生装置であり、チャンバ内に4カ所に設けてある。13はジェットミル4と集塵器14とを接続する配管、14は集塵器、15は収集容器、16は黒鉛系炭素素材(グラフェン前駆体)、17はブロアである。
次に製造方法について説明する。ジェットミル及びプラズマの条件は次のとおりである。
ジェットミルの条件は次のとおりである。
圧力 : 0.5MPa
風量 : 2.8m3/min
ノズル内直径 :12mm
流速 : 約410m/s
プラズマの条件は次のとおりである。
出力 : 15W
電圧 : 8kV
ガス種 : Ar(純度99.999Vol%)
ガス流量: 5L/min
ベンチュリーノズル3よりジェットミル4のチャンバ内に投入された天然黒鉛材料1は、チャンバ内で音速以上に加速され、天然黒鉛材料1同士や壁にぶつかる衝撃で粉砕されると同時に、プラズマ12が天然黒鉛材料1に対して放電や励起することで、原子(電子)に直接作用し、結晶の歪みを増し粉砕を促すと考えられる。天然黒鉛材料1はある程度の粒径(1〜10μm程度)まで微粉になると、質量が減り、遠心力が弱まることで、チャンバの中心に接続された配管13から吸い出される。
配管13から集塵器14のチャンバの円筒容器に流入された黒鉛系炭素素材(グラフェン前駆体)が混在した気体は旋回流となって、容器内壁に衝突した黒鉛系炭素素材16を下方の収集容器15に落下させるとともに、チャンバの下方のテーパ容器部によってチャンバの中心に上昇気流が発生し気体はブロワ17から排気される(所謂サイクロン作用)。本実施例における製造装置Aによれば、原料となる1kgの天然黒鉛材料1から約800gのグラフェン前駆体として用いられる 黒鉛系炭素素材(グラフェン前駆体)16を得た(回収効率:8割程度)。
次に、図4に示されるボールミルとマイクロ波とを用いた製造装置Bにより、グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材を得る方法について説明する。製造装置Bは、電波的力による処理としてマイクロ波を施し、また、物理的力による処理としてボールミルを用いた場合を例にしている。
図4(a)及び(b)において、符号20はボールミル、21はマイクロ波発生装置(マグネトロン)、22は導波管、23はマイクロ波流入口、24はメディア、25は5mm以下の粒子の天然黒鉛材料(日本黒鉛工業製 鱗片状黒鉛 ACB-50)、26は収集容器、27はフィルタ、28は黒鉛系炭素素材(グラフェン前駆体)である。
次に製造方法について説明する。ボールミル及びマイクロ波発生装置の条件は次のとおりである。
ボールミルの条件は次のとおりである。
回転数 : 30rpm
メディアサイズ: φ5mm
メディア種 : ジルコニアボール
粉砕時間 : 3時間
マイクロ波発生装置(マグネトロン)の条件は次のとおりである。
出力 : 300W
周波数 : 2.45GHz
照射方法 : 断続的
ボールミル20のチャンバ内に1kgの天然黒鉛系炭素原料25と、800gのメディア24を投入し、チャンバを閉じ30rpmの回転数で3時間処理する。この処理中にチャンバにマイクロ波を断続的(10分おきに20秒)に照射する。このマイクロ波の照射により、原料の原子(電子)に直接作用し、結晶の歪みを増やすと考えられる。処理後、フィルタ27でメディア24を取り除くことで、10μm程度の粉体の黒鉛系炭素素材(前駆体)28を収集容器26に収集することができる。
<黒鉛系炭素素材(前駆体)のX線回折プロファイルについて>
図5−図7を参照して、製造装置A、Bにより製造された黒鉛系天然材料(試料6、試料5)及び製造装置Bのボールミルのみを用いて得た10μm程度の粉体の黒鉛系天然材料(試料1:比較例)のX線回折プロファイルと結晶構造について説明する。
X線回折装置の測定条件は次のとおりである。
線源 : Cu Kα線
走査速度 : 20°/min
管電圧 : 40kV
管電流 : 30mA
各試料は、X線回折法(リガク社製試料水平型多目的X線回折装置 Ultima IV)によれば、それぞれ六方晶2Hの面(100)、面(002)、面(101)、及び菱面体晶3Rの面(101)にピーク強度P1,P2,P3,P4を示すことからこれらについて説明する。
ここで、X線回折プロファイルの測定は、近年では国内外を問わずいわゆる標準化された値が用いられている。当該、リガク社製試料水平型多目的X線回折装置 Ultima IVは、X線回折プロファイルを、JIS R 7651:2007「炭素材料の格子定数及び結晶子の大きさ測定方法」に準拠して測定可能な装置である。なお、Rate(3R)は、Rate(3R)=P3/(P3+P4)×100で求められる回折強度の比であり、回折強度の値が変化しても、Rate(3R)の値が変化するものではない。つまり、回折強度の比は規格化されており、絶対値で物質の同定を行うのを回避するために一般に用いられおり、その値が測定装置に依存することはない。
ボールミルによる処理とマイクロ波処理を施す製造装置Bにより製造された試料5は、図5及び表1に示されるように、ピーク強度P3やピーク強度P1の強度の割合が高く、P3のP3とP4の和に対する割合を示す(式1)で定義されるRate(3R)が46%であった。また、強度比P1/P2は0.012であった。
Rate(3R)=P3/(P3+P4)×100・・・・(式1)
