JP5775353B2 - 圧力容器用成形カップおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
ここで、「成形カップ」とは、圧力容器用の金属ライナを製造する工程の中間段階において中間成形品として製造され、底部と胴部とが形成されたカップ状の成形品をいう。この成形カップは、その後の工程で胴部の開口端側(底部と反対側の胴部端)に口絞り加工を施して、鏡板部と口金を取り付ける口部とを形成すれば圧力容器用ライナを完成することができる中間加工品として製造されるものである。
なお、成形カップから圧力容器用ライナに加工された後は、このライナの外側に補強繊維層を形成することで、さらに強度を高めた圧力容器が製造される。
このような高圧用圧力容器では、機械的特性として極めて大きな耐圧強度や耐疲労性が求められる。具体的には35MPa〜70MPaの耐圧性、耐疲労性を有する圧力容器が求められている。かかる機械的特性を満足できる製品にするには、複数の部材(例えば胴部部材と底部・口部部材)を溶接したライナで圧力容器を形成するのではなく、一つの素材から一体成形されたライナで形成することが好ましい。一体成形で形成されるライナは、まず中間成形品として底部と胴部とを有する有底の成形カップが製造され、続いて、成形カップを口絞り加工してライナが製造される。以下に、従来から一般的に採用されている典型的な成形カップの製造方法の手順を説明する。
しかしながら、上記方法は、鋳造材から成形カップを加工するまでに要する工程数が多く、手間と時間を要するとともに加工コストが高くなる。
この方法によれば、全体の工程数を減らすことができるが、後方押出の素材に鋳造材を用いているため、ガスポロシティが残存しやすく、その後の後方押出でもガスポロシティを十分に低減することはできない。さらに、後方押出によって、円柱状の鋳造材から成形カップまで大きな力を加えて変形させることになるため、非常に大きなプレス装置でパンチを押圧する必要があり、大掛かりな設備が必要になる。
この製造方法によれば、溶湯から成形品までを一つの金型で製造することができるとともに、塑性流動による変形で材料特性が改善され、鍛造組織を有する成形品が得られることが記載されている。
これは、成形カップの金属組織を鋳造組織ではなく、微細化された鍛造組織とし、十分な耐圧強度や耐疲労性を持たせる必要があることと、ポロシティなどの内部欠陥を低減する必要のためである。
すなわち、本発明にかかる成形カップの製造方法は、金型に溶湯を注入し、加圧下で凝固するようにして内部欠陥を低減しながら底部と胴部とからなる有底で鋳造組織のプリフォームカップを成形するプリフォームカップ形成工程と、前記金型から取り出した前記鋳造組織のプリフォームカップの少なくとも開口側近傍以外の胴部の部分を塑性変形して微細化された鍛造組織にするとともに、前記プリフォームカップの底部の部分を鋳造組織のまま残した成形カップにする成形カップ形成工程とからなる。
そこで、プリフォームカップ形成工程で加圧しながら凝固することで肉厚の底部と胴部とを形成する。このとき加圧鋳造でポロシティなどの内部欠陥を低減することができるので底部についてはそのまま使用できる状態になる。
また、溶融状態の材料を加圧しているので、凝固状態の材料を加圧する塑性変形よりも成形力は小さくてよい。具体的には、溶融状態で行う加圧鋳造は100MPaよりも小さい加圧力、具体的には20MPa〜90MPa程度の加圧力を与えればよい。
続く成形カップ形成工程で、少なくとも開口側近傍以外の胴部の部分を、肉厚が薄くなるように塑性変形させて微細化した鍛造組織になるようにする。これにより、底部については内部欠陥が低減された鋳造組織で形成され、最終製品であるライナにおいて胴部にする部分については鍛造組織に加工した成形カップが形成される。
なお、口部、鏡板部に加工される部分(開口側近傍の胴部の部分)については、成形カップ形成工程の次工程である口絞り加工によって鍛造組織に加工することになるので、成形カップ形成工程の段階では、塑性変形させる加工範囲に含めてもよいし含めなくてもよい。いずれにせよ、この部分は口絞り加工のときに塑性加工されて微細化した鍛造組織になる。
すなわち、「鋳造組織」「微細化された鍛造組織」の違いは、組織中に含まれるひげ状化合物の方向と長さとにより、確認することができる。
これにより、内部欠陥が低減された円筒状の有底のプリフォームカップを形成することができる。
