以下、図面を参照しながら、最良の実施形態について詳細に説明する。
始めに、実施形態が前提とするシステムネットワークモデルについて説明する。
図1は、実施形態が前提とするネットワークモデルの説明図である。
一般性を失わないために、ネットワークは、或る携帯電話端末等の無線移動端末(UE:User Equipment)に協調的にサービスを行う2つの無線基地局を含む、パケット通信システムとして構成される。パケット通信システムは例えば、3GPPにて標準化作業が進められているLTE通信規格におけるE−UTRA(Evolved Universal Terrestrial Radio Access)システムとして実現することができる。
LTE等においては、基地局は、eNode−B(evolved Node B)と呼ばれる。本実施形態でも、以下の説明においては、基地局を、eNode−B、又はそれを省略した表記であるeNBと表すことにする。
図1に示されるように、2つの無線基地局のうちの一方は供給基地局:Serving eNode−B(以下、「供給eNB」又は「S−eNB」と略す)と表し、他方は協調基地局:Collaborative eNode−B(以下必要に応じて、「協調eNB」又は「C−eNB」と略す)と表わす。eNBが供給eNBと協調eNBのどちらに属するかの決定は、各UEによって受信される長期電力強度に基づく。故に、各UEに対するeNBの位置付けは、異なり得る。合理的な定義として、各UEによって受信される供給eNBからの長期電力強度は、協調eNBからのものよりも高い。
図2は、図1に示されるネットワーク上のeNode−B内に構成されるパケット送信装置の実施形態の構成図である。また、図3は、図1のUE内に構成されるパケット受信装置の実施形態の構成図である。図2の送信装置は、eNode−Bのダウンリンク側に装備され、図2の受信装置は、UEのダウンリンク側に装備される。なお、両者のアップリンクチャネル側の送受信装置の構成は、一般的な構成であるため省略する。
図2に示される送信装置は、新規データパケット送信部201、再送データパケット送信部202、チャネル割当部203、変調部204、無線処理部205、送信制御部206、アップリンク制御チャネル受信部207、及びX2制御チャネル送受信部208を含む。新規データパケット送信部201は更に、ブロック生成部201−1、新規部分取得部201−2、新規データパケット符号化部201−3から構成される。再送データパケット送信部202は更に、再送バッファ部202−1、再送部分取得部202−2、及び再送データパケット符号化部202−3から構成される。
図3に示される受信装置は、無線処理部301、再送データパケット受信部302、新規データパケット受信部303、受信制御部304、アップリンク制御チャネル送信部305を含む。再送データパケット受信部302は更に、再送データパケット復調部302−1、再送バッファ部302−2、再送部分合成部302−3、再送データパケット復号部302−4、及び出力分配部302−5から構成される。新規データパケット受信部303は更に、再送データパケット再符号化部303−1、再送データパケット再変調部303−2、キャンセラ部303−3、新規データパケット復調部303−4、及び新規データパケット復号部303−5から構成される。
以上の構成を有する送信装置及び受信装置の実施形態の動作について、以下に詳細に説明する。
HARQに対する他にない非常に重要な挙動として、図2の再送部分合成部305−3によって実行されるHARQ結合処理の後に、再送データパケットの復号時のブロックエラーレートが通常1%以下になるという点がある。図2に示される実施形態では、キャンセラ部303−3が実行する逐次干渉除去(SIC:Successive Interference Cancellation)処理において、復号された再送データパケットが積極的に利用されることにより、効果的なSIC処理が実現される。即ち、図2の実施形態では、UEにおいて、まず最初に再送パケットが検出され、それから他のパケット(新規パケット又は再送パケット)が検出されるように動作する。
次に、本実施形態では、それぞれ図1に示されるダウンリンク系の送信装置を実装する2つの協調して動作するeNode−Bから、1つの新規パケットと1つの再送パケットが、1つのUEに向けて完全に同期して配信される。
図4は、2つのeNode−Bが協調動作する場合分けを示す説明図である。ここでは、協調的送信が4タイプのシナリオに分類される。各シナリオでは、異なるチャネルリソース割当てとなり、また、異なる制御チャネル設計となる。簡単のため、ここでの説明は、単一のUEのみの場合であるが、複数UEのシナリオについては後述する。
図4(a)に示されるシナリオ1においては、新規データパケットのみが、供給eNBからセル端に位置するUEに配信されると仮定する。巨視的な送信を協調的に実現するために、幾つかの新規データパケットは、X2インタフェースを介して、供給eNBから協調eNBに転送される。そして、それらの新規データパケットが、両方のeNode−Bから対応するUEに同時に配信される。UE側においては、互いからの干渉を抑制しながら、受信処理を行う。
図4(b)に示されるシナリオ2においては、2つのタイプの送信パケットがセル端に位置するUEに配信されると仮定する。1つは、再送データパケットであり、他の1つは新規データパケットである。再送データパケットは、X2インタフェースを介して供給eNBから転送された新規データパケットが協調eNBからUEに配信されるのと同時に、供給eNBからUEに配信される。UEにおいては、後述するように、図3に示される新規データパケット受信部303が、SIC処理によって、互いからの干渉を抑制しながら、受信処理を行う。
図4(c)に示されるシナリオ3においては、シナリオ2の場合と同様に、再送データパケットと新規データパケットの2つのタイプの送信パケットが配信される。シナリオ3では、シナリオ2とは異なり、新規データパケットが、再送データパケットが協調eNBからUEに配信されるのと同時に、供給eNBからUEに配信される。この場合には、再送データパケットは、X2インタフェースを介して、供給eNBから協調eNBに転送される。UEにおいては、後述するように、図3に示される新規データパケット受信部303が、SIC処理によって、互いからの干渉を抑制しながら、受信処理を行う。