ここで、
P1は六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(100)面のピーク強度
P2は六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(002)面のピーク強度
P3は菱面晶系黒鉛層(3R)のX線回折法による(101)面のピーク強度
P4は六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(101)面のピーク強度
である。
同様に、ジェットミルによる処理とプラズマによる処理を施す製造装置Aにより製造された試料6は、図6及び表2に示されるように、ピーク強度P3やピーク強度P1の強度の割合が高く、Rate(3R)が51%であった。また、強度比P1/P2は0.014であった。
また、ボールミルのみにより製造された比較例を示す試料1は、図7及び表3に示されるように、ピーク強度P3は試料5、6に比較してその割合が小さく、Rate(3R)は23%であった。また、強度比P1/P2は0.008であった。
このように、実施例1の製造装置Bにより製造された試料5、実施例1の製造装置Aにより製造された試料6では、Rate(3R)が、46%、51%となり、図2に示す天然黒鉛や、比較例を示す試料1に比較して、40%以上または50%以上となることが示された。
次に、上述で製造されたグラフェン前駆体を用いて、グラフェン分散液を作成し、グラフェンの剥離し易さを比較した。
<グラフェン分散液について>
グラフェン分散液の作成方法について図8を参照して説明する。図8においては、グラフェン分散液を作成する際に、液中にて超音波処理とマイクロ波処理とを併用する場合を例にしている。
(1)ビーカー40にグラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材0.2gと分散液であるN−メチルピロリドン(NMP)200mlを入れる。
(2)ビーカー40をマイクロ波発生装置43のチャンバ42に入れ、上方から超音波ホーン44の超音波の振動子44Aを分散液41に挿入する。
(3)超音波ホーン44を作動させ20kHz(100W)の超音波を連続的に3時間付与する。
(4)上記超音波ホーン44を作動させている間に、マイクロ波発生装置43を作動させマイクロ波2.45GHz(300W)を断続的(5分おきに10秒照射)に付与する。
図9は上述のようにして作成されたグラフェン分散液が24時間経過した様子である。
製造装置Bにより製造された試料5を用いたグラフェン分散液30は一部沈殿しているものの全体が黒色を呈するものが確認された。これは、グラフェン前駆体として用いた黒鉛系炭素素材の多くがグラフェンに剥離した状態で分散していると考えられる。
比較例を示す試料1を用いた分散液31は黒鉛系炭素素材のほとんどが沈殿しており、一部が上澄み液として浮いていることが確認された。このことから、ごく一部がグラフェンに剥離し、上澄みとして浮いていると考えられる。
また、上述のようにして作成されたグラフェン分散液を試料台(TEMグリッド)の上に観察可能な濃度に希釈・塗布し、乾燥させて、透過型電子顕微鏡(TEM)の図10に示すような撮像画からグラフェンのサイズと層数を観察した。なお、試料1については上澄みを希釈・塗布したものを用いた。例えば、図10の場合、図10(a)からサイズはフレーク33の最大の長さLであり約600nm、図10(b)から層数はフレーク33の端面を観察しグラフェン層の重なりをカウントし6層(符号34が指す領域)として求めた。このように各フレーク(フレーク数をNとする)のサイズと層数を測定して、図11、図12に示すグラフェン層数と大きさを求めた。
図11(a)を参照し、実施例1の製造装置Bにより製造された試料5(Rate(R3)が46%)のグラフェン分散液に含まれた薄片状のフレークの粒度分布(サイズの分布)は、0.5μmをピークとする分布であった。また、図11(b)において、層数は、3層をピークとし、10層以下のグラフェンが68%となる分布であった。
図12を参照して、比較例の試料1(Rate(R3)が23%)の分散液に含まれた薄片状のフレークの粒度分布(サイズの分布)は、0.9μmをピークとする分布であった。また、層数は、30層以上のものが大部分を占め、10層以下のグラフェンが10%となる分布であった。
この結果から、製造装置Bにより製造された試料5のものは、グラフェン前駆体として用いた場合に、10層以下のグラフェンが多く、グラフェンの分散性に優れ、かつ、高濃度のグラフェン分散液を得られることが分った。
次に、図13を参照して、グラフェン前駆体の割合Rate(3R)とグラフェン分散液における層数の関係について説明する。図13における、試料1、5、6は上述したものである。試料2、3、4は、ボールミルによる処理とマイクロ波処理とを施す製造装置Bで製造したものであり、試料5よりもマイクロ波の照射時間を短くして製造したグラフェン前駆体を用いてグラフェン分散液を作成したものである。また、試料7はジェットミルによる処理とプラズマ処理とを施す製造装置Aで製造したものであり、試料6よりも高出力のプラズマを与えて製造したグラフェン前駆体を用いてグラフェン分散液を作成したものである。
