JP5767116B2 - 白金に基づく治療に対する応答の予測 - Google Patents

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Description

本発明は、癌の分野、特にその治療に関する。さらに、治療予測または癌治療に対する癌患者の応答性の確立において有用な手段および方法に関する。

癌は、最も一般的な疾患の一つであり、西欧諸国において主要な死因である。一般に、罹患率は、ほとんどの形態の癌について、年齢と共に増加する。全般的な健康状態の増加により、人類の寿命は伸び続けているので、癌は、増加している個体数に影響を及ぼしうる。最も一般的な癌型の原因は、まだほとんど分かっていないが、環境因子(食事、タバコの煙、UV照射など)ならびに遺伝的因子(p53、APC、BRCA1、XPなどの「癌遺伝子」における生殖細胞変異)と癌発症の危険性との間の関連性を提供する知見が増えてきている。
癌は、本質的に細胞性疾患であり、正味の細胞増殖および利己的行動を伴う形質転換された細胞集団と定義付けられるという事実に拘わらず、細胞生物学的観点から、完全に満足のいく癌の定義はない。悪性形質転換は、不可逆的な遺伝子改変に基づく悪性表現型への移行を示す。これは、形質的に証明されていないが、悪性形質転換は、1の細胞において行われると考えられ、該細胞から、次いで発達した腫瘍が生じる(「癌のクローン性」ドグマ)。発癌は、癌が生じるプロセスであり、一般に、最終的に悪性腫瘍の成長に至る複数の事象を含むと認められている。該多段階プロセスは、いくつかの律速段階、例えば、変異の付加、およびおそらくエピジェネティックな事象を含み、前癌状態の増殖の段階後に、癌の形成を導く。該段階的な変化は、細胞分化、利己的行動および細胞死を決定する生命調節経路において、誤り(変異)の蓄積を含む。これらの変化の各々は、周囲の細胞と比べて選択的なダーウィンの成長優位(growth advantage)を提供し、その結果、腫瘍細胞集団の正味の増殖をもたらしうる。悪性腫瘍は、必ずしも形質転換された腫瘍細胞自体からなるだけでなく、支えとなる基質として作用する周囲の正常細胞からもなる。該補充された癌基質は、結合組織、血管および種々の他の正常細胞、例えば、炎症細胞からなり、それらは、協力して、継続する腫瘍成長に必要なシグナルを形質転換腫瘍細胞に供給するよう作用する。
癌の最も一般的な形態は、体細胞において発現し、大部分は、上皮性起源、例えば、前立腺、胸、結腸、尿路上皮および皮膚のものであり、次いで、造血系から生じる癌、例えば、白血病およびリンパ腫、神経外胚葉から生じる癌、例えば、悪性神経膠腫、および軟組織腫瘍、例えば、肉腫である。
癌診断および予後
疑いのある腫瘍由来の生検材料の顕微鏡評価が依然として癌診断の代表的な基準である。確固とした診断を得るために、腫瘍組織は、ホルマリン中で固定され、組織化学的に処理され、パラフィン包埋される。得られるパラフィンブロックから、組織切片を調製し、組織化学的方法、すなわち、ヘマトキシリン−エオシン染色、および免疫組織化学的(IHC)方法の両方を用いて染色することができる。次いで、全体的および顕微鏡分析を包含する病理学的技術を用いて、該外科的試料を評価する。該分析は、しばしば、特定の診断を指定するための基礎、すなわち、腫瘍の腫瘍型を分類し、悪性度合を等級付けするための基礎を形成する。
悪性腫瘍は、各癌型に特異的な分類スキームにしたがって、いくつかの段階に類別することができる。充実性腫瘍のための最も一般的な分類システムは、腫瘍−節−転移(TNM)病期分類システムである。T期は、原発腫瘍の局所的な程度、すなわち、どこまで該腫瘍が侵襲し、周囲組織中に増殖させたかを示し、一方、N期およびM期は、該腫瘍がどのように転移を発展させたかを示し、N期は、腫瘍のリンパ節への広がりを示し、M期は、他の遠隔器官における腫瘍の成長を示す。初期の段階には、T0−1,N0,M0があり、リンパ節陰性の局在化腫瘍を示す。より進行した段階には、T2−4,N0,M0があり、より広がって成長した局在化腫瘍を示し、T1−4,N1−3,M0は、リンパ節に転移した腫瘍を示し、T1−4,N1−3,M1は、遠隔器官において転移が検出された腫瘍を示す。腫瘍の病期分類は、しばしば、外科的、放射線学的および組織病理学的分析を包含するいくつかの試験の形態に基づく。病期分類のほかに、ほとんどの腫瘍型について、悪性のレベルを等級付けするための分類システムもある。等級付けシステムは、腫瘍組織試料の形態学的評価に依存し、所定の腫瘍に見出された顕微鏡的特徴に基づく。これらの等級付けシステムは、腫瘍細胞の分化、増殖および非定型外観の程度に基づいていてもよい。一般的に用いられる等級付けシステムの例は、前立腺癌のためのGleason等級付けおよび乳癌のためのNottingham Histological Grade(NHG)等級付けを包含する。
正確な病期分類および等級付けは、正確な診断に非常に重要であり、予後を予測するための道具を提供しうる。特定の腫瘍についての診断および予後情報は、次いで、所定の癌患者のための十分な治療戦略を決定する。組織切片の組織化学的染色のほかに、腫瘍に関するより多くの情報を得るための一般的に使用される方法は、免疫組織化学的染色である。IHCは、特異的抗体を用いて、組織および細胞におけるタンパク質発現パターンの検出を可能にする。臨床診断におけるIHCの使用は、組織化学的に染色された腫瘍組織切片から評価される組織構造および細胞形態学に関する情報のほかに、異なる細胞集団における免疫反応性の検出を可能にする。IHCは、病期分類および等級付けを包含する原発性腫瘍の正確な診断のサポート、ならびに未知の起源の転移の診断に関与することができる。今日、臨床診療で最も一般的に使用される抗体は、細胞型「特異的」タンパク質、例えば、PSA(前立腺)、MelanA(メラノサイト)およびチログロブリン(甲状腺)に対する抗体、および中間フィラメント(上皮、間葉、グリア)、一群の分化(CD)抗原(造血、リンパ様細胞の下位分類)および悪性可能性マーカー、例えばKi67(増殖)、p53(一般的に変異した腫瘍サプレッサー遺伝子)およびHER−2(成長因子受容体)を認識する抗体を包含する。
IHCのほかに、遺伝子増幅を検出するためのin situハイブリダイゼーションの使用および変異分析のための遺伝子配列決定は、癌診断内の発展中の技術である。さらに、転写産物、タンパク質または代謝産物の世界的な分析が関連する情報を加える。しかしながら、これらの分析のほとんどは、まだ、基礎研究を代表するものであり、臨床医学における使用のために、評価され、標準化される必要がある。
白金に基づく治療
白金に基づく化学療法は、精巣癌、卵巣癌、子宮頸癌、肺癌、膀胱癌、結腸直腸癌、および頭頸部癌などの癌の治療に用いられる。現在、3つのFDAに承認された白金に基づく化合物(シスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチン)があるが、開発中または臨床試験中の新規な誘導体(例えば、サトラプラチン(satraplatin)およびピコプラチン(picoplatin))がある。新規な白金に基づく化合物の開発における1つの目標は、毒性を最小限にすることであり、現在使用される化合物では、毒性が強いことがある。一般的な副作用には、腎毒性、神経毒性および毛髪の喪失がある。
白金耐性
白金に基づく化学療法剤は、DNAに結合し、それにより、DNA付加物を誘導し、DNA構造を崩壊させる架橋を導く。通常、これらの損傷は、最終的にアポトーシスに至る。しかしながら、薬物耐性の問題がある。腫瘍のサブセットは、従来の療法に応答せず、該耐性は、内因性または獲得性のいずれかである。
白金耐性の背後にあるメカニズムは、完全には解明されていないが、白金化合物が標的DNAに到達することができない、または白金化合物がDNA付加物の形成後にアポトーシスを誘導できないという2つの主要な経路が示唆された。
白金化合物が腫瘍DNAに到達できないのは、多剤耐性に関連した特定のタンパク質の影響による可能性がある。また、他の排出タンパク質、例えば、銅輸送を媒介するタンパク質も関与する可能性がある。
白金化合物がアポトーシスを誘導できないのは、おそらく、DNA修復システムにおける相違による。DNA修復に関与するいくつかのメカニズムがあり、特にこれらのうちの2つは、白金耐性、ヌクレオシド除去修復(NER)およびミスマッチ修復(NMR)に関連している。
モデルシステムとして精巣癌を用いて(これらの腫瘍は、白金に基づく化学療法に極めて感受性である)、ある特定の精巣癌腫細胞系統がNER欠失を有し、特に、低レベルの除去修復交差−相補群1(ERCC1)タンパク質を有することが示された。卵巣癌細胞系統においては、シスプラチン耐性を発現している細胞系統は、ERCC1発現増加を有することが示された。
シスプラチン(cisplatin)およびカルボプラチン(carboplatin)によって創出される損傷を細胞によって検出するためには、NMR経路が機能的でなければならないという徴候がある。これらの化合物は、NMR活性を干渉し、かくして、損傷修復を防止し、最終的にアポトーシスに導く。NMRが欠失する場合、細胞は、今だ存在するDNA損傷と共に増殖し続け、それにより、耐性となるであろう。しかしながら、NMRに媒介される耐性には、異なる化合物間で違いがあるようである。オキサリプラチン(oxaliplatin)は、シスプラチンおよびカルボプラチンに耐性の細胞において、効果を有しうる。
終点分析
癌のアジュバント治療を用いる試験の終点分析は、ある特定の療法に対して患者がどのように応答するかについて、重要な情報を与える。全生存(OS)は、長い間、標準的な主要終点と考えられてきた。OSは、原因に関係なく、例えば、死が癌によるものか、またはそうでなくても、死までの時間を考慮に入れる。追跡不能者(loss to follow-up)を検閲し、局所的再発、遠隔転移、二次原発卵巣癌および二次的な他の原発性癌を無視する。
今日では、多くの型の癌に利用可能な有効な治療の増加が、アジュバント治療の効果のよりよい評価を可能にするための代用終点の必要性をもたらした。一部、アジュバント治療がOSを改善することを実証するために必要な長期の追跡調査期間のために、終点は、しばしば、該治療がどのように成功するかについて初期の徴候を与える他の臨床的終点で補われる。
本発明の開示において、発明者らは、特定のタンパク質(提案するバイオマーカー)の発現レベルが予後と有意に相関することを示す。該観察のために、2つの代用終点、すなわち、卵巣癌特異的生存(OCSS)および無再発生存(RFS)を用いた。OCSSの分析は、原発性腫瘍のために卵巣癌によって引き起こされる死までの時間を包含する。RFSは、同じ癌に関連するいずれかの事象までの時間を包含する(すなわち、全ての癌の再発および同じ癌由来の死が事象である)。遠隔、局所および局部転移ならびに卵巣癌特異的死が考慮される。一方、二次原発性の同じ癌および他の原発性癌は無視される。他の癌に由来する死、癌に無関係の死、治療に関係する死、および追跡不能者は、検閲された観察値(censored observation)である。
本開示の概要
本開示のいくつかの態様のうちの1つの目的は、白金に基づく治療に対する応答性のレベルの予測について提供することである。
かくして、癌を有する哺乳動物対象が第1の群に属するか、または第2の群に属するかを決定する方法であって、第1の群の対象が第2の群の対象よりも白金に基づく治療によく応答する方法が提供される。さらに、癌を有する哺乳動物細胞の白金に基づく治療の強度レベルを決定する方法が提供される。該方法は、対象由来の試料の少なくとも一部に存在するRBM3タンパク質またはRBM3mRNAの量の評価に基づく。
またさらに、該方法を実施するためのキットであって、RBM3タンパク質との選択的相互作用が可能な定量化できるアフィニティーリガンドおよび該定量化できるアフィニティーリガンドの量を定量化するのに必要な試薬を含むキットが提供される。
また、RBM3タンパク質フラグメントおよびその使用、RBM3タンパク質との選択的相互作用が可能なアフィニティーリガンドおよびその使用、および癌を有する高RBM3哺乳動物対象の治療において使用するための白金に基づく治療剤が提供される。
図1は、上皮性卵巣癌(EOC)と診断された全ての患者(すなわち、154対象)の生存分析の結果を示す。図1Aは、全生存(OS)を示す。概算される5年の生存は、該コホートの全患者について約38%である。図1Bは、卵巣癌特異的生存(OCSS)を示す。概算される5年の生存は、該コホートの全患者について約39%である。 図2は、核フラクション(NF)染色に基づいて全154対象を群に分けた場合の、OSに対するRBM3レベルの影響を示す。図2Aにおいて、全対象は、NF状態に基づいて4つの群、すなわち、<2%(0)、2−25%(1)、>25−75%(2)または75%(3)に分けられた。図2Bにおいて、実線は、高NFレベルのRBM3(NF>75%)を示し、点線は、低NFレベルのRBM3(NF75%)を示す。 図3は、核フラクション(NF)染色に基づいて全154対象を群に分けた場合の、OCSSに対するRBM3レベルの影響を示す。図3Aにおいて、全対象は、NF状態に基づいて4つの群、すなわち、<2%(0)、2−25%(1)、>25−75%(2)または75%(3)に分けられた。図3Bにおいて、実線は、高NFレベルのRBM3(NF>75%)を示し、点線は、低NFレベルのRBM3(NF75%)を示す。 図4は、治療後の最初の5年間にわたる、全154人の患者におけるOSに対するRBM3のNFレベルの影響を示す。概算される5年の生存は、該コホートにおいて、高RBM3(NF>75%)患者で約44%(実線)であり、低RBM3(NF75%)患者で約25%(点線)である。 図5は、RBM3の核強度(NI)または細胞質強度(CI)レベルに基づいてEOCと診断された全154人の患者におけるOSを示す。RBM3発現は、高および低のカテゴリーを用いて二群に分けられた。図5Aにおいて、実線は、高NIレベルのRBM3(NI=3)を示し、点線は、低NIレベルのRBM3(NI<3)を示す。図5Bにおいて、実線は、高CIレベルのRBM3(CI=2)を示し、点線は、低CIレベルのRBM3(CI<2)を示す。 図6は、RBM3の核強度(NI)または細胞質強度(CI)レベルに基づいてEOCと診断された全154人の患者におけるOCSSを示す。RBM3発現は、高および低のカテゴリーを用いて二群に分けられた。図6Aにおいて、実線は、高NIレベルのRBM3(NI=3)を示し、点線は、低NIレベルのRBM3(NI<3)を示す。図6Bにおいて、実線は、高CIレベルのRBM3(CI=2)を示し、点線は、低CIレベルのRBM3(CI<2)を示す。 図7は、RBM3のNFレベルに基づいてグレード2のEOCと診断された39人の患者についての生存分析の結果を示す。RBM3発現は、高および低のカテゴリーに分けられた。実線は、高RBM3レベル(NF>75%)を示し、点線は、低RBM3レベル(NF75%)を示す。図7Aは、OSを示す。図7Bは、OCSSを示す。 図8は、RBM3のNFレベルに基づいてグレード1および2のEOCと診断された47人の患者についての生存分析の結果を示す。RBM3発現は、高および低のカテゴリーに分けられた。実線は、高RBM3レベル(NF>75%)を示し、点線は、低RBM3レベル(NF75%)を示す。図8Aは、OSを示す。図8Bは、OCSSを示す。 図9は、RBM3のNFレベルに基づいて病期IまたはIIのEOCと診断された42人の患者についての生存分析の結果を示す。RBM3発現は、高および低のカテゴリーに分けられた。実線は、高RBM3レベル(NF>75%)を示し、点線は、低RBM3レベル(NF75%)を示す。図9Aは、OSを示す。図9Bは、OCSSを示す。 図10は、RBM3のNFレベルに基づいて類内膜癌と診断された35人の患者についての生存分析の結果を示す。RBM3発現は、高および低のカテゴリーに分けられた。実線は、高RBM3レベル(NF>75%)を示し、点線は、低RBM3レベル(NF75%)を示す。図10Aは、OSを示す。図10Bは、OCSSを示す。 図11は、RBM3のNFレベルに基づいて病期IまたはIIの類内膜癌と診断された17人の患者についての生存分析の結果を示す。RBM3発現は、高および低のカテゴリーに分けられた。実線は、高RBM3レベル(NF>75%)を示し、点線は、低RBM3レベル(NF75%)を示す。図11Aは、OSを示す。図11Bは、OCSSを示す。 図12は、RBM3のNIレベルに基づいて漿液性癌と診断された90人の患者についての生存分析の結果を示す。RBM3発現は、高および低のカテゴリーに分けられた。実線は、高RBM3レベル(NI=3)を示し、点線は、低RBM3レベル(NI<3)を示す。図12Aは、OSを示す。図12Bは、OCSSを示す。 図13は、RBM3のCIレベルに基づいて漿液性癌と診断された90人の患者についての生存分析の結果を示す。RBM3発現は、高および低のカテゴリーに分けられた。実線は、高RBM3レベル(CI=2)を示し、点線は、低RBM3レベル(CI<2)を示す。図13Aは、OSを示す。図13Bは、OCSSを示す。 図14は、RBM3のNIレベルに基づいてグレード1または2の漿液性癌と診断された23人の患者についてのOS分析の結果を示す。RBM3発現は、高および低のカテゴリーに分けられた。実線は、高RBM3レベル(NI=3)を示し、点線は、低RBM3レベル(NI<3)を示す。図14Aは、OSを示す。図14Bは、OCSSを示す。 図15は、上皮性卵巣癌(EOC)と診断された患者についてのOSに対するRBM3レベルの影響を示す。全149対象は、1B5モノクローナル抗体で染色された。図15Aにおいて、全対象は、染色スコア(SS)状態に基づいて3の群に分けられた。図15Bにおいて、RBM3発現は、高および低のカテゴリーに分けられた。実線は、高SSレベルのRBM3発現(SS>0)を示し、点線は、低SSレベルのRBM3発現(SS=0)を示す。 図16は、上皮性卵巣癌(EOC)と診断された患者についてのOCSSに対するRBM3レベルの影響を示す。全149対象は、1B5モノクローナル抗体で染色された。図16Aにおいて、全対象は、SSに基づいて3の群に分けられた。図16Bにおいて、RBM3発現は、高および低のカテゴリーに分けられた。実線は、高SSのRBM3発現(SS>0)を示し、点線は、低SSのRBM3発現(SS=0)を示す。 図17は、グレード1または2のEOCと診断された患者についてのOSに対するRBM3レベルの影響を示す。全44対象は、1B5モノクローナル抗体で染色された。RBM3発現は、高および低のカテゴリーに分けられた。実線は、高SSのRBM3発現(SS>0)を示し、点線は、低SSのRBM3発現(SS=0)を示す。 図18は、類内膜EOCと診断された患者についてのOSに対するRBM3レベルの影響を示す。全35対象は、1B5モノクローナル抗体で染色された。RBM3発現は、高および低のカテゴリーに分けられた。実線は、高SSのRBM3発現(SS>0)を示し、点線は、低SSのRBM3発現(SS=0)を示す。 図19は、高RBM3mRNAレベル(実線)の卵巣癌患者および低RBM3mRNAレベル(点線)の患者における無再発生存を示す。 図20は、精巣癌患者におけるRBM3タンパク質発現を示す。患者は、4つの異なる予後群、すなわち、予後不良、中程度の予後、予後良好、およびセミノーマに分けられた。 図21は、精巣癌患者におけるRBM3タンパク質発現を示す。患者は、2つの異なる群、すなわち、疾患群および生存群に分けられた。 図22は、シスプラチン感受性(A2780)およびシスプラチン耐性(A2780−cp70)細胞系統におけるRBM3発現のウェスタンブロットを示す。 図23は、シスプラチン感受性(A2780)およびシスプラチン耐性(A2780−cp70)細胞系統におけるシスプラチン治療後の生存率(%)を示す。細胞は、生存率を分析する前に48時間、シスプラチンで処理された。 図24は、3つの異なる抗−RBM3siRNAで処理された細胞(点線)ならびにsiRNA処理に付されていない対照細胞(実線)におけるシスプラチン処理後の生存率(%)を示す。
詳細な記載
本開示の第一の態様として、癌を有する哺乳動物対象が第1の群に属するか、または第2の群に属するかを決定する方法であって、第1の群の対象が第2の群の対象よりも白金に基づく治療によく応答し、
a)該対象から事前に得られた試料の少なくとも一部に存在するRBM3タンパク質またはRBM3mRNAの量を評価し、該量に対応する試料値を決定する工程、
b)工程a)で得られた試料値を参照値と比較する工程、
該試料値が参照値よりも高い場合は、c1)該対象が第1の群に属すると結論づけ、
該試料値が参照値と等しいか、または参照値よりも低い場合は、c2)該対象が第2の群に属すると結論づける工程
を含む方法が提供される。
第1の群は、第1の群の対象が一般的に第2の群の対象よりも白金に基づく治療によく応答する点において、第2の群と異なる。これは、第1の群の対象が白金に基づく治療レジメン(regimen)が施された場合、同じ治療レジメンを施された第2の群の対象よりも一般的に高い生存確率を有すること、または第1の群の対象が第2の群の対象よりも、一般的に、所定の生存確率に達するまでに必要な投与量が低いことを意味する。ここに、生存は、全生存、無再発生存または癌型に特異的な生存として測定されうる。
かくして、癌患者が第1の群に属するか、または第2の群に属するかを決定し、ここに、第1の群の対象は、一般的に、第2の群の対象よりも、白金に基づく治療によく応答する。所定の癌を有する対象の2つの群への分割は、参照値を有する対象由来の試料値を比較することによって決定する。かくして、参照値は、各群のサイズの決定因子であり、参照値が高いほど、第1の群の対象が少なくなり、試験対象が第1の群に属する可能性が低くなる。
疑義を回避するために、第1および第2の群は、試験対象として、同じ型の癌を有する対象からなる。かくして、卵巣癌患者は、精巣癌患者と比較されず、また精巣癌患者と共に群分けされない。さらに、第1および第2の群は、試験対象として、同じまたは類似の病期および/またはサブタイプの癌を有する対象から構成されてもよい。また、該群は、試験対象として、同じまたは類似の年齢、人種、性別、閉経状態、遺伝的特徴および/または医学的状態または病歴を有する対象から構成されてもよい。
