本発明の第1の形態は、植物を収納し内部に収容された空気に植物から放出されたイオンを含有せしめることができる植物容器と、内壁に対向電極が具備され周囲の大気から取り込んだ空気を収容することができる第1電離箱と、第1電離箱内に収容され磁気浮上する第1電極と、第1電極を帯電させるための第1静電帯電器と、第1電極に帯電している電荷を測定するための第1非接触電荷読取部とを具備し、第1電極と第1電離箱の対向電極との間の電界により第1電離箱内に含まれるバックグラウンドの電荷を第1電極に収集する第1磁気浮上電極電離箱と、第1電離箱と同一容量で内壁に対向電極が具備され植物から放出されたイオンを含有する空気を収容できる第2電離箱と、第1電極と共通の構成を有し第2電離箱内に収容されて磁気浮上する第2電極と、第2電極を正に帯電させるための第2静電帯電器と、第2電極に帯電している電荷を測定するための第2非接触電荷読取部とを具備し、第2電極と第2電離箱の対向電極との間の電界により植物容器内で植物から放出された負の電荷とバックグラウンドの電荷を第2電極に収集する第2磁気浮上電極電離箱と、第1電離箱と同一容量で内壁に対向電極が具備され植物から放出されたイオンを含有する空気を収容できる第3電離箱と、第1電極と共通の構成を有し第3電離箱内に収容されて磁気浮上する第3電極と、第3電極を負に帯電させるための第3静電帯電器と、第3電極に帯電している電荷を測定するための第3非接触電荷読取部とを具備し、第3電極と第3電離箱の対向電極との間の電界により植物容器内で植物から放出された正の電荷とバックグラウンドの電荷を第2電極に収集する第3磁気浮上電極電離箱と、第2電極と第1電極で測定した電荷量の差に基づいて植物から放出された負のイオンの電荷を測定するとともに、第3電極と第1電極で測定した電荷量の差に基づいて植物から放出された正のイオンの電荷を測定する測定部と、を備えたことを特徴とする植物イオン電荷測定装置である。この構成によって、植物の環境応答による生理現象を非破壊的にかつリアルタイムで知ることが可能で、光やストレス応答などの植物の生体メカニズムの解明や高機能植物の研究開発、さらには植物工場での生育制御研究などに寄与することができる。
本発明の第2の形態は、第1の形態に従属する形態であって、第1電離箱、第2電離箱及び第3電離箱の対向電極が導電性塗料の皮膜であることを特徴とする植物イオン電荷測定装置である。この構成によって、簡単な構成で電離箱内のイオンを電界によって電極に収集することができる。
本発明の第3の形態は、第1または第2の形態に従属する形態であって、第1電離箱、第2電離箱及び第3電離箱に空気を導入するエアー流入路の内周に導電性塗料の皮膜が形成されていることを特徴とする植物イオン電荷測定装置である。この構成によって、パイプ内でのイオンの再結合を防ぐことができる。
本発明の第4の形態は、同一容積の電離箱に磁気浮上する第1電極、第2電極及び第3電極がそれぞれ収容された第1磁気浮上電極電離箱、第2磁気浮上電極電離箱及び第3磁気浮上電極電離箱を設け、第1磁気浮上電極電離箱の電離箱には周囲の大気から取り込んだ空気を収容して対向電極と第1電極との電界により第1電極にバックグラウンドの電荷を収集し、第2磁気浮上電極電離箱の電離箱には植物容器内で植物から放出されたイオンを含有する空気を収容して対向電極と第2電極との電界により第2電極に植物から放出された負の電荷とバックグラウンドの電荷を収集し、第3磁気浮上電極電離箱の電離箱には植物容器内で植物から放出されたイオンを含有する空気を収容して対向電極と第3電極との電界により第3電極に植物から放出された正の電荷とバックグラウンドの電荷を収集し、第2電極と第1電極で測定した電荷量の差に基づいて植物から放出された負のイオンの電荷を測定するとともに、第3電極と第1電極で測定した電荷量の差に基づいて植物から放出された正のイオンの電荷を測定することを特徴とする植物イオン電荷測定方法である。この構成によって、植物の環境応答による生理現象を非破壊的にかつリアルタイムで知ることが可能で、光やストレス応答などの植物の生体メカニズムの解明や高機能植物の研究開発、さらには植物工場での生育制御研究などに寄与することができる。
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1における植物イオン電荷測定装置の全体構成について説明する。図1は本発明の実施の形態1における植物イオン電荷測定装置の全体構成図、図2は本発明の実施の形態1における植物イオン電荷測定装置の電離箱の説明図である。