図13から、Rate(3R)が31%及び38%の試料2及び3は、層数の分布の形状が13層前後にピークを有する正規分布に近い形状(試料2、3を用いた分散液)である。Rate(3R)が40%以上の試料4−7は、層数の分布の形状が数層(薄いグラフェン)の部分にピークを有する所謂対数正規分布の形状である。一方、Rate(3R)が23%の試料1は、層数が30層以上の部分にピークを有する形状(試料1を用いた分散液)である。すなわち、Rate(3R)が31%以上となると、層数の分布の形状が31%未満と異なり、更にRate(3R)が40%以上となると、層数の分布の形状が40%未満とは明らかに異なる傾向となることが分かる。また、10層以下のグラフェンの割合は、試料3を用いた分散液のRate(3R)が38%であるのに対し、試料4を用いた分散液のRate(3R)が62%であり、Rate(3R)が40%以上となると、10層以下のグラフェンの割合が急増していることが分かる。
これらのことから、Rate(3R)が31%以上の場合に10層以下のグラフェンに剥離しやすくなり、さらに、Rate(3R)が40%、50%、60%と多くなるにつれ、10層以下のグラフェンにさらに剥離し易くなると考えられる。また、強度比P1/P2について着目すると、試料2−試料7は、比較的狭い0.012〜0.016の範囲内の値となっており、結晶構造にゆがみが生じグラフェンに剥離しやすいと考えられる0.01を超えるからいずれも好ましい。
さらにRate(3R)と10層以下のグラフェンが含まれる割合との対比を行った結果を図14に示す。図14を参照すると、Rate(3R)は、25%以上となると31%付近から10層以下のグラフェンが増加し始め(右肩上がりの傾きとなり)、また40%前後において、10層以下のグラフェンが急増し(10層以下のグラフェンの割合は、試料3を用いた分散液のRate(3R)が38%であるのに対し、試料4を用いた分散液のRate(3R)が62%であり、Rate(3R)が4%増えることにより10層以下のグラフェンの割合は24%増えるように急増し)かつ全体に占める10層以下のグラフェンが50%以上となることが判明した。なお、図14中の黒四角の点は各々異なる試料であり、上述した試料1−7と、それ以外の他の試料も含まれている。
このことから、Rate(3R)が31%以上の試料をグラフェン前駆体として用いてグラフェン分散液を作成すると、10層以下のグラフェンが分散される割合が増加し始め、さらにRate(3R)が40%以上の試料をグラフェン前駆体として用いてグラフェン分散液を作成すると、10層以下のグラフェンが50%以上生成される。すなわち、グラフェンが高濃度かつ高分散のグラフェン分散液を得ることができる。また、上述したように、この分散液に含まれる黒鉛系炭素素材(前駆体)はほとんど沈殿しないから、簡単に濃いグラフェン分散液を得ることができる。この方法により、濃縮することなしに、グラフェンの濃度が10%を超えるグラフェン分散液を作成することもできた。特に、10層以下のグラフェンが分散する割合が50%以上に急増するという観点から、Rate(3R)は40%以上がより好ましい。
上述により、Rate(3R)が31%以上、好ましくは40%以上、更に好ましくは50%以上であると、10層以下のグラフェン及び10層前後の薄層の黒鉛系炭素素材に分離される割合が多く、これらの黒鉛系炭素素材をグラフェン前駆体として用いた場合に、グラフェンの分散性に優れ、かつ、高濃度のグラフェン分散液を得られることが分った。また、後述する実施例5により、Rate(3R)が31%以上の場合に黒鉛系炭素素材グラフェン前駆体として有用であることが明確になった。
また、Rate(3R)の上限を特に規定する必要はないと考えるが、強度比R1/R2が0.01以上を同時に満たすようにすることが、分散液等を作成する場合にグラフェンに分離しやすいことから好ましい。なお、製造装置A、Bを用いた製造方法の場合には、グラフェン前駆体を製造がし易いという観点からは、上限は70%程度である。また、製造装置Aのジェットミルによる処理とプラズマ処理とを併用する方法の方が、Rate(3R)が高いものを容易に得られることからより好ましい。なお、物理的力による処理と電波的力による処理を併用して、Rate(3R)が31%以上となっていればよい。
実施例1では、グラフェン分散液を得る際に、超音波処理とマイクロ波処理とを併用する場合について説明したが、実施例2では、超音波処理のみを行いマイクロ波処理は行っておらず、その他の条件は実施例1と同様である。
図15(b)は、製造装置Bで製造した試料5(Rate(3R)=46%)のグラフェン前駆体を用い超音波処理を施して得られたグラフェン分散液の層数の分布を示す。なお、図15(a)は実施例1の製造装置Bにより製造された試料5の図11(b)に示される分布と同じである。
その結果、層数の分布の傾向は概ね同様であるが、10層以下のグラフェンの割合は64%であり、実施例1の68%に比較し、少し低下している。このことから、グラフェン分散液を作成する際は物理的力と電波的力の処理を2つ同時に行った方がより効果があることが判明した。
実施例3では導電インクに用いる例について説明する。