本開示は、癌を有する対象から得られた試料におけるRBM3の発現が白金に基づく治療に対する対照の応答のインジケーターとして作用しうるという発明者らの洞察に基づく。発明者らは、一方でのRBM3の値と、他方での白金に基づく治療に対する応答との間の相関関係を同定した。典型的には、高RBM3値は、本明細書において、白金に基づく治療に対する比較的高い応答性と相関することが示される。
白金に基づく治療は、様々な癌型において有効であることが証明された。しかしながら、該治療は、通常、(時折、重篤な)副作用を伴う。したがって、発明者らは、不必要な過剰治療を回避するように、該治療の投与量(すなわち、該治療の強度)を癌患者の応答性に適合させることが有益であると結論づけた。すなわち、高応答性対象は、低応答性対象よりも低い投与量を必要としうる。さらに、該治療に全く応答しそうにない対象を同定することが有益である。かかる対象は、別のレジメンで治療されるべきである。
結論として、上記の方法は、白金に基づく治療を施すか施さないかを決定するときに、白金に基づく治療が適当と見られる場合、該治療の強度レベルを決定するときに、癌患者の治療に責任のある医師を援助しうる。
上記の方法の癌対象が第1の群に属することが見出された場合、かくして、医師の決定は、比較的低投与量で白金に基づく治療を施すことでありうる。しかしながら、癌対象が第2の群に属すると見出された場合、医師の決定は、比較的高投与量で白金に基づく治療を施すこと、または白金に基づく治療を辞める(おそらく、別の治療が好ましい)ことでありうる。
したがって、本開示の第二の態様として、癌を有する哺乳動物対象の白金に基づく治療の強度のレベルを決定する方法であって、
a)該対象から事前に得られた試料の少なくとも一部に存在するRBM3タンパク質またはRBM3mRNAの量を評価し、該量に対応する試料値を決定する工程、
b)工程a)で得られた試料値を参照値と比較する工程、
該試料値が参照値よりも高い場合は、c1)該対象が第1の強度の白金に基づく治療を施されるべきであると結論づけ、
該試料値が参照値と等しいか、または参照値よりも低い場合は、c2)該対象が第2の強度の白金に基づく治療を施されるべきであると結論づけ、ここに、該第2の強度は該第1の強度よりも高い、工程
を含む方法が提供される。
第二の態様の上記の方法は、特に、今日世界の多くの地域で、ほとんどの場合、白金に基づく治療で処置される卵巣癌または精巣癌を有する対象に関連しうる。
強度レベルは、例えば、対象に与えられる白金に基づく治療剤の平均1日量または1週量として測定されうる。かくして、第2の強度の治療は、第1の強度の治療よりも頻繁に、または高い個々の投与量で施されうる。第2の強度の治療は、また、第1の強度の治療よりも攻撃的な白金に基づく治療剤の適用を含みうる。また、第2の強度の治療は、第1の強度の治療よりも長い期間施される可能性がある。
第二の態様における一の具体例において、かくして、c1)は、該対象が第1の期間に白金に基づく治療を受けるべきであると結論づけてもよく、c2)は、該対象が第2の期間に白金に基づく治療を受けるべきであると結論づけてもよく、ここに、第2の期間は第1の期間よりも長い。
第二の態様の別の構成として、癌を有する哺乳動物対象の白金に基づく治療を辞めるか否かを決定する方法であって、
a)該対象から事前に得られた試料の少なくとも一部を存在するRBM3タンパク質またはRBM3mRNAの量を評価し、該量に対応する試料値を決定する工程、
b)工程a)で得られた試料値を参照値と比較する工程、および
該試料値が参照値と等しいか、または参照値よりも低い場合、c)該対象を白金に基づく治療で処置するのを辞める工程
を含む方法が提供される。
該第二の態様の別の具体例は、特に、白金に基づく治療が標準的であると考えられない癌、例えば、卵巣癌および精巣癌以外のあらゆる癌を有する対象に関連する。
いくつかの場合において、高RBM3癌対象は、おそらく、本開示の教示にしたがって白金に基づく治療から利益を得る。本開示の第三の態様として、かくして、癌を有する哺乳動物対象の治療方法であって、
a)該対象から事前に得られた試料の少なくとも一部に存在するRBM3タンパク質またはRBM3mRNAの量を評価し、該量に対応する試料値を決定する工程、
b)工程a)で得られた試料値を参照値と比較する工程、
該試料値が参照値よりも高い場合は、c)白金に基づく治療を該対象に施す工程
を含む方法が提供される。
該治療方法は、意思決定および処置(decision-making and treatment)に制限されうる。かくして、第三の態様の構成として、癌を有する対象の治療方法であって、
α)該対象由来の試料中のRBM3タンパク質またはRBM3mRNAのレベルに対応する試料値を参照値と比較する工程、および
該試料値が参照値よりも高い場合は、β)白金に基づく治療を該対象に施す工程
を含む方法が提供される。
試料中のRBM3タンパク質またはRBM3mRNAのレベルに対応する試料値を得る多くの方法が本開示に記載され、また、(臨床的に)関連する参照値の種々の例も提供される。
本開示の方法の工程a)に関し、RBM3タンパク質またはRBM3mRNAの量の増加は、典型的に、試料値の増加をもたらし、その逆はない。しかしながら、いくつかの具体例において、評価された量は、別個の試料値の予め決定された数のいずれかに対応しうる。かかる具体例において、第1の量および第2の増加した量は、同じ試料値に対応しうる。いずれの場合においても、RBM3タンパク質またはRBM3mRNAの量の増加は、本開示との関連で、試料値の減少をもたらさないであろう。
しかしながら、不都合であるが、同等な様式において、工程b)と工程c)との間の条件(qualification)が逆転する場合、評価された量は、試料値に反比例しうる。例えば、「該試料値が参照値よりも高い場合」なるフレーズが「該試料値が参照値よりも低い場合」に置き換わった場合、工程b)と工程c)との間の条件は逆転する。
癌対象の治療の担当医師は、該対象に適当な治療レジメンを決定するとき、数個のパラメーター、例えば、免疫組織化学的評価の結果、患者の年齢、ホルモン受容体状態、患者の全般的な状態、医療歴、例えば、癌歴および遺伝的特徴、例えば、患者の家族に癌歴があるかを考慮しうる。決定を導くために、医師は、上記の方法のいずれかにしたがって、RBM3テストを行うか、またはRBM3テストを行うよう指示しうる。さらに、医師は、誰かに、例えば、研究室の研究員に、彼自身で工程a)および所望により工程b)を実施し、同時に、工程c)および所望により工程b)を実施するよう任命してもよい。
上記の方法の変種として、癌を有する哺乳動物対象の白金に基づく治療の応答を予測する方法であって、
a)該対象由来の試料の少なくとも一部に存在するRBM3タンパク質またはRBM3mRNAの量を評価し、該評価量に対応する試料値を決定する工程、
b)工程a)の試料値を該治療に対する予測される応答と関連づける工程
を含む方法が提供される。
一の具体例において、試料は、事前に得られた試料であってもよい。
工程b)の関連づけは、治療予測を確立するために、生存データを得られた試料値に関連づけるいずれかの方法をいう。本開示の教示の知見を用いれば、当業者は、過度な負担を伴わずに、予測される応答を結論づけうる。
本開示の方法と関連して、「事前に得られた」なる語は、該方法を実施する前に得られることを示す。結果として、対象から事前に得られた試料を方法に用いる場合、該方法は、対象から試料を得ることを含まない、すなわち、該試料は、該方法とは別の工程において、対象から予め得られたものである。
本開示の全ての方法および使用は、治療方法を除き、完全にイン・ビトロで実施されうる。
さらに、本開示と関連して、「癌を有する哺乳動物対象」なる語は、原発性または二次性腫瘍を有する哺乳動物対象あるいはかかる腫瘍を除去した哺乳動物対象をいい、ここに、該腫瘍の除去は、外科手術または療法のいずれかの型によって該腫瘍を死滅させるか、または除去することをいう。後者の場合、該腫瘍は、例えば、1年前以内に除去されていてもよい。例えば、外科手術により腫瘍が除去された対象であって、アジュバンド治療を受けようとしている対象は、本開示との関連において、「癌を有する」とみなされる。本開示の方法および使用態様において、「癌を有する哺乳動物対象」なる語は、該使用または方法の実施時に、該哺乳動物対象が癌を有する疑いがあり、癌診断が後で確立する場合も包含する。
またさらに、本開示と関連して、「参照値」なる語は、治療または治療予測に関し、決定または結論を下すことに関連する予め決定された値をいう。本開示の教示によって導かれる場合、当業者は、過度な負担を伴わずに、関連する参照値を選択しうる。
上記態様の方法の工程a)は、試料の少なくとも一部に存在するRBM3タンパク質またはRBM3mRNAの量を評価すること、および該量に対応する試料値を決定することを含む。「試料の少なくとも一部」なる語は、適当な治療に関し、応答レベルの確立または結論を下すための試料の関連部分をいう。当業者は、該方法を実施するときに存在する環境下で、どの部分が関連するかを理解する。例えば、細胞を含む試料を評価する場合、当業者は、試料の腫瘍細胞あるいは腫瘍細胞の核または細胞質だけを考慮すればよい。
さらに、工程a)において、量が評価され、該量に対応する試料値が決定される。結果として、RBM3タンパク質またはRBM3mRNAの量の正確な測定値は、試料値を得るのに必要とされない。例えば、RBM3タンパク質の量は、調製および染色された組織試料の目視検査によって評価すればよく、次いで、試料値は、例えば、評価された量に基づいて、高いか、または低いかに類別されうる。
工程a)の評価および決定は、該試料のいくつかの種類のプロセッシングまたは操作を必要とする。検査のみによって試料値を決定することはできない。かかる評価および決定のための種々の技術(そのいくつかを下記する)は、当業者に周知である。本開示の方法は、したがって、工程a)の実施のためのいずれかの特定の技術に限定されない。
下記の実施例において、RBM3タンパク質またはmRNA発現レベルは、白金に基づく治療剤で治療された卵巣癌および精巣癌対象における生存率に相関することが示される。かくして、RBM3タンパク質またはmRNAの示差的な発現およびその治療予測関連性の知見は、本開示の基礎を形成する。卵巣癌および精巣癌のほかに、RBM3タンパク質は、表2に示されるようないくつかの癌型に示差的に発現する(実施例、セクション7b)。したがって、本発明者らは、卵巣癌および精巣癌における知見がおそらく、他の癌型に及ぶと結論づける。特に、注目すべきは、RBM3タンパク質が精巣癌、卵巣癌、肺癌、尿路上皮癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、乳癌および頭頸部癌(全て、今日、白金に基づく治療に適当であると考えられている癌型である)において示差的に発現されることが示されることである。
かくして、本開示の具体例において、癌は、精巣癌、卵巣癌、肺癌、膀胱癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、および頭頸部癌(尿路上皮癌は、膀胱癌の一種である)から選択される。
いくつかの具体例において、癌は、卵巣癌および精巣癌から選択される。卵巣癌または精巣癌を有する対象は、世界の多くの地域で、ほとんどの場合、白金に基づく治療で処置されており、かくして、本開示の知見は、これらの癌型に特に関連する。
本開示の癌が卵巣癌である場合、それは、一の具体例にしたがって、中分化または高分化卵巣癌であってもよく(図7、8、14および17参照)、別のまたは相補的な具体例にしたがうと、卵巣癌は、国際産婦人科練合(the Federation of Gynecology and Obstetrics)(FIGO)分類の病期1または2であり(図9および11参照)、また別のまたは相補的な具体例によると、漿液性(図12、13および14参照)または類内膜(図10、11および17参照)卵巣癌である。
本開示の癌が精巣癌である場合、それは、一の具体例にしたがって、精巣胚細胞(testicular germ-cell)癌であってもよく、別のまたは相補的な具体例にしたがって、非セミノーマ性(non-seminomatous)精巣癌であってもよい。
本開示の癌が結腸直腸癌である場合、それは、一の具体例にしたがって、比較的進行した病期の結腸直腸癌、例えば、デューク(Duke)の病期CまたはDの癌であってもよい。しかしながら、デュークの病期Bの癌には再発の危険性があるので、該病期の癌もまた関連しうる。かくして、高RBM3でデュークの病期がBの対象は、再発を予防するために、白金に基づく治療を受けてもよい。
本開示の癌が肺癌である場合、それは、一の具体例にしたがって、小細胞または非小細胞肺癌であってもよい。
本開示の癌が乳癌である場合、それは、一の具体例にしたがって、三重陰性の乳癌、すなわち、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体およびHER2受容体に陰性の乳癌であってもよい。三重陰性乳癌対象は、現在治療が特に困難であると考えられており、対象が白金に基づく治療剤シスプラチンで処置される進行中の臨床試験がある。
白金に基づく治療は、白金に基づく治療剤の適用を含む。パラプラチンを包含するカルボプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、ピコプラチンおよびシスプラチンは、今日、診療所で試験または使用されるいくつかの白金に基づく治療剤である。下記の実施例において使用されるシスプラチンは、診療所において、例えば、卵巣癌、小細胞肺癌および精巣癌の治療に、幅広く使用されている。オキサリプラチンは、しばしばフルオロウラシルおよびロイコボリン(luecovorin)と組み合わせて、結腸直腸癌の治療のために、診療所において使用されている。カルボプラチンもまた、例えば、卵巣癌、肺癌および頭頸部癌の治療のために、診療所において使用されている。肺癌においては、しばしば、ゲムシタビン(gemcitabine)と組み合わせて使用される。
本開示の具体例において、かくして、白金に基づく治療は、カルボプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、ピコプラチンおよびシスプラチンから選択される剤の適用であってもよい。癌が卵巣癌または肺癌である具体例において、剤は、例えば、シスプラチンまたはカルボプラチンであってもよい。癌が結腸直腸癌である具体例において、剤は、例えば、オキサリプラチンであってもよい。癌が精巣癌である具体例において、剤は、例えば、シスプラチンであってもよい。
上記の態様の方法の具体例において、試料は、体液試料であってもよい。例えば、体液試料は、血液、血漿、血清、脳脊髄液、尿、リンパ液、精液および滲出液からなる群から選択されうる。別法では、試料は、細胞学的試料または糞便試料であってもよい。
RBM3タンパク質のレベルは、好ましくは、細胞内的に、または細胞由来の材料において測定されうる。かくして、体液、細胞学的または糞便試料は、例えば、腫瘍細胞などの細胞を含みうる。
上記態様の方法のさらなる具体例において、試料は、組織試料、例えば、腫瘍試料、例えば、対象から予め外科的除去を行った腫瘍由来の腫瘍試料であってもよい。
さらに、発明者らは、RBM3タンパク質の核および/または細胞質発現が、白金に基づく治療に対する応答レベルの決定または治療の選択に関連することに注目した。例えば、RBM3タンパク質の核および細胞質の両方の発現は、結腸直腸癌、卵巣癌および精巣癌において関連性が見出される。かくして、工程a)の評価は、該試料の細胞、例えば、腫瘍細胞の核または細胞質に限定されうる。結果として、組織試料を調べる場合、腫瘍細胞の核または細胞質だけを考慮すればよい。かかる試験は、例えば、免疫組織化学的染色によって援助されうる。
上記態様にしたがって方法を実施する場合、参照値としてゼロを用いると、工程a)において、RBM3タンパク質またはRBM3mRNAが試料中に存在するか否かだけを確立すればよいので、参照値としてゼロを用いることが便利である。図15bおよび17は、ゼロ(すなわち、検出可能なRBM3タンパク質がない)が2つのサブグループの異なる生存を確立するためのワーキング・カットオフ値であることを示す。
かくして、上記態様の方法の具体例において、工程a)の試料値は、試料中の検出可能なRBM3タンパク質またはRBM3mRNAに対応する1、または試料中に検出可能なRBM3タンパク質またはRBM3mRNAがないことに対応する0のいずれかでありうる。結果として、かかる具体例において、試料の評価はデジタル方式で表示する。すなわち、RBM3タンパク質またはRBM3mRNAは、存在するか、しないかのいずれかであるとみなされる。本開示と関連して、「検出可能なRBM3タンパク質またはRBM3mRNAがないこと」なる語は、通常の操作環境において、工程a)を実施する人または装置によって検出可能なRBM3タンパク質またはRBM3mRNAの量があまりにも少ないこと、または存在しないことを示す。「通常の操作環境」なる語は、当業者が本開示の方法を実施するために適当であると見出すであろう研究室での方法および技術をいう。
したがって、本開示の方法の具体例において、工程b)の参照値は0であってもよい。その結果として、本開示の方法のさらなる具体例において、工程b)の参照値は、検出可能なRBM3タンパク質またはRBM3mRNAを有しない参照試料に対応しうる(下記参照)。
参照値よりも高いRBM3タンパク質またはRBM3mRNAの試料値、またはかかる試料値が得られる対象は、本明細書中において、時折、「高RBM3」であるという。さらに、参照値よりも低いか、または等しいRBM3タンパク質またはRBM3mRNAの試料値、またはかかる試料値が得られる対象は、本明細書中において、時折、「低RBM3」という。
本開示に関連して、「試料値」および「参照値」なる語は、幅広く解釈されるべきである。これらの値を得るためのRBM3タンパク質またはRBM3mRNAの定量化は、試料の目視検査または顕微鏡検査に基づくスコアリングシステムを介して、またはその組合せを介して、自動的手段により行われうる。しかしながら、技術に精通した者、例えば、組織病理学の分野における技術者が例えば、RBM3タンパク質発現のために調製し、染色した組織スライドの検査によって、試料値および参照値を決定することも可能である。かくして、試料値が参照値よりも高いかを決定することは、目視検査または顕微鏡検査において、試料組織スライドが参照組織スライドよりも、濃厚に染色されること、および/または大きな画分の染色細胞を示すことを決定することに対応しうる。試料値は、また、文字通りの参照、例えば、文章で表される参照値、または参照写真によって与えられる参照値と比較してもよい。結果として、試料値および/または参照値は、いくつかの場合、当業者が検査および比較において決定する心的な値でありうる。
本開示の方法の1以上の工程は、装置において実行されうる。例えば、工程a)および所望により工程b)は、自動分析装置において実施されてもよく、かかる装置は、免疫組織化学的分析に適応させたプラットフォームに基づいていてもよい。一例として、目的の対象由来の1以上の腫瘍組織を免疫組織化学的分析のために手動で調製し、ついで、自動分析装置に載せてもよく、該装置は、工程a)の試料値を与え、所望により、工程b)の参照値との比較も行う。該分析を実施するオペレーター、該分析を指示する医師、または装置自体は、次いで、工程c)の結論を下しうる。結果として、工程c)の結論を下すために適応させたソフトウェアを該装置において実行してもよい。
対象由来の試料値との比較として使用するための、癌対象に関して治療予測の確立または治療の決定に関連することが見出された参照値は、種々の方法で提供されうる。本開示の教示の知識を用いれば、当業者は、過度の負担を伴うことなく、本開示の方法を実施するための関連する参照値を提供することができる。
上記態様の方法を実施する人は、例えば、参照値を所望の情報に適合させる。例えば、参照値は、生存に関する最も有意な情報、例えば、第一の態様の第1と第2の群との間の生存における最大の差異に対応する高RBM3生存曲線と低RBM3生存曲線との間の最大分離(図参照)を生じるように適合させてもよい。別法では、参照値は、特に高い応答性または特に低い応答性を有する対象群を選抜するように選択されうる。
上記態様の方法の具体例において、参照値は、腫瘍細胞を含む参照試料、例えば、腫瘍組織の参照試料において測定されたRBM3タンパク質またはRBM3mRNAの量に対応しうる。参照試料のタンパク質発現の量は、好ましくは、予め確立されていてもよい。結果として、参照値は、所定量のRBM3タンパク質またはRBM3mRNAを発現している細胞を含む参照試料において測定されたRBM3タンパク質またはRBM3mRNAの量によって提供されうる。
さらに、参照値は、例えば、所定量のまたは調節された量のRBM3タンパク質またはRBM3mRNAを発現している細胞系統、例えば、癌細胞系統を含む参照試料において測定されたRBM3タンパク質またはRBM3mRNAの量によって提供されうる。当業者は、例えば、Rhodesら、(2006) The biomedical scientist, p515-520の開示によって導かれるかかる細胞系統の提供方法を理解する。
しかしながら、さらに下記で論じるように、参照試料中のRBM3タンパク質の量は、参照値に直接対応する必要はない。参照試料は、また、種々の参照値を評価するための方法を実施する人を助けるRBM3タンパク質の量を提供しうる。例えば、参照試料は、「陽性」参照値および/または「陰性」参照値を提供することによって、参照値の心的なイメージの創出を手助けしうる。