図4(d)に示されるシナリオ4においては、再送データパケットのみが供給eNBからセル端に位置するUEに配信されると仮定する。巨視的な送信を協調的に実現するために、幾つかの再送データパケットは、X2インタフェースを介して、供給eNBから協調eNBに転送される。そして、それらの再送データパケットが両方のeNBから対応するUEに同時に配信される。UE側においては、互いからの干渉を抑制しながら、受信処理を行う。
ここで、図4(b)のシナリオ2と図4(c)のシナリオ3は、巨視的送信アンテナによる最も高いダイバーシティ利得とSIC処理によるキャンセル利得を与える、より良い送信方式であるといえる。これはなぜならば、HARQ結合後の再送データパケットに対するBLER(BLock Error Rate)は十分低いため、最初に再送データパケットを抽出し、それからSIC処理によって新規データパケットを抽出することにより、良い結果を得ることができるからである。そのため、協調的送信の規則として、常に1つの新規データパケットと1つの再送データパケットが取得され、供給eNB及び協調eNBの両方から同時にそれらが送信される方式が望ましい。後述するシステムレベルシミュレーション結果によれば、もしUEが時速3kmの速度で移動していれば、再送の確率は8〜10%であることがわかっている。ところが、時速30kmの速度の移動では、再送の確率は70〜80%に増加する。そのため、異なる速度で移動している端末群を混在させたときの再送の確率は、概略30〜40%と推定できる。それは、新規データパケット及び再送データパケット間の協調的HARQ送信の可能性が23〜29%の結果になる。再送がない通常の協調的送信として図4(a)に示されるシナリオ1が採用される確率は70%程度であるといえる。しかしながら、図4(d)に示されるシナリオ4は、HARQパケットの発生確率が低いため実際のシステムでは起こりえない。このため、シナリオ4を採用する確率はほとんどゼロである。
以上の検討により、図2に示されるeNode−Bダウンリンク系送信装置の動作として、図4(b)に示されるシナリオ2、及び図4(c)に示されるシナリオ3の場合に焦点をあてて説明する。これらのシナリオは、実装時に何れか一方が選択されて設計される。どちらのシナリオがより好適かについては、後述する。
図5は、シナリオ2のための協調的ダウンリンクHARQ送信方式の説明図である。
まず図5(b)において、UEにて受信された新規データパケット(例えば#0の新規データパケット)がもしエラーになった場合、そのデータは、協調eNB(C−eNB)から配信される新規パケット(例えば#12の新規データパケット)と同時に、供給eNB(S−eNB)によって決定される同期させられた送信タイミングに合わせて、供給eNBから再送される。同様の処理が、#17(又は#15)の新規データパケットと共に送信される#4(又は#11)の再送パケットなどについても発生する。
図5(a)は、シナリオ2のための送信装置の処理構成を示すブロック図である。図2の送信装置が供給eNB側のダウンリンク系として実装された場合、図5(a)の供給eNB側の再送バッファ部504は、図2の再送バッファ部202−1に対応する。また、供給eNB側の第1のパケット送信部501は、図2の再送データパケット送信部202のうち再送バッファ部202−1を除く部分に対応する。更に、供給eNB側のRF503は、図2のチャネル割当部203、変調部204、及び無線処理部205からなる部分に相当する。一方、図2の送信装置が協調eNB側のダウンリンク系として実装された場合、図5(a)の協調eNB側の第2のパケット送信部503は、図2の新規データパケット送信部201に対応する。また、協調eNB側のRF505は、図2のチャネル割当部203、変調部204、及び無線処理部205からなる部分に相当する。更に、供給eNBから協調eNBに新規データパケットを転送するパケット転送部502は、図2のX2制御チャネル送受信部108に対応する。
この処理構成から理解されるように、それぞれ図2に示されるダウンリンク系の送信装置を有する供給eNBと協調eNBがシナリオ2に基づいて動作する場合には、供給eNB側の送信装置では、第1のパケット送信部501が再送データパケット507を送信する動作を実行する。一方、協調eNB側の送信装置では、第2のパケット送信部503が、パケット転送部502によって供給eNBから転送された情報に対応する新規データパケット508を送信する動作を実行する。
図6は、シナリオ3のための協調的ダウンリンクHARQ送信方式の説明図である。
まず図6(b)において、UEにて受信された新規データパケット(例えば#0の新規データパケット)がもしエラーになった場合、そのデータは、X2インタフェースを介してそれに対応する制御チャネルで協調eNBに転送される。その上で、供給eNBから配信される新規パケット(例えば#4の新規データパケット)と同時に、供給eNBによって決定される同期させられた送信タイミングに合わせて、協調eNBから再送される。同様の処理が、#9(又は#7)の新規データパケットと共に送信される#5(又は#14)の再送パケットなどについても発生する。
図6(a)は、シナリオ3のための送信装置の処理構成を示すブロック図である。図2の送信装置が供給eNB側のダウンリンク系として実装された場合、図6(a)の供給eNB側の再送バッファ部604は、図2の再送バッファ部202−1に対応する。また、供給eNB側の第1のパケット送信部601は、図2の新規データパケット送信部201に対応する。更に、供給eNB側のRF603は、図2のチャネル割当部203、変調部204、及び無線処理部205からなる部分に相当する。一方、図2の送信装置が協調eNB側のダウンリンク系として実装された場合、図6(a)の協調eNB側の第2のパケット送信部603は、図2の再送データパケット送信部202のうち再送バッファ部202−1を除く部分に対応する。また、協調eNB側のRF605は、図2のチャネル割当部203、変調部204、及び無線処理部205からなる部分に相当する。更に、供給eNB内の再送バッファ部604から協調eNBに再送データパケットを転送するパケット転送部602は、図2のX2制御チャネル送受信部108に対応する。