実施例1の試料1(Rate(3R)=23%)、試料3(Rate(3R)=38%)、試料5(Rate(3R)=46%)、試料6(Rate(3R)=51%)をグラフェン前駆体として、水と導電性付与剤たる炭素数3以下のアルコールとの混合溶液に導電性インクに使用する濃度にしたINK1,INK3,INK5,INK6を作成し、それぞれの抵抗値を比較した。この結果から、Rate(3R)が高くなるにつれ、抵抗値は低いという結果となった。
実施例4では樹脂に混練する例について説明する。
グラフェンを分散した樹脂シートを作成する際に、ガラス繊維を添加したものの引張強度が非常に良好であったためその要因を調べたところ、ガラス繊維と同時に添加する相溶化剤が、前駆体がグラフェン化することに寄与していることが知見として得られた。そこで、分散剤と相溶化剤とを樹脂に混ぜたものについて検討した。
実施例1の試料5(Rate(3R)=46%)を前駆体としてLLDPE(ポリエチレン)に1wt%直接添加し、ニーダーや2軸混練機(エクストルーダー)等でシェア(せん段力)をかけながら混練した。
樹脂中で黒鉛系炭素素材がグラフェン化し、高分散すると、引張強度が増加することは公知であることから、樹脂の引張強度を測定することによりグラフェン化と分散の度合いを相対的に推察することができる。引張強度は、島津製作所社製の卓上型精密万能試験機(AUTOGRAPH AGS−J)で試験速度500mm/minの条件で測定した。
また、添加剤の有無による、グラフェン化と分散性を比較するため、下記(a),(b),(c)3種類の比較を行った。
(a)添加剤無
(b)一般的分散剤(ステアリン酸亜鉛)
(c)相溶化剤(グラフト変性ポリマー)
測定結果を示す図17を参照して結果について説明する。なお、図17中、丸印は比較例の試料1を用いた樹脂材料、四角印は実施例1の試料5を用いた樹脂材料である。
(a)の添加剤を加えない場合は、引っ張り強さの差は小さかった。
(b)の分散剤を添加した場合は、試料5のグラフェン前駆体はグラフェン化がある程度促進されることがわかる。
(c)の相溶化剤を添加した場合は、試料5のグラフェン前駆体はグラフェン化がかなり促進されることがわかる。これは、相溶化剤は、グラフェン分散させる効果の他に、グラフェン層結合体と樹脂を結合させ、その状態でシェアを加えると、グラフェン層結合体を引きはがすように作用すると考えられるからである。
分散剤としてステアリン酸亜鉛を例に説明したが、化合物に合った性質のものを選択するとよい。例えば、分散剤としては、陰イオン(アニオン)界面活性剤、陽イオン(カチオン)界面活性剤、両性イオン界面活性剤、非イオン(ノニオン)界面活性剤が挙げられる。特にグラフェンに対しては、陰イオン界面活性剤と非イオン界面活性剤が好ましい。より好ましくは、非イオン界面活性剤である。非イオン界面活性剤は、オキシエチレン基や水酸基、グルコシドなどの糖鎖など、イオンには解離せず、水との水素結合によって親水性を呈する界面活性剤であるため、イオン性界面活性剤ほどの親水性の強さは無いが、非極性溶媒中での使用が可能であるメリットがある。そして、その親水基鎖長を変化させることで、その性質を親油性から親水性まで自由に変化させることができるからである。陰イオン界面活性剤としては、X酸塩(X酸は例えばコール酸、デオキシコール酸)、例えばSDC:デオキシコール酸ナトリウム、リン酸エステルなどが好ましい。また、非イオン界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪アルコールエトキシレート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルグリコシドなどが好ましい。
実施例1でも説明したRate(3R)を31%以上とするとグラフェン前駆体として有用であることを更に検証するため、実施例5では樹脂に混練する例を用いて更に説明する。実施例1における試料1〜7を含む図14にプロットされたRate(3R)の黒鉛系炭素素材を前駆体として用いた樹脂成形品の弾性率について説明する。
(1)上記黒鉛系炭素素材を前駆体としてLLDPE(ポリエチエレン:プライムポリマー社製20201J)5wt%を分散剤(ノニオン系界面活性剤)1wt%とともに、イオン交換水に混ぜ、上述した図8の装置を同様の条件で駆動して、グラフェン乃至黒鉛系炭素素材が5wt%となるグラフェン分散液を得る。
(2)(1)において得られたグラフェン分散液0.6kgを直ちに、ニーダー(モリヤマ株式会社製 加圧型ニーダー WDS7-30)を用いて樹脂5.4kgに混練し、ペレットを作成する。混練条件については後述する。なお、樹脂と分散液との配合比率は最終的にグラフェン乃至黒鉛系炭素素材の添加量が0.5wt%になるように選定した。
(3)(2)において作成されたペレットを使用して射出成型機で試験片 JIS K7161 1A形(全長165mm、幅20mm、厚み4mm)を作成する。
(4)(3)により作成された試験片の弾性率(Mpa)をJIS K7161に基づいて、株式会社島津製作所製の卓上精密万能試験機(AUTOGRAPH AGS-J)により試験速度:500mm/minの条件で測定した。
混錬条件は次のとおりである。
混練温度:135℃
ローター回転数 :30rpm
混練時間:15分
炉内加圧:開始後10分間.0.3MPa、10分経過後大気圧まで除圧