試料、例えば、対象から事前に得られた試料または参照試料におけるEBM3タンパク質発現の定量化のための別法は、ある特定のレベルを超えるRBM3タンパク質発現を示す試料中の細胞フラクションの決定である。該フラクションは、例えば、全細胞のRBM3タンパク質発現が考慮される「細胞フラクション」、細胞の細胞質のみのRBM3タンパク質発現が考慮される「細胞質フラクション」、または細胞の核のみのRBM3タンパク質発現が考慮される「核フラクション」であってもよい。核フラクションは、例えば、関連する細胞集団の<2%、2−25%、>25−75%または>75%免疫反応細胞に分類されうる。「核フラクション」は、核において陽性染色を示す試料中の関連細胞のパーセンテージに対応し、ここに、核における中程度または明瞭な強い免疫反応性が陽性とみなされ、核における免疫応答性が無いか、またはかすかな免疫応答性が陰性とみなされる。「細胞質フラクション」は、細胞質において陽性染色を示す試料中の関連細胞のパーセンテージに対応し、ここに、細胞質における中程度または明瞭な強い免疫反応性が陽性とみなされ、細胞質における免疫応答性が無いか、またはかすかな免疫応答性が陰性とみなされる。病理学の分野における技術者は、該方法の実施時に存在する条件下で、どの細胞が関連するのかを理解し、一般知識および本開示の教示に基づいて、核または細胞質フラクションを決定しうる。関連細胞は、例えば、腫瘍細胞であってもよい。さらに、当業者は、「細胞フラクション」を用いる対応する測定を実施する方法を理解する。
試料、例えば、対象から事前に得られた試料または参照試料におけるRBM3タンパク質発現の定量化のためのまた別の方法は、試料の全体的な染色強度の決定である。該強度は、例えば、全細胞のRBM3タンパク質発現が考慮される「細胞強度」、細胞の細胞質のみのRBM3タンパク質発現が考慮される「細胞質強度」、または細胞の核のみのRBM3タンパク質発現が考慮される「核強度」であってもよい。核強度は、臨床的組織病理学的診断において用いられる基準にしたがって、主観的に評価される。核強度決定の結果は、不存在=試料の間連細胞の核において全体的な免疫反応性が無い、弱=試料の関連細胞の核においてかすかな全体的な免疫反応性、中程度=試料の関連細胞の核において中程度の全体的な免疫反応性、または強=試料の関連細胞の核において明瞭かつ強度の全体的な免疫反応性として分類されうる。細胞強度決定の結果は、不存在=試料の間連細胞の細胞質において全体的な免疫反応性が無い、弱=試料の関連細胞の細胞質においてかすかな全体的な免疫反応性、中程度=試料の関連細胞の細胞質において中程度の全体的な免疫反応性、または強=試料の関連細胞の細胞質において明瞭かつ強度の全体的な免疫反応性として分類されうる。いくつかの具体例において、弱い値および中程度の値を弱/中程度値に合わせてもよい。当業者は、該方法の実施時に存在する条件下でどの細胞が関連するかを理解し、一般知識および本開示の教示に基づいて、核または細胞質強度を決定しうる。関連細胞は、例えば、腫瘍細胞であってもよい。さらに、当業者は、「細胞強度」を用いる対応する測定を実施する方法を理解する。
かくして、上記態様の方法の具体例において、参照値は、核フラクション、核強度、核フラクションと核強度の組合せ、細胞質フラクション、細胞質強度、または細胞質フラクションと細胞質強度の組合せであってもよい。
図に示されるように、RBM3タンパク質の発現に基づく1以上の参照値は、応答レベルを決定するための関連する参照値として機能しうる。
かくして、上記態様の方法の具体例において、工程b)の参照値は、95%以下、例えば、90%以下、例えば、85%以下、例えば、80%以下、例えば、75%以下、例えば、70%以下、例えば、65%以下、例えば、60%以下、例えば、55%以下、例えば、50%以下、例えば、45%以下、例えば、40%以下、例えば、35%以下、例えば、30%以下、例えば、25%以下、例えば、20%以下、例えば、15%以下、例えば、10%以下、例えば、5%以下、例えば、2%以下、例えば、1%以下、例えば、0%の核または細胞質フラクションである。
さらに、上記態様の方法の具体例において、工程b)の参照値は、中程度の核または細胞質強度またはそれ以下、例えば、弱い核または細胞質強度またはそれ以下、例えば、核または細胞質強度の不存在であってもよい。
また、上記態様の方法の具体例において、参照値は、フラクション値および強度値の組合せまたは関数であってもよい。かくして、参照値は、2またはそれ以上の基準を含みうる。かかる組み合わせた参照値の例は、下記の表1に示される。上記態様の方法の具体例において、かくして、参照値は、2以下、例えば、1以下、例えば、0の「染色スコア」(SS)であってもよい。
一般に、参照値としての強度値および/またはフラクション値の選択は、染色手順、例えば、使用される抗体の種類および量/濃度ならびに染色試薬の種類および濃度に依存しうる。
本開示によって導かれる場合、当業者、例えば、病理学者は、フラクション、例えば、細胞、細胞質または核フラクション、あるいは強度、例えば、細胞、細胞質または核強度を生じる評価を実施する方法を理解する。例えば、当業者は、ある特定のフラクションまたは強度の出現を確立するために所定量のRBM3タンパク質を含む参照試料を使用しうる。
しかしながら、参照試料は、実際の参照値の提供のためだけに使用されるのではなく、参照値に対応する量よりも高いRBM3タンパク質の量を有する試料の例を提供するためにも使用されうる。例として、組織化学的染色、例えば、免疫組織化学的染色において、当業者は、多量のRBM3タンパク質を有する染色された試料、例えば、陽性参照の出現を確立するために参照試料を使用しうる。次いで、当業者は、より低い量のRBM3タンパク質を有する試料の出現、例えば、参照値に対応するRBM3タンパク質の量を有する試料の出現を評価しうる。すなわち、当業者は、参照試料のRBM3タンパク質量よりも低いRBM3タンパク質量に対応する参照値の心的イメージを創出するために参照試料を使用しうる。別法では、または相補物として、かかる評価において、当業者は、低量のRBM3タンパク質を有するか、または検出可能なRBM3タンパク質を欠く別の参照試料を、例えば「陰性参照」として、かかる試料の出現を確立するために用いてもよい。
例えば、中程度の核強度を参照値として使用する場合、2つの参照試料、すなわち、検出可能なRBM3タンパク質を有しない第1の参照試料(かくして、核強度が存在しないことに対応し、それは参照値よりも低い)、および強い核強度に対応するRBM3タンパク質の量を有する第2の参照試料(参照値よりも高い)を用いてもよい。
結果として、評価において、当業者は、多量のRBM3タンパク質を有する試料の出現を確立するために、参照試料を使用しうる。かかる参照試料は、多量のRBM3タンパク質を有を発現している組織を含む試料、例えば、予め確立された高発現のRBM3タンパク質を有する腫瘍組織を含む試料であってもよい。
したがって、参照試料は、強い核強度(NI)の例を提供しうる。強いNIを有する試料の出現についての知見を用いれば、当業者は、NIカテゴリー不存在、弱、中程度および強に試料を分けることができる。該分類は、さらに、検出可能なRBM3タンパク質を欠く参照試料(陰性参照)、すなわち、核強度不存在を提供する参照試料によって援助されうる。また、参照試料は、75%よりも高い核フラクション(NF)を有する試料の例を提供する。75%高い陽性細胞を有する試料の出現についての知見を用いれば、当業者は、例えば、低パーセンテージの陽性細胞を有する他の試料のNFを評価しうる。該分類は、さらに、本質的にRBM3タンパク質を欠く参照試料(陰性参照)、すなわち、低NF(例えば、<5%、例えば、<2%)またはNF0を提供する参照試料によって援助されうる。同じことが細胞質強度および細胞質フラクションにも応用される。
上記のように、調節された量のRBM3タンパク質を発現している細胞系統は、参照として、特に、陽性参照として使用されうる。
1以上の写真もまた、「参照試料」として提供されうる。例えば、かかる写真は、ある特定の条件下である特定の抗体を用いて染色され、かつ、ある特定の核または細胞質強度および/またはフラクションを示している腫瘍組織スライドの例を示しうる。「参照試料」に関する上記の議論は、必要な変更を加えて写真に応用される。
細胞系統または写真は、また、本開示にしたがうキットのパーツを形成しうる(下記参照)。
さらに、当業者は、RBM3タンパク質またはRBM3mRNAが関連する遺伝子によってコードされ、関連する発現パターンを示す限り、上記態様にしたがう方法の有用性が、目的の対象に存在するRBM3タンパク質またはRBM3mRNAのいずれかの特定の変種の定量化に限定されないことを理解すべきである。
非限定的例として、RBM3タンパク質は、
i)配列番号1、および
ii)配列番号1と少なくとも85%同一である配列
から選択される配列を含みうる。
いくつかの具体例において、上記配列ii)は、配列番号1と少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、少なくとも99%同一である。
別の非制限的な例として、RBM3タンパク質は、
i)配列番号2、および
ii)配列番号2と少なくとも85%同一である配列
から選択される配列を含みうるか、または該配列から構成されうる。
いくつかの具体例において、上記配列ii)は、配列番号2と少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、少なくとも99%同一である。
別の非制限的な例として、本開示のRBM3mRNAは、
i)配列番号3、または
ii)該配列と少なくとも85%同一である配列
を含みうるか、または該配列から構成されうる。
いくつかの具体例において、上記配列ii)は、配列i)と少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、少なくとも99%同一である。
「%同一」なる語は、本開示と関連して使用される場合、下記の様に計算される。クエリー配列を、CLUSTAL Wアルゴリズム(Thompson, J.D., Higgins, D.G. and Gibson, T.J., Nucleic Acids Research, 22: 4673-4680 (1994))を用いて標的配列にアラインする。各位置でのアミノ酸残基を比較し、標的配列中において一致するクエリー配列中の位置の割合を%同一性として報告する。また、標的配列は、比較される位置の数を決定する。結果として、本開示との関連において、標的配列よりも短いクエリー配列は、標的配列と100%同一になることはない。例えば、85アミノ酸長のクエリー配列は、100アミノ酸長の標的配列と最大で85%同一になりうる。このことは、必要な変更を加えて、核酸配列に対応する。
いくつかの具体例において、上記態様の方法の工程a)は、
対象から生物学的材料を得、該生物学的材料の関連する部分を摘出または選択して該試料を得、所望により、該試料を固相上に並べて工程a)の評価を容易にする
ことを含みうる。かくして、工程a)は、例として、対象から腫瘍組織材料を得、所望により、該組織材料をパラフィンまたはホルマリン中に固定化し、該組織材料を組織プロセス(histo-processing)に付して、該試料を構成するセクションを得、所望により、該試料を顕微鏡用の透明スライド、例えば、ガラススライド上に載せることを含みうる。
上記態様の方法の具体例において、RBM3タンパク質は、RBM3タンパク質との選択的相互作用が可能な検出可能および/または定量化可能なアフィニティーリガンドの試料に適用することにより、検出および/または定量化されうる。該アフィニティーリガンドの適用は、試料中で該アフィニティーリガンドのRBM3タンパク質への結合を可能にする条件下で実施する。
明確化するために、上記態様の方法の具体例において、工程a)は、
a1)試料に、評価されるべきRBM3タンパク質との選択的相互作用が可能な定量化できるアフィニティーリガンドを添加し、該添加を該試料中に存在するRBM3タンパク質に対する該アフィニティーリガンドの結合を可能にする条件下で実施し、
a2)結合していないアフィニティーリガンドを除去し、
a3)該試料と結合したままのアフィニティーリガンドを定量化して、該量を評価する
ことを含みうる。
「試料と結合したままのアフィニティーリガンド」なる語は、工程a2)において除去されなかったアフィニティーリガンド、例えば、試料に結合したアフィニティーリガンドを示す。ここに、結合は、例えば、抗体と抗原との間の相互作用であってもよい。
しかしながら、いくつかの具体例において、工程a2)にしたがう結合していないアフィニティーリガンドの除去、例えば、洗浄は、常に必要なわけではない。かくして、上記態様の方法のいくつかの具体例において、工程a)は、
aI)試料に、評価されるべきRBM3タンパク質との選択的相互作用が可能な定量化できるアフィニティーリガンドを添加し、該添加を該試料中に存在するRBM3タンパク質に対する該アフィニティーリガンドの結合を可能にする条件下で実施し、
aII)該試料に結合したアフィニティーリガンドを定量化して、該量を評価する
ことを含みうる。
本開示との関連において、「特異的」または「選択的」相互作用、例えば、アフィニティーリガンドとその標的または抗原との「特異的」または「選択的」相互作用は、特異的相互作用と非特異的相互作用、または選択的相互作用と非選択的相互作用との間の区別に意義があるような相互作用を意味する。2つの蛋白質間の相互作用は、時折、解離定数によって測定される。解離定数は、2つの分子間の結合(またはアフィニティー)の強度を示す。典型的に、抗体とその抗原との間の解離定数は、10−7〜10−11Mである。しかしながら、高い特異性/選択性は、必ずしも、高いアフィニティーを必要としない。そのカウンターパートに対する低アフィニティー(モル範囲で)を有する分子は、非常に高いアフィニティーを有する分子と同程度に選択的/特異的であることが示された。本開示の場合、特異的または選択的相互作用とは、所定の条件下、生物学的起源の試料、例えば、天然または処理された生物学的液体の調製された組織試料または液体試料中の、他のタンパク質の存在下で、特定の方法を特異的タンパク質、標的タンパク質の存在および/または量を決定するために使用することができる程度をいう。すなわち、特異性または選択性は、関連する蛋白質間を区別できる能力である。特異的および選択的は、時折、本記載において交換可能に使用される。例えば、抗体の特異性または選択性は、下記実施例のセクション2におけるように(ここに、各々、タンパク質アレイセットアップ、懸濁ビーズアレイおよび複合競合アッセイを用いて分析を行う)決定されうる。特異性および選択性決定は、また、Nilsson Pら、(2005) Proteomics 5: 4327-4337に記載されている。
適当なアフィニティーリガンドを選択または製造し、検出および/または定量化に適当なフォーマットおよび条件を選択することは、当業者の能力内であると考えられる。にもかかわらず、有用性を証明しうるアフィニティーリガンドの例、ならびに検出および/または定量化のためのフォーマットおよび条件の例は、説明目的で下記に示される。
かくして、本開示の具体例において、アフィニティーリガンドは、抗体、そのフラグメントおよびその誘導体、すなわち、免疫グロブリン足場(scaffold)に基づくアフィニティーリガンドからなる群から選択されうる。抗体およびそのフラグメントまたは誘導体は、単離されていてもよい。抗体は、ネズミ、ウサギ、ヒトおよび他の抗体を包含するいずれかの起源のモノクローナルおよびポリクローナル抗体、ならびに異なる種の配列を含むキメラ抗体、例えば、部分的なヒト化抗体、例えば、部分的なヒト化マウス抗体を含む。ポリクローナル抗体は、選択した抗原で動物を免疫化することによって製造される。ポリクローナル抗体は、単一特異的であってもよい。規定の特異性のモノクローナル抗体は、KoehlerおよびMilstein(Koehler G およびMilstein C (1976) Eur. J. Immunol. 6: 511-519)によって開発されたハイブリドーマ技術を用いて製造できる。本開示の抗体フラグメントおよび誘導体は、抗体(それらは該抗体のフラグメントまたは誘導体である)と同じ抗原(例えば、RBM3タンパク質)と選択的相互作用することができる。抗体フラグメントおよび誘導体は、無傷免疫グロブリンタンパク質の重鎖の第1定常ドメイン(CH1)、軽鎖の定常ドメイン(CL)、重鎖の可変ドメイン(VH)および軽鎖の可変ドメイン(VL)からなるFabフラグメント、2つの可変抗体ドメインVHおよびVLからなるFvフラグメント(Skerra A およびPlueckthun A (1988) Science 240: 1038-1041)、フレキシブルなペプチドリンカーによって一緒に連結された2つのVHおよびVLドメインからなる一本鎖Fvフラグメント(scFv)(Bird REおよびWalker BW (1991) Trends Biotechnol. 9: 132-137)、ベンス−ジョーンズ(Bence Jones)ダイマー(Stevens FJら、(1991) Biochemistry 30: 6803-6805)、ラクダ科の重鎖ダイマー(Hamers-Casterman Cら、(1993) Nature 363: 446-448)および単一可変ドメイン(Cai X およびGaren A (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93: 6280-6285; Masat L ら、(1994) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91: 893-896)、および例えば、テンジクザメ由来の新規抗原レセプター(NAR)(Dooley Hら、(2003) Mol. Immunol. 40: 25-33)および可変重鎖ドメインに基づくミニボディ(Skerra AおよびPlueckthun A (1998) Science 240: 1038-1041)のような単一ドメイン足場を含む。
いくつかの具体例において、本開示のアフィニティーリガンドは、配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドと選択的相互作用することが可能である。実施例、セクション1bに下記するように、膜貫通領域およびいずれかのシグナルペプチドは成熟タンパク質において切除されるので、RBM3フラグメント配列番号1は、イー・コリ(E. coli)における効率の良い発現を保証するために膜貫通領域を欠くように、かつ、いずれかのシグナルペプチドを欠くように設計された。配列番号1は、かくして、免疫化のために設計された。さらに、タンパク質フラグメントは、他のヒトタンパク質に対する低い相同性を有する独特な配列をからなるように、生じたアフィニティー試薬の交差反応性を最小限にするように、かつ、立体構造エピトープの形成を可能にし、かつ、いまだ細菌系における効率の良いクローニングおよび発現を可能にするのに適当なサイズであるように設計された。したがって、アフィニティーリガンドが抗体またはそのフラグメント若しくは誘導体である場合、該アフィニティーリガンドは、そのアミノ酸配列が配列番号1からなるペプチドで動物を免疫化する工程を含むプロセスによって得られうる。例えば、免疫化プロセスは、フロイント(Freund)の完全アジュバント中のタンパク質での一次免疫を含みうる。また、免疫化プロセスは、さらに、2〜6週間の間隔で、フロイントの不完全アジュバント中のタンパク質での少なくとも2回の追加免疫を含みうる。所定の標的に対する抗体またはそのフラグメント若しくは誘導体の生産方法は、当該分野で既知である。
さらに、実施例、セクション4に下記するように、2つのエピトープ領域(配列番号4および配列番号5)が配列番号1内で同定された。かくして、アフィニティーリガンドは、そのアミノ酸配列が配列番号4または配列番号5からなるペプチドで動物を免疫化する工程を含むプロセスによって得られうる。また、抗体またはフラグメントは、20アミノ酸以下、例えば、15アミノ酸以下からなるRBM3フラグメントで動物を免疫化する工程を含むプロセスによって得てもよく、配列番号6〜19から選択される配列を含む。
配列番号4〜19についてのさらなる議論は、下記のとおりである。
本開示と関連して、「単一特異的抗体」は、それ自体の抗原上でアフィニティー精製され、それにより、他の抗血清タンパク質および非特異的抗体から分離された1のポリクローナル抗体またはポリクローナル抗体の集団である。アフィニティー精製は、その抗原に選択的に結合する抗体をもたらす。本開示の場合、ポリクローナル抗血清は、2工程からなる免疫アフィニティーに基づくプロトコールによって精製されて、標的タンパク質に選択的な単一特異的抗体を得る。抗原フラグメントの一般的なアフィニティータグに向けられた抗体は、固定化されたタグタンパク質を捕獲剤として用いて、一次枯渇(depletion)工程において除去される。一次枯渇工程後、捕獲剤として抗原を有する二次アフィニティーカラム上に血清を負荷して、抗原に特異的な抗体を富化する(Nilsson Pら、(2005) Proteomics 5: 4327-4337も参照のこと)。
ポリクローナルおよびモノクローナル抗体、ならびにそれらのフラグメントおよび誘導体は、選択的な生物分子認識を必要とする応用において、例えば、上記態様の方法にしたがうRBM3タンパク質の検出および/または定量化において、アフィニティーリガンドの伝統的な選択を示す。しかしながら、当業者は、選択的結合リガンドのハイスループット生産および低費用生産システムの要望が増したため、新規な生物分子多様性技術をこの10年間で開発した。これにより、生物分子認識応用における結合リガンドとして等しく有用であることが証明され、免疫グロブリンの代わりに、または免疫グロブリンと一緒に使用することができる免疫グロブリンおよび非免疫グロブリン起源の新規な型のアフィニティーリガンドの生産が可能となった。
アフィニティーリガンドの選択に必要とされる生物分子多様性は、複数の可能な足場分子の1つのコンビナトリアル操作によって生じる場合があり、次いで、特異的/選択的アフィニティーリガンドは、適当な選択プラットフォームを用いて選択される。足場分子は、免疫グロブリンタンパク質起源(Bradbury AR およびMarks JD (2004) J. Immunol. Meths. 290: 29-49)、非免疫グロブリン起源(Nygren PA およびSkerra A (2004) J. Immunol. Meths. 290: 3-28)、またはオリゴヌクレオチド起源(Gold Lら (1995) Annu. Rev. Biochem. 64: 763-797)であってもよい。
