JP5759092B2 - 空調システム - Google Patents

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Description

本発明は、主として食料品を扱うスーパーマーケットのように冷凍・冷蔵設備と室内空調設備とを配置した建物内空間において、冷凍・冷蔵設備と室内空調設備との運転出力を制御する空調システムに関するものである。
従来から、食料品を扱うスーパーマーケット(以下、「食品スーパー」という)のように、オープン型の冷凍・冷蔵設備(以下、「冷蔵装置」という)と室内空調設備(以下、「空調装置」という)とを配置した建物内空間では、冷蔵装置と空調装置との需要電力が相互に影響することが知られている。そこで、冷蔵装置と空調装置との需要電力の相互の影響を勘案して冷蔵装置と空調装置との合計の需要電力を算出し、算出した合計の需要電力が低減されるように空調装置を制御することが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
すなわち、特許文献1に記載の技術では、外気温度と店内温度と店内湿度とを検出するとともに、冷蔵装置と空調装置との相互の需要電力の影響を考慮して合計の需要電力を算出し、冷蔵装置と空調装置との合計の需要電力を低減させるように空調装置の設定温度を制御している。
ところで、空調装置を備える建物内空間において省エネルギーを目的として需要電力を低減する場合には、冷房時に許容可能な温度範囲の上限付近(たとえば、28℃)に温度を設定し、暖房時に許容可能な温度範囲の下限付近(たとえば18℃)に温度を設定することが多い。
一方、特許文献1には、冷蔵装置と空調装置との合計の需要電力が空調装置の設定温度(店内温度)の低下に伴って低下するという知見が示されており、この知見に基づいて、合計の需要電力を低減させるために、店内温度の許容される温度範囲(24〜27℃)の下限の温度である24℃を設定温度とすることが記載されている。
特開平9−196432号公報(0036−0038、0059−0060段落)
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、冷蔵装置が配置されている場合の需要電力についてのみ着目しており、現場における冷蔵装置の有無に応じた対応を行うことについては考慮されていない。
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、利用者が冷蔵装置の有無を入力するだけで、需要電力の増加が抑制される適正な目標温度で空調装置を運転することを可能にする空調システムを提供することにある。
本発明は、着目する空間領域の温度を検出する温度センサと、冷房運転により前記空間領域の気温を調整する空調装置と、前記空間領域の目標温度を設定し前記温度センサにより検出される前記空間領域の温度を設定された目標温度に一致させる方向に前記空調装置を制御する制御装置と、前記空調装置の定格電力と冷蔵装置の定格電力との入力が可能であって、前記空調装置の定格電力に対して前記冷蔵装置の定格電力の割合が既定値よりも小さいときには、前記空間領域に冷蔵装置がないものとして前記制御装置に通知する入力装置と、前記空間領域の外部の気温を検出する外気温センサとを備え、前記制御装置は、快適性を評価する評価指標に基づいて規定される快適温度範囲を許容温度範囲として、前記入力装置により前記空間領域における前記冷蔵装置の存在が通知されているときに、前記外気温センサにより検出される気温が規定値より低いと前記空間領域について規定した前記許容温度範囲の下限温度に基づいて設定した第1設定値を目標温度に用い、前記外気温センサにより検出される気温が規定値以上に上昇すると当該第1設定値よりも所定温度だけ引き下げた温度を目標温度に用い、前記入力装置により前記空間領域における前記冷蔵装置の非存在が通知されていると、前記空間領域について規定した前記許容温度範囲の上限温度に基づいて設定した第2設定値を目標温度に用いることを特徴とする。
また、第1設定値を複数種類から選択する目標値設定装置を付加してもよい。
この場合、空間領域内における人数を計数する人計数装置を付加し、目標値設定装置において、人計数装置により計数された人数により第1設定値を選択する構成を採用することができる。
あるいはまた、空間領域内に存在する人から当該空間領域の気温の増減に対する要望を受け付ける要望入力部を付加し、目標値設定装置において、要望入力部からの要望に基づいて第1設定値を選択する構成を採用することができる。
さらに、空間領域に複数系統の空調装置を配置し、制御装置において、少なくとも一部の系統の空調装置に対する第1設定値を他の系統の空調装置に対する第1設定値とは異ならせて設定可能としてもよい。
