JP5754844B2 - 泌尿器科がんの検査方法及び検査用キット - Google Patents

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Description

本発明は、被検者から採取した尿中のラミニンγ2単鎖を測定することを特徴とする泌尿器科がんの検査方法及び検査用キットに関する。
膀胱がん、腎盂がん、尿管がん、腎がん、前立腺がんなどの泌尿器科がんは、いずれも顕微鏡的血尿を呈しうるため、尿潜血検査がスクリーニング検査として用いられている。顕微鏡的血尿とは、肉眼で認識できない血尿であり、スクリーニング検査とは、いわゆるふるい分け検査であって、症状がまだ現れない段階でがんの可能性を調べるものをいう。
しかしながら、血尿は尿路のすべてから様々な原因によって生じ得るものであり、顕微鏡的血尿が見られた被検者のうち、腎・尿路疾患は2.3%、尿路悪性腫瘍は0.5%にすぎない(非特許文献1)。そのため、血尿を呈した被検者には、さらに臨床検査や画像検査を行って診断が進められる。
例えば、膀胱がんの場合、以下に示す流れで診断が行われる。
尿潜血検査が陽性であった場合、尿細胞診検査と腹部超音波検診を行う。いずれかの検査が陽性であれば、MRI、CTによる画像検査や膀胱鏡検査を行って膀胱がんの存在を確認し、最終的には全身麻酔下膀胱鏡検査による膀胱粘膜生検で確定診断を行う。
しかしながら、尿細胞診検査が陽性になるのは、膀胱がん患者の30%程度である。T2以上の浸潤性のがんの場合は高い確率で尿細胞診検査が陽性になるが、早期の上皮内がんや上部尿路で発生した膀胱がんについては尿細胞診検査の有効率は非常に低い。また、尿細胞診は専門家による診断が必要とされ、簡便に行うことができない。腹部超音波検査も専門家の熟練した手技が必要とされるうえに、造影剤の投与が必要であり、時間やコストもかかる。
一方で、粘膜生検は被検者の負担も大きく、膀胱がんの確率が低い人を多く含む被検者群に対して一様に実施するのは現実的ではない。
生検の前に画像検査を行うことができれば、生検が必要な被検者を絞り込むことができるが、検査コストが高くなる。また、MRIやCTを備えていない病院では画像検査を行うことができない。一方、膀胱鏡検査は患者の負担が大きい。
このような状況の結果、診断の機会を逸し、末期になって初めて発見される膀胱がん患者もしばしばみられる。従って、尿潜血検査や尿細胞診検査よりも感度及び特異度が高く、被検者への侵襲も少なく、且つ簡便で低コストのスクリーニング検査法が求められている。
泌尿器科がんのスクリーニング検査としては、尿中の腫瘍マーカーを測定する方法も提案されている。例えば膀胱がんマーカーとして、BTA(bladder tumor antigen)とNMP22(nuclear matrix protein 22)が知られ、それぞれ検査用キットも商品化されている。
BTAは、基底膜に由来するポリペプチドの複合体である。膀胱がん細胞から分泌されるプロテアーゼにより膀胱上皮の基底膜が破壊されると、基底膜に含まれるヒトIV型コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、プロテオグリカン等が分解されて分子量16〜165kDaの特定のポリペプチドとなり、このポリペプチドの複合体が、膀胱がんの増殖と浸潤の際に尿中で検出される。
BTAによる膀胱がん検査の感度については、40%〜80%との報告があり(例えば、40%については非特許文献2、80%については非特許文献3を参照)、近年改良されつつある。しかしながら、再発性の膀胱がんや浸潤がんで感度が下がること(非特許文献4)、検査結果が炎症と混同されうることなどが指摘されている。特に、再発性膀胱がんの場合、初発性膀胱がんの治療で粘膜切除を行うため、正常粘膜が一部欠損していることになる。このため、再発性膀胱がんでは、正常膀胱粘膜基底膜から放出されるBTAも減少し、検出感度が下がるものと考えられる。また、膀胱がん患者と非膀胱がん患者の尿中のBTA量を比較した報告は多くなされているものの、顕微鏡的血尿に対する標準検査として推奨するには十分な根拠はないとされている(非特許文献1)。
NMP22は、核分裂装置のタンパク質(nuclear mitotic apparatus protein)の一つであり、細胞分裂における染色分体の娘細胞への分配に関与している。NMP22は、細胞が壊死する際に細胞外に出て、尿中で検出されるものと考えられている。そのため、膀胱がんのみならず、血尿を伴う他の泌尿器疾患でも尿中でNMP22が検出される可能性がある。
NMP22による膀胱がん検査は、BTAより感度が高いとの報告もある(非特許文献2参照)が、BTAと同様に炎症と検査結果が混同されうることが指摘されており、顕微鏡的血尿に対する標準検査として推奨するには十分な根拠はないとされている(非特許文献1参照)。
また、膀胱がん患者のがん組織で特異的に発現しているタンパク質として発見されたBLCA−4が、尿中でも検出されることが報告されている(非特許文献5参照)。しかしながら、2004年に論文が発表された後続報がなく、これまでにBLCA−4が膀胱がんマーカーとして使用された実績はない。