多数の非免疫グロブリンタンパク質足場が新規結合タンパク質の開発において、支持構造として使用されている。本開示にしたがって使用するためのRBM3タンパク質に対するアフィニティーリガンドを生成するために有用なかかる構造の非限定的な例は、ブドウ状球菌タンパク質Aおよびそのドメインおよびこれらのドメインの誘導体、例えば、タンパク質Z(Nord Kら、(1997) Nat. Biotechnol. 15: 772-777)、リポカリン(lipocalin)(Beste Gら、(1999) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 96: 1898-1903)、アンキリンリピートドメイン(Binz HKら、(2003) J. Mol. Biol. 332: 489-503)、セルロース結合ドメイン(CBD)(Smith GPら、(1998) J. Mol. Biol. 277: 317-332; Lehtioe Jら、(2000) Proteins 41: 316-322)、γ結晶(Fiedler UおよびRudolph R, WO01/04144)、緑色蛍光タンパク質(GFP)(Peelle Bら、(2001) Chem. Biol. 8: 521-534)、ヒト細胞毒Tリンパ球関連抗原4(CTLA−4)(Hufton SEら、(2000) FEBS Lett. 475: 225-231; Lrving RA (2001) J. Immunol. Meth. 248: 31-45)、プロテアーゼ阻害剤、例えば、Knottinタンパク質(Wentzel Aら、(2001) J. Bacteriol. 183: 7273-7284; Baggio Rら、(2002) J. Mol. Recognit. 15: 126-134)およびKunitzドメイン(Roberts BLら、(1992) Gene 121: 9-15; Dennis MSおよびLazarus RA (1994) J. Biol. Chem. 269: 22137-22144)、PDZドメイン(Schneider Sら、(1999) Nat. Biotechnol. 17: 170-175)、ペプチドアダプター、例えば、チオレドキシン(Lu Zら、(1995) Biotechnology 13: 366-372; Klevenz B ら、(2002) Cell. Mol. Life Sci. 59: 1993-1998)、ブドウ状球菌ヌクレアーゼ(Norman TCら、(1999) Science 285: 591^595)、テンダミスタット(tendamistats)(McConell SJ およびHoess RH (1995) J. Mol. Biol. 250: 460-479; Li Rら、(2003) Protein Eng. 16: 65-72)、フィブロネクチンIII型ドメインに基づくトリネクチン(Koide A ら、(1998) J. Mol. Biol. 284: 1141-1151; Xuら、(2002) Chem. Biol. 9: 933-942)、および亜鉛フィンガー(Bianchi Eら、(1995) J. Mol. Biol. 247: 154-160; Klug A (1999) J. Mol. Biol. 293: 215-218; Segal DJら、(2003) Biochemistry 42: 2137-2148)である。
非免疫グロブリンタンパク質足場の上記の例は、新規な結合特異性の生成のための単一のランダム化ループを提示する足場タンパク質、強固な二次構造を有するタンパク質足場(ここに、タンパク質表面から突出している側鎖は、新規な結合特異性の生成のためにランダム化されている)、および新規な結合特異性の生成のために使用される非隣接超可変ループ領域を示す足場を包含する。
非免疫グロブリンタンパク質のほかに、オリゴヌクレオチドもアフィニティーリガンドとして使用されうる。アプタマーまたはデコイと呼ばれる1本鎖核酸は、よく定義された三次元構造に折り畳み、高いアフィニティーおよび特異性でその標的に結合する。(Ellington AD およびSzostak JW (1990) Nature 346: 818-822; Brody ENおよびGold L (2000) J. Biotechnol. 74: 5-13; Mayer GおよびJenne A (2004) BioDrugs 18: 351-359)。オリゴヌクレオチドリガンドは、RNAまたはDNAのいずれかであることができ、幅広い種類の標的分子クラスに結合することができる。
上記の足場構造のいずれかの変種のプールから所望のアフィニティーリガンドを選択するために、いくつかの選択プラットフォームが、選択された標的タンパク質に対する特異的な新規リガンドの単離に利用できる。選択プラットフォームは、限定するものではないが、ファージディスプレ−(Smith GP (1985) Science 228: 1315-1317)、リボソームディスプレー(Hanes J およびPlueckthun A (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94: 4937-4942)、酵母2ハイブリッドシステム(Fields S およびSong O (1989) Nature 340: 245-246)、酵母ディスプレー(Gai SAおよびWittrup KD (2007) Curr Opin Struct Biol 17: 467-473)、mRNAディスプレー(Roberts RWおよびSzostak JW (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94: 12297-12302)、細菌ディスプレー(Daugherty PS (2007) Curr Opin Struct Biol 17: 474-480, Kronqvist Nら、(2008) Protein Eng Des Sel 1-9, HArvey BRら、(2004) PNAS 101 (25): 913-9198)、マイクロビーズディスプレー(Nord Oら、(2003) J Biotechnol 106: 1-13; WO01/05808)、SELEX(System Evolution of Ligands by Exponential Enrichment)(Tuerk CおよびGold L (1990) Science 249: 505-510)およびタンパク質フラグメント相補性アッセイ(PCA)(Remy IおよびMichnick SW (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 96: 5394-5399)を包含する。
かくして、本開示の具体例において、アフィニティーリガンドは、上記のタンパク質足場のいずれかに由来する非免疫グロブリンアフィニティーリガンド、またはオリゴヌクレオチド分子であってもよい。
上記のように、RBM3タンパク質フラグメント配列番号1は、他のヒトタンパク質に対する低い相同性を有する独特の配列からなるように、かつ、生じたアフィニティー試薬の交差反応性を最小限するように設計された。結果として、本開示の具体例において、アフィニティーリガンドは、アミノ酸配列配列番号1からなるポリペプチドとの選択的相互作用が可能でありうる。
実施例、セクション4に下記するように、エピトープ領域配列番号4および5は、配列番号1内で同定された。かくして、いくつかの具体例において、本開示のアフィニティーリガンドは、配列番号4および5から選択されるアミノ酸配列からなるペプチドとの選択的相互作用が可能である。
さらに、実施例、セクション5に上記するように、別の4つのエピトープ領域(配列番号6−9)が同定された。かくして、いくつかの具体例において、本開示のアフィニティーリガンドは、20アミノ酸以下、例えば、15アミノ酸以下からなるRBM3フラグメントとの選択的相互作用が可能であり、配列番号6−9から選択される配列を含む。
また、実施例、セクション6に上記するように、別の10個のエピトープ領域(配列番号10−19)が同定された。かくして、いくつかの具体例において、本開示のアフィニティーリガンドは、20アミノ酸以下、例えば、15アミノ酸以下からなるRBM3フラグメントとの選択的相互作用が可能であり、配列番号10−19から選択される配列を含む。
単一のエピトープ領域に対する選択性を有する抗体(例えば、モノクローナル抗体)は、より長いペプチド配列(例えば、PrESTまたは全長タンパク質)に対して生じた抗体と比べて、検出分析において増加した再現性を提供しうる。単一のエピトープ領域に対して選択的な抗体は、また、免疫組織化学的分析において明瞭かつ強い染色を提供しうる。これらの利益は、独立して、または共同で、本開示にしたがう治療に関する治療予測または決定をする場合に、価値があるかもしれない。図22において、ポリクローナル抗体と比較した本開示にしたがうモノクローナル抗体の利益(増加した選択性)を説明する。
モノクローナル抗体6F11および1B5は、特に有益であると考えられる。図22において、6F11および1B5はどちらも、ポリクローナル抗−RBM3抗体よりも選択的であることが示される。さらに、1B5は、6F11よりも選択的であることが示される。1B5は、下記の実施例、セクション7、8および10においても用いられる。
実施例、セクション6において1B5が結合することが示された配列番号17は、配列番号5内にある。本開示の好ましい具体例において、かくして、アフィニティーリガンドは、配列番号5からなるRBM3フラグメントとの選択的相互作用が可能であり、本開示の特に好ましい具体例において、アフィニティーリガンドは、20アミノ酸以下、例えば、15アミノ酸以下からなり、配列番号17を含むRBM3フラグメントとの選択的相互作用が可能である。
6F11は、配列番号8および配列番号16に結合することが示される。本開示の他の好ましい具体例において、アフィニティーリガンドは、かくして、20アミノ酸以下、例えば、15アミノ酸以下からなり、配列番号8および16から選択される配列を含むRBM3フラグメントとの選択的相互作用が可能である。配列番号8および16は、オーバーラップしており、かかるフラグメントは、配列番号8および16の両方の配列を含みうることに留意されたい。
RBM3タンパク質と選択的相互作用が可能なアフィニティーリガンドの検出および/または定量化は、生物学的相互作用に基づくアッセイにおける結合試薬の検出および/または定量化のために当業者に既知のいずれかの方法において達成されうる。したがって、上記のいずれかのアフィニティーリガンドは、RBM3タンパク質の存在を定量的および/または定性的に検出するために使用されうる。これらの「一次」アフィニティーリガンドは、種々のマーカーで標識されてもよく、または、次いで、検出、視覚化および/または定量化を可能にするための二次的標識アフィニティーリガンドによって検出してもよい。これは、いずれかの1以上の多数の標識を用いて達成することができ、該標識は、当業者に既知の1以上の多数に技術を用いて、いずれの過度の実験も必要とせずに、RBM3タンパク質との相互作用が可能なアフィニティーリガンドまたはいずれかの二次的アフィニティーリガンドにコンジュゲートすることができる。
一次および/または二次アフィニティーリガンドにコンジュゲートすることができる標識の非限定的な例は、蛍光染料または金属(例えば、フルオレセイン、ローダミン、フィコエリトリン(phycoerythrin)、フルオレスカミン(fluorescamine))、発色染料(例えば、ロドプシン(rhodopsin)、化学発光化合物(例えば、ルミナル(luminal)、イミダゾール)および生物発光タンパク質(例えば、ルシフェリン、ルシフェラーゼ)、ハプテン(例えば、ビオチン)を包含する。種々の他の有用な蛍光団(fluorescer)および発光団(chromophore)は、Stryer L (1968) Science 162: 526-533およびBrand LおよびGohlke JR (1972) Annu. Rev. Biochem. 41: 843-868に記載される。アフィニティーリガンドは、また、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ−ラクタマーゼ)、放射性同位元素(例えば、H、14C、32P、35Sまたは125I)および粒子(例えば、金)で標識することもできる。本開示との関連において、「粒子」は、分子の標識に適当な粒子、例えば、金属粒子をいう。さらに、アフィニティーリガンドは、蛍光性半導体ナノ結晶(量子ドット)で標識されてもよい。量子ドットは、優れた量子収量を有し、有機フルオロフォアと比べて光安定性であり、したがって、より容易に検出される(Chanら、(2002) Curr Opi Biotech. 13: 40-46)。種々の化学、例えば、アミン反応またはチオール反応を用いて、異なる型の標識をアフィニティーリガンドにコンジュゲートすることができる。しかしながら、アミンおよびチオール以外の反応基、例えば、アルデヒド、カルボン酸およびグルタミンを用いることもできる。
上記の方法態様は、いくつかの既知のフォーマットおよびセットアップのいずれかにおける使用に適用してもよく、その非限定的な選択は、下記で論じられる。
組織学に基づくセットアップにおいて、RBM3タンパク質標的に結合した標識したアフィニティーリガンドの検出、局在化および/または定量化は、視覚化技術、例えば、光学顕微鏡または免疫蛍光顕微鏡を含みうる。他の方法は、フローサイトメトリーまたはルミノメトリーを介する検出を含みうる。
対象由来の生物学的材料、例えば、外科的に摘出された腫瘍組織は、RBM3タンパク質またはRBM3mRNAの検出および/または定量化のための試料を得るために使用されうる。かくして、試料は、事前に得られた試料であってもよい。事前に得られた試料を方法に用いる場合、ヒトまたは動物の体において実施する方法工程はない。
アフィニティーリガンドは、RBM3タンパク質の検出および/または定量化のための試料に適用すればよい。該手法は、RBM3タンパク質の検出を可能にするだけでなく、さらに、その発現の分布および相対的レベルを示しうる。
アフィニティーリガンド上の標識の視覚化方法は、限定するものではないが、蛍光分析的、発光分析的および/または酵素的技術を包含しうる。蛍光は、蛍光標識を特定波長の光に曝し、その後、特定波長領域において放出された光を検出および/または定量化することによって検出および/または定量化する。発光タグ付加されたアフィニティーリガンドの存在は、化学的反応の間に発生した発光によって検出および/または定量化されうる。酵素的反応の検出は、化学的反応から生じる試料の色の変化による。当業者は、適当な検出および/または定量化のために、種々の異なるプロトコールを修飾できることを承知する。
上記態様の方法の具体例において、試料は、固相支持体または担体、例えば、ニトロセルロースまたは生物学的試料中に存在するRBM3タンパク質を固定化できるいずれか他の固体支持体マトリックス上に固定化してもよい。本発明において有用ないくつかのよく知られた固体状態の支持体材料は、ガラス、炭水化物(例えば、セファロース)、ナイロン、プラスチック、羊毛、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、デキストラン、アミラーゼ、フィルム、樹脂、セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、アルミナ、斑糲岩およびマグネタイトを包含する。生物学的試料の固定化後、RBM3タンパクに選択的な一次アフィニティーリガンドを、例えば、本開示の実施例、セクション8に記載のように、適用しうる。一次アフィニティーリガンド自体が標識されていない場合、支持体マトリックスを当該分野で既知の1以上の適当なバッファーで洗浄してもよく、次いで、二次標識アフィニティーリガンドに曝露し、バッファーで再び1回洗浄して、非結合アフィニティーリガンドを除去すればよい。その後、選択的アフィニティーリガンドは、常法で検出および/または定量化されうる。アフィニティーリガンドに対する結合特性は、固相支持体によって変化しうるが、当業者は、ルーチンな実験による各決定のための有効かつ最適なアッセイ条件を決定することができるはずである。
結果として、上記態様の方法の具体例において、a1)またはaI)の定量化できるアフィニティーリガンドは、該定量化できるアフィニティーリガンドを認識可能な二次アフィニティーリガンドを用いて検出されうる。a3)またはaII)の定量化は、かくして、定量化できるアフィニティーリガンドに対するアフィニティーを有する二次アフィニティーリガンドの手段によって実施されうる。例として、二次アフィニティーリガンドは、抗体またはそのフラグメントもしくは誘導体であってもよい。
例として、RBM3タンパク質の検出および/または定量化のための1の利用可能な方法は、後に酵素イムノアッセイ(例えば、EIAまたはELISA)において検出および/または定量化できる酵素にアフィニティーリガンドを結合させることによる。かかる技術はよく確立されており、その実現は、当業者にとって何ら過度の困難を提供しない。かかる方法において、生物学的試料を固体材料またはRBM3タンパク質に対するアフィニティーリガンドにコンジュゲートした固体材料と接触させ、次いで、それを酵素的に標識した二次アフィニティーリガンドで検出および/または定量化する。その後、適当な基質を適当なバッファー中、該酵素標識と反応させて、化学基(moiety)をもたらし、例えば、分光光度計、蛍光光度計、発光光度計を用いて、または視覚的手段を介して、検出および/または定量化する。
上記のように、一次およびいずれかの二次アフィニティーリガンドを放射性同位体で標識して、検出および/または定量化を可能にすることができる。本開示における適当な放射性標識の非限定的な例は、H、14C、32P、35Sまたは125Iである。標識されたアフィニティーリガンドの比活性は、放射性標識の半減期、同位体純度、および標識がどのようにアフィニティーリガンド中に取り込まれたかに依存する。アフィニティーリガンドは、好ましくは、周知の技術(Wensel TG およびMeares CF (!983): Radioimmunoimaging and Radioimmunotherapy (Burchiel SW およびRhodes BA編) Elsevier, New York, pp 185-196)を用いて標識される。かくして放射能標識されたアフィニティーリガンドを用いて、イン・ビボまたはイン・ビトロでの放射能の検出によって、RBM3タンパク質を視覚化することができる。例えば、イン・ビボおよびイン・ビトロでの検出のためにガンマカメラ、磁気共鳴分光学または放射トモグラフィー機能を用いる放射性核スキャニングと同時に、ガンマ/ベータカウンター、シンチレーションカウンターおよび放射線写真をイン・ビトロで用いてもよい。
mRNAレベルでのバイオマーカーの検出および定量化のための方法は、当該分野で周知である。
1のかかる方法によれば、核酸抽出バッファーの存在下、ホモジネーション、次いで遠心分離によって、細胞から全細胞RNAを精製する。次いで、核酸を沈澱させて、DNaseでの処理および沈澱によってDNAを除去する。次いで、標準的な技術にしたがい、アガロースゲル上のゲル電気泳動によって、RNA分子を分離し、例えば、所謂「ノーザン」ブロッティング技術によって、ニトロセルロースフィルターに移す。次いで、加熱により、RNAを該フィルター上に固定化する。特異的RNAの検出および定量化は、目的のRNAに相補的な適当に標識したDNAまたはRNAプローブを用いて達成される。例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Sambrook Jら、(1989) 第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press)を参照のこと。標識したDNAまたはRNAプローブの調製方法およびその標的ヌクレオチド配列へのハイブリダイゼーション条件は、Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Sambrook Jら、(1989) 第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press)に記載されている。例えば、核酸プローブは、例えば、H、32P、33P、14Cまたは35Sのような放射性核種、重金属、または標識リガンドに対する特異的結合対メンバーとして機能できるリガンド(例えば、ビオチン、アビジン、または抗体)、蛍光分子、化学発光分子、酵素などで標識されていてもよい。
プローブは、ニックトランスレーション法(Rigbyら(1977) J. Mol Biol, 113: 237-251)またはランダムプライミング法(Fienberg, (1983) Anal. Biochem., 132: 6-13)のいずれかによって高い比活性に標識してもよい。後者は、高い比活性の32P−標識プローブをRNA鋳型から合成する方法であることができる。例えば、ニックトランスレーション法にしたがって、予め存在しているヌクレオチドを高放射性ヌクレオチドと置き換えることによって、10cpm/μgを越える十分な高い比活性を有する32P−標識核酸プローブを調製することができる。次いで、ハイブリダイゼーションのオートラジオグラフ検出は、ハイブリダイズしたフィルターを写真フィルムに曝露することによって実施することができる。ハイブリダイズしたフィルターに曝露された写真フィルムのデンシトメトリースキャニングは、バイオマーカーレベルの正確な測定を提供する。別のアプローチを用いると、バイオマーカーレベルは、コンピューター処理画像化システム、例えば、Molecular Dynamics 400-B 2D Phosphorimager(Amersham Bioscinences, Piscataway, NJ, USA)によって定量化できる。