本発明の構成によれば、冷房運転によって気温を調整する空調装置を備えた空間領域において、冷蔵装置が配置されている場合には規定した許容温度範囲の下限温度に基づいて設定した第1設定値を目標温度に用い、冷蔵装置が配置されていない場合には許容温度範囲の上限温度に基づいて設定した第2設定値を目標温度に用いるから、冷蔵装置の有無を指定するだけで、需要電力を低減する方向に目標温度を設定することが可能になる。すなわち、冷蔵装置が存在しないときには、空調装置の目標温度を比較的高く設定することにより、空調装置による需要電力の増加を抑制し、一方、冷蔵装置が存在するときには、空調装置の目標温度を比較的低く設定することにより、空調装置と冷蔵装置とを合わせた合計の需要電力の増加を抑制することができる。このことから、利用者が入力装置を用いて冷蔵装置の有無を入力するだけで、需要電力の増加が抑制される適正な目標温度で空調装置を運転することが可能になる。
また、入力装置において空調装置と冷蔵装置との定格電力を入力して冷蔵装置の有無を制御装置に通知する構成を採用しているから、空調装置と冷蔵装置とを併用している場合であっても合計の需要電力に占める冷蔵装置の割合が小さいときには、合計の需要電力が空調装置の需要電力に従うことがあるが、このような場合でも、需要電力を低減させるように空調装置の目標温度を管理することができる。
さらに、許容温度範囲を快適温度範囲としているから、空調装置により気温が調整されている空間領域に存在する人の快適性を損なわないように、空調装置の目標温度を動的に設定することができる。
加えて、冷蔵装置の存在が通知されているときに、外気温センサで検出される気温が規定値より低いと空間領域について規定した許容温度範囲の下限温度に基づいて設定した第1設定値を目標温度に用い、外気温センサで検出される気温が規定値以上に上昇すると当該第1設定値よりも所定温度だけ引き下げた温度を目標温度に用いるから、外気温センサで検出される気温が規定値より上昇したときにも、温度センサで気温を検出している空間領域との境界付近での気温上昇を抑制することができ、当該空間領域に存在する人の快適性を損なうことがない。また、気温の高い場所から冷房中の空間領域に人が移動したときに、人の周囲温度を大きく引き下げることにより人の体表の温度を短時間で引き下げることができ、結果的に快適性がより向上することになる。
目標値設定装置において第1設定値を複数種類から選択すれば、空間領域での活動量が大きい人(食品スーパーでは顧客など)が相対的に多い状況と、空間領域での活動量が少ない人(食品スーパーではレジ打ちの従業員など)が相対的に多い状況とに合わせて空調装置の目標温度を設定することができるから、それぞれの状況において人の快適性を維持することができる。
たとえば、食品スーパーにおいて顧客が多いときには発熱量が多くなるが、第1設定値を引き下げることにより空間領域の気温の上昇を抑制して顧客の快適性を維持することができ、一方、顧客が少ないときには、第1設定値を引き上げることによりレジ打ちの従業員などにとって冷房が過剰になることを防止して、従業員の快適性を維持することができる。
また、空間領域内における人数を計数し、人数に応じて第1設定値を選択するようにすれば、空間領域で活動量の大きい人の人数を見積もることができ、人数に応じて第1設定値を選択することができるから、空間領域の目標温度を動的に調整することができる。
また、人の要望を第1設定値に反映させる構成では、快適性の満足度を維持しながらも省エネルギーを実現することができる。
複数系統の空調装置を配置し、少なくとも一部の系統の空調装置に対する第1設定値を他の系統の空調装置に対する第1設定値とは異ならせる構成では、各系統の空調装置と冷蔵装置との距離に応じて第1設定値を調節することが可能になり、結果的に省エネルギーを実現することと快適性を維持することとを両立することが可能になる。
実施形態を示すブロック図である。 同上の配置図である。 同上の原理説明図である。 同上の原理説明図である。 実施形態1を示す動作説明図である。 実施形態2を示す動作説明図である。 実施形態3を示す動作説明図である。
(実施形態1)
以下に説明する実施形態では、図2に示すように、空調装置(室内空調設備)1と冷蔵装置(冷凍・冷蔵設備)2とを備える食品スーパーを空間領域として想定するが、空調装置1と冷蔵装置2とによる需要電力が生じる他の空間領域に本発明の技術思想を適用することを妨げるものではない。
図2に示す例では、着目する空間領域である店舗内において、天井の複数箇所に空調装置1の吹出口3が設けられ、壁面に沿ってオープン型の冷蔵装置2が配置されているものとする。また、出入口付近にはレジカウンタ4が設けられ、レジカウンタ4の近傍にはカート置場5が設けられている。