本発明の植物イオン電荷測定装置は、図1のように磁気浮上電極電離箱1(MALIC_A),(MALIC_B),(MALIC_C)、植物を入れるコンテナ13(本発明の実施の形態1の植物容器)、エアー流入装置16、さらに制御演算部11(コンピュータ)とから構成されている。磁気浮上電極電離箱1(MALIC_A)はバックグラウンド電流(電荷)を検出して参照するためのもので、基本的構成として、磁気浮上する電荷収集電極3aを内蔵する電離箱2とファラデーケージ5(非接触電荷読取部)とで構成されている。
また、磁気浮上電極電離箱1(MALIC_B)は実施の形態1では正の電荷検出用のもので、同じく磁気浮上する電荷収集電極3b(負電極)を内蔵する電離箱2とファラデーケージ5(非接触電荷読取部)とで構成される。
磁気浮上電極電離箱1(MALIC_C)は負の電荷検出用のもので、磁気浮上する電荷収集電極(正電極)を内蔵する電離箱とファラデーケージ5(非接触電荷読取部)とで構成される。
電荷収集電極3a,3bをポジティブ(以下、ポジティブを正ともいう)に帯電したときは、アースされた電離箱2の内壁の皮膜14は、静電誘導によりネガティブ(以下、ネガティブを負ともいう)になる。この皮膜14が、実施の形態1の対向電極(アース電極)である。また、電荷収集電極3a,3cを負に帯電したときは、アースされた電離箱2の内壁の皮膜14は、静電誘導により正になる。この皮膜14が対向電極(アース電極)となる。磁気浮上電極電離箱1(MALIC_C)でいえば、電離箱2内の空気中の電離電荷は、負の電荷が電荷収集電極3cに、正の電荷は内壁の皮膜14に収集される。磁気浮上電極電離箱1(MALIC_B)ではその逆が収集される。電荷収集電極3a,3b,3cの電荷は、リフト7を昇降してファラデーケージ5で読み取られ、エレクトロメータ10を経て制御演算部11で処理されてディスプレー16に表示される。ファラデーケージ5、エレクトロメータ10、制御演算部11が、本発明の実施の形態1の測定部に相当する。
ところで、このように磁気浮上電極電離箱1(MALIC_A),(MALIC_B),(MALIC_C)を磁気浮上させた理由を説明する。電荷収集電極3a,3b,3cの電荷を測定するに当たって、(1)電極をコンデンサのように一定時間電荷を帯電し、その差を非接触で測定する方法と、(2)電極の収集電荷を直流電流として導いて測定する方法の2種類の方法が考えられる。
しかし、電荷収集電極に掃引される正負の電荷は、空気中を移動する空間電荷であり、10−15A以下の電流であって、きわめて微弱な電流である。そして、電荷集電極3a,3b,3cに蓄えられた正または負の電荷を読み出すときに、エレクトロメータ10に繋がれた接点を、電荷収集電極3a,3b,3cに通電状態で接触させると、必ず不規則電荷が発生し、この大きさは無視できない。とりわけ微弱な電流の測定ではこの大きさは無視できなくなる。さらに、電荷収集電極3a,3b,3cを保持する絶縁体からは常に微小のリーク電流が流れる。
そのうえ、環境放射線を考えると、この放射線で生じる空気などの電離電流は10−15Aのレベルであるため、空間を移動する10−15A以下の微弱な空間電荷を測定することは、いかに高感度のエレクトロメータや増幅回路を使っても、本質的にバックグラウンドを含んでおり、このバックグラウンドのほかに上記不規則なノイズ、リークが加わるのではこれにより何の値を測定しているのか分からなくなる。言い換えれば(2)の方法で電荷収集電極の電流を測定することは困難である。
このため本発明の実施の形態1では基本的に(1)の方法に拠って電荷の測定を行う。ここで時間をt、静電容量をCとすると、電荷Q、電圧v(対向電極との電位差)、電流iとの間には、Q=Cv、dQ/dt=iのよく知られた関係がある。従って、実施の形態1においては、以下、電荷集電極の電荷Q、電荷の減少量ΔQ=Q1−Q2を測定する。しかし、これは電圧vを測定することとも言えるし、単位時間Δt当たりの電荷の減少(増加)量ΔQを使って、平均電流I(=ΔQ/Δt)を測定する、と言うこともできる。電荷、電圧、電流の何れで表現しても変わりがない。
本発明の実施の形態1の植物イオン電荷測定装置においては、植物から放出されたイオンを磁気浮上した電荷収集電極3a,3b,3cに掃引、収集し、この磁気浮上している電荷収集電極3a,3b,3cの電荷を、静電誘導の原理で、非接触でファラデーケージ5を用いて読み出している。この方法によれば、電荷収集電極3a,3b,3cを支える絶縁体が必要でなく、リーク電流は生じないし、非接触で電荷を読み出すために不規則電荷も発生することがない。これにより、上記(1)で説明した測定装置に由来する(接点を電極に接触させたときの不規則電荷や、リーク電流)ノイズの問題は解決できる。従って、イオンの電荷をそれぞれ10−17Aの微弱なレベルで定量的に直接測定する準備が整ったことになる。