DNAまたはRNAプローブの放射性核種標識が実際的でない場合、ランダム−プライマー法を用いてアナログ、例えば、dTTPアナログ5−(N−(N−ビオチニル−イプシロン−アミノカプロイル)−3−アミノアリル)デオキシウリジントリホスフェートをプローブ分子中に取り込むことができる。ビオチン化されたプローブオリゴヌクレオチドは、蛍光染料または呈色反応を生じる酵素と結合されたビオチン結合タンパク質、例えば、アビジン、ストレプトアビジン、および抗体(例えば、抗−ビオチン抗体)との反応によって検出することができる。
ノーザンおよび他のRNAブロッティングハイブリダイゼーション技術のほかに、RNA転写産物のレベルの決定は、イン・サイトゥ(in situ)ハイブリダイゼーションの技術を用いて達成されうる。該技術は、ノーザンブロッティング技術よりも少ない細胞を必要とし、顕微鏡カバースリップ上に全細胞を置き、放射性標識または他の方法で標識された核酸(例えば、cDNAまたはRNA)プローブを含有する溶液で細胞の核酸含量をブローブすることを含む。該技術は、対象由来の組織生検試料を分析するのに特によく適している。
細胞中のRNA転写産物の相対的な数は、また、RNA転写産物の逆転写、次いで、ポリメラーゼ連鎖反応による逆転写された転写産物の増幅(RT−PCR)によって決定することができる。RNA転写産物のレベルは、内部標準、例えば、同じ試料中に存在する標準遺伝子由来のmRNAのレベルとの比較において定量することができる。当業者は、内部標準として使用するための適当な遺伝子を選択することができる。定量的RT−PCRの方法およびその変種は、当該分野の技術内である。
いずれかの適当なプライマーは、定量的RT−PCRに使用することができる。好ましくは、該プライマーは、RBM3に特異的である。RBM3に特異的なプライマー(例えば、配列番号3から開始する)を生成することは、当該分野の技術内である。プライマーは、いずれかの適当な長さであることができるが、好ましくは、19〜23(例えば、19、20、21、22または23)ヌクレオチドである。理想的には、アンプリコン長は、最適なPCR効率のために、50〜150(必要に応じて250まで、次いで、温度サイクリングプロトコールおよび反応成分の最適化が必要とされうる)塩基である。非常に長いアンプリコンを生じるプライマーを設計することは、乏しい増幅効率をもたらしうる。プライマー設計および最適なアンプリコンサイズに関する情報は、例えば、www.ambion.com.に見出しうる。
いくつかの例において、バイオマーカー発現を検出するためにマイクロチップ技術を使用することが望ましい。マイクロチップは、当該分野で既知の技術によって製作することができる。例えば、適当な長さ、例えば、40ヌクレオチドのプローブオリゴヌクレオチドは、C6位置で5’−アミン修飾され、市販のマイクロアレイシステム、例えば、GENEMACHINE OmniGrid 100 MicroarrayerおよびAmersham CODELINK活性化スライドを用いてプリントする。標的RNAに対応する標識されたcDNAオリゴマーは、標的RNAを標識プライマーと共に逆転写することによって調製される。第1鎖の合成後、RNA/DNAハイブリッドを変性させて、RNA鋳型を分解する。かくして調製された標識された標的cDNAを次いで、ハイブリダイゼーション条件下(例えば、6倍SSPE/30%ホルムアミド、25℃で18時間、次いで、0.75倍TNT中、37℃で40分間洗浄)でマイクロアレイチップにハイブリダイズする。固定化したプローブDNAが試料中の相補的標的cDNAを認識するアレイ上の位置にて、ハイブリダイゼーションが起きる。標識された標的cDNAは、結合が起きるアレイ上の正確な位置に印を付け、それにより、自動的検出および定量化を可能にする。アウトプットは、ハイブリダイゼーション事象のリストからなり、それは、対象試料中、特異的cDNA配列の相対的存在量、したがって、対応する相補的バイオマーカーの相対的存在量を示す。一の具体例にしたがって、標識されたcDNAオリゴマーは、ビオチン標識されたプライマーから調製されたビオチン標識されたcDNAである。次いで、マイクロアレイは、例えば、ストレプトアビジン−Alexa647コンジュゲートを用いて、ビオチン含有転写産物の直接的検出によって処理され、通常のスキャニング方法を用いてスキャンされる。アレイ上の各スポットの画像強度は、対象試料中の対応するバイオマーカーの存在量に比例する。
アレイの使用は、mRNA発現検出に関して1以上の利益を有する。第一に、数個から数千もの遺伝子の広範囲な発現を単一試料中で一度に同定することができる。第二に、オリゴヌクレオチドプローブの注意深い設計によって、成熟および前駆体分子の両方の発現を同定することができる。第三に、ノーザンブロット分析と比べて、チップは、少量のRNAを必要とする。
本開示の第四の態様として、上記態様にしたがう方法を実施するためのキットであって、
a)PBM3タンパク質との選択的相互作用が可能な定量化できるアフィニティーリガンド、および
b)該定量化できるアフィニティーリガンドの量を定量化するために必要な試薬
を含むキットが提供される。
第四の態様にしたがうキットの種々の構成成分は、本開示の方法と関連して上記したように選択され、特定されうる。
かくして、本開示に従うキットは、RBM3タンパク質に対するアフィニティーリガンド、ならびに特異的および/または選択的にRBM3タンパク質に結合した後に、該特異的および/または選択的アフィニティーリガンドを定量化するのを助ける他の手段を含む。例えば、該キットは、RBM3タンパク質および該RBM3タンパク質との選択的相互作用が可能なアフィニティーリガンドによって形成された複合体を検出および/または定量化するための二次アフィニティーリガンドを含有しうる。該キットは、また、該キットを容易かつ効率的に使用可能にするアフィニティーリガンド以外の種々の補助物質を含有しうる。補助物質の例は、該キットの凍結乾燥タンパク質成分を溶解または復元するための溶媒、洗浄バッファー、酵素が標識として使用される場合、酵素活性を測定するための基質、パラフィンまたはホルマリン−固定化組織試料を用いる場合、抗原に対する接近可能性を向上するための標的検索(retrieval)溶液、およびイムノアッセイ試薬キットにおいて一般に使用される反応アレスター(arrester)などの物質、例えば、バックグラウンド染色を減少させるための内在性酵素ブロック溶液および/または染色対比を増加させるための対比染色溶液を包含する。
キット態様の具体例において、アフィニティーリガンドは、方法態様と関連して上記されたアフィニティーリガンドのいずれか1つであってもよい。
さらに、方法態様と関連して上記されたものにしたがって、検出可能なアフィニティーリガンドは、キット態様の具体例において、蛍光染料および金属、発色染料、化学発光化合物および生物発光タンパク質、酵素、放射性同位体、粒子および量子ドットからなる群から選択される標識を含みうる。別法では、アフィニティーリガンドの量を定量化するのに必要な試薬は、定量化できるアフィニティーリガンドを認識可能な二次アフィニティーリガンドを含む。例として、定量化できるアフィニティーリガンドを認識可能な二次アフィニティーリガンドは、蛍光染料または金属、発色染料、化学発光化合物および生物発光タンパク質、酵素、放射性同位体、粒子および量子ドットからなる群から選択される標識を含む。
キット態様にしたがうキットは、また、有益には、試料値と比較するために使用されるべき参照値を提供するための参照試料または該参照値を得るための参照試料を含む。例えば、参照試料は、予め決定されたRBM3タンパク質を含みうる。かかる参照試料は、例えば、所定量のRBM3タンパク質を含有する組織試料によって構成されうる。組織参照試料は、次いで、研究されている試料中のRBM3タンパク質状態の決定において、手動で、例えば、視覚で、または参照組織試料および対象試料における発現レベルの自動比較によって、当業者によって使用されうる。別の例として、参照試料は、所定量または調節された量のRBM3タンパク質を発現している細胞系統、例えば、癌細胞系統を含みうる。当業者は、例えば、Rhodesら(2006) The biomedical scientist、p 515-520によって導かれるように、かかる細胞系統の提供方法を理解する。例として、細胞系統は、ホルマリン固定化されていてもよい。また、かかるホルマリン固定化細胞系統は、パラフィンに埋め込まれていてもよい。
「参照値を提供するための参照試料」なる語は、本開示と関連して、幅広く解釈されるべきである。参照試料は、実際に参照値に対応するRBM3タンパク質の量を含みうるが、参照値よりも高い値に対応するRBM3タンパク質の量も含みうる。後者の場合、「高い」値は、該方法を実施している人によって、例えば、「高い」値よりも低い参照値の出現を評価のための上方参照(upper reference)(陽性参照)として使用されうる。免疫組織化学の分野における当業者は、かかる評価の方法を理解する。さらに、別の例または相補的な例として、当業者は、例えば、陰性参照として、かかる評価における「低い」値を提供するために、低量のRBM3タンパク質を含む別の参照試料を使用してもよい。このことは、方法態様と関連して上記で議論されている。
結果として、キット態様の具体例において、参照試料は、参照値に対応するRBM3タンパク質の量を含みうる。例として、参照試料は、95%以下、例えば90%以下、例えば85%以下、例えば80%以下、例えば75%以下、例えば70%以下、例えば65%以下、例えば60%以下、例えば55%以下、例えば50%以下、例えば45%以下、例えば40%以下、例えば35%以下、例えば30%以下、例えば25%以下、例えば20%以下、例えば15%以下、例えば10%以下、例えば5%以下、例えば2%以下、例えば1%以下、例えば0%の核または細胞質フラクションに対応するRBM3タンパク質の量を含みうる。
別法では、または相補的方法では、参照試料は、中程度の核または細胞質強度またはそれ以下、例えば、弱い核または細胞質強度またはそれ以下、例えば、核または細胞質強度の不存在に対応するRBM3タンパク質の量を含みうる。
フラクション値および強度値の提供は、方法態様と関連して上記で議論される。
さらに、キット態様の別の具体例または相補的な具体例において、キットは、参照値よりも高い値に対応するRBM3タンパク質の量を含む参照試料を含みうる。これらの具体例において、参照試料は、例えば、75%以上の核または細胞質フラクションおよび/または強い核または細胞質強度に対応するRBM3タンパク質の量を含みうる。
キット態様のまたさらなる別の具体例または相補的な具体例において、キットは、参照値よりも低いか、または参照値に等しい値、例えば、核または細胞質強度の不存在および/または<2%、例えば0%の核または細胞質フラクションに対応するRBM3タンパク質の量を含む参照試料を含みうる。
かくして、キットは、予め決定された参照値に対応するRBM3タンパク質の量を含む参照試料、予め決定された参照値よりも高い値に対応するRBM3タンパク質の量を含む参照試料、および/または予め決定された参照値よりも低いか、または等しい値に対応するRBM3タンパク質の量を含む参照試料を含みうる。
結果として、キットの具体例は、予め決定された参照値よりも高いRBM3タンパク質の量を含む第1の参照試料、および予め決定された参照値よりも低いか、または等しい値に対応するRBM3タンパク質の量を含む第2の参照試料を含みうる。
キット態様の具体例において、参照試料は、組織試料、例えば、視覚的評価または顕微鏡評価に適応させた組織試料であってもよい。例として、組織参照試料は、パラフィンまたは緩衝化ホルマリン中で固定化されていてもよく、および/または顕微鏡ガラススライド上に載せる切片(例えば、μmという薄さの切片)に組織加工(histo-process)されていてもよい。組織参照試料は、さらに、RBM3タンパク質に対するアフィニティーリガンド、例えば、抗体での染色に適応させていてもよい。
結果として、キット態様の具体例において、参照試料は、いずれかの関連する参照値、例えば、上記の参照値のいずれか1つを直接または間接的に提供するように適応させていてもよい。
キット態様の参照試料のさらなる具体例は、方法態様の参照値および参照試料と関連して上記で議論されている。
上記の知見にしたがって、発明者らは、RBM3タンパク質およびそのフラグメントのためのいくつかの用途を認識する。
かくして、本開示の第五の態様として、50アミノ酸以下からなり、かつ、配列番号4〜19から選択される配列を含むRBM3タンパク質フラグメントが提供される。
第五の態様の具体例において、フラグメントは、29アミノ酸以下からなる。
第五の態様のさらなる具体例において、フラグメントは、20アミノ酸以下、例えば、15アミノ酸以下からなり、かつ、配列番号6〜19から選択される配列を含む。
かかるフラグメントの可能な用途を下記する。
本開示の第六の態様の第1の構造として、癌を有する哺乳動物対象の白金に基づく治療の治療予測マーカーとしてのRBM3タンパク質、そのフラグメントまたはRBM3mRNA分子の使用が提供される。
第1の構造の使用は、例えば、予め得られた試料において、全体的にイン・ビトロであってもよい。
本開示との関連において、「治療予測マーカー」は、その存在が治療に対する応答レベルを示す何らかの物質をいう。かくして、該マーカーは、バイオマーカー、例えば、ヒトタンパク質であってもよい。治療予測マーカーの存在、またはその相対的に高いレベルは、該治療に対する相対的に高い応答を示すが、一方、治療予測マーカーの不存在、またはその相対的に低いレベルは、該治療に対する相対的に低い応答を示す。ここに、「相対的に高い応答」は、「相対的に低い応答」と比べて高い。
第六の態様の第2の構造として、癌を有する哺乳動物対象の白金に基づく治療のための治療予測剤の製造、選択または精製のための、RBM3タンパク質またはその抗原的に活性なフラグメントの使用が提供される。
該選択および精製はイン・ビトロであってもよく、一方、該製造はイン・ビボであってもよい。
「抗原的に活性なフラグメント」は、該フラグメントとの選択的相互作用が可能なアフィニティーリガンドを生成することができるために十分な大きさのフラグメントをいう。
本開示との関連において、「治療予測剤」は、治療予測の確立において価値のある少なくとも1つの特性を有する剤をいう。例えば、治療予測剤は、治療予測マーカーとの選択的相互作用が可能であってもよい。
治療予測剤は、RBM3タンパク質またはその抗原的に活性なフラグメントとの選択的相互作用が可能なアフィニティーリガンドであってもよい。かかるアフィニティーリガンドの例は、方法態様に関連して上記で議論されている。
本開示の教示によって導かれる場合、当業者は、治療予測剤の製造、選択または精製において、どのようにRBM3タンパク質またはフラグメントを使用するのかを理解する。例えば、該使用は、RBM3タンパク質またはそのフラグメントが固定化されている固体支持体上でのアフィニティー精製を含みうる。該固体支持体は、例えば、カラム中に配置されていてもよい。さらに、該使用は、RBM3タンパク質またはそのフラグメントが固定化された固体支持体を用いる、RBM3タンパク質またはそのフラグメントに対する特異性を有するアフィニティーリガンドの選択を含みうる。かかる固体支持体は、ウェルプレート(例えば、96ウェルプレート)、磁気ビーズ、アガロースビーズまたはセファロースビーズであってもよい。さらに、該使用は、可溶性マトリックス(例えば、デキストランマトリックスを用いる)上でのアフィニティーリガンドの分析、または表面プラズモン共鳴装置、例えばBiacoreTM(登録商標)装置における使用(ここに、該分析は、例えば、固定化されたRBM3タンパク質またはそのフラグメントに対するいくつかの可能性のあるアフィニティーリガンドのアフィニティーをモニターすることを含みうる)を含みうる。
また、治療予測剤の製造のために、RBM3タンパク質またはその抗原的に活性なフラグメントは、動物、例えば、ウサギまたはマウスの免疫化に使用してもよい。
かかる使用は、
i)RBM3タンパク質またはその抗原的に活性なフラグメントを抗原として用いて、動物を免疫化し、
ii)免疫化された動物から、治療予測剤を含む血清を得、および所望により、
iii)該血清から、治療予測剤を単離する
工程を含む方法に関与しうる。
別法では、第1の工程後の工程は、
ii’)免疫化された動物から細胞を得(該細胞は、治療予測剤をコードしているDNAを含む)、
iii’)該細胞をメラノーマ細胞と融合させて、少なくとも1つのクローンを得、および
iV’)該クローンによって発現される治療予測剤を得ること
であってもよい。
第六の態様の具体例において、RBM3タンパク質のアミノ酸配列は、
i)配列番号1、および
ii)配列番号1と少なくとも85%同一である配列
から選択される配列を含みうる。
いくつかの具体例において、配列ii)は、配列番号1と少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、少なくとも99%同一である。
さらに、第六の態様の具体例において、RBM3タンパク質のアミノ酸配列は、
i)配列番号2、および
ii)配列番号2と少なくとも85%同一である配列
から選択される配列を含みうるか、または該配列からなりうる。
いくつかの具体例において、配列ii)は、配列番号2と少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、少なくとも99%同一である。
第六の態様の抗原的に活性なフラグメントは、例えば、第五の態様のフラグメントのいずれか1つであってもよい。
本開示の第七の態様として、RBM3タンパク質と選択的相互作用が可能なアフィニティーリガンドが提供される。
かかるアフィニティーリガンドの種々の具体例は、方法態様と関連して上記で議論されている。
本開示の第八の態様として、癌を有する哺乳動物対象の白金に基づく治療のための治療予測剤としての、第七の態様にしたがうアフィニティーリガンドの使用が提供される。
同様に、癌を有する哺乳動物対象に白金に基づく治療を施すべきか否かを示すための、RBM3タンパク質との選択的相互作用が可能なアフィニティーリガンドの使用が提供される。
ここに、「白金に基づく治療を施すべき」は、治療の利益が治療の不利益を補う場合をいう。治療の利益とは、治療を受けない場合よりも、治療を受けた場合に、生存または回復の確率が高いことをいう。治療の不利益とは、欠点、例えば、副作用、疼痛または他の不都合および費用をいう。
かかる使用は、例えば、イン・ビトロで行ってもよく、例えば、対象から事前に得られた試料の少なくとも一部におけるRBM3タンパク質の量の決定を含みうる。
同等の方法において、癌を有する哺乳動物対象の白金に基づく治療のための治療予測剤の製造における、RBM3タンパク質との選択的相互作用が可能なアフィニティーリガンドの使用が提供される。
本開示において、白金に基づく治療は、特に、高RBM3タンパク質または高RBM3mRNAの対象に有益であることが示される。高RBM3タンパク質または高RBM3mRNAの癌対象は、白金に基づく治療との関連で、予め認識されていないサブグループである。
かくして、本開示の第九の態様として、癌を有する哺乳動物対象の治療において使用するための白金に基づく治療剤であって、ここに、該対象が高RBM3タンパク質または高RBM3mRNAである、治療剤が提供される。
本開示の第十の態様として、癌を有する哺乳動物対象の治療のための医薬の製造における白金に基づく治療剤の使用であって、ここに、該対象が高RBM3タンパク質または高RBM3mRNAである、使用が提供される。
対象由来のいずれかのRBM3タンパク質またはmRNAパラメーターが白金に基づく治療に対して相対的に高い応答を示す場合、該対象は、「高RBM3タンパク質」または「高RBM3mRNA」である。例えば、対象由来の関連する生物学的試料が、関連する参照値よりも高い試料値に対応するRBM3タンパク質またはRBM3mRNAの量を含有することが見出された場合、該対象は、高RBM3タンパク質または高RBM3mRNAのであると考えられうる。関連する試料および参照値は、方法態様に関連して上記で議論されている。かくして、例えば、関連する試料、例えば、腫瘍由来の組織試料が該試料の関連する部分、例えば腫瘍細胞において検出可能なRBM3タンパク質発現を示す場合、該癌対象は、RBM3タンパク質陽性とみなされうる。さらに、例えば、かかる試料が、不存在よりも高い細胞質または核強度あるいは1%よりも高い細胞質または核フラクションに対応するRBM3タンパク質の量を含有する場合、該癌対象は、高RBM3タンパク質とみなされうる。本開示から、当業者、例えば、病理学者は、対象が高RBM3タンパク質であるか否か、対象が高RBM3mRNAであるか否かを決定する方法を理解する。
第九および第十の態様の種々の具体例は、特に癌の型および白金に基づく治療剤の型に関して、方法態様に関連して上記で議論されている。
一般に、発明者らは、本開示との関連において、RBM3タンパク質発現がRBM3mRNA発現よりも関連していると考える。
単一特異的ポリクローナル抗体
1.抗原の生成
a)材料および方法
EnsEMBL Gnene ID ENSG00000102317によってコードされる標的タンパク質の適当なフラグメントは、ヒトゲノム配列を鋳型として用いるバイオインフォマティックツールを用いて選択された(Lindskog Mら(2005) Biotechniques 38: 723-727, EnsEMBL, www.ensembl.org.)。該フラグメントは、RBM3タンパク質(配列番号2;EnsEMBLエントリー番号ENSP00000365946)のアミノ酸18〜151(配列番号1)に対応する134アミノ酸長フラグメントの製造のための鋳型として使用した。