さらに、店舗内の複数箇所に気温を検出する温度センサ6が配置され、店舗の外の気温を検出する外気温センサ7が配置される。加えて、カート置場5の近傍には、カード読取装置を備えた要望入力装置8(後述する)も配置される。上述した配置は一例であって、本発明の技術思想は、空調装置1や冷蔵装置2などの配置にかかわらず各種の空間領域において適用可能である。
空調装置1および冷蔵装置2の運転状態は、図1に示すように、制御装置10により制御される。図示例では、複数系統の空調装置1を設けているが、空調装置1は1系統であってもよい。また、空調装置1が1系統のみであっても複数個の吹出口にそれぞれ通過流量を調節することができるダンパを設けている場合には、複数系統の空調装置1と同様に扱うことが可能である。また、冷蔵装置2は1系統のみ記載しているが、複数系統であってもよい。
冷蔵装置2は、食品の品質低下が生じないように、通年に亘ってほぼ設定温度を維持するように出力が制御される。複数系統の冷蔵装置2を設けているときには、個々の冷蔵装置2で設定温度を異ならせることができる。一方、空調装置1は、店舗内の温度が制御装置10に設定された目標温度を保つように出力が制御される。図示例のように複数系統の空調装置1を設けている場合には、空調装置1の近傍部位ごとに仮想的に空間領域を規定し、各空間領域ごとの気温を温度センサ6で検出してもよい。
以下では、主として空調装置1の目標温度を設定する技術について説明する。本発明では、空調装置1により店舗内の気温を調整したときに、空調装置1と冷凍装置2との需要電力に、図3に示す関係が得られる点に着目している。
すなわち、空調装置1の冷房運転の際には、図3(a)に示すように、空調装置1により気温を低下させるほど需要電力が増加し(特性イ)、一方、冷凍装置2の需要電力は周囲温度が低下するほど低減する(特性ロ)。この傾向は経験に照らしても容易に理解できる。
さらに、複数の実店舗において検出した結果、気温に対して空調装置1の需要電力が減少する際の傾きの絶対値と、気温に対して冷凍装置2の需要電力が増加する際の傾きの絶対値とでは、後者のほうが大きく、結果的に合計の需要電力は、気温に対して増加する(特性ハ)ことが判明した。すなわち、通常の冷房運転の際に空調装置1で調整される気温の範囲であって、かつ冷凍装置2が所要の温度を保つ状態においては、空調装置1により気温を低下させるほうが需要電力が低下するという知見が得られた。本発明は、図3(a)における特性ハを利用するものである。
なお、空調装置1の暖房運転の際には、図3(b)に示すように、空調装置1により気温を上昇させるほど需要電力が増加し(特性イ)、冷凍装置2の需要電力についても周囲温度が上昇するほど増加する(特性ロ)。したがって、当然ながら、空調装置1と冷凍装置2との需要電力の合計は、空調装置1により気温を上昇させるほど需要電力が増加する(特性ハ)。
ところで、店舗内の気温に関する許容温度範囲は、店舗により異なるが、多くの場合には顧客の快適性を考慮して設定されている。たとえば、図4に示すように、店舗内の気温に対する顧客の快適性の程度を表す快適性曲線ニを求めると、快適と不快との境界線Lbを定めることにより、快適である温度範囲Dθを定めることができる。このような温度範囲Dθを許容温度範囲に設定すれば、店舗の気温を顧客が快適である温度範囲に保つことが可能になる。
図4において、特性ハは図3の特性ハと同様に空調装置1と冷蔵装置2との合計の需要電力を表し、図4(a)は空調装置1の冷房運転での特性を表し、図4(b)は空調装置1の暖房運転での特性を表している。許容温度範囲Dθは、空調装置1の冷房運転時には、たとえば24〜29℃に設定され、空調装置1の暖房運転時には、たとえば17〜23℃に設定される。
許容温度範囲Dθは、制御装置10に対してあらかじめ設定してある。許容温度範囲Dθの設定のために制御装置10には、温度範囲入力部21が付設されている。温度範囲入力部21は、利用者が操作して許容温度範囲Dθを所望温度に設定することが可能であるが、通常は施工時において自動または手動で設定される。また、許容温度範囲Dθが設定されると、許容温度範囲Dθの下限温度と上限温度とに基づいて、それぞれ空調装置1により冷暖房を行う際の目標温度としての第1設定値と第2設定値とが算出される。
許容温度範囲Dθは、経験的に定めることが可能であるが、食品スーパーのような空間領域では、当該空間領域に存在している人の快適性に考慮する必要があるから、快適性を評価する評価指標に基づいて規定される快適温度範囲を許容温度範囲Dθに用いるのが望ましい。この種の評価指数としては、温熱環境評価指数(PMV=Predicted Mean Vote)を用いることができる。PMVは、気温(室温)、平均放射温度、相対湿度、平均風速、着衣量、作業量の6個のパラメータを用いて−3〜+3の7段階で評価される値であり、人が滞在する空間領域の温熱環境では、PMVを±0.5の範囲内とすることが推奨されている。