しかし、この(1)による測定でも、空間電荷の弱い電流を環境放射線による電離電流のランダムなノイズの中で測定する困難は変わりがない。(2)と同様に、バックグラウンドの影響を受けることなく、微弱な電荷の変化量を定量的に測定するのは簡単なことではない。
そこで、本発明の実施の形態1では、次のような構成とした。磁気浮上電極電離箱1(MALIC_A)ではバックグラウンド電流または電荷を検出し、磁気浮上電極電離箱1(MALIC_B)では正のイオン電荷を測定し、磁気浮上電極電離箱1(MALIC_C)では負のイオン電荷を測定する。そして、磁気浮上電極電離箱1(MALIC_B)と磁気浮上電極電離箱1(MALIC_C)におけるバックグラウンド成分は、磁気浮上電極電離箱1(MALIC_A)のバックグラウンドの測定結果を参照し、これを演算処理によって除去するものである。
先ず、磁気浮上電極電離箱1(MALIC_A),(MALIC_B),(MALIC_C)の電離箱2について詳細に説明する。図1,2において、電離箱2はアクリル樹脂等で作られている。電離箱2は一端の天頂面が塞がれた円筒型のチャンバーであって、内部に導電性塗料が塗布されて皮膜14が形成されアースされている。実施の形態1では、電離箱2の電離体積は1Lが採用されている。この1Lの電離体積に設定するのが、側定上の精度が保て好適である。
3aは磁気浮上可能な電荷収集電極(本発明の実施の形態1の第1電極)で、磁気浮上電極電離箱1(MALIC_A)の電離箱2内で磁気浮上して、電離箱2内の気体が環境放射線(γ線など)によって電離して生じたバックグラウンド電流(電荷)を収集する。3bは磁気浮上可能な電荷収集電極(本発明の実施の形態1の第2電極)で、磁気浮上電極電離箱1(MALIC_B)の電離箱2内で磁気浮上して、実施の形態1では図1のように植物から放出された植物由来の正のイオンの電荷とバックグラウンド電流(正電荷)とを収集する。
3cは磁気浮上可能な電荷収集電極(本発明の実施の形態1の第3電極)で、磁気浮上電極電離箱1(MALIC_C)の電離箱2内で磁気浮上して、実施の形態1では図1のように植物から放出された植物由来の負のイオンの電荷とバックグラウンド電流(負の電荷)とを収集する。さらに、4は電磁石で、電荷収集電極3a,3b,3cは電磁石4の作用で空間に浮上する。なお、放射線で電離した空気の電荷は、正の電極の場合負の電荷が、負の電極の場合には正の電荷が掃引され、電荷収集電極3a,3b,3cの極性と皮膜14(対向電極)の極性を逆に交換しただけであるため、極性を正負何れかに固定してバックグラウンド電流(電荷)を測定すれば、磁気浮上電極電離箱1(MALIC_B),(MALIC_C)バックグラウンド電流(電荷)を1回の測定で測定できる。
5はファラデーケージ(非接触電荷読取部)であり、10はファラデーケージ5に接続したエレクトロメータである。図1では電圧が出力として選ばれているが、出力として電荷,電圧,平均電流の何れでも設定することができる。ファラデーケージ5を上昇して、電離箱2内にある電荷収集電極3a,3b,3cをファラデーケージ5の内電極に完全に挿入することによって、エレクトロメータ10は電荷収集電極3a,3b,3cの電荷を非接触で読み取ることができる。6はシャッターで、電離箱2の底面に設けられている。7はリフトで、ファラデーケージ5を昇降する。リフト7の昇降とシャッター6の開閉は連動している。8はギャップセンサで、電離箱2内の電荷収集電極3a,3b,3cの浮上位置を検出する。
ここで、ギャップセンサ8は、詳細に図示はしないが、発光素子とこの発光素子の発光を受光する受光素子とからなり、光ビーム(図1参照)の光量で電荷収集電極3a,3b,3cの位置を検出する。光の遮断があると光量が減り、遮断されないと光量が増加する。図1に示す2aは透明ガラス窓で、電離箱2の上部に向かい合って設けられていて、電離箱2内の気体と電離箱外の大気を遮断し、ギャップセンサ8の光ビームを透過させる。
さらに、9は浮上装置であって、電荷収集電極3a,3b,3cが遮るギャップセンサ8の光量の電気信号を受けて光量の変化を演算し、電磁石4の励磁力を調節して電荷収集電極3a,3b,3cを所定の目標位置に保持する。11は制御演算部(コンピュータ)である。エレクトロメータ10は入力側がファラデーケージ5に接続され、出力側は制御演算部11に接続される。電荷、電圧若しくは平均電流を指定することにより、エレクトロメータ10からは指定された出力値が制御演算部11に出力される。制御演算部11は図示しない記憶部からプログラムを読み込んで、機能実現手段としてシステムの制御手段と、測定値の演算処理手段として、これらの機能を実行する。すなわち制御演算部11はリフト7の作動を制御し、またエレクトロメータ10からの出力値の信号に基づいて演算処理してディスプレー16に表示を行い、データの保存を行う。