この処理構成から理解されるように、それぞれ図2に示されるダウンリンク系の送信装置を有する供給eNBと協調eNBがシナリオ3に基づいて動作する場合には、供給eNB側の送信装置では、第1のパケット送信部601が新規データパケット607を送信する動作を実行する。一方、協調eNB側の送信装置では、第2のパケット送信部603が、パケット転送部502によって供給eNB内の再送バッファ部604から転送された情報に対応する再送データパケット608を送信する動作を実行する。
全体的な複雑さに関して、シナリオ2はシナリオ3よりも好適である。これは、シナリオ2では、協調eNBは、X2インタフェースを介して供給eNBから転送された新規ブロックを受信し、それに基づいて生成した新規データパケットを、制御チャネルの説明において後述するように、それがUE側で正確に受信されたか否かを考慮することなく配信できるからである。後述するように、再送処理及びHARQのための制御チャネルアクセスを含む全ての責務は、供給eNBが負う。このことは、協調eNBの設計を簡略化することになる。しかしながら、シナリオ3の構成を採用することも勿論可能である。
上述のシナリオ2又はシナリオ3の処理を考慮した図2の送信装置の更に詳細な動作について、以下に説明する。
図2において、ブロック生成部201−1は、送信されるべき情報ビットから所定サイズのブロックを生成する。ブロック生成部201−1が生成するブロックのサイズは、1つのパケットが格納可能な情報ビットの量に等しい。即ち、送信装置が送信する通常のパケットには、1つのブロックに相当する情報ビットが含まれている。
再送バッファ部202−1は、ブロック生成部201−1によって生成された情報ビットのブロックを、再送に備えて一時的に保持する。なお、再送バッファ部202−1は、受信装置において正確に復号され、再送の必要がなくなったブロックについては、順次破棄するようにしても良い。
送信制御部206は、アップリンク制御チャネル受信部207が制御チャネルを介してUE側から受信した制御信号に応じて、新規部分取得部201−2及び再送部分取得部202−2を制御する。
具体的には、図2の送信装置がシナリオ1(図4(a)参照)に基づいて或るUEに対して供給eNBとして動作する場合において、或るUEについてそのUE側から再送データパケットの送信が指示されていないときには、以下の動作を実行する。即ち、送信制御部206はまず、新規部分取得部201−2に対して、ブロック生成部201−1によって生成された処理対象のUEに対応する新規ブロックを取得し、それを新規データパケット符号化部201−3へ出力して送信させるように指示する。また、送信制御部206は、再送部分取得部202−2に対して、その動作を停止するように指示する。更に、送信制御部206は、新規部分取得部201−2に対して、上記新規ブロックを、X2制御チャネル送受信部208へも出力して、処理対象のUEに対応する協調eNBへ転送させるように指示する。
一方、図2の送信装置がシナリオ1に基づいて或るUEに対して協調eNBとして動作する場合において、或るUEについてそのUE側からそのUEに対応する供給eNBに対して再送データパケットの送信が指示されていないときには、以下の動作を実行する。即ち、送信制御部206は、新規部分取得部201−2に対して、X2制御チャネル送受信部208が受信した処理対象のUEに対応する供給eNBから転送されてきた新規ブロックを取り込み、それを新規データパケット符号化部201−3へ出力して送信させるように指示する。
次に、図2の送信装置がシナリオ2(図4(b)参照)に基づいて或るUEに対して供給eNBとして動作する場合において、アップリンク制御チャネル受信部207が或るUEについて受信したNAKの受信数が所定数に達した場合には、以下の処理を実行する。即ち、送信制御部206は、再送部分取得部202−2に対して、再送バッファ部202に保持された上記NAKに対応する送信済みのブロック(再送ブロック)を取得させ、それを再送データパケット符号化部202−3へ出力して再送信させるように指示する。また、送信制御部206は、新規部分取得部201−2に対して、ブロック生成部201−1によって生成された処理対象のUEに対応する新規ブロックを取得させるが、それを新規データパケット符号化部201−3へではなく、X2制御チャネル送受信部208へ出力して処理対象のUEに対応する協調eNBへ転送させるように指示する。
一方、図2の送信装置がシナリオ2に基づいて或るUEに対して協調eNBとして動作する場合に、或るUEについてそのUEに対応する供給eNB内のアップリンク制御チャネル受信部207が受信したNAKの受信数が所定数に達した場合には、以下の処理を実行する。即ち、送信制御部206は、新規部分取得部201−2に対して、X2制御チャネル送受信部208が受信した処理対象のUEに対応する供給eNBから転送されてきた新規ブロックを取り込み、それを新規データパケット符号化部201−3へ出力して送信させるように指示する。
続いて、図2の送信装置がシナリオ3(図4(c)参照)に基づいて或るUEに対して供給eNBとして動作する場合において、アップリンク制御チャネル受信部207が或るUEについて受信したNAKの受信数が所定数に達した場合には、以下の処理を実行する。即ち、送信制御部206は、再送部分取得部202−2に対して、再送バッファ部202に保持された上記NAKに対応する送信済みのブロック(再送ブロック)を取得させるが、それを再送データパケット符号化部202−3へではなく、X2制御チャネル送受信部208へ出力して処理対象のUEに対応する協調eNBへ転送させるように指示する。また、送信制御部206は、新規部分取得部201−2に対して、ブロック生成部201−1によって生成された処理対象のUEに対応する新規ブロックを取得させ、それを新規データパケット符号化部201−3へ出力して再送信させるように指示する。