そこで、PMVが−0.5になる温度を下限温度とし、PMVが+0.5になる温度を上限温度とするように許容温度範囲Dθを設定すれば、許容温度範囲Dθを快適温度範囲とすることができる。なお、PMVの値は適宜に選択することが可能であり、たとえば下限温度は、PMVが−0.5〜−0.3となる範囲で設定すればよい。PMVを求める処理を自動化すれば、空調装置1により気温が調整されている空間領域に存在する人の快適性を損なわないように、空調装置1の目標温度を自動かつ動的に設定することが可能になる。
上述したようにPMVは、気温だけではなく、着衣量をパラメータに含んでいるから、店舗内を撮像するTVカメラの画像から適宜人数の顧客を抽出するとともに、撮像した画像に基づいて着衣量を算出し(単位はclo)、着衣量をPMVの算出に用いることによって、着衣量を許容温度範囲Dθに反映させるようにしてもよい。
着衣量は、画像から求める以外に、店舗内の空間領域における滞在者(顧客および従業員)に、着衣を申告させることによって求めてもよい。申告に際しては、上述したカート置場5の近傍に配置してある要望入力装置8を用いればよい。要望入力装置8は、カード読取装置を備えており、店舗における会員証や従業員証などのカード(磁気カードあるいはICカード)で認証を行うことにより操作が可能になるようにしてある。これは、子供などのいたずらによる操作を防止するためである。また、たとえば各人(各カード)ごとに1日に1回だけ操作が許容されるようにしてある。
まず、基本的な動作を説明するために、許容温度範囲Dθの下限温度と上限温度とをそれぞれ第1設定値と第2設定値とに用いる場合を例とする。制御装置10には、空調装置1により気温を調整する空間領域(着目する空間領域)における冷蔵装置2の有無を通知する入力装置22が付設されており、制御装置10では、入力装置22からの通知される冷蔵装置2の有無に応じて空調装置1の目標温度を設定する。入力装置22は、通常は、利用者または施工者が操作することにより、制御装置10に対して冷蔵装置2の有無を通知する。
上述したように、空調装置1の冷房運転時には、空調装置1により気温を調整する空間領域に冷蔵装置2が存在しなければ空調装置1の目標温度を高く設定するほうが需要電力が低減されるが、冷蔵装置2が存在していれば空調装置1の目標温度を低く設定するほうが需要電力が低減される。
そこで、本実施形態では、制御装置10に目標温度選択部11を設けてあり、目標温度選択部11では、空調装置1の冷房運転時において、着目する空間領域に冷蔵装置2が存在することが入力装置22により通知されると、空調装置1の目標温度として許容温度範囲Dθの下限温度である第1設定値を選択し、冷蔵装置2が存在しないことが通知されると、目標温度として許容温度範囲Dθの上限温度である第2設定値を選択する。なお、空調装置1の冷房運転と暖房運転とは、制御装置10に付設した運転切換入力部23を利用者が操作することにより選択する。
制御装置10において入力装置22からの通知により目標温度が決まると、制御装置10では図5に示す手順で空調装置1を制御する。図5では冷房運転時だけではなく暖房運転時の動作も示している。また、図5においては、空調装置1の動作について、運転から停止への移行を「ブレーキ」、運転ないし停止を維持することを「キープ」、停止から運転への移行を「ブレーキ解除」と記載している。
ところで、着目する空間領域の気温は温度センサ6により検出されており、温度センサ6により検出された温度に基づいて空調装置1の出力が制御されるから、空調装置1の出力の変化が温度センサ6で検出される温度に反映されるまでには応答の遅れがある。
そこで、空調装置1では、第1設定値と第2設定値とに対してそれぞれ適宜温度幅(たとえば、1℃)の調節幅Δθを設定してある。すなわち、第1設定値θ1に対しては、空間領域の気温がθ1〜θ1+Δθの範囲に保たれるように、空調装置1の出力を制御しており、第2設定値θ2に対しては、空間領域の気温がθ2〜θ2−Δθの範囲に保たれるように、空調装置1の出力を制御している。このように調整幅Δθを持たせることによって、空調装置1の動作にチャタリングが生じるのを防止することができる。なお、第1設定値θ1に対する調節幅Δθと、第2設定値θ2に対する調節幅Δθとは異なっていてもよい。
図5に示す動作では、まず温度センサ6から着目する空間領域の気温を取り込むとともに(S1)、さらに運転切換入力部23により冷房運転と暖房運転とのどちらが選択されているかを判断している(S2)。本実施形態のように、複数系統の空調装置1を設けている場合には、各系統の空調装置1により気温を調整する空間領域ごとに温度センサ6で気温を検出する。ただし、1系統の空調装置1のみを設けている場合には、複数箇所の温度センサ6で検出した気温に基づいて代表の温度を算出してもよい。代表の温度には、平均値や加重平均値を用いる。