次に、図2の電離箱2の説明を行うと、円筒型のチャンバーである電離箱2の内壁には導電性塗料の皮膜14(対向電極)が形成されており、この電離箱2内には大気と同じ常温、常圧の空気が密閉され、この円筒チャンバーの中央の位置には上下して磁気浮上する電荷収集電極3a,3b,3cが配置される。この電荷収集電極3a,3b,3cには、静電帯電器12で正または負の電荷を、非接触で帯電させることができる。皮膜14と電荷収集電極3a,3b,3cとの間は絶縁される。
電荷収集電極3a,3b,3cは電離箱2内で磁気浮上させられ、静電帯電器12によって正または負に帯電される。磁気浮上電極電離箱1(MALIC_A)(MALIC_B),(MALIC_C)のそれぞれにおいて、このとき形成される電離箱2内の電界雰囲気の空間に、バックグラウンド測定のための空気、または植物由来のイオンを含む空気が、それぞれ、エアー流入装置16を介して流入されると、植物から放出されたイオンは正または負のイオンの電荷をもっているため、クーロン力により、電荷収集電極によって帯電した金属カバー15から電荷が引き離されて、金属カバー15と対置して置かれた逆極性の電荷収集電極3a,3b,3cに引き寄せられ、電荷収集電極に電荷が収集される。
このとき例えば電荷収集電極(正極)には正の電荷が帯電されており、この正の電荷は、収集されて移動してきたイオンの負の電荷によって減少する。また、電荷収集電極(負極)には負の電荷が帯電されており、この負の電荷は、収集されて移動してきたイオンの正の電荷によって減少する。従って、電荷集電極3a,3b,3cのイオン収集前とイオン収集後の電荷の差ΔQ=Q1−Q2を測定することによって、バックグラウンド電流(電荷)か、あるいは、バックグラウンド電流(電荷)と植物から放出された正または負のイオンの電荷量が測定可能になる。
ところで、電荷収集電極3aは、磁気浮上電極電離箱1(MALIC_A)の電離箱2内の空気が環境放射線により電離して生じたバックグラウンド電流(電荷)を測定するものである。これに対し、電荷収集電極3bは、磁気浮上電極電離箱1(MALIC_B)の電離箱2内に収容した植物由来の正イオンの電荷と空気の電離によるバックグラウンド電流(正電荷)を測定するためのものである。つまり電荷収集電極3bで収集されるのは植物由来の正の電荷とバックグラウンド電流(正電荷)の和である。また、電荷収集電極3cは、磁気浮上電極電離箱1(MALIC_C)の電離箱2内に収容した植物由来の負イオンの電荷と空気の電離によるバックグラウンド電流(負電荷)とを測定する。つまり電荷収集電極3cで収集されるのは植物由来の負の電荷とバックグラウンド電流(負電荷)の和である。
浮上装置9の制御により電磁石4が磁気浮上のために励磁されると、電荷収集電極3a,3b,3cはこの作用で空間に浮上する。環境放射線で正と負に電離した電荷は、電荷収集電極3aの極性を逆にしたときには、逆方向に電極に引き寄せられるだけであるから、電荷収集電極3aの極性を正負何れかに固定して電流(電荷)を測定することにより、電荷収集電極3b,3cにおけるノイズ成分であるバックグラウンド電流(電荷)は電荷収集電極3aで測定できる。
なお、大気中に十分近接して置かれた電離体積1L程度の3つの磁気浮上電極電離箱間では、それぞれに影響する環境放射線の強度はほとんど変わりがなく、差がないという事実を利用する。この事実によれば、磁気浮上電極電離箱1(MALIC_B)のバックグラウンド電流(電荷)と磁気浮上電極電離箱1(MALIC_C)の各バックグラウンド電流(電荷)は、磁気浮上電極電離箱1(MALIC_B)で測定されたバックグラウンド電流(電荷)と等しい。
そこで、実施の形態1では、磁気浮上電極電離箱1(MALIC_A)はバックグラウンドを測定する。磁気浮上電極電離箱(MALIC)Bの電極は、負(ネガティブ)に帯電され、電離箱2内の正(ポジティブ)の電荷を収集する。磁気浮上電極電離箱(MALIC)Cの電極は正に帯電され、負の電荷を収集する。そして、磁気浮上電極電離箱(MALIC)Bと磁気浮上電極電離箱(MALIC)Cの測定値から、磁気浮上電極電離箱(MALIC)Aのバックグラウンド電流(電荷)の値を引くことにより、共通のバックグラウンドのノイズ成分がキャンセルされ、磁気浮上電極電離箱(MALIC)Bと磁気浮上電極電離箱(MALIC)Cにおいて、それぞれ正味の電荷を得ることができる。