また、NMP22、BLCA−4のような、非分泌タンパク質は、通常、何らかの理由(例えばアポトーシス、壊死)で細胞破壊後に細胞外に放出されないと尿中では検出できないと考えられる。また、BTAのような、正常膀胱に存在する蛋白も、尿中で検出されるためには、細胞破壊、組織破壊が必要と考えられる。そのため、表在性膀胱がん、上皮内がん、悪性度の低いがんでは検出が困難であると考えられ、これらのマーカーはスクリーニング方法に適しているとはいえなかった。
感度及び特異度が高く尿中で検出できる泌尿器科がんマーカーがあれば、患者への侵襲も少なく、コストのかからない簡便な検査方法として有用である。しかしながら、上述のとおりこれまでにスクリーニング検査に十分なマーカーは見出されていない。
ところで、本発明者らは、ラミニンγ2単鎖、即ちラミニン5の構成要素であるγ2鎖(以下、「ラミニン5γ2鎖」と呼ぶ。)が単量体(モノマー)として発現するポリペプチドが、ある種のがん細胞において発現していることを見出した(非特許文献6及び7参照)。ラミニンγ2単鎖は、食道がん、胃がん、大腸がん、子宮頸がんの腫瘍塊において発現が著しいことが報告されている(例えば、非特許文献8−11参照)。これらの事実は、ラミニンγ2単鎖が浸潤性のがんマーカーとして有用であることを強く示唆している。
一方、尿路系のがんに関しては、尿路上皮がんの細胞においてラミニン5γ2鎖の発現が亢進していることが報告されている(例えば、非特許文献12−14参照)。しかしながら、ラミニンγ2単鎖を認識する抗体は、そのほとんどがラミニン5γ2鎖も認識するため(非特許文献15参照)、両者を識別するのは困難であり、これまで尿路上皮がん細胞において発現しているのがラミニン5γ2鎖なのか、ラミニンγ2単鎖なのかは明らかにされていなかった。
『血尿診断ガイドライン』血尿診断ガイドライン検討委員会、2006年3月 Landman, J. et al., Urology, 52(3):398-402, 1998 Pode, D. et al., The Journal of Urology, 161:443-446, 1999 Sarosdy, M.F. et al., The Journal of Urology, 154:379-384, 1995 Van Le T-S. et al., Clinical Cancer Research, 10:1384-1391, 2004 Koshikawa N. et al., Cancer Res., 59:5596-5601, 1999 Seftor R. et al., Cancer Res., 61:6322-6327, 2001 Niki T. et al., Am J Pathol 160:1129-1141, 2002 Pyke C. et al., Am J Pathol 145:782-791, 1994 Andersson S., et al., Int J Gynecol Cancer 15:1065-1072, 2005 Skyldberg B., et al., J Natl Cacner Inst 91:1882-1887, 1999 Hindermann W. et al., Cancer Detect Prev. 27(2):109-115, 2003 Kiyoshima K. et al., Hum Pathol. 36(5):522-530, 2005 Sathyanarayana UG., et al., 64(4):1425-1430, 2004 Koshikawa N. et al., Cancer Res., 68(2):530-536, 2008
本発明は、泌尿器科がん患者の尿中で検出される泌尿器科がんマーカーを見出し、これを用いた感度及び特異度の高い泌尿器科がんの検査方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために研究を重ねた結果、ラミニンγ2単鎖量が膀胱がん、腎がん、前立腺がん患者の尿において増加していること、ラミニンγ2単鎖は尿細胞診では陽性とならない早期のがんにおいても検出可能であること、尿中のラミニンγ2単鎖量を測定することによって約90%の感度で膀胱がんのスクリーニング検査を行うことができること、等を見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
〔1〕被検者から採取した尿中のラミニンγ2単鎖を測定する工程を含む、泌尿器科がんの検査方法;
〔2〕前記ラミニンγ2単鎖を測定する工程において、抗ラミニンγ2単鎖抗体を用いたイムノアッセイによってラミニンγ2単鎖量を測定する、上記〔1〕に記載の検査方法;
〔3〕前記イムノアッセイがELISA法である、上記〔2〕に記載の検査方法;
〔4〕被検者から採取した尿中のラミニンγ2単鎖が、非泌尿器科がん患者から採取した尿中のラミニンγ2単鎖より多いか否かを分析する工程を含む、上記〔1〕から〔3〕のいずれか1項に記載の検査方法;
〔5〕被検者から採取した尿中のラミニンγ2単鎖の濃度を、カットオフ値と比較する工程を含む、上記〔1〕から〔3〕のいずれか1項に記載の検査方法;
〔6〕前記ラミニンγ2単鎖の濃度を尿中クレアチニン濃度で補正した後、カットオフ値と比較する、上記〔5〕に記載の検査方法;