一方、図2の送信装置がシナリオ3に基づいて或るUEに対して協調eNBとして動作する場合に、或るUEについてそのUEに対応する供給eNB内のアップリンク制御チャネル受信部207が受信したNAKの受信数が所定数に達した場合には、以下の処理を実行する。即ち、送信制御部206は、再送部分取得部202−2に対して、X2制御チャネル送受信部208が受信した処理対象のUEに対応する供給eNBから転送されてきた再送ブロックを取り込み、それを再送データパケット符号化部202−3へ出力して送信させるように指示する。
ここで、ACK及びNAKは、或るUEに対して供給eNBとして動作する送信装置内のアップリンク制御チャネル受信部207が、その処理対象のUEから、ユーザデータと共に格納されて転送されてくる後述するアップリンク制御情報(UCI)として受信する制御信号である。これらのACK及びNAKは、UEにおいてパケットの受信エラーが発生したか否かを表しており、UEからそれに対応する供給eNBに、各受信パケットごとに返信されている。
図2の送信装置において、新規データパケット送信部201内の新規パケット符号化部303−1は、新規部分取得部201−2から新規ブロックが入力された場合に、その新規ブロックを情報ビット部に含み、それに対応するパリティビットをパリティビット部に含む新規パケットを生成する。
再送データパケット送信部202内の再送データパケット符号化部202−3は、再送部分取得部202−2から再送ブロックが入力された場合に、その再送ブロックを情報ビット部に含み、それに対応するパリティビットをパリティビット部に含む再送パケットを生成する。
チャネル割当部203は、新規データパケット符号化部201−3にて生成された新規パケット又は再送データパケット符号化部202−3にて生成された再送パケットを、処理対象のUEに対応する通信チャネルに割り当て、その結果生成されたフレームデータを変調部204へ出力する。
変調部204は、チャネル割当部203から出力されるフレームデータを変調し、無線処理部205へ出力する。
無線処理部205は、変調後のフレームデータに対して所定の無線送信処理を実行し、特には図示しないアンテナを介して送信する。
次に、UE内のダウンリンク系に実装される図3に示される受信装置の詳細な動作について、以下に説明する。
図3に示されるように、受信装置は、再送データパケット受信部302と新規データパケット受信部303を具備する。
図3において、受信制御部304は、受信パケットと共に物理ダウンリンク制御チャネルを介して後述するように供給eNBから伝送されてくるダウンリンク制御情報(DCI)に含まれる新規データ指示情報(後述する図9(b)を参照)によって、受信パケットが新規データパケットであるか再送データパケットであるかを認識できる。これは即ち、シナリオ1であるかシナリオ2であるか、又はシナリオ1であるかシナリオ3であるかの識別に等しい。なお、受信制御部304は、常に復調処理を実行している再送データパケット復調部302−1の出力に基づいて、上記識別処理を実行する。
この識別により、受信装置が前述したシナリオ1(図4(a)参照)に基づいて動作するときには、再送データパケット受信部302と、新規データパケット受信部303内の再送データパケット再符号化部303−1、再送データパケット再変調部303−2、及びキャンセラ部303−3、は動作せず、アンテナを介して無線処理部301にて受信された受信信号は、新規データパケット受信部303内のキャンセラ部303−3をそのまま通過して、新規データパケット復調部303−4に入力する。
新規データパケット復調部303−4は、無線処理部301から入力される受信信号を構成する各通信チャネルから受信パケットを復調し、その受信パケットを新規データパケット復号部303−5へ出力する。
新規データパケット復号部303−5は、入力される新規データパケットを復号し、その結果得られる新規情報ビットを、後段の特には図示しない処理部へ出力する。
一方、受信制御部304での前述した識別処理により、図3の受信装置が前述したシナリオ2(図4(b)参照)又はシナリオ3(図4(c)参照)として動作するときには、受信制御部304の制御に基づいて、再送データパケット受信部302及び新規データパケット受信部303の両方が動作する。
まず、再送データパケット受信部302の動作について説明する。
再送データパケット復調部302−1は、無線処理部301から入力される受信信号を構成する各通信チャネルから受信パケットを復調し、その受信パケットを再送部分合成部302−3へ出力する。なお、この再送データパケット復調部302−1は、受信制御部304による前述した識別処理を可能とするために、受信パケットが再送データパケットであるか新規データパケットであるかにかかわらず復調処理を実行している。
再送部分合成部302−3は、受信制御部304から再送パケットの処理を指示されたタイミングで、再送データパケット復調部302−1から入力する再送データパケットを、最初に受信に失敗し再送バッファ部302−2に保持されている過去のデータパケットと合成する。そして、再送部分合成部302−3は、その合成結果を再送データパケット復号部302−4に出力する。なお、受信制御部304は、受信パケットと共に物理ダウンリンク制御チャネルを介して供給eNBから伝送されてくるダウンリンク制御情報(DCI)の一部として、再送シーケンス情報及びその他の制御情報を受信し、これらの制御情報を再送部分合成部302−3に通知する。再送部分合成部302−3は、これらの制御情報に基づいて、HARQ方式に基づく再送パケットの合成処理を実行する。
再送データパケット復号部302−4は、入力される再送データパケットを復号し、その結果得られる復元された情報ビットを、出力分配部302−5へ出力する。
出力分配部302−5は、情報ビットの復元に成功した場合に、それを後段の特には図示しない処理部へ出力する。これと同時に、出力分配部302−5は、復元された情報ビットを新規データパケット受信部303内の再送データパケット再符号化部303−1へ出力する。
次に、新規データパケット受信部303の動作について説明する。