ここで実施の形態1の植物を入れるコンテナ13(植物容器)について説明すると、厚さ10mmのアクリル製の立方型の形状を有し(ここで10mmのアクリルを使う理由はコンテナ13の外のα線やβ線を遮蔽するためである)、容積は150Lに設定されている。コンテナ13の外には光照射用のランプ23が取り付けられている。コンテナ13の内部には温度/湿度センサー22が設置されていて、測定中の温度と湿度を温度/湿度センサー22でリアルタイムにモニターし、測定環境を監視する。
エアー流入装置16は、エアーポンプ17、フィルター18、電荷トラップ19、流量計20と流入流路となるパイプ25で構成されている。フィルター18で空気中の放射性微粒子を除去する。電荷トラップ19では空気中のエアロゾル電荷を除去するものである。電離箱2への空気の流入量は流量計20によってモニターする。温度と湿度は温度計/湿度計21によってモニターする。
コンテナ13からの空気は、パイプ25を通して磁気浮上電極電離箱1(MALIC)Bと磁気浮上電極電離箱1(MALIC)Cの電離箱2にそれぞれ同一容積が導入される。磁気浮上電極電離箱1(MALIC)Aにも同一容量の空気が導入される。従って、コンテナ13にはこの容量の2倍の容量の空気が導入される。
コンテナ13内で生じた植物由来の負と正のイオン(ネガティブイオンとアクティブイオン、以下、植物由来の正イオンの意味を込めてアクティブイオンともいう)が、パイプ25の中を導かれる間に再結合するのを防止するために、パイプ25は図2のように構成され、パイプ25の内周は導電性塗料の皮膜14aでコーティングされている。あるいはパイプ25には導電性の金属を使用してもよい。そして、電離箱2内部の空気の出口は導電体の金属カバー15で覆われている。電荷収集電極を正に帯電させたときは、静電誘導の原理で、金属カバー15とコネクター24及びパイプ25の内部は負に帯電される。金属カバー15をアースすることもできる。
コンテナ13から導入された空気のうち、正のイオン(アクティブイオン)は金属カバー15、コネクター24、パイプ25の導電性塗料で直ちにトラップされ、負のイオン(ネガティブイオン)は移動途中で再結合することなく電離箱2に流入し、正の電荷収集電極に収集される。電荷収集電極を負に帯電したときは、逆に正のイオン(アクティブイオン)が収集される。
続いて、以上説明した植物イオン電荷測定装置を用いて、本発明の植物イオン電荷測定方法について説明する。図6は本発明の実施の形態1の植物イオン電荷測定方法のフローチャートである。
先ず、準備工程として、植物を立方型のコンテナ13に入れて密閉する(ステップ1)。このときコンテナ13は暗黒に保たれている。エアー流入装置16を経た清浄な空気を磁気浮上電極電離箱(MALIC_A)とコンテナ13へ導く(ステップ2)。磁気浮上電極電離箱1(MALIC_A),(MALIC_B),(MALIC_C)に導く流入量をF(L/min)と表すと、磁気浮上電極電離箱(MALIC)Aへの流入量はF(L/min)で、コンテナ13への流入量は2F(L/min)であり、さらにコンテナ13から磁気浮上電極電離箱(MALIC_B)と磁気浮上電極電離箱(MALIC_C)への流入量は各々F(L/min)となる。植物にコンテナ13の外からライト23により光(蛍光灯、シリカライト)を照射し、空気を磁気浮上電極電離箱1(MALIC_B),(MALIC_C)に導く(ステップ3)。これに代えて放射線を照射するのでもよい。
続いて、測定工程に移り、浮上装置9が電荷収集電極3a,3b,3cを円筒の電離箱2の中央に磁気浮上させる(ステップ4)。次に静電帯電器12で電極に電荷(正または負)を約±700Vになるように帯電する(ステップ5)。磁気浮上電極電離箱1(MALIC_A)は電荷収集電極を正または負(ポジティブまたはネガティブ)のイオンに帯電し、バックグラウンド電流(電荷)を測定する。バックグラウンド電流(電荷)は大気中の放射線によって生じ、電荷収集電極が正でも負でも、電離電流値は同じ値になる。磁気浮上電極電離箱1(MALIC_B)は電荷収集電極を負(ネガティブ)に帯電し、コンテナ13を経由した空気の中の正のイオン(アクティブイオン)電荷とバックグラウンド電流(電荷)の和を、磁気浮上電極電離箱1(MALIC_C)は電荷収集電極を正(ポジティブ)に帯電し、負のイオン(ネガティブイオン)電荷とバックグラウンド電流(電荷)の和を、各々測定する。
測定条件を制御演算部11(コンピュータ)の入力装置から入力し(ステップ6)、その後測定を開始する。測定開始時間になると、制御演算部11によりリフト7が上昇され(ステップ7)、電荷収集電極3a,3b,3cがファラデーケージ5に挿入されて、電荷収集電極3a,3b,3cが浮上状態されたままで、電荷収集電極3a,3b,3cの各電荷Q1(C)を読み取られる(ステップ8)。その後、制御演算部11によりリフト7は当初の位置に下降させられ(ステップ9)、シャッター6が閉じられて、決められた時間Δt(s)の間、電荷収集電極に電離電荷を収集する(ステップ10)。