暖房運転の際には(S2:暖房)、ステップS1において温度センサ6により検出した検出温度Tsが、許容温度範囲Dθの下限温度に基づいて設定した第1設定値θ1に対して温度幅Δθの範囲内に維持されるように空調装置1の出力を制御する(S3〜S6)。具体的には、検出温度Tsが第1設定値θ1と第1設定値θ1に調整幅Δθを加算した値との間の範囲であれば(θ1≦Ts≦θ1+Δθ)、空調装置1の出力を維持し(S4)、検出温度Tsが第1設定値θ1に調整幅Δθを加算した値よりも高いときには(Ts>θ1+Δθ)、空調装置1を停止し(S5)、さらに検出温度Tsが第1設定値θ1よりも低いときには(Ts<θ1)、空調装置1の運転を行うか、空調装置1の出力を増加させる(S6)。
一方、冷房運転の際には(S2:冷房)、入力装置22から通知された冷蔵装置2の有無を確認し(S7)、冷蔵装置2が存在しているときには(S7:有)、第1設定値θ1を目標温度の設定値θ0に用い(S8)、冷蔵装置2が存在していないときには(S7:無)、第2設定値θ2から調整幅Δθを減算した値を目標温度の設定値θ0に用いる(S9)。目標温度の設定値θ0を決めた後には、暖房運転の際と同様に、検出温度Tsが設定値θ0に対して温度幅Δθの範囲内に維持されるように空調装置1の出力を制御する(S4、S10〜S12)。
すなわち、検出温度Tsが設定値θ0と設定値θ0に調整幅Δθを加算した値との間の範囲であれば(θ0≦Ts≦θ0+Δθ)、空調装置1の出力を維持する(S4)。また、検出温度Tsが設定値θ0に調整幅Δθを加算した値よりも高いときには(Ts>θ0+Δθ)、空調装置1の運転を行うか、空調装置1の出力を増加させ(S11)、さらに検出温度Tsが設定値θ0よりも低いときには(Ts<θ0)、空調装置1を停止する(S12)。
上述したように、冷蔵装置2の有無を入力装置22から制御装置10に通知すれば、利用者は空調装置1と冷蔵装置2との需要電力の関係を考慮した設定を行わなくとも、需要電力を低減させるように空調装置1の目標温度を自動的に設定することが可能になる。すなわち、空調装置1により気温を調整する空間領域に冷蔵装置2が存在しないときには、空調装置1の目標温度を比較的高く設定することにより、空調装置1による需要電力の増加を抑制することができ、また、空調装置1により気温を調整する空間領域に冷蔵装置2が存在するときには、空調装置1の目標温度を比較的低く設定することにより、空調装置1と冷蔵装置2とを合わせた合計の需要電力の増加を抑制することができる。
ところで、図3について説明したように、実店舗において実測した結果では、空調装置1の需要電力の傾きの絶対値よりも冷蔵装置2の需要電力の傾きのほうが大きくなっているが、冷蔵装置2の需要電力が小さい場合には、空調装置1と冷蔵装置2との合計の需要電力に対して冷蔵装置2の有無が大きな影響を与えない場合もある。
したがって、入力装置22において、空調装置1と冷蔵装置2との定格電力をそれぞれ入力する機能を付加し、両定格電力を比較し、空調装置1の定格電力に対して冷蔵装置2の定格電力の割合が規定値よりも小さいときには、冷蔵装置2が存在していても冷蔵装置2がない場合と同様の扱いで制御装置10に通知する構成を採用するのが望ましい。
上述したように、冷蔵装置2が存在していても合計の需要電力の大部分を空調装置1が占めている場合には、空調装置1の目標温度を比較的高い温度に設定したほうが、全体の需要電力が低減されることがある。したがって、空調装置1と冷蔵装置2との定格電力をそれぞれ入力可能とし、両者を比較する機能を設けておくことにより、空調装置1の目標温度を許容温度範囲Dθの上限温度と下限温度とのどちらに基づいて設定するのが望ましいかを選択することが可能になる。その結果、需要電力を確実に低減させることが可能になる。
本実施形態では、複数系統の空調装置1を店舗内に設けているから、少なくとも一部の系統の空調装置1に対する目標温度を他の系統の空調装置1に対する目標温度とは異ならせて設定してもよい。たとえば、野菜用、飲料用、冷凍食品用などの用途別に複数台の冷蔵装置2が設けられ、各冷蔵装置2の設定温度が異なる場合、設定温度の低い冷蔵装置2が配置されている空間領域の気温を調整する空調装置1の目標温度を、設定温度の高い冷蔵装置2の近傍の空調装置1の目標温度よりも低く設定することができる。このように目標温度の管理を行うことによって、冷凍食品を収納した冷蔵装置2の近傍付近でのみ顧客の快適性をやや犠牲にしながらも総合的な需要電力の低減が可能になる。
また、一般的な食品スーパーでは、店舗の出入口側にレジカウンタ4が設けられ、店舗の奥側に生肉、鮮魚、冷凍食品などの冷蔵装置2が配置されていることが多い。したがって、上述のように冷蔵装置2の近傍では空調装置1の目標温度を相対的に低く設定し、その一方で、レジカウンタ4の近傍では従業員が冷えすぎないように空調装置1の目標温度を相対的に高く設定することで、従業員の快適性の維持と食品の品質維持とを可能にしながらも需要電力の増加を抑制することができる。