ここで、上述した(2)のグラフェン分散液の樹脂への分散について、一般に樹脂の融点は100℃以上のため、大気中では水が蒸発するが、加圧ニーダーは、炉内を加圧できる。炉内で、水の沸点を上げ、分散液を液体のまま留めることにより、分散液と樹脂とのエマルションが得られる。所定の時間加圧後、徐々に圧力を抜くと、水の沸点が下がり水は蒸発していく。その際に水に閉じ込められていたグラフェンは樹脂中に残る。これにより、樹脂中にグラフェン黒鉛系炭素素材が高分散される、と考えられる。
また、グラフェン分散液は時間の経過とともにグラフェン黒鉛系炭素素材が沈降する傾向にあることから、グラフェン分散液を得た直後に樹脂に混練することが好ましい。
なお、分散液と樹脂とのエマルションを得る手段は、加圧ニーダーの他に、ケミカルスラスター、ボルテックスミキサー、ホモミキサー、高圧ホモジナイザー、ハイドロシェア、フロージェットミキサー、湿式ジェットミル、超音波発生器などでも良い。
また、分散液の溶媒として水の他に2−プロパノール(IPA)、アセトン、トルエン、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などを用いても良い。
表4には、Rate(3R)が30%付近のRate(3R)と樹脂成形品の弾性率の関係を示している。なお、表4における、試料00は前駆体を混錬しなかったブランクの試料であり、試料11、12はRate(3R)が試料1と試料2の間、試料21はRate(3R)が試料2と試料3の間の試料である。
図18及び表4から、試料00(ブランク)に対する弾性率の差(弾性率の増加割合)は、Rate(3R)が31%まではほぼ10%前後で略一定であり、Rate(3R)が31%を境にその差は32%まで急増し、Rate(3R)が31%から42%にかけてその差は50%まで単調増加し、Rate(3R)が42%以降はその差は微増乃至60%前後で収束することが判明した。このように、Rate(3R)が31%以上となると、弾性率に優れる樹脂成形品が得られる。また、樹脂成形品に含まれるグラフェン乃至黒鉛系炭素素材は0.5wt%と少量であるため、樹脂が本来有する性状に与える影響が少ない。
この傾向は、Rate(3R)が31%を境として、樹脂と接触する10層以下のグラフェンを含む薄層の黒鉛系炭素素材が急増するためと考えられる。ここで、実施例5では、水に分散させるための分散剤の影響でTEMにより観察してもグラフェンの層数を確認できない。そこで、参考までに、上述した急増する理由を、表4に示す、NMPに分散した際の黒鉛系炭素素材の層数の分布を基に検討する。試料12と試料2とを対比すると、グラフェン(層数が10層以下)は共に25%になる。一方、図19に示されるように、試料2は15層未満の薄層の割合が試料12よりも多く、すなわち前駆体として分散させた黒鉛系炭素素材の表面積が広く、樹脂と接触する面積が急激に広がったためと考えられる。
このように、実施例5により、Rate(3R)が31%以上であると、グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材は10層以下のグラフェン乃至薄層の黒鉛系炭素素材に分離される傾向が明確に示された。
上記方法により製造したグラフェン前駆体を基油に添加する実験を行った。
<諸条件>
基油(鉱物油):ダフニー メカニックオイル 32 (出光興産社製 ISO粘度グレード VG32)(工業用)、
試験機:摩擦摩耗試験機 TRB−S−DU−0000(CSM社製)、
<<ボールオンディスク法>>
ボール(径:φ6mm、材質:SUJ2、硬度HV780)、
ディスク(径:φ30、厚さ:2mm、材質:SUS440C、硬度:HV240、表面粗さ0.3μmRzjis)、
<摩擦条件1:回転動速度:100rpm、半径:10mm、荷重:5N、油温:80℃ 30分間>
<JIS R 1613、DIN50324およびASTM、ISOに準拠>
表面粗さ測定器:SV-3000CNC (ミツトヨ社製)
<測定条件:速度0.1mm/sec、先端半径2μm、測定力0.75mN、JIS B0651:2001に準拠>
黒鉛系炭素素材:グラフェン前駆体(上記方法により製造)、
攪拌機(シンキー社製 ARE-310)、
<撹拌条件1:常温25℃、撹拌2000rpm×10分、撹拌後脱泡2100rpm×30秒>
比較材:二硫化モリブデンパウダー(ダイゾー社製 M-5 平均粒径0.45μm)
<実験手順>
ステップ1.基油(990g)にグラフェン前駆体(試料1、2、21、4(実施例1、5に用いた試料)を参照。)を10g加え、撹拌条件1にて、グラフェン前駆体を剥離・分散し、濃度1wt%の分散液62を得る。
ステップ2.600gの分散液62を試験機60の液中ホルダー61に入れ摩擦条件1でボール63を接触させたディスク64を回転させて摩擦試験をした。
ステップ3.30分間の試験の内、終了前30秒間の摩擦係数(μ)の平均値を読み取り、図21にプロットした。
ステップ4.表面粗さ測定器を用いてディスク64の表面のボール63が接触し摩耗した部分を5か所計測し、その平均値から摩耗深さを求め、図22にプロットした。
グラフェン様黒鉛の影響を確認するため、表5に示す混合比率により、Rate(3R)が23%(試料1)、31%(試料2)、35%(試料21)、42%(試料4)で実験を行った。