EnsEMBLエントリー番号ENSP00000376755(配列番号3)のヌクレオチド281〜682を含有するRBM3遺伝子転写産物のフラグメントは、Platinum(登録商標)Taq(Invitrogen)および鋳型としてヒト全RNAプールパネル(Human Total RNA, BD Biosciences Clontech)を用いて、SuperscriptTMワンステップRT−PCR増幅キットによって単離された。発現ベクター中でフレーム内クローニングを可能にするためのPCR増幅プライマー(フォーワードプライマー:GACGAGCAGGCACTGGAAG(配列番号20)、リバースプライマー:GTAATTTCCTCCTGAGTAGC(配列番号21))によって、フランキングな制限部位NotIおよびAscIを該フラグメント中に導入した。次いで、下流プライマーをビオチン化して、以前に記載されたように、固相クローニングを可能にし、得られたビオチン化PCR産物をDynabeads M280 ストレプトアビジン(Dynal Biotech)上に固定化した(Larsson Mら(2000) J. Biotechnol. 80: 143-157)。NotI−AscI消化(New England Biolabs)によって、該フラグメントを固体支持体から遊離し、pAff8cベクター(Larsson Mら、上掲)中に、固定化された金属イオンクロマトグラフィー(IMAC)精製のためのへキサヒスチジルタグおよび連鎖球菌タンパク質G由来の免疫強化アルブミン結合タンパク質(ABP)からなるデュアルアフィニティータグを用いてフレーム内でライゲートし(Sjoelander Aら(1997) J. Immunol. Methods 21: 115-123; Stahl Sら(1999) Encyclopedia of Bioprocess Technology: Fermentation, Biocatalysis and Bioseparation (Fleckinger MCおよびDrew SW編)John Wiley and Sons Inc., New York, pp 49-63)、イー・コリBL21(DE3)細胞(Novagen)中に形質転換した。該クローンの配列は、TempliPhi DNA配列決定増幅キット(GE Healthcare, Uppsala, Sweden)を製造者の奨励にしたがって用いて増幅されたプラスミドDNAの染料−ターミネーターサイクル配列決定によって証明した。
発現ベクターを有するBL21(DE3)細胞は、5g/lの酵母抽出物(Merck KGaA)および50mg/lのカナマイシン(Sigma-Aldrich)で補足された30g/lのトリプシンダイズブロス(tryptic soy broth)(Merck KGaA)100ml中に、同じ培養培地中の一晩培養液1mlを添加することによって接種した。該細胞培養は、600nmの光学密度が0.5−1.5に達するまで、1リットルの振盪フラスコ中、37℃および150rpmでインキュベートした。次いで、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(Apollo Scientific)を最終濃度1mMまで添加することによって、タンパク質発現を誘導し、インキュベーションを25℃および150rpmにて一晩続けた。2400gでの遠心分離によって該細胞を回収し、ペレットを5ml溶解バッファー(7M塩酸グアニジン、47mM NaHPO、2.65mM NaHPO、10mM Tris−HCl、100mM NaCl、20mM β−メルカプトエタノール、pH=8)中に再懸濁し、37℃および150rpmにて2時間インキュベートした。35300gで遠心分離後、変性し、可溶化したタンパク質を含有する上清を収集した。
His−タグ付加した融合タンパク質を、ASPEC XL4TM(商標)(Gilson)上の自動タンパク質精製手法(Steenら、(2006) Protein Expr. Purif. 46: 173-178)を用いて、1ml Talon(登録商標)金属(Co2+)アフィニティー樹脂(BD Biosciences Clontech)を有するカラム上の固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィー(IMAC)によって精製した。該樹脂を20mlの変性洗浄バッファー(6M塩酸グアニジン、46.6mM NaHPO、3.4mM NaHPO、300mM NaCl、pH8.0−8.2)で平衡化した。次いで、浄化した細胞溶解物をカラムに加えた。その後、樹脂を最少31.5mlの洗浄バッファーで洗浄した後、2.5mlの溶出バッファー(6M尿素、50mM NaHPO、100mM NaCl、30mM酢酸、70mM 酢酸Na、pH5.0)中で溶出した。溶出した材料を500、700および1300μlの3つのプールに分画した。抗原を含有する700μlフラクション、ならびにプールした500および1300μlフラクションをさらなる使用のために保管した。
抗原フラクションを最終濃度1M尿素まで、リン酸緩衝化セーライン(PBS;1.9mM NaHPO、8.1mM NaHPO、154mM NaCl)で希釈し、次いで、濃縮工程により、7500Daの分子量カットオフを有するVivapore10/20ml濃縮器(Vivascience AG)を用いて、タンパク質濃度を増加させた。タンパク質濃度は、ウシ血清アルブミン標準を用いるビシンコニン酸(BCA)マイクロアッセイプロトコール(Pierce)を用いて、製造者の奨励にしたがって決定された。タンパク質の質は、Protein50または200アッセイを用いるバイオアナライザー(Bioanalyzer)装置(Agilent Technologies)上で分析された。
b)結果
RBM3の全長転写産物(配列番号3)のヌクレオチド281−682に対応する遺伝子フラグメントは、特異的プライマーを用いて、ヒトRNAプールからRT−PCRによって首尾良く単離された。該フラグメントは、標的タンパク質RBM3(配列番号2)のアミノ酸18〜151をコードする。膜貫通領域およびシグナルペプチドは成熟タンパク質では切断されているので、該標的タンパク質(配列番号2)の該134アミノ酸フラグメント(配列番号1)は、イー・コリでの有効な発現を確実にするために膜貫通領域を欠き、かつ、いずれかのシグナルペプチドを欠くように設計された。さらに、該タンパク質フラグメントは、他のヒトタンパク質に対して低い相同性を有する独特の配列からなるように、生じたアフィニティー試薬の交差反応性を最小限にするように、かつ、立体構造エピトープの形成を可能にし、かつ、いまだ細菌系における効率の良いクローニングおよび発現を可能にするのに適当なサイズであるように設計された。
正確なアミノ酸配列をコードしているクローンを同定し、イー・コリにおける発現において、正しいサイズの単一タンパク質を産生し、次いで、固定化金属イオンクロマトグラフィーを用いて精製した。溶出した試料を1M尿素の最終濃度に希釈し、試料を1mlに濃縮後、タンパク質フラグメントの濃度が10.4mg/mlであることが決定され、純度分析によると、96.0%純度であった。
2.抗体の生成
a)材料および方法
上記で得られた精製したRBM3フラグメントを抗原として用いて、ナショナルガイドライン(スウェーデン許可番号第A84−02号)にしたがって、ウサギを免疫化した。一次免疫として、フロイントの完全アジュバント中200μgの抗原で該ウサギを筋内に免疫化し、4週間隔で3回、フロイントの不完全アジュバント中100μgの抗原で追加免疫した。
免疫化した動物由来の抗血清を3工程のイムノアフィニティーに基づくプロトコール(Agaton Cら(2004) J. Chromatogr. A 1043: 33-40; Nilsson Pら(2005) Proteomics 5: 4327-4337)によって精製した。第1工程において、7mlの全抗血清を10xPBSを用いて、最終濃度1xPBS(1.9mM NaHPO、8.1mM NaHPO、154mM NaCl)に緩衝化し、0.45μm孔サイズフィルター(AcrodiscR, Life Science)を用いてろ過し、pAff8cベクターから発現され、抗原タンパク質フラグメントに関する上記と同じように精製されたデュアルアフィニティータグタンパク質His−ABP(ヘキサヒスチジルタグおよびアルブミン結合タンパク質タグ)に結合した5ml N−ヒドロキシスクシンイミド活性化セファロースTM4ファーストフロー(Fast Flow)(GE Healthcare)を含有するアフィニティーカラムにアプライした。第2工程において、デュアルアフィニティータグHis−ABPに対する抗体が涸渇した流出液(flow-through)を流速0.5ml/分にて、免疫化のための抗原として使用されたRBM3タンパク質フラグメント(配列番号1)と結合した1mlのHi−Trap NHS−活性化HPカラム(GE Healthcare)上に負荷した。His−ABPタンパク質および該タンパク質フラグメント抗原を、製造者の奨励にしたがって、NHS活性化マトリックスに結合させた。非結合材料を1xPBST(1xPBS、0.1%Tween20、pH7.25)で洗浄し、捕獲された抗体を低pHグリシンバッファー(0.2Mグリシン、1mM EGTA、pH2.5)を用いて溶出した。溶出した抗体フラクションを自動的に収集し、第3工程における効率の良いバッファー交換のために、直列に連結された2つの5ml HiTrapTM脱塩カラム(GE Healthcare)上に負荷した。第2および第3の精製工程は、AKTAxpressTMプラットフォーム(GE Healthcare)上で実施した。抗原選択的(単一特異的)抗体(msAbs)を、−20℃での長期保存のために、グリセロールおよびNaNで補足したPBSバッファーで溶出し、各々、最終濃度40%および0.02%とした(Nilsson Pら(2005) Proteomics 5: 4327-4337)。
アフィニティー精製抗体フラクションの特異性および選択性は、タンパク質アレイセットアップにおいて(Nilsson Pら、(2005) Proteomics 5: 4327-4337)、抗原自体に対する結合分析および94個の他のヒトタンパク質フラグメントに対する結合分析によって分析された。タンパク質フラグメントは、0.1M尿素および1xPBS(pH7.4)中40μg/mlに希釈され、各50μlを96ウェルスポッティングプレートのウェルに移した。タンパク質フラグメントは、2連でスポットし、ピン・アンド・リング(pin-and-ring)アレイヤー(Affymetrix 427)を用いて、エポキシスライド(SuperEpoxy, TeleChem)上に固定化した。該スライドを1xPBS中で洗浄し(5分)、次いで、表面を30分間ブロックした(SuperBlock,Pierce)。接着性16−ウェルシリコンマスク(Schleicher & Schuell)を該ガラスにアプライした後、単一特異性抗体を添加し(約50ng/mlまで、1xPBST中で1:2000希釈した)、振盪機上で60分間インキュベートした。各スポット中のタンパク質の量を定量化するために、アフィニティータグ特異的IgY抗体を該単一特異性抗体と共にインキュベートした。該スライドを1xPBSTおよび1xPBSで2回、各10分洗浄した。二次抗体(Alexa647とコンジュゲートしたヤギ抗−ウサギ抗体およびAlexa555とコンジュゲートしたヤギ抗−ニワトリ抗体、Molecular Probes)を1:60000希釈して、1xPBST中30ng/mlとし、60分間インキュベートした。同様の洗浄手順の後、第1のインキュベーションに関して、スライドを脱水し、スキャンし(G2565BAアレイイスキャナー、Agilent)、その後、画像分析ソフトウェア(GenePix5.1, Axon Instruments)を用いて画像を定量化した。
さらに、アフィニティー精製抗体の特異性および選択性は、ウェスタンブロットによって分析された。ウェスタンブロットは、還元条件下、プレキャスト10−20%SDS−PAGE勾配ゲル(Bio-Rad Laboratories)上での選択されたヒト細胞系統由来の全タンパク質抽出物の分離、次いで、PVDF膜(Bio-Rad Laboratories)への電気的移動によって、製造者の奨励にしたがって行われた。該膜は、室温にて1時間ブロックされ(5%ドライミルク、1xTBST;0.1M Tris−HCl、0.5M NaCl、0.1%Tween20)、一次アフィニティー精製抗体(ブロッキングバッファー中で1:500希釈)と共にインキュベートし、TBST中で洗浄した。二次HRP−コンジュゲート抗体(ブタ抗−ウサギ免疫グロブリン/HRP、DakoCytomation)をブロッキングバッファー中で1:3000希釈し、ChemidocTMCCDカメラ(Bio-Rad Laboratories)およびSuperSignalWest Dura Extended Duration基質(Pierce)を用いて、製造者のプロトコールにしたがって、化学発光検出を行った。
b)結果
ポリクローナル抗体調製の質は、抗体精製におけるストリンジェンシーの度合いに依存することが証明されており、以前に、標的タンパク質に由来しないエピトープに対する抗体の涸渇が他のタンパク質に対する交差反応性およびバックグラウンド結合を回避するために必要であることが示された(Agaton Cら(2004) J. Chromatogr. A 1043: 33-40)。かくして、高い特異性の単一特異性ポリクローナル抗体が、His−タグに対する抗体ならびにABP−タグに対する抗体の涸渇によって生じることを保証するために、タンパク質マイクロアレイ分析を行った。
タンパク質アレイの各スポットにおけるタンパク質量の定量化のために、一次および二次抗体の組合せと共に、2色染料標識システムを用いた。雌鳥において産生したタグ特異的IgY抗体を、Alexa555蛍光染料で標識した二次ヤギ抗−雌鳥抗体で検出した。アレイ上でのウサギmsAbのその抗原に対する特異的結合は、蛍光Alexa647標識化ヤギ抗−ウサギ抗体で検出した。各タンパク質フラグメントは2連でスポットした。該タンパク質アレイ分析は、RBM3に対するアフィニティー精製した単一特異性抗体が正しいタンパク質フラグメントに対して大いに選択的であり、アレイ上で分析される他のタンパク質フラグメントの全てに対して非常に低いバックグラウンドを有することを示す。
ウェスタンブロット分析の結果は、2つの乳癌細胞系統、T47DおよびMCF−7において、該抗体が約16kDaの単一バンドを特異的に検出することを示す。RBM3の理論的分子量は、16kDaであり(RBM3アミノ酸配列番号2から算出した場合)、得られた結果とよく一致する。
モノクローナル抗体
3.モノクローナル抗体の生成
a)材料および方法
セクション1で得られた精製フラグメント(配列番号1)をモノクローナル抗体の産生のための抗原として用いた。抗原は、AbSea Biotechnology Ltd(中国、北京)に送られ、簡単に言うと、該抗原をBALB/cマウス(4−6週齢、雌)中に3週間隔で皮下注射した。第1の注射のために、該抗原をフロイントの完全アジュバントと混合し、続く注射のために、フロイントの不完全アジュバントと混合した。融合の3日前、最後に抗原をマウスに静脈内注射した。マウス脾臓細胞をSp2/0ミエローマ細胞系統と融合することによって、ハイブリドーマを生成した。ELISAを用いていくつかの細胞系統をスクリーニングすることにより、該抗原(配列番号1)に特異的な抗体を分泌する細胞を同定し、さらなる特徴付けのために、Atlas Antibodies ABに送った。ELISA、ウェスタンブロット(WB)および免疫組織化学(IHC)において陽性の結果を示した細胞系統を選択し、AbSea Biotechnology Ltdによってサブクローニングを行った。
さらに、該モノクローナル抗体の免疫組織化学的染色パターンを、セクション2で生成したポリクローナル抗−RBM3抗体のパターンと比較した。該ポリクローナル抗体は、本明細書において、時折、「抗−RBM3」と称する。
b)結果
細胞系統をELISAによってスクリーンして(AbSeaにて)、抗原(配列番号1)を認識するが、アフィニティータグHis−ABPを認識しないモノクローナル抗体(mAbs)を産生する系統を同定した。8個の細胞系統がELISAにおいて、抗原配列番号1に対する特異的結合を示し、さらなる試験のために選択された。選択された8個のクローンの各々について、150−300μl上清を収集し、アジドを加え、該上清を氷上で、Atlas Antibodies ABに送った。AbSeaの指示にしたがって、到着まで該上清を+4℃で保管した。細胞系統のさらなる試験は、3つの興味深い細胞系統、ウェスタンブロットおよびIHC分析において陽性結果を示したクローン1B5、6F11および7G3の同定をもたらした。これらのクローンは、AbSea Biotechnology Ltd.によって実施されるサブクローニングおよび拡大のために選択された。
エピトープマッピング
4.細菌性ディスプレーIを用いるエピトープマッピング
配列番号1に対応するRBM3 DNA(すなわち、ENSP00000365946のアミノ酸18−151またはENST00000376755の塩基対261−682)を鋳型としてベクターpAff8cを用いるPCRによって増幅した。増幅したDNAを超音波処理によって、種々の長さ(約50−150bp)に断片化し、次いで、ブドウ状球菌性ディスプレーベクター(pSCEM2)中にライゲートし、エス・カルノサス(S.Carnosus)中に形質転換して、約100000個の形質転換体を得た。フレーム内DNAフラグメントは、ブドウ状球菌の表面にペプチドとして展示された。抗体(上記セクション2で得られた配列番号1に対して選択的)および蛍光標識した二次試薬と共にインキュベーション後、フローサイトメトリーを用いて陽性および陰性細胞を別々に分類して、エピトープおよび非エピトープ提示細胞を単離した。単離した細胞をパイロシークエンシングによって配列決定し、エピトープの同定のために、配列を最終的にRBM3抗原に対してアラインした。
表面発現レベルのリアルタイムモニタリングを用いる二重標識法を用いた(Loefblom, J ら(2005) FEMS Microbiol Lett 248, 189-198)。発現レベルを用いて結合シグナルの標準化が可能となり、低い細胞間変動が提供され、種々のエピトープ集団の識別が可能となった。さらに、平行したアッセイにより、表面上に展示された非結合ペプチドを決定することも可能となった。
配列番号1内の2つのエピトープ領域、配列番号4(RGFGFITFTNPEHASVAMRAMNGESLDGR)および配列番号5(RSYSRGGGDQGYGSGRYYDSRPGG)が同定された。
5.Luminexを用いるエピトープマッピング
a)合成ペプチド調製
RBM3上のPrEST HPRR232631(配列番号1)に対応する25個のビオチン化ペプチドからなるPEPスクリーンライブラリーをSigma−Genosys(Sigma-Aldrich)によって合成した。該ペプチドは、全PrEST−配列を含むと共に、10アミノ酸オーバーラップを有する15アミノ酸長であった。該ペプチドを80%DMSO中、最終濃度10mg/mlに溶解させた。
b)ビーズカップリング
ニュートラアビジン(Neutravidin)(Pierce, Rockford, IL)をカルボキシル化ビーズ(COOHミクロスフェア、Luminex-Corp. Austin, TX)上に、製造者のプロトコールにしたがって固定化した。フィルター膜底ミクロタイタープレート(MultiScreen-HTS, Millipore, Billerica, MA)を用いて、以前に記載されていたように(Larssonら(2009) J Immunol Methods 15; 34(1-2): 20-32, Schwenkら(2007) Mol Cell Proteomics 6(1) 125:32)、10ビーズのカップリングを行った。異なる色彩コードIDを有する25個の別個のビーズ群を、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノ−プロピル)カルボジイミドおよびN−ヒドロキシスクシンイミドを用いて活性化した。ニュートラアビジン(MES中100μg/ml)をビーズに加え、振盪機上で120分間インキュベートした。最後に、ビーズを洗浄し、再懸濁し、NaN3で補足したタンパク質含有バッファー(BRE、ELISAのブロッキング試薬、Roche, Basel, Switzerland)中、4℃で保管するために、ミクロ遠心チューブに移した。全てのカップリングしたビーズ集団を超音波洗浄器(Branson Ultrasonic Corporation, Danbury, CT)中で5分間超音波処理した。該ビオチン化ペプチドをBRE中で20μMの濃度まで希釈し、各ペプチド100μlをカップリング反応に用い、該反応は、RTにて振盪しながら60分間行った。最後に、ビーズを3x100μlのBREバッファーで洗浄し、さらなる使用まで4℃で保管した。
c)結合特異性の決定
全25種類のビーズIDを含有するビーズ混合物を調製し、PBS中50ng/mlに希釈した各抗体45μlを5μlのビーズ混合物と混合し、RTにて60分間インキュベートした。フィルター底マイクロタイタープレート(Millipore)を洗浄に用い、各インキュベーション後、全てのウェルを3x100μlのPBSTで洗浄した。50μlのR−フィコエリトリン標識抗−ウサギIgG抗体(0.5μg/ml、Jackson ImmunoResearch)または50μlのAlexa Fluor555ヤギ抗−マウスIgGを添加し(0.4μg/ml)、RTにて60分間最終インキュベートした。
測定は、Luminex xPONENTソフトウェアを有するLuminex LX200装置を用いて実施した。各実験のために、1つのビーズID当たり50事象をカウントし、中央蛍光強度(MFI)を個々のビーズ集団に結合する抗体の測定値として用いた。
d)結果