(実施形態2)
実施形態1の構成では、店舗外の外気温を考慮していないが、夏期のように外気温が高くなると、冷蔵装置2の熱交換器の効率が低下するから、外気温が高いほど冷蔵装置2の需要電力が増加することになる。一方、顧客は外気温が高いほど店舗内では低い気温を好む傾向があることが知られている。
本実施形態では、上述の点に鑑み、制御装置10において、空調装置1が冷房運転であるときに、外気温センサ7(図1参照)により検出された外気温を監視し、外気温が規定値以上に上昇すると、第1設定値θ1を引き下げるようにしてある。つまり、目標温度の設定値θ0が引き下げられることになる。外気温センサ7により検出される外気温と比較する規定値は、複数段階に設定してもよく、この場合、第1設定値θ1(つまり、設定値θ0)を複数段階で設定することになる。なお、冷蔵装置2が存在しない場合には、外気温センサ7の出力は利用せず、第2設定値θ2に基づく目標温度の設定値θ0は変更されない。
したがって、本実施形態では、図6に示すように、空調装置1の冷房運転時において(S2:冷房)、冷蔵装置2が存在するときに(S7:YES)、図5に示したステップS8に代えて、外気温センサ7で検出した気温(検出温度To)を取り込む処理(S8a)と、検出温度Toを規定値と比較する処理(S8b)と、ステップS8bにおいて検出温度Toが規定値以上であるときに(S8b:YES)目標温度の設定値θ0を第1設定値θ1よりも所定温度αだけ引き下げる処理(S8c)と、ステップS8bにおいて検出温度Toが規定値より低いときに(S8b:NO)目標温度の設定値θ0として第1設定値θ1を用いる処理(S8d)とを設けている。ステップS8dは、図5に示したステップS8と同じ処理になる。また、ステップS8cにおいては、設定値θ0だけではなく調整幅Δθも併せて変更してもよい。
外気温センサ7による検出温度Toを利用し、外気温が上昇したときに、空調装置1の目標温度を引き下げる点を除いては、本実施形態の構成および動作は実施形態1と同様である。
本実施形態の構成を採用することにより、空調装置1と冷蔵装置2とを併用する場合の合計の需要電力を低減することができるほか、温度センサ6により気温を検出している空間領域(つまり、店舗内)と店舗外との境界付近での気温上昇を抑制することができ、店舗内に存在する人の快適性を損なわないように、店舗内の気温を調整することができる。
ところで、本実施形態では、外気温センサ7を設けることにより外気温を検出しているが、外気温センサ7による検出温度が店舗内の気温に反映されるまでには時間遅れがあるから、外気温の変化を予測して空調装置1の出力を制御するほうが快適性がより向上すると言える。
そこで、月日の計時を行う年間タイマを設け、年間の平均気温に関する気温データとともに用いて目標温度の設定値θ0を調節するようにしてもよい。この構成では、夏期のように外気温が高いと予測できる期間には、設定値θ0をあらかじめ引き下げてくことで、時間遅れのない制御が可能になり、しかも外気温センサ7を用いずに制御することにより安価に高い信頼性を得ることが可能になる。また、外気温センサ7を併用すれば、空調装置1の出力をより適正に制御して需要電力を低減させながらも快適性を維持することができる。
上述の例では月日を計時する年間タイマを用いているが、日時を計時する時刻タイマも併用することにより、1日の外気温の変化についても季節による外気温の変化と同様に扱うことが可能になる。すなわち、空調装置1の出力をより細かく制御することが可能になり、快適性と需要電力の低減とを両立することができる。
外気温センサ7を用いる場合においては、検出温度Toの変化傾向を求めることによって、規定値未満の状態から規定値以上になるか、あるいは規定値以上の状態から規定値未満になるかを予測することができるから、予測結果に応じて空調装置1の出力変化が店舗内の気温の変化に反映されるまでの時間分だけ早く、空調装置1の出力を制御するようにしてもよい。
この構成では、外気温の温度変化を予測して空調装置1の出力制御を早めに行うことによって、外気温の変化に対する時間遅れのない制御が可能になり、結果的に店舗内の気温変化の時間遅れに伴う需要電力の損失が発生せず、電力損失を低減することになる。この場合、年間タイマや時刻タイマと併用することにより、予測の精度を高めることが可能になる。
本実施形態では、外気温センサ7により検出される外気温を考慮して空調装置1の目標温度を設定する例を示したが、一般に人の快適性は気温だけではなく相対湿度によっても変化することが知られているから、屋外の湿度を検出して空調装置1の目標温度に反映させる制御を行ってもよい。