時間Δtが経過した後、再び制御演算部11によってリフト7を上げて各電荷Q2(C)を読み取る(ステップ11)。このとき時間Δtの間の電荷の各変化量はΔQ(=Q1−Q2)で得られるから、ΔQ/Δtを計算することによって、1秒当たりの電荷(C/s)=電離電流I(A)を計算することができる。磁気浮上電極電離箱1(MALIC_B)および磁気浮上電極電離箱1(MALIC_C)の測定値から磁気浮上電極電離箱1(MALIC_A)の測定値を引けば、コンテナ13内の植物から放出した、正味の正(アクティブイオン)と負(ネガティブイオン)の電荷が得られる。そこで、ファラデーケージ5で読み取られた電荷は、エレクトロメータ10を経て制御演算部11でΔQ/Δtを計算し、正味の正(アクティブ)と負(ネガティブイオン)の電荷の計算処理をした後(ステップ12)、リアルタイムでディスプレー16に表示される(ステップ13)。
本発明の実施の形態1の植物イオン電荷測定装置によれば、例えば電離体積1L、測定時間間隔(Δt)30分で測定した場合、最小測定値つまり測定限界はσ=5.0×10−17(C/s,A)であり(σは標準偏差で信頼度68%)、イオン個数では0.31(個/cm3)となる。これは市販されている高精度空気イオン計測器(USA
Alpha Lab.Inc製AIC−1000:計測可能範囲10個/cm3〜200万個/cm3)と比較したとき約32倍の高感度である。従って、実測した値の中で、この数値σ(C/s,A)以上の測定値は、信頼できる有意の値であるといえる。
本発明の実施の形態1の植物イオン電荷測定装置で、ベンケイソウ(Crassula ovata)のイオン電荷測定を行った。ベンケイソウはCAM(Crassulacean Acid Metabolism)型光合成をする植物である。図3は本発明の実施の形態1の植物イオン電荷測定装置で測定した実施例1の各電離箱のイオン電荷の測定結果図、図4は本発明の実施の形態1の植物イオン電荷測定装置で測定した実施例1の正味の正の電荷と負の電荷の測定結果図であり、実施例1のベンケイソウのイオン電荷測定結果を示す。横軸は時刻(測定間隔Δt=30分)で、縦軸は電荷(C/s,A)である。流入量はF=3(L/min)で行った。横軸は測定日時(測定間隔Δt=30分)を、縦軸は電荷を表す。グラフは30分間隔の測定値を3点平滑化して描いている。なお、測定中の植物を入れているコンテナの温度と湿度はモニターされている。測定期間(2010年7月1日〜12日)の温度は平均18℃、湿度は48%である。実験は、福岡県福岡市東区松香台2丁目3番1の九州産業大学工学部の研究室内で行った。
図3中の「●」をプロットした線MALIC_Aは磁気浮上電極電離箱(MALIC_A)での測定値、「○」をプロットした線MALIC_Bは磁気浮上電極電離箱(MALIC_B)での測定値、「×」をプロットした線MALIC_Cは磁気浮上電極電離箱(MALIC_C)での測定値である。また図中に光(白熱ライト、蛍光灯、植物育成蛍光灯など)を照射した期間を開始(→)と終了(←)記号で表している。光を照射していない時間は暗黒状態にある。また24時間(午前10時を始点)ごとに一点鎖線を加えている。図4は本発明の実施の形態1の植物イオン電荷測定装置で測定したベンケイソウの磁気浮上電極電離箱(MALIC_B)と磁気浮上電極電離箱1(MALIC_C)の測定値から磁気浮上電極電離箱(MALIC_A)の測定値を引いて、正味の正(アクティブ)電荷と負(ネガティブ)電荷で表している。なお、「●」はバックグラウンドの測定値であり、「○」はバックグラウンドと正イオンの和の測定値、「×」はバックグラウンドと負イオンの和の測定値を示す。図4の横軸と縦軸の単位は図3の場合と同じである。
図4を基に、光の照射と電荷の放出について説明する。図4中の破線σは最小検出値5.0×10−17(C/s,A)で、これ以上の数値は有意の数値と見なすことができる。ここで「○」をプロットした線「MALIC(B−A)正イオン」は正味の正(アクティブ)電荷(MALIC_BとMALIC_Aの測定値の差)を示し、「×」をプロットした線「MALIC(C−A)負イオン」は正味の負(ネガティブ)電荷(MALIC_CとMALIC_Aの測定値の差)を示す。
図4によると、(1)植物(ベンケイソウ)を、コンテナに入れる前は正(ポジティブ)、負(ネガティブ)の電荷の平均の放出量は破線σ以下で、植物イオン電荷測定装置が正常に動いていることを示している。
(2)植物をコンテナに入れた後は(図4においてベンケイソウin以降)、正(ポジティブ)と負(ネガティブ)の電荷とも破線σ以上で、暗黒下での何らかの生理作用を行っていることが分かる。