〔7〕前記被検者から採取した尿は、遠心処理により細胞およびその破片を除いた後急速に冷凍して保存し、10分以内で急速に融解した後、尿中のラミニンγ2単鎖を測定に用いられる、上記〔1〕から〔6〕のいずれか1項に記載の検査方法。;
〔8〕前記泌尿器科がんが、膀胱がん、腎盂がん、尿管がん、腎がん、及び前立腺がんから選択される少なくとも一種類のがんである、上記〔1〕から〔7〕のいずれか1項に記載の検査方法;及び
〔9〕抗ラミニンγ2単鎖抗体を含む、泌尿器科がんの検査用キット、
に関する。
本発明の泌尿器科がんの検査方法は、従来の検査方法より感度及び特異度が高い。また、尿中のタンパク質を検出するので、患者の負担も少なく低コストで行うことができ、スクリーニング検査に適する。
本発明の検査方法で検出するラミニンγ2単鎖は分泌タンパク質であり、細胞破壊や組織破壊が起こらなくても細胞外に分泌されるので、がんの浸潤度、悪性度、初発か再発かに関わらず尿中で検出できるものと期待でき、この点でもスクリーニング方法に適している。
スクリーニング検査の感度及び特異度を改善することにより、さらなる検査が必要な被検者を絞り込むことができるので、罹患可能性の低い被検者にまで生検や画像診断を行ってコストや患者の負担が増大するのを防ぐことができる。また、罹患しているのにスクリーニング検査で陰性となって診断の機会を逸し、末期になって初めて発見されるようなことも防ぐことができる。
図1は、膀胱がんをふくむ泌尿器科疾患患者より採取した尿中のラミニンγ2単鎖をウエスタンブロッティングによって検出した結果を示す。 図2は、膀胱がん患者から生検又は手術で得られたがん組織におけるラミニンγ2単鎖の発現を、免疫組織化学により分析した結果を示す。 図3は、膀胱がん患者から生検又は手術で得られたがん組織におけるラミニンγ2単鎖の発現を、免疫組織化学により分析した結果を示す。 図4は、膀胱がん患者から生検又は手術で得られたがん組織におけるラミニンγ2単鎖の発現を、免疫組織化学により分析した結果を示す。 図5は、尿中のラミニンγ2単鎖をサンドイッチELISA法によって定量した結果を示す。 図6は、図5の結果をもとに、カットオフ値を0.5ng/mlとして本発明の検査の感度と特異度を求めた結果を示す。 図7は、非がん患者尿104例及び膀胱がん患者尿32例におけるラミニンγ2鎖濃度をELISAで測定した結果を示す。 図8は、図7の結果をもとに統計処理を行い、カットオフ値0.3ng/mlとしたときの感度及び特異性を求めた結果である。 図9は、非がん患者尿16例及び膀胱がん患者尿10例におけるラミニンγ2鎖濃度をELISAで測定し、クレアチニン補正を行った結果を示す。 図10は、図9の結果をもとに統計処理を行い、カットオフ値1.3ng/mlとしたときの感度及び特異性を求めた結果である。
[泌尿器科がんの検査方法]
本発明に係る泌尿器科がんの検査方法は、被検者の尿中のラミニンγ2単鎖を測定する工程を含む。
ラミニンγ2単鎖とは、ラミニン5の構成要素であるγ2鎖が単量体(モノマー)として発現したものをいう。ラミニン5は、基底膜の主要な構成成分の一つであり、α3鎖、β3鎖、γ2鎖の3つのポリペプチド鎖が、コイルドコイル構造部分で会合するヘテロ三量体である。
3つのポリペプチド鎖のうち、γ2鎖は、悪性のがん細胞において単量体として発現することが報告されている。本明細書では、三量体として発現しているγ2鎖を「ラミニン5γ2鎖」と呼び、単量体として発現しているγ2鎖を「ラミニンγ2単鎖」と呼ぶ。
上述のとおり、これまでにも尿路上皮がんの細胞内でγ2鎖の発現が亢進していることが報告されているが、これがラミニン5γ2鎖なのかラミニンγ2単鎖なのかは明らかになっていなかった。
本発明者らは、後述する実施例で示すとおり、膀胱がん細胞において発現が亢進しているのがラミニンγ2単鎖であることを確認した。また、このラミニンγ2単鎖が細胞外に分泌され尿中で検出されること、及び、尿中のラミニンγ2単鎖量は、泌尿器科がん患者と健常者で有意に差があることを見出した。
ラミニンγ2単鎖は分泌タンパク質であるため、がんの浸潤度や悪性度に関わりなく、がん細胞中で発現すれば尿中で検出できるものと考えられる。
ラミニンγ2単鎖は、マトリックスメタロプロテアーゼ(Matrix metalloprotease;MMP)によってプロセシングを受け、EGF様活性を有するフラグメントを含め、いくつかのフラグメントを生じる。一方、ラミニン5γ2鎖はMMPによるプロセシングを受けないため、尿中のγ2鎖フラグメントはラミニンγ2単鎖に由来すると考えることができる。
従って、本明細書において、尿中のラミニンγ2単鎖を測定するという場合、これらのフラグメントを測定してもよい。
本発明の検査に用いられる尿は、常法に従って採取したものを用いることができる。微量のラミニンγ2単鎖を検出するためには、濃縮された起床時尿が好ましい。また採取した尿は、検査時まで−40℃以下、例えば−80℃で保存し、凍結融解を繰り返さないことが好ましい。
採取した尿は、冷凍する前に遠心処理によって細胞やその破片を除去してもよい。遠心処理は例えば3000gとすることができる。凍結した尿は、急速に融解させて測定に用いることができる。例えば、ヒートブロックを使用して10分以内に急速に融解してもよい。