表5、図21、図22から、摩擦係数は、実施例6-2,6-3,6-4は、実施例6-1、比較例6-1,6-2よりも低い、つまり、滑りが良くなることが観察された。特に、グラフェン前駆体の割合Rate(3R)が31%以上となると0%(比較例6-1)(厳密に言うとRate(3R)=0%ではなく、グラフェン前駆体を添加していないもののため、同じグラフにプロットは出来ないが、便宜上0%の位置にプロットする。以降0%は同じ意味。また、MoSも同様とする。)、23%(実施例6-1)、MoSを添加した比較例6-2に比較し摩擦係数が大幅に低くなるという特筆すべき傾向が観察された。
また、摩耗深さは、摩擦係数と同様に、実施例6-2,6-3,6-4は、実施例6-1、比較例6-1,6-2よりも浅い、つまり摩耗が少ないことが観察された。さらに、摩耗深さは、グラフェン前駆体の割合Rate(3R)にかかわらず、グラフェン前駆体を添加すると浅くなる傾向が観察された。なお、MoSを添加した比較例7-2は、モース硬度1であり、ダイヤモンド並み(モース硬度10)のグラフェン様黒鉛よりも柔らかいため、あるいは、潤滑性がグラフェン様黒鉛よりも悪いため、実施例6-1よりも摩耗深さは深くなったと推察される。
Rate(3R)が31%以上(実施例6-2,6-3,6-4)のグラフェン前駆体を基油に分散させると、摩擦係数が低くなり、摩耗深さが浅くなる。これは、ボール63とディスク64の間で起きるせん断力によって、グラフェン前駆体又はグラフェン様黒鉛からグラフェン様黒鉛にさらに剥離されると同時に、摺動部分にグラフェン様黒鉛が吸着し、ディスク表面を保護することで摩擦係数が低く、摩耗深さが浅くなったと推察される。
なお、Rate(3R)が31%未満(実施例6-1)では、せん断力によって剥離されるグラフェン様黒鉛の量が少なく、グラフェン前駆体を添加することによる効果が十分に発揮されていないと考える。
また、Rate(3R)が35%以上(実施例6-3、6-4)であると、それ以下の場合よりも、摩擦係数が低く、摩耗深さが浅くなり、良好である。Rate(3R)が31%(実施例6-2)よりも、グラフェン様黒鉛の数が増えたためと考えられる。
参考のために、グラフェン前駆体の走査型電子顕微鏡(SEM)撮像図について説明する。実施例1により得られたグラフェン前駆体は、例えば図23、図24に示されるように、長さ7μm、厚さ0.1μmの薄層黒鉛の積層体である。
上記方法により製造したグラフェン前駆体を基油に添加する実験を行った。
<諸条件>
基油(合成油):エクソンモービル1 0W−20 (Mobil社製 SAE粘度グレード0W−20)(自動車用)、
基油以外の実験条件等は実施例6と同様である。
表6、図25、図26から、摩擦係数は、実施例7-2,7-3,7-4は、実施例7-1、比較例7-1,7-2よりも低いことが観察された。特に、グラフェン前駆体の割合Rate(3R)が31%以上となると0%(比較例7-1)、23%(実施例7-1)、MoSを含む比較例7-2に比較し摩擦係数が大幅に低くなるという特筆すべき傾向が観察された。
また、摩耗深さは、摩擦係数と同様に、実施例7-2,7-3,7-4は、実施例7-1、比較例7-1,7-2よりも浅いことが観察された。さらに、摩耗深さは、グラフェン前駆体の割合Rate(3R)にかかわらず、グラフェン前駆体を添加すると浅くなる傾向が観察された。なお、MoSを含む比較例7-2は、モース硬度1であり、ダイヤモンド並み(モース硬度10)のグラフェン様黒鉛よりも柔らかいため、あるいは、潤滑性がグラフェン様黒鉛よりも悪いため、実施例7-1よりも摩耗深さは深くなったと推察される。
摩擦係数及び摩耗深さが改善する理由は実施例6における説明と同様であると考えられる。
実施例6、7から、基油の種類によらず、摩擦係数が低くなり、摩耗深さが浅くなることが観察された。グラフェン前駆体としてRate(3R)が23%のもの(実施例6-1,7-1)は、基油によらずグラフェン前駆体を添加しないもの(比較例6-2,7-2)よりも、摩耗深さは浅くなり、摩擦係数はわずかに低くなるが、グラフェン前駆体としてRate(3R)が31%以上のものを用いると急激に摩擦係数が低くなり、摩耗深さが浅くなる(大幅に改善する)ことが観察された。
上記方法により製造したグラフェン前駆体を基油に添加する実験を行った。
<諸条件>
基油(鉱物油):ダフニー エポネックスグリース No.1 (出光興産社製 NLGI No. No.1)(工業用)、
<摩擦条件2:回転動、速度:100rpm、半径:10mm、荷重:5N、油温:80℃、10分間>
基油と摩擦条件以外の実験条件等は実施例6と同様である。
ステップ1.基油500gにグラフェン前駆体(試料1、2、21、4(実施例1、5に用いた試料)を参照。)を5g加え、撹拌条件1にて、グラフェン前駆体を剥離・分散し、濃度1wt%のグリース62を得る。(説明の便宜上、実施例8では図20における符号62はグリースを指す。)
ステップ2.100gのグリース62を試験機60の液中ホルダー61に入れ摩擦条件2でボール63を接触させたディスク64を回転させて摩擦試験をした。
ステップ3.30分間の試験の内、終了前30秒間の摩擦係数(μ)の平均値を読み取り、図27にプロットした。
ステップ4.表面粗さ測定器を用いてディスク64の表面のボール63が接触し摩耗した部分を5か所計測し、その平均値から摩耗深さを求め、図28にプロットした。