(3)シリカライトを照射した場合(白熱灯、8時間照射、光合成光量子束密度photosynthetic photon flux density(PPFD):32μmolm−2s−1)、照射開始(7月3日10時)してその直後電荷はゼロになり、電荷の放出(イオンの放出)がリセットされているようにみえる。
(4)蛍光灯(8時間照射、光合成光量子束密度(PPFD):34μmolm−2s−1)の場合、シリカライトと同様に、照射の直後、電荷の放出がリセットされている。蛍光灯照射開始の24時間後からは、図4のAで示される、ポジティブ、ネガティブ電荷の放出量に周期的なリズムが現れている。この周期的リズムは概日リズムを示しているものと思われる。現在のところ、植物の概日リズムの測定は、ホタルルシフェラーゼ遺伝子を接続した発光レポーター遺伝子を用いて、生物発光測定などの方法で研究されているが、この測定結果は生物発光による周期性を裏付けるものである。
(5)植物育成蛍光灯(8時間照射、PPFD:33μmolm−2s−1)を照射した場合、照射後直ちに電荷の放出がリセットされている。照射終了後はすぐに正(アクティブ)電荷も負(ネガティブ)電荷も急激に増加する。また負(ネガティブ)の電荷量はシリカライトや蛍光灯の場合より多い。蛍光灯と植物育成蛍光灯に共通に見られるのは、光の照射中は電荷の放出がほとんどゼロとなり、照射終了の後、急激に電荷が放出することである。この現象は、昼間の受光中は気孔が閉じて水分の蒸発を抑え、夜間は気孔を開いてCO2を取り込むという、CAM型植物特有の生理を示唆しているように見える。なお、植物育成蛍光灯は主に植物工場で使用されていて、強度のピークは、青(430nm〜450nm)と緑(550nm)および赤(620nm)にある。
(6)植物をコンテナに入れて10日目に、植物を植えている植木鉢に水を注入した。この後、負(ネガティブ)電荷の放出が3時間ほどの間急激に増減している。この現象は、ストレス応答における水の生理作用と関連していると考えられる。この図には描いていないが、植物を容器から取り出した後は、正(アクティブ)、負(ネガティブ)電荷とも急に減少して、検出限界以下のバックグラウンドの状態に戻る。
(実施例1)の測定には、CAM型植物のベンケイソウを用いた。この他にも違ったタイプ(C3型、C4型)の植物を使って光(蛍光灯やUVなど)やγ線(241Am、60Co)を照射して、各々の環境応答によって放出する電荷を測定した。なお、CAM型とは昼間は気孔を閉じて水分の蒸発を防ぎ、夜間は気孔を開いてCO2を取り込むタイプであり、ベンケイソウやサボテンがある。C4型は昼間気孔を開いてCO2や水分を出し入れするが、CO2を濃縮する機能を持っているタイプのもので、トウモロコシやケイトウがある。またC3型は昼間気孔を開いていてCO2の濃縮機能を持っていないタイプであり、代表例はイネであるが、一般のほとんどの野菜類もこのタイプである。タイプ別の測定結果について個別に説明はしないが、とりわけγ線照射の場合は、照射中と照射後の電荷放出パターンが光の場合と全く異なっていて、放射線によるストレス応答として興味深い測定値が得られた。
本発明の実施の形態1の植物イオン電荷測定装置で、CAM型のシャコバサボテンのイオン電荷測定を行った。図5は本発明の実施の形態1の植物イオン電荷測定装置で測定した実施例2の正味の正の電荷と負の電荷の測定結果図である。横軸は時刻(測定間隔Δt=30分)で、縦軸は電荷(C/s,A)である。流入量はF=3(L/min)で行った。測定期間(2011年11月22日〜12月2日)の温度は平均17℃、湿度は48%である。実験は、実施例1と同じく、福岡県福岡市東区松香台2丁目3番1の九州産業大学工学部の研究室内で行った。
図5において、「○」をプロットした線「MALIC(B−A)正イオン」は正味の正(アクティブ)電荷(MALIC_BとMALIC_Aの測定値の差)を示し、「×」をプロットした線「MALIC(C−A)負イオン」は正味の負(ネガティブ)電荷(MALIC_CとMALIC_Aの測定値の差)を示す。光(またはγ線)の照射時間は開始(→)と終了(←)の間で8時間と16時間である。光の照射時間以外は暗黒である。照射を始めた時刻(AM9:00)から24時間ごとの時刻を示す。
(1)1回目の蛍光灯(図3で使用したものと同じ)照射の場合、照射時間中(8時間)は正(ポジティブ)と負(ネガティブ)電荷の放出量はほほ同じで、照射終了後はすぐに負(ネガティブ)電荷が増加した。
(2)UVライト(強度のピーク:365nm、紫外線強度は22.7μWcm−2)照射の場合、照射時間中(8時間)は負(ネガティブ)電荷の放出量が正(ポジティブ)電荷の放出量よりも多い。照射終了後に急に負(ネガティブ)電荷が増え、ピークを示した後は急に減少している。