出力分配部302−5から復元された情報ビットが入力されると、再送データパケット再符号化部303−1及び再送データパケット再変調部303−2が実行され、受信に成功した再送データパケットのレプリカが生成される。
キャンセラ部303−3は、逐次干渉除去(SIC:Successive Interference Cancellation)処理として、無線処理部301から入力する受信信号に対して、供給eNB(シナリオ2の場合)又は協調eNB(シナリオ3の場合)から受信された再送データパケットの干渉信号分をキャンセル処理する。これにより、キャンセラ部303−3は、協調eNB(シナリオ2の場合)又は供給eNB(シナリオ3の場合)から受信された新規データパケットの受信信号成分のみを適切に抽出し、それを新規データパケット復調部303−4へ出力する。
新規データパケット復調部303−4は、キャンセラ部303−3から入力される干渉成分が除去された受信信号を構成する各通信チャネルから受信パケットを復調し、その受信パケットを新規データパケット復号部303−5へ出力する。
新規データパケット復号部303−5は、入力される新規データパケットを復号し、その結果得られる新規情報ビットを、後段の特には図示しない処理部へ出力する。
なお、再送データパケット受信部302における再送データパケットの復元処理が失敗し、出力分配部302−5から再送データパケット再符号化部303−1への入力が無い場合には、再送データパケット再変調部303−2からキャンセラ部303−3への入力はゼロにセットされる。これにより、キャンセラ部303−3の動作が等価的に無効にされる。この結果、新規データパケット復調部303−4及び新規データパケット復号部303−5は、キャンセル処理無しで新規データパケットの抽出を行う。
図3において、受信制御部304は、例えば、受信信号中の参照信号(RS:Reference Signal)によって、後述する供給eNBからの物理ダウンリンク制御チャネルを正確に認識する。供給eNB及び協調eNB間のRS群としては、相互に、パターンは同じであるが位相シフトが異なる、例えば互いに直交している信号群を用いることにより、供給eNBと協調eNB間のチャネル識別が容易になる。
以上説明した受信装置の処理方式の変形例として、システム性能をより改善することのできる、次のようなインタラクティブな方式を採用することも可能である。
・最初に再送データパケットが抽出され、それがもし正しく受信されたら、キャンセラ部によるSIC処理によって新規データパケットが抽出される。
・再送データパケットの受信が成功しなかったら、新規データパケットが抽出され、その新規データパケットがもし正しく受信されたら、キャンセラ部によるSIC処理によって上記再送データパケットが再度抽出される。
このように本実施形態では、再送データパケットと新規データパケットを、供給eNB及び協調eNB(シナリオ2の場合)又はその逆(シナリオ3の場合)に割り当てて協調的送信を行わせることで、同一のUEに対する再送データパケットと新規データパケットを、同じチャネルリソースを使って同時に送信することが可能となる。このように、本実施形態による協調的送信方式では、チャネルの有効利用も可能となる。
協調的送信のためのチャネルリソース割当てとユーザスケジューリングは、供給eNB内の送信制御部206(図2参照)によって集中制御される。
ここで、協調的送信を実施するか否かを決定する重要なパラメータとして、リンクギャップΔue、或いはその代わりに、LTEにおける用語として使用される、参照信号受信電力(RSRP:Reference Signal Receiving Power)差が、用いられる。そのパラメータは、供給eNBと協調eNBの間のUEによる対数受信信号電力の差として定義される。もし、リンクギャップΔueがもう1つのパラメータとしてのリンクギャップ目標Δよりも小さければ、協調的送信が実施される。そうでなければ、通常送信が望ましい。これらのパラメータを使用することにより、協調的送信のための帯域幅を容易に制御することができる。
UEの受信装置(図3)内の受信制御部304は、通信中に、受信された各RSのRSRP差を逐次検出する。そして、アップリンク制御チャネル送信部305を介して供給eNB側に通知することにより、現在の供給eNB内のアップリンク制御チャネル受信部207(図2)がそれを受信し、送信制御部206(図2)が協調的送信を継続するか否か、及び新たな供給eNBの決定等の処理を実行する。
以上、1つのUEに関する協調的HARQ送信処理について説明したが、前述したように、各UEは、RS信号群に基づいて協調的送信の実行の有無及び供給eNBと協調eNBの識別を行うことができる。これにより、各eNode−Bは、UE毎に、自分自身を供給eNBとして動作させるか協調eNBとして動作させるかを制御することができ、それぞれのUEに対して上述と同様の処理を実行することができる。
図7は、供給eNBと協調eNBの決定処理を示す動作シーケンス図例を示すである。UEは、例えばeNode−B0及びeNode−B1と制御信号0及び1を使って通信をしている状態において、それらのRS信号群に基づいて、例えばeNode−B1を供給eNB、eNode−B0を協調eNBとして決定する(図7のS1)。これにより、UEは、例えばランダムアクセスチャネルRACHを用いてまず、eNode−B1と通信を行う。eNode−B1からデータチャネル及び制御チャネルを通知されると(図7のS2)、UEは、その制御チャネルを使って、協調eNBであるeNode−B0に関する情報を、供給eNBとなったeNode−B1に通知する(図7のS3)。この結果、eNode−B1からeNode−B0に、X2インタフェースを使って通知がなされ、eNode−B0はUEに、データチャネル及び制御チャネルを通知する(図7のS4)。これにより、UEは、eNode−B1及びeNode−B0から、協調的送信を受けることが可能となる。このとき、供給eNBであるeNode−B1からは協調的送信データのパケットと制御情報を受け、協調eNBであるeNode−B0からは協調的送信データのパケットのみを受けることになる。
次に、制御チャネル設計eNode−BとUEの間で通信される制御チャネルについて説明する。