尿中のラミニンγ2単鎖を測定する方法は、液体中の特定のタンパク質を検出、測定するためのあらゆる方法を用いて行うことができ、例えば、イムノアッセイ、凝集法、比濁法、ウエスタンブロッティング法、表面プラズモン共鳴(SPR)法等が挙げられるが、これらに限定されない。
この中で抗ラミニンγ2単鎖抗体と、尿サンプル中のラミニンγ2単鎖との抗原抗体反応を利用してラミニンγ2単鎖量を測定するイムノアッセイは特に簡便で好ましい。
イムノアッセイは、検出可能に標識した抗ラミニンγ2単鎖抗体、又は、検出可能に標識した抗ラミニンγ2単鎖抗体に対する抗体(二次抗体)を用いる。抗体の標識法により、エンザイムイムノアッセイ(EIA又はELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光イムノアッセイ(FIA)、蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA)、化学発光イムノアッセイ(CLIA)等に分類され、これらのいずれも本発明の方法に用いることができる。
ELISA法では、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ等の酵素、RIA法では、125I、131I、35S、3H等の放射性物質、FPIA法では、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ダンシルクロリド、フィコエリトリン、テトラメチルローダミンイソチオシアネート、近赤外蛍光材料等の蛍光物質、CLIA法では、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、エクオリン等の発光物質で標識した抗体が用いられる。その他、金コロイド、量子ドットなどのナノ粒子で標識した抗体を検出することもできる。
また、イムノアッセイでは、抗ラミニンγ2単鎖抗体をビオチンで標識し、酵素等で標識したアビジン又はストレプトアビジンを結合させて検出することもできる。
イムノアッセイの中でも、酵素標識を用いるELISA法は、簡便且つ迅速に抗原を測定することができて好ましい。
ELISA法には競合法とサンドイッチ法がある。競合法では、マイクロプレート等の固相担体に抗ラミニンγ2単鎖抗体を固定し、尿サンプルと酵素標識したラミニンγ2単鎖を添加して、抗原抗体反応を生じさせる。いったん洗浄した後、酵素基質と反応、発色させ、吸光度を測定する。尿サンプル中のラミニンγ2単鎖が多ければ発色は弱くなり、尿サンプル中のラミニンγ2単鎖が少なければ発色が強くなるので、検量線を用いてラミニンγ2単鎖量を求めることができる。
サンドイッチ法では、固相担体に抗ラミニンγ2単鎖抗体を固定し、尿サンプルを添加し、反応させた後、さらに酵素で標識した別のエピトープを認識する抗ラミニンγ2単鎖抗体を添加して反応させる。洗浄後、酵素基質と反応、発色させ、吸光度を測定することにより、ラミニンγ2単鎖量を求めることができる。サンドイッチ法では、固相担体に固定した抗体と尿サンプル中のラミニンγ2単鎖を反応させた後、非標識抗体(一次抗体)を添加し、この非標識抗体に対する抗体(二次抗体)を酵素標識してさらに添加してもよい。
酵素基質は、酵素がペルオキシダーゼの場合、3,3'−diaminobenzidine(DAB)、3,3'5,5'−tetramethylbenzidine(TMB)、o−phenylenediamine(OPD)等を用いることができ、アルカリホスファターゼの場合、p−nitropheny phosphate(NPP)等を用いることができる。
本明細書において「固相担体」は、抗体を固定できる担体であれば特に限定されず、ガラス製、金属性、樹脂製等のマイクロタイタープレート、基板、ビーズ、ニトロセルロースメンブレン、ナイロンメンブレン、PVDFメンブレン等が挙げられ、標的物質は、これらの固相担体に公知の方法に従って固定することができる。
また、上記イムノアッセイの中で、微量のタンパク質を簡便に検出できる方法として凝集法も好ましい。凝集法としては、例えば、抗体にラテックス粒子を結合させたラテックス凝集法が挙げられる。
ラテックス粒子に抗ラミニンγ2単鎖抗体を結合させて尿サンプルに混合すると、ラミニンγ2単鎖が存在すれば、抗体結合ラテックス粒子が凝集する。そこで、サンプルに近赤外光を照射して、吸光度の測定(比濁法)又は散乱光の測定(比朧法)により凝集塊を定量し、抗原の濃度を求めることができる。
なお、上述の方法では、抗ラミニンγ2単鎖抗体として、ラミニン5γ2鎖、即ち三量体を構成するγ2鎖を認識する抗体を用いてもよい。後述する実施例で示すとおり、尿中で検出されるγ2鎖はほとんどがラミニンγ2単鎖であるため、ラミニン5γ2鎖を認識する抗体を用いても、ラミニンγ2単鎖の測定値に与える影響は小さいからである。
また、上記イムノアッセイでは、またMMP等によってプロセシングを受けたラミニンγ2単鎖断片を認識する抗体を用いてもよい。