(3)2回目の蛍光灯の照射では、照射時間は16時間(11/28:1〜11/28:17)で、照射終了後の負(ネガティブ)電荷の増加と減少のパターンも、1回目と似ている。
(4)UV照射後のC区間と、2回目の蛍光灯照射後のD区間は、負(ネガティブ)電荷の放出パターンが、概日リズムを示しているように見える。暗黒下での電荷の放出でも、図4のA区間と図5のC、D区間のパターンに違いがあるのは興味深い。
(5)γ線照射の場合について説明する。植物が置かれているコンテナ13内のバックグラウンドの線量当量率は平均50nSv/hである。241Am(放射線強度:350kBq、平均線量当量率:105nSv/h、正味の増加線量:105−50=55nSv/h)の照射では、照射開始時と終了時に、電荷の放出がリセットされるように見える。照射が終了すると正(アクティブ)電荷の放出が負(ネガティブ)電荷に比べて多い。
(6)バックグラウンドの線量当量率平均50nSv/hにおける、60Co(強度:800kBq、平均線量当量率:95nSv/h、正味の増加線量:95−50=45nSv/h)の照射では、照射中の電荷の放出パターンは、241Amの照射と同じように、照射開始時と終了時に放出が急激に少なくなる。照射終了後は、負(ネガティブ)電荷の放出量が正(アクティブ)電荷より多く、これは241Amと逆である。この正(アクティブ)電荷と負(ネガティブ)電荷の放出パターンの違いは、γ線強度(241Am:0.595MeV、60Co:1.333MeV)の違いによるストレス応答を示しているように考えられる。
(4)測定された電荷のソースは、植物から放出されたか、気体の電離によるものか、またはイオンによるものと思われる。
(5)植物から放出する気体は、水(H2O)、二酸化炭素(CO2)、酸素(O2)、エチレン(C2H4)である。水(H2O)は蒸散作用によって、二酸化炭素(CO2)や酸素(O2)は光合成によって、エチレン(C2H4)はストレスや果実の成熟によって生成され植物体外へ放出されている。
(6)これらの気体は、化学的に安定であり、植物から放出される量によっては、自然の放射線や電離箱内の電界(100V〜600V)ではほとんど電離しない(有意の差として計測できない)ことを別途既に確認している。
(7)以上の、植物から放出する気体に関する測定と検討から、我々がベンケイソウとシャコバサボテンを使って測定値した電荷は、環境応答により植物から放出したイオンに拠るものであると考える。
(8)イオンの種類を確定することは、植物の生理作用を解明するために重要である。放出するイオンの数を測定される電荷量から計算すると、電離体積1L(1000cm3)、仮に測定電荷1×10−15(C/s)(これは最小検出値の20倍である)と見積もると、測定される電荷からイオン個数は、1×10−15/1.6×10−19=6250個となり、1cm3の個数は6250/1000=6.3個/cm3が得られる。
ここで、環境応答による細胞や組織内での生理作用に関わるイオンは電子(e−)、水素イオン(H+)、活性酸素(O3 −)、活性酸素(O−)、ヒドロキシルラジカル(OH−)、カリウム(K+)、カルシウム(Ca2+)、塩素(Cl−)、ナトリウム(Na+)などがある。仮にイオンが植物体外へ放出されているとすれば、その種類は上記のイオンであると考えられる。この中で活性酸素(O3 −)を例にとれば、分子量から計算すると上記6250個のO3 −質量は5×10−19g/sとなる。
ここで、仮に、測定電荷が1×10−15 (C/s)、それがO3 −であったとすれば、イオン個数は6.3個/cm3、質量は5×10−19g/sである。一方市販の高精度空気イオン測定装置の最小検出限界は10個/cm3、また高精度クロマトグラフの分解能は10−14g/sレベルである。このことから、現在市販されている高精度の測定機器を用いても、上記測定電荷の測定は検出限界,分解能を越えているため、植物から放出されているイオンの種類を物理・化学的にO3 −と決定することは困難である。しかしながら、本発明の実施の形態1の植物イオン電荷測定装置を使った場合は、最小検出値の20倍という高い精度で、上記測定電荷の測定が可能になる。
このように本発明の実施の形態1の植物イオン電荷測定装置、植物イオン電荷測定方法は、植物の環境応答による生理現象を非破壊的にかつリアルタイムで知ることが可能で、植物生理学や分子細胞学などの知見と総合すれば、光やストレス応答などの植物の生体メカニズムの解明や高機能植物の研究開発、さらには植物工場での生育制御研究などに寄与することができる。