本実施形態では、主要な制御信号は、供給eNBとUEの間のリンクを介して通信されるように構成される。即ち、供給eNBとUEの間のリンクが、協調eNBとUEの間のリンクよりも、より重要な役割を担うように構成される。
制御チャネル設計においては、3つのチャネルに注目する。それは、物理アップリンク制御チャネル(PUCCH:Physical Uplink Control CHannel)、物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH:Physical Downlink Control CHannel)、及びX2ベース制御チャネル(X2CCH:X2 Control CHannel)である。
また、制御チャネルは、前述のシナリオ2(図4(b)参照)に従って設計される。なぜならば、このシナリオは、制御チャネルとデータチャネルの両方に対して、より良いシステム性能とより低い複雑性を得られるからである。この選択は、後述するシステムレベルシミュレーション評価において確認する。
図8は、データチャネル及び制御チャネルを、その通信方向と共に示した図である。ここで、2つのチャネルのタイプに対する或る制約が、次のように考えられる。
・新規データパケットは、供給eNBからUEと、協調eNBからUEという2つのリンク上で送信することが許される。
・再送パケットは、供給eNBからUEへのリンク上においてのみ送信することが許される。
・C1として示されるPUCCHは、UEから供給eNBへのリンク上を送信される。
・C2として示されるPDCCHは、供給eNBからUEへのリンク上を送信される。
・新規データパケット及びそれに関連する制御信号のみが、X2インタフェースによって供給eNBから協調eNBへ配信される。X2インタフェースにおける制御チャネルは、C3として示されている。
協調的送信に対する上述のような制御チャネル設計によって、制御チャネル量を著しく削減できると共に、単一方向のHARQ処理によってシステムレイテンシを大きく短縮させることができる。以下に、これらの3つのチャネルの個別設計について、より詳細に説明する。
まず、PUCCHの設計について説明する。
ここでの設計では、PUCCHは、次のような2つの定期的な信号を含むアップリンク制御情報(UCI:Uplink Control Information)に対応する。一方は、チャネル品質指標(CQI:Channel Quality Indication)、プリコーディングマトリクス指標(PMI:Precoding Matrix Indication)、及びランク指標(RI:Randk Indication)を含み、CQI/PMI/RIと表記される。他方は、HARQ−ACK/NAKを含む。PUCCHは、UEから供給eNBへのリンク上のみで送信される。図8では、C1として示される。PUCCHは、UE内のアップリンク制御チャネル送信部305(図3)と供給eNBとして動作するeNode−B内のアップリンク制御チャネル受信部207(図2)によって終端される。それぞれのアクティブなUEは、例えば高レイヤ制御信号によって、供給eNBと協調eNBを分離する。
各UEは、協調eNBと同様に供給eNBからの参照信号(RS)に基づいて、チャネル応答を観測する。前述したように、両方のeNB間で、RSの位相は直交するように設定される。UE内のアップリンク制御チャネル送信部305(図3参照)は、そのUEに対応する供給eNB内のアップリンク制御チャネル受信部207(図2参照)に向けて定期的UCIを通知する。このUCIに含まれるCQI/PMI/RIは、供給eNBからUEへのリンクと協調eNBからUEのリンクの両方のリンク品質に対応する。そして、そのUCIは、UEからそれに対応する供給eNBにのみ送信される。これは、以下の2つの理由による。
・一般的に、供給eNBからUEへのリンク品質は、協調eNBからUEへのものよりも良質である。このことは、UL制御チャネルのための性能を確実なものにする。
・そのことは、制御チャネル量を著しく削減し、制御チャネル設計を簡略化することができる。
図9(a)は、両方のリンクに対するUCIの例を示すデータフォーマット図である。このフォーマットは、両方のリンクに対する個別のCQIを含む。また、それは、対応するPMI及びRIを含む。PMI及びRIに対応するフィールド情報は、両方のリンクに対して同一である。
次に、UCIに含まれるHARQ処理のためのACK又はNAK(HARQ−ACK/NAK)は、UEにおいてパケットの受信エラーが発生したか否かを表す情報である。図3に示される受信装置内の再送データパケット復号部302−4及び新規データパケット復号部303−5は、各々における復号処理において、誤り率が所定の閾値以上かつ、復号の繰返し回数が所定回数に達した場合に、各々処理しているパケットの再送が必要である旨をアップリンク制御チャネル送信部305へ通知する。これにより、アップリンク制御チャネル送信部305は、それが含まれるUEに対応する供給eNBに向けて、再送を指示された受信パケットごとにNAKを送信する。上記条件以外の場合として、再送データパケット復号部302−4及び新規データパケット復号部303−5が各々受信パケットの受信に成功したときには、アップリンク制御チャネル送信部305は、それが含まれるUEに対応する供給eNBに向けて、受信に成功した受信パケットごとにACKを送信する。
上記UCIに含まれるHARQ−ACK/NAKは、供給eNB内のアップリンク制御チャネル受信部207(図2参照)にて受信され、その情報が送信制御部206に引き渡される。送信制御部206は、前述したようにしてHARQの再送処理を実行する。この場合、再送処理としては、シナリオ2として前述したように、供給eNBからUEに対してのみ実施されることが望ましい。その理由は、以下の通りである。
・HARQ処理による再送パケットのための送信レイテンシを削減できる。
・PDCCHとX2CCHを含む制御チャネルを簡略化できる。
・協調eNBに対する複雑性を軽減できる。なぜならば、送信された新規パケットは、協調eNBに配置される再送バッファ部302−2(図2)に残ることはないからである。協調eNBは、X2インタフェースからの制御チャネル(X2CCH)に追従して、新規パケットの送信のみを実行すればよい。