すなわち、梅雨時のように高温で高湿度であるときには、顧客はより低い室温を好む傾向があるので、冷房運転時における空調装置1の目標温度を相対的に低温側に設定する。また、冬期の雨天のように低温で高湿度であるときには、衣服や肌に付着した水滴の蒸散で寒さを感じやすいことから、顧客はより高い室温を好む傾向があると考えられる。このような場合には、需要電力はやや犠牲になるものの快適性を重視して暖房運転時における空調装置1の目標温度を相対的に高温側に設定する。なお、屋外の湿度を検出する手段には、湿度センサを用いるほか屋外の雨量を検出する雨量検出手段で代用することも可能である。
(実施形態3)
実施形態2では、空調装置1の冷房運転の際に、第1設定値θ1に基づく目標温度の設定値θ0を外気温に応じて複数段階に変化させる例を示したが、本実施形態では、複数段階の第1設定値θ1を用意しておき、制御装置10に付設した目標値設定装置24により第1設定値θ1を選択する構成を採用している。
すなわち、制御装置10には複数段階の第1設定値θ11,θ12……が用意されており、図7に示すように、目標値設定装置24から条件が入力されたときに(S8e)、当該条件に応じて(S8f)、いずれかの第1設定値θ11,θ12……が選択されるようにしてある。選択された第1設定値θ11,θ12……は、目標温度の設定値θ0として用いられる(S8g)。要するに、図5に示した実施形態1のステップS8に代えて、上述したステップS8e〜S8gの処理を行うのである。
目標値設定装置24は、利用者が入力操作を行うように構成している。目標値設定装置24は、基本的には、店舗内に存在する人の活動量に応じて操作されることになる。たとえば、顧客の多い状況では総合的な活動量が大きく、人体から発生する熱量も多いから、空調装置1による冷房能力を高める必要があるのに対して、顧客が少ない状況で従業員が相対的に多い状況では、レジ打ちの従業員のように活動量の少ない人にとって冷えすぎによる不快感を生じる可能性がある。
そこで、顧客および従業員から快適性のヒアリングを行うか、顧客数を見積もることにより、目標値設定装置24を操作し、店舗内の人の快適性を維持できるように、第1設定値θ11,θ12……を調節するのである。
目標値設定装置24を設けることによって、経験的に目標温度を設定したり、PMVのような快適性の評価指標を用いて目標温度を設定したりする場合に比較して、店舗内の人の状況に応じた目標温度の設定が可能になり、店舗内の人にとって快適な目標温度の設定が容易になる。
上述したように、本実施形態では、店舗内において顧客よりも長時間に亘って滞在する従業員の快適性・作業性・労働生産性などを重視して空調装置1の目標温度を設定することが可能であり、また、特売セ−ル時のように販売売り上げの向上を期待したい場合は、顧客の快適性・回遊性を優先するように空調装置1の目標温度を設定することが可能である。
ところで、目標値設定装置24として、上述のように入力操作の必要なものでは、店舗内の状況を人が判断することになるから、目標値設定装置24の操作を経験に基づいて行うことになる。この場合、目標値設定装置24を操作する利用者の判断によっては、店舗内の人の快適性を損なう場合も生じる。そこで、目標値設定装置24による第1設定値θ11,θ12……の選択条件を利用者の主観によらない客観的な事象に基づいて設定する技術について以下に説明する。
上述したように、目標値設定装置24により第1設定値θ11,θ12……の変更を指示するのは、基本的には店舗内の人の快適性を保つためであり、快適性に関するヒアリングの結果と目標値設定装置24による第1設定値θ11,θ12……の選択とを連携させるか、あるいは、店舗内の顧客数と目標値設定装置24による第1設定値θ11,θ12……の選択とを連携させればよいと言える。
前者としては、カート置場5に設けた要望入力装置8に快適性を申告させる機能を持たせる構成を採用することができる。要望入力装置8には、上述したように、操作者の認証を行うカード読取装置と、「寒い」「快適」「暑い」、「不快」「なんとか許容できる」「快適」などの選択操作が可能な入力釦とを設けておき、認証された人だけが選択操作を行えるようにしておく。カート置場5だけではなく、店舗内の複数箇所にこの種の要望入力装置8を配置することが可能である。
このような要望入力装置8を目標値設定装置24に付設すると、目標値設定装置24では、要望入力装置8からの申告を集計し、集計結果に基づいて第1設定値θ11,θ12……を自動的に選択することが可能になる。すなわち、要望入力装置8から入力された要望を一定時間(30分間、1時間など)ごとに集計し、快適性が向上する方向の第1目標値θ11,θ12……を選択するのである。