単一特異性ポリクローナル抗体(抗−RBM3)およびモノクローナル抗体6F11の特異性は、合成ビオチン化ペプチドと結合したビーズを用いるアッセイにおいて試験された。抗−RBM3は、該ペプチドのうち8個、すなわち、6、7、8、14、15、16、24および25(PrEST配列上の3つの明確な領域に対応する)(コンセンサス配列 配列番号6、7、8および9)に対して強い結合を示した。特に、配列番号9に対応するペプチド24および25は、強力なシグナルを生じた。モノクローナル抗体6F11は、2つのペプチド:15および16(PrEST配列上の1つの明確な領域に対応する)(コンセンサス配列 配列番号8)と反応した。抗−RBM3と6F11の両方がペプチド15および16に結合したので、これらの抗体が該領域内に1以上のエピトープを共有することが示される。配列番号6は配列番号4内にあり、配列番号8は有る程度まで配列番号5とオーバーラップすることに注目すべきである。
6.細菌性ディスプレーIIを用いるエピトープマッピング
配列番号1に対応するRBM3 DNA(すなわち、ENSP00000365946のアミノ酸18−151またはENST00000376755の塩基対261−682)は、鋳型としてベクターpAff8cを用いるPCRによって増幅された。増幅されたDNAは、超音波処理によって種々の長さ(約50−150bp)に断片化され、次いで、ブドウ状球菌性ディスプレーベクター(pSCEM2)中にライゲートされ、エス・カルノサス中に形質転換して、約100000個の形質転換体が得られた。フレーム内DNAフラグメントは、ブドウ状球菌の表面にペプチドとして展示された。抗体(セクション2で得られた抗−RBM3およびセクション3で得られたモノクローナル抗体)および蛍光標識した二次試薬と共にインキュベーション後、フローサイトメトリーを用いて陽性および陰性細胞を別々に分類して、エピトープおよび非エピトープ提示細胞を単離した。単離した細胞由来のプラスミドDNAをSangerシークエンシングによって配列決定し、エピトープの同定のために、配列をRBM3抗原に対してアラインした。
表面発現レベルのリアルタイムモニタリングを用いる二重標識法を用いた(Loefblom, J ら(2005) FEMS Microbiol Lett 248, 189-198)。発現レベルを用いて結合シグナルの標準化が可能となり、低い細胞間変動が提供され、種々のエピトープ集団の識別が可能となった。さらに、平行したアッセイにより、表面上に展示された非結合ペプチドを決定することも可能となった。
ポリクローナル抗体の場合、配列番号1内の領域 配列番号10−15が同定された。特に、領域 配列番号11および配列番号12は、初期に同定された領域 配列番号4内に見出されたので、興味深かった。さらに、領域 配列番号13および14は、各々、以前に同定された配列番号6および7と大幅にオーバーラップしたので、特に興味深かった。
モノクローナル抗体F611の場合、配列番号1内の領域 配列番号16が同定され、該領域(配列番号16)は、初期に同定された領域 配列番号5内にある。セクション6において同定された6F11のエピトープ領域は、セクション5において同定された6F11エピトープ領域と1アミノ酸のオーバーラップを有する。しかしながら、セクション5および6の結果は、対照的ではなく、セクション5において6F11と結合することが見出されたペプチドのうちの1つ(ペプチド16)は、配列番号16(および配列番号19)を含む。かくして、セクション5および6の結果は、相補的であると考えられうる。
モノクローナル抗体1B5の場合、配列番号1内の領域 配列番号17が同定され、該領域(配列番号17)は、初期に同定された領域 配列番号5内にも見出された。モノクローナル抗体7G3の場合、配列番号1内の領域配列番号18が同定された。該領域(配列番号18)は、初期に同定された領域 配列番号5内にも見出された。該領域(配列番号18)は、6F11抗体のエピトープ(配列番号16)とオーバーラップする。モノクローナル抗体9B11の場合、配列番号1内の領域 配列番号19が同定された。
アレイ分析
7.ディスカバリーTMA
a)材料および方法
20の異なる癌型由来の新生物組織を含有するパラフィンコアを、実施例のセクション3で得られたモノクローナル抗体1B5を用いて分析した。組織マイクロアレイ(TMA)生産のためのドナーブロックとして用いられた全ての組織は、地域倫理委員会の承認にしたがって、ウプサラの大学病院の病理学部(Department of Pathology, University Hospital)での保管物から選択された。TMA分析に用いられた組織切片は、診断および分類を決定するために調べられた。診断目的で、全組織をホルマリン固定し、パラフィン包埋し、切片化した。
TMA生産は、本質的に以前に記載されたとおりに実施した(Kononen Jら(1998) Nature Med. 4: 844-847; Kallioniemi OPら(2001) Hum. Mol. Genet. 10: 657-662)。簡単に言うと、レシピエントTMAブロックに穴を造り、ドナーブロック由来の円筒状コア組織試料を獲得し、レシピエントTMAブロック中に置いた。これは、完全なTMA設計が生産されるまで、Beecher Instrument(ATA-27, Beecher Instruments, Sun Prairie, CA, USA)の自動組織アレイヤーにおいて繰り返された。TMAレシピエントブロックは、切片化の前に、42℃で2時間焼成された。
TMA:sの設計は、代表的な癌組織を含むことに集中された。このことは、以前に、Kampf Cら(2004) Clin. Proteomics 1: 285-300において詳細に記載されている。簡単に言うと、ヒトが冒されている最も一般的な癌型のうち20由来の試料を選択した。各TMAブロックは、直径1mmの72個の組織コアを含有した。20の癌型のうち17個について、12の個々に異なる腫瘍をサンプリングし、残りの3つの癌型については、4つの個々に異なる腫瘍をサンプリングし、全て、同じ腫瘍から2連で行った。TMAブロックは、ウォーターフォール・ミクロトーム(waterfall microtome)(Leica)を用いて4μm厚で切片化し、IHC分析のためにSuper−Frost(Roche Applied Science)ガラススライド上に置いた。
自動IHCは、以前に記載されたように行った(Kampf Cら(2004) Clin. Proteomics 1: 285-300)。簡単に言うと、ガラススライドを60℃で45分間インキュベートし、キシレン中で脱パラフィン化し(2x15分)、段階的なアルコール中で水和した。抗原回復のために、スライドをTRS(標的回復溶液、pH6.0、DakoCytomation)中に浸し、Decloakingチャンバー(Biocare Medical)中、125℃で4分間沸騰させた。スライドをAutostainer(DakoCytomation)中に置き、内在性ペルオキシダーゼを最初にH(DakoCytomation)でブロックした。スライドを、実施例のセクション3に記載されるように得られた一次抗体と共に室温にて30分間インキュベートし、次いで、ヤギ抗−マウスペルオキシダーゼ結合型Envisionと共に、室温で30分間インキュベートした。全工程の間に、スライドを洗浄バッファー(DakoCytomation)中でリンスした。最後に、ジアミノベンジジン(DakoCytomation)をクロモゲンとして用い、Harrisヘマトキシリン(Sigma-Aldrich)を対比染色のために用いた。スライドには、Pertex(登録商標)(Histolab)を載せた。
異なるTMA:s由来の全ての免疫組織化学的に染色された切片を、ScanScope T2自動スライドスキャニングシステム(Aperio Technologies)を用いてスキャンした。TMA:sの全含量を示すために、デジタル画像を生成した。スキャンは、20倍拡大で行った。デジタル画像を分離し、元のデータの保存のために、個々のタグ付加画像ファイルフォーマット(TIFF)ファイルとして抽出した。ウェブベースのアノテーションシステムにおいて該画像を扱うために、個々の画像をTIFFフォーマットからJPEGフォーマットに圧縮した。免疫組織化学的に染色した組織の全画像を顕微鏡下で手動で評価し、有資格の病理学者がアノテーションを付加するか、または特別に教育された職員がアノテーションを付加し、次いで、病理学者によって証明した。
各々の異なる癌組織のアノテーションは、IHC結果の分類のための単純化されたスキームを用いて実施された。各組織は、提示性(representativity)および免疫反応性について試験された。各癌について、腫瘍細胞および基質についてアノテーションを付加した。基本的なアノテーションパラメーターは、i)亜細胞性局在(核および/または細胞質/膜性)、ii)染色強度(SI)およびiii)染色された細胞のフラクション(FSC)の評価を包含した。染色強度は、臨床的組織病理学診断において使用される標準にしたがって主観的に評価され、結果は、非存在=免疫反応性無し、弱=わずかな免疫反応性、中程度=中間の免疫反応性、または強=明確かつ強力な免疫反応性として分類された。染色細胞のフラクションが評価され、関連する細胞集団の<2%、2−25%、>25−75%、または>75%の免疫反応性細胞として分類された。免疫反応細胞の強度およびフラクションの両方に基づいて、各組織試料について、「染色スコア」:0=陰性、1=弱、2=中程度、および3=強が得られた。N.R.は提示する組織が存在しないことを意味する。詳細には、染色スコアは、下記の基準にしたがって得られた。SI=非存在かつFSC=0−100%の場合またはSI=弱かつFSC=25%の場合、0が与えられた。SI=弱かつFSC>25%の場合またはSI=中程度かつFSC25%の場合、1が与えられた。SI=中程度かつFSC>25%の場合またはSI=強かつFSC25%の場合、2が与えられた。最後に、SI=強かつFSC>25%の場合、3が与えられた(表1参照のこと)。当業者は、該手法がAllredスコアの計算に類似することを理解するであろう(例えば、Allredら(1998) Mod Pathol 11(2), 155参照)。
Figure 0005767116
b)結果
表2は、種々の癌型由来の組織試料におけるRBM3タンパク質発現のレベルを示す。RBM3タンパク質発現は、甲状腺癌を除き、試験された全ての癌型において見出される。しかしながら、甲状腺癌については、たった3人の異なる対象由来の試料しか調べることができなかった。例えば、乳癌対象では、染色スコアは0〜2の範囲であり、子宮頸癌対象では0〜2の範囲であり、結腸直腸癌対象では0〜3の範囲であり、頭頸部癌対象では0〜2の範囲であり、肺癌対象では0〜2の範囲であり、卵巣癌対象では0〜2の範囲であり、精巣癌対象では0〜2の範囲であり、尿路上皮癌対象では0〜2の範囲であることが示される。かくして、RBM3タンパク質は、一般的に、癌組織において差次的に発現されていると結論づけることができ、種々の癌型における治療予測マーカーとしてのその役割を支持する。
Figure 0005767116
8.卵巣癌TMA、予想されるコホート
a)材料および方法
原発性侵襲性上皮卵巣癌について外科的処置がされた154人の患者由来の保管されたホルマリン固定パラフィン包埋組織をスウェーデンのLund and Malmoe大学病院の病理学部から収集した。患者は、1982年〜2007年に診断された。倫理的許可は、ルンドの地域倫理委員会から得た。
患者の中央年齢は、63歳(47〜83歳)であった。病期(FIGOスケールによる)は、全ての標本について記録された。26個の腫瘍が病期Iであり、18個の腫瘍が病期IIであり、75個が病期IIIであり、22個が病期IVであった。また、等級も記録された。8個の腫瘍がよく分化し(グレード1)、39個が中程度に分化し(グレード2)、107個があまり分化しなかった(グレード3)。該コホートは、90事例の漿液性癌腫、35事例の類内膜癌腫、12事例の粘液性癌腫、9事例の明細胞癌腫、1事例のBrenner腫瘍、および7事例の不確定組織型を包含した。中央追跡時間は、2.67年であった。処置データは、73人の患者について利用可能であった。標準的な治療は、白金に基づく化学療法であり、1990年代からパクリタキセル(paclitaxel)と組み合わせた。
全154事例が、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色されたスライド上で組織病理学的に再評価された。次いで、上皮卵巣癌を提示する領域から1事例あたり2x1.0mmのコアをサンプリングすることによって、TMA:sを構築した。
材料は、上記セクション2にしたがって生産されたポリクローナル抗体(抗−RBM3)および上記セクション3にしたがって生産されたモノクローナル抗体1B5を用いて、下記の方法にしたがって分析された。自動化免疫組織化学は、以前の記載にしたがって実施された(Kampf Cら、(2004) Clin. Proteomics 1:285-300)。簡単に言うと、ガラススライドを60℃で45分間インキュベートし、キシレン(2x15分)中で脱パラフィン化し、段階的アルコール中で水和した。抗原回復のために、スライドをTRS(標的回復溶液、pH6.0、Dako, Copenhagen, Denmark)中に浸し、Decloakingチャンバー(Biocare Medical)中、125℃で4分間沸騰させた。スライドをAutostainer(Dako)中に置き、内在性ペルオキシダーゼを最初にH(Dako)でブロックした。スライドを、一次RBM3抗体(抗RBM3または1B5)と共に室温にて30分間インキュベートした。次いで、これを二次ヤギ抗−ペルオキシダーゼ(抗ウサギまたは抗マウス)結合型Envisionと共に、室温で30分間インキュベートした。全工程の間に、スライドを洗浄バッファー(Dako)中でリンスした。最後に、ジアミノベンジジン(Dako)をクロモゲンとして用い、Harrisヘマトキシリン(Sigma-Aldrich)を対比染色のために用いた。スライドには、Pertex(Histolab)を載せた。
免疫組織化学的に染色した組織の全試料を顕微鏡下、手動で評価し、有資格の病理学者がアノテーションを付加した。各試料のアノテーションは、IHC結果の分類のための単純化されたスキームを用いて実施された。各組織試料は、提示性(representativity)および免疫反応性について試験された。
基本的なアノテーションパラメーターは、i)亜細胞性局在(核および/または細胞質/膜性)、ii)染色強度(SI)およびiii)染色された細胞のフラクション(FSC)の評価を包含した。染色強度は、臨床的組織病理学診断において使用される標準にしたがって主観的に評価され、結果は、非存在=免疫反応性無し、弱〜中程度=わずかな免疫反応性〜中程度の免疫反応性、または強=明確かつ強力な免疫反応性として分類された。染色細胞のフラクションもまた、臨床的組織病理学診断において使用される標準にしたがって主観的に評価され、結果は、関連する細胞集団の<2%、2−25%、>25−75%、または>75%の免疫反応性細胞として分類された。当業者は、該アノテーション手法がAllredスコアの計算に類似すると認識するであろう(例えば、Allredら、(1998) Mod Pathol 11(2), 155参照)。かくして、組織アノテーションは、本質的に、上記実施例のセクション7に記載されるように行われた。
ポリクローナル抗体が使用された統計学的分析の場合、「染色スコア」を得るために染色強度および染色細胞のフラクションを組み合わせなかった。核酸フラクション(NF)、核強度(NI)レベルおよび細胞質強度(CI)レベルは別々に評価された。個々の層に関する生存傾向に基づいて、二分化された変数をさらなる統計学分析のために構築した。高い核フラクションは、染色された細胞の>75%(NF=3)フラクションとして定義され、低い核フラクションは、染色された細胞の0−75%(NF<3)フラクションとして定義された。さらに、高いタンパク質発現レベルは、強い核強度(NI=3)として定義され、低いタンパク質発現レベルは非存在〜弱および中程度の核強度(NI<3)として定義された。また、高いタンパク質発現レベルは、強い細胞質強度(CI=2)として定義され、低いタンパク質発現レベルは非存在および弱/中程度の細胞質強度(CI<2)として定義された。上記の試料分類は、Kaplan-Meier法にしたがって、全生存(OS)および卵巣癌特異的生存(OCSS)分析について使用され、ログランク(log-rank)検定を使用して、異なる層における生存を比較した。全統計学的試験は、両側検定であり、p値<0.05%は、有意であるとみなされた。全計算は、統計学的パッケージSPSS17.0(SPSS Inc. Illinois, USA)で行った。
モノクローナル1B5抗体が使用された統計学的分析の場合、核および細胞質染色を組み合わせて、0〜2の範囲の染色スコア(SS)を得た。強度だけを考慮したが、最も陽性の腫瘍は、フラクションレベル>50%を有した。SS=0は、発現が無いと定義され、SS=1は、弱または中程度の発現と定義され、SS=2は、強い発現と定義された。
個々の層に関する生存傾向に基づいて、二分化された変数をさらなる統計学分析のために構築した。高い染色スコアは、SS>0またはSS=2として定義された。低い染色スコアは、SS=0またはSS<2として定義された。上記の試料分類は、Kaplan-Meier法にしたがって、全生存(OS)分析について使用され、ログランク(log-rank)検定を使用して、異なる層における生存を比較した。全統計学的試験は、両側検定であり、p値<0.05%は、有意であるとみなされた。全計算は、統計学的パッケージSPSS17.0(SPSS Inc. Illinois, USA)で行った。
b)結果
コホートの最初の分析は、各々、図1Aおよび図1Bに示されるように、全患者についてのOSが約38%であり、OCSSが約39%であることを明らかにした。
抗RBM3を用いるRBM3発現の免疫組織化学的分析は、154個の腫瘍試料の全てについて実施することができた。陽性核フラクション(NF>0)は、154個の組織コアのうち147個(95%)において観察された。核染色(NI>0)を有する腫瘍細胞は、154人の対象のうち147人(95%)において観察され、細胞質染色(CI>0)を有する腫瘍細胞は、154人の対象のうち84人(55%)において観察された。
1B5を用いるRBM3発現の免疫組織化学的分析は、154個の腫瘍試料のうち149個で実施した。陽性染色スコア(SS>0)は、149個の組織コアのうち55個(37%)において観察された。
全コホートの生存分析は、抗RBM3に対して陽性の染色された腫瘍細胞のフラクションがOS(図2Aおよび2B)およびOCSS(図3Aおよび3B)と有意に相関した、すなわち、高RBM3タンパク質レベルは、より良好な生存に相当したことを明らかにした。NF>75%のフラクション値を有する患者の場合、5年OSは約44%であったが、NF75%のRBM3フラクション値を有する患者は約25%のOSを有した(図4)。また、核−および細胞質強度レベルは、OS(図5Aおよび5B)およびOCSS(図6Aおよび6B)との相関を示した。
驚くべきことに、RBM3タンパク質レベルおよび生存(OSおよびOCSSの両方)との間の相関は、グレード2(中程度に分化した)腫瘍(図7Aおよび7B)またはグレード1もしくは2(よく分化した、または中程度に分化した)腫瘍(図8Aおよび8B)を有する患者群が別々に分析された場合に特に有意であった。結果として、よく分化した、または中程度に分化したEOCと診断された患者は、RBM3タンパク質レベルの分析に特に適当でありうる。
興味深いことに、RBM3タンパク質レベルはまた、病期IまたはIIのEOCと診断された患者において、OSおよびOCSSと有意に相関した(図9Aおよび9B)。結果として、病期IまたはIIのEOCと診断された患者は、RBM3タンパク質レベルの分析に特に適当でありうる。
さらに、RBM3タンパク質レベルは、また、類内膜腫瘍を有する患者のサブグループにおいて、OSおよびOCSSと有意に相関した(図10Aおよび10B)。病期IまたはIIの類内膜EOCを有する患者のみを分析する場合、生存に対する影響がより強調された(図11Aおよび12B)。結果として、類内膜EOCと診断された患者は、RBM3タンパク質レベルの分析に特に適当でありうる。
漿液性腫瘍を有する患者のサブグループを分析したとき、RBM3タンパク質強度レベルならびにOSおよびOCSSとの間の有意な相関も見られた(図12および13)。グレード1または2(よく分化した、または中程度に分化した)漿液性EOCを有する患者だけを分析した場合、生存に対するRBM3の影響は、なおさら強調された(図14Aおよび14B)。結果として、漿液性EOCと診断された患者は、RBM3タンパク質レベルの分析に特に適当でありうる。
1B5を用いる染色は、抗RBM3で得られた結果と類似の結果を示し、RBM3に対して陽性の染色された腫瘍細胞のフラクションは、OS(図15Aおよび15B)およびOCSS(図16Aおよび16B)と有意に相関し、すなわち、高RBM3タンパク質レベルはより良好な生存に相当した。
RBM3タンパク質レベルおよびOSとの間の相関は、グレード1または2(よく分化した、または中程度に分化した)腫瘍を有する患者群を別々に分析した場合に、特に有意であった(図17)。結果として、よく分化した、または中程度に分化したEOCと診断された患者は、RBM3タンパク質レベルの分析に特に適当でありうる。
さらに、RBM3タンパク質レベルは、また、類内膜腫瘍を有する患者のサブグループにおいて、OSと有意に相関した(図18)。
結論において、白金に基づく剤で処置されたEOC対象は、低RBM3である場合よりも、高RBM3である場合に、よく生存することが示される。
9.卵巣癌の遺伝子発現分析
a)材料および方法
データは、1992年〜2006年に上皮卵巣癌と診断された285人の患者コホートに基づいて、以前に行ったマイクロアレイ研究から収集した。患者の同意についての施設内倫理委員会(Institutional Review Board)の承認は、全患者について得られた。
患者の中央年齢は、59才(18〜79才)であった。発明者らは、ネオアジュアバント療法がおそらくRBM3mRNAレベルに影響を及ぼし、その結果、偏った結果を導くかもしれないと考えたので、該治療を受けた18人の患者のデータを排除することに決めた。さらに、白金に基づく治療を受けなかった40人の患者のデータをデータセットから除いた。これらの227個の試料のうち、210個は漿液性癌由来であり、類内膜癌の16個および腺癌の1個であった。統計学的分析のために、漿液性試料のみを考慮した。病理学評価データは、全患者について存在し、再発のない生存者は、高RBM3ならびに低RBM3mRNA含量について、評価された。