PUCCH上のHARQ−ACK/NAKのフィールドは、供給eNBと協調eNBの両方の対応する送信データパケットのために、両方の対応するACK/NAK信号(2ビット)を含むように設計される。
次に、PDCCHの設計について説明する。
ここでの設計では、PDCCHは、供給eNBのみからその供給先のUEへ、図8においてC2として示されるように送信される。この場合、PDCCHは、供給eNBとして動作するeNode−B内の送信制御部206(図2)とUE内の受信制御部304(図3)によって終端される。
即ち、各UEは、それに対応する供給eNBからのPDCCHのみをデコードする。その理由は、以下の2つである。
・供給eNBからUEへのリンク品質は、協調eNBからUEへのものよりも良質である。これは、制御チャネルに対する性能を確実なものにする。
・1つのリンクのみからPDCCHを送信することは、制御チャネルの負荷を著しく緩和させることができる。
ここで、PDCCHを使って伝送されるダウンリンク制御情報(DCI:Downlink Control Information)は、現在協調的送信が使用されているか否かを指示することができる。この目的で、DCIに、新しいビットが導入される。その他の表記として、PCIは、伝送パケットが新規データパケットであるか再送データパケットであるか、即ち、シナリオ1であるかシナリオ2であるか、又はシナリオ1であるかシナリオ3であるかを識別するビットを含む。これは、受信装置に対してHARQ処理を実行させるか否かを指示するために使用される。この情報は、LTE標準において既に規定され存在している新データ指示情報(後述する図9(b)参照)を使うことによって達成できる。
その他、DCIには、以下に示される情報が含まれる。
・フォーマット1、フォーマット1A、及びフォーマット1Cにおける、供給eNBのための変調符号化方式(MCS:Modulation and Coding Scheme)に加えて、協調eNBのための追加的なMCS。5ビットが必要である。
・フォーマット2における、追加的なMCS(5ビット)及びプリコーディング情報
以上の情報を含む両方のリンクのためのDCIは、UEを特定したCRCを使ってまとめて符号化される。フォーマット2を使ったDCIの例を、図9(b)に示す。同図において、「RB割当てヘッダ」及び「RB割当て」は、リソースブロックの割当てに関する制御情報である。「新規データ指示情報」は、伝送パケットが新規データパケットであるか再送データパケットであるかを指示する情報である。「冗長バージョン」は、HARQの制御情報である。「MCS−1」及び「MSC−2」は、それぞれ供給eNB及び協調eNBのためのMCSである。プリコーディング情報1及びプリコーディング情報2は、それぞれ供給eNB及び協調eNBのためのプリコーディング情報である。
DCIを含むPDCCHは、例えばE−UTRA通信システムのデータフォーマットで規定されるサブフレームに、ユーザデータパケットと共に格納され伝送される。
次に、X2ベース制御チャネルの設計について説明する。
X2ベースの制御チャネル(X2CCH)は、図8のC3として示されるX2インタフェースを介して、その制御チャネルに対応するデータパケットと共に配信される。具体的には、X2CCHは、供給eNBと協調eNBの双方の図2に示される送信装置内のX2制御チャネル送受信部208によって終端される。このX2CCHは、例えば光ファイバを使った有線リンク上で実現される。
X2CCHは、次のような情報を含む。
・リソース割当てヘッダ:1ビット
・リソースブロック割当て
・変調符号化方式:5ビット
・プリコーディング情報
・サブフレームにおける送信タイミング
次に、上記X2CCHとPDCCH間のタイミング制御について説明する。
送信タイミング制御は、協調的送信のための最も重要な論点の1つである。それは、供給eNBによって決定され、X2インタフェースによって協調eNBに指示される。送信タイミングは、X2インタフェースのレイテンシを考慮する。
図10は、制御チャネルとデータチャネルの間の送信タイミングの例を示した図である。同図において、データ(Data)とそれに対応するX2CCHは、タイミングt2での供給eNBからUEへの関連する送信(「PDCCH」及び「Data from S−eNB」)に先立って、協調eNBに転送される。協調eNBからのデータ(「Data from C−eNB」)の送信タイミングt1は、X2インタフェースの最大レイテンシTに基づいて供給eNBによって決定される。このような供給eNBと協調eNBの間の同期ネットワークにより、供給eNBからのデータと協調eNBからのデータは、予め決定されたタイミングt1及びt2で配信される。それは、両方のデータが同時のタイミングt3で受信されることを保証する。
上記のタイミング制御を含めて、各UEに対する協調的送信は、供給eNBによって集中制御される。それらの制御は、UE及びデータのスケジューリングと、送信タイミング制御を含む。
以上説明した本実施形態の協調的HARQ送信方式の性能を評価するために、システムレベルシミュレーションを実施した。
そのシステムレベルシミュレーションにおいては、本実施形態の送信装置(図2)及び受信装置(図3)を搭載したシステムが、7クラスタで形成されるセルネットワークに実装された。各クラスタは、19個の六角セルから構成され、各セルは、3セクタを含む。そのセクタのアンテナは、その視準(bore−sight point)が六角形の端に向けられた。外側セルからの干渉の発生を精密にモデル化するために、観測対象クラスタが中央に配置されその側辺に6個のコピーが対称に配置される、周囲包み込み型ネットワーク構造が採用された。シミュレーションの場合分けと、条件仮定は、それぞれ表1及び表2に示される。
始めに、本実施形態によるHARQシステムのBLER(BLock Error Rate)を評価することにより、協調的送信を行わないフルシステムレベルシミュレーションを実施した。
図11の(a)、(b)、及び(c)は、それぞれケース1、ケース2、及びケース3における初期送信、再送#1、#2、及び#3に関するジオメトリの関数として、UE毎のBLERを示した図である。