図2はプリフォームカップ形成工程を説明するための模式図である。まず、アルミニウム合金材料のインゴット11を700℃程度に加熱溶解して溶湯にする。続いて溶湯をプリフォームカップ形成用の金型であるダイ12に注入する。ダイ12には、溶湯を流し込む円柱穴13が形成してあり、150℃〜350℃に保温するためのヒータ14と、冷却水を流すための冷却水流路15とが内蔵してあり、温度制御できるようにしてある。円柱穴の内径は、形成しようとするプリフォームカップの17の外径にしてある。
溶湯は凝固するにつれて体積が減少するが、減少した体積分はパンチ16が深く挿入されていくことで打ち消され、ポロシティなどの内部欠陥が低減されながら加圧鋳造が行われる。このようにして完全に凝固状態になるまで加圧鋳造が続けられて、プリフォームカップ17が形成される。
図4は成形カップ形成工程を説明するための模式図である。前工程で形成されたプリフォームカップ17(図3参照)を、しごき加工用の金型のダイ21に移動する。ダイ21はプリフォームカップ17の胴部17bの外径よりも少し小径の孔21aが形成され、孔21aの上部にテーパ面21bが形成され、その上にプリフォームカップ17が載置される。
一方、パンチ22は、プリフォームカップ17の胴部17bの内径とほぼ同等の外径となるようにしてある。パンチ22はプリフォームカップ17の開口端に当接される。この状態でパンチ22を下降して加圧することにより、胴部17bの肉厚を深さ方向に少しずつ薄くし、胴部長さを延ばすように塑性変形(しごき加工)を生じさせる結果、胴部17bが微細化され鍛造組織になって耐圧強度、耐疲労性が増した成形カップが完成する。
その場合は図5(b)に示すように、肉厚の底部23aが鋳造組織で形成され、肉薄の胴部23bが塑性変形により鍛造組織で形成され、開口部近傍の肉厚の胴部23c(口部、鏡板部に加工される部分)は、成形カップ形成工程の段階では鋳造組織の状態のまま維持される。なお、胴部23cは次工程の口絞り加工で鍛造組織に加工される。
図6(a)の鋳造組織は、明らかに、金属組織中に含まれる化合物の配列方向がランダムであるのに対し、図6(b)の鍛造組織は、金属組織中に含まれる化合物の配列方向は一定(加工方向)になっている。さらに、鋳造組織に比べて鍛造組織の化合物の長さは短く分断されており、平均10μm以下になって微細化している。
口絞り加工では、周知のスピニング加工などで胴部23bの外径よりも細径にした鏡板部と口金を取り付ける口部との加工が行われる。
12 ダイ(カップ成型用)
13 円柱穴
14 ヒータ
15 冷却水流路
16 パンチ(カップ成型用)
17 プリフォームカップ
21 ダイ(しごき加工用)
22 パンチ(しごき加工用)
Claims (8)
- 金型に溶湯を注入し、加圧下で凝固するようにして内部欠陥を低減しながら底部と胴部とからなる有底で鋳造組織のプリフォームカップを成形するプリフォームカップ形成工程と、
前記金型から取り出した前記鋳造組織のプリフォームカップの少なくとも開口側近傍以外の胴部の部分を塑性変形して微細化された鍛造組織にするとともに、前記プリフォームカップの底部の部分を鋳造組織のまま残した成形カップにする成形カップ形成工程とからなる圧力容器用成形カップの製造方法。 - 前記金型は、円筒状の穴が形成されたダイと、前記穴に挿入されるパンチとからなり、前記パンチは基端側が太径で、先側が基端側より細径となる二段の径を有する円柱状をなし、前記パンチの基端側がダイに挿入されたときに基端側は前記穴に対し摺動するとともに、前記パンチの先側と前記ダイとの間の空間に溶湯が注入されて凝固する請求項1に記載の圧力容器用成形カップの製造方法。
- 前記成形カップ形成工程において、胴部の塑性変形はしごき加工により行われる請求項1または請求項2に記載の圧力容器用成形カップの製造方法。
- 前記プリフォームカップ形成工程において、底部および胴部が水冷される請求項1に記載の圧力容器用成形カップの製造方法。
- 溶湯がアルミニウム合金である請求項1〜請求項4のいずれかに記載の圧力容器用成形カップの製造方法。
- 底部と胴部とからなる金属製の圧力容器用成形カップであって、
底部が鋳造組織からなり、
少なくとも開口側近傍以外の胴部が鍛造組織からなる圧力容器用成形カップ。 - 前記鋳造組織に含まれる化合物が配列しておらず、前記鍛造組織に含まれる化合物は一方向に配列している請求項6に記載の圧力容器用成形カップ。
- 前記鍛造組織に含まれる化合物は長さ平均値が10μm以下に分断されて微細化されている請求項7に記載の圧力容器用成形カップ。
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