b)結果
RBM3発現のアレイ分析は、285個の腫瘍試料のうち210個について分析された。二分化された変数が統計学的分析のために構築された。図19に示されるように、高RBM3発現レベルを伴う腫瘍を有したシスプラチン処置患者は、低RBM3発現レベルを伴う腫瘍を有した患者よりも、再発のない著しく良好な生存を示した。
10.精巣TMA
a)材料および方法
腫瘍材料は、1995年〜2008年にUMASの病理学部で精巣胚細胞(testicular germ-cell)腫瘍(TGCT)と診断された30人の患者から収集された。該試料のうち5個は純粋なセミノーマであり、25個は、非セミノーマ性TGCTであった。非セミノーマ性TGCTは、International Germ Cell Cancer Collaborative Group(IGCCC)にしたがって分類された。25個の試料のうち4個は、IGCCC中程度予後として分類されたケースであり、5個の試料は、IGCCC予後不良として分類された。残りの16個の非セミノーマ性TGCTケースは、IGCCC予後良好として分類された。該研究の許可は、ルンド大学の倫理委員会から得られた(ref nr 447-07および493-09)。5人の患者は疾患により死に、そのうち4人は、IGCCC不良で、1人は、IGCCC中程度であった。全ての患者は、シスプラチン処置を受けた。
TMA構築の前に、各ケース由来の全ての入手可能なヘマトキシリンおよびエオシン染色スライドを組織病理学的に再評価した。組織学的サブタイプの総数を示し、各サブタイプを表示している領域(分類困難な領域を包含する)の輪郭を描いた。次いで、各ケースにおける全ての異なる成分を包含するのに必要なだけ多くの正面向きの切片をSOX−2およびCD30について染色して、さらに分類を正確にし、修正した。1つのケースから、剖検材料だけが分析に利用可能であった。4x1mmコアの標準的なセットをプロポーショナル様式で各侵襲性腫瘍から採取し、3つまでの異なる成分を包含した。半自動アレイ化装置を用いた(TMArrayer; Pathology Devices, Inc, Westminster, MD, USA)。さらに、2x1mmコアを、15ケース由来のITGCNを有する領域および22ケース由来の正常な精巣から採取した。RPLNDを受けた15ケースから、残留腫瘍を有する6/8ケースから2−4x1 mm組織コアを採取した。
自動免疫組織化学は、以前に記載されたように実施した(Kampf Cら(2004) Clin. Proteomics 1: 285-300)。簡単に言うと、ガラススライドを60℃で45分間インキュベートし、キシレン中で脱パラフィン化し(2x15分)、段階的なアルコール中で水和した。抗原回復のために、スライドをTRS(標的回復溶液、pH6.0、Dako, Copenhagen, Denmark)中に浸し、Decloakingチャンバー(Biocare Medical)中、125℃で4分間沸騰させた。スライドをAutostainer(Dako)中に置き、内在性ペルオキシダーゼを最初にH(Dako)でブロックした。スライドを、実施例のセクション3に記載されるように得られた一次抗体RBM3モノクローナル抗体1B5と共に室温にて30分間インキュベートし、次いで、ヤギ抗−マウスペルオキシダーゼ結合型Envisionと共に、室温で30分間インキュベートした。全工程の間に、スライドを洗浄バッファー(Dako)中でリンスした。最後に、ジアミノベンジジン(Dako)をクロモゲンとして用い、Harrisヘマトキシリン(Sigma-Aldrich)を対比染色のために用いた。スライドには、Pertex(Histolab)を載せた。
RBM3の免疫組織科学的分析のために、4μmのTMA切片をPT−リンクシステム(DAKO, Copenhagen, Denmark)を用いて自動的に前処理し、次いで、1:10000希釈したRBM3クローン1B5抗体を用いてTechmate500(DAKO, Copenhagen, Denmark)中で染色した。
免疫組織化学的に染色した組織の全ての試料を顕微鏡下、手動で評価し、有資格の病理学者がアノテーションを付加した。各試料のアノテーションは、IHC結果の分類のための単純化されたスキームを用いて実施された。各組織試料は、提示性(representativity)および免疫反応性について試験された。
基本的なアノテーションパラメーターは、i)亜細胞性局在(核および/または細胞質/膜性)、ii)染色強度(SI)およびiii)染色された細胞のフラクション(FSC)の評価を包含した。染色強度は、臨床的組織病理学診断において使用される標準にしたがって主観的に評価され、結果は、非存在=免疫反応性無し、弱〜中程度=わずかな免疫反応性〜中間の免疫反応性、または強=明確かつ強力な免疫反応性として分類された。染色細胞のフラクションもまた、臨床的組織病理学診断において使用される標準にしたがって主観的に評価され、関連する細胞集団の<2%、2−25%、>25−75%、または>75%の免疫反応性細胞として分類された。当業者は、該アノテーション手法がAllredスコアの計算に類似すると認識するであろう(例えば、Allredら、(1998) Mod Pathol 11(2), 155参照)。
統計学的分析の場合、図画的提示核および細胞質染色を組み合わせて、0〜3の範囲の染色スコア(SS)を得た。強度のみを考慮したが、最も陽性の腫瘍は、>50%のフラクションレベルを有した。SS=0は、発現が無いと定義され、SS=1は、弱い発現と定義され、SS=2は、中程度の発現と定義され、SS=3は、強い発現と定義された。
b)結果
RBM3発現に、0、1、2または3のアノテーションを付加し、ここに、3は、最も高い染色スコア(SS)を示した。図20に示されるように、RBM3発現強度は、確立された予後カテゴリーとよく相関する。疾患によって死亡した患者は、全て、比較的低いレベルのRBM3発現を示す。これは、また、予後不良カテゴリーに属するほとんどの患者に当てはまるが、真に強いRBM3発現(SS=3)を有する全ての患者および強いRBM3発現(SS=2)を有するほとんどの患者は、予後良好カテゴリーに見出すことができる。予後良好であることがよく知られているセミノーマ患者の全ては、真に強いRBM3発現(SS=3)を有した。
図21に示されるように、RBM3タンパク質発現と生存との間に明らかな相関があった。疾患により死亡した者のなかで高RBM3タンパク質発現を有した患者はいなかった。高RBM3タンパク質発現を有した患者の全ては、観察期間の最後まで生存していた。
細胞培養実験
11.シスプラチン感受性および耐性細胞系統におけるRBM3発現
a)材料および方法
シスプラチン感受性細胞系統(A2780)およびシスプラチン耐性細胞系統(A2780−cp70)におけるRBM3タンパク質の発現をウェスタンブロットによって分析した。ウェスタンブロットは、還元条件下、17%SDS−PAGEゲル上で選択されたヒト細胞系統由来の全タンパク質抽出物を分離し、次いで、製造者の推奨にしたがって、RVDF膜(Bio-Rad Laboratories)へ電気転写することによって実施した。該膜は、室温にて1時間ブロックされ(0.1%Tween20を含有する1xPBS中5%BSA)、一次アフィニティー精製抗体(ブロッキングバッファー中で1:1000希釈)と共にインキュベートし、PBST中で洗浄した。二次HRP−コンジュゲート抗体(ヒツジ抗−マウス免疫グロブリン/HRP、GE)をブロッキングバッファー中で1:1000希釈し、ChemidocTMCCDカメラ(Bio-Rad Laboratories)およびウェスタンブロッッティングルミノール試薬(Santa Cruz Biotechnologies, Inc)を用いて、製造者のプロトコールにしたがって、化学発光検出を行った。
b)結果
ウェスタンブロット分析の結果を図22に示す。RBM3タンパク質の発現は、シスプラチン感受性細胞(A2780)におけるよりも、シスプラチン耐性細胞(A2780−cp70)において低い。使用された全抗体(抗RBM3、6F11、1B5)は同様の結果を示す。
さらに、モノクローナル抗体6F11および1B5は、ポリクローナル抗体抗RBM3よりもRBM3タンパク質に対して感受性であることが示される。また、1B5は、6F11よりも感受性であることが示される。
12.シスプラチン処置に対する差別的な応答の確認
a)材料および方法
細胞生存率に対するシスプラチンの効果は、製造者の推奨にしたがい、WST−1アッセイ(Roche Applied Science)によって決定された。シスプラチンの添加1日前に、A2780およびA2780−Cp70細胞を96ウェルプレートにおいて、100μlの適当な培地中2500細胞/ウェルの密度で播種した。該細胞をシスプラチン(1−100μM)で48時間処理した。試料は3連で作成した。1ウェルにつき10μlのWST−1溶液を加え、細胞を37℃で4時間インキュベートした。450nmの波長および690nmの参照波長にて、スキャニングマルチウェル分光光度計、ELISAリーダーを用いて、各ウェルの吸光度を測定した。
b)結果
シスプラチン処理後のA2780およびA2780−cp70細胞の生存率を分析した場合、親A2780細胞と比べて、シスプラチン耐性A2780−cp70細胞が増加した生存率を有することが明確に示される(図23)。
13.シスプラチン耐性に対するRBM3ノックダウンの効果
a)材料および方法
ヒト卵巣癌細胞系統A2780およびシスプラチン耐性細胞変種A2780Cp70を5%COの加湿インキュベーター中、37℃にて、グルタミン、10%仔ウシ血清および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補足したRPMI−1640中で維持した。シスプラチン(Sigma)を0.9%NaCl中に溶解して1mg/mlのストック溶液を得、最終濃度(1−100μM)まで細胞培養物に添加した。
RBM3に対するsiRNA(Applied Biosystems, Carlsbad, Ca)または対照siRNA(Applied Biosystems)でのトランスフェクションをリポフェクタミン2000(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて、最終濃度50nM siRNAで実施した。
細胞生存率に対するシスプラチンの効果は、実施例のセクション12に記載されるように、WST−1アッセイによって決定した。
b)結果
図24に示されるように、低RBM3タンパク質発現は、シスプラチン処理後、シスプラチン感受性細胞の増加した生存率を導く。非曝露細胞と比べた場合、異なるRBM3 siRMAに曝露した細胞において生存率に顕著な相違がある。これらの結果は、低RBM3タンパク質発現がシスプラチン耐性を示すこと、および高RBM3タンパク質発現がシスプラチン感受性を示すことを示す。
治療予測の確立
14.非限定的な例
患者における癌の確立後、該患者由来の腫瘍組織試料を得る。該腫瘍組織は、該腫瘍の初期の外科的除去由来の試料または腫瘍生検から得てもよい。さらに、「陰性参照」を提供するために、低RBM3タンパク質発現を有するか、または本質的にRBM3タンパク質発現を欠く組織を含む保管材料から、試料を採取する。かかる保管組織は、例えば、試験対象と同じ癌型由来の予め確立された低RBM3タンパク質発現レベルを有する組織であってもよい。さらに、「陽性参照」を提供するために、高RBM3タンパク質発現を有する組織、例えば、試験対象と同じ癌型由来の予め確立された高RBM3タンパク質発現レベルを有する悪性メラノーマ組織を含む保管材料から、試料を採取する。
試料材料は、緩衝化ホルマリン中に固定化し、試料材料の薄い切片(4μm)を得るために組織プロセスに付す。
免疫組織化学は、実施例のセクション8に記載されるように実施する。各試料由来の1以上の試料をガラススライド上に載せ、60℃で45分間インキュベートし、(目的の試料がパラフィン化されている場合、)キシレン中で脱パラフィン化し(2x15分)、段階的アルコールで脱水する。抗原回復のために、スライドをTRS(標的回復溶液、pH6.0、DakoCytomation)中に浸し、Decloakingチャンバー(Biocare Medical)中、125℃で4分間沸騰させる。スライドをAutostainer(DakoCytomation)中に置き、内在性ペルオキシダーゼを最初にH(DakoCytomation)でブロックする。複数の試料切片を載せる理由は、結果の正確性を増すためである。
一次RBM3タンパク質特異的抗体(例えば、実施例のセクション3において得られたようなモノクローナル抗体)をスライドに添加し、室温にて30分間インキュベートし、次いで、標識した二次抗体、例えば、ヤギ抗−マウスペルオキシダーゼ結合型Envisionと共に、室温で30分間インキュベートする。二次抗体を検出するために、ジアミノベンジジン(DakoCytomation)をクロモゲンとして用い、Harrisヘマトキシリン(Sigma-Aldrich)対比染色で対比させる。全行程間に、スライドは洗浄バッファー(DakoCytomation)中でリンスする。次いで、スライドには、Pertex(Histolab)マウンティング培地を載せる。
所望により、染色手法を有効にするためのツールとして、2つの対照細胞系統、例えば、RBM3タンパク質を発現している細胞(陽性細胞系統)を有する1つのスライドおよび不明瞭な弱いRBM3タンパク質発現またはRBM3タンパク質発現のない細胞(陰性細胞系統)を有する1つのスライドを用いてもよい。当業者は、例えば、Rhodesら、(2005) The Biochemical scientist, p 515-520の開示によって導かれ、かかる細胞系統の提供方法を理解する。対照系統スライドは、他のスライドと同じ手法(すなわち、同じ一次抗体および同じ二次抗体と共にインキュベートする)において同時に染色してもよい。
例えば、対象由来の腫瘍組織スライド、染色参照スライド、および所望により、対照細胞系統を有するスライドは、ScanScope T2自動スライドスキャニングシステム(Aperio Technologies)を用いて、20倍拡大にて、光学顕微鏡においてスキャンしてもよい。しかしながら、該スキャニング工程は必須ではないが、例えば、スライドの調製および染色ならびに染色したスライドの評価(下記参照)を異なる場所または異なるヒトが行う場合、該手法をより容易にしうる。
対照細胞系統を用いる場合、染色手法を有効にするために、これらが点検される。該細胞系統が許容される基準外の染色結果、例えば、当業者によって認識される染色人工物を示す場合、該組織試料の染色は、無効と見なされ、染色手法全体を新たなスライドで繰り返す。陽性および陰性細胞系統が各々、強い染色強度および弱い染色強度または染色強度非存在を示す場合、該染色は有効と見なされる。
腫瘍組織由来の染色された試料スライドは、臨床組織病理学診断において用いられる基準にしたがって、目視によって手動で評価され、結腸直腸癌スライドの免疫反応性は、上記実施例のセクション8にしたがって等級が付けられる。
すなわち、核強度、核フラクション、細胞質強度および/または細胞質フラクションは、1以上の試料値を得るために決定される。評価および決定を行う人は、染色された陽性および陰性参照スライドの目視によって助けられる。
次いで、患者由来の腫瘍組織試料の試料値を参照値と比較する。1以上の試料スライドが評価され、それにより、1以上の試料値が得られる場合、参照値と比較される試料値は、得られた試料値の平均または中央値であってもよい。
モノクローナル抗体1B5を用いる場合、参照値は、核および/または細胞質強度の非存在であってもよい。
試料値が参照値よりも高い場合、患者の治療担当医は、白金に基づく治療に対する患者の応答が比較的高いと結論付け、所望により、該患者に白金に基づく治療を施すべきであると結論する。
しかしながら、試料値が参照値よりも低いか、または参照値と等しい場合、担当医は、白金に基づく治療に対する患者の応答が比較的低いと結論付け、所望により、したがって、該患者が精巣癌または卵巣癌である場合は、より高い強度(例えば、高投与量)の白金に基づく治療を施すべきであると結論付け、該患者がいずれか他の型の癌である場合は、白金に基づく治療を辞めるべきであると結論づける。

Claims (17)

  1. 癌を有する哺乳動物対象が第1の群に属するか、または第2の群に属するかを決定する方法であって、第1の群の対象が第2の群の対象よりも白金に基づく治療によく応答し、
    a)該対象から事前に得られた試料の少なくとも一部に存在するRBM3タンパク質またはRBM3mRNAの量を評価し、該量に対応する試料値を決定する工程、
    b)工程a)で得られた試料値を参照値と比較する工程、
    該試料値が参照値よりも高い場合は、
    c1)該対象が第1の群に属すると結論づけ、
    該試料値が参照値と等しいか、または参照値よりも低い場合は、
    c2)該対象が第2の群に属すると結論づける工程
    を含む方法。
  2. 癌を有する哺乳動物対象の白金に基づく治療の強度のレベルを決定する方法であって、
    a)該対象から事前に得られた試料の少なくとも一部に存在するRBM3タンパク質またはRBM3mRNAの量を評価し、該量に対応する試料値を決定する工程、
    b)工程a)で得られた試料値を参照値と比較する工程、
    該試料値が参照値よりも高い場合は、
    c1)該対象が第1の強度の白金に基づく治療を施されるべきであると結論づけ、
    該試料値が参照値と等しいか、または参照値よりも低い場合は、
    c2)該対象が第2の強度の白金に基づく治療を施されるべきであると結論づけ、ここに、該第2の強度は該第1の強度よりも高い、工程
    を含む方法。
  3. 癌が精巣癌、卵巣癌、肺癌、膀胱癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、乳癌および頭頸部癌から選択される、請求項1または2記載の方法。
  4. 白金に基づく治療がカルボプラチン、パラプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、ピコプラチンおよびシスプラチン治療から選択される、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
  5. 試料が対象由来の腫瘍細胞を含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
  6. 工程a)が、
    aI)試料に、評価されるべきRBM3タンパク質との選択的相互作用が可能な定量化できるアフィニティーリガンドを添加し、該添加を該試料中に存在するRBM3タンパク質に対する該アフィニティーリガンドの結合を可能にする条件下で実施し、
    aII)該試料に結合したアフィニティーリガンドを定量化して量を評価する
    ことを含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
  7. a)BM3タンパク質との選択的相互作用が可能な定量化できるアフィニティーリガンド、および
    b)該定量化できるアフィニティーリガンドの量を定量化するために必要な試薬
    を含む、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法を実施するためのキット。
  8. 該アフィニティーリガンドが、アミノ酸配列が配列番号5からなるペプチド、または20アミノ酸以下からなり、かつ、配列番号8、16および17から選択されるアミノ酸配列の全長を含むRBM3フラグメントと選択的相互作用が可能なアフィニティーリガンドである、請求項6記載の方法。
  9. 該アフィニティーリガンドが、アミノ酸配列が配列番号5からなるペプチド、または20アミノ酸以下からなり、かつ、配列番号8、16および17から選択されるアミノ酸配列の全長を含むRBM3フラグメントと選択的相互作用が可能なアフィニティーリガンドである、請求項7記載のキット。
  10. 癌を有する哺乳動物対象の白金に基づく治療のための治療予測マーカーとしての、RBM3タンパク質またはRBM3mRNA分子のイン・ビトロでの使用。
  11. アミノ酸配列が配列番号5からなるペプチド、または20アミノ酸以下からなり、かつ、配列番号8、16および17から選択されるアミノ酸配列の全長を含むRBM3フラグメントと選択的相互作用が可能な、アフィニティーリガンド。
  12. 癌を有する哺乳動物対象の白金に基づく治療のための治療予測剤としてのRBM3タンパク質との選択的相互作用が可能なアフィニティーリガンドのイン・ビトロでの使用。
  13. 癌を有する哺乳動物対象の白金に基づく治療のための治療予測剤の製造における、RBM3タンパク質との選択的相互作用が可能なアフィニティーリガンドの使用。
  14. 癌を有する哺乳動物対象の治療のための医薬の製造における白金に基づく治療剤の使用であって、該対象が高RBM3タンパク質または高RBM3mRNAである、使用。
  15. 白金に基づく治療剤がカルボプラチン、パラプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、ピコプラチンまたはシスプラチンである、請求項14記載の使用。
  16. RBM3タンパク質との選択的相互作用が可能なアフィニティーリガンドを含む、白金に基づく治療剤での治療に対する応答を予測するための診断組成物。
  17. 該治療がカルボプラチン、パラプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、ピコプラチンまたはシスプラチン治療である、請求項16記載の組成物。
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