この場合、要望を集計して第1目標値θ11,θ12……を次に選択するまでの期間は、同じ目標温度に維持される。また、要望を集計した結果を空調装置1の目標温度に反映させているから、店舗内の比較的多くの人にとって快適である目標温度を設定することができ、顧客満足度が高くなる。
一方、店舗内の顧客の人数により第1目標値θ11,θ12……を選択する場合には、目標値設定装置24に店舗内の人数を計数する人計数装置9を付設する。人計数装置9は、店舗の出入口に設けておけばよく、たとえば、天井に配置したTVカメラの画像を用いて出入口を通過する人を検出し、移動方向を判別することによって出入口を通過した人数を計数するものを用いる。
通常、従業員は出入口を通過しないから、出入口を通過した人数を計数することにより店舗内の顧客数を把握することができ、従業員数は時間帯に応じてほぼ把握されているから、人計数装置9により計数される顧客数に基づいて、店舗内の従業員数と顧客数とを知ることが可能になる。このように従業員数(活動量の少ない人)と顧客数(活動量の多い人)との人数がわかれば、目標値設定装置24において、第1目標値θ11,θ12……を自動的に選択することができる。なお、人数と第1目標値θ11,θ12……との関係は、店舗ごとに異なるから別途に設定することになる。
上述の例では、目標値設定装置24に、要望入力装置8と人計数装置9とのいずれかヲ付設する例を示したが、顧客や従業員の着衣量を評価する手段(TVカメラにより撮像した画像の特徴から着衣量を推定する手段やサーモグラフィにより検出した温度分布などから着衣量を推定する手段など)や活動量を検出する手段(移動を追跡し移動速度と移動距離とから活動量を推定する手段など)を設けてもよい。
また、第1目標値θ11,θ12……を選択するにあたっては、顧客に対応する目標温度と従業員に対する目標温度とをそれぞれ求め、両目標温度の平均値や加重平均値に近い値を選択すべき第1目標値θ11,θ12……とすればよい。本実施形態の他の構成および動作は実施形態1、2と同様である。
1 空調装置
2 冷蔵装置
6 温度センサ
7 外気温センサ
8 要望入力部
9 人計数装置
10 制御装置
22 入力装置
24 目標値設定装置
θ1 第1設定値
Dθ 許容温度範囲
θ2 第2設定値

Claims (5)

  1. 着目する空間領域の温度を検出する温度センサと、
    冷房運転により前記空間領域の気温を調整する空調装置と、
    前記空間領域の目標温度を設定し前記温度センサにより検出される前記空間領域の温度を設定された目標温度に一致させる方向に前記空調装置を制御する制御装置と、
    前記空調装置の定格電力と冷蔵装置の定格電力との入力が可能であって、前記空調装置の定格電力に対して前記冷蔵装置の定格電力の割合が既定値よりも小さいときには、前記空間領域に冷蔵装置がないものとして前記制御装置に通知する入力装置と、
    前記空間領域の外部の気温を検出する外気温センサとを備え、
    前記制御装置は、
    快適性を評価する評価指標に基づいて規定される快適温度範囲を許容温度範囲として、
    前記入力装置により前記空間領域における前記冷蔵装置の存在が通知されているときに、前記外気温センサにより検出される気温が規定値より低いと前記空間領域について規定した前記許容温度範囲の下限温度に基づいて設定した第1設定値を目標温度に用い、前記外気温センサにより検出される気温が規定値以上に上昇すると当該第1設定値よりも所定温度だけ引き下げた温度を目標温度に用い、
    前記入力装置により前記空間領域における前記冷蔵装置の非存在が通知されていると、前記空間領域について規定した前記許容温度範囲の上限温度に基づいて設定した第2設定値を目標温度に用いる
    ことを特徴とする空調システム。
  2. 前記第1設定値を複数種類から選択する目標値設定装置が付加されていることを特徴とする請求項1記載の空調システム。
  3. 前記空間領域内における人数を計数する人計数装置が付加され、前記目標値設定装置は、人計数装置により計数された人数により前記第1設定値を選択することを特徴とする請求項2記載の空調システム。
  4. 前記空間領域内に存在する人から当該空間領域の気温の増減に対する要望を受け付ける要望入力部が付加され、前記目標値設定装置は、要望入力部からの要望に基づいて前記第1設定値を選択することを特徴とする請求項2記載の空調システム。
  5. 前記空間領域に前記空調装置が複数系統が配置され、前記制御装置は、少なくとも一部の系統の空調装置に対する前記第1設定値を他の系統の空調装置に対する第1設定値とは異ならせて設定可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の空調システム。
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