抗ラミニンγ2単鎖抗体は、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体のいずれも公知の方法に従って作製することができる。モノクローナル抗体は、例えば、ラミニンγ2単鎖又はその断片で免疫した非ヒト哺乳動物から抗体産生細胞を単離し、これを骨髄腫細胞等と融合させてハイブリドーマを作製し、このハイブリドーマが産生した抗体を精製することによって得ることができる。また、ポリクローナル抗体は、ラミニンγ2単鎖又はその断片で免疫した動物の血清から得ることができる。
抗ラミニンγ2単鎖抗体は、既存の抗体を用いてもよい。例えば、ラミニン5γ2鎖を認識せず、ラミニンγ2単鎖を特異的に認識する抗体として、1H3モノクローナル抗体(非特許文献4)が挙げられる。また、ラミニン5γ2鎖及びラミニンγ2単鎖を認識する抗体としては、D4B5モノクローナル抗体(非特許文献4)、2778ポリクローナル抗体(Koshikawa et al. Cancer Res. 68: 530. 2008)が挙げられ、いずれも本発明の方法に好ましく用いられる。
本明細書において「泌尿器科がん」は通常の意味で用いられ、腎臓、尿管、膀胱、尿道などの尿路系、前立腺などの男性生殖器系の悪性腫瘍を意味する。本発明の検査方法は、膀胱がん、腎盂がん、尿管がん、腎がん、前立腺がんのスクリーニング検査として特に有効である。
本明細書において「検査」は、診断に必要な情報を得るために、被検者から採取した試料を調べることを意味し、本発明の検査方法は、例えば検査会社等で実施され得る。特に、スクリーニング検査とは、いわゆるふるい分け検査であり、特定の病気を診断するのではなく、症状のない段階で病気を発見するための検査をいい、健康診断等においても行われる。
本発明の検査方法の一態様は、被検者の尿中のラミニンγ2単鎖が、非泌尿器科がん患者の尿中のラミニンγ2単鎖より多いか否かを分析する工程を含む。非泌尿器科がん患者の尿と比較して、被検者の尿中のラミニンγ2単鎖量が有意に多い場合に、該被検者は泌尿器科がんに罹患している可能性が高いと判定される。
実施例に示すとおり、非泌尿器科がん患者の尿中ラミニンγ2単鎖濃度の平均は、約4.73±1.83ng/mlであった。従って、被検者の尿中のラミニンγ2単鎖量がこれより多い場合、当該被検者は高い確率で泌尿器科がんに罹患していると考えられる。
なお、上述のとおりラミニンγ2単鎖はがん細胞からの分泌タンパク質であるため、BTAと異なり、被検者が初発であるか再発であるかによって感度に違いは生じないものと考えられる。従って、本発明の検査方法は、泌尿器科がんの治療後の被検者に対して行う泌尿器科がんの再発検査にも有用である。非泌尿器科がん患者の尿と比較して、かかる被検者の尿中のラミニンγ2単鎖量が有意に多い場合、該被検者は泌尿器科がんが再発している可能性が高いと判定される。
また、本発明の検査方法の別の態様は、被検者の尿中のラミニンγ2単鎖の量を、カットオフ値と比較する工程を含む。
カットオフ値とは、この値を超えると泌尿器科がんに罹患している可能性、又は泌尿器科がんが再発している可能性が高いと判断される基準となる値をいう。
スクリーニング検査の有効度は、感度と特異度で評価される。感度は実際に罹患している被検者が陽性となる割合を意味し、特異度は非罹患者が陰性となる割合を意味する。カットオフ値を高く設定すると、偽陰性が多くなり、感度が低く、特異度が高い検査となる。一方、カットオフ値を低くすると偽陽性が多くなり、感度が高く、特異度の低い検査となる。そこで、カットオフ値は、検査結果のデータを蓄積し、感度及び特異度が最適となるように決定される。
感度、特異度ともに高いことが理想であるが、その両方が高い検査は存在せず、スクリーニング検査においては、病気の見逃しが極力少ないように感度が優先される場合が多い。
実施例5においては、カットオフ値を0.5ng/mlとすると、感度は89.5%、特異度は57.9%であり、実施例6(3)においては、カットオフ値を1.3ng/mlとすると、感度及び特異性は、それぞれ100、50.0であった。感度がこれほど高い泌尿器科がんの検査はこれまでになく、スクリーニング検査として非常に有用である。
[泌尿器科がんの検査用キット]
本発明に係る泌尿器科がんの検査用キットは、上述した検査方法を使用して泌尿器科がんの検査を行うためのキットであり、抗ラミニンγ2単鎖抗体を含む。
本発明の検査用キットは、抗ラミニンγ2単鎖抗体とラミニンγ2単鎖との抗原抗体反応を利用するイムノアッセイによって、ラミニンγ2単鎖量を測定するために必要な試薬及び装置を含む。
検査用キットの一態様は、サンドイッチ法によってラミニンγ2単鎖を測定するためのものであり、マイクロタイタープレート;捕捉用の抗ラミニンγ2単鎖抗体;アルカリホスファターゼ又はペルオキシダーゼで標識した抗ラミニンγ2単鎖抗体;及び、アルカリホスファターゼ基質(NPP等)又はペルオキシダーゼの基質(DAB、TMB、OPD等)、を含む。
捕獲抗体と標識抗体は、異なるエピトープを認識する。
このようなキットでは、まず、マイクロタイタープレートに捕獲抗体を固定し、ここに尿サンプルを適宜希釈して添加した後インキュベートし、サンプルを除去して洗浄する。次に、標識した抗体を添加した後インキュベートし、基質を加えて発色させる。マイクロタイタープレートリーダー等を用いて発色を測定することにより、ラミニンγ2単鎖量を求めることができる。