表7、図27、図28に示されるように、摩擦係数は、実施例8-2,8-3,8-4は、実施例8-1、比較例8-1,8-2よりも低いことが観察された。特に、グラフェン前駆体の割合Rate(3R)が31%以上となると0%(比較例7-1)、23%(実施例7-1)、MoSを含む比較例7-2に比較し摩擦係数が大幅に低くなるという特筆すべき傾向が観察された。
また、摩耗深さは、摩擦係数と同様に、実施例8-2,8-3,8-4は、実施例8-1、比較例8-1,8-2よりも浅いことが観察された。さらに、摩耗深さは、グラフェン前駆体の割合Rate(3R)にかかわらず、添加すると浅くなる傾向が観察された。なお、MoSを含む比較例8-2は、モース硬度1であり、ダイヤモンド並み(モース硬度10)のグラフェン様黒鉛よりも柔らかいため、あるいは、潤滑性がグラフェン様黒鉛よりも悪いため、実施例8-1よりも摩耗深さは深くなったと推察される。
摩擦係数が低く、摩耗深さが浅くなるなどの改善理由は実施例6における説明と同様であると考えられる。
実施例6、7、8から、基油の種類によらず、摩擦係数が低く、摩耗深さが浅くなるなど、改善することが観察された。グラフェン前駆体としてRate(3R)が23%のもの(実施例6-1,7-1,8-1)は、基油によらずグラフェン前駆体を添加しないもの(比較例6-2,7-2,8-2)よりも、摩耗深さは浅くなり、摩擦係数はわずかに低くなっているが、グラフェン前駆体としてRate(3R)が31%以上のものを用いると急激に摩擦係数が低くなり、摩耗深さが浅くなる(大幅に改善する)ことが観察された。
次に、上記方法により製造したグラフェン前駆体を用いて基油に添加する実験を行った。Rate(3R)が31%であるグラフェン前駆体の基油に対する混合比率を表8に示される条件で実験を行った。実験条件等は実施例6と同様である。
表8、図29、図30から、基油に対するグラフェン前駆体の混合比率が1/10(実施例9-5)付近で、摩擦係数及び摩耗深さはほぼ同様の値となり、特性が飽和していることが観察された。また、グラフェン前駆体の混合比率が1/10以上となると、逆に摩擦係数が高くなることが観察された。一方、混合比率が1/200(実施例9-10)のものは、グラフェン前駆体を添加しない比較例6-1よりも、摩擦係数は10%以上低くなり、摩耗深さは20%以上浅くなることが観察された。また、摩擦係数は当該混合比率1/50(実施例9-1)、摩耗深さは当該混合比率1/200(実施例9-10)以上で急激にそれぞれ低く/浅くなることが観察された。
このことから、混合比率は、下限は1/10000以上、好ましくは1/1000以上、さらに好ましくは1/200以上、上限は1未満、好ましくは1/10未満、さらに好ましくは1/50未満であることが好ましい。
また、実施例6−9において、基油の酸化防止目的とする添加物を加えても良い。この場合、添加物は基油の混合割合(wt%)に含まれるものとする。このような、添加物としてZnDTP(ジチオリン酸亜鉛)、フェノール類、アミン類、硫化物、放射性物質などが挙げられる。特に酸化の因子となるラジカル基(活性)の抑制効果としてマイナスイオンを発する放射性物質が良い。その中でも、半減期の長いラジウム226を含むバドガシュタイン鉱石(原産地:オーストリア)が好ましい。
ここで、酸化のメカニズムについて説明する。酸化の因子は、酸素、温度、摩耗金属粉、水分、ブローバイガスなどがあり、基油となる炭化水素基にこれらの因子が作用すると、炭化水素基(RH)がR(活性)とH(水素)に分解される。次に、分解されたRと酸素(O)が結合し、過酸化物(ROO)や(ROOH)に変化する。この過酸化物が基油の炭化水素基と反応することで、連鎖的な反応が起こり、急速に酸化することとなる。
また、実施例6−9では、グラフェン前駆体を上述したように電波的力による処理及び/又は物理的な力による処理により製造しているため、酸化、還元処理が不要である。さらに、基油との混合物を製造する際に、還元処理が不要であるため、高温や、粉体に乾燥する必要が無く、基油との混練が容易である。
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
例えば、黒鉛系炭素素材を分散させる母材としては次の物が挙げられる。ただし、母材は黒鉛系炭素素材よりも配合比率は小さくても良い。
基油として、パラフィン系オイル、ナフテン系オイルなどの鉱物油が挙げられる。またポリαオレフィン(PAO)、ポリオールエステル、ジエステル、コンプレックスエステルなどのエステル系、合成炭化水素系、エーテル系、フェニルエーテル系、シリコーン系などの合成油が挙げられる。また、ひまし油、菜種油、ワックス(蝋)などの植物油が挙げられる。また、マッコウクジラ油、牛脂などの動物油が挙げられる。
グリースとして、カルシウム石鹸基グリース、カルシウム複合基グリース、ナトリウム石鹸基グリース、アルミニウム石鹸基グリース、リチウム石鹸基グリース、非石鹸基グリース、シリコーングリース、フルオロエーテルグリースなどが挙げられる。