表3は、ケース1、ケース2、及びケース3における、初期送信、再送#1、#2、及び#3に対するUE全体の平均BLERをまとめたものである。ケース1及びケース3に対する初期送信のためのBLERは9%近辺、ケース2に対しては78%である。ところが、第1回目の再送の後は、ケース1及びケース3に対するBLERは0.1%以下、ケースに対しては25%になった。これより、本実施形態による適切なSIC処理を実行する受信装置が導入された場合に、協調的送信のためのシステム性能が改善されることが期待できることがわかる。
次に、本実施形態によるSIC処理を実施する受信装置からのSINR利得について説明する。
前述したように、リンクギャップ目標Δは、協調的送信に影響を与える重要なパラメータである。システムレベルシミュレーションにおいては、このパラメータを、協調eNB間の帯域幅を制御するために用いる。このシステムレベルシミュレーションを実施する動機は、シナリオ3に対してシナリオ2で達成される利得を明らかにするためである。まず、リンクギャップ目標Δの様々な設定値、1dB、10dB、及び19dBに対する協調的送信ユーザにおける受信SINR(Signal−to−Interference,and Noise power Ratio:信号対干渉・雑音電力比)のCDF(Cumulative Density Function:累積密度関数)をプロットする。それによって、0.5のCDF点におけるSINRを図示することができる。このことは、シナリオ2からのSINRの利点を正確に示すことになる。
ここで、プロット図中の凡例は、下記のように定義される。
・Serving link,No−SIC:協調eNB(又は協調リンク)からの干渉のSICキャンセル処理がない場合における、供給eNB(又は供給リンク)からの、UEによって受信されるSNR(Signal−to−Noise Ratio)又はSNR利得。これは、シナリオ3に対応する。
・Collab link,No−SIC:供給eNB(又は供給リンク)からの干渉のSICキャンセル処理がない場合における、協調eNB(又は協調リンク)からの、UEによって受信されるSNR又はSNR利得。これは、シナリオ2に対応する。
・Serving link,SIC:協調eNB(又は協調リンク)からの干渉のSICキャンセル処理がある場合における、供給eNB(又は供給リンク)からの、UEによって受信されるSNR又はSNR利得。これは、シナリオ3に対応する。
・Collab link,SIC:供給eNB(又は供給リンク)からの干渉のSICキャンセル処理がある場合における、協調eNB(又は協調リンク)からの、UEによって受信されるSNR又はSNR利得。これは、シナリオ2に対応する。
図12の(a)、(b)、及び(c)は、供給eNB及び協調eNBからのそれぞれの場合、SIC有り/無しのそれぞれの場合、それぞれにおけるΔの設定値、1dB、10dB、及び19dBのそれぞれの場合において、UEによって受信されるSINRのCDFを示している。リンクギャップ目標が増加するに従って、供給eNB及びUE間のリンク品質はより良くなってゆく。それに加えて、キャンセラ部303−3(図3)によるSIC処理は、協調eNB及びUE間のリンクに対して、より良好に動作するようになる。
図13は、リンクギャップ目標Δ内に陥り、セル端ユーザと判定されるUEの確率を示した図である。そのようなUEに対しては、協調的送信が実施される。リンクギャップ目標Δが、例えば8dB近辺の妥当な値を有しているときには、セル端ユーザのパーセントは、60%付近になる。これは、十分に大きな値であり、協調的送信を要請するものとなる。
図14は、CDF値が50%における、リンクギャップ目標Δの関数としてのΔの更に関数としてのUEのSINRを示した図である。図14より更に、SIC有り及びSIC無し間の2つのリンクに対するUEのSINR利得を計算したものが図15である。
協調eNBからUEへのリンク(リンク1)と供給eNBからUEへのリンク(リンク2)を比較することにより、幾つかの観測結果が以下のように得られる。
・再送データパケットが供給eNBから配信されるときには、SIC処理によるリンク1に対するSINR利得は、2〜2.5dB近辺になる。
・再送データパケットが協調eNBから配信されるときには、SIC処理によるリンク2に対するSINR利得は、1.5〜1.75dB近辺になる。
・Δ値が増加すると、リンク1のSINR利得はより大きくなり、リンク2のSINR利得はより小さくなる。このように、Δ値は小さすぎず大きすぎず設定されるべきである。加えて、小さいΔは、協調的送信が発生する可能性を低くしすぎてしまい、大きなΔは、協調的送信が発生する可能性を大きくしすぎてしまう。適切なΔ値は、8dBと10dBの間である。SICによるSINR利得の考察から、結論として、再送データパケットは、常に供給eNBから配信されるべきである。
以上、本出願では、SIC処理を実行する受信装置を使って高いSINR利得を達成するための、HARQ処理のための協調的送信方式について提案した。
本出願は、HARQ結合後は常に低BLERになるというHARQの他にない挙動を利用し、SIC処理をいままでにないほどに容易にする。
SIC処理による高いSINR利得を達成するために、結果的に、再送データパケットは供給eNBからUEへのリンク上で常に配信され、その間は、新規データパケットは協調eNBからUEへのリンク上を配信されるのが好適である。しかし、設計によっては、その逆であっても勿論良い。
制御チャネルでに関しては、実行可能性及び平易性を考慮して、物理アップリンク制御チャネル(PUCCH)、物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)、及びX2ベース制御チャネル(X2CCH)の3つのチャネルに注目した。この制御チャネル設計は、制御チャネル量を著しく削減できると共に、システムレイテンシを非常に短縮させることができる。
以上説明した協調的送信方式は、同一のeNode−B内に位置する2つの送信ポイント間で協調的送信が起こるイントラeNode−Bに対しても適用することができる。