検査用キットの別の態様は、二次抗体を使用してサンドイッチ法によりラミニンγ2単鎖を測定するためのものであり、マイクロタイタープレート;捕捉用の抗ラミニンγ2単鎖抗体;一次抗体として、抗ラミニンγ2単鎖抗体;二次抗体として、アルカリホスファターゼ又はペルオキシダーゼで標識した、抗ラミニンγ2単鎖抗体;及び、アルカリホスファターゼ(NPP等)又はペルオキシダーゼの基質(DAB、TMB、OPD等)、を含む。
捕獲抗体と一次抗体は、異なるエピトープを認識する。
このようなキットでは、まず、マイクロタイタープレートに捕獲抗体を固定し、ここに尿サンプルを適宜希釈して添加した後インキュベートし、サンプルを除去して洗浄する。続いて、一次抗体を添加してインキュベート及び洗浄を行い、さらに酵素標識した二次抗体を添加してインキュベートを行った後、基質を加えて発色させる。マイクロタイタープレートリーダー等を用いて発色を測定することにより、ラミニンγ2単鎖量を求めることができる。二次抗体を用いることにより、反応が増幅され検出感度を高めることができる。
また、検査用キットの別の態様は、マイクロタイタープレート;一次抗体としての抗ラミニンγ2単鎖抗体又は抗ラミニン5γ2鎖抗体;アルカリホスファターゼ又はペルオキシダーゼで標識した、抗ラミニンγ2単鎖抗体又は抗ラミニン5γ2鎖抗体に対する抗体;及び、アルカリホスファターゼ又はペルオキシダーゼの基質、を含む。
かかるキットによれば、まず、適当な濃度に希釈したサンプルでマイクロタイタープレートをコーティングし、一次抗体を添加する。インキュベート及び洗浄を行った後、酵素標識した二次抗体を添加し、インキュベート及び洗浄を行い、基質を加えて発色させる。マイクロタイタープレートリーダー等を用いて発色を測定することにより、ラミニンγ2単鎖量を求めることができる。
各検査用キットは、さらに、必要な緩衝液、酵素反応停止液、マイクロプレートリーダー等を含むことも好ましい。
標識抗体は、酵素標識した抗体に限定されず、放射性物質(25I、131I、35S、3H等)、蛍光物質(フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ダンシルクロリド、フィコエリトリン、テトラメチルローダミンイソチオシアネート、近赤外蛍光材料等)、発光物質(ルシフェラーゼ、ルシフェリン、エクオリン等)、ナノ粒子(金コロイド、量子ドット)等で標識した抗体であってもよい。また標識抗体としてビオチン化抗体を用い、キットに標識したアビジン又はストレプトアビジンを加えることもできる。
キットに用いる抗ラミニンγ2単鎖抗体は、ラミニンγ2単鎖を特異的に認識するものであってもよいし、ラミニン5γ2鎖も認識するものであってもよい。またMMP等によってプロセシングを受けたラミニンγ2単鎖断片を認識するものであってもよい。抗体は、公知の方法に従って作製したものでもよいし、上述した既存の抗体である1H3抗体、D4B5抗体、2778抗体等を用いることもできる。
本発明の検査用キットのさらに別の態様として、ラテックス凝集法によってラミニンγ2単鎖を測定するためのものも挙げられる。このキットは、抗ラミニンγ2単鎖抗体感作ラテックスを含み、尿サンプルと抗ラミニンγ2単鎖抗体とを混合し、光学的方法で集塊を定量する。キットに凝集反応を可視化する凝集反応板が含まれていることも好ましい。
以下に示す実施例は、単なる例示であって、上述した実施形態と共に本発明を詳細に説明することのみを意図しており、本発明を限定するものではない。
実施例1.がん患者の尿中におけるラミニンγ2単鎖の発現(ウエスタンブロッティングによる分析)
膀胱がんを含む泌尿器科疾患患者より採取した尿を−20℃に冷却したアセトンにて5倍濃縮した後、SDS−電気泳動サンプル緩衝液と混合した。尿(80μl/lane)は5%アクリルアミドゲルによる非還元下のSDS−PAGEを行い、ゲル内に分離された尿蛋白質はPVDF膜上にウエスタンブロットした。同膜は抗体の非特異的な吸着を防止するためにブロッキング緩衝液(5% ドライミルク/PBS/0.05%Tween20)にて室温、1時間のブロッキングを行った後、抗ラミニンγ2鎖モノクローナル抗体(D4B5, 1μg/ml in ブロッキング緩衝液)を室温16時間で反応させた。1次抗体の反応後、同膜はPBS/0.05% Tween20(洗浄緩衝液)にて5分、3回の洗浄を行い、続けて、ペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体を反応させた(室温、1時間)。反応後、洗浄緩衝液にて3回洗浄した後、ECL plusにて1次抗体に反応した2次抗体の検出を行った。陽性対照として、ラミニン5γ2鎖およびラミニンγ2単鎖の精製標品を用いた。
結果を図1に示す。種々の患者尿中にD4B5抗体で認識されるスメアなバンドが分子量150kDa、100kDa、80kDa付近に検出された。分子量150kDaはインタクトなラミニンγ2単鎖、100および80kDaはMMPsやBMP−1などのメタロプロテアーゼによるプロセシングを受けたラミニンγ2単鎖の断片と予想される。また、検出バンドがスメアである理由は、ラミニンγ2鎖に翻訳後修飾で糖鎖が付加されることが上げられる。