また、グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材を、製造するための天然黒鉛として、5mm以下の粒子の天然黒鉛材料(日本黒鉛工業製 鱗片状黒鉛 ACB−50)を例に説明したが、天然黒鉛は、鱗片状黒鉛であって、5mm以下に粉砕されているもので、Rate(3R)が25%未満かつ強度比P1/P2が0.01未満のものが入手しやすいという観点から好ましい。近年の技術開発により、人造で天然黒鉛の様な黒鉛(層状に結晶が重なったもの)を合成できるようになったため、グラフェン及びグラフェン様黒鉛の原料は天然黒鉛(鉱物)とは限らない。金属含有量をコントロールする必要のある用途に対しては、純度が高い人造黒鉛を用いることが好ましい。また、Rate(3R)が31%以上であれば上述した物理的力による処理や電波的力による処理以外によって得られた人造黒鉛であってもよい。
なお、グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材は、一般的にグラフェン、グラフェン前駆体、グラフェンナノプレートレット(GNP)、フューレイヤーグラフェン(FLG)、ナノグラフェンなどと呼ばれているが、特に限定するものではない。
本発明は潤滑性を有する複合潤滑素材を対象としており、その適用分野は問わない。なお、本発明において、例えば下記の様な分野がある。
(1)エンジンオイル
自動車などの内燃機関用。
(2)摺動面油
工作機械のすべり面用。
(3)タービン油
火力、水力、原子力、船舶、飛行機などのタービン用。
(4)油圧作動油
重機などの油圧作動する油圧装置用。
(5)軸受油
ベアリング、回転軸受など用。
(6)ミスト給油用潤滑油
焼鈍時の冷却や離形剤など用。
(7)ギヤ油
ベベルギヤ、ウォームギヤなど用。
(8)圧縮基油
エアーコンプレッサーなど用。
(9)冷凍基油用
チラー、温調機など用。
(10)真空ポンプ油
油回転式真空ポンプ、オイルミストポンプなど用。
(11)トランスミッション油
CVTなどのトランスミッション用

Claims (12)

  1. 母材に少なくとも黒鉛系炭素素材及び/又は黒鉛系炭素素材から剥離されたグラフェン様黒鉛が分散された複合潤滑素材であって、
    前記黒鉛系炭素素材は、菱面晶系黒鉛層(3R)と六方晶系黒鉛層(2H)とを有し、前記菱面晶系黒鉛層(3R)と前記六方晶系黒鉛層(2H)とのX線回折法による次の(式1)により定義される割合Rate(3R)が31%以上であることを特徴とする複合潤滑素材。
    Rate(3R)=P3/(P3+P4)×100・・・・(式1)
    ここで、
    P3は菱面晶系黒鉛層(3R)のX線回折法による(101)面のピーク強度
    P4は六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(101)面のピーク強度
    前記グラフェン様黒鉛は、前記黒鉛系炭素素材から一部又は全部が剥離されてなる、前記黒鉛系炭素素材からグラフェンまでの混在物であり、
    前記グラフェンは平均サイズが100nm以上の結晶であって、かつ層数が10層以下の薄片状又はシート状のもの
    である。
  2. 前記母材に対する前記黒鉛系炭素素材の重量比は、1/10000以上〜1未満であることを特徴とする請求項1に記載の複合潤滑素材。
  3. 前記母材は少なくとも、鉱物由来、合成由来、植物由来及び動物由来の基油の一以上であることを特徴とする請求項1に記載の複合潤滑素材。
  4. 前記複合潤滑素材は酸化劣化防止を目的とする添加物が一種以上含有されていることを特徴とする請求項1に記載の複合潤滑素材。
  5. 前記添加物は放射性物質であることを特徴とする請求項4に記載の複合潤滑素材。
  6. 請求項1に記載の前記複合潤滑素材を用いたことを特徴とするエンジンオイル。
  7. 請求項1に記載の前記複合潤滑素材を用いたことを特徴とするグリース。
  8. 請求項1に記載の前記複合潤滑素材を用いたことを特徴とする潤滑油。
  9. 母材に少なくとも黒鉛系炭素素材を混錬するステップを含む複合潤滑素材の製造方法であって、
    前記黒鉛系炭素素材は、菱面晶系黒鉛層(3R)と六方晶系黒鉛層(2H)とを有し、前記菱面晶系黒鉛層(3R)と前記六方晶系黒鉛層(2H)とのX線回折法による次の(式1)により定義される割合Rate(3R)が31%以上であることを特徴とする複合潤滑素材の製造方法。
    Rate(3R)=P3/(P3+P4)×100・・・・(式1)
    ここで、
    P3は菱面晶系黒鉛層(3R)のX線回折法による(101)面のピーク強度、
    P4は六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(101)面のピーク強度、
    である。
  10. 前記母材に対する前記黒鉛系炭素素材の重量比は、1/10000以上〜1未満であることを特徴とする請求項9に記載の複合潤滑素材の製造方法。
  11. 前記母材は少なくとも、鉱物由来、合成由来、植物由来及び動物由来の基油の一以上であることを特徴とする請求項10に記載の複合潤滑素材の製造方法。
  12. 前記複合潤滑素材は酸化劣化防止を目的とする添加物が一種以上含有されていることを特徴とする請求項11に記載の複合潤滑素材の製造方法。
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