一方、非還元条件下のラミニン5はα3、β3鎖とジスルフィド結合により会合しているために、分子量はラミニン単鎖より大きな450kDa付近にインタクト、プロセシング断片として検出されたが、ラミニンγ2単鎖に比較するとわずかな量であった。
膀胱がんについては、21例中13例においてラミニンγ2単鎖が陽性であった。
実施例2.患者のがん組織におけるラミニンγ2単鎖の発現(免疫組織化学による分析)
実施例1で分析した膀胱がん患者より生検、手術で得られたがん組織をホルマリン−パラフィンにて固定し、ミクロトームで4μmの薄層切片とした。薄層切片は脱パラフィンしたのち、0.05% Proteases XXIV (SIGMA)にて抗原の賦活化を行った。その後、組織切片はD4B5抗体(2μg/ml)と4℃で16時間の反応をさせたのち、ヒストファインSAB−PO(ニチレイ)を用いて結合した1次抗体の検出を行った。免疫染色後、ヘマトキシリンを用いた対比染色を行い、がん組織は正立型顕微鏡(100倍、400倍)で検鏡した。
結果を図2〜4に示す。D4B5はラミニン5γ2鎖、ラミニンγ2単鎖ともに反応する抗体であるが、前者は基底膜に沿って線状に染色される。一方、後者は主に細胞質が染色されることが報告されている。ウエスタンブロッティングにより、尿中のラミニンγ2単鎖の発現レベルが(+)と評価されたNo.166のがん組織は、間質に浸潤したがん細胞にラミニンγ2単鎖陽性染色が見られた。また、ウエスタンブロッティングにより、尿中のラミニンγ2単鎖が(++++)と評価されたNo.179では、膀胱正常組織の大部分に浸潤したほぼすべてのがん細胞の細胞質でラミニンγ2単鎖陽性染色が見られた。一方、尿中にラミニンγ2単鎖が検出できなかったNo.128のがん組織でも、ごく一部の細胞の細胞質でラミニンγ2単鎖陽性染色が得られた。同じ膀胱がん患者より得られた尿、がん組織でのラミニンγ2単鎖は非常に相関した発現性を示した。
これまでにも膀胱がん組織においてラミニン5のγ2鎖が発現していることは報告されていたが、これらの結果から、それがラミニンγ2単鎖であることが初めて明らかとなった。尿サンプルのウエスタンブロッティングで検出されたラミニンγ2単鎖は、膀胱がん細胞で発現が亢進したラミニンγ2単鎖が尿中に分泌されたものと考えられる。
従って、わずかではあるが細胞質でラミニンγ2単鎖が発現していたNo.128についても、検出方法の感度を上げることにより、尿中のラミニンγ2単鎖を検出し、非常に早期のがんを診断できる可能性が示唆された。
実施例3.尿中と組織中のラミニンγ2単鎖の検出の相関
実施例1及び2の結果に基づき、ウエスタンブロッティングによる尿中のラミニンγ2単鎖の検出結果と、免疫組織化学による腫瘍組織中のラミニンγ2単鎖の検出結果の相関を以下の表に示す。
免疫組織化学で+又は++と判定されたものはほとんど、尿サンプルのウエスタンブロッティングによってもラミニンγ2単鎖の発現を検出できることを確認した。尿細胞診では検出困難な表在性膀胱癌においても、4例中4例で、尿サンプルにおけるラミニンγ2単鎖の発現が確認された。
一方、免疫組織化学で±と判定されたもの(染色された細胞数が少なかったもの、又は染色が薄かったもの)は尿サンプルのウエスタンブロッティングではラミニンγ2単鎖の発現を確認できなかった。これらについては、尿サンプルにおけるラミニンγ2単鎖の検出感度を改善することにより、尿サンプルを用いた診断が実現されるものと考えられる。
実施例4.尿中のラミニンγ2単鎖の定量(1)
患者から採取した尿は回収後、そのまま−80℃で急速に凍結して保存した。測定時は、4℃で徐々に融解させた。
尿中ラミニンγ2単鎖は次の2種の抗ラミニンγ2単鎖抗体を用いたサンドイッチELISA法により定量を行った。まず、ELISAプレートの下層にPBSで希釈した抗ラミニンγ2単鎖ポリクローナル抗体(1μg/ml)を固相化した。捕獲抗体を固相化したウェルは5%ドライミルク/PBS(200μl/well)でブロッキングを行い、プレートをPBS(150μl/well)で5回洗浄した。その後、50μlの患者尿を各ウェルに添加した後、37℃、3時間の反応を行った。同時に、ラミニンγ2鎖の定量曲線を作成するため、階段希釈した精製したラミニン5γ2鎖(0〜200ng/ml)もウェルに加えた。
反応終了後、PBSでプレートを5回洗浄し、下層の抗体に結合したラミニンγ2単鎖を検出するためD4B5抗体(1μg/ml)を加え、室温で2時間の反応を行った。反応後、PBS/0.05%Tween−20にて各ウェルを洗浄し、ペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体を各ウェルに添加し、室温、1時間の反応を行った。反応終了後、TMB発色液(100μl/well)を加えて発色を行い、反応させて3分後にマルチウェルリーダーにて各ウェルの595nmの吸光度を測定した。
結果を図5に示す。
各種のがんにおいて尿中のラミニンγ2単鎖量が有意に上昇していることが確認された。
実施例5.尿中のラミニンγ2単鎖検出の感度及び特異度
上記の結果から、膀胱癌(19名)と健常者(19名)のサンプルについて、尿中のラミニンγ2単鎖のELISAによる測定値の平均値は、それぞれ21.14ng/ml、4.73ng/mlで、t検定で有意差が認められた(P<0.05)。現在の最小測定値は0.5ng/mlであるので、これをカットオフ値として感度と特異度を求めた。
結果を図6に示す。感度は89.5%、特異度は57.9%と求められ、尿中のラミニンγ2単鎖が、従来膀胱癌診断に用いられているマーカーよりも高感度なマーカーであることが確認された。さらに、尿中のラミニンγ2単鎖の感度は、より高感度にすることが可能であり、膀胱癌スクリーニング検査として有用なものとなり得る。
実施例6.尿中のラミニンγ2単鎖の定量(2)
(1)除去症例について
臨床データを解析した結果、尿中ラミニン5γ2鎖の発現は尿中の白血球数と相関関係があることが判明した(spearmanの相関係数0.5、p≦0.05)。このことは、炎症で尿路組織の崩壊が起こることによって、基底膜中のラミニン5γ2鎖が尿中に遊離している可能性を示唆している。
ウエスタンブロットによる解析から、膀胱全摘出手術後に回腸を利用した尿路再建症例(回腸導管作成、回腸利用新膀胱作成)や組織崩壊が伴う膀胱炎症例の尿中にはラミニン5γ2鎖が多量に検出され、ELISAにおいてもラミニンγ2鎖が高値を示していた(data not shown)。以上から、上記の患者尿は正確なラミニンγ2モノマー鎖の定量ができないため除去症例とした。
(2)ELISAによる定量(補正なし)
尿検体数を増やして、尿中のラミニンγ2単鎖の定量をさらに行った。
患者から採取した尿は、室温3000gの遠心処理を行い、細胞及びその破片を除去した後、−80℃に急速に冷凍して保存した。測定時は、37℃のヒートブロックで10分以内に急速に融解した。急速に融解することにより、尿石が析出するのを防ぐことができた。
非がん患者尿(104例)および膀胱がん患者尿(32例、回腸利用尿路再建症例、膀胱炎症例は含まず)のラミニンγ2鎖をELISAで測定した。
結果を図7に示す。非がん患者尿ではラミニンγ2鎖の測定値が1.42±1.72ng/ml、一方膀胱がん患者尿ではAV.2.48±2.39ng/mlとなりT−test p=0.0068となり有意差が得られた。
これら結果をもとに統計処理を行ったところ、カットオフ値は0.3ng/ml、感度及び特異性は、それぞれ90.6、37.5となった(図8)。未補正尿による解析結果から、ラミニンγ2鎖は膀胱がんを診断できる感度が十分であることがわかった。
(3)ELISAによる定量(補正あり)
さらに特異性を改善するため、一般的な尿の標準化に使われるクレアチニンを使った尿サンプル間の標準補正を行った。
26検体のうち、非がん患者尿中(n=16)のラミニンγ2鎖の平均値は1.42±2.05ng/ml、膀胱がん患者尿中(n=10)では4.32±3.12ng/mlであった。T−testにおいてはp=0.0014となり、有意差が得られた(図9)。
この結果について統計的に処理を行ったところ、カットオフ値は1.3ng/ml、感度及び特異性は、それぞれ100、50.0と飛躍的に向上した(図10)。感度が100%になったのは解析数が少ないためと思われる。
カットオフ値を1.3ng/mlに設定しているが、これを下げることで、特異性はさらに向上すると考えられる。以上から、クレアチンによる補正を行うことで、より正確な定量解析ができると考えられた。

Claims (9)

  1. 被検者から採取した尿中のラミニンγ2単鎖を、抗ラミニンγ2単鎖抗体を用いたイムノアッセイによって測定する工程を含み、前記ラミニンγ2単鎖抗体はラミニン5γ2鎖を認識しない抗体である、泌尿器科がんの検査方法。
  2. 前記イムノアッセイがELISA法である、請求項に記載の検査方法。
  3. 被検者から採取した尿中のラミニンγ2単鎖が、非泌尿器科がん患者から採取した尿中のラミニンγ2単鎖より多いか否かを分析する工程を含む、請求項1又は2に記載の検査方法。
  4. 被検者から採取した尿中のラミニンγ2単鎖の濃度を、カットオフ値と比較する工程を含む、請求項1又は2に記載の検査方法。
  5. 前記ラミニンγ2単鎖の濃度を尿中クレアチニン濃度で補正した後、カットオフ値と比較する、請求項に記載の検査方法。
  6. 前記被検者から採取した尿は、遠心処理により細胞およびその破片を除いた後急速に冷凍して保存し、10分以内で急速に融解した後、尿中のラミニンγ2単鎖の測定に用いられる、請求項1からのいずれか1項に記載の検査方法。
  7. 泌尿器科がんの再発又は再発のリスクの検出方法であって、治療後の被検者から採取した尿中のラミニンγ2単鎖が、非泌尿器科がん患者から採取した尿中のラミニンγ2単鎖より多い場合に、泌尿器科がんが再発している又は再発のリスクが高いと判断する工程を含む、検査方法。
  8. 前記泌尿器科がんが、膀胱がん、腎盂がん、尿管がん、腎がん、及び前立腺がんから選択される少なくとも一種類のがんである、請求項1からのいずれか1項に記載の検査方法。
  9. ラミニンγ2単鎖を認識し、ラミニン5γ2鎖を認識しない抗体を含む、泌尿器科がんの検査